JPWO2019203108A1 - 摺動部品 - Google Patents

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Abstract

摺動部品は、外面に樹脂部を有する第1摺動部材と、前記樹脂部に対して摺動する金属部を有する第2摺動部材とを含み、前記第1摺動部材の前記樹脂部は、強化フィラーを含有し、粘度数VNが180ml/g以上の樹脂からなり、前記強化フィラーは、前記第2摺動部材の前記金属部の硬度よりも高い硬度を有している。前記摺動部品において、前記強化フィラーのビッカース硬さが300HV〜800HVであり、前記金属部のビッカース硬さが250HV〜600HVであることが好ましい。

Description

本発明は、摺動部品に関する。
特許文献1は、内輪と、外輪と、内輪と外輪の両軌道面間に配置される転動体である玉と、玉を円周方向に等配して転動自在に保持する保持器と、外輪の両端に固定された一対のシールと、外輪の外周部と端面部とを覆うように配設される樹脂部とを備えるスライドドア用転がり軸受を開示している。樹脂部は、たとえば、ポリアミド66に補強材としてガラス繊維を配合した樹脂組成物で構成されている。
特許文献2は、数平均分子量が22000〜40000の範囲にあるポリアミド66を30〜90重量%、そして平均繊維径が9.1μm以上であるガラス繊維を10〜70重量%含むポリアミド樹脂組成物により成形されてなる、電動パワーステアリング装置用ギヤを開示している。
特開2007−315483号公報 特開2013−155788号公報
たとえば特許文献1に記載の転がり軸受のように、ガラス繊維等の強化繊維を樹脂が含有する場合、摺動によって強化繊維が樹脂から脱落し、研磨材のように作用して樹脂を疲労はく離させる可能性がある。また、脱落した強化繊維が相手金属材(たとえば、スライドドアのガイレール、電動パワーステアリング(EPS)の減速機の金属ウォームシャフト等)を攻撃し、摩耗粉の混入によって、樹脂の摩耗が促進され、早期に破損に至る可能性もある。
本発明の目的は、樹脂部の摩耗を従来に比べて低減することができる摺動部品を提供することである。
本発明の摺動部品(19)は、外面に樹脂部(31)を有する第1摺動部材(21)と、前記樹脂部(31)に対して摺動する金属部(20)を有する第2摺動部材(20)とを含み、前記第1摺動部材(21)の前記樹脂部(31)は、強化フィラー(63)を含有し、粘度数VNが180ml/g以上の樹脂(47)からなり、前記強化フィラー(63)は、前記第2摺動部材(20)の前記金属部(20)の硬度よりも高い硬度を有している(請求項1)。
この構成によれば、第1摺動部材の樹脂部の粘度数VNが180ml/g以上であり、かつ、強化フィラーが、第2摺動部材の金属部よりも高い硬度を有しているので、従来にはない、優れた耐摩耗性を発現することができる。さらに、樹脂部に強化フィラーが含有されているので、フィラー等が含有されていない樹脂を使用する場合に比べて、耐クリープ性を向上させることができる。
本発明の摺動部品(19)では、前記強化フィラー(63)のビッカース硬さが300HV〜800HVであり、前記金属部(20)のビッカース硬さが250HV〜600HVであってもよい(請求項2)。
この構成によれば、第1摺動部材の樹脂部の摩耗量を低減できるとともに、第2摺動部材の金属部の摩耗量も低減することができる。
本発明の摺動部品(19)では、前記第1摺動部材(21)の前記樹脂部(31)の粘度数VNが、230ml/g〜400ml/gであってもよい(請求項3)。
第1摺動部材の樹脂部の粘度数VNが上記範囲であれば、樹脂部の摩耗量を効果的に低減することができる。
本発明の摺動部品(19)では、前記第1摺動部材(21)の前記樹脂部(31)および前記第2摺動部材(20)の前記金属部(20)が、互いに噛み合うギヤを含んでいてもよい(請求項4)。
本発明の摺動部品(19)では、前記第1摺動部材(21)が、歯部(31)が形成された前記樹脂部を有するウォームホイール(21)を含み、前記第2摺動部材(20)が、前記ウォームホイール(21)の前記歯部に噛み合うウォーム(20)を含んでいてもよい(請求項5)。
本発明の摺動部品(19)では、前記強化フィラー(63)が、強化繊維(63)を含んでいてもよい(請求項6)。
本発明の摺動部品(19)では、前記強化繊維(63)が、ガラス繊維であってもよい(請求項7)。
この構成によれば、前記第1摺動部材の前記樹脂部および前記第2摺動部材の前記金属部が互いに噛み合うギヤである場合に、樹脂部の耐摩耗性および耐クリープ性を両立できることに加え、優れたじん性を発現することもできる。
本発明の摺動部品(19)では、前記強化繊維(63)が、炭素繊維であってもよい(請求項8)。
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
図1は、ステアリング装置の概略図である。 図2は、ステアリング装置に備えられるウォーム減速機における要部の側面図である。 図3は、ウォームホイール用の原料樹脂の調製に関連する工程を説明するための図である。 図4は、前記ウォームホイールの成形およびアニール処理に関連する工程を説明するための図である。 図5は、実施例および比較例の樹脂の高さ減少量を示す図である。 図6は、成形体の粘度数VNと樹脂の摩耗量との関係を示す図である。 図7は、成形体の粘度数VNと金属の摩耗量との関係を示す図である。 図8は、樹脂の摩耗量と金属の摩耗量との関係を示す図である。 図9は、金属の硬度と樹脂の高さ減少量との関係を示す図である。 図10は、金属の硬度と金属の摩耗量との関係を示す図である。 図11は、実施例および比較例の長期耐久寿命の評価結果を示す図である。 図12は、ころ式試験(耐摩耗性)の評価結果を示す図である。 図13は、引張破断伸びの評価結果を示す図である。 図14は、引張破断エネルギーの評価結果を示す図である。 図15は、金属の硬度と樹脂の高さ減少量との関係を示す図である。 図16は、金属の硬度と樹脂の高さ減少量との関係を示す図である。 図17は、金属の硬度と金属の摩耗量との関係を示す図である。 図18は、成形体の粘度数VNと樹脂の高さ減少量との関係を示す図である。
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、ステアリング装置1の概略図である。図1を参照して、ステアリング装置1は、電動式パワーステアリング装置であって、操舵機構2および転舵機構3を含み、運転者のステアリングホイール4(操舵部材)の操舵(ステアリング操作)に基づき、転舵輪5を転舵させる。操舵機構2は、運転者のステアリング操作を補助するアシスト機構6を備えている。
操舵機構2は、入力シャフト7、出力シャフト8、インターミディエイトシャフト9およびピニオンシャフト10を有している。入力シャフト7は、ステアリングホイール4に連結されている。出力シャフト8では、一端がトーションバー11を介して入力シャフト7に連結され、他端が自在継手12を介してインターミディエイトシャフト9に連結されている。インターミディエイトシャフト9は、自在継手13を介して、ピニオン10Aを有するピニオンシャフト10に連結されている。
転舵機構3は、ラックシャフト14およびタイロッド15を有している。ラックシャフト14は、ピニオン10Aに噛み合ったラック14Aを有している。タイロッド15は、一端がラックシャフト14に連結されて、他端が転舵輪5に連結されている。
