JPH09291382A - 防眩性に優れた高耐銹フェライト系ステンレス鋼板の製造方法 - Google Patents
防眩性に優れた高耐銹フェライト系ステンレス鋼板の製造方法Info
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Abstract
フェライト系ステンレス鋼板の防眩性を改善することを
目的とするものである。 【解決方法】 フェライト系ステンレス鋼帯において、
酸化性雰囲気で1000〜1100℃で焼鈍し、ソルト
処理後、HF:70〜100g/l、HNO3 :100
〜150g/l、Feイオン:25〜40g/lの硝弗
酸中で50〜60℃で酸洗することにより、原子間力顕
微鏡で測定した表面粗さを2次元フーリエ変換し、可視
光域350〜750nmの波長成分のスペクトル密度P
が、log10P≧2.1である、防眩性に優れた高耐銹
性フェライト系ステンレス鋼板を得る。
Description
材において防眩性、耐銹性に優れるフェライト系ステン
レス鋼板の製造方法に関するものである。
建材としてはSUS304やSUS316のオーステナ
イト系ステンレス鋼板が使用されてきたが、ウォーター
フロント開発の活性化に伴い臨海地区では耐銹性が必ず
しも十分でなく、長尺の屋根では熱膨張・収縮による疲
労の問題から耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼
板が望まれている。
銹性と共に、意匠性の問題がある。意匠性としては屋根
や壁等に使用される場合、近年、特に防眩性の要求が高
まっている。一般に建材に使用されるステンレス鋼板の
表面仕上げは焼鈍・酸洗材(2D)、それにダル仕上げ
を施した材料や、光輝焼鈍材(BA)にダル仕上げした
ものが防眩性の点から使用されているが、フェライト系
ステンレス鋼板の酸洗材はSUS304等のオーステナ
イト系ステンレス鋼に比較して防眩性が劣る。これは、
オーステナイト系ステンレス鋼板の硝弗酸酸洗材が粒界
浸食溝等のミクロ凹凸による光の散乱により乳白色で且
つ光沢が低くなるのに比較し、フェライト系ステンレス
鋼板、特に、高Cr,Moかつ安定化元素Nb,Ti等
を添加した鋼は耐粒界腐食性を高めているため、粒界浸
食溝が焼鈍・酸洗で形成できず、それらのミクロな凹凸
による防眩性の低下が難しいためである。一方、光輝焼
鈍材にダル仕上げをしたものは、焼鈍後も冷延ままの素
地が残るために、ダル仕上げをしても金属光沢が残り、
防眩性の観点から望ましくない。
テンレス鋼板としては、特開平5−163557号公報
や特開平6−346196号公報があるが、いずれも防
眩性はダル圧延等により付与し、耐食性はダル加工面の
倒れ込みを焼鈍・酸洗で回避することや成分を規定し不
動態皮膜で確保する方法であり、防眩性を向上するため
にダル圧延前の素材の防眩性を積極的に向上させること
はしていなかった。
従来技術の問題点を解消するもので、屋根、壁等の外装
用建材において、高耐銹性フェライト系ステンレス鋼板
の防眩性を改善することを目的とするものである。
ェライト系ステンレス鋼板の防眩性を改善する方法につ
いて種々研究した結果、優れた防眩性を有するフェライ
ト系ステンレス鋼板を得るには、原子間力顕微鏡(AF
M)により、正方形領域を格子状に等間隔で測定した表
面形状から2次元フーリエ分解を行い、可視光域350
〜750nmの波長成分のスペクトル密度Pが、下記式
