JPWO2020203370A1 - 音響整合シート、音響整合層用組成物、音響波プローブ、音響波測定装置、及び音響波プローブの製造方法 - Google Patents

音響整合シート、音響整合層用組成物、音響波プローブ、音響波測定装置、及び音響波プローブの製造方法 Download PDF

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Abstract

下記成分(A)中に下記成分(B)を含む音響整合シート、音響整合層用組成物、音響波プローブ、音響波測定装置、及び音響波プローブの製造方法。
(A):樹脂及びゴムのうちの少なくとも1種
(B):上記成分(A)よりも低い音速を有し、数平均粒子径が1.0μm以下である、樹脂粒子及びゴム粒子のうちの少なくとも1種

Description

本発明は、音響整合シート、音響整合層用組成物、音響波プローブ、音響波測定装置、及び音響波プローブの製造方法に関する。
音響波測定装置には、音響波を生体等の被検対象に照射し、その反射波(エコー)を受信して信号を出力する音響波プローブが用いられる。この音響波プローブにより受信した反射波は電気信号に変換され、画像として表示される。したがって、音響波プローブを用いることにより、被検対象内部を映像化して観察することができる。
音響波としては、超音波、光音響波などが、被検対象に応じて、また測定条件に応じて適宜に選択される。
例えば、音響波測定装置の1種である超音波診断装置は、被検対象内部に向けて超音波を送信し、被検対象内部の組織で反射された超音波を受信し、画像として表示する。
また、光音響波測定装置は、光音響効果によって被検対象内部から放射される音響波を受信し、画像として表示する。光音響効果とは、可視光、近赤外光又はマイクロ波等の電磁波パルスを被検対象に照射したときに、被検対象が電磁波を吸収して発熱し、熱膨張することにより音響波(典型的には超音波)が発生する現象である。
音響波測定装置は、被検対象との間で音響波の送受信を行うため、音響波プローブには被検対象(典型的には人体)と音響インピーダンスを整合させることが要求される。この要求を満たすために、音響波プローブには音響整合層が設けられる。このことを音響波プローブの1種である超音波診断装置用探触子(超音波プローブとも称される)を例に説明する。
超音波プローブは、超音波を送受信する圧電素子と、生体に接触する音響レンズとを備え、圧電素子と音響レンズとの間には音響整合層が配されている。圧電素子から発振される超音波は音響整合層を透過し、さらに音響レンズを透過して生体に入射される。音響レンズと生体との間の音響インピーダンス(密度×音速)には通常は差がある。この差が大きいと、超音波が生体表面で反射されやすく、超音波の生体内への入射効率が低下してしまう。そのため、音響レンズには生体に近い音響インピーダンス特性が求められる。
他方、圧電素子と生体との間の音響インピーダンスの差は一般に大きい。それゆえ、圧電素子と音響レンズとの間の音響インピーダンスの差も通常は大きなものとなる。したがって、圧電素子と音響レンズとの積層構造とした場合には、圧電素子から発せられた超音波は音響レンズ表面で反射し、超音波の生体への入射効率は低下する。この超音波の反射を抑制するために、圧電素子と音響レンズとの間には上記の音響整合層が設けられる。音響整合層の音響インピーダンスは生体又は音響レンズの音響インピーダンスと圧電素子の音響インピーダンスとの間の値をとり、これにより圧電素子から生体への超音波の伝播が効率化する。また、近年では、音響整合層を、音響整合シート(音響整合層材)を複数積層させた複層構造として、圧電素子側から音響レンズ側に向けて音響インピーダンスに傾斜を設けることにより、超音波の伝播をより効率化した音響整合層の開発が進められている。
上記複層構造の音響整合層を構成する音響整合シートの材料として、熱硬化性樹脂及びシリコーン樹脂粒子等を用いることが知られている(例えば、特許文献1)。
特開2014−168489号公報
上述の音響整合層における音響インピーダンスの傾斜は、圧電素子に近いほど音響整合シートの音響インピーダンスが大きく、音響レンズに近いほど音響インピーダンスが小さくなるように設計される。すなわち、圧電素子側では圧電素子の音響インピーダンス(通常は、25×10kg/m/sec程度)に近く、音響レンズ側では生体の音響インピーダンス(人体では、1.4〜1.7×10kg/m/sec)に近い音響整合シートが、それぞれ求められる。傾斜をより緩やかにする点からは、音響インピーダンスの異なる音響整合シートの積層数を、より増やすことが求められる。
音響整合シートの音響インピーダンスは、シート構成材料の密度及び音速により調節することができる。音響整合層を複層構造として音響インピーダンスに所望の傾斜を設けるためには、音速を抑えた音響整合シートを調製することも必要となってくる。
また、複層構造の音響整合層は、通常、音響整合シートを積層し、加熱して作製される。つまり、音響整合層に電極を固定するに当たって溶融はんだ等が用いられるため、音響整合シートには耐熱性が要求される。さらに、超音波(音響波)を高感度で送受信するため、音響整合シートには十分な超音波(音響波)感度が要求される。
しかしながら、本発明者らが検討したところ、特許文献1に記載の音響整合層を構成する音響整合シートでは、低い音速を実現しながら、耐熱性と音響波感度の両特性を所望のレベルへと高めることが困難であることがわかってきた。
本発明は、音速が低く、十分な耐熱性を有し、また、十分な音響波感度を有する音響整合シート及びこのシートの形成に適した音響整合層用組成物を提供することを課題とする。
また本発明は、本発明の音響整合シートを音響整合層として有する音響波プローブ、及びこれを用いた音響波測定装置を提供することを課題とする。
また本発明は、本発明の音響整合シートを形成するための組成物を用いて音響整合層を形成する工程を含む音響波プローブの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、樹脂及びゴムのうちの少なくとも1種を母材として、この母材中に、母材よりも音速が低く、数平均粒子径が特定の値以下の樹脂粒子及びゴム粒子の少なくとも1種を含有させてなるシートが、上記粒子を含有することによる、耐熱性及び音響波感度の低下を抑制しつつ、シートの音速を低下させることができることを見い出した。本発明はこの知見に基づきさらに検討を重ね、完成されるに至ったものである。
すなわち、本発明の上記課題は下記の手段により解決された。
<1>
下記成分(A)中に下記成分(B)を含む音響整合シート。
(A):樹脂及びゴムのうちの少なくとも1種
(B):上記成分(A)よりも低い音速を有し、数平均粒子径が1.0μm以下である、樹脂粒子及びゴム粒子のうちの少なくとも1種
<2>
上記成分(B)の数平均粒子径が0.5μm以下である、<1>に記載の音響整合シート。
<3>
上記成分(B)の数平均粒子径が0.2μm以下である、<2>に記載の音響整合シート。
<4>
上記成分(A)がエポキシ樹脂及びポリアミド樹脂のうちの少なくとも1種である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の音響整合シート。
<5>
上記成分(A)がエポキシ樹脂である、<4>に記載の音響整合シート。
<6>
上記成分(A)がビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂のうちの少なくとも1種である、<5>に記載の音響整合シート。
<7>
上記成分(B)がアクリル樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子及びゴム粒子のうちの少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の音響整合シート。
<8>
上記成分(B)がシリコーン樹脂粒子及びゴム粒子のうちの少なくとも1種である、<7>に記載の音響整合シート。
<9>
上記成分(B)がゴム粒子である、<8>に記載の音響整合シート。
<10>
(C):金属粒子を含む、<1>〜<9>のいずれか1つに記載の音響整合シート。
<11>
上記成分(C)を構成する金属元素が4族〜13族の金属元素の少なくとも1種を含む、<10>に記載の音響整合シート。
<12>
上記成分(C)を構成する金属元素がZn、In、Au、Ag、Co、Zr、W、Ta、Fe、Cu、Ni、Nb、Pt、Mn及びMoのうちの少なくとも1種を含む、<11>に記載の音響整合シート。
<13>
(A1)及び(B1)を含む音響整合層用組成物。
(A1):樹脂及びゴムのうちの少なくとも1種
(B1):上記成分(A1)よりも低い音速を有し、数平均粒子径が1.0μm以下である、樹脂粒子及びゴム粒子のうちの少なくとも1種
<14>
<1>〜<12>のいずれか1つに記載の音響整合シートを音響整合層に有する音響波プローブ。
<15>
<14>に記載の音響波プローブを備える音響波測定装置。
<16>
上記音響波測定装置が超音波診断装置である、<15>に記載の音響波測定装置。
<17>
<13>に記載の音響整合層用組成物を用いて音響整合層を形成する工程を含む、音響波プローブの製造方法。
