JP2018179079A - 摺動部材及び摺動部材の製造方法 - Google Patents

摺動部材及び摺動部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、摺動性及び耐摩耗性に優れる摺動部材及び摺動部材の製造方法の提供を課題とする。【解決手段】本発明の摺動部材は、フッ素樹脂を主成分とする摺動層を備え、上記フッ素樹脂が架橋しており、上記摺動層が外面に複数の溝を有し、上記摺動層の外面の算術平均粗さRaが5μm以上である。本発明の摺動部材の製造方法は、フッ素樹脂を主成分とするシート体に、上記フッ素樹脂の結晶融点以上の温度、低酸素雰囲気下で電離性放射線を照射する照射工程と、上記照射工程後にシート体の外面に複数の溝を形成する溝形成工程とを備え、上記溝形成工程で、得られる上記シート体の外面の算術平均粗さRaを5μm以上とする。【選択図】図2

Description

本発明は、摺動部材及び摺動部材の製造方法に関する。
一般にフッ素樹脂は易滑性に優れている。そのため、フッ素樹脂は、例えば使用者の手の滑りを良好に保てるようタッチパネルの前面板のハードコート層等に用いられている(特開2014−133393号公報参照)。
特開2014−133393号公報
上述のようにフッ素樹脂は易滑性に優れるが、この易滑性は(1)フッ素樹脂は表面エネルギーが低いため、樹脂自体が滑りやすいこと、及び(2)フッ素樹脂の表面が削れることで生じる粉が潤滑剤の役割を果たし、さらにこの粉の一部が摺動対象に付着してフッ素−フッ素間の摩擦形態に近くなり、摩擦係数が低下すること、に起因すると考えられる。
しかしながら、上述のようにフッ素樹脂は滑りやすい一方、摩耗しやすいという性質を有する。そのため、フッ素樹脂を摺動対象と比較的強く接触する箇所に用いると、耐久性が不十分となりやすい。
このような点から、フッ素樹脂の耐久性を向上すべく、フッ素樹脂を架橋することが考えられる。しかしながら、フッ素樹脂の滑りやすさは、フッ素樹脂の表面の削れに依拠しているため、フッ素樹脂を架橋することはフッ素樹脂の易滑性を阻害することになる。つまり、従来にあっては、フッ素樹脂の耐久性及び易滑性はトレードオフの関係にある。
また、用途によっては、フッ素樹脂を含む層の表面にオイルやグリス等の潤滑剤を塗布して滑り性を向上することも考えられる。しかしながら、フッ素樹脂は易滑性に優れるため潤滑剤を弾きやすく、長期にわたって潤滑剤を表面に留めておくことは困難である。
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、摺動性及び耐摩耗性に優れる摺動部材及び摺動部材の製造方法の提供を課題とする。
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係る摺動部材は、フッ素樹脂を主成分とする摺動層を備え、上記フッ素樹脂が架橋しており、上記摺動層が外面に複数の溝を有し、上記摺動層の外面の算術平均粗さRaが5μm以上である。
また、上記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係る摺動部材の製造方法は、フッ素樹脂を主成分とするシート体に、上記フッ素樹脂の結晶融点以上の温度、低酸素雰囲気下で電離性放射線を照射する照射工程と、上記照射工程後にシート体の外面に複数の溝を形成する溝形成工程とを備え、上記溝形成工程で、得られる上記シート体の外面の算術平均粗さRaを5μm以上とする。
本発明の摺動部材は摺動性及び耐摩耗性に優れる。また、本発明の摺動部材の製造方法は、摺動性及び耐摩耗性に優れる摺動部材を製造できる。
本発明の一実施形態に係る摺動部材を示す模式的断面図である。 図1の摺動部材の模式的部分拡大平面図である。 図2の摺動部材のA−A線端面図である。 図1の摺動部材の外面に潤滑剤を塗布した状態を示す模式的部分拡大断面図である。 グリス塗布モードにおける摺動層外面の算術平均粗さと動摩擦係数との関係を示すグラフである。 ドライモードにおける摺動層外面の算術平均粗さと動摩擦係数との関係を示すグラフである。 グリス塗布モードにおける電子線照射の有無と動摩擦係数との関係を示すグラフである。 ドライモードにおける電子線照射の有無と動摩擦係数との関係を示すグラフである。 グリスの滞留性を示すグラフである。 摺動層外面の算術平均粗さとグリスの滞留性との関係を示すグラフである。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
本発明の一態様に係る摺動部材は、フッ素樹脂を主成分とする摺動層を備え、上記フッ素樹脂が架橋しており、上記摺動層が外面に複数の溝を有し、上記摺動層の外面の算術平均粗さRaが5μm以上である。
当該摺動部材は、フッ素樹脂を主成分とする摺動層を備え、上記フッ素樹脂が架橋しているので、耐摩耗性に優れる。また、当該摺動部材は、上記摺動層が上記フッ素樹脂の非粘着性に起因する易滑性を有することに加え、この摺動層の外面の算術平均粗さRaが上記範囲内であるので、摺動対象部材との接触面積が小さくなる。そのため、当該摺動部材は摺動性に優れる。
上記算術平均粗さRaとしては10μm以上が好ましい。当該摺動部材は、摺動層の外面に潤滑剤を塗布した状態で用いられる場合がある。この場合に関し、上記算術平均粗さRaが上記下限以上であることによって、上記摺動層の外面への潤滑剤の滞留性を向上することができ、これにより摺動性をより高めることができる。
