JPWO2020004617A1 - 熱電変換素子及び当該熱電変換素子を備えた熱電変換モジュール - Google Patents
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Abstract
Description
また、特許文献3では、熱電変換素子の耐熱性を向上させる手法としてマグネシウムシリサイドを主成分とする焼結体を用い、熱電変換モジュールを高温環境下で使用可能とした方法が開示されている。
特に、熱電材料は、高温(約600℃以上)と低温を繰り返すヒートサイクルで使用されるため、高温で使用された場合においても、熱電材料の酸化、昇華、及び汚染を抑制することができ、熱電材料における熱電変換効率および耐久性の低下を抑制することができる、耐酸化性、耐クラック性および密着性に優れた被膜を有する熱電変換素子の開発が求められている。
また、特許文献3では、熱電材料が曝される環境が、使用時には高温状態に、不使用時には低温(室温:10〜40℃程度)状態へと変わるため、熱電材料が熱膨張と収縮を繰り返す状況にあり、このようなヒートサイクルに曝された場合では熱電変換素子自体の劣化(熱電変換効率の低下や剥離)が見られる。
つまり、以下の構成により上記目的を達成することができることを見出した。
前記熱電変換部はマグネシウムシリサイド及び/又はマンガンシリサイドを含み、且つSiおよびZrを含む被膜によって被覆されている、熱電変換素子。
(2)前記被膜中のSi質量(SM)に対するZr質量(ZM)の比(ZM/SM)が0.09以上1.26以下の範囲内である、(1)に記載の熱電変換素子。
(3)前記熱電変換部が有する被膜は、SiおよびZrを含む表面処理剤を熱電変換部に接触させて形成される(1)または(2)に記載の熱電変換素子。
(4)前記表面処理剤が
アルカリ金属ケイ酸塩(A)と、
酸化セリウム安定化酸化ジルコニウム(B)と、
金属酸化物粒子および粘土鉱物からなる群から選択される少なくとも1種を含む成分(C)(但し、前記アルカリ金属ケイ酸塩(A)又は酸化セリウム安定化酸化ジルコニウム(B)を除く。)と、を配合してなる(3)に記載の熱電変換素子。
(5)前記熱電変換部が多結晶性マグネシウムシリサイド及び/又は多結晶性マンガンシリサイドを含有する、(1)から(4)のいずれかに記載の熱電変換素子。
(6)前記熱電変換部を、リン酸化合物と、水とを含有する前処理剤に接触させ、その後、前記表面処理剤から被膜を形成する、(3)から(5)のいずれかに記載の熱電変換素子。
(7)(1)から(6)のいずれかに記載の熱電変換素子を備える熱電変換モジュール。
以下に、本発明の熱電変換素子について説明する。
熱電変換部はマグネシウムシリサイド(Mg2Si)及び/又はマンガンシリサイド(MnSi、Mn4Si7等)を含有する。マグネシウムシリサイド及び/又はマンガンシリサイドには、必要に応じ他の金属を含んでもよい。他の金属はドーパントとして含んでもよく、Mg、Mn及び/又はSiと置換される形で含んでもよく、他の金属の例としてはGe、Sn、Zn、Sb、Al、Taなどが挙げられる。他の金属の含有量は特段限定されないが、0.01at%以上であってよく、0.05at%以上であってよく、0.1at%以上であってよく、10at%以下であってよく、5at%以下であってよい。マグネシウムシリサイド及びマンガンシリサイドは、上記他の金属をドーパントとして含むドープ型であってよく、上記他の金属を含まないアンドープ型であってもよい。
マグネシウムシリサイド及び/又はマンガンシリサイドとしては、多結晶性のマグネシウムシリサイド及び/又は多結晶性のマンガンシリサイドであることが、熱電変換効率が高く、好ましい。
熱電変換部を被覆する被膜は、SiおよびZrを含む。SiおよびZr以外の金属元素を含んでもよく、これらは後述の表面処理剤の項目で説明する。