本発明の説明において「〜」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本発明の説明において、ある基の炭素数を規定する場合、この炭素数は、基全体の炭素数を意味する。つまり、この基がさらに置換基を有する形態である場合、この置換基を含めた全体の炭素数を意味する。
本発明の説明において、特定の符号で示された置換基、連結基等(以下、置換基等という)が複数あるとき、又は複数の置換基等を同時若しくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよいことを意味する。また、特に断らない場合であっても、複数の置換基等が隣接するときにはそれらが互いに連結又は縮環して環を形成していてもよい意味である。
本発明の音響整合シートは、音速が低く、十分な耐熱性を有し、また、十分な音響波感度を有する。
また本発明の音響整合層用組成物は、これを用いて所望のシート状に形成又は加工することにより、音速が低く、十分な耐熱性を有し、また、十分な音響波感度を有する音響整合シートを得ることができる。
また本発明の音響波プローブ、及びこれを用いた音響波測定装置は、十分な音響波感度を有する。
また本発明の音響波プローブの製造方法によれば、本発明の音響整合シートを形成するための組成物を用いて、本発明の音響波プローブを得ることができる。
音響波プローブの一態様であるコンベックス型超音波プローブの一例についての斜視透過図である。
[音響整合シート]
本発明の音響整合シート(以下、単に「本発明のシート」とも称す。)は、下記成分(A)中に下記成分(B)を含む。
(A):樹脂及びゴムのうちの少なくとも1種
(B):上記成分(A)よりも低い音速を有し、数平均粒子径が1.0μm以下である、樹脂粒子及びゴム粒子のうちの少なくとも1種
本発明のシートは、成分(A)をマトリックスとして、このマトリックス中に成分(B)が分散しており、成分(B)が均一に分散していることが好ましい。
なお、本発明のシート中で音響インピーダンスの傾斜が見られてもよく、例えば、シートの任意の1方向に沿って音響インピーダンスの傾斜が見られる場合、上記方向に沿って成分(B)の分散性(存在割合)に傾斜が存在していてもよい。
本発明のシートが上記構成を有することにより、音速が低く、耐熱性に優れ、さらに、音響波感度に優れる理由は定かではないが以下のように推定される。
マトリックスとしての成分(A)中に、このマトリックスよりも音速が低い、すなわち、マトリックスよりも体積弾性率が低い成分(B)の粒子が分散している。この成分(B)が粒子であることで、成分(A)が架橋(硬化)していてもその架橋密度に影響を与えることがないため、マトリックス自体が示す耐熱性の低下を抑制しつつ、音速を低下させることができると考えられる。さらには、この粒子の数平均粒子径が1.0μm以下であることにより、音響波の減衰低下が抑制され、上記の耐熱性の低下抑制及び音速の低下に加え、音響整合シートの音響波感度を向上させることができると考えられる。
<成分(A)>
本発明のシートは、成分(A)として樹脂及びゴムのうちの少なくとも1種を含む。樹脂としては、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂が挙げられる。
成分(A)は、音速制御の点から、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のうちの少なくとも1種が好ましく、音速制御範囲の点から、熱硬化性樹脂がより好ましい。
本発明に用いられる熱硬化性樹脂は、特に制限されないが、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂及びメラミン樹脂が挙げられ、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂及びフェノール樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。
本発明に用いられるエポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂のうちの少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む。
本発明に用いられるビスフェノールA型エポキシ樹脂は特に制限されず、エポキシ系接着剤の主剤として一般的に用いられるものを広く用いることができる。好ましい具体例として、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(jER825、jER828及びjER834(いずれも商品名)、三菱化学社製)及びビスフェノールAプロポキシレートジグリシジルエーテル(シグマアルドリッチ社製)が挙げられる。
本発明に用いられるビスフェノールF型エポキシ樹脂は特に制限されず、エポキシ系接着剤の主剤として一般的に用いられるものを広く用いることができる。好ましい具体例として、ビスフェノールFジグリシジルエーテル(商品名:EPICLON830、DIC社製)及び4,4’−メチレンビス(N,N−ジグリシジルアニリン)が挙げられる。
本発明に用いられるフェノールノボラック型エポキシ樹脂は特に制限されず、エポキシ系接着剤の主剤として一般的に用いられるものを広く用いることができる。このようなフェノールノボラック型エポキシ樹脂は、例えば、シグマアルドリッチ社から製品番号406775として販売されている。
エポキシ樹脂は、上記のエポキシ樹脂からなるものでもよいし、上記エポキシ樹脂以外に、本発明の効果を損なわない範囲内で、他のエポキシ樹脂(例えば、脂肪族型エポキシ樹脂)を含んでいてもよい。エポキシ樹脂中の上記3種のエポキシ樹脂の含有量(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂の総含有量)は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
本発明のシート中、成分(A)のうち熱硬化性樹脂は、シートの製造工程において加熱されシート中において硬化している。熱硬化性樹脂が後述の硬化剤と反応して硬化されるものである場合、この硬化剤と反応して硬化した状態にあってもよい。成分(A)のうち、熱硬化性樹脂以外の熱硬化可能な成分についても、同様である。また、成分(A)のうち、ゴムは架橋体であってもよい。
すなわち、本発明のシートで規定する成分(A)は、成分(A)の硬化物、成分(A)が硬化剤により硬化した化合物及び成分(A)同士の架橋体を含む。また、成分(A)は、成分(B)の表面と結合していてもよい。
ウレタン樹脂としては、例えば、三井化学社製タケラック、タケネート、DIC社製パンデックス(いずれも商品名)等が挙げられる。
シリコーン樹脂としては、例えば、信越シリコーン社製KR220、KR300等、旭化成ワッカーシリコーン社製ELASTOSIL(いずれも商品名)等が挙げられる。
フェノール樹脂としては、例えば、DIC社製J−325、5010、5592(いずれも商品名)等が挙げられる。
尿素樹脂としては、例えば、DIC社製アミディア G−1850、アミディア P−138、台和社製フレアミンM(いずれも商品名)等が挙げられる。
メラミン樹脂としては、例えば、DIC社製アミディア L−105−60、台和社製 フレアミンZ(いずれも商品名)等が挙げられる。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、特に制限されないが、例えば、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びポリエーテルエーテルケトン樹脂が挙げられ、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂がより好ましい。
本発明に用いられるポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6T及びナイロン9Tが挙げられる。
アクリル樹脂としては、例えば、旭化成社製デルペット、アルケマ社製アルトグラス、 三菱ケミカル社製アクリペット(いずれも商品名)等が挙げられる。
ポリエチレン樹脂としては、例えば、旭化成社製サンテック、クレオレックス、サンファイン(いずれも商品名)等が挙げられる。
ポリプロピレン樹脂としては、例えば、住友化学社製スミストラン、住友ノーブレン、ダイセルポリマー社製ダイセルPP(いずれも商品名)等が挙げられる。
ポリアミドイミド樹脂としては、例えば、ソルベイスペシャリティーポリマーズジャパン社製トーロン ポリアミドイミド(いずれも商品名)等が挙げられる。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂としては、例えば、ビクトレックス・ジャパン社製VICTREX PEEK、ダイセル・エボニック社製ベスタキープ(いずれも商品名)等が挙げられる。
本発明に用いられるゴムは、特に制限されないが、例えば、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエン(EPMD)ゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム及びブチルゴムが挙げられ、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム及びエチレンプロピレンジエンゴムが好ましい。
