JP2020083990A - 複合体の製造方法及び複合体 - Google Patents
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Abstract
Description
近年、電子機器の小型化や高密度化の進捗により、プリント配線板に用いられるプリプレグには薄膜化が要求されている。しかし、ガラスクロスとフッ素樹脂フィルムとを熱圧着する方法で得られるプリプレグは、フィルムの厚さにより薄膜化には限界がある。フッ素樹脂分散液をガラスクロスに含浸させる方法で得られるプリプレグは、フッ素樹脂をガラスクロスに強固に固定し難く、機械的強度と電気特性とを具備して薄膜化するのが困難である。
しかし、開繊状態のガラスクロスは、その空隙率が小さいため、テトラフルオロエチレン系ポリマーとの接触面積を充分に確保できず、ガラス繊維とテトラフルオロエチレン系ポリマーとの親和性の低さも相まって、テトラフルオロエチレン系ポリマーを強固に固定するのが困難であった。
そこで、本発明者らは、更に検討した結果、開繊状態のガラスクロスへアミノ基の導入し、さらに酸素原子を含有するテトラフルオロエチレン系ポリマーを含むパウダーが分散した分散液を使用すれば、テトラフルオロエチレン系ポリマーがガラスクロスに強固に効率よく固定できる事実を見出し、本発明を完成するに至った。
<1>アミノ基が導入された開繊状態のガラスクロスに、酸素原子を含有するテトラフルオロエチレン系ポリマーを含むパウダーが溶媒に分散した分散液を含浸させ、前記分散液を加熱して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを前記ガラスクロスに固定する、複合体の製造方法。
<2>前記アミノ基が導入された開繊状態のガラスクロスを、アミノ基を有するシランカップリング剤の開繊状態のガラスクロスへの接触処理、又は含窒素雰囲気中での開繊状態のガラスクロスのプラズマ処理により得る、上記<1>の製造方法。
<3>前記ガラスクロスの空隙率が、10%以下である、上記<1>又は<2>に記載の製造方法。
<4>前記ガラスクロスを構成するガラス繊維の平均直径が、3〜8μmである、前記<1>〜<3>のいずれかの製造方法。
<5>前記分散液の含浸が、前記ガラスクロスの前記分散液中への浸漬により行われる、前記<1>〜<4>のいずれかの製造方法。
<6>前記分散液の加熱が、前記溶媒の沸点以上の温度にて行われる、前記<1>〜<5>のいずれかの製造方法。
<7>前記パウダーの体積基準累積50%径が、0.05〜6μmである、前記<1>〜<6>のいずれかの製造方法。
<8>前記酸素原子を含有するテトラフルオロエチレン系ポリマーが、該ポリマーに含まれる全単位に対して、テトラフルオロエチレンに基づく単位を99.5モル%以上含む、前記<1>〜<7>のいずれかの製造方法。
<9>前記酸素原子を含有するテトラフルオロエチレン系ポリマーが、該ポリマーに含まれる全単位に対して、テトラフルオロエチレン以外のコモノマーに基づく単位を0.5モル%超含む、前記<1>〜<7>のいずれかの製造方法。
<10>前記酸素原子を含有するテトラフルオロエチレン系ポリマーが、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基及びオキセタニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーである、前記<1>〜<9>のいずれかの製造方法。
<11>前記分散液が、さらにポリテトラフルオロエチレンを含むパウダーを含む、前記<1>〜<10>のいずれかの製造方法。
<12>アミノ基が導入された開繊状態のガラスクロスと、
該ガラスクロスに固定された、酸素原子を含有するテトラフルオロエチレン系ポリマーとを有する、複合体。
<13>当該複合体の平均厚さが、20μm以下である、前記<12>の複合体。
<14>当該複合体の繊膨張係数が、20ppm/℃以下である、前記<12>又は<13>に記載の複合体。
<15>当該複合体の誘電正接(10GHz)が、3.5以下である、前記<12>〜<14>のいずれかの複合体。
<16>当該複合体の吸水率が、0.01%以下である、前記<12>〜<15>のいずれかの複合体。
「パウダーのD50」は、レーザー回折・散乱法によってパウダーの粒度分布を測定し、パウダーを構成する粒子(以下、「パウダー粒子」とも記す。)の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径(体積基準累積50%径)である。
