明 細 書 溶接性に優れた B N析出強化型低炭素フ ェライ ト系耐熱鋼 技術分野
本発明は、 フユライ ト系耐熱鋼に関するものであり、 更に詳し く は高温 · 高圧環境下で使用するク リ ープ破断強度に優れ、 かつ耐 H A Z軟化特性に優れ、 溶接後熱処理の省略可能なフ ェライ ト系耐熱 鋼に関する ものである。 背景技術
近年、 火力発電ボイラの操業条件は高温、 高圧化が著しく 、 一部 では 5 6 6 °C、 3 1 6 ba r での操業が計画されている。 将来的には 6 4 9 °C、 3 5 2 ba r 迄の条件が想定されており、 使用する材料に は極めて苛酷な条件となっている。
火力発電プラ ン トに使用される耐熱材料は、 その使用される部位 によって曝される環境が異なる。 いわゆる過熱器管、 再熱器管と呼 ばれる雰囲気温度の高い部位では高温での耐食性、 強度に特に優れ たオーステナイ ト系材料、 あるいは耐水蒸気酸化特性、 熱伝導率を 考慮する場合は 9〜 1 2 %の C rを含有したマルテンサイ ト系の材 料が多く使用される。
近年では新たに Wを高温強度向上に発効させるベく添加した新し い耐熱材料が研究開発、 実用化されており、 発電プラ ン トの高効率 化の達成に大き く寄与している。 例えば特開昭 6 3 - 8 9 6 4 4号 公報、 特開昭 6 1 - 2 3 1 1 3 9号公報、 特開昭 6 2 — 2 9 7 4 3 5号公報等に、 Wを固溶強化元素と して使用することで、 従来の M 0添加型フ ェライ ト系耐熱鋼に比較して飛躍的に高いク リ ーブ強度
を達成でき るフ ェ ライ ト系耐熱鋼に関する開示がある。 これらは多 く の場合、 組織が焼き戻しマルテンサイ ト単相であり、 耐水蒸気酸 化特性に優れたフ ェライ ト鋼の優位性と、 高強度の特性が相俟って 、 次世代の高温 ' 高圧環境下で使用される材料と して期待されてい る。
また、 火力発電プラ ン トの高温高圧化が実現可能となり、 それま で比較的使用温度、 圧力の低かった部位、 例えば火炉壁管あるいは 節炭器、 蒸気発生器、 主蒸気管等の操業条件も苛酷となり、 従来の いわゆる 1 . 2 5 C r鋼、 2 . 2 5 C r鋼といった工業規格に規定 されているような低 C r含有フ ヱライ ト系耐熱鋼が適用できなく な りつつある。
こう した趨勢に対応して、 これら低強度材料にも Wあるいは M o を積極的に添加して高温強度を改善した鋼が数多く提案されている o
特開昭 6 3 - 1 8 0 3 8号公報、 特開平 4 — 2 6 8 0 4 0号公報 、 特公平 6 — 2 9 2 6号公報、 特公平 6 — 2 9 2 7号公報にはそれ ぞれ、 Wを主要な強化元素と して 1 〜 3 % C r添加鋼の高温強度を 改善した鋼が提案されており、 いずれも従来の低 C r鋼に比較して 高い高温強度を有している。
一方、 フ ライ ト系の耐熱材料は、 オーステナイ ト単相領域から フ ェライ ト +炭化物析出相へと、 熱処理の際の冷却に伴って発生す る相変態が過冷却現象を呈し、 その結果と して生ずる大量の転移を 内包したマルテンサイ ト組織あるいはべィナイ ト組織、 も しく はそ の焼き戻し組織の高い強度を利用 している。 従って、 この組織が再 びオーステナイ ト単相領域まで再加熱されるような熱履歴を受ける 場合、 例えば、 溶接熱影響を受ける場合においては、 高密度の転移 が再び解放されてしまい、 溶接熱影響部において、 局部的な強度の
低下が起きる場合がある。 特に、 フ Xライ トーオーステナイ ト変態 点以上に再加熱された部位の中で、 変態点近傍の温度、 例えば、 2 . 2 5 % C r鋼においては 8 0 0 °C〜 9 0 0 °C程度まで加熱されて 、 短時間のうちに再び冷却ざれた部位は、 オーステナイ ト結晶粒が 十分に成長しないうちに再度マルテンサイ ト変態、 あるいはべイ ナ ィ ト変態を起こ して細粒組織となる。 しかも、 材料強度を析出強化 によって向上させる主要な因子である M23 C 6 型炭化物が再固溶せ ずに、 その構成成分を変質したり、 あるいは粗大化するなどの、 高 温強度低下を招く機構が複合して作用し、 局部的な軟化域となる場 合がある。 この軟化域生成現象を以降便宜的に 「 H A Z軟化」 と称 する。
本発明者等は、 当該軟化域について詳細な研究を重ね、 その強度 低下は、 主に M23 C 6 型炭化物の構成元素の変化にあることを見い だした。 また、 更なる検討の結果、 高強度マルテ ンサイ ト系耐熱鋼 の特に固溶強化に不可欠の元素である M oあるいは Wが、 前記溶接 熱影響を受ける最中に、 M23 C 6 中の構成金属元素 M中に大量に固 溶し、 細粒化した組織の粒界上に析出し、 その結果オーステナイ ト 粒界近傍に M oあるいは W欠乏相が生成して、 ク リ ープ強度の局部 低下につながるこ とを見いだした。
従って、 溶接熱影響によるク リ ープ強度の低下は、 耐熱材料にと つて致命的であり、 熱処理、 溶接施工法の最適化等の従来技術では 、 問題点を根本的に解決することが不可能であることが明らかであ る。 しかも、 唯一の解決策と考えられる、 溶接部を再び完全オース テナイ ト化する対策の適用は、 発電プラ ン トの建設施工プロセスを 考慮すれば不可能であることは自明であり、 従来の耐熱マルテンサ ィ ト鋼あるいはフ ェ ライ ト鋼では 「H A Z軟化」 現象が不可避であ ることが明らかである。
