JPWO2020067138A1 - 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆TiN基サーメット製切削工具 - Google Patents

硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆TiN基サーメット製切削工具 Download PDF

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Abstract

この表面被覆TiN基サーメット製切削工具は、硬質相成分としてTiN相を含有するTiN基サーメットを基体とし、その表面に、炭窒化チタン層、酸化アルミニウム層等の硬質被覆層が形成されている表面被覆TiN基サーメット製切削工具であって、TiN基サーメットの成分組成等を調整することにより、TiN基サーメットの線膨張係数を9.0×10−6(/K)以上とし、熱伝導率を30(W/m・K)以上とし、さらに、硬質被覆層の残留圧縮応力を600〜2000MPaとし、特に、as−deposited状態でも600〜2000MPaとした。

Description

本発明は、耐チッピング性にすぐれた表面被覆TiN基サーメット製切削工具に関する。
本願は、2018年9月28日に、日本に出願された特願2018−185620号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
従来、例えば、炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットを代表とするサーメット基体(以下、「基体」という)の表面に、化学蒸着法または物理蒸着法で硬質被覆層を被覆形成した表面被覆TiCN基サーメット製切削工具(以下、「被覆工具」という)が知られている。
そして、被覆工具の耐チッピング性、耐欠損性、耐摩耗性等を改善すべく、従来から、種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、TiCN基サーメットで構成された基体の表面に、元素周期律表の4a族金属の炭化物、窒化物、および酸化物、並びにこれらの2種以上の固溶体からなる群のうちの1種の単層または2種以上の複層からなる硬質被覆層をPVD法(例えば、クラスターイオンビーム法)により形成している。特許文献1では、前記PVD法で形成した硬質被覆層の圧縮残留応力を0.7GPa以下とすることによって、硬質被覆層の剥離発生を抑制し、もって、被覆工具の耐欠損性を改善することが提案されている。
特許文献2には、TiCN基サーメットを基体とし、その表面にCVD法で硬質層を被覆した被覆工具として、基体表面に周期律表の4a,5aおよび6a族金属、Al,Siの群から選んだ1種または2種以上の金属元素と、炭素、窒素、酸素およびほう素からなる群より選んだ1種または2種以上の非金属元素の化合物の1種の単層または2種以上の多重層で硬質被覆層を構成している。次に、得られた硬質被覆層表面にサンドブラスト処理又はショットピーニング処理を施し、あるいは、得られた硬質被覆層表面にイオン照射を施している。特許文献2では前記硬質被覆層表面の処理により、硬質層の少なくとも1層(全ての硬質層であっても可)においては、引張残留応力あるいは圧縮残留応力を9kgf/mm以下とすることが提案されている。
そして、この被覆工具は、硬質層と硬質層並びに硬質層と基体との付着力が高く、かつ、耐摩耗性も向上し、連続切削、特に微小連続切削において耐逃げ面摩耗性に優れるとされている。
特許文献3には、周期律表の4a,5a,6a族金属の炭化物,窒化物及びこれらの相互固溶体の中の少なくとも1種の硬質相と、Ni,Co又はNi−Co合金を主成分とする結合相と、からなる焼結合金の基体(例えば、TiC基サーメット、TiCN基サーメット等の基体)が開示されている。そして、前記焼結合金の基体の表面に化学蒸着法により被膜(例えば、Tiの炭化物,窒化物,炭酸化物,窒酸化物,Alの酸化物及びこれらの相互固溶体の中の1種の膜が2層以上の多重層として形成されている被膜)を被覆してなる被覆焼結合金を得ている。次いで、前記被覆焼結合金の被膜表面に、ショットピーニング又はサンドブラストを施すことによって、前記基体の表面部に存在する前記硬質相には30〜80kg/mmの圧縮応力が付与されており、前記被膜には20kg/mm以下の圧縮応力が付与されているか、もしくは圧縮応力が付与されてない高強度被覆焼結合金が提案されている。
