JPH11170397A - 高速・高面圧滑り部用スラストワッシャ - Google Patents

高速・高面圧滑り部用スラストワッシャ

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JPH11170397A
JPH11170397A JP10225913A JP22591398A JPH11170397A JP H11170397 A JPH11170397 A JP H11170397A JP 10225913 A JP10225913 A JP 10225913A JP 22591398 A JP22591398 A JP 22591398A JP H11170397 A JPH11170397 A JP H11170397A
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thrust washer
speed
resin
thrust
pressure sliding
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JP10225913A
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Kenji Ito
健二 伊藤
Eiichiro Shimazu
英一郎 島津
Hiroshi Niwa
洋 丹羽
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NTN Corp
Original Assignee
NTN Corp
NTN Toyo Bearing Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐摩耗性と低摩擦係数および所要剛性を全て
満足するようにし、高速・高面圧滑り部用スラストワッ
シャの軸方向の寸法短縮を可能とし、かつ軽量化するこ
とである。 【解決手段】 ポリフェニレンスルフィド樹脂等のポリ
アリーレンスルフィド系樹脂100重量部に対し、炭素
繊維10〜80重量部、ポリテトラフルオロエチレン樹
脂等のパーフルオロ系フッ素樹脂2〜50重量部を配合
した樹脂組成物からなる高速・高面圧滑り部用スラスト
ワッシャとするか、またはさらにモリブデン化合物1〜
30重量部を配合した樹脂組成物からなる高速・高面圧
滑り部用スラストワッシャとする。また、環状スラスト
ワッシャの内周から外周に通じる溝またはスラストワッ
シャの表裏面を貫通する油孔を形成した高速・高面圧滑
り部用スラストワッシャを製造する際に、成形用金型の
内周面または外周面に湯口を配置して射出成形する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は高速・高面圧滑り
部用スラストワッシャおよびその製造方法に関し、詳し
くは、トランスミッション用スラストワッシャ、特にオ
ートマチックトランスミッション用スラストワッシャに
関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、トルクコンバータや油圧式クラ
ッチ等の自動車等のオートマチックトランスミッション
(以下、ATまたは自動変速機と略称する。)のトルク
コンバータ部は、回転動力の入力部材に連結されるポン
プインペラと、出力部材に連結されるタービンライナか
らなり、このようなATには、通常5〜10個のスラス
トニードルベアリングが使用されている。
【0003】スラストニードルベアリングは、ニードル
ローラとリテーナからなり、ニードルローラとタービン
などを直接に滑り接触(摺接)させることはできないた
め、軌道盤を介して取り付けられており、この軌道盤の
ために取付けに要する最小幅が制限される。
【0004】近年、ATの小型化および軽量化を図るた
めに、スラストニードルベアリングをフェノール樹脂ま
たはナイロン樹脂などの合成樹脂製スラストワッシャに
変更することが検討されている。その理由としては、ス
ラストニードルベアリングの部分を薄肉化し、ATの小
型化および軽量化を実現させるためである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、フェノール樹
脂製のスラストワッシャは、耐摩耗性も充分でないうえ
に摩擦抵抗が大きく、動力伝達の損失(ロス)が大き
く、ATのトルク伝達効率が低くなる。
【0006】また、ナイロン樹脂製のスラストワッシャ
は、摩擦抵抗は比較的小さいが耐摩耗性は充分でなく、
耐久性をよくするためにはワッシャの厚みを大きくする
必要がある。しかしそれでは、スラストワッシャの軸方
向の寸法が大きくなって、ATの小型化、軽量化および
低コスト化の要請に応えることができない。
【0007】そこで、この発明の課題は、上記した従来
の合成樹脂製のスラストワッシャの欠点を改善し、耐摩
耗性と低摩擦係数および所要剛性を全て満足するように
し、AT用スラストワッシャの軸線方向の寸法を短縮で
き、軽量化可能なAT用スラストワッシャとすることで
ある。
【0008】また、従来より厳しい高速・高面圧条件下
で使用できるAT用スラストワッシャとして使用でき、
しかも低コスト化の要請に応えるものとすることであ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、ポリアリーレンスルフィド系樹脂、炭素繊維および
パーフルオロ系フッ素樹脂を必須成分とする樹脂組成物
からなる高速・高面圧滑り部用スラストワッシャとした
のである。
【0010】また、ポリアリーレンスルフィド系樹脂1
00重量部に対し、炭素繊維10〜80重量部およびパ
ーフルオロ系フッ素樹脂2〜50重量部を配合した樹脂
組成物からなる高速・高面圧滑り部用スラストワッシャ
としたのである。
【0011】また、ポリアリーレンスルフィド系樹脂、
炭素繊維、パーフルオロ系フッ素樹脂およびモリブデン
化合物を必須成分とする樹脂組成物からなる高速・高面
圧滑り部用スラストワッシャとしたのである。
【0012】また、ポリアリーレンスルフィド系樹脂1
00重量部に対し、炭素繊維10〜80重量部、パーフ
ルオロ系フッ素樹脂2〜50重量部およびモリブデン化
合物1〜30重量部を配合した樹脂組成物からなる高速
・高面圧滑り部用スラストワッシャとしたのである。
【0013】また、前記高速・高面圧滑り部用スラスト
ワッシャが、表面に軸線方向に突出する固定用の突起を
有するものである高速・高面圧滑り部用スラストワッシ
ャとしたのである。
【0014】また、前記高速・高面圧滑り部用スラスト
ワッシャが、環状スラストワッシャの滑り面に形成され
た溝またはスラストワッシャの表裏面を貫通する孔を有
するものである高速・高面圧滑り部用スラストワッシャ
としたのである。
【0015】また、上記樹脂組成物からなるスラストワ
ッシャをトランスミッション用スラストワッシャとし、
または上記樹脂組成物からなるスラストワッシャをオー
トマチックトランスミッション用スラストワッシャとし
たのである。
【0016】また、環状スラストワッシャの滑り面に形
成された溝またはスラストワッシャの表裏面を貫通する
孔を形成した高速・高面圧滑り部用スラストワッシャの
製造方法において、前記スラストワッシャの成形用金型
に関し、スラストワッシャの内周面または外周面に相当
する部位に湯口を配置し、この湯口からポリアリーレン
スルフィド系樹脂、炭素繊維およびパーフルオロ系フッ
素樹脂を必須成分とする溶融樹脂組成物を射出成形する
ことを特徴とする高速・高面圧滑り部用スラストワッシ
ャの製造方法としたのである。
【0017】上記高速・高面圧滑り部用スラストワッシ
ャの製造方法において、前記湯口の配置は、湯口と溝ま
たは孔とがスラストワッシャの中心部からの放射線軸上
に重ならない配置であることが好ましい。また、前記湯
口は1箇所に形成されたものであり、この湯口から最も
離れた部位にガス抜き用の樹脂溜まり部を設けて射出成
形することが好ましい。
【0018】上記所定の組成物からなるトランスミッシ
ョン用スラストワッシャまたはオートマチックトランス
ミッション用スラストワッシャなどの高速・高面圧滑り
部用スラストワッシャは、耐摩耗性に優れているので、
軸方向の寸法(厚み)を薄肉に形成することが可能であ
る。また、低摩擦係数であるのでトルク損失を低減で
き、また滑り発熱が抑制されて変形し難く、このような
好ましい性質を滑り相手金属の材質(軟・硬)によら
ず、たとえば軟質のアルミニウム金属や硬質の炭素鋼の
いずれに対しても安定して発揮する。
【0019】したがって、この発明に係るAT等のトラ
ンスミッション用スラストワッシャは、摺接部品として
アルミニウム金属を採用できるようになり、小型・軽量
化および低コスト化を図ることが可能になる。
【0020】高速・高面圧滑り部用スラストワッシャの
製造方法では、射出成形により生産性が優れており、溝
を精密にそして容易に成形でき、安価なスラストワッシ
ャを提供することができる。また、スラストワッシャの
成形用金型の内周面または外周面に湯口を配置したの
で、スラスト滑り面にゲート(湯口)跡が形成されるこ
とがなく、ゲート(湯口)跡による滑り性低下や機械的
強度低下などの悪影響を回避できる。
【0021】また、湯口と溝または孔とがスラストワッ
シャの軸線方向に重ならない配置であるスラストワッシ
ャは、強度低下をできるだけ少なくして、より薄肉化し
たスラストワッシャとなる。
【0022】また、金型の湯口から最も離れた部分にガ
ス抜き用の樹脂溜まり部を設けて射出成形する製法の発
明では、射出成形する際に金型キャビティー内の空気や
ガスなどを効率よく排出して短時間で効率的に成形でき
る。
【0023】なお、前記の課題を解決するため、上記し
た以外に以下のような手段を採用してもよい。
【0024】(1) スラストワッシャの周辺雰囲気温
度が、常用使用温度にて60℃以上であり、しかもポリ
アリーレンスルフィド系樹脂の融点よりも低い温度で使
用されるスラストワッシャである請求項1〜5のいずれ
か1項に記載の高速・高面圧滑り部用スラストワッシ
ャ。
【0025】(2) スラストワッシャの相対的回転滑
り速度が常用使用範囲において、120m/分を越える
速度にて使用されるスラストワッシャである請求項1〜
5のいずれか1項に記載の高速・高面圧滑り部用スラス
トワッシャ。
【0026】(3) スラストワッシャの面圧が、常用
使用状態において2MPa以上の面圧である請求項1〜
5のいずれか1項に記載の高速・高面圧滑り部用スラス
トワッシャ。
【0027】(4) スラストワッシャの相対的回転滑
り速度(V)と面圧(P)との積であるP・V値が常用
使用状態において、1000MPa・m/分以上の条件
で使用される請求項1〜5のいずれか1項に記載の高速
・高面圧滑り部用スラストワッシャ。
【0028】(5) スラストワッシャが、潤滑用流体
の供給を必須条件とするスラストワッシャである請求項
1〜5のいずれか1項に記載の高速・高面圧滑り部用ス
ラストワッシャ。
【0029】(6) 樹脂組成物中の繊維状強化物が、
スラストワッシャの回転方向に配向しているスラストワ
ッシャである請求項1〜5のいずれか1項に記載の高速
・高面圧滑り部用スラストワッシャ。
【0030】(7) スラストワッシャに溝または孔が
偶数個形成されている請求項1〜5のいずれか1項に記
載の高速・高面圧滑り部用スラストワッシャ。
【0031】(8) スラストワッシャに溝または孔が
形成され、前記溝または孔にはスラスト滑り面に対して
鈍角な傾斜面が形成されている請求項1〜5のいずれか
1項に記載の高速・高面圧滑り部用スラストワッシャ。
【0032】(9) 前記溝または孔の各角部には、面