(1)である表面が必要であることを見いだした。
性の優れるフェライト系ステンレス鋼板を1000〜1
100℃で焼鈍し、続いてソルト処理し、続いて70〜
100g/l(リットル)、HNO3 :100〜150
g/l、Feイオン:25〜40g/lの硝弗酸の混合
液中、50〜60℃で浸漬酸洗を施すことを特徴とする
防眩性に優れた高耐銹フェライト系ステンレス鋼板の製
造方法を見いだし、さらに、上記の方法に加え、Ra=
1.0〜10.0μmにダル仕上げされたロールで圧下
率1〜3%で調質圧延することを特徴とする防眩性に優
れた高耐銹フェライト系ステンレス鋼板の製造方法を見
いだした。
ライト系ステンレス鋼板の防眩性、耐銹性について研究
した結果、以下の知見を得た。防眩性および表面微細構
造を種々研究した結果、まず防眩性向上には光沢度GS
45の低下が重要であり、さらに白っぽい色調(L*
大)が好まれることが分かった。さらに、微細構造との
関係を見ると、表面に焼鈍・酸洗による高さ数十nm、径
が1μm前後の微細な凹凸が形成される表面が防眩性向
上に重要であることを明らかにし、その微細凹凸と光学
的関係を原子間力顕微鏡(AFM)により解析した結
果、図1に示すように、その可視光域350〜750nm
波長規模の起伏が見られる表面が防眩性に優れ、図2に
示すように、その可視光域350〜750nm波長成分の
スペクトル密度PとGS45/L* に相関がある。つま
り、鏡面反射率を示す光沢度GS45と拡散反射率を示
す明度L* の比が小さいほど、防眩性は良好であり、可
視光波長域程度の起伏が多く、特に光沢度GS45を1
00%以下にするには、L* が70〜75程度であるこ
とから、GS45/L*≦1.3が必要であり、それを
得るには、log10P≧2.1にすれば達成できること
を究明した。
の基材として使用されるフェライト系ステンレス鋼板の
合金成分を限定した理由について説明する。CおよびN
は溶接部の耐粒界腐食性を劣化させる元素であり低い方
が望ましいがTiおよびNbの添加により無害化し得
る。しかしながら、C,N量の増加により、Ti,Nb
を高める必要があり、また、特にCr,Moの高いフェ
ライト系ステンレス鋼板では、C,Nは靭性を劣化さ
せ、製造性を悪化させることから、C量は0.02%以
下、N量は0.02%以下とした。
る塩素イオンに対する耐孔食性を高めて耐銹性を向上さ
せるのに有効な元素であり、これらの量を高めるほど耐
銹性が向上する。図3に示すように、SUS316以上
の耐銹性を得るには、耐孔食指数PI(Cr+1.7M
o)が24以上必要である。Cr、Mo量はCr:2
1.5〜31.0%、Mo:0.3〜4.0%において
PI≧24を満足する範囲とした。
化物の生成による粒界腐食を防止するため添加するが、
Tiは不動態皮膜中への濃縮効果により耐銹性を高める
こと、更に非金属介在物がNbのみの場合にはMnS等
の腐食の起点となりやすい介在物となるが、Tiを0.
10%以上添加することによって化学的な安定なTi系
介在物となる反面、過剰の添加は製品表面に疵を生じ易
くなることから、これらを総合してTi量は0.10〜
0.30%とした。Nbは耐粒界腐食性を高めるととも
に、適量添加により靭性を改善するため0.15%以上
添加するが、過度の添加はその効果が飽和すること、か
つ高価となることから0.15〜0.50%とした。
5Cr−1.5Mo−0.20Nb−0.15Ti材の