そして、この高強度被覆焼結合金では、基体の表面部に存在する硬質相に付与された圧縮応力と、被膜に付与された圧縮応力又は圧縮が付与されてない被膜とのバランスによって合金全体の耐衝撃性,強度及び耐欠損性が高められている。特に、前者の30〜80kg/mmの圧縮応力を付与された硬質相が、被膜形成時の工程中に被膜内に生じた微少クラック、もしくは応力を付与するために被膜表面から付加した衝撃力によって被膜内に生じた微少クラックの基体内部への進展を阻止する作用を有している。また、後者の20kg/mm以下の圧縮応力が付与されているか、もしくは圧縮応力が付与されてない被膜が、実用時の新たな微少クラックの発生を阻止する作用を有するとともに、新たな微少クラックが被膜内に発生した場合でも、前者の硬質相が微少クラックの基体内部への進展を阻止する2段防壁作用を有するとされている。
特許文献4には、Ti、Al、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Si及びB元素の炭化物、窒化物、酸化物及び硼化物または組合せ物またはそれらの固溶体からなる1層または複数層の耐摩耗性CVD層を含み、全被覆厚みが1〜20μmであるチタニウム基炭窒化物の切削工具インサートが開示されている。形成された被膜は冷却割れがなく、且つ同一結晶組織を有し、厚さが>1μmである1層または複数層の前記CVD層が室温で0〜1000Mpa、好ましくは100〜800Mpa、より好ましくは200〜500Mpa、の圧縮残留応力を有する被覆工具が提案されている。この被覆工具は、高靭性、耐摩耗性及び化学的安定性を有するとされている。
そして、前記の圧縮残留応力を付与するための手段としては、チタニウム基炭窒化物の成分組成を調整することが記載され、例えば、C及びNの原子分率が0<N/(N+C)<0.6、好ましくは0.1<N/(N+C)<0.6の関係を満足するようにし、且つ、Ti及びWの原子分率が0<W/(Ti+W)<0.4の関係を満足するように成分含有量を調整することが記載されている。また、C、N、Ti、W及びCoを含有するチタニウム基炭窒化物においては、それぞれの元素が、0.25<N/(C+N)<0.5、0.05<W/(W+Ti)<0.11及び0.09<Co<0.14の原子分率を満足するように調整することが記載されている。
特公平7−88569号公報 特開平4−300104号公報 特開平6−108258号公報 特表平11−511078号公報
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強い。これに伴い、切削加工は一段と高速化、高効率化の傾向にあり、被覆工具には、より一層、耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性等の耐異常損傷性が求められるとともに、長期の使用に亘ってのすぐれた耐摩耗性が求められている。
しかし、前記特許文献1で提案されている被覆工具では、PVD法により圧縮残留応力が少ない硬質被覆層を形成しているが、刃先に、急熱急冷の熱負荷とともに機械的な高負荷が作用する切削条件では、硬質被覆層が十分な強度を有さないためチッピングの発生は避けられず、また、耐摩耗性も十分ではない。
また、前記特許文献2では、TiCN基サーメットを基体とし、硬質被覆層表面にサンドブラスト、ショットピーニング、イオン照射を施すことにより、硬質層の少なくとも1層(全ての硬質層であっても可)において、引張残留応力あるいは圧縮残留応力を9kgf/mm以下とした被覆工具が提案されている。また、前記特許文献3では、TiC基サーメットあるいはTiCN基サーメットを基体とし、硬質被覆層表面にサンドブラスト、ショットピーニングを施すことにより、基体表面部の硬質相には30〜80kg/mmの圧縮応力を付与し、一方、被膜には20kg/mm以下の圧縮応力を付与するかもしくは付与しない被覆工具が提案されている。しかしながら、前記特許文献2、3で提案される被覆工具を、急熱急冷の熱サイクルとともに、刃先に高負荷が作用する切削条件に供した場合には、刃先が高温になり摩耗が進行するとともに、サンドブラスト、ショットピーニング等によるCVD膜の応力緩和処理の際に形成された硬質被覆層表面のクラックが、チッピング、欠損の発生起点となりやすいため、耐欠損性、耐摩耗性が十分であるとはいえない。
さらに、前記特許文献4で提案された被覆工具は、TiCN基サーメットの構成成分の組成を調整し、基体の熱膨張をCVD層よりも大きくすることによって、基体表面に形成されたCVD層に所定の圧縮残留応力を付与している。特許文献4では、これによって、CVD層に冷却割れを発生させることなく被覆工具の靭性、耐摩耗性、化学的安定性の向上を図っている。しかしながら、この被覆工具を、刃先に断続的・衝撃的な負荷とともに急熱急冷による熱負荷が作用する切削加工に供した場合には、刃先が高温になるため摩耗が急速に進行し、工具寿命が短命となる。
