JP2012086298A - 鋼の高速断続切削において優れた耐欠損性を発揮する表面被覆wc基超硬合金製切削工具 - Google Patents

鋼の高速断続切削において優れた耐欠損性を発揮する表面被覆wc基超硬合金製切削工具 Download PDF

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亮介 山口
Yasuhiko Tashiro
安彦 田代
Masanori Saito
正典 斉藤
Kazuki Okada
一樹 岡田
Kazuhiro Akiyama
和裕 秋山
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Abstract

【課題】鋼の高速断続切削において優れた耐欠損性、耐熱塑性変形性、耐摩耗性を発揮する表面被覆WC基超硬合金製切削工具を提供する。
【解決手段】結合相成分としてCoを4〜12質量%含有し、硬質相成分としてTi、Ta、Nb、Wのうち2種以上の成分からなる複合炭窒化物のうちの1種を5〜30質量%を含有し、残部WCからなるWC超硬合金を工具基体とする表面被覆WC基超硬合金製切削工具において、工具基体表面から5〜30μmの深さ領域では結合相成分が富化され、結合相中にはRe含有量3〜20質量%のReが固溶し、さらに、硬質相を構成するWCおよび複合炭窒化物粒内の界面近傍に、平均Re含有量が0.2〜7質量%のRe富化領域が形成されている。
【選択図】 図1

Description

この発明は、高い衝撃と熱発生を伴う鋼の高速断続切削において、長期の使用にわたって優れた耐欠損性を発揮する表面被覆WC基超硬合金製切削工具に関するものである。
従来から、耐摩耗性に優れた切削工具としては、例えば、結合相形成成分としてCoを含有し、硬質相成分としてTiとW、TiとTaとW、TiとNbとW、TiとTaとNbとWの複合窒炭化物等のうちの1種を含有し、残りがWCおよび不可避不純物からなるWC基超硬合金其体において、Coの富化表面部を有するWC基超硬合金其体の表面に、硬質被覆層を蒸着形成してなる表面被覆超硬合金製切削工具が知られているが、工具特性をさらに高めるために、合金成分としてReをさらに含有させたWC基超硬工具も開発されている。
例えば、特許文献1に示されるように、成分としてCo、Ta、Nb、Ti、WC等を含むWC基超硬合金其体において、Coの富化表面部を有するWC基超硬合金其体の表面に、硬質被覆層を蒸着形成してなる表面被覆WC基超硬合金製切削工具において、さらに結合相成分としてReを含有する表面被覆WC基超硬工具(従来超硬工具という)が知られており、この従来超硬工具では、優れた耐摩耗性、耐欠損性を発揮することが知られている。
特開2004−510589号公報
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに、高能率化、低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は高速で行われる傾向にあるが、例えば、特許文献1に示される従来超硬工具を、通常条件の切削加工で用いた場合には特段の問題は生じない。
しかし、これを、特に、高い衝撃と熱発生を伴う、鋼の高速断続切削に用いた場合には、工具寿命の短命化が顕著となる。
つまり、例えば、従来超硬工具では、図2に示されるように、Reが結合相中にのみ存在することから、結合相の高温硬さが向上する反面、硬質相粒子と結合相との密着強度が十分に確保されず、チッピング、欠損を発生しやすくなるという問題が生じる。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、鋼の高速断続切削に用いた場合でも、すぐれた耐欠損性、耐熱塑性変形性を発揮し、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮する表面被覆WC基超硬工具について鋭意研究を行った結果、以下の知見を得た。
通常、WC基超硬合金からなる焼結体の製造は、特定の平均粒径のWC粉末、Co粉末とともに、必要に応じてTiC粉末、TaC粉末、NbC粉末あるいはTiN粉末、(Ti,W)CN粉末、(Ti,W)C粉末、(Nb,Ta)C粉末等を所定割合になるように配合した原料粉末を湿式ボールミル中で混合し、成形した後、この圧粉成形体を所定の温度で所定時間焼結することにより製造している。
