JP3287302B2 - 防眩性に優れた外装用フェライト系ステンレス鋼板とその製造方法 - Google Patents

防眩性に優れた外装用フェライト系ステンレス鋼板とその製造方法

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JP3287302B2
JP3287302B2 JP05228498A JP5228498A JP3287302B2 JP 3287302 B2 JP3287302 B2 JP 3287302B2 JP 05228498 A JP05228498 A JP 05228498A JP 5228498 A JP5228498 A JP 5228498A JP 3287302 B2 JP3287302 B2 JP 3287302B2
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直人 飯崎
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建造物の屋根や外
壁に代表される外装建材や、車両鋼板として用いた場合
に優れた防眩性、耐食性を示し、色調の方向性のないダ
ル仕上げフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】産業界におけるメンテナンスフリー化の
要望から外壁材、屋根材などの建材や車両材としてステ
ンレス鋼板が使用されるようになり、最近は大型建造物
の外装材としてオーステナイト系ステンレス鋼に比べ熱
膨張が小さく、熱膨張−収縮の繰り返しによる変化が余
り生じないフェライト系ステンレス鋼の使用量が増えて
いる。
【0003】屋根材をはじめとする外装用鋼板に要求さ
れる特性としては、発錆による美観喪失、局部腐食や孔
食による穴あきを抑制する耐食性とともに周囲の環境へ
の配慮から太陽光の反射を抑える防眩性が重視されるよ
うになっており、要求される防眩性のレベルも高くなっ
ている。
【0004】特開平6−346196号公報や特開平6−8108
5 号公報に示されているように、ステンレス鋼板素材の
耐候性を高めるには鋼中Cr、Mo量を増加させ、不働態皮
膜を強固にすることが有効であるが、ダル仕上げロール
による圧延やそれに続く焼鈍−酸洗により表面皮膜が変
化し、鋼板が本来有する耐食性を十分発揮できない場合
がある。
【0005】特に防眩性を付与するために表面に凹凸を
付与する場合は耐食性の劣化に対し留意する必要があ
り、ダル仕上げにより形成された表面の状態と、それに
続く焼鈍−酸洗条件とを工夫することで耐食性および防
眩性を同時に高める方法が種々開示されている。
【0006】例えば特開平5−163588号公報には、耐食
性を高めるためにCr、Moを一定量以上含有した素材をダ
ル仕上げしたロールによる圧延とそれに続く焼鈍・酸洗
により、中心線平均粗さRaを0.5 〜10μmとした防眩性
と耐食性に優れる鋼板の製造方法が示されている。
【0007】しかし、表面の凹凸の大きさを示す指標で
ある中心線平均表面粗さRaが同じ数値でも、凹凸の分布
状態により光の散乱される度合いが変化し、防眩性が異
なる場合があるため観察する方向により色調が異なる場
合がある。また、その表面の凹凸の分布や凹凸の形態に
よっては異物の付着や汚れ落ち性が低下し耐食性や美観
が低下する場合がある。
【0008】特開平7−188862号公報には、ダルロール
圧延により最大表面粗さRmax :10μm以下、表層部に
ある1μm以上の差をもつ凹凸の個数を単位長さ当たり
10個/mm以上とする方法が示されている。凹凸の密度を
増加することで同じ中心線平均表面粗さでも防眩性が高
い鋼板とすることができるが、単に表面に形成する凹凸
を増加させるのでは異物付着が増加し、汚れ落ちが低下
