JPWO2019230568A1 - 樹脂付金属箔の製造方法及び樹脂付金属箔 - Google Patents
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Abstract
Description
高周波信号の伝送に用いられるプリント基板には、伝送特性に優れることが要求される。伝送特性を高めるには、プリント基板の絶縁樹脂層として、比誘電率及び誘電正接が低い樹脂を用いる必要がある。比誘電率及び誘電正接が小さい樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフルオロポリマーが知られている。
フルオロポリマーを含む樹脂層を有する樹脂付金属箔を形成する材料として、フルオロポリマーのパウダーが溶媒に分散したパウダー分散液が提案されている(特許文献1及び2参照。)。
このパウダー分散液は、他の絶縁樹脂及びそのワニスを配合すれば、得られる樹脂付金属箔の諸物性を任意に調整できる利点がある。また、このパウダー分散液は金属箔の表面に塗布乾燥するだけで樹脂付金属箔を形成できる利点もある。
フルオロポリマーを含む樹脂層を有する樹脂付金属箔を表面処理(プラズマ処理、コロナ処理、電子線処理等。)に供し、前記樹脂層の反りをコントロールする方法が知られているが、この方法は、別途、樹脂付金属箔を表面処理に供する必要がある。また、表面処理は前記樹脂層の経時的変性や形状変化等を誘引し、前記樹脂層の均質性を損なう場合もある。
本発明は、電気特性と機械的強度を具備し、プリント基板を製造するために有用な、フルオロポリマーを含む、高均質性な樹脂層を有し、反りにくい樹脂付金属箔と、その効率的な製造方法を提供する。
[1]金属箔の表面に樹脂層を有する樹脂付金属箔の製造方法であり、0.1〜5.0MPaの貯蔵弾性率を示す温度領域を260℃以下に有し、かつ融点が260℃超のテトラフルオロエチレン系ポリマーのパウダーと溶媒とを含むパウダー分散液を金属箔の表面に塗布し、前記温度領域内の温度に金属箔を保持し、さらに前記温度領域超の温度にてテトラフルオロエチレン系ポリマーを焼成させて金属箔の表面にテトラフルオロエチレン系ポリマーを含む樹脂層を形成する、樹脂付金属箔の製造方法。
[3]金属箔の厚さが、2〜40μmである、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]樹脂層の厚さが、1〜50μmである、[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]金属箔の厚さが2〜20μmであり、樹脂層の厚さが1μm以上10μm未満である、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]パウダーの体積基準累積50%径が、0.05〜6.0μmである、[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]テトラフルオロエチレン系ポリマーが、テトラフルオロエチレンに基づく単位と、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン及びフルオロアルキルエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーに基づく単位とを含むポリマーである、[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[9]パウダー分散液が、ポリマー状ポリオールを含む、[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]前記温度領域に金属箔を保持する時間が、30秒〜5分である、[1]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11]前記温度領域に金属箔を保持する際の雰囲気が、酸素ガスを含む雰囲気である、[1]〜[10]のいずれかに記載の製造方法。
[12]テトラフルオロエチレン系ポリマーを焼成させる際の温度が、320℃超である、[1]〜[11]のいずれかに記載の製造方法。
[14]反り率が、5%以下である、[13]に記載の樹脂付金属箔。
[15]前記[1]〜[12]のいずれかに記載の製造方法で樹脂付金属箔を製造し、前記金属箔をエッチングしてパターン回路を形成する、プリント基板の製造方法。
「パウダーのD50」は、レーザー回折・散乱法によって求められる、パウダーの体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によってパウダーの粒度分布を測定し、その粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
