JPH1047355A - 樹脂製転がり軸受 - Google Patents

樹脂製転がり軸受

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JPH1047355A
JPH1047355A JP20499096A JP20499096A JPH1047355A JP H1047355 A JPH1047355 A JP H1047355A JP 20499096 A JP20499096 A JP 20499096A JP 20499096 A JP20499096 A JP 20499096A JP H1047355 A JPH1047355 A JP H1047355A
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JP
Japan
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resin
rolling bearing
bearing
modulus
000mpa
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JP20499096A
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Inventor
Tomihiro Akiyama
富弘 秋山
Norio Ito
紀男 伊藤
Satoru Fukuzawa
覚 福澤
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NTN Corp
Original Assignee
NTN Corp
NTN Toyo Bearing Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【解決課題】 腐食雰囲気下で使用でき、かつ、高荷重
・高速回転下においても長期使用が可能な樹脂製転がり
軸受を提供する 【解決手段】 樹脂製転がり軸受は、曲げ弾性率が20
00〜6000MPaの範囲にあるポリアリーレンスル
フィド系樹脂からなる内輪1および外輪2、内・外輪
1、2間に介在する複数のボール3、およびボール3を
保持する保持器4を備えている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主に腐食雰囲気下
で使用される合成樹脂製の転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】水中や薬品中あるいは高湿度環境等の、
いわゆる腐食雰囲気下で使用される転がり軸受は、一般
的な軸受鋼で形成されたもの、またステンレス鋼で形成
されたものにおいても、軌道面や転動体表面の腐食が激
しく頻繁に交換しなければならない。
【0003】上記のような金属製軸受に樹脂カバーを装
着して腐食を防止しようとした軸受も知られているが、
軸受内部を完全に密封することができないため、腐食の
進行が若干遅延されるだけである。
【0004】以上の理由から、腐食を防止するため、軌
道輪を耐腐食性(耐薬品性)の合成樹脂で形成した転が
り軸受が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、合成樹脂から
なる軌道輪は一般に、金属製軌道輪に比べて、耐荷重変
形性、耐摩耗性が劣るため、従来の樹脂製転がり軸受は
低荷重および低速回転下での使用に制限されている。
【0006】そこで、本発明は、腐食雰囲気下で使用で
き、かつ、高荷重・高速回転下においても長期使用が可
能な樹脂製転がり軸受を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明では、軌道輪を曲げ弾性率2000〜600
0MPaの範囲にあるポリアリーレンスルフィド系樹脂
(以下、「PAS樹脂」という。)で形成した。
【0008】PAS樹脂は、水分や各種薬品に侵され
ず、かつ、吸水による寸法変化が非常に小さい樹脂であ
る。
【0009】曲げ弾性率を2000〜6000MPaの
範囲内としたのは、次のような理由による。すなわち、
曲げ弾性率が2000MPaより小さいと、軌道輪の荷
重による変形が大きく、高荷重、高速回転下での使用に
耐えない。一方、曲げ弾性率が6000MPaより大き
いと、軌道輪の荷重による変形の問題は解消されるもの
の、軌道面と転動体との接触面積(接触楕円)が小さく
なるので、接触部分の面圧上昇によって、軌道面の摩耗