取り部のような肉ぬすみ部または肉盛部が形成されてい
る上記(7)または(8)記載の高速・高面圧滑り部用
スラストワッシャ。
【0033】
【発明の実施の形態】本願の発明に係るスラストワッシ
ャは、マニュアルトランスミッション(MT,手動変速
装置)、オートマチックトランスミッション(AT,自
動変速装置)等の変速装置その他の動力伝達装置、また
は動力発生装置などの滑り部においても使用できるが、
以下に、オートマチックトランスミッションを一例とし
て掲げて詳しく説明する。
【0034】まず、本願の各発明に用いるポリアリーレ
ンスルフィド系樹脂(以下、PAS樹脂と称する。)
は、一般的に化1で示される合成樹脂である。ここで、
化1中のPhは、例えば下記化2〜化7に示されるもの
を挙げられる。
【0035】
【化1】
【0036】(nは整数を示す。)
【0037】
【化2】
【0038】
【化3】
【0039】
【化4】
【0040】
【化5】
【0041】(QはF、Cl、BrのハロゲンまたはC
3 を示し、mは1〜4の整数を示す。)
【0042】
【化6】
【0043】
【化7】
【0044】PAS樹脂は、上記化1で示される繰り返
し単位が70モル%以上のものがよく、90〜100モ
ル%のものが好ましい。繰り返し単位が70モル%未満
では、期待する性質の組成物が得られなくなるので好ま
しくない。
【0045】このような重合体を得るには既に良く知ら
れた方法を使用すればよいが、例えば、硫化ナトリウム
とp−ジクロロベンゼンとをN−メチルピロリドン、ジ
メチルアセトアミド等のアミド系溶媒若しくはスルホラ
ン等のスルホン系溶媒中で反応させるのが好適である。
なお、重合体の結晶性に影響を与えない範囲で、例え
ば、化8〜化12に示される共重合成分を30モル%未
満、好ましくは10モル%未満で1モル%以上含ませて
もよい。
【0046】
【化8】
【0047】
【化9】
【0048】
【化10】
【0049】(Rはメチル基以外のアルキル基、ニトロ
基、フェニル基、アルコキシ基等を示す。)
【0050】
【化11】
【0051】
【化12】
【0052】このようなPAS樹脂は、例えば、特公昭
44−27671号公報や特公昭45−3368号公報
に開示されているようなハロゲン置換芳香族化合物と硫
化アルカリとの反応、特公昭46−27255号公報に
開示されているような芳香族化合物を塩化硫黄とのルイ
ス酸触媒共存下における縮合反応、または米国特許第3
274165号公報に開示されているような、チオフェ
ノール類のアルカリ触媒もしくは銅塩等の共存下におけ
る縮合反応等によって合成されるが、目的に応じて具体
的な方法を任意に選択することができる。
【0053】また、この発明に用いるPAS樹脂は、架
橋型のものを採用するか、または部分的交差結合、すな
わち、部分架橋を形成したものを採用することが好まし
い。このような部分的交差結合を形成したPAS樹脂
は、半架橋型またはセミリニア型のPASとも呼ばれ
る。架橋型または半架橋型のPAS樹脂は、リニア型
(架橋のないもの)のPAS樹脂に比べて耐熱性、耐ク
リープ性および耐摩耗性に優れており、リニア型PAS
樹脂に比べて射出成形した成形品にバリの発生が少ない
利点がある。一方、リニア型PAS樹脂は、特定方向か
らの機械的強度に優れたものである。
【0054】PAS樹脂に架橋を形成するか、または部
分的交差結合を形成させる方法としては、例えば、低重
合度のポリマーを重合した後、空気が存在する雰囲気で
加熱する方法や、架橋剤や分岐剤を添加する方法があ
る。
【0055】このようにして得られた架橋性のPAS樹
脂の溶融粘度は1000〜5000ポイズであり、好ま
しくは2000〜4000ポイズである。溶融粘度が1
000ポイズより小さいと、150℃以上の高温域で耐
クリープ特性などの機械的特性が低下し、変形しやすい
ので好ましくない。また、5000ポイズより大きいと
成形性が劣り、また柔軟性が低下するので、軸部や取付
け固定部へのスラストワッシャの不用意な組み込み時に
折損などが発生する場合があると考えられるため好まし
くない。なお、溶融粘度の測定は、測定温度300℃、
オリフィスが穴径1mm、長さ10mm、測定荷重20
kg/cm2 、予熱時間6分の条件下で、高化式フロー
テスタにて行われる。
【0056】また、部分的交差結合を有するPAS樹脂
の熱安定性は、上記の溶融粘度測定条件にて、予熱6分
後と30分後の溶融粘度の変化率が−50%〜150%
の範囲であることが好ましい。なお、変化率は下記の式
で表される。 変化率=(P30−P4 )/P4 ×100 (P4 :予熱6分後の測定値、P30:予熱30分後の測
定値) 以上のような条件を満足する部分的交差結合を有するP
AS樹脂としては、例えば、トープレン社製:T4、T
4AG、TX−007等をあげることができる。PAS
樹脂の重量平均分子量としては、20000〜4500
0のものがよく、25000〜40000のものが好ま
しい。重量平均分子量が20000より小さいときは、
耐熱性の点で好ましくなく、また、重量平均分子量が4
5000より大きいときは、複雑な精密な寸法精度に対
する成形性の点で好ましくない。
【0057】上記PAS樹脂の融点は、例えば約220
〜290℃、好ましくは280〜290℃であり、一般
にポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、PPS樹脂と
略称する。)の融点は、約285℃である。
【0058】上記PAS樹脂の全組成物中の配合割合
は、例えば30〜90重量%が望ましい。30重量%未
満だと上記組成物からなるスラストワッシャの強度が低
下してしまい、90重量%を越えると所定の充填剤を添
加しても補強効果が得られず、スラストワッシャの耐摩
耗性が劣ることになるからである。
【0059】次に、この発明に用いられる炭素繊維は、
現在汎用されている1000℃以上、好ましくは120
0〜1500℃の高温に耐えるものであれば、レーヨン
系、ポリアクリロニトリル(PAN)系、リグニン−ポ
バール系混合物、特殊ピッチ系など原料の種類の如何に
よらず使用することができる。そして、その形状は長短
いずれの単繊維であっても、クロス、フェルト、ペー
パ、ヤーン等のように一次加工を経た編織布、不織布、
糸、紐等の製品形体をしたものであってもよい。
【0060】また、その材質を特に制限することなく、
ピッチ系、PAN系、炭素質および黒鉛質のいずれであ
ってもよい。
【0061】また、この発明に用いる炭素繊維は、比表
面積が500m2 /g以上の炭素繊維が好ましい。この
ような炭素繊維は、ピッチ系またはPAN系の炭素繊維
であって約1000℃で焼成した炭化品(比表面積1m
2 /g)を、不活性ガス雰囲気中で酸化剤で表面処理
し、いわゆる活性炭のように表面を活性化(多孔質化)
したものである。このように活性化された炭素繊維の比
表面積が、500m2 /g未満では、これを添加した樹
脂組成物が摺動状態で軟質金属を攻撃し易くなるので好
ましくない。また、比表面積は前記の表面処理時間等の
処理条件を調整することで2000m2 /g程度まで引
き上げることができるが、あまりに大きすぎると弾性率
などの機械的強度が低下し、炭素繊維本来の耐摩耗性な
どの補強効果が組成物に備わらない。このような傾向を
考慮すると、より好ましい比表面積は、700〜150
0m2 /gである。
【0062】適度な弾性率、引張強度等の機械的特性と
相手材への攻撃性や成形時の樹脂組成物の流動性等を考
慮すると、炭素繊維径は、平均約5〜20μm、また繊
維長は、例えば約10〜1000μm、好ましくは約1
0〜500μmであることがよい。また、アスペクト比
が、例えば1〜250、好ましくは2〜80、より好ま
しくは5〜50の炭素繊維がよい。特に耐摩耗性に優れ
たスラストワッシャとするためには、平均繊維径が10
μm以上のものを採用することが好ましい。なお、炭素
繊維の平均繊維径は原料によって異なるが、平均繊維径
が10μm以上の炭素繊維としてはピッチ系のものが相
当する。
【0063】上記のものであれば、前記樹脂組成物中に
均一に分散し、これを充分に補強するので適当である。
なお、これらの値は、成形体組成物中におけるものであ
ることが好ましい。
【0064】炭素繊維は、上記に示したような種々の有
機高分子繊維または、石炭系、石油系、それぞれのメソ
フェーズ系などの原料を平均1000〜3000℃程度
に焼成して生成される。この構造は、主に炭素原子六角
網平面から構成される。この網平面が繊維軸に平行に近
く配列したものとして、高配向、異方性を有するPAN
系や液晶ピッチ系の炭素繊維があげられ、一方、この網
平面が乱雑に集合したものとして、等方性を有するピッ
チ系炭素繊維があげられる。
【0065】高配向、異方性の炭素繊維は、特定の方向
の弾力性や引張強度に対して高く優れており、等方性の
炭素繊維は、全方向から受ける荷重に対しても比較的耐
えうる。
【0066】PAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維を比
較すると、引張強度がPAN系では2400MPa前後
であるのに対して、一部のピッチ系のものは590〜9
80MPaであり、引張弾性率がPAN系では200〜
500GPaのもの、具体的には340GPaであるの
に対してピッチ系のものは30〜300GPa具体的に
は30〜40GPaであり、両者の機械的強度に大きな
差があるが、この発明に使用するものとしては何ら問題
はない。
【0067】なお、この発明に用いる炭素繊維には、P
AN系炭素繊維を少量混合してもよく、用いる全ての炭
素繊維の平均繊維径が10μm以上である必要はない。
PAN系炭素繊維を少量混合させると、スラストワッシ
ャの耐摩耗性は向上し、かつ取り付け部に組み込むとき
に破損し難くなる。ただし、PAN系炭素繊維の混合割
合は、30重量%が限度であると考えられる。
【0068】ピッチ系炭素繊維は、例えば、石油精製で
副生される石油ピッチ等のような構造上無定形の等方性
ピッチ系炭素繊維と、一定方向の構造、例えば光学異方
性の異方性ピッチ系炭素繊維があげられる。
【0069】等方性ピッチ系炭素繊維は、石油系、石炭
系、合成品系、液化石炭系等に分類され、それらの原料
を溶融紡糸でピッチ繊維にして、不融化処理をした後
に、炭素化することにより製造される。
【0070】また、液晶ピッチ系炭素繊維は、ピッチ類
を不活性化気相中で加熱し、350〜500℃で液晶状
態とした後、固化してコークスとする。これを溶融紡糸
して酸化雰囲気で加熱すると酸化繊維となって不溶不融
の繊維となり、さらにこれを例えば不活性気相中で約1
000℃以上に加熱する方法等により製造される。
【0071】これらは、引張弾性率が平均30〜50G
Pa程度の低弾性率から平均240〜500GPa程度
の中・高弾性率のものを要求により選択することがで
き、その他引張強度の機械的特性に優れた繊維を所定の
樹脂組成物に混合することにより、適切な機械的強度を
有するスラストワッシャを得ることができる。
【0072】このようなピッチ系炭素繊維の市販品の例
としては、呉羽化学工業社製:クレカM207S(繊維
径12〜13μm)等の「クレカ」(商品名)シリーズ
があり、特に同社製のクレカチョップM201F(平均
繊維径12.5μm、平均繊維長0.13mm)、同M
201S(平均繊維径14.5μm、平均繊維長0.1
3mm)、同M107T(平均繊維径18.0μm、平
均繊維長0.70mm)、大阪ガス社製:03J−41
5(平均繊維径18μm)等が挙げられる。
【0073】また、PAN系炭素繊維は、ポリアクリロ
ニトリル繊維等のアクリル系繊維を加熱して焼く方法で
製造することができる。加熱温度によって所定の引張弾
