JP7289521B2 - 凹凸シート - Google Patents

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Description

本発明は、ふっ素樹脂を含む凹凸シートに関する。
複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置において、未定着画像を加熱加圧定着するために、例えば、未定着のトナー像が形成された記録紙等を定着装置に通して加熱加圧することが行われる。
定着装置は、典型的には、加圧ローラ及び定着ローラの2種のローラを備えている。このうち、加圧ローラは、例えば、ローラ本体と、ローラ本体の外周面に沿って巻き付けられた加圧ベルトとを備えている。加圧ローラは定着ローラへ向けて押圧されながら回転しているため、加圧ローラのローラ本体の外周面と、加圧ベルトの内周面との間で大きな摩擦が生じる。各種部材が摩耗するのを防ぐために、このような摩擦は、可能な限り抑制することが要求される。
そこで、加圧ローラのローラ本体の外周面と、加圧ベルトの内周面との間にふっ素樹脂を含んだ摺動シート(及びオイルなど)を介在させることにより、これら面の間の摩擦を低減させることが行われている。
しかしながら、前述の摺動シートは、長期間の高温高圧力下、且つ、長距離摺動を行った場合の寿命が短かった。
特開2009-015227号公報 特開2004-206105号公報
本発明は、長期間に亘って摺動性能に優れる凹凸シートを提供することを目的とする。
本発明の一側面によると、凹凸シートが提供される。この凹凸シートは、ふっ素樹脂を含み、第1面、及び第1面と対向した第2面を有しており、第1面は第1の凹凸を有しており、第1の凹凸は、1つの第1凸部及び複数の第1凹部からなり、第1面の表面粗さ(Rz1)は15μm~200μmの範囲内にあり、第1の凹凸の間隔が最大となる方向について、第1凸部の曲率半径は450μm~1100μmの範囲内にある。
本発明によると、長期間に亘って摺動性能に優れる凹凸シートを提供することが可能になる。
実施形態に係る凹凸シートの第1面の一例を模式的に示す平面図。 図1に示す凹凸シートの線分4及び5に沿った断面図。 実施形態に係る凹凸シートの第2面の一例を模式的に示す平面図。 図3に示す凹凸シートの線分7に沿った断面図。 実施形態に係る凹凸シートの製造におけるエンボス加工工程を示す斜視図。 実施例1に係る凹凸シートの第1面の非接触式形状測定機による画像データ。 実施例1に係る凹凸シートの第2面の非接触式形状測定機による画像データ。 実施例1に係る凹凸シートの線分4及び5に沿った断面図。 リングオンディスク型摩耗試験の様子を概略的に示す斜視図。
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
実施形態によると、凹凸シートが提供される。この凹凸シートは、ふっ素樹脂を含み、第1面、及び第1面と対向した第2面を有しており、第1面は第1の凹凸を有しており、第1の凹凸は、1つの第1凸部及び複数の第1凹部からなり、第1面の表面粗さ(Rz1)は15μm~200μmの範囲内にあり、第1の凹凸の間隔が最大となる方向について、第1凸部の曲率半径は450μm~1100μmの範囲内にある。
この凹凸シートによると、摩擦係数を小さくすることができると共に、長期間に亘って高温高圧力下で長距離の摺動に供しても、第1面に存在する凹凸形状を維持することができる。また、後述するように、この凹凸シートは、例えばエンボス加工により製造することができるため、製造コストが比較的安価で実用的なシートである。
図1は、実施形態に係る凹凸シートの第1面の一例を模式的に示す平面図である。図2は、凹凸シートの二方向の断面図である。図3は、実施形態に係る凹凸シートの第2面の一例を模式的に示す平面図である。図4は、凹凸シートの断面図である。
凹凸シートは、例えば、長手方向(機械方向:MD方向)及び幅方向(TD方向)に伸びる長尺のシートである。幅方向は、長手方向と直交する方向である。
凹凸シートは、第1面1と、この第1面1と対向した第2面12とを有する。第1面1及び第2面12は、例えば、凹凸シートの表面及び裏面の関係にある。
凹凸シートの第1面1は、第1の凹凸を有している。第1の凹凸は、1つの第1凸部及び複数の第1凹部からなる。第1の凹凸の具体的な構造は、後述する。
図1及び図2において、符号4で示す線分は、凹凸シートの幅方向に平行な線分である。符号5で示す線分は、凹凸シートの長手方向に平行な線分である。図2では、これら線分4及び5の一部を断面図として示している。
