JPWO2019225544A1 - 緩衝器 - Google Patents

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道生 早川
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Abstract

ピストンバンド(62)の外周部には、シリンダ(11)内に配置される前の自然状態で、ピストンロッドの先端部に近い側または先端部から遠い側に大径部(102)が形成され、先端部から遠い側または先端部に近い側に大径部(102)よりも小径の中径部(106)が形成され、大径部(102)と中径部(106)との間に中径部(106)よりも小径の小径部(112)が形成されている。

Description

本発明は、緩衝器に関する。
本願は、2018年5月21日に、日本に出願された特願2018−097304号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
緩衝装置等に用いられるピストン部として、環状突部を形成したピストンリングをピストン本体に被せた構成のものがある(例えば、特許文献1参照)。
特開2002−276808号公報
緩衝器においては、ピストンロッドに加わる径方向の力によってピストンとシリンダとの間の摩擦力が変化することになる。この径方向の力の増加に対する摩擦力の増加の比率を高くする要望があった。
本発明は、ピストンロッドに加わる径方向の力の増加に対するピストンとシリンダとの間の摩擦力の増加の比率を高くすることが可能となる緩衝器を提供する。
本発明の第一の態様によれば、ピストンバンドの外周部に、シリンダ内に配置される前の自然状態で、ピストンロッドの先端部に近い側に大径部が形成され、前記先端部から遠い側に前記大径部よりも小径の中径部が形成され、前記大径部と前記中径部との間に該中径部よりも小径の小径部が形成されている。
本発明の第二の態様によれば、ピストンバンドの外周部に、シリンダ内に配置される前の自然状態で、ピストンロッドの先端部に近い側に中径部が形成され、前記先端部から遠い側に前記中径部よりも大径の大径部が形成され、前記大径部と前記中径部との間に該中径部よりも小径の小径部が形成されている。
上記した構成によれば、ピストンロッドに加わる径方向の力の増加に対するピストンとシリンダとの間の摩擦力の増加の比率を高くすることが可能となる。
本発明に係る一実施形態の緩衝器を示す断面図である。 本発明に係る一実施形態の緩衝器のピストンの外周部を示す断面図であって、シリンダ内への配置前の状態を示す図である。 本発明に係る一実施形態の緩衝器のピストンの外周部を示す断面図であって、シリンダ内への配置後のピストンロッドが径方向の力を受けない状態を示す図である。 本発明に係る一実施形態の緩衝器のピストンの外周部を示すシリンダ内への配置後の断面図であって、ピストンロッドが受ける径方向の力が小さい状態を示す図である。 本発明に係る一実施形態の緩衝器のピストンの外周部を示すシリンダ内への配置後の断面図であって、ピストンロッドが受ける径方向の力が大きい状態を示す図である。 PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の面圧に対する摩擦係数の関係を示す特性線図である。 本発明に係る一実施形態の緩衝器等のピストンロッドに加わる径方向の力(横力)に対するピストンとシリンダとの間に生じる摩擦力の関係を示す特性線図である。 緩衝器のピストンのシリンダ内への配置状態の断面図であって、比較例1を示す図である。 緩衝器のピストンのシリンダ内への配置状態の断面図であって、比較例2を示す図である。
本発明に係る一実施形態の緩衝器を図面を参照して以下に説明する。
本実施形態の緩衝器10は、自動車や鉄道車両のサスペンション装置に用いられる緩衝器である。図1に示すように、緩衝器10は、作動流体が封入されるシリンダ11を有している。シリンダ11は、円筒状の内筒12と、内筒12よりも大径で内筒12の外側に設けられる有底筒状の外筒13とで構成されている。内筒12および外筒13の間にリザーバ室14が形成されている。外筒13は、軸方向一側に底部15を有し軸方向他側が開口部16とされており、開口部16はシリンダ11の開口部となっている。
シリンダ11の内筒12内には、ピストン17が摺動可能に挿入されている。このピストン17は、シリンダ11の内筒12内を一側室18と他側室19とに画成している。シリンダ11内には、一側室18および他側室19内に作動流体としての作動液が封入され、リザーバ室14内に作動流体としての作動液およびガスが封入される。