このように、 W, M oを添加した新しい低 C r フ ヱライ ト系耐熱 鋼は、 折角高い母材強度を有しながら、 溶接熱影響部では母材に比 較して最大で 3 0 %もの強度低下を生じ、 局部的に従来材料からの 強度改善効果の少ない材料と して位置づけられていた。 これに対し て本発明者等の出願にかかる特開平 8 — 1 3 4 5 8 4号において、 耐 H A Z軟化性の優れた高強度フ ライ ト系耐熱鋼およびその製造 方法を提案している。 その技術は、 質量%で、 C : 0. 0 1 〜 0. 3 0 %, S i : 0. 0 2〜 0. 8 0 %, M n : 0. 2 0〜 1 . 5 0 %, C r : 0. 5 0〜 5. 0 0 %未満、 M o : 0. 0 1 〜 1 . 5 0 %, W : 0. 0 1 〜 3. 5 0 %, V : 0. 0 2〜 1 . 0 0 %, N b : 0. 0 1 〜 0. 5 0 %, N : 0. 0 0 1 〜 0. 0 6 %を含有し、 加えて、 T i : 0. 0 0 1 〜 0. 8 %, Z r : 0. 0 0 1 〜 0. 8 %の 1 種または 2種を単独であるいは複合して含有し、 P : 0. 0 3 0 %以下、 S : 0. 0 1 0 %以下、 0 : 0. 0 2 0 %以下に制限 し、 あるいは更に C o : 0. 2 %〜 5. 0 %, N i : 0. 2 %〜 5 . 0 %の 1 種または 2種を含有し、 残部が F eおよび不可避の不純 物よりなり、 かつ鋼中に存在する M23 C 6 型炭化物の金属成分 M中 に占める (T i % + Z r %) の値が 5〜 6 5 であるこ とを特徴とす る耐 H A Z軟化特性に優れたマルテンサイ ト系耐熱鋼、 および鋼中 に存在する M2 3 C 6 型炭化物の金属成分 M中に占める (T i % + Z r % ) の値が 5〜 6 5 となるように、 T i , Z rを出鋼直前の 1 0 分間に添加し、 かつ固溶化熱処理後の冷却を 8 8 0 〜 9 3 0 °Cにて 一時停止して同温度で 5〜 6 0分保持する耐 H A Z軟化特性に優れ た高強度フェライ ト系耐熱鋼の製造方法である。
ところが近年、 電力需要の増大とともに、 発電専門業者のみなら ず、 他業種においても電力供給設備を有することが可能であれば、 新たに発電事業を行う ことが可能となり、 電力供給において競争原
理が働く こ ととなった。 これに伴つて発電設備が多数建設されるこ とになってきた。 そのため、 電力の価格を事業者間で競争する事態 となつたため、 発電設備建設のコス ト低減が重要視されることとな つてきた。 ボイラ用材料の強度向上は熱交換器などの肉厚低減を可 能と し、 材料費低減に貢献する。 また、 材料の加工組立においては 特に、 工程省略あるいは短縮が切望されており、 特に圧力負荷の比 較的低い部位に使用されるフ ェライ ト系耐熱鋼は、 その材料自体の 強度が比較的低いこともあって、 時間とコス 卜のかさむ溶接後の熱 処理 (以降便宜的に P WH T = P 0 s t W e l d H e a t T r e a t m e n t と略記する) を省略できる材料が求められている しかるに、 材料の高強度化は溶接前後熱処理省略とは相反する技 術動向であって、 強度の高い材料の継ぎ手における熱処理省略は、 材料の焼き入れ性の観点からきわめて困難である。 さ らに、 H A Z 部の強度を下げることは同時に耐 H A Z軟化性の助長にもつながる ため、 材料の強度向上、 耐 H A Z軟化性の向上および溶接後熱処理 の省略という、 発電設備建設コス ト低減技術を同時に達成すること は今まで、 ほぼ不可能と見なされてきた。 発明の開示
本発明は電力需要の増大による多数の発電設備の建設ニーズに対 して、 設備費と しての材料および加工コス ト低減を狙って、 上記の ような従来鋼の課題、 すなわち材料の強度向上、 耐 H A Z軟化性の 向上および溶接後熱処理の省略をはかり、 発電設備建設コス ト低減 を同時に達成することを目的とするものである。
本発明は W, M oの固溶強化によるク リ ーブ強度の向上を達成し 、 T i Nあるいは Z r Nの HA Z部析出強化維持により耐 H A Z軟
化性を向上させ、 加えて Cを 0 . 0 6 %以下に低減して溶接後熱処 理を省略し、 C低減によって失われる材料強度を、 新たに B N析出 によって回復し、 しかも B Nの析出脆化を回避するべく鋼中の (T i N % + Z r N %) / ( B N %) 析出重量比を化学成分の調整と熱 間圧延あるいは熱間鍛造加工の温度を規定して制御し、 さ らに B N 粗大析出を後の冷却速度制御で防止する、 新しいフ ェ ラ イ ト系耐熱 鋼およびその製造方法を提供することを目的と したものである。 そ の要旨とすると ころは、
質量%で C : 0 . 0 1 〜 0 . 0 6 %, S i : 0 . 0 2〜 0 . 8 0 %, M n : 0 . 2 0〜 1 . 5 0 %, C r : 0 . 5 0〜 3 . 0 0 %, M o : 0 . 0 1 〜 1 . 5 0 %, W : 0 . 0 卜 3 . 5 0 %, V : 0 . 0 2〜 1 . 0 0 %, N b : 0 . 0 1 〜 0 . 5 0 %, N : 0 . 0 0 1 〜 0 . 0 6 %, B : 0 . 0 0 0 3〜 0 . 0 0 8 %, T i : 0 . 0 0 1 〜 0 . 5 %, Z r : 0 . 0 0 1 〜 0 . 5 %を含有し、 あるいは さ らに、 C u : 0 . 1 〜 2 . 0 %, N i : 0 . 1 〜 2 . 0 %, C o : 0 . 1 〜 2 . 0 %の 1 種または 2種以上を単独であるいは複合し て含有し、 P : 0 . 0 3 0 %以下、 S : 0 . 0 1 0 %以下、 0 : 0 . 0 2 0 %以下に制限し、 残部が F eおよび不可避の不純物よりな り、 かつ鋼中に存在する T i Nと B Nの重量比が (T i N + Z r N %) / ( B N %) の値で 1 〜 1 0 0 に制御し、 B Nの平均粒径が 1 m以下であることを特徵とする耐 H A Z軟化特性に優れ、 溶接後 熱処理の省略可能なフ ェ ラ イ 卜系耐熱鋼。
