JP7207411B2 - チタンめっき用電解質の評価方法及びチタンめっき用電解質を用いたチタンめっき部材の製造方法 - Google Patents

チタンめっき用電解質の評価方法及びチタンめっき用電解質を用いたチタンめっき部材の製造方法 Download PDF

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Description

本開示は、チタンめっき用電解質、チタンめっき用電解質の評価方法及びチタンめっき用電解質を用いたチタンめっき部材の製造方法に関する。本出願は、2018年7月18日に出願した日本特許出願である特願2018-134993号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
チタン(Ti)は、耐腐食性、耐熱性及び比強度に優れた特性を有する金属である。しかし、チタンは生産コストが高く、製錬及び加工が難しい。そのため、チタンの広範な利用が妨げられている。現在、チタン及びチタン化合物の高耐食性及び高強度等の特性を利用する方法のひとつとして、CVD(Chemical Vapor Deposition)又はPVD(Physical Vapor Deposition)等を用いた乾式成膜法が一部工業化されている。しかし、上記乾式成膜法は、複雑な形状の基板には成膜が難しい傾向がある。上記乾式成膜法に代わるチタン成膜法として、溶融塩中でチタンを電析させる方法が提案されている(例えば、特開2015-193899号公報(特許文献1))。
特開2015-193899号公報
本開示の一態様に係るチタンめっき用電解質は、
フッ化リチウム、塩化リチウム及びチタン(III)イオンを含むチタンめっき用電解質であって、
4968eV以上4969eV以下の範囲におけるX線吸収の平均強度Iと、4983eV以上4984eV以下の範囲におけるX線吸収の平均強度Iとの比I/Iが0.13以下である。
本開示の一態様に係るチタンめっき用電解質の評価方法は、
フッ化リチウム、塩化リチウム及びチタン(III)イオンを含むチタンめっき用電解質の評価方法であって、
XAFS法を用いて、上記チタンめっき用電解質の、4968eV以上4969eV以下の範囲におけるX線吸収の平均強度I及び4983eV以上4984eV以下の範囲におけるX線吸収の平均強度Iを測定する工程と、
上記平均強度Iと上記平均強度Iとの比I/Iを、基準強度比と比較する工程と、
上記比I/Iが、上記基準強度比以下である場合、上記チタンめっき用電解質はチタンめっき用の溶融塩として良好な電解質であると判定する工程とを含む。
本開示の一態様に係るチタンめっき部材の製造方法は、
導電性の表面を有する基材と上記基材に対応するアノードとを、上記チタンめっき用電解質に浸漬する工程であって、上記チタンめっき用電解質は溶融している、工程と、
上記基材と上記アノードとの間に電圧を印加して、上記基材の上記導電性の表面上にチタンめっき膜を形成する工程と、を含む。
本開示の他の一態様に係るチタンめっき部材の製造方法は、
フッ化リチウム、塩化リチウム及びチタン(III)イオンを含むチタンめっき用電解質を、上記チタンめっき用電解質の評価方法によって評価する工程と、
上記評価する工程において、チタンめっき用の溶融塩として良好な電解質であると判定された上記チタンめっき用電解質を準備する工程と、
導電性の表面を有する基材と上記基材に対応するアノードとを、上記チタンめっき用電解質に浸漬する工程であって、上記チタンめっき用電解質は溶融している、工程と、
上記基材と上記アノードとの間に電圧を印加して、上記基材の上記導電性の表面上にチタンめっき膜を形成する工程と、を含む。
図1は、本実施形態に係るチタンめっき用電解質のXAFSスペクトルのグラフである。 図2は、金属チタンのXAFSスペクトルのグラフである。 図3は、実施例3及び比較例2に係るチタンめっき用電解質のXAFSスペクトルのグラフである。
[本開示が解決しようとする課題]
溶融塩中でチタンを電析させる方法は、上記乾式成膜法と比較して、表面が平滑なチタンめっき膜を形成させることが可能であるが、めっきの電流効率の改善等、改良の余地がまだ残されている。
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、めっきの電流効率に優れるチタンめっき用電解質、チタンめっき用電解質の評価方法及びチタンめっき用電解質を用いたチタンめっき部材の製造方法を提供することを目的とする。
[本開示の効果]
本開示によれば、めっきの電流効率に優れるチタンめっき用電解質、チタンめっき用電解質の評価方法及びチタンめっき用電解質を用いたチタンめっき部材の製造方法を提供することが可能になる。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
[1]本開示の一態様に係るチタンめっき用電解質は、
フッ化リチウム、塩化リチウム及びチタン(III)イオンを含むチタンめっき用電解質であって、
4968eV以上4969eV以下の範囲におけるX線吸収の平均強度Iと、4983eV以上4984eV以下の範囲におけるX線吸収の平均強度Iとの比I/Iが0.13以下である。
本開示の一態様に係るチタンめっき用電解質は、上述のような構成を備えることでめっきの電流効率に優れる。すなわち、上記チタンめっき用電解質の溶融塩をチタンめっきにおけるめっき浴として用いることで、めっきの電流効率に優れるめっきを行うことができる。
[2]上記フッ化リチウム及び上記塩化リチウムの合計の含有割合は、90mol%以上である。このように規定することで、溶融塩中に金属霧が発生しにくく、電流効率に優れるチタンめっき用電解質とすることができる。
