JP2014204080A - 熱電材料およびその製造方法 - Google Patents

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愼吾 宮川
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治雄 北村
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麻衣 池側
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正文 小舟
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Abstract

【課題】室温から500℃程度までの中低温領域において高いZT値を有し、かつ、人体に有害な元素を含まない熱電材料およびその製造方法を提供する。【解決手段】二ホウ化ジルコニウム(ZrB2)を主成分とし、炭化珪素(SiC)を含む多孔質焼結体からなるベース体1と、ベース体1の表面に形成された酸化膜2とを備える。【選択図】図2

Description

本発明は、熱電材料およびその製造方法に関し、特に、高い無次元性能指数ZT値を示す熱電材料に関する。
我が国の産業における一次供給エネルギーのうち約3分の2は有効に活用されず廃熱となっており大きなエネルギー損失となっている。この損失エネルギーを活用する最も有効な方法は廃熱を電気エネルギーに変換することである。廃熱温度が高くかつ大量に発生している場合には、そのエネルギーを用いてボイラーにより高圧蒸気を発生させ、発電機のタービンを回して電気エネルギーに変換する方法が容易かつ有効である。しかし、廃熱温度が低下するにつれ高圧蒸気を発生させることが困難かつ非効率となる。そのような、いわゆる中低温度域の廃熱からのエネルギー回収方法としては、熱電材料を介して熱エネルギーを電気エネルギーに変換する方法が最も効率の高い方法として有望視されており、その一部はすでに実用化されている。
ここで、熱電材料の性能指数Z(単位:1/T)は、下記数式(1)で表される。
Z=S2σ/κ(=PF/κ)・・・(1)
ここで、S(単位:V/K)は熱電材料のゼーベック係数、σ(単位:1/(Ω・m))は熱電材料の電気伝導率、κ(単位:W/(m・K))は熱電材料の熱伝導率である。性能指数Zは温度の逆数の次元(単位:1/K)を有し、Zに絶対温度T(単位:K)を乗ずると無次元のZT値となる。すなわち、ZT値は以下の数式で表わされる。
ZT=S2σT/κ・・・(2)
このZT値は無次元性能指数と呼ばれ、高い無次元性能指数ZT値を持つ熱電材料ほど熱電変換効率が大きくなる。一般に熱電材料の実用化には、無次元性能指数ZT値が1超えであることが要求される。つまり、熱電材料には、よりゼーベック係数Sおよび電気伝導率σが高く、熱伝導率κが低い材料が求められている。またS・σの項をまとめて出力因子PF(単位:W/(m・K))という場合には(数式(1)の括弧内に示すように)、熱電材料には出力因子PFが高く、熱伝導率κが低い材料が求められると言える。
現在用いられている熱電材料として、室温から280℃程度までの低温域ではビスマス・テルル(BiTe)系合金が、また280℃以上500℃以下程度までの中温域では層状コバルト酸化物(NaCoO,CaCo)や鉛・テルル(PbTe)系合金が、さらに500℃以上1000℃以下程度の高温域ではシリコン・ゲルマニウム(SiGe)系合金がそれぞれ有望な材料とされている。
特開2004−356476号公報には、コバルト(Co)とカルシウム(Ca)を含む原料物質を酸化させてなる複合酸化物が開示されている。また、該複合酸化物は、600℃以上800℃以下程度においても熱起電力を有するp型熱電材料であることが記載されている。
特開2004−356476号公報
しかしながら、従来の熱電材料はいずれも無次元性能指数ZT値が0.8以上1.0以下程度であり、ZT値が1超えである熱電材料は得られていない。また、従来の熱電材料は、ZT値の温度依存性が高く、ZT値が比較的高い値を示す温度範囲が狭いという問題がある。たとえば、室温から500℃程度までの中低温領域において高いZT値を有する熱電材料は知られていない。
また、上述のように、従来の中温領域における熱電材料においては、PbやTe等の有害な元素を含むものがあり、この場合、使用中の環境保全管理および使用後の適切な回収廃棄処理が必要となる。このため、環境負荷コストが著しく高くなるという問題があった。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものである。本発明の主たる目的は、室温から500℃程度までの中低温領域において高いZT値を有し、かつ、人体に有害な元素を含まない熱電材料およびその製造方法を提供することにある。
本発明に従った熱電材料は、二ホウ化ジルコニウムを主成分とし、炭化珪素を含む多孔質焼結体からなるベース体と、ベース体の表面に形成された酸化膜とを備える。
本発明によれば、室温から500℃程度までの中低温領域において高いZT値を有し、かつ、人体に有害な元素を含まない熱電材料を得ることができる。