も しく は前記化学成分を含有する鋼を熱間で圧延あるいは鍛造す る際に、 圧延加工あるいは鍛造加工の加工比を 5 0 %以上と し、 9 0 0〜 1 0 0 o °cの間で加工を終了し、 直後の冷却速度を、 ベイナ ィ 卜変態終了温度までの間、 5 0 °CZhr以上 1 0 0 0 °CZhr以下と することで、 鋼中に存在する T i Nと B Nの重量比を (T i N + Z
r N %) / ( B N %) の値で 1 〜 1 0 0 に制御し、 B Nの平均粒径 を 1 m以下とすることを特徴とする耐 H A Z軟化特性に優れ、 溶 接後熱処理の省略可能なフェライ ト系耐熱鋼の製造方法である。 以下本発明の限定理由について詳細に説明する。
最初に本発明において各成分範囲を前記のごと く 限定した理由を 以下に述べる。
Cは強度の保持に必要であるが、 0 . 0 1 %未満では強度確保に 不十分であり、 0 . 0 6 %超の場合には溶接ボン ド部が著し く硬化 し、 溶接施工後の溶接後熱処理省略という本発明本来の目的を達成 できなく なるため、 範囲を 0 . 0 1 %〜 0 . 0 6 %と した。
S i は耐酸化性確保に重要で、 かつ脱酸剤と して必要な元素であ る力く、 0 . 0 2 %未満では不十分であって、 0 . 8 0 %超ではク リ ープ強度を低下させるので 0 . 0 2 %〜 0 . 8 0 %の範囲と した。
M nは脱酸のためのみでなく 強度保持上も必要な成分である。 効 果を十分に得るためには 0 . 2 0 %以上の添加が必要であり、 1 . 5 0 %を超すと、 ク リ ープ強度が低下する場合があるので、 0 . 2 0 %〜 1 . 5 0 %の範囲と した。
C r は耐酸化性に不可欠の元素であつて、 同時に C と結合して C r C , C r C 等の形態で母材マ ト リ ッ クス中に微細析出す る事でク リ ープ強度の上昇に寄与している。 耐酸化性の観点から、 下限は 0 . 5 0 %と し、 上限は、 室温での充分な焼入れ性確保を考 慮して 3 . 0 0 %未満と した。
Wは固溶強化により ク リ ープ強度を顕著に高める元素であり、 特 に 5 0 0 °C以上の高温において長時間のク リ ープ強度を著しく高め る。 3 . 5 0 %を越えて添加すると金属間化合物と して粒界を中心 に大量に析出し母材靱性、 ク リ ープ強度を著し く低下させるため、 上限を 3 . 5 0 %と した。 また、 0 . 0 1 %未満では固溶強化の効
果が不十分であるので下限を 0. 0 1 %と した。
M o も固溶強化により、 高温強度を高める元素であるが、 0. 0 1 %未満では効果が不十分であり、 1. 5 0 %超では M o 2 C型の 炭化物の大量析出、 あるいは F e 2 M o型の金属間化合物析出によ つて Wと同時に添加した場合に母材靱性を著しく低下させる場合が あるので上限を 1. 5 0 %と した。
Vは析出物と して析出しても、 Wと同様にマ ト リ ッ クスに固溶し ても、 鋼の高温ク リ ープ破断強度を著しく 高める元素である。 本発 明においては 0. 0 2 %未満では V析出物による析出強化が不十分 であり、 逆に 1. 0 0 %を超えると V系炭化物あるいは炭窒化物の クラスターが生成して靱性低下をきたすために添加の範囲を 0. 0 2〜 1. 0 0 %と した。
N bは MX型の炭化物、 も し く は炭窒化物と しての析出によって 高温強度を高め、 また固溶強化にも寄与する。 0. 0 1 %未満では 添加効果が認められず、 0. 5 0 %を超えて添加すると、 粗大析出 し、 靱性を低下させるので添加範囲を 0. 0 1 %~ 0. 5 0 %に限 つた。
Nはマ ト リ ッ クスに固溶あるいは窒化物、 炭窒化物と して析出し 、 主に V N, N b N、 あるいはそれぞれの炭窒化物の形態をとつて 固溶強化にも析出強化にも寄与する。 本発明では殊更に、 T i と結 合して T i Nあるいは Z r と結合して Z r N、 さ らには Bと結合し て B Nと して析出し、 それぞれ耐 H A Z軟化性の向上およびク リ ー プ破断強度向上に寄与する。 0. 0 0 1 %未満の添加では強化への 寄与はほとんどなく、 また最大 3. 0 0 %までの C r添加量に応じ て溶鋼中に添加できる上限値を考慮して添加限度を 0. 0 6 %と し
T i, Z rの添加は本発明に必須であり、 これらの元素の添加が