本発明者らは、上記通常のWC基超硬合金焼結体の製造方法において、例えば、結合相形成成分であるCo粉末に加えて、所定の平均粒径および所定の含有割合となるようにRe粉末をさらに追加して添加配合することで原料粉末を調製し、これを1380〜1500℃の範囲内の温度にて液相焼結し、その後、例えば、少なくとも900℃までを10℃/min以上の速度で冷却することによって、硬質相を構成するWCおよび複合炭窒化物粒内の界面近傍に、Re富化領域が形成されると同時に、結合相中にも所定量のReが固溶することを見出したのである。
ここで、Reの富化領域とは、WCおよび複合炭窒化物粒子の界面から、該粒子の粒径の1〜10%の深さ領域にわたって平均Re含有量が0.2〜7質量%であるReの富化領域であり、Reの富化領域以外の領域、即ち、WCおよび複合炭窒化物粒子の内部側では平均Re含有量は0.2質量%未満となっている。
そして、WCおよび複合炭窒化物粒内の界面近傍に上記Reの富化領域が形成されたWCおよび複合炭窒化物粒子が含有された焼結組織を有するWC基超硬合金から作製された表面被覆WC基超硬工具(以下、本発明超硬工具という)を用いて切削加工を行ったところ、高い衝撃と熱発生を伴う、鋼の高速断続切削において、切刃部の過熱が抑制されるとともに、すぐれた耐欠損性、耐熱塑性変形性を発揮し、その結果、チッピング、偏摩耗等の発生を生じることなく長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮することを見出したのである。
この発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 結合相成分としてCoを含有し、添加成分としてReを含有し、硬質相成分としてTi、Ta、Nb、Wのうち2種以上の成分からなる複合炭窒化物のうちの1種を5〜30質量%、残部が硬質相成分としてのWCおよび不可避不純物からなるWC基超硬合金を工具基体とし、該工具基体表面に硬質被覆層を蒸着形成してなる表面被覆WC基超硬合金製切削工具において、
工具基体表面から5〜30μmの深さ領域では結合相成分が富化され、WC以外の硬質相成分が実質的に存在せず、
WC基超硬合金の結合相成分であるCoの含有量は4〜12質量%であり、また、結合相中にはReが固溶しており、結合相中のRe含有量は3〜20質量%であり、さらに、硬質相を構成するWCおよび上記複合炭窒化物粒内の界面近傍に、Re富化領域が形成されたWC粒子及び上記複合炭窒化物粒子を含有することを特徴とする表面被覆WC基超硬合金製切削工具。
(2) 上記WC基超硬合金中のReは、原料粉末としてRe粉末を配合することにより添加されたものであることを特徴とする(1)に記載の表面被覆WC基超硬合金製切削工具。
(3) 上記WC基超硬合金は、さらに、WC粒内全体にReが含有されたWC粒子を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の表面被覆WC基超硬合金製切削工具。
(4) 上記WC粒内全体にReが含有されたWC粒子の含有量は、全WC粒子のうちの30個数%以下であり、かつ、上記Re富化領域が形成されたWC粒子とWC粒内全体にReが含有されたWC粒子の合計が、上記WC基超硬合金の全WC粒子のうちの90個数%以上含まれており、
さらに、上記Re富化領域が形成された上記複合炭窒化物粒子が、上記WC基超硬合金の上記全複合炭窒化物粒子のうちの90個数%以上含まれていることを特徴とする(3)に記載の表面被覆WC基超硬合金製切削工具。
(5) 上記Re富化領域は、WC粒子および上記複合炭窒化物粒子の界面から、該WC粒子および上記複合炭窒化物粒子の粒径の1〜10%の深さ領域にわたって形成され、かつ、該深さ領域における平均Re含有量は0.2〜7質量%であり、一方、WC粒子および上記複合炭窒化物粒子の内部側では、平均Re含有量は0.2質量%未満であることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の表面被覆WC基超硬合金製切削工具。」