が増大する。そこで、軌道輪の荷重による変形の問題を
解消すると同時に、軌道面の摩耗を抑制するため、軌道
輪を形成する合成樹脂の曲げ弾性率を2000〜600
0MPaの範囲内、好ましくは、3000〜5000M
Paの範囲内とした。
【0010】上記PAS樹脂には、曲げ弾性率2000
〜6000MPaの範囲を確保できれば、各種充填剤を
添加することが可能である。使用する充填剤は、耐薬品
性のものが好ましく、そのような充填剤として、タル
ク、炭素繊維、ガラス繊維、黒鉛、チタン酸カリウム、
ウィスカ、ウォラストナイト、シリカ、酸化チタン、ガ
ラスビーズ、芳香族ポリアミド繊維、フッ素樹脂粉末等
が挙げられる。
【0011】転動体の材質は特に限定されないが、耐薬
品性があり、かつ、軌道輪より剛性の高い材料で形成す
るのが好ましい。そのような材料として、例えばセラミ
ック材が挙げられ、特にアルミナからなるセラミック材
は、耐食性、硬度および加工性の点で優れた材料である
ので好ましい。
【0012】本発明の樹脂製転がり軸受は、保持器を使
用しない総玉(ころ)形式とすることもできるが、保持
器を使用する場合は、耐薬品性があり、かつ、軌道輪お
よび転動体よりも軟質の材料で保持器を形成するのが好
ましい。
【0013】軌道輪の成形方法は、特に限定されない
が、射出成形によるのが、生産性、コスト性の点で有利
である。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について
説明する。
【0015】図1に示す樹脂製転がり軸受は、曲げ弾性
率が2000〜6000MPaの範囲にあるPAS樹脂
からなる内輪1および外輪2、内・外輪1、2間に介在
する複数のボール3、およびボール3を保持する保持器
4を備えている。
【0016】この実施形態では、PAS樹脂と、(パー
フルオロ系)フッ素樹脂と、黒鉛粉末とを所定の割合で
配合した複合樹脂材料を用い、これを射出成形して内輪
1および外輪2を形成した。
【0017】この実施形態で用いたPAS樹脂は、一般
的に化学式1で示される合成樹脂である。
【0018】
【化1】 ここで、化学式1中のPhには、例えば化学式2〜化学
式5に示されるものがある。
【0019】
【化2】
【0020】
【化3】
【0021】
【化4】
【0022】
【化5】 PAS樹脂は、化学式1で示される繰り返し単位が70
モル%以上のものがよく、90モル%以上で100モル
%以下のものが好ましい。その中でも、化学式1で示さ
れる繰り返し単位のPAS樹脂で、結合位置がパラの位
置で、Phが単環式芳香族環であるものは、耐熱性、射
出成形性、耐薬品性、価格等の点で平均して総合的に優
れているため好ましい。
【0023】このような重合体を得るには既に良く知ら
れた方法を使用すればよいが、例えば、硫化ナトリウム
とp−シクロロベンゼンとをN−メチルピロリドン、ジ
メチルアセトアミド等のアミド系溶媒もしくはスルホラ
ン等のスルホン系溶媒中で反応させるのが好適である。
なお、重合体の結晶性に影響を与えない範囲で、例え
ば、化学式6〜化学式10に示される共重合成分を30
モル%未満、好ましくは10モル%未満で1モル%以上
含ませてもよい。
【0024】
【化6】
【0025】
【化7】
【0026】
【化8】
【0027】
【化9】
【0028】
【化10】 このようなPAS樹脂は、例えば、特公昭44−276
71号公報や特公昭45−3368号公報に開示されて
いるようなハロゲン置換芳香族化合物と硫化アルカリと
の反応、特公昭46−27255号公報に開示されてい
るような芳香族化合物を塩化硫黄とのルイス酸触媒共存
下における縮合反応、または米国特許第3、274、1
65号公報に開示されているような、チオフェノール類
のアルカリ触媒もしくは銅塩等の共存下における縮合反
応等によって合成されるが、目的に応じて具体的な方法
を任意に選択することができる。
【0029】また、耐熱性や低バリ性を向上させるた
め、PAS樹脂は、部分的交差結合、すなわち、部分架
橋を行うことが好ましい。PAS樹脂に部分的交差結合
を形成させるために行う架橋をする方法としては、例え
ば、空気中における融点以下での加熱又は架橋剤、分岐
剤を添加する方法があげられる。このようにして得られ
た架橋性のPAS樹脂の溶融粘度は1000〜5000
ポイズであり、好ましくは2000〜4000ポイズで
ある。溶融粘度が1000ポイズより小さいと、150
℃以上の高温域で耐クリープ特性などの機械的特性が低
下し、変形しやすく、また、5000ポイズより大きい