上記算術平均粗さRaとしては35μm以下が好ましい。当該摺動部材は、用途によっては摺動層の外面に潤滑剤を塗布しないで用いられる。この場合に関し、上記算術平均粗さRaが上記上限以下であることによって、上記摺動層の外面の凸部の潰れに起因する摺動性の低下を的確に抑制することができ、優れた摺動性を維持することができる。
上記複数の溝の平均幅としては100μm以上400μm以下が好ましく、平均深さとしては100μm以上500μm以下が好ましく、平均間隔としては300μm以上5500μm以下が好ましい。このように、上記複数の溝の平均幅、平均深さ及び平均間隔が上記範囲内であることによって、上記摺動層の摺動対象部材との接触面積を小さくしやすい。また、当該摺動部材が摺動層の外面に潤滑剤を塗布した状態で用いられる場合、上記複数の溝の平均幅及び平均深さが上記範囲内であることによって、上記複数の溝に潤滑剤を滞留させやすく、これにより摺動性をより高めやすい。
上記複数の溝のうちの少なくとも一部が独立溝であるとよい。このように、上記複数の溝のうちの少なくとも一部が独立溝であることによって、この独立溝に潤滑剤を滞留させやすく、これにより摺動性を高めやすい。また、この構成によると、複数の溝に起因する上記摺動層の強度の低下を抑制することができる。
上記複数の溝が全体として格子状に配設されているとよい。このように、上記複数の溝が全体として格子状に配設されていることによって、摺動方向に沿う方向に延在する複数の溝によって上記摺動層の摺動対象部材との接触面積を容易かつ確実に小さくすることができる。また、上記摺動層の外面に潤滑剤を塗布する場合、この潤滑剤を上記摺動方向に対して比較的大きな角度で交差する複数の溝に滞留させやすい。これにより、摺動性を高めやすい。
上記摺動層の複数の溝に囲まれる部分の外面がドーム状に形成されるとよい。このように、上記摺動層の複数の溝に囲まれる部分の外面がドーム状に形成されることによって、摺動層の摺動対象部材との接触面積をより小さくすることができる。また、この構成によると、ドーム状部の曲面部分に潤滑剤を行き渡らせやすいので、潤滑剤による摺動性向上効果を高めやすい。
また、本発明の他の一態様に係る摺動部材の製造方法は、フッ素樹脂を主成分とするシート体に、上記フッ素樹脂の結晶融点以上の温度、低酸素雰囲気下で電離性放射線を照射する照射工程と、上記照射工程後にシート体の外面に複数の溝を形成する溝形成工程と
を備え、上記溝形成工程で、得られる上記シート体の外面の算術平均粗さRaを5μm以上とする。
当該摺動部材の製造方法は、上記照射工程によってフッ素樹脂を架橋させた後、上記溝形成工程によって外面の算術平均粗さRaが上記範囲内となるように複数の溝をシート体に形成することで、上述の摺動層を製造することができる。従って、当該摺動部材の製造方法は、摺動性及び耐摩耗性に優れる摺動部材を製造できる。
なお、本発明において、「主成分」とは、最も含有量の多い成分をいい、例えば50質量%以上含有される成分をいう。「算術平均粗さRa」とは、JIS−B0601:2001に準じてカットオフ値(λc)2.5mm、評価長さ(l)8mmで測定される値を意味する。「溝の平均幅」とは、溝の開口部分の任意の20点の幅のうち大きいものから5つ及び小さいものから5つを除いた値の平均値を意味する。「溝の平均深さ」とは、溝の任意の20点における深さのうち大きいものから5つ及び小さいものから5つを除いた値の平均値を意味する。「溝の平均間隔」とは、隣接する溝の開口部分の任意の20点の間隔のうち大きいものから5つ及び小さいものから5つを除いた値の平均値を意味する。「外面がドーム状」とは、厚さ方向の断面において外面が全体として表面側に弓なりに湾曲した形状を意味し、この外面の一部に凹凸を有する形状を含む。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明に係る摺動部材及び摺動部材の製造方法の一実施形態について図面を参照しつつ詳説する。
[摺動部材]
図1の摺動部材は、全体としてシート状に形成されている。当該摺動部材は、フッ素樹脂を主成分とする摺動層1と、摺動層1の片面側に積層される基材層2とを備える。当該摺動部材は、摺動層1及び基材層2の2層体である。上記フッ素樹脂は架橋している。摺動層1は、当該摺動部材の一方側の最外層を形成する。図2及び図3に示すように、摺動層1は、外面に複数の溝3を有する。摺動層1は外面の算術平均粗さRaが5μm以上である。なお、図1では、平板状の摺動部材を図示しているが、当該摺動部材は図1の形状に限定されるものではなく、例えば摺動層1が内面側に配設される筒状であってもよい。
当該摺動部材は、例えば定着ローラや軸受等の部材として用いられる。具体的には、当該摺動部材は、例えば加熱ローラ及び加熱ローラの外周面に周接し、この加熱ローラの周方向に摺動する筒状の耐熱性フィルムを有する定着ローラにおける耐熱性フィルムの内周面を構成する部材や、無潤滑軸受用の部材として用いられる。当該定着ローラは、例えば上記定着ローラに使用される場合、摺動層1の外面にグリス等の潤滑剤を塗布した状態で用いられる。一方、当該摺動部材は、上記無潤滑軸受用の部材として使用される場合、摺動層1の外面に潤滑剤が塗布されない状態で用いられる。このように、当該摺動部材は、摺動層1の外面に潤滑剤を塗布した状態で用いてもよく、潤滑剤を塗布しない状態で用いてもよい。