運転者のステアリングホイール4の操作に応じて、ステアリングホイール4が回転すると、入力シャフト7、出力シャフト8およびインターミディエイトシャフト9を介して、ピニオンシャフト10が回転する。ピニオンシャフト10の回転は、転舵機構3により、ラックシャフト14の軸方向の往復運動に変換される。ラックシャフト14の軸方向の往復運動により、転舵輪5の転舵角が変化する。
アシスト機構6は、トルクセンサ16と、ECU(Electronic Control Unit) 17と、補助操舵用の電動モータ18と、本発明の摺動部品の一例としてのウォーム減速機19とを含む。
ウォーム減速機19は、本発明の第2摺動部材の一例としてのウォーム20と、ウォーム20と噛み合うリダクションギヤである本発明の第1摺動部材の一例としてのウォームホイール21と、ウォーム20およびウォームホイール21を収容するハウジング22とを含む。ウォーム20は、電動モータ18の回転軸(図示せず)に連結されている。ウォームホイール21は、出力シャフト8に一体回転可能に連結されている。
運転者の操舵に伴ってステアリングホイール4が回転すると、トルクセンサ16は、入力シャフト7と出力シャフト8との間の捩れ量を検出する。ECU17は、トルクセンサ16により検出された捩れ量から得られる操舵トルクTや、車速センサ23によって検出された車速V等に基づいてアシストトルクを決定する。電動モータ18は、ECU17により駆動制御される。このようにステアリングホイール4の操舵に基づいて駆動された電動モータ18は、ウォーム20に出力回転を伝達してウォーム20を回転させる。すると、ウォーム20と噛み合ったウォームホイール21がウォーム20よりも低速で回転し、ウォームホイール21および出力シャフト8が一体回転する。このように、ウォーム減速機19は、電動モータ18の出力回転をウォームホイール21によって減速し、アシストトルクとして操舵機構2の出力シャフト8に伝達する。これにより、運転者によるステアリングホイール4のステアリング操作が補助される。
次に、ウォーム減速機19について詳しく説明する。図2は、ウォーム減速機19における要部の側面図である。
図2では、前述したハウジング22の図示が省略されている。図2を参照して、ウォーム20は、金属製であり、円柱状の軸部26と、軸部26の外周面26Aに一体形成された歯27とを含む。
ウォーム20を構成する金属材料としては、たとえば、S25C、S43C、S45C、S55C等の炭素鋼、たとえば、SUJ2、SCM435、SCM440等の合金鋼等を適用することができる。また、ウォーム20の硬度は、たとえば、JISZ 2244(2009)に準拠して測定されたビッカース硬さが、250HV〜600HVであり、好ましくは、250HV〜450HVであってもよい。ウォーム20の硬度は、たとえば、生材あるいは熱処理(焼入れ、焼戻し等)を行った金属部材に対し転造や研削によってウォーム20に歯形成加工を行った後、熱処理(焼入れ、焼戻し等)を省略したり、熱処理の温度・時間を調節したりすることによって、所望の値に調節することができる。なお、ウォーム20は、この実施形態のように全体が金属部である必要はなく、ウォームホイール21の歯部31に噛み合う摺動部分が選択的に金属で構成されていてもよい。
歯27は、中心軸Jを中心とした螺旋を描くように、外周面26Aにおいて軸方向Xの両端部よりも内側の領域に形成されている。中心軸Jの延びる方向から見たときの歯27は、中心軸Jを円中心とする円形状の輪郭を有している。
中心軸Jの延びる方向における軸部26の両端部には、軸受28が1つずつ取り付けられており、ウォーム20は、これらの軸受28を介してハウジング22によって回転自在に支持されている。当該方向における軸部26の一端部(図2では右端部)において軸受28からはみ出した部分には、継手29が取り付けられている。継手29は、電動モータ18の回転軸(図示せず)に連結されている。そのため、前述したように、電動モータ18が駆動されるとウォーム20が中心軸Jまわりに回転する。
ウォームホイール21は、円盤形状である。ウォームホイール21の中心軸Kは、ウォームホイール21の厚さ方向と一致した軸方向Yに延びている。
ウォームホイール21は、中心軸K側に位置する円盤状のスリーブ30と、中心軸Kから径方向外側へ離れた外周側においてスリーブ30を取り囲む環状の歯部31とを含む。たとえば、インサート成形により、樹脂製の歯部31が金属製のスリーブ30に一体化されてもよい。歯部31について、より具体的には、後述する製法によって得られる、強化繊維を含有する樹脂で構成されていてもよい。スリーブ30の円中心位置には、出力シャフト8が嵌め込まれる挿通穴30Aが形成されている。
次に、ウォームホイール21の製造方法を説明する。図3は、原料樹脂47の調製に関連する工程を説明するための図である。図4は、ウォームホイール21の成形およびアニール処理に関連する工程を説明するための図である。
まず、この実施形態では、ウォームホイール21の歯部31(樹脂部)を、強化繊維を含有する粘度数VNが180ml/g以上(好ましくは、230ml/g〜400ml/g)の樹脂で形成する。そのために、たとえば、下記の2つの手法が採用されてもよい。なお、当該樹脂部の粘度数VNは、たとえば、ISO307に準拠して測定された粘度数VNである。より具体的には、ギ酸、硫酸、クレゾール等の溶媒に、濃度cが0.005g/mlとなるように原料樹脂47を溶解させることによって、原料樹脂溶液を得る。そして、原料樹脂溶液の粘度と溶媒のみの粘度との動粘度比(マイクロウベローデ管における標線管落下時間の比)から相対粘度ηrelを算出し、その後、濃度cと相対粘度ηrelとの比から、粘度数VNを算出することができる。
そして、第1の手法は、ウォームホイール21の歯部31の原料樹脂47のベース樹脂として、比較的高い粘度数VNを有する高分子量樹脂を使用する。当該ベース樹脂の粘度数VNとしては、たとえば、200ml/g以上であり、数平均分子量Mnは、たとえば、30000〜60000である。樹脂の種類としては、たとえば、ポリアミド樹脂を使用でき、上記特性を満たす具体的な市販品としては、たとえば、旭化成社製のレオナ1502S、レオナ1702、たとえば、Dupont社製のザイテルE45、ザイテルE50、ザイテルE51HSBNC010、ザイテルE53、たとえば、BASF社製のA5H等が挙げられる。
第2の手法は、たとえば、ウォームホイール21の歯部31の原料樹脂47のベース樹脂としてポリアミド樹脂を使用し、ポリアミド樹脂中の官能基との反応性を有する添加剤を、強化繊維と共に混練することによって、擬似的に高分子量化(架橋)させる。または、混練後の成形時に、当該添加剤とポリアミド樹脂とを反応させ、擬似的に高分子量化(架橋)させる。これにより、ポリアミド樹脂を高分子量化させることができ、上記条件を満たす粘度数VNを有する樹脂部(歯部31)を備えるウォームホイール21を得ることができる。
また、上記第1および第2の手法においては、たとえば、原料樹脂47を調製し、ウォームホイール21を成形した後、当該ウォームホイール21を、減圧下または不活性ガス雰囲気下において加熱処理してもよい。これにより、樹脂部に緻密な架橋構造を形成でき、粘度数や結晶化度をさらに高くすることができる。
以下、上記第1および第2の手法のプロセスを、より具体的に説明する。
まず、ウォームホイール21を構成する原料樹脂47を調製する。原料樹脂47の調製には、たとえば、図3に示す混練機48を使用する。
混練機48は、たとえば、本体49、タンク50、冷却水槽51およびペレタイザ52を主に備えている。