と、成形性が劣り、また柔軟性が低下して、好ましくな
いと考えられる。なお、溶融粘度の測定は、測定温度3
00℃、オリフィスが穴径1mm、長さ10mm、測定
荷重20kg/cm2、予熱時間6分の条件下で、高化
式フローテスタにて行われる。
【0030】また、部分的交差結合を有するPAS樹脂
の熱安定性は、上記の溶融粘度測定条件にて、予熱6分
後と30分後の溶融粘度の変化率が−50%〜150%
の範囲であるとが好ましい。なお、変化率は下記の式で
表される。
【0031】変化率=(P30−P4)/P4×100 (P4:予熱6分後の測定値、P30:予熱30分後の測
定値) 以上のような条件を満足する部分的交差結合を有するP
AS樹脂としては、例えば、トープレン社製「T4」、
「T4AG」、「TX−007」等をあげることができ
る。
【0032】PAS樹脂の重量平均分子量としては、2
0000〜45000のものがよく、25000〜40
000のものが好ましい。
【0033】このようなPAS樹脂の配合量は、20〜
70重量%、好ましくは25〜65重量%の組成配合と
すると、軌道輪に必要な剛性を与え、また、曲げ弾性率
を所定の値(2000〜6000MPa)にすることが
でき、機械的強度及び耐久性に優れた樹脂製転がり軸受
を提供することができる。
【0034】パーフルオロ系フッ素樹脂は、ポリテトラ
フルオロエチレン(以下、「PTFE」という。)に代
表されるフッ素系樹脂である。この樹脂は、骨格である
炭素原子の周囲を全てフッ素原子又は微量の酸素原子で
取り囲まれた状態であり、C−F間の強固な結合によ
り、フッ素系樹脂の中でも耐薬品性、低摩擦係数、非粘
着性等の諸特性に優れている。PTFEは、四フッ化エ
チレン単独重合体で圧縮成形可能な樹脂であり、その熱
分解温度は約508〜538℃である。これは、市販の
ものを用いることができ、例えば、喜多村社製「400
H」等を用いることができる。
【0035】パーフルオロ系フッ素樹脂としては、PT
FE以外に、テトラフルオロエチレン−パーフルオロア
ルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフル
オロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(F
EP)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロ
ピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体
(EPE)等があげられる。また、これらに加えて、ポ
リクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラ
フルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ク
ロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECT
FE)、ポリビニリテンフルオライド(PVDF)、ポ
リビニルフルオライド(PVF)等を混合してもよい。
【0036】また、パーフルオロ系フッ素樹脂は、上記
フッ素樹脂のモノマーの例えば1:10から10:1の
重合割合で2種類以上の共重合体や、3元共重合体など
のフッ素化ポリオレフィンなどであってもよく、これら
は、固体潤滑剤としての特性を示す。これらのなかで
も、PTFEは、耐熱性、耐薬品性、非粘着性、低摩擦
係数などの諸特性に優れており好ましい。
【0037】これらのパーフルオロ系フッ素樹脂は、微
分熱分解開始温度が比較的高く好ましい。例えば、PT
FE、PVDFの熱分解点はそれぞれ約490℃、約3
50℃であり、これらの微分熱分解開始温度は、それぞ
れ約555℃、約460℃を示し、中でも、PTFE、
PFA、FEP等は、高温特性及び耐薬品性に優れてい
て好ましい。このため、上記樹脂を含む組成物を溶融し
て軌道輪とする過程での熱履歴に比較的耐え得る。特
に、PTFEの分解点は、融点が約280〜290℃前
後のPAS樹脂より100〜200℃高く好ましい。
【0038】PTFEを粉末状にして配合する場合は、
その形状や大きさを特に限定することなく用いることが
できるが、粒状で平均粒径が1〜70μm、好ましくは
10〜50μmのものが、樹脂組成を均一にし、凝集、
分散不良にならないため好ましい。
【0039】また、バージン材のPTFE粉末に代え、
または、バージン材のPTFE粉末と共に、再生PTF
E粉末を用いることができる。再生PTFE粉末とは、