本実施の形態に係る熱電材料の概略図である。 図1中の線分II−IIにおける断面図である。 本実施の形態に係る熱電材料により構成される熱電変換素子を説明するための図である。 実施例1における電気伝導率の測定結果を示すグラフである。 実施例1における熱伝導率の測定結果を示すグラフである。 実施例2における熱重量測定(TG)および示差熱分析(DTA)の測定結果を示すグラフである。 実施例3における熱重量測定(TG)および示差熱分析(DTA)の測定結果を示すグラフである。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について、説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
図1は本実施の形態に係る熱電材料10の概略図であり、図2は図1中の線分II−IIから見た断面図である。図1および図2を参照して、熱電材料10,20は、ベース体1と、ベース体1の表面に形成された酸化膜2とを備える。
ベース体1は、二ホウ化ジルコニウム(ZrB)を主成分とし、炭化珪素(SiC)を含む多孔質焼結体からなる。ベース体1におけるZrBとSiCとの重量比は、0重量%超え10重量%以下程度、または、30重量%以上40重量%以下程度であり、熱電材料の伝導型に応じて選択される。ベース体1には、焼結助剤としての炭化ホウ素(BC)が含まれている。ベース体1におけるBCの含有率は、1重量%程度である。ベース体1において、ZrBは、SiCやBC以外を構成しており、ZrBの含有率は49重量%以上59重量%以下程度、または89重量%以上99重量%未満程度である。ベース体1の気孔率(P)は30%以上50%以下程度である。ベース体1において、細孔の形状は球形状であり、孔径が10μm以下程度である。また、ベース体1において、各細孔は分散するように形成されている。ベース体1の電気伝導率σは、酸化膜2の電気伝導率σ以上となるように設けられており、たとえば、1×10S/m以上である。ベース体1の熱伝導率κは、たとえば、50W/mK以下である。
酸化膜2は、ベース体1の外周表面を覆うように形成されている。酸化膜2を構成する材料は、ジルコニウム原子(Zr)、ホウ素原子(B)、珪素原子(Si)、および酸素原子(O)からなる群のうち、少なくともZr原子とO原子とを含んでいる。酸化膜2の厚みは、0.1μm以上5μm以下程度である。酸化膜2は、絶縁体(σ=0)ではなく、1×10S/m以上の電気伝導率σを有している。
本実施の形態に係る熱電材料10,20は、金属材料と同等程度の高い電気伝導率σを有しているZrBを主成分とするベース体1と、絶縁体ではなく1×10S/m以上の電気伝導率σを有している酸化膜2とにより構成されるため、熱電材料10,20は熱電材料として高い電気伝導率を有している。
さらに、ベース体1におけるZrBとSiCとの重量比によって、熱電材料10,20の伝導型をp型もしくはn型にすることができる。具体的には、ベース体1におけるZrBとSiCとの重量比が0重量%超え10重量%以下であれば、熱電材料10は、熱伝導率を十分に低く抑えながら、かつ正のゼーベック係数を示すp型半導体の性質を有している。また、ベース体1におけるZrBとSiCとの重量比が30重量%以上40重量%以下であれば、熱電材料20は、熱伝導率を十分に低く抑えながら、かつ負のゼーベック係数を示すn型半導体の性質を有している。
次に、本実施の形態に係る熱電材料の製造方法について説明する。本実施の形態に係る熱電材料の製造方法は、ベース体1を準備する工程(S10)と、ベース体1の表面に酸化膜2を形成する工程(S20)とを備える。
工程(S10)では、まず、ベース体1を構成する材料として、ZrB粉末とSiC粉末とを準備する。さらに、焼結助剤としてBC粉末を、バインダとして有機バインダを準備する。ZrB、SiC、およびBCの各粉末の平均粒径、すなわちレーザー回折散乱法で測定した粒度分布のメジアン値(d=50)は、それぞれ、0.5μm以上3μm以下、0.3μm以上2μm以下、0.2μm以上1.5μm以下とすればよい。
次に、準備したZrB、SiC、BCの各粉末をメカニカル混合して混合粉末を得る。このとき、たとえばp型の熱電材料10を作製する場合には、ZrB、SiC、およびBCの混合比は、多孔質焼結体における質量比が89重量%以上99重量%以下:0重量%超え10重量%以下:1重量%となるようにすればよい。一方、n型の熱電材料20を作製する場合には、ZrB、SiC、およびBCの混合比は、多孔質焼結体における質量比が59重量%以上69重量%以下:30重量%超え40重量%以下:1重量%となるようにすればよい。
次に、該混合粉末に一次粒径が9nm以上50μm以下の造孔材を加えて、再びメカニカル混合する。造孔材は、カーボン粉末や球状合成樹脂等から選択すればよい。このとき、混合粉末に加えられる造孔材の量は、ベース体1の気孔率(P)に応じて選択すればよく、たとえば気孔率(P)35%のベース体1を作製するには焼結時の収縮を考慮して造孔材の量を30重量部とすればよい。
得られた混合物を加圧式ニーダーに投入し、有機バインダを加えた後、混練物の流動性を考慮して、加熱温度140℃、回転数42rpmで90分混練して混練物を作製する。このとき、有機バインダの混合比は、造孔材を除く混合粉末に対し54重量部とすればよい。