当該摺動部材は、フッ素樹脂を主成分とする摺動層1を備え、上記フッ素樹脂が架橋しているので、耐摩耗性に優れる。また、当該摺動部材は、摺動層1が上記フッ素樹脂の非粘着性に起因する易滑性を有することに加え、この摺動層1の外面の算術平均粗さRaが上記下限以上であるので、摺動対象部材との接触面積が小さくなる。そのため、当該摺動部材は摺動性に優れる。
当該摺動部材は、上述のように上記フッ素樹脂が架橋していることで耐摩耗性が向上されているため、摺動対象部材との摺動に起因するフッ素樹脂粉末の発生が抑制される。そのため、当該摺動部材は、摺動層1の外面に潤滑剤を塗布しない状態で用いられる場合、上記フッ素樹脂粉末による摺動性向上効果が得られ難いため、仮に摺動層1の外面が平滑面であると、摺動層1の摩擦係数が比較的高くなる。これに対し、当該摺動部材は、摺動層1の外面の算術平均粗さRaを上記下限以上とすることで、摺動対象部材との接触面積を小さくすることができるので、摺動層1と摺動対象部材との間の摩擦係数を比較的低く抑えて摺動性を十分に高めることができる。なお、架橋していないフッ素樹脂によって形成される摺動層の外面の算術平均粗さRaを上記下限以上とした場合、摺動対象物との接触によって摺動層の外面の凸部が潰れやすく、この算術平均粗さRaを維持し難い。一方、フッ素樹脂が架橋している場合、摺動層1の外面の凸部の面圧が高くなる場合があるが、これによりフッ素樹脂がわずかに摩耗することでフッ素樹脂粉末が若干程度発生し、却って摺動性が向上しやすくなる。
一方、摺動層1の外面に潤滑剤を塗布した状態で用いられる場合、一般にフッ素樹脂を主成分とする摺動層は易滑性に優れることから、この潤滑剤が外面に留まり難い。これに対し、当該摺動部材は、摺動層1の外面の算術平均粗さRaを上記下限以上とすることで、摺動層1の外面に潤滑剤を滞留させることができる。また、当該摺動部材は、後述の電離性放射線の照射によってフッ素樹脂を架橋する際にラジカルが発生する。そのため、当該摺動部材は、上記ラジカルによって潤滑剤のなじみ性が良好となる。従って、当該摺動部材は、摺動層1と摺動対象部材との間の摩擦係数を比較的低く抑えて摺動性を十分に高めることができる。
(摺動層)
摺動層1は、フッ素樹脂が架橋されていることで、フッ素樹脂の非粘着性を維持した状態で耐摩耗性が高められている。
上記フッ素樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、フルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等が挙げられる。上記フッ素樹脂としては、これらの中で、PTFE、PFA及びFEPが好ましく、PFA及びPTFEがより好ましく、機械的強度、耐薬品性及び耐熱性の観点からPTFEがさらに好ましい。上記フッ素樹脂は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。但し、高度の耐摩耗性を有する摺動層1を形成する点からは、PTFE単独の使用が好ましい。
なお、上記フッ素樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲において、他の共重合性モノマーに由来する重合単位を含んでいてもよい。例えば、PTFEは、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン、(パーフルオロアルキル)エチレン、クロロトリフルオロエチレン等の重合単位を含んでいてもよい。上記他の共重合性モノマーに由来する重合単位の含有割合の上限としては、上記フッ素樹脂を構成する全重合単位に対して、例えば3モル%である。
摺動層1におけるフッ素樹脂の含有割合の下限としては、60質量%が好ましく、85質量%がより好ましく、98質量%がさらに好ましい。また、上記含有割合は100質量%であることが特に好ましい。上記含有割合が上記下限に満たないと、耐摩耗性、耐熱性等の特性が十分に高くならないおそれがある。
摺動層1は、他の任意成分を含有してもよい。この任意成分としては、例えば固体潤滑剤、強化材等が挙げられる。摺動層1が固体潤滑剤、強化材等を含有することで、摺動性をより向上できる。上記固体潤滑剤としては、例えば二硫化モリブデン等が挙げられる。また、上記強化材としては、例えばガラスファイバー(ガラス繊維)、球状ガラス等のガラスフィラー、炭素繊維、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム等の無機充填剤などが挙げられる。
摺動層1における架橋されたフッ素樹脂の結晶融点温度の上限としては、フッ素樹脂の種類によって値が異なるが、例えばPTFEの場合、325℃が好ましく、320℃がより好ましく、310℃がさらに好ましい。上記結晶融点温度は、架橋されたフッ素樹脂の架橋度に伴って低下する。そのため、上記結晶融点温度が上記上限を超えると、架橋度の不足により耐摩耗性が不十分となるおそれがある。なお、上記架橋されたフッ素樹脂の結晶融点温度の下限としては、例えば290℃である。上記結晶融点温度が上記下限より小さいと、耐熱性等の低下によって耐摩耗性が不十分となるおそれがある。なお、「結晶融点」とは、JIS−K7121:2012「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠して示差走査熱量計(DSC)により測定される融点ピーク温度を指す。