「パウダーのD90」は、レーザー回折・散乱法によって求められる、パウダーの体積基準累積90%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によってパウダーの粒度分布を測定し、その粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が90%となる点の粒子径である。
「ポリマーの貯蔵弾性率」は、ISO 6721−4:1994(JIS K7244−4:1999)に基づき測定される値である。
「ポリマーの融点」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した融解ピークの最大値に対応する温度である。
「樹脂付金属箔の反り率」は、樹脂付金属箔から180mm角の四角い試験片を切り出し、試験片についてJIS C6471:1995(対応国際規格IEC 249−1:1982)に規定される測定方法にしたがって測定される値である。
「樹脂付金属箔の寸法変化率」は、次のようにして求められる値である。樹脂付金属箔を150mm角で切り出し、0.3mmのドリルを用いて四隅に穴を空けて三次元測定器で穴の位置を測定する。樹脂付金属箔の金属箔をエッチングで取り除き、130℃で30分間乾燥する。四隅に空けた穴の位置を三次元測定器で測定する。エッチング前後の穴の位置の差から寸法変化率を算出する。
「算術平均粗さRa」は、JIS B0601:2013(ISO4287:1997,Amd.1:2009)に基づき測定される算術平均粗さである。Raを求める際の、粗さ曲線用の基準長さlr(カットオフ値λc)は0.8mmとした。
「耐熱性樹脂」とは、融点が280℃以上の高分子化合物、又はJIS C4003:2010(IEC 60085:2007)で規定される最高連続使用温度が121℃以上の高分子化合物を意味する。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの総称である。
本発明におけるTFE系ポリマーは、所定の溶融性(260℃超の融点を有する。)と所定の弾性(0.1〜5.0MPaの貯蔵弾性率を示す温度領域を260℃以下に有する。)を有し、前記温度領域において一定の弾性状態を形成する。かかるTFE系ポリマーのパウダーを含む分散液を金属箔の表面に塗布し、前記温度領域内の温度に保持した場合、前記パウダーは、弾性に由来する粘着性により欠損しにくく、密にパッキングした被膜状態を形成すると考えられる。本発明においては、この被膜状態を形成した後に、前記温度領域超にてTFE系ポリマーを焼成してF樹脂層を形成するため、そのまま均質性が高く緻密なF樹脂層が形成され、その結果、反りにくい樹脂付金属箔が得られたと考えられる。
樹脂付金属箔の反り率は、7%以下が好ましく、5%以下が特に好ましい。反り率の下限は、通常、0%である。この場合、樹脂付金属箔をプリント基板に加工する際のハンドリング性と、得られるプリント基板の伝送特性が優れる。
樹脂付金属箔の寸法変化率は、±1%以下が好ましく、±0.2%以下が特に好ましい。この場合、樹脂付金属箔から得られるプリント基板を多層化しやすい。
金属箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられる。金属箔の表面には、防錆層(クロメート等の酸化物皮膜等)、耐熱層等が形成されていてもよい。
金属箔の厚さは、樹脂付金属箔の用途において機能が発揮できる厚さであればよく、2μm以上が好ましく、3μm以上が特に好ましい。また、金属箔の厚さは、40μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下が特に好ましい。金属箔の厚さの具体的な態様としては、2〜40μm、2〜20μm、2〜15μm等の態様が挙げられる。
金属箔の表面はシランカップリング剤により処理されていてもよく、金属箔の表面の全体がシランカップリング剤により処理されていてもよく、金属箔の表面の一部がシランカップリング剤により処理されていてもよい。
F樹脂層の厚さの具体的な態様としては、1〜50μmが挙げられ、1〜15μm、1μm以上10μm未満、5〜15μm等の態様が挙げられる。
本発明における金属箔の厚さとF樹脂層の厚さとの好適な態様としては、前者が2〜20μmであり、後者が1μm以上10μm未満である態様が挙げられる。本発明の製造方法では、上述した通り、均質性が高く緻密なF樹脂層が形成されるため、かかる薄い構成の樹脂付金属箔でも、反りを抑制できる。
F樹脂層の表面のRaは、F樹脂層の厚さ未満であり、2.2〜8μmが好ましい。この範囲において、他の基板の接着性と加工性とをバランスさせやすい。