[3]上記フッ化リチウムの割合は、上記フッ化リチウムと上記塩化リチウムとの全モル数を基準として、30mol%以上50mol%以下である。このように規定することで、上記チタンめっき用電解質の融点を低下させることが可能になる。その結果、より低い温度でチタンめっき膜を形成することが可能になる。
[4]本開示の一態様に係るチタンめっき用電解質の評価方法は、
フッ化リチウム、塩化リチウム及びチタン(III)イオンを含むチタンめっき用電解質の評価方法であって、
XAFS法を用いて、上記チタンめっき用電解質の、4968eV以上4969eV以下の範囲におけるX線吸収の平均強度I及び4983eV以上4984eV以下の範囲におけるX線吸収の平均強度Iを測定する工程と、
上記平均強度Iと上記平均強度Iとの比I/Iを、基準強度比と比較する工程と、
上記比I/Iが、上記基準強度比以下である場合、上記チタンめっき用電解質はチタンめっき用の溶融塩として良好な電解質であると判定する工程とを含む。
本開示の一態様に係るチタンめっき用電解質の評価方法は、上述のような構成を備えることでめっきの電流効率に優れるチタンめっき用電解質を評価することが可能になる。
[5]上記基準強度比は、0.01以上0.13以下の範囲の値から選ばれる。このように規定することで、よりめっきの電流効率に優れるチタンめっき用電解質を評価することが可能になる。
[6]上記平均強度I及び上記平均強度Iを測定する工程は、上記チタンめっき用電解質を熱可塑性樹脂のフィルムで封止した状態で上記平均強度Iと上記平均強度Iとを測定することを含む。このように規定することで、より精度よく上記平均強度Iと上記平均強度Iとを測定することができる。
[7]上記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン又は熱可塑性ポリイミドを含む。このように規定することで、より精度よく上記平均強度Iと上記平均強度Iとを測定することができる。
[8]本開示の一態様に係るチタンめっき部材の製造方法は、
導電性の表面を有する基材と上記基材に対応するアノードとを、上記[1]~[3]のいずれかに記載のチタンめっき用電解質に浸漬する工程であって、上記チタンめっき用電解質は溶融している工程と、
上記基材と上記アノードとの間に電圧を印加して、上記基材の上記導電性の表面上にチタンめっき膜を形成する工程と、を含む。
本開示の一態様に係るチタンめっき部材の製造方法は、上述のような構成を備えることで電流効率に優れるめっきを行うことができる。その結果、平滑度が高いチタンめっき膜を有するチタンめっき部材を製造することができる。
[9]本開示の他の一態様に係るチタンめっき部材の製造方法は、
フッ化リチウム、塩化リチウム及びチタン(III)イオンを含むチタンめっき用電解質を、上記[4]~[7]のいずれかに記載のチタンめっき用電解質の評価方法によって評価する工程と、
上記評価する工程において、チタンめっき用の溶融塩として良好な電解質であると判定された上記チタンめっき用電解質を準備する工程と、
導電性の表面を有する基材と上記基材に対応するアノードとを、上記チタンめっき用電解質に浸漬する工程であって、上記チタンめっき用電解質は溶融している、工程と、
上記基材と上記アノードとの間に電圧を印加して、上記基材の上記導電性の表面上にチタンめっき膜を形成する工程と、を含む。
本開示の他の一態様に係るチタンめっき部材の製造方法は、上述のような構成を備えることで電流効率に優れるめっきを行うことができる。その結果、平滑度が高いチタンめっき膜を有するチタンめっき部材を製造することができる。
[10]上記導電性の表面は、Ni、Fe、Cu、Mo、W、カーボン及びステンレス鋼からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。このように規定することで、表面の平滑度が更に高いチタンめっき膜を有するチタンめっき部材を製造することができる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本開示の一実施形態(以下「本実施形態」と記す。)について説明する。ただし、本実施形態はこれに限定されるものではない。本明細書において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。
≪チタンめっき用電解質≫
本実施形態に係るチタンめっき用電解質は、
フッ化リチウム、塩化リチウム及びチタン(III)イオンを含むチタンめっき用電解質であって、
4968eV以上4969eV以下の範囲におけるX線吸収の平均強度Iと、4983eV以上4984eV以下の範囲におけるX線吸収の平均強度Iとの比I/Iが0.13以下である。
ここで、元素記号又は元素名と共にかっこ書きのローマ数字が示される場合、当該ローマ数字は、その直前の元素の価数を示す。例えば、チタン(III)イオンは、「Ti3+」を意味する。チタン(IV)イオンは、「Ti4+」を意味する。
本実施形態において「チタンめっき用電解質」とは、チタンめっきを行う際にめっき浴(溶融塩浴)として用いる電解質を意味する。本実施形態において「電解質」とは、溶媒中に溶解した際に陽イオン及び陰イオンに電離する物質(いわゆる、狭義の電解質)と当該溶媒とを含む概念である。上記チタンめっき用電解質は、フッ化リチウム、塩化リチウム及びチタン(III)イオンを含む。ここで、上記フッ化リチウム及び上記塩化リチウムは、溶媒として上記チタンめっき用電解質に含まれていると把握することができる。また、上記チタンめっき用電解質は、フッ化物イオン、塩化物イオン、リチウムイオン及びチタン(III)イオンを含むと把握することもできる。なお、チタン(III)イオンは、上記の狭義の電解質が陽イオン及び陰イオンに電離した場合の陽イオンに相当するものと把握することもできる。
チタン(III)イオンの供給源としては、特に制限されないが、例えば、三塩化チタン(III)、ヘキサフルオロチタン(III)酸リチウム(LiTiF)、ヘキサフルオロチタン(III)酸カリウム(KTiF)等が挙げられる。
