抗マラリァ活性を有する新規化合物 技術分野
本発明は、 抗マラリァ活性を有する新規化合物及び該新規化合物を有 効成分として含有する抗マラリァ剤に関する。
明
背景技術
田
マラリアはハマダラ力 Anophe l es spp.によってヒトからヒトに媒介さ れ、 蚊の唾液と共に胞子小体の形で人体に注入されたマラリァ原虫は肝 細胞内に入り、 赤外型 (組織型) 原虫となって増殖し、 1 0〜 1 4日後 に分裂小体となって流血中に感染し、 栄養体、 分裂体と成長する無性生 殖をとおして増殖する。 成熟した分裂体の中に植物の種子に相当する分 裂小体ができ、 これがこぼれて次の赤血球に入って再び無性生殖を繰り 返す。 一部の分裂小体は無性生殖をしないで雌雄の生殖母体となるが、 ヒト体内ではそれ以上増殖できず、 蚊の体内に入って初めて雌雄の生殖 体となり接合して有性生殖を営む。 いくつかの段階をへて胞子嚢に成熟 するとその中に無数の胞子小体ができ、 それが蚊の吸血時その唾液とと もにヒトに感染する。 ヒトに感染するマラリァ原虫には熱帯熱、 三日熱、 卵形、 及び四日熱マラリア原虫の 4種類があるが、 世界中で患者数 2〜 3億人、 死者年間 2〜 3百万人と推定されている。 近年、 殺虫剤耐性の 蚊やクロ口キン耐性のマラリァ原虫が出現し、対策が困難となっている。 従来、 抗マラリア剤又は抗マラリア化合物としては、 特開 2 0 0 0— 7 6 7 3号公報記載の 2個の複素環を含有するォルソー縮合系の新規化 合物や、 特開平 1 1 一 2 2 8 4 4 6号公報記載の I C A M - 1発現抑制
作用を有する化合物を有効成分として含有する抗マラリァ剤や、 特開平
1 1 - 2 2 842 2号公報記載の 5 ' — o—スルファモイル— 2—クロ ロアデノシン等のヌクレオシド誘導体等を有効成分として含有する抗マ ラリァ剤や、 特開平 1 1一 2 2 8 4 0 8号公報記載のトリコテセン類等 を有効成分として含有する抗マラリア剤や、 特開平 1 0— 2 6 5 3 8 2 号公報記載のシクロプロジギオシン等を有効成分とする抗マラリァ剤や, 特開平 8— 2 3 1 4 0 1号公報記載のリミノフエナジンを有効成分とし て含有するマラリア予防又は治療薬や、 特開平 8 - 7 3 3 5 5号公報記 載のキノリン誘導体等を有効成分として含有する抗マラリア薬耐性克服 剤や、 特開平 8— 5 947 1号公報記載の 5—フルォロォロチン酸及び スルファモノメトキシンを有効成分とする抗マラリア剤や、 特開平 7— 8 2 1 6 5号公報記載の黄耆、 桂皮、 地黄、 芍薬、 川きゆう、 蒼朮、 当 帰、 人参、 茯苓及び甘草、 又はこれらの抽出物を有効成分として含有す る抗マラリア剤や、 特開平 6— 1 5 7 3 0 8号公報記載のテトラピロ一 ル誘導体等を有効成分とする抗マラリァ剤や、 特開平 5— 9 7 6 6 5号 公報記載の 1 5—デォキシスパガリン等を有効成分とする抗マラリァ剤 等が知られている。
マラリァは毎年 2〜 3億人に感染し、 2〜 3百万人が死亡している重 大な感染症である。 さらに、 マラリアの特効薬として多用されてきたク ロロキンに耐性をもつマラリァ原虫の出現が深刻な問題となっており、 有効な治療薬の開発が急務とされている。 キク科植物から単離されるト リォキサ構造を持つアルテミシニンは、 クロロキン耐性マラリァ原虫に 対して有効であり、 現在、 この天然由来の化合物が治療薬として使われ ている。 しかしながら、 アルテミシニンに対しても耐性を示すマラリア 原虫がすでに現れており、 このことがさらに問題となっている。 本発明 の課題は、 抗マラリァ活性を有する新規化合物及び該新規化合物を有効
成分として含有する抗マラリァ剤を提供することにある。 発明の開示