本体49は、メインフィーダ53、シリンダ54、スクリュー55およびノズル56を備え、メインフィーダ53とノズル56との間(メインフィーダ53の下流側)には、サイドフィーダ57が取り付けられている。本体49としては、特に制限されず、たとえば、二軸(多軸)押出機、一軸押出機等の公知の混練機を使用できる。
タンク50の上流側には、攪拌機58が備えられている。攪拌機58で混合された原料は、タンク50およびその下流側のベルト式重量計59を介して、本体49のメインフィーダ53に供給される。
そして、原料樹脂47を調製するには、まず、ポリアミド樹脂60および任意の添加剤を、共通の投入箇所としてのメインフィーダ53を介してシリンダ54に供給する。ポリアミド樹脂60および任意の添加剤は、それぞれ単体でタンク50に投入して供給してもよいし、攪拌機58で混合(ドライブレンド、マスターバッチ化)してから供給してもよい。
ポリアミド樹脂60としては、たとえば、脂肪族ポリアミド(PA6、PA66、PA46、PA410、PA12、PA612、PA610、PA11等)、芳香族ポリアミド(PA6T、PA9T、PA10T、PA6T/X、PAMXD6、PPA)等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、脂肪族ポリアミドを使用し、さらに好ましくは、ポリアミド66(PA66)を使用する。また、これらは、単独使用または2種以上併用することができる。使用するポリアミド樹脂の数平均分子量Mnは、前述の第1の手法を採用する場合には、たとえば、30,000〜60,000であり、粘度数VNは、たとえば、200ml/g〜400ml/gであってもよい。一方、第2の手法を採用する場合には、使用するポリアミド樹脂の数平均分子量Mnは、たとえば、18,000〜40,000であり、粘度数VNは、たとえば、110ml/g〜280ml/gであってもよい。また、メインフィーダ53に投入するベース樹脂は、ポリアミド樹脂60の他、たとえば、熱可塑性エラストマー(酸変性されたエチレン系エラストマー、EGMA、EPDM、ポリアミドエラストマー等)を含んでいてもよい。熱可塑性エラストマーを配合することで、耐衝撃性の向上を図ることができる。
また、ポリアミド樹脂60の配合割合は、たとえば、前述の第1の手法を採用する場合には、原料樹脂47の調製に使用する材料の総量に対して10質量%〜95質量%であり、第2の手法を採用する場合には、同総量に対して55質量%〜95質量%であってもよい。
また、任意の添加剤としては、好ましくは、潤滑剤を配合してもよい。潤滑剤によって、原料樹脂47の分子間の滑り効果を得ることができるので、原料樹脂47の分子量が高くても比較的低い温度で成形することができる。そのため、成形時の樹脂の熱分解を抑制でき、原料樹脂47の分子量を高く維持したまま成形できるので、原料樹脂47の機械的強度や耐摩耗性を良好に維持することができる。
潤滑剤としては、特に制限されない。たとえば、ステアリン酸金属塩等の金属石鹸系、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックス等の炭化水素系、ステアリン酸等の脂肪酸系、ステアリルアルコール等の高級アルコール系、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪族アミド系、アルコールの脂肪酸エステル等のエステル系、シリコーン系化合物等、公知の潤滑剤を使用できる。これらのうち、好ましくは、金属石鹸系を使用し、さらに好ましくは、ステアリン酸金属塩を使用する。潤滑剤を配合する場合の配合割合は、たとえば、原料樹脂47の調製に使用する材料の総量に対して0.01質量%〜1質量%であってもよい。
そして、シリンダ54に供給されたポリアミド樹脂60、および必要により加えた添加剤を、スクリュー55の回転によって混練する。混練条件は、たとえば、シリンダ54の温度が275℃〜325℃であり、スクリュー55の回転速度が100rpm〜500rpmであってもよい。
次に、本発明の強化フィラーの一例としての強化繊維63およびカルボジイミド結合を有する化合物(以下、単に「カルボジイミド」という)61(第2の手法を採用する場合)を、サイドフィーダ57を介して、シリンダ54に供給する。
使用する強化繊維63としては、たとえば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の1種または2種以上が挙げられる。これらのうち、好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維が挙げられ、さらに好ましくは、ガラス繊維が挙げられる。
また、強化繊維63のビッカース硬さは、300HV〜800HVであってもよい。また、強化繊維63がガラス繊維の場合のビッカース硬さは、好ましくは、500HV〜800HVであってもよい。一方、強化繊維63が炭素繊維の場合のビッカース硬さは、好ましくは、300HV〜500HVであってもよい。強化繊維63のビッカース硬さは、たとえば、バルク状態の強化繊維63の硬度を、たとえばJISZ 2244(2009)に準拠して測定し、得られた測定値を、強化繊維63のビッカース硬さHVとして採用することができる。また、強化繊維63のビッカース硬さは、たとえば、樹脂成形体中の強化繊維のナノインデンテーション硬さをナノインテンダーで測定し(ISO14577準拠)、ISO 14577 Annex Fに記載の数式を用いて、当該ナノインデンテーション硬さをビッカース硬さに換算することによって得てもよい。
また、強化繊維63は、φ6μm〜φ15μmの径を有していることが好ましく、φ6μm〜φ8μmの径を有していることが、さらに好ましい。この範囲の径を有する強化繊維63を配合することによって、原料樹脂47において強化繊維63とポリアミド樹脂60との接触面積を比較的大きくできるので、ウォームホイール21を成形したときに、スリーブ30の機械的強度および剛性を良好に向上させることができる。すなわち、より少ない強化繊維63の量でスリーブ30の機械的強度等を確保できるため、歯部31の摩耗の発生因子である強化繊維63の量を抑え、耐摩耗性を向上させることができる。また、強化繊維63の径が小さいほど相手攻撃性が低いため、樹脂を摩耗・剥離させる影響が小さく、この点においても耐摩耗性を向上させることができる。さらに、細径の強化繊維63を使用することによって、繊維のアスペクト比および樹脂との接触面積を大きくできるので、強度や剛性、じん性を向上させることができる。
また、強化繊維63の配合割合は、たとえば、原料樹脂47の調製に使用する材料の総量に対して5質量%〜40質量%、好ましくは、5質量%〜20質量%であってもよい。この範囲で強化繊維63を配合することによって、高温雰囲気下における耐クリープ性を向上させることができ、また、樹脂の発生面圧の増大を抑制し、異常摩耗の発生を抑制することができる。また、面粗さを比較的小さく抑えることができ、グリースによる潤滑効果を十分に享受することができる。
使用するカルボジイミド61としては、カルボジイミド基(−N=C=N−)を有する化合物であれば特に制限されず、カルボジイミド基を1つ有するモノカルボジイミドであってもよいし、カルボジイミド基を複数有するポリカルボジイミドであってもよい。また、脂肪族系カルボジイミド、芳香族系カルボジイミド、カルボジイミド変性体等のあらゆる種類のカルボジイミドを使用できる。具体的な市販品としては、たとえば、ランクセス社製(芳香族カルボジイミド「スタバックゾール(登録商標)」の各グレード(P100、P等))、日清紡ケミカル社製(脂肪族カルボジイミド「カルボジライト(登録商標)」の各グレード(HMV−15CA等))、帝人社製(環状カルボジイミド「TCC」の各グレード)等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、芳香族カルボジイミドが挙げられる。芳香族カルボジイミドであれば、反応速度が遅く、強化繊維63が十分に混練された後に反応させることができる。