ピストン17には金属製のピストンロッド20が連結されている。ピストンロッド20は、軸方向一側の基端部21がシリンダ11内に挿入されており、軸方向他側の先端部22がシリンダ11の軸方向の一端つまり内筒12および外筒13の軸方向の一端よりも外部に突出している。ピストン17は、ピストンロッド20の基端部21にナット23によって固定されている。ピストン17は、ピストンロッド20と一体的に移動する。
シリンダ11の内側には、ピストンロッド20が突出する外筒13の開口部16側に、環状のロッドガイド25と、環状のシール部材26とが配置されており、外筒13の底部15側にベースバルブ28が設けられている。ロッドガイド25は、言い換えれば、シリンダ11の底部15とは反対側に設けられている。ロッドガイド25は、ピストンロッド20を、その径方向の移動を規制しつつ軸方向の移動を案内する。シール部材26は、シリンダ11の一端の開口部16側を閉塞して、内筒12内の作動液およびリザーバ室14内のガスおよび作動液が外部に漏出するのを規制する。
ベースバルブ28は、そのベースボディ31に、他側室19とリザーバ室14とを連通可能な液通路32および液通路33が形成されている。ベースボディ31には、径方向内側の液通路32を開閉可能なディスクバルブ35と、径方向外側の液通路33を開閉可能なディスクバルブ36とが、リベット37で取り付けられている。
ディスクバルブ35は、液通路32を介する作動液のリザーバ室14から他側室19への流れを規制しつつ他側室19からリザーバ室14への流れを許容する。ディスクバルブ35は、ピストンロッド20がシリンダ11からの延出量を減らす縮み側に移動したときに、他側室19からリザーバ室14へ作動液を流し、その際に減衰力を発生させる減衰バルブである。
ディスクバルブ36は、液通路33を介する作動液の他側室19からリザーバ室14への流れを規制しつつリザーバ室14から他側室19への流れを許容する。ディスクバルブ36は、ピストンロッド20がシリンダ11からの延出量を増やす伸び側に移動したときに、リザーバ室14から他側室19へ作動液を実質的に減衰力を発生させずに流すサクションバルブである。
ピストンロッド20には、内筒12内に挿入される側の基端部21に、上記したピストン17と、その両側のディスクバルブ41,42とが、ナット23で取り付けられている。ピストン17には、他側室19と一側室18とを連通可能な液通路43および液通路44が形成されている。ディスクバルブ41は、液通路43を開閉可能であり、ディスクバルブ42は、液通路44を開閉可能である。
ディスクバルブ41は、液通路43を介する作動液の一側室18から他側室19への流れを規制しつつ他側室19から一側室18への流れを許容する。ディスクバルブ41は、ピストンロッド20が縮み側に移動したときに、他側室19から一側室18へ作動液を流し、その際に減衰力を発生させる減衰バルブである。
ディスクバルブ42は、液通路44を介する作動液の他側室19から一側室18への流れを規制しつつ一側室18から他側室19への流れを許容する。ディスクバルブ42は、ピストンロッド20が伸び側に移動したときに、一側室18から他側室19へ作動液を流し、その際に減衰力を発生させる減衰バルブである。
ピストンロッド20のシリンダ11から延出する一側には、カバー部材51が取り付けられている。カバー部材51は、ピストンロッド20のシリンダ11から延出する一側の軸方向の途中部位に固定される円板状の環状部材52と、環状部材52の外周側に接合されて環状部材52からシリンダ11の方向に延出する円筒状の筒状部材53とを有している。筒状部材53は、シリンダ11と軸方向に重なっており、シリンダ11の外周部と、ピストンロッド20のシール部材26から突出する部分とを覆っている。
外筒13の底部15の外側には取付アイ55が固定されている。
緩衝器10は、車両に取り付けられる際に、例えば、ピストンロッド20が上側に配置されて車体側に連結され、取付アイ55が下側に配置されて車輪側に連結される。
ピストンロッド20が伸び側に移動すると、これと一体にピストン17が一側室18の容積を減らし他側室19の容積を増やす方向に移動する。そうすると、ピストン17に設けられたディスクバルブ42が、液通路44を介して一側室18から他側室19へ作動液を流し、その際に減衰力を発生させる。このとき、ベースバルブ28のディスクバルブ36が、リザーバ室14から他側室19へ作動液を実質的に減衰力を発生させずに流して、ピストンロッド20がシリンダ11から突出した体積分の作動液を他側室19へ補う。