成分(A)は1種単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
<成分(B)>
本発明のシートは、成分(B)として、上記成分(A)よりも低い音速を有し、数平均粒子径が1.0μm以下である、熱硬化性樹脂粒子、熱可塑性樹脂粒子及びゴム粒子のうちの少なくとも1種を含む。
成分(B)の音速は、上記成分(A)よりも低ければよく、成分(A)の音速と成分(B)の音速の差(「成分(A)の音速」−「成分(B)の音速の差」)は、50〜1500m/sが好ましく、100〜1000m/sがより好ましく、400〜1000m/sがさらに好ましい。
成分(B)は、音速制御の点から、熱硬化性樹脂粒子及びゴム粒子のうちの少なくとも1種が好ましく、音速制御範囲の点から、ゴム粒子がより好ましい。
本発明に用いられる成分(B)の音速は、上記成分(A)の音速よりも低い。成分(A)及び成分(B)の音速は、後記実施例に記載の方法により測定される。なお、成分(A)が後記硬化剤により硬化している場合の成分(A)の音速は、硬化した成分(A)の音速を意味する。成分(B)についても同様である。
本発明に用いられる成分(B)の数平均粒子径は1.0μm以下である。音響波感度をより向上させる点から、上記数平均粒子径は、0.5μm以下が好ましく、0.2μm以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、0.01μm以上が実際的である。
上記数平均粒子径は、後述の実施例に記載の方法により測定される値である。
本発明に用いられる熱硬化性樹脂粒子は、熱硬化性樹脂の粒子である限り特に制限されないが、例えば、シリコーン樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子、エポキシ樹脂粒子、不飽和ポリエステル樹脂粒子が挙げられ、シリコーン樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子が好ましく、シリコーン樹脂粒子がより好ましい。
シリコーン樹脂粒子としては、例えば、モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン社製トスパール(商品名)等が挙げられる。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂粒子は、熱可塑性樹脂の粒子である限り特に制限されないが、例えば、アクリル樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、ポリプロピレン樹脂粒子、ABS樹脂粒子、ポリエチレンテレフタレート樹脂粒子が挙げられ、アクリル樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、ポリプロピレン樹脂粒子が好ましく、アクリル樹脂粒子がより好ましい。
アクリル樹脂粒子としては、例えば、日本触媒社製エポスター(商品名)等が挙げられる。
本発明に用いられるゴム粒子は、上記成分(A)で記載したゴムの粒子が挙げられ、ポリイソプレンゴム粒子及びポリブタジエン粒子のうちの少なくとも1種が好ましい。
成分(B)は1種単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
上記熱硬化性樹脂粒子のうち、数平均粒子径が1.0μmを越えるものは、湿式粉砕等により数平均粒子径を1.0μm以下にして使用することができる。
成分(B)は1種単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
なお、カネカ社製カネエース(登録商標)(グレード:MX−153、MX−257、MX−154、MX−960、MX−136、MX−965、MX−214、MX−227M75、MX−334M75、MX−416、MX−451)及び日本触媒社製アクリセット(登録商標)(グレード:BPA328、BPA307)のように成分(A)及び(B)を含む製品を使用することもできる。
<成分(C)>
本発明のシートは成分(C)として金属粒子を含有してもよい。シート中にこの金属粒子を含有させることにより、所望の音速、耐熱性、音響波感度を満たしながら、シートの密度を高めることができる。また、シート中のこの金属粒子の含有量を調整することにより、シートの密度を容易に調整することができ、得られる音響整合層の音響インピーダンスを所望のレベルに調整することが可能になる。金属粒子は表面処理されていてもよい。
上記の金属粒子の表面処理に特に制限はなく、通常の表面処理技術を適用することができる。例えば、炭化水素油、エステル油、ラノリン等による油剤処理、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等によるシリコーン処理、パーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロポリエーテル及びパーフルオロアルキル基を有する重合体等によるフッ素化合物処理、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等によるシランカップリング剤処理、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート等によるチタンカップリング剤処理、金属石鹸処理、アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理、水添卵黄レシチン等によるレシチン処理、コラーゲン処理、ポリエチレン処理、保湿性処理、無機化合物処理、メカノケミカル処理等の処理方法が挙げられる。
上記金属粒子を構成する金属は特に制限されない。金属原子単独でもよく、金属原子の炭化物(例えば炭化タングステン(WC))、窒化物、酸化物、又はホウ素化物でもよい。また合金を形成していてもよい。合金の種類としては高張力鋼(Fe−C)、クロムモリブデン鋼(Fe−Cr−Mo)、マンガンモリブデン鋼(Fe−Mn−Mo)、ステンレス鋼(Fe−Ni−Cr)、42アロイ、インバー(Fe−Ni)、バーメンデュール(Fe−Co)、ケイ素鋼(Fe−Si)、丹銅、トムバック(Cu−Zn)、洋白(Cu−Zn−Ni)、青銅(Cu−Sn)、白銅(Cu−Ni)、赤銅(Cu−Au)、コンスタンタン(Cu−Ni)、ジェラルミン(Al−Cu)、ハステロイ(Ni−Mo−Cr−Fe)、モネル(Ni−Cu)、インコネル(Ni−Cr−Fe)、ニクロム(Ni−Cr)、フェロマンガン(Mn−Fe)、超硬合金(WC/Co)などが挙げられる。
金属粒子を構成する金属原子は汎用性と表面修飾の容易さの観点から、周期表4族〜13族の金属元素の少なくとも1種を含むことが好ましく、汎用性と表面修飾の点から、周期表6族又は8族の少なくとも1種を含むことがより好ましい。
上記金属原子は、汎用性と表面修飾の点から、Zn、In、Au、Ag、Co、Zr、W、Ta、Fe、Cu、Ni、Nb、Pt、Mn及びMoの少なくとも1種を含むことがより好ましく、汎用性の点から、Fe、Mo、Wの少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。
本発明に用いる金属粒子の粒径は、後述する本発明の音響整合シートを形成するための組成物中での分散安定性と本発明のシートの音響波感度向上の観点から0.01〜100μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。上記金属粒子の「粒径」は平均一次粒子径である。
ここで、平均一次粒子径とは、体積平均粒子径を意味する。この体積平均粒子径は、次のように決定される。
メタノールに金属粒子を、0.5質量%となるように添加し、10分間超音波にかけることにより、金属粒子を分散させる。このように処理した金属粒子の粒度分布を、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製、商品名:LA950V2)により測定し、その体積基準メジアン径を体積平均粒子径とする。なお、メジアン径とは粒径分布を累積分布として表したときの累積50%に相当する。
本発明のシート中、成分(A)及び(B)の各含有量は、種々方法で製造できる範囲であれば、特に制限されず、目的の音響インピーダンス等に応じて適宜に調整される。
また、本発明のシート中、成分(A)〜(C)の各含有量も、目的の音響インピーダンス等に応じて適宜に調整される。例えば、音響整合層を複層とする場合、圧電素子側の音響整合層に用いるシート中の成分(C)の含有量は相対的に多くし、音響レンズ側の音響整合層に用いるシート中の成分(C)の含有量は相対的に少なくする、又は、成分(C)を用いないとすることができる。こうすることにより、圧電素子側から音響レンズ側に向けて、音響インピーダンスに傾斜を持たせることができ、音響波の伝播をより効率化することができる。
具体的には、以下の範囲で成分(A)〜(C)の含有量を適宜定めることができる。
成分(B)の含有量:成分(A)の含有量100質量部に対して、好ましくは1〜60質量部、より好ましくは3〜50質量部、更に好ましくは5〜40質量部
成分(C)の含有量:成分(A)の含有量100質量部に対して、好ましくは300〜1050質量部、より好ましくは350〜1000質量部、更に好ましくは400〜950質量部
