JPWO2019230568A1 - 樹脂付金属箔の製造方法及び樹脂付金属箔 - Google Patents

樹脂付金属箔の製造方法及び樹脂付金属箔 Download PDF

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Abstract

電気特性と機械的強度を具備し、プリント基板を製造するために有用な、フルオロポリマーを含む、高均質性な樹脂層を有し、反りにくい樹脂付金属箔の効率的な製造方法と、かかる樹脂付金属箔との提供。金属箔の表面に樹脂層を有する樹脂付金属箔の製造方法であり、0.1〜5.0MPaの貯蔵弾性率を示す温度領域を260℃以下に有し、かつ融点が260℃超のテトラフルオロエチレン系ポリマーのパウダーと溶媒とを含むパウダー分散液を金属箔の表面に塗布し、前記温度領域内の温度に金属箔を保持し、さらに前記温度領域超の温度にてテトラフルオロエチレン系ポリマーを焼成させて金属箔の表面にテトラフルオロエチレン系ポリマーを含む樹脂層を形成する、樹脂付金属箔の製造方法。

Description

本発明は、樹脂付金属箔の製造方法及び樹脂付金属箔に関する。
金属箔の表面に絶縁樹脂層を有する樹脂付金属箔は、金属箔をエッチング等によって加工することによってプリント基板として用いられる。
高周波信号の伝送に用いられるプリント基板には、伝送特性に優れることが要求される。伝送特性を高めるには、プリント基板の絶縁樹脂層として、比誘電率及び誘電正接が低い樹脂を用いる必要がある。比誘電率及び誘電正接が小さい樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフルオロポリマーが知られている。
フルオロポリマーを含む樹脂層を有する樹脂付金属箔を形成する材料として、フルオロポリマーのパウダーが溶媒に分散したパウダー分散液が提案されている(特許文献1及び2参照。)。
このパウダー分散液は、他の絶縁樹脂及びそのワニスを配合すれば、得られる樹脂付金属箔の諸物性を任意に調整できる利点がある。また、このパウダー分散液は金属箔の表面に塗布乾燥するだけで樹脂付金属箔を形成できる利点もある。
国際公開第2017/222027号 国際公開第2016/159102号
プリント基板の製造態様として、フルオロポリマーを含む樹脂層(絶縁樹脂層)の表面に他の基板(プリプレグ等。)を積層し、樹脂付金属箔を多層化する態様や、前記樹脂層の表面に他の基板(カバーレイフィルム等。)を積層してパッケージングする態様がある。この場合、プリント基板の電気特性や生産性の観点から、樹脂付金属箔の反らすことなく前記樹脂層と他の基板とを積層する必要がある。
フルオロポリマーを含む樹脂層を有する樹脂付金属箔を表面処理(プラズマ処理、コロナ処理、電子線処理等。)に供し、前記樹脂層の反りをコントロールする方法が知られているが、この方法は、別途、樹脂付金属箔を表面処理に供する必要がある。また、表面処理は前記樹脂層の経時的変性や形状変化等を誘引し、前記樹脂層の均質性を損なう場合もある。
本発明者らは、フルオロポリマーのパウダーを含むパウダー分散液から、フルオロポリマーを含む高均質性な樹脂層を有し、反りにくい樹脂付金属箔を製造するべく、鋭意検討した。その結果、フルオロポリマーの物性と樹脂付金属箔の製造条件とを調整すれば、かかる樹脂付金属箔を効率よく製造できることを見出した。
本発明は、電気特性と機械的強度を具備し、プリント基板を製造するために有用な、フルオロポリマーを含む、高均質性な樹脂層を有し、反りにくい樹脂付金属箔と、その効率的な製造方法を提供する。
本発明は、下記の態様を有する。
[1]金属箔の表面に樹脂層を有する樹脂付金属箔の製造方法であり、0.1〜5.0MPaの貯蔵弾性率を示す温度領域を260℃以下に有し、かつ融点が260℃超のテトラフルオロエチレン系ポリマーのパウダーと溶媒とを含むパウダー分散液を金属箔の表面に塗布し、前記温度領域内の温度に金属箔を保持し、さらに前記温度領域超の温度にてテトラフルオロエチレン系ポリマーを焼成させて金属箔の表面にテトラフルオロエチレン系ポリマーを含む樹脂層を形成する、樹脂付金属箔の製造方法。
[2]樹脂付金属箔の反り率が、7%以下である、[1]に記載の製造方法。
[3]金属箔の厚さが、2〜40μmである、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]樹脂層の厚さが、1〜50μmである、[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]金属箔の厚さが2〜20μmであり、樹脂層の厚さが1μm以上10μm未満である、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]パウダーの体積基準累積50%径が、0.05〜6.0μmである、[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]テトラフルオロエチレン系ポリマーが、テトラフルオロエチレンに基づく単位と、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン及びフルオロアルキルエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーに基づく単位とを含むポリマーである、[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]テトラフルオロエチレン系ポリマーが、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する、[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]パウダー分散液が、ポリマー状ポリオールを含む、[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]前記温度領域に金属箔を保持する時間が、30秒〜5分である、[1]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11]前記温度領域に金属箔を保持する際の雰囲気が、酸素ガスを含む雰囲気である、[1]〜[10]のいずれかに記載の製造方法。
[12]テトラフルオロエチレン系ポリマーを焼成させる際の温度が、320℃超である、[1]〜[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13]厚さが2〜20μmの金属箔の表面に厚さが1μm以上10μm未満の樹脂層を有し、前記樹脂層がテトラフルオロエチレンに基づく単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン及びフルオロアルキルエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーに基づく単位とを含むポリマーを含み、反り率が7%以下である、樹脂付金属箔。