冷延板を用いて焼鈍時の焼鈍温度、ソルト処理後の酸液
の濃度について検討した。同時に耐銹性についても検討
を行った。焼鈍温度については図4に示すように大気中
1000℃未満の焼鈍では生成されるスケール厚さが薄
く、焼鈍、ソルト処理後、HF:80g/l、HN
O3 :130g/l、Feイオン:30g/l、50
℃、60秒硝弗酸混合酸液中で酸洗しても冷延時の表面
凹凸が残り、log10<2.1であった。一方、100
0℃以上ではスケールの生成厚さの増加により、硝弗酸
の混合酸液中で酸洗したものは表面に高さが300nm程
度、径が1μm程度の微小な凹凸が形成され、log10
P≧2.1の防眩性に優れた表面が得られた。また、焼
鈍温度を1100℃以上にすると、その後の酸洗におい
てスケール直下に生成したCr欠乏層が酸洗において溶
削されず、耐食性を損なうため焼鈍温度の上限を110
0℃とした。
度を低下させるには、硝弗酸酸洗の酸洗液濃度に最適な
範囲があること、酸洗濃度によりCr欠乏層による耐食
性に変化があることを見い出した。log10P≧2.1
および改良型塩水噴霧試験による耐銹性が母材と同等以
上になる範囲は図5に示すようにHF:70〜100g
/l、HNO3 :100〜150g/lの範囲である。
6に示すように、Feイオン濃度の増加と共に、酸洗時
の溶削量は低下し、Feイオン濃度40g/lを超える
とCr欠乏層の溶削ができず、耐銹性が劣化することか
ら、上限を40g/lとした。また、下限は、特に酸洗
時間の長くなった場合、肌荒れにより表面品位を落とす
ことから25g/lとした。
NO3 =70/100g/lでは、50℃未満では、l
og10P<2.1であると共に酸洗時の溶削量不足か
ら、耐銹性が劣ること、60℃より高い温度では、返っ
てlog10Pが低くなってしまうことから、50〜60
℃で酸洗することが好ましい。
〜10.0μmにダル仕上げされたロールで、圧下率1
〜3%で調質圧延することにより、光沢度が低下される
が、圧下率を高めると、強度が高くなり、加工性が劣る
ことから、圧下率はダルの転写が可能な1〜2%が望ま
しい。
2.5Cr−1.5Mo−0.20Nb−0.15Ti
材の1.2mm厚の冷間圧延板を以下の条件で焼鈍・酸洗
し、光沢、色調、肌荒れ、スケール残り等の表面品位と
孔食電位、改良型塩水噴霧試験により耐食性、耐銹性に
ついて調査した。 <製造方法> ・焼 鈍:大気中950〜1100℃×30秒,空冷 ・ソルト:450〜500℃ ・酸 洗:硝弗酸酸洗 HF:20〜200g/l HNO3 :40〜150g
/l Feイオン濃度:0〜45g/l 40〜65℃,60秒 <評価方法> ・光沢度:JIS Z8741 GS45(L方向) ・色 調:JIS Z8729 L* ,a* ,b* ・肌荒れ:目視検査 ・耐食性:孔食電位(JIS G0577) 3.5%NaCl,30℃,20mV/min ,Ar脱気 100μA/cm2 に達した電位 ・耐銹性:改良型塩水噴霧試験 5%NaCl+0.2%H2 O2 ,35℃,24Hr その他はJIS Z2371塩水噴霧試験に準拠
と比較の製造方法と防眩性、表面品位、耐食性、耐銹性
の評価結果を示したものである。本発明の製造方法No.
1〜10は、log10P≧2.1、光沢度GS45が1
00%以下であり、色調もL* が72〜76、a,bは
±1.0以内で肌荒れも無く耐食性、耐銹性も母材並で
あった。
造した材料を、ショットブラスト処理によりRa=1.
