特許文献1に記載の剥離装置は、カバーフィルムの剥離対象部分の周囲にハーフカットによって切り込みを入れ、切り込みで囲まれたカバーフィルムの剥離対象部分に粘着テープを押圧して粘着テープの粘着力でカバーフィルムを下層基板から剥離する装置である。従って、下層の回路基板などに剥離する部分と剥離しない部分とに跨って導電パターンや電極などの機能パターンが形成されている場合には、機能パターン上のカバーフィルムに切り込みを入れることは機能パターンに損傷を与える恐れがあるので困難である。特許文献1に記載の剥離装置では、切り込みがない特定の剥離対象部分のみを剥離することはできないという課題がある。
又、特許文献1に記載の剥離装置は、ハーフカットされた剥離対象部分の表面積の80%以上、かつ100%以下の面積に対して均一に粘着テープを押圧部材で押圧し、押圧部材を回路基板から離間させてカバーフィルムを剥離するというものである。従って、回路基板が積層基板(フレキシブル積層基板)であって、最上層基板を下層基板から剥離するような場合、しかも剥離対象部分の面積が大きくなったり、剥離対象部分が縦横比の大きい形状であったりすると、押圧部材の単純な昇降動作では、剥離できなかったり、剥離の際に回路基板が反ってしまったりするなどの課題がある。
さらに、特許文献1に記載の剥離装置は、剥離ヘッド(作業ヘッド)が一方向に直線的に移動する構成であるから、最上層基板上に複数の剥離対象部分が散在する場合などには対応できない。しかも、剥離対象部分が複数種類の形状で構成される場合などでは、押圧部材の押圧平面の向きや形状を剥離対象部分に合わせて切換えなければならず生産性が著しく悪くなるという課題がある。
そこで、本発明は、このような課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、剥離対象部分の大きさ、形状及び配置に関わらず下層基板から最上層基板の剥離対象部分を下層基板から剥離し、最上層基板から剥離対象部分を切断分離することが可能な剥離装置及び剥離方法を提供しようとするものである。
[1]本発明の剥離装置は、積層基板の最上層基板の剥離対象部分を粘着テープの粘着力で下層基板から剥離する剥離装置であって、前記最上層基板の上面側に配置され前記剥離対象部分の範囲を規定する開口部を有するメタルマスクを保持固定するメタルマスク固定枠と、前記メタルマスクの上面から前記粘着テープの粘着層を前記開口部内の前記最上層基板に押圧する押圧ローラ、前記粘着テープを巻き取る粘着テープ巻取りロール及び前記粘着テープを送り出す粘着テープ送出しロールを有する剥離ヘッドと、前記剥離ヘッドの移動方向を切り換えることが可能、かつ前記最上層基板に前記粘着層を押圧した状態で前記押圧ローラを移動させる剥離ヘッド駆動機構と、を有することを特徴とする。
本発明の剥離装置によれば、メタルマスクの開口部内において、最上層基板に粘着テープの粘着層を粘着した状態で押圧ローラが移動することによって、メタルマスクの開口部の下面側のエッジ部で剥離対象部分を切断しながら剥離していくことができる。さらに、剥離ヘッドは、移動方向を切り換えることが可能となっていることから、剥離対象部分の大きさ、形状及び配置に関わらず下層基板から剥離対象部分を剥離し、最上層基板から剥離対象部分を切断分離することが可能となる。
[2]本発明の剥離装置においては、前記粘着テープ巻取りロールと前記粘着テープ送出しロールは、前記押圧ローラを挟んで平面視直線的に配置されており、前記剥離ヘッドは、前記押圧ローラ、前記粘着テープ巻取りロール及び前記粘着テープ送出しロールを前記メタルマスクの上面に沿って回転するθ軸駆動機構と、前記押圧ローラを前記メタルマスクの上面に対して鉛直方向に昇降させる押圧ローラ昇降機構と、を有することが好ましい。
剥離ヘッドは、押圧ローラ、粘着テープ巻取りロール及び粘着テープ巻出しりロールをメタルマスクの開口部、つまり剥離対象部分の配列に合わせて移動させことが可能であるから、剥離対象部分の配列に関わらず最上層基板を下層基板から剥離することが可能となる。又、押圧ローラを上昇させれば、粘着テープが押圧ローラに追従してメタルマスクから上方側に上昇し、剥離対象部分を最上層基板から開口部のエッジ部で切断し、確実に切断分離することが可能となる。
[3]本発明の剥離装置においては、前記押圧ローラは可撓性を有しており、軸方向長さが前記押圧ローラの移動方向に対して直交する方向の前記開口部の最大幅よりも長く、前記粘着テープは、前記押圧ローラの移動軌跡外に配列される前記開口部に架からない幅であることが好ましい。
押圧ローラは可撓性を有しており、押圧ローラで剥離対象の開口部の縁周囲を押えながら剥離することから、メタルマスクの浮き上がりがなく、剥離対象部分の切断及び剥離を行うことが可能となる。又、押圧ローラの長さの範囲にあれば剥離対象部分の形状やサイズに関わらず剥離対象部分を剥離することが可能となる。粘着テープは押圧ローラの移動軌跡外にある開口部には架からないことから、移動軌跡の範囲にある最上層基板のみを剥離することが可能となる。
[4]本発明の剥離装置においては、前記押圧ローラは、前記剥離対象部分に前記粘着テープを押圧して移動しつつ前記粘着テープの粘着力で剥離対象部分を剥離していき、前記開口部のエッジ部で前記押圧ローラの移動方向側端部で前記粘着テープを前記積層基板から離れる方向に上昇させるように制御されることをことが好ましい。