ピストンロッド20が縮み側に移動すると、これと一体にピストン17が他側室19の容積を減らし一側室18の容積を増やす方向に移動する。このとき、ピストン17に設けられたディスクバルブ41が、液通路43を介して他側室19から一側室18へ作動液を流し、その際に減衰力を発生させる。また、このとき、ベースバルブ28のディスクバルブ35が、他側室19からリザーバ室14へ作動液を流し、その際に減衰力を発生させる。
ピストン17は、ピストンロッド20の基端部21に接合される金属製のピストン本体61と、ピストン本体61の外周部の装着されることでピストン17の外周部を構成する合成樹脂製のピストンバンド62とからなっている。ピストン17は、その外周部を構成するピストンバンド62が、シリンダ11の内筒12の内周部63との間をシールする。
ピストン本体61は、円環状であり、ピストンロッド20の基端部21を内周側に嵌合させている。ピストン本体61には、上記した液通路43,44が形成されている。
ピストン17の外周部について、さらに説明する。
ピストン本体61の外周部は、図2Aに示すように、円筒状の外周本体部65と、外周本体部65から径方向外方に突出する円環状の嵌合突出部66と、を有している。嵌合突出部66は、ピストン本体61の軸方向に間隔をあけて複数並べられている。これにより、軸方向に隣り合う嵌合突出部66と嵌合突出部66との間は、これらの外周面よりも径方向内方に凹む円環状の嵌合溝部67となっている。嵌合溝部67もピストン本体61の軸方向に間隔をあけて複数並べられている。複数の嵌合突出部66は、外径が同等に形成されており、複数の嵌合溝部67も、溝底径が同等に形成されている。
ピストンバンド62は、ふっ素樹脂等の低摩擦材、具体的には、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなっている。ピストンバンド62は、円環帯状のバンド本体部70と、バンド本体部70から径方向内方に突出する円環状の内周側突出部71と、を有している。内周側突出部71は、ピストンバンド62の軸方向に間隔をあけて複数並べられている。これにより、軸方向に隣り合う内周側突出部71と内周側突出部71との間は、これらの外周面よりも径方向外方に凹む円環状の内周側溝部72となっている。内周側溝部72はピストンバンド62の軸方向に間隔をあけて複数並べられている。複数の内周側突出部71は、内径が同等に形成されており、複数の内周側溝部72も、溝底径が同等に形成されている。
ピストンバンド62は、ピストン本体61に装着された状態で、すべての内周側突出部71が、それぞれ対応する嵌合溝部67に嵌合して、対応する嵌合溝部67の溝底部に当接する。また、ピストンバンド62は、ピストン本体61に装着された状態で、ピストン本体61の嵌合突出部66を、それぞれ対応する内周側溝部72に嵌合させて、内周側溝部72の溝底部に当接させる。
ここでは、図2Aに示すように、ピストン本体61に装着された状態であって、シリンダ11内に配置される前の自然状態にあるピストンバンド62について説明する。
ピストンバンド62は、そのバンド本体部70が、軸方向の中間部にあって内周側突出部71および内周側溝部72と軸方向に重なり合う中間本体部81と、一端側の端部の第1延出部82と、他端側の端部の第2延出部83と、を有している。第1延出部82は、図1に示すピストンロッド20の先端部22に近い側に配置され、第2延出部83は、ピストンロッド20の先端部22から遠い側に配置されている。言い換えれば、第1延出部82は、中間本体部81の先端部22側の端部から先端部22側に延出し、第2延出部83は、中間本体部81の先端部22とは反対側の端部から先端部22とは反対側に延出する。
第1延出部82は、ピストン本体61の最も先端部22に近い側の端部の嵌合突出部66の外周部に当接した後、この嵌合突出部66よりも軸方向の先端部22側に突出している。第1延出部82は、当接する嵌合突出部66よりも軸方向における先端部22側に、先端部22に近づくほど小径となるように略テーパ状に延出している。なお、本実施の形態では、第1延出部82は、外周面を先端部22に近づくほど小径となるようになだらかな曲面として、略テーパ状の形状としたが、断面が直線となる面として形成してもよい。
第2延出部83は、ピストン本体61の最も先端部22から遠い側の端部の嵌合突出部66の外周部に当接した後、この嵌合突出部66よりも軸方向の先端部22とは反対側に突出している。第2延出部83は、当接する嵌合突出部66よりも軸方向における先端部22とは反対側に、先端部22から離れるほど小径となるように略テーパ状に延出している。なお、本実施の形態では、第2延出部83は、外周面を先端部22から離れるほど小径となるようになだらかな曲面として、略テーパ状の形状としたが、断面が直線となる面として形成してもよい。
