JPWO2020255963A1 - チタン材及び機器 - Google Patents

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Abstract

本発明に係るチタン材は、複数の凹部が存在する表面部分を有するチタン材であって、前記表面部分における前記凹部の合計の面積率が30%以上、70%以下であり、前記凹部の円相当径の平均値が50μm以上、300μm以下であり、前記凹部の間隔の平均値に対する前記凹部の間隔の標準偏差の比が0.35以上である。

Description

本発明は、チタン材及び機器に関する。本願は、2019年6月20日に、日本に出願された特願2019−114453号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
チタンは、軽量で、耐食性に優れた材料であり、電子機器等の機器筐体、航空機、化学プラント、建築物の外装品、装飾品、民生品など、様々な用途に利用されている。チタンは、独特の質感を有することから、特に、意匠性が求められる電子機器等の機器筐体として、有用である。
ところで、電子機器、特に携帯機器の機器筐体は、人の手が触れやすい環境において使用される。機器筐体において人の手が触れた部位には、皮脂や、手の汚れに由来する指紋が付着する。指紋が付着した部位は、他の部位と比較して変色したように見え、機器筐体の外観の意匠性が損なわれる場合がある。
特許文献1においては、中心線平均粗さ(Ra)が0.5μm以上で、かつ、表面粗さのパワースペクトル解析で10μm以下の波長領域における最大の振幅が0.02μm以下である、指紋の目立ちにくい金属表面を有する金属板が提案されている。特許文献2においては、ステンレス鋼板に対しダルロールを用いて被圧延鋼板の板厚が減少しないように1パスの軽圧延を施す技術が提案されている。
日本国特開平11−226606号公報 日本国特開2012−130966号公報
実際の機器等におけるチタンの使用状況を鑑みると、意匠性を維持する上で、付着した指紋の目立ちにくさが重要である。特に、意匠性の観点から、観察する角度によって、指紋が付着した部位が他の部位と比較して変色したように見えないことが望まれる。
特許文献2においては、ダルロールの凸部が転写された凹部を有し、凹部以外の未変形のフラット部分を有するステンレス鋼板及び溶融めっき鋼板が開示されている。しかしながら、ステンレス鋼板又は溶融めっき鋼板とチタン鋼板とでは、結晶構造及びヤング率が異なる。よって、特許文献2に記載の製造方法をそのままチタン鋼板に適用し同様の結果を得ることは難しい。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、観察する角度を変えても付着した指紋が目立ちにくい、チタン材及びこれを備えた機器を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明者が鋭意検討した結果、複数の凹部が分散して存在する表面部分において、凹部の合計の面積率に加えて、凹部の間隔のばらつきが指紋の目立ちにくさに関与していることを見出した。表面部分に複数の凹部が一定の間隔で均一に分布している場合に比べて、表面部分に存在する凹部の間隔が均一でない方が、観察する角度を変えた場合に、付着した指紋が目立ちにくくなると考えられる。
上記知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。
(1) 本発明の第1の態様は、複数の凹部が存在する表面部分を有するチタン材であって、
前記表面部分における前記凹部の合計の面積率が30.0%以上、70.0%以下であり、
前記凹部の間隔の平均値が50μm以上、300μm以下であり、前記凹部の間隔の平均値に対する前記凹部の間隔の標準偏差の比が0.35以上である、チタン材である。
(2) 上記(1)に記載のチタン材は、前記凹部の深さの平均値が2.0μm以上、6.0μm以下であり、前記凹部の深さの平均値に対する前記凹部の深さの標準偏差の比が0.35以上であってもよい。
(3) 上記(1)又は(2)に記載のチタン材は、機器筐体用チタン材であってもよい。
(4) 本発明の第2の態様は、上記(1)〜(3)の何れかに記載のチタン材を備える、機器である。
本発明に係る上記態様によれば、観察する角度を変えても付着した指紋が目立ちにくい、チタン材及びこれを備えた機器を提供することが可能となる。
本実施形態に係るチタン材の表面部分の凹部を説明する図である。
以下に、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明する。
1.チタン材
本実施形態に係るチタン材について説明する。本実施形態に係るチタン材は、後述する性状の表面部分を有するものである。この表面部分には、例えば自然酸化などに起因する酸化膜が形成されていてもよい。本実施形態に係るチタン材は、例えば、冷間圧延、焼鈍を施して製造されたチタン基材に、後述する第1の工程(粗面化)と、第2の工程(凸部の頂部の平坦化)と、を施す製造方法によって得られる。
1.1 表面部分