このように、剥離動作終了後に、押圧ローラを上昇させて粘着テープを引き上げることによって、剥離対象部分を最上層基板からより一層確実に切断・分離することが可能となる。
[5]本発明の剥離装置においては、前記粘着テープ巻取りロールは、前記押圧ローラが前記粘着テープを前記剥離対象部分に押圧して移動する剥離動作に同期して前記粘着テープを巻き取るように制御されることが好ましい。
このようにすれば、剥離動作中に常に粘着層の新しい部分が剥離対象部分に粘着することが可能となり、さらに、分離した剥離対象部分(以降、最上層基板片と記載する)を次の剥離対象部分から離間させることができるから、最上層基板片が次の剥離動作の妨げになることを防ぐことが可能となる。
[6]本発明の剥離装置においては、前記剥離ヘッドは、前記押圧ローラの前記粘着テープ送出しロール側の直近に配置されて前記押圧ローラの上昇動作中に前記粘着テープにブレーキを掛けるストッパー機構を有していることが好ましい。
このように剥離ヘッドを構成すれば、粘着テープ巻取りロールとストッパー機構によって粘着テープに張力を与えて粘着テープが弛むこと防ぎ、押圧ローラが上昇する際に粘着テープが押圧ローラに追従することで確実に剥離対象部分を最上層基板から分離することが可能となる。
[7]本発明の剥離装置においては、前記剥離ヘッドは、前記押圧ローラの前記粘着テープ巻取りロール側の直近に配置されて前記押圧ローラの上昇動作中に前記メタルマスクを押えるマスク押え機構を有していることが好ましい。
このようにマスク押え機構によってメタルマスクを押圧したうえで押圧ローラを上昇させれば、粘着テープの粘着力でメタルマスクが浮きあがることを防止でき、メタルマスクと最上層基板との間に隙間ができないことから剥離対象部分の最上層基板からの切断・分離をより一層確実に行うことが可能となる。
[8]本発明の剥離装置においては、前記メタルマスク固定枠は、前記開口部と前記剥離対象部分との位置補正を行うアライメント機構を有していることが好ましい。
メタルマスクの開口部を所定の剥離対象部分に位置合せすることによって、位置ずれに起因する剥離不良を排除することが可能となる。
[9]本発明の剥離装置においては、少なくとも前記粘着テープが接触する部材には、非粘着処理が施されていることが好ましい。
粘着テープの粘着層が剥離装置、特に剥離ヘッドの構成部材に接触すると、剥離装置の正常な駆動や剥離動作が妨げられることがある。そこで、粘着テープが接触する部材に非粘着処理を施すことによって、粘着テープの粘着に起因する不具合を排除することが可能となる。
[10]本発明の剥離方法は、上記記載の剥離装置を使用して前記最上層基板の剥離対象部分を前記粘着テープの粘着力で前記下層基板から剥離するする剥離方法であって、前記積層基板を所定位置に搬送して前記メタルマスクに当接する位置に上昇させる工程と、前記メタルマスクの開口部と前記剥離対象部分との位置補正を行う工程と、前記押圧ローラの押圧位置及び移動方向を前記剥離対象部分の配列に合わせる工程と、前記押圧ローラを降下し、さらに前記開口部に移動させることにより前記粘着テープを前記開口部内の前記最上層基板に押圧する押圧工程と、前記粘着テープを前記開口部内の前記最上層基板に押圧しつつ前記押圧ローラを移動して前記剥離対象部分を前記開口部のエッジ部で切断しながら剥離する工程と、前記押圧ローラを前記メタルマスクから離間する方向に上昇させて最上層基板片を前記下層基板から分離する工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の剥離方法によれば、メタルマスクの開口部内において、最上層基板に粘着テープの粘着層を押圧した状態で押圧ローラを移動することによって、開口部の下面側のエッジ部で剥離対象部分を切断しながら剥離していくことが可能となる。そして、押圧ローラがメタルマスクの開口部の押圧ローラ移動方向端部に達したところで押圧ローラを上昇させて剥離対象部分を開口部のエッジ部で切断し、剥離対象部分を最上層基板から分離することが可能となる。
[11]本発明の剥離方法においては、前記積層基板は剥離対象範囲内に前記剥離対象部分が複数有し、前記メタルマスクは前記剥離対象部分の形状及び配列に対応する開口部を有しており、前記開口部の配列に合わせて前記押圧ローラの押圧位置及び移動方向を切り換えることが好ましい。
このように、剥離対象部分の配列に対応して押圧ローラの位置及び移動方向を切り換えることによって、剥離対象範囲内に複数種類の剥離対象部分があっても連続して剥離を行うことが可能となる。このようにすれば、生産性を極めて高くすることが可能となる。
以下、本発明の実施の形態に係る剥離装置1及び剥離方法について、図1〜図7を参照しながら説明する。なお、本実施の形態においては、ワークである積層基板としてフレキシブル積層基板2を例示して説明する。
[剥離装置1の構成]