つまり、前記特許文献1〜4で提案されているサーメットを基体とする従来の被覆工具は、通常条件の切削加工においてはある程度の効果が得られるとしても、合金鋼の湿式高速フライス切削加工等のように、刃先に断続的・衝撃的な機械的負荷が作用し、しかも、急熱急冷の熱サイクルによる熱負荷(熱衝撃)が作用する切削条件に供した場合には、チッピング発生、摩耗の進行により早期に寿命に至るという課題があった。
そこで、本発明者らは上記課題を解決すべく、合金鋼の湿式高速フライス切削加工等に供した場合であっても、すぐれた耐チッピング性を発揮するとともに、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具を提供すべく、鋭意研究を進めたところ、次のような知見を得た。
前記特許文献1〜4にも示されるように、サーメットを基体とする表面被覆切削工具の基体は、TiCN基サーメットが現在主流である。
例えば、前記特許文献4では、基体の熱膨張係数がCVD層のそれより大きくなるようにTiCN基サーメットの成分組成を調整して、CVD層への圧縮残留応力を付与し、これによって、CVD層に冷却割れを発生させることなく被覆工具の靭性、耐摩耗性、化学的安定性の向上を図っている。しかしながら、刃先に断続的・衝撃的な機械的負荷とともに、急熱急冷の熱サイクルが作用する切削条件では、刃先に作用する熱衝撃によって熱亀裂が発生し、これが進展することでチッピングの発生を招き、工具寿命が短命となる。
したがって、表面被覆切削工具の性能をより向上させるためには、切削加工時の発熱で高温になった刃先から素早く熱を逃がしてやることによって、熱亀裂の発生を抑制し、また、これに伴うチッピングの発生を抑制することが望まれる。
つまり、刃先に断続的・衝撃的な機械的負荷が作用し、また、急熱急冷の熱サイクルが作用する切削条件下での使用に適した表面被覆切削工具としては、基体表面上に形成される硬質被覆層に大きな圧縮残留応力を付与することが可能な線膨張係数を備えるばかりでなく、刃先の熱を素早く逃がし熱亀裂の発生等を防止することができる高熱伝導性を備えたサーメット基体であることが求められる。
本発明者らは、このような要求を満足するサーメット基体について鋭意研究を進めたところ、TiN基サーメットの成分組成を調整することにより、線膨張係数を9.0×10−6/K(但し、室温〜1273Kの温度範囲)以上に高めることができ、さらに、熱伝導率が30W/m・K以上となる高熱伝導性のTiN基サーメットからなるサーメット基体を得られることが分かった。
ここで、通常のTiCN基サーメットの線膨張係数が約8.0×10−6/K程度(但し、室温〜1273Kの温度範囲)、また、熱伝導率が20W/m・K以下程度であることからすれば、前記のTiN基サーメットは、TiCN基サーメットに比して、大きな線膨張係数と高い熱伝導率を備えるといえる。
そして、前記の線膨張係数と熱伝導率を備えたTiN基サーメットを基体とし、その表面に、化学蒸着法で硬質被覆層(例えば、炭窒化チタン層及び酸化アルミニウム層の内の一層又は二層)を被覆形成することにより表面被覆TiN基サーメット製切削工具を作製したところ、硬質被覆層を被覆形成後にサンドブラスト、ショットピーニング等の特別の処理を行わないas−deposited状態において、硬質被覆層中には600〜2000MPaの圧縮残留応力が形成されることを見出したのである。
さらに、前記表面被覆TiN基サーメット製切削工具を、合金鋼の湿式高速フライス切削加工等の刃先に断続的・衝撃的な機械的負荷が作用し、しかも、急熱急冷の熱サイクルによる熱負荷(熱衝撃)を受ける切削加工に供したところ、刃先にチッピング、欠損等の異常損傷が発生することもなく、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮することを見出したのである。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものである。
(1)本発明の表面被覆TiN基サーメット製切削工具は、硬質相成分としてTiN相を含有するTiN基サーメットを基体とし、その表面に炭窒化チタン層と酸化アルミニウム層の少なくともいずれか一層を含む硬質被覆層が形成されている表面被覆TiN基サーメット製切削工具であって、
前記基体は、線膨張係数が9.0×10−6(/K)以上、また、熱伝導率が30(W/m・K)以上であり、前記硬質被覆層を構成する炭窒化チタン層、酸化アルミニウム層のそれぞれは、600〜2000MPaの残留圧縮応力を有することを特徴とする。
(2)前記硬質被覆層を構成する炭窒化チタン層、酸化アルミニウム層のそれぞれは、as−deposited状態で600〜2000MPaの残留圧縮応力を有することが好ましい(1)に記載の表面被覆TiN基サーメット製切削工具。