摺動層1の外面の算術平均粗さRaは、上述のように5μm以上である。当該摺動部材は、上述のように、摺動層1の外面に潤滑剤を塗布した状態で用いられる潤滑剤塗布型摺動部材である場合と、摺動層1の外面に潤滑剤を塗布しない状態で用いられるドライ型摺動部材である場合とがある。当該摺動部材が上記潤滑剤塗布型摺動部材である場合、上記算術平均粗さRaの下限としては、10μmが好ましく、20μmがより好ましく、30μm以上がさらに好ましい。上記算術平均粗さRaが上記下限より小さいと、摺動対象部材との接触面積を十分に小さくすることができないおそれがあると共に、摺動層1の外面に潤滑剤を十分に滞留させ難くなるおそれがある。一方、上記算術平均粗さRaの上限としては、特に限定されないが、摺動層1の強度の低下を抑制する点からは例えば50μmとすることができる。
当該摺動部材が上記ドライ型摺動部材である場合、摺動層1の外面の算術平均粗さRaの下限としては、10μmが好ましく、15μmがより好ましい。一方、上記算術平均粗さRaの上限としては、35μmが好ましく、30μmがより好ましい。上記算術平均粗さRaが上記下限より小さいと、摺動対象部材との接触面積を十分に小さくすることができないおそれがある。逆に、上記算術平均粗さRaが上記上限を超えると、摺動層1の外面の凸部が潰れやすくなるおそれがある。
上述のように、摺動層1の外面には複数の溝3が形成されている。各溝3の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば直線状であってもよく、波状であってもよい。また、複数の溝3の配置としては、特に限定されるものではなく、例えばストライプ状に配設されてもよい。但し、複数の溝3は、全体として格子状に配設されることが好ましい。当該摺動部材は、複数の溝3が全体として格子状に配設されていることによって、摺動方向に沿う方向に延在する複数の溝3によって摺動層1の摺動対象部材との接触面積を容易かつ確実に小さくすることができる。また、複数の溝3が全体として格子状に配設されることで、摺動層1の外面に潤滑剤を塗布する場合に、この潤滑剤を上記摺動方向に対して比較的大きな角度で交差する複数の溝3に滞留させやすい。従って、当該摺動部材は摺動性を高めやすい。なお、「格子状」とは、格子を構成する線状部分が1又は複数個所で分断されている形状を含む。
複数の溝3が全体として格子状に配設される場合、複数の溝3の全体形状としては、四角格子状が好ましい。また、この場合、一方向に延在する複数の溝3が摺動方向と平行に配設されることが好ましい。つまり、当該摺動部材が筒状である場合であれば、一方向に延在する複数の溝3が周方向に配設されることが好ましい。当該摺動部材は、この構成によれば、摺動方向と平行に配設される複数の溝3によって摺動層1の摺動対象部材との接触面積を容易かつ確実に小さくしつつ、摺動方向と垂直に配設される複数の溝3に潤滑剤を滞留させやすい。
複数の溝3の平均幅(w)としては、100μm以上400μm以下が好ましい。当該摺動部材が上記潤滑剤塗布型摺動部材である場合、複数の溝3の平均幅(w)の下限としては、120μmがより好ましく、150μmがさらに好ましい。一方、当該摺動部材が上記潤滑剤塗布型摺動部材である場合、上記平均幅(w)の上限としては、350μmがより好ましく、250μmがさらに好ましい。上記平均幅(w)が上記下限より小さいと、各溝3に潤滑剤を十分に滞留させ難くなるおそれがある。逆に、上記平均幅(w)が上記上限を超えると、潤滑材の滞留向上効果が余り促進されない一方、摺動層1の強度が低下するおそれがある。
当該摺動部材が上記ドライ型摺動部材である場合、複数の溝3の平均幅(w)の下限としては、150μmがより好ましく、200μmがさらに好ましい。一方、当該摺動部材が上記ドライ型摺動部材である場合、上記平均幅(w)の上限としては、370μmがより好ましく、320μmがさらに好ましい。上記平均幅(w)が上記下限より小さいと、摺動層1と摺動対象部材との接触面積を十分に小さくできないおそれがある。逆に、上記平均幅(w)が上記上限を超えると、摺動層1の強度が不十分となるおそれがある。
複数の溝3の平均深さ(d)の下限としては、100μmが好ましく、150μmがより好ましく、200μmがさらに好ましい。一方、複数の溝3の平均深さ(d)の上限としては、例えば後述するメッシュ網のサイズや形状に合わせて適宜設計可能であるが、500μmが好ましく、400μmがより好ましく、300μmがさらに好ましい。上記平均深さ(d)が上記下限より小さいと、例えば潤滑剤塗布型摺動部材として用いる場合に各溝3に潤滑剤を十分に滞留させ難くなるおそれがある。逆に、上記平均深さ(d)が上記上限を超えると、摺動層1の強度が不十分となるおそれがある。
各溝3の深さは略均一であってもよいが、不均一である方が好ましい。例えば、各溝3の底部は、幅方向の外側から内側にかけて徐々に深さが大きくなることが好ましい。当該摺動部材は、各溝3の深さが不均一である場合でも、摺動性を十分高く維持することができる。一方、当該摺動部材は、各溝3の深さが不均一であることによって、複数の溝3に起因する摺動層1の強度の低下を抑制することができる。
複数の溝3の平均間隔(l)の下限としては、300μmが好ましく、400μmがより好ましく、500μmがさらに好ましい。一方、複数の溝3の平均間隔(l)の上限としては、5500μmが好ましく、2000μmがより好ましく、1000μmがより好ましい。上記平均間隔(l)が上記下限より小さいと、摺動層1の隣接する溝3間に形成される凸部の幅が不十分となり、この凸部が摺動に起因して損傷するおそれがある。逆に、上記平均間隔(l)が上記上限を超えると、摺動層1と摺動対象部材との接触面積を十分に小さくできないおそれや、潤滑剤塗布型摺動部材として用いられる場合に潤滑剤を摺動層1の外周面に十分に滞留させることができないおそれがある。