FパウダーのD50は、0.05〜6.0μmが好ましく、0.1〜3.0μmがより好ましく、0.2〜3.0μmが特に好ましい。この範囲において、Fパウダーの流動性と分散性が良好となり、樹脂付金属箔におけるTFE系ポリマーの電気特性(低誘電率等)や耐熱性が最も発現しやすい。
FパウダーのD90は、8μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましく、5μm以下が特に好ましい。パウダーのD90は、0.3μm以上が好ましく、0.8μm以上が特に好ましい。この範囲において、Fパウダーの流動性と分散性が良好となり、F樹脂層の電気特性(低誘電率等)や耐熱性が最も発現しやすい。
Fパウダーの疎充填嵩密度は、0.05g/mL以上が好ましく、0.08〜0.5g/mLが特に好ましい。
Fパウダーの密充填嵩密度は、0.05g/mL以上が好ましく、0.1〜0.8g/mLが特に好ましい。
本発明におけるTFE系ポリマーは、融点が260℃超であり、260〜320℃が好ましく、275〜320℃であるのが特に好ましく、295〜310℃であるのが最も好ましい。この場合、TFE系ポリマーが、その弾性に基づく粘着性を保持しつつ焼成されて、緻密なF樹脂層をより形成しやすい。
TFE系ポリマーが示す貯蔵弾性率は、0.2〜4.4MPaであるのが好ましく、0.5〜3.0MPaであるのが特に好ましい。また、TFE系ポリマーがかかる貯蔵弾性率を示す温度領域としては、180〜260℃の範囲が好ましく、200〜260℃の範囲が特に好ましい。この場合、前記温度領域においてFパウダーが弾性に基づく粘着性を効果的に発現しやすい。
TFE系ポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、TFEとエチレンのコポリマー、TFEとプロピレンのコポリマー、TFEとペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)のコポリマー(PFA)、TFEとヘキサフルオロプロピレン(HFP)のコポリマー(HFP)、TFEとフルオロアルキルエチレン(FAE)のコポリマー、TFEとクロロトリフルオロエチレンのコポリマーが挙げられる。
FAEとしては、CH2=CH(CF2)2F、CH2=CH(CF2)3F、CH2=CH(CF2)4F、CH2=CF(CF2)3H、CH2=CF(CF2)4Hが挙げられる。
TFE系ポリマーの好適な態様としては、TFE単位と、PAVE、HFP及びFAEからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーに基づく単位(以下、「コモノマー単位F」とも記す。)を含むポリマーも挙げられる。
官能基は、TFE系ポリマー中の単位に含まれていてもよく、ポリマーF1の主鎖の末端基に含まれていてもよい。後者のポリマーとしては、官能基を、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基として有するポリマーが挙げられる。
ポリマーF1としては、官能基を有する単位とTFE単位とを含むポリマーが好ましい。また、この場合のポリマーF1としては、さらに他の単位を含むのが好ましく、コモノマー単位Fを含むのが特に好ましい。
官能基としては、F樹脂層と金属箔の接着性の観点から、カルボニル基含有基が好ましい。カルボニル基含有基としては、カーボネート基、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、酸無水物残基(−C(O)OC(O)−)、脂肪酸残基等が挙げられ、カルボキシ基及び酸無水物残基が好ましい。
カルボニル基含有基を有するモノマーとしては、酸無水物残基を有する環状モノマー、カルボキシ基を有するモノマー、ビニルエステル又は(メタ)アクリレートが好ましく、酸無水物残基を有する環状モノマーが特に好ましい。
前記環状モノマーとしては、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(別称:無水ハイミック酸。以下、「NAH」とも記す。)又は無水マレイン酸が好ましい。
ポリマーF1としては、官能基を有する単位とTFE単位と、PAVE単位又はHFP単位とを含むポリマーが好ましい。かかるポリマーF1の具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載された重合体(X)が挙げられる。
ポリマーF1におけるPAVE単位の割合は、ポリマーF1に含まれる全単位のうち、0.5〜9.97モル%が好ましい。