本実施形態に係るチタン材が有する表面部分について説明する。本実施形態に係るチタン材は、複数の凹部が分散して存在する表面部分を有している。詳細には、本実施形態に係るチタン材の表面部分は、複数の凹部と、当該複数の凹部の間に存在する平坦部と、を有する。本実施形態に係るチタン材おいて、チタン材の「表面部分」は、チタン材における主たる面、具体的にはチタン材における比較的大きな割合、例えば10%以上又は20%以上の表面積を占める面である。例えば、チタン板の場合、表面部分は、チタン板を構成する表面及び裏面であり、本実施形態においては、特段の断りのない限り、端面及び断面はチタン材の「面」から除外されている。以下は、チタン材の同一の表面部分の説明である。
図1は、触針式の表面粗さ測定機によって得られた2次元の凹凸の形状(プロファイル)の一部を模式的に示した図である。図1は、本実施形態に係るチタン材の表面部分の厚み方向の断面形状の一例を模式的に示している。図1に示すように、本実施形態に係るチタン材の表面部分1は、基準面2となる平坦部と、基準面2に対して谷となる複数の凹部3を有している。凹部3の深さHは基準面2に対する凹部3の深さの最大値である。凹部3の間隔Lは、隣り合う凹部3の深さが最大値となる部位の水平方向(基準面2と平行な方向)の間隔である。
(凹部の合計の面積率)
本実施形態に係るチタン材は、表面部分1において、分散して存在する複数の凹部3の合計の面積率が30.0%以上、70.0%以下である。表面部分1において指紋が付着しない凹部3の合計の面積率が30.0%以上であると、指紋が目立ちにくくなる。凹部3の合計の面積率は、好ましくは35.0%以上であり、より好ましくは40.0%以上である。一方、凹部3の面積率が増加すると、平坦部が狭くなって凹部3の間隔のばらつきが小さくなり、角度を変えて観察した場合に指紋が目立ちやすくなる。したがって、角度を変えて表面部分1を観察しても指紋が目立ちにくいようにするという観点から、凹部3の合計の面積率は70.0%以下である。凹部3の合計の面積率は、好ましくは65.0%以下であり、より好ましくは60.0%以下である。
本実施形態において凹部3の合計の面積率は、非接触式の3次元形状測定装置(株式会社キーエンス製:VR−3100)を用いて、倍率を120倍として測定を行い、得られたデータを解析ソフト(株式会社キーエンス製:VA−H1A)で解析して求められる。具体的には、凹部3の合計の面積率は、上記3次元形状測定装置及び解析ソフトを用いて以下の方法で解析して求められる。測定に用いた試験片寸法は長さ50mm、幅25mm、厚さ0.4mmである。前記試験片の表面部分において前記試験片の長さ25mm、幅12.5mmの位置を中心とし、120倍の倍率で前記3次元形状測定装置を用いて、長さ2.5mm、幅1.9mmの範囲を測定し、凹部3の合計の面積を測定総面積で除して凹部3の合計の面積率を求める。このとき、測定範囲における試験片の湾曲を、解析ソフト(株式会社キーエンス製:VA−H1A)を用いて補正する。湾曲の補正は長さ方向と幅方向の両方向で実施する。詳細には、試験片の長さ方向断面における基準面に相当する線、及び試験片の幅方向断面における基準面に相当する線が直線となるように、上記3次元形状測定装置により得られた3次元形状データが上記解析ソフトによって補正される。補正された3次元形状データを用いて、凹部3の合計の面積率が求められる。なお、試験片の長さ方向断面及び幅方向断面は、断面に凹部3が含まれないように選択される。
(凹部の間隔の平均値)
本実施形態に係るチタン材の表面部分1に存在する複数の凹部3の間隔Lの平均値が小さい場合は、平坦部が狭くなって凹部3の合計の面積率が高くなり、凹部3の間隔Lのばらつきも小さくなる。角度を変えて表面部分を観察した場合に指紋を目立ちにくくするために、凹部3の間隔Lの平均値は50μm以上である。凹部3の間隔Lの平均値は、好ましくは60μm以上であり、より好ましくは70μm以上である。一方、凹部3の間隔Lの平均値が大きくなると、指紋が付着する平坦部の面積が広くなる。本実施形態では、凹部3の間隔Lの平均値は300μm以下であり、これにより、指紋を目立ちにくくすることができる。凹部3の間隔Lの平均値は、好ましくは250μm以下であり、より好ましくは200μm以下である。
(凹部の間隔の標準偏差/凹部の間隔の平均値)
本実施形態に係るチタン材は、表面部分1に存在する凹部3の間隔Lが均質であると、観察する角度によっては指紋が目立つことから、凹部3の間隔Lのばらつきが重要である。
本発明者らの検討の結果、理由は定かではないが、凹部3の間隔Lの平均値に対する凹部3の間隔Lの標準偏差の比(凹部3の間隔Lの標準偏差/凹部3の間隔Lの平均値)が0.35以上であると、観察する角度を変えても表面部分1に付着した指紋が目立ちにくくなることがわかった。表面部分1に分散して存在する複数の各凹部3の大きさや間隔Lが適度にばらつきを有することで、指紋が適度に分断されて付着し、観察する角度を変えても、特定の角度で平坦部(基準面2)に付着した指紋が目立ちにくくなると考えられる。このような知見に基づいて、凹部3の間隔Lの標準偏差/凹部3の間隔Lの平均値は0.35以上である。凹部3の間隔Lの標準偏差/凹部3の間隔Lの平均値は、好ましくは0.40以上であり、より好ましくは0.50以上である。凹部3の間隔Lの標準偏差/凹部3の間隔Lの平均値の上限は限定されない。そのため、凹部3の間隔Lの標準偏差/凹部3の間隔Lの平均値は、0.80以下であってよく、0.70以下であってもよい。