また、チタン(III)イオンは、下記式(1)で示される均化反応によってチタンめっき用電解質前駆体の溶融塩中においてチタン(IV)イオンを還元することによって得てもよい。
3Ti4+ +Ti金属 → 4Ti3+ 式(1)
上記チタン(IV)イオンの供給源としては、特に制限されないが、例えば、ヘキサフルオロチタン(IV)酸(HTiF)、ヘキサフルオロチタン(IV)酸カリウム(KTiF)、ヘキサフルオロチタン(IV)酸アンモニウム((NHTiF)、ヘキサフルオロチタン(IV)酸ナトリウム(NaTiF)、シュウ酸チタンカリウム2水和物(KTiO(C・2HO)、四塩化チタン(IV)(TiCl)等が挙げられる。
上記均化反応において用いられるチタン金属の形状としては、特に制限されないが、例えば、スポンジ状、粉末状等が挙げられる。
上記チタンめっき用電解質中におけるチタン(III)イオンの含有割合は特に制限されず、めっきを行う条件によって適宜設定できる。チタン(III)イオンの含有割合は、例えば、チタンめっき用電解質中の全カチオン100mol%に対して20mol%以下であってもよいし、12mol%以下であってもよい。またチタン(III)イオンの含有割合は、チタンめっき用電解質中の全カチオン100mol%に対して、0.1mol%以上であってもよいし、0.5mol%以上であってもよい。上記チタンめっき用電解質中におけるチタン(III)イオンの含有割合は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)分析法によって測定することが可能である。
上記チタンめっき用電解質は、本実施形態の効果を損なわない範囲において、リチウムイオン及びチタン(III)イオン以外のカチオンを含んでいてもよい。リチウムイオン及びチタン(III)イオン以外のカチオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が挙げられる。
上記フッ化リチウム及び上記塩化リチウムの合計の含有割合は、90mol%以上であることが好ましく、95mol%以上であることがより好ましい。上記含有割合の上限は、特に制限されないが、例えば、99mol%以下であってもよいし、97mol%以下であってもよい。上記フッ化リチウム及び上記塩化リチウムの合計の含有割合は、例えば、ICP分析法によって測定することが可能である。
上記フッ化リチウムと上記塩化リチウムとのモル比LiF:LiClは、30:70~50:50であることが好ましく、30:70~45:55であることがより好ましい。上記モル比LiF:LiClは、例えば、イオンクロマトグラフィー(IC)法、ICP分析法によって測定することが可能である。
本実施形態の一側面において、上記フッ化リチウムの割合は、上記フッ化リチウムと上記塩化リチウムとの全モル数を基準として、30mol%以上50mol%以下であることが好ましく、30mol%以上45mol%以下であることがより好ましい。また、本実施形態の他の一側面において、上記塩化リチウムの割合は、上記フッ化リチウムと上記塩化リチウムとの全モル数を基準として、50mol%以上70mol%以下であることが好ましく、55mol%以上70mol%以下であることがより好ましい。
上記チタンめっき用電解質におけるフッ化物イオンの割合は、上記チタンめっき用電解質における全アニオンのモル数を基準として、10mol%以上50mol%以下であることが好ましく、30mol%以上45mol%以下であることがより好ましい。ここで、上記チタンめっき用電解質におけるアニオンとしては、フッ化物イオン及び塩化物イオンの他に、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等が挙げられる。上記チタンめっき用電解質おけるフッ化物イオンの割合は、例えば、イオンクロマトグラフィー(IC)法によって測定することが可能である。
上記チタンめっき用電解質は、4968eV以上4969eV以下の範囲におけるX線吸収の平均強度Iと、4983eV以上4984eV以下の範囲におけるX線吸収の平均強度Iとの比I/Iが0.13以下であり、好ましくは0.1以下である。このようなチタンめっき用電解質は、その溶融塩をめっき浴として用いた場合、めっきの電流効率に優れる。このときの上記電流効率は、例えば、85%以上である。上記比I/Iの下限は、特に制限されないが例えば、0以上であってもよいし、0.01以上であってもよい。
上記平均強度I及び上記平均強度Iは、XAFS(X-ray Absorption Fine Structure、X線吸収微細構造)法によって測定することが可能である。XAFS法による具体的な測定手順は、後述する≪チタンめっき用電解質の評価方法≫の欄において説明する。
≪チタンめっき用電解質の評価方法≫
本実施形態に係るチタンめっき用電解質の評価方法は、
フッ化リチウム、塩化リチウム及びチタン(III)イオンを含むチタンめっき用電解質の評価方法であって、
XAFS法を用いて、上記チタンめっき用電解質の、4968eV以上4969eV以下の範囲におけるX線吸収の平均強度I及び4983eV以上4984eV以下の範囲におけるX線吸収の平均強度Iを測定する工程と、
上記平均強度Iと上記平均強度Iとの比I/Iを、基準強度比と比較する工程と、
上記比I/Iが、上記基準強度比以下である場合、上記チタンめっき用電解質はチタンめっき用の溶融塩として良好な電解質であると判定する工程とを含む。
<XAFS法を用いて、平均強度I及び平均強度Iを測定する工程>