図1は、実施の形態に係る剥離装置1の概略構成を示す斜視図であり、図2は、図1のY方向図示手前側から見た剥離装置1の正面図である。図1は、フレキシブル積層基板2の図示を省略している。図1、図2において、フレキシブル積層基板2の搬送方向をX方向(又はX軸)、X方向に直交する方向をY方向(又はY軸)、X−Y平面に対して鉛直方向をZ方向又は上下方向と記載して説明する。図1、図2に示すように、剥離装置1は、ベース架台5の上部に剥離ヘッド6と、X方向の両端側に配置されてフレキシブル積層基板2の搬送を行う基板巻取りロールユニット7及び基板送出しロールユニット8とを有している。
基板巻取りユニット7と基板送出しロールユニット8との間には、フレキシブル積層基板2を載置し保持するテーブル9(図2参照)と、テーブル9の上方側に配設されるメタルマスク10とが配置されている。テーブル9は、剥離動作の際にフレキシブル積層基板2がメタルマスク10に当接する位置までテーブル昇降機構(図示せず)によって上昇される。メタルマスク10は、メタルマスク固定枠11に複数のマスク固定具12によって固定されている。メタルマスク10には複数の開口部13が設けられている。図1に示す開口部13は、配置や形状が実際とは異なり、存在を示すものである。
メタルマスク10は、X軸駆動機構14及びY軸駆動機構15によってX方向及びY方向に移動させることが可能であり、後述するフレキシブル積層基板2の剥離対象部分46(図5参照)と開口部13との平面方向の位置補正を可能としている。なお、位置補正には、X軸又はY軸に対する角度(姿勢)の補正も含まれる。位置補正は、剥離ヘッド6のY方向両側に配置される一対の検出カメラ16の検出結果に基づき画像処理によって行われる。検出カメラ16は、例えばCCDカメラなどの撮像装置である。X軸駆動機構14、Y軸駆動機構15及び検出カメラ16を含めてアライメント機構18という。
剥離装置1は剥離ヘッド駆動機構19を有している。剥離ヘッド駆動機構19は、剥離ヘッド6をX方向に移動するヘッドX軸駆動機構21と、剥離ヘッド6をY方向に移動するヘッドY軸駆動機構22とを有している。ヘッドX軸駆動機構21及びヘッドY軸駆動機構22は共に周知のボールねじ機構によって動作する。ボールねじ機構は周知のものを使用することが可能なので説明を省略する。
図2に示すように、基板巻取りロールユニット7は、基板巻取りロール28と巻取りダンサーローラ27と出口ローラ26とを有している。基板送出しロールユニット8は、基板送出しロール23と送出しダンサーローラ24と入口ローラ25とを有している。フレキシブル積層基板2は、基板送出しロールユニット8と基板巻取りロールユニット7との間に張り渡されている。基板巻取りロール28は駆動ロールであり、基板送出しロール23は従動ロールである。
具体的には、フレキシブル積層基板2は、基板送出しロール23から送出しダンサーローラ24、入口ローラ25を介してテーブル9とメタルマスク10との隙間を通って出口ローラ26に渡し、巻取りダンサーローラ27を介して基板巻取りロール28によって巻き取られる。フレキシブル積層基板2は、送出しダンサーローラ24及び巻取りダンサーローラ27を設けることによって基板送出しロール23と基板巻取りロール28との間に弛みなく張り渡される。フレキシブル積層基板2は、剥離動作時にはテーブル9に真空吸着される。図2では、フレキシブル積層基板2の搬送方向を矢印で示している。図示は省略するが、ベース架台5の内部には電源装置及び剥離装置1の駆動全体を制御する制御部などが格納されている。
図3は、剥離ヘッド6を拡大して示す斜視図である。剥離ヘッド6は、粘着テープ20を巻き取る粘着テープ巻取りロール30と、粘着テープ20を送出す粘着テープ送出しロール31と、粘着テープ巻取りロール30と粘着テープ送出しロール31との間に配置されて粘着テープ20をフレキシブル積層基板2(図2、図7参照)に押圧する押圧ローラ32とを有している。粘着テープ巻取りロール30、粘着テープ送出しロール31及び押圧ローラ32は、ヘッド本体38(図4参照)に取付けられている。図3に示す剥離ヘッド6は、剥離装置1が起動する前の状態を表している。粘着テープ巻取りロール30、押圧ローラ32及び粘着テープ送出しロール31は平面視直線的に配置されている。粘着テープ巻取りロール30は駆動ロールであり、粘着テープ送出しロール31は従動ロールである。剥離ヘッド6は、粘着テープ巻取りロール30、押圧ローラ32及び粘着テープ送出しロール31の配置を変えずにメタルマスク10の上面10aに沿って回転するθ軸駆動機構33をさらに有している。θ軸駆動機構33は、押圧ローラ32の開口部13の配列に対する平面方向の角度(姿勢)を調整する。剥離ヘッド6は、上下動駆動機構34によってメタルマスク10に対して上下動可能である。粘着テープ20において、押圧ローラ32に接触する面を非粘着層20a、反対側の面を粘着層20bとする。
剥離ヘッド6は、押圧ローラ32をメタルマスク10の上面に対して鉛直方向に昇降させる押圧ローラ昇降機構35と、メタルマスク10の浮き上がりを防止するマスク押え機構36と、粘着テープ20の過剰巻出しによる弛みを抑制するストッパー機構37と、を有している。押圧ローラ32、押圧ローラ昇降機構35、マスク押え機構36及びストッパー機構37の詳しい構成及び動作については図4を参照しながら後述する。
[剥離ヘッド6の構成及び動作]
図4は、剥離ヘッド6の構成及び動作を示す説明図である。ここでは、剥離ヘッド6の構成及び動作を説明し、剥離動作の詳細は図6、図7を参照して後述する。図4(a)は剥離動作中を表し、図4(b)は剥離動作を終了し押圧ローラ32を上昇させる直前を表し、図4(c)は、剥離動作を終了し押圧ローラ32を上昇させた直後を示している。