被膜によって熱電変換部を被覆する方法は特に限定されず、例えば、熱電変換部と後述する表面処理剤とを接触させ、必要に応じて乾燥(好ましくは加熱乾燥)して、被膜を熱電変換部に形成する方法が好ましい。また、熱電変換部に形成する被膜の被膜量は特に限定されないが、0.5〜20g/m2が好ましく、2〜10g/m2がより好ましい。
なお、加熱乾燥方法は特に限定されないが、大気環境下において、熱風やインダクションヒーター、赤外線、近赤外線などにより加熱して、表面処理剤を乾燥すればよい。また、加熱時間は、使用される表面処理剤中の化合物の種類などによって適宜最適な条件が選択される。
本実施形態で用いられる表面処理剤は、熱電変換部にSi及びZrを含む被膜を形成できるものであればよく、アルカリ金属ケイ酸塩(A)と、酸化セリウム安定化酸化ジルコニウム(B)と、金属酸化物粒子及び粘土鉱物からなる群から選択される少なくとも1種を含む成分(C)と、を配合してなることがより好ましい。
以下、表面処理剤に含まれ得る各成分について説明する。
表面処理剤は、アルカリ金属ケイ酸塩(A)を含有することが好ましい。アルカリケイ酸塩(A)はアルカリ金属酸化物(M2O)とシリカ(SiO2)を含む化合物及び/又は混合物でありM2O・SiO2で表される。アルカリ金属酸化物に対するシリカのモル比(SiO2/M2O)は1.8以上7.0以下の範囲内であることが好ましい。その製造方法は特に限定されず既知の方法により製造できる。例えばアルカリ金属酸化物とシリカとを混合して混合物を得てもよく、市販されているアルカリ金属酸化物とシリカとを含む化合物を用いてよい。アルカリ金属成分Mとしてはナトリウム、カリウム、リチウム等の金属成分があげられる。また、アルカリケイ酸塩(A)としては、広く市版されている液状のものが使用でき、水ガラス1号、2号、3号、カリウムシリケ−ト溶液、リチウムシリケート溶液等が具体例として挙げられる。これらのアルカリケイ酸塩(A)は単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
なお、全固形分とは、アルカリケイ酸塩(A)、後述する酸化セリウム安定化酸化ジルコニウム(B)、並びに成分(C)の固形分の合計を意味し、溶媒などの揮発成分は含まれない。
表面処理剤は、酸化セリウム安定化酸化ジルコニウム(B)を含有することが好ましい。酸化セリウム安定化酸化ジルコニウム(B)は、安定化剤である酸化セリウムで安定化された酸化ジルコニウムである。酸化セリウム安定化酸化ジルコニウム(B)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、ジルコニウム塩とセリウムを含む塩とを水に溶解させ、湿式混合することにより得られた溶液をアンモニア水中に添加して沈殿物を得た後、沈殿物を濾過、水洗し、焼成により酸化セリウム安定化ジルコニウムを得る方法が挙げられる。
前記ジルコニウム塩としては、例えば、ジルコニウム硝酸塩、水酸化ジルコニウムなどが挙げられる。セリウム源としては、セリウム硝酸塩、水酸化セリウムが挙げられる。
表面処理剤は、金属酸化物粒子および粘土鉱物からなる群から選択される少なくとも1種を含む成分(C)を含有することが好ましい。なお、成分(C)には、既に説明したアルカリ金属ケイ酸塩(A)や酸化セリウム安定化酸化ジルコニウム(B)に該当するものは含まれない。
また、成分(C)中の粘土鉱物とは、例えば、多数のシートが積層されて形成される層状構造を有する層状粘度鉱物等を挙げることができる。層状粘土鉱物としては、例えば、層状ケイ酸塩鉱物等である。ここで、層を形成するシートは、ケイ酸と酸素で構成された四面体シートであってもよいし、アルミニウム及び/又はマグネシウムを含有する八面体シートであってもよい。
