JP2005023384A - めっき用基材 - Google Patents
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Abstract
【課題】用途に合わせて、めっき材との密着性を適切に調整することができるめっき用基材を提供することにあり、特に半導体およびプリント配線板分野のような電子部品用途に好適なめっき用基材を提供する。
【解決手段】十点平均粗さRzが3.5μm以下の金属基材の表面に乾式成膜層が形成されためっき用基材において、前記乾式成膜層の2μm×2μmの微小領域における算術平均粗さRaが17nm以上100nm以下に制御されためっき用基材であり、好ましくは、乾式成膜層の少なくとも表面層が金属基材の表面に垂直な方向に対して15度以上の方向に成長した柱状組織を有するめっき用基材である。
【選択図】 図1
【解決手段】十点平均粗さRzが3.5μm以下の金属基材の表面に乾式成膜層が形成されためっき用基材において、前記乾式成膜層の2μm×2μmの微小領域における算術平均粗さRaが17nm以上100nm以下に制御されためっき用基材であり、好ましくは、乾式成膜層の少なくとも表面層が金属基材の表面に垂直な方向に対して15度以上の方向に成長した柱状組織を有するめっき用基材である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、めっき材との密着性を制御できるめっき用基材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
めっき製品は多くの工業製品で実用されている。この際、めっき材とめっき用基材の密着性は重要な性質の一つである。通常、めっき材とめっき用基材の密着性を強固にするためには、金属基材自体の表面粗さを化学的、または機械的に大きくして調節することが一般的である。(例えば、特許文献1参照)
ところで、めっき製品を応用した技術として半導体およびプリント配線板分野がある。この半導体およびプリント配線板分野のような電子部品用途においては、めっき製品が配線、接続端子など広く使用されており、強固な密着性を必要とする製品の他に、適度な密着性に制御した製品の応用もなされている。
例えば、電子部品用途の形態としての一例を記すと、めっき用基材に析出させためっき材にエッチング等で微細回路を形成しておき、加熱プレスにより絶縁体に貼り付けた後、めっき用基材を引きはがしてめっき材と分離することができれば、容易に微細回路の配線を得ることができ、配線の高密度化に有効である。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−73174号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に示したような手法で密着性を制御した場合は、半導体およびプリント配線板分野のような電子部品用途の場合、微細回路をエッチングで形成して使用するときに、密着性のばらつきによりはがれが生じる部分と強固に密着してはがれない部分が存在することになる。
しかも、表面粗さが大きい金属基材にめっきする場合、ピンホールなどの欠陥ができやすく、めっき性を著しく阻害してしまう。特に、めっき材が薄い場合、ピンホールの影響は顕著であり、微細回路を形成するような半導体およびプリント配線板分野のような電子部品用途には使用できない。
本発明の目的は、用途に合わせて、めっき材との密着性を適切に調整することができるめっき用基材を提供することにあり、特に半導体およびプリント配線板分野のような電子部品用途に好適なめっき用基材を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、半導体およびプリント配線板分野のような電子部品用途にも適用可能なめっき用基材の表面粗さおよび材料構成について鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、十点平均粗さRzが3.5μm以下の金属基材の表面に乾式成膜層が形成されためっき用基材において、前記乾式成膜層の2μm×2μmの微小領域における算術平均粗さRaが17nm以上100nm以下に制御されためっき用基材である。
好ましくは、乾式成膜層の少なくとも表面層が金属基材の表面に垂直な方向に対して15度以上の方向に成長した柱状組織を有するめっき用基材である。
さらに好ましくは、乾式成膜層が融点1500K以上の金属でなるめっき用基材である。
そして、さらに好ましくは、乾式成膜層がチタンまたはチタン合金でなるめっき用基材である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の重要な特徴は、図1に示す如く、めっき材(3)との密着性を、金属基材(1)表面に形成する、乾式成膜層(2)の成長を利用して好適な表面粗さに制御しためっき用基材(4)としたことにある。
本発明のめっき用基材は、金属基材自体の粗さによる密着性改善を図るのではなく、金属基材表面に形成する乾式成膜層の粗さを制御することで、特に半導体およびプリント配線板分野のような電子部品用途に好適なめっき用基材としたものである。
そして、本発明のめっき用基材を使用する最大の利点は、めっき材とめっき用基材の密着性を微小領域における表面粗さにより直接的に制御できる点にある。
以下に本発明について詳しく説明する。
【0007】
本発明に用いる金属基材においては、用いる金属基材の十点平均粗さRzを特定の粗さ以下としたものを用いる。この理由の第一は、十点平均粗さRzが3.5μmを超える金属基材を使用すると、めっきの際にピンホールが多く発生してしまい、膜質の悪いめっき材となってしまう。そのため、乾式成膜層を形成する部分の十点平均粗さRzを3.5μm以下にする必要がある。好ましくは、金属基材の十点平均粗さRzが2.0μm以下である。