ポリマーF1における官能基を有する単位の割合は、ポリマーF1に含まれる全単位のうち、0.01〜3モル%が好ましい。
溶媒化合物としては、水、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)、含窒素化合物(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等)、含硫黄化合物(ジメチルスルホキシド等)、エーテル(ジエチルエーテル、ジオキサン等)、エステル(乳酸エチル、酢酸エチル等)、ケトン(メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等)、グリコールエーテル(エチレングリコールモノイソプロピルエーテル等)、セロソルブ(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)等が挙げられる。溶媒化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒化合物としては、瞬間的に揮発しない溶媒が好ましく、沸点80〜275℃の溶媒化合物が好ましく、沸点125〜250℃の溶媒化合物が特に好ましい。この範囲において、金属箔の表面に塗布したパウダー分散液から形成されるウェット膜(溶媒を含む膜)の安定性が高い。
ウエット膜中の溶媒は、TFE系ポリマーの焼成が終了するまでに除去される。ウエット膜からの溶媒の気散消失は、前記特定の貯蔵弾性率を示す温度領域に達する前に生じてもよく、前記特定の貯蔵弾性率を示す温度領域に保持している状態で生じてもよい。場合により、TFE系ポリマーの焼成の際に生じてもよい。好ましくは、上記沸点範囲の溶媒を使用して、ウエット膜中の溶媒の少なくとも一部を、TFE系ポリマーを前記特定の貯蔵弾性率を示す温度領域に保持している状態で気散させる。
溶媒化合物としては、有機化合物が好ましく、シクロヘキサン(沸点:81℃)、2−プロパノール(沸点:82℃)、1−プロパノール(沸点:97℃)、1−ブタノール(沸点:117℃)、1−メトキシ−2−プロパノール(沸点:119℃)、N−メチルピロリドン(沸点:202℃)、γ−ブチロラクトン(沸点:204℃)、シクロヘキサノン(沸点:156℃)及びシクロペンタノン(沸点:131℃)がより好ましく、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン及びシクロペンタノンが特に好ましい。
パウダー分散液中の溶媒の割合は、15〜65質量%が好ましく、25〜50質量部が特に好ましい。この範囲において、パウダー分散液の塗布性が優れ、かつ樹脂層の外観不良が起こりにくい。
パウダー分散剤は、パウダー分散液の分散安定性を向上させる観点から、分散剤を含むのが好ましい。分散剤としては、F樹脂層の表面性状に接着性を付与する観点から、疎水部位と親水部位を有する化合物(界面活性剤)が特に好ましい。
パウダー分散液が分散剤を含む場合、パウダー分散液中の分散剤の割合は、0.1〜30質量%が好ましく、5〜10質量部が特に好ましい。この範囲において、Fパウダーの均一分散性と、F樹脂層の表面の親水性及び電気特性とをバランスさせやすい。
ポリマー状ポリオールとは、炭素−炭素不飽和二重結合を有するモノマーに基づく単位と2以上の水酸基を有するポリマーをいう。ポリマー状ポリオールとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール及びフルオロポリオールが特に好ましく、フルオロポリオールが最も好ましい。ただし、フルオロポリオールとは、TFE系ポリマーではない、水酸基とフッ素原子とを有するポリマーである。また、フルオロポリオールは、水酸基の一部が化学修飾され、変性されていてもよい。
(メタ)アクリレートFとしては、式CH2=CR1C(O)O−X1−RFで表される化合物が好ましい。
R1は、水素原子又はメチル基を示す。
X1は、−(CH2)2−、−(CH2)3−、−(CH2)4−、−(CH2)2NHC(O)−、−(CH2)3NHC(O)−又は−CH2CH(CH3)NHC(O)−を示す。
RFは、−OCF(CF3)(C(CF(CF3)2)(=C(CF3)2)、−OC(CF3)(=C(CF(CF3)2)(CF(CF3)2)、−OCH(CH2OCH2CH2(CF2)4F)2、−OCH(CH2OCH2CH2(CF2)6F)2、−(CF2)4F又は−(CF2)6Fを示す。
(メタ)アクリレートAOとしては、式CH2=CR2C(O)O−Q2−OHで表される化合物が好ましい。
R2は、水素原子又はメチル基を示す。
Q2は、−(CH2)m(OCH2CH2)n−、−(CH2)m(OCH2CH(CH3))n−又は−(CH2)m(OCH2CH2CH2CH2)n−を示す(mは1〜4の整数を、nは2〜100の整数を示し、nとしては2〜20の整数が好ましい。)。