また、成分(B)の含有量は、成分(C)100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1.5質量部以上であることがより好ましく、2.5質量部以上であることがより好ましく、3.5質量部以上であることが更に好ましい。上限は、10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましく、6質量部以下であることが更に好ましい。
本発明のシートは、成分(A)と成分(B)、又は、成分(A)と成分(B)と成分(C)から構成されていてもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、これら以外の成分を含有していてもよい。成分(A)と成分(B)以外で成分(C)以外の成分(他の成分)としては、例えば、硬化遅延剤、分散剤、顔料、染料、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤及び熱伝導性向上剤等の少なくとも1種を適宜配合することができる。
本発明のシート中、成分(A)と成分(B)と成分(C)の各含有量の合計は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
本発明の音響整合層用組成物(以下、「本発明の組成物」とも称する。)は、下記成分(A1)及び(B1)を含有する。
(A1):樹脂及びゴムのうちの少なくとも1種
(B1):上記成分(A1)よりも低い音速を有し、数平均粒子径が1.0μm以下である、樹脂粒子及びゴム粒子のうちの少なくとも1種
成分(A1)の樹脂としては、上記(A)で挙げた樹脂及びゴムが挙げられる。ただし、成分(A1)が熱硬化性樹脂又はゴムの場合、硬化した状態に限られず、硬化する前の状態でもよい。つまり、本発明の組成物は、音響整合シートを形成するための組成物であってもよい。この場合、成分(A1)及び(B1)は溶媒中に溶解ないし分散した状態でもよい。成分(B1)としては、上記成分(B)を採用することができる。
また、本発明の組成物は、上記成分(C)を含有してもよく、上記他の成分を含有してもよい。
<成分(D)>
本発明の組成物は、成分(A1)の種類によっては、成分(D)として硬化剤を含んでもよい。
例えば、成分(A1)としてエポキシ樹脂を用いる場合、本発明の組成物はポリアミン化合物を含むことが好ましい。また、成分(A1)としてゴムを含み、このゴムを硬化(架橋)させる場合、本発明の組成物は有機過酸化物を含むことが好ましい。
本発明の組成物は、これをシート状に成形し、必要により所望の厚さ又は形状へと切削、ダイシング等することにより、本発明の音響整合シートを得ることができる。この音響整合シートは音響波プローブの音響整合層として用いられる。音響整合層を含む音響波プローブの構成については後述する。本発明の組成物は、成分(A1)及び成分(B1)を含む主剤と、成分(D)の硬化剤とを別々により分けた音響整合シート用材料セットの形態としてもよい。本発明において「組成物」の用語は通常よりも広義の意味に用いている。つまり、このようなセットの形態も、本発明では組成物に含まれるものとする。音響整合シートの形成に当たり、主剤と硬化剤とを混合し、これを用いて音響整合シートを形成することができる。
シートの作製においては、本発明の組成物が熱硬化性の成分を含有する場合には、硬化反応を生じない、あるいは硬化速度の遅い低温域で所望のシート状に成形し、次いで必要により加熱等することにより成形物を硬化させて音響整合シート又はその前駆体シートとすることが好ましい。つまり、この場合、本発明の音響整合シートは、本発明の組成物を硬化して三次元網状構造を形成させた硬化物である。
なお、本発明の組成物が熱硬化性の成分を含有しない場合には、射出成型、塗布成型など材料に応じた種々方法で作製することが好ましい。
(ポリアミン化合物)
本発明に用いられる上記ポリアミン化合物は、エポキシ樹脂に作用して硬化させる硬化成分として下記一般式(I)で表される少なくとも1種のポリアミン化合物を含むことが好ましい。
Figure 2020203370
一般式(I)中、nは2〜20(好ましくは3〜20)の整数を示す。Lは脂肪族炭化水素鎖中に少なくとも1つの酸素原子が組み込まれたn価の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族環と少なくとも1つの酸素原子を有する脂肪族炭化水素基とを有するn価の基を示す。
上記ポリアミン化合物は、下記一般式(II)、(III)及び(IV)のいずれかで表わされる少なくとも1種のポリアミン化合物を含むことが好ましい。
Figure 2020203370
一般式(II)中、sは1〜100の整数を示し、n1は2〜20の整数を示す。Lは炭素数1〜20のn1価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜20のn1価の芳香族炭化水素基を示し、Lは炭素数2〜6の脂肪族炭化水素鎖を示す。
上記脂肪族炭化水素基及び脂肪族炭化水素鎖は、直鎖でもよく分岐していてもよい。
sは1〜50の整数が好ましく、2〜20の整数がより好ましい。
n1は1〜15の整数が好ましく、2〜6の整数がより好ましく、3又は4がさらに好ましい。
で示される上記脂肪族炭化水素基は、炭素数2〜15のn1価の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数3〜10のn1価の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数5又は6のn1価の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
で示される上記芳香族炭化水素基は、炭素数6〜15のn1価の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6〜10のn1価の芳香族炭化水素基がより好ましく、n1価のベンゼンがより好ましい。
は炭素数2〜4の脂肪族炭化水素鎖がより好ましく、炭素数2又は3の脂肪族炭化水素鎖がさらに好ましい。
Figure 2020203370
一般式(III)中、tは1〜100の整数を示し、n2は1〜19の整数を示す。
は炭素数1〜20の(n2+1)価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜20の(n2+1)価の芳香族炭化水素基を示し、Lは炭素数2〜6の脂肪族炭化水素鎖を示す。
音響整合層の破断エネルギーをより向上させ、音響特性のばらつきをより低減するためtは1〜50の整数が好ましく、2〜20の整数がより好ましい。
n2は2〜19の整数が好ましく、2〜5の整数がより好ましく、3がさらに好ましい。
で示される上記脂肪族炭化水素基は、炭素数2〜10の(n2+1)価の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数2〜6の(n2+1)価の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数2〜4の(n2+1)価の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
で示される上記芳香族炭化水素基は、炭素数6〜15の(n2+1)価の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6〜10の(n2+1)価の芳香族炭化水素基がより好ましく、(n2+1)価のベンゼンがより好ましい。
は炭素数2〜4の脂肪族炭化水素鎖がより好ましく、炭素数2又は3の脂肪族炭化水素鎖がさらに好ましい。
Figure 2020203370
一般式(IV)中、uは1〜100の整数を示し、n3及びn4は1以上の整数を示し、n3とn4の合計は20以下である。Lは炭素数1〜20の(n3+1)価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜20の(n3+1)価の芳香族炭化水素基を示す。Lは炭素数1〜20の(n4+1)価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜20の(n4+1)価の芳香族炭化水素基を示す。Lは炭素数2〜6の脂肪族炭化水素鎖を示す。
uは1〜50の整数が好ましく、2〜20の整数がより好ましい。
n3及びn4は、2〜10の整数が好ましく、2〜5の整数がより好ましく、2又は3がさらに好ましい。
で示される上記脂肪族炭化水素基は、炭素数2〜15の(n3+1)価の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数2〜10の(n3+1)価の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数3〜6の(n3+1)価の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
で示される上記芳香族炭化水素基は、炭素数6〜15の(n3+1)価の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6〜10の(n3+1)価の芳香族炭化水素基がより好ましく、(n3+1)価のベンゼンがより好ましい。