また特に、複数の溝3の平均幅(w)、平均深さ(d)及び平均間隔(l)はいずれも上記範囲内であることが好ましい。当該摺動部材は、複数の溝3の平均幅(w)、平均深さ(d)及び平均間隔(l)がいずれも上記範囲内であることによって、摺動層1の摺動性を容易かつ確実に高めることができる。
隣接する溝3間の平均ピッチ(p)の下限としては、400μmが好ましく、500μmがより好ましく、600μmがさらに好ましい。一方、上記平均ピッチ(p)の上限としては、5900μmが好ましく、2500μmがより好ましく、1500μmがさらに好ましい。上記平均ピッチ(p)が上記下限より小さいと、摺動層1の隣接する溝3間に形成される凸部の幅が不十分となり、この凸部が摺動に起因して損傷するおそれがある。逆に、上記平均ピッチ(p)が上記上限を超えると、摺動層1と摺動対象部材との接触面積を十分に小さくできないおそれや、潤滑剤塗布型摺動部材として用いられる場合に潤滑剤を摺動層1の外周面に十分に滞留させることができないおそれがある。なお、「平均ピッチ」とは、隣接する溝の中心軸間の平均間隔をいう。
複数の溝3のうちの少なくとも一部は独立溝であることが好ましい。この構成によると、上記独立溝に潤滑剤を滞留させやすく、これにより摺動性を高めやすい。また、この構成によると、複数の溝3に起因する摺動層1の強度の低下を抑制することができる。
摺動層1の外面に形成される溝3の総数に対する独立溝の存在個数の比の下限としては、50%が好ましく、70%がより好ましく、90%がさらに好ましい。上記比が上記下限以上であることによって、潤滑剤の滞留効果を容易かつ確実に高めることができる。
また、複数の溝3が全体として格子状に配設される場合、交差する方向に延在する溝3同士が連結されないよう、複数の独立溝が形成されることが好ましい。交差する方向に延在する溝3同士が連結されていると、この連結部分に潤滑剤が過剰に滞留し、この連結部分に潤滑剤が偏在しやすくなる。これに対し、交差する方向に延在する溝3同士が連結されていない場合、摺動層1の外面に潤滑剤を遍在させることができ、これにより全体の摺動性を容易に高めることができる。
摺動層1の複数の溝3に囲まれる部分の外面はドーム状に形成されることが好ましい。この構成によると、摺動層1の摺動対象部材との接触面積をより小さくすることができる。また、この構成によると、図4に示すように、ドーム状部4の曲面部分に潤滑剤Xを行き渡らせやすいので、潤滑剤Xによる摺動性向上効果を高めやすい。
摺動層1の平均厚さの下限としては、50μmが好ましく、100μmがより好ましい。一方、摺動層1の平均厚さの上限としては、1000μmが好ましく、800μmがより好ましい。上記平均厚さが上記下限より小さいと、摺動層1の強度が不十分となるおそれや複数の溝3の深さを十分に深くすることができないおそれがある。逆に、上記平均厚さが上記上限を超えると、摺動層1が不要に厚くなり、可撓性が不十分となるおそれがある。また、上記平均厚さが上記上限を超えると、放熱性が不十分となるおそれがある。なお、「摺動層の平均厚さ」とは、溝が形成されていない任意の10点における厚さの平均値をいう。
(基材層)
基材層2は、当該摺動部材の摺動層1とは反対側の最外層を形成する。当該摺動部材は、摺動層1及び基材層2の2層構造体である。基材層2は、例えば金属又はスーパーエンジニアリングプラスチックを主成分とする。なお、「スーパーエンジニアリングプラスチック」とは、長期耐熱性が100℃以上、熱変形温度が150℃以上、引っ張り強さが5kgf・mm−2以上、かつ曲げ弾性率が245kgf・mm−2以上の合成樹脂をいう。但し、フッ素樹脂を主成分とする合成樹脂は含まない。
基材層2の平均厚さの下限としては、10μmが好ましく、100μmがより好ましい。上記平均厚さが上記下限より小さいと、基材層2の強度が不十分となり、基材層2の形状を維持し難くなるおそれがある。一方、基材層2の平均厚さの上限としては、用途に応じて適宜設定可能であり、例えば10cmとすることができる。
上記金属としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、鉄、ステンレス等の鉄合金、ニッケルなどが挙げられる。基材層2の主成分が上記金属である場合、基材層2は箔状でもよく、板状でもよい。
上記スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、例えばポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、液晶ポリマー(LCP)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルスルフォン(PES)等が挙げられる。上記スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、これらの中でポリイミド、ポリアミドイミド及びこれらの組み合わせが好ましく、耐熱性等の観点からポリイミドがより好ましい。上記スーパーエンジニアリングプラスチックは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
[製造方法]