ピストンバンド62の外周部であるバンド本体部70の外周部90は、ピストンロッド20の先端部22に近い側から順に、先端部22から軸方向に離れるほど大径となる第1外周面部91と、先端部22から軸方向に離れるほど小径となる第2外周面部92と、先端部22から軸方向に離れるほど大径となる第3外周面部93と、先端部22から軸方向に離れるほど小径となる第4外周面部94とを有している。
第1外周面部91と第2外周面部92と第3外周面部93と第4外周面部94とは、屈曲せず滑らかに連続する形状をなしている。
第1外周面部91と第2外周面部92とは、境界側が、ピストンバンド62において径方向の外方に膨出する形状をなす円環状の第1膨出部101の外周面を構成している。第1膨出部101の径方向外側部分は、ピストンバンド62の中心軸線を含む面での断面が、ピストンバンド62の中心軸線側に中心を有する円弧状をなしている。なお、第1膨出部101の径方向外側部分は、円弧状に限らず、矩形の凸部形状としてもよい。第1外周面部91と第2外周面部92との境界位置が第1膨出部101の最大径の位置となる。この部分が、大径部102(第1突出部)となっている。第1膨出部101および大径部102も、ピストンバンド62の外周部90に含まれ、大径部102は外周部90において最大外径となっている。
第3外周面部93と第4外周面部94とは、境界側が、ピストンバンド62において径方向の外方に膨出する形状をなす円環状の第2膨出部105の外周面を構成している。第2膨出部105の径方向外側部分は、ピストンバンド62の中心軸線を含む面での断面が、ピストンバンド62の中心軸線側に中心を有する円弧状をなしている。なお、第2膨出部105の径方向外側部分は、円弧状に限らず、矩形の凸部形状としてもよい。第3外周面部93と第4外周面部94との境界位置が第2膨出部105の最大径の位置となり、この部分が、中径部106(第2突出部)となっている。中径部106は、大径部102とは径が異なっており、大径部102よりも小径となっている。第2膨出部105および中径部106も、ピストンバンド62の外周部90に含まれる。中径部106と大径部102とは軸方向に離間して設けられている。
第2外周面部92と第3外周面部93とは、境界側がピストンバンド62において径方向の内方に凹む形状をなす円環状の凹状部111の外周面を構成している。凹状部111の径方向外側部分は、ピストンバンド62の中心軸線を含む面での断面が、ピストンバンド62の中心軸線とは反対側に中心を有する円弧状をなしている。第2外周面部92と第3外周面部93との境界位置が凹状部111の最小径の位置となり、この部分が、小径部112(最小径部)となっている。小径部112は、大径部102および中径部106とは径が異なっており、中径部106よりも小径となっている。凹状部111および小径部112も、ピストンバンド62の外周部90に含まれ、小径部112は外周部90において最小外径となっている。大径部102および中径部106は、小径部112から径方向外方に突出して設けられている。小径部112は、中径部106および大径部102と軸方向に離間して設けられている。なお、本実施の形態では、小径部112の軸方向両側の第2外周面部92と第3外周面部93とを、小径部112から連続的に大径となる曲面として形成したが、小径部112を、第2外周面部92と第3外周面部93とを結ぶ線分が直線となる断面となるように形成してもよい。例えば、第2外周面部92と第3外周面部93との間に円筒面状の小径部112を形成してもよい。あるいは、第2外周面部92と第3外周面部93との間にテーパ面状の小径部112を形成しても良い。
以上により、ピストンバンド62の外周部90は、ピストンロッド20の先端部22に近い側から順に、第1膨出部101と、凹状部111と、第2膨出部105と、を有している。また、ピストンバンド62の外周部90には、シリンダ11内に配置される前の自然状態で、ピストンロッド20の先端部22に近い側に大径部102が形成され、先端部22から遠い側に大径部102よりも小径の中径部106が形成され、大径部102と中径部106との間に中径部106よりも小径の小径部112が形成されている。この自然状態では、大径部102の外径はシリンダ11の内筒12の内径よりも大径であり、中径部106の外径はシリンダ11の内筒12の内径よりも小径である。よって、小径部112の外径もシリンダ11の内筒12の内径よりも小径となっている。合成樹脂製のピストンバンド62は、成形時の温度および成形時間等を制御することで上記形状に形成される。