次に、上記混練物を所望の金型に射出成形することにより成形体を作製する。このとき、成形体の形状は、ベース体1の形状に応じて任意に選択することができるが、図1を参照して、たとえば直方体としてもよい。次に、得られた成形体を大気脱脂炉に投入し、常温から昇温速度20℃/時間以下で徐々に400℃程度まで昇温させ、加熱処理することにより、該成形体中の有機バインダおよび造孔材の大部分を酸化する。次に、該成形体をグラファイト炉に投入して、Ar雰囲気中において2000℃以上2300℃以下の加熱条件で焼結することにより、多孔質焼結体としてのベース体1を得ることができる。
次に、先の工程(S10)において得られたベース体1の表面に酸化膜を形成する(工程(S20))。具体的には、ベース体1を、酸素分圧が300Pa以上400Pa以下に制御された雰囲気中で、加熱温度900℃以上950℃以下、加熱時間30分以上60以下程度という条件で熱処理することにより、ベース体1の表面に酸化膜2を形成する。このようにして形成された酸化膜2の厚みは、0.1μm以上5μm以下とすることができる。
このようにすれば、室温から500℃程度の中低温領域において高い性能指数Zを有し、p型半導体の特性を有する熱電材料10、または室温から500℃程度の中低温領域において高い性能指数Zを有しn型半導体の特性を有する熱電材料20とを得ることができる。図3を参照して、本実施の形態に係るp型の熱電材料10とn型の熱電材料20とを導電性部材30を介して互いに接続することにより、無次元性能指数ZT値の高い熱電変換素子を得ることができる。導電性部材30は、たとえば任意の金属材料とすればよい。一般に、熱電変換素子はp型半導体とn型半導体とを金属材料に対してπ状に接続して構成されているが、本実施の形態に係るp型の熱電材料10およびn型の熱電材料20も同様に構成することができる。
以上のように本実施の形態に係る熱電材料10,20は、金属材料と同等程度の高い電気伝導率σを有しているZrBを主成分とするベース体1を備えているため、熱電材料として高い電気伝導率を有している。さらに、ベース体1はSiCを含んでいるため半導体的な特性を有することができる。また、ベース体1は多孔質材料であって複数の細孔を含んでいるため、熱抵抗を高め熱伝導率を低減することができる。また、ベース体1の表面には酸化膜2が形成されているため、熱電材料10,20は高いゼーベック係数を有することができる。このとき、酸化膜2の電気伝導率σは1×10S/m以上であり、さらにベース体1の電気伝導率σはそれ以上である。そのため、本実施の形態に係る熱電材料10,20は、高いゼーベック係数を有しながら、熱電材料として十分な電気伝導率を有している。また、ZiBやSiCは500℃程度ではほとんど酸化せず安定なため、熱電材料10,20は、使用環境が室温から500℃以下程度までの温度範囲を有する場合であっても、上記特性を安定して有することができる。その結果、熱電材料10,20は、室温から500℃程度までの中低温領域において、高いZT値を有すことができる。また、熱電材料10,20は有害な元素を含んでいないため、環境負荷コストを抑制することができる。また、本実施の形態に係る熱電材料の製造方法によれば、たとえば、射出成形法を用いることにより、構成材料および気孔が均一に分散した多孔質焼結体としてのベース体1を得ることができる。そのため、ベース体1の特性のバラツキを抑制でき、均一の特性を有するベース体1を安定して得ることができる。また、高い寸法精度でベース体1を形成することができる。さらに、ベース体1の表面を平滑とすることができるため、表面が粗い場合と比べて酸化膜2との高い密着性が確保され、熱電材料10,20の電気抵抗を低減することができる。なお、射出成形法以外の製法、たとえば、鋳込み成形法ではベース体1の内部に偏析が生じるため、本実施の形態に係るベース体1の製造方法には好適ではない。また、加圧焼結(ホットプレス)法では、ベース体1の内部の気孔が圧潰される場合があり、球状の気孔が均一に分散している多孔質焼結体としてのベース体1を製造することは困難である。
本実施の形態において、酸化膜2は、低酸素分圧下での熱処理酸化法により形成したが、これに限られるものではない。たとえば、物理的蒸着法(PVD)、化学気層析出法(CVD)、またはゾルゲル法等を用いても良い。このようにしても、本実施の形態における酸化膜2と同等の特性を有する酸化膜を形成することができる。
次に、本発明の実施例1について説明する。
実施例1では、ZrBを主成分とするベース体において、ZrBに対するSiCの重量比が、ベース体の電気伝導率および熱伝導率に与える影響を評価した。
(試料)
平均粒径すなわちレーザー回折散乱法で測定した粒度分布のメジアン値(d=50)が2.1μmのZrB粉末、平均粒径0.7μmのSiC粉末、および平均粒径0.3μmのBC粉末を準備した。次に、ベース体におけるZrBに対するSiCの重量比が0重量%(ZrB単体)以上100重量%(SiC単体)以下となる条件で、ZrB粉末、SiC粉末、およびBC粉末をメカニカル混合した後、得られた混合物に対して、さらに造孔材として一次粒径9nmのCarbon粉を39部加えて再びメカニカル混合した。得られた混合物に対して、有機バインダを31部加えて、加圧式ニーダーで加熱・加圧混練して、均一分散したコンパウンドを作製した。その後、該コンパウンドをペレット化して成形材料とした。