で示される上記脂肪族炭化水素基は、炭素数2〜15の(n4+1)価の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数2〜10の(n4+1)価の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数3〜6の(n4+1)価の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
で示される上記芳香族炭化水素基は、炭素数6〜15の(n4+1)価の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6〜10の(n4+1)価の芳香族炭化水素基がより好ましく、(n4+1)価のベンゼンがより好ましい。
は炭素数2〜4の脂肪族炭化水素鎖がより好ましく、炭素数2又は3の脂肪族炭化水素鎖がさらに好ましい。
本発明に用いられるポリアミン化合物は、本発明の効果を損なわない範囲で下記置換基Tを有してもよい。
置換基Tとしては、下記のものが挙げられる。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20、ただし、本発明においてアルキル基というときには通常シクロアルキル基を含む意味である。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜26)、アラルキル基(好ましくは炭素数7〜23)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数2〜20のヘテロ環基、好ましくは、少なくとも1つの酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有する5又は6員環のヘテロ環基が好ましい。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜26、ただし、本発明においてアルコキシ基というときには通常アリールオキシ基を含む意味である。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数6〜26)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20のアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含む。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20)、アリーロイル基(好ましくは炭素数7〜23、ただし、本発明においてアシル基というときには通常アリーロイル基を含む意味である。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20)、アリーロイルオキシ基(好ましくは炭素数7〜23、ただし、本発明において、アシルオキシ基というときには通常アリーロイルオキシ基を含む意味である。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜26)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜20)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜22)、アルキルシリル基(好ましくは炭素数1〜20)、アリールシリル基(好ましくは炭素数6〜42)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1〜20)、アリールオキシシリル基(好ましくは炭素数6〜42)、ホスホリル基(好ましくは炭素数0〜20のホスホリル基、例えば、−OP(=O)(R)、ホスホニル基(好ましくは炭素数0〜20のホスホニル基、例えば、−P(=O)(R)、ホスフィニル基(好ましくは炭素数0〜20のホスフィニル基、例えば、−P(R)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルイミノ基((メタ)アクリルアミド基)、ヒドロキシ基、スルファニル基、カルボキシ基、リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)が挙げられる。Rは、水素原子、ヒドロキシ基又は置換基(好ましくは置換基Tから選択される基)である。
また、これらの置換基Tで挙げた各基は、上記の置換基Tが更に置換していてもよい。
化合物、置換基及び連結基等がアルキル基、アルキレン基、アルケニル基、アルケニレン基、アルキニル基、アルキニレン基等を含むとき、これらは環状でも鎖状でもよく、また直鎖でも分岐していてもよく、上記のように置換されていても無置換でもよい。
以下、本発明に用いられるポリアミン化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2020203370
Figure 2020203370
Figure 2020203370
Figure 2020203370
Figure 2020203370
本発明に用いられるポリアミン化合物は常法により合成することができる。また、市販品を用いてもよい。
ポリアミン化合物は、上記の一般式(I)で表されるポリアミン化合物からなるものでもよいし、上記ポリアミン化合物以外に、本発明の効果を損なわない範囲内で、他のアミン化合物(例えば、3級アミン化合物)を含んでいてもよい。ポリアミン化合物中の上記一般式(I)で表されるポリアミン化合物の含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
本発明の組成物中、エポキシ樹脂とポリアミン化合物の当量比は、例えば、エポキシ樹脂/ポリアミン化合物(エポキシ基のモル数/アミノ基のモル数×2(活性水素のmol数))=0.5/1〜1/0.5とすることができる。
また、上記の音響整合シート用材料セットを用いて、シート形成時に主剤と硬化剤とを混合して本発明の組成物を調製する場合においては、エポキシ樹脂とポリアミン化合物との質量比がエポキシ樹脂/ポリアミン化合物=99/1〜20/80となるように主剤と硬化剤とを混合して用いる形態とすることが好ましく、90/10〜40/60となるように主剤と硬化剤とを混合して用いる形態とすることがより好ましい。
(有機過酸化物)
本発明に用いられる上記有機過酸化物は、分子内に少なくとも炭素原子と−O−O−結合とを有する、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイドおよびパーオキシケタール等の通常用いられる有機過酸化物が挙げられる。
具体的には、以下の有機過酸化物が挙げられる。
・ハイドロパーオキサイド:p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドおよびt−ブチルハイドロパーオキサイド等
・ジアルキルパーオキサイド:1,3−ビス(2−t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドおよび2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシン等
・パーオキシエステル:t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシマレエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ビス(ベンソイルパーオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンおよびt−ブチルパーオキシアセテート等
・ジアシルパーオキサイド:ビス(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドおよびビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド等
・パーオキシケタール:1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレートおよび2,2−ビス(4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン等
有機過酸化物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、本発明の組成物中の上記その有機過酸化物の含有量は、例えば、成分(A)の含有量100質量部に対し20質量部以下含有することができ、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。下限に特に制限はないが、0.1質量部以上であることが実際的である。
<音響整合層用組成物の調製>
本発明の音響整合層用組成物は、例えば、音響整合層用組成物を構成する成分を、ニーダー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー(連続ニーダー)、2本ロールの混練装置等を用いて混練りすることにより得ることができる。これにより、成分(A1)及び(B1)が分散してなる音響整合層用組成物を得ることができる。
成分(A1)としてエポキシ樹脂を用い、硬化剤としてポリアミン化合物を用いる場合、本発明の組成物中において、経時的にエポキシ樹脂の硬化反応が進む場合がある。したがって、この組成物の性状は経時的に変化し、安定ではない場合がある。しかし、例えば、上記組成物を−10℃以下の温度で混合、保存等することにより、硬化反応を生じずに又は十分に抑制して各成分が安定に維持された状態の組成物とすることができる。