性率を得ることができ、例えば、約1000〜1500
℃で加熱すると引張弾性率は平均200〜300GP
a、引張強度は平均300〜6000MPaとなる。ま
た、約2000℃で加熱して、引張弾性率を平均300
〜500GPa、好ましくは平均400〜500GPa
とすることもできる。従って、PAN系炭素繊維は、高
い引張強度の繊維で、加熱温度により引張強度は平均5
00〜6000MPaの範囲のものも得られ、要求によ
り平均500〜3000MPaの範囲のものを製造する
こともできると考えられる。これらの数値が低すぎると
圧縮クリープ等に関する補強が期待できず、これらの数
値が高すぎると相手材を攻撃することも予想される。
【0074】このPAN系炭素繊維の例としては、東邦
レーヨン社製「ベスファイト」(商品名)シリーズ全般
があげられ、その具体例としては、ベスファイトHTA
−CMF−0040−E、ベスファイトHTA−CMF
−0160−E、ベスファイトHTA−CMF−100
0−E、ベスファイトHTA−C6−E等(いずれも、
繊維長6mm)があげられる。また、東レ社製の「トレ
カ」(商品名)シリーズ全般もあげられ、その具体例と
しては、トレカMLD−300、トレカMLD−100
0等があげられる。
【0075】これらの炭素繊維の有する引張強度として
は、500〜1000MPaが好ましく、ビッカース硬
度(Hv)は400〜600が好ましい。引張強度が5
50MPaより小さいときやビッカース硬度(Hv)が
400より小さいときは、炭素繊維を添加する補強効果
が期待できず、引張強度が1000MPaより大きいと
きやビッカース硬度(Hv)が600より大きいとき
は、相手材を攻撃して摩耗させることが考えられて好ま
しくない。これらの炭素繊維のうち、酸やアルカリ等の
薬品類の影響を受けにくく、また耐摩耗性も有している
種類もある。
【0076】なお、これらの炭素繊維と前記PAS樹脂
との密着性を高め、スラストワッシャ材の機械的特性等
を向上させるために、これらの炭素繊維の表面をエポキ
シ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポ
リカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂等含有の
処理剤やエポキシシラン系、アミノシラン系などのシラ
ン系カップリング剤等により表面処理を施してもよい。
【0077】上記炭素繊維のなかで、引張強度が550
〜1000MPa、引張弾性率30〜50GPaの範囲
にあるものが特に好ましい。引張強度、引張弾性率が下
限値以下では炭素繊維による補強効果が得られず、上限
値以上では耐摩耗性に劣るからである。
【0078】上記炭素繊維の全組成物中の配合割合は1
0〜80重量部、好ましくは10〜50重量部である。
10重量部未満ではスラストワッシャの耐摩耗性がほと
んど向上せず、80重量部を越える多量では溶融流動性
が著しく低下して成形性が悪くなるからである。
【0079】上述したような炭素繊維などの繊維状強化
材は、スラストワッシャの回転方向に沿うように配向さ
せることにより、相手面の摩耗損傷を少しでも抑えるこ
とができることも期待でき、また回転方向に繊維類が配
向することにより、滑り抵抗が少しでも減ることも期待
できるので好ましい。複数の繊維類を併用する場合に
は、一種以上の繊維を配向させ、配向量は繊維類全体の
少なくとも10%以上、好ましくは30%以上、より好
ましくは50%以上、さらに好ましくは70〜100%
にする。
【0080】繊維状強化材をスラストワッシャの回転方
向に沿うように配向させるには、後述するように、スラ
ストワッシャの外周側面に1ヵ所のゲート(湯口)を設
けて射出成形する。
【0081】このような繊維状強化材の配向状態を評価
するには、例えばスラストワッシャの表面、もしくはそ
の表面の一部を切削加工し、その表面を電子顕微鏡等で
拡大して観察して評価できる。なお、スラストワッシャ
の仕様・条件・用途に応じて前記繊維状強化材は、ラン
ダム(無秩序)な方向に配向されていてもよい。
【0082】この発明に用いるパーフルオロ系フッ素樹
脂は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと
称する。)に代表されるフッ素系樹脂である。この樹脂
は、骨格である炭素原子の周囲を全てフッ素原子又は微
量の酸素原子で取り囲まれた状態であり、C−F間の強
固な結合により、フッ素系樹脂の中でも比較的耐熱温度
が高く、また、低摩擦係数、非粘着性、耐薬品性等の諸
特性に優れている。PTFEは、四フッ化エチレン単独
重合体で圧縮成形可能な樹脂であり、その熱分解温度は
約508〜538℃である。これは、市販のものを用い
ることができ、例えば、喜多村社製:KT−400H等
を用いることができる。
【0083】パーフルオロ系フッ素樹脂としては、PT
FE以外に、テトラフルオロエチレン−パーフルオロア
ルキルビニルエーテル共重合体(PFA、熱分解温度約
464℃以上)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフル
オロプロピレン共重合体(FEP、熱分解温度約419
℃以上)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプ
ロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合
体(EPE、熱分解温度約440℃)等があげられる。
また、これらに加えて、ポリクロロトリフルオロエチレ
ン(PCTFE、熱分解温度約347〜418℃)、テ
トラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE、
熱分解温度約347℃以上)、クロロトリフルオロエチ
レン−エチレン共重合体(ECTFE、熱分解温度約3
30℃以上)、ポリビニリデンフルオライド(PVD
F、熱分解温度約400〜475℃)、ポリビニルフル
オライド(PVF、熱分解温度約372〜480℃)等
を混合してもよい。
【0084】また、パーフルオロ系フッ素樹脂は、上記
フッ素樹脂のモノマーの例えば約1:10から10:1
の重合割合で2種類以上の共重合体や、3元共重合体な
どのフッ素化ポリオレフィンなどであってもよく、これ
らは、固体潤滑剤としての特性を示す。これらのなかで
も、PTFEは、耐熱性、耐薬品性、非粘着性、低摩擦
係数などの諸特性に優れており好ましい。
【0085】これらのパーフルオロ系フッ素樹脂は、微
分熱分解開始温度が比較的高く好ましい。例えば、PT
FE,PVDFの熱分解点はそれぞれ約490℃、約3
50℃であり、これらの微分熱分解開始温度は、それぞ
れ約555℃、約460℃を示し、中でもPTFE、P
FA、FEP等は高温特性に優れていて好ましい。この
ため、上記樹脂を含む組成物は、これを溶融成形する過
程での熱履歴に比較的良く持ちこたえることができ、ま
た高速条件下でも比較的良く耐える。特に、融点が例え
ば約220〜290℃のPAS樹脂を使用する場合や、
融点が約280〜290℃前後のPAS樹脂を使用する
場合には、PTFEの分解点はそのようなPAS樹脂の
融点より約100〜200℃程度以上の高い温度領域に
位置することにより高温での熱安定性に優れるので好ま
しい。
【0086】これらのパーフルオロ系フッ素樹脂を2〜
50重量部、好ましくは5〜25重量部添加すること
で、機械的特性に優れ、標準品等で圧縮強さが、50〜
200MPa程度の良好な耐クリープ特性及び耐熱性、
耐油性や耐薬品性等に優れる特性に加えて、耐衝撃性、
耐疲労性、耐摩耗性等を向上することもできると考えら
れる。
【0087】添加量が2重量部未満では、これらの効果
が期待できず、自己潤滑性及び耐摩耗性等の滑り特性の
改良が顕著に認められない。また、50重量部を越える
と、これらの溶融粘度等により造粒時や射出成形時に溶
融成形機等のシリンダーにかかる負荷が大きく、成形性
が悪くなり、安定した造粒性、射出成形性及び寸法精度
が期待できず、機械的特性が低下する場合がある。
【0088】PTFEを粉末状にしてPAS樹脂に添加
する場合は、粉末状にすればその形状や大きさを特に限
定することなく用いることができるが、粒状で粒径が7
0μm以下のもの、好ましくは平均粒径が1〜50μm
のもの、より好ましくは平均粒径が5〜30μmのもの
が樹脂組成を均一にするために好ましい。粒径は、走査
型電子顕微鏡での確認のほか、コールターカウンター、
マイクロトラックなどの粒度分析計などにより評価する
ことができる。
【0089】また、この発明ではバージン材のPTFE
粉末に代え、再生PTFE粉末を用いてより良好な結果
が得られる。再生PTFE粉末は、バージン材を一度焼
成した後、粉砕して得られる粉末であるから、バージン
材のPTFEを樹脂組成物に添加したときのように樹脂
組成物の溶融粘度を著しく上昇させることがなく、射出
成形性を阻害しないものである。また、再生PTFE粉
末は、一度焼成されているので、これを混合した樹脂成
形品の寸法変化、形状変化またはクラックの発生なども
起こらず安定した成形品が得られる添加剤である。ま
た、再生PTFEに代え、もしくは再生PTFEと共
に、PTFEにγ線照射処理を施して低分子量化したP
TFE粉末を使用することも、微細な粒径であるPTF
Eであることより好ましいものといえる。このような再
生PTFE含有PTFEの平均粒径も前記した同程度の
平均粒径であることが好ましい。
【0090】上述した再生PTFE含有のPTFE粉末
の市販品としては、例えば喜多村社製:KT300M、
KT300H、KT400M、KT400H、KTL6
10などがある。
【0091】さらに、AT用スラストワッシャに配合す
る二硫化モリブデンなどのモリブデン化合物は、前記P
TFE樹脂と同様に低摩擦係数の添加剤であり、油中で
非常に効果がある固体潤滑剤である。しかし、使用する
潤滑油には、極圧剤が添加されていて二硫化モリブデン
を添加しなくても良好な滑り特性が得られるものもあ
り、または二硫化モリブデンを配合すると自己の耐摩耗
性が若干低下する傾向があるため、必ずしも二硫化モリ
ブデンを添加する必要はない。二硫化モリブデンの市販
品としては、例えばダウコーニング社製モリコートパウ
ダーなどがある。
【0092】この発明のAT用スラストワッシャには、
二硫化モリブデンなどのモリブデン化合物を30重量部
以下の割合で添加することが好ましく、30重量部より
多量に配合しても、それ以上の滑り特性の向上は認めら
れず、成形性を悪化させることにもなる。このような傾
向から、より好ましい二硫化モリブデンなどのモリブデ
ン化合物の配合割合は1〜15重量部、さらに好ましく
は1〜10重量部である。
【0093】以上述べたような再生PTFE粉末その他
のパーフルオロ系フッ素樹脂、また二硫化モリブデンな
どのモリブデン化合物などの潤滑性付与剤、さらにまた
上記炭素繊維等の強化物等の主成分のPAS樹脂に添加
する添加剤の総合計量は、全組成物中の配合割合で2〜
50重量部であることが好ましい。2重量部未満である
と樹脂組成物の滑り特性が向上せず、また摺り接触する
相手側滑り材の損傷性の問題を解決できない。また、5
0重量部を越える配合量では成形性が悪くなる等の問題
が起こる。このような傾向と共に機械的強度の点で、よ
り好ましい潤滑性付与剤の全組成物中の配合割合は、5
〜25重量部である。
【0094】なお、上記材料以外の添加剤として、例え
ば自己潤滑性、機械的強度、および熱安定性などの向上
及び着色等の目的で固体潤滑剤、タルク等の増量剤、粉
末充填剤および顔料などPAS樹脂の融点以上の高温で
安定な物質をこの発明の効果を阻害しない範囲内で適宜
