JPWO2019171744A1 - チタンめっき部材の製造方法及びチタンめっき部材 - Google Patents
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Abstract
Description
導電性の表面を有する基材と上記基材に対応するアノードとを、溶融塩チタンめっき液組成物に浸漬する工程と、
上記基材の上記導電性の表面上にチタンめっき膜を形成する工程と、を含むチタンめっき部材の製造方法であって、
上記チタンめっき膜を形成する工程は、上記基材におけるカソード電位がLi+/Liの酸化還元電位を基準として0.85V〜1.2Vとなるように、上記基材と上記アノードとの間に電圧を印加することを含み、
上記溶融塩チタンめっき液組成物は、フッ化リチウム、塩化リチウム及びチタン(III)イオンを含む。
溶融塩中でチタンを電析させる方法は、上記乾式成膜法と比較して、表面が平滑なチタンめっき膜を形成させることができるが、改良の余地がまだ残されている。
上記によれば、表面の平滑度が高いチタンめっき膜を有するチタンめっき部材の製造方法及びチタンめっき部材を提供することが可能になる。
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
[1]本開示に係るチタンめっき部材の製造方法は、
導電性の表面を有する基材と上記基材に対応するアノードとを、溶融塩チタンめっき液組成物に浸漬する工程と、
上記基材の上記導電性の表面上にチタンめっき膜を形成する工程と、を含むチタンめっき部材の製造方法であって、
上記チタンめっき膜を形成する工程は、上記基材におけるカソード電位がLi+/Liの酸化還元電位を基準として0.85V〜1.2Vとなるように、上記基材と上記アノードとの間に電圧を印加することを含み、
上記溶融塩チタンめっき液組成物は、フッ化リチウム、塩化リチウム及びチタン(III)イオンを含む。
以下、本発明の一実施形態(以下「本実施形態」と記す。)について説明する。ただし、本実施形態はこれに限定されるものではない。本明細書において「A〜B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。
本実施形態に係るチタンめっき部材の製造方法は、
導電性の表面を有する基材と上記基材に対応するアノードとを、溶融塩チタンめっき液組成物に浸漬する工程と、
上記基材の上記導電性の表面上にチタンめっき膜を形成する工程と、を含むチタンめっき部材の製造方法であって、
上記チタンめっき膜を形成する工程は、上記基材におけるカソード電位がLi+/Liの酸化還元電位を基準として0.85V〜1.2Vとなるように、上記基材と上記アノードとの間に電圧を印加することを含み、
上記溶融塩チタンめっき液組成物は、フッ化リチウム、塩化リチウム及びチタン(III)イオンを含む。
ここで、元素記号又は元素名と共にかっこ書きのローマ数字が示される場合、当該ローマ数字は、その直前の元素の価数を示す。例えば、チタン(III)イオンは、「Ti3+」を意味する。チタン(IV)イオンは、「Ti4+」を意味する。
本実施形態の一側面において、上記製造方法は、導電性の表面を有する基材と上記基材に対応するアノードとを、溶融塩チタンめっき液組成物に浸漬する工程の前に、導電性の表面を有する基材を準備する工程を更に含んでいてもよい。以下、各工程について説明する。
本工程では、導電性の表面を有する基材を準備する。「導電性の表面を有する基材」とは、電場の働きによって荷電粒子(電子、イオン等)がドリフトして電気を通すことが可能な表面を有する基材を意味する。本実施形態に係る導電性の表面は、上記溶融塩チタンめっき液組成物の温度より高い融点を有する物質を含んでいてもよい。上記導電性の表面は、上記溶融塩チタンめっき液組成物の温度より高い融点を有する物質からなっていてもよい。上記溶融塩チタンめっき液組成物の温度より低い融点を有する物質を上記導電性の表面として用いると、後述する「基材の導電性の表面上にチタンめっき膜を形成する工程」において上記溶融塩チタンめっき液組成物中に溶け出してしまい、上記基材のカソードとしての機能が低下する傾向がある。
本工程では、準備した上記基材と上記基材に対応するアノードとを溶融塩チタンめっき液組成物(以下、「めっき液組成物」という場合がある。)に浸漬する。「溶融塩チタンめっき液組成物」とは、チタンめっきを行う際にめっき浴として用いる溶融塩の組成物を意味する。上記溶融塩チタンめっき液組成物は、フッ化リチウム、塩化リチウム及びチタン(III)イオンを含む。また、上記溶融塩チタンめっき液組成物は、フッ化物イオン、塩化物イオン、リチウムイオン及びチタン(III)イオンを含むと把握することもできる。
3Ti4+ +Ti金属 → 4Ti3+ 式(1)
本工程は、上記基材の上記導電性の表面上にチタンめっき膜を形成する。また、上記チタンめっき膜を形成する工程(本工程)は、上記基材におけるカソード電位がLi+/Liの酸化還元電位を基準として0.85V〜1.2Vとなるように、上記基材と上記アノードとの間に電圧を印加することを含む。