凹部3の間隔Lの平均値及び標準偏差は、チタン材の表面に凹凸を付与する条件、及び、チタン材の表面に生じる凸部の高さを調整する条件によって調整される。チタン材の表面に凹凸を付与する条件は、例えば、ダルロールの表面粗さ、ブラスト処理に使用する投射材の平均粒径等である。チタン材の表面に生じた凸部の高さを調整する条件は、例えば、スキンパス圧延の条件、研磨の条件等である。
本実施形態において凹部3の間隔Lの平均値及び標準偏差は、触針式の表面粗さ測定機(株式会社東京精密製、サーフコム480B)によって得られた2次元の凹凸の形状(プロファイル)を用いて測定される。測定長さは8mmであり、測定速度は0.6mm/秒である。プロファイルは、カットオフ値を0.8mm、縦倍率を1000倍、横倍率を50倍として表示される。得られたプロファイルの複数の凸部を繋ぐ線分を基準として、単位をμmとした凹部3の間隔Lが測定され、その平均値及び標準偏差が求められる。凹部3の間隔Lは、隣り合う凹部3の深さが最大値となる部位の水平方向(基準面2と平行な方向)の間隔であり、平均値は加算平均である。図1に示すように、基準面2は、複数の凸部の頂部(平坦部)を繋ぐ面である。
(凹部の深さの平均値)
本実施形態に係るチタン材の表面部分に存在する複数の凹部3の深さHの平均値は、指紋の視認性やチタン材の表面の明るさ、質感などに影響を及ぼす。凹部3の深さHの平均値は、適宜、調整されればよい。凹部3の深さHの平均値は、好ましくは2.0μm以上、6.0μm以下である。凹部3の深さHの平均値は、チタン材の表面に凹凸を付与する条件、例えば、ダルロールの表面粗さ、ブラスト処理に使用する投射材の平均粒径等によって調整される。凹部3の深さHの平均値が2.0μm以上であると、指紋が目立ちにくくなる。凹部3の深さHの平均値は、より好ましくは3.0μm以上である。凹部3の深さHの平均値は、チタン材の表面の明るさ、質感の観点から、より好ましくは6.0μm以下である。
(凹部の深さの標準偏差/凹部の深さの平均値)
本実施形態に係るチタン材の表面部分1に存在する凹部3の深さHの平均値に対する凹部3の深さHの標準偏差の比は、好ましくは0.35以上である。
本実施形態に係るチタン材は、表面部分1に存在する凹部3の深さHも適度にばらつきを有することで、指紋が適度に分断されて付着する。そのため、特定の角度で平坦部に付着した指紋がより目立ち難くなると考えられる。本発明者らの検討の結果、理由は定かではないが、凹部3の深さHの平均値に対する凹部3の深さHの標準偏差の比(凹部3の深さHの標準偏差/凹部3の深さHの平均値)が0.35以上であると、観察する角度を変えても表面部分1に付着した指紋がより目立ちにくくなることがわかった。凹部3の深さHの標準偏差/凹部3の深さHの平均値は、好ましくは0.35以上であり、より好ましくは0.40以上であり、より一層好ましくは0.50以上である。凹部3の深さHの標準偏差/凹部3の深さHの平均値の上限は限定されず、0.80以下であってよく、0.70以下であってもよい。
本実施形態において凹部3の深さHの平均値及び標準偏差は、凹部3の間隔Lの平均値及び標準偏差と同様、触針式の表面粗さ測定機によって得られた2次元のプロファイルを用いて測定される。単位をμmとした凹部3の深さHは基準面2に対する凹部3の深さの最大値であり、平均値は加算平均である。上述のように、基準面2は、複数の凸部の頂部を繋ぐ面である。
(光沢度)
チタン材の表面部分における光沢度は、限定されないが、入射角45度の光沢度が、160GU超、350GU以下であることが好ましい。光沢度が160GU超であるチタン材の表面部分のうち、凸部の頂部付近には平坦な面(平坦部)が比較的多く存在している。このようなチタン材の表面部分の平坦な面に指紋が付着した場合、拭き取りにより容易に指紋を除去することが可能である。また、光沢度が160GU超であると、優れた金属光沢が得られる。光沢度は、より好ましくは200GU以上である。光沢度が350GU以下であると、チタン材の表面部分、特に凹凸部の頂部付近に平坦な面(平坦部)が過度に存在することが防止される。これにより、指紋が付着する平坦な面が少なくなり、指紋がより目立ちにくくなる。光沢度は、より好ましくは300GU以下である。
光沢度は、例えば、後述するチタン材の製造方法において、第1の工程及び第2の工程を適宜変更して調整される。例えば、第1の工程で投射材にジルコニアが用いられてブラスト処理が行われる場合、光沢度は低くなる傾向がある。
チタン材の表面部分における光沢度は、例えばJIS Z 8741:1997に準じて測定される。
本実施形態に係るチタン材は、少なくとも一部に、大きさが適度のばらついた複数の凹部が分散して存在する表面部分を有している。これにより、チタン材の表面部分に人の手が触れた際にも、指紋が付着しにくくなるとともに、観察する角度を変えても指紋が目立ちにくくなる。更に、光沢度が良好であるチタン材の表面部分は、指紋が付着しても、簡便は方法で指紋を拭き取れば、観察する角度を変えても指紋がより目立ちにくくなる。
本実施形態に係るチタン材は、少なくとも一部に、上述した所定の表面部分を有する。例えば、チタン板の場合は、表面、裏面の一方又は両方の面が表面部分を有する。チタン材は、通常、板、条、管、棒線であるか、又はこれらが適宜加工された形状をなす。チタン材は、任意の形状、例えば球状、直方体状であってもよい。本実施形態に係るチタン材は、好ましくは薄板形状であり、厚みは0.1mm以上であってよく、0.3mm以上であってよい。また、本実施形態に係るチタン材が薄板形状である場合の厚みは、3.0mm以下であってよく、1.5mm以下であってよく、1.0mm以下であってもよい。