するため耐食性が劣化する問題がある。また、ダルロー
ルにより圧延された鋼板表面では凸部の頂や谷が圧延方
向に長く伸び、これが光の反射に大きな方向性をもたせ
ることになり、鋼板を圧延の順方向と逆方向で並べた場
合に色調が異なり、美観を損ねる。また、圧延方向に伸
びた凸部が凹部にかぶさり、耐食性が低下する問題があ
る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】フェライト系ステンレ
ス鋼の耐候性を高めるためには鋼中のCr、Mo量を増加さ
せ、強固な不働態皮膜を形成することが有効である。し
かし、防眩性を付与するために行われるダル仕上げロー
ルを使った圧延により凹凸が付与されると、凹部への異
物の入りこみや、圧延ロールにより凸部の頂が圧延方向
に延ばされてかぶさりとなり耐食性が低下する問題があ
る。
【0010】そこで、本発明の課題は、防眩性が優れ、
圧延方向に伸ばされたかぶさりや異物付着による耐食性
低下、色調の方向性がない、防眩性に優れるフェライト
系ステンレス鋼板とその製造方法を開発することであ
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】防眩性は鋼板表面に形成
された凹凸により、入射光が散乱されるために得られる
特性であり、表面の凹凸の形態により大きく変化する。
【0012】図1(a) ないし(d) は入射光と反射光の関
係を説明するための模式図である。同図(a) は、入射光
と反射光分布との関係を示す模式図で鋼板表面が平坦で
表面凹凸が小さければ入射光角度α1 と反射光角度α2
は同等となる。図1(b) に示すように光が一定の方角か
ら凹凸のある鋼板表面に入射されると反射角は多種とな
り乱反射するが、表面凹凸の分布度合いによりその反射
光分布が決まる。この分布状態が人間の目に与えるつや
消し感を左右するのであり、単に凹凸の大きさを規定し
ても見え方が異なってしまう。
【0013】図1(c) 、(d) に鋼板表面の凹凸の稜角
(θ) の大きさにより反射光分布が変化する様子を示
す。稜角とは同図中 "θ" で示すように凸状体の先端部
の角度である。図1(d) に示すように入射光を全ての方
向に反射させ、防眩性を高めるためには、鋼板表面の凹
凸の稜角 (θ) が小さい程よい。つまり鋼板表面に付与
する凹凸を先鋭な形状とすることが望ましい。
【0014】そこで、稜角 (θ) が小さく、細かいピッ
チの凹凸を鋼板表面に転写するため、アルミナショット
によりダル加工した表面に、耐久性と圧延性を向上させ
るために硬質Crめっき層を生成させたロールを用いて、
凹凸の密度と凹凸の形状を大きく変化させて精密な調査
を行った。なお、そのような稜角が小さく、細かいピッ
チの凹凸の形成は、従来使用されてきたスチールショッ
トやグリッドを投射する方法および放電加工によりワー
クロールに凹凸を形成する方法では困難であった。
【0015】その結果、凹凸の稜角と凹凸の密度を一定
以上にすることで従来ロールで圧延された鋼板に比べ平
均表面粗さRaや最大表面粗さRmax のレベルが小さい場
合でも高い防眩性が得られ、稜角を一定範囲以下にする
ことで優れた耐食性が得られることを知見した。
【0016】さらに表面にCrめっき層を有するダルロー
ルで圧延されたダル仕上げ鋼板は圧延方向または板幅方
向の光反射特性に強い方向性がなく、色調の均一性が優
れることが判明した。すなわち、本発明における防眩性
に優れたステンレス鋼板の要旨は以下の通りである。
【0017】(1) 重量%でC:0.020 %以下、Si:0.50
%以下、Mn:0.50 %以下、Cu:0.20 〜1.0 %、Cr:17.5
%以上30%以下、Mo:1.5 %以上4.5 %以下、N:0.02
0 %以下、S:0.010 %以下、P:0.03%以下、Ti:0.