また、カルボジイミド61の配合割合は、たとえば、原料樹脂47の調製に使用する材料の総量に対して0.5質量%〜3.5質量%であってもよい。この範囲でカルボジイミド61を配合することによって、粘度数VNが180ml/g以上の原料樹脂47を良好に得ることができる。一方、カルボジイミド61が過量でないので、混練中の樹脂圧力(粘度)の増大、発熱および当該発熱に伴う、ポリアミド樹脂60およびカルボジイミド61の熱分解等のリスクを軽減することもできる。したがって、原料樹脂47を安定して得ることができる。
また、カルボジイミド61は、カルボジイミド61が粉末の場合には、たとえば、メインフィーダ53あるいはサイドフィーダ57から単体で供給してもよいし、ポリアミド樹脂と混合(ドライブレンド、マスターバッチ化)してから供給してもよい。
そして、シリンダ54内を移送中のポリアミド樹脂60および必要により加えた添加剤からなる混練物に、強化繊維63およびカルボジイミド61が加えられ、さらに混練する。カルボジイミド61の供給から当該混練物をノズル56から射出するまでの時間(カルボジイミド61の混練時間)は、たとえば、1秒間〜1分間であってもよい。したがって、サイドフィーダ57のノズル56からの距離は、当該混練時間を目安に設定すればよい。
カルボジイミド61の供給後、混練物をストランド状の原料樹脂47としてノズル56から射出し、冷却水槽51で冷却固化した後、ペレタイザ52でペレット化する。以上の工程を経て、ポリアミド樹脂60からなる原料樹脂47が得られる。
ウォームホイール21の製造に関して、次の工程は、ウォームホイール21の成形である。
この工程では、図4に示す成形機62に金型(図示せず)を準備し、この金型内に、図3の工程で得られた原料樹脂47(ペレット)を溶融させて射出する。金型は、歯切り前の円盤状のウォームホイール21を成形する型を有していてもよい。射出後、一定時間冷却して原料樹脂47を固化させた後、成形されたウォームホイール21を金型から取り出す。
次に、ウォームホイール21を減圧下または不活性ガス雰囲気下において加熱処理する場合には、図4に示すように、当該円盤状のウォームホイール21を、アニーリング装置24にセットする。そして、アニーリング装置24の槽内を減圧するか、不活性ガスで置換することによって、槽内の酸素量を低減する。
アニーリング装置24の槽内を減圧する場合、減圧後の圧力は、たとえば、1Pa以下(好ましくは、1.0×10−3Pa以上)であってもよい。また、減圧は、たとえば、ロータリポンプ等の公知の真空ポンプ25で行うことができる。一方、アニーリング装置24の槽内の空気との置換に使用する不活性ガスとしては、たとえば、窒素、アルゴン等が挙げられる。
減圧または不活性ガス置換の後、ウォームホイール21が、アニーリング装置24内で加熱される。加熱温度および加熱時間は、加熱対象となる樹脂成形体の形状(この実施形態では、円盤状のウォームホイール21)や大きさによって好ましい範囲が異なるが、たとえば、200℃以上(好ましくは、240℃以下)、3時間以上(好ましくは、20時間以下)であってもよい。
加熱後、アニーリング装置24からウォームホイール21を取り出し、ウォームホイール21の歯部31の歯切り(歯を形成)を行って、図2に示すウォームホイール21が得られる。
以上、この実施形態のウォーム減速機19によれば、ウォームホイール21の歯部31(樹脂部)の粘度数VNが180ml/g以上であり、かつ、歯部31に含有される強化繊維63が、相手金属材であるウォーム20の硬度よりも高い硬度を有しているので、従来にはない、優れた耐摩耗性を発現することができる。つまり、相対的に高い硬度を有する強化繊維63を含有する樹脂(歯部31)の摩耗が抑制される一方で、相対的に低い硬度を有する金属(ウォーム20)は摩耗し、グリース中に金属摩耗粉が混入するが、強化繊維63の硬度がウォーム20よりも高いため、強化繊維63を含有する樹脂の摩耗が抑制される。これにより、ウォーム減速機19の樹脂製ギヤの寿命を向上させることができる。
したがって、ウォーム20に対して、摩耗を緩和させるための歯切り後の熱処理加工を省略することができる。そのため、工程数の増加を防止できると共に、熱処理による寸法変化やウォーム精度の低下を抑制することができる。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、ウォームホイール21は、金属製等のスリーブ30に、上記原料樹脂47を用いた樹脂製の歯部31が密着した構成であるとしたが、たとえば、ウォームホイール21は、上記原料樹脂47を一体成形して構成されたスリーブ30および歯部31を備えていてもよい。
また、前述の実施形態では、本発明の摺動部品の一例としてウォーム減速機19を取り上げたが、本発明は、ウォーム減速機の他、自動車のスライドドア用の金属製ガイドレールおよび当該レールに組み込まれる樹脂製ローラ、金属製のボールおよび当該ボールを保持する樹脂製保持器を備える転がり軸受等の各種摺動部品に適用することができる。
また、カルボジイミド61は、サイドフィーダ57から供給しなくてもよく、また、ポリアミド樹脂60の混練途中に供給しなくてよい。たとえば、ポリアミド樹脂60と混合してメインフィーダ53から供給してもよい。
さらに、原料樹脂47を強化するための添加剤として、強化繊維63に代えて、フィラーを含有してもよい。フィラーとしては、たとえば、ガラスフレーク等の板状のフィラー、あるいはカーボンナノチューブやカーボンナノファイバ等の微細強化が可能なフィラー等が挙げられる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
本出願は、2018年4月16日に日本国特許庁に提出された特願2018−078502号に対応しており、この出願の全開示はここに引用により組み込まれるものとする。
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
<実施例1〜7および比較例1〜4>
まず、下記表1に関して、試験No.(1)〜(5)が、それぞれ、実施例1〜5である。表2に関して、試験No.(6)〜(9)が、それぞれ、比較例1〜4であり、試験No.(10)および(11)が、それぞれ、実施例6および7である。
実施例1〜7および比較例1〜4は、主として、成形体の粘度数VNが180ml/g以上であれば(相手金属材の硬度は固定値)、樹脂の耐摩耗性が向上できる傾向を示すものである。
(A)原料樹脂の準備
図3で示した構成の混練機48において、表1および表2に示す樹脂、強化繊維および添加剤を、表1および表2に示す配合割合(質量%)で混練し、原料樹脂ペレットを得た。なお、樹脂をメインフィーダ53に投入し、強化繊維および添加剤はサイドフィーダ57に投入した。また、原料樹脂の準備に先立って、使用される強化繊維(ガラス繊維)のビッカース硬さを求めた。より具体的には、ガラス繊維のナノインデンテーション硬さをナノインテンダーで測定し(ISO14577準拠 試験力:4000μN、試験力到達時間:5s、試験力保持時間:2s)、ISO 14577 AnnexFに記載の数式(ビッカース硬さHV=0.0945×ナノインデンテーション硬さ(N/mm))を用いて、当該ナノインデンテーション硬さをビッカース硬さに換算した。結果を、表1および表2に示す。