また、理由の第二としては、十点平均粗さRzが3.5μmを超える金属基材の表面にめっきを施すと、金属基材自体の表面粗さによる投錨効果により引きはがしができなくなる場合が生じ、乾式成膜層の微小領域における表面粗さによる密着強度制御が困難になる。
以上の二つの理由から乾式成膜層を形成する部分の十点平均粗さRzを3.5μm以下と規定した。
【0008】
次に、金属基材上に形成する乾式成膜層の粗さの限定理由を以下に記す。
乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaが17nm未満である場合、めっきの密着性が悪く、めっき後の洗浄工程や例えばめっき材に回路を形成するエッチング工程で自然にめっき用基材からはがれてしまう。
一方、乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaを大きくして、密着性を強固にすることは可能であるが、本発明の手法で100nmを超える微小領域における算術平均粗さの実現は生産性を考慮すると困難である。そのため、乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaは17nm以上100nm以下に制御する必要がある。
【0009】
なかでも、めっき材とめっき用基材の引きはがし分離ができるように制御するためには、乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaを17nm以上36nm未満とすると良い。一方、強固な密着を得るためには、36nm以上100nm以下とすれば良い。
このように乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaを、引きはがし分離目的や、強固な密着を目的とするものに応じて適宜調整することができるのも本発明の特徴の一つであり、電子部品用途のめっき用基材として好適とすることができる。
なお、密着強度は例えば、エッチングによるパターニングの後、絶縁体にめっき材を貼りつけて、引きはがし分離する用途に用いる場合、0.01N/mm以上0.8N/mm以下に制御することが好ましい。
【0010】
上述の本発明でいう微小領域とは、表面粗さを測定する際に、金属基材自体の大きな周期の凹凸の影響を小さくできる微小領域を指し、微小領域の一辺が凹凸の平均間隔Sm以下となるように設定すると良い。
具体的には、金属基材表面の十点平均粗さRz:3.5μm以下の平滑な基材では2μm×2μm程度の領域である。そのため、本発明では2μm×2μmの面積について測定した算術平均粗さを微小領域における算術平均粗さRaと定義する。
なお、微小領域での測定を規定する理由は、均質で細かな密着性の制御を可能とすることにあり、この算術平均粗さRaを測定する方法としては原子間力顕微鏡を用いて測定すると良い。
【0011】
また、本発明でいう乾式成膜層とは、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法などのPVD(Physical_Vapor_Deposition:物理蒸着)法やCVD(Chemical_Vapor_Deposition:化学蒸着)法により形成された膜を指している。
乾式成膜法のなかでも特に、スパッタ法により形成した膜は、膜の緻密さ、下地となる金属基材との密着性に優れており、好適である。
【0012】
乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaは、前述した通り、組織の成長を利用して形成するものであって、例えば、膜厚の増減により変化させることが可能であるが、生産性に影響を及ぼす。そのため、好ましくは、乾式成膜層を金属基材に対して斜め入射により成膜させることで、乾式成膜層の表面層の柱状組織が傾斜した形状とすることができるため、比較的薄い膜厚でも適度なRaを実現できるため好ましい。
特に、乾式成膜層の少なくとも表面層が金属基材の表面に垂直な方向に対して15度以上の方向に成長した柱状組織を有していると効果的である。
なお、15度以上の方向に成長した柱状組織の確認は、断面組織観察で確認することが可能であり、少なくとも表面層というのは、例えば図3の断面顕微鏡写真で説明すれば、乾式成膜層厚みの2/3の位置から最表面までの範囲を指す。
【0013】
また、乾式成膜層は融点が1500K以上の金属で構成すると、結晶が柱状に成長する傾向にあり、乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaを制御するのに好適である。
融点1500K以上の金属はチタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、オスミウム、イリジウム、白金などの金属または合金がある。
中でも、チタンまたはチタン合金は特に柱状に結晶が成長する傾向が強く、乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaを制御しやすい上、さらに、耐食性に優れているため、めっき液による浸食も受け難く、密着性に及ぼす投錨効果の影響を大きくできる。そのため、チタンまたはチタン合金は乾式成膜層を構成する材質として好適である。
【0014】