(メタ)アクリレートAOの具体例としては、CH2=CHCOO(CH2CH2O)8OH、CH2=CHCOO(CH2CH2O)10OH、CH2=CHCOO(CH2CH2O)12OH、CH2=C(CH3)COO(CH2CH(CH3)O)8OH、CH2=C(CH3)COO(CH2CH(CH3)O)12OH、CH2=C(CH3)COO(CH2CH(CH3)O)16OHが挙げられる。
分散ポリマーFに含まれる全単位に対する(メタ)アクリレートAOに基づく単位の割合は、40〜80モル%が好ましく、60〜80モル%が特に好ましい。
分散ポリマーFは、(メタ)アクリレートAOに基づく単位と(メタ)アクリレートAOに基づく単位のみからなっていてもよく、さらに他の単位をさらに含んでいてもよい。
分散ポリマーFのフッ素含有量は、10〜45質量%が好ましく、15〜40質量%が特に好ましい。
分散ポリマーFは、ノニオン性であるのが好ましい。
分散ポリマーFの質量平均分子量は、2000〜80000が好ましく、6000〜20000が特に好ましい。
非硬化性樹脂としては、熱溶融性樹脂、非溶融性樹脂が挙げられる。熱溶融性樹脂としては、熱可塑性ポリイミド等が挙げられる。非溶融性樹脂としては、硬化性樹脂の硬化物等が挙げられる。
硬化性樹脂としては、反応性基を有するポリマー、反応性基を有するオリゴマー、低分子化合物、反応性基を有する低分子化合物等が挙げられる。反応性基としては、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。
ビスマレイミド樹脂としては、特開平7−70315号公報に記載される、ビスフェノールA型シアン酸エステル樹脂とビスマレイミド化合物とを併用した樹脂組成物(BTレジン)、国際公開第2013/008667号に記載の発明、その背景技術に記載のものが挙げられる。
ポリアミック酸は、通常、ポリマーF1の官能基と反応しうる反応性基を有している。
ポリアミック酸を形成するジアミン、多価カルボン酸二無水物としては、例えば、特許第5766125号公報の[0020]、特許第5766125号公報の[0019]、特開2012−145676号公報の[0055]、[0057]等に記載のものが挙げられる。なかでも、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等の芳香族ジアミンと、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族多価カルボン酸二無水物との組合せからなるポリアミック酸が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート、熱可塑性ポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶性ポリエステル、ポリフェニレンエーテル等が挙げられ、熱可塑性ポリイミド、液晶性ポリエステル及びポリフェニレンエーテルが好ましい。
本発明におけるパウダー分散液がバインダーを含めば、F樹脂層の形成に際するFパウダーの金属箔からの欠落(粉落ち)を抑制できる。バインダーとしては、熱可塑性の有機バインダーや熱硬化性の有機バインダーが挙げられる。バインダーとしては、TFE系ポリマーを焼成させる温度領域において分解して揮発する化合物が好ましい。かかるバインダーとしては、アクリル系樹脂バインダー、セルロース系樹脂バインダー、ビニルアルコール系樹脂バインダー、ワックス系樹脂バインダー、ゼラチン等が挙げられる。バインダーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
塗布方法は、塗布後の金属箔の表面にパウダー分散液からなる安定したウェット膜を形成する方法であればよく、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、グラビアオフセット法、ナイフコート法、キスコート法、バーコート法、ダイコート法、ファウンテンメイヤーバー法、スロットダイコート法等が挙げられる。
また、TFE系ポリマーが0.1〜5.0MPaの貯蔵弾性率を示す温度領域に金属箔を供する前に、前記温度領域未満の温度にて金属箔を加熱して、ウェット膜の状態を調整してもよい。なお、調製は、溶媒が完全に揮発しない程度にておこなわれ、50質量%以下の溶媒を揮発させる程度に通常はおこなわれる。
保持は、1段階で実施してもよく、異なる温度にて2段階以上で実施してもよい。
保持の方法としては、オーブンを用いる方法、通風乾燥炉を用いる方法、赤外線等の熱線を照射する方法等が挙げられる。