に混合してもよい。例えば、樹脂組成物の潤滑性をさら
に改良するために、耐摩耗性の改良剤を配合することが
できる。この耐摩耗性改良剤の具体例としては、リン酸
塩、炭酸塩、ステアリン酸塩、超高分子量ポリエチレン
樹脂、高密度ポリエチレン樹脂などのポリエチレン系樹
脂、全芳香族ポリエステル樹脂、芳香族ポリアミド樹脂
などの芳香族系樹脂、カーボン、グラファイト、マイ
カ、タルク、ウォラストナイト、酸化亜鉛、チタン酸カ
リウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウムなどのカルシ
ウム化合物、その他各種の化合物などを例示することが
できる。そして、これらのうち少なくとも一種類以上を
併用して添加することができる。このような添加剤を添
加する際の残部耐熱性樹脂は、約30重量%、好ましく
は40重量%、より好ましくは50重量%を下回らない
ようにすることが好ましい。これらの添加剤の形態は、
無定形であってもよく、また球状、鱗片状、繊維状であ
ってもよく、また繊維状のものはウィスカのような短繊
維であってもよい。
【0095】また、上記炭素繊維や上記各種添加剤の新
モース硬度は、例えば2〜12、好ましくは3〜8であ
れば、相手すべり材表面を損傷させ難く好ましい。
【0096】そして、上記炭素繊維や上記フッ素樹脂、
そして上記各種添加剤のpH値は、たとえばpH5〜
9、好ましくはpH6〜8の充填剤であることが、樹脂
に悪影響を及ぼさず、寸法精度、寸法安定性を向上でき
るものと期待できて好ましいが、本願の発明の充填剤
は、上記pH値の範囲外であってもよい。
【0097】なお、本願の発明の樹脂組成物に併用して
添加される繊維状強化剤の平均繊維径、平均繊維長また
はアスペクト比のうちの少なくともいずれか一つは、上
記炭素繊維の平均繊維径、繊維長またはアスペクト比の
うちの少なくともひとつと同じであってもよい。また、
この発明の樹脂組成物に併用して添加される粒状の添加
剤の平均粒径は、上記PTFEの平均粒径と同じである
ことが、上記理由と同様な理由によって好ましい。
【0098】これらの耐熱性樹脂に対して各種の添加物
を添加混合する方法は特に限定するものではなく、通常
広く用いられている方法、たとえば主成分となる樹脂、
その他の諸原料をそれぞれ個別に、またはヘンシェルミ
キサー、ボールミル、タンブラーミキサー等の混合機に
よって適宜乾式混合した後、溶融混合性のよい射出成形
機もしくは溶融押出成形機に供給するか、又は予め熱ロ
ール、ニーダ、バンバリーミキサー、溶融押出機などで
溶融混合するなどの方法を利用すればよい。
【0099】このようにして得られたペレットなどの粒
は、成形前に後述の熱処理と同程度の乾燥処理を施して
も良い。充分にペレット等の粒から水分などを蒸発させ
ることで、スラストワッシャの膨れや強度低下を防ぐこ
とができると考えられる。
【0100】さらに、前記の組成物からなるスラストワ
ッシャを成形する際には、特に成形方法を限定するもの
ではなく、圧縮成形、押出成形、射出成形等の方法を採
用できる。なかでも射出成形法は、生産性に優れ、溝や
孔も精密にそして容易に成形でき、安価なスラストワッ
シャを提供することができる。
【0101】成形上がり(成形終了直後)のスラストワ
ッシャは、成形時のひずみをなくして高温使用時の寸法
安定性を確保するため、約80〜260℃で合計時間が
約0.1〜24時間程度のアニール熱処理をしておくこ
とが望ましい。
【0102】アニール熱処理温度は、約260℃以下、
例えば約80〜260℃程度、寸法形状によっては約9
0〜230℃程度や約100〜200℃程度で行われる
ことが適当である。これらのPAS樹脂は、広い温度範
囲にわたって剛性が高く、耐衝撃性も優れており、クリ
ープなどの歪みに対しても強く、また殆どの種類の油類
や薬品等にも耐性を示し、そして吸水率の低い樹脂であ
る。また、これらのPAS樹脂は結晶性であって、結晶
化度の上昇で強度や剛性の増加、耐摩耗性の向上、熱膨
張係数の低下などの性質をもっている。
【0103】熱処理温度が約80℃未満の低温では、結
晶化の進行に多大の時間を要して効率が悪く、スラスト
ワッシャのわずかな歪みを除くことも難しくなり、寸法
安定性も得られ難いと考えられる。
【0104】熱処理時は、前記所定の温度に達する前
に、例えば常温、約80℃、約130℃、約180℃、
約220℃、約230℃、約260℃というように、数
段階に分けて、約15〜180分程度の範囲で約15〜
60分毎に徐々に昇温し、前記温度範囲内の最適な温度
にて、前記時間の範囲で温度を一定に保持してもよい。
その場合の最高温度の保持時間は、約15〜480分程
度であればよい。最高温度の保持時間が所定時間よりも
短時間であると、樹脂の結晶化が不充分となって寸法安
定性が悪くなり、所定時間よりも長時間であると、「ソ
リ」などの不適当な熱変形が起こり、また電気炉などの
エネルギー消費量の増大や製造時間の長時間化からみて
も製造コストの低減を図ることが難しくなる。
【0105】また、約80〜120℃程度に昇温した時
にそのような一定温度で保持してもよい。このようにす
ると、スラストワッシャ内に僅かに取り込まれた水分を
乾燥させることができ、その後、結晶化させることがで
きる。一方、短時間で急激に加熱して熱処理を終了させ
ることは好ましくない。前記水分が沸点を越えて気化
し、その際の体積膨張によってスラストワッシャに「膨
れ」などの不具合が発生する可能性が高くなるからであ
る。
【0106】結晶化工程後の冷却は、前記昇温時と逆の
段階を経て冷却してもよく、または約60〜180分程
度の時間をかけて連続的に徐冷してもよい。
【0107】以上のような熱処理工程を行なうことによ
り、スラストワッシャの膨れなどの不具合の発生を極力
防ぐと共に、樹脂の結晶化を確実かつ徐々に進行させ
て、寸法安定性を高めて寸法精度の高いスラストワッシ
ャを提供することができる。
【0108】なお、成形体内に特に大きな内部応力が残
っていないのであれば、前記熱処理工程は省略し、製造
工程において、効率化、省エネルギー化を計ってもよ
い。
【0109】また、スラストワッシャと相手部材の少な
くとも一方の滑り面の表面粗さ、またはスラストワッシ
ャ成形用金型のキャビティ内の表面粗さは、最大粗さ
(Ry)、算術平均粗さ(Ra)、十点平均粗さ(R
z)等のJIS B 0601(1994)で定義され
た評価法によって、約3〜25μm以下であり、約8μ
m以下が好ましく、約3.2μm以下がより好ましい。
表面粗さが前記所定範囲を越えると、滑り面に傷が多く
付くようになり、摩耗の原因になると考えられる。な
お、表面粗さの下限値は、加工時の効率性も考慮して、
約0.1μm程度以上であればよい。
【0110】また、相手材表面の仕上げ加工などの工程
に長時間を要するので、効率的でないことや樹脂材の転
移膜の形成に影響される可能性もあるため、摩耗に影響
されないような仕様や条件であれば、約1〜10μm、
好ましくは約3〜8μm程度の範囲以下としても良いと
も推定される。
【0111】なお、油潤滑手段を併用する場合は、例え
ば滑り面に無数の微小な窪みを設けて保油性を向上させ
るようにしてもよい。
【0112】また、スラストワッシャは、その中心に回
転駆動軸等の回転体を通すため、スラストワッシャの中
心部には、図1乃至図3に示すように略円形の貫通孔が
設けられているものが好ましい。
【0113】ところで、上記した本発明のスラストワッ
シャの主成分を構成するPAS樹脂は、それ自体かなり
の耐熱性とある程度の滑り特性を備え、しかも低吸水性
であるために、物性値の変化の少ない耐熱性、耐摩耗
性、寸法安定性の優れた滑り材料である。
【0114】しかし、スラストワッシャは、使用部位や
使用条件によっては材料特性以上の低摩擦特性および耐
摩耗性を要求される場合がある。そのような場合には、
潤滑油などの潤滑用補助流体物質を滑り面に介在させれ
ば、より高度な耐摩耗性や低摩擦係数等の特性を発揮で
きるようになり、より高温かつ摺接速度の高い条件下で
もスラストワッシャを使用することが可能になる。
【0115】例えば、上記した潤滑用補助流体物質は、
潤滑性に優れた油をはじめ、グリース状のもの、または
水、冷媒、薬液等の液体物質、そしてまた空気、二酸化
炭素等のCOx物、二酸化窒素等のNOx物や窒素等、
または、これらの圧縮物等の気体物質、さらには微粒子
固形物等といった流体特性を有する物質であれば、いか
なる物質をも用いることができる。しかし、スラストワ
ッシャおよびこれに摺接する相手側の滑り部材の耐摩耗
性や、低摩擦化を考慮すると潤滑油が好ましく、特に、
次に説明するスラストワッシャの周辺雰囲気温度よりも
高温で連続使用しても長期間劣化しない潤滑油が好まし
い。そのようなものとしては、例えば昭和シェル石油社
製AT用オイル:ゲルコ ATFなどを挙げることがで
きる。
【0116】このような条件下では、スラストワッシャ
と使用する部位等の周辺の雰囲気温度が、少なくとも常
温(約20〜25℃前後)以上、好ましくは50℃以
上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは12
0℃以上、そして、最高温度は140℃以上、またはこ
れらの数値を越える摂氏温度の雰囲気下(雰囲気に接す
る条件は瞬間的、もしくは短時間であってもよい)でも
耐久性を発揮することができる。
【0117】スラストワッシャの周辺雰囲気温度の最高
温度は、少なくとも前記PAS樹脂の融点未満であり、
安全性を考慮すれば前記樹脂組成物からなる成形体の熱
変形温度未満である。前記熱変形温度の評価方法は、例
えばASTM D 648に準じて、4.6kgf/c
2 もしくは18.6kgf/cm2 の荷重下において
測定した温度を評価できる。
【0118】回転スラストワッシャは、例えば1〜20
000rpm、一般的には10〜10000rpmの回
転数にて使用される場合が多いが、本願の発明のスラス
トワッシャは、連続回転、間欠回転、揺動など、いかな
る運動条件下でも使用可能である。
【0119】また、スラストワッシャの使用条件とし
て、相対的回転すべり速度Vがある。例えば中実円盤状
のスラストワッシャの相対的回転すべり速度Vが最も遅
い部分は、中心部分である。使用する部位によっては、
回転軸の軸端のスラスト荷重を受ける中実円盤状のスラ
スト軸受に、この発明の手段を適用することも可能であ
る。
【0120】図1乃至図3に示すように、スラストワッ
シャ1の中心部に略円形の貫通孔4が形成されているス
ラストワッシャでは、その相対的回転すべり速度Vの最
も遅い部分は、スラストワッシャのすべり面のうち貫通
孔4の周縁部であり、相対的回転すべり速度Vの最も速
い部分は外周縁である。
【0121】本願の発明に係るスラストワッシャは、無
潤滑の条件下で前記回転すべり速度が例えば約1m/m
in以上、条件によっては約3〜100m/minの速
度でも使用可能であると考えられる。
【0122】そして、本願の発明に係るスラストワッシ
ャは、後述する条件に対応して、スラストワッシャの回
転速度が、少なくとも100m/min以上(120m
/min以上、150m/min以上、180m/mi
n以上、もしくは240m/min以上、またはこれら
の数値をそれぞれ越える速度)でも耐摩耗性等の耐久性
をほぼ満足する。使用される諸条件にもよるが、回転速
度が高くなるにしたがって、滑り特性が厳しくなる場合
もあり、その場合は油潤滑手段を併用すればよい。
【0123】この相対的回転すべり速度の上限値は、使
用する潤滑剤や面圧、周辺雰囲気温度、表面粗さ、形
状、すべり相手材の材質、表面粗さ、形状等、各種様々
な要因が複合的に連係して規制されるので、その直接的
