JP3587180B2 - 耐汚れ性と耐食性に優れたステンレス鋼板とその製造方法。 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐汚れ性と耐食性に優れたステンレス鋼板とその製造方法に関する。より詳述すれば、本発明は建物の外壁に代表される外装建材や、エレベータやエスカレータのドアや側板、内壁などの内装材、電車、バスなどの車両用鋼板、業務用厨房機器や家電製品の外板、厨房および台所まわり、さらにはコンピュータハードディスクケースなどのエレクトロニクス部品に使用される、指紋汚れをはじめとする各種の汚れに対する抵抗性を示す耐指紋性、耐汚れ性 (以下、耐汚れ性と総称することもある) と耐食性に優れたダル仕上げステンレス鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、建物の内外装や電車などの外板、また、厨房、台所周りで、SUS304やSUS316を代表とするオーステナイト系ステンレス鋼板や、SUS430に代表されるフェライト系ステンレス鋼板が多く用いられている。
【0003】
従来よりこれらの用途分野にはブライト仕上げと呼ばれる鏡面状のステンレス鋼板や、研磨目をつけたHL仕上げなどのステンレス鋼板が使用されてきたが、周囲の環境への配慮から太陽光の反射を抑える防眩性が重視され、表面を梨地状に荒らしたダル仕上げステンレス鋼板が用いられるようになった。しかし、ダル仕上げステンレス鋼板は、指紋をはじめとする汚れが付きやすく、その汚れ跡が目立つために美観を悪くし、そのメンテナンスに多大な労力がかかるという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、可能な限り通常の設備・条件を使用して、耐指紋性、つまり指紋汚れに対する抵抗性をはじめとする各種の汚れに対する耐汚れ性、耐食性を兼ね備えたステンレス鋼板と、それを安価に、簡便に製造する経済的な方法とを提供することである。
【0005】
これらの問題に対して、特許第2755356 号公報において、耐汚染性に優れたダル仕上げステンレス鋼板を製造するため、ダル仕上げ材の表面にみられる凹凸に丸みを付けることが有効であるとして、グリッド−ショット投射法を提案した。この方法はかなりの効果があるものの、まだ十分ではなかった。
【0006】
その後の調査から、ダル仕上げ加工による凹凸部以外にもステンレス鋼板表面に汚れが堆積する部位があることを見出した。すなわち、ステンレス鋼板表面に露出している結晶粒界が、焼鈍後の通常の酸洗で侵食されて凹状の溝に進展する。またこのときには微細な凹状の溝であっても、次工程のダル仕上げ加工でこの部分に力が加わって溝が拡がり、より大きな鋭角的な凹状の溝に成長する場合がある。これらの部位は汚れが付着しやすく、一旦汚れが付着すると容易に洗浄されない。そこでこれらの部位も耐汚染性向上のために制御する必要があることが判明した。
【0007】
そして、特開2000−233205号公報において提案しているように、軽酸洗で脱スケールを完了させるとともに、鏡面仕上げロールそしてダルロールと異なった表面性状のロールを用いた調質圧延を2段に行うことで耐汚染性に優れたダル仕上げステンレス鋼板を開発し、実際に使用に供してきた。しかし、このような手段は浮遊塵埃の付着に対しては有効であったが、人の手に接触する機会が多い部位に使用した時にその酸洗肌の色調により指紋汚れが目立つことが判明した。さらに軽酸洗仕上げであるため、焼鈍時に生じる粒界のCr欠乏層の除去が完全にはなされず、長期的な耐食性という観点から、更なる改良が必要であることが判明した。
【0008】
ところで、特に指紋汚れ、つまり耐指紋性に対しては、その表面形状を制御したダル仕上げ金属板について種々の提案がなされている。
特開平6−335705号公報には、金属表面に微細な凹凸を付与した場合、人の手が軽く接触しても凸部のみしか指紋が付かないことに着眼して、凸部面積率が30%以下とするような技術が開示されているが、強く手を押し付けると凹部にも指紋汚れが付着する。
【0009】
特開平7−9007号公報には、指紋形状に良く似た凹凸模様を金属表面に付与すると指紋が目立ちにくいという技術が提案されているが、見る方向によって色調が異なるため意匠性に劣るという問題がある。