1.2 チタン基材
本実施形態に係るチタン材の基材(チタン基材)は、純チタン又はチタン合金である。純チタン及びチタン合金を総称して単に「チタン」と称する。
チタン基材は、例えば、工業用チタンである。チタン基材に好適な工業用チタンの例として、JIS H 4600や、JIS H 4650の各種工業用チタンが挙げられる。薄板形状のチタン材が機器筐体の部材に成形加工される場合、加工性が要求されるので、チタン基材は、不純物が低減されたJIS1種(例えば、JIS H 4600)の工業用純チタンであってもよい。強度が必要とされる場合は、チタン基材は、JIS2種からJIS4種までの工業用純チタンであってもよい。
チタン基材は、チタン合金であってもよい。チタン合金の例として、耐食性を向上させるために、微量の貴金属系の元素(パラジウム、白金、ルテニウム等)を含有したJIS11種からJIS23種までのチタン合金や、比較的多くの元素を含むJIS60種(例えばTi−6Al−4V系合金)、JIS60E種、JIS61種、JIS61F種、JIS80種等のチタン合金が挙げられる。
本実施形態に係るチタン基材は、例えば、質量%で、
N:0.050%以下、
C:0.10%以下、
H:0.015%以下、及び
Fe:0.50%以下を含み、
残部がTi及び不純物を含む、工業用純チタンであればよい。
本実施形態に係るチタン基材は、例えば、質量%で、
Al:5.0%以上7.0%以下、
V:3.0%以上5.0%以下、
Co:0.10%以上1.00%以下、
Ni:0.10%以上1.00%以下、
Pd:0.010%以上0.300%以下、
Ru:0.010%以上0.300%以下、
N:0.050%以下、
C:0.10%以下、
H:0.015%以下、及び
Fe:0.50%以下を含み、
残部がTi及び不純物を含む、工業用チタン合金であればよい。
本実施形態に係るチタン基材に含まれる不純物は、添加の意図に関係なく、チタン中に存在し、得られるチタン材において本来存在する必要のない成分である。「不純物」なる用語は、チタンを工業的に製造する際に原料又は製造環境などから混入する不純物を含む概念である。このような不純物は、本発明の効果に悪影響を与えない量で含まれてもよい。
不純物として、例えば、後述するブラスト処理に起因する投射材の残存物が、チタン基材を用いて製造されるチタン材中に含まれてもよい。このようなブラスト処理に起因する不純物は、通常、チタン材の表面付近に存在していることが多い。例えば、投射材がアルミナ粒子の場合は、20原子%未満のAlが不純物としてチタン材の表面付近に存在している場合がある。また、例えば、投射材が、SiC粒子の場合は、20原子%未満のSiやCが不純物としてチタン材の表面付近に存在している場合がある。
チタン基材は、通常、板、条、管、棒線であるか、又はこれらが適宜加工された形状をなす。チタン基材は、任意の形状、例えば球状、直方体状であってもよい。チタン基材は、好ましくは薄板形状であり、その厚みは0.1mm以上であってよく、0.3mm以上であってもよい。また、本実施形態に係るチタン材が薄板形状である場合の厚みは、3mm以下であってよく、1.5mm以下であってよく、1.0mm以下であってもよい。
1.3 用途
本実施形態に係るチタン材は、電子機器等の機器の筐体、航空機、化学プラント、建築物の外装品、内装品、装飾品、スポーツ用品、民生品等の任意の用途に適用可能である。電子機器等の機器は、人の手が触れる頻度が高いため、本実施形態に係るチタン材の適用によって、より顕著に上記効果が得られる。すなわち、本実施形態に係るチタン材は、好ましくは機器筐体用チタン材である。本実施形態に係るチタン材は、より好ましくは携帯機器筐体用チタン材である。
本発明は、その一側面において、上述した本実施形態に係るチタン材を備える機器にも関する。当該機器は、好ましくは電子機器、より好ましくは携帯機器である。
2. チタン材の製造方法
本実施形態に係るチタン材の製造方法の一例について説明する。本実施形態に係るチタン材の製造方法は、チタン基材の少なくとも一つの面が粗面化される第1の工程と、粗面化された面に生じた凸部の頂部が平坦化されて平坦部(基準面)が形成される第2の工程と、を有する。第1の工程は、チタン基材の少なくとも一つの面に凹凸を付与する工程である。第1の工程によって粗面化されたチタン基材の表面部分は、人の手との物理的な接触面積が減少し、指紋が付着しにくく、目立ちにくくなる。次いで、第2の工程において、第1の工程によって粗面化された面の凸部の頂部が潰れて凸部の頂部の金属が凹部に広がり、当該面が平坦化され、平坦部が形成される。
第1の工程による粗面化の後、第2の工程において、凸部の頂部が平坦化されると、ある一定値以上の山高さを有する凸部の頂部は平坦部となる。そのため、第1の工程によって形成された凸部の山高さが高い部分では、第2の工程によって形成された凹部の間隔が大きくなる。一方、第1の工程によって形成された凸部の山高さが低い部分では、第2の工程によって形成された凹部の間隔が狭くなる。第1の工程によって形成された凸部の頂部の山高さは必ずしも均一ではないことから、第2の工程によって形成される凹部の間隔が適度にばらつきを有するようになると考えられる。複数の各凹部の間隔がばらつきを有していると、観察する角度によって、指紋が付着した箇所が他の部位と比較して変色したように見えるといった事態が回避され、観察する角度を変えても指紋が目立ちにくくなると考えられる。