20%以下、Nb:0.50%以下、残部が実質的にFeから成
り、 Ti(%)+[Nb(%)/2] ≧10[C(%)+N(%)] 45≧Cr(%)+4×Mo(%)≧28 を満足するフェライト系ステンレス鋼板表面であって、
中心線平均表面粗さRaが0.5 μm以上、5μm以下で、
かつ下記式で示す平均傾斜角βが4°以上11°以下であ
る凹凸を有することを特徴とする防眩性と耐食性に優
れ、色調の方向性のないダル仕上げフェライト系ステン
レス鋼板。 β=Σ [tan-1 (ΔY/ΔX)]/N ここで、ΔY:粗さ測定方向での2点間における凸部分
の高さの差 (μm) ΔX:粗さ測定方向での2点間の距離 (2μm) N:6250 (測定長さ12.5mm間のΔYの測定個数)。
【0018】(2) ワークロール胴部の表面が、中心線平
均粗さRaが0.5 μm以上、5μm 以下で、かつ上記式で
示す平均傾斜角βが6°以上、11°以下である梨地状で
あり、その表面にCrめっき層を有することを特徴とする
ダル仕上げ用ワークロールで冷間圧延することを特徴と
する上記(1) 記載の防眩性に優れた外装用フェライト系
ステンレス鋼板の製造方法。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明において限定した諸条件に
ついて以下に説明する。なお、本明細書において「%」
は特にことわりがない限り、「重量%」である。
【0020】鋼板の成分塑性の規定 (a) C、N含有量 溶接など高温に加熱された後急冷することで粒界にCr炭
化物として析出し、耐食性を低下させる。また、含有量
に比例して鋼板の加工性が低下するため0.020%以下に
定めた。好ましくは、0.015 %以下である。
【0021】(b) Si Siは鋼の脱酸剤として有効な成分であるが、添加量の増
加とともに硬くなり加工性が劣化することからSi含有量
は0.50%以下と定めた。
【0022】(c) Mn 含有量が0.50%を超えると発錆や孔食の起点となり耐食
性が低下するため0.5%以下と定めた。
【0023】(d) P 鋼の耐食性、靱性を低下させるためできるだけ低い方が
望ましい。しかしP含有量を極度に低下させるのは製造
コストの上昇を招くためP含有量の上限を0.03%と定め
た。
【0024】(e) S Sは発錆や孔食の起点となり耐食性を劣化させるためで
きるだけ低い方が好ましい。極度に低下させるには製造
コストの上昇を招くため上限を0.01%に定めた。
【0025】(f) Cu Cuは鋼の耐食性および成形性を向上させるのに有効な元
素であるが、含有量が0.2 %未満では上記効果が認めら
れない。1.0 %を超えて含有させると成形性、靱性が劣
化することからCu含有量は0.2 〜1.0 %と定めた。
【0026】(g) Cr 耐食性を維持するための主要成分であり、Cr含有量の増
加とともに耐食性が向上する。鋼に所望の耐食性を確保
するには17.5%以上のCr含有量が必要である。30%を超
えて含有させると製造性が劣化し、コスト上昇を招くた
め上限を30%と定めた。好ましくは、20〜30%である。
【0027】(h) Mo MoはCrとの共存により鋼の耐食性を著しく向上させる成
分である。しかし、その含有量が1.5 %未満では耐食性
(特に腐食の成長抑制) が不十分であり、一方4.0 %を
超えて含有させると鋼の靱性、加工性が劣化することか
らMo含有量を1.5 〜4.0 %に定めた。
【0028】(i) Ti Ti添加により耐食性、加工性に悪影響を及ぼすC、Nを
固定するために添加するが、0.2 %を超えて含有させる
と表面疵が増加し製造性が劣化するため0.2 %を上限と
定めた。
【0029】(j) Nb Tiと同様に耐食性、加工性に悪影響を及ぼすC、Nを固
定するために添加するが、0.5 %を超えると鋼材が硬く
なり加工性が劣化することから上限を0.5 %に定めた。
【0030】(k) Ti+(Nb/2)≧10(C+N) Ti+(Nb/2)が10(C+N)を下回るとC、Nの固定が不十分
