JP5217417B2 - 耐摩耗性に優れた炭窒化チタン基サーメット製切削工具 - Google Patents

耐摩耗性に優れた炭窒化チタン基サーメット製切削工具 Download PDF

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Description

この発明は、例えば、各種鋼や鋳鉄などの高熱発生を伴う高速切削に用いた場合に、耐熱衝撃性、耐欠損性にすぐれ、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮する炭窒化チタン基(TiCN基)サーメット製切削工具(以下、単にサーメット工具という)に関するものである。
従来、サーメット工具として、Ti炭窒化物、Tiを主体とする炭窒化物、またはTiとMを主体とする炭窒化物(ただし、MはTa、Nb、およびVのうちの1種または2種以上を示す、以下同じ)からなる芯部と、TiとWとMを主体とする炭窒化物からなる周辺部で構成された有芯構造の硬質相:70〜95面積%、を含有し、残りがCoとWを主体とする結合相および不可避不純物からなる炭窒化チタン基(TiCN基)サーメット(以下、単にサーメットという)で構成されたサーメット工具が知られている。
そして、上記のサーメット工具の耐熱衝撃性を改善するために、1400〜1600℃の温度範囲において、所定圧力のHe、N、Ar、CO、CO雰囲気中で焼成し、WCoC,WCoC,WCoC,WCo等の低級炭化物を含むη相を生成させることが知られている。
また、上記のサーメット工具の耐摩耗性を改善するために、1400〜1550℃の温度範囲かつ20〜500TorrのN雰囲気中で保持し急冷した後、1100〜1250℃で加熱し、(W,Co)Cからなる微細析出分散硬質相を分散析出させることも知られている。
特開2000−135606号公報 特開2000−237903号公報
近年、切削加工における省力化、省エネ化、高効率化、低コスト化の要請は強く、切削装置の高性能化には目ざましいものがあり、その一方、工作機械の性能向上に伴い、工具にとっての切削条件は益々過酷なものとなってきており、サーメット工具には使用寿命の一段の延命化が望まれている。
サーメット工具は、一般的に、超硬工具に比して、耐熱衝撃性、耐欠損性が不十分であり、特に、耐摩耗性を向上させようとした場合には、耐熱衝撃性、耐欠損性のさらなる劣化が生じやすいことから、サーメット工具の使用寿命の延命化のためには、耐熱衝撃性、耐欠損性を低下させることなしに耐摩耗性の向上を図ることが必要とされるが、上記従来のサーメット工具は、耐熱衝撃性、耐欠損性および耐摩耗性のいずれかが劣るものであり、これらの特性を相兼ね備えたものであるとはいえない。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、耐熱衝撃性、耐欠損性を低下させることなくすぐれた耐摩耗性を備えるサーメット工具について鋭意研究を行った結果、サーメット工具の組織及びこの組織を生成するための条件等について、以下の知見を得た。
(a)上記従来技術(以下、上記特許文献1、2記載の技術を、それぞれ「従来技術1」、「従来技術2」という)によれば、サーメットの焼成温度である1400〜1600℃の任意の温度において、He、N2、Ar、CO、CO2の少なくともいずれかのガスを760Torr以下の圧力で導入し、W6Co6C,W3Co3C,W4Co2C,W9Co3C4等の低級炭化物を含むη相を生成させることにより、熱衝撃性の改善を図り(従来技術1)、また、1400〜1550℃の温度範囲かつ20〜500TorrのN2雰囲気中でサーメットを焼成保持後急冷し、1100〜1250℃で加熱し、(W,Co)Cからなる微細析出分散硬質相を分散析出させることにより、耐摩耗性の改善を図っている(従来技術2)が、サーメット原料粉末の焼成に際し、例えば、
(イ)常温から、ガス導入温度(1420〜1480℃の範囲内のいずれかの温度)までは、真空雰囲気中で加熱昇温し、
(ロ)ガス導入温度(1420〜1480℃の範囲内のいずれかの温度)に達した時点で、窒素と炭化水素の混合ガス(例えば、N2−CH4混合ガス)を導入し、該窒素と炭化水素の混合ガス雰囲気中(0.5〜100Torr)中で、焼結温度(1520〜1600℃)にまで加熱昇温し、
(ハ)該焼結温度で、60〜120分間加熱保持し、
(ニ)焼結終了後、徐冷却(2〜8℃/min)する、