以上のピストン本体61とピストンバンド62とからなるピストン17が金属製の内筒12の内周部63内に嵌合されると、第1延出部82がロッドガイド25側に配置され、第2延出部83がシリンダ11の底部15側に配置される。この状態で、大径部102の外径がシリンダ11の内筒12の内径よりも大径であることから、ピストンバンド62は、大径部102を含む第1膨出部101が、図2Bに示すように径方向内方に弾性変形して内筒12の円筒状の内周部63に密着する。このとき、中径部106の外径はシリンダ11の内筒12の内径よりも小径であることから、ピストンロッド20に径方向の外力、いわゆる横力が加わらなければ、ピストンバンド62は、中径部106を含む第2膨出部105が、内筒12の内周部63に接触することはなく、内筒12の内周部63との間に隙間115を有する。このとき、小径部112を含む凹状部111も内筒12の内周部63との間に隙間を有する。なお、ピストンバンド62は、中径部106を含む第2膨出部105が、内筒12の内周部63に接触することなく、内筒12の内周部63との間に隙間115を有することが好ましいが、横力が加わらない状態で僅かに接触しているものも含む。
このようにシリンダ11の内筒12内に配置されたピストン17を有する緩衝器10は、ピストンロッド20とともにピストン17がシリンダ11に対し移動する。
その際に、ピストンロッド20が受ける横力が0を含む第1所定値未満であれば、ピストン17は、ピストンロッド20がロッドガイド25を支点にしてシリンダ11に対し倒れることがあっても、大径部102を含む第1膨出部101のみで、図3Aに示すように内筒12の内周部63に接触して軸方向に移動することになる。このときの面圧分布は、図3Aに二点鎖線Z1に示すようになる。
また、ピストンロッド20が第1所定値以上、第2所定値未満の横力を受けると、ピストンロッド20がロッドガイド25を支点としてシリンダ11に対し倒れる倒れ量が上記よりも大きくなり、図3Bに示すように、大径部102を含む第1膨出部101と、中径部106を含む第2膨出部105とで、内筒12の内周部63に接触して軸方向に移動する。このとき、凹状部111の小径部112は内筒12の内周部63に接触しない。このときのピストンバンド62の内周部63への接触面積は、第1膨出部101のみで接触する上記状態と比べて大きくなり、よって、面圧が低くなる。このときの面圧分布は、図3Bに二点鎖線Z2,Z3に示すようになり、図3Aに二点鎖線Z1に示す場合よりも面圧が低くなる。すなわち、ピストンロッド20に径方向の力が作用していないときと比して、ピストンロッド20に径方向の力が作用したとき、ピストンバンド62とシリンダ11の内周部63との接触面積は大きくなる。
図4に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の面圧に対する摩擦係数の関係を示す特性線図を示す。図5に、本実施形態に係る緩衝器等のピストンロッドに加わる径方向の力(横力)に対するピストンとシリンダとの間に生じる摩擦力の関係を示す特性線図を示す。図4において、縦軸は摩擦係数(FC)を表し、横軸は面圧(SP)を表す。図5において、縦軸は摩擦力(FF)を表し、横軸は横力(LF)を表す。
PTFEは、図4に示すように、面圧が高いと摩擦係数が低く、面圧が低いと摩擦係数が高くなる面圧依存性を有する材料である。よって、PTFEからなるピストンバンド62は、面圧が低いと摩擦係数が高くなることから、ピストン17とシリンダ11との接触面に生じる摩擦力は、第1膨出部101のみで内筒12の内周部63に接触する、横力が小さい場合と比べて、図5に実線X1で示すように大きくなる。
さらに、ピストンロッド20が第2所定値以上の横力を受けると、ピストンロッド20がロッドガイド25を支点にしてシリンダ11に対し倒れる倒れ量が上記よりもさらに大きくなり、第1膨出部101と第2膨出部105と凹状部111とで、内筒12の内周部63に接触して軸方向に移動する。このときのピストンバンド62の内周部63への接触面積は、第1膨出部101と第2膨出部105とのみで接触する上記状態と比べて大きくなり、面圧が低くなる。ピストンバンド62は、面圧が低いと摩擦係数が高くなるため、ピストン17とシリンダ11との接触面に生じる摩擦力は、第1膨出部101と第2膨出部105とのみで内筒12の内周部63に接触する場合と比べて、図5に実線X1で示すようにさらに大きくなる。