本実施形態に係るチタン材の製造方法は、チタン基材の少なくとも一つの面について第1の工程が行われ、第1の工程によって粗面化された面について第2の工程が行われる。第1の工程は、好ましくは、表面粗さRzが10μm以上、30μm以下の圧延ロールによる第1の圧延、及び/又は、ブラスト処理である。第2の工程は、好ましくは、表面粗さRaが0.02μm以上、0.10μm以下の圧延ロールによる第2の圧延、及び/又は、粒度が#400以上、#1500以下である研磨材を用いて行われる機械研磨である。第2の工程が第2の圧延である場合は、ロール径と圧下率の両方が大きいか、ロール径と圧下率の両方が小さいことが好ましい。第2の工程が機械研磨である場合は、研磨温度が調整されることが好ましい。第1の工程に先立ち、チタン基材が準備(製造)される。チタン基材は、必要に応じて前処理が行われる。以下のチタン基材の製造方法は、チタン基材が板状をなすものとして説明される。なお、研磨材の粒度を示す、#400及び#1500は、JIS R 6001−2:2017に規定された粒度である。
2.1 チタン基材の製造
チタン基材は、上述したチタン、具体的には工業用純チタン又は工業用チタン合金である。本実施形態に係るチタン基材は薄板形状であり、冷間圧延によって所定の厚みまで圧延された後、焼鈍処理が施されて製造される。大気中で焼純処理が施されたチタン基材は、例えば酸洗によって、表面の酸化スケールが除去される。チタン基材が真空中で焼鈍された場合は、焼鈍によって表面に形成された酸化皮膜を除去する工程は省略されてもよい。焼鈍処理は、チタン材の表面部分の光沢度を高め、付着した指紋の拭き取り性を向上させるという観点から、好ましくは、真空焼鈍である。これらの処理は、当業者が選択可能な条件を適宜採用して、実施される。
焼鈍温度は、要求されるチタン基材の機械特性に応じて、適宜、調整される。焼鈍温度は、好ましくは560℃以上である。焼鈍温度は、相変態を生じさせる温度である必要はないため、820℃未満であってもよい。大気焼鈍は、公知の方法であって、当業者が選択可能な条件を適宜採用して実施される。真空焼鈍の温度は好ましくは600℃以上であり、真空焼鈍の処理時間は好ましくは12時間以上である。複数回の真空焼鈍が施される場合は、好ましくは、650℃以上での保持時間の合計が12時間以上である。真空焼鈍の保持時間の上限は限定されないが、生産性の観点から、真空焼鈍の保持時間は、好ましくは24時間以下である。冷間圧延によってチタン基材の表面に付着した油分は、好ましくは、真空焼鈍処理を施す前に、アルカリ脱脂によって除去される。大気中で焼純処理が施された場合、酸化スケールを除去する酸洗は、硫酸溶液、硝酸溶液、硝酸溶液とふっ酸溶液との混合溶液などの酸溶液を用いて行われる。酸洗に使用される酸溶液の種類、温度、濃度、酸洗の処理時間は、適宜、調整される。酸洗は、好ましくは、チタン基材の表面の溶解量を増加させる条件で行われる。
2.2 第1の工程
第1の工程は、チタン基材の少なくとも一つの面に凹凸が形成される工程である。第1の工程は、具体的には、第1の圧延及び/又はブラスト処理である。通常、第1の工程は、室温で行われる。
(第1の圧延)
第1の圧延は、板状のチタン基材の少なくとも一方の面に施される冷間圧延であり、例えば、表面粗さRzが10μm以上、30μm以下の圧延ロールが使用される。所定の表面粗さRzを有する圧延ロール(ダルロール)が用いられる冷間圧延は、ロールダル圧延と称され、チタン材の面に適切な凹凸が形成される。第1の圧延の圧延ロールの表面粗さRzは、チタン基材の面への十分な粗さの付与という観点から、例えば、10μm以上である。第1の圧延の圧延ロールの表面粗さRzは、好ましくは12μm以上であり、より好ましくは15μm以上である。第1の圧延の圧延ロールの表面粗さRzは、圧延時の幅方向応力の均一性確保による被圧延板の形状歪の抑制という観点から、例えば、30μm以下である。第1の圧延の圧延ロールの表面粗さRzは、好ましくは25μm以下である。表面粗さRzは、JIS B 0601:2001に準拠して測定される最大高さRzである
第1の圧延によってチタン基材に付与される圧下率は、限定されない。第1の圧延の圧下率は、圧延ロールの形状に由来する粗さがチタン基材に十分に付与されるという観点から、好ましくは0.5%以上である。一方、第1の圧延の圧下率は、チタン基材の硬化による加工性の劣化の抑制という観点から、好ましくは10.0%以下である。チタン基材の圧下率は、より確実に粗面化を行う観点から、より好ましくは2.0%以上であり、更に好ましくは4.0%以上である。一方、チタン材の加工性の確保という観点から、チタン基材の圧下率は、より好ましくは8.0%以下であり、更に好ましくは6.0%以下である。第1の圧延の圧下率は、圧延前の厚みと圧延後の厚みとの差を圧延前の厚みで除して求められる数値を百分率で表した数値である。
圧下率(%)=(圧延前の厚み−圧延後の厚み)/(圧延前の厚み)×100
(ブラスト処理)
ブラスト処理は、板状のチタン基材の少なくとも一方の面に投射材が投射される工程である。ブラスト処理の方法としては、機械式、空気式及び湿式が挙げられ、何れの方式が採用されてもよい。機械式のブラスト処理の方法は、例えば、インペラーによる投射であり、空気式のブラスト処理の方法は、例えば、エアノズル式の投射である。これらのうち空気式は、ブラスト処理が施された部位の全体に亘って均質で細かな粗面化を可能とする方式であり、条件の調節が容易であり、作業性に優れている。