という条件(即ち、上記従来技術1、2とは、特に、炭化水素(例えば、メタン、エタン等)を含有した窒素−炭化水素混合ガス中で焼成するという点で焼成雰囲気が異なっている)で焼成を行うと、芯部と周辺部で構成された有芯構造および単独構造の主体硬質相と、Coを主体とする金属結合相(以下、単に金属結合相という)からなる組織が形成されると同時に、該金属結合相中には、六方晶結晶構造を有し、微量のコバルトを含有するタングステンとコバルトの複合炭化物相(以下、h−(W,Co)C相で示す)が、主体硬質相間の間隙を充填し、主体硬質相相互を結合するような形態で形成されること。
(b)上記の焼成条件で金属結合相中に形成されるh−(W,Co)C相は、前記従来技術1において形成される立方晶構造のη相、あるいは、前記従来技術2において形成される立方晶構造の(W,Co)Cからなる微細析出分散硬質相とは全く異なる六方晶結晶構造を有し、強靭な硬質相であるため、h−(W,Co)C相の形成によってサーメットの靭性が向上すると同時に、h−(W,Co)C相が、主体硬質相間の間隙を充填し、主体硬質相相互を結合するような形態で存在することによって、主体硬質相の靭性にすぐれたネットワークが形成され、サーメット全体としての耐塑性変形性が大幅に向上すること。
(c)したがって、芯部と周辺部で構成された有芯構造および単独構造の主体硬質相と金属結合相および該金属結合相中にあって、主体硬質相間の間隙を充填し、主体硬質相相互を結合するような形態で存在する強靭・硬質なh−(W,Co)C相からなる組織構造を有するサーメット工具は、各種鋼や鋳鉄などの高熱発生を伴う高速切削に用いた場合にも、耐熱衝撃性、耐欠損性にすぐれるとともに、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するようになること。
この発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、
「(1)
(a)重量%で、
炭化タングステン:20〜30%、
炭化タンタル、炭化ニオブおよび炭化バナジウムのうちの1種又は2種以上:5〜10%、
コバルト:10〜20%
炭窒化チタンおよび不可避不純物:残部、
の配合組成、
(b)チタン炭窒化物、チタンを主体とする炭窒化物またはチタンとM(ただし、Mは、タンタル、ニオブおよびバナジウムのうちの1種又は2種以上を示す)を主体とする炭窒化物からなる芯部と、チタンとタングステンとM(ただし、Mは、タンタル、ニオブおよびバナジウムのうちの1種又は2種以上を示す)を主体とする炭窒化物からなる周辺部で構成された有芯構造の硬質相、チタン炭窒化物単独構造の硬質相およびチタンとタングステンと上記Mを主体とする炭窒化物単独構造の硬質相からなる主体硬質相:70〜95面積%、残部がCoを主体とする金属結合相:30〜5面積%からなる組織構造、
を有する炭窒化チタン基サーメット製切削工具(サーメット工具)において、
(c)上記Coを主体とする金属結合相中に、タングステンとの合量に占めるコバルトの含有割合が1〜8原子%である六方晶結晶構造を有するタングステンとコバルトの複合炭化物相を、2〜20面積%(但し、上記Coを主体とする金属結合相の面積%を100とした場合に、上記Coを主体とする金属結合相中に占める面積割合)存在させたことを特徴とする炭窒化チタン基サーメット製切削工具(サーメット工具)。
(2)
前記(1)記載の炭窒化チタン基サーメット製切削工具(サーメット工具)において、
上記Coを主体とする金属結合相中に、タングステンとの合量に占めるコバルトの含有割合が1〜8原子%である六方晶結晶構造を有するタングステンとコバルトの複合炭化物相を、2〜20面積%(但し、上記Coを主体とする金属結合相の面積%を100とした場合に、上記Coを主体とする金属結合相中に占める面積割合)存在させ、かつ、立方晶結晶構造を有するタングステンとコバルトの複合炭化物からなる微細析出分散硬質相を1〜20面積%(但し、上記Coを主体とする金属結合相の面積%を100とした場合に、上記Coを主体とする金属結合相中に占める面積割合)存在させたことを特徴とする前記(1)記載の炭窒化チタン基サーメット製切削工具(サーメット工具)。」
に特徴を有するものである。
この発明のサーメット工具において、その配合組成、組織等を上記の通りに限定した理由を以下に説明する。
(a)炭化タングステン(WC)