図4(a)に示すように、剥離動作中において、押圧ローラ32はメタルマスク10を押圧する。粘着テープ20は、粘着テープ送出しロール31から中間ローラ39、ストッパーローラ40、押圧ローラ32の順に張り渡されて粘着テープ巻取りロール30に弛みがないように巻き取られる。マスク押え機構36は、マスク押えローラ41と、マスク押えローラ41をメタルマスク10に対して上下動させるマスク押えローラ駆動部42とを有している。マスク押えローラ41は、押圧ローラ−32の粘着テープ巻取りロール30側直近に配置される。又、マスク押えローラ41の軸方向長さは、押圧ローラ32の長さと同じか長くすることが好ましく、必ずしも可撓性がなくてもよい。マスク押えローラ41は、マスク押えローラ駆動部42の下端よりも突出させる。剥離動作中においては、マスク押えローラ41はメタルマスク10に接触しない位置に待機している。中間ローラ39は、粘着テープ送出しロール31と押圧ローラ32の間の粘着テープの弛みを減少させ、巻取りに影響しない適度なブレーキを掛ける機能を有する。
押圧ローラ32、ストッパーローラ40及びストッパー機構37は、押圧ローラ昇降機構35に取付けられており、押圧ローラ昇降機構35によってメタルマスク10に対して降下又は上昇するように構成されている。ストッパー機構37は、ストッパーローラ40とストッパー部43とを有している。ストッパー部43は押圧ローラ昇降機構35とは独立して昇降可能である。剥離動作中においては、ストッパーローラ40とストッパー部43とは離間していて、粘着テープ20は、粘着テープ巻取りロール30によって巻取り可能な状態である。図4(a)では、剥離ヘッド6の移動方向を太い矢印で表し、粘着テープ20の移動方向を細い矢印で表している。押圧ローラ32は、粘着テープ20をメタルマスク10に押圧しつつ、押圧ローラ6の可撓性を利用してメタルマスク10に設けられた開口部13内の最上層基板48に粘着テープ20の粘着層20b(図7参照)を押圧する。押圧ローラ6は、太い矢印方向に移動しながら転動して開口部13内の最上層基板48を下層基板47から剥離していく。なお、剥離ヘッド6は、図5(a)の剥離対象範囲49内に示す矢印方向に移動する。
図4(b)は、剥離動作が終了し押圧ローラ32を上昇させる直前を表している。各機構及び各ローラの構成は、図4(a)で説明しているので説明は省略する。剥離動作を終了した時点で、剥離ヘッド6の水平方向の移動を停止し、ストッパー部43がストッパーローラ40に向かって降下し、粘着テープ20をストッパーローラ40に押圧して粘着テープ20にブレーキを掛ける。粘着テープ20には、粘着テープ巻取りロール30とストッパーローラ40の間に張力が働くことによって弛みがなくなる。マスク押えローラ41は、マスク押えローラ駆動部42によってメタルマスク10を押圧するまで降下する。
図4(c)は、剥離動作を終了し押圧ローラ32を上昇させた直後を表している。各機構及び各ローラの構成は、図4(a)で説明しているので説明は省略する。剥離動作を終了したところで、押圧ローラ6をメタルマスクから離間するまで上昇させる。押圧ローラ6の上昇動作中は、マスク押えローラ41はメタルマスク10を押圧している。マスク押えローラ41によるメタルマスク10の押圧は、押圧ローラ6の上昇が停止するまで継続する。ストッパー機構37は、次の剥離動作に移行するまで粘着テープ20にブレーキを掛けて粘着テープ20の弛みを抑える。図示は省略するが、押圧ローラ32が上昇したところでマスク押えローラ41を図4(a)に示す位置まで上昇させる。なお、図4(a)〜図4(c)に示す各工程において剥離ヘッド6の上下動はない。以上説明した剥離ヘッド6による剥離動作の詳細及び剥離方法を図5〜図7を参照して説明する。
図5は、剥離対象ワークとしての積層基板の1例であるフレキシブル積層基板2を示す図である。図5(a)はフレキシブル積層基板2の1部を示す平面図であり、最上層基板48の剥離対象部分46(46a、46b、46c)及びメタルマスク10の開口部13の配置の1例を表している。剥離対象部分とは、最上層基板48の剥離すべき範囲であり、メタルマスク10の開口部13(13a、13b、13c)によって規定される。図5(a)に示す剥離対象部分46の形状や配置パターンは剥離動作を説明するためのものであり実際とは異なる例を模式的に表しており、剥離対象部分46がさらに密集して配置される場合や疎に配置される場合もある。図5(b)は、フレキシブル積層基板2の構成の1例を示す断面図である。なお、図5(b)は、厚みを誇張して記載している。なお、剥離対象部分46a,46b,46cを総称して剥離対象部分46と記載し、開口部13a,13b,13cを総称して開口部13と記載する。