本発明者らは、 上記課題を解決するためにアルテミシニン類縁体の合 成について鋭意研究し、 分子内ディ一ルス · アルダ一反応によって合成 した双環性のォレフィンより光酸素酸化反応を利用して合成した 1 2— ヒドロキシー 2—(1—メ トキシカルポニルェチル)一 5—ォキソ— 1 0, 1 1, 1 3—トリオキサトリシクロ [ 7. 2. 0. 01 ' 6 ] トリデカン が、 非常に高い抗マラリア活性と選択毒性を すことを見い出し、 本発 明を完成するに至った。
すなわち本発明は、 次の一般式 (Ί ) [式中、 R 1は、 水素原子又は 分枝を有してもよい C 1〜C 6のアルキル基を表し、 R2は、 水素原子、 分枝を有してもよい C 1〜C 6のアルキル基又は置換基を有してもよい ァリール基を表し、 R3は、 酸素原子、 硫黄原子、 NR4 (R4は水素原 子もしくは分枝を有してもよい C 1〜(: 6のアルキル基) 又は C R 5 2 (R 5は互いに独立して水素原子もしくは分枝を有してもよい C 1〜 C 6のアルキル基) ] で示される化合物 (請求項 1 ) や、
化学式 1
一般式 ( I ) で示される化合物が、 次式 (II) で示される 1 2—ヒドロ
キシー 2—(1ーメ トキシカルボ二ルェチル)— 5—ォキソ— 1 0 , 1 1, 1 3— トリォキサトリシクロ [ 7. 2. 0. 0
6] トリデカンである ことを特徴とする請求項 1記載の化合物 (請求項 2 ) に関する。
化学式 2
また本発明は、 次の一般式 ( I ) [式中、 R
1は、 水素原子又は分枝 を有してもよい C 1〜C 6のアルキル基を表し、 R
2は、 水素原子、 分 枝を有してもよい C 1〜C 6のアルキル基又は置換基を有してもよいァ リール基を表し、 R
3は、 酸素原子、 硫黄原子、 NR
4 (R
4は水素原子 もしくは分枝を有してもよい C 1〜C 6のアルキル基) 又は C R
5 2 (R
5は互いに独立して水素原子もしくは分枝を有してもよい C 1〜C 6の アルキル基) ] で示される化合物を有効成分として含有することを特徴 とする抗マラリア剤 (請求項 3 ) や、
化学式 3
一般式 ( I ) で示される化合物が、 次式 (II) で示される 1 2—ヒドロ キシ— 2— (1—メトキシカルポニルェチル)— 5—ォキソ一 1 0, 1 1 , 1 3— トリオキサトリシクロ [ 7. 2. 0. 0
1'
6] トリデカンである ことを特徴とする請求項 3記載の抗マラリア剤 (請求項 4) に関する。 化学式 4
本発明の一般式 ( I ) で示される化合物中、 R 1は、 水素原子又は分 枝を有してもよい C 1〜C 6のアルキル基を表し、 分枝を有してもよい C 1〜 C 6のアルキル基としては、 メチル基、 ェチル基、 イソプロピル 基、 t _ブチル基等を具体的に例示することができる。 また、 R 2は、 水素原子、 分枝を有してもよい C 1〜C 6のアルキル基又は置換基を有 してもよいァリール基を表し、 分枝を有してもよい C 1〜C 6のアルキ ル基としては、 メチル基、 エヂル基、 イソプロピル基、 t —ブチル基等 を、 ァリ一ル基としては、 フエニル基、 卜リル基、 ナフチル基等をそれ ぞれ具体的に例示することができる。 また、 ァリール基における置換基 としては分枝を有してもよい C 1〜 6のアルキル基、 分枝を有してもよ い C 1〜 6のアルコキシ基等を例示することができる。
また、 本発明の一般式 ( I ) で示される化合物中、 R3は、 酸素原子、 硫黄原子、 N R 4 (R 4は水素原子もしくは分枝を有してもよい C 1〜C 6のアルキル基) 又は C R5 2 (R 5は互いに独立して水素原子もしくは
分枝を有してもよい C 1〜 C 6のアルキル基) を表す。 NR4における R4としては、 水素原子、 メチル基、 ェチル基、 イソプロピル基、 t — ブチル基等を具体的に例示することができる。 また、 C R 5 2における R 5としては、 水素原子、 メチル基、 ェチル基、 イソプロピル基、 tーブ チル基等を具体的に例示することができ、 これら 2つの R 5は同一ある いは異なっていてもよい。