(3)前記TiN基サーメットは、TiN相を70〜94面積%及びMoC相を1〜25面積%含み残部が結合相からなり、前記結合相の成分は、FeとNiからなり、FeとNiの合計面積割合は5〜15面積%であり、かつ、FeとNiの合計含有量に対するNiの含有割合は、15〜35質量%であることが好ましい(1)または(2)に記載の表面被覆TiN基サーメット製切削工具。
本発明の表面被覆TiN基サーメット製切削工具は、基体をTiN基サーメットで構成し、かつ、該基体が9.0×10−6(/K)以上の線膨張係数と30(W/m・K)以上の熱伝導率を有し、さらに、基体表面に形成された硬質被覆層は、600〜2000MPaの残留圧縮応力を有している。特に、硬質被覆層はas−deposited状態(硬質被覆層を被覆形成後にサンドブラスト、ショットピーニング等の特別の処理を行っていない状態)でも600〜2000MPaの残留圧縮応力を有する。従って、合金鋼の湿式高速フライス切削加工等の刃先に断続的・衝撃的な機械的負荷が作用し、しかも、急熱急冷の熱サイクルによる熱負荷(熱衝撃)を受ける切削加工に供した場合でも、刃先にチッピング、欠損等の異常損傷を発生することもなく、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮する。
つぎに、本発明の表面被覆TiN基サーメット製切削工具(以下、「被覆TiN基サーメット工具」ということもある)について、以下の実施形態にてより具体的に説明する。
TiN基サーメット基体:
本実施形態の被覆TiN基サーメット工具の基体はTiN基サーメットから構成する。該TiN基サーメット基体は、その成分組成を調整することによって、9.0×10−6(/K)以上の線膨張係数と30(W/m・K)以上の熱伝導率を備えるようになる。
ここで、TiN基サーメット基体の線膨張係数が9.0×10−6(/K)未満では、硬質被覆層に600MPa以上の残留圧縮応力を導入することが難しくなるため十分な耐チッピング性を付与することができず、また、TiN基サーメット基体の熱伝導率が30(W/m・K)未満では、刃先の高熱を素早く逃がすことができず、急熱急冷の熱サイクルに対しての耐熱衝撃性が低くなり、その結果、熱亀裂発生、チッピング発生により早期に寿命となる。
したがって、TiN基サーメット基体の線膨張係数は9.0×10−6(/K)以上とし、また、TiN基サーメット基体の熱伝導率は30(W/m・K)以上とする。
好ましい線膨張係数は9.5×10−6〜10.5×10−6(/K)であり、好ましい熱伝導率は35〜45(W/m・K)である。
また、TiN基サーメット基体の線膨張係数を9.0×10−6(/K)以上とすることによって、TiN基サーメット基体表面上に硬質被覆層を形成した後、硬質被覆層の残留圧縮応力が600MPa以上となるためすぐれた耐チッピング性を発揮することができる。一方、残留圧縮応力が2000MPaを超える大きな値になると、硬質被覆層を厚膜化した場合(例えば10μmを超える程度に厚膜化した場合)、自己破壊を生じやすくなる。
したがって、硬質被覆層の残留圧縮応力は、600MPa以上2000MPa以下とするが、好ましくは、800MPa以上1500MPa以下である。
なお、本実施形態の硬質被覆層は、as−deposited状態で前記所定の圧縮残留応力を有するが、硬質被覆層形成後に、硬質被覆層表面にサンドブラスト、ショットピーニング等の表面処理を施すことによって、前記所定の圧縮残留応力の範囲内で、硬質被覆層の圧縮残留応力をさらに追加付与しても差し支えない。
本実施形態の被覆TiN基サーメット工具の硬質被覆層は、化学蒸着法により形成された炭窒化チタン層と酸化アルミニウム層の少なくともいずれか一層を含むことが好ましい。この場合の硬質被覆層の残留圧縮応力とは、基体表面に化学蒸着法で硬質被覆層が被覆形成されたままの状態であって、被覆形成後にサンドブラスト、ショットピーニング等の特別の処理を行っていない状態、即ち、as−deposited状態、において測定される硬質被覆層の残留圧縮応力(例えば、炭窒化チタン層の残留圧縮応力及び/又は酸化アルミニウム層の残留圧縮応力)をいう。
なお、本実施形態の硬質被覆層は、好ましくは、前記の化学蒸着法により形成された炭窒化チタン層と酸化アルミニウム層の少なくともいずれか一層を含むが、この他の硬質被覆層としては、炭化チタン層、窒化チタン層等のチタン化合物層、チタンとアルミニウムの複合窒化物層あるいは複合酸化物層、クロムとアルミニウムの複合窒化物層あるいは複合酸化物層等の今まで知られている硬質層が被覆形成されることを排除するものではない。