この発明のサーメットでは、WCの配合割合が20重量%未満ではCoを主体とする金属結合相(金属結合相)中のW含有割合が不足して、所望の高温硬さを保持することができず、一方、その配合割合が30%を越えると、六方晶構造を有するタングステンとコバルトの複合炭化物相が、粒子状に存在し、主体硬質相相互を結合するような形態をとらなくなるため、耐塑性変形性が急激に低下し、これが原因で刃先に塑性変形が発生しやすくなることから、その配合割合を20〜30重量%と定めた。
(b)炭化タンタル、炭化ニオブおよび炭化バナジウム(TaC/NbC/VC)のうちの1種又は2種以上
TaC、NbCおよびVCは、その一部が、焼結時に結合相形成成分であるCo成分中に固溶し、また、他の一部は、主体硬質相の周辺部および芯部に固溶含有され、主体硬質相の高温強度を向上させる作用を有するが、その配合割合(TaC、NbCおよびVCの合計量)が5重量%未満では前記作用に所望の向上効果が得られず、一方、その含有割合が10%を越えると硬質相中の含有割合が高くなり過ぎ、これが主体硬質相の硬さ低下の原因となることから、その配合割合(TaC、NbCおよびVCの合計量)を5〜10重量%と定めた。
(c)コバルト(Co)
Coには、焼結性を向上させ、金属結合相を形成して、サーメットの強度を向上させる作用があるが、その配合割合が10重量%未満では所望の焼結性を確保することができず、一方、その配合割合が20重量%を越えると、摩耗が急激に進行するようなることから、その配合割合を10〜20重量%に定めた。
(d)炭窒化チタン(TiCN)
TiCNには、焼結時に主体硬質相を形成して、サーメット工具の硬さを向上させ、もって耐摩耗性向上に寄与する作用があるが、その配合割合が40重量%未満では、所望の硬さを確保することができず、一方、その配合割合が65%を越えると、切削工具の強度が急激に低下し、切削時に欠損、チッピングが発生し易くなることから、その配合割合を40〜65重量%とすることが望ましく、また、50〜55重量%とすることがさらに望ましい。
(e)主体硬質相
主体硬質相は、チタン炭窒化物、チタンを主体とする炭窒化物またはチタンとM(ただし、Mは、タンタル、ニオブおよびバナジウムのうちの1種又は2種以上を示す)を主体とする炭窒化物(以下、これらを総称して、(Ti,M)CNで示す)からなる芯部と、チタンとタングステンとM(ただし、Mは、タンタル、ニオブおよびバナジウムのうちの1種又は2種以上を示す)を主体とする炭窒化物(以下、(Ti,W,M)CNで示す)からなる周辺部で構成される有芯構造の硬質相、チタン炭窒化物の単独構造の硬質相およびチタンとタングステンとMを主体とする炭窒化物の単独構造の硬質相からなるが、主体硬質相の面積割合が70面積%未満では、相対的に金属結合相の割合が多くなりすぎて耐摩耗性が低下してしまい、一方、その面積割合が95面積%を超えると、反対に金属結合相の割合が少なくなりすぎて焼結性の低下、強度低下が生じるようになることから、主体硬質相の面積割合を70〜95面積%と定めた。
(f)Coを主体とする金属結合相(金属結合相)
金属結合相の面積割合は、上記主体硬質相の場合と同様な理由、即ち、金属結合相の面積%が30面積%を超えると、耐摩耗性が低下し、一方、金属結合相の面積%が5面積%未満であると焼結性の低下、強度低下が生じることから、金属結合相の面積割合は30〜5面積%と定めた。
なお、この発明では、金属結合相は、サーメットを構成する主体硬質相以外の相をいい、Co中に、W、Ta、Nb、Vを固溶するCo基固溶体相の他、Wとの合量に占めるCoの含有割合が1〜8原子%である六方晶結晶構造のh−(W,Co)C相、あるいは、立方晶結晶構造のWとCoの複合炭化物((W,Co)C)からなる微細析出分散硬質相も含めて金属結合相とよぶ。
上記h−(W,Co)C相、(W,Co)Cからなる微細析出分散硬質相については次で述べる。
(g)h−(W,Co)C相
