JPWO2020085020A1 - 炭酸ランタン水和物の製造方法 - Google Patents

炭酸ランタン水和物の製造方法 Download PDF

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Abstract

酸化ランタンと塩酸等のランタンの可溶性塩を与える酸とを反応させて得られる水溶液に、炭酸ナトリウム等の炭酸塩を加えて水溶液のpHを2.9〜4.5とし、生成する固体分を除去し、得られた液体分に炭酸塩を加えてpHを5.5〜7とすることにより、元素不純物含量が少ない高純度の炭酸ランタン水和物を製造することができる。

Description

本発明は炭酸ランタン水和物の製造方法に関する。
炭酸ランタン水和物は慢性腎不全患者における高リン血症治療剤として用いられる。炭酸ランタン3〜6水和物は、ランタンの可溶性塩を与える酸と酸化ランタンを反応させ、得られた炭酸ランタン8水和物の湿ケーキを乾燥させることにより製造できることが知られている。(特許文献1)
US5968976
炭酸ランタン水和物を医薬用途として用いる場合、元素不純物量を許容レベルに管理する必要がある。原料の酸化ランタンは鉛、ヒ素、バナジウムなどの元素不純物を含むことから、例えば、炭酸ランタン水和物に関するICH(医薬品規制調和国際会議)のガイドラインに従った鉛は0.5ppm以下、ヒ素は1.5ppm以下、バナジウムは10ppm以下という基準を充たす高純度の炭酸ランタン水和物を製造するための方法が求められている。
本発明は、酸化ランタンと酸とを反応させた後に炭酸塩を加えて元素不純物を含む炭酸ランタンを析出させ、不純物を含む固体分を除去した後、再度、炭酸塩を加えて高純度の炭酸ランタン水和物を製造する方法である。
本発明によれば、酸化ランタンとランタンの可溶性塩を与える酸とを反応させて得られる水溶液に炭酸塩を加えて水溶液のpHを2.9〜4.5とし、生成する固体分を除去し、液体分に炭酸塩を加えてpHを5.5〜7とすることにより、炭酸ランタン水和物が得られる。
以下、本発明の方法を詳述する。
第一の工程は、酸化ランタンとランタンの可溶性塩を与える酸とを反応させて得られる水溶液に炭酸塩を加え、生成する固体分を除去する工程である。
ランタンの可溶性塩を与える酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸が挙げられ、通常塩酸が用いられる。酸の使用量は、一般に酸化ランタン1モルに対して1価の酸の場合は6〜10モル、2価の酸の場合は3〜5モルである。この反応は、通常酸化ランタンの水懸濁液に対して酸を連続的に滴下、間欠的に滴下、一挙に加えるなどの方法により行われる。
次に、上記で得られた水溶液に炭酸塩を加える。炭酸塩としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムが挙げられ、通常炭酸ナトリウムが用いられる。炭酸塩の使用量は、一般に酸化ランタン1モルに対して炭酸ナトリウム、炭酸カリウム又は炭酸アンモニウムの場合は0.1〜0.75モルであり、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム又は炭酸水素アンモニウムの場合は0.2〜1.5モルである。炭酸塩は水溶液の形態で滴下してもよい。上記で水溶液を得るのに要した酸が過剰量の場合はその中和に要する理論量を追加する。このようにして、水溶液のpHを2.9〜4.5、好ましくは3.2〜4.2とする。
この結果、生成した固体分は濾過、デカンテーションなどの固液分離操作により除去される。さらに、固体分を水洗し、洗浄液は濾液、上澄液などの液体分に加えて第二の工程に供するのが好ましい。固体分は炭酸ランタン水和物を主成分とし、原料の酸化ランタンに由来する元素不純物を含むものである。固体の析出を促進するために炭酸ランタン水和物の種結晶を加えたり、温度を調節したりすることができる。固体を析出させるための温度は通常1〜65℃、好ましくは20〜30℃であり、この温度に、例えば5分間〜24時間、好ましくは30分間〜4時間保持する。
第二の工程は、第一の工程で得られた液体分、又は該液体分に洗浄液を加えた液に、場合によりランタンの可溶性塩を与える酸を加えた後、炭酸塩を加えることにより炭酸ランタン水和物を得る工程である。
ここで使用されるランタンの可溶性塩を与える酸及び炭酸塩の例は第一の工程で使用される物と同じである。
酸の使用量は、一般に当初の酸化ランタン1モルに対して1価の酸の場合は0〜0.7モル、2価の酸の場合は0〜0.35モルであり、酸を連続的に滴下、間欠的に滴下、一挙に加えるなどの方法により酸が加えられる。酸を加える際の温度は、通常1〜65℃、好ましくは25〜55℃である。
炭酸塩は液体のpHが5.5〜7になるまで加えられる。炭酸塩を加える際の温度は、通常1〜65℃、好ましくは25〜55℃であり、一般に1時間〜10時間、好ましくは3時間〜7時間かけて加えられる。炭酸塩は水溶液の形態で滴下してもよい。
炭酸塩が加えられた結果、炭酸ランタン水和物が析出するが、析出を促進するために炭酸ランタン水和物の種結晶を加えたり、温度を調節したりすることができる。固体を析出させるための温度は通常1〜65℃、好ましくは25〜55℃であり、この温度に、例えば5分間〜24時間、好ましくは30分間〜2時間保持する。析出した炭酸ランタン水和物は濾過、デカンテーションなどの固液分離操作により得ることができる。また、必要により水洗する。水洗に用いられる水の量は、通常、当初の酸化ランタン1重量部に対して10〜40重量部、好ましくは20〜30重量部である。
このようにして得られる炭酸ランタン水和物は通常8水和物であり、常法により乾燥することで3〜6水和物になる。乾燥温度は通常20〜100℃の範囲内である。
実施例1