[14]反り率が、5%以下である、[13]に記載の樹脂付金属箔。
[15]前記[1]〜[12]のいずれかに記載の製造方法で樹脂付金属箔を製造し、前記金属箔をエッチングしてパターン回路を形成する、プリント基板の製造方法。
本発明によれば、電気特性と機械的強度を具備し、プリント基板を製造するために有用な、フルオロポリマーを含む、高均質性な樹脂層を有し、反りにくい樹脂付金属箔を、効率的に製造できる。
以下の用語は、以下の意味を有する。
「パウダーのD50」は、レーザー回折・散乱法によって求められる、パウダーの体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によってパウダーの粒度分布を測定し、その粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
「パウダーのD90」は、レーザー回折・散乱法によって求められる、パウダーの体積基準累積90%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によってパウダーの粒度分布を測定し、その粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が90%となる点の粒子径である。
「ポリマーの貯蔵弾性率」は、ISO 6721−4:1994(JIS K7244−4:1999)に基づき測定される値である。
「ポリマーの融点」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した融解ピークの最大値に対応する温度である。
「樹脂付金属箔の反り率」は、樹脂付金属箔から180mm角の四角い試験片を切り出し、試験片についてJIS C6471:1995(対応国際規格IEC 249−1:1982)に規定される測定方法にしたがって測定される値である。
「樹脂付金属箔の寸法変化率」は、次のようにして求められる値である。樹脂付金属箔を150mm角で切り出し、0.3mmのドリルを用いて四隅に穴を空けて三次元測定器で穴の位置を測定する。樹脂付金属箔の金属箔をエッチングで取り除き、130℃で30分間乾燥する。四隅に空けた穴の位置を三次元測定器で測定する。エッチング前後の穴の位置の差から寸法変化率を算出する。
「算術平均粗さRa」は、JIS B0601:2013(ISO4287:1997,Amd.1:2009)に基づき測定される算術平均粗さである。Raを求める際の、粗さ曲線用の基準長さlr(カットオフ値λc)は0.8mmとした。
「耐熱性樹脂」とは、融点が280℃以上の高分子化合物、又はJIS C4003:2010(IEC 60085:2007)で規定される最高連続使用温度が121℃以上の高分子化合物を意味する。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの総称である。
本発明の製造方法は、特定のパウダー分散液を金属箔の表面に塗布し、その金属箔を特定の温度雰囲気で段階的に加熱保持して、特定のテトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、「TFE系ポリマー」とも記す。)を含む樹脂層を金属箔の表面に形成する方法である。なお、使用するパウダー分散液は、TFE系ポリマーのパウダーが粒子状に分散している分散液である。
本発明により得られる樹脂付金属箔が、均質性に優れた、TFE系ポリマーを含む樹脂層(以下、「F樹脂層」とも記す。)を有し、反りにくい理由は、必ずしも明確ではないが、以下の様に考えられる。
本発明におけるTFE系ポリマーは、所定の溶融性(260℃超の融点を有する。)と所定の弾性(0.1〜5.0MPaの貯蔵弾性率を示す温度領域を260℃以下に有する。)を有し、前記温度領域において一定の弾性状態を形成する。かかるTFE系ポリマーのパウダーを含む分散液を金属箔の表面に塗布し、前記温度領域内の温度に保持した場合、前記パウダーは、弾性に由来する粘着性により欠損しにくく、密にパッキングした被膜状態を形成すると考えられる。本発明においては、この被膜状態を形成した後に、前記温度領域超にてTFE系ポリマーを焼成してF樹脂層を形成するため、そのまま均質性が高く緻密なF樹脂層が形成され、その結果、反りにくい樹脂付金属箔が得られたと考えられる。
本発明における樹脂付金属箔は、金属箔の少なくとも一方の表面に、F樹脂層を有する。つまり、樹脂付金属箔は、金属箔の片面のみにF樹脂層を有していてもよく、金属箔の両面にF樹脂層を有していてもよい。
樹脂付金属箔の反り率は、7%以下が好ましく、5%以下が特に好ましい。反り率の下限は、通常、0%である。この場合、樹脂付金属箔をプリント基板に加工する際のハンドリング性と、得られるプリント基板の伝送特性が優れる。
樹脂付金属箔の寸法変化率は、±1%以下が好ましく、±0.2%以下が特に好ましい。この場合、樹脂付金属箔から得られるプリント基板を多層化しやすい。
本発明における金属箔の材質としては、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル合金(42合金も含む)、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金等が挙げられる。
金属箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられる。金属箔の表面には、防錆層(クロメート等の酸化物皮膜等)、耐熱層等が形成されていてもよい。
金属箔の表面の十点平均粗さは、0.2〜1.5μmが好ましい。この場合、F樹脂層との接着性が良好となり、伝送特性に優れたプリント基板が得られやすい。
金属箔の厚さは、樹脂付金属箔の用途において機能が発揮できる厚さであればよく、2μm以上が好ましく、3μm以上が特に好ましい。また、金属箔の厚さは、40μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下が特に好ましい。金属箔の厚さの具体的な態様としては、2〜40μm、2〜20μm、2〜15μm等の態様が挙げられる。
金属箔の表面はシランカップリング剤により処理されていてもよく、金属箔の表面の全体がシランカップリング剤により処理されていてもよく、金属箔の表面の一部がシランカップリング剤により処理されていてもよい。
本発明におけるF樹脂層は、本発明の製造方法により、本発明におけるパウダー分散液から形成される、TFE系ポリマーを含む樹脂層である。