これら一般式 ( I ) で示される化合物の中でも、 優れた抗マラリア活 性を有する式(II)で示される 1 2—ヒドロキシー 2 _ (1—メ トキシカ ルポニルェチル)一 5—ォキソ— 1 0, 1 1 , 1 3—トリォキサトリシク 口 [ 7. 2. 0. 0 6] トリデカンが抗マラリア活性及び選択毒性の 点で好ましい。
また、 本発明の一般式 ( I ) で示される化合物や、 式 (II) で示され る 1 2—ヒドロキシ— 2 _ (1—メトキシカルポ二ルェチル)— 5—ォキ ソ— 1 0 , 1 1 , 1 3—トリオキサトリシクロ [ 7. 2. 0. 01' 6] トリデカンの製造方法は特に限定されるものではなく、 例えば 1 , 4一 ブタンジオール誘導体から数工程の公知の合成反応を行い、 合成したト リエンを、 デス—マ一ティン (Dess-Martin) 酸化、 続く分子内ディール ス ·アルダー (Diels-Alder) 反応により立体選択的にシスデカロンに変 換し、 次いで塩基処理した後に、 一重項酸素酸化一空気酸化 (R o t h の方法) に付すことでパーオキサイ ド体として得ることができる。
本発明化合物を、 マラリア原虫類による感染症の予防、 抑制及び治療 に使用する場合、 投与経路としては、 経口、 皮下注射、 静脈注射、 局所 投与等のいずれでもよい。 また、 製剤としては、 通常、 製薬的に許容さ れる担体、 賦形剤、 その他添加剤を用いて製造した散剤、 錠剤、 細粒剤、 丸剤、 カプセル剤、 顆粒剤等の経口剤、 点眼剤、 注射剤、 坐剤等の非経 口剤を挙げることができる。 製薬的に許容される担体ゃ賦形剤、 その他
添加剤としては、 グルコース、 ラク ト一ス、 ゼラチン、 マンニト一ル、 でんぷんペース ト、 トリケィ酸マグネシウム、 コーンスターチ、 ケラチ ン、 コロイ ド状シリカ等があり、 さらには、 安定剤、 増量剤、 着色剤及 び芳香剤の様な補助剤を含有してもよい。 これらの製剤は、 各々当業者 に公知慣用の製造方法により製造できる。 また、 1 日当たりの投与量は、 患者の症状、 体重、 年齢、 性別等によって異なり一概に決定できないが、 通常成人 1 日当り本発明化合物を 0. l〜 1 0 0 0 mg、 好ましくは 1 〜 6 0 0 m gを投与するのが好ましい。
以下本発明を実施例に基づき説明するが、 本発明の技術的範囲はこれ ら実施例により限定されるものではない。
実施例 1 [ 1 2—ヒドロキシ— 2—( 1ーメ トキシカルボ二ルェチル)— 5—ォキソ— 1 0, 1 1, 1 3—トリオキサトリシクロ [ 7. 2. 0. 0 6] トリデカンの製造]
1 2—ヒドロキシー 2— (1—メトキシカルポニルェチル)一 5—ォキ ソ一 1 0, 1 1 , 1 3—トリオキサトリシクロ [ 7. 2. 0. 01' 6] トリデカンを、 (4 E) — 7—メチル _ 1—テトラヒドロピラノキシー 4, 7—才クタジェン— 6—オールを出発物質として合成した。 なお、 次式 ( 1 ) に示す出発物質である (4 E) _ 7—メチル— 1 —テトラヒ ドロピラノキシ一 4 , 7 —才クタジェン一 6 _オールは、 文献 (the Journal of Organic Chemi s t ry, Vo 1.51 , 4023-4028, 1986) 記載の方法に より合成した。
化学式 5
実施例 1 一 1 [新規物質 (4 E) — 7—メチル— 6—プロパノイロキシ 一 1 ーテトラヒドロビラノキシ一 4, 7—ォクタジェン一 6—オールの 合成]
7. 2 6 gの (4 E) — 7 _メチル _ 1ーテトラヒドロビラノキシ一 4, 7—ォクタジェン一 6—オール ( 1 ) と、 7. 4m l のピリジンを 塩化メチレン ( 6 5 m l ) の溶液とする。 これに、 0 °Cで 3. 1 m lの 塩化プロピオニルを滴下し、 3 0分撹拌した。 その後、 水を加えジェチ ルエーテルで抽出し、 有機層を 1 0 %の硫酸水素カリウム水溶液、 及び 飽和食塩水で洗浄後、 無水硫酸マグネシウムで乾燥した。 溶媒を減圧留 去して得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、 へキサン—酢酸ェチル ( 1 0 : l v/v) 溶出部より 7. 7 4 gの無色 油状物質を収率 8 6 %で得た。 得られた物質の物性は以下のとおりであ り、 かかる物性に基づく化合物の構造式を式 ( 2 ) に示す。