線分4及び5は、それぞれ、JIS B 0601:1994の線粗さRzが最も高い方向を選定することで決定できる。
図2中、符号8は、線分4又は5における凹凸の間隔を示している。
図1及び図2において、凹凸シートの第1面1は、1つの第1凸部8a及び複数の第1凹部8bからなる第1の凹凸を有している。言い換えると、第1面1が、互いから独立した複数の第1凹部8bと、これら第1凹部8bを取り囲む1つの第1凸部8aとからなる第1の凹凸を有している場合を描いている。本明細書においては、この場合の第1の凹凸を独立凹タイプと呼ぶ。この場合、第1凸部8aは、複数の第1凹部8bの隔壁である。第1面1が上述の形状を有している場合、潤滑剤を使用して摺動させる際に、第1面1と相手材との間に潤滑剤が保持されやすいため好ましい。つまり、潤滑剤が凹凸シートの外部に逃げにくい。
参考例として、第1面1が、第1の凹凸ではなく、他の凹凸を有する場合を説明する。第1面1が他の凹凸を有する場合、他の凹凸は、例えば、複数の第1凸部8a及び1つの第1凹部8bからなる。言い換えると、この場合の他の凹凸は、互いから独立した複数の第1凸部8aと、これら第1凸部8aの周囲に存在する1つの第1凹部8bとからなる。本明細書においては、この場合の他の凹凸を独立凸タイプと呼ぶ。
或いは、他の凹凸は、独立凹タイプにも属さず、独立凸タイプにも属さない単なる凹凸でありうる。言い換えると、この場合の他の凹凸は、複数の第1凸部8a及び複数の第1凹部8bからなる。
図1及び図2に示す複数の第1凹部8bは、各々が第1面1から第2面12に向かって円錐台形のすり鉢形状に窪んでいる。図1及び図2において符号8bで示しているのは、各々の第1凹部の最も深い箇所である。第1凸部8aは、図1において格子状の枠で示している部分である。図1及び2において、符号8aは、複数の第1凹部8bを取り囲む隔壁の高さが最大の点を示している。
凹凸シートの第1面1の表面粗さ(Rz1)は15μm~200μmの範囲内にある。本明細書において、第1面1の表面粗さRz1は、第1凸部8aの高さであり、図1及び図2においては符号2で示している。
第1凸部8aの高さ2が15μm未満では、高い滑り性を達成することが困難である。即ち、摩擦係数を十分に小さくすることが難しい。また、高さ2が200μmを超えると、第1面1に高い圧力を加えた場合に、凹凸形状が崩れやすくなるため好ましくない。また、摺動に際して潤滑剤を使用する場合に、第1凸部の頭頂部表面に潤滑剤が広がりづらくなるという問題もある。
第1面の表面粗さ(第1凸部の高さ)は、JIS B 0601:1994の表面粗さRzの測定方法に準拠して測定した値とする。
第1面1が有する第1の凹凸の平均間隔(Sm)は、JIS B 0601:1994の凹凸の平均間隔Smの測定方法に準拠して測定した値とする。
第1面1が有する第1の凹凸の間隔が最大となる方向について、第1凸部の頭頂部の曲率半径は450μm~1100μmの範囲内にある。第1凸部の頭頂部の曲率半径は600μm~1100μmの範囲内にあることが好ましい。なお、図1に、第1の凹凸の間隔が最大となる方向を線分19で示す。線分19の方向は、例えば、長手方向(線分5)及び幅方向(線分4)の双方に対して45°の角度を成す方向である。第1凸部の曲率半径がこの範囲内にあると、潤滑剤を使用して摺動させる際に、凸部の頭頂部と相手材との界面において潤滑剤が保持されやすいため好ましい。その結果、優れた摺動性能を長距離に亘って維持することが可能である。
第1の凹凸の間隔が最大となる方向についてより詳細に説明する。
第1面1は、互いから独立した第1凹部8b1~8b9を有している。第1凹部8b1は、第1面1が有する複数の第1凹部から選択される任意の凹部である。
第1凹部8b2~8b9は、第1凸部を介して第1凹部8b1と隣り合った凹部である。第1凹部8b2~8b9は、第1凸部を介して第1凹部8b1を取り囲んでいる。
ここで、第1面1を、長手方向及び幅方向に垂直な方向から観察した場合に、図1に示すように、第1凹部8b2~8b9の中心を結んでなる四角形を考える。第1の凹凸の間隔が最大となる方向は、この四角形の対角線に沿った方向である。
また、第1の凹凸の間隔は、当該対角線(線分19)上の凹部同士の中心間距離、又は、当該対角線上の凸部同士の中心間距離として測定される。
第1凸部の頭頂部の曲率半径は、以下の手順で測定する。