F樹脂層の表面の水接触角は、70〜100°が好ましく、70〜90°が特に好ましい。前記範囲が上限以下であれば、F樹脂層と他の基材との接着性がより優れる。前記範囲が下限以上であれば、F樹脂層の電気特性(低誘電損失と低誘電率)がより優れる。
F樹脂層の厚さは、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、5μm以上が特に好ましい。また、F樹脂層の厚さは50μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm未満が特に好ましい。この範囲において、プリント基板の伝送特性と樹脂付金属箔の反り抑制とをバランスさせやすい。樹脂付金属箔が金属箔の両面にF樹脂層を有する場合、それぞれのF樹脂層の組成及び厚さは、樹脂付金属箔の反りを抑制する点から、それぞれ同じであることが好ましい。
F樹脂層の厚さの具体的な態様としては、1〜50μmが挙げられ、1〜15μm、1μm以上10μm未満、5〜15μm等の態様が挙げられる。
本発明における金属箔の厚さとF樹脂層の厚さとの好適な態様としては、前者が2〜20μmであり、後者が1μm以上10μm未満である態様が挙げられる。本発明の製造方法では、上述した通り、均質性が高く緻密なF樹脂層が形成されるため、かかる薄い構成の樹脂付金属箔でも、反りを抑制できる。
F樹脂層の比誘電率は、2.0〜3.5が好ましく、2.0〜3.0がより好ましい。この場合、F樹脂層の電気特性及び接着性の双方が優れ、低誘電率が求められるプリント基板等に樹脂付金属箔を好適に使用できる。
F樹脂層の表面のRaは、F樹脂層の厚さ未満であり、2.2〜8μmが好ましい。この範囲において、他の基板の接着性と加工性とをバランスさせやすい。
本発明におけるTFE系ポリマーを含むパウダー(以下、「Fパウダー」とも記す。)は、本発明の効果を損なわない範囲において、TFE系ポリマー以外の成分を含んでいてもよいが、TFE系ポリマーを主成分とするのが好ましい。FパウダーにおけるTFE系ポリマーの含有量は、80質量%以上が好ましく、100質量%が特に好ましい。
FパウダーのD50は、0.05〜6.0μmが好ましく、0.1〜3.0μmがより好ましく、0.2〜3.0μmが特に好ましい。この範囲において、Fパウダーの流動性と分散性が良好となり、樹脂付金属箔におけるTFE系ポリマーの電気特性(低誘電率等)や耐熱性が最も発現しやすい。
FパウダーのD90は、8μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましく、5μm以下が特に好ましい。パウダーのD90は、0.3μm以上が好ましく、0.8μm以上が特に好ましい。この範囲において、Fパウダーの流動性と分散性が良好となり、F樹脂層の電気特性(低誘電率等)や耐熱性が最も発現しやすい。
Fパウダーの疎充填嵩密度は、0.05g/mL以上が好ましく、0.08〜0.5g/mLが特に好ましい。
Fパウダーの密充填嵩密度は、0.05g/mL以上が好ましく、0.1〜0.8g/mLが特に好ましい。
Fパウダーの製造方法としては、特に限定されず、国際公開第2016/017801号の[0065]〜[0069]に記載の方法を採用できる。なお、Fパウダーは、所望のパウダーが市販されていればそれを用いてもよい。
本発明におけるTFE系ポリマーは、融点が260℃超であり、260〜320℃が好ましく、275〜320℃であるのが特に好ましく、295〜310℃であるのが最も好ましい。この場合、TFE系ポリマーが、その弾性に基づく粘着性を保持しつつ焼成されて、緻密なF樹脂層をより形成しやすい。
本発明におけるTFE系ポリマーは、0.1〜5.0MPaの貯蔵弾性率を示す温度領域を260℃以下に有する。例えば、TFEポリマーは、260℃における貯蔵弾性率が0.1〜5.0MPaである。
TFE系ポリマーが示す貯蔵弾性率は、0.2〜4.4MPaであるのが好ましく、0.5〜3.0MPaであるのが特に好ましい。また、TFE系ポリマーがかかる貯蔵弾性率を示す温度領域としては、180〜260℃の範囲が好ましく、200〜260℃の範囲が特に好ましい。この場合、前記温度領域においてFパウダーが弾性に基づく粘着性を効果的に発現しやすい。
TFE系ポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)に基づく単位(TFE単位)を含むポリマーである。TFE系ポリマーは、TFEのホモポリマーであってもよく、TFEとTFEと共重合可能な他のモノマー(以下、コモノマーとも記す。)とのコポリマーであってもよい。TFE系ポリマーは、ポリマーに含まれる全単位に対して、TFE単位を75〜100モル%含み、コモノマーに基づく単位を0〜25モル%含むのが好ましい。
TFE系ポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、TFEとエチレンのコポリマー、TFEとプロピレンのコポリマー、TFEとペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)のコポリマー(PFA)、TFEとヘキサフルオロプロピレン(HFP)のコポリマー(HFP)、TFEとフルオロアルキルエチレン(FAE)のコポリマー、TFEとクロロトリフルオロエチレンのコポリマーが挙げられる。
PAVEとしては、CF=CFOCF、CF=CFOCFCF、CF=CFOCFCFCF(PPVE)、CF=CFOCFCFCFCF、CF=CFO(CFFが挙げられる。
FAEとしては、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CF(CFH、CH=CF(CFHが挙げられる。
TFE系ポリマーの好適な態様としては、TFE単位と、PAVE、HFP及びFAEからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーに基づく単位(以下、「コモノマー単位F」とも記す。)を含むポリマーも挙げられる。
前記ポリマーは、ポリマーに含まれる全単位に対して、TFE単位を90〜99モル%含み、コモノマー単位Fを1〜10モル%含むのが好ましい。前記ポリマーは、TFE単位とコモノマー単位Fのみからなっていてもよく、さらに他の単位を含んでいてもよい。
TFE系ポリマーの好適な態様としては、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基(以下、「官能基」とも記す。)を有する、TFE単位を含むポリマー(以下、「ポリマーF1」とも記す。)も挙げられる。