【0010】
特開平11−226606号公報においては、中心線平均粗さ(Ra)が0.5 μm 以上で、かつ、表面租さのパワースペクトル解析で10μm 以下の波長領域における最大の振幅が0.02μm 以下であることにより指紋が目立たない金属表面が提案されているが、その10μm 以下の波長領域の形状制御が困難であることが発明者らによって記されている。
【0011】
また、特公平7−90247 号公報には、冷間圧延→ダル仕上げ圧延(十点平均粗さRz:10〜30μm 、圧下率:3〜30%)→光輝焼鈍の工程を経た、防眩性、光沢およびクリナビリティーに優れたステンレス冷延鋼板の製造方法が提案されている。これは、通常の酸洗処理による微細な表面凹凸の出現を防止するために光輝焼鈍を実施しているが、冷間圧延後のダル仕上げ圧延は圧延ロールの消耗が激しく、平均的な表面凹凸の転写の維持が困難であるため色調の均一性を図りにくく、また耐指紋汚れに対しては言及していない。
【0012】
耐食性については、特開平6−182401号公報において、冷間圧延→焼鈍・酸洗→ダル仕上げ圧延→大気焼鈍、または光輝焼純→酸洗の各工程からなる、防眩性、色調均一性、及び耐食性に優れたダル仕上げステンレス鋼板の製造方法を提案している。これは、ダル仕上げ圧延によって生じた表面起伏の微細なかさぶりやかじりを除去するのが目的で酸洗を実施しており、工程の増加による製造コスト増大とダル仕上げ圧延後に酸洗を実施することによる製品歩留りの低下は免れない。
【0013】
このように、従来にあっても種々の提案はあるが、特に今日強く求められている、指紋汚れをはじめとする耐汚れ性、耐食性を兼ね備えたステンレス鋼板で経済的なものは見出されていない。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前述の特開2000−233205号公報においては、耐汚染性に優れたステンレス鋼板を製造するに当り、ステンレス鋼板に汚れが付着しやすい鋭角的な凹状の溝が存在しないことが重要であり、そのために焼鈍後の酸洗を軽酸洗にすることを提案しているが、そのような軽酸洗ではCr欠乏層の残存による耐食性劣化の懸念があった。
【0015】
そこで本発明者らは、▲1▼焼鈍後の酸洗においては、通常のAPラインでの酸洗を行いCr欠乏層を溶解させ、▲2▼その後に最終ダル仕上げ圧延を含む仕上げ圧延を行ない、▲3▼ダル仕上げ圧延後に行う焼鈍を光輝焼鈍にすることにより、スケール除去のための酸洗により再度表面が荒らされることなく圧延ままの表面が維持されることから、優れた耐汚れ性を稚特しながら耐食性を確保できることを見出した。
【0016】
指紋汚れについては、酸洗肌のように白っぽい表面ではその周囲に対して黒ずんで、またブライト仕上げのような黒光りする表面では逆に白色の付着物として目立つことが経験的に知られている。これに対しては、前述の特開平11−226606号公報においては、理論的な考察から、指紋が目立ちにくい金属表面を光学的設計しているが、その製造方法については確立されていない。
【0017】
そこで本発明者らは、指紋付着部位が少なく、一旦付着した指紋汚れが目立ちにくい金属表面とするとの観点から、表面形状を様々に変化させた光輝焼鈍板について調査した。その結果、光輝焼鈍仕上げの高光沢表面を適度に荒らしていくことで、指紋が付着する部位が少なく、かつ指紋が目立ちにくくなる色調を有する表面形態を発見し、本発明を完成した。
【0018】
本発明の要旨は以下の通りである。
(1) 十点平均粗さRzが3.5 μm 以上、6.5 μm 以下、表面凹凸の平均間隔Smが120 μm 以上、250 μm 以下、凸部面積率が15%以上、45%以下の表面を有することを特徴とする耐汚れ性と耐食性に優れたステンレス鋼板。
【0019】
(2) ステンレス鋼帯を連続焼鈍・酸洗した後の冷間仕上げ圧延において、最終パスをダルロールにより、十点平均粗さRzが3.5 μm 以上、6.5 μm 以下、表面凹凸の平均間隔Smが120 μm 以上、250 μm 以下、凸部面積率が15%以上、45%以下の表面に仕上げた後、光輝焼鈍を行うことを特徴とする耐汚れ性と耐食性に優れたステンレス鋼板の製造方法。