また、成分(A1)及び(B1)からなる主剤と、硬化剤とを含む音響整合シート用材料セットとする場合には、成分(A1)と(B1)とを混練りすることにより主剤を得ることができる。音響整合シートの作製時に、この主剤と硬化剤とを混合することにより本発明の組成物を調製し、この組成物を成形しながら硬化することにより、音響整合シート又はその前駆体シートを形成することができる。
なお、上記混練り及び成形は気泡を除去しながら行うことが好ましく、そのため通常は減圧下で行われる。
また、上記混練りを行う温度条件は、5〜40℃が好ましく、10〜30℃がより好ましい。
[音響波プローブ]
本発明の音響波プローブは、本発明のシートを音響整合層として有する。この音響整合層は、本発明のシートを複数積層させた複層構造であってもよい。この複層構造では、圧電素子側から音響レンズ側に向けて、音響インピーダンスが生体の値に近くなるように傾斜していることが好ましい。積層させるシート数及び各シートの厚みは、形成しようとする音響整合層自体の厚さに応じて適宜調節することができる。シート数は、例えば、2〜50とすることができ、3〜20が好ましい。本発明の各シートの厚さは、例えば、1〜500μmである。
本発明の音響波プローブの構成について、その一例を図1に示す。図1に示す音響波プローブは、超音波診断装置における超音波プローブである。なお、超音波プローブとは、音響波プローブにおける音響波として、特に超音波を使用するプローブである。そのため、超音波プローブの基本的な構造は音響波プローブにそのまま適用することができる。
<超音波プローブ>
超音波プローブ10は、超音波診断装置の主要構成部品であって、超音波を発生するとともに、超音波ビームを送受信する機能を有するものである。超音波プローブ10の構成は、図1に示すように、先端(被検対象である生体に接する面)部分から音響レンズ1、音響整合層2、圧電素子層3、バッキング材4の順に設けられている。なお、近年、高次高調波を受信することを目的に、送信用超音波振動子(圧電素子)と、受信用超音波振動子(圧電素子)を異なる材料で構成し、積層構造としたものも提案されている。
(圧電素子層)
圧電素子層3は、超音波を発生する部分であって、圧電素子の両側に電極が貼り付けられており、電圧を加えると圧電素子が伸縮と膨張を繰り返し振動することにより、超音波が発生する。
圧電素子を構成する材料としては、水晶、LiNbO、LiTaO及びKNbOなどの単結晶、ZnO及びAlNなどの薄膜並びにPb(Zr,Ti)O系などの焼結体を分極処理した、いわゆるセラミックスの無機圧電体が広く利用されている。一般的には、変換効率のよいPZT:チタン酸ジルコン酸鉛等の圧電セラミックスが使用されている。
また、高周波側の受信波を検知する圧電素子には、より広い帯域幅の感度が必要である。このため、高周波、広帯域に適した圧電素子として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの有機系高分子物質を利用した有機圧電体が使用されている。
さらに、特開2011−071842号公報等には、優れた短パルス特性及び広帯域特性を示し、量産性に優れ、特性ばらつきの少ないアレイ構造が得られる、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を利用したcMUTが記載されている。
本発明においては、いずれの圧電素子材料も好ましく用いることができる。
(バッキング材)
バッキング材4は、圧電素子層3の背面に設けられており、余分な振動を抑制することにより超音波のパルス幅を短くし、超音波診断画像における距離分解能の向上に寄与する。
(音響整合層)
音響整合層2は、圧電素子層3と被検対象間での音響インピーダンスの差を小さくし、超音波を効率よく送受信するために設けられる。
(音響レンズ)
音響レンズ1は、屈折を利用して超音波をスライス方向に集束し、分解能を向上させるために設けられる。また、被検対象である生体と密着し、超音波を生体の音響インピーダンス(人体では、1.4〜1.7×10kg/m/sec)と整合させること、及び、音響レンズ1自体の超音波減衰量が小さいことが求められている。
すなわち、音響レンズ1の材料としては、音速が人体の音速よりも十分小さく、超音波の減衰が少なく、また、音響インピーダンスが人体の皮膚の値に近い材料を使用することで、超音波の送受信感度が高められる。
このような構成の超音波プローブ10の動作を説明する。圧電素子の両側に設けられた電極に電圧を印加して圧電素子層3を共振させ、超音波信号を音響レンズから被検対象に送信する。受信時には、被検対象からの反射信号(エコー信号)によって圧電素子層3を振動させ、この振動を電気的に変換して信号とし、画像を得る。
[音響波プローブの製造方法]
本発明の音響波プローブは、本発明の組成物を用いること以外は、常法により作製することができる。すなわち、本発明の音響波プローブの製造方法は、圧電素子上に、本発明の組成物を用いて音響整合層を形成することを含む。圧電素子はバッキング材上に常法により設けることができる。
また、音響整合層上には、音響レンズの形成材料を用いて常法により音響レンズが形成される。
[音響波測定装置]
本発明の音響波測定装置は、本発明の音響波プローブを有する。音響波測定装置は、音響波プローブで受信した信号の信号強度を表示したり、この信号を画像化したりする機能を備える。
本発明の音響波測定装置は、超音波プローブを用いた超音波測定装置であることも好ましい。
以下に本発明を、音響波として超音波を用いた実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、本発明は超音波に限定されるものではなく、被検対象及び測定条件等に応じて適切な周波数を選択してさえいれば、可聴周波数の音響波を用いてもよい。以下、室温とは25℃を意味する。
[合成例]
<1>音響整合層用組成物の調製
(1)実施例1で用いる音響整合層用組成物の調製
金属粒子(鉄粉(Fe)(BASF社製 EW−I(商品名))100質量部とエポキシ樹脂(ビスフェノールAジグリシジルエーテル(三菱化学社製「jER825」(商品名)、エポキシ当量170))11質量部と、ポリブタジエン粒子4質量部とを「泡とり練太郎 ARV−310(商品名、シンキー社製)」により、室温下、1.0Paに減圧した状態で、1800rpmで撹拌しながら、4分間脱泡した。その後、後記化学式で表される硬化剤(D−1)10質量部を「泡とり練太郎 ARV−310(商品名、シンキー社製)」により、室温下、1.0Paに減圧した状態で、1800rpmで撹拌しながら、4分間脱泡し、実施例1で用いる音響整合層用組成物を調製した。
Figure 2020203370
(2)実施例2〜34、比較例1〜11で用いる音響整合層用組成物の調製
下記表1に記載の組成に変えたこと以外は、実施例1で用いる音響整合層用組成物の調製と同様にして、実施例2〜34、比較例1〜11で用いる音響整合層用組成物を調製した。
(3)実施例35で用いる音響整合層用組成物の調製
金属粒子(鉄粉(Fe)(BASF社製 EW−I(商品名))100質量部とポリアミド樹脂(ナイロン12(クレハエクストロン社製)11質量部と、ポリブタジエン粒子4質量部とを押し出し混錬機で混錬(280℃)することにより実施例35で用いる音響整合層用組成物を調製した。
(4)実施例36〜41及び比較例12〜15で用いる音響整合層用組成物の調製
下記表1に記載の組成に変えたこと以外は、実施例35で用いる音響整合層用組成物の調製と同様にして、実施例36〜41及び比較例12〜15で用いる音響整合層用組成物を調製した。
(5)実施例42で用いる音響整合層用組成物の調製
金属粒子(鉄粉(Fe)(BASF社製 EW−I(商品名))100質量部とポリイソプレンゴム(日本ゼオン社製「Nipol IR2200」(商品名)11質量部と、ジクミルパーオキシド(日本油脂社製 パークミルD−40)1質量部とポリブタジエン粒子4質量部とをラボプラストミルで、80℃で混錬することにより実施例42で用いる音響整合層用組成物を調製した。
(6)実施例43〜48及び比較例16〜21で用いる音響整合層用組成物の調製
下記表1に記載の組成に変えたこと以外は、実施例42で用いる音響整合層用組成物の調製と同様にして、実施例43〜48及び比較例16〜21で用いる音響整合層用組成物を調製した。
<2>音響整合シートの作製
(1)実施例1の音響整合シートの作製
縦5cm、横5cm、高さ2mmの型に調製した音響整合層用組成物を流し込み、60℃で18時間、その後150℃で1時間硬化させることにより音響整合シートを作製した。
(2)実施例2〜34及び比較例1〜11の音響整合シートの作製
実施例1で用いる音響整合層用組成物に代えて、実施例2〜34及び比較例1〜11で用いる音響整合層用組成物を用いたこと以外は、実施例1の音響整合シートの作製と同様にして音響整合シートを作製した。
(3)実施例35の音響整合シートの作製
縦5cm、横5cm、高さ2mmの型に実施例1で用いる音響整合層用組成物をセットし、成分(A)の融点+10℃で5分間プレスし、冷却することで音響整合シートを作製した。
(4)実施例36〜41及び比較例12〜15の音響整合シートの作製