IR (neat) cm—': 740. Ή-NMR (300 MHz, CDC13) δ: 1.15 (3Η, t, J = 7.5 Hz), 1.47-1.76 (8H, m) , J.72 (3H, s) , 2.10-2.20 (2H, m), 2.36 (2H, q, I = 7.5 Hz), 3.32-3.54 (4H, m), 3.68-3.90 (4H, m), 4, 53-4.60 (1H, m), 4.88 (1H, s), 4.98 (1H, s), 5.45 (1H, dd, J = 14.5, 7.0 Hz), 5.57 (1H, d, J = 7.0 Hz), 5.75 (1H, dd, J - 14.5, 7.0 Hz). MS m/z: 295 (M+-l) . 元素分析 Calcd for Cl7H2804 : C, 68.87; H, 9.52. Found : C, 69.02; H, 9.39.
化学式 6
(2)
実施例 1一 2 [新規物質メチル ( 2 S *, 3 R*, 4 E) 一 2 , 6—ジメ チル一 3— [ 3 ' ― (テトラヒドロピラノキシ) プロピル] —ヘプ夕一 4 , 6—ジエノエートの合成]
1. 5 l m l のジイソプロピルァミンの THF溶液 ( 5 0 m l ) に、 0 °Cにて 5. 1 m 1 のブチルリチウムのへキサン溶液 ( 1. 5 4 M) を 滴下した後、 0 °Cにて 3 0分、 一 7 8 °Cで 1時間撹拌した。 これに、 1. 0 gの上記で得られた化合物 ( 2 ) のテトラヒドロフラン溶液 ( 5 m l ) を 1時間かけて滴下し、 一 7 8 °Cで 1時間撹拌した。 その後、 1. 0 3 m l のクロロトリメチルシランを加えて 1時間撹拌し、 徐々に室温まで 昇温し 2時間撹拌した。 反応終了後、 2 m 1のメタノールを加え 3 0分 間撹拌した。 溶媒を留去して得られる残留物を重曹水で塩基性にして逆 抽出し、 得られる水層を 1 0 %の硫酸水素カリウムで酸性にした後、 酢 酸ェチルで抽出した。 有機層を飽和食塩水で洗浄後、 無水硫酸マグネシ ゥムで乾燥した。 溶媒を減圧留去して得られる残留物にエーテル ( 3 m 1 ) を加え、 0 °Cで過剰量のジァゾメタンのジェチルエーテル溶液を滴 下し、 1時間撹拌した。 溶媒を減圧留去して得られる残留物をシリカゲ ルカラムクロマトグラフィ一に付し、 へキサン一酢酸ェチル ( 9 : 1 V / v) 溶出部より 0. 7 6 gの淡黄色油状物質を収率 7 2 %で得た。 得 られた物質の物性は以下のとおりであり、 かかる物性に基づく化合物の 構造式を式 ( 3 ) に示す。
IR (neat) cm—1: 1725. Ή-NMR (300 MHz, CDC13) δ: 1.04 (3Η, d, J = 6.6 Hz), 1.18-1.80 (9H, m) , 1.79 (3H, s) , 2.31-2.47 (2H, m) , 3.27-3.39 (2H, m), 3.41-3.55 (2H, m) , 3.64 (3H, s), 3.77-3.87 (2H, m), 4.54 (1H, br s), 4.86 (2H, br s), 5.28 (1H, dd, J = 15.7, 9.3 Hz), 6.11 (1H, d, J = 15.7 Hz). MS m/z : 310 (M+) . 元素分析 Calcd for C18H3004 : C, 69.64; H, 9.74. Found : C, 69.87; H, 10.04.