「HA Z軟化」 の回避を実現する。 T i , Z rは本発明鋼の成分系 において Cとの親和力が極めて強く、 M23C 6 の構成金属元素と し て M中に固溶し、 M23C 6 の分解温度を上昇させる。 従って、 「H A Z軟化」 域における M23C 6 の粗大化阻止に有効である。 しかも 、 W, Moの M23C 6 中への固溶を妨げ、 従って析出物周囲の W, Moの欠乏相を生成しない。 これらの元素は 2種を同時に含有する ことで単独添加に比べてさ らなる耐 H A Z軟化性の向上に寄与する ことが判明した。 従って本発明では同時添加が必須要素となってい る。 最低 0. 0 0 1 %から効果があり、 単体で 0. 5 %以上の添加 は粗大な MX型炭化物を生成して靱性を劣化させるため、 その添加 範囲を 0. 0 0 1〜 0. 5 %と した。
Bの T i, Z r, Nとの同時添加こそが、 本発明の根幹の技術で ある。 Bは通常、 鋼中には固溶し難く 、 大抵の場合炭化物と複合し た硼化物の形で析出物と して存在することが多い。 種々の硼素化合 物の中でもとりわけ、 窒素を含有する鋼材中では BNの化学親和力 が高く安定であることが一般に知られている。 熱力学的に安定な析 出物は逆に鋼中に固溶し難いわけであるから、 粒界などに析出した 場合は大型の析出物と して存在する可能性が高い。 その析出時の大 きさが、 耐熱材料においては特にク リ一プ破断強度に大きな影響を 及ぼす因子となる。 本発明では溶接後熱処理を省略可能とすること で、 本発明に記載の鋼の溶接工程を短縮し、 施工コス ト低減に寄与 するのだが、 この低炭素化により失われるク リ ープ強度を Bの添加 によって生成する B N析出による強化で補っていることが本発明の 特徴である。 8 ?^の析出形状は丁 1, Z rと Nの化学親和力および Bと Nの化学親和力で決ま り、 これらを適正な条件で圧延あるいは 鍛造することで微細に分散させ、 さ らには冷却条件を制御して B N の粗大化を防止することが最も重要である。 これら加工条件と熱処
理条件については詳細に後述する。 Bの添加は 0. 0 0 0 3 %未満 では B Nが析出せず、 0. 0 0 8 %を超えて添加すると B Nが粗大 化して強度と靱性が同時に損なわれるため、 0. 0 0 0 3〜 0. 0 0 8 %を添加範囲と して限定した。
以上が本発明の主要な構成元素であるが、 これらの元素に加えて 、 さ らに C u , N i, C oを、 その用途に応じて追加添加すること が出来る。
C u , N i , C o、 はいずれも強力なオーステナイ ト安定化元素 であり、 特に大量のフヱライ ト安定化元素、 すなわち C r, W, M o, T i , Z r, S i等を添加する場合において、 焼人れ組織も し く は焼入れ焼戻し組織を得るために必要であり、 かつ有用である。 同時に C uは高温耐食性の向上、 N i は靱性の向上、 C oは強度の 向上にそれぞれ効果があり、 0. 1 %以下では効果が不十分であり 、 2. 0 %を超えて添加する場合には粗大な金属間化合物の析出な いしは粒界への偏析に起因する脆化が避けられないため、 添加範囲 を 0. 1 %〜 2. 0 %と した。
P, S , 0は本発明鋼においては不純物と して混入してく るが、 本発明の効果を発揮する上で、 P, Sは強度を低下させ、 0は酸化 物と して析出して靱性を低下させるのでそれぞれ上限値を 0. 0 3 %, 0. 0 1 %, 0. 0 2 %と した。
尚、 本発明はク リ ープ破断強度および耐 H A Z軟化特性の優れた 、 溶接後熱処理を省略可能なフ ェライ ト系耐熱鋼を提供するもので あるので、 本発明鋼は使用目的に応じた製造方法、 および熱処理を 施すことが可能であり、 また本発明の効果を何等妨げるものではな い。
ただし、 本発明の請求項 1, 2に記載の組成を有する鋼材を、 通 常の製造工程によって製造する場合、 特に T i N, Z r, B Nの析
出状態を制御する必要があり、 本発明の請求項 3 および 4 に記載の 製造方法をふまえなければ、 ク リ ープ破断強度および耐 H A Z軟化 特性の優れた、 溶接後熱処理を省略可能なフェライ ト系耐熱鋼を製 造することが出来ない。 請求項 3 および 4 に記載した製造方法は以 下に記述する実験によって決定した。
本願発明の請求項 1, 2 に記載した化学成分を有する鋼を真空溶 解あるいは電気炉にて製造し、 2 0 kg, 5 0 kg, 3 0 0 kg, 2 ton および 1 0 ton の鋼塊に铸造した。 铸造した鋼はさ らに表面のスケ —ルを除去した後に 1 1 5 0 °Cに加熱して、 8 5 0, 9 2 0 , 9 5 0, 9 8 0, 1 0 2 0 , 1 0 5 0, 1 1 0 0 °Cの各温度で熱間圧延 あるいは熱間鍛造を終了して 1 5, 5 0 , 1 0 0 mmの厚みを有する 鋼片と した。 加工後は冷却速度を 1 0 °C/hrから最高 1 5 0 0 °C/ hrまでの間で変化させて、 熱間加工後の冷却条件の影響を見た。 さ らに、 これら鋼片は 7 0 0 °Cで 5 時間の脱水素焼鈍を施した後に、 9 2 0 から 1 0 5 0 °Cで固溶化熱処理を 1 0分〜 1 8 0分施し、 そ の後水焼入れ、 油焼入れ、 強制空冷ないしは放冷してペイナイ トぁ るいはべイナィ トーフ ヱライ 卜組織と し、 7 0 0 °Cに再加熱して 3 0分〜 1 2 0分の焼戻し処理を実施した。 この後、 鋼片から分析資 料を採取して酸溶解により析出物残渣を抽出して、 鋼中に析出した T i, Z r, N, Bの量を分析した。 さ らに、 電子顕微鏡観察用の 薄膜試験片を作成し、 析出物の形態分析を実施した。 これら析出物 の形態と組成がク リ ープ特性に与える影響を調査するためにク リ一 プ破断試験片を採取し、 1 0 0 0 0 時間までのク リ ーブ破断試験を 5 5 0 °Cと 6 0 0 °Cで実施して、 L a r s o n— M i 1 l e r法に よる 5 5 0 °C、 1 0万時間の推定ク リ ープ破断強度を参考に、 目視 で直線外挿して求め、 高温強度の代表値と して用いた。