ブラスト処理に使用される投射材は、限定されず、例えば、ジルコニア粒子、ガラス粒子、アルミナ粒子、SiC粒子等のセラミック系投射材の使用が可能である。投射材は、チタン基材の粗面化の達成及び意図しない疵等の欠陥の発生防止という観点から、好ましくは、ジルコニア粒子、ガラス粒子、アルミナ粒子、SiC粒子からなる群から選択される1種以上である。
投射材の平均粒径は、指紋が目立たないようにチタン基材が粗面化されるという観点から、好ましくは750μm以下であり、より好ましくは500μm以下であり、更に好ましくは380μm以下である。ブラスト処理が施された部位の平均的な粗さの不均一さの軽減という観点から、投射材の平均粒径は、好ましくは75μm以上であり、より好ましくは125μm以上であり、更に好ましくは180μm以上である。投射材の平均粒径の調整により、部位による不均一さが軽減され、適度の粗さがチタン基材の面に付与される。
ブラスト処理における投射材の投射圧は、限定されないが、チタン材の表面部分に形成される凹部の面積の確保という観点から、好ましくは0.2MPa以上であり、より好ましくは0.3MPa以上である。ブラスト処理における投射材の投射圧は、疵等の欠陥の発生防止という観点から、好ましくは0.8MPa以下であり、より好ましくは0.6MPa以下である。投射材の投射圧の調整により、適度な投射強度で投射材がチタン基材の面に投射され、ブラスト処理された部位の全体に亘って十分に凹凸が形成され、投射材に起因する疵等の欠陥の発生が防止される。
投射角は、限定されず、チタン基材の投射される面に対し、45°以上、90°(垂直)以下であってよい。
第1の工程において、第1の圧延及びブラスト処理は、何れか一方のみ行われてもよいし、両方が行われてもよい。第1の工程において、第1の圧延及びブラスト処理が共に行われる場合、何れの処理を先に行ってもよい。第1の圧延及びブラスト処理によってチタン基材の面に付与される意匠性は、それぞれ異なっている。したがって、第1の工程における処理の種類は、目的とされる外観に応じて、適宜、選択される。
2.3 第2の工程
第2の工程は、第1の工程によってチタン基材の少なくとも一つの面により形成された凸部の頂部が平坦化される工程であり、凹部の間隔や深さ、更にこれらのばらつきが調整される。第2の工程は、第1の工程によってチタン基材の少なくとも1つの面に形成された凸部の頂部を押圧又は研磨する工程である。第2の工程の前に存在する凸部の高さは必ずしも一定ではない。第2の工程によって、凸部の頂部の金属が凹部に広がる。そのため、比較的高い凸部は比較的大きい平坦部となって凹部の間隔が広くなり、比較的低い凸部は比較的小さい平坦部となって凹部の間隔が狭くなると考えられる。このように、第2の工程によって形成される平坦部の大きさが、第1の工程によって形成される凸部の高さに応じて変化し、チタン材の表面部分に分散して存在している凹部の間隔のばらつきが発生すると考えられる。
第2の工程は、具体的には、第2の圧延及び/又は機械研磨である。第2の圧延は、第1の工程によってチタン基材の少なくとも1つの面に形成された凸部の頂点付近を第2の圧延ロールによって押圧し、平坦部を形成する工程である。機械研磨は、第1の工程によってチタン基材の少なくとも1つも面に形成された凸部の頂点付近を機械研磨によって除去し、平坦部を形成する工程である。通常、第2の圧延は、室温で行われる。後述するように、機械研磨の処理温度は制御されることが好ましい。
(第2の圧延)
第2の圧延は、例えば、第1の工程によって凹凸が形成されたチタン基材の面に施される冷間圧延であり、算術平均表面粗さRaが0.02μm以上、0.10μm以下の圧延ロールが使用される。このような算術平均表面粗さRaを有する圧延ロール(鏡面ロール)が用いられる冷間圧延は、スキンパス圧延と称され、第1の工程によって形成された凸部の頂点付近が押圧され、平坦化される。
第2の圧延の圧延ロールの算術平均表面粗さRaは、例えば、圧延ロールとチタン基材との間の摩擦係数の確保する観点から、0.02μm以上である。圧延ロールとチタン基材との間の摩擦係数の確保により、通板方向に作用する圧延張力による変形などの発生が防止される。第2の圧延の算術平均表面粗さRaは、好ましくは0.04μm以上である。一方、第2の圧延の圧延ロールの算術平均表面粗さRaは、チタン材の表面部分の凹部の面積の確保という観点から、例えば、0.10μm以下である。第2の圧延の圧延ロールの算術平均表面粗さRaは、好ましくは0.08μm以下である。
第2の圧延によってチタン基材に付与される圧下率は、限定されない。第2の圧延の圧下率は、チタン材の表面部分の凹部の面積の確保という観点から、好ましくは、0.5%以上である。凸部の頂点付近の平坦化がより確実に達成されるために、第2の圧延におけるチタン基材の圧下率は、より好ましくは1.0%以上である。一方、第1の工程によって形成された凹凸形状が適度に保持されるという観点から、第2の圧延におけるチタン基材の圧下率は、好ましくは、5.0%以下である。第1の工程により形成された凹凸形状がより適度に維持されるために、第2の圧延におけるチタン基材の圧下率は、より好ましくは2.0%以下である。第2の圧延の圧下率は、第1の圧延の圧下率と同様、圧延前の厚みと圧延後の厚みとの差を圧延前の厚みで除して求められる数値を百分率で表した数値である。