フレキシブル積層基板2は、複数層の基板から構成されている。図5(b)に示す例においては、フレキシブル積層基板2は、下層基板47と、下層基板47に熱硬化性樹脂などで貼り合された最上層基板48で構成されている。下層基板47が2層以上の多層基板の場合も含まれる。最上層基板48と下層基板47それぞれの上面又は下面又は上下両面に導電パターンや電極などの機能パターンが形成されているが図示を省略している。なお、最上層基板48には、機能パターンがない場合もある。最上層基板4の厚みは、例えば10μm〜80μmであり、フレキシブル積層基板2の総厚は、基板巻取りロール28や基板送出しロール23に巻き付けることが可能な厚みであれば特に限定されない。積層基板としては、テープ状のフレキシブル積層基板2に限らず単板の積層基板にも適合可能である。
図5(a),(b)では、メタルマスク10及びメタルマスク10の開口部13を二点鎖線で表している。図5(a)に示す例では、同じ形状で同じサイズの剥離対象部分46a(開口部13a)がフレキシブル積層基板2の送り方向(太い矢印)に対して平行に4個配列されるA群、ほぼ同じ形状、同じサイズの剥離対象部分46b(開口部13b)がA群の配列に直交して3個配列されるB群、同じ形状で同じサイズの剥離対象部分46cがA群の配列に対して斜め方向に2個配列されるC群とする。図5(a)の剥離対象範囲49中の細い矢印は、剥離順を表している。なお、メタルマスク10の厚みは30μm〜80μm程度としたが、限定されるものではない。
フレキシブル積層基板2の搬送方向に対して押圧ローラ32の角度と移動方向を切り換えることによって、向きや形状が異なる剥離対象部分46を下層基板47から剥離することが可能となる。図5(a)には、各剥離対象部分の剥離位置をP1〜P9で表している。なお、図5(a)において、フレキシブル積層基板2をテーブル9に保持してA群、B群、C群の各剥離対象部分の1サイクルの剥離を行う範囲を剥離範囲49とする。
A群、B群、C群それぞれにおいて、押圧ローラ32がメタルマスク10を押圧しながら移動する領域を移動軌跡と呼ぶ。押圧ローラ32の軸方向長さは、押圧ローラ32の移動方向に対して直交する方向の開口部13a,13b,13cの最大幅よりも長い。従って、A群、B群及びC群において開口部13の大きさが押圧ローラ32の長さ範囲であれば押圧ローラ32を取り替える必要がない。又、粘着テープ20は、押圧ローラ32の移動軌跡外に配列される開口部13に架からない幅を有している。すなわち、A群を剥離する際に粘着テープ20がB群の開口部13bに架かることはなく、B群を剥離する際に粘着テープ20がC群の開口部13cに架かることはない。
以上説明した剥離装置1は、積層基板であるフレキシブル積層基板2の最上層基板48の剥離対象部分46を粘着テープ20の粘着力で下層基板47から剥離する剥離装置である。剥離装置1は、最上層基板48の剥離対象部分46の範囲を規定する開口部13を有するメタルマスク10を保持固定するメタルマスク固定枠11と、メタルマスク10の上面10aから粘着テープ20の粘着層20bを開口部13内の最上層基板48に押圧する押圧ローラ32と、粘着テープ20を巻き取る粘着テープ巻取りロール30及び粘着テープ20を送り出す粘着テープ送出しロール31を有する剥離ヘッド6とを有している。さらに、剥離装置1は、剥離ヘッド6の移動方向を切り換えることが可能、かつ最上層基板48に粘着層20bを押圧した状態で押圧ローラ32を移動させる剥離ヘッド駆動機構19を有している。
このように構成される剥離装置1によれば、メタルマスク10の開口部13(13a、13b、13c)内において、最上層基板48に粘着テープ20の粘着層20bを粘着した状態で押圧ローラ32を移動することによって、開口部13の下面側のエッジ部50(図7(b)参照)で剥離対象部分46(46a、46b、46c)を切断しながら剥離していくことが可能である。さらに剥離ヘッド32は、移動方向を切り換えることが可能となっているので剥離対象部分46の大きさ、形状及び配置に関わらず下層基板47から剥離対象部分46を剥離することが可能となる。
又、粘着テープ巻取りロール30と粘着テープ送出しロール31は、押圧ローラ32を挟んで平面視直線的に配置されている。剥離ヘッド6は、押圧ローラ32、粘着テープ巻取りロール30及び粘着テープ送出しロール31をメタルマスク10の上面10aに沿って回転させるθ軸駆動機構33と、押圧ローラ32をメタルマスク10の上面に対して鉛直方向に昇降させる押圧ローラ昇降機構35とを有している。
このように、剥離ヘッド6は、押圧ローラ32、粘着テープ巻取りロール30及び粘着テープ巻出しりロールをメタルマスク10の開口部13(13a,13b,13c)の配列、言い換えれば剥離対象部分46(46a,46b,46c)の配列に合わせて移動させことが可能であるから、最上層基板48の特定部分である剥離対象部分46の大きさ、形状及び配列に関わらず最上層基板48を下層基板47から剥離することが可能となる。又、押圧ローラ32を上昇させれば、粘着テープ20が押圧ローラ32に追従してメタルマスク10から上方側に離れることから、剥離対象部分46を最上層基板48から開口部13のエッジ部50で切断し、分離することが可能となる。
押圧ローラ32は可撓性を有しており、軸方向長さが押圧ローラ32の移動方向に対して直交する方向の開口部13の最大幅よりも長く、粘着テープ20は、押圧ローラの移動軌跡外に配列される開口部13に架からない幅である。押圧ローラ32は可撓性を有しているから、メタルマスク上面10aから開口部13内の最上層基板48に粘着テープ20を押圧することができる。従って、開口部13が押圧ローラ32の長さの範囲にあれば剥離対象部分の形状やサイズに関わらず剥離対象部分46を剥離することが可能となる。又、粘着テープ20は押圧ローラ13の移動軌跡外にある開口部には架からないことから、移動軌跡の範囲にある剥離対象部分46の最上層基板48のみを剥離することが可能となる。