【0020】
(3) 前記光輝焼鈍を、水素ガス濃度50体積%以上、残部が窒素ガスから成り、露点が−60℃以上、−35℃以下の雰囲気中で行うこと特徴とする上記(2) 記載の耐汚れ性と耐食性に優れたステンレス鋼板の製造方法。
【0021】
(4) 前記冷間仕上げ圧延の最終パスを、厚さ3〜35μmのCrメッキを施されたダルロールにより行うことを特徴とする上記(2) または(3) 記載の耐汚れ性と耐食性に優れたステンレス鋼板の製造方法。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明において限定した諸条件について以下に説明する。
本発明の対象にするステンレス鋼板は慣用の方法で溶製、熱間圧延、冷間圧延を経て製造されるが、この点に関しては特に制限されない。また鋼種としてもフェライト系、オーステナイト系等、特に制限されない。
【0023】
表面形態の規定
(1) 十点平均粗さ(Rz)
JIS B 0601で規定する十点平均粗さRzで3.5 μm 以上、6.5 μm 以下に限定する。耐汚れ性の観点から、丸みのある凹凸部が望ましいが、その凹凸の深さと耐指紋性が関係あることが判明した。比較的凹凸が小さいと表面の光沢が強く、指紋汚れが目立ちやすく、Rzで3.5 μm 以上で良好な耐指紋性が得られるようになる。望ましくはRzで4.5 μm 以上である。しかし、表面凹凸が大きくなりすぎると、汚れなどの異物が溜まりやすく、それが発銹の原因にもなることから、Rzで6.5 μm 以下とした。
【0024】
(2) 凹凸の平均間隔(Sm)
JIS B 0601で規定する表面凹凸の平均間隔Smを120 μm 以上、250 μm 以下に限定する。耐汚れ性の観点から、丸みのある凹凸部が望ましいが、その凹凸の間隔と耐指紋性が関係あることが判明した。凹凸の間隔が狭くなると、凸部の面積が増大し、指紋付着する部位が増し、また表面光沢が高くなり、指紋汚れが目立ちやすくなることから平均間隔Smを120 μm 以上とした。
【0025】
また凹凸の間隔が拡がると、凹部の面積が増大し、強く押し付けると凹部にも指紋が付着しやすくなり、全面的に平滑になり光沢が上昇し、指紋が目立ちやすくなることから、Smを250 μm以下とした。望ましくは、Smが150 μm 以上、200 μm 以下である。
【0026】
(3) 凸部面積率
凸部面積率は15%以上、45%以下と限定した。凸部は指紋が付着しやすい部位であり、少ないほど指紋は付着しにくいと考えられる。前述したように、耐指紋性を向上させるためとは、指紋が付着しにくいこと、さらに目立たないことが重要である。しかし、凸部面積率が余り小さいと、凹部の面積が大きくなり、凹部にも指紋が付着しやすくなることから15%以上とした。また凸部面積が大きいと、指紋付着部位が増加し、さらには表面光沢が高くなり、指紋汚れが目立ちやすくなるので45%以下とした。望ましくは25%以上、35%以下である。
【0027】
(4) ダルロール
本発明においては、ダルロールを用いた仕上げ圧延によって、十点平均粗さRzが3.5 μm 以上、6.5 μm 以下、凹凸の平均間隔Smが120 μm 以上、250 μm 以下、凸部面積率が15%以上、45%以下の範囲で規定される指紋汚れをはじめ耐汚れ性と耐食性に優れた表面を付与する。つまり、そのとき用いるロール表面に鋭角的な凹凸が形成されると、このロールで鋼板表面にそのような凹凸部を転写した場合、ステンレス鋼板表面にも上記規定範囲外の鋭角的な凹凸が形成され、そこが汚れの堆積場所になるので、工業的に可能な限りこれらを軽減することが重要となる。
【0028】
本発明におけるこのような表面形態の鋼板を製造可能なダルロールの調整方法については特に規定しないが、アルミナ粒等の投射、放電、レーザー、電子ビームあるいは化学エッチングで加工したロールの鋭角的な凹凸部にCrメッキし、その鋭角的な凹凸を丸くすることが有効である。
【0029】