官能基は、TFE系ポリマー中の単位に含まれていてもよく、ポリマーF1の主鎖の末端基に含まれていてもよい。後者のポリマーとしては、官能基を、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基として有するポリマーが挙げられる。
ポリマーF1としては、官能基を有する単位とTFE単位とを含むポリマーが好ましい。また、この場合のポリマーF1としては、さらに他の単位を含むのが好ましく、コモノマー単位Fを含むのが特に好ましい。
官能基としては、F樹脂層と金属箔の接着性の観点から、カルボニル基含有基が好ましい。カルボニル基含有基としては、カーボネート基、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、酸無水物残基(−C(O)OC(O)−)、脂肪酸残基等が挙げられ、カルボキシ基及び酸無水物残基が好ましい。
官能基を有する単位としては、官能基を有するモノマーに基づく単位が好ましく、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく単位、ヒドロキシ基を有するモノマーに基づく単位、エポキシ基を有するモノマーに基づく単位及びイソシアネート基を有するモノマーに基づく単位がより好ましく、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく単位が特に好ましい。
カルボニル基含有基を有するモノマーとしては、酸無水物残基を有する環状モノマー、カルボキシ基を有するモノマー、ビニルエステル又は(メタ)アクリレートが好ましく、酸無水物残基を有する環状モノマーが特に好ましい。
前記環状モノマーとしては、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(別称:無水ハイミック酸。以下、「NAH」とも記す。)又は無水マレイン酸が好ましい。
ポリマーF1としては、官能基を有する単位とTFE単位と、PAVE単位又はHFP単位とを含むポリマーが好ましい。かかるポリマーF1の具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載された重合体(X)が挙げられる。
ポリマーF1におけるTFE単位の割合は、ポリマーF1に含まれる全単位のうち、90〜99モル%が好ましい。
ポリマーF1におけるPAVE単位の割合は、ポリマーF1に含まれる全単位のうち、0.5〜9.97モル%が好ましい。
ポリマーF1における官能基を有する単位の割合は、ポリマーF1に含まれる全単位のうち、0.01〜3モル%が好ましい。
本発明における溶媒は、分散媒であり、25℃で液状の不活性かつFパウダーと反応しない溶媒化合物であり、パウダー分散液に含まれる溶媒の以外の成分よりも低沸点であり、加熱等によって揮発し除去できる溶媒化合物が好ましい。
溶媒化合物としては、水、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)、含窒素化合物(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等)、含硫黄化合物(ジメチルスルホキシド等)、エーテル(ジエチルエーテル、ジオキサン等)、エステル(乳酸エチル、酢酸エチル等)、ケトン(メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等)、グリコールエーテル(エチレングリコールモノイソプロピルエーテル等)、セロソルブ(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)等が挙げられる。溶媒化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒化合物としては、瞬間的に揮発しない溶媒が好ましく、沸点80〜275℃の溶媒化合物が好ましく、沸点125〜250℃の溶媒化合物が特に好ましい。この範囲において、金属箔の表面に塗布したパウダー分散液から形成されるウェット膜(溶媒を含む膜)の安定性が高い。
ウエット膜中の溶媒は、TFE系ポリマーの焼成が終了するまでに除去される。ウエット膜からの溶媒の気散消失は、前記特定の貯蔵弾性率を示す温度領域に達する前に生じてもよく、前記特定の貯蔵弾性率を示す温度領域に保持している状態で生じてもよい。場合により、TFE系ポリマーの焼成の際に生じてもよい。好ましくは、上記沸点範囲の溶媒を使用して、ウエット膜中の溶媒の少なくとも一部を、TFE系ポリマーを前記特定の貯蔵弾性率を示す温度領域に保持している状態で気散させる。
溶媒化合物としては、有機化合物が好ましく、シクロヘキサン(沸点:81℃)、2−プロパノール(沸点:82℃)、1−プロパノール(沸点:97℃)、1−ブタノール(沸点:117℃)、1−メトキシ−2−プロパノール(沸点:119℃)、N−メチルピロリドン(沸点:202℃)、γ−ブチロラクトン(沸点:204℃)、シクロヘキサノン(沸点:156℃)及びシクロペンタノン(沸点:131℃)がより好ましく、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン及びシクロペンタノンが特に好ましい。
パウダー分散液中のFパウダーの割合は、5〜60質量%が好ましく、35〜50質量%が特に好ましい。この範囲において、F樹脂層の比誘電率及び誘電正接を低く制御しやすい。また、パウダー分散液の均一分散性が高く、F樹脂層の機械的強度に優れる。
パウダー分散液中の溶媒の割合は、15〜65質量%が好ましく、25〜50質量部が特に好ましい。この範囲において、パウダー分散液の塗布性が優れ、かつ樹脂層の外観不良が起こりにくい。
本発明におけるパウダー分散液は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の材料を含んでいてもよい。他の材料は、パウダー分散液に溶解してもよく、溶解しなくてもよい。
パウダー分散剤は、パウダー分散液の分散安定性を向上させる観点から、分散剤を含むのが好ましい。分散剤としては、F樹脂層の表面性状に接着性を付与する観点から、疎水部位と親水部位を有する化合物(界面活性剤)が特に好ましい。
パウダー分散液が分散剤を含む場合、パウダー分散液中の分散剤の割合は、0.1〜30質量%が好ましく、5〜10質量部が特に好ましい。この範囲において、Fパウダーの均一分散性と、F樹脂層の表面の親水性及び電気特性とをバランスさせやすい。
本発明における分散剤としては、ポリオール、ポリオキシアルキレングリコール、ポリカプロラクタム及びポリマー状ポリオールが好ましく、ポリマー状ポリオールがより好ましい。