次に、該成形材料を射出成形機に投入し、所望の金型内に、可塑化させた成形材料を50MPa以上100MPa以下の圧力で射出し、金型内で冷却固化後に取り出して成形体を作製した。この成形体を大気脱脂炉に投入して有機バインダを加熱分解した後、グラファイト炉において常圧でAr雰囲気中2250℃で焼成し、冷却して焼成品を得た。得られた焼成品から平面研削盤にて試験片を切削、研磨加工を施すことで、所望の寸法(7mm×15mm×2.8mm)を有し、気孔率(P)が35%のベース体を作製した。また、同様の方法で、造孔材として一次粒径9nmのCarbon粉を4.3部加えて、気孔率(P)が3%のベース体を作製した。さらに、造孔材を用いずに気孔率(P)が0%のベース体を作製した。
(評価方法)
気孔率(P)が0%のベース体、気孔率(P)が3%のベース体、および気孔率(P)が35%のベース体において、ベース体におけるSiCの重量比と電気伝導率との関係を評価した。電気伝導率の評価は、JISK7194(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)。また、気孔率(P)が3%のベース体および気孔率(P)が35%のベース体において、ベース体におけるSiCの重量比と熱伝導率との関係を評価した。熱伝導率の評価は、JISR1611(ファインセラミックスのフラッシュ法による熱拡散率・非熱容量・熱伝導率の測定方法)に準拠しレーザーフラッシュ法で測定した。
(結果)
図4に電気伝導率の測定結果を示す。図4の横軸はベース体におけるZrBに対するSiCの重量比(単位:重量%)を示し、縦軸は電気伝導率(単位:S/m)を示している。また、図5に熱伝導率の測定結果を示す。図5の横軸はベース体におけるZrBに対するSiCの重量比(単位:重量%)を示し、縦軸は熱伝導率(単位:W/(m・K))を示している。図4を参照して、ベース体におけるZrBに対するSiCの重量比が増すにつれて、ベース体の電気伝導率が低下していくことが確認された。特に、SiCの重量比が50重量%以上となると、ベース体の電気伝導率は気孔率(P)に依らず急激に低下した。さらに、気孔率が3%および35%のベース体において、SiCの重量比を50重量%程度以上とすると電気伝導率σは1×10S/m以下となるため、熱電材料のベース体としては適当でないことが確認された。この結果から、内部に細孔を有するベース体であっても、SiCの重量比を40重量%以下とすることにより1×10S/m程度以上の電気伝導率σを有することができ、表面に酸化膜が形成されてなる熱電材料のベース体として適当であることが確認された。
また、図5を参照して、ベース体におけるZrBに対するSiCの重量比が増すにつれて、ベース体の熱伝導率が増加していくことが確認された。この結果から、熱伝導率の観点から、熱電材料としてはSiCの重量比は低い方が好ましいことが分かった。また、図4に示す電気伝導率の観点から求められたSiCの重量比の上限値(40重量%)は、熱電材料として許容できる範囲内であることから、電気伝導率および熱伝導率の観点からSiCの重量比は40重量%以下とするのが好ましいことが分かった。さらに、気孔率(P)が35%のベース体の熱伝導率κは、SiCの重量比に依らず60W/(m・K)未満であり、気孔率(P)が3%のベース体と比べて十分に低いことが確認された。つまり、内部に多くの細孔が形成されているベース体の方が、熱伝導率を低く抑えることができ、熱電材料として好適であることが確認された。
実施例2では、熱電材料の製造方法において、ベース体の表面に形成する酸化膜の厚みおよび成分を最適に制御するために、ベース体の構成成分の酸化反応について評価した。具体的には、JISK7120(プラスチックの熱重量測定方法)およびJISK7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準ずる方法に基づき、大気雰囲気下でZrB、SiC、BCの各粉末試料を室温から徐々に昇温しながら各試料に対して熱重量測定(TG)および示差熱分析(DTA)を行った。また、評価方法2として、大気雰囲気下でZrB、SiC、BCの各粉末試料を加熱温度900℃として一定に保ちながら各試料に対して熱重量測定(TG)および示差熱分析(DTA)を行った。
(試料)
平均粒径すなわちレーザー回折散乱法で測定した粒度分布のメジアン値(d=50)が2.1μmのZrB粉末、平均粒径0.7μmのSiC粉末、および平均粒径0.3μmのBC粉末をそれぞれ10mg程度準備した。
(評価方法)
準備した粉末を白金製の蓋無坩堝に入れた後、大気状態で試料の温度を等速で上げながら、試料の重量変化と発熱・吸熱量の測定を行った。なお、DTA測定における標準試料はAlとし、昇温速度を20℃/分、温度範囲を40℃以上1000℃以下とした。
(結果)
図6に測定結果を示す。図6の横軸は、坩堝の加熱温度(単位:℃)を示し、縦軸(左)はTG測定に対する各試料の重量(単位:mg)を示している。縦軸(右)はDTA分析に対する各試料と標準試料との温度差を熱電対起電力(単位:μV)として示している。
ZrBについては、DTA曲線に正のピークが出現していることから、酸化反応が生じていると考えられる。ZrBの酸化反応は、以下の反応式で表わされる。