保持における雰囲気は、常圧下、減圧下のいずれの状態であってよい。また、前記保持における雰囲気は、酸化性ガス(酸素ガス等。)雰囲気、還元性ガス(水素ガス等。)雰囲気、不活性ガス(ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等。)雰囲気のいずれであってもよい。
保持における雰囲気は、F樹脂層の接着性が向上する観点から、酸素ガスを含む雰囲気であることが好ましい。
酸素ガスを含む雰囲気における酸素ガス濃度(体積基準)は、1×102〜3×105ppmが好ましく、0.5×103〜1×104ppmが特に好ましい。この範囲において、F樹脂層の接着性と金属箔の酸化抑制とをバランスさせやすい。
保持温度は、150〜260℃が好ましく、200〜260℃が特に好ましい。
保持温度に保持する時間は、0.1〜10分間が好ましく、0.5〜5分間が特に好ましい。
加熱の方法としては、オーブンを用いる方法、通風乾燥炉を用いる方法、赤外線等の熱線を照射する方法等が挙げられる。F樹脂層の表面の平滑性を高めるために、加熱板、加熱ロール等で加圧してもよい。加熱の方法としては、短時間で焼成でき、遠赤外線炉が比較的コンパクトである点から、遠赤外線を照射する方法が好ましい。加熱の方法は、赤外線加熱と熱風加熱とを組み合わせてもよい。
遠赤外線の有効波長帯は、TFE系ポリマーの均質な融着を促す点から、2〜20μmが好ましく、3〜7μmがより好ましい。
焼成における雰囲気としては、不活性ガスから構成され酸素ガス濃度が低いガス雰囲気が好ましく、窒素ガスから構成され酸素ガス濃度(体積基準)が500ppm未満のガス雰囲気が好ましい。酸素ガス濃度(体積基準)は、300ppm以下が特に好ましい。また、酸素ガス濃度(体積基準)は、通常、1ppm以上である。
焼成温度に保持する時間は、30秒〜5分間が好ましく、1〜2分間が特に好ましい。
樹脂付金属箔における樹脂層が従来の絶縁材料(ポリイミド等の熱硬化性樹脂の硬化物。)の場合、熱硬化性樹脂を硬化させるために長時間の加熱が必要である。一方、本発明においては、TFE系ポリマーの融着により短時間の加熱で樹脂層を形成できる。また、パウダー分散液が熱硬化性樹脂を含む場合、焼成温度を低くできる。このように、本発明の製造方法は、樹脂付金属箔に樹脂層を形成する際の金属箔への熱負荷が小さい方法であり、金属箔へのダメージが小さい方法である。
F樹脂層の表面にする表面処理方法としては、アニール処理、コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理、真空プラズマ処理、UVオゾン処理、エキシマ処理、ケミカルエッチング、シランカップリング処理、微粗面化処理等が挙げられる。
アニール処理における温度は、80〜190℃が好ましく、120〜180℃が特に好ましい。
アニール処理における圧力は、0.001〜0.030MPaが好ましく、0.005〜0.015MPaが特に好ましい。
アニール処理の時間は、10〜300分間が好ましく、30〜120分間が特に好ましい。
プラズマ処理におけるプラズマ照射装置としては、高周波誘導方式、容量結合型電極方式、コロナ放電電極−プラズマジェット方式、平行平板型、リモートプラズマ型、大気圧プラズマ型、ICP型高密度プラズマ型等が挙げられる。
プラズマ処理に用いるガスとしては、酸素ガス、窒素ガス、希ガス(アルゴン等)、水素ガス、アンモニアガス等が挙げられ、希ガス又は窒素ガスが好ましい。プラズマ処理に用いるガスの具体例としては、アルゴンガス、水素ガスと窒素ガスの混合ガス、水素ガスと窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスが挙げられる。
プラズマ処理における雰囲気としては、希ガス又は窒素ガスの体積分率が70体積%以上の雰囲気が好ましく、100体積%の雰囲気が特に好ましい。この範囲において、F樹脂層の表面のRaを2.0μm以下に調整して、F樹脂層の表面に微細凹凸を形成しやすい。
他の基板としては、耐熱性樹脂フィルム、繊維強化樹脂板の前駆体であるプリプレグ、耐熱性樹脂フィルム層を有する積層体、プリプレグ層を有する積層体等が挙げられる。
プリプレグは、強化繊維(ガラス繊維、炭素繊維等。)の基材(トウ、織布等。)に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含浸させたシート状の基板である。
耐熱性樹脂フィルムは、耐熱性樹脂の1種以上を含むフィルムであり、単層フィルムであっても多層フィルムであってもよい。
耐熱性樹脂としては、ポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶性ポリエステル等が挙げられる。