まず、凹凸シートをカミソリ等で切断し、断面をマイクロスコープ等で観察する。得られた断面像を、所定の倍率を乗じて拡大した上でプリントアウトする。文房具のコンパスを用意し、断面像に現れている凸部の頭頂部に沿った曲線を描けるように、コンパスが備える2本の脚の先端の距離を設定する。この距離を、所定の倍率で除することにより、第1凸部の頭頂部の曲率半径を測定する。上記の測定を、得られた断面像に現れている複数の凸部のうち、ランダムに選択した5箇所に対して実施し、それらの平均値を求める。この平均値を、第1凸部の頭頂部の曲率半径とみなす。
第1の凹凸の平均間隔(Sm)は、例えば、100μm~1000μmの範囲内にある。第1の凹凸の平均間隔が大きすぎると、相手材の面全体に対して均一に圧力を加えるのが困難になるため、例えば、OA機器の印刷画像に悪影響を及ぼす可能性がある。
第1凸部の有効凸高さ(Rδc)は、負荷面積率が30%となる切断レベルc30と、負荷面積率が70%となる切断レベルc70との差である。第1凸部の有効凸高さは、図2において符号3で示している。有効凸高さRδcは、JIS B 0601:2001の要素の切断レベル差Rδcの測定方法に準拠して測定した値とする。
切断レベルは、第1面に対する任意の高さcにおける切断面の位置を示している。凹凸シートの高さ方向は、凹凸シートの長手方向及び幅方向に対して垂直な方向である。切断面は、高さcが何れの値であっても第1面と平行な面である。本明細書において、切断レベルc30は、第1凸部を任意の高さcにおける切断面で切断した場合に、第1凸部の切断面の面積が、第1面の単位面積に対して30%となる場合の切断レベルを便宜的にc30として表している。第1面の単位面積は、負荷面積率が100%となる切断レベルc100における面積として測定することができる。
上記切断レベルc70についても同様である。即ち、切断レベルc70は、第1凸部を任意の高さcにおける切断面で切断した場合に、第1凸部の切断面の面積が、第1面の単位面積に対して70%となる場合の切断レベルを便宜的にc70として表している。
第1凸部の有効凸高さRδcが5μm以上であると、凹凸シートを長距離に亘って摺動させても、優れた摺動性能を維持することができる。即ち、凹凸シートの寿命が延びる。第1凸部の有効凸高さRδcは13μm以上であることが好ましい。
凹凸シートを摺動に供する場合、第1凸部が相手材と接触する面積は、上述した第1面の単位面積に対して30%以上70%以下の範囲内にあることが好ましい。この割合が30%未満であると、急速に摩耗が進行するため好ましくない。この割合が70%を超えると摩擦係数を十分に小さくすることができない。
凹凸シートの第2面12は、第2の凹凸を有していてもよく、平坦であってもよい。第2の凹凸は、1つの第2凸部及び複数の第2凹部からなるか、複数の第2凸部及び1つの第2凹部からなるか、又は、複数の第2凸部及び複数の第2凹部からなる。
図3では、実施形態に係る凹凸シートの第2面12が、複数の第2凸部6及び1つの第2凹部9を有している場合を示している。つまり、図3に示す第2面12は、互いから独立した複数の第2凸部6と、これら第2凸部6の周囲に存在する第2凹部9とを有している。
なお、図3及び図4に示す第2面12が有する複数の第2凸部6の位置は、図1及び図2に示す第1面1が有する複数の第1凹部8bの位置と対応している。
図3中の符号7で示す線分は、第2面12において線粗さRz(JIS B 0601:1994)が最も高い方向に沿った線分である。
図4は、図3の線分7に沿った断面図である。図4に示すように、第2面12は、線分7に沿った断面において複数の第2凸部6及び複数の第2凹部9を有している。
凹凸シートの第2面12の表面粗さ(Rz2)は、例えば0μm~50μmの範囲内にある。本明細書において、第2面12の表面粗さRz2は、第2凸部6の高さであり、図4においては符号10で示している。
第2面12は、高温高圧力下でも第1面1の凹凸形状を維持する観点から、平坦であることが好ましい。
第2面の表面粗さ(第2凸部の高さ)は、JIS B 0601:1994の表面粗さRzの測定方法に準拠して測定した値とする。
凹凸シートの厚み(T)は、図2において符号11で示している。凹凸シートの厚み(T)は、例えば50μm~1000μmの範囲内にあり、好ましくは100μm~500μmの範囲内にある。凹凸シートの厚みが薄すぎると、コシが不足し、機械的強度が低下するため、ハンドリング性に劣る傾向にある。凹凸シートの厚みが厚すぎると、摺動性能に寄与しないふっ素樹脂の体積が増加し、製造コストが上がるため好ましくない。
凹凸シートの厚み(T)は、凹凸シートをカミソリ等で切断し、断面をマイクロスコープ等で観察することにより測定することができる。