「パウダーのD90」は、レーザー回折・散乱法によってパウダーの粒度分布を測定し、パウダー粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が90%となる点の粒子径(体積基準累積90%径)である。
つまり、パウダーのD50及びD90は、それぞれ、パウダー粒子の体積基準累積50%径及び体積基準累積90%径である。
「ポリマーの溶融粘度」は、ASTM D 1238に準拠し、フローテスター及び2Φ−8Lのダイを用い、予め測定温度にて5分間加熱しておいたポリマーの試料(2g)を0.7MPaの荷重にて測定温度に保持して測定した値である。
「粘度」は、B型粘度計を用いて、室温下(25℃)で回転数が30rpmの条件下で測定される値である。測定を3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
ポリマーにおける「単位」は、重合反応によってモノマーから直接形成された原子団であってもよく、重合反応によって得られたポリマーを所定の方法で処理して、構造の一部が変換された原子団であってもよい。
「(メタ)アクリロイルオキシ基」は、アクリロイルオキシ基とメタクリロイルオキシ基の総称である。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの総称である。
「重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」とも記す。)により測定された標準ポリスチレン換算値である。
「ガラスクロスの空隙率」は、ガラスクロスの見掛密度とガラスクロスの真密度とに基づいて、計算式:100−[100×(見掛密度)/(真密度)]によって算出される値(%)である。
したがって、かかる製造方法により得られる本発明の複合体は、アミノ基が導入された開繊ガラスクロスと、この開繊ガラスクロスに固定されたFポリマーとを有する。
また、開繊ガラスクロスは薄いため、複合体全体としての薄型化にも寄与する。
以上のような効果は、後述する本発明の好ましい態様において、顕著に発現する。
ガラス繊維は、無機系ガラス材料で構成されている。無機系ガラス材料としては、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Tガラス、Dガラス、NEガラス、クオーツ、低誘電率ガラス、高誘電率ガラスが挙げられる。
開繊処理としては、ガラスクロスをローラ間のニップに通過させる方法、ガラスクロスに対してウォータージェットを噴射する方法、ガラスクロスに対してエアージェットを噴射する方法、ガラスクロスをニードルパンチする方法が挙げられる。
ガラス繊維の平均直径は、3〜8μmが好ましく、3.4〜5μmがより好ましい。かかる平均直径のガラス繊維で構成されるガラスクロスであれば、より低い空隙率の開繊ガラスクロスにでき、更なる薄型化が図れる。
また、1本のガラスヤーンに含まれるガラス繊維の本数は、35〜70本が好ましく、35〜60本がより好ましく、35〜55本がさらに好ましい。
アミノ基が導入された開繊ガラスクロスは、アミノ基を有するシランカップリング剤の開繊ガラスクロスへの接触処理、又は含窒素雰囲気中での開繊ガラスクロスのプラズマ処理により得るのが好ましい。これらの方法によれば、アミノ基を開繊ガラスクロスに比較的短時間で効果的に導入できる。中でも、高価な設備を必要とせず、アミノ基の導入ができるため、前者の方法がより好ましく用いられる。
含窒素雰囲気としては、窒素ガス、アンモニアガス、これらのガスと希ガス(アルゴンガス、ヘリウムガス)との混合ガスが挙げられる。これらの含窒素雰囲気(特に、アンモニアガス雰囲気)中でプラズマ処理を行えば、アミノ基が開繊ガラスクロスに円滑に導入される。
プラズマ処理においては、電極間ギャップ、装置の出力等を調節して発生する電子のエネルギー(1〜10eV程度)を制御し、処理時間を設定する。
プラズマ処理の処理時間は、0.1〜60分が好ましく、1〜40分がより好ましく、2分〜30分がさらに好ましい。
加熱の際は、分散液が含侵された開繊ガラスクロスを溶媒の揮発温度で保持して、分散液を乾燥させた後、乾燥物を溶媒の揮発温度を上回る温度で保持して、パウダーを焼成するのが好ましい。
具体的には、分散液が含侵された開繊ガラスクロスを溶媒の沸点以上の温度にて保持した後に、パウダーを焼成するのが好ましい。
「溶媒の揮発温度」は、溶媒の沸点±50℃が好ましく、溶媒の沸点以上の温度がより好ましく、溶媒の沸点+50℃以下の温度がさらに好ましい。乾燥時の温度は、乾燥雰囲気の温度を意味する。
乾燥時に、溶媒は、必ずしも完全に揮発させる必要はなく、保持後の層形状が安定する程度まで揮発させればよい。具体的には、揮発させるべき溶媒の量は、分散液中に含まれる溶媒のうちの50質量%以上が好ましい。