TiN基サーメット基体の線膨張係数は、例えば、ディラトメーターで測定することができ、また、TiN基サーメット基体の熱伝導率は、例えば、キセノンフラッシュアナライザーで測定することができる。
さらに、硬質被覆層(好ましくは、炭窒化チタン層及び/又は酸化アルミニウム層)の残留圧縮応力は、例えば、sinΨ法により、Cu−Kα線(λ=1.5418Å)を線源として、スキャンステップ:0.013度、1ステップ辺り測定時間:0.48sec/stepという条件のX線回折を用いた測定により算出することができる。
具体的には、例えば、硬質被覆層が酸化アルミニウム層を含む場合、酸化アルミニウムの(1310)面の回折ピークを用い、ヤング率として384GPa、ポアソン比として0.232を使用して残留圧縮応力を算出することができる。また、硬質被覆層が炭窒化チタン層を含む場合、炭窒化チタンの(422)面の回折ピークを用い、ヤング率として475GPa、ポアソン比として0.2を使用して残留圧縮応力を算出することができる。
前記の線膨張係数及び熱伝導率を備えるTiN基サーメットとしては、例えば、TiN相を70〜94面積%及びMoC相を1〜25面積%含み残部が結合相からなるTiN基サーメットであって、前記結合相の成分は、FeとNiからなり、FeとNiの合計面積割合は5〜15面積%であり、かつ、FeとNiの合計含有量に対するNiの含有割合が15〜35質量%であるTiN基サーメットを挙げることができる。
なお、TiN基サーメットは、TiCN基サーメットに比して、焼結性、靱性に劣るため、表面被覆切削工具用の基体としては不向きであると一般的にいわれているが、前記成分組成のTiN基サーメットを後記する焼結条件で焼結することによって、すぐれた焼結性及び靱性を備えるとともに、所定の線膨張係数及び熱伝導率を備える表面被覆切削工具用のサーメット基体を作製することができる。
前記TiN基サーメットの成分組成について、以下に説明する。
TiN相:
TiN基サーメット基体に占めるTiN相の面積割合が70面積%未満になると、基体としての硬さが十分ではなく、一方、TiN相が94面積%を超えると、焼結組織に微細な空隙(ポア)が形成されやすくなるため、靱性が低下することから、TiN基サーメット基体中のTiN相の面積割合は70〜94面積%であることが好ましい。従来から知られているTiCN基サーメットに対し、本実施形態のTiCN基サーメットは線膨張係数ならびに熱伝導率を高くすることにより被覆層への残留圧縮応力付与、基体の耐熱衝撃性を向上しているが、これら高い線膨張係数ならびに熱伝導率はTiNの性質に因るところが大きい。TiCの線膨張係数ならびに熱伝導率はTiNに比べ低く、TiCNはCとNの比率に応じTiCとTiNの中間の性質を有する。そのため、本実施形態においてはCを含有しないもしくはC含有量の極めて少ないTiNを用いることが肝要である。TiN相の面積割合はより好ましくは80〜90面積%である。
なお、本実施形態では、TiN基サーメット基体の断面を、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を備えた走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、得られた二次電子像内の領域(例えば、100μmの領域)における含有元素量を測定し、TiN相、MoC相及びFe−Ni相を特定し、各相が前記領域に占める面積比率を算出し、少なくとも、5領域以上の複数の領域で面積比率を算出し、これらの平均値を、各相の面積%とした。
MoC相:
TiN基サーメット基体中のMoC相の面積割合が1面積%未満では、TiN相と結合相間でのぬれ性が不足し、焼結組織に空隙を生じるため、靱性が低下し、一方、MoC相の面積割合が25面積%を超えると、FeMoC相等の複炭化物、FeMoN相等の複窒化物を生じやすくなり、これが靱性低下の要因となることから、TiN基サーメット基体中のMoC相の面積割合は1〜25面積%とすることが好ましく、より好ましくは2〜10面積%である。
結合相:
TiN基サーメット基体中に占める結合相の面積割合が、5面積%未満であると、結合相量が少ないためにTiN基サーメット基体の靱性が低下し、一方、結合相の面積割合が15面積%を超えると、硬質相成分であるTiN相の量が相対的に減少するため、基体として必要とされる硬度を確保することができない。
したがって、TiN基サーメット基体中に占める結合相の面積割合は5〜15面積%とすることが好ましく、より好ましくは7〜10面積%である。
また、この発明では、結合相を構成するFeとNiの合計含有量に対するNiの含有割合(={Ni/(Fe+Ni)}×100)を、15〜35質量%とすることによって、TiN基サーメット基体の靱性及び硬さを一段と高めることができる。