本工程では、XAFS法を用いて、平均強度I及び平均強度Iを測定する。ここで、「平均強度」とは、所定のエネルギー範囲におけるX線吸収の強度を平均した値を意味する。上記平均強度は、例えば、後述する解析ソフトを用いて求めることが可能である。XAFS法は、透過法であってもよいし、蛍光法であってもよい。例えば、透過法のXAFS法では、X線を試料であるチタンめっき用電解質に入射させて、試料に照射する前のX線の強度と、試料を透過した後のX線の強度とを測定する。蛍光法のXAFS法では、同様に試料に照射する前のX線の強度と、試料表面から放出される蛍光X線の強度とを測定する。ここで、入射するX線のエネルギーはスキャニングによって変化させる必要がある。具体的には、例えば以下の手順でXAFS法(透過法)による測定を行う。
本測定では、Ti-K吸収端(4960eV以上4990eV以下)を測定することから、上述の範囲が含まれるようにX線のエネルギーが4640eV以上5920eV以下ある区間を測定することが好ましい。このようなX線を利用できる放射光施設としては、例えば、SPring-8(BL01B1、BL14B2、BL16B2)、佐賀県立九州シンクロトロン光研究センター(BL11、BL16)等が挙げられる。上記区間を測定する際、例えば、以下に示すエネルギー間隔毎に0.1秒間以上10秒間以下で積算してデータを得ることが好ましく、1秒間以上10秒間以下で積算してデータを得ることがより好ましい。エネルギー間隔は、4640eV以上4968eV以下では1eV刻み、4968eV以上4969eV以下では0.5eV刻み、4969eV以上4983eV以下では0.5eV刻み、4983eV以上4984eV以下では0.5eV刻み、4984eV以上5920eV以下では1eV刻みとすることが好ましい。つまり、チタンめっき用電解質の評価には、4968eV以上4969eV以下の平均強度Iと、4983eV以上4984eV以下の平均強度Iとを用いるため、上述のエネルギー範囲でエネルギー間隔を比較的細かくすることが好ましい。
得られたX線吸収スペクトルについて、4870eV以上4950eV以下の範囲(pre-edge領域、例えば、図1のR1の領域)におけるX線吸収が0となるようにバックグラウンドを差し引き、更に5130eV以上5700eV以下の範囲(post-edge領域、例えば、図1のR2の領域)におけるX線吸収が1となるように規格化処理を行う。その後、4968eV以上4969eV以下の平均強度I(例えば、図3のピークP1に対応する平均強度I)と、4983eV以上4984eV以下の平均強度I(例えば、図3のピークP2に対応する平均強度I)とを、解析ソフト(例えば、Athena(Demeterパッケージ)、REX2000(株式会社リガク製、商品名))を用いて算出する。算出した平均強度Iと平均強度Iと用いて、比I/Iを求める。ここまで、XAFS法(透過法)による測定の手順を説明した。XAFS法(蛍光法)による測定の手順も、試料に照射する前のX線の強度と、試料表面から放出される蛍光X線の強度とを測定すること以外は、上述した透過法における手順と同じ手順で測定を行うことができる。
なお、上記チタンめっき用電解質のXAFS測定を行う前に、標準試料である金属チタン(厚さ5μm)のXAFS測定を行い上記規格化処理を行った後、4964eVのピーク(例えば、図2におけるピークP0)を用いて横軸を較正することが好ましい。言い換えると、上記チタンめっき用電解質のXAFS測定を行う前に、標準試料である金属チタン(厚さ5μm)のXAFS測定を行い、図2におけるピークP0に対応するピークを特定し、当該ピークの極大点におけるエネルギーを4964eVに設定することで、横軸を較正することが好ましい。
XAFS法に用いる試料としてのチタンめっき用電解質は、固体状態の電解質を用いればよく、溶融塩の状態である必要はない。XAFS法に用いる試料は、例えば、以下のようにして作製できる。まず、溶融した上記チタンめっき用電解質の一部をセラミック製のピペット(例えば、内径4mm)で吸い上げて、その状態を維持したまま放冷する。放冷によって上記チタンめっき用電解質が十分に冷えて固まったら、当該セラミック製のピペットを割ることで上記チタンめっき用電解質を回収する。
本工程では、上記チタンめっき用電解質を熱可塑性樹脂のフィルムで封止した状態で上記平均強度Iと上記平均強度Iとを測定することが好ましい。このようにすることによって、上記チタンめっき用電解質へ水分等が混入することを防止し、上記平均強度Iと上記平均強度Iとを正確に測定できる。上記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン又は熱可塑性ポリイミドを含むことが好ましい。上記フィルムの厚さは、1μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上30μm以下であることがより好ましい。
<比I/Iを、基準強度比と比較する工程>
本工程では、上記平均強度Iと上記平均強度Iとの比I/Iを、基準強度比と比較する。ここで、「基準強度比」とは、対象試料であるチタンめっき用電解質がチタンめっき用のめっき浴(溶融塩浴)として良好な電解質であるか否かを判定するために基準として予め設定された強度比を意味する。
上記基準強度比は、0.01以上0.13以下の範囲の値から選ばれることが好ましく、0.01以上0.1以下の範囲の値から選ばれることがより好ましい。このように規定することで、めっきの電流効率が85%以上であるチタンめっき用電解質であるか否かを判定することが可能になる。ここで「めっきの電流効率」とは、使用した電気量から求められる理論上の金属Tiの析出量(質量)に対する、実際に析出した金属Tiの析出量(質量)の割合(%)を意味する。
上記基準強度比は、複数設定してもよい。基準強度比を複数設定することによって、後述するチタンめっき用電解質の品質を判定する工程において、チタンめっき用電解質の品質を複数のランクに分けることが可能になる。
<チタンめっき用電解質はチタンめっき用の溶融塩として良好な電解質であると判定する工程>