酸化ランタン(1重量部)に水(3重量部)を加え、40℃に加温して35%塩酸(酸化ランタン1モルに対して6.3モルの割合)を滴下し、塩化ランタン水溶液を得た。この間の液温は39〜52℃であった。得られた塩化ランタン水溶液に25℃で16.4%炭酸ナトリウム水溶液(酸化ランタン1モルに対して0.22モルの割合)を40分間かけて滴下し、pH3.0で炭酸ランタン水和物の種晶を接種した。30分間25℃に保温後、16.4%炭酸ナトリウム水溶液(酸化ランタン1モルに対して0.074モルの割合)を10分間かけて滴下しpH4.0とした。40分間25℃で保温した後、生成した結晶を濾過し水(1重量部)で洗浄した。濾液と洗浄液とを合わせ、50℃に昇温して35%塩酸(酸化ランタン1モルに対して0.52モルの割合)を加えた。16.4%炭酸ナトリウム水溶液(酸化ランタン1モルに対して0.31モルの割合)を50℃で30分かけて滴下しpH2.5で炭酸ランタン水和物の種晶を接種した。16.4%炭酸ナトリウム水溶液(酸化ランタン1モルに対して0.041モルの割合)を滴下後、30分間50℃で保温した。続いて、16.4%炭酸ナトリウム水溶液を4時間45分かけて滴下し、pH5.7とした。この間の液温は49〜50℃であった。15分間50℃に保温した後、30〜35℃まで冷却した。30〜35℃で21.5時間保温後、析出した結晶を濾過した。得られた結晶を水(24重量部)で洗浄後、40℃(浴温)で乾燥、次いで90℃の減圧下で乾燥して炭酸ランタン水和物を収率94%で得た。得られた結晶中の元素不純物量は誘導結合プラズマ質量分析法にて測定した。
実施例2
酸化ランタン(1重量部)に水(3重量部)を加え、40℃に加温して35%塩酸(酸化ランタン1モルに対して6.3モルの割合)を滴下し、塩化ランタン水溶液を得た。この間の液温は38〜55℃であった。得られた塩化ランタン水溶液に25℃で16.4%炭酸ナトリウム水溶液(酸化ランタン1モルに対して0.22モルの割合)を30分間かけて滴下し、pH3.9で炭酸ランタン水和物の種晶を接種した。30分間25℃に保温後、16.4%炭酸ナトリウム水溶液(酸化ランタン1モルに対して0.22モルの割合)を30分間かけて滴下しpH3.7とした。30分間25℃で保温した後、生成した結晶を濾過し水(1重量部)で洗浄した。濾液と洗浄液とを合わせ、30℃に昇温し、炭酸ランタン水和物の種晶を接種した。16.4%炭酸ナトリウム水溶液を4時間40分かけて滴下し、pH6.2とした。30℃で17時間保温後、析出した結晶を濾過した。得られた結晶を水(24重量部)で洗浄後、40℃(浴温)で乾燥して、炭酸ランタン水和物を収率89%で得た。得られた結晶中の元素不純物量は誘導結合プラズマ質量分析法にて測定した。
実施例3
酸化ランタン(1重量部)に水(3重量部)を加え、40℃に加温して35%塩酸(酸化ランタン1モルに対して6.3モルの割合)を滴下し、塩化ランタン水溶液を得た。この間の液温は39〜52℃であった。得られた塩化ランタン水溶液に25℃で16.4%炭酸ナトリウム水溶液(酸化ランタン1モルに対して0.21モルの割合)を40分間かけて滴下してpH2.5として炭酸ランタン水和物の種晶を接種した。さらに16.4%炭酸ナトリウム水溶液(酸化ランタン1モルに対して0.0013モルの割合)を滴下後、30分間保温した。続いて、25℃で16.4%炭酸ナトリウム水溶液(酸化ランタン1モルに対して0.52モルの割合)を75分間かけて滴下しpH3.7とした。45分間25℃で保温後、生成した結晶を濾過し水(1重量部)で洗浄した。濾液と洗浄液とを合わせ、50℃に昇温し、35%塩酸(酸化ランタン1モルに対して0.52モルの割合)を加えた。16.4%炭酸ナトリウム水溶液(酸化ランタン1モルに対して0.31モルの割合)を50℃で45分間かけて滴下し、pH2.5で炭酸ランタン水和物の種晶を接種した。16.4%炭酸ナトリウム水溶液(酸化ランタン1モルに対して0.038モルの割合)を滴下後、40分間50℃で保温した。続いて、50〜51℃で16.4%炭酸ナトリウム水溶液を4時間10分かけて滴下し、pH6.0とした。20分間50℃で保温後、30〜35℃まで冷却した。13時間30〜35℃で保温後、析出した結晶を濾過した。得られた結晶を水(24重量部)で洗浄後、40℃(浴温)で乾燥、次いで90℃の減圧下で乾燥して炭酸ランタン水和物を収率80%で得た。得られた結晶中の元素不純物量は誘導結合プラズマ質量分析法にて測定した。
参考例
酸化ランタン(1重量部)に水(3重量部)を加え、40℃に加温して35%塩酸(酸化ランタン1モルに対して6.3モルの割合)を滴下し、塩化ランタン水溶液を得た。この間の液温は39〜52℃であった。得られた塩化ランタン水溶液に35%塩酸(酸化ランタン1モルに対して0.52モルの割合)を加えた。続いて、25℃で16.4%炭酸ナトリウム水溶液(酸化ランタン1モルに対して0.47モルの割合)を40分かけて滴下した。pH2.8で炭酸ランタン水和物の種晶を接種した。16.4%炭酸ナトリウム水溶液(酸化ランタン1モルに対して0.0013モルの割合)を滴下後、30分間25℃で保温した。25℃で16.4%炭酸ナトリウム水溶液(酸化ランタン1モルに対して0.074モルの割合)を10分間かけて滴下した。30分間25℃で保温後、50℃に昇温し、49〜50℃で16.4%炭酸ナトリウム水溶液を4時間40分かけて滴下し、pH5.7とした。15分間50℃で保温後、30〜35℃まで冷却した。30〜35℃で17時間保温後、析出した結晶を濾過した。得られた結晶を水(24重量部)で洗浄後、40℃(浴温)で乾燥、次いで90℃の減圧下で乾燥して炭酸ランタン水和物を収率97%で得た。得られた結晶中の元素不純物量は誘導結合プラズマ質量分析法にて測定した。
各々の実施例及び参考例で得られた炭酸ランタン水和物及び原料の酸化ランタン中の鉛(Pb)、ヒ素(As)及びバナジウム(V)の含量(ppm)を表1に示す。
表1