乾燥の方法としては、オーブンを用いる方法、通風乾燥炉を用いる方法、赤外線等の熱線を照射する方法が挙げられる。
乾燥は、常圧下および減圧下のいずれの状態で行ってもよい。
また、乾燥雰囲気は、酸化性ガス雰囲気(酸素ガス等)、還元性ガス雰囲気(水素ガス等)、不活性ガス雰囲気(ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等)のいずれであってもよい。
乾燥温度は、50〜280℃が好ましく、120〜260℃がより好ましい。乾燥時間は、0.1〜30分間が好ましく、0.5〜20分間がより好ましい。
以上のような条件で分散液を乾燥すれば、高い生産性を維持しつつ、複合体を好適に製造できる。
焼成の方法としては、パウダーを短時間で焼成でき、比較的コンパクトなサイズであるため、遠赤外線を照射する方法が好ましい。また、焼成の方法としては、赤外線加熱と熱風加熱とを組み合わせた方法でもよい。
遠赤外線の有効波長帯は、パウダーの均一な焼成を促すため、2〜20μmが好ましく、3〜7μmがより好ましい。
なお、得られる複合体の表面の平滑性を高めるために、加熱板、加熱ロール等で分散液の乾燥物を加圧してもよい。
焼成温度は、Fポリマーの種類に応じて設定され、180℃〜400℃が好ましく、200〜380℃がより好ましく、220℃〜370℃がさらに好ましい。焼成温度は、焼成雰囲気の温度を意味する。
焼成時間は、30秒〜30分間が好ましく、1〜15分間がより好ましい。
かかる条件でパウダーを焼成すれば、パウダーの焼成を促進させ、複合体の生産性を高めるとともに、Fポリマーの分解によるフッ化水素酸の発生を抑制し易い。
パウダーの疎充填嵩密度は、0.05g/mL以上が好ましく、0.08〜0.5g/mLがより好ましい。パウダーの密充填嵩密度は、0.05g/mL以上が好ましく、0.1〜0.8g/mLがより好ましい。疎充填嵩密度又は密充填嵩密度が上記範囲にある場合、パウダーのハンドリング性が優れる。
上記樹脂としては、芳香族ポリエステル、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシドが挙げられる。
Fポリマーとしては、TFE単位からなる酸素原子を含有するホモポリマー(以下、「変性PTFE」とも記す。)、TFE単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(以下、「PAVE」とも記す。)に基づく単位(以下、「PAVE単位」とも記す。)とを含むコポリマーが挙げられる。
PAVEとしては、CF2=CFOCF3、CF2=CFOCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF3(以下、「PPVE」とも記す。)、CF2=CFOCF2CF2CF2CF3、CF2=CFO(CF2)8Fが挙げられ、PPVEが好ましい。
また、かかるポリマーの380℃における溶融粘度は、1×102〜1×108Pa・sが好ましく、1×103〜1×106Pa・sがより好ましい。
変性PTFEが含有する酸素原子は、極微量含まれるTFE単位以外の他の単位に含まれるか、PTFEをコロナ処理、プラズマ処理、放射線処理又は電子線処理することにより導入されるか、酸素原子を含むポリマー末端を形成するラジカル開始剤又は連鎖移動剤の存在下にTFEを重合させて導入されるのが好ましい。
低分子量のPTFEは、高分子量のPTFE(溶融粘度が1×109〜1×1010Pa・s程度)に放射線を照射して得られるPTFE(国際公開第2018/026012号、国際公開第2018/026017号等に記載のポリマー)であってもよく、TFEを重合してPTFEを製造する際に連鎖移動剤を用いて得られるPTFE(特開2009−1745号公報、国際公開第2010/114033号、特開2015−232082号公報等に記載のポリマー)であってもよく、コア部分とシェル部分からなるコア−シェル構造を有するポリマーであって、シェル部分のみが上記溶融粘度を有するPTFE(特表2005−527652号公報、国際公開第2016/170918号、特開平09−087334号公報等に記載のポリマー)であってもよい。
低分子量のPTFEの標準比重(ASTM D4895−04に準拠して測定される比重)は、2.14〜2.22が好ましく、2.16〜2.20がより好ましい。
Fポリマーは、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基及びオキセタニル基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基(以下、「極性官能基」とも記す。)を有するのが好ましい。すなわち、Fポリマーは、上記極性官能基として酸素原子を含有するのが好ましい。かかる極性官能基として酸素原子を含有するFポリマーは、ガラスクロスに導入されたアミノ基とより高度に密着し易い。その結果、F層とアミノ基が導入されたガラスクロスとの密着性がより向上する。