な要因は特定し難い。しかしながら、前記したすべり速
度のいずれか1つのおよそ3〜10倍程度が、その速度
の上限値であろう。前記した相対的回転すべり速度が上
限値を越えると、すべり面の摩擦熱で温度上昇等が起こ
り、スラストワッシャの摩耗が比較的早く進行すること
も予想される。
【0124】そしてまた、スラストワッシャのもう一つ
の使用条件として、すべり面に加わる面圧があるが、こ
のような面圧も前記した諸々の要因によってこの条件も
特定し難い。本願の発明に係るスラストワッシャは、面
圧が0.1〜10MPa、または1〜8MPa、または
2〜6MPaの範囲で使用することが好ましく、AT用
スラストワッシャにおいては、その最大面圧は約5MP
a以下、好ましくは4MPa以下、またはこれらの数値
未満(5MPa未満、好ましくは4MPa未満)にて使
用することが好ましい。上記所定の面圧を越えるとスラ
ストワッシャの変形や、折損等の発生要因になると考え
られる。
【0125】さらに、本願の発明に係るスラストワッシ
ャは、前記した相対的回転すべり速度Vと前記面圧Pと
の積、すなわちP・V値が、主として常用使用領域にお
いて、例えば5000MPa・m/min以下、好まし
くは4000MPa・m/min以下、より好ましくは
3000MPa・m/min以下の条件下で使用するこ
とが好ましい。尚、このような条件も前述のように諸々
の要因が関連する。
【0126】このようにスラストワッシャのP・V値の
下限値は、特に限定することが難しいが、例えば10M
Pa・m/min以上、好ましくは100MPa・m/
min以上、より好ましくは300MPa・m/min
以上、そしてAT用のスラストワッシャにおいては、1
000MPa・m/min以上の条件でも使用できる可
能性があり、使用部位に所要の耐久性を発揮できる。上
記使用条件のP・V値が高いほど摩耗の進行が早くな
る。なお、上記した周辺雰囲気温度、相対的回転すべり
速度V、すべり面に加わる面圧PおよびP・V値は、ス
ラストワッシャの仕様・条件・用途部位等により異な
る。
【0127】また、トランスミッション用スラストワッ
シャ、その中でもAT用スラストワッシャは、ADC1
2などのアルミニウム合金や炭素鋼との滑り接触(摺
接)時にスラストワッシャまたは相手側滑り材(滑り接
触する相手面)の摩耗を抑えるためにも油潤滑条件下に
て使用される必要性があり、潤滑油の温度は、自動車等
に要求される仕様を満足する上で約−50℃〜170℃
になると考えられる。
【0128】そのため、図1〜3に示すように、スラス
トワッシャ1の滑り面には溝2を形成し、好ましくは内
周側と外周側を貫通する溝(油通路)2もしくはスラス
トワッシャの表裏面を貫通する孔(図示せず。)を形成
し、または両構造を取り合わせて形成する。溝2は、ス
ラストワッシャの少なくとも一方の面に1〜24本、好
ましくは2〜12本、通常2〜6本形成すればよく、例
えば偶数本(図1では4本、図2では16本、図3では
片面8本ずつ両面に合計16本)形成する。なお、潤滑
性がより要求される部位用のスラストワッシャでは、溝
を8本以上、好ましくは10本以上、より好ましくは1
2本以上を設ける。溝は、環状のスラストワッシャの軸
を中心として放射状に略均等角度に配置され、隣合う溝
同士は等間隔に配置されていることが好ましい。
【0129】図1では、断面略矩形(正方形、長方形、
台形(蟻溝)、略載頭型をしたような台形(逆台形)、
平行四辺形などの形状を含む)の溝が90°おきの等間
隔にて偶数本形成されている。そして溝の長さは、環状
のスラストワッシャの内周側と外周側を貫通するように
形成され、またいずれの溝もその幅や深さはスラストワ
ッシャの内周側と外周側の間で同じ幅および同じ深さで
ある。
【0130】図2に示す第2実施形態のスラストワッシ
ャは、スラスト滑り面を基準として溝側面が鈍角な傾斜
面を有する断面溝形状の溝2の本数を16本として軸線
の回りに22.5°毎に放射状に配置し、各溝2は長手
方向に同幅で同じ深さ同じ断面形状に形成している。ま
た、ゲート位置と樹脂溜まり位置は、略直線的形状とな
っている。
【0131】図3に示す第3実施形態のスラストワッシ
ャは、表裏面にそれぞれ8本のゆるやかな円弧状を有す
る断面溝形状の溝2を軸線回りに45°毎に形成し、ス
ラストワッシャの機械的強度の低下を抑えるために、表
面の溝2と裏面の溝2aが軸線方向(スラストワッシャ
の厚さ方向)に重ならないように、22.5°ずつずら
して配置している。そして、このスラストワッシャは、
内周面部分にゲートを設けたいわゆるディスクゲート方
式またはダイヤフラムゲート方式にて成形しており、ウ
エルド(溶融樹脂の接合線)が発生しないため機械的強
度の低下がない点で優れたものである。
【0132】図1および図2に示すように、溝断面形状
は、スラストワッシャの滑り面部の溝幅を溝底部の幅と
等しく形成するか(図1(c))、または溝底部近傍の
幅寸法をスラストワッシャの滑り面部の溝幅寸法(B)
よりも短く形成し(図2(a)、図4(a))、溝の幅
方向に対向する対の側面を傾斜面とし、すなわちスラス
トワッシャの滑り面を基準とする側面角度(θ)が鈍角
の傾斜面(例えば90°を越え180°未満、好ましく
は100°以上180°未満、より好ましくは120°
以上150°以下)に形成することが好ましい。また、
このような溝の対の溝側面は、スラストワッシャの中心
から放射方向に設定される溝の中心線でそれぞれが互い
に中心線を基準として対称に配置形成されることが好ま
しい。
【0133】図4(b)の溝形状は、V字状、図4
(c)、(d)、(e)は、円形または楕円形であり、
角度θはいずれも鈍角である。図4(f)、(g)、
(h)は、滑り面部5と溝2との境界にC面取り部6が
形成され、角度θはいずれも鈍角である。このような溝
形状は、成形時に上記溶融樹脂組成物の流動方向を妨げ
にくいものであるから、樹脂組成物中の繊維状補強材の
配向方向も乱れ難くなり、特に図3(c)、図4
(e)、図4(g)などの溝形状は、繊維状補強材をス
ラストワッシャの回転方向に沿って配向させやすくする
点でも好ましい溝形状であり、また、スラストワッシャ
の中心部からの放射線軸方向に設けられる溝・孔に対し
て主に交差、好ましくは直交した方向にて繊維状補強材
が配向して補強されるため、そのような溝・孔部分の肉
厚の少ない部分の補強がより良好になされる。
【0134】図5(a)〜(d)は、溝2の変形例を示
し、図5(a)は、二本の溝2が平行でない配置であ
り、外周面7と内周面8において、二本の溝2の間隔が
異なっている。図5(b)は、二本の溝2は、平行に配
置されているが、外周面7に対して溝2が垂直でなく傾
斜状に配置されている。図5(c)は、二本の溝2を交
差状に配置したものである。図5(d)は、細い溝幅の
溝2を所定の狭い間隔で並列に配置したものである。
【0135】上記溝が略等間隔にスラストワッシャの内
周側と外周側とを連通し、そして溝は、内周側から外周
側へかけて一様に等しい幅、等しい深さ、等しい溝断面
形状に形成されることで、スラストワッシャの各溝数と
等数分に分割された扇状の滑り面の面積や形状は、全く
等しくはないにしても大略等しくなる。このようにする
と、スラストワッシャの軸回りに均等角度に等分割形成
された略扇状滑り面には、均一に潤滑流体膜が形成さ
れ、滑り面の流体による潤滑や流体による冷却も良好に
なされる。この傾向は、各々全ての溝の断面形状を等し
いものとし、またスラストワッシャの軸線の回りに上記
溝を各々均等な角度に配置することで、滑り面に流体が
均一流量で供給されることになり、上記傾向が顕著に現
れるものと考えられる。
【0136】例えば、図2(a)では、ゲート位置
(G)または樹脂溜まり位置(P)を端部位置(P)を
端部に有する略扇状の滑り面(略台形状の滑り面)と、
これらと隣合う略扇状の滑り面とは全く同形状にはなっ
ておらず、略扇状の滑り面が必ずしも全て相似形となっ
ているわけではないが、互いに隣合う略扇状の滑り面の
面積比率は各々(7:10)〜(10:10)、好まし
くは(8:10)〜(10:10)、より好ましくは
(9:10)〜(10:10)の範囲内に収まるほどの
相似した面積比率であれば、潤滑流体がほぼ等量分ほど
各々の略扇形状の滑り面に供給され、偏摩耗などの不具
合が発生し難いと考えられる。
【0137】また、流体溝のスラスト滑り面部の溝幅と
溝底部の幅とを等しくするか、または溝底部近傍の幅寸
法をスラスト滑り面部の溝幅寸法よりも短くして、スラ
スト滑り面を基準として、溝側面の傾斜角を鈍角とし、
傾斜面とすることで、相手滑り面との摺接時に相手面へ
の攻撃性、損傷性をより少なくできる。
【0138】さらにまた、上記溝形状を有するスラスト
ワッシャは、射出成形法などで成形用金型のキャビティ
内から取り出す際に、成形体に無理な「こじれ力」など
をかけずに容易に取り出すことが可能になり、成形時の
不良品を減らして歩留まりを向上させ、生産性効率が向
上する。また、成形体のバリ取り工程のためのタンブリ
ング処理(たる研磨処理)を行う場合には、溝にバリ取
り用の研磨用小粒径砥石が溝の角部に詰まり難い構造に
なるので、生産性が向上する。
【0139】このような理由から、上記溝の断面形状
は、前記矩形断面形状のうちの正方形、長方形、および
載頭型をしたような台形(逆台形)であるものが好まし
いが、本願のスラストワッシャに係る発明では、溝断面
形状は、その他にくさび型、円弧状、円形または楕円形
をしたような形状であってもよく、スラスト滑り面の溝
幅寸法が溝底部近傍の幅寸法よりも長い寸法を有する
か、または溝側面の傾斜が滑り面を基準として鈍角とな
る溝形状であれば、いずれの溝形状であってもよい。
【0140】上記したような溝形状は、一連の製造工程
において、射出成形法を採用することにより生産性良く
容易に形成でき、前記所定の樹脂組成物を主成分とする
溝付きのスラストワッシャを一体成形できる。
【0141】また、より望ましくは、これら上記溝また
は孔のスラスト滑り面部分の角部に例えば、主に曲面を
有するようなR面取り形状や、また、Cカット面のよう
な主に直線的に除かれたC面取り形状等で示される面取
り部分を有することが好ましい。
【0142】上記R面取りもしくはC面取りは、例え
ば、前記溝または孔の1本当りの幅または深さの1〜1
00%、好ましくは5〜50%、より好ましくは、10
〜30%程度であれば全体的に溝または孔の形状とすべ
り面の関係でバランスが良く、またスラストワッシャを
取り扱うに際し、不用意な取り扱いによる角部の打痕
や、また鋭利な角部による指や手の怪我を回避できるう
えでも好ましく、具体的な数値では、3mm以下、好ま
しくは1mm以下、より好ましくは、0.5mm以下で
あれば十分であり、その下限値は、およそ約0.01m
m程度、好ましくは、約0.05mm以上、実質的には
約0.1mm以上を有していれば、相手滑り面を損傷し
難いと考えられる。なお、このような面取り形状は、上
記溝部のみに限らず、例えば、後述のスラストワッシャ
固定用の突起部の角部や、またスラストワッシャ全体の
各角部に採用してもよい。
【0143】このような面取り形状または後述する肉盛
り形状部は、例えば射出成形用金型のキャビティ内に予
め上記値となるように、反転した形状、いわゆる成形体
に転写できるように、金型キャビティ内に予め設けてお
く手段を採用してもよく、また、射出成形後のタンブリ
ング処理(たる研磨)等による他の手段で設けてもよ
く、また、必要であれば、切削加工等によって設けても
よく、上記いずれかの方法を採ってもよく、上記少なく
とも一つ以上の面取り形成手段を採用することも可能で
ある。より望ましくは、成形体の各角部に形成されたバ