上記金属結合相中に存在する、Wとの合量に占めるCoの含有割合が1〜8原子%である六方晶構造のh−(W,Co)C相は、例えば、サーメットの焼成時、特に、サーメット原料粉末を真空下で加熱昇温し、1420〜1480℃の範囲内のいずれかの温度に達した時点で、窒素と炭化水素の混合ガス(例えば、N−CH混合ガス)を導入し、該窒素と炭化水素の混合ガス雰囲気中(窒素 95〜50vol%−炭化水素5〜50vol%,1〜50Torr)で、焼結温度(1520〜1600℃)にまで加熱昇温し、焼結温度で、60〜120分間加熱保持した後、通電冷却等により徐冷(10℃/min以下の冷却速度)することによって、溶融金属相中に溶け込んでいたWが炭化物として析出してh−(W,Co)C相が形成される。しかし、1420〜1480℃の範囲内のいずれかの温度で、窒素と炭化水素の混合ガスが導入されないような場合、1520〜1600℃の温度範囲、かつ、窒素と炭化水素の混合ガス雰囲気中で焼結、加熱保持が行われないような場合、あるいは、焼結後に徐冷されないような場合には、従来技術1で示される立方晶構造のη相が形成されるか、従来技術2で示される立方晶構造の(W,Co)Cからなる微細析出分散硬質相が形成されるのみであって、この発明におけるWとの合量に占めるCoの含有割合が1〜8原子%である六方晶構造のh−(W,Co)C相が形成されることはない。なお、上記h−(W,Co)C相形成のメカニズムは充分解明されているわけではないが、h−(W,Co)C相が六方晶の結晶構造を有すること、h−(W,Co)C相には、Wとの合量に占める割合で1〜8原子%のCoが含有されていることは、透過式電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析(TEM−EDS)によって本発明者らは確認している。
そして、上記h−(W,Co)C相は、強靭な硬質相であって、しかも、図1に概略図示されるように、主体硬質相間の間隙を充填し、主体硬質相相互を結合するような形態で存在するため、サーメット工具の靭性を向上させると同時に、サーメット工具の耐塑性変形性を大幅に向上させる。ただ、金属結合相中に占めるh−(W,Co)C相の面積割合が2面積%未満の場合には、靭性、耐塑性変形性向上効果を期待できず、一方、h−(W,Co)C相の面積割合が20面積%を超える場合には、サーメットの焼結性の低下、強度低下が生じるため、金属結合相中に占めるh−(W,Co)C相の面積割合、即ち、金属結合相の面積%を100とした場合に、金属結合相中に占めるh−(W,Co)C相の面積割合は2〜20面積%と定めた。
(h)WとCoの複合炭化物((W,Co)C)からなる微細析出分散硬質相
サーメットの焼成に際し、前記1520〜1600℃の温度範囲、かつ、窒素と炭化水素の混合ガス雰囲気中での焼結、加熱保持を行った後、徐冷を行うと、溶融金属相中に溶け込んでいたWが炭化物として析出してh−(W,Co)C相が主体硬質相間隙に析出形成されるが、Coが多くWC配合割合が少ない(Co15〜20かつWC20〜25重量%)サーメットの場合には、溶融金属相中に溶け込んでいたWの一部が、WとCoの複合炭化物((W,Co)C)として金属結合相中に微細に析出分散するようになる。そして、この(W,Co)Cからなる微細析出分散相は立方晶結晶構造を有する硬質相であって、サーメット工具の耐摩耗性を一段と向上させるが、金属結合相中に占める上記(W,Co)C微細析出分散硬質相の面積割合が20面積%を超えると、靭性が急激に低下し、切刃に欠損が発生しやすくなり、一方、金属結合相中に占める上記(W,Co)C微細析出分散硬質相の面積割合が1面積%未満では、より一層の耐摩耗性向上効果を期待できないことから、金属結合相に占める立方晶結晶構造を有し(W,Co)Cからなる微細析出分散硬質相の面積割合を1〜20面積%と定めた。
なお、以下の実施例に示す条件等で焼成を行うことにより、h−(W,Co)C)相が金属結合相中に2〜20面積%、かつ、(W,Co)Cからなる微細析出分散硬質相が金属結合相中に1〜20面積%存在する組織構造を得ることができる。
この発明のサーメット工具は、芯部と周辺部で構成された有芯構造および単独構造の主体硬質相と、残部がCoを主体とする金属結合相からなり、さらに、前記金属結合相中に、六方晶結晶構造を有しかつコバルトを1〜8原子%含有するh−(W,Co)C相を、主体硬質相間の間隙を充填し、主体硬質相相互を結合するような形態で存在させ、あるいは、さらに(W,Co)Cからなる立方晶結晶構造を有する微細析出分散硬質相を存在させたことにより、これを、各種鋼や鋳鉄などの高熱発生を伴う高速切削に用いた場合にも、すぐれた耐塑性変形性、耐熱衝撃性、耐欠損性を示し、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するものである。