に特徴を有するものである。
この発明の表面被覆WC基超硬工具について、以下に詳細に説明する。
この発明の表面被覆WC基超硬工具の工具基体である本発明超硬焼結体は、例えば、WC粉末、Co粉末に加えてRe粉末を配合し、さらに、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末あるいはTiN粉末、(Ti,W)CN粉末、(Ti,W)C粉末、(Nb,Ta)C粉末を所定割合になるように配合した原料粉末を、湿式ボールミル中で混合し、所定形状にプレス成形したのち、この圧粉成形体を、1〜15Paの真空中で、1380〜1500℃の範囲内の所定の温度にて液相焼結し、その後、例えば、少なくとも900℃までを10℃/min以上の速度で冷却することによって製造することができる。
そして、上記の製造工程で作製した本発明超硬焼結体は、結合相中に3〜20質量%のReが固溶されているとともに、WC粒子および複合炭窒化物粒子の界面から、該粒子の粒径の1〜10%の深さ領域にわたって、平均Re含有量が0.2〜7質量%であるRe富化領域が形成されたWC粒子および複合炭窒化物粒子を有しており、また、該Re富化領域の内側、即ち、WC粒子および複合炭窒化物粒子の内部側では平均Re含有量は0.2質量%未満となっている。
そして、このような組織が形成された本発明超硬焼結体は、Reが主としてWC粒子および複合炭窒化物粒子界面近傍に存在することから、WC粒子の熱伝導性を大きく低下させることはなく、また、結合相中にReが固溶されていることから結合相の高温硬さが向上し、さらに、WCおよび複合炭窒化物粒内の界面近傍に形成されているRe富化領域によって、WC粒子および複合炭窒化物粒子と結合相との密着強度が高められる。
本発明WC基超硬工具において結合相を構成するCo成分は、その含有量が4質量%未満では、WC基超硬合金の緻密化が十分になされず、一方、結合相の含有割合が12質量%を越えると、WC基超硬合金の硬度が低下し、鋼の高速断続切削において耐摩耗性が低下傾向を示すようになることから、本発明WC基超硬合金焼結体における結合相の含有割合は4〜12質量%と定めた。
また、本発明で、WC粉末、Co粉末とともに配合するRe粉末は結合相を構成するCoに大部分が(3〜20質量%)固溶し、一部がWCおよび複合炭窒化物粒内の界面近傍に含有され、Re富化領域を形成するが、Coに固溶するRe含有量(Re/(Co+Re))が3質量%未満であると、WCおよび複合炭窒化物粒と結合相の密着性向上効果及び結合相の硬さ向上効果が不十分であり、一方、Coに固溶するRe含有量(Re/(Co+Re))が20質量%を超えると、結合相の靭性が著しく低下するため破壊靱性値が低下し、鋼の高速断続切削においてチッピングを発生しやすくなることから、Coに固溶するRe含有量(Re/(Co+Re))は3〜20質量%と定めた。
また、本発明では、WCおよび複合炭窒化物粒内の界面近傍にRe富化領域を形成し、該Re富化領域については、WC粒子および複合炭窒化物粒子の粒径の1〜10%の深さ領域にわたって形成され、かつ、深さ領域における平均Re含有量(Re/(W+Re)、また、Re/(Re+M)(MはTi,Ta,Nb,Wのうちの2種以上))は0.2〜7質量%であるとしているが、WC粒子および複合炭窒化物粒子の粒径の1〜10%の深さ領域における平均Re含有量が0.2質量%未満では、WC粒子および複合炭窒化物粒子と結合相の密着性向上効果が得られず、一方、平均Re含有量が7質量%を超えるようになると、WC粒子の熱伝導性が著しく低下するため切れ刃が過熱されやすくなり、その結果、熱塑性変形が発生しやすくなることから、Re富化領域、即ち、WC粒子および複合炭窒化物粒子の粒径の1〜10%の深さ領域における平均Re含有量は0.2〜7質量%と定めた。
なお、「WC粒子および複合炭窒化物粒子の粒径の1〜10%の深さ領域」を別の表現で定義すれば、後方散乱電子回折装置(EBSD)を備えた走査型電子顕微鏡(SEM)で観察されたWCおよび複合炭窒化物粒子の結晶方位マッピング像を、同一面積の円形に近似した時の直径をWC粒径および複合炭窒化物粒径とした場合に、WCおよび複合炭窒化物粒の界面から該粒径の1〜10%の深さ領域ということになる。