化学式 7
実施例 1一 3 [新規物質メチル ( 2 S *, 3 R*, 4 E) _ 3 ( 3 ' 一 ヒドロキシプロピル) 一 2 , 6—ジメチルヘプ夕一 4, 6—ジエノエー トの合成]
0. 1 1 gの上記で得られた化合物 ( 3 ) のメタノール溶液 ( 6m l ) に室温にて 34mgのトルエンスルホン酸 · 一水和物を加え、 1 時間撹 拌した。 その後、 溶媒を減圧留去して得られた残留物に飽和重曹水を加 え、 酢酸ェチルで抽出した。 得られた有機層を飽和食塩水で洗浄後、 無 水硫酸マグネシウムで乾燥した。 溶媒を減圧留去して得られる残留物を シリ力ゲル力ラムクロマトグラフィーに付し、 へキサン—酢酸ェチル ( 2 : l vZv) 溶出部より 7 5. 0 m gの無色油状物質を収率 94 % で得た。 得られた物質の物性は以下のとおりであり、 かかる物性に基づ く化合物の構造式を式 (4 ) に示す。
IR (neat) cm—1 : 3400, 1740, 1610. 'Η-丽 R (300 MHz, CDC13) <5: 1.08 (3H, d, J = 6.7 Hz), 1.30-1.83 (4H, m) , 1.83 (3H, s), 2.24-2.45 (2H, m), 3.59-3.70 (2H, m), 3.68 (3H, s), 4.89 (2H, s), 5.27 (1H, dd, J = 15.7, 9.3 Hz) , 6.10 (1H, dd, J = 15.7 Hz). MS m/z : 226 (M+) . 元 素分析 Calcd for CI3H2203 : C, 71.39; H, 9.59. Found : C, 71.12; H, 9.75.
化学式 8
実施例 1一 4 [新規物質メチル (2 S *, 3 R *, 4 E) 一 3— ( 3 ' ― ヒドロキシ— 4一ペンテニル) 一 2, 6—ジメチルヘプ夕— 4, 6—ジ エノエー卜の合成]
2 5 3 m gの上記で得られた化合物 (4) の塩化メチレン溶液 (4m 1 ) に、 室温にて 6 3 Imgの重クロム酸ピリジニゥム塩、 及び 0. 7 gの粉末状 4 Aのモレキュラーシーブを順次加え、 1. 5時間撹拌した。 ジェチルエーテルで希釈し、 1 gのフロリジルを加え 1 0分撹拌した後、 混合物をセライ ト濾過した。 ろ液を減庄留去して、 粗アルデヒドを黄色 油状物として得た。 この粗物質をテトラヒドロフラン溶液 ( 3 m 1 ) に し、 _ 78 で 1. 1 m 1のビニルマグネシウムブロマイ ド—テトラヒ ドロフラン溶液 ( 1. 0 M) を滴下し、 20分間撹拌した。 その後、 0 t: にて飽和塩化アンモニゥム水溶液を加えジェチルエーテルで抽出した。 有機層を飽和食塩水で洗浄後、 無水硫酸マグネシウムで乾燥した。 溶媒 を減圧留去して得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー に付し、 へキサン—酢酸ェチル (4 : l v/v) 溶出部より 0. 1 8 g の無色油状物質を収率 6 5 %で得た。 得られた物質の物性は以下のとお りであり、 かかる物性に基づく化合物の構造式を式 ( 5 ) に示す。
IR (neat) cm"1 : 3500, 1740, 1620. Ή-NMR (300 MHz, CDC13) δ: 1.08 (3Η, d, J = 6.9 Hz), 1.25-1.69 (4H, m), 1.82 (3H, s), 2.23-2.45 (2H,
m) , 3.67 (3H, s) , 4.08 (1H, br s), 4.90 (2H, s), 5.10 (1H, d, J : 9.8 Hz), 5.21 (1H, d, J = 16.5 Hz) 5.29 (1H, dd, J = 9.0, 14.7 Hz), 5.76-5.90 (1H, m) , 6.14 (1H, d, J = 14.7 Hz). MS m/z: 295 (M+-l). 元素分析 Calcd for C15H2403 : C, 68.99; H, 9.80. Found : C, 68.92 H, 9.88.