バージン材を一度焼成した後、粉砕して得られる粉末で
あり、このものは繊維状になりにくい性質を有してお
り、配合した樹脂組成物を良好な溶融粘度に維持するの
で、成形性の向上につながる。
【0040】このようなフッ素系樹脂の配合量は、20
〜70重量%、好ましくは25〜65重量%の組成配合
とすると、軌道輪の曲げ弾性率を所定の値(2000〜
6000MPa)にし、また、軌道面に潤滑性を付与す
ることができ、腐食性雰囲気下でも耐久性に優れた樹脂
製転がり軸受を提供することができる。
【0041】黒鉛粉末としては、例えば固定炭素量97
%以上の黒鉛を用いることができ、地中から産出された
天然の鱗片状黒鉛、または人造黒鉛であってよい。天然
黒鉛は、平均粒径が0.1〜50μm、好ましくは5〜
25μm、さらに好ましくは10μm程度の鱗片状の黒
鉛が凝集や分散不良の原因となりにくいので好ましい。
人造黒鉛は、例えばピッチ由来のコークスをタールやピ
ッチで固めて約1200℃で焼成してから黒鉛化炉に入
れ、約2300℃の高温で結晶を成長させたものが好ま
しい。また、人造黒鉛の原料としてはピッチ、コールタ
ール、コークス、木質原料、フラン樹脂、ポリアクリロ
ニトリル、フェノール樹脂等を用いる。
【0042】ここで黒鉛成分中の固定炭素とは、石炭試
験法の工業分析において、水分、灰分、揮発分を定量し
て除いた残りの成分であって、炭素を主成分として少量
の水素、酸素、窒素を含むものである。固定炭素量が9
7%未満の少量では耐摩耗性、結晶化処理前後の成形品
の収縮率ともに満足できる結果が得られない。
【0043】このような黒鉛をはじめ、タルク等の粉状
物や、芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、炭素繊
維等の繊維状物等である前記充填剤の配合量は、これら
の少なくとも1種類以上が、1〜30重量%、好ましく
は3〜25重量%の組成配合にすると、軌道輪に必要な
剛性を与え、また、曲げ弾性率を所定の値(2000〜
6000MPa)にすることができ、機械的強度及び耐
久性に優れた樹脂製転がり軸受を提供することができ
る。
【0044】上記のような各種材料を混合する方法は特
に限定するものではなく、通常広く用いられている方
法、例えば主成分となる樹脂、その他の諸原料をそれぞ
れ個別に、またはヘンシェルミキサー、ボールミル、タ
ンブラーミキサー等の混合機によって適宜乾式混合した
後、溶融混合性の良い射出成形機もしくは溶融押出成形
機に供給するか、又は予め熱ロール、ニーダ、バンバリ
ーミキサー、溶融押出機などで溶融混合するなどの方法
を利用すればよい。
【0045】さらに、上記の複合樹脂材料を軌道輪に成
形する方法は特に限定するものではなく、圧縮成形、押
出成形、射出成形等の通常の方法、または樹脂材料を溶
融混合した後、これをジェットミル、冷凍粉砕機等によ
って粉砕し、所望の粒径に分級することも可能である。
その中でも、射出成形法は、生産性、コスト性に優れて
いるので好ましい。
【0046】また、このようにして得られたペレットな
どの粒は、成形前に後述の熱処理と同程度の乾燥処理を
施しても良い。充分にペレット等の粒から水分などを蒸
発させることで、軌道輪の膨れや強度低下を防ぐことが
できる。
【0047】このようにして得られた軌道輪は、剛性を
高め、また、成形時のひずみを除いて寸法安定性を確保
するため、85〜240℃で0.1〜24時間程度のア
ニール熱処理をしておくことが望ましい。
【0048】アニール熱処理温度は、230℃以下、例
えば85〜200℃程度、寸法形状によっては85〜1
70℃程度や85〜150℃程度で行われることが適当
である。PAS樹脂は、広い温度範囲にわたって剛性が
高く、耐衝撃性も優れており、クリープなどの歪みに対
しても強く、また殆どの種類の油類や薬品等にも耐性を
示す樹脂である。また、PAS樹脂は結晶性であって、
結晶化度の上昇で強度や剛性の増加、耐摩耗性や潤滑性
の向上、熱膨張係数や吸水率の低下などの性質をもって
いる。
【0049】アニール熱処理温度が軌道輪の熱変形温度
よりも20〜30℃程度を越える場合や、軌道輪の材質
によっては熱変形温度よりも1〜10°C程度低い温度
を超える場合は、樹脂にかかる熱履歴の影響が大きくな
り好ましくないと考えられ、これ以下で熱処理すること
が好ましい。熱処理時は、上記所定の温度に達する前
に、例えば常温、80℃、130℃、180℃、200
℃、230℃というように、数段階に分けて、15〜1