本発明では、WC粒内の界面近傍にReの富化領域が形成されたWC粒子のほかに、WC粒内全体にReが含有されたWC粒子が含まれていても、WC粒と結合相の密着性向上効果を妨げることはないが、その含有量が全WC粒子のうちの30個数%を超えると、熱伝導性が著しく低下するため切れ刃が過熱されやすくなり、その結果、熱塑性変形が発生しやすくなることから、WC粒内全体にReが含有されたWC粒子の含有量は、全WC粒子のうちの30個数%以下と定めた。
また、WC粒内の界面近傍にReの富化領域が形成されたWC粒子とWC粒内全体にReが含有されたWC粒子の含有量の合計が、全WC粒子のうちの90個数%未満になると、WC粒子と結合相の密着性向上効果が得られなくなることから、WC粒内の界面近傍にReの富化領域が形成されたWC粒子およびWC粒内全体にReが含有されたWC粒子の含有量の合計は、全WC粒子のうちの90個数%以上と定めた。
さらに、複合炭窒化物粒内の界面近傍にReの富化領域が形成された複合炭窒化物粒子の含有量が、全複合炭窒化物粒子のうちの90個数%未満になると、複合炭窒化物粒子と結合相の密着性向上効果が得られなくなることから、複合炭窒化物粒内の界面近傍にReの富化領域が形成された複合炭窒化物粒子の含有量は、全複合炭窒化物粒子のうちの90個数%以上と定めた。
上記超硬焼結体からなる工具其体の表面に、硬質被覆層を蒸着形成することによって、一段と耐欠損性、耐熱塑性変形性の向上を図ることができ、工具寿命の一層の延命化を図ることができる。
ここで、上記硬質被覆層とは、例えば、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物および炭窒酸化物のうちから選ばれる1種の単層または2種以上の複層からなる下部層と、酸化アルミニウムからなる上部層、さらに必要に応じて、最表面にTi窒化物層を蒸着形成してなるものである。
この発明の表面被覆WC基超硬工具は、これを構成するWC基超硬合金の結合相中にReが固溶し高温硬さを高めるとともに、硬質相を構成するWCおよび複合炭窒化物粒内の界面近傍にRe富化領域が形成された粒子が含有されていることにより、WC粒子の有する熱伝導率を低下させることなく、さらに、結合相と硬質相との密着強度を高めることから、耐欠損性及び耐熱塑性変形性に優れ、高い衝撃と熱発生を伴う、鋼の高速断続切削に用いた場合でも、欠損、偏摩耗等の発生を生じることなく長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものである。
本発明超硬工具における焼結体組織の模式図を示す。 従来WC基超硬工具(従来超硬工具)における焼結体組織の模式図を示す。
つぎに、この発明の切削工具を実施例により具体的に説明する。
(a)原料粉末として、いずれも0.5〜7μmの平均粒径を有する、Co粉末、Re粉末、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末、TiN粉末、(Ti,W)CN粉末(但し、重量比で、TiC:TiN:WC=24:20:56)、(Ti,W)C粉末(但し、重量比で、TiC:WC=30:70)、(Nb,Ta)C粉末(但し、重量比で、NbC:TaC=90:10)を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてボールミルで72時間湿式混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定形状にプレス成形し、
(b)これらの圧粉成形体を、1.3Paの真空中で表2に示される焼結温度で1時間保持し、次いで、900℃までを表2で示される冷却速度で冷却するとともに、その後は室温にまで炉冷し、
(c)得られた焼結体を、所定寸法となるように加工して、ISO規格・CNMG120408のチップ形状を持った工具其体(超硬焼結体)を作製し、次いで、工具其体表面に、通常の化学気相蒸着装置を用いて、表3に示されるとおりの組成および平均膜厚の硬質被覆層を蒸着形成することにより、表4に示される本発明表面被覆WC基超硬合金製切削工具(本発明超硬工具という)1〜10を作製した。