第2面の表面粗さ(Rz2)と凹凸シートの厚み(T)との比(Rz2/T)は、好ましくは0.2以下である。比(Rz2/T)が0.2以下であると、高温高圧力下においても凹凸シートの変形を抑制することができる。
凹凸シートはふっ素樹脂を含有している。凹凸シートはふっ素樹脂からなっていてもよい。ふっ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性ポリテトラフルオロエチレン(変性PTFE)、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)、四フッ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びエチレン四フッ化エチレン共重合樹脂(ETFE)が挙げられる。これらのふっ素樹脂は、いずれも動摩擦係数が低い。ふっ素樹脂としては、これらの中から1種類のみを使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
ふっ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、変性ポリテトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルコキシアルカンからなる群より選択される少なくとも1つのふっ素樹脂を80重量%以上100重量%以下の量で含有していることが望ましい。
ふっ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、変性ポリテトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルコキシアルカンからなる群より選択される単一のふっ素樹脂であることが好ましい。
凹凸シートは、充填剤を含んでいない方が好ましいが、耐久性の向上及び静電効果を抑制することなどを目的として、充填剤を含んでいてもよい。
凹凸シートは、ガラスクロスを含んでいてもよい。凹凸シートがガラスクロスを芯材として含んでいる場合、凹凸シートは、例えば芯材としてのガラスクロスを被覆したふっ素樹脂層を具備する。
以下、実施形態に係る凹凸シートの製造方法の一例を説明する。ここでは一例として、凹凸シートがPTFEのみからなる場合の製造方法を説明する。
ポリテトラフルオロエチレン粒子(PTFE粒子)を金型に充填し、加圧成形を施した後、焼成することにより、PTFEの焼成体を得る。得られた焼成体から切削加工によりフィルムを得る。得られたフィルムにエンボス加工を施した後、必要に応じて裁断することにより、実施形態の凹凸シートを得る。エンボス加工の前又は後、若しくは前後にアニール処理を施すことも可能である。
PTFE粒子には、例えば、PTFEモールディングパウダーを使用することができる。ここで、モールディングパウダーとは、懸濁重合で得られた原料粉末を意味する。モールディングパウダーは、いったん数十~数百μmの大きさに粉砕され、続いて成形用途に応じ、粒状化{造粒(pelletizing)}、微粉化(finecutting)、前加熱(presintering)などの処理が施されたものである。モールディングパウダーは、granular resinとも言われる。
焼成温度は、特に限定されるものではないが、例えば、PTFEの未焼成ポリマーの融点340℃以上、好ましくは360℃以上380℃以下にすることができる。焼成後に冷却工程を行っても良い。
エンボス加工の一例を図5に示す。表面に複数の凸部が設けられた金属ロール(第1ロール)17と、表面に凸部を持たない、平滑な表面を有する弾性ロール(第2ロール)18との間に、未加工のフィルム13が連続的に搬送される。矢印16は、フィルムの搬送方向を示している。
第1ロール17及び第2ロール18は矢印14の方向に加圧されている。それ故、第1ロール17及び第2ロール18の間に未加工のフィルム13が搬送されることにより、フィルム13の一方の面に第1ロール17の凸部の形状に対応した凹部が形成される。このとき、他方の面においても、一方の面に形成された凹部の位置に対応した位置において、凸部を形成することができる。こうして、少なくとも一方の面に凹凸を有する実施形態の凹凸シート15が得られる。
実施形態に係る凹凸シートは、例えば、OA機器が備える定着装置に使用する摺動シートとして使用することができる。
[実施例]
以下に実施例を説明するが、実施形態は、以下に記載される実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