(B)成形およびアニール処理
ファナック社製の100t電動式射出成形機(ROBOSHOT S−2000:100B)を用いて、(A)で得られた各原料樹脂ペレットから、鈴木式摩擦摩耗試験用リング片(以下、試験片)を成形した。試験No.(2)および(5)については、その試験片をアニーリング装置24にセットした。そして、アニーリング装置24の槽内を真空ポンプ25で減圧して真空(1Pa以下)にし、槽内温度を220℃として、試験片を10時間加熱した。
また、試験片に関しては、歯切り後の樹脂ギヤの歯面状態を再現するため、摩擦摩耗試験における摺動面となる側から3mm程度切削し、摺動面に強化繊維が露出するようにした。
<評価試験>
(A)成形体の粘度数測定
ISO307に準拠して、ギ酸、硫酸、クレゾール等の溶媒に、濃度cが0.005g/mlとなるように試験No.(1)〜(11)の各原料樹脂を溶解させることによって、原料樹脂溶液を得た。そして、原料樹脂溶液の粘度と溶媒のみの粘度との動粘度比(マイクロウベローデ管における標線管落下時間の比)から相対粘度ηrelを算出し、その後、濃度cと相対粘度ηrelとの比から、粘度数VNを算出した。結果を、表1および表2に示す。
(B)摩擦摩耗試験
試験No.(1)〜(11)について、ビッカース硬さHV784のSUJ2製金属ころ(熱処理(焼入れ・焼戻し)有り)を用いて鈴木式摩擦摩耗試験を実施し、試験前後での樹脂の摩耗量(高さ減少量)を測定した。結果を、図5、表1および表2に示す。また、同様に、ビッカース硬さHV311のS45C製金属ころ(熱処理無し)を用いた試験も、同じ条件で実施した。なお、試験の条件は、次の通りとした。
・金属ころ−樹脂リングによる摺動
・金属ころ:SUJ2/S45C製、φ3.5、4点ころ(固定)
・垂直荷重:220N
・摺動速度:1m/s
・試験温度:室温(RT)
・試験時間:4時間
・グリース潤滑(NOKクリューバ製TOPAS NB52)
・駆動−停止による断続接触(10秒駆動→20秒停止)
まず、実施例としての試験No.(1)〜(5)、(10)および(11)と、比較例としての試験No.(6)〜(9)との比較によって、成形体の粘度数VNが180ml/g以上であれば、高い耐摩耗性を発現できることが分かった。また、強化繊維の添加量のみが異なる試験No.(1)と(10)との比較、および試験No.(3)と(11)とに比較によって、強化繊維の添加量は20質量%以下が好ましいことが分かった。つまり、強化繊維の添加量が増えると、その分、樹脂の弾性率が高くなって発生面圧が増大し、異常摩耗が発生しやすくなると考えられる。
一方で、試験No.(8)と(9)とを比較すると、試験No.(8)の方が強化繊維の添加量が多いにも関わらず、樹脂の高さ減少量が少なく、試験No.(9)に比べて高い耐摩耗性を発現している。これは、試験No.(8)が(9)よりも細径(φ6.5)の強化繊維を使用しているためであると考えられる。つまり、高面圧摺動下では、強化繊維含有樹脂の摩耗モードとして、摺動によって脱落した強化繊維が研磨材のように作用し、自樹脂を疲労剥離させることがある。この場合に、より細径の強化繊維を使用していれば、相手攻撃性を緩和できるため、樹脂の摩耗量が減ると考えられる。
(C)相手金属材との関係について
次に、相手金属材(金属ころ)の硬度によって、樹脂の摩耗量および金属の摩耗量がどのように変化するのかを評価した。より具体的には、前記(B)で記載したように、ビッカース硬さHV784のSUJ2製金属ころを使用した結果と、ビッカース硬さHV311のS45C製金属ころを使用した結果とを比較した。その結果を、図6〜図8に示す。なお、評価にあたっては、ガラス繊維(GF)が15質量%添加されたサンプルとして試験No.(1)および(6)を使用した。
図6〜図8の結果から、成形体の粘度数VNの増加に伴って樹脂の摩耗量を低減できるとともに(図6)、相手金属材の摩耗量も低減できることが分かった(図7)。つまり、樹脂の耐摩耗性が向上することによって、金属側の摩耗量も低減されることを確認した。これは、樹脂の耐摩耗性の向上によって、樹脂中の強化繊維の脱落ならびにグリースの混入が抑制されるため、硬質な強化繊維が研磨材のように作用し、樹脂や金属を摩耗させる、アブレッシブ摩耗が抑制されるためである。樹脂の高分子量化(粘度数VNの増加)によって、従来の繊維強化樹脂と相手金属材(熱処理による高硬度化有り)との組み合わせと同等レベルの金属摩耗量が、繊維強化樹脂と熱処理無しの相手金属材との組み合わせでも得られることが確認され、樹脂の耐摩耗性を一層向上できることが併せて確認できた。
Figure 2019203108
Figure 2019203108
<実施例8〜16および比較例5〜9>
まず、下記表3および表4に関して、試験No.(12)〜(14)、(18)、(20)〜(22)、(24)および(25)が、それぞれ、実施例8〜16であり、試験No.(15)〜(17)、(19)および(23)が、それぞれ、比較例6〜8である。
実施例8〜16および比較例5〜9は、主として、相手材金属の硬度が250HV〜600HVであり、かつ強化繊維の硬度>相手金属材の硬度であれば、樹脂の耐摩耗性が向上できる傾向を示すものである。つまり、前述の実施例1〜7および比較例1〜4では、樹脂の粘度数VNの増減によって、樹脂の摩耗量および金属の摩耗量がどのように変化するのかを評価したが、以下では、強化繊維の硬度と相手金属材の硬度との大小関係が、樹脂の摩耗量および金属の摩耗量にどのように影響するのかを評価した。
(A)原料樹脂の準備
図3で示した構成の混練機48において、表3および表4に示す樹脂および強化繊維を、表3および表4に示す配合割合(質量%)で混練し、原料樹脂ペレットを得た。なお、樹脂をメインフィーダ53に投入し、強化繊維はサイドフィーダ57に投入した。そして、この原料樹脂の粘度数VNを、前述の実施例1〜7および比較例1〜4と同様に測定した。また、原料樹脂の準備に先立って、使用される強化繊維(ガラス繊維)のビッカース硬さを求めた。より具体的には、ガラス繊維のナノインデンテーション硬さをナノインテンダーで測定し(ISO14577準拠 試験力:4000μN、試験力到達時間:5s、試験力保持時間:2s)、ISO 14577 AnnexFに記載の数式(ビッカース硬さHV=0.0945×ナノインデンテーション硬さ(N/mm))を用いて、当該ナノインデンテーション硬さをビッカース硬さに換算した。結果を、表3および表4に示す。
(B)成形およびアニール処理
ファナック社製の100t電動式射出成形機(ROBOSHOT S−2000:100B)を用いて、(A)で得られた各原料樹脂ペレットから、鈴木式摩擦摩耗試験用リング片(以下、試験片)を成形した。
また、試験片に関しては、歯切り後の樹脂ギヤの歯面状態を再現するため、摩擦摩耗試験における摺動面となる側から3mm程度切削し、摺動面に強化繊維が露出するようにした。
(C)相手金属材(金属ころ)の準備
相手金属材として、表3に示す条件にて熱処理(焼入れ、焼戻し)を行った金属ころを準備した。なお、表3の熱処理条件において、「O.Q.」は、加熱後の金属ころをオイルで冷却(Oil Quenching)していることを示し、「A.C.」は、加熱後の金属ころを空気で冷却(Air Cooling)していることを示している。そして、得られた各金属ころのビッカース硬さを、JIS Z 2244(2009)に準拠して測定した。結果を、表3に示す。また、表4で示した相手金属材としては、熱処理をしないでそのまま用いた。