ZrB+5/2O→ZrO+B・・・(3)
ここで、1molのZrBの質量は112.8gなのに対し、1molのZrBと反応するOは80.0gであるから、理想的な重量増加率は70.9%である。しかし、TG−TDA測定での重量増加率は53.5%であるので、酸化反応は一部進行していないと考えられる。また、1000℃付近のTG曲線から、このときにはZrBの酸化反応はほぼ終了していると考えられる。これは、ZrB粉末の表面に生成したB膜により酸化の進行が妨げられたためと考えられる。
SiCについては、DTA曲線およびTG曲線にピークが出現しておらず、1000℃以下程度ではSiCの酸化反応が起きていないと考えられる。
Cについては、DTA曲線に正のピークが出現していることから、酸化反応が生じていると考えられる。BCの酸化反応は、以下の反応式で表わされる。
C+4O→2B+CO・・・(4)
ここで、1molのBCの質量は55.2gなのに対し、1molのBCと反応するOは128.0gであるから、理想的な重量増加率は152.2%である。しかし、TG−TDA測定での重量増加率は66.6%であるので、酸化反応は一部進行していないと考えられる。また、1000℃付近のTG曲線から、このときにはBCの酸化反応はほぼ終了していると考えられる。これは、BC粉末の表面に生成したB皮膜により酸化の進行が緩やかになったためと考えられる。
本実施例の結果から、ZrBおよびSiCを含むベース体の表面に安定した酸化膜を生成させる表面処理温度は約900℃以上に保つことが必要であることを確認した。
実施例3では、熱電材料の製造方法において、ベース体の表面に形成する酸化膜の厚みおよび成分を最適に制御するために、ベース体の構成成分の酸化反応について評価した。具体的には、JISK7120(プラスチックの熱重量測定方法)およびJISK7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準ずる方法に基づき、大気雰囲気下で加熱温度900℃として一定に保ちながら試料に対して熱重量測定(TG)および示差熱分析(DTA)を行った。
(試料)
実施例1と同様の方法で、ベース体におけるSiCの重量比を30重量%としてベース体を作成した。
(評価方法)
準備したベース体を、大気状態で温度900℃まで昇温した後、当該温度を900℃で一定に保った状態で試料の重量変化と発熱・吸熱量の測定を行った。なお、DTA測定における標準試料はAlとした。
(結果)
図7に測定結果を示す。図7の横軸は、試料(ベース体)の加熱を開始してからの経過時間(単位:分)を示し、縦軸(左)はTG測定に対する各試料の重量(単位:mg)を示している。縦軸(右)はDTA分析に対する各試料と標準試料との温度差を熱電対起電力(単位:μV)として示している。
ベース体の温度が900℃に到達してから30分間はベース体の重量の増加が確認された。さらにその後30分加熱を続けたが、後半30分間の加熱による重量の顕著な増加は確認されなかった。具体的には、試験開始時のベース体の重量を基準として、ベース体の温度が900℃に到達した時点(図7中、t=0min)でのベース体の重量は0.67%増加していた。そこから加熱温度を一定として30分加熱したとき(図7中、t=30min)、ベース体の重量は1.13%増加していた。さらに、ベース体の温度が900℃に到達してから60分経過した時点(図7中、t=60)でのベース体の重量は1.26%増加していた。ベース体の温度が900℃に到達してから30分間で、ベース体の重量は試験開始時の0.46%増加していたが、その後の30分間では0.13%の増加に留まっていた。つまり、ベース体の温度が900℃に到達してから30分の間にベース体の表面において酸化膜の形成が完了したと考えられる。本実施例の結果から、加熱温度約900℃において、ZrBおよびSiCを含むベース体の表面に十分な酸化膜を生成するためには、加熱時間を30分とすれば十分であることを確認した。
実施例4では、熱電材料のゼーベック係数Sが最大となるようなベース体の成分重量比、および該ベース体に対する熱処理の温度条件を確認した。
(試料)
実施例1と同様の方法で、ベース体におけるSiCの重量比を0重量%、1重量%、2重量%、3重量%、5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、35重量%、40重量%とした10種類のベース体を作製した。なお、いずれのベース体にも焼結助剤としてBCを1重量%配合した。それらのベース体を、酸素分圧を300Pa以上400Pa以下に制御した雰囲気炉中で30分保持して熱処理を行った。熱処理は、850℃、900℃、950℃、および1000℃の4通りの温度条件により行った。なお、JIS R2205に準拠して煮沸法により測定した本実施例の試料の気孔率(P)は0%であった。
(評価方法1)
得られた熱電材料を切断して、切断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察することにより、酸化膜の膜厚を測定した。また、熱電材料の切断時に同時に表面膜の剥離・脱落の有無を観察することにより、酸化膜の剥離性を評価した。
(結果1)
表1にベース体の表面に形成された酸化膜の膜厚および剥離性の評価結果を示す。