金型に、ダイキン工業株式会社製の型式M-391Sの、嵩密度が0.78g/mLのPTFEモールディングパウダーを充填した。次いで、金型内のモールディングパウダーを上方から17MPaの圧力で加圧し、予備成形品を得た。
得られた予備成形品を370℃で焼成することにより、PTFE焼成体を得た。得られたPTFE焼成体に切削加工を施すことにより、厚さが150μm、短辺が300mmのPTFE長尺フィルムを得た。
得られたPTFE長尺フィルムの片面(第1面)に、図5に示すエンボス加工装置を用いて凹部を形成することにより、第1面に第1の凹凸が形成された凹凸シートの予備成形体を得た。なお、この予備成形体の凹凸形状及び寸法は、第1ロールの表面に設けられた凸部の高さ、ピッチ、曲率半径と一致している。それ故、第1ロールの表面に設けられた凸部の高さ、ピッチ、曲率半径を調整することにより、所望の凹凸形状及び寸法を有する凹凸シートを得ることができる。
続いて、予備成形体としてのPTFEフィルムに230℃でアニール処理を施すことにより、実施例1に係る凹凸シートを得た。得られた凹凸シートは、独立凹タイプであった。また、上記製造方法から明らかなように、実施例1に係る凹凸シートはPTFEのみからなっていた。
実施例1に係る凹凸シートの第1面の非接触式形状測定機(キーエンス社製形状解析レーザー顕微鏡VK-X110)による画像データを図6に示す。実施例1に係る凹凸シートの第2面の非接触式形状測定機による画像データを図7に示す。図6に示す凹凸シートの長手方向及び幅方向の断面図を図8に示す。
図6~図8に記載の各符号の説明は、図1~図4を参照しながら説明したため省略する。
<リングオンディスク型摩耗試験>
実施例1に係る凹凸シートについて、以下の条件でリングオンディスク型摩耗試験を実施した。図9は、リングオンディスク型摩耗試験を実施している様子を概略的に示す斜視図である。
リングとして、ステンレス鋼(SUS:Special Use Stainless steel)からなる円筒型のSUSリング21を使用した。SUSリング21の端面の面積は、2cm2である。図9に示すように、試験時には、この端面が試料である凹凸シート22と接する。
まず、回転盤20上に、裁断した凹凸シート22を固定した。次に、SUSリング21の端面に、100cP(0.1Pa・S)の粘度を有するシリコンオイルを適量塗布した。凹凸シート22上に、シリコンオイルを塗布した端面が凹凸シート22に接するようにSUSリング21を設置した。
SUSリング21を介して凹凸シート22を押圧するように、加圧方向24に沿って4kgの荷重を掛けながら、回転盤20を419rpmの回転速度で符号23の方向に向かって回転させ、24時間に亘って摩耗試験を行った。
摩耗試験の開始から、30分後並びに1時間後の摩擦係数、及び24時間のうちで最大の摩擦係数の値を測定した。また、24時間のうちで最大の摩擦係数の値を観測した時点での経過時間も記録した。
以上の結果を下記表1にまとめる。表1には、後述する実施例2~9及び比較例の結果も併記している。
表1には、得られた凹凸シートの各種パラメータと、摩耗試験の結果とを示している。具体的には、表1では、凹凸シートの「第1面の表面粗さRz1」、「第1凸部曲率半径」、「第1面の凹凸の平均間隔」、「第1凸部の有効凸高さ」及び「シート厚さT」を示している。これらパラメータは、実施形態において説明した方法に従って測定した。
表1中、「第1面の凹凸タイプ」の列は、凹凸シートの第1面が有する第1の凹凸の形状を簡略的に示している。「独立凹タイプ」は、第1面が1つの第1凸部及び複数の第1凹部を有している場合を示す。「独立凸タイプ」は、第1面が複数の第1凸部及び1つの第1凹部を有している場合を示す。
「摩擦係数」の「最大値」の列には、24時間のうちで最大の摩擦係数の値を示している。即ち、異音等の異常摩耗を検知した時点での摩擦係数を示している。例えば、比較例1は、摩耗試験の開始から14.8時間が経過した段階で異常摩耗を検知したため、試験を打ち切った。そして、異常摩耗を検知した時点での摩擦係数は0.22であった。
(実施例2)
表1に示すパラメータを有する凹凸シートが得られるように、第1ロールの表面に設けられた凸部の高さ、ピッチ、曲率半径を調整したことを除いて、実施例1と同様の方法で凹凸シートを作製し、摩耗試験を行った。得られた凹凸シートは、独立凹タイプであった。
(実施例3)
表1に示すパラメータを有する凹凸シートが得られるように、第1ロールの表面に設けられた凸部の高さ、ピッチ、曲率半径を調整したことを除いて、実施例1と同様の方法で凹凸シートを作製し、摩耗試験を行った。得られた凹凸シートは、独立凹タイプであった。