これは、FeとNiの合計含有量に対するNiの含有割合(={Ni/(Fe+Ni)}×100)が15質量%未満の場合には、NiはFe中に固溶するが、結合相を固溶強化するほどの効果は発揮されないため結合相の硬さが不足し、また、FeとNiの合計含有量に対するNiの含有割合(={Ni/(Fe+Ni)}×100)が35質量%を超える場合には、金属間化合物FeNiを生じやすくなるため、結合相の靱性が低下するという理由による。
結合相を構成するFeとNiの合計含有量に対するNiの含有割合は、より好ましくは20〜25質量%である。
被覆TiN基サーメット工具の作製:
本実施形態の被覆TiN基サーメット工具を作製するに際して、例えば、前記TiN相、MoC相及び結合相の各相の成分組成等を得るためには、まず、その原料粉末として、TiN:55〜92質量%、MoC:1〜40質量%、Fe:5〜18質量%、Ni:1〜5質量%であり、かつ、NiとFeの合量に対するNiの質量%(=Ni×100/(Fe+Ni))が15〜35質量%という関係を満たす成分及び組成の原料粉末を用いることが好適である。
そして、前記条件を満足する原料粉末をボールミルで混合し、該混合粉末をプレス成形して圧粉成形体を作製する。
ついで、前記圧粉成形体を、水素濃度1〜3容量%、窒素濃度97〜99容量%の混合ガスをフローしながら(窒素希釈水素雰囲気)、1350〜1450℃の温度範囲で30分〜120分焼結し、その後、1200℃まで10℃/分の速度で冷却し、更に室温まで自然冷却することによって、すぐれた靱性と硬さを相兼ね備える本実施形態のTiN基サーメット基体を作製する。
なお、圧粉成形体を、窒素希釈水素雰囲気にて焼結するのは、TiN粉末と結合相の大半の成分であるFeとの濡れ性を高めると同時に焼結性を高めるためである。
次いで、前記TiN基サーメット基体を化学蒸着装置に装入し、硬質被覆層(好ましくは、炭窒化チタン層及び/又は酸化アルミニウム層を含む)を蒸着形成する。
硬質被覆層の全層厚は、20μm以下であることが好ましく、より好ましくは10〜15μmである。
硬質被覆層の蒸着条件について特段の制限はないが、例えば、炭窒化チタン層については、
反応ガス(容量%):
TiCl 2%、CHCN 0.7%、N 10%、H 残,
反応圧力:7 kPa,
反応温度:900 ℃
という蒸着条件で形成することができる。
また、酸化アルミニウム層については、
反応ガス(容量%):
AlCl 2.2%、CO 5.5%、HCl 2.2%、
S 0.2%、H 残,
反応圧力:7 kPa,
反応温度:1000 ℃
という蒸着条件で形成することができる。
硬質被覆層を蒸着形成後、所定形状に機械加工することによって、被覆TiN基サーメット工具を作製することができる。
そして、前記工程で被覆TiN基サーメット工具を作製することにより、TiN基サーメット基体の線膨張係数が9.0×10−6(/K)以上、また、熱伝導率が30(W/m・K)以上であり、かつ、化学蒸着された硬質被覆層が、as−deposited状態で600〜2000MPaの残留圧縮応力を有する表面被覆TiN基サーメット製切削工具を得ることができる。本表面被覆TiN基サーメット製切削工具は、例えば、合金鋼の湿式高速フライス切削加工等の刃先に断続的・衝撃的な機械的負荷が作用し、しかも、急熱急冷の熱サイクルによる熱負荷(熱衝撃)を受ける切削加工に供した場合でも、刃先にチッピング、欠損等の異常損傷を発生することもなく、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮することができる。
つぎに、本発明の被覆TiN基サーメット工具を、実施例により具体的に説明する。
なお、本発明の実施例としては、サーメット基体表面に、硬質被覆層として、炭窒化チタン層及び/又は酸化アルミニウム層を化学蒸着で被覆形成した例を示すが、硬質被覆層としては、炭窒化チタン層及び/又は酸化アルミニウム層に加えて、さらに、炭化チタン層、窒化チタン層等のチタン化合物層、チタンとアルミニウムの複合窒化物層あるいは複合酸化物層、クロムとアルミニウムの複合窒化物層あるいは複合酸化物層等を被覆形成することもできる。
TiN基サーメット基体を作製するための粉末として、平均粒径10μmのTiN粉末、平均粒径2μmのMoC粉末、平均粒径2μmのFe粉末及び平均粒径1μmのNi粉末を用意し、表1に示す配合割合となるように配合し、かつ、Fe粉末及びNi粉末の配合量を、表1に示す配合比となるように配合することにより原料粉末1〜8を用意した。なお、ここでいう平均粒径は、メジアン径(d50)を意味する。