つぎに、この発明のサーメット工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有する、TiCN粉末、WC粉末、TaC粉末、NbC粉末、VC粉末、Co粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、200MPaの圧力でSNGA形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を、以下の焼結条件、すなわち、
(1)室温から、1420〜1480℃までの温度範囲内のいずれかの温度(ガス導入温度)までを、10Pa以下の真空雰囲気中、2℃/min.の速度で加熱昇温し、
(2)表2に示すガス導入温度で、同じく表2に示す窒素と炭化水素の混合ガスを焼結炉内に導入し、該窒素−炭化水素混合ガス雰囲気中(1〜50Torr)で、同じく表2に示す焼結温度(1520〜1600℃)にまで加熱昇温し、該焼結温度にて同じく表2に示す時間だけ加熱保持を行い、
(3)上記焼結温度から、同じく表2に示す冷却速度で室温にまで徐冷する、
以上(1)〜(3)の工程からなる条件で焼結し、表3に示されるISO規格・SNGA120408のチップ形状で、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施した本発明サーメット工具1〜10をそれぞれ製造した。
比較の目的で、表1で示される配合組成の圧粉体を、表4に示される
条件(a):窒素雰囲気、
条件(b):アルゴン雰囲気
のいずれかの雰囲気ガス中で焼結した以外は、上記焼結条件(1),(3)と実質的に同一の条件で、表5に示される比較サーメット工具1〜5を製造した(従来技術1に対応)。
また、さらに比較の目的で、上記焼結条件(1)で加熱昇温した後、窒素雰囲気中で焼結し、表4に示される
条件(c):Heガス吹き付けにより700℃まで急冷し、1100℃×120minで再加熱後炉冷する、
条件(d):Heガス吹き付けにより700℃まで急冷し、1250℃×30minで再加熱後炉冷する、
のいずれかの条件で再加熱し、表5に示される比較サーメット工具6〜10を製造した(従来技術2に対応)。
この結果得られた本発明サーメット工具1〜10および比較サーメット工具1〜5,6〜10について、これを構成するサーメットの組織を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察するとともに、また、金属結合相中に存在する析出相の面積割合(但し、金属結合相を100とした場合の面積割合)、結晶構造、形態を走査型電子顕微鏡を用いた電子線後方散乱回折装置(SEM−EBSD)で、また、h−(W,Co)C相中のCo含有割合(原子%)については、透過式電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析(TEM−EDS)で測定し、その測定結果をそれぞれ表3、5に示した。
つぎに、上記の本発明サーメット工具1〜10および比較サーメット工具1〜5,6〜10について、これをいずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・S45Cの丸棒、
切削速度: 600 m/min、
切り込み: 0.5 mm、
送り: 0.1 mm/rev、
切削時間: 15 分、
の条件(切削条件Aという)での炭素鋼の湿式連続高速切削試験(通常の切削速度は、300m/min)、
被削材:JIS・SS400の丸棒、
切削速度: 800 m/min、
切り込み: 0.5 mm、
送り: 0.2 mm/rev、
切削時間: 20 分、
の条件(切削条件Bという)での軟鋼の湿式連続高速切削試験(通常の切削速度は、350m/min)、
被削材:JIS・FC200の丸棒、
切削速度: 900 m/min、
切り込み: 0.5 mm、
送り: 0.15 mm/rev、
切削時間: 10 分、
の条件(切削条件Cという)での鋳鉄の乾式連続高速切削試験(通常の切削速度は、400m/min)、
を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表6に示した。
Figure 0005217417