(比較例1)
以下の事項を除いて、実施例1で説明したのと同様の方法により凹凸シートを作製し、摩耗試験を行った。
この比較例1では、第1ロールとして、格子状の1つの凸部(換言すると、互いに独立した複数の凹部)が表面に設けられたロールを使用した。このロールの表面に設けられた凸部の高さ、ピッチ、曲率半径などは表1に示すパラメータを有する凹凸シートが得られるように調整した。得られた凹凸シートは、独立凸タイプであった。
(比較例2)
表1に示すパラメータを有する凹凸シートが得られるように、第1ロールの表面に設けられた格子状の1つの凸部の高さ、ピッチ、曲率半径などを調整したことを除いて、比較例1と同様の方法で凹凸シートを作製し、摩耗試験を行った。得られた凹凸シートは、独立凸タイプであった。
Figure 0007289521000001
実施例1-3と、比較例1-2とを対比すると、第1面の凹凸が独立凹タイプであり、第1面の表面粗さが15μm~200μmの範囲内にあり、第1凸部の曲率半径が450μm~1100μmの範囲内にある凹凸シートは、摩耗試験を24時間に亘って実施しても高い摺動性能が維持できたことが分かる。この理由は、以下の通りと考えられる。独立凹タイプは、即ち、格子状の凸部及び独立した複数の凹部からなる場合である。独立した複数の凹部に入り込んだシリコンオイルは、長時間の摺動を実施しても外部へ逃げにくい。更に、第1凸部の曲率半径が450μm~1100μmの範囲内にあるため、シリコンオイルが格子状の凸部の頭頂部に広がりやすく、凸部の頭頂部と相手材(SUSリング)との界面においてシリコンオイルが保持されやすかったと考えられる。また、第1面の表面粗さが15μm~200μmの範囲内にあるため、摺動によって第1面に高い圧力が加わっても凹凸形状が崩れずに維持できたと考えられる。
比較例1及び2に係る摩耗試験では、何れも24時間が経過する前に異常摩耗を検知した。この理由は、主に、複数の独立した凸部の隙間(1つの凹部)からシリコンオイルが逃げてしまい、凸部の頭頂部に広がるシリコンオイルの量が徐々に不足したためと考えられる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
1…第1面、2…第1面の表面粗さRz1(第1凸部の高さ)、3…第1凸部の有効凸高さRδc、4…第1面の幅方向の断面形状線、5…第1面の長手方向の断面形状線、6…第2凸部の頂点、7…第2面において線粗さRzが最も高い方向に沿った線分、8…凹凸の間隔、8a…第1凸部の頂点、8b…第1凹部の最大凹み、9…第2凹部の最大凹み、10…第2面の表面粗さRz2(第2凸部の高さ)、11…凹凸シートの厚み(T)、12…第2面、13…未加工のフィルム、14…加圧方向、15…実施形態のシート、16…フィルムの搬送方向、17…第1ロール、18…第2ロール、19…第1の凹凸の間隔が最大となる方向、20…回転盤、21…SUSリング、22…凹凸シート、23…回転方向、24…加圧方向。

Claims (5)

  1. ふっ素樹脂を含み、
    第1面、及び前記第1面と対向した第2面を有しており、前記第1面は第1の凹凸を有しており、
    前記第1の凹凸は、1つの第1凸部及び複数の第1凹部からなり、
    前記第1面の表面粗さ(Rz1)は15μm~200μmの範囲内にあり、
    前記第1の凹凸の間隔が最大となる方向について、前記第1凸部の曲率半径は450μm~1100μmの範囲内にある凹凸シート。
  2. 前記第1凸部の有効凸高さ(Rδc)は、前記第1凸部の負荷面積率が30%となる切断レベルc30と、前記第1凸部の負荷面積率が70%となる切断レベルc70との差であり、
    前記第1凸部の前記有効凸高さは5μm以上である請求項1に記載の凹凸シート。
  3. 前記第1の凹凸の平均間隔(Sm)は、100μm~1000μmの範囲内にある請求項1又は2に記載の凹凸シート。
  4. 100μm~200μmの範囲内の厚み(T)を有する請求項1~3の何れか1項に記載の凹凸シート。
  5. ポリテトラフルオロエチレン、変性ポリテトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルコキシアルカンからなる群より選択される単一のふっ素樹脂からなる請求項1~4の何れか1項に記載の凹凸シート。
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