なお、成分(C)として、層状粘土鉱物(ホスト)の層間にゲスト化合物を取り込ませたインターカレーション化合物(ピラードクリスタル等)や、層状粘土鉱物の層間におけるイオンを他のイオンに交換したもの、表面処理(シランカップリング剤による表面処理、シランカップリング剤による表面処理と有機バインダによる表面処理との複合化処理等)を施したものも使用することができる。
成分(C)としては、1種のみを使用してもよいし、2種以上を合わせて使用してもよい。
なお、平均粒子径の測定方法としては、レーザー回折・散乱法などの公知の粒度分布測定法などにて測定することができる。
溶媒としては、水又は水と水混和性有機溶媒との混合物(水性媒体の体積を基準として50体積%以上の水を含有するもの)であれば特に限定されるものではない。水混和性有機溶媒としては、水と混和するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノへキシルエーテル等のエーテル系溶媒;1−メチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン等のピロリドン系溶媒等が挙げられる。これらの水混和性有機溶媒は1種を水と混合させてもよいし、2種以上を水に混合させてもよい。
また、溶媒の含有量は、処理剤全量に対して、30〜90質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましい。
界面活性剤の種類は特に限定されず、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、およびカチオン系界面活性剤を用いることができる。
また、必要に応じて、表面処理剤中においてを酸化セリウム安定化酸化ジルコニウム(B)や成分(C)を分散させるために、ホモミキサー、ディスパーミキサー等の撹拌装置、または、高圧ホモジナイザー、コロイドミル等の乳化装置を用いて、界面活性剤を加えた表面処理剤に撹拌処理を施してもよい。
より好適な実施形態として、多結晶性マグネシウムシリサイド及び/又は多結晶性マンガンシリサイドからなる熱電変換部を、リン酸化合物と、水とを含有する前処理剤に接触させて前処理を行った後、表面処理剤を熱電変換部に接触させ、被膜を形成することが挙げられる。
熱電変換素子はSiおよびZrを含む被膜によって被覆された熱電変換部を含んでいればよいが、典型的には熱電変換部の両端に対向する電極層を設ける形態である。電極層は、例えば金属シリサイドや金属材料などを用いて構成されてもよく、熱電変換部との接触抵抗が低い材料で構成されることが好ましい。
熱電変換モジュールは、上記熱電変換素子を備え、熱電変換部の両端に形成された電極層が接続配線によって他の熱電変換素子の電極層と接続することで形成されてよいが、これに限られない。熱電変換モジュールは、熱電変換素子を複数接続することによって高出力化を図ることができる。
マグネシウムシリサイドの焼結体(Sb(0.5at%)とZn(0.5at%)がドープされたもの)インゴットから切り出して、3mm×3mm×6mmの熱電変換部用の柱状体を準備し、供試材e1とした。
上記ドープ型マグネシウムシリサイドの焼結体は、61.12gのMg、35.31gのSi、2.32gのSb、及び1.26gのZnを混合し、混合物を1400Kで加熱した後、徐冷することでSbとZnをドープしたMg2Si焼結体インゴットを得た。
マンガンシリサイドの焼結体(アンドープ)インゴットから切り出して、3mm×3mm×6mmの熱電変換部用の柱状体を準備し、供試材e2とした。
上記マンガンシリサイドの焼結体は、52.78gのMn、47.22gのSiを混合し、混合物を1400Kで加熱した後、徐冷することでアンドープ型Mn4Si7焼結体インゴットを得た。
上記の供試材の表面を、以下に示す前処理剤(d1〜d3)を用いて浸漬法で前処理した。次に、供試材を水道水で水洗して表面が水で100%濡れることを確認した後、さらに純水を流しかけ、100℃雰囲気のオーブンで加熱し、水分を除去した。
d1: HCl 3質量%水溶液