本実施形態に係るチタンめっき部材の製造方法は、上述した工程に加えてその他の工程を更に含んでいてもよい。その他の工程としては、例えば、めっき液組成物中の不純物を取り除く目的で行う予備電解を施す工程、チタンめっきが施された基板を洗浄する工程、洗浄後のチタンめっきが施された基板を乾燥する工程等が挙げられる。
本実施形態に係るチタンめっき部材は、基材と、上記基材を被覆するチタンめっき膜とを備え、上記チタンめっき膜の表面粗さが1μm未満であり、0.6μm以上0.9μm以下であることが好ましい。上記表面粗さ(Ra)は、SEM(Scanning Electron Microscope)による断面観察又は表面粗さ計を用いて測定することができる。本実施形態では、表面粗さ計を用いて、上記表面粗さ(Ra)を測定することとする。上記表面粗さ計としては、例えば、キーエンス株式会社製のレーザー顕微鏡VK−X1000(商品名)が挙げられる。なお、めっき膜の表面粗さは、JIS B 0601(2001)に規定された算術平均粗さRaを意味している。本実施形態における表面粗さ(Ra)は、上記チタンめっき膜の任意の5か所それぞれにおいて測定した値の平均値である。本実施形態の一側面において、上記チタンめっき膜は、平均めっき膜厚が5μmであるとき、表面粗さが1μm未満であってもよい。
LiFとLiClとの混合比率がモル比で45:55となり、K2TiF6の濃度が0.5mol%となるようにLiF、LiCl及びK2TiF6を混合した。その後、得られた混合物を650℃に加熱し、溶融塩のめっき浴(溶融塩チタンめっき液組成物前駆体)を作製した。得られた溶融塩のめっき浴に対して、チタン(III)イオンを生成するのに必要な量の2倍量のスポンジチタン(めっき浴1gあたりに対し4.4mg)を添加し、十分に溶解させた。めっき浴中には溶解しきらなかったスポンジチタンが沈殿した状態で確認された。このようにして、溶融塩チタンめっき液組成物(以下、「めっき液組成物」という場合がある。)を作製した。
(測定条件)
測定装置 :HZ−7000(北斗電工株式会社製)
作用電極(カソード):Mo板(株式会社ニラコ製)
アノード :Ti板(株式会社ニラコ製)
参照電極 :白金擬似参照電極(株式会社ニラコ製)
温度 :650℃
LiFとLiClとの混合比率がモル比で45:55となり、K2TiF6の濃度が2mol%となるようにLiF、LiCl及びK2TiF6を混合した。その後、得られた混合物を650℃に加熱し、溶融塩のめっき浴(溶融塩チタンめっき液組成物前駆体)を作製した。得られた溶融塩のめっき浴に対して、チタン(III)イオンを生成するのに必要な量の2倍量のスポンジチタン(めっき浴1gあたりに対し16mg)を添加し、十分に溶解させた。めっき浴中には溶解しきらなかったスポンジチタンが沈殿した状態で確認された。このようにして、溶融塩チタンめっき液組成物を作製した。
(測定条件)
測定装置:HZ−7000(北斗電工株式会社製)
カソード:Ni板(株式会社ニラコ製)
アノード:Ti板(株式会社ニラコ製)
参照電極:白金擬似参照電極(株式会社ニラコ製)
温度 :650℃
表1の結果から、カソード電位がLi+/Liの酸化還元電位を基準として0.85V〜1.2Vとなるように、上記基材と上記アノードとの間に電圧を印加すると、表面の平滑度が高い(表面粗さが1μm未満である)チタンめっきを有するチタンめっき部材を製造できることが示された。
Claims (5)
- 導電性の表面を有する基材と前記基材に対応するアノードとを、溶融塩チタンめっき液組成物に浸漬する工程と、
前記基材の前記導電性の表面上にチタンめっき膜を形成する工程と、を含むチタンめっき部材の製造方法であって、
前記チタンめっき膜を形成する工程は、前記基材におけるカソード電位がLi+/Liの酸化還元電位を基準として0.85V〜1.2Vとなるように、前記基材と前記アノードとの間に電圧を印加することを含み、
前記溶融塩チタンめっき液組成物は、フッ化リチウム、塩化リチウム及びチタン(III)イオンを含む、製造方法。 - 前記導電性の表面は、Ni、Fe、Cu、Mo、W、カーボン及びステンレス鋼からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の製造方法。
- 前記フッ化リチウムと前記塩化リチウムとのモル比LiF:LiClは、30:70〜50:50である、請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
- 前記溶融塩チタンめっき液組成物におけるフッ化物イオンの割合は、前記溶融塩チタンめっき液組成物における全アニオンのモル数を基準として、10〜50mol%である、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の製造方法。
- 基材と、前記基材を被覆するチタンめっき膜とを備え、前記チタンめっき膜の表面粗さが1μm未満である、チタンめっき部材。
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