実施例35で用いる音響整合層用組成物に代えて、実施例36〜41及び比較例12〜15で用いる音響整合層用組成物を用いたこと以外は、実施例35の音響整合シートの作製と同様にして音響整合シートを作製した。
(5)実施例42で用いる音響整合シートの作製
縦5cm、横5cm、高さ2mmの型に実施例42で用いる音響整合層用組成物をセットし、120℃の温度で30分間プレスすることで音響整合シートを作製した。
(6)実施例43〜48及び比較例16〜21で用いる音響整合シートの作製
実施例42で用いる音響整合層用組成物に代えて、実施例43〜48及び比較例16〜21で用いる音響整合層用組成物を用いたこと以外は、実施例42で用いる音響整合シートの作製と同様にして音響整合シートを作製した。
[試験例]
<1>音速の測定
(1)成分(A)の音速
成分(A)の音速は、走査型プローブ顕微鏡(島津社製 SPM−9700(商品名))により成分(A)の局所弾性率をJKR理論により算出し、成分(A)の密度を用いて下記式により算出した。局所弾性率はカンチレバーを音響整合シートに対して深さ5nmまで押し込むことにより算出した。密度は、上記音響整合シートから少量の成分(A)を取り出し試料として、NMR、IR、熱分解GC−MS等の分析装置により解析することで組成を明らかにし、この組成に基づいて決定した。
音速=(局所弾性率/密度)1/2
(2)成分(B)の音速
成分(B)の音速は、走査型プローブ顕微鏡(島津社製 SPM−9700)により成分(B)の局所弾性率をJKR理論により算出し、成分(B)の密度を用いて下記式により算出した。局所弾性率はカンチレバーを音響整合シートに対して深さ5nmまで押し込むことにより算出した。密度は、上記音響整合シートから少量の成分(B)を取り出し試料として、NMR、IR、熱分解GC−MS等の分析装置により解析することで組成を明らかにし、この組成に基づいて決定した。
音速=(局所弾性率/密度)1/2
(3)音響整合シートの音速(後記表1の音速(S))
上記で作製した音響整合シートについて、シートの4角の近傍と中央部の5か所(測定部各々において、直径1.5cmの円形の内部全体(単チャンネルの小プローブサイズ))の音速をJIS Z2353(2003)に従い、シングアラウンド式音速測定装置(超音波工業株式会社製、商品名「UVM−2型」)を用いて、25℃において測定し、その算術平均値を、音響整合シートの音速とした。得られた音速を下記評価基準にあてはめ評価した。「D」以上が本試験の合格である。
−評価基準−
A:対応する、樹脂粒子を含有しない音響整合シートと比較して音速が10%以上低下した。
B:対応する、樹脂粒子を含有しない音響整合シートと比較して音速が7.5%以上10%未満低下した。
C:対応する、樹脂粒子を含有しない音響整合シートと比較して音速が5%以上7.5%未満低下した。
D:対応する、樹脂粒子を含有しない音響整合シートと比較して音速が2.5%以上5%未満低下した。
E:対応する、樹脂粒子を含有しない音響整合シートと比較して、音速が同じであるか、2.5%未満低下した。
「対応する、樹脂粒子を含有しない音響整合シート」とは、実施例1〜7、11〜34及び比較例1〜3、6〜11については比較例4であり、実施例8〜10については比較例5であり、実施例35〜41及び比較例12〜14については比較例15であり、実施例42〜48及び比較例16〜18、20、21については比較例19である。以下の試験例においても、同様である。
<2>成分(B)の数平均粒子径の測定
成分(B)(樹脂粒子)の数平均粒子径は、音響整合シートの端面を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製 SU8030(商品名))を用いて粒子が100個以上含まれる視野で観察し、視野中の成分(B)から無作為に100個抽出し、これらの数平均粒子径を測定して、算出した。
走査型電子顕微鏡により端面を観察できない音響整合シートに関しては氷包埋透過型電子顕微鏡法により観察した。氷包埋はFEI社製 Vitrobot Mark IV(商品名)により行い、透過型電子顕微鏡(日本電子製 JEM−2010(商品名))で視野中の成分(B)から無作為に100個の抽出し、これらの数平均粒子径を測定して、算出した。
粒子が真円でない場合には縦と横の直径の比が最大で0.7以上のものを抽出して測定した。
<3>耐熱性試験
耐熱性は、音響整合シートの粘弾性を粘弾性測定装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製、装置名「DMS6100」)を用いて算出されるガラス転移温度から評価した。測定は1Hzで行い、tanδが最大値になる温度をガラス転移温度とした。このガラス転移温度を下記評価基準にあてはめ評価した。「C」以上が本試験の合格である。
−評価基準−
A:対応する、樹脂粒子を含有しない音響整合シートと比較してガラス転移温度が同じであるか、5℃未満低い。
B:対応する、樹脂粒子を含有しない音響整合シートと比較して5℃以上7℃未満低い。
C:対応する、樹脂粒子を含有しない音響整合シートと比較して7℃以上9℃未満低い。
D:対応する、樹脂粒子を含有しない音響整合シートと比較して9℃以上10℃未満低い。
E:対応する、樹脂粒子を含有しない音響整合シートと比較して10℃以上低い。
<4>音響波(超音波)感度試験
超音波発振器(岩通計測株式会社製、ファンクション・ジェネレータ、商品名「FG−350」)から出力された10MHzの正弦波信号(1波)を超音波プローブ(ジャパンプローブ株式会社製)に入力し、超音波プローブから中心周波数が10MHzの超音波パルス波を水中に発生させた。発生させた超音波が、得られた厚み2mmの音響整合シートを通過する前と後の振幅の大きさを超音波受信機(松下電器産業株式会社製、オシロスコープ、商品名「VP−5204A」)により、水温25℃の環境で測定し、音響波(超音波)感度を比較することで、各素材の音響波(超音波)減衰量を比較した。
なお、音響波(超音波)感度とは、下記計算式で与えられる数値とする。
下記計算式において、Vinは、超音波発振器が発生させる、半値幅50nsec以下の入力波の電圧ピーク値を表す。Vsは、発生させた音響波(超音波)がシートを通過し、シートの対面から反射してきた音響波(超音波)を超音波発振器が受信したときに得られる電圧値を表す。音響波(超音波)感度が高い程、音響波(超音波)減衰量が小さいことを意味する。
音響波(超音波)感度=20×Log(Vs/Vin)
下記評価基準により音響波(超音波)感度を評価した。本試験においては、評価「C」以上が合格レベルである。
−評価基準−
A:対応する、樹脂粒子を含有しない音響整合シートと比較した感度低下がない。
B:対応する、樹脂粒子を含有しない音響整合シートと比較した感度低下が2.5%未満である。
C:対応する、樹脂粒子を含有しない音響整合シートと比較した感度低下が2.5%以上5.0%未満である。
D:対応する、樹脂粒子を含有しない音響整合シートと比較した感度低下が5.0%以上7.5%未満である。
E:対応する、樹脂粒子を含有しない音響整合シートと比較した感度低下が7.5以上である。
Figure 2020203370
Figure 2020203370
Figure 2020203370
実施例1〜48、比較例1〜3、6〜9、12〜14、16〜18:上述した走査型プローブ顕微鏡(SPM)により、「成分(A)の音速」−「成分(B)の音速の差」が50〜1500m/sであることを確認した。
比較例20及び21:SPMにより、「成分(A)の音速」−「成分(B)の音速」の差が−50〜−1500m/sであることを確認した。
上記音響整合シートの作製と同様にして、成分(B)について縦5cm、横5cm、高さ2mmのシートにすることが可能であれば、成分(B)からなるシートを作製して、このシートの4角の近傍と中央部の5か所(測定部各々において、直径1.5cmの円形の内部全体(単チャンネルの小プローブサイズ))の音速をJIS Z2353(2003)に従い、シングアラウンド式音速測定装置(超音波工業株式会社製、商品名「UVM−2型」)を用いて、25℃において測定し、その算術平均値を成分(B)の音速としても上記方法と事実上同じ結果が得られる。
また、成分(A)も同様に、上記音響整合シートの作製と同様の方法で、上記サイズのシートにすることが可能であれば、成分(A)からなるシートを作製して、このシートの4角の近傍と中央部の5か所の音速を測定し、その算術平均値を成分(A)の音速としても上記方法と事実上同じ結果が得られる。
すなわち、これらの方法によっても、「成分(A)の音速」−「成分(B)の音速の差」が上記範囲にあることを確認することができる。
上記成分(A)からなるシート又は成分(B)からなるシートの4角の近傍と中央部の5か所の測定部の密度を、JIS K7112(1999)に記載のA法(水中置換法)の密度測定方法に準じて、電子比重計(アルファミラージュ社製、商品名「SD−200L」)を用いて、25℃において測定して、その算術平均を成分(A)又は成分(B)の密度として採用することもできる。なお、上記測定部の密度は、音速測定部(直径1.5cmの円形)内において、10mm×10mm角の正方形にシート片を切り出し、切り出したシート片(10mm×10mm角)の密度である。
<表の注>
[成分(A1)]
(A−1)ビスフェノールAジグリシジルエーテル(三菱化学社製「jER825」(商品名)、エポキシ当量170)