次に、図1の当該摺動部材の製造方法を説明する。当該摺動部材の製造方法は、フッ素樹脂を主成分とするシート体に、上記フッ素樹脂の結晶融点以上の温度、低酸素雰囲気下で電離性放射線を照射する照射工程と、上記照射工程後にシート体の外面に複数の溝を形成する溝形成工程とを備える。また、当該摺動部材の製造方法は、上記シート体を基材層2の片面に積層する積層工程を備える。当該摺動部材の製造方法は、上記溝形成工程で、得られる上記シート体の外面の算術平均粗さRaを5μm以上とする。なお、上記積層工程は、上記照射工程の前に行ってもよく、上記照射工程及び溝形成工程の間に行ってもよく、上記溝形成工程の後に行ってもよい。以下では、上記積層工程を上記照射工程の前に行う手順について説明する。
当該摺動部材の製造方法は、上記照射工程によってフッ素樹脂を架橋させた後、上記溝形成工程によってシート体の外面の算術平均粗さRaが上記下限以上となるように複数の溝を形成することで、上述の摺動層1を製造することができる。従って、当該摺動部材の製造方法は、摺動性及び耐摩耗性に優れる摺動部材を製造できる。
(積層工程)
上記積層工程では、フッ素樹脂を主成分とするシート体の片面に基材層2を積層する。上記シート体に基材層2を積層する方法としては、特に限定されず、例えば上記シート体と基材層2とを対向配設する方法、基材層2にフッ素樹脂ディスパージョン(フッ素樹脂の粉体を分散媒に均一に分散させた分散液)を塗布した後、上記分散媒を乾燥させることで基材層2に上記シート体を塗工する方法、上記シート体に基材層2としてのスーパーエンジニアリングプラスチックを含む塗液を塗工する方法などが挙げられる。
上記フッ素樹脂ディスパージョンの分散媒としては、例えば水及び乳化剤の混合液、水及びアルコールの混合液、水及びアセトンの混合液、水、アルコール及びアセトンの混合溶液等が挙げられる。
上記積層工程の前に、上記シート体及び基材層2の間にフッ素樹脂を主成分とするプライマー層を形成してもよい。また、上記積層工程の前に、基材層2の上記シート体を積層する面に表面処理を行ってもよい。上記表面処理としては、例えばサンドブラスト処理、エッチング処理、電解研磨処理等による粗面化などが挙げられる。
また、上記積層工程で上記シート体にスーパーエンジニアリングプラスチックを含む塗液を塗工する場合、上記シート体の塗工面を液体アンモニア等で処理してもよい。これにより、塗工したスーパーエンジニアリングプラスチックのはじきを防止し、また上記シート体及び基材層2の層間接着力を向上できる。
(照射工程)
上記照射工程では、上記シート体に含まれるフッ素樹脂を架橋させる。これにより、上記シート体の機械的特性、耐摩耗性、基材層2に対する密着性等が向上する。
上記照射工程では、上記シート体をフッ素樹脂の結晶融点以上に加熱する。上記照射工程における具体的加熱温度は、例えば上記フッ素樹脂がFEP(結晶融点温度:270℃)である場合は270℃以上であり、上記フッ素樹脂がPTFE(結晶融点温度:327℃)である場合は327℃以上であり、上記フッ素樹脂がPFA(結晶融点温度:304℃以上310℃以下)である場合は310℃以上である。上記加熱温度の下限としては、結晶融点温度より5℃高い温度が好ましい。一方、上記加熱温度の上限としては、結晶融点温度より50℃高い温度が好ましく、結晶融点温度より20℃高い温度がより好ましい。上記条件で電離性放射線を照射することにより、上記フッ素樹脂の主鎖の切断を抑制しつつ、分子間の架橋を促進できる。また、上記フッ素樹脂と基材層2との化学結合の形成を促進できる。
上記照射工程における酸素濃度の上限としては、100ppmが好ましく、10ppmがより好ましく、5ppmがさらに好ましい。上記酸素濃度が上記上限を超えると、上記フッ素樹脂の分解や基材層2の酸化等のおそれがある。
上記照射工程における電離性放射線の照射は、基材層2による電離性放射線の遮蔽を抑制する観点から、上記シート体の外面側から行うことが好ましい。
上記電離性放射線としては、例えばγ線、電子線、X線、中性子線、高エネルギーイオン線等が挙げられる。また、電離性放射線の照射線量の下限としては、10kGyが好ましく、70kGyがより好ましく、200kGyがさらに好ましい。一方、上記照射線量の上限としては、2000kGyが好ましく、1200kGyがより好ましく、400kGyがさらに好ましい。上記照射線量が上記下限より小さいと、フッ素樹脂の架橋反応が十分進行しないおそれがある。逆に、上記照射線量が上記上限を超える場合、フッ素樹脂の主鎖が切断されやすくなるおそれがある。
(溝形成工程)
上記溝形成工程では、上記シート体の外面に複数の溝を形成する。この溝形成工程により、上記シート体が外面に複数の溝3を有する図1の摺動層1となる。上記シート体の外面に複数の溝を形成する方法としては、特に限定されるものではないが、熱プレス法が好ましい。具体的には、上記溝形成工程では、上記シート体をフッ素樹脂のガラス転移温度以上に加熱した状態で、上記シート体の外面に複数の溝3の反転形状を有する金型又はメッシュ網をプレスする。上記溝形成工程では、上記金型及びメッシュ網の表面形状を調節することで、得られる摺動層1の外面形状を調節することができる。上記溝形成工程では、得られる複数の溝3の平均幅、平均深さ及び隣接する溝3間の平均ピッチを上述の範囲内に調節することが好ましい。上記溝形成工程におけるプレス温度としては、フッ素樹脂のガラス転移温度にもよるが、例えば200℃以上300℃以下とすることができる。上記溝形成工程におけるプレス時間としては、例えば10分以上60分以下とすることができる。上記溝形成工程におけるプレス圧としては、例えば10kg/cm以上30kg/cm以下とすることができる。