リを効率よく除去するために、少なくともタンブリング
処理を施すという手段を採用することが好ましいが、上
記各々の角部面取り形成手段は、必要がなければ特に採
用しなくともよい。
【0144】上記R面取りもしくはC面取り等の面取り
形状部分は、スラストワッシャの回転摺接時間が経過す
るにしたがって、各々均等角度に分割されたスラスト滑
り面の摩耗により、しだいに、消滅してゆくことが考え
られる。
【0145】しかし、摺動初期状態においては、スラス
トワッシャに対して接する相手滑り面には、樹脂組成物
の転移膜(移着膜)が形成されていなかったり、また十
分に形成されていないことが考えられる。少なくとも比
較的、摺動開始時期状態において、上記面取り部は、耐
摩耗性の能力が潜在すると推定される例えばPTFEを
含有する樹脂組成物からなる十分な転移膜が相手滑り面
の表面に摺動するにしたがって形成されるまでの(いわ
ゆる初期摩耗の進行がほぼ終了するまでの)期間には、
少しでも相手滑り面の損傷発生を防ぎ、耐摩耗性をより
改善するうえで、有効な一手段であると期待でき、なか
でもR面取りのような曲面を有する面取り形状であるこ
とが好ましい。なお、摺動条件等によっては、上記面取
り部分は、必ずしも設けなくてはならないというもので
もない。
【0146】上記流体溝は、厳しい摺動条件下におい
て、例えば、積極的に潤滑用流体を滑り面に供給するた
めにもその通路(溝)は、より広く、流体通路には障害
物がないほうが比較的好ましいものとも考えられる。流
体通路が広すぎるとスラストワッシャの滑り部分の面積
が減少しすぎることになり、これにともなってスラスト
ワッシャの滑り面の面圧が上昇したり、また流体通路が
深すぎたりすると、流体溝部分の溝底部の肉厚が不足し
てスラストワッシャのそれ自体の機械的強度が低下する
ことが考えられる。一方、流体通路が狭すぎたり浅すぎ
たりすると、潤滑用補助流体が、各々均等角度に分割さ
れた略扇状の滑り面に充分に行きわたりにくいことも予
想される。
【0147】そのため上記溝の、流体の進行する方向に
対して直角な面に相当する総断面積、例えば図1(b)
を例にして説明すると、断面凹状形の流体通路は、スラ
ストワッシャに合計4本設けてあるが、例えばこれら断
面凹状形の流体通路の総断面積は、例えば外径が1〜5
00mm、好ましくは、5〜300mm、より好ましく
は、10〜100mmであって、内径が例えば0.1〜
300mm、好ましくは、1〜100mm、より好まし
くは、3〜80mmのスラストワッシャにおいて考える
と、前記流体通路(溝)の総断面積は、例えば1〜50
0mm2 、好ましくは5〜250mm2 、より好ましく
は10〜125mm2 、さらに好ましくは10〜50m
2 の範囲内に定めれば、潤滑用流体は、適度に上記通
路を通って各々の略扇形状の滑り面に行きわたるので、
好ましいものと考えられる。
【0148】なお、スラストワッシャの最も肉厚の薄い
部分、すなわち、流体溝底面とその流体溝底面の反対側
の面(取り付け側面)との肉厚の部分については、その
スラストワッシャ自体のそれ全体の機械的強度を確保す
るために、スラストワッシャの主たる厚み、(具体的に
説明すると、スラストワッシャの取り付け固定用の突起
部分のような箇所を除いた厚み、より具体的に説明する
と、主に構成される平面スラストワッシャ部分よりも突
出した部分を除いた厚み、すなわち主にスラスト平面を
構成する部分の厚み)を基準として考慮した場合、流体
溝の深さは、前記厚みの50%以下、好ましくは30%
以下、より好ましくは20%以下、または、これらの比
率未満の値として、スラストワッシャ全体の機械的強度
を確保することが好ましい。
【0149】しかしながら、先にも説明したように、流
体溝の深さの寸法が極端に浅すぎると、各々、均等角度
にて分割された略扇状のスラスト滑り面に充分に潤滑用
流体が行きわたらないことも予想されるので、前記溝の
深さは、少なくとも前記厚みの3%以上、好ましくは5
%以上、より好ましくは10%以上、または、これらの
比率を越える値を確保することが好ましく、主にスラス
ト平面を構成する部分の厚みにもよるが、その寸法数値
は、具体的には上記溝の深さが、0.1〜10mm、好
ましくは0.3〜5mm、より好ましくは0.5〜3m
m、さらに好ましくは0.5〜1mmである。
【0150】そしてまた、図1(a)、図2(a)、図
3(a)についてみると、スラストワッシャの円環状の
平面(スラストワッシャの滑り面側の真上から見た円環
状の面)における滑り面に対する溝、孔などとの面積比
率関係を示すと、上記溝、孔の総面積は、上記円環状総
面積の1〜50%、好ましくは3〜30%、より好まし
くは5〜20%程度であり、その残部をスラスト滑り面
とすれば適度な面圧と潤滑用流体の供給状態がいずれも
良好になって好ましい。
【0151】そして、上記流体通路(溝)や、スラスト
滑り面に供給される総流体量は、少なくとも0.01リ
ットル/分以上、好ましくは、0.1リットル/分以
上、より好ましくは1リットル/分以上、さらに好まし
くは、5リットル/分以上、または、これらの値を越え
る流量であることが望ましく、その上限値は例えばAT
車の総排気量に関与する最大馬力、最大トルク等に関連
してその変速装置に搭載されるポンプの性能、効率等に
もよると思慮されるが、約30リットル/分程度であれ
ば、本発明のスラスト滑り面には、十分な潤滑流体が供
給されるものと思慮されるが、必ずしも総潤滑流体量
は、上記流量に特定されるものでなくともよい。
【0152】上記に説明した溝および滑り面には、適切
な量の潤滑補助流体を供給し、潤滑流体は、主に上記溝
を通って通過してゆくが、潤滑流体の供給方向は、主と
してスラストワッシャの内周側から外周側への方向へ流
れる使用方法であっても、また、潤滑流体の供給方向
が、主としてスラストワッシャの外周側から内周側への
方向へ流れる使用方法のいずれの形式のスラスト摺接方
式にも適用することができる。
【0153】しかし、スラストワッシャもしくはこれに
相接する滑り部材の少なくとも一方が、主に回転運動を
行なう箇所については、潤滑流体は、遠心力の作用によ
り主としてスラストワッシャの内周側から外周側へ向け
て流れてゆく傾向が強いので、本願の発明のスラストワ
ッシャは、潤滑用流体が、主にスラストワッシャの内周
側から外周側の方向へ流れやすい、相対的に回転運動を
行なう部位用のスラストワッシャに好適であると言え
る。
【0154】なお、前記で説明した溝以外に本発明で
は、例えばスラストワッシャの内周側より外周側へかけ
て流体通路が絞られる形状の溝や、また、スラストワッ
シャの両側面を連通する貫通孔を設けたり、また、スラ
ストワッシャの内周側または/および外周側で迂回する
ような形状の溝、また、スラストワッシャの内周側から
外周側へ向けて形成され、かつ外周側へは連通しない流
体溜まり溝や、もしくはスラストワッシャの外周側から
内周側へ向けて形成され、かつ内周側へは連通しない流
体溜まり溝、さらに、上記各種溝は、らせん状、インボ
リュート曲線状、もしくは、直線状であってよい。
【0155】また、これらの各種の溝は、半径方向の中
心線に対して傾斜した溝形状であったりしてもよく、上
記各種の形状を有する溝、孔等の形状のうち、少なくと
も1種類以上の組み合せの複雑な形状を有する溝や孔
等、いかなる溝、へこみ、くぼみ、孔形状の流体通路で
あってもよい。但し、前記各種溝や孔は、仕様・条件・
用途等により、前記一種類の形状の流体溝形状を選択す
るか、または、その他に必要がなければ、溝を全く設け
なくてもまたよい。
【0156】また、図1(a)および図2(a)では、
射出成形の際のゲート(湯口)部分(G)を、溝とその
溝と隣り合うもう一方との溝との略中間部分のスラスト
ワッシャの外周面部に1ヶ所のみ設けてある。ゲート位
置をスラストワッシャの外周面部に設けるのは、スラス
ト滑り面のゲート跡による悪影響を回避することと、ス
ラストワッシャの相手取付け部位との干渉による組立不
具合を回避するためである。これにより、ウエルド(接
合部)部分は、スラストワッシャの中心部分を基準とし
て、ゲート跡部分から相対する反対側部分の周辺近傍部
分にわずかな接合線跡を残して形成される。また、上記
ウエルド対策の改善や、また射出成形する際に金型キャ
ビティ内の空気、ガスなどを効率的に排出して短時間で
効率的に成形できるようにゲート跡部分から最も遠くに
離れた位置の部位、すなわち、スラストワッシャの中心
部分を基準として、金型キャビティのゲート部分から相
対する反対側部位に樹脂溜まり部(P)を設けて射出成
形することが好ましい。
【0157】このようなゲート部分(G)や樹脂溜まり
部分(P)は、射出成形と同時の型内ゲートカット加工
もしくは射出成形後の切削加工によって取り除き、排除
することが好ましい。これらの形跡が、例えばスラスト
ワッシャをトランスミッションに取り付ける際に他の部
分と干渉しないようにするためにも、ゲート部分(G)
や樹脂溜まり跡(P)は、図1(a)のようにスラスト
ワッシャの外周径と等しい円周径内に収めるか、また
は、図2(a)のようにスラストワッシャの主たる外周
径よりも内側の位置に収まるようにゲート跡を残すと共
に、ゲート跡はスラストワッシャの滑り面または取付面
側には残らないような位置に設けることが好ましい。
【0158】ゲート部分(G)または樹脂溜まり部分
(P)は、図2(a)に示すように、容易に取り除くこ
とができるようにするためにも金型のキャビティ内から
外側へ延びるような略直線的な形状に形成されているも
のが好ましい。そして、ゲート跡部分または樹脂溜まり
跡部分は、図2(a)にも示されるように略直線形状と
して残る。このような略直線形状であればゲート部の残
り部分または樹脂溜まり部の残り部分を容易に取り除く
ことができるので好ましい。
【0159】また、ゲート部分を溝や孔とその溝や孔と
隣り合うもう一方との溝や孔との略中間部分のスラスト
ワッシャの外周面に設けると共に、前記溝や孔の本数を
偶数本にしてウエルド部分が溝や孔の部分に重ならない
ようになしたスラストワッシャは、総じて機械的強度の
低減を回避できるので好ましい。
【0160】スラストワッシャのゲート跡周辺近傍部分
は、樹脂組成物の流動方向が不均一であり、他の部分よ
りも多少の機械的強度の低下が考えられ、また、ウエル
ド部分(樹脂組成物の接合部分)の機械的強度の低下も
比較的現れやすい。そのため、これら機械的強度の低下
の要因が潜在するゲート跡やウエルド跡は、図1や図2
にも示されるように、スラストワッシャの肉厚の薄い部
分を回避するように配設することが好ましく、すなわち
前記溝や孔部分と重ならないように配設することが好ま
しいと考えられる。
【0161】また、図3に示すように、スラストワッシ
ャの仕様や形態によっては、スラストワッシャの内周面
近傍部分にゲートを設けたディスクゲートまたはダイヤ
フラムゲート方式でスラストワッシャを成形してもよ
い。上記ゲート方式では、前記繊維状強化材が主にスラ
ストワッシャの中心部から放射状に延びる線に沿って配
向しやすいと考えられ、本願の発明のスラストワッシャ
では、仕様・条件・用途等によっては、特にスラストワ
ッシャの機械的強度を重視するのであれば、そのような
スラストワッシャであってもよい。そしてまた、上記の
ゲート方式によって製造されたスラストワッシャであれ
ば、溝や孔の配設数は奇数であってもよく、いかなる数
を設定してもよい。また、ゲート位置は必要であれば、
次に説明のスラストワッシャ固定用の例えば円筒状突起
部の頂上部近傍に設けてもよい。
【0162】なお、上記の各種ゲートは、生産性向上の
点から射出金型内にてゲートカットを行なう方式が好ま
しいが、本願の発明ではいかなるゲートカット方式であ