押圧ローラ32は、剥離対象部分46に粘着テープ20を押圧して移動しながら粘着テープ20の粘着力で剥離対象部分46を剥離していき、開口部13の押圧ローラ32の移動方向側端部で粘着テープ20をフレキシブル積層基板2から離れる方向に上昇させる。このように、剥離動作終了後に、押圧ローラ32、すなわち粘着テープ20を上昇させることによって、開口部13のエッジ部50で剥離対象部分46を最上層基板48から確実に分離することが可能となる。
又、粘着テープ巻取りロール30は、押圧ローラ32が粘着テープ20を剥離対象部分46に押圧して移動する剥離動作に同期して粘着テープ20を巻き取るように制御される。このようにすれば、剥離動作中に常に粘着層20bの新しい未粘着部分が剥離対象部分46に粘着することが可能となる。さらに、分離した剥離対象部分46(最上層基板片48aとする、図7参照)が次の剥離対象部分から離れた位置に移動させていることから、最上層基板片48aが次の剥離動作の妨げになることを防ぐことが可能となる。
又、剥離ヘッド6は、押圧ローラ32の粘着テープ送出しロール31側の直近に配置されて押圧ローラ32の上昇動作中に粘着テープ20にブレーキを掛けるストッパー機構37を有している。剥離ヘッド6をこのように構成すれば、粘着テープ巻取りロール30とストッパー機構37によって粘着テープ20に張力を与えて粘着テープ20が弛むこと防ぎ、押圧ローラ32が上昇する際に粘着テープ20が押圧ローラ32に追従することで確実に剥離対象部分を最上層基板48から分離することが可能となる。さらに、粘着テープ20が弛むことでメタルマスク10に貼り付いてしまうこと防ぐことが可能となる。
剥離ヘッド6は、押圧ローラ32の粘着テープ巻取りロール31側の直近に配置されて押圧ローラ32の上昇動作中にメタルマスク10を押えるマスク押え機構36を有している。このようにマスク押え機構36によってメタルマスク10を押圧した状態で押圧ローラ32を上昇させれば、粘着テープ20の粘着力でメタルマスク10が浮きあがることを防止でき、メタルマスク10と最上層基板48との間に隙間ができずに剥離対象部分46の最上層基板48からの切断・分離をより一層確実に行うことが可能となる。
メタルマスク固定枠11は、開口部13と剥離対象部分46との位置補正を行うアライメント機構18としてX軸駆動機構14及びY軸駆動機構15をさらに有している。メタルマスク10の開口部13を所定の剥離対象部分46に位置合せすることによって、位置ずれに起因する剥離不良を排除することが可能となる。さらに、開口部13と剥離対象部分46との位置合わせを行うことによって、下層基板47に形成されている機能パターンを正確に露出させることが可能となる。
又、剥離装置1は、少なくとも粘着テープ20が接触する部材には、非粘着処理が施される。粘着テープ20の粘着層20bが剥離ヘッド6の構成部材に接触すると、剥離装置1の正常な駆動や剥離動作が妨げられることがある。そこで、粘着テープ20が接触する部材に非粘着処理を施すことによって、粘着テープ20が粘着することに起因する不具合を排除することが可能となる。例えば、粘着テープ巻取ロール30、押圧ローラ32、ストッパーローラ40、ストッパー部43、中間ローラ39及び粘着テープ送出しロール31などが対象となる。特に、剥離動作中にメタルマスク10の開口部13周縁に押圧ローラによって粘着層20bが押圧される。そこで、メタルマスク上面20aに非粘着処理を施すことによって粘着層20bがメタルマスク10に貼りついてしまうことを防止できる。
[剥離動作及び剥離方法]
図6は、実施の形態に係る剥離方法の主要工程を示す工程フロー図であり、図7は、剥離方法の主要工程を示す説明図である。なお、図7は、分かり易く説明するために各部の縮尺や形状を誇張して記載した模式図である。図7(a)は剥離動作開始直前を表し、図7(b)は剥離動作終了時を表し、図7(c)は分離動作を表している。ここでは、剥離対象ワークとして図5(a)に示すフレキシブル積層基板2のA群の剥離動作を代表例として説明する。
まず、フレキシブル積層基板2の剥離範囲49をテーブル9上の所定位置に搬送し、テーブル9に吸着した後、フレキシブル積層基板2をメタルマスク10に当接する位置に上昇させる(ステップS1)。フレキシブル積層基板2の上下動は、テーブル昇降機構(図示せず)によって制御される。
次に、メタルマスク10の開口部13と最上層基板48の剥離対象部分46との位置補正を行う(ステップS2)。図示は省略するが、位置補正は、検出カメラ16によって最上層基板48に設けられたアライメントマークとメタルマスク10に設けられたアライメントマークとを検出し、このずれ量をX軸駆動機構14及びY軸駆動機構15によってメタルマスク10の位置を最上層基板48に合わせることによって行われる。メタルマスク10のアライメントマークを複数の開口部13としてもよい。