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表3、5、6に示される結果から、本発明サーメット工具1〜10は、Coを主体とする金属結合相中に、タングステンとの合量に占めるコバルトの含有割合が1〜8原子%である六方晶結晶構造を有するタングステンとコバルトの複合炭化物(h−(W,Co)C)相が2〜20面積%(但し、上記Coを主体とする金属結合相の面積%を100とした場合に、上記Coを主体とする金属結合相中に占める面積割合)存在し、(あるいは、さらに、立方晶結晶構造の(W,Co)Cからなる微細析出分散硬質相が存在し、)そして、特に、このh−(W,Co)C相が、強靭な硬質相であって、さらに、h−(W,Co)C相が、主体硬質相間の間隙を充填し、主体硬質相相互を結合するような形態で存在するため、サーメット工具の靭性、耐塑性変形性が大幅に改善される結果、各種鋼や鋳鉄などの高熱発生を伴う高速切削に用いた場合にも、すぐれた耐塑性変形性、耐熱衝撃性、耐欠損性を示すとともに、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、比較サーメット工具1〜5においては、η相が析出していることから、耐摩耗性には優れるものの、耐欠損性では劣り、一方、比較サーメット工具6〜10においては、(W,Co)Cからなる微細析出分散硬質相の存在によって、耐摩耗性には優れるものの、耐熱衝撃性では劣り、いずれにしても、比較サーメット工具1〜10は、耐熱衝撃性、耐欠損性のいずれをも劣化させることなく耐摩耗性を向上させたものではなく、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明のサーメット工具は、各種の鋼や鋳鉄などの通常の条件での切削加工は勿論のこと、高熱発生を伴う厳しい切削条件である高速切削加工でもすぐれた耐塑性変形性、耐熱衝撃性、耐欠損性とともにすぐれた耐摩耗性を発揮し、使用寿命の延命化が実現され、その結果、切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
本発明サーメット工具1において、h−(W,Co)C相が、主体硬質相間の間隙を充填し、主体硬質相相互を結合するような形態で存在することを示す概略説明図である。

Claims (2)

  1. (a)重量%で、
    炭化タングステン:20〜30%、
    炭化タンタル、炭化ニオブおよび炭化バナジウムのうちの1種又は2種以上:5〜10%、
    コバルト:10〜20%
    炭窒化チタンおよび不可避不純物:残部、
    の配合組成、
    (b)チタン炭窒化物、チタンを主体とする炭窒化物またはチタンとM(ただし、Mは、タンタル、ニオブおよびバナジウムのうちの1種又は2種以上を示す)を主体とする炭窒化物からなる芯部と、チタンとタングステンとM(ただし、Mは、タンタル、ニオブおよびバナジウムのうちの1種又は2種以上を示す)を主体とする炭窒化物からなる周辺部で構成された有芯構造の硬質相、チタン炭窒化物単独構造の硬質相およびチタンとタングステンと上記Mを主体とする炭窒化物単独構造の硬質相からなる主体硬質相:70〜95面積%、残部がCoを主体とする金属結合相:30〜5面積%からなる組織構造、
    を有する炭窒化チタン基サーメット製切削工具において、
    (c)上記Coを主体とする金属結合相中に、タングステンとの合量に占めるコバルトの含有割合が1〜8原子%である六方晶結晶構造を有するタングステンとコバルトの複合炭化物相を、2〜20面積%(但し、上記Coを主体とする金属結合相の面積%を100とした場合に、上記Coを主体とする金属結合相中に占める面積割合)存在させたことを特徴とする炭窒化チタン基サーメット製切削工具。
  2. 請求項1記載の炭窒化チタン基サーメット製切削工具において、
    上記Coを主体とする金属結合相中に、タングステンとの合量に占めるコバルトの含有割合が1〜8原子%である六方晶結晶構造を有するタングステンとコバルトの複合炭化物相を、2〜20面積%(但し、上記Coを主体とする金属結合相の面積%を100とした場合に、上記Coを主体とする金属結合相中に占める面積割合)存在させ、かつ、立方晶結晶構造を有するタングステンとコバルトの複合炭化物からなる微細析出分散硬質相を1〜20面積%(但し、上記Coを主体とする金属結合相の面積%を100とした場合に、上記Coを主体とする金属結合相中に占める面積割合)存在させたことを特徴とする請求項1記載の炭窒化チタン基サーメット製切削工具。
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