次いで、前記の原料粉末1〜8を、ボールミル中に充填して混合し、混合粉末1〜8を作製し、該混合粉末1〜8を乾燥した後、100〜500MPaの圧力でプレス成形し、圧粉成形体1〜8を作製した。
次いで、この圧粉成形体1〜8を、表2に示す条件で焼結した後、室温まで冷却することで、表3に示す本発明のTiN基サーメット基体(以下、「本発明基体」という)1〜8を作製した。
比較のため、本発明工具と同等の平均粒径を有する各種粉末を、表4に示す配合組成となるように配合して原料粉末11〜18を用意し、次いで、原料粉末11〜18を、ボールミル中に充填して混合し、混合粉末11〜18を作製し、該混合粉末11〜18を乾燥した後、100〜500MPaの圧力でプレス成形し、圧粉成形体11〜18を作製した。TiCN粉末はC:Nが50:50(ただし、原子比)である粉末を用いた。
次いで、この圧粉成形体11〜18を、表2および表5に示す条件で焼結した後、室温まで冷却することで、表6に示す比較例のサーメット基体(以下、「比較例基体」という)11〜18を作製した。
ついで、本発明基体1〜8と比較例基体11〜18について、その断面を、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を備えた走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、得られた二次電子像内の測定領域(例えば、100μm×100μmの測定領域)における含有元素量を測定し、TiN相もしくはTiCN相、MoC相及びFe−Ni相を特定し、各相が前記測定領域に占める面積比率を算出し、5箇所の測定領域で面積比率を算出し、これらの算出値を平均した値を、焼結組織中の各相の面積%として求めた。
また、Fe−Ni相について、該相におけるNiの含有量とFeの含有量を、オージェ電子分光装置を用い、Fe−Ni相上で10点の測定を行い、得られた算出値を平均した値からFeとNiの合計含有量に対するNiの含有割合(=Ni×100/(Fe+Ni))を質量%として求めた。
表3、表6に、これらの値を示す。
また、本発明基体1〜8と比較例基体11〜18について、ディラトメーターを用いてアルミナを比較試料とし、毎分5℃昇温速度で300Kから1273Kまで昇温した際の平均線膨張係数(/K)を測定し、また、キセノンフラッシュアナライザーを用いて、SUS310を比較試料とし、測定温度25℃、Xeランプ電圧270Vの条件にて熱伝導率を測定した。
表3、表6に、これらの値を示す。
Figure 2020067138
Figure 2020067138
Figure 2020067138
Figure 2020067138
Figure 2020067138
Figure 2020067138
次いで、前記本発明基体1〜8、比較例基体11〜18を化学蒸着装置に装入し、表7、表8に示す膜種の硬質被覆層を、単層構造あるいは複層構造として、表7、表8に示す平均層厚で蒸着形成した。
なお、ここでは、単層構造あるいは4層までの複層構造として硬質被覆層を蒸着形成したが、この層数に制限されるものではなく、より多数の層の積層構造であっても良い。
また、硬質被覆層の蒸着条件について特段の制限はないが、本発明基体1〜8、比較例基体11〜18における炭窒化チタン、酸化アルミニウムの化学蒸着条件は、以下のとおりである。
[炭窒化チタン]
反応ガス(容量%):
TiCl 2%、CHCN 0.7%、N 10%、H 残,
反応圧力:7 kPa,
反応温度:900 ℃
という蒸着条件で形成することができる。
[酸化アルミニウム]
反応ガス(容量%):
AlCl 2.2%、CO 5.5%、HCl 2.2%、
S 0.2%、H 残,
反応圧力:7 kPa,
反応温度:1000 ℃
という蒸着条件で形成することができる。
硬質被覆層を蒸着形成後、研削加工を施すことにより、ISO規格SEEN1203AFSNのインサート形状をもった表7に示す本発明の被覆TiN基サーメット工具(以下、「本発明工具」という)1〜8及び表8に示す比較例の被覆サーメット工具(以下、「比較例工具」という)11〜18を作製した。
なお、蒸着形成終了後の本発明工具1〜8、比較例工具11〜18のas−deposited状態の硬質被覆層について、sinΨ法により、Cu−Kα線(λ=1.5418Å)を線源として、スキャンステップ:0.013度、1ステップ辺り測定時間:0.48sec/stepという条件のX線回折を行い、硬質被覆層の残留応力の値を測定・算出した。
なお、例えば、酸化アルミニウム層からなる硬質被覆層については、(1310)面の回折ピークを用い、ヤング率として384GPa、ポアソン比として0.232を使用して残留応力を算出した。また、炭窒化チタン層からなる硬質被覆層については、(422)面の回折ピークを用い、ヤング率として475GPa、ポアソン比として0.2を使用して残留応力を算出した。