例えば、電子部品用途として、めっき材にエッチングにより回路を形成した後、それを絶縁体に貼りつけて引きはがしによりめっき用基材から分離させて使用する場合、めっき材は配線として使用されるため、一般的に銅が使用される。このとき、金属基材は剛性があり、リサイクル性に優れ、配線材の汚染物質となり難いものが良く、配線材と同質の銅または銅合金が好ましく、この場合の金属基材の厚さは25〜250μmであれば良い。
本発明のめっき用基材の具体的な材質は、例えば乾式成膜層はチタンまたはチタン合金、金属基材は銅または銅合金が好ましい。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
(実施例1)
本発明のめっき用基材をサブトラクティブ配線転写用として作製した。金属基材として厚さ70μmの電解銅箔を用いた。めっきを施す表面の十点平均粗さRzは1.97μmであった。
金属基材の上にスパッタ法および真空蒸着法にて0.1〜1.0μmの範囲で膜厚を変えて、チタン(乾式成膜層)を成膜して、めっき用基材とした。
これらのめっき用基材に硫酸銅めっき浴を用いて、電気銅めっきを厚さ9μmとなるように施した後、塩化第二鉄溶液スプレーエッチングにより、最小ライン/スペース:120μm/90μmの配線回路を形成し、加熱プレスによりガラス−エポキシ樹脂に貼りつけて配線回路をめっき用基材から分離させる実験を行った。めっきおよび引きはがし実験の結果を表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
表1に示す(S1,S2,S3)はスパッタ法、(V1,V2,V3)は真空蒸着法により成膜されている。
なお、スパッタ法は金属基材に対して垂直に入射させて成膜したのに対して、真空蒸着法は最初金属基材が蒸着源に垂直の位置関係から成膜を開始し、連続的に斜め入射成分が増すように金属基板を搬送しながら成膜した。
乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaは原子間力顕微鏡を用いて、2μm×2μmの範囲で観察し測定した。図2にV2の原子顕微鏡の観察例を示す。
【0018】
表1に示すめっき性は、めっき、洗浄、エッチング工程後に、めっき材が金属基材からはがれがないことを判定基準とした。
また、引きはがしはガラス−エポキシ樹脂に加熱プレスで貼り付け後、エッチングで形成した回路が樹脂に埋め込まれたまま、めっき用基材から分離できることを判定基準とした。
本発明のめっき用基材であるS2,S3,V2,V3の乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaは、それぞれ17.4nm、33.4nm、24.9nm、36.8nmとなっており、良好なめっき性が得られた。また、S2、S3、V2については引きはがしが可能であった。V3については、ひきはがし不可で強固な密着性が得られた。
一方、比較例として示したS1、V1は乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaがともに15.2nmと小さく、めっき後の洗浄工程でめっき材とめっき用基材の自然剥離が生じた。
【0019】
さらに表1の結果から、連続的に斜め入射成分が増すように金属基板を搬送しながら成膜した真空蒸着法と、垂直に入射させて成膜したスパッタ法とを比較した場合、乾式成膜層の厚みが同じであっても、微小領域における算術平均粗さは斜め入射による真空蒸着法を適用したものの方が粗くなっていることも分かる。真空蒸着法で形成した乾式成膜層の表面層は金属基材の表面に垂直な方向に対して30度の方向に成長した柱状組織を呈していた。図3にV3の断面透過電子顕微鏡の観察例を示す。
【0020】
(実施例2)
次に、本発明のめっき用基材をセミアディティブ配線転写用として作製した。
金属基材として厚さ125μmの圧延無酸素銅箔を用いた。めっきを施す表面の十点平均粗さRzは0.56μmであった。金属基材の上にスパッタ法にて膜厚0.8μmで、チタン(乾式成膜層)を成膜して、めっき用基材とした。
得られためっき用基材の乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaは24.7nmで、めっき性は良好で、引きはがし可能であった。
このめっき用基材に硫酸銅めっき浴を用いて、電気銅めっきを厚さ3μmとなるように施した後、さらにめっき材の上に最小ライン/スペース:40μm/40μmの配線回路をめっきし、厚さ3μmのめっき材の露出部分を硫酸−過酸化水素系フラッシュエッチングにより除去し、加熱プレスによりガラス−エポキシ樹脂に貼り付けして配線回路をめっき用基材から分離させた。
図4にフラッシュエッチング後めっき基材上の配線の一例を示すように、電子部品用途に好適であることがわかる。
【0021】
以上のように、本発明の積層箔を用いれば、容易に良好な基板を得ることができ、特に半導体およびプリント配線板分野のような電子部品用途に好適である。なお、本発明の積層箔の使用方法は上述の実施例に示した用途に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、用途に合わせて、めっき材との密着性を適切に調整することができるめっき用基材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のめっき用基材の一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明のめっき用基材の乾式成膜層表面の一例を示す原子間力顕微鏡像である。
【図3】本発明のめっき用基材の乾式成膜層断面の一例を示す透過電子顕微鏡像である。