ってもよい。
【0163】スラストワッシャ成形時の他の問題とし
て、スラストワッシャを射出金型から取り出す際にスラ
ストワッシャ表面に取り出し部材(突き出しピン等)を
接触させるため、その跡がつくという問題があるが、こ
のような跡は所定位置に形成することが好ましい。
【0164】すなわち、本願の発明におけるスラストワ
ッシャ表面の取り出し部材跡は、スラストワッシャの固
定面側、すなわちスラスト滑り面の反対側(裏面側)に
設けるようにすれば、スラスト滑り面の表面形状を滑ら
かに形成できる。また、このような取り出し部材跡は、
裏面(スラストワッシャの滑り面)の溝に重ならないう
に表裏同じ位置に形成しないことが好ましい。そのよう
な突き出しピン等の跡の形成位置は、一つの溝とこれと
隣合う他の溝との中間部分やスラストワッシャ取付け用
面の主にスラストワッシャ平面を形成する内周側寄りの
近傍部、または外周側寄りの近傍部もしくはそれらの中
間部、また固定用突起部分と重ならない位置や固定用突
起部の頂面などに配置することが好ましく、複数箇所に
て任意の部分に設けることができる。
【0165】そして、本願の発明に係るスラストワッシ
ャは、図1、図2などに示したような溝2を有する片面
のみで摺接され、その反対側(溝を有する滑り面の裏
側)は、固定される態様で使用されることが好ましい。
【0166】このような構造のスラストワッシャは、溝
を有する面で確実に摺接するので、反対側の面は油溝な
どの溝を設ける必要がなく、その分、加工をする必要が
なくなる。また溝の寸法管理も省略でき、肉厚が薄くな
りすぎることもないので、スラストワッシャは、機械的
強度が極端に低下することはない。
【0167】上記のスラストワッシャの固定用手段は、
スラストワッシャに少なくとも1ヶ所以上、好ましく
は、前記溝または孔の設定数と同等数か、またはそれ以
下の設定数とし、より好ましくは2〜8ヶ所で例えば偶
数箇所程度を有していればよく、そのような固定用部位
はスラストワッシャのいかなる部位にあってもよい。
【0168】例えば、図2(a)では、ゲート位置
(G)、樹脂溜まり位置(P)は、略直線的な形状とな
っているが、このような略直線的な部分を利用して、ス
ラストワッシャが回転体と共回りしないように、スラス
トワッシャを上記形状に対応した形状の固定用部材に嵌
め合わせたり、また、上記(G)、(P)の部分に回転
防止・固定用の突起などを設けて上記形状に対応した形
状の固定用部材にスラストワッシャを組み込んで固定し
てもよい。
【0169】図1または図2に示す実施形態では、スラ
ストワッシャ固定用の略円筒状の突起3が、固定面側す
なわちスラスト滑り面の裏面の2ヶ所または4ヶ所とい
うように偶数箇所に設けられている。偶数箇所に設ける
理由は、前記溝・孔の数量と偶数箇所ほど設ける理由と
同様な理由のためである。
【0170】上記の突起3は、その裏面のスラストすべ
り面に設けられている溝の部分と重ならない位置、すな
わち裏面の溝とその隣りあう他の溝との略中間部分に形
成され、またスラストワッシャの内周と外周との略中間
部分に設けられている。
【0171】このような位置にスラストワッシャ固定用
の略円筒状の突起を設ける理由は、射出成形の際に突起
部分に樹脂組成物の流動方向の乱れが生じ、この部分の
機械的強度が多少低下すると考えられ、これを少しでも
抑制するためである。また、円弧状とすることで円筒状
突起3の根元に発生するせん断力や応力集中を少しでも
緩和するためでもある。また、突起部分の機械的強度の
向上については、前記炭素繊維などの繊維状強化材を所
定の樹脂組成物に配合することによっても改善できる。
【0172】そして、また上記固定用の略円筒状の突起
の根元に加わるせん断力や応力集中の発生を充分に抑え
るために、突起3の根元には、例えば2つの面が交わる
部分の角部面間を滑らかな曲線形で短絡するようなR形
状などの肉盛り部や、2つの面が交わる部分の角部面間
を実質的に短絡的に連結する直線状の肉盛り部を設ける
ことが好ましい。
【0173】なお、上記理由と同様の理由から前記した
溝の溝底部にもこのような肉盛り部を設けることが好ま
しく、スラストワッシャに形成されるその他の突出部の
根元やくぼみ部、凹み部の底角部などに肉盛り部を設け
てもよい。
【0174】このような肉盛り部の高さ(深さ)は、例
えば3mm以下、好ましくは1mm以下、より好ましく
は0.8mm以下、さらに好ましくは、0.5mm以下
であればよく、その下限値は、およそ、約0.01mm
程度、好ましくは、約0.05mm、実質的には0.1
mmであれば、せん断力や応力集中に対応できる。
【0175】このようなスラストワッシャの外周面また
は内周面のうちの少なくとも一方の面のいずれかの部位
に表面には、パーティングライン(射出成形金型の雄型
と雌型との境部分によって形成される線状の痕跡)が形
成される場合があるが、そのようなパーティングライン
は、スラスト平面を構成する両面の中間部分(環状スラ
ストワッシャの内・外周面の中間部分)に配置されれ
ば、角部に影響しないので好ましい。しかし、スラスト
ワッシャの形状、仕様・条件・用途部位などによって
は、上記面の主に滑り面側の角部近傍または主に固定面
側の角部近傍のいずれの部位であってもよい。なお、デ
ィスクゲートまたはダイヤフラムゲート方式では、スラ
ストワッシャの内周部分に型内ゲートカット工程や切削
加工などの処理を施すので、そのような方式によって成
形されたスラストワッシャの内周面にはパーティングラ
インの痕跡は殆どまたは全く残らない。
【0176】また、スラストワッシャの平面度は、例え
ば、スラストワッシャの滑り面のソリ量としてソリ量の
最大高低差を計測するなどして判断できる。前記平面度
は小さいほうが好ましく、最も好ましい状態は平面度を
0とすることだが、本願の発明に係る樹脂組成物からな
るスラストワッシャの平面度は、スラストワッシャの主
たる厚みの例えば20%以下、好ましくは10%以下、
より好ましくは8%以下、またはこれらの比率の数値未
満であればよく、その寸法数値としては、例えば1mm
以下、好ましくは0.8mm以下、より好ましくは0.
5mm以下、更に好ましくは0.3mm以下である。
【0177】なお、上記したソリを抑え寸法精度の高い
スラストワッシャを製造するには、例えば、前記したア
ニール熱処理工程の際に、スラストワッシャの主たる平
面部を両面から金型板等の硬質材にて挟持して保持し、
その状態で熱処理を施せばよい。
【0178】また、上述したスラストワッシャは、射出
成形によって形成されたいわゆる射出成形体ばかりでな
く、押出成形体や圧縮成形体であってもよく、また補強
材として金網などの金属系芯材を用いたものや、裏金付
き多孔質焼結合金体に樹脂組成物を含浸被覆したものな
ど、単体品や複合品のいずれであってもよい。なお、射
出成形品は、機能的にも優れ、かつ大量かつ安価に市場
に提供できるものであることは勿論である。
【0179】以上述べた本願の発明のスラストワッシャ
は、主に自動車用のATのトルクコンバータに使用でき
るが、その他に例えば手動変速機、フォークリフト、ト
ラクター、三輪車、二輪車、発電機などの所要の動力発
生装置や動力伝達装置に装着されるスラストワッシャと
して使用できる。
【0180】図6に示す本願の発明のスラストワッシャ
の使用状態は、自動車の流体式トルクコンバータの要部
に第1実施形態の油中スラストワッシャ1と、これより
小径の油中スラストワッシャ9と、両面に突起を有しな
い油中スラストワッシャ10を装着した状態を示してい
る。
【0181】このトルクコンバータの要部は、タービン
側のボス11とインペラ側のハブ12の間で回転動力
(トルク)を伝達する。そして、油中スラストワッシャ
10は、コンバータカバー13とタービンハブ14との
スラスト力を受け持ちまた摺接し、油中スラストワッシ
ャ9は、タービンハブ14とワンウェイクラッチ15の
タービン側面部材16とのスラスト力を受け持ちまた摺
接し、そして、油中スラストワッシャ1は、ワンウェイ
クラッチ15のインペラ側面部材17とインペラ側のハ
ブ18とのスラスト力を受け持ちまた摺接する。
【0182】因みに、本願の発明のスラストワッシャの
使用条件は、小型排気量エンジンや低出力モータにおい
ては、通常使用馬力、もしくは最大馬力が300PS以
下、好ましくは200PS以下、より好ましくは100
PS以下、さらに好ましくは1〜80PSまたはこれら
の数値未満で、また通常使用するトルクもしくは最大ト
ルクが50kgf・m以下、好ましくは30kgf・m
以下、より好ましくは20kgf・m以下、さらに好ま
しくは1〜10kgf・mまたはこれらの数値未満程度
の動力を伝達する部位、または上記動力条件を常用にて
使用する可能性を有する部位用に好適であるといえる。
【0183】また、本願の発明のスラストワッシャの接
触相手材は、SUS303、SUS304などの耐食性
金属であるステンレス鋼、S15C、S43C、S45
C、SCM420H、また、SUJ2等の高炭素クロム
軸受鋼等の炭素鋼、FCD45等の球状黒鉛鋳鉄等また
はこれらの軟窒化処理、焼き入れ熱処理、研磨処理など
の硬化処理などを施した硬質材料またはこれらの炭素含
有金属類であっても、またはADC12等のダイカスト
用アルミニウム合金、AC8A、AC8C等の鋳物用ア
ルミニウム合金等のアルミニウム含有系合金等の軟質材
であってもよい。相手材は、加工時の効率や、生産性、
価格等で平均して総合的に優れる鋳物系金属、その中で
もADC、AC等の軽量鋳物金属系合金等が好ましい
が、本願各発明のスラストワッシャに対して接する相手
滑り材は、ADC材、AC材に特定されるものではな
い。
【0184】
【実施例】実施例および比較例に使用した原材料を以下
に示した。なお、〔 〕内は表中に記載する原材料の略
称である。 (1) PAS トープレン社製:PPS T4−AG(セミリニア型、部分架橋 型) 〔PPS−1〕 (2) PAS 東レ社製:PPS M2888(リニア型、直鎖型) 〔PPS−2〕 (3) ナイロン 日本合成ゴム社製:46ナイロン TW−300 〔PA〕 (4) フェノール樹脂 〔PF〕 (5) 炭素繊維 大阪ガス社製:03J−415(ピッチ系、φ18μm) 〔CF−1〕 (6) 炭素繊維 東邦レーヨン社製:ベスファイト HTA−C6−E(PAN 系、φ6.7μm) 〔CF−2〕 (7) ガラス繊維 旭ファイバーグラス社製:MF06MB−120〔GF〕 (8) 再生ポリテトラフルオロエチレン樹脂 喜多村社製:KT−400H(平 均粒径約25μm) 〔PTFE〕 (9) 二硫化モリブデン ダウ・コーニング社製:モリコートZパウダー 〔MoS2 〕。
【0185】各種原材料を表1に示す割合(重量部)で
配合し、ヘンシェルミキサーを用いて乾式混合した。次
いで、押出し機にて溶融押出しして造粒し、得られたペ
レットを射出成形にて外径21mm、内径17mm、高
さ10mmの円筒状試験片と、図1に示す外径56m
m、内径40mm、幅6mmの油溝付きスラストワッシ
ャ(溝幅10mm、溝深さ3mm、溝本数4本)および
図2、図3に示すスラストワッシャを成形した。各々の
スラストワッシャの滑り面の表面粗さは、3μm(R
a)であった。また、一部のスラストワッシャには、銅
メッキ処理を施した鋼板に銅粉末を均一に散布して焼結
し、多孔質焼結層を形成し、これを加熱した状態にて上
記樹脂板を重ね合わせて圧接して含浸被覆処理を施し
た。これらの成形品は、熱処理を施さないものと、また
一部のものには200℃で10時間のアニール熱処理を
して、結晶化と使用中の寸法安定化を計った。
【0186】そして、一部の成形品には、タンブリング
処理(たる研磨)を施して、各角部のバリを除去し0.