極性官能基は、ヒドロキシ基又はカルボニル基含有基が好ましく、カルボニル含有基がより好ましく、カーボネート基、カルボキシ基、ハロホルミル基、アミド基、アルコキシカルボニル基又は酸無水物残基がより好ましく、カルボキシ基又は酸無水物残基がさらに好ましい。
Fポリマーは、TFE単位と、PAVE単位と、極性官能基を有する単位とを含むポリマーが好ましい。
極性官能基を有するモノマーとしては、ヒドロキシ基又はカルボニル基含有基を有するモノマーが好ましく、酸無水物残基を有するモノマー又はカルボキシ基を有するモノマーがより好ましく、酸無水物残基を有する環状モノマーが特に好ましい。
環状モノマーとしては、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(別称:無水ハイミック酸;以下、「NAH」とも記す。)又は無水マレイン酸が挙げられ、NAHが好ましい。
この場合、Fポリマーの融点は、250〜380℃が好ましく、280〜350℃がより好ましい。
かかるFポリマーの具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載のポリマーが挙げられる。
溶媒は、水、アミド、アルコール、スルホキシド、エステル、ケトン又はグリコールエーテルが好ましく、水、ケトン又はアミドがより好ましく、ケトン又はアミドがさらに好ましい。溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒の具体例としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、ジオキサン、乳酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、セロソルブ(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)が挙げられる。
溶媒は、浸漬の際の開繊ガラスクロスとFポリマーとの濡れ性を増し、開繊ガラスクロスに導入されたアミノ基とFポリマーが含有する酸素原子とをより良好に相互作用させる観点から、極性溶媒が好ましく、水、アミド又はケトンが好ましく、水、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキサノン又はメチルエチルケトンがより好ましい。
フッ素系分散剤は、フッ素原子を含有する疎水部位と親水部位とを有する化合物(界面活性剤)が好ましく、フルオロポリオール、フルオロシリコーン及びフルオロポリエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましく、フルオロポリオールがさらに好ましい。
また、フッ素系分散剤は、ノニオン性のポリマー状化合物が好ましい。
かかるフッ素系分散剤は、上記溶媒との相互作用が高く、よって分散液の塗膜形成性(チキソ比、接着性、透明性等)が向上し易い。
フルオロポリオールとしては、エチレン性不飽和モノマーに由来する炭素鎖からなる主鎖と、この主鎖から分岐する側鎖として、含フッ素炭化水素基と水酸基とを有する化合物が挙げられる。ここで、含フッ素炭化水素基は、複数(2又は3)の1価含フッ素炭化水素基が結合した3級炭素原子を有する基が好ましい。
式(f):CH2=CRfC(O)O−Xf−Zf
Rfは、水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。
Xfは、アルキレン基、オキシアルキレン基又はアルキレンアミド基を示す。
Zfは、ペルフルオロアルキル基又はペルフルオロアルケニル基を示す。
式(d):CH2=CRdC(O)O−Xd1−Xd2−OH
Rdは、水素原子又はメチル基を示す。
Xd1は、アルキレン基を示す。
Xd2は、オキシアルキレン基を示す。
フルオロポリオールに含まれる全単位に対する、含水酸基(メタ)アクリレートに基づく単位の量は、40〜80モル%が好ましく、60〜80モル%がより好ましい。
フルオロポリオールに含まれる含フッ素(メタ)アクリレートに基づく単位の量に対する含水酸基(メタ)アクリレートに基づく単位の量の比率は、1〜5が好ましく、1〜2がより好ましい。
フルオロポリオールのフッ素含有量は、10〜45質量%が好ましく、15〜40質量%がより好ましい。
また、フルオロポリオールの重量平均分子量は、2000〜80000が好ましく、6000〜20000がより好ましい。