となり、所望の耐食性を確保することができないことか
らTi+(Nb/2)≧10(C+N)の式を定めた。好ましくはTi+
(Nb/2)≧15(C+N)である。
【0031】(l) 45≧Cr+4×Mo≧28 Cr+4×Moの値が28未満では鋼の耐食性が急激に劣化
し、一方、前記値が45を超えると鋼の靱性、加工性の劣
化が著しく、かつ高価となることから式45≧Cr+4×Mo
≧28の式を定めた。好ましくは30以上、40以下である。
【0032】表面形態の規定 (1) 鋼板、ワークロール表面の中心線平均表面粗さ (R
a) ダルロール圧延により鋼板に防眩性を付与するためには
入射してきた光線を散乱させるためにランダムな凹凸を
形成させる必要がある。JIS B 0601で規定された凹凸の
中心線平均表面粗さが0.5 μmより小さい場合には光の
正反射が大きく、充分な防眩性が得られないため中心線
平均表面粗さを0.5 μm以上とする。
【0033】鋼板表面の中心線平均表面粗さが5μmを
超えると凹凸が深くなり、汚れや海塩粒子などが付着し
やすくなり耐食性が低下するため中心線平均表面粗さを
5μm以下とする。
【0034】圧下率を調節することで鋼板表面の中心線
平均表面粗さを適当な範囲に制御することが可能なた
め、ダルロールの中心線平均表面粗さの上限は特に規定
しないが実用的なレベルとしては10μm以下が妥当であ
る。
【0035】(2) 平均傾斜角 (β) 鋼板の防眩性を高めるとともに、耐食性を低下させない
ために特に重要な因子が平均傾斜角βである。
【0036】図2は平均傾斜角を説明する図である。図
中の参照符号1は鋼板表面の粗さ曲線の一つの凸部を示
し、Xは表面粗さ測定方向を、Yは凸部の高さ方向を示
す。傾斜角は凸部の傾斜 (AまたはB) と水平線Xの狭
角 (β1 、β2 ) である。平均傾斜角とはロール方向表
面を12.5mmの距離の表面粗さを測定し、その粗さ曲線か
ら2μm間隔で6250ヶ所の傾斜角を求め平均した値であ
る。
【0037】すなわち、平均傾斜角βを次のように定義
する。 β=Σ [tan-1( ΔY/ΔX)]/N ここで、ΔY:粗さ測定方向での2点間における凸部分
の高さの差 (μm) ΔX:粗さ測定方向での2点間の距離 (2μm) N:6250 (測定長さ12.5mm間のΔYの測定個数) 粗さ測定方向での2点間における凸部分の高さの差と
は、図2で示す粗さ測定方向、X方向における2点Y1
とY2 の高さの差Y2 −Y1 である。また、斜面Bでは
3 −Y4 となる。すなわち、高さの差は絶対値であ
る。なお、表面粗さ測定長さ12.5mmはJIS に規定されて
いる表面粗さの測定長さである。
【0038】表面に転写された凸部の稜角が小さいほ
ど、散乱される光の割合が増加し、防眩性が向上する。
板表面に対して傾斜している度合いである傾斜角を用い
て表現すると、傾斜角が大きくなるほど稜角が小さくな
り防眩性が向上することになる。
【0039】ワークロールの平均傾斜角は6°以上、望
ましくは8°以上が好ましい。この角度はCrめっきの密
着性と、後述する瘤状析出物の密度に直接関係してい
る。角度が小さいと析出した粒状体が充分密着しなかっ
たり、つや消し性が不十分になり、また、耐剥離性が劣
る結果となる。ワークロールの平均傾斜角には特に上限
は設けないが投射加工という加工法の特徴上、角度を極
端に大きくすることはできない。一般には11°以下が好
ましい。
【0040】このワークロールを用いてダル仕上げされ
た鋼板は、平均傾斜角度が4°未満の場合は正反射され
る光が多く、防眩性が十分でない。また、傾斜角度が11
°超になると凹凸に異物や汚れが入り込み、耐食性が低
下するので平均傾斜角度を4°以上11°以下とした。
【0041】(3) ワークロール表面のCrめっき Crめっきは鋼板の色調を均一にする効果と耐食性を向上
させる上で重要である。Crめっきはアルミナ投射により
ロール表面に形成した急峻な凹凸をそのまま残すのでは
なく急峻な凹凸の凸部にCrめっきを瘤状に析出させてロ