<評価試験>
(A)摩擦摩耗試験
試験No.(12)〜(25)について、各金属ころを用いて鈴木式摩擦摩耗試験を実施し、試験前後での樹脂の摩耗量(高さ減少量)および金属の摩耗量を測定した。結果を、図9〜図10、表3および表4に示す。なお、試験の条件は、次の通りとした。
・金属ころ−樹脂リングによる摺動
・金属ころ:φ3.5、4点ころ(固定)
・垂直荷重:220N(試験No.(12)〜(18))
・垂直荷重:350N(試験No.(19)〜(25))
・摺動速度:1m/s
・試験温度:室温(RT)
・試験時間:4時間
・グリース潤滑(協同油脂製マルテンプJS−P)
・駆動−停止による断続接触(10秒駆動→20秒停止)
(B)樹脂の摩耗量の評価
図9に示すように、試験No.(12)〜(14)および(18)の方が、試験No.(15)〜(17)に比べて、樹脂の摩耗量(高さ減少量)が少なく、高い耐摩耗性を発現している。つまり、表3に示すように、相手金属材(金属ころ)の硬度が250HV〜600HVであり、さらに、強化繊維が相手金属材(金属ころ)よりも高い硬度を有していることによって、高い耐摩耗性を発現できることが分かった。
また、表4に示すように、試験No.(20)〜(22)、(24)および(25)の方が、試験No.(19)および(23)に比べて、樹脂の摩耗量(高さ減少量)が少なく、高い耐摩耗性を発現している。つまり、相手金属材(金属ころ)の硬度が250HV〜600HVであり、かつ強化繊維が相手金属材(金属ころ)よりも高い硬度を有している条件に加え、成形体の粘度数VNが180ml/g以上であれば、垂直荷重=350Nという高荷重に対しても、高い耐摩耗性を発現できることが分かった。
(C)金属の摩耗量の評価
一方で、成形体の粘度数VNが180ml/g未満であり、強化繊維の硬度が530HVである場合、試験No.(13)および(14)のように、相手金属材(金属ころ)の硬度が400HV〜550HVであれば、樹脂の摩耗量を低減できるとともに、相手金属材の摩耗量も低減できることが分かった(図10参照)。これは、相対的に高い硬度を有する強化繊維を含有する樹脂の摩耗が抑制される一方で、相対的に低い硬度を有する金属は摩耗し、グリース中に金属摩耗粉が混入するが、強化繊維の硬度が金属よりも高いため、強化繊維を含有する樹脂の摩耗が抑制されるためであると考えられる。ただし、金属の摩耗量の低減を目的としないならば、試験No.(12)のように、相手金属材の熱処理を省略でき、製造効率を向上できるという効果が得られる。
また、表4に示すように、試験No.(20)〜(22)、(24)および(25)の方が、試験No.(19)および(23)に比べて、金属の摩耗量(高さ減少量)が少なく、高い耐摩耗性を発現している。
以上、試験No.(1)〜(11)と、試験No.(12)〜(25)との結果をまとめると、成形体の粘度数VNが180ml/g以上であり、かつ、成形体に含有される強化繊維が相手金属材(この実施例では、金属ころ)の硬度よりも高い硬度を有することによって、従来にはない、優れた耐摩耗性を発現することができる。
Figure 2019203108
Figure 2019203108
<実施例17および比較例10〜13>
以下では、強化繊維が添加されていない非強化樹脂による成形品と、各種強化繊維による強化樹脂による成形品との比較を行った。まず、下記表5に関して、試験No.(26)が、実施例17であり、試験No.(27)〜(30)が、それぞれ、比較例10〜12である。
実施例17および比較例10〜13は、主として、成形体の粘度数VNが180ml/g以上であり、かつ強化繊維がガラス繊維であれば、高温耐久性を発現でき、さらに、転がり摩耗および滑り摩耗の2モードの摩耗が発生し、高いじん性が要求される摺動部品に好適であることを示すものである。
(A)原料樹脂の準備
図3で示した構成の混練機48において、表5に示す樹脂および強化繊維を、表5に示す配合割合(質量%)で混練し、原料樹脂ペレットを得た。なお、樹脂をメインフィーダ53に投入し、強化繊維はサイドフィーダ57に投入した。そして、この原料樹脂の粘度数VNを、前述の実施例1〜7および比較例1〜4と同様に測定した。結果を、表5に示す。また、原料樹脂の準備に先立って、使用される強化繊維(ガラス繊維)のビッカース硬さを求めた。より具体的には、ガラス繊維のナノインデンテーション硬さをナノインテンダーで測定し(ISO14577準拠 試験力:4000μN、試験力到達時間:5s、試験力保持時間:2s)、ISO 14577 AnnexFに記載の数式(ビッカース硬さHV=0.0945×ナノインデンテーション硬さ(N/mm))を用いて、当該ナノインデンテーション硬さをビッカース硬さに換算した。結果を、表5に示す。
(B)成形およびアニール処理
ファナック社製の100t電動式射出成形機(ROBOSHOT S−2000:100B)を用いて、(A)で得られた各原料樹脂ペレットから、鈴木式摩擦摩耗試験用リング片(以下、試験片)を成形した。
また、試験片に関しては、歯切り後の樹脂ギヤの歯面状態を再現するため、摩擦摩耗試験における摺動面となる側から3mm程度切削し、摺動面に強化繊維が露出するようにした。
<評価試験>
(A)摩擦摩耗試験
試験No.(26)〜(29)について、ビッカース硬さHV784の金属ころ(熱処理(焼入れ・焼戻し)有り)を用いて鈴木式摩擦摩耗試験を実施し、試験前後での樹脂の摩耗量(高さ減少量)を測定した。結果を、表5に示す。なお、試験の条件は、次の通りとした。
・金属ころ−樹脂リングによる摺動
・金属ころ:SUJ2製、φ8、3点ころ(固定)
・垂直荷重:300N
・摺動速度:1m/s
・試験温度:120℃
・試験時間:2時間
・グリース潤滑(協同油脂製マルテンプJS−P)
・駆動−停止による断続接触(10秒駆動→20秒停止)
表5に示すように、試験No.(26)の方が、試験No.(27)〜(29)に比べて、樹脂の摩耗量(高さ減少量)およびクリープ変形性が少なく、高い耐摩耗性および耐クリープ性を発現している。つまり、上記の試験温度(120℃)のように高温雰囲気下での摩耗量が少ないことから、試験No.(26)は、高温クリープ耐性に優れることが分かった。
(B)長期耐久寿命評価
上記で得られた試験No.(26)、(27)および(30)の原料樹脂を用いて樹脂製のウォームホイールを作製した。一方で、歯の形成後、熱処理を施していない、ビッカース硬さHV300のSCM435材製のウォームシャフトを準備した。このウォームホイールおよびウォームシャフトをウォーム減速機アセンブリに組み付け、90℃雰囲気およびグリース潤滑の条件下において所定のトルクを作用させ、破損するまでのサイクル数を測定した。結果を、図11に示す。
図11から、樹脂および相手金属材を互いに噛み合うギヤとして使用した場合、ガラス繊維を含有する樹脂の方が、炭素繊維を含有する樹脂に比べて良好な破損寿命が得られることが分かった。
(C)ころ式試験
試験No.(26)および(30)のウォームギヤについて、金属ころを用いて鈴木式摩擦摩耗試験を実施し、試験前後での樹脂の摩耗量(高さ減少量)および金属の摩耗量を測定した。結果を、図12に示す。なお、試験の条件は、次の通りとした。
・金属ころ−樹脂リングによる摺動
・金属ころ:SUJ2製、φ3.5、4点ころ(固定)
・垂直荷重:300N
・摺動速度:1m/s
・試験温度:90℃
・試験時間:24時間
・グリース潤滑(協同油脂製マルテンプJS−P)
・駆動−停止による断続接触(10秒駆動→20秒停止)