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
例えば、当該摺動部材は、上記摺動層が最外層を形成する限り、上記摺動層のみからなる単層体であってもよく、上記摺動層及び基材層以外の他の層をさらに備える多層体であってもよい。また、上記摺動層は、例えば基材層へのコーティングによって形成されてもよい。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<製造例1>
結晶融点327℃のPTFEからなる平均厚さ200μmのシートを得た。
<製造例2>
製造例1と同様のPTFEシートをチャンバー式加熱照射炉内で酸素濃度5ppm以下の低酸素雰囲気下で340℃に加熱し、株式会社NHVコーポレーション製の電子線加速装置を用いて電子線を照射した。照射条件は、加速電圧1160kV、照射量300kGyとした。これにより、製造例2のシートを得た。
[No.1]
製造例2のシートの外面に♯40のSUS製のメッシュ網を置き、プレス温度250℃、プレス時間30分、プレス圧17kg/cmで熱プレス加工することで外面に複数の独立溝を有するNo.1の摺動部材を製造した。これらの独立溝は、全体として四角格子状に配設されており、交差する方向に延在する溝同士が連結されない構成とした。また、この摺動部材の複数の溝に囲まれる部分の外面はドーム状であった。No.1の摺動部材の外面の算術平均粗さRa、複数の溝の平均幅、平均深さ、平均間隔を表1に示す。なお、複数の溝の平均深さは、株式会社キーエンス製のデジタル顕微鏡「VHX5000」を用いて測定した。
[No.2]
No.1のメッシュ網に代えて♯60のSUS製のメッシュ網を用いた以外No.1と同様の条件で製造例2のシートの外面に熱プレス加工することで外面に複数の独立溝を有するNo.2の摺動部材を製造した。これらの独立溝は、全体として四角格子状に配設されており、交差する方向に延在する溝同士が連結されない構成とした。また、この摺動部材の複数の溝に囲まれる部分の外面はドーム状であった。No.2の摺動部材の外面の算術平均粗さRa、複数の溝の平均幅、平均深さ、平均間隔を表1に示す。
[No.3]
No.1のメッシュ網に代えて♯80のSUS製のメッシュ網を用いた以外No.1と同様の条件で製造例2のシートの外面に熱プレス加工することで外面に複数の独立溝を有するNo.3の摺動部材を製造した。これらの独立溝は、全体として四角格子状に配設されており、交差する方向に延在する溝同士が連結されない構成とした。また、この摺動部材の複数の溝に囲まれる部分の外面はドーム状であった。No.3の摺動部材の外面の算術平均粗さRa、複数の溝の平均幅、平均深さ、平均間隔を表1に示す。
[No.4]
No.1のメッシュ網に代えて♯200のSUS製のメッシュ網を用いた以外はNo.1と同様の条件で製造例2のシートの外面に熱プレス加工することで外面に複数の独立溝を有するNo.4の摺動部材を製造した。これらの独立溝は、全体として四角格子状に配設されており、交差する方向に延在する溝同士が連結されない構成とした。また、この摺動部材の複数の溝に囲まれる部分の外面はドーム状であった。No.4の摺動部材の外面の算術平均粗さRa、複数の溝の平均幅、平均深さ、平均間隔を表1に示す。
[No.5]
No.1のメッシュ網に代えて♯20のSUS製のメッシュ網を用いた以外No.1と同様の条件で製造例2のシートの外面に熱プレス加工することで外面に複数の独立溝を有するNo.5の摺動部材を製造した。これらの独立溝は、全体として四角格子状に配設されており、交差する方向に延在する溝同士が連結されない構成とした。また、この摺動部材の複数の溝に囲まれる部分の外面はドーム状であった。No.5の摺動部材の外面の算術平均粗さRa、複数の溝の平均幅、平均深さ、平均間隔を表1に示す。
[No.6]
No.1のメッシュ網に代えて♯10のSUS製のメッシュ網を用いた以外No.1と同様の条件で製造例2のシートの外面に熱プレス加工することで外面に複数の独立溝を有するNo.6の摺動部材を製造した。これらの独立溝は、全体として四角格子状に配設されており、交差する方向に延在する溝同士が連結されない構成とした。また、この摺動部材の複数の溝に囲まれる部分の外面はドーム状であった。No.6の摺動部材の外面の算術平均粗さRa、複数の溝の平均幅、平均深さ、平均間隔を表1に示す。
[No.7]
製造例1のシートからなる摺動部材を得た。No.7の摺動部材の外面の算術平均粗さRaを表1に示す。
[No.8]
製造例2のシートからなる摺動部材を得た。No.8の摺動部材の外面の算術平均粗さRaを表1に示す。
Figure 2018179079
<動摩擦係数>
No.1〜No.4、No.7、No.8の摺動部材の速度10m/min、15m/min、24m/min、38m/min、62m/min及び96m/minにおける動摩擦係数を摺動部材の外面にグリスを塗布した状態(グリス塗布モード)で以下の測定方法で測定した。また、No.1、No.3〜No.5、No.7、No.8の摺動部材の上記速度における動摩擦係数を摺動部材の外面にグリスを塗布していない状態(ドライモード)でグリス塗布モードと同様の測定方法で測定した。グリス塗布モードにおけるNo.1〜No.4、No.8の測定結果を図5に示す。ドライモードにおけるNo.1、No.3〜No.5、No.8の測定結果を図6に示す。また、グリス塗布モードにおけるNo.7及びNo.8の測定結果を図7に、ドライモードにおけるNo.7及びNo.8の測定結果を図8に示す。