本工程では、上記比I/Iが、上記基準強度比以下である場合、上記チタンめっき用電解質はチタンめっき用の溶融塩として良好な電解質であると判定する。ここで「チタンめっき用の溶融塩として良好な電解質」とは、当該電解質の溶融塩をめっき浴として用いた場合、めっきの電流効率に優れる電解質であることを意味する。
従来、チタンめっき用のめっき浴(チタンめっき用電解質の溶融塩)におけるチタンイオンの価数が3価であれば、めっきの電流効率がよく、平滑なチタン膜が形成されると考えられていた。しかし、チタンイオンの価数が3価であっても、めっき浴によってはめっきの電流効率が低く、平滑なチタン膜が形成されない場合があった。すなわち、従来から行われているチタンめっき用電解質の製造方法では、得られるチタンめっき用電解質の不良率が高く、またそれらを選別する方法も知られていなかった。そのため、チタンめっき用電解質の品質を評価する方法の開発が望まれていた。本発明者らは、XAFS法における特定のX線エネルギーにおけるX線吸収がチタンめっき用電解質の品質と相関することを初めて見いだし、本評価方法を完成させた。本評価方法によれば、実際にチタンめっきを実施する前に、めっきの電流効率がよいチタンめっき用電解質を選別することができる。XAFS法における特定のX線エネルギーにおけるX線吸収とチタンめっき用電解質の品質とが相関するメカニズムは明らかにされていないが、本発明者らは以下のように考えている。
本発明者らは、チタン(III)イオンに対するフッ化物イオン又は塩化物イオンの配位状態(配位子の種類及び配位数)が変化することで、チタン(III)イオンの状態がより安定すると考えている。安定なチタン(III)イオンの方が還元されやすいので、当該チタン(III)イオンは、電析時に0価である金属チタンに還元されやすくなると、本発明者らは推測している。
一方でXAFS法では、チタンの価数の違い、並びに、チタンへ配位する配位子の種類及び配位数の違いが、X線吸収の強度及びピーク位置の違いとして反映されることから、XAFS法において特定のX線エネルギーにおけるX線吸収を検討することにより、チタン(III)イオンの安定性を把握することができる。したがって、XAFS法において特定のX線エネルギーにおけるX線吸収を検討することにより結果としてチタンめっき用電解質の品質(めっきの電流効率等)を判定することができると本発明者らは考えている。
上述したように従来から行われているチタンめっき用電解質の製造方法では、得られるチタンめっき用電解質の不良率が高く、チタンめっきが施された製品を工業的規模で量産するには歩留まりが低かった。本開示に係るチタンめっき用電解質の評価方法を用いることで、実際にチタンめっきを実施する前に、めっき浴として用いるチタンめっき用電解質の品質を評価できる。そのため、工業生産規模でも歩留まりよくチタンめっきを行うことが可能になる。
≪チタンめっき部材の製造方法(1)≫
本実施形態の一側面に係るチタンめっき部材の製造方法は、
導電性の表面を有する基材と上記基材に対応するアノードとを、上記チタンめっき用電解質に浸漬する工程であって、上記チタンめっき用電解質は溶融している、工程と、
上記基材と上記アノードとの間に電圧を印加して、上記基材の上記導電性の表面上にチタンめっき膜を形成する工程と、を含む。
本実施形態の一側面において、上記製造方法は、導電性の表面を有する基材と上記基材に対応するアノードとを、上記チタンめっき用電解質に浸漬する工程の前に、導電性の表面を有する基材を準備する工程を更に含んでいてもよい。以下、各工程について説明する。
<導電性の表面を有する基材を準備する工程>
本工程では、導電性の表面を有する基材を準備する。「導電性の表面を有する基材」とは、電場の働きによって荷電粒子(電子、イオン等)がドリフトして電気を通すことが可能な表面を有する基材を意味する。本実施形態に係る導電性の表面は、溶融塩である上記チタンめっき用電解質の温度より高い融点を有する物質を含んでいてもよい。上記導電性の表面は、溶融塩である上記チタンめっき用電解質の温度より高い融点を有する物質からなっていてもよい。溶融塩である上記チタンめっき用電解質の温度より低い融点を有する物質を上記導電性の表面として用いると、後述する「基材の導電性の表面上にチタンめっき膜を形成する工程」において溶融塩である上記チタンめっき用電解質中に溶け出してしまい、上記基材のカソードとしての機能が低下する傾向がある。
導電性の表面を有する基材は、例えば、その全体が導電性の物質からなる基材であってもよいし、絶縁体からなる基材前駆体の表面に導電性の物質が被覆されている基材であってもよい。本実施形態の一側面において、上記基材は、溶融塩である上記チタンめっき用電解質の温度より高い融点を有する物質を含んでいてもよい。上記基材は、溶融塩である上記チタンめっき用電解質の温度より高い融点を有する物質からなっていてもよい。
導電性の表面は、Ni、Fe、Cu、Mo、W、カーボン及びステンレス鋼からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、Ni、Fe、Cu、Mo、W、カーボン及びステンレス鋼からなる群より選ばれる少なくとも1種からなることがより好ましい。カーボンとしては、例えばグラッシーカーボン、グラファイト等が挙げられる。ステンレス鋼としては、例えばSUS304、SUS310S、SUS430等が挙げられる。
また、上記基材の形状は特に限定されない。例えば、基材としては、板状、柱状、パイプ状、二次元網目状、三次元網目状等の種々の形状を有する基材を採用することができる。
<基材と基材に対応するアノードとをチタンめっき用電解質に浸漬する工程>
本工程では、準備した上記基材と上記基材に対応するアノードとを上記チタンめっき用電解質に浸漬する。上記チタンめっき用電解質は、溶融している。すなわち、本工程において上記チタンめっき用電解質は溶融塩である。