また、比較の目的で、表1に示される配合組成となるように原料粉末を配合し、本発明超硬工具1〜10と同様な工程により、ISO規格・CNMG120408のチップ形状を持った工具其体(超硬焼結体)を作製し、次いで、工具其体表面に、通常の化学気相蒸着装置を用いて、表3に示されるとおりの組成および平均膜厚の硬質被覆層を蒸着形成することにより、表4に示される比較例表面被覆WC基超硬合金製切削工具(比較例超硬工具という)11〜20を作製した。
上記本発明超硬工具1〜10および比較例超硬工具11〜20について、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、工具其体表面の結合相富化領域(WC以外の硬質相が実質的に存在しない領域)の厚みを測定した。
表2には、結合相富化領域5箇所の測定結果の平均値を示した。
上記本発明超硬工具1〜10および比較例超硬工具12、15、17、19について、後方散乱電子回折装置(EBSD)を備えた走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、得られたWCおよび複合炭窒化物粒の結晶方位マッピング像の画像解析によりWC粒の面積を測定し、さらに該WCおよび複合炭窒化物を同一面積の円形に近似した時の直径を算出した。また、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を備えた透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、WCおよび複合炭窒化物粒と結合相の界面からWC粒の内部に向かって、2nm毎に点分析を行い、結合相、WCおよび複合炭窒化物粒内のRe含有量、WCおよび複合炭窒化物粒子の粒径に占めるRe富化領域(Re含有量が0.2〜7質量%である領域)の厚さ比(%)を測定した。
表5には、WCおよび複合炭化物粒子それぞれ50個ずつの測定結果の各平均値と、WCおよび複合炭窒化物粒径の1〜10%の深さ領域にRe富化領域が形成されたWCおよび複合炭窒化物粒子数、WC粒内全体にReが含有されたWC粒子数、および該Re富化領域における平均Re含有量を示した。
また、結合相中のRe含有量についても測定し、これを表5に示した。
本発明超硬工具1〜10はいずれも、WC粒内全体にReが含有されたWC粒子の含有量は30個数%以下であり、かつ、WC粒径の1〜10%の深さ領域にRe富化領域が形成されたWC粒子と、WC粒内全体にReが含有されたWC粒子が合計で90個数%以上含有されており、さらに、複合炭窒化物粒径の1〜10%の深さ領域にRe富化領域が形成された複合炭化物粒子が90個数%以上含有されており、該富化領域における平均Re含有量は0.2〜7質量%の範囲内であった。
図1には、一例として、本発明超硬工具3の焼結体組織の模式図を示す。
これに対して比較例超硬工具12、17は、Re粉末の配合量が多かったため、Re富化領域が形成されたものの、該富化領域における平均Re含有量は、本発明で規定する量を超えるものであり、さらに、WC粒内全体にReが含有されたWC粒子数は本発明で規定する量を超えるものであった。
また、比較例超硬工具15、19は、Re粉末の配合量が少なかったため、Re富化領域が形成されたものの、該富化領域が形成されたWC粒子数とWC粒内全体にReが含有されたWC粒子数の合計、および該富化領域が形成された複合炭化物粒子数は、本発明で規定する量を下回るものであり、さらに、該富化領域における平均Re含有量は、本発明で規定する量を下回るものであった。
Figure 2012086298
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つぎに、上記本発明超硬工具1〜10、比較例超硬工具11〜20について、
被削材 : SCM440の長手方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度 : 420m/min、
送り : 0.28mm/rev、
切込み : 1.0mm、
の条件で鋼の乾式断続切削試験を行い、逃げ面摩耗幅が0.2mmに達するまでの切削時間を測定した。
また、切削加工試験後の切れ刃の摩耗状況について、これを観察した。
この測定結果、観察結果を表4に示した。