(測定方法)
以下の条件のもと、JIS−K7218:1986のA法(リングオンディスク式スラスト摩擦試験)に準拠して測定した。
リング状相手材材質:S45C
リング寸法:外形41mm、内径20mm
リング状相手材算術平均粗さRa:0.28μm
試験装置:株式会社エー・アンド・デイ製の「EFM−III 1010」
圧力:0.1MPa(一定)
速度:10m/min、15m/min、24m/min、38m/min、62m/min、96m/min
上記各速度で10分間回転させ、膜が破れなかった場合、圧力を上げていった。圧力は常に0.1MPaとした。
<グリスの滞留性>
No.1〜No.8の摺動部材を36cmの矩形状に切断し、切断したサンプルの外面にゴム手袋を装着した指でグリスを十分に塗った。その後、直線状の金尺を用い、各サンプルの外面に付着したグリスをサンプルの外面の直交方向に各5回拭った後、グリスの残量を計測することでグリスの滞留性を測定した。この測定結果を図9に示す。また、上記測定から得られる摺動部材外面の算術平均粗さRaとグリスの残量との関係を図10に示す。なお、この測定におけるNo.7及びNo.8の単位面積当たりのグリスの残量は同じであった。
[評価結果]
<グリス塗布モードについて>
外面に溝を有しないNo.7及びNo.8を比較した場合、図7に示すように、電子線を照射したNo.8の方が電子線を照射していないNo.7よりも動摩擦係数が小さくなっている。これは、No.8では電子線の照射によってフッ素樹脂が架橋する際にラジカルが発生し、このラジカルによってグリスのなじみ性が向上されたためと考えられる。
また、電子線を照射したNo.1〜No.4、No.8を比較した場合、図5に示すように、外面に複数の溝を有するNo.1〜No.4は、外面に複数の溝を有しないNo.8よりも動摩擦係数が小さくなっている。また、外面に複数の溝を有するNo.1〜No.4を比較した場合、外面の算術平均粗さRaが大きくなる程、動摩擦係数が小さくなっている。これは、図9及び図10に示すように、外面の算術平均粗さRaが大きい程、複数の溝へのグリスの滞留性が高まるためと考えられる。
<ドライモードについて>
外面に溝を有しないNo.7及びNo.8を比較した場合、図8に示すように、電子線を照射していないNo.7の方が電子線を照射したNo.8よりも動摩擦係数が小さくなっている。これは、電子線の照射によってフッ素樹脂が架橋すると、耐摩耗性の向上によって摺動対象部材との摺動に起因するフッ素樹脂粉末の発生が抑制されるため、このフッ素樹脂粉末による摺動性向上効果が得られ難いためと考えられる。
また、電子線を照射したNo.1、No.3〜No.5、No.8を比較した場合、図6に示すように、外面に複数の溝を有し、かつこの外面の算術平均粗さRaが26.0μm以下であるNo.3〜No.5は、外面の算術平均粗さRaが大きくなるにつれて外面に複数の溝を有しないNo.8よりも動摩擦係数が小さくなっている。これは、外面の算術平均粗さRaが大きくなる程、摺動対象部材との接触面積が小さくなるためと考えられる。一方、外面に複数の溝を有し、この外面の算出平均粗さRaが34.5μmであるNo.1は、外面の算術平均粗さRaが26.0μmであるNo.5よりも動摩擦係数が大きくなっている。これは、外面の算術平均粗さRaが大きくなり過ぎると、溝間に形成される凸部に潰れ等の損傷が生じやすく、当初の算術平均粗さRaを維持し難いためと考えられる。
以上のように、本発明の摺動性部材は、摺動性及び耐摩耗性に優れるので、軸受、エンジンピストンスカート、ポンプ摺動部、摺動パッキン、OA機器用摺動プレート等に好適に用いられる。
1 摺動層
2 基材層
3 溝
4 ドーム状部
X 潤滑剤
w 幅
d 深さ
l 間隔
p ピッチ

Claims (8)

  1. フッ素樹脂を主成分とする摺動層を備え、
    上記フッ素樹脂が架橋しており、
    上記摺動層が外面に複数の溝を有し、
    上記摺動層の外面の算術平均粗さRaが5μm以上である摺動部材。
  2. 上記算術平均粗さRaが10μm以上である請求項1に記載の摺動部材。
  3. 上記算術平均粗さRaが35μm以下である請求項1に記載の摺動部材。
  4. 上記複数の溝の平均幅が100μm以上400μm以下、平均深さが100μm以上500μm以下、平均間隔が300μm以上5500μm以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の摺動部材。
  5. 上記複数の溝のうちの少なくとも一部が独立溝である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の摺動部材。
  6. 上記複数の溝が、全体として格子状に配設されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の摺動部材。
  7. 上記摺動層の複数の溝に囲まれる部分の外面がドーム状に形成される請求項6に記載の摺動部材。
  8. フッ素樹脂を主成分とするシート体に、上記フッ素樹脂の結晶融点以上の温度、低酸素雰囲気下で電離性放射線を照射する照射工程と、
    上記照射工程後にシート体の外面に複数の溝を形成する溝形成工程と
    を備え、
    上記溝形成工程で、得られる上記シート体の外面の算術平均粗さRaを5μm以上とする摺動部材の製造方法。
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