次に、押圧ローラ32の位置、移動方向を剥離対象部分46の配列に合わせる(ステップS3)。A群の剥離においては、図5(a)に示す位置P1、位置P2、位置P3、位置P4の順に剥離する。位置P1の剥離においては、図5(a)に示すように、押圧ローラ32の軸方向をフレキシブル積層基板2の搬送方向に直交する方向とし、位置P1の開口部13aよりも図示左方側(基板巻き取りロール28側)の位置に合わせる(図中、押圧ローラ32を二点鎖線で示す)。ステップS3の動作は、ヘッドX軸駆動機構21、ヘッドY軸駆動機構22及びθ軸駆動機構33によって実行される。
続いて、図7(a)に示すように、押圧ローラ32がメタルマスク10を押圧するまで降下し、さらに押圧ローラ32を開口部13aに移動して粘着テープ20を開口部13a内の最上層基板48、つまり剥離対象部分46aに押圧する(ステップS4)。図中、押圧ローラ32の移動方向を太い矢印で表している。押圧ローラ32は、メタルマスク上面10aを押圧したときに自身の可撓性によって変形し開口部13a内の最上層基板48に粘着テープ20を押圧することが可能となっている。従って、ステップS4の動作においては、押圧ローラ32の剥離動作前の位置として、押圧ローラ32が開口部13aに架かる位置又は開口部13aの図示左方側端部から若干離れたメタルマスク10上の位置としてもよい。ステップS4の動作においては、マスク押えローラ41は、メタルマスク10から離間した位置にある。又、ストッパー部43は、ストッパーローラ40と離間し粘着テープ20にブレーキを掛けていない。
続いて、図7(b)に示すように、押圧ローラ32を太い矢印方向に移動し最上層基板48の剥離対象部分46aを剥離する(ステップS5)。押圧ローラ開口部13aにおいて、最上層基板48は粘着テープ20の粘着力で強く粘着され、押圧ローラ32が太い矢印方向へ移動することによって、メタルマスク10の開口部13aのエッジ部50で押圧ローラ32の移動経路上の剥離対象部分46aを切断しながら剥離していく。エッジ部50は、開口部13aの4辺の下面側角部に形成されている。
粘着テープ20に粘着された最上層基板48は、押圧ローラ32の移動に同期して押圧ローラ32の移動方向に対して逆方向に基板巻き取りロール30によって巻き取られ、図中点線の矢印方向に移動していく。最上層基板48は、開口部13aの3辺のエッジ部50で切断されつつ剥離されていく。押圧ローラ32は移動に伴い矢印方向に転動する。なお、押圧ローラ32は、開口部13aの図示右方側端部を超えてメタルマスク10上に載るまで移動させるようにしてもよい。図7(b)に示す状態、つまり剥離動作が終了し分離動作に移行する直前においては、マスク押えローラ41はメタルマスク10から離間しており、ストッパー部43はストッパーローラ40に粘着テープ20を押圧して粘着テープ20にブレーキを掛けて粘着テープ巻取りロール30との間で粘着テープ20に張力を与えて粘着テープ20の弛みをなくす。
続いて、図7(c)に示すように、押圧ローラ32を上昇させて剥離対象部分46aを最上層基板48から分離する(ステップS6)。剥離対象部分46aは、押圧ローラ32と共に上昇する粘着テープ20の粘着力で引き剥がされ、開口部13aの図示右方側端部のエッジ部50で切断されて最上層基板48から分離される。ステップS6の動作中において、ストッパー部43は、ストッパーローラ40との間で粘着テープ20にブレーキを掛けた状態で押圧ローラ32と連動して上昇する。押圧ローラ32が上昇を開始する前に、マスク押えローラ41が降下してメタルマスク10を押圧する。このことによって、剥離対象部分46aを切断・分離する際にメタルマスク10がフレキシブル積層基板2から浮いてしまうことがない。メタルマスク10と最上層基板48との間に隙間がないことから最上層基板片48aを最上層基板48から確実に分離することが可能となる。なお、粘着テープ巻き取りロール30は、押圧ロール32が上昇した距離分の粘着テープ20を巻き取り、粘着テープ20に弛みが発生しないようにしている。
位置P1の剥離・分離動作が終了した後、押圧ローラ32を位置P1の右方側にある位置P2に移動し剥離動作を開始する。具体的は、剥離ヘッド6を駆動し、押圧ローラ32を位置P2に移動させ(ステップS7)、ステップS4〜ステップS7を実行する。次いで、位置P3、位置P4の順に、開口部13a内の剥離対象部分46aを前述したステップS4〜ステップS7を繰り返して順に剥離・分離していく。なお、剥離順は、位置P4から位置P1に向かう順番に行ってもよく、剥離対象部46の配列によって適宜変更可能である。
A群の剥離が終了したところで、剥離ヘッド6を次の剥離対象群であるB群に移動する(ステップ8)。B群においてもA群と同じように、位置P5、位置P6、位置P7の順にステップS3〜ステップS7の各工程を繰り返して開口部13b内の剥離対象部分46bを剥離する。まず、剥離ヘッド6をA群における剥離動作姿勢から90度回転する。つまり、粘着テープ巻取りロール30、押圧ロール32及び粘着テープ送出しロール31の配列をフレキシブル積層基板2の搬送方向に直交する姿勢とし、位置P5の開口部13bの図示下方側の所定位置に押圧ロール32を配置する(ステップP3)。そして、押圧ロール32を図示上方側に移動しながら開口部13b内の剥離対象部分46bを剥離・分離する。すなわち、ステップS4〜ステップS7の工程を繰り返して位置P6、位置P7において剥離動作を繰り返す。B群の剥離動作がすべて終了後、剥離ヘッド6を次の剥離対象群であるC群に移動し、C群において剥離・分離動作を実行する。B群においても剥離順は、位置P7から位置P5の順番に行ってもよく、剥離対象部46の配列によって適宜変更可能である。