80分程度の範囲で、15〜60分毎に徐々に昇温し、
上記温度範囲内の最適な温度にて、上記時間の範囲で温
度を一定に保持してもよい。その場合の最高温度の保持
時間は、15〜480分程度であればよい。最高温度の
保持時間が所定時間よりも短時間であると、樹脂の結晶
化が不充分となって寸法安定性が悪くなり、所定時間よ
りも長時間であると、「ソリ」などの不適当な熱変形が
起こり、また電気炉などのエネルギー消費量の増大や製
造時間の長時間化からみても製造コストの低減を図るこ
とが難しくなる。
【0050】また、85〜120℃程度に昇温した時に
そのような一定温度で保持してもよい。このようにする
と、軌道輪内に僅かに取り込まれた水分を乾燥させるこ
とができ、その後、結晶化させることができる。一方、
短時間で急激に加熱して熱処理を終了させることは好ま
しくない。上記水分が沸点を越えて気化し、その際の体
積膨張によって軌道輪に「膨れ」などの不具合が発生す
る可能性が高くなるからである。
【0051】結晶化工程後の冷却は、上記昇温時と逆の
段階を経て冷却してもよく、または60〜180分程度
の時間をかけて連続的に徐冷してもよい。
【0052】以上のような熱処理工程を行なうことによ
り、軌道輪の膨れなどの不具合の発生を極力防ぐと共
に、樹脂の結晶化を確実かつ徐々に進行させて、軌道輪
の寸法安定性や剛性を高めることができる。
【0053】尚、アニール熱処理は、軸受使用雰囲気温
度がPAS樹脂のガラス転移点(80〜90°C)以下
の温度域である場合は、省略しても良いが(軌道輪の製
造工程において電気炉等に使われる電気エネルギーを節
約し、また、製造工程を効率化するため)、これ以上の
雰囲気温度(例えば80〜130°C程度)で使用する
場合は、組成材料内の応力、歪みを取り去るため、アニ
ール熱処理を施すのが良い。軸受使用雰囲気温度が18
0°C以上の場合は、アニール熱処理温度は230°C
もしくはこれ以上で融点以下の温度にするのが良い。
【0054】また、軌道輪の軌道面、ボールの転動面、
保持器のポケット面のうち少なくとも一つ以上の表面粗
さは、Rmax(最大粗さ)、Ra(算術平均粗さ)、
Rz(十点平均粗さ)等のJISで定義された評価法に
よって測定された粗さで、12μm以下、好ましくは8
μm以下、より好ましい3μm以下とするのが良い。な
ぜなら、表面粗さが上記所定範囲を越えると、軌道面等
の摩耗の原因になると考えられるからである。なお、表
面粗さの下減値は、加工時の効率性も考慮して、0.0
1μm以上、好ましくは0.5μm以上、あるいは0.
1μm程度以上であればよい。例えば、軌道面の表面粗
さは0.2S(Ra)、ボールの転動面の表面粗さは
0.1S(Ra)、保持器のポケット面の表面粗さは3
S(Ra)にすると良い。
【0055】ボール3の材質は特に問わないが、耐薬品
性があり、かつ、内・外輪1、2よりも硬度及び剛性の
高い材料で形成するのが好ましい。図1に示す実施形態
では、ボール3をマルテンサイト系ステンレス鋼で形成
してある。図2に示す実施形態では、ボール3をセラミ
ック材、例えばアルミナセラミック材(Al23)で形
成してある。
【0056】ボール3をセラミックス系材料で形成する
場合には、表1に示したニューセラミックス等のセラミ
ックス系材料を用いて成形することが好ましい。また、
これらの材料の強度、熱特性等を改善するために、1〜
10重量%程度のSiO2、Y23、Al27、Al
N、TaN、TiC、Co等、その他希土類等の無公害
なものを1種類以上添加しても良い。
【0057】
【表1】 前記のセラミックス系材料は超耐熱性、耐薬品性を有
し、摺動性は樹脂材の方が優れているものの、線膨張係
数は樹脂材の約1/10程度である。このように、線膨
張係数が樹脂材に比べて小さく、耐熱性、耐薬品性を有
し、また、耐熱衝撃抵抗が少なくとも100°C以上、
安全性を考慮して150°C以上、さらには200°C
以上の材質をボール3に使用することで、ボールの腐食
がなく、かつ、例えば間欠的に高温スチームに晒される
といった使用温度差の大きい環境下であっても、軸受隙
間の過大・過小が防止され、低トルクで長寿命の樹脂製
転がり軸受を提供することができる。
【0058】セラミックス系材料のなかでも代表的なフ
ァインセラミックであるアルミナ系(酸化アルミニウム
Al23)については、結晶形、添加剤の使用などによ
って、前記の特性と共に表2に示す特性を備えたものが
あり、このものは機械的強度、耐熱性、寸法安定性、耐
薬品性、価格などの点において総合的に優れており好ま