鋼片からはさ らに、 厚みに応じた溶接試験片 ( 4 5度レ型開先)
を加工して、 共金系溶接材料にて溶接し、 図 1 に示すごと く 、 溶接 線方向 1 と直角の方向 2からク リ一プ破断試験片 3を溶接部を試験 片の平行部内に含むように採取して、 その継ぎ手部ク リ ープ破断強 度を測定し、 母材のク リ 一プ破断強度との比較で耐 H A Z軟化性を 評価した。 ク リ ープ破断試験片の平行部測定長は 3 0 mm、 直径は 6 ππηである。 溶接入熱は 1 5 0 0 0 J / cm2 であった。 また、 溶接金 属、 H A Zならびに母材の硬度を測定し、 溶接後熱処理の省略可否 を検討した。
図 2 は、 鋼中における (T i N%+ Z r N%) / ( B N %) の値 と 5 5 0 °Cにおける 1 0万時間推定ク リープ破断強度の関係を示す 図である。 図 2よ り (T i N% + Z r N%) / ( B N%) の値を 1 〜 1 0 0 に制御するこ とで、 安定してク リ ープ破断強度を、 本願発 明のフ ヱライ ト系耐熱鋼が目標とする 1 0 O MPa 以上にすることが 可能となることがわかる。 図 3 は、 熱間圧延あるいは鍛造の仕上げ
(終了) 温度と (T i N%+ Z r N%) / (B N%) の値の関係で ある。 (T i N%+ Z r N%) / ( B N %) 値を 1〜 1 0 0 とする ためには熱間圧延あるいは鍛造の仕上げ (終了) 温度を 9 0 0〜 1
0 0 0 °Cに制御しなければならないことが判る。 図 4 は鋼中に析出 した B Nの、 電子顕微鏡観察に基づく平均粒径と熱間加工後の冷却 速度の関係である。 析出物径はク リ ープ破断強度に影響を与えるが 、 本発明に記載の化学組成を有する鋼ではその粒径は 1 m以下で なければク リ一プ破断強度向上に効果がない。 図 4では B Nの平均 粒径が 1 以下となるためには、 加工後の冷却速度が 5 0 °C/hr 以上でなければならないことを意味している。 ただし、 冷却速度が
1 0 0 0 °Cを超える場合、 確かに B Nの粒径は小さいが、 急激な冷 却によって生じたベイナイ ト変態時の体積変化のために材料が全て 焼き割れを生じ、 多数の亀裂を鋼片に生じた。 従って、 鋼片の健全
性を維持する上で、 冷却速度上限を 1 0 0 0 °C/hrと決定した。 図 5 は熱間圧延あるいは熱間緞造の加工開始時の鋼片断面積と加工終 了時の鋼片断面積の比を百分率で示した、 いわゆる加工比と、 B N の平均粒径の関係を示す図である。 析出物の微細分散には析出サイ 卜が十分に存在することが必要であって、 加工はそのサイ ト となる 転位を導入することに貢献する。 図 5では加工比が 5 0 %以上でな いと仮に加工後の冷却速度が大きい場合でも B Nの微細分散は達成 できないことを示している。
以上の実験データから、 本発明に記載の鋼の組成を有し、 鋼中に 存在する T i Nと B Nの重量比を (T i N+ Z r N%) / ( B N % ) の値で 1 〜 1 0 0 に制御するためには、 熱間で圧延あるいは鍛造 する際に、 圧延加工あるいは鍛造加工の加工比を 5 0 %以上と し、 9 0 0〜 1 0 0 0 °Cの間で加工を終了し、 直後の冷却速度を、 ペイ ナイ ト変態終了温度までの間、 5 0 °C/hr以上 1 0 0 0 °C/hr以下 とすることが必須である。 この時 B Nの析出物平均粒径は 1 / m以 下となって、 5 5 0 °Cにおける鋼の推定ク リ ープ破断強度は安定し て 1 0 0 MPa 以上となるこ とを見いだし、 製造方法を決定した。 こ れらの製造条件を踏まえなければ、 仮に本発明の鋼の化学組成を有 していても、 高ク リ ープ破断強度、 耐 H A Z軟化性さ らには溶接後 熱処理省略可能な鋼とはならないこともまた明白である。
本発明鋼の溶解方法は全く制限がなく 、 転炉、 誘導加熱炉、 ァ一 ク溶解炉、 電気炉等、 鋼の化学成分とコス トを勘案して使用プロセ スを決定すればよい。 また、 A r気泡吹き込み装置やアーク加熱も し く はプラズマ加熱機を装備した L Fあるいは真空脱ガス処理装置 を適用することも有益であって、 本発明の効果を高めるものである 。 また、 後続する圧延工程あるいは鋼管を製造するに当たっては製 管圧延工程において、 T i N, Z r N, B N以外の析出物の均一再
99/ 1226 固溶を目的とする固溶化熱処理が必須である。 それ以外の製造工程 、 具体的には圧延、 熱処理、 製管、 溶接、 切断、 検査等の本発明に よって鋼または鋼製品を製造する上で必要または有用と考えられる あらゆる製造工程は、 これを適用することができて、 本発明の効果 を何ら妨げる ものではない。
特に、 鋼管の製造工程と しては、 本願発明の製造工程を必ず含む 条件の下に、 丸ビレツ トあるいは角ビレツ 卜へ加工した後に、 熱間 押し出し、 あるいは種々のシ一ムレス圧延法によってシームレスパ イブおよびチューブに加工する方法、 薄板に熱間圧延、 冷間圧延し た後に電気抵抗溶接によって電縫鋼管とする方法、 および T I G , M I G, S A W , L A S E R , E B溶接を単独で、 あるいは併用 し て溶接鋼管とする方法が適用できて、 さ らには以上の各方法の後に 熱間あるいは温間で S R (絞り圧延) ないしは定形圧延、 さ らには 各種矯正工程を追加実施することも可能であり、 本発明鋼の適用寸 法範囲を拡大することが可能である。