また、フルオロポリエーテルとしては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの水素原子の一部がフッ素原子に置換された化合物が挙げられる。なお、フルオロポリエーテルには、上記化合物のモノオール体も包含される。
他のFポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレンとテトラフルオロエチレンのコポリマー(ETFE)が挙げられる。
この場合、Fポリマーと他のFポリマーとの比率は、質量比で1:10〜1:30が好ましく、1:15〜1:25がより好ましい。このように比較的多量の他のFポリマーを含んでも、Fポリマーを介して、開繊ガラスクロスに充分に付着できる。このように、安価に入手可能な他のFポリマーを使用すれば、複合体の製造コストを削減できる。
かかる他の材料は、非硬化性樹脂であってもよく、硬化性樹脂であってもよい。
非硬化性樹脂としては、熱溶融性樹脂、非溶融性樹脂が挙げられる。熱溶融性樹脂としては、熱可塑性ポリイミドが挙げられる。非溶融性樹脂としては、硬化性樹脂の硬化物等が挙げられる。
硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、多官能シアン酸エステル樹脂、多官能マレイミド−シアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラニン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂が挙げられる。
ビスマレイミド樹脂としては、特開平7−70315号公報に記載される樹脂組成物(BTレジン)、国際公開第2013/008667号に記載される樹脂が挙げられる。
ポリアミック酸は、通常、Fポリマーの官能基と反応し得る反応性基を有している。
ポリアミック酸を形成するジアミン、多価カルボン酸二無水物としては、特許第5766125号公報の[0020]、特許第5766125号公報の[0019]、特開2012−145676号公報の[0055]、[0057]等に記載の化合物が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート、熱可塑性ポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶性ポリエステル、ポリフェニレンエーテルが挙げられ、熱可塑性ポリイミド、液晶性ポリエステル又はポリフェニレンエーテルが好ましい。
また、かかる他の材料としては、チキソ性付与剤、消泡剤、無機フィラー、反応性アルコキシシラン、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、粘度調節剤、難燃剤も挙げられる。
本発明における分散液のチキソ比(η1/η2)は、1.0〜2.2が好ましく、1.4〜2.2がより好ましく、1.5〜2.0がさらに好ましい。この場合、分散液の分散性に優れるだけでなく、F層の均質性が向上し易い。なお、チキソ比(η1/η2)は、回転数が30rpmの条件で測定される分散液の粘度η1を、回転数が60rpmの条件で測定される分散液の粘度η2で除して算出される。
複合体の平均厚さは、20μm以下が好ましく、10〜20μmがより好ましく、15〜18μmがさらに好ましい。上記平均厚さの複合体は、充分に薄型化されていると言える。したがって、かかる複合体を使用して製造されるプリント配線板、積層基板等の電子部品も薄型化できる。
複合体の誘電正接は、3.5以下が好ましく、3以下がより好ましい。上記範囲の誘電正接の複合体を使用すれば、電気特性に優れる電子部品が得られる。誘電正接の下限値は、通常、1.5である。なお、誘電正接は10GHzにおける誘電正接である。
複合体の吸水率は、0.01%以下が好ましい。このような低吸水率の複合体を使用すれば、吸湿により電気特性が低下し難い電子部品が得られる。吸水率の下限値は、0%である。
金属層を構成する金属としては、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル合金(42合金も含む)、アルミニウム、アルミニウム合金が挙げられる。
かかる金属積層板は、複合体と金属箔とを熱プレス法等によって圧着する方法、複合体の表面に気相成膜法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等)により金属を蒸着する方法を使用して製造できる。すなわち、金属層は、金属箔からなる層又は金属蒸着膜で構成される。
金属箔としては、圧延銅箔、電解銅箔が挙げられる。金属箔の表面には、防錆層(酸化被膜等)、耐熱層等が形成されてもよい。また、複合体との密着性を向上させるために、金属箔の表面をカップリング剤等で処理してもよい。