Figure 2020085020
実施例4
酸化ランタン(1重量部)に水(3重量部)を加え、40℃に加温して35%塩酸(酸化ランタン1モルに対して6.3モルの割合)を滴下し、塩化ランタン水溶液を得た。この間の液温は40〜50℃であった。得られた塩化ランタン水溶液に25℃で15.1%炭酸アンモニウム水溶液(酸化ランタン1モルに対して0.22モルの割合)を30分間かけて滴下した。pH3.7で炭酸ランタン水和物の種晶を接種し、30分保温した。15.1%炭酸アンモニウム水溶液(酸化ランタン1モルに対して0.52モルの割合)を55分かけて滴下しpH3.6とした。40分間25℃で保温後、生成した結晶を濾過し水(1重量部)で洗浄した。濾液と洗浄液とを合わせ、30℃に昇温し、炭酸ランタン水和物の種晶を接種した。15.1%炭酸アンモニウム水溶液を4時間30分かけて滴下し、pH6.0とした。1時間10分、30℃で保温後、析出した結晶を濾過した。得られた結晶を水(24重量部)で洗浄後、減圧下40℃(浴温)で乾燥して炭酸ランタン水和物を収率81%で得た。得られた結晶中の元素不純物量は誘導結合プラズマ質量分析法にて測定した。
表2