本発明鋼は更に、 厚板および薄板の形で提供するこ と も可能であ り、 必要とされる熱処理を施した板を用いて種々の耐熱材料の形状 で使用するこ とが可能であって、 本発明の効果に何等影響を与えな い。
加えて更に、 H I P (熱間等方静水圧加圧成形装置) 、 C I P ( 冷間等方静水圧加圧成形装置) 、 焼結等の粉末治金法を適用するこ とも可能であって、 成形処理後に必須の熱処理を加えて各種形状の 製品とすることができる。
以上の鋼管、 板、 各種形状の耐熱部材にはそれぞれ目的、 用途に 応じて各種熱処理を施すことが可能であって、 また本発明の効果を 十分に発揮する上で重要である。
通常は焼準 (固溶化熱処理) +焼き戻し工程を経て製品とする場
合が多いが、 これに加えて再焼き戻し、 再焼準工程を単独で、 ある いは併用 して施すことが可能であり、 また有用である。 ただし、 熱 間加工の停止温度とその後の冷却速度管理は必須である。
窒素あるいは炭素含有量が比較的高い場合および C 0 , N i等の オーステナイ ト安定化元素を多く含有する場合、 C r当量値が低く なる場合には残留オーステナイ ト相を回避するべく 0 °C以下に冷却 する、 いわゆる深冷処理を適用する事が出来て、 本発明鋼の機械的 特性の十分な発現に有効である。
材料特性の十分な発現に必要な範囲で、 以上の工程は各々の工程 を複数回繰り返して適用すること もまた可能であって、 本発明の効 果に何等影響を与える ものではない。
以上のような工程を適宜選択して、 本発明鋼の製造プロセスに適 用すればよい。 図面の簡単な説明
図 1 は、 本発明に係る溶接継手と開先形状およびク リ 一プ破断試 験片形状を示す図である。
図 2 は、 本発明に係る 1 0万時間推定ク リ 一プ破断強度 C R Sと (T i N%+ Z r N%) Z ( B N %) の値の関係を示す図である。 図 3 は、 本発明に係る熱間圧延終了温度または熱間鍛造終了温度 と (T i N%+ Z r N%) / (B N%) の値の関係を示す図である o
図 4 は、 本発明に係る熱間圧延または鍛造後から B f 点までの平 均冷却速度 (°C/hr) と B Nの平均粒径との関係を示す図である。 図 5 は、 本発明に係る B Nの平均粒径と熱間加工率の関係を示す 図である。
図 6 は、 本実施例の鋼管試験片および鋼板試験片とク リ 一プ試験
採取要領を示す図である。
図 Ί は、 本実施例の 5 5 0 °Cのク リ一プ破断データと外揷直線お よび従来の 1〜 3 % C r鋼のク リ ーブ破断データ群の領域の比較図 である。
図 8 は、 本実施例の周方向溶接済み鋼管試験片からのク リ ープ試 験片採取要領を示す図である。
図 9 は、 本実施例の鋼中炭素含有量と C R Sの関係を示す図であ る o
図 1 0 は、 本実施例の鋼中炭素含有量と溶接ままのボン ドのビッ カース硬度の関係を示す図である。 発明を実施するための最良の形態
次に本発明を実施するための最良な形態を実施例に基づいて説明 する。
〔実施例〕
〈実施例 1 〉
本発明の実施例と して、 表 1 および表 2 に示す、 本願発明の請求 項 1 および 2 の組成を有する鋼それぞれ 2 0 ton , 2 ton , 3 0 0 kg, 1 0 0 kg, 5 0 kgを通常の高炉銑—転炉吹鍊法、 V I M, E F あるいは実験室真空溶解設備を用いて溶製し、 アーク再加熱設備を 付帯する A r吹き込み可能な L F設備も し く は同等能力を付帯する 小型再現試験設備によって精練し、 铸片と した。
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(表 1 のつづき)
記号 Zr Cu Ni Co P S 0 CRS(MPa) D-CRS(MPa) TZB(¾) 溶接ボン ドの硬度(Hv)
1 0.287 0.009 0.002 0.014 130 8 20.4 174
2 0.057 0.025 0.007 0.013 130 1 3.7 197
ト I
3 0.019 0.006 0.004 0.009 132 6 16.2 167
4 0.412 0.026 0.003 0.001 134 2 16.8 283
5 0.283 0.019 0.009 0.002 127 6 42.9 227
6 0.189 0.017 0.003 0.004 137 1 86.6 253
7 0.497 0.015 0.007 0.008 145 7 20.9 212
8 0.208 0.017 0.002 0.009 122 4 25.4 160
9 0.377 0. Oil 0.008 0.015 131 1 10.8 222
10 0.262 0.023 0.003 0.013 127 2 29.6 214
11 0.306 0.44 0.030 0.009 0.012 125 6 90.0 287
12 0.291 1.21 0.026 0.006 0.016 132 4 20.2 210
13 0.071 0.21 0.022 0.005 0.013 134 3 5.9 259
14 0.402 1.18 0.023 0.010 0.010 127 6 51.1 264