d2: Na4P2O7 3質量%水溶液
d3: NaOH 3質量%水溶液
以下に示すアルカリ金属ケイ酸塩(A)、表1に示す酸化セリウム安定化ジルコニウム(B)、及び表2に示す成分(C)を、表面処理剤の全固形分に対し表3に示す配合量(配合比率)にて水中で混合し、混合液をアンモニア水、硝酸を使用してpH9に調整することで表面処理剤1〜32(固形分濃度:10〜60質量%)を得た。
なお、アルカリ金属ケイ酸塩(A)、酸化セリウム安定化酸化ジルコニウム(B)、及び成分(C)以外の主な成分は、水である。
a1: 珪酸カリウムにSiO2/K2Oのモル比が4.1になるように気相シリカを混合して得られた珪酸カリウム
a2: メチルフェニル系シリコーン樹脂(信越化学工業株式会社製KR−311)
前処理を行った供試材に対し、上記表面処理剤1〜32を接触させて表面処理を行った。具体的には、供試材に表面処理剤を塗装し、その後、水洗することなく、そのままオーブンに入れて180℃で乾燥させることで、試験材1〜33を得た。なお、試験材の被膜量を表4に示す。
(5−1)密着性試験
試験材1〜33の被膜表面を、市販のセロテープ(商標)を用いてテープ剥離をし、被膜の残存率を評価した。
◎:残存率91〜100%
○:残存率71〜90%
○−:残存率51〜70%
×:残存率0〜50%
試験材1〜33を、大気雰囲気中で10℃/分の昇温速度で加熱し、600℃到達後1000時間加熱を行い高温環境下に晒し、その後室温に冷却した。
高温環境下に晒した試験材1〜33に対し、上記(5−1)密着性試験と同様の試験を実施した。
高温環境下に晒した試験材1〜33に対し、走査型電子顕微鏡(SEM、倍率500倍)にて表面を観察し、クラック発生の有無を評価した。
◎:変化なし
○:1〜5本のクラックあり
○−:全体にクラックあり
×:一部剥離
高温環境下に晒した試験材1〜33に対し、断面を、電子線マクロアナライザ(EPMA)にて分析し、高温環境下に晒す前後における供試材と被膜との相互拡散(酸素の拡散)を評価した。
◎:変化なし
○:皮膜と素材の界面に濃化あり
○−:全体に拡散あり
×:一部剥離(測定不可)
なお、実用上の観点から、上記評価項目において「○−」から「◎」であることが要求される。
Claims (7)
- 熱電変換部を備える熱電変換素子であって、
前記熱電変換部はマグネシウムシリサイド及び/又はマンガンシリサイドを含み、且つSiおよびZrを含む被膜によって被覆されている、熱電変換素子。 - 前記被膜中のSi質量(SM)に対するZr質量(ZM)の比(ZM/SM)が0.09以上1.26以下の範囲内である、請求項1に記載の熱電変換素子。
- 前記熱電変換部が有する被膜は、SiおよびZrイオンを含む表面処理剤を熱電変換部に接触させて形成される、請求項1または2に記載の熱電変換素子。
- 前記表面処理剤が
アルカリ金属ケイ酸塩(A)と、
酸化セリウム安定化酸化ジルコニウム(B)と、
金属酸化物粒子および粘土鉱物からなる群から選択される少なくとも1種を含む成分(C)(但し、前記アルカリ金属ケイ酸塩(A)又は酸化セリウム安定化酸化ジルコニウム(B)を除く。)と、を配合してなる請求項3に記載の熱電変換素子。 - 前記熱電変換部が多結晶性マグネシウムシリサイド及び/又は多結晶性マンガンシリサイドを含有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
- 前記熱電変換部を、リン酸化合物と、水とを含有する前処理剤に接触させ、その後、前記表面処理剤から被膜を形成する、請求項3から5のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
- 請求項1から6のいずれか一項に記載の熱電変換素子を備える熱電変換モジュール。
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