Crメッキは、アルミナ投射などによりロール表面に形成した鋭角的な凹凸部をそのまま残すのではなく、鋭角的な凹凸の凸部にCrメッキを瘤状に析出させてロール表面を被覆するために行う。なお、Crメッキは通常の工業用硬質Crメッキを施せばよく、メッキ厚みとして3〜35μm が望ましい。好ましくは5〜20μm である。メッキ厚みが薄い場合、瘤状の析出が十分に起こらず、鋭角的な凹凸形状がそのまま残る場合がある。このような表面では、圧延荷重が高くなりすぎることや、製品の反射特性に強い方向性が残り色調の均一性に劣ったり、耐食性が低下するなどの不具合が生じる。逆にメッキ厚みが厚くなりすぎると下地の凹凸の効果が低減し、転写された鋼板が平滑になり、光沢が強すぎて耐指紋汚れ性に劣ることになる。したがってメッキ厚みは100 μm を上限とするのが好ましい。
【0030】
Crメッキの下地処理としてNiメッキを施すことで微細な凹部へのメッキを施し、凸部の先端部をCrメッキにより瘤状にしてもいい。特にNiメッキを施さなくても、Crメッキのみでも上記効果は得られる。しかし、凹凸が大きい場合にNiメッキを施すと凹部に優先的にNiメッキがなされ、後工程のCrメッキが容易となる。Niメッキの厚さはあまり厚くなると剥離しやすいので10μm 以下にするのが望ましい。
【0031】
製造条件の規定
(1) 光輝焼鈍
仕上げ圧延により加工硬化した鋼板を軟化させるために焼鈍を行うが、光輝焼鈍は、非酸化性雰囲気で焼鈍を行うことにより酸化スケールの生成がなく、それに続く酸洗が不要となるため、酸洗による鋭角的な凹凸部の生成がなくなる。つまり、最終パスをダルロールにより、十点平均粗さRzが3.5 μm 以上、6.5 μm 以下、表面凹凸の平均間隔Smが120 μm 以上、250 μm 以下、凸部面積率が15%以上、45%以下の範囲に仕上げた表面をそのまま最終製品として製造することが可能となる。また鋼板表面にCr、Mo、Siが濃化した酸化皮膜が生成するため、通常の大気焼純−酸洗材に比べて耐食性が優れる鋼板となる。
【0032】
本発明者らは、規定範囲の表面形状にダル仕上げ圧延を行った鋼板を用いて、雰囲気ガスと露点を変化させて光輝焼鈍を行い、その耐指紋性を評価した結果、水素ガス濃度50体積%以上、露点−35℃以下の条件で焼鈍することにより、耐指紋性が良好であることを見出した。
【0033】
水素ガス濃度が50体積%未満だとテンパーカラーといわれる表面着色により、付着した指紋汚れが目立つようになることから50体積%以上とした。上限は水素ガス濃度100 体積%となるが、製造コストが上昇することから、75体積%以上、85体積%以下が望ましい。また、露点が−35℃を越えるとテンパーカラー発生により、付着した指紋汚れが自立つようになることから−35℃以下とした。露点は低ければ低いほど望ましいが、製造コストが上昇することから−60℃以上とする。望ましくは−40℃以下である。
【0034】
鋼板を軟質化し加工性を高めるには熱処理温度を800 ℃以上にする必要があるが、1150℃超に加熱すると結晶粒が粗大化し加工性が低下するため、熱処理温度は800 ℃以上、1150℃以下とする。
【0035】
(2) 酸洗
連続焼鈍により生成した酸化スケールおよびCr欠乏層を除去するために酸洗を行うが、酸洗条件については特に規定しない。通常APラインで用いられる硫酸、硝酸とフッ酸との混酸など公知の方法で良い。また酸洗前処理として、溶融アルカリ塩処理や中性塩を用いた電解処理を行ってもよい。
【0036】
【実施例】
【0037】
【実施例1】
以下実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。
板厚3.0mm のSUS304の熱延鋼帯を用い、通常のAPラインによる連続焼鈍・酸洗後、冷間圧延を行い、最終パスにて様々な形状のダルロールを用いて厚さ0.8mm に仕上げた後、光輝焼鈍を行い、ダル仕上げ鋼板とした。なお、ダルロールは放電加工にCrメッキしたものであり、75体積%水素+25体積%窒素混合ガス(アンモニア分解ガス) 中、露点−40℃、1100℃で在炉2分の光輝焼鈍を行った。
【0038】
これらの鋼板の表面形状と耐指紋性、耐汚れ性、耐食性を以下の方法で評価した。
<耐指紋性>
鋼板表面に指を強く押し付けて、指紋が目立ちにくいかどうかを目視判定した。目立たないものを○、目立つものを×とした。
【0039】
<耐汚れ性>