化学式 9
実施例 1 一 5 [新規物質 ( 1 R*, 2 R *, 6 R *, 1 ' S *) _ 2— ( 1 ' ーメ トキシカルポ二ルメチル) 一 9—メチルビシクロ [ 4. 4. 0 ] デ カン— 9一ェン— 5—オンの合成]
デス · マ一チン試薬 ( 3 2. 8 m g ) の塩化メチレン溶液 ( 1. 0 m 1 ) に、 上記で得られた化合物 ( 5 ) ( 1 2. 1 m g) の塩化メチレン 溶液 (0. 5 m l ) を 0 °Cで加え、 室温にて 2時間攙拌した。 その後、 飽和重曹水— 2 %のチォ硫酸ナトリゥム水溶液 ( 1 : 7 vZv) に注ぎ、 ジェチルエーテルで抽出した。 有機層を水、 及び飽和食塩水で洗浄後、 無水硫酸マグネシウムで乾燥した。 溶媒を減圧留去して得られる残留物 をシリカゲルカラムクロマトグラフィ一に付し、 へキサン一酢酸ェチル ( 6 : l v/v) 溶出部より 9. 4m gの淡黄色油状物質を収率 7 8 % で得た。 得られた物質の物性は以下のとおりであり、 かかる物性に基づ く化合物の構造式を式 ( 6 ) に示す。
IR (neat) cm"1 : 1720, 1705. Ή-NMR (500 MHz, CDC13) δ 1.22 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.47-1.56 (2H, m), 1.62 (3H, s), 1.85-1.94 (2H, m) , 2.01-2.13 (2H, m), 2.24-2.45 (3H, m) , 2.56 (1H, br s), 2.85 (1H, dt, J = 7.0 ,7.0 Hz), 3.64-3.75 (3H, m) , 5.32 [1H, br s] . MS m/z: 250 (M+). HRMS m/z (M+) : Calcd for C(5H2Z03 : 250.1568. Found : 250.1530. 化学式 1 0
実施例 1 — 6 [新規物質 ( 1 R *, 2 R *, 6 S *) 一 2 ( 1 ' ーメ 卜 キシカルポニルメチル) — 9ーメチルビシクロ [ 4. 4 0 ] デカン一 9 一ェンー 5—オンの合成]
9 1 mgの上記で得られた化合物( 6 )のテトラヒドロフラン溶液( 3 m 1 ) に、 7 3 m gの水素化ナトリウム ( 6 0 %のミネラルオイル懸濁) を 0 °Cで加え、 室温で 3時間撹拌した。 その後、 水を加えた後ジェチル エーテルで抽出した。 得られた有機層を、 飽和食塩水で洗浄後、 無水硫 酸マグネシウムで乾燥した。 溶媒を減圧留去し得られた残留物をシリ力 ゲルクロマトグラフィ一に付しへキサン一酢酸ェチル ( 5 : 1 v / v ) 溶出部より、 9 0 m gの式 ( 6 ) で示される前記化合物と、 次式 ( 7 ) で示される化合物との混合物を無色油状物として得た [化合物 ( 6 ) : 化合物 (7 ) = 1 : 1 . 2 ] 。 さらなる生成を行わず、 次の反応に用い た。
化学式 1
実施例 1 一 7 [本発明の新規物質 1 2—ヒドロキシ— 2— ( 1—メトキ シカルボニルェチル) — 5—ォキソ一 1 0, 1 1, 1 3—トリオキサト リシクロ [ 7. 2. 0. 0 6] トリデカンの合成]
上記で得られた混合物 [化合物 (6) 及び化合物 ( 7 ) ] のうちの 3 O mgをアセトン溶液 ( 2 0 m l ) とした溶液に 0. 9 mgのメチレン ブルーを加え、 酸素気流下、 1 0 0Wタングステンランプ光を室温で 2 4時間照射する。 その後、 溶媒を減圧留去し、 ジェチルエ テルを加え た後メチレンブル一をろ過により除去し、 濾液を減圧留去する。 得られ た淡黄色油状物を石油エーテル ( 6 m l ) の懸濁液とし、 トリフルォロ 酢酸 ( 0. 0 l m 1 ) を加え、 室温で空気雰囲気下、 2 4時間放置する。 その後、 石油エーテル溶解物を減圧留去し、 得られた残渣をシリカゲル クロマトグラフィ一に付しへキサン一酢酸ェチル ( 6 : 1 V / V ) 溶出 部より、 1. 8 mgの無色油状物を収率 5 %で得た。 得られた物質の物 性は以下のとおりであり、 かかる物性に基づく化合物の構造式は式(II) に示されるものであった。
IR (neat) cm : 1710, 1730. Ή-NMR (500 MHz, CDC13) d: 1.20 (3H, d, J = 7.0 Hz) , 1.22-1.84 (4H, m), 1.86-1.89 (1H, m) , 1.91 (3H, s), 2.05-2.20 (2H, m) , 2.27-2.38 (2H, m) , 2.54-2.61 (2H, m) , 2.78 (1H, dd), 3.68-3.71 (1H, s), 3.69 (3H, s), 5.80 (1H, s). MS ra/z : 314 (M+) .