Figure 2020085020
実施例5
酸化ランタン(1重量部)に水(4重量部)を加え、40℃に加温して70%硝酸(酸化ランタン1モルに対して6.3モルの割合)を滴下し、硝酸ランタン水溶液を得た。この間の液温は40〜67℃であった。得られた硝酸ランタン水溶液に25℃で15.1%炭酸アンモニウム水溶液(酸化ランタン1モルに対して0.22モルの割合)を30分間かけて滴下した。pH3.6で炭酸ランタン水和物の種晶を接種し、30分保温した。15.1%炭酸アンモニウム水溶液(酸化ランタン1モルに対して0.52モルの割合)を25分かけて滴下しpH3.5とした。30分間25℃で保温後、生成した結晶を濾過し水(1重量部)で洗浄した。濾液と洗浄液とを合わせ、27℃で炭酸ランタン水和物の種晶を接種した。15.1%炭酸アンモニウム水溶液を3時間45分かけて滴下し、pH6.0とした。16時間40分、30℃で保温後、析出した結晶を濾過した。得られた結晶を水(24重量部)で洗浄後、減圧下40℃(浴温)で乾燥して炭酸ランタン水和物を収率80%で得た。得られた結晶中の元素不純物量は誘導結合プラズマ質量分析法にて測定した。
表3

Figure 2020085020

本発明の方法により、慢性腎不全患者における高リン血症治療剤として用いられる炭酸ランタン水和物を元素不純物の少ない高純度で製造することができる。

Claims (6)

  1. 工程1:酸化ランタンとランタンの可溶性塩を与える酸とを反応させて得られる水溶液に炭酸塩を加えて水溶液のpHを2.9〜4.5とし、生成する固体分を除去する工程、及び
    工程2:工程1で得られた液体分に炭酸塩を加えてpHを5.5〜7とする工程
    を含む炭酸ランタン水和物の製造方法。
  2. 工程1及び工程2の炭酸塩が炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム又は炭酸水素アンモニウムである請求項1に記載の方法。
  3. 工程1及び工程2の炭酸塩が炭酸ナトリウムである請求項1に記載の方法。
  4. 工程1の可溶性塩を与える酸が塩酸、硝酸又は硫酸である請求項1、2又は3に記載の方法。
  5. 工程1におけるランタンの可溶性塩を与える酸が塩酸である請求項1、2又は3に記載の方法。
  6. 工程1:酸化ランタンと塩酸とを反応させて得られる水溶液に炭酸ナトリウムを加えて水溶液のpHを3.2〜4.2とし、生成する固体分を除去する工程、及び
    工程2:工程1で得られた液体分に炭酸ナトリウムを加えてpHを5.5〜7とする工程
    を含む請求項1に記載の方法。
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