(A−2)ビスフェノールAジグリシジルエーテル(三菱化学社製「jER828」(商品名)、エポキシ当量190)
(A−3)ビスフェノールAジグリシジルエーテル(三菱化学社製「jER834」(商品名)、エポキシ当量230)
(A−4)ビスフェノールFジグリシジルエーテル(DIC社製「EPICLON830」(商品名)、エポキシ当量170)
(A−5)エポキシノボラック樹脂(シグマアルドリッチ社製、製品番号406775、エポキシ当量170)
(A−6)ビスフェノールAプロポキシレートジグリシジルエーテル(シグマアルドリッチ社製、エポキシ当量228)
(A−7)4,4'−メチレンビス(N,N−ジグリシジルアニリン)(東京化成工業社製、エポキシ当量106)
(A−8)ナイロン12(クレハエクストロン社製)
(A−9)ポリイソプレンゴム(日本ゼオン社製「Nipol IR2200」(商品名)
[成分(B1)]
PBd:ポリブタジエンゴム粒子(下記方法に従って調製した粒子)
加圧容器に超純水200質量部、リン酸三カリウム0.03質量部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.002質量部、硫酸第一鉄・7水和塩0.001質量部、ドデシル硫酸ナトリウム1.55質量部を加え窒素置換を行った。その後、ブタジエン100質量部を加え45℃に加温した。パラメンタンハイドロパーオキサイド0.03質量部、続いてSFS0.10質量部を投入し重合を開始した。重合開始から3時間、5時間、7時間後にパラメンタンハイドロパーオキサイド0.025質量部を追加添加した。また、重合開始4、6、8時間後それぞれに、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.0006質量部、及び硫酸第一鉄・7水和塩0.003質量部を追加添加した。重合開始から15時間後に減圧し残存モノマーを除去することで重合を終了させポリブタジエンゴムを主成分とするポリブタジエンゴム粒子を得た。得られたポリブタジエンゴム粒子の数平均粒子径は0.1μmであった。
得られたゴム粒子をシード粒子として上記重合を繰り返すことにより表1に記載の数平均粒子径の各ポリブタジエンゴム粒子を得た。
Silicone1:シリコーン粒子(モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン社製 トスパールXC99−A8808(商品名)を粉砕し、調製した粒子)
Silicone2:シリコーン粒子(モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン社製 トスパール120A(商品名))
Silicone3:シリコーン粒子(モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン社製 トスパール130(商品名))
アクリル樹脂粒子1:アクリル樹脂粒子(日本触媒社製 エポスターMA1002(商品名)を粉砕し、調製した粒子)
アクリル樹脂粒子2:アクリル樹脂粒子(日本触媒社製 エポスターMA1002(商品名))
アクリル樹脂粒子3:アクリル樹脂粒子(日本触媒社製 エポスターMA1004(商品名))
PIP:ポリイソプレンゴム粒子(下記方法に従って調製した粒子)
冷却管、メカニカルスターラーを取り付けたガラス反応容器(200mL)にドデシル硫酸ナトリウム(5.60g)、超純水(86.50g)、t−ブチルヒドロペルオキシド(0.035g)、t−ドデシルメルカプタン(0.0053g)を加えた。この容器を25℃で1時間アルゴンガスにより置換した。その後、イソプレン(3.6g)とテトラエチレンペンタミン(0.033g)を添加して24時間、450rpmで攪拌しながら反応させた。重合開始から24時間後に減圧し残存モノマーを除去することで重合を終了させポリイソプレンゴムを主成分とするポリイソプレンゴム粒子を得た。得られたラテックスに含まれるポリブタジエンゴム粒子の数平均粒子径は0.2μmであった。
得られたゴム粒子をシード粒子として上記重合を繰り返すことにより表1に記載の数平均粒子径の各ポリイソプレンゴム粒子を得た。
液状PBd:液状ポリブタジエン(日本曽達社製 B−1000(商品名))
Silicone(非粒子)(信越シリコーン社製 X−22−163(商品名))
比較例10及び11では、実施例との比較のために、液状PBd及びSilicone(非粒子)を成分(B1)の列に記載している。
[成分(C)]
Fe:鉄粉末(BASF社製 EW−I(商品名)、平均粒子径2μm)
Mo:モリブデン粉(日本新金属社製 Mo−3(商品名)、平均粒子径3μm)
WC:タングステンカーバイド粉(アライドマテリアル社製 WC30S、平均粒子径3μm)
W:タングステン粉(アライドマテリアル社製 W−U030、平均粒子径3μm)
[成分(D)]
(D−1)上記化学式で表される硬化剤
(D−2)ジクミルパーオキシド(日本油脂社製「パークミルD−40」(商品名))
「粒径」は数平均粒子径を示す。
実施例35〜41及び比較例12〜15は成分(D)を用いていない。成分(A1)及びその使用量を記載している。
「−」は該当する成分を使用していないこと等を意味する。
表1から明らかなように、数平均粒子径が1.0μmを越える粒子を用いた比較例1〜3、6、7、8、9、12〜14、16〜18及び21のシートは、少なくとも音響波感度が不十分であった。また、成分(B)を含有しない比較例4、5、15及び19のシートは音速が高い。また、液状のポリブタジエンゴムを用いた比較例10のシート及び非粒子のシリコーンを用いた比較例11のシートは、耐熱性が不十分である。また、比較例20のシートでは成分(A)よりも成分(B)の音速が高く、シートとしても音速が高かった。
これに対して、本発明のシートは、全ての評価項目において合格した。
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
本願は、2019年3月29日に日本国で特許出願された特願2019−068736に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
1 音響レンズ
2 音響整合層
3 圧電素子層
4 バッキング材
7 筐体
9 コード
10 超音波探触子(プローブ)

Claims (17)

  1. 下記成分(A)中に下記成分(B)を含む音響整合シート。
    (A):樹脂及びゴムのうちの少なくとも1種
    (B):前記成分(A)よりも低い音速を有し、数平均粒子径が1.0μm以下である、樹脂粒子及びゴム粒子のうちの少なくとも1種
  2. 前記成分(B)の数平均粒子径が0.5μm以下である、請求項1に記載の音響整合シート。
  3. 前記成分(B)の数平均粒子径が0.2μm以下である、請求項2に記載の音響整合シート。
  4. 前記成分(A)がエポキシ樹脂及びポリアミド樹脂のうちの少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の音響整合シート。
  5. 前記成分(A)がエポキシ樹脂である、請求項4に記載の音響整合シート。
  6. 前記成分(A)がビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂のうちの少なくとも1種である、請求項5に記載の音響整合シート。
  7. 前記成分(B)がアクリル樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子及びゴム粒子のうちの少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の音響整合シート。
  8. 前記成分(B)がシリコーン樹脂粒子及びゴム粒子のうちの少なくとも1種である、請求項7に記載の音響整合シート。
  9. 前記成分(B)がゴム粒子である、請求項8に記載の音響整合シート。
  10. (C):金属粒子を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の音響整合シート。
  11. 前記成分(C)を構成する金属元素が4族〜13族の金属元素の少なくとも1種を含む、請求項10に記載の音響整合シート。
  12. 前記成分(C)を構成する金属元素がZn、In、Au、Ag、Co、Zr、W、Ta、Fe、Cu、Ni、Nb、Pt、Mn及びMoのうちの少なくとも1種を含む、請求項11に記載の音響整合シート。
  13. 成分(A1)及び(B1)を含む音響整合層用組成物。
    (A1):樹脂及びゴムのうちの少なくとも1種
    (B1):前記成分(A1)よりも低い音速を有し、数平均粒子径が1.0μm以下である、樹脂粒子及びゴム粒子のうちの少なくとも1種
  14. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の音響整合シートを音響整合層に有する音響波プローブ。
  15. 請求項14に記載の音響波プローブを備える音響波測定装置。
  16. 前記音響波測定装置が超音波診断装置である、請求項15に記載の音響波測定装置。
  17. 請求項13に記載の音響整合層用組成物を用いて音響整合層を形成する工程を含む、音響波プローブの製造方法。
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