第2の圧延に用いられる圧延ロールのロール径が小さいと、比較的小さな圧下率でも平坦部が形成されやすいが、生産性が低下する場合がある。一方、ロール径が大きいと生産性は向上するが、平坦部の形成に比較的大きな圧下率が必要とされる。チタン材の表面部分の凹部の面積の確保という観点から、第2の圧延の圧延ロールのロール径と圧下率は、ロール径が比較的大きい場合は圧下率も比較的大きくされ、ロール径が比較的小さい場合は圧下率も比較的小さくされる関係であることが好ましい。例えばロール径は250mm以上、600mm以下の範囲であり、凹部の合計の面積率が30.0%以上、70.0%以下となるように圧下率が調整されることが望ましい。
(機械研磨)
機械研磨は、第1の工程が施されたチタン基材の面に研磨材が接触して、第1の工程によって形成された凸部の頂点付近が研磨によって除去される工程であり、適度に平坦部が形成される。機械研磨の方式としては、水や油等の液体とともに研磨を行う湿式研磨及び液体を用いない乾式研磨が挙げられる。これらのうち、研磨時に発生する熱の除去や研磨効率の観点から、湿式研磨が好ましい。
機械研磨に用いられる研磨材の粒度は、好ましくは#400以上である。比較的粒度が大きい研磨材、すなわち細かい研磨粒子の使用により、第1の工程によって形成されたチタン基材の少なくとも一つ面の凹凸の形状が適度に保持される。研磨材の粒度は、チタン材の表面部分の光沢度を高め、付着した指紋の拭き取り性を向上させるという観点から、より好ましくは、#600以上であり、更に好ましくは#800以上である。一方、研磨時の処理時間の短縮の観点から、研磨材の粒度は、好ましくは#1500以下である。研磨材の粒度は、より好ましくは#1200以下であり、更に好ましくは#1000以下である。なお、研磨材の粒度は、JIS R 6001−2:2017に規定された粒度である。
機械研磨の処理温度は、焼き付き防止の観点から、例えば、60℃以下である。機械研磨の処理温度は、好ましくは50℃以下である。一方、機械研磨の処理温度は、製造コストの削減の観点から、好ましくは5℃以上である。研磨時の処理温度は、より好ましくは10℃以上である。機械研磨の処理温度は、例えば、温度管理された冷却剤の供給によって調整される。
第2の工程において、第2の圧延及び機械研磨は、何れか一方のみ行われてもよいし、両方が行われてもよい。第2の工程において、第2の圧延及び機械研磨が共に行われる場合、機械研磨が先に行われることが好ましい。第2の圧延及び機械研磨によってチタン基材の面に付与される意匠性は、それぞれ異なっている。したがって、第2の工程における処理の種類は、目的とされる外観に応じて、適宜、選択される。
更に、チタン基材の外観の意匠性の付与の観点から、第1の工程及び第2の工程を含むステップが複数回繰り返されてもよい。
以上の各工程を経ることにより、本実施形態に係るチタン材が製造される。上述したように、本実施形態に係るチタン材は、当該チタン材の表面に人の手が触れた際にも、指紋が付着しにくくなるとともに、観察する角度を変えても指紋が目立ちにくくなる。更に、本実施形態に係るチタン材は、好ましくは、指紋が付着した際に、簡便な方法で指紋を拭き取ることにより、指紋が目立ちにくくなる。
第1の工程では第1の圧延が行われ、第2の工程では第2の圧延が行われる製造工程の組み合わせは、生産性が良好であり、チタン材の表面部の色調は暗めになる傾向がある。第1の工程ではブラスト処理が行われ、第2の工程では機械研磨が行われる製造工程の組み合わせは、チタン材の表面部分の色調が明るめになる傾向がある。ただし、ブラスト処理に用いられる粒子が角張っている場合(ブラスト処理に用いられる粒子がグリッドの場合)、チタン材の表面部分の色調は暗めになる傾向がある。製造工程の組み合わせは、顧客のニーズ(色調)などに応じて適宜決定される。
以下に、実施例を示し、本発明の一実施形態に係るチタン材について、具体的に説明する。以下に示す実施例は、本発明の一実施形態に係るチタン材のあくまでも一例であって、本発明が、下記の例に限定されるものではない。
1. チタン材の製造
表1、2に示すチタン基材となる薄板形状の冷間圧延材が用意され、真空焼鈍又は大気焼鈍が行われた。更に、大気焼鈍の後、硝酸とふっ酸との混合溶液による酸洗処理が行われた。表1、2において、JIS H 4600に基づく純チタン1種を「JIS1」と、純チタン2種を「JIS2」と表記した。表1、2の焼鈍の種類は、真空焼鈍又は大気焼鈍の何れか、行われた方である。真空焼鈍処理は、真空度が1.0×10−3Torr以下であり、温度が650℃であり、処理時間が12時間である条件で行われた。大気焼鈍は、温度が730℃以上、820℃未満であり、処理時間が2分である条件で行われた。
表1、2に示す処理順序、条件にて、第1の圧延(A)、ブラスト処理(B)、第2の圧延(C)及び機械研磨(D)が適宜組み合わされた製造工程を経て、チタン基材から、実施例1〜16及び比較例1〜9に係るチタン材が製造された。表1、2中、処理順序の欄において左に記載される処理から右に記載される処理が順次行われた。製造されたチタン材の厚みは0.4mmであった。