しい。例えば、耐食性については、塩酸、硫酸、硝酸、
リン酸、カ性ソーダ、HF等の薬液中(例えばPH6程
度の弱酸性の液中)や、蒸気中においても侵食されにく
いので、腐食雰囲気下で使用する場合に好ましい。
【0059】
【表2】 保持器4の材質も特に問わないが、耐薬品性があり、か
つ、内・外輪1、2およびボール3よりも軟質の材料で
形成するのが好ましい。図1および図2に示す実施形態
では、保持器4を前述したフッ素系樹脂、その中でも耐
薬品性に優れたポリテトラフルオロエチレンを主成分と
し、黒鉛等の各種充填剤を1〜50重量%添加した樹脂
材で形成してある。尚、保持器を具備しない総玉形式と
しても良い。
【0060】
【実施例】実施例および比較例で使用した材料を一括し
て以下に示す。 (1)ポリアリーレンスルフィド系樹脂(PAS): ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS) トープレン社製「PPS−T4」 (2)パーフルオロ系フッ素樹脂: ポリテトラフルオロエチレン樹脂粉末(PTFE) 喜多村社製「KT400H」 (3)黒鉛粉末:ロンザ社製「人造グラファイトKS1
0」 (4)タルク:日本タルク社製「MS」 (5)アラミド繊維:日本アラミド社製「トワロン−
0.25MM」 (6)炭素繊維:呉羽化学社製「クレカチョップM10
7T」 [実施例および比較例]実施例および比較例の樹脂製転
がり軸受は、表3および表4に示す割合(重量%)で各
材料を配合した後、二軸押出機により造粒し、射出形成
で内輪1および外輪2を成形した。そして、200°C
のアニール熱処理を施した後、研磨加工にて#6000
系列の深溝玉軸受の内輪1および外輪2に仕上げた。
【0061】また、ボール3はアルミナセラミック材
(Al23)からなるもの、保持器4はポリテトラフル
オロエチレンを主成分とする樹脂材(耐摩耗性、低摩擦
係数、機械的強度向上に寄与する黒鉛を添加)からなる
ものを使用した。
【0062】なお、実施例および比較例の樹脂製転がり
軸受には、グリース等の潤滑剤は使用していない。
【0063】評価試験は、JIS−Z2371に基づく
塩水噴霧試験機中で実施し、軸受のラジアル荷重を2k
gf/cm2、 総回転数を9×106revの条件で運
転した。試験後の内・外輪1、2の軌道面の摩耗深さ、
および、内・外輪1、2の変形の有無を表3および表4
に併記する。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】 表3および表4から明らかなように、実施例1〜6の軸
受は、比較例1〜4の軸受に比べ、内・外輪1、2の軌
道面の摩耗が少なく、また、内・外輪1、2の変形もな
かった。
【0066】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
腐食雰囲気下で使用でき、かつ、高荷重・高速回転下に
おいても長期使用が可能な樹脂製転がり軸受を提供する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 内輪 2 外輪 3 ボール 4 保持器
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成9年10月20日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0064
【補正方法】変更
【補正内容】
【0064】
【表3】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正内容】
【0065】
【表4】 表3および表4から明らかなように、実施例1〜6の軸
受は、比較例1〜4の軸受に比べ、内・外輪1、2の軌
道面の摩耗が少なく、また、内・外輪1、2の変形もな
かった。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軌道輪が曲げ弾性率2000〜6000
    MPaの範囲にあるポリアリーレンスルフィド系樹脂で
    形成されていることを特徴とする樹脂製転がり軸受。
  2. 【請求項2】 転動体が耐薬品性材料で形成されている
    ことを特徴とする請求項1記載の樹脂製転がり軸受。
JP20499096A 1996-08-02 1996-08-02 樹脂製転がり軸受 Pending JPH1047355A (ja)

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