ポリマー状ポリオールとは、炭素−炭素不飽和二重結合を有するモノマーに基づく単位と2以上の水酸基を有するポリマーをいう。ポリマー状ポリオールとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール及びフルオロポリオールが特に好ましく、フルオロポリオールが最も好ましい。ただし、フルオロポリオールとは、TFE系ポリマーではない、水酸基とフッ素原子とを有するポリマーである。また、フルオロポリオールは、水酸基の一部が化学修飾され、変性されていてもよい。
フルオロポリオールは、ポリフルオロアルキル基又はポリフルオロアルケニル基を有する(メタ)アクリレート(以下、「(メタ)アクリレートF」とも記す。)とポリオキシアルキレンモノオール基を有する(メタ)アクリレート(以下、「(メタ)アクリレートAO」とも記す。)とのコポリマー(以下、「分散ポリマーF」とも記す。)が特に好ましい。
(メタ)アクリレートFとしては、式CH=CRC(O)O−X−Rで表される化合物が好ましい。
は、水素原子又はメチル基を示す。
は、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CHNHC(O)−、−(CHNHC(O)−又は−CHCH(CH)NHC(O)−を示す。
は、−OCF(CF)(C(CF(CF)(=C(CF)、−OC(CF)(=C(CF(CF)(CF(CF)、−OCH(CHOCHCH(CFF)2、−OCH(CHOCHCH(CFF)、−(CFF又は−(CFFを示す。
(メタ)アクリレートAOとしては、式CH=CRC(O)O−Q−OHで表される化合物が好ましい。
は、水素原子又はメチル基を示す。
は、−(CH(OCHCH−、−(CH(OCHCH(CH))−又は−(CH(OCHCHCHCH−を示す(mは1〜4の整数を、nは2〜100の整数を示し、nとしては2〜20の整数が好ましい。)。
(メタ)アクリレートFの具体例としては、CH=CHCOO(CHOCF(CF)(C(CF(CF)(=C(CF)、CH=CHCOO(CHOC(CF)(=C(CF(CF)(CF(CF)、CH=C(CH)COO(CHNHCOOCH(CHOCHCH(CFF)、CH=C(CH)COO(CHNHCOOCH(CHOCHCH(CFF)、CH=C(CH)COO(CHNHCOOCH(CHOCH(CFF)、CH=C(CH)COO(CHNHCOOCH(CHOCH(CFF)、CH=C(CH)COO(CHNHCOOCH(CHOCH(CFF)、CH=C(CH)COO(CHNHCOOCH(CHOCH(CFF)が挙げられる。
(メタ)アクリレートAOの具体例としては、CH=CHCOO(CHCHO)OH、CH=CHCOO(CHCHO)10OH、CH=CHCOO(CHCHO)12OH、CH=C(CH)COO(CHCH(CH)O)OH、CH=C(CH)COO(CHCH(CH)O)12OH、CH=C(CH)COO(CHCH(CH)O)16OHが挙げられる。
分散ポリマーFに含まれる全単位に対する(メタ)アクリレートFに基づく単位の割合は、20〜60モル%が好ましく、20〜40モル%が特に好ましい。
分散ポリマーFに含まれる全単位に対する(メタ)アクリレートAOに基づく単位の割合は、40〜80モル%が好ましく、60〜80モル%が特に好ましい。
分散ポリマーFは、(メタ)アクリレートAOに基づく単位と(メタ)アクリレートAOに基づく単位のみからなっていてもよく、さらに他の単位をさらに含んでいてもよい。
分散ポリマーFのフッ素含有量は、10〜45質量%が好ましく、15〜40質量%が特に好ましい。
分散ポリマーFは、ノニオン性であるのが好ましい。
分散ポリマーFの質量平均分子量は、2000〜80000が好ましく、6000〜20000が特に好ましい。
本発明におけるパウダー分散液は、かかる分散剤以外の他の材料を、さらに含んでいてもよい。かかる他の材料は、非硬化性樹脂であってもよく、硬化性樹脂であってもよい。
非硬化性樹脂としては、熱溶融性樹脂、非溶融性樹脂が挙げられる。熱溶融性樹脂としては、熱可塑性ポリイミド等が挙げられる。非溶融性樹脂としては、硬化性樹脂の硬化物等が挙げられる。
硬化性樹脂としては、反応性基を有するポリマー、反応性基を有するオリゴマー、低分子化合物、反応性基を有する低分子化合物等が挙げられる。反応性基としては、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。
硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸、熱硬化性アクリル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、熱硬化性ポリオレフィン樹脂、熱硬化性変性ポリフェニレンエーテル樹脂、多官能シアン酸エステル樹脂、多官能マレイミド−シアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂が挙げられる。なかでも、プリント基板用途に有用な点から、熱硬化性樹脂としては、熱硬化性ポリイミド、ポリイミド前駆体、エポキシ樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、ビスマレイミド樹脂及び熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂が好ましく、エポキシ樹脂及び熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂が特に好ましい。
エポキシ樹脂の具体例としては、ナフタレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ化合物、フェノールとフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノールのグリシジルエーテル化物、アルコールのジグリシジルエーテル化物、トリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
ビスマレイミド樹脂としては、特開平7−70315号公報に記載される、ビスフェノールA型シアン酸エステル樹脂とビスマレイミド化合物とを併用した樹脂組成物(BTレジン)、国際公開第2013/008667号に記載の発明、その背景技術に記載のものが挙げられる。
ポリアミック酸は、通常、ポリマーF1の官能基と反応しうる反応性基を有している。
ポリアミック酸を形成するジアミン、多価カルボン酸二無水物としては、例えば、特許第5766125号公報の[0020]、特許第5766125号公報の[0019]、特開2012−145676号公報の[0055]、[0057]等に記載のものが挙げられる。なかでも、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等の芳香族ジアミンと、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族多価カルボン酸二無水物との組合せからなるポリアミック酸が好ましい。