実施例 2 [抗マラリア活性と選択毒性の測定]
実施例 1で得られた式 (Π) で示される本発明の化合物 1 2—ヒドロ キシ— 2— ( 1ーメトキシカルポニルェチル) — 5—ォキソ一 1 0 , 1 1, 1 3—トリオキサトリシクロ [ 7. 2. 0. 01' 6] トリデカンの 抗マラリァ活性と選択毒性を測定した。 抗マラリァ活性については 5 0 %阻害濃度の測定により、 また選択毒性については化学療法係数 (選 択毒性) の算定により評価した。
実施例 2— 1 [熱帯熱マラリア原虫の培養]
抗マラリア活性の測定には、 供試マラリア原虫として、 熱帯熱マラリ ァ原虫である P. Falciparum FCR-3 strain (ATC C 3 0 9 3 2) 及び P. Falciparum Honduras-1 strain (ATC C 3 0 9 3 5) を用いた。 ま た、 供試培地として、 ろ過滅菌した R P M I 1 640培地を p H 7. 4 に調整し、 ヒト血清を 1 0 %となるように添加した培地を用いた。 上記 熱帯熱マラリア原虫の培養は 02濃度 5 %、 C 02濃度 5 %、 N2濃度 9 0 %、 温度は 3 6. 5 °Cで行った。 へマトクリット値 (赤血球浮遊液中 に占める赤血球の体積の割合) は 5 %にして用いた。 培養開始時の熱帯 熱マラリア原虫の初期感染率は 0. 1 %とした。 2 4穴培養プレートを 用いて培養し、 培地は毎日交換し、 感染率 4 %で植継ぎを行った。 感染 率は薄層塗抹標本を作成し、 元来マラリァ検査のため開発されたギムザ 染色あるいは D i f f -Q i c k染色を行った後、 顕微鏡 (油浸、 1 0 0 0 X) 下で計測し、 熱帯熱マラリア原虫感染率を下記式から算出した。 数式 1
マラリァ原虫感染率(%) = ^^^f X 1 00
総赤血球
実施例 2— 2 [熱帯熱マラリア原虫増殖阻害試験]
培養した熱帯熱マラリァ原虫感染赤血球を遠心分離で集め、 血清を含 む培地で洗浄した後、 非感染赤血球を加え、 初期感染率 0. 3 %の熱帯 熱マラリァ原虫培養液を調製した。 このときのへマトクリッ ト値は 3 % とした。 試験に用いる式 (II) で示される本発明の化合物、 及び 3種類 の陽性対照薬 (キニーネ、 アルテミシニン、 アルテスナート、 メフロキ ン) を滅菌水、 N, N—ジメチルホルムアミ ド (DMF、 以下同じ) 、 あるいはジメチルスルホキシド (DMS〇、 以下同じ) に溶解し、 所定 濃度のサンプル溶液を調製した。 24穴培養プレートにサンプル溶液を 5〜 1 0 1ずつ加えた。サンプル溶液はデュープリケート(duplicate) あるいはトリプリケ一ト (triplicate) にとつた。 コントロールは滅菌 水、 DMF、 あるいは DMS Oを 1ゥエル当たり 1 Q 1加えた。 次に、 初期感染率 0. 3 %調製した上記熱帯熱マラリア原虫培養液を 9 9 0〜 9 9 5 1ずつ加え、 静かにピベッティングを行い培地に一様に懸濁さ せた。 培養プレートは C02—〇2— N2 ( 5 %, 5 , 9 0 %) インキ ュベータ一中で 7 2時間培養した後、 それぞれのゥエルについて薄層塗 抹標本を作成し、 ギムザ染色あるいは D i f f - Q i c k染色を行った 後、 顕微鏡 (油浸、 1 0 0 0 X) 下で計測し、 試験液添加群及びコント ロールの熱帯熱マラリァ原虫感染率を算出した。 上記で求めた熱帯熱マ ラリア原虫感染率から次式によって増殖阻害率を算出し、 5 0 %増殖阻 害濃度 (E C 5。) を求めた。
数式 2