溶融塩である上記チタンめっき用電解質の温度は、上記チタンめっき用電解質の融点以上であり、上記導電性の表面を構成する物質の融点以下であることが好ましい。より具体的には、溶融塩である上記チタンめっき用電解質の温度は、500℃以上850℃以下であることがより好ましく、500℃以上750℃以下であることが更に好ましい。
上記アノードは、溶融塩である上記チタンめっき用電解質の温度より高い融点を有する物質を含んでいてもよい。上記アノードは、溶融塩である上記チタンめっき用電解質の温度より高い融点を有する物質からなっていてもよい。上記アノードは、具体的には例えば、金属チタン、グラッシーカーボン、白金等を含むアノードが挙げられる。
<基材の導電性の表面上にチタンめっき膜を形成する工程>
本工程は、上記基材と上記アノードとの間に電圧を印加して、上記基材の上記導電性の表面上にチタンめっき膜を形成する。また、上記チタンめっき膜を形成する工程(本工程)は、上記基材におけるカソード電位がLi/Liの酸化還元電位を基準として0.85V以上1.2V以下となるように、上記基材と上記アノードとの間に電圧を印加することが好ましい。
具体的には、基材及びアノードを溶融塩である上記チタンめっき用電解質に浸漬した状態で、上記基材におけるカソード電位がLi/Liの酸化還元電位を基準として0.85V以上1.2V以下となるように、上記基材と上記アノードとの間に電圧を印加することによって通電し、上記チタンめっき用電解質の電解を行なうことが好ましい。これにより、カソードである基材の導電性の表面においてチタン(III)イオンが金属チタンに還元され、当該表面が金属チタンで被覆されることにより、チタンめっき膜が形成される。
上記カソード電位の設定範囲としては、Li/Liの酸化還元電位を基準として1V以上1.2V以下であることがより好ましく、1V以上1.1V以下であることが更に好ましい。上記カソード電位をこのように設定することで、平滑度が高いチタンめっきを施すことが可能になる。上記カソード電位のモニターは例えば、電気化学測定装置(北斗電工株式会社製、商品名:HZ-7000)を用いて行うことができる。
<その他の工程>
本実施形態に係るチタンめっき部材の製造方法は、上述した工程に加えてその他の工程を更に含んでいてもよい。その他の工程としては、例えば、溶融塩である上記チタンめっき用電解質中の不純物を取り除く目的で行う予備電解を施す工程、チタンめっきが施された基板を洗浄する工程、洗浄後のチタンめっきが施された基板を乾燥する工程等が挙げられる。
≪チタンめっき部材の製造方法(2)≫
本実施形態の他の側面に係るチタンめっき部材の製造方法は、
フッ化リチウム、塩化リチウム及びチタン(III)イオンを含むチタンめっき用電解質を、上記チタンめっき用電解質の評価方法によって評価する工程と、
上記評価する工程において、チタンめっき用の溶融塩として良好な電解質であると判定された上記チタンめっき用電解質を準備する工程と、
導電性の表面を有する基材と上記基材に対応するアノードとを、上記チタンめっき用電解質に浸漬する工程であって、上記チタンめっき用電解質は溶融している、工程と、
上記基材と上記アノードとの間に電圧を印加して、上記基材の上記導電性の表面上にチタンめっき膜を形成する工程と、を含む。
本実施形態の一側面において、上記製造方法は、導電性の表面を有する基材と上記基材に対応するアノードとを、上記チタンめっき用電解質に浸漬する工程の前に、導電性の表面を有する基材を準備する工程を更に含んでいてもよい。
<チタンめっき用電解質を、上記チタンめっき用電解質の評価方法によって評価する工程>
本工程は、チタンめっき用電解質を、上記チタンめっき用電解質の評価方法によって評価する。具体的な評価方法は、上記≪チタンめっき用電解質の評価方法≫の欄に記載の通りである。
<チタンめっき用電解質を準備する工程>
本工程は、上記評価する工程において、チタンめっき用の溶融塩として良好な電解質であると判定された上記チタンめっき用電解質を準備する。例えば、チタンめっき用の溶融塩として良好な電解質であると判定された上記チタンめっき用電解質を、所定の炉に投入して加熱、溶融すること等が含まれる。
<以降の工程>
上記チタンめっき用電解質を準備する工程の後に行われる工程、すなわち、<導電性の表面を有する基材を準備する工程>、<基材と基材に対応するアノードとをチタンめっき用電解質に浸漬する工程>、<基材の導電性の表面上にチタンめっき膜を形成する工程>、及び<その他の工程>は、上記≪チタンめっき部材の製造方法(1)≫の欄において、記載した内容の通りに行えばよい。
このようにして製造されたチタンめっき部材は、高硬度を有し、表面の平滑性が高く、かつ耐腐食性、耐摩耗性に優れた保護膜(チタンめっき膜)を有する部材である。また、めっき膜上の残留不純物量が少ない高品質なチタンめっき部材である。そのため、電解、蓄電分野、医療分野等、種々の分野において使用することができる。
<付記>
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
(付記1)
フッ化リチウム、塩化リチウム及びチタン(III)イオンを含むチタンめっき用電解質であって、
4968~4969eVの範囲におけるX線吸収の平均強度Iと、4983~4984eVの範囲におけるX線吸収の平均強度Iとの比I/Iが0.13以下である、チタンめっき用電解質。
(付記2)
前記フッ化リチウム及び前記塩化リチウムの合計の含有割合は、90mol%以上である、付記1に記載のチタンめっき用電解質。
(付記3)
前記フッ化リチウムと前記塩化リチウムとのモル比LiF:LiClは、30:70~50:50である、付記1又は付記2に記載のチタンめっき用電解質。
(付記4)