なお、金属層の厚さは、金属積層板の用途において、その機能を充分に発揮できるサイズであればよい。
本発明における複合体では、F層の開繊ガラスクロスの両面側に位置する2つの部分の厚さが互いにほぼ等しくても(すなわち、開繊ガラスクロスが複合体の厚さ方向の中央付近に位置しても)よく、2つの部分の厚さが互いに異なっていても(すなわち、開繊ガラスクロスが複合体の厚さ方向に沿って偏在しても)よい。後者の場合、開繊ガラスクロスの影響により、F層の薄い側の部分が厚い側の部分より剛性が高い。このため、金属積層板を製造する際に、F層の薄い側の部分の表面に金属層を設けるようにすれば、F層に変形が生じ難く、金属層と複合体との界面の凹凸を小さくし易い。
また、開繊ガラスクロスの両面側に付与する分散液に含まれるパウダーのD50を異ならせてもよい。この場合、複合体の一方の面の表面粗さを、他方の面の表面粗さより小さくできる。したがって、金属積層板を製造する際に、複合体の表面粗さが小さい側の面に金属層を設けるようにすれば、金属層と複合体との界面の凹凸を小さくできる。
塗布法としては、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、グラビアオフセット法、ナイフコート法、キスコート法、バーコート法、ダイコート法、ファウンテンメイヤーバー法、スロットダイコート法が挙げられる。
プリント配線板においては、パターン回路上に、さらにソルダーレジストが積層されてもよい。ソルダーレジストは、上記分散液を用いて形成してもよい。
プリント配線板の表面には、さらにカバーレイフィルムが積層されてもよい。カバーレイフィルムは、基材フィルムと、基材フィルムの表面に形成された接着剤層とから構成される。カバーレイフィルムの基材フィルムは、上記分散液を用いて形成してもよい。
プリント配線板は、パターン回路上に、さらに上記分散液を用いた層間絶縁膜(接着剤層)とカバーレイフィルムとしてのポリイミドフィルムとがこの順で積層されてもよい。
例えば、本発明の複合体の製造方法は、上記実施形態に構成において、他の任意の工程を追加で有してもよいし、同様の作用を生じる任意の工程と置換されていてよい。
また、本発明の複合体は、前述した実施形態に構成において、他の任意の構成を追加してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよい。
1.各成分の準備
[Fポリマー]
Fポリマー1:TFEに基づく単位、NAHに基づく単位及びPPVEに基づく単位を、この順に97.9モル%、0.1モル%、2.0モル%含むコポリマー
Fポリマー2:TFEに基づく単位及びPPVEに基づく単位を、この順に98.0モル%、2.0モル%含むコポリマー
[パウダー]
パウダー1:D50が1.7μm、D90が3.8μmである、Fポリマー1からなるパウダー
パウダー2:D50が0.8μm、D90が1.8μmである、Fポリマー2からなるパウダー
パウダー3:D50が0.3μmである、PTFEからなるパウダー
なお、D50及びD90は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA−920測定器)を用い、パウダーを水中に分散させて測定した。
[フッ素系分散剤]
ノニオン性のフルオロポリオールである、CH2=CHCOO(CH2)4OCF(CF3)(C(CF(CF3)2)(=C(CF3)2)とCH2=CHCOO(CH2)4(OCH2CH2)10OHのコポリマー
(例1)
まず、開繊ガラスクロスを用意した。なお、開繊ガラスクロスの空隙率は7%であり、ガラス繊維の平均直径は3.4μmであり、平均厚さは14μmであった。
次に、開繊ガラスクロスに、2w/v%でγ−アミノプロピルメチルジメトキシシランを含有するイソプロピルアルコール溶液を塗布した後、乾燥して、開繊ガラスクロスにアミノ基を導入した。
次に、45質量部の水と、5質量部のフッ素系分散剤と、50質量部のパウダー1とを含む分散液1中に、アミノ基が導入された開繊ガラスクロスを100℃にて浸漬した。
30分経過後、開繊ガラスクロスを分散液1から取出し、大気雰囲気中で、380℃にて加熱して、パウダー1を開繊ガラスクロスに固定した。これにより、平均厚さ18μmの複合体を得た。なお、得られた複合体のポリマー含有量(樹脂コンテンツ)は、56質量%であった。
パウダー3を50質量%で含む水分散液:100質量部と、分散液1:5質量部とを混合して、分散液2を得た。分散液1に代えて分散液2を使用した以外は、例1と同様にして、複合体を得た。なお、得られた複合体のポリマー含有量は、54質量%であった。
(例3)