0〜10.0μmにダル加工された圧延ロールで、圧下
率1〜3%で圧延された材料の光沢度、色調を表2に示
す。焼鈍酸洗後の光沢度GS45が50%前後の光沢の
低い材料はダル圧延によりやや光沢度が上昇し、一方、
焼鈍酸洗後の光沢度GS45が60〜100のものは圧
延により光沢度はやや低下する。また、色調はダル圧延
前後で大きな変化はない。
外装材において高耐銹性フェライト系ステンレス鋼板の
耐銹性を損なうことなく、防眩性を向上させることが可
能となり、工業的な利益は極めて大きい。
可視光域での凹凸分布を示す図。
ル密度PとGS45/L* の関係を示す図。
係を示す図。
焼鈍温度と酸洗後の可視光域350〜750nm波長成分
のスペクトル密度Pの関係を示す図。
硝弗酸酸洗後のlog10P≧2.1と母材と同等の耐銹
性が得られる酸洗濃度範囲を示す図。
硝弗酸液中のFeイオン濃度と表面性状、耐銹性の関係
を示す図。
硝弗酸液温度と可視光域350〜750nm波長成分のス
ペクトル密度Pの関係を示す図。
Claims (3)
- 【請求項1】 原子間力顕微鏡(AFM)により、正方
形領域を格子状に等間隔で測定した表面形状から2次元
フーリエ分解を行い、可視光域350〜750nmのスペ
クトル密度Pが、下式(1) 【数1】 であることを特徴とする防眩性に優れたフェライト系ス
テンレス鋼板。 - 【請求項2】 重量%として、 C ≦0.02%、 N ≦0.02%、 Cr:21.5〜31.0%、 Mo:0.3〜4.0%、 Ti:0.10〜0.30%、 Nb:0.15〜0.50%、 Cr+1.7Mo≧24.0% を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなるフェラ
イト系ステンレス鋼板を前記log10P≧2.1を満足
するように、酸化性雰囲気で1000〜1100℃で焼
鈍し、続いてソルト処理し、続いてHF:70〜100
g/l、HNO3:100〜150g/l、Feイオ
ン:25〜40g/lの硝弗酸の混合液中、50〜60
℃で浸漬酸洗を施すことを特徴とする防眩性に優れた高
耐銹フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。 - 【請求項3】 請求項2による製造方法に引続き、Ra
=1.0〜10.0μmにダル仕上げされたロールで、
圧下率1〜3%の調質圧延を行うことを特徴とする防眩
性に優れた高耐銹フェライト系ステンレス鋼板の製造方
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10291396A JP4070253B2 (ja) | 1996-04-24 | 1996-04-24 | 防眩性に優れた高耐銹フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 |
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JPH09291382A true JPH09291382A (ja) | 1997-11-11 |
JP4070253B2 JP4070253B2 (ja) | 2008-04-02 |
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ID=14340101
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JP10291396A Expired - Lifetime JP4070253B2 (ja) | 1996-04-24 | 1996-04-24 | 防眩性に優れた高耐銹フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2012124528A1 (ja) | 2011-03-14 | 2012-09-20 | 新日鐵住金ステンレス株式会社 | 耐銹性と防眩性に優れた高純度フェライト系ステンレス鋼板 |
CN105074035A (zh) * | 2013-03-27 | 2015-11-18 | 新日铁住金不锈钢株式会社 | 研磨后的表面耐蚀性优异的铁素体系不锈钢及其制造方法 |
JP2017179522A (ja) * | 2016-03-31 | 2017-10-05 | 日新製鋼株式会社 | 耐食性に優れたステンレス鋼加工品 |
JP2017179519A (ja) * | 2016-03-31 | 2017-10-05 | 日新製鋼株式会社 | 耐食性に優れたステンレス鋼板 |
-
1996
- 1996-04-24 JP JP10291396A patent/JP4070253B2/ja not_active Expired - Lifetime
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WO2012124528A1 (ja) | 2011-03-14 | 2012-09-20 | 新日鐵住金ステンレス株式会社 | 耐銹性と防眩性に優れた高純度フェライト系ステンレス鋼板 |
US9289964B2 (en) | 2011-03-14 | 2016-03-22 | Nippon Steel & Sumikin Stainless Steel Corporation | High purity ferritic stainless steel sheet excellent in corrosion resistance and anti-glare property |
KR20180133567A (ko) | 2011-03-14 | 2018-12-14 | 닛폰 스틸 앤드 스미킨 스테인레스 스틸 코포레이션 | 내녹성과 방현성이 우수한 고순도 페라이트계 스테인리스 강판 |
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JP2017179519A (ja) * | 2016-03-31 | 2017-10-05 | 日新製鋼株式会社 | 耐食性に優れたステンレス鋼板 |
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