表4、表5に示される結果から、本発明超硬工具1〜10は、WC基超硬合金焼結体の結合相が、3〜20質量%の固溶Reを含有し、また、硬質相のWC粒内の界面近傍にReの富化領域が形成されたWC粒子とWC粒内全体にReが含有されたWC粒子を合計で、全WC粒子のうちの90個数%以上含有し、かつ、硬質相の複合炭窒化物粒内の界面近傍にReの富化領域が形成された複合炭窒化物粒子を、全複合炭窒化物粒子のうちの90個数%以上含有し、さらに、該Re富化領域における平均Re含有量が0.2〜7質量%であって、熱伝導性の低下を招くことなく、高温硬さが向上し、また、結合相と硬質相の密着強度も高くなり、耐欠損性に優れ、かつ、耐熱塑性変形性にも優れることから、高い衝撃と熱発生を伴う、鋼の高速断続切削に用いた場合でも、欠損、偏摩耗等を発生することなく長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮する。
これに対して、比較例超硬工具11〜20においては、高い衝撃と熱発生を伴う、鋼の高速断続切削に用いた場合には、切刃部の欠損が発生し、また、耐摩耗性にも劣り、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
この発明の表面被覆WC基超硬合金製切削工具は、鋼の高速断続切削ばかりでなく、各種被削材の通常の条件での切削加工にも勿論適用可能であり、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮し、切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に適うものである。

Claims (5)

  1. 結合相成分としてCoを含有し、添加成分としてReを含有し、硬質相成分としてTi、Ta、Nb、Wのうち2種以上の成分からなる複合炭窒化物のうちの1種を5〜30質量%、残部が硬質相成分としてのWCおよび不可避不純物からなるWC基超硬合金を工具基体とし、該工具基体表面に硬質被覆層を蒸着形成してなる表面被覆WC基超硬合金製切削工具において、
    工具基体表面から5〜30μmの深さ領域では結合相成分が富化され、WC以外の硬質相成分が実質的に存在せず、
    WC基超硬合金の結合相成分であるCoの含有量は4〜12質量%であり、また、結合相中にはReが固溶しており、結合相中のRe含有量は3〜20質量%であり、さらに、硬質相を構成するWCおよび上記複合炭窒化物粒内の界面近傍に、Re富化領域が形成されたWC粒子及び上記複合炭窒化物粒子を含有することを特徴とする表面被覆WC基超硬合金製切削工具。
  2. 上記WC基超硬合金中のReは、原料粉末としてRe粉末を配合することにより添加されたものであることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆WC基超硬合金製切削工具。
  3. 上記WC基超硬合金は、さらに、WC粒内全体にReが含有されたWC粒子を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆WC基超硬合金製切削工具。
  4. 上記WC粒内全体にReが含有されたWC粒子の含有量は、全WC粒子のうちの30個数%以下であり、かつ、上記Re富化領域が形成されたWC粒子とWC粒内全体にReが含有されたWC粒子の合計が、上記WC基超硬合金の全WC粒子のうちの90個数%以上含まれており、
    さらに、上記Re富化領域が形成された上記複合炭窒化物粒子が、上記WC基超硬合金の上記全複合炭窒化物粒子のうちの90個数%以上含まれていることを特徴とする請求項3に記載の表面被覆WC基超硬合金製切削工具。
  5. 上記Re富化領域は、WC粒子および上記複合炭窒化物粒子の界面から、該WC粒子および上記複合炭窒化物粒子の粒径の1〜10%の深さ領域にわたって形成され、かつ、該深さ領域における平均Re含有量は0.2〜7質量%であり、一方、WC粒子および上記複合炭窒化物粒子の内部側では、平均Re含有量は0.2質量%未満であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の表面被覆WC基超硬合金製切削工具。
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