表7、表8に、これらの値を示す。
なお、表中には、残留圧縮応力を正の値、残留引張応力を負の値として記載した。
上記残留応力測定後、本発明工具1および2、比較例工具1および2に対してウェットブラスト処理を行い、被覆層表面の処理を行った。
なお、ウェットブラスト処理後の本発明工具1および2、比較例工具1および2のTiCN層及びAl層の残留応力は、次のとおりとなった。
本発明工具1
TiCN層:770MPa(as−deposited状態より20MPaアップ)
Al層:1060MPa(as−deposited状態より40MPaアップ)
本発明工具2
TiCN層:1090MPa(as−deposited状態より30MPaアップ)
Al層:1350MPa(as−deposited状態より50MPaアップ)
比較例工具1
TiCN層:240MPa(as−deposited状態より20MPaアップ)
Al層:420MPa(as−deposited状態より60MPaアップ)
比較例工具2
TiCN層:540MPa(as−deposited状態より20MPaアップ)
Al層:590MPa(as−deposited状態より40MPaアップ)
Figure 2020067138
Figure 2020067138
次いで、前記本発明工具1〜8、比較例工具11〜18を、いずれも工具鋼製カッターの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、以下に示す、合金鋼の湿式フライス切削加工試験を実施し、切刃の逃げ面摩耗幅を測定するとともに、刃先の損耗状態を観察した。
切削条件:
被削材:JIS・SCM440のブロック、
切削速度:800 m/min、
切り込み:1.0 mm、
送り:0.1 mm/rev、
切削時間:15 分、
表9に、切削試験の結果を示す。
Figure 2020067138
表3、表6〜9に示されるように、本発明工具1〜8は、TiN基サーメット基体が所定の線膨張係数と熱伝導率(表3参照)を備え、かつ、硬質被覆層に所定の残留圧縮応力が存在する(表7参照)ことから、刃先に断続的・衝撃的な機械的負荷と急熱急冷の熱サイクルによる熱負荷(熱衝撃)が作用する切削加工においても、切削寿命に影響を与えるようなチッピングを発生することなく、長期の使用にわたって優れた耐摩耗性を示した(表9参照)。
これに対して、比較例工具11〜18は、TiN基サーメット基体が、本発明で規定する所定の線膨張係数と熱伝導率(表6参照)を備えておらず、あるいは、硬質被覆層に所定の残留圧縮応力が存在しない(表8参照)ことから、耐摩耗性が十分でないばかりか、熱亀裂の発生・伝播を主たる原因とする刃先のチッピングによって、工具寿命が短命であった(表9参照)。
この発明の表面被覆TiN基サーメット製切削工具は、耐チッピング性、耐摩耗性にすぐれることから、高速湿式断続切削ばかりでなく、その他の切削条件下での切削工具としても適用することができ、長期の使用にわたって、すぐれた切削性能を発揮し、切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (3)

  1. 硬質相成分としてTiN相を含有するTiN基サーメットを基体とし、その表面に炭窒化チタン層と酸化アルミニウム層の少なくともいずれか一層を含む硬質被覆層が形成されている表面被覆TiN基サーメット製切削工具において、
    前記基体は、線膨張係数が9.0×10−6(/K)以上、また、熱伝導率が30(W/m・K)以上であり、前記硬質被覆層を構成する炭窒化チタン層、酸化アルミニウム層のそれぞれは、600〜2000MPaの残留圧縮応力を有することを特徴とする表面被覆TiN基サーメット製切削工具。
  2. 前記硬質被覆層を構成する炭窒化チタン層、酸化アルミニウム層のそれぞれは、as−deposited状態で600〜2000MPaの残留圧縮応力を有することを特徴とする請求項1に記載の表面被覆TiN基サーメット製切削工具。
  3. 前記TiN基サーメットは、TiN相を70〜94面積%及びMoC相を1〜25面積%含み残部が結合相からなり、前記結合相の成分は、FeとNiからなり、FeとNiの合計面積割合は5〜15面積%であり、かつ、FeとNiの合計含有量に対するNiの含有割合は、15〜35質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆TiN基サーメット製切削工具。
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