試験No.(26)の樹脂は、図12から、樹脂および相手金属材を互いに噛み合うギヤとして使用した場合でも、良好な耐摩耗性が得られることが分かった。
(D)引張破断伸びおよび引張破断エネルギー
上記で得られた試験No.(26)の原料樹脂と(30)の原料樹脂とのじん性を比較するため、これらの原料樹脂について、JIS K 7161に準拠して、室温および高温雰囲気下における引張破断伸びおよび引張破断エネルギーを測定した。結果を図13〜図14に示す。
図13〜図14から、試験No.(26)の原料樹脂(ガラス繊維を含有する樹脂)が、試験No.(30)の原料樹脂(炭素繊維を含有する樹脂)と比較して良好なじん性が得られることが分かった。したがって、たとえば、転がり摩耗および滑り摩耗の2モードの摩耗が発生し、高いじん性が要求される摺動部品(たとえば、ギヤ等の噛み合い部品)には、炭素繊維よりもガラス繊維を使用する方が、目的に叶う特性が得られると考えられる。
Figure 2019203108
<実施例18〜21>
まず、下記表6に関して、試験No.(31)〜(34)が、それぞれ、実施例18〜21である。
実施例18〜21は、主として、成形体の粘度数VNが180ml/g以上であり、かつ強化繊維の硬度>相手金属材の硬度であれば、高荷重の摺動に対して、樹脂が高い耐摩耗性を発現できることを示すものである。
(A)原料樹脂の準備
図3で示した構成の混練機48において、表6に示す樹脂および強化繊維を、表6に示す配合割合(質量%)で混練し、原料樹脂ペレットを得た。なお、樹脂をメインフィーダ53に投入し、強化繊維はサイドフィーダ57に投入した。そして、この原料樹脂の粘度数VNを、前述の実施例1〜7および比較例1〜4と同様に測定した。また、原料樹脂の準備に先立って、使用される強化繊維(ガラス繊維)のビッカース硬さを求めた。より具体的には、ガラス繊維のナノインデンテーション硬さをナノインテンダーで測定し(ISO14577準拠 試験力:4000μN、試験力到達時間:5s、試験力保持時間:2s)、ISO 14577 AnnexFに記載の数式(ビッカース硬さHV=0.0945×ナノインデンテーション硬さ(N/mm))を用いて、当該ナノインデンテーション硬さをビッカース硬さに換算した。結果を、表6に示す。
(B)成形およびアニール処理
ファナック社製の100t電動式射出成形機(ROBOSHOT S−2000:100B)を用いて、(A)で得られた各原料樹脂ペレットから、鈴木式摩擦摩耗試験用リング片(以下、試験片)を成形した。
また、試験片に関しては、歯切り後の樹脂ギヤの歯面状態を再現するため、摩擦摩耗試験における摺動面となる側から3mm程度切削し、摺動面に強化繊維が露出するようにした。
(C)相手金属材(金属ころ)の準備
相手金属材として、表6の試験No.(32)〜(34)に示す条件にて熱処理(焼入れ、焼戻し)を行った金属ころを準備した。なお、表6の試験No.(32)〜(34)の熱処理条件において、「O.Q.」は、加熱後の金属ころをオイルで冷却(Oil Quenching)していることを示し、「A.C.」は、加熱後の金属ころを空気で冷却(Air Cooling)していることを示している。そして、得られた各金属ころのビッカース硬さを、JIS Z 2244(2009)に準拠して測定した。結果を、表6に示す。また、表6の試験No.(31)で示した相手金属材としては、熱処理をしないでそのまま用いた。
<評価試験>
(A)摩擦摩耗試験
試験No.(31)〜(34)について、各金属ころを用いて鈴木式摩擦摩耗試験を実施し、試験前後での樹脂の摩耗量(高さ減少量)を測定した。結果を、図15および表6に示す。なお、試験の条件は、次の通りとした。
・金属ころ−樹脂リングによる摺動
・金属ころ:φ3.5、4点ころ(固定)
・垂直荷重:400N
・摺動速度:1m/s
・試験温度:室温(RT)
・試験時間:4時間
・グリース潤滑(協同油脂製マルテンプJS−P)
・駆動−停止による断続接触(10秒駆動→20秒停止)
(B)樹脂の摩耗量の評価
図15および表6に示すように、試験No.(31)〜(34)のいずれにおいても、樹脂の摩耗量(高さ減少量)が少なく、垂直荷重=400Nという高荷重に対して、高い耐摩耗性を発現できることが分かった。特に、試験No.(31)のように相手金属材の熱処理を省略できる場合には、製造効率を向上できるという効果も得られる。また、試験No.(31)および(32)の結果から、成形体の粘度数VNが180ml/g以上であり、強化繊維の硬度が530HVである場合、相手金属材(金属ころ)の硬度が250HV〜450HVの範囲が好ましいことも分かった。なお、試験No.(33)の樹脂の摩耗量が大きくなった要因は、相手金属材(金属ころ)の硬度やガラス繊維の硬度のばらつきであったためであると推定される。
Figure 2019203108
<実施例22および比較例14〜16>
まず、下記表7に関して、試験No.(35)が実施例22であり、試験No.(36)〜(38)が、それぞれ、比較例14〜16である。
実施例22および比較例14〜16は、主として、強化繊維が炭素繊維であり、かつ強化繊維(炭素繊維)の硬度>相手金属材の硬度であれば、樹脂の耐摩耗性が向上できる傾向を示すものである。
(A)原料樹脂の準備
図3で示した構成の混練機48において、表7に示す樹脂および強化繊維を、表7に示す配合割合(質量%)で混練し、原料樹脂ペレットを得た。なお、樹脂をメインフィーダ53に投入し、強化繊維はサイドフィーダ57に投入した。そして、この原料樹脂の粘度数VNを、前述の実施例1〜7および比較例1〜4と同様に測定した。また、原料樹脂の準備に先立って、使用される強化繊維(炭素繊維)のビッカース硬さを求めた。より具体的には、炭素繊維のナノインデンテーション硬さをナノインテンダーで測定し(ISO14577準拠 試験力:4000μN、試験力到達時間:5s、試験力保持時間:2s)、ISO 14577 AnnexFに記載の数式(ビッカース硬さHV=0.0945×ナノインデンテーション硬さ(N/mm))を用いて、当該ナノインデンテーション硬さをビッカース硬さに換算した。結果を、表7に示す。
(B)成形およびアニール処理
ファナック社製の100t電動式射出成形機(ROBOSHOT S−2000:100B)を用いて、(A)で得られた各原料樹脂ペレットから、鈴木式摩擦摩耗試験用リング片(以下、試験片)を成形した。
また、試験片に関しては、歯切り後の樹脂ギヤの歯面状態を再現するため、摩擦摩耗試験における摺動面となる側から3mm程度切削し、摺動面に強化繊維が露出するようにした。
(C)相手金属材(金属ころ)の準備
相手金属材として、表7の試験No.(36)〜(38)に示す条件にて熱処理(焼入れ、焼戻し)を行った金属ころを準備した。なお、表7の試験No.(36)〜(38)の熱処理条件において、「O.Q.」は、加熱後の金属ころをオイルで冷却(Oil Quenching)していることを示し、「A.C.」は、加熱後の金属ころを空気で冷却(Air Cooling)していることを示している。そして、得られた各金属ころのビッカース硬さを、JIS Z 2244(2009)に準拠して測定した。結果を、表7に示す。また、表7の試験No.(35)で示した相手金属材としては、熱処理をしないでそのまま用いた。
<評価試験>
(A)摩擦摩耗試験
試験No.(35)〜(38)について、各金属ころを用いて鈴木式摩擦摩耗試験を実施し、試験前後での樹脂の摩耗量(高さ減少量)および金属の摩耗量を測定した。結果を、図16、図17および表7に示す。なお、試験の条件は、次の通りとした。
・金属ころ−樹脂リングによる摺動
・金属ころ:φ3.5、4点ころ(固定)