熱溶融性の樹脂としては、熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂、硬化性の樹脂の熱溶融性の硬化物が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート、熱可塑性ポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶性ポリエステル、ポリフェニレンエーテル等が挙げられ、熱可塑性ポリイミド、液晶性ポリエステル及びポリフェニレンエーテルが好ましい。
また、さらに、本発明におけるパウダー分散液に含まれ得る他の材料として、バインダー、チキソ性付与剤、消泡剤、無機フィラー、反応性アルコキシシラン、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、粘度調節剤、難燃剤等も挙げられる。
本発明におけるパウダー分散液がバインダーを含めば、F樹脂層の形成に際するFパウダーの金属箔からの欠落(粉落ち)を抑制できる。バインダーとしては、熱可塑性の有機バインダーや熱硬化性の有機バインダーが挙げられる。バインダーとしては、TFE系ポリマーを焼成させる温度領域において分解して揮発する化合物が好ましい。かかるバインダーとしては、アクリル系樹脂バインダー、セルロース系樹脂バインダー、ビニルアルコール系樹脂バインダー、ワックス系樹脂バインダー、ゼラチン等が挙げられる。バインダーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、パウダー分散液を金属箔の表面に塗布する。
塗布方法は、塗布後の金属箔の表面にパウダー分散液からなる安定したウェット膜を形成する方法であればよく、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、グラビアオフセット法、ナイフコート法、キスコート法、バーコート法、ダイコート法、ファウンテンメイヤーバー法、スロットダイコート法等が挙げられる。
また、TFE系ポリマーが0.1〜5.0MPaの貯蔵弾性率を示す温度領域に金属箔を供する前に、前記温度領域未満の温度にて金属箔を加熱して、ウェット膜の状態を調整してもよい。なお、調製は、溶媒が完全に揮発しない程度にておこなわれ、50質量%以下の溶媒を揮発させる程度に通常はおこなわれる。
本発明においては、パウダー分散液を金属箔の表面に塗布した後に、TFE系ポリマーが0.1〜5.0MPaの貯蔵弾性率を示す温度領域内の温度(以下、「保持温度」とも示す。)にて金属箔を保持する。保持温度は、雰囲気の温度を示す。
保持は、1段階で実施してもよく、異なる温度にて2段階以上で実施してもよい。
保持の方法としては、オーブンを用いる方法、通風乾燥炉を用いる方法、赤外線等の熱線を照射する方法等が挙げられる。
保持における雰囲気は、常圧下、減圧下のいずれの状態であってよい。また、前記保持における雰囲気は、酸化性ガス(酸素ガス等。)雰囲気、還元性ガス(水素ガス等。)雰囲気、不活性ガス(ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等。)雰囲気のいずれであってもよい。
保持における雰囲気は、F樹脂層の接着性が向上する観点から、酸素ガスを含む雰囲気であることが好ましい。
酸素ガスを含む雰囲気における酸素ガス濃度(体積基準)は、1×10〜3×10ppmが好ましく、0.5×10〜1×10ppmが特に好ましい。この範囲において、F樹脂層の接着性と金属箔の酸化抑制とをバランスさせやすい。
保持温度は、150〜260℃が好ましく、200〜260℃が特に好ましい。
保持温度に保持する時間は、0.1〜10分間が好ましく、0.5〜5分間が特に好ましい。
本発明においては、さらに、前記温度領域超の温度(以下、「焼成温度」とも記す。)にてTFE系ポリマーを焼成させて金属箔の表面にF樹脂層を形成する。焼成温度は、雰囲気の温度を示す。本発明においては、Fパウダーが密にパッキングした状態でTFE系ポリマーの融着が進行するため、均質性に優れるF樹脂層が形成され、樹脂付金属箔が反りにくい。なお、パウダー分散液が熱溶融性樹脂を含めばTFE系ポリマーと溶解性樹脂との混合物からなるF樹脂層が形成され、パウダー分散液が熱硬化性樹脂を含めばTFE系ポリマーと熱硬化性樹脂の硬化物とからなるF樹脂層が形成される。
加熱の方法としては、オーブンを用いる方法、通風乾燥炉を用いる方法、赤外線等の熱線を照射する方法等が挙げられる。F樹脂層の表面の平滑性を高めるために、加熱板、加熱ロール等で加圧してもよい。加熱の方法としては、短時間で焼成でき、遠赤外線炉が比較的コンパクトである点から、遠赤外線を照射する方法が好ましい。加熱の方法は、赤外線加熱と熱風加熱とを組み合わせてもよい。
遠赤外線の有効波長帯は、TFE系ポリマーの均質な融着を促す点から、2〜20μmが好ましく、3〜7μmがより好ましい。
焼成における雰囲気は、常圧下、減圧下のいずれの状態であってよい。また、前記焼成における雰囲気は、酸化性ガス(酸素ガス等。)雰囲気、還元性ガス(水素ガス等。)雰囲気、不活性ガス(ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等。)雰囲気のいずれであってもよく、金属箔、形成されるF樹脂層それぞれの酸化劣化を抑制する観点から、還元性ガス雰囲気又は不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
焼成における雰囲気としては、不活性ガスから構成され酸素ガス濃度が低いガス雰囲気が好ましく、窒素ガスから構成され酸素ガス濃度(体積基準)が500ppm未満のガス雰囲気が好ましい。酸素ガス濃度(体積基準)は、300ppm以下が特に好ましい。また、酸素ガス濃度(体積基準)は、通常、1ppm以上である。
焼成温度は、320℃超が好ましく、330〜380℃が特に好ましい。この場合、TFE系ポリマーが、緻密なF樹脂層をより形成しやすい。
焼成温度に保持する時間は、30秒〜5分間が好ましく、1〜2分間が特に好ましい。
樹脂付金属箔における樹脂層が従来の絶縁材料(ポリイミド等の熱硬化性樹脂の硬化物。)の場合、熱硬化性樹脂を硬化させるために長時間の加熱が必要である。一方、本発明においては、TFE系ポリマーの融着により短時間の加熱で樹脂層を形成できる。また、パウダー分散液が熱硬化性樹脂を含む場合、焼成温度を低くできる。このように、本発明の製造方法は、樹脂付金属箔に樹脂層を形成する際の金属箔への熱負荷が小さい方法であり、金属箔へのダメージが小さい方法である。