ール表面を被覆するために行う。このようなCrめっきを
施こすことにより次のような効果が得られる。
【0042】アルミナ粒の投射を行ったままのロール
で圧延すれば、従来のグリッドダルロール使用時に比
べ、圧延荷重が2倍以上と高くなるが、Crめっきを施す
ことにより圧延荷重を従来のグリッドダルロール並に下
げることができる。
【0043】耐摩耗性が得られ、ロールのつや消し特
性が長期間維持できる。 Crめっきしたロールで圧延された鋼板には光反射特性
に強い方向性 (圧延方向または板幅方向) が残らず、つ
や消し効果が顕著となる。
【0044】ロール表面の微細で急峻な凹凸に電気めっ
きを施すと、設定された定電流を流しても、突起部では
先端が鋭利なために電流密度がこの設定電流より高くな
り瘤状に粒子が析出する。突起部が離散的に並んでいれ
ば、突起部のみにCrめっきが施されることになり、かえ
ってめっきの耐久性は劣化する。しかし、アルミナ投射
による均一で突起間隔のきわめて短い場合には、瘤状粒
子が連結し全面を覆うようになる。充分なめっき厚みを
設定すれば凹凸の凹部も全てめっきが施され、さらに先
端の突起部に半球状の凹凸が形成されることになる。か
かる形態の凹凸は鋭い突起をもったダルロールに比べ摩
擦抵抗が小さく、圧延荷重も従来のグリッドダルの場合
と変わらない。
【0045】図3(a) ないし(c) は投射加工したロール
表面の表面粗さを示す模式図で、図3(a) は従来のグリ
ッドを投射して得たダルロールの場合、図2(b) はアル
ミナ粒を投射したままのロールの場合、図3(c) はアル
ミナ粒投射後Crめっきした本発明のロールの場合をそれ
ぞれ示す。
【0046】これらの図に示すように、本発明のロール
の場合、図3(c) からも分かるように、凹凸は、従来の
グリッドダルロールに比べ、平均傾斜角が大きく、光を
乱反射させるのに十分な凹凸となっている。
【0047】図4は図3(b) に示した表面粗さのロール
で圧延した鋼板の表面粗さを3次元(Y:圧延方向、
X:圧延と直行する方向、Z:垂直方向) 的にプロット
した図である。図5は、図3(c) に示した表面粗さのロ
ールで圧延した鋼板の表面粗さを同じく3次元的にプロ
ットした図である。
【0048】図4からわかるようにアルミナ粒を投射し
たままの従来のロールで圧延した鋼板表面では、凸部の
頂や谷が圧延方向に長く伸びており、これが光の反射に
大きな方向性をもたせることになる。また、この伸びた
凸部がへげ状のかぶりとなり耐食性を低下させる原因と
なる。この方向性とヘゲ状のかぶさりは、微細、急峻な
凹凸が圧延時のロールと材料の相対すべりにより、圧延
方向に微細突起の滑り痕を残すためである。
【0049】しかし、図3(c) に示した表面粗さの本発
明において使用するロールで圧延すると、図5から判る
ように圧延材は凹凸形状の圧延方向と幅方向の差が小さ
く、方向性の小さい表面となる。これは同一すべり量
(同一圧下率) であれば、相対的に凸部の径が大きい方
が、その形状のくずれが小さくなることから容易に説明
できる。
【0050】なお、Crめっきは通常の工業用硬質Crめっ
きを施せばよく、めっき厚みとしては5〜100 μmが望
ましい。より好ましくは10〜100 μm。さらに10〜50μ
mである。めっき厚みが薄い場合、瘤状の析出が十分に
起こらず、アルミナ投射による急峻な凹凸形状がそのま
ま残る場合がある。
【0051】このような表面では、前記したように、圧
延荷重が高くなりすぎることや、製品の反射特性に強い
方向性が残ったり、耐食性が低下するなどの不具合が生
じる。逆にめっき厚みが厚くなりすぎると下地のアルミ
ナ投射による密度の高い突起の効果が小さくなり、めっ
き表面が平滑化されすぎる問題がある。従って、めっき
厚みは100 μmを上限とするのが好ましい。
【0052】下地処理としてNiめっきを施すことで微細
な凹部へのめっきを施し、凸部の先端部をCrめっきによ
り瘤状にしてもよい。特にNiめっきは施さなくても、Cr