上記した特許文献1には、図6Aに示すように、ピストン本体61aの外周部に装着されるピストンバンド62aが、バンド本体部70aよりも径方向外方に膨出する環状突部121aをピストンバンド62aの一端側(図示略のロッドガイド側)のみに設けたものが記載されている。このような構造を比較例1とすると、比較例1では、ピストンロッドが受ける横力が0を含む小さい状態では、ピストンバンド62aの一側の環状突部121aでシリンダ11aの内周部63aに高い面圧で摺接するため、図5に二点鎖線Xaで示すようにピストンバンド62aで発生させる摩擦力を小さく抑えることができる。この状態から、横力が、増加していき、比較的大きくなると、環状突部121aに加えてピストンバンド62aの他端部でもシリンダ11aの内周部に摺接することになって、ピストンバンド62aで発生させる摩擦力が増加する。このとき、横力が比較的大きくならないと、ピストンバンド62aの他端部がシリンダ11aの内周部63aに摺接しないことから、横力の増加に対するピストンバンド62aの摩擦力の増加の比率は低い。
また、特許文献1には、図6Bに示すように、ピストン本体61bの外周部に装着されるピストンバンド62bが、バンド本体部70bよりも径方向外方に膨出する同外径の環状突部121bをピストンバンド62bの両端部に設けたものが記載されている。このような構造を比較例2とすると、比較例2では、図6Bに示すように、ピストンロッドが受ける横力が0を含む小さい状態でも、ピストンバンド62bの両側の環状突部121bでシリンダ11bの内周部63bに摺接するため、図5に破線Xbで示すように、横力が0を含む小さい状態でも、面圧が低くピストンバンド62bで発生させる摩擦力が大きくなる。この状態から、横力が増加していくと、ピストンバンド62bで発生させる摩擦力がさらに大きくなっていくものの、最初から両側の環状突部121bでシリンダ11bの内周部63bに摺接していることから、その増加の比率は低い。
これらに対し、本実施形態は、ピストンバンド62の外周部90には、シリンダ11内に配置される前の自然状態で、ピストンロッド20の先端部22に近い側に大径部102が形成され、先端部22から遠い側に大径部102よりも小径の中径部106が形成され、大径部102と中径部106との間に中径部106よりも小径の小径部112が形成されている。このため、ピストンロッド20が受ける横力が0を含む小さい状態では、大径部102を含む第1膨出部101で内筒12の内周部63に接触し、これよりも横力が大きくなると、大径部102を含む第1膨出部101と中径部106を含む第2膨出部105とで内筒12の内周部63に接触することが可能になる。さらに、これよりも横力が大きくなると、大径部102を含む第1膨出部101と中径部106を含む第2膨出部105とに加えて凹状部111の内筒12の内周部63への接触面積を増大させることが可能になる。
よって、図5に実線X1で示すように、横力が小さいときのピストンバンド62で発生させる摩擦力を小さくするとともに、横力が大きくなるとピストンバンド62で発生させる摩擦力を大きくし、その際の増加の比率が高い摩擦特性とすることが可能となる。したがって、横力が小さいときのピストンロッド20の軸力を低く抑え、横力が大きくなるとピストンロッド20の軸力を高くすることができる。
また、ピストンバンド62の中径部106は、ピストンロッド20が径方向の力を受けない状態では、シリンダ11の内周部63と間に隙間115を有するため、横力が小さいときのピストンバンド62で発生させる摩擦力を小さくするとともに、横力が大きくなるとピストンバンド62で発生させる摩擦力を大きくし、その際の増加の比率が高い摩擦特性が、より顕著になる。なお、中径部106は、ピストンロッド20が径方向の力を受けない状態でのシリンダ11との間の摩擦力が小さければ、シリンダ11の内周部63と間に隙間115がなく接触していても良い。
また、ピストンバンド62は、低摩擦材であって面圧が低いと摩擦係数が高くなる特性を有する材料で形成されている。このため、横力が小さくシリンダ11への接触面積が小さくて面圧が高いときの摩擦力を小さくするとともに、横力が大きくなってシリンダ11への接触面積が大きくなり面圧が低くなると摩擦力を大きくし、その際の増加の比率が高い摩擦特性が、より顕著になる。
ここで、車両旋回時に安定した車両の姿勢をつくる上で緩衝器が発生する摩擦力特性が重要となる。特に、ピストン速度が低速領域の緩衝器の軸力が重要となるが、この領域はピストンバンドとシリンダとの間で発生する摩擦力の寄与度が高い。ピストンバンドとシリンダとの間で発生する摩擦力が小さいと、乗心地性能は向上できるものの、車両旋回時に車両が安定しない傾向がある。
これに対し、本実施形態の緩衝器10を車両のサスペンション装置用として使用すれば、上記のように、横力が小さい通常走行時は、ピストンバンド62で発生させる摩擦力を小さくすることができるため、良好な乗心地が得られる。つまり、直線走行時などの緩衝器10にかかる横力が小さいシチュエーションでは、ピストンバンド62のロッドガイド25側の第1膨出部101のみをシリンダ11に接触させることで、緩衝器10の摩擦力を小さくすることができるため、乗心地性能を向上させることが可能となる。