本発明における樹脂付金属箔には、F樹脂層の線膨張係数を制御したり、F樹脂層の接着性をさらに改善したりするために、F樹脂層の表面に表面処理をしてもよい。
F樹脂層の表面にする表面処理方法としては、アニール処理、コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理、真空プラズマ処理、UVオゾン処理、エキシマ処理、ケミカルエッチング、シランカップリング処理、微粗面化処理等が挙げられる。
アニール処理における温度は、80〜190℃が好ましく、120〜180℃が特に好ましい。
アニール処理における圧力は、0.001〜0.030MPaが好ましく、0.005〜0.015MPaが特に好ましい。
アニール処理の時間は、10〜300分間が好ましく、30〜120分間が特に好ましい。
プラズマ処理におけるプラズマ照射装置としては、高周波誘導方式、容量結合型電極方式、コロナ放電電極−プラズマジェット方式、平行平板型、リモートプラズマ型、大気圧プラズマ型、ICP型高密度プラズマ型等が挙げられる。
プラズマ処理に用いるガスとしては、酸素ガス、窒素ガス、希ガス(アルゴン等)、水素ガス、アンモニアガス等が挙げられ、希ガス又は窒素ガスが好ましい。プラズマ処理に用いるガスの具体例としては、アルゴンガス、水素ガスと窒素ガスの混合ガス、水素ガスと窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスが挙げられる。
プラズマ処理における雰囲気としては、希ガス又は窒素ガスの体積分率が70体積%以上の雰囲気が好ましく、100体積%の雰囲気が特に好ましい。この範囲において、F樹脂層の表面のRaを2.0μm以下に調整して、F樹脂層の表面に微細凹凸を形成しやすい。
本発明で得られる樹脂付金属箔は、F樹脂層の表面が均質性に優れ、反りにくいため、他の基板と容易に積層できる。
他の基板としては、耐熱性樹脂フィルム、繊維強化樹脂板の前駆体であるプリプレグ、耐熱性樹脂フィルム層を有する積層体、プリプレグ層を有する積層体等が挙げられる。
プリプレグは、強化繊維(ガラス繊維、炭素繊維等。)の基材(トウ、織布等。)に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含浸させたシート状の基板である。
耐熱性樹脂フィルムは、耐熱性樹脂の1種以上を含むフィルムであり、単層フィルムであっても多層フィルムであってもよい。
耐熱性樹脂としては、ポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶性ポリエステル等が挙げられる。
本発明における樹脂付金属箔のF樹脂層の表面に他の基材を積層する方法としては、樹脂付金属箔と他の基板とを熱プレスする方法が挙げられる。
他の基板がプリプレグの場合のプレス温度は、TFE系ポリマーの融点以下が好ましく、120〜300℃がより好ましく、160〜220℃が特に好ましい。この範囲において、プリプレグの熱劣化を抑制しつつ、F樹脂層とプリプレグを強固に接着できる。
基板が耐熱性樹脂フィルムの場合のプレス温度は、310〜400℃が好ましい。この範囲において、耐熱性樹脂フィルムの熱劣化を抑制しつつ、F樹脂層と耐熱性樹脂フィルムを強固に接着できる。
熱プレスは、減圧雰囲気下で行うことが好ましく、20kPa以下の真空度で行うのが特に好ましい。この範囲において、積層体におけるF樹脂層、基板、金属箔それぞれの界面への気泡混入が抑制でき、酸化による劣化を抑制できる。
また、熱プレス時は前記真空度に到達した後に昇温することが好ましい。前記真空度に到達する前に昇温すると、F樹脂層が軟化した状態、すなわち一定程度の流動性、密着性がある状態にて圧着されてしまい、気泡の原因となる。
熱プレスにおける圧力は、0.2MPa以上が好ましい。また、圧力の上限は、10MPa以下が好ましい。この範囲において、基板の破損を抑制しつつ、F樹脂層と基板とを強固に密着できる。
本発明における樹脂付金属箔やその積層体は、フレキシブル銅張積層板やリジッド銅張積層板として、プリント基板の製造に使用できる。
例えば、本発明における樹脂付金属箔の金属箔をエッチング等によって所定のパターンの導体回路(パターン回路)に加工する方法や、本発明における樹脂付金属箔を電解めっき法(セミアディティブ法(SAP法)、モディファイドセミアディティブ法(MSAP法)等。)によってパターン回路に加工する方法を使用すれば、本発明における樹脂付金属箔からプリント基板を製造できる。
プリント基板の製造においては、パターン回路を形成した後に、パターン回路上に層間絶縁膜を形成し、層間絶縁膜上にさらにパターン回路を形成してもよい。層間絶縁膜は、例えば、本発明におけるパウダー分散液によって形成できる。
プリント基板の製造においては、パターン回路上にソルダーレジストを積層してもよい。ソルダーレジストは、例えば、本発明におけるパウダー分散液によって形成できる。
プリント基板の製造においては、パターン回路上にカバーレイフィルムを積層してもよい。カバーレイフィルムは、例えば、本発明におけるパウダー分散液によって形成できる。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
各種測定方法を以下に示す。
<ポリマーの融点>
示差走査熱量計(セイコーインスツル社製、DSC−7020)を用い、TFE系ポリマーを10℃/分の速度で昇温させて測定した。
<ポリマーの貯蔵弾性率>
ISO 6721−4:1994(JIS K7244−4:1999)に基づき、動的粘弾性測定装置(DMS6100、SIIナノテクノロジー社製。)を用い、周波数10Hz、静的力0.98N、動的変位0.035%の条件にて、2℃/分の速度で、温度を20℃から上昇させ、260℃における貯蔵弾性率を測定した。
<パウダーのD50及びD90>
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA−920測定器)を用い、パウダーを水中に分散させて測定した。
<樹脂層の均質性>
光照射した樹脂層を斜め上方から目視し、下記基準で評価した。
○:模様が確認されない。
△:ゆず肌の模様が確認される。
×:ゆず肌の模様が確認され、端部を中心に樹脂欠落が確認される。
<樹脂付金属箔の反り率>
樹脂付金属箔から180mm角の四角い試験片を切り出し、試験片についてJIS C6471:1995に規定される測定方法にしたがって測定した。
○:樹脂付金属箔の反り率が、5%以下である。
△:樹脂付金属箔の反り率が、5%超7%以下である。
×:樹脂付金属箔の反り率が、7%超である。
[TFE系ポリマー]