他の基板がプリプレグの場合のプレス温度は、TFE系ポリマーの融点以下が好ましく、120〜300℃がより好ましく、160〜220℃が特に好ましい。この範囲において、プリプレグの熱劣化を抑制しつつ、F樹脂層とプリプレグを強固に接着できる。
基板が耐熱性樹脂フィルムの場合のプレス温度は、310〜400℃が好ましい。この範囲において、耐熱性樹脂フィルムの熱劣化を抑制しつつ、F樹脂層と耐熱性樹脂フィルムを強固に接着できる。
また、熱プレス時は前記真空度に到達した後に昇温することが好ましい。前記真空度に到達する前に昇温すると、F樹脂層が軟化した状態、すなわち一定程度の流動性、密着性がある状態にて圧着されてしまい、気泡の原因となる。
熱プレスにおける圧力は、0.2MPa以上が好ましい。また、圧力の上限は、10MPa以下が好ましい。この範囲において、基板の破損を抑制しつつ、F樹脂層と基板とを強固に密着できる。
例えば、本発明における樹脂付金属箔の金属箔をエッチング等によって所定のパターンの導体回路(パターン回路)に加工する方法や、本発明における樹脂付金属箔を電解めっき法(セミアディティブ法(SAP法)、モディファイドセミアディティブ法(MSAP法)等。)によってパターン回路に加工する方法を使用すれば、本発明における樹脂付金属箔からプリント基板を製造できる。
プリント基板の製造においては、パターン回路を形成した後に、パターン回路上に層間絶縁膜を形成し、層間絶縁膜上にさらにパターン回路を形成してもよい。層間絶縁膜は、例えば、本発明におけるパウダー分散液によって形成できる。
プリント基板の製造においては、パターン回路上にソルダーレジストを積層してもよい。ソルダーレジストは、例えば、本発明におけるパウダー分散液によって形成できる。
プリント基板の製造においては、パターン回路上にカバーレイフィルムを積層してもよい。カバーレイフィルムは、例えば、本発明におけるパウダー分散液によって形成できる。
各種測定方法を以下に示す。
示差走査熱量計(セイコーインスツル社製、DSC−7020)を用い、TFE系ポリマーを10℃/分の速度で昇温させて測定した。
<ポリマーの貯蔵弾性率>
ISO 6721−4:1994(JIS K7244−4:1999)に基づき、動的粘弾性測定装置(DMS6100、SIIナノテクノロジー社製。)を用い、周波数10Hz、静的力0.98N、動的変位0.035%の条件にて、2℃/分の速度で、温度を20℃から上昇させ、260℃における貯蔵弾性率を測定した。
<パウダーのD50及びD90>
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA−920測定器)を用い、パウダーを水中に分散させて測定した。
光照射した樹脂層を斜め上方から目視し、下記基準で評価した。
○:模様が確認されない。
△:ゆず肌の模様が確認される。
×:ゆず肌の模様が確認され、端部を中心に樹脂欠落が確認される。
<樹脂付金属箔の反り率>
樹脂付金属箔から180mm角の四角い試験片を切り出し、試験片についてJIS C6471:1995に規定される測定方法にしたがって測定した。
○:樹脂付金属箔の反り率が、5%以下である。
△:樹脂付金属箔の反り率が、5%超7%以下である。
×:樹脂付金属箔の反り率が、7%超である。
ポリマー1:TFEに基づく単位、NAHに基づく単位及びPPVEに基づく単位を、この順に97.9モル%、0.1モル%、2.0モル%含むコポリマーであり、融点が300℃であり、260℃における貯蔵弾性率が1.1MPaである、ポリマー。
ポリマー2:TFEに基づく単位及びPPVEに基づく単位を、この順に98モル%、2モル%含むコポリマーであり、融点310℃であり、260℃における貯蔵弾性率が4.8MPaである、ポリマー。
ポリマー3:TFEに基づく単位及びHFPに基づく単位を、この順に82モル%、18モル%含むコポリマーであり、融点265℃であり、260℃における貯蔵弾性率が0.5MPaである、ポリマー。
ポリマー4:TFEに基づく単位を99.5モル%以上含むポリマーであり、融点320℃超であり、260℃における貯蔵弾性率が5.0MPa超であるポリマー。
分散剤1:ペルフルオロアルケニル基を有するアクリレートとポリオキシエチレン基及びアルコール性水酸基を有するアクリレートのコポリマー(ノニオン性界面活性剤)。
[金属箔]
銅箔1:厚さ12μmの低粗化銅箔(表面の十点平均粗さ0.6μm)。
パウダー1:D50が1.7μm、D90が3.8μmのポリマー1のパウダー(疎充填嵩密度0.269g/mL、密充填嵩密度0.315g/mL。)。
パウダー2:D50が2.4μm、D90が5.5μmのポリマー2のパウダー。
パウダー3:D50が3.1μm、D90が5.9μmのポリマー3のパウダー。