また、横力が大きい車両旋回時は、ピストンバンド62で発生させる摩擦力を大きくすることができるため、車両の姿勢が安定する。つまり、旋回時などの緩衝器10にかかる横力が大きいシチュエーションでは、ピストンバンド62のロッドガイド25側の第1膨出部101に加えて、シリンダ11の底部15側の第2膨出部105をシリンダ11に接触させることで緩衝器10の摩擦力を大きくすることができ、さらに横力が大きくなると、これらの間の凹状部111をシリンダ11に接触させることで緩衝器10の摩擦力を大きくすることができて、操縦安定性を向上させることが可能となる。よって、乗心地性能の向上と操縦安定性の向上とを両立することができる。
なお、上記実施形態では、ピストンバンド62の外周部90には、ピストンロッド20の先端部22に近い側に大径部102が形成され、ピストンロッド20の先端部22から遠い側に大径部102よりも小径の中径部106が形成され、大径部102と中径部106との間に中径部106よりも小径の小径部112が形成される構成としたが、上記ピストンバンド62を軸方向に反転させて、ピストンロッド20の先端部22から遠い側に大径部102が形成され、ピストンロッド20の先端部22に近い側に中径部106が形成され、大径部102と中径部106との間に中径部106よりも小径の小径部112が形成される構成としてもよい。
また、上記実施形態では、大径部102、中径部106および小径部112を、ピストンバンド62の外周部90の全周に亘って一定径で形成する構成としたが、大径部102および中径部106の少なくともいずれか一方を小径部112から周方向に部分的に突出させて形成するようにしてもよい。また、生産性は悪くなるが、周方向に部分的に3段階以上、径が異なる部分を形成するようにしてもよい。いずれの場合も、ピストンロッド20に径方向の力が作用していないときと比して、ピストンロッド20に径方向の力が作用したとき、ピストンバンド62とシリンダ11の内周部63との接触面積は大きくなる。
以上に述べた実施形態の第1の態様によれば、緩衝器は、作動流体が封入される有底筒状のシリンダと、基端部が前記シリンダ内に挿入され先端部が前記シリンダ外に突出するピストンロッドと、該ピストンロッドの前記基端部側に固定され、前記シリンダ内を一側室と他側室とに画成するピストンと、前記シリンダの底部とは反対側に設けられて前記ピストンロッドを案内するロッドガイドと、を備える。前記ピストンは、前記シリンダの内周部との間をシールするピストンバンドで外周部が構成されている。前記ピストンバンドの外周部には、前記シリンダ内に配置される前の自然状態で、前記ピストンロッドの前記先端部に近い側に大径部が形成され、前記先端部から遠い側に前記大径部よりも小径の中径部が形成され、前記大径部と前記中径部との間に該中径部よりも小径の小径部が形成されている。これにより、ピストンロッドに加わる径方向の力の増加に対するピストンとシリンダとの間の摩擦力の増加の比率を高くすることが可能となる。
第2の態様によれば、緩衝器は、作動流体が封入される有底筒状のシリンダと、基端部が前記シリンダ内に挿入され先端部が前記シリンダ外に突出するピストンロッドと、該ピストンロッドの前記基端部側に固定され、前記シリンダ内を一側室と他側室とに画成するピストンと、前記シリンダの底部とは反対側に設けられて前記ピストンロッドを案内するロッドガイドと、を備える。前記ピストンは、前記シリンダの内周部との間をシールするピストンバンドで外周部が構成されている。前記ピストンバンドの外周部には、前記シリンダ内に配置される前の自然状態で、前記ピストンロッドの前記先端部に近い側に中径部が形成され、前記先端部から遠い側に前記中径部よりも大径の大径部が形成され、前記大径部と前記中径部との間に該中径部よりも小径の小径部が形成されている。これにより、ピストンロッドに加わる径方向の力の増加に対するピストンとシリンダとの間の摩擦力の増加の比率を高くすることが可能となる。
第3の態様によれば、第1または第2の態様において、前記中径部は、前記ピストンロッドが径方向の力を受けない状態では、前記シリンダとの間に隙間を有する。
第4の態様によれば、第1乃至第3のいずれか一態様において、前記ピストンバンドは、低摩擦材であって面圧が低いと摩擦係数が高くなる特性を有する材料で形成されている。