ポリマー1:TFEに基づく単位、NAHに基づく単位及びPPVEに基づく単位を、この順に97.9モル%、0.1モル%、2.0モル%含むコポリマーであり、融点が300℃であり、260℃における貯蔵弾性率が1.1MPaである、ポリマー。
ポリマー2:TFEに基づく単位及びPPVEに基づく単位を、この順に98モル%、2モル%含むコポリマーであり、融点310℃であり、260℃における貯蔵弾性率が4.8MPaである、ポリマー。
ポリマー3:TFEに基づく単位及びHFPに基づく単位を、この順に82モル%、18モル%含むコポリマーであり、融点265℃であり、260℃における貯蔵弾性率が0.5MPaである、ポリマー。
ポリマー4:TFEに基づく単位を99.5モル%以上含むポリマーであり、融点320℃超であり、260℃における貯蔵弾性率が5.0MPa超であるポリマー。
[分散剤]
分散剤1:ペルフルオロアルケニル基を有するアクリレートとポリオキシエチレン基及びアルコール性水酸基を有するアクリレートのコポリマー(ノニオン性界面活性剤)。
[金属箔]
銅箔1:厚さ12μmの低粗化銅箔(表面の十点平均粗さ0.6μm)。
[パウダー]
パウダー1:D50が1.7μm、D90が3.8μmのポリマー1のパウダー(疎充填嵩密度0.269g/mL、密充填嵩密度0.315g/mL。)。
パウダー2:D50が2.4μm、D90が5.5μmのポリマー2のパウダー。
パウダー3:D50が3.1μm、D90が5.9μmのポリマー3のパウダー。
パウダー4:D50が0.3μm、D90が0.6μmのポリマー4のパウダー。
[例1]
パウダー1の50質量部、分散剤1の5質量部、N−メチルピロリドンの45質量部を混合して分散液1を調製した。
銅箔1の表面にダイコーターを用いて分散液1を塗布し、銅箔1を通風乾燥炉(雰囲気温度:260℃、雰囲気ガス:酸素ガス濃度8000ppmの窒素ガス。)に通して1分間保持し、遠赤外線炉(温度:340℃、ガス:酸素ガス濃度100ppm未満の窒素ガス。)にさらに通して1分間保持し、銅箔1の表面にポリマー1の樹脂層(厚さ5μm)を有する樹脂付銅箔を得た。樹脂層の均質性、樹脂付金属箔の反り率に関する評価結果を、下表1に示す。
[例2〜5]
パウダー、通風乾燥炉の雰囲気温度を変更する以外は、例1と同様にして樹脂付銅箔を得て、それぞれの評価をした。結果をまとめて下表1に示す。
Figure 2019230568
本発明の製造方法は、フルオロポリマーを含む、高均質性な樹脂層を有し、反りにくい樹脂付金属箔の製造に適した方法であり、プリント基板等の製造に有用である。
なお、2018年05月30日に出願された日本特許出願2018−104010号の明細書、特許請求の範囲及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。

Claims (15)

  1. 金属箔の表面に樹脂層を有する樹脂付金属箔の製造方法であり、0.1〜5.0MPaの貯蔵弾性率を示す温度領域を260℃以下に有し、かつ融点が260℃超のテトラフルオロエチレン系ポリマーのパウダーと溶媒とを含むパウダー分散液を金属箔の表面に塗布し、前記温度領域内の温度に金属箔を保持し、さらに前記温度領域超の温度にてテトラフルオロエチレン系ポリマーを焼成させて金属箔の表面にテトラフルオロエチレン系ポリマーを含む樹脂層を形成する、樹脂付金属箔の製造方法。
  2. 樹脂付金属箔の反り率が、7%以下である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 金属箔の厚さが、2〜40μmである、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 樹脂層の厚さが、1〜50μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 金属箔の厚さが2〜20μmであり、樹脂層の厚さが1μm以上10μm未満である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. パウダーの体積基準累積50%径が、0.05〜6.0μmである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. テトラフルオロエチレン系ポリマーが、テトラフルオロエチレンに基づく単位と、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン及びフルオロアルキルエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーに基づく単位とを含むポリマーである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. テトラフルオロエチレン系ポリマーが、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. パウダー分散液が、ポリマー状ポリオールを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
  10. 前記温度領域に金属箔を保持する時間が、30秒〜5分である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
  11. 前記温度領域に金属箔を保持する際の雰囲気が、酸素ガスを含む雰囲気である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
  12. テトラフルオロエチレン系ポリマーを焼成させる際の温度が、320℃超である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
  13. 厚さが2〜20μmの金属箔の表面に厚さが1μm以上10μm未満の樹脂層を有し、前記樹脂層がテトラフルオロエチレンに基づく単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン及びフルオロアルキルエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーに基づく単位とを含むポリマーを含み、反り率が7%以下である、樹脂付金属箔。
  14. 反り率が、5%以下である、請求項13に記載の樹脂付金属箔。
  15. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造方法で樹脂付金属箔を製造し、前記金属箔をエッチングしてパターン回路を形成する、プリント基板の製造方法。
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