フッ化リチウム、塩化リチウム及びチタン(III)イオンを含むチタンめっき用電解質の評価方法であって、
XAFS法を用いて、前記チタンめっき用電解質の、4968~4969eVの範囲におけるX線吸収の平均強度I及び4983~4984eVの範囲におけるX線吸収の平均強度Iを測定する工程と、
前記平均強度Iと前記平均強度Iとの比I/Iを、基準強度比と比較する工程と、
前記比I/Iが、前記基準強度比以下である場合、前記チタンめっき用電解質はチタンめっき用の溶融塩として良好な電解質であると判定する工程とを含む、チタンめっき用電解質の評価方法。
(付記5)
前記基準強度比は、0.01以上0.13以下の範囲の値から選ばれる、付記4に記載のチタンめっき用電解質の評価方法。
(付記6)
前記平均強度I及び前記平均強度Iを測定する工程は、前記チタンめっき用電解質を熱可塑性樹脂のフィルムで封止した状態で前記平均強度Iと前記平均強度Iとを測定することを含む、付記4又は付記5に記載のチタンめっき用電解質の評価方法。
(付記7)
前記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン又は熱可塑性ポリイミドを含む、付記6に記載のチタンめっき用電解質の評価方法。
(付記8)
導電性の表面を有する基材と前記基材に対応するアノードとを、付記1~付記3のいずれかに記載のチタンめっき用電解質に浸漬する工程であって、前記チタンめっき用電解質は溶融している、工程と、
前記基材と前記アノードとの間に電圧を印加して、前記基材の前記導電性の表面上にチタンめっき膜を形成する工程と、を含むチタンめっき部材の製造方法。
(付記9)
フッ化リチウム、塩化リチウム及びチタン(III)イオンを含むチタンめっき用電解質を、付記4~付記7のいずれかに記載のチタンめっき用電解質の評価方法によって評価する工程と、
前記評価する工程において、チタンめっき用の溶融塩として良好な電解質であると判定された前記チタンめっき用電解質を準備する工程と、
導電性の表面を有する基材と前記基材に対応するアノードとを、前記チタンめっき用電解質に浸漬する工程であって、前記チタンめっき用電解質は溶融している、工程と、
前記基材と前記アノードとの間に電圧を印加して、前記基材の前記導電性の表面上にチタンめっき膜を形成する工程と、を含むチタンめっき部材の製造方法。
(付記10)
前記導電性の表面は、Ni、Fe、Cu、Mo、W、カーボン及びステンレス鋼からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、付記8又は付記9に記載のチタンめっき部材の製造方法。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
≪チタンめっき用電解質の作製≫
以下の作業は、大気雰囲気において全て行った。LiFとLiClとの混合比率がモル比で45:55となり、KTiFの濃度が2mol%となるようにLiF、LiCl及びKTiFを混合した。このとき、上記フッ化リチウム及び上記塩化リチウムの合計の含有割合は、98mol%であった。その後、得られた混合物を650℃に加熱し、溶融塩のチタンめっき用電解質の前駆体を作製した。得られた前駆体に対して、チタン(III)イオンを生成するのに必要な量の2倍量のスポンジチタン(前駆体1gあたりに対し16mg)を添加し、十分に溶解させた。溶融塩中には溶解しきらなかったスポンジチタンが沈殿した状態で確認された。このようにして、溶融塩であるチタンめっき用電解質を作製した。
≪チタンめっき用電解質の評価≫
上述の方法によって溶融塩として得られた上記チタンめっき用電解質を室温(25℃)にて放冷することによって、XAFS法による評価に用いる試料を作製した。具体的には以下の手順で行った。まず、溶融した上記チタンめっき用電解質の一部をセラミック製のピペット(内径4mm)で吸い上げて、その状態を維持したまま放冷した。上記チタンめっき用電解質の残部は、後述するチタンめっき部材の製造に用いた。放冷によって上記チタンめっき用電解質が十分に冷えて固まったら、当該セラミック製のピペットを割ることで上記チタンめっき用電解質を回収した。回収した上記チタンめっき用電解質をXAFS測定用の試料(直径4mm、高さ約8mmの円柱状の試料)とした。ここで、上記試料をポリプロピレンのフィルム(厚さ20μm)で封止して水分等が混入しない状態でXAFS測定を行った。
本実施例におけるXAFS法による測定は、佐賀県立九州シンクロトロン光研究センターのBL16を用いて、透過法及び蛍光法によって実施した。具体的には、金属チタンは透過法で実施して、チタンめっき用電解質は蛍光法で実施した。本測定では、Ti-K吸収端(4960eV以上4990eV以下)を測定することから、高次光除去ミラーと二結晶分光器(材質はシリコン、結晶面は111面)を使用して入射X線エネルギーを制御した。
また、4640eV以上5920eV以下までの区間を測定する際、以下に示すエネルギー間隔毎に1秒間積算してデータを得た。エネルギー間隔は、4640eV以上4968eV以下では1eV刻み、4968eV以上4969eV以下では0.5eV刻み、4969eV以上4983eV以下では0.5eV刻み、4983eV以上4984eV以下では0.5eV刻み、4984eV以上5920eV以下では1eV刻みとした。つまり、チタンめっき用電解質の評価には、4968eV以上4969eV以下の平均強度Iと、4983eV以上4984eV以下の平均強度Iとを用いるため、上述のエネルギー範囲でエネルギー間隔を比較的細かくした。