第5の態様によれば、緩衝器は、作動流体が封入される有底筒状のシリンダと、基端部が前記シリンダ内に挿入され先端部が前記シリンダ外に突出するピストンロッドと、該ピストンロッドの前記基端部側に固定され、前記シリンダ内を一側室と他側室とに画成するピストンと、前記シリンダの底部とは反対側に設けられて前記ピストンロッドを案内するロッドガイドと、を備える。前記ピストンは、前記シリンダの内周部との間をシールするピストンバンドで外周部が構成されている。前記ピストンバンドの外周部には、前記シリンダ内に配置される前の自然状態で最小径部と、該最小径部から突出して設けられる第1突出部と、第2突出部と、が形成され、前記第1突出部と前記第2突出部とは径が異なっており、かつ離間して設けられている。これにより、ピストンロッドに加わる径方向の力の増加に対するピストンとシリンダとの間の摩擦力の増加の比率を高くすることが可能となる。
第6の態様によれば、第5の態様において、前記ピストンロッドに径方向の力が作用していないときと比して、該ピストンロッドに径方向の力が作用したとき、前記ピストンバンドと前記シリンダ内周部との接触面積は大きくなる。
上記した緩衝器によれば、ピストンロッドに加わる径方向の力の増加に対するピストンとシリンダとの間の摩擦力の増加の比率を高くすることが可能となる。
10 緩衝器
11 シリンダ
18 一側室
19 他側室
20 ピストンロッド
21 基端部
22 先端部
25 ロッドガイド
62 ピストンバンド
102 大径部(第1突出部)
106 中径部(第2突出部)
112 小径部(最小径部)
115 隙間

Claims (6)

  1. 作動流体が封入される有底筒状のシリンダと、
    基端部が前記シリンダ内に挿入され先端部が前記シリンダ外に突出するピストンロッドと、
    該ピストンロッドの前記基端部側に固定され、前記シリンダ内を一側室と他側室とに画成するピストンと、
    前記シリンダの底部とは反対側に設けられて前記ピストンロッドを案内するロッドガイドと、
    を備え、
    前記ピストンは、前記シリンダの内周部との間をシールするピストンバンドで外周部が構成されており、
    前記ピストンバンドの外周部には、
    前記シリンダ内に配置される前の自然状態で、
    前記ピストンロッドの前記先端部に近い側に大径部が形成され、
    前記先端部から遠い側に前記大径部よりも小径の中径部が形成され、
    前記大径部と前記中径部との間に該中径部よりも小径の小径部が形成されている
    緩衝器。
  2. 作動流体が封入される有底筒状のシリンダと、
    基端部が前記シリンダ内に挿入され先端部が前記シリンダ外に突出するピストンロッドと、
    該ピストンロッドの前記基端部側に固定され、前記シリンダ内を一側室と他側室とに画成するピストンと、
    前記シリンダの底部とは反対側に設けられて前記ピストンロッドを案内するロッドガイドと、
    を備え、
    前記ピストンは、前記シリンダの内周部との間をシールするピストンバンドで外周部が構成されており、
    前記ピストンバンドの外周部には、
    前記シリンダ内に配置される前の自然状態で、
    前記ピストンロッドの前記先端部に近い側に中径部が形成され、
    前記先端部から遠い側に前記中径部よりも大径の大径部が形成され、
    前記大径部と前記中径部との間に該中径部よりも小径の小径部が形成されている
    緩衝器。
  3. 前記中径部は、前記ピストンロッドが径方向の力を受けない状態では、前記シリンダとの間に隙間を有する
    請求項1または2に記載の緩衝器。
  4. 前記ピストンバンドは、低摩擦材であって面圧が低いと摩擦係数が高くなる特性を有する材料で形成されている
    請求項1乃至3の何れか一項に記載の緩衝器。
  5. 作動流体が封入される有底筒状のシリンダと、
    基端部が前記シリンダ内に挿入され先端部が前記シリンダ外に突出するピストンロッドと、
    該ピストンロッドの前記基端部側に固定され、前記シリンダ内を一側室と他側室とに画成するピストンと、
    前記シリンダの底部とは反対側に設けられて前記ピストンロッドを案内するロッドガイドと、
    を備え、
    前記ピストンは、前記シリンダの内周部との間をシールするピストンバンドで外周部が構成されており、
    前記ピストンバンドの外周部には、
    前記シリンダ内に配置される前の自然状態で最小径部と、該最小径部から突出して設けられる第1突出部と、第2突出部と、が形成され、
    前記第1突出部と前記第2突出部とは径が異なっており、かつ離間して設けられている
    緩衝器。
  6. 前記ピストンロッドに径方向の力が作用していないときと比して、該ピストンロッドに径方向の力が作用したとき、前記ピストンバンドと前記シリンダ内周部との接触面積は大きくなる
    請求項5に記載の緩衝器。
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