めっきのみでも上記効果は得られる。しかし、凹凸が大
きい場合にNiめっきを施すと凹部に優先的にNiめっきが
なされ、後のCrめっきが容易となる。Niめっきの厚さは
あまり厚くなると剥離しやすいので10μm以下にするの
が好ましい。本発明においては、冷間圧延後のフェライ
ト系ステンレス鋼板については特に規定しないが、実用
上からは、さらに下記条件下で光輝焼鈍を行うのが好ま
しい。
【0053】製造条件の規定 光輝焼鈍 冷間圧延により加工硬化した鋼板を軟化させるととも
に、鋼板表面に生成する不働態皮膜を強固にするために
行う。通常の大気焼鈍−酸洗材に比べ耐食性が優れる鋼
板となる。
【0054】光輝焼鈍の雰囲気ガスについては特に規定
しないが、アンモニア分解ガスまたはN2とH2を任意の比
率で混合させたものが一般的に用いられている。この場
合、耐食性の優れるCr、Moが濃化した酸化皮膜を得るに
は露点を−30℃以下とすることが好ましい。
【0055】鋼板を軟質化し加工性を高めるためには熱
処理温度を900 ℃以上にする必要があるが、1050℃以上
に加熱すると結晶粒が粗大となり加工性が低下するため
熱処理温度は900 ℃以上1050℃以下とする。
【0056】光輝焼鈍は非酸化性雰囲気で焼鈍を行うこ
とにより酸化スケールの生成がなく、それに続く酸洗が
不要となるためCrイオンや廃酸などの公害物質の処理が
不要となるメリットもある。
【0057】
【実施例】[実施例1]真空溶解炉を用いて表1に示す各
成分組成の鋼を溶製し、熱間圧延により厚さ3.0 mmの鋼
板としたのち、冷間圧延、仕上げ軟化焼鈍を行い、0.8
mmのダル仕上げ鋼板とした。なお、いずれの鋼板も、最
終パスをアルミナ投射にCrめっきしたワークロールを用
いて約10%の圧下率でダル仕上げし、さらに980 ℃×2
分の軟化焼鈍−酸洗を行い供試材とした。鋼板表面の中
心線平均粗さは1.4 〜1.6 μm、平均傾斜角は 6.5°で
あった。
【0058】<評価> 耐食性:大気暴露試験 海岸より約1kmの工業地帯に2年間の大気暴露試験を実
施し、回収したサンプルに生成した孔食の最大深さを測
定するとともに、JIS Z 2371の付属書に示されているレ
イティングナンバー表と発錆状況を対比して発錆の程度
を判定した。
【0059】結果は同じく表1にまとめて示すが、これ
より明らかなように、本発明で規定する成分範囲の鋼板
は耐食性が優れるが、成分範囲を外れた鋼は耐食性が劣
る結果となった。
【0060】[実施例2]表2に示す成分の鋼を溶製−鋳
造−熱間圧延により板厚3.60mm、幅1000mmの熱延鋼板と
し、1.2 mmまで中心線平均表面粗さRa=0.1 μmのワー
クロールを用いて冷間圧延し、中間焼鈍−酸洗を行った
後0.56mm厚さまでRa=0.1 μmのワークロールを用いて
10パスの冷間圧延を行った。それに続き、最終パスのワ
ークロール表面の加工方法、中心線表面粗さ、平均傾斜
角度を種々に変化させたロールの表面にCrめっきしたも
のと、ダル仕上げままとしたロールを用いて1パスの冷
間圧延により鋼板を0.5 mmとした。圧延長さは約10kmで
あった。冷間圧延後の仕上げ軟化焼鈍を灼熱温度980 ℃
で下記2条件で行った。
【0061】大気開放、ブタン燃焼ガス雰囲気 70%N2+30%H2の混合ガス雰囲気。露点−40℃〜−45
℃。
【0062】大気開放下で熱処理した鋼板は熱処理で生
成した酸化スケールを除去するため、70℃、15%Na2SO4
水溶液中で20mA/cm2×2分の電解酸洗したのち、50℃、
1.0%HF+7%HNO3水溶液中へ1分間浸漬し、完全脱ス
ケールを行った。上記条件で製造した鋼板よりサンプル
を採取して下記項目の評価を行った。
【0063】<評価> 防眩性:鋼板表面の光沢度JIS Z 8741 (60°G)の規定に
従い測定した。 耐食性:大気暴露試験 実施例1の場合と同様にして行った。 色調方向性:目視評価により行った。
【0064】結果は表3にまとめて示すが、表3より明