5mm以下の面取り部分を形成した。また、各角部の肉
盛り部の高さまたは深さは0.5mm以下であり、各々
のスラストワッシャの反り量は約0.5mm以下であっ
た。
【0187】
【表1】
【0188】前記円筒状の試験片を用いてスラスト試験
を行なうと共に、スラストワッシャを用いて製品試験を
行ない、これらの結果を表2に示した。
【0189】(a) スラスト試験 相手材を炭素鋼(S43C)およびダイカスト用アルミ
ニウム合金(ADC12)として、スラスト摩耗試験を
実施し、その結果の試験片の摩耗高さおよび相手材の摩
耗深さを表2に示した。スラスト摩耗試験の条件は以下
の通りである。 面圧:30.0kg/cm2 (2.94MPa) 速度:180m/分、 相手材:S43C、ADC12(ともに面粗度3S:3
μm(Ry)) 試験時間:50時間 潤滑油:昭和シェル石油社製AT用オイル ゲルコAT
【0190】
【表2】
【0191】表2の結果から、実施例1〜4は、相手材
を問わず耐摩耗性および低攻撃性に優れる材料であると
いえる。
【0192】一方、従来品相当の比較例1〜3は、いず
れかの相手材に対して耐摩耗性が劣り、かつアルミニウ
ム金属への攻撃性(損傷性)も大きかった。また、原材
料の配合割合が所定範囲外の比較例4または比較例5
は、耐摩耗性が劣り、比較例6はアルミニウム金属への
攻撃性(損傷性)が大きかった。
【0193】(b) 製品試験 上記したスラスト試験の結果より、明らかに耐摩耗性お
よび摺接相手材に対して低攻撃性が劣る比較例1および
比較例2を除いた実施例および比較例3〜6について、
図7に示す実験装置を用いて以下の装置および条件で製
品試験を行ない、結果を表2中に併記した。
【0194】すなわち、図7に示す製品試験の実験装置
は、試験対象のスラストワッシャAを回転駆動軸20の
下面に突起aにて嵌めつけ、スラストワッシャAの下方
にハウジング21内の底面にボルトで固定されたリング
状の相手材Bを接触させ、ハウジング21の底面には潤
滑油の給油口22を開口させると共に、ハウジング21
の側面の排出口23からスラストワッシャAの油溝を通
過した潤滑油を強制排出するようにしたものである。ま
た、回転駆動軸20には所定の負荷を掛け、熱電対24
で温度(℃)を測定した。実験条件を下記に示した。
【0195】 記 面圧:30.0kg/cm2 (2.94MPa) 速度:3000rpm (スラストワッシャの内径部分の速度:376.8m/min、外径 部分速度:527.52m/min) 相手材:S43C、ADC12(ともに面粗度3S:3μm(Ry))、図1 と同一形状 試験時間:10時間 潤滑油:昭和シェル石油社製AT用オイル ゲルコATF 油温:120℃ 潤滑油流量:6リットル/分 。
【0196】表2の結果からも明らかなように、実施例
1〜4のスラストワッシャは、相手材の種類(材質)に
拘わらず、スラスト試験の結果と同様に耐摩耗性に優れ
ており、製品規格値である摩耗高さ0.1mm以下/1
0hrsを満たし、摩擦係数も低く安定していた。
【0197】一方、従来品相当の比較例3は、S43C
相手では耐摩耗性の規格値を満たしたが、摩擦係数が実
施例に比べて大きかった。ADC12相手では、さらに
摩擦係数が大きくなり、動力伝達効率が劣り、また相手
材を攻撃したので好ましくなかった。
【0198】また、原材料の配合割合(請求項2、4に
記載)が所定範囲外の比較例4〜6は、炭素繊維の添加
量が少ない比較例4は、繊維補強が不足して耐摩耗性が
劣る結果であった。また、比較例5は、PTFEを無添
加としたので摩擦係数が微増し、ADC12相手では耐
摩耗性が劣っていた。比較例6は、二硫化モリブデンが
所定量を越えて配合したために軟質金属であるADC1
2に対して攻撃性が増した。
【0199】
【発明の効果】本願のスラストワッシャに係る発明は、
以上説明したように、所定の組成からなる高速・高面圧
滑り部用スラストワッシャであるから、ダイカスト用ア
ルミニウム合金(ADC12)のような軟質材から炭素
鋼(S43C)のような硬質材に摺接する条件におい
て、摺接相手の材質に拘わらずきわめて優れた耐摩耗
性、低攻撃性および低摩擦係数であるという利点があ
る。
【0200】したがって、例えば自動車などの自動変速
機トルクコンバーター部のスラストワッシャとして、耐
摩耗性の高いものであり、スラストワッシャを薄肉化で
き、軸方向の小型化およびアルミニウム材の併用と合せ
てATやまたMT等の変速装置などの動力伝達装置や動
力発生装置を大幅に軽量化できるものである。また、従
来の樹脂製スラストワッシャに比べて低摩擦であるの
で、動力伝達効率も向上するという利点もある。
【0201】本願のスラストワッシャの製造方法に係る
発明は、ゲート(湯口)跡による滑り特性低下や機械的
強度の低下などの悪影響を回避できる利点がある。ま
た、ゲートとガス抜き用の樹脂溜まりを所定位置に設け
て射出成形する方法の発明では、前記した利点を有する
高速・高面圧滑り部用スラストワッシャを製造できるこ
とに加えて短時間で効率よく成形できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)第1実施形態の正面図 (b)第1実施形態の断面図 (c)第1実施形態の溝の拡大断面図
【図2】(a)第2実施形態の正面図 (b)第2実施形態の断面図 (c)第2実施形態の溝の拡大断面図
【図3】(a)第3実施形態の正面図 (b)第3実施形態の断面図 (c)第3実施形態の溝の拡大断面図
【図4】(a)〜(h)溝の形状を示すスラストワッシ
ャの要部拡大断面図
【図5】(a)〜(d)溝の配置例を示すスラストワッ
シャの要部斜視図
【図6】実施形態の使用状態を説明するトルクコンバー
タの要部断面図
【図7】製品試験の実験装置の断面図
【符号の説明】
1 スラストワッシャ 2 溝 3 突起 4 貫通孔 5 滑り面部 6 C面取り部 7 外周面 8 内周面 9、10 スラストワッシャ 11 タービン側のボス 12 インペラ側のハブ 13 コンバーターカバー 14 タービンハブ 15 ワンウェイクラッチ 16 タービン側面部材 17 インペラ側面部材 20 回転駆動軸 21 ハウジング 22 給油口 23 排出口 24 熱電対 A スラストワッシャ a 突起 B 相手材 G ゲート位置 P 樹脂溜まり位置

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリアリーレンスルフィド系樹脂、炭素
    繊維およびパーフルオロ系フッ素樹脂を必須成分とする
    樹脂組成物からなる高速・高面圧滑り部用スラストワッ
    シャ。
  2. 【請求項2】 ポリアリーレンスルフィド系樹脂100
    重量部に対し、炭素繊維10〜80重量部およびパーフ
    ルオロ系フッ素樹脂2〜50重量部を配合した樹脂組成
    物からなる高速・高面圧滑り部用スラストワッシャ。
  3. 【請求項3】 ポリアリーレンスルフィド系樹脂、炭素
    繊維、パーフルオロ系フッ素樹脂およびモリブデン化合
    物を必須成分とする樹脂組成物からなる高速・高面圧滑
    り部用スラストワッシャ。
  4. 【請求項4】 ポリアリーレンスルフィド系樹脂100
    重量部に対し、炭素繊維10〜80重量部、パーフルオ
    ロ系フッ素樹脂2〜50重量部およびモリブデン化合物
    1〜30重量部を配合した樹脂組成物からなる高速・高
    面圧滑り部用スラストワッシャ。
  5. 【請求項5】 前記高速・高面圧滑り部用スラストワッ
    シャが、表面に軸線方向に突出する固定用の突起を有す
    るものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の高速
    ・高面圧滑り部用スラストワッシャ。
  6. 【請求項6】 前記高速・高面圧滑り部用スラストワッ
    シャが、環状スラストワッシャの内周から外周に通じる
    溝またはスラストワッシャの表裏面を貫通する孔を有す
    るものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の高速
    ・高面圧滑り部用スラストワッシャ。
  7. 【請求項7】 前記高速・高面圧滑り部用スラストワッ
    シャが、トランスミッション用スラストワッシャである
    請求項1〜6のいずれか1項に記載の高速・高面圧滑り
    部用スラストワッシャ。
  8. 【請求項8】 前記高速・高面圧滑り部用スラストワッ
    シャが、オートマチックトランスミッション用スラスト
    ワッシャである請求項1〜6のいずれか1項に記載の高
    速・高面圧滑り部用スラストワッシャ。
  9. 【請求項9】 環状スラストワッシャの滑り面に形成さ
    れた溝またはスラストワッシャの表裏面を貫通する孔を
    形成した高速・高面圧滑り部用スラストワッシャの製造
    方法において、前記スラストワッシャの成形用金型に関
    し、スラストワッシャの内周面または外周面に相当する
    部位に湯口を配置し、この湯口からポリアリーレンスル
    フィド系樹脂、炭素繊維およびパーフルオロ系フッ素樹
    脂を必須成分とする溶融樹脂組成物を射出成形すること
    を特徴とする高速・高面圧滑り部用スラストワッシャの
    製造方法。
  10. 【請求項10】 前記湯口の配置は、湯口と溝または孔
    とがスラストワッシャの中心部からの放射線軸上に重な
    らない配置である請求項9記載の高速・高面圧滑り部用
    スラストワッシャの製造方法。
  11. 【請求項11】 前記湯口は1箇所に形成されたもので
    あり、この湯口から最も離れた部位にガス抜き用の樹脂
    溜まり部を設けて射出成形する請求項9または10に記
    載の高速・高面圧滑り部用スラストワッシャの製造方
    法。
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