熱処理温度1000℃では、ベース体におけるSiCの重量比によらず、厚い酸化被膜が形成され、酸化膜は完全な絶縁体(σ=0)となっていた。また、熱処理温度850℃の場合には、ベース体におけるSiCの重量比によらず、酸化膜が十分生成されないことが分かった。この結果、電気伝導率1×10S/m以上の酸化膜を形成するには、熱処理温度は900℃、または950℃とするのが好ましいことが分かった。さらに熱処理温度が900℃、および950℃の試料について、SiCの重量比が2%以下では酸化膜の膜厚は0.1μm未満と薄く、極めて剥離しやすい不安定な状態であった。一方、SiC重量比3%以上では酸化膜の膜厚は0.1μm以上5μm以下であって、酸化膜の剥離等は発生しておらず、ベース体と強固に接合して安定した酸化膜が得られることが分かった。つまり、実施例2、実施例3および本実施例の結果から、低酸素分圧下での熱処理酸化法によりベース体の表面に安定した酸化膜を形成するためには、加熱温度を900℃以上1000℃未満程度として、加熱時間を30分以上とすればよいことが確認できた。
そこで、安定な酸化膜が得られた試料(ベース体におけるSiCの重量比が3重量%、5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、35重量%、40重量%であって、熱処理温度を900℃として得られた熱電材料)について、ゼーベック係数Sおよび電気伝導率を評価した。
(評価方法2)
試料(検体)の両端に温度差を設けて試料の両端の温度T1,T2(単位:℃)を測定し、その時に両端間に生じる起電力(単位:V)を測定することにより、次式でゼーベック係数Sを算出した。
S=V/(T1−T2)・・・(5)
(結果2)
表2に、熱処理温度を900℃として得られた、ベース体1におけるZrBとSiCとの重量比が異なる各試料(熱電材料)のゼーベック係数を示す。
ベース体におけるZrBとSiCとの重量比が3重量%、熱処理温度900℃という条件により作製された熱電材料のゼーベック係数Sは645μV/Kであり、p型半導体の特性を示す試料の中で最大値を示すことが分かった。また、ベース体におけるZrBとSiCとの重量比が35重量%、熱処理温度900℃の条件により作製された熱電材料のゼーベック係数Sは−299μV/Kであり、n型半導体の特性を示す試料の中で最大値を示すことが分かった。
表3に、熱処理温度を900℃として得られたベース体において、ZrBとSiCとの重量比が異なる各試料(熱電材料)の電気伝導率σを示す。
電気伝導率は室温から500℃程度まで0.46×10S/m以上であり、金属並みの高い値を示した。
さらに表4に、表2に示すゼーベック係数と、表3に示す電気伝導率とから算出した出力因子PF値を示す。
表4からわかるように、p型半導体の特性を示す熱電材料としては、ベース体1におけるZrBに対するSiCの重量比を10重量%未満とすることにより高い出力因子PFを有する熱電材料を得ることができ、さらに当該重量比を5重量%以下とするのが好ましいことが分かった。また、n型半導体の特性を示す熱電材料としては、該重量比を30重量%以上とすることにより高い出力因子PFを有する熱電材料を得ることができ、当該重量比を35重量%以上とするのが好ましいことが分かった。
実施例5では、熱電材料を構成するベース体の気孔率(P)と、当該ベース体の表面に酸化膜を形成してなる熱電材料の熱伝導率および電気伝導率との関係を評価した。
(試料)
実施例1と同様の方法で、ベース体におけるSiCの重量比を3重量%、および35重量%とし、気孔率(P)を0%、35%、および50%とした6種類のベース体を作製した。このときベース体における気孔率(P)の調整は、造孔材の添加量を調製することにより行った。すなわち気孔率(P)が0%のベース体は造孔材を添加せずに作製した。気孔率(P)が35%のベース体は造孔材を39重量部添加することにより作製した。気孔率(P)50%のベース体は造孔材を96重量部添加することにより作製した。準備した6種類のベース体に対し、酸素分圧350Paに制御した雰囲気炉中で30分保持して熱処理を行った。熱処理は、加熱温度900℃という条件で行った。
(評価方法)
気孔率(P)の測定は、JIS R2205に準拠して煮沸法により行った。電気伝導率の測定は、JIS K7194(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)に基づいて行った。熱伝導率の測定は、JIS R1611(ファインセラミックスのフラッシュ法による熱拡散率・比熱容量・熱伝導率の測定方法)に準拠したレーザーフラッシュ法により測定した。なお、電気伝導率および熱伝導率の測定は、測定温度を350Kとして行った。
(結果)
表5に、測定結果を示す。
ベース体の中に球状の微細な気孔を均一に分散させた場合、気孔率(P)が50%程度までであれば熱電材料の電気伝導率を大きく低下させることなしに熱電材料の熱伝導率を気孔率(P)に比例して下げることができることが確認された。これは、上述した実施例1(図4および図5)の結果と同様の傾向であった。上述のように、酸化膜の電気伝導率σは最小でも1×10S/m以上であるため、ベース体の電気伝導率σがこれ以上であれば熱電材料としての機能は阻害されないためと考えられる。この結果から、熱電材料を構成するベース体の気孔率(P)を30%以上50%以下とすれば、熱電材料として十分に高い電気伝導率を有しながら、十分に低い熱伝導率を有することができると見積もられた。