15 0.263 0.46 0.016 0.003 0.007 125 8 30.2 209
16 0.289 1.52 0.002 0.015 128 7 26.4 260
17 0.142 1.91 0.028 0.002 0.009 128 7 74.8 188
18 0.21 0.007 0.002 0.008 127 7 81.3 166
19 0.278 0.36 0.025 0.009 0.010 134 7 24.8 278
20 0.249 0.42 0.33 0.011 0.005 0.016 139 5 8.9 266
21 0.249 0.48 1.12 0.023 0.005 0.017 134 5 30.1 274
22 1.22 1.11 0.023 0.006 0.017 121 6 42.6 267
23 0.299 0.44 1. 3 0.60 0.010 0.003 0.007 138 4 42.3 244
得られた铸片は熱間圧延にて板厚 5 O mmの厚板、 および 1 2 nunの 薄板とするか、 も しく は熱間鍛造によつて丸ビレッ 卜に加工し、 熱 間押出にて外径 7 4 mm, 肉厚 1 0 mmのチューブを、 あるいはシーム レス圧延にて外径 3 8 0 mm. 肉厚 5 0 mmのパイプをそれぞれ製造し た。 さ らに薄板は成形加工して電縫溶接し、 外径 1 0 8 mm、 肉厚 1 2龍の電縫鋼管と した。 熱間での加工比は常に 5 0 %以上であった 。 熱間圧延、 熱間鍛造、 熱間押出ないしはシーム レス圧延の加工終 了温度は全て 9 0 0〜 1 0 0 0 °Cの間となるよう に制御した。 その 後の冷却もまた、 ベイナイ ト変態終了温度 B f 点まで、 板厚に応じ て 5 0 °CZhr〜 1 0 0 0 °C/hrになるように設定し、 管理した。 全ての板および管は固溶化熱処理を施し、 さ らに 7 0 0でで 1 時 間焼き戻し処理を実施した。
扳は図 1 と全く 同様の開先加工の後に、 管は図 1 と同様の開先を 管端に、 円周方向に加工して、 管どう しの円周継手溶接を T I Gあ るいは S A W溶接にて実施した。 溶接部はいずれも 7 0 0 °Cで 4 時 間、 局部的に軟化焼鈍 ( PWH T) を実施した。
母材のク リ ープ特性は図 6 に示すよう に鋼管 5 の軸方向 6 と平行 にあるいは板材 7 の圧延方向 8 と平行に、 溶接部あるいは溶接熱影 響部以外の部位から直径 6 mmのク リ ープ試験片 3 を切り出し、 5 5 0 °Cにてク リ ープ破断強度を測定し、 得られたデータを目視にて直 線外挿し、 1 0万時間の推定ク リ ープ破断強度 C R S (MPa)と した o
図 7 には母材のク リ ープ破断強度の 1 万時間までの測定結果を、 1 0万時間推定破断強度の外揷直線と一緒に示した。 本発明鋼の高 温ク リ ープ破断強度は従来の低合金鋼、 l ~ 3 % C r — 0. 5 〜 1 % M 0鋼に比較して高い事が判る。
溶接部のク リ 一プ特性は、 図 1 または図 8 に示すように、 溶接線
9 と直角方向 1 0から直径 6議のク リ ーブ破断試験片 3を切り出し 、 5 5 0 °Cにおける破断強度測定結果を 1 0万時間まで直線外揷し て母材のク リ ープ特性と比較評価した。 以降、 「ク リ一プ破断強度 」 とは、 本発明の記述上の便宜を図るため、 5 5 0 °Cにおける 1 0 万時間の直線外揷推定破断強度を意味する ものとする。 母材と溶接 部のク リ ーブ直線外揷破断強度推定値の差 D— C R S (MPa)をもつ て、 溶接部の 「H A Z軟化」 抵抗の指標と した。 D— C R Sの値は 試験片の圧延方向に対するク リ一プ破断試験片採取方向に若干影響 される ものの、 予備実験にてその影響が 5 MPa 以内であることが経 験的に判明している。 従って、 D— C R Sが 1 0 MPa 以下である場 合には材料の耐 H A Z軟化特性が極めて良好であることを意味する 鋼中の窒化物は 1 0 mm立方の試験片を採取し、 酸溶解法で抽出残 渣し、 T i, Z r, N, N b, V量を湿式分析した後に、 T i N, Z r N, N b N, V Nと しての析出量を検量線および熱力学計算に 基づいて解析決定した。 この残余の析出窒素量が Bと結合している と考え、 理論的に B Nの析出量を求めた。 なお、 この方法で求めた B N析出量は 1 0 %以内の誤差で、 実際と合致するこ とは、 検量線 試料を前もって作成し、 本発明鋼において確認してある。 ここで得 られた T i N, Z r N析出量と B Nの析出量の質量比を百分率で表 して、 〔 (T i N%+ Z r N%) / (B N%) 〕 値と した。 以降、 この値を便宜上、 T Z B値と称する。 評価基準は実験結果に基づい て、 1 ~ 1 0 0の範囲にあるこ とである。
溶接後の後熱処理 (PWH T) が必要であるかどうかは、 溶接継 ぎ手のボン ドの硬度を測定して決定した。 本発明鋼に記載の組成で は、 ベイナイ ト組織が主体の構造を呈するが、 この場合、 ボン ドは V i c k e r s硬度で 3 0 0以下であることが望ま しいことは経験
的に明らかとなっている。 そこで、 このボン ドの V i c k e r s硬 度 3 0 0をもってしきい値と し、 硬度が 3 0 0以上であれば PWH T必須と見て、 P W H Tの省略には適さない鋼であると判定した。 3 0 0未満の場合は P WH Tの省略が可能と判断した。