らかなように表面粗さを所定の範囲とすることで鋼の優
れた耐食性と防眩性、色調の方向性が満足できるが、本
発明の規定条件からはずれた場合には防眩性、耐食性、
色調の方向性のいずれか1つまたは複数が劣る結果とな
った。
【0065】最終の仕上げ軟化焼鈍を光輝焼鈍で行うと
耐食性が向上するが、目視の防眩性と60°GS値について
は、60°GSが150 以下になると眩しさが薄れ、値が低い
ほど眩しさを弱く感じる。60°GS値が150 以下の鋼板で
高い防眩性が得られると考えられるが、外装用の鋼板と
しては60°GSが100 以下となるのが望ましい。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【発明の効果】以上のことから明らかなように、本発明
によれば耐食性と防眩性が優れたフェライト系ステンレ
ス鋼板を製造することが可能となる。また、表面に形成
された凹凸内へ入り込む汚れ落ちが良好であるため異物
付着による耐食性劣化、表面外観の経時劣化が少ないた
め長期にわたり美麗な外観とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a) ないし(d) は、防眩性の概念を説明す
るための模式図である。
【図2】平均傾斜角を説明するための模式図である。
【図3】図3(a) および(b) は従来のダルロールの、図
3(c) は本発明によりCrめっきを施したダルロールの表
面粗さ状態を示すグラフである。
【図4】アルミナ投射ダルロールで圧延した場合の圧延
材料の表面に残るすべり痕を示す説明図である。
【図5】アルミナ投射ダルロール表面にCrめっきを施し
たロールで圧延した場合の圧延材料の表面に残るすべり
痕を示す説明図である。
フロントページの続き (72)発明者 宮腰 皓 茨城県鹿嶋市大字光3番地 住友金属工 業株式会社鹿島製鉄所内 (56)参考文献 特許3233056(JP,B2) 特許3221365(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21B 1/22 B21B 3/02 B21B 27/00 B21B 27/02

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で C:0.020 %以下、Si:0.50 %以下、Mn:0.50 %以下、
    Cu:0.20 〜1.0 %、 Cr:17.5%以上30%以下、Mo:1.5 %以上4.5 %以下、
    N:0.020 %以下、 S:0.010 %以下、P:0.03%以下、Ti:0.20%以下、
    Nb:0.50%以下、 残部が実質的にFeから成り、 Ti(%)+[Nb(%)/2] ≧10[C(%)+N(%)] 45≧Cr(%)+4×Mo(%)≧28 を満足するフェライト系ステンレス鋼板表面であって、
    中心線平均表面粗さRaが0.5 μm以上、5μm以下で、
    かつ下記式で示す平均傾斜角βが4°以上11°以下であ
    る凹凸を有することを特徴とする防眩性と耐食性に優
    れ、色調の方向性のないダル仕上げフェライト系ステン
    レス鋼板。 β=Σ [tan-1 (ΔY/ΔX)]/N ここで、ΔY:粗さ測定方向での2点間における凸部分
    の高さの差 (μm) ΔX:粗さ測定方向での2点間の距離 (2μm) N:6250 (測定長さ12.5mm間のΔYの測定個数)
  2. 【請求項2】 ワークロール胴部の表面が、中心線平均
    粗さRaが0.5 μm以上、5μm 以下で、かつ上記式で示
    す平均傾斜角βが6°以上、11°以下である梨地状であ
    り、その表面にCrめっき層を有することを特徴とするダ
    ル仕上げ用ワークロールで冷間圧延することを特徴とす
    る請求項1記載の防眩性に優れた外装用フェライト系ス
    テンレス鋼板の製造方法。
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