增殖阻害率 (%) = 1 T (b—、a) X 1 0 0
( c - a )
a :初期感染率
b : 7 2時間後のサンプル液の感染率
c : 7 2時間後のコントロールの感染率
実施例 2 - 3 [マウス FM 3 A細胞増殖阻害試験]
マウス乳癌由来 FM 3 A細胞の野生株である F 2 8— 7株を用いた。 培地は E S培地に非動化した胎児牛血清を 2 %となるように添加し、 C 02濃度 5 %、 3 7 °Cで培養した。 この条件下での F M 3 A細胞 F 2 8 一 7株の倍加時間は約 1 2時間であった。 前培養を行い、 対数増殖期に 入った細胞を 5 X 1 04 c e 1 1 s Zm 1 になるように培地で希釈する t サンプル溶液は上記実施例 2 - 2と同じものを用いた。 24穴培養プレ 一トにサンプル溶液を 5〜 1 Q 1ずつ加えた (培地等を加えると最終 濃度は 1 X 1 0— 4〜 1 X 1 0 _5Mとなった) 。 サンプル溶液はデュープ リゲートあるいはトリプリケートにとり、 コントロールとして滅菌水、 DMF、 あるいは DMS Oを 1 Q β 1加えたゥエルも同時に用意した。 次に、用意しておいた培養細胞浮遊液を 9 9 0から 9 9 5 ^ 1ずつ加え、 静かにピベッティングを行い培地に一様に懸濁させた。 48時間培養し た後、 それぞれのゥエルについて細胞数をセルコントローラー (C C一 1 0 8 ; Toa. Medical Electrics社製) で計数し、 下記式により増殖率 を算出し、 5 0 %増殖阻害率 ( I C 5。) を算出した。 細胞増殖阻害活性 は、 サンプル溶液を添加したゥェルの細胞数及びコントロールの細胞数 から算出した。 これにより、 サンプルの細胞毒性を評価した。
数式 3 増殖率(%) = X 1 00
( B— A)
A :初期細胞数
B : 2日後のコントロールの細胞数
C :サンプル添加した 2日後の細胞数 試験例 2— 4 [薬効判定]
熱帯熱マラリア原虫とマウス FM 3 A細胞に対するサンプルの E C 5
。値、 I c5。値からサンプルの抗マラリア作用を評価する。 熱帯熱マラ リァ原虫に対する選択毒性の指標として用いられる化学療法係数を下記 式により算出し、 薬効判定を行った。
数式 4
^^ ^t^ t- マウス F M 3 A細胞に対するサンプルの I C50値 1し t dswsa 熱带熱マラリァ原虫に対するサンプルの E C 50値 本発明化合物及び陽性対象薬についての熱帯熱マラリァ原虫とマウス F M 3 A細胞に対するサンプルの E C 5。値、 I C 5。値、 並びに化学療 法係数を表 1に示す。 表 1の結果から、 本発明化合物は、 毒性が低く、 極めて優れたマラリァ原虫増殖阻害活性を有していることがわかった。 表 1
50 %増殖阻害濃度 (M) 化学療法係数 化合物 E C 5 0 C 5 0 I C50/E C 5 0 本発明化合物 3.9 X 10一8 2.4 X 10— 5 >1,000
(78¾ growth)
キニーネ 1.1 X 10一7 1.0 X 10_4 910 アルテミシニン 7.9 X 10— 9 1.0 X 10一5 1,300 アルテスナー卜 1.7 X 10— 8 3.0 X 10一6 180 メフロキン 3.2 X 10— 8 2.9 X 10一6 90 産業上の利用可能性
本発明の抗マラリア活性を有する新規化合物は、 薬剤耐性を有する熱 帯熱マラリァ原虫の成育を 3. 9 X 1 0—8モル濃度で阻止し、 マウスの F A 3 A細胞との比較によって、 1 , 0 0 0倍以上の選択毒性を示すこ とから、 抗マラリア剤として極めて有用である。