パウダー1に代えてパウダー2を使用した以外は、例1と同様にして、複合体を得た。
(例4)
γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランに代えてフェニルシランを使用した以外は、例3と同様にして、複合体を得た。
3−1.剥離性
得られた複合体を湾曲させた際の状態を目視にて確認し、下記基準にて評価した。
[評価基準]
〇:F層とガラスクロスとの剥離がなかった。
△:F層の一部がガラスクロスから剥離した。
×:F層の全体又は大半の部分がガラスクロスから剥離した。
得られた複合体から所定のサイズのサンプルを切り出し、このサンプルの繊膨張係数を測定した。熱機械分析装置(SII社製、TMA/SS6100)を用い、大気雰囲気下、チャック間距離20mm、2.5gの負荷荷重をかけつつ、30℃から250℃まで5℃/分の速度でサンプルを昇温し、サンプルの線膨張に伴う変位量を測定した。測定終了後、50℃から100℃までの間のサンプルの変位量から、線膨張係数(ppm/℃)を求め、下記基準にて評価した。
[評価基準]
〇:20ppm/℃以下
×:20ppm/℃超
複合体の両面に導電性ペーストを塗布して配線し、10GHzにおける誘電正接を測定し、下記基準にて評価した。
〇:3.5以下
×:3.5超
Claims (16)
- アミノ基が導入された開繊状態のガラスクロスに、酸素原子を含有するテトラフルオロエチレン系ポリマーを含むパウダーが溶媒に分散した分散液を含浸させ、前記分散液を加熱して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを前記ガラスクロスに固定する、複合体の製造方法。
- 前記アミノ基が導入された開繊状態のガラスクロスを、アミノ基を有するシランカップリング剤の開繊状態のガラスクロスへの接触処理、又は含窒素雰囲気中での開繊状態のガラスクロスのプラズマ処理により得る、請求項1に記載の製造方法。
- 前記ガラスクロスの空隙率が、10%以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記ガラスクロスを構成するガラス繊維の平均直径が、3〜8μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記分散液の含浸が、前記ガラスクロスの前記分散液中への浸漬により行われる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記分散液の加熱が、前記溶媒の沸点以上の温度にて行われる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記パウダーの体積基準累積50%径が、0.05〜6μmである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記酸素原子を含有するテトラフルオロエチレン系ポリマーが、該ポリマーに含まれる全単位に対して、テトラフルオロエチレンに基づく単位を99.5モル%以上含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記酸素原子を含有するテトラフルオロエチレン系ポリマーが、該ポリマーに含まれる全単位に対して、テトラフルオロエチレン以外のコモノマーに基づく単位を0.5モル%超含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記酸素原子を含有するテトラフルオロエチレン系ポリマーが、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基及びオキセタニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記分散液が、さらにポリテトラフルオロエチレンを含むパウダーを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
- アミノ基が導入された開繊状態のガラスクロスと、
該ガラスクロスに固定された、酸素原子を含有するテトラフルオロエチレン系ポリマーとを有する、複合体。 - 当該複合体の平均厚さが、20μm以下である、請求項12に記載の複合体。
- 当該複合体の繊膨張係数が、20ppm/℃以下である、請求項12又は13に記載の複合体。
- 当該複合体の誘電正接(10GHz)が、3.5以下である、請求項12〜14のいずれか1項に記載の複合体。
- 当該複合体の吸水率が、0.01%以下である、請求項12〜15のいずれか1項に記載の複合体。
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