C群の2個の剥離対象部分46c、すなわち開口部13cの配列は、A群の配列に対し傾斜して配列されているため、位置P8、位置P9が独立しているかのように剥離動作を実行する。つまり、位置P8の剥離を行った後に、剥離ヘッド6を位置P9側に移動して剥離動作を実行する。図5(a)に示す例では、剥離ヘッド6の姿勢はB群の剥離動作時に対して変えなくてもよい。C群の剥離動作は、A群及びB群の剥離動作を踏襲することが可能である。まず、位置P8の開口部13cの図示上方側の所定位置に押圧ロール32を配置する。そして、押圧ロール32を図示下方側に移動しながら開口部13c内の剥離対象部分46cを剥離・分離する。そして、押圧ローラ32を位置P9に移動し、ステップS4〜ステップS6の工程を繰り返して位置P9において剥離・分離動作を繰り返す。位置P9の次に位置P8の剥離を行うようにしてもよい。
A群、B群及びC群の剥離を終了した後、つまり、剥離対象範囲49の剥離がすべて終了した後、剥離ヘッド6は図3に示す剥離装置1の起動前に戻って待機する。そして、テーブル9を降下し、フレキシブル積層基板2を次の剥離対象位置49が所定位置に達するまで基板巻き取りロール28によって搬送し、ステップS1〜ステップS8を繰り返す。
以上説明した剥離方法において、フレキシブル積層基板2の搬送、剥離ヘッド6の動作、押圧ローラ32、基板巻取りロール28、粘着テープ巻取りロール30、ストッパーローラ40及びストッパー部43などの動作は、フレキシブル積層基板2の剥離対象部分46の配置に適合するプログラムによって制御される。なお、A群、B群、C群の剥離順は、例えば、C群、B群、A群というように変更することが可能である
以上説明した剥離方法は、剥離装置1を使用して最上層基板48の剥離対象部分46を粘着テープ20の粘着力で下層基板47から剥離する剥離方法である。剥離方法は、ワークとしての積層基板であるフレキシブル積層基板2を所定位置に搬送してメタルマスク10に当接する位置に上昇させる工程と、メタルマスク10の開口部13と剥離対象部分46との位置補正を行う工程と、押圧ローラ32の押圧位置及び移動方向を剥離対象部分46の配列に合わせる工程と、押圧ローラ32を降下し、さらに開口部13内に移動させることにより粘着テープ20を最上層基板48に押圧する工程と、粘着テープ20を開口部13内の最上層基板48に押圧しつつ押圧ローラ32を移動して剥離対象部分46を開口部13のエッジ部50で切断しながら剥離する工程と、押圧ローラ32をメタルマスク10から離間する方向に上昇させて最上層基板片48aを下層基板47から分離する工程と、を有する。
このような剥離方法によれば、メタルマスク10の開口部13内において、最上層基板48に粘着テープ20の粘着層20bを押圧した状態で押圧ローラ32を移動することによって、開口部13の下面側のエッジ部50で剥離対象部分46を切断しながら剥離していくことが可能となる。そして、押圧ローラ32が開口部13の押圧ローラ移動方向端部に達したところで押圧ローラ32を上昇させて剥離対象部分の残りの接続部を開口部13のエッジ部50で切断し、剥離対象部分46を最上層基板48から分離することが可能となる。
又、積層基板であるフレキシブル積層基板2は剥離対象範囲49内に剥離対象部分46を複数有し、メタルマスク10は剥離対象部分46の形状及び配列に対応する開口部13を有しており、開口部13の配列に合わせて押圧ローラ32の押圧位置及び移動方向を切り換えることが可能となっている。
このように、剥離対象部分46の配列に対応して押圧ローラ32の位置及び移動方向を切り換えれば、剥離対象範囲49内に複数種類の剥離対象部分46があり、配列方向が複数ある場合においても、メタルマスク10を剥離対象部分の形状や配列に対応したものに切り換えたり、押圧ローラ32や粘着テープ20の幅を変えたりしなくても剥離対象部分46の剥離を行うことが可能となる。従って、生産性を極めて高くすることが可能となる。
なお、本実施の形態においては、剥離対象部分46を剥離・分離した後に剥離残りや下層基板47に汚れがないことを外観検査することが好ましい。この外観検査は、例えば検査用カメラなどによる画像処理で行うことが可能であり、或いは目視検査であってもよい。
なお、以上説明した剥離装置1及び剥離方法においては、前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。例えば、前述した実施の形態においては、剥離対象ワークとして2層構成のフレキシブル積層基板2を例示して説明したが、下層基板47が多層基板やリジット基板など、或いは単板の積層基板、又は、半導体ウエハやディスプレイ装置などの保護フィルムの特定箇所のみを剥離するものに適用可能である。
又、例えば、回路基板などの電子部品に限らず複数層からなる板状物品の最上層板の剥離においても、粘着テープで最上層板を引き上げメタルマスクのエッジで切断が可能なものであれば適用可能である。