・垂直荷重:220N
・摺動速度:1m/s
・試験温度:室温(RT)
・試験時間:4時間
・グリース潤滑(協同油脂製マルテンプJS−P)
・駆動−停止による断続接触(10秒駆動→20秒停止)
(B)樹脂の摩耗量の評価
図16および表7に示すように、試験No.(35)の方が、試験No.(36)〜(38)に比べて、樹脂の摩耗量(高さ減少量)が少なく、高い耐摩耗性を発現している。つまり、表7に示すように、強化繊維が炭素繊維で、かつ成形体粘度数が150(ml/g)で一定の場合、強化繊維が相手金属材(金属ころ)よりも高い硬度を有していることによって、高い耐摩耗性を発現できることが分かった。
(C)金属の摩耗量の評価
一方で、図17および表7に示すように、相手金属材の硬度が大きくなるに従って、相手金属材の摩耗量も低減できることが分かった。つまり、表7の例では、試験No.(35)の相手金属材の摩耗量が一番大きくなるが、試験No.(35)の金属摩耗量であっても実用上、全く問題のないレベルであるといえる。一方で、金属の摩耗量の低減を目的としないならば、試験No.(35)のように、相手金属材の熱処理を省略でき、製造効率を向上できるという効果が得られる。
Figure 2019203108
<実施例23〜27および比較例17>
まず、下記表8に関して、試験No.(39)〜(41)および(43)〜(44)が、それぞれ、実施例23〜25および26〜27であり、試験No.(42)が比較例17である。
実施例23〜27および比較例17は、主として、強化繊維が炭素繊維であり、かつ、成形体の粘度数VNが180ml/g以上であれば、樹脂の耐摩耗性が向上できる傾向を示すものである。つまり、前述の実施例22および比較例14〜16では、相手金属材の硬度の増減によって、樹脂の摩耗量および金属の摩耗量がどのように変化するのかを評価したが、以下では、成形体の粘度数の増減によって(相手金属材の硬度固定)、樹脂の摩耗量にどのように影響するのかを評価した。
(A)原料樹脂の準備
図3で示した構成の混練機48において、表8に示す樹脂および強化繊維を、表8に示す配合割合(質量%)で混練し、原料樹脂ペレットを得た。なお、樹脂をメインフィーダ53に投入し、強化繊維はサイドフィーダ57に投入した。そして、この原料樹脂の粘度数VNを、前述の実施例1〜7および比較例1〜4と同様に測定した。また、原料樹脂の準備に先立って、使用される強化繊維(炭素繊維)のビッカース硬さを求めた。より具体的には、炭素繊維のナノインデンテーション硬さをナノインテンダーで測定し(ISO14577準拠)、ISO 14577 Annex Fに記載の数式(ビッカース硬さHV=0.0945×ナノインデンテーション硬さ(N/mm))を用いて、当該ナノインデンテーション硬さをビッカース硬さに換算した。結果を、表8に示す。
(B)成形およびアニール処理
ファナック社製の100t電動式射出成形機(ROBOSHOT S−2000:100B)を用いて、(A)で得られた各原料樹脂ペレットから、鈴木式摩擦摩耗試験用リング片(以下、試験片)を成形した。
また、試験片に関しては、歯切り後の樹脂ギヤの歯面状態を再現するため、摩擦摩耗試験における摺動面となる側から3mm程度切削し、摺動面に強化繊維が露出するようにした。
(C)相手金属材(金属ころ)の準備
相手金属材として、表8の試験No.(42)〜(44)に示す条件にて熱処理(焼入れ、焼戻し)を行った金属ころを準備した。なお、表8の試験No.(42)〜(44)の熱処理条件において、「O.Q.」は、加熱後の金属ころをオイルで冷却(Oil Quenching)していることを示し、「A.C.」は、加熱後の金属ころを空気で冷却(Air Cooling)していることを示している。そして、得られた各金属ころのビッカース硬さを、JIS Z 2244(2009)に準拠して測定した。結果を、表8に示す。また、表8の試験No.(39)〜(41)で示した相手金属材としては、熱処理をしないでそのまま用いた。
<評価試験>
(A)摩擦摩耗試験
試験No.(39)〜(44)について、各金属ころを用いて鈴木式摩擦摩耗試験を実施し、試験前後での樹脂の摩耗量(高さ減少量)および金属の摩耗量を測定した。結果を、図18および表8に示す。なお、試験の条件は、次の通りとした。
・金属ころ−樹脂リングによる摺動
・金属ころ:φ3.5、4点ころ(固定)
・垂直荷重:220N
・摺動速度:1m/s
・試験温度:室温(RT)
・試験時間:4時間
・グリース潤滑(協同油脂製マルテンプJS−P)
・駆動−停止による断続接触(10秒駆動→20秒停止)
(B)樹脂の摩耗量の評価
図18および表8に示すように、試験No.(39)〜(41)および(43)〜(44)の方が、試験No.(42)に比べて、樹脂の摩耗量(高さ減少量)が少なく、高い耐摩耗性を発現している。つまり、図18および表8に示すように、強化繊維が炭素繊維であり、相手金属材のビッカース硬さが311HVもしくは789HVで一定の場合、成形体の粘度数VNが180ml/g以上であることによって、高い耐摩耗性を発現できることが分かった。なお、試験No.(39)は、成形体の粘度数VNが150ml/gで、180ml/g未満であるが、摺動条件が垂直荷重=220Nという比較的低荷重であり、かつ強化繊維が相手金属材(金属ころ)よりも高い硬度を有していることによって、高い耐摩耗性を発現できたと考えられる。
以上、表7の試験No.(35)〜(38)と、表8の試験No.(39)〜(44)との結果をまとめると、強化繊維が炭素繊維の場合でも、成形体の粘度数VNが180ml/g以上であり、かつ、成形体に含有される炭素繊維が相手金属材(この実施例では、金属ころ)の硬度よりも高い硬度を有することによって、従来にはない、優れた耐摩耗性を発現することができる。
Figure 2019203108
19…ウォーム減速機、20…ウォーム、21…ウォームホイール、31…歯部、47…原料樹脂、63…強化繊維

Claims (8)

  1. 外面に樹脂部を有する第1摺動部材と、
    前記樹脂部に対して摺動する金属部を有する第2摺動部材とを含み、
    前記第1摺動部材の前記樹脂部は、強化フィラーを含有し、粘度数VNが180ml/g以上の樹脂からなり、
    前記強化フィラーは、前記第2摺動部材の前記金属部の硬度よりも高い硬度を有している、摺動部品
  2. 前記強化フィラーのビッカース硬さが300HV〜800HVであり、前記金属部のビッカース硬さが250HV〜600HVである、請求項1に記載の摺動部品。
  3. 前記第1摺動部材の前記樹脂部の粘度数VNが、230ml/g〜400ml/gである、請求項1または2に記載の摺動部品。
  4. 前記第1摺動部材の前記樹脂部および前記第2摺動部材の前記金属部が、互いに噛み合うギヤを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の摺動部品。
  5. 前記第1摺動部材が、歯部が形成された前記樹脂部を有するウォームホイールを含み、
    前記第2摺動部材が、前記ウォームホイールの前記歯部に噛み合うウォームを含む、請求項4に記載の摺動部品。
  6. 前記強化フィラーが、強化繊維を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の摺動部品。
  7. 前記強化繊維が、ガラス繊維である、請求項6に記載の摺動部品。
  8. 前記強化繊維が、炭素繊維である、請求項6に記載の摺動部品。
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