外装材の汚れである浮遊粉塵を想定した炭素粉末を水にといてスラリー状にした液をステンレス鋼板の試片に塗り付け、室温で24時間保持後、スポンジで流水洗浄した。そして試験前後の試片について、JIS Z 8729で規定されているL*、a*、b*を測定して色差△E を算出し、耐汚れ性指標とした。△E ≦3を耐汚れ性良好とした。
【0040】
<耐食性>
海岸より約1km離れた工業地帯で6ケ月間の大気曝露試験を実施した。評価としては、JIS Z 2371の付属書に示されているレイティングナンバー(R.N.)表と発銹状況を対比して発銹の程度を判定した。R.N.≧9 を耐食性良好とした。
【0041】
結果を表1に示す。これより明らかなように、本発明で規定する範囲の鋼板は、耐指紋性、耐汚れ性、および耐食性に優れているが、規定範囲を外れた鋼板は、耐指紋性、耐汚れ性、および耐食性のいずれか1つまたは複数が劣る結果となった。
【0042】
【表1】
【0043】
【実施例2】
板厚3.0mm のSUS304の熱延鋼帯を用い、通常のAPラインによる連続焼鈍・酸洗後、冷間圧延を行い、最終パスにて様々な方法で作製したCrメッキ厚さを変化させたダルロールを用いて厚さ0.8mm に仕上げ、これらの鋼板の表面形状と耐指紋性、耐汚れ性、耐食性を実施例1と同様に評価した。
【0044】
結果を表2に示す。これより明らかなように、本発明で規定する範囲の鋼板は、耐指紋性、耐汚れ性、および耐食性に優れているが、規定範囲を外れた条件で製造した鋼板は、耐指紋性、耐汚れ性、および耐食性のいずれか1つまたは複数が劣る結果となった。
【0045】
【表2】
【0046】
【実施例3】
実施例1で、表面形態がRz:4.5 μm、Sm:187 μm、凸部面積率:28%に仕上げたマーク3の光輝焼鈍前の鋼板を用いて、1100℃で、ガス雰囲気と露点を変え、在炉2分の光輝焼鈍を行い、これらの鋼板の耐指紋性、耐汚れ性、耐食性を実施例1と同様に評価した。
【0047】
結果を表3に示す。これより明らかなように、本発明で規定する範囲の鋼板は、耐指紋性、耐汚れ性、および耐食性に優れているが、規定範囲を外れた条件で製造した鋼板は、耐指紋性と耐食性が劣る結果となった。
【0048】
【表3】
【0049】
【発明の効果】
従来の製造方法では、ダル仕上げ圧延による表面形状制御により、防眩性や耐指紋性を付与する試みが行われてきたが、その色調によって指紋汚れが目立ちやすく、また表面凹凸に汚れなどの異物が溜まりやすい、また、意匠性に劣るものや形状の制御が困難などの問題があったが、本発明によれば、汚れの付着を減らし、しかも付着した指紋汚れなどが目立ちにくく、かつ耐食性に優れた鋼板を、通常の設備・条件を用いて製造し提供することを可能にした。
【0050】
本発明にかかるステンレス鋼板は、落ち着いた意匠性を有しているため、常時人間の目に触れる分野での利用を増やし、また美観維持の労力を減少することが可能であるため、社会的貢献が大きいものである。
Claims (4)
- 十点平均粗さRzが3.5 μm 以上、6.5 μm 以下、表面凹凸の平均間隔Smが120 μm 以上、250 μm 以下、凸部面積率が15%以上、45%以下の表面を有することを特徴とする耐汚れ性と耐食性に優れたステンレス鋼板。
- ステンレス鋼帯を連続焼鈍・酸洗した後の冷間仕上げ圧延において、最終パスをダルロールにより、十点平均粗さRzが3.5 μm 以上、6.5 μm 以下、表面凹凸の平均間隔Smが120 μm 以上、250 μm 以下、凸部面積率が15%以上、45%以下の表面に仕上げた後、光輝焼鈍を行うことを特徴とする耐汚れ性と耐食性に優れたステンレス鋼板の製造方法。
- 前記光輝焼鈍を、水素ガス濃度50体積%以上、残部が窒素ガスから成り、露点が−60℃以上、−35℃以下の雰囲気中で行うこと特徴とする請求項2記載の耐汚れ性と耐食性に優れたステンレス鋼板の製造方法。
- 前記冷間仕上げ圧延の最終パスを、厚さ3〜35μmのCrメッキを施されたダルロールにより行うことを特徴とする請求項2または3記載の耐汚れ性と耐食性に優れたステンレス鋼板の製造方法。
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