パウダー4:D50が0.3μm、D90が0.6μmのポリマー4のパウダー。
パウダー1の50質量部、分散剤1の5質量部、N−メチルピロリドンの45質量部を混合して分散液1を調製した。
銅箔1の表面にダイコーターを用いて分散液1を塗布し、銅箔1を通風乾燥炉(雰囲気温度:260℃、雰囲気ガス:酸素ガス濃度8000ppmの窒素ガス。)に通して1分間保持し、遠赤外線炉(温度:340℃、ガス:酸素ガス濃度100ppm未満の窒素ガス。)にさらに通して1分間保持し、銅箔1の表面にポリマー1の樹脂層(厚さ5μm)を有する樹脂付銅箔を得た。樹脂層の均質性、樹脂付金属箔の反り率に関する評価結果を、下表1に示す。
なお、2018年05月30日に出願された日本特許出願2018−104010号の明細書、特許請求の範囲及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
Claims (15)
- 金属箔の表面に樹脂層を有する樹脂付金属箔の製造方法であり、0.1〜5.0MPaの貯蔵弾性率を示す温度領域を260℃以下に有し、かつ融点が260℃超のテトラフルオロエチレン系ポリマーのパウダーと溶媒とを含むパウダー分散液を金属箔の表面に塗布し、前記温度領域内の温度に金属箔を保持し、さらに前記温度領域超の温度にてテトラフルオロエチレン系ポリマーを焼成させて金属箔の表面にテトラフルオロエチレン系ポリマーを含む樹脂層を形成する、樹脂付金属箔の製造方法。
- 樹脂付金属箔の反り率が、7%以下である、請求項1に記載の製造方法。
- 金属箔の厚さが、2〜40μmである、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 樹脂層の厚さが、1〜50μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 金属箔の厚さが2〜20μmであり、樹脂層の厚さが1μm以上10μm未満である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- パウダーの体積基準累積50%径が、0.05〜6.0μmである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
- テトラフルオロエチレン系ポリマーが、テトラフルオロエチレンに基づく単位と、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン及びフルオロアルキルエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーに基づく単位とを含むポリマーである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
- テトラフルオロエチレン系ポリマーが、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
- パウダー分散液が、ポリマー状ポリオールを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記温度領域に金属箔を保持する時間が、30秒〜5分である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記温度領域に金属箔を保持する際の雰囲気が、酸素ガスを含む雰囲気である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
- テトラフルオロエチレン系ポリマーを焼成させる際の温度が、320℃超である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
- 厚さが2〜20μmの金属箔の表面に厚さが1μm以上10μm未満の樹脂層を有し、前記樹脂層がテトラフルオロエチレンに基づく単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン及びフルオロアルキルエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーに基づく単位とを含むポリマーを含み、反り率が7%以下である、樹脂付金属箔。
- 反り率が、5%以下である、請求項13に記載の樹脂付金属箔。
- 請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造方法で樹脂付金属箔を製造し、前記金属箔をエッチングしてパターン回路を形成する、プリント基板の製造方法。
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