得られたX線吸収スペクトルについて、4870eV以上4950eV以下の範囲(pre-edge領域、図1のR1の領域)におけるX線吸収が0となるようにバックグラウンドを差し引き、更に5130eV以上5700eV以下の範囲(post-edge領域、図1のR2の領域)におけるX線吸収が1となるように規格化処理を行った。その後、4968eV以上4969eV以下の平均強度I(図3のピークP1に対応する平均強度I)と、4983eV以上4984eV以下の平均強度I(図3のピークP2に対応する平均強度I)とを、解析ソフト(Athena(Demeterパッケージ))を用いて算出した。算出した平均強度Iと平均強度Iと用いて、比I/Iを求めた。結果を表1に示す。なお、上記チタンめっき用電解質のXAFS測定を行う前に、標準試料である金属チタン(厚さ5μm)のXAFS測定を行い上記規格化処理を行った後、4964eVのピーク(図2におけるピークP0)を用いて横軸を較正した。
≪チタンめっき部材の製造≫
次に得られたチタンめっき用電解質の溶融塩をめっき浴として用いて、以下の手順でチタンめっき部材を製造した。以下の工程は、Arガス(98.3%以上100%以下)の雰囲気にて行った。なお、上記めっき浴は、炉内で十分乾燥させたものを用いた。まず、カソードとして株式会社ニラコ製のNi板である基材を準備した(導電性の表面を有する基材を準備する工程)。その後、上記基材とアノードであるTi板とを上述の溶融塩である上記チタンめっき用電解質に浸漬した(基材と上記基材に対応するアノードとをチタンめっき用電解質に浸漬する工程)。最後に以下の条件にて、カソードである基材とアノードとの間に電圧を印加して、上記基材の表面上にチタンめっき膜を形成した(基材の導電性の表面上にチタンめっき膜を形成する工程)。このときカソードである基材とアノードとの間に印加した電圧は、北斗電工株式会社製のHZ-7000装置を用いて測定した。また、めっきの電流効率は、めっき前後の基材の質量変化から算出した。結果を表1に示す。なお、表1中、「グローブボックス炉」とは、炉全体がArガスで満たされたグローブボックスの内部に備え付けられた炉を意味する。また、「Arフロー炉」とは、密閉された耐熱容器の内部に備え付けられた炉であって、上記耐熱容器に純度99.995%超のArガスを200ml/minの流量で供給している炉を意味する。また、表1中のArガスの濃度は、小数点第2位を四捨五入することで求めた値である。
(測定条件)
測定装置:HZ-7000(北斗電工株式会社製)
カソード:Ni板(株式会社ニラコ製)
アノード:Ti板(株式会社ニラコ製)
参照電極:白金擬似参照電極(株式会社ニラコ製)
温度 :650℃
電流密度:100mA/cm
雰囲気 :Arガス(98.3%以上100%以下)(残部は空気)
Figure 0007207411000001
表1の結果から、比I/Iが0.13以下であるチタンめっき用電解質を溶融塩のめっき浴として用いてチタンめっきを行った場合、電流効率が85%以上であり良好なめっき膜が形成されていることが示唆された。
また、表1の結果から、チタンめっき用電解質を評価するための基準強度比を0.01以上0.13以下の範囲の値から選び、設定できると判断した。すなわち、上記平均強度Iと上記平均強度Iとの比I/Iが、当該基準強度比以下である場合、当該チタンめっき用電解質はチタンめっき用の溶融塩として良好な電解質であると判定することができる。
以上のように本発明の実施形態及び実施例について説明を行なったが、上述の各実施形態及び各実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (6)

  1. フッ化リチウム、塩化リチウム及びチタン(III)イオンを含むチタンめっき用電解質の評価方法であって、
    XAFS法を用いて、前記チタンめっき用電解質の、4968eV以上4969eV以下の範囲におけるX線吸収の平均強度I及び4983eV以上4984eV以下の範囲におけるX線吸収の平均強度Iを測定する工程と、
    前記平均強度Iと前記平均強度Iとの比I/Iを、基準強度比と比較する工程と、
    前記比I/Iが、前記基準強度比以下である場合、前記チタンめっき用電解質はチタンめっき用の溶融塩として良好な電解質であると判定する工程とを含む、チタンめっき用電解質の評価方法。
  2. 前記基準強度比は、0.01以上0.13以下の範囲の値から選ばれる、請求項1に記載のチタンめっき用電解質の評価方法。
  3. 前記平均強度I及び前記平均強度Iを測定する工程は、前記チタンめっき用電解質を熱可塑性樹脂のフィルムで封止した状態で前記平均強度Iと前記平均強度Iとを測定することを含む、請求項1又は請求項2に記載のチタンめっき用電解質の評価方法。
  4. 前記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン又は熱可塑性ポリイミドを含む、請求項3に記載のチタンめっき用電解質の評価方法。
  5. フッ化リチウム、塩化リチウム及びチタン(III)イオンを含むチタンめっき用電解質を、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のチタンめっき用電解質の評価方法によって評価する工程と、
    前記評価する工程において、チタンめっき用の溶融塩として良好な電解質であると判定された前記チタンめっき用電解質を準備する工程と、
    導電性の表面を有する基材と前記基材に対応するアノードとを、前記チタンめっき用電解質に浸漬する工程であって、前記チタンめっき用電解質は溶融している、工程と、
    前記基材と前記アノードとの間に電圧を印加して、前記基材の前記導電性の表面上にチタンめっき膜を形成する工程と、を含むチタンめっき部材の製造方法。
  6. 前記導電性の表面は、Ni、Fe、Cu、Mo、W、カーボン及びステンレス鋼からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項5に記載のチタンめっき部材の製造方法。
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