実施例5では、気孔率(P)を35%としてベース体におけるZrBとSiCとの重量比を変化させたときの熱伝導率の関係を評価した。さらに、得られた熱伝導率から、気孔率(P)が35%であってベース体におけるZrBとSiCとの重量比を3重量%および35重量%として得られた熱電材料の、室温から500℃程度の中低温領域における無次元性能指数ZT値を算出した。
(試料)
実施例1と同様の方法で、気孔率(P)が35%であって、ベース体におけるSiCの重量比を3重量%、35重量%とした2種類のベース体に対し、酸素分圧350Paに制御した雰囲気炉中で30分保持して熱処理を行った。熱処理は、加熱温度900℃という条件で行った。
(評価方法)
実施例5と同様の測定方法により、熱伝導率を測定した。さらに、得られた熱伝導率と表4に示す実施例4で測定した出力因子PFとから無次元性能指数ZTを算出した。なお、実施例4において、ゼーベック係数の測定は、熱電材料の表面を構成している酸化膜上の2点間に温度差を設けたときの該2点間の熱起電力を測定することにより算出しているが、熱起電力の大部分はベース体における温度差ではなく、酸化膜における温度差から生じている。そのため、PF値に対するベース体の気孔率(熱伝導率)による影響は小さい。そのため、実施例4において気孔率0%のベース体により構成された熱電材料について測定した出力因子PFと、本実施例において測定した熱伝導率κとを用いて、上述した式(2)により無次元性能指数ZTを算出した。
(結果)
表6に、熱伝導率の測定結果を示す。表7に、算出結果を示す。
ベース体におけるZrBとSiCとの重量比を3重量%および35重量%として得られたベース体を、酸素分圧350Paの雰囲気中で加熱温度900℃加熱時間30分という条件で熱処理することにより形成された熱電材料は、室温から500℃程度の中低温領域において高い無次元性能指数ZTを有することが確認できた。
ここで、上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本発明の特徴的な構成を列挙する。
本発明に従った熱電材料10,20は、二ホウ化ジルコニウムを主成分とし、炭化珪素を含む多孔質焼結体からなるベース体1と、ベース体1の表面に形成された酸化膜2とを備える。
これにより、熱電材料10,20は、金属材料と同等程度の高い電気伝導率σを有しているZrBを主成分とするベース体1を備えているため、熱電材料として高い電気伝導率を有している。さらに、ベース体1はSiCを含んでいるため半導体的な特性を有することができる。また、ベース体1は多孔質材料であって複数の細孔を含んでいるため、熱抵抗を高め熱伝導率を低減することができる。また、ベース体1の表面には酸化膜2が形成されているため、熱電材料10,20は高いゼーベック係数を有することができる。また、ZiBやSiCは500℃程度ではほとんど酸化せず安定なため、熱電材料10,20は、使用環境が室温から500℃以下程度までの温度範囲を有する場合であっても、上記特性を安定して有することができる。その結果、熱電材料10,20は、室温から500℃程度までの中低温領域において、高いZT値を有すことができる。また、熱電材料10,20は有害な元素を含んでいないため、環境負荷コストを抑制することができる。
上記ベース体1に含まれる炭化珪素(SiC)の含有率は、0重量%超え10%質量以下、または30重量%以上40重量%以下としてもよい。
これにより、ベース体1にSiCを含むことによる熱伝導率の上昇を抑制することができる。また、ベース体1におけるZrBとSiCとの重量比を0重量%超え10%質量以下とした場合には、ベース体1はp型半導体の性質を有することができる。また、ベース体1におけるZrBとSiCとの重量比を30重量%以上40%質量以下とした場合には、ベース体1はn型半導体の性質を有することができる。つまり、ベース体1におけるZrBとSiCとの重量比を上記2つの範囲内からそれぞれ選択することにより、p型の半導体特性を示す熱電材料10、またはp型の半導体特性を示す熱電材料20を得ることができる。p型の熱電材料10とn型の熱電材料20とは一体の熱電変換素子として使用することができる。
上記酸化膜2の厚みは、0.1μm以上5μm以下としもよい。
酸化膜2の厚みを0.1μm以上とすることにより、酸化膜の有する熱起電力を十分に確保することができる。また、酸化膜2の厚みを5μm以下とすることにより、酸化膜2は絶縁体となることなく、電気伝導率を有している。この結果、熱電材料10,20の電気伝導率が、酸化膜2によって低減することを抑制することができる。
上記ベース体において気孔は分散するように形成されており、気孔の形状は球形状であり、気孔の孔径は10μm以下であってもよい。ベース体1の気孔率(P)は30%以上50%以下であってもよい。
このようにすることにより、ベース体1の電気伝導率を大きく低下させることなく、熱伝導率を効果的に低減することができる。
上記酸化膜2を構成する材料は、ジルコニウム原子(Zr)、ホウ素原子(B)、珪素原子(Si)、および酸素原子(O)からなる群のうち、少なくともZr原子とO原子とを含んでいてもよい。