チタン材の表面部分における凹部の合計の面積率、凹部の間隔及び深さの平均値並びに標準偏差、チタン材の表面部分の光沢度は以下のようにして測定された。凹部の間隔の平均値は、表3において、凹部の平均間隔と表記されている。凹部の深さの平均値は、表3において、凹部の平均深さと表記されている。凹部の間隔に対する凹部の間隔の標準偏差の比は、表3において、凹部の間隔/標準偏差と表記されている。凹部の深さの平均値に対する凹部の深さの標準偏差の比は、表3において、凹部の深さ/標準偏差と表記されている。
チタン材の表面部分における凹部の合計の面積率は、非接触式の3次元形状測定装置(株式会社キーエンス製:VR−3100)を用いて測定された。長さ50mm、幅25mm、厚さ0.4mmの試験片をチタン材から採取した。前記試験片の長さ25mm、幅12.5mmの位置を中心とし、120倍の倍率で前記非接触式の3次元形状測定装置を用いて長さ2.5mm、幅1.9mmの範囲を測定し、凹部の合計の面積を測定総面積で除して凹部の合計の面積率を求めた。測定範囲における試験片の湾曲を、解析ソフト(株式会社キーエンス製:VA-H1A)を用いて補正した。湾曲の補正は長さ方向と幅方向の両方向で実施した。
チタン材の表面部分における凹部の間隔及び深さの平均値並びに標準偏差は、触針式の表面粗さ測定機(株式会社東京精密製、サーフコム480B)によって得られた2次元の凹凸の形状(プロファイル)を用いて測定された。測定長さは8mmであり、測定速度は0.6mm/秒である。プロファイルは、カットオフ値が0.8mmであり、縦倍率が1000倍であり、横倍率が50倍である条件で表示された。図1に示すように、得られたプロファイルの複数の凸部を繋ぐ線分を基準面として、凹部の間隔及び深さが測定された。凹部の間隔は、隣り合う凹部の深さが最大値となる部位の水平方向(基準面と平行な方向)の間隔である。凹部の間隔及び深さの測定値から平均値(加算平均)及び標準偏差が求められた。
チタン材の表面部分の光沢度は、JIS Z 8741:1997に準拠し、光沢度計(ハンディー光沢計 PG−1、日本電色工業株式会社製)を用いて測定された。
実施例及び比較例のチタン材について、表面部分に付着した指紋の目立ちにくさである耐指紋性と、指紋を拭き取った後の指紋の目立ちにくさである指紋拭き取り性は、10人の被験者の主観で判断された。耐指紋性の評価は、指紋を付着させたサンプルを用いて行われた。耐指紋性は、見る角度を種々変更し、観察する角度を変えても付着した指紋が目立ちにくいと判断した被験者の人数で評価された。指紋拭き取り性は、耐指紋性の評価に用いたサンプルと同様にして指紋を付着させた後、ティッシュペーパーを用いて表面を強く1回拭き取ったサンプルを用いて、耐指紋性と同様にして評価された。耐指紋性及び指紋拭き取り性は、10人の被験者のうち、指紋が目立つと判断した者の人数に応じて、次のように評価された。耐指紋性及び指紋拭き取り性の評価は表3に示される。
Poor:10人中、指紋が目立つと6人以上が判断した。
Fair:10人中、指紋が目立つと3〜5人が判断した。
Good:10人中、指紋が目立つと2人が判断した。
Excellent:10人中、指紋が目立つと0又は1人が判断した。
Figure 2020255963
Figure 2020255963
Figure 2020255963
指紋が目立つと判断した被験者の人数が2人以下である場合を合格とした(上記の「Excellent」及び「Good」)。表3に示されるように、発明例1〜16に係るチタン材は、耐指紋性及び指紋拭き取り性が優れていた。
一方、表3に示されるように、比較例1〜6、8、9に係るチタン材は、何れも耐指紋性、指紋拭き取り性の一方又は両方が劣っていた。比較例7に係るチタン材は、機械研磨において焼き付きが発生し、部分的な外観の劣化が見られたため、非接触式の3次元形状測定装置、触針式の表面粗さ測定機、及び、光沢度計による測定、並びに、耐指紋性及び指紋拭き取り性の評価は行われなかった。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 表面部分
2 基準面
3 凹部
H 凹部の深さ
L 凹部の間隔
チタン材の表面部分における凹部の合計の面積率、凹部の間隔及び深さの平均値並びに標準偏差、チタン材の表面部分の光沢度は以下のようにして測定された。凹部の間隔の平均値は、表3において、凹部の平均間隔と表記されている。凹部の深さの平均値は、表3において、凹部の平均深さと表記されている。凹部の間隔の平均値に対する凹部の間隔の標準偏差の比は、表3において、凹部の間隔/標準偏差と表記されている。凹部の深さの平均値に対する凹部の深さの標準偏差の比は、表3において、凹部の深さ/標準偏差と表記されている。

Claims (4)

  1. 複数の凹部が存在する表面部分を有するチタン材であって、
    前記表面部分における前記凹部の合計の面積率が30.0%以上、70.0%以下であり、
    前記凹部の間隔の平均値が50μm以上、300μm以下であり、前記凹部の間隔の平均値に対する前記凹部の間隔の標準偏差の比が0.35以上である、チタン材。
  2. 前記凹部の深さの平均値が2.0μm以上、6.0μm以下であり、前記凹部の深さの平均値に対する前記凹部の深さの標準偏差の比が0.35以上である、請求項1に記載のチタン材。
  3. 前記チタン材は、機器筐体用チタン材である、請求項1又は2に記載のチタン材。
  4. 請求項1〜3の何れか一項に記載のチタン材を備える、機器。
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