表 1 および 2 には化学組成とともに本願発明鋼の評価結果を併せ て示した。 C R Sと T Z Bの関係は図 2で既に示したとおりである o
比較のために、 化学成分において本発明のいずれにも該当しない 鋼と、 製造方法において本発明に該当しない鋼を同様の方法で評価 した。 化学成分と評価結果である C R S , D— C R S, T Z B、 ボ ン ド硬度について表 3および 4 に示した。
記号 C Si Mn Cr Mo W V Nb N B Ti
24 0.072 0.41 1.48 1.77 0.47 0.36 0.851 0.025 0.002 0.0032 0.250
25 0.035 0.68 1.10 0.61 0.62 0.49 0.999 0.302 0.005 0.0010 0.621
26 0.039 0.73 1.03 1.12 1.46 0.92 0.373 0.343 0.039 0.0045 0.345
27 0.016 0.14 0.42 1.77 1.23 2.88 0.428 0.275 0.010 0.0073 無添加
28 0.038 0.45 0.33 1.01 0.25 1.51 0.029 0.125 0.015 0.0039 0.073
29 0.016 0.44 0.66 1.70 1.42 0.26 0.172 0.285 0.056 0.0014 0.476
30 0.035 0.54 0.72 2.76 0.68 1.39 0.402 0.268 0.051 0.0068 0.265
31 0.024 0.23 1.38 2.47 0.75 0.08 0.074 0.145 0.012 0.0044 0.383
32 0.036 0.05 0.29 1.52 0.17 3.33 0.787 0.300 0.050 0.0072 0.329
CRS:550°Cでの 10万時間の推定ク リ プ破断強度
D- CRS:550°Cでの 10万時間推定ク リ プ破断強度における母材と HAZ のク リーブ破断強度差 TZB:[(Ti!¾+Zr!¾)ABN«]の値
:寸/ls一:
98ΐ 821 9 9i 900 ·0 S00 εζο ·ο 81 'ΐ 6 Ό Ό ZZZ ζζ
S2I S 08 9Ϊ0Ό 600 300 Ό Qfl ζ\ ·0 92 'ΐ 600 ·0 ιε
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89 91 610.0 W0 ·0 LZO Ό ΐ9·0 η ·ο 09 ·Ζ ZZV ·0 6Ζ
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SG2 L 69 800 Ό 900 ειο'ο 09 ·0 86 ·0 88 088 ·0 QZ ζζι ε 丄 8 600 Ό m ·ο 100 Ό 09 Ό ΐ OS'! οεε
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図 9 は本願発明鋼と比較鋼の鋼中炭素濃度と 1 0万時間推定ク リ —プ破断強度 C R S との関係を示している。 炭素含有量の低下とと もに、 比較鋼では 1 0万時間推定ク リ 一プ破断強度の低下が著しい が、 本願発明鋼では B Nの析出強化によってこの低下が少ない。 さ らに、 図 1 0では鋼中炭素量と溶接後のボン ド硬度のなけいを示し ているが、 炭素濃度の低い本願発明鋼は常にボン ドの硬度が低いこ とが明らかである。 さ らに、 表 1 および 2 に示したとおり、 本願発 明鋼は T i N, Z r Nの積極的利用と、 9 0 0〜 1 0 0 0 °Cにおけ る熱間加工終了温度規制によって耐 H A Z軟化性に優れ、 D— C R Sは常に 1 0 MPa 未満にしかならない事が明らかである。
表 3 および 4 に記載の比較鋼のう ち、 第 2 4番鋼は Cが低減され ておらず、 本願発明鋼とは化学組成が異なり、 溶接後のボン ド靱性 力 3 0 0 より高く 、 P W H Tを省略できない鋼となってしま った例 、 第 2 5番鋼および 2 6番鋼はそれぞれ T i, Z rを過剰添加した ために鋼中の T i N, Z r N析出量が増大し、 その分 B N析出量が 減少し、 結果的に T Z B値が大き く なつて、 結果と して B Nによる 析出強度は失われ、 T i N, Z r Nも粗大化して強化には寄与せず 、 母材のク リ ープ破断強度が低下した例、 2 7番鋼および 2 8番鋼 は何れも T i あるいは Z rを無添加と したため、 今度は逆に B Nの 析出が増加し、 B Nは粗大化してク リ ーブ破断強度向上に寄与しな く なり、 母材のク リ一プ破断強度が低下した例、 第 2 9番鋼は C u を過剰に添加したため、 ク リ ープ破断強度が低下し、 耐 H A Z軟化 性も低下した例、 第 3 0番鋼は熱間圧延終了温度を 8 5 0でと した 鋼で、 このため T Z B値は 1 未満の値となり、 母材のク リ ープ破断 強度が低下した例、 第 3 1 番鋼、 第 3 2番鋼は熱間鍛造終了温度が 1 0 5 0 °Cおよび 1 0 8 0 °Cであったために、 T Z B値力く 1 0 0 を 超え、 この結果 B N析出強化を有効に活用できず、 母材強度が低下
した例である。 産業上の利用分野
本発明は耐 H A Z軟化特性に優れ、 5 0 0 °C以上の高温で高ク リ ープ強度、 高耐 H A Z軟化性を有し、 かつ溶接後熱処理の省略可能 なフ ェ ライ ト系耐熱鋼の提供が可能になる。