これにより、ベース体1と酸化膜2とは共にZr原子を含んでいるため、ベース体1と酸化膜2との密着性を高めることができる。
本発明に従った熱電材料の製造方法は、ベース体1を準備する工程(S10)と、ベース体1の表面に酸化膜2を形成する工程(S20)とを備え、準備する工程(S10)では、二ホウ化ジルコニウムと炭化珪素とを焼結することにより、多孔質体からなるベース体1を準備する。
このようにして得られる熱電材料10,20は、金属材料と同等程度の高い電気伝導率σを有しているZrBを主成分とするベース体1を備えているため、熱電材料として高い電気伝導率を有している。さらに、ベース体1はSiCを含んでいるため半導体的な特性を有することができる。また、ベース体1は多孔質材料であって複数の細孔を含んでいるため、熱抵抗を高め熱伝導率を低減することができる。また、ベース体1の表面には酸化膜2が形成されているため、熱電材料10,20は高いゼーベック係数を有することができる。また、ZiB2やSiCは500℃程度ではほとんど酸化せず安定なため、熱電材料10,20は、使用環境が室温から500℃以下程度までの温度範囲を有する場合であっても、上記特性を安定して有することができる。その結果、熱電材料10,20は、室温から500℃程度までの中低温領域において、高いZT値を有すことができる。また、熱電材料10,20は有害な元素を含んでいないため、環境負荷コストを抑制することができる。
上記ベース体1を準備する工程は、射出成形法により得られた成形体を常圧焼結するによってベース体1を形成してもよい。
これにより、構成材料および気孔が均一に分散した多孔質焼結体としてのベース体1を得ることができる。そのため、ベース体1の特性のバラツキを抑制でき、均一の特性を有するベース体1を安定して得ることができる。また、高い寸法精度でベース体1を形成することができる。さらに、ベース体1の表面を平滑とすることができるため、表面が粗い場合と比べてベース体1と酸化膜2との高い密着性が確保され、熱電材料10,20の電気抵抗を低減することができる。
上記形成する工程は、酸素分圧が300Pa以上400Pa以下で、温度900℃以上950℃以下という条件下で熱処理を行うことにより、酸化膜2を形成してもよい。
このようにすれば、ベース体1の表面に酸化膜2を厚み0.1μm以上5μm以下として形成することができる。また、このようにして形成された酸化膜2は、ベース体1との密着性が高く、室温から500℃程度までの温度サイクルにおいても安定している。その結果、本発明に従った熱電材料10,20は、熱電変換素子を構成する材料として実用上問題のないレベルの耐久性を有している。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行ったが、上述の実施の形態および実施例を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施の形態および実施例に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
本発明は、廃熱温度が500℃以下である場合において、熱エネルギーを電気エネルギーに効果的に変換可能な熱電材料に、特に有利に適用される。
1 ベース体、2 酸化膜、10,20 熱電材料、30 導電性部材。

Claims (8)

  1. 二ホウ化ジルコニウムを主成分とし、炭化珪素を含む多孔質焼結体からなるベース体と、
    前記ベース体の表面に形成された酸化膜とを備える、熱電材料。
  2. 前記ベース体に含まれる炭化珪素の含有率は、0重量%超え10重量%以下、または30重量%以上40重量%以下である、請求項1に記載の熱電材料。
  3. 前記酸化膜の厚みは、0.1μm以上5μm以下である、請求項1または2に記載の熱電材料。
  4. 前記ベース体において気孔は分散するように形成されており、
    前記気孔の形状は球形状であって、前記気孔の孔径は10μm以下であり、
    前記ベース体の気孔率は30%以上50%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱電材料。
  5. 前記酸化膜を構成する材料は、ジルコニウム原子、ホウ素原子、珪素原子、および酸素原子からなる群のうち、少なくともジルコニウム原子と酸素原子とを含んでいる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱電材料。
  6. ベース体を準備する工程と、
    前記ベース体の表面に酸化膜を形成する工程とを備え、
    前記準備する工程では、二ホウ化ジルコニウムと炭化珪素とを焼結することにより、多孔質焼結体からなる前記ベース体を準備する、熱電材料の製造方法。
  7. 前記ベース体を準備する工程は、射出成形法により得られた成形体を常圧焼結するによって前記ベース体を形成する、請求項6に記載の熱電材料の製造方法。
  8. 前記形成する工程は、酸素分圧が300Pa以上400Pa以下で、温度900℃以上950℃以下という条件下で熱処理を行うことにより、前記酸化膜を形成する、請求項6または7に記載の熱電材料の製造方法。
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