【図4】本発明のめっき用基材を用いて形成した配線回路の一例を示す走査電子顕微鏡像である。
【符号の説明】
1.金属基材、2.乾式成膜層、3.めっき材、4.めっき用基材
【発明の属する技術分野】
本発明は、めっき材との密着性を制御できるめっき用基材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
めっき製品は多くの工業製品で実用されている。この際、めっき材とめっき用基材の密着性は重要な性質の一つである。通常、めっき材とめっき用基材の密着性を強固にするためには、金属基材自体の表面粗さを化学的、または機械的に大きくして調節することが一般的である。(例えば、特許文献1参照)
ところで、めっき製品を応用した技術として半導体およびプリント配線板分野がある。この半導体およびプリント配線板分野のような電子部品用途においては、めっき製品が配線、接続端子など広く使用されており、強固な密着性を必要とする製品の他に、適度な密着性に制御した製品の応用もなされている。
例えば、電子部品用途の形態としての一例を記すと、めっき用基材に析出させためっき材にエッチング等で微細回路を形成しておき、加熱プレスにより絶縁体に貼り付けた後、めっき用基材を引きはがしてめっき材と分離することができれば、容易に微細回路の配線を得ることができ、配線の高密度化に有効である。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−73174号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に示したような手法で密着性を制御した場合は、半導体およびプリント配線板分野のような電子部品用途の場合、微細回路をエッチングで形成して使用するときに、密着性のばらつきによりはがれが生じる部分と強固に密着してはがれない部分が存在することになる。
しかも、表面粗さが大きい金属基材にめっきする場合、ピンホールなどの欠陥ができやすく、めっき性を著しく阻害してしまう。特に、めっき材が薄い場合、ピンホールの影響は顕著であり、微細回路を形成するような半導体およびプリント配線板分野のような電子部品用途には使用できない。
本発明の目的は、用途に合わせて、めっき材との密着性を適切に調整することができるめっき用基材を提供することにあり、特に半導体およびプリント配線板分野のような電子部品用途に好適なめっき用基材を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、半導体およびプリント配線板分野のような電子部品用途にも適用可能なめっき用基材の表面粗さおよび材料構成について鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、十点平均粗さRzが3.5μm以下の金属基材の表面に乾式成膜層が形成されためっき用基材において、前記乾式成膜層の2μm×2μmの微小領域における算術平均粗さRaが17nm以上100nm以下に制御されためっき用基材である。
好ましくは、乾式成膜層の少なくとも表面層が金属基材の表面に垂直な方向に対して15度以上の方向に成長した柱状組織を有するめっき用基材である。
さらに好ましくは、乾式成膜層が融点1500K以上の金属でなるめっき用基材である。
そして、さらに好ましくは、乾式成膜層がチタンまたはチタン合金でなるめっき用基材である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の重要な特徴は、図1に示す如く、めっき材(3)との密着性を、金属基材(1)表面に形成する、乾式成膜層(2)の成長を利用して好適な表面粗さに制御しためっき用基材(4)としたことにある。
本発明のめっき用基材は、金属基材自体の粗さによる密着性改善を図るのではなく、金属基材表面に形成する乾式成膜層の粗さを制御することで、特に半導体およびプリント配線板分野のような電子部品用途に好適なめっき用基材としたものである。
そして、本発明のめっき用基材を使用する最大の利点は、めっき材とめっき用基材の密着性を微小領域における表面粗さにより直接的に制御できる点にある。
以下に本発明について詳しく説明する。
【0007】
本発明に用いる金属基材においては、用いる金属基材の十点平均粗さRzを特定の粗さ以下としたものを用いる。この理由の第一は、十点平均粗さRzが3.5μmを超える金属基材を使用すると、めっきの際にピンホールが多く発生してしまい、膜質の悪いめっき材となってしまう。そのため、乾式成膜層を形成する部分の十点平均粗さRzを3.5μm以下にする必要がある。好ましくは、金属基材の十点平均粗さRzが2.0μm以下である。
また、理由の第二としては、十点平均粗さRzが3.5μmを超える金属基材の表面にめっきを施すと、金属基材自体の表面粗さによる投錨効果により引きはがしができなくなる場合が生じ、乾式成膜層の微小領域における表面粗さによる密着強度制御が困難になる。
以上の二つの理由から乾式成膜層を形成する部分の十点平均粗さRzを3.5μm以下と規定した。
【0008】
次に、金属基材上に形成する乾式成膜層の粗さの限定理由を以下に記す。
乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaが17nm未満である場合、めっきの密着性が悪く、めっき後の洗浄工程や例えばめっき材に回路を形成するエッチング工程で自然にめっき用基材からはがれてしまう。
一方、乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaを大きくして、密着性を強固にすることは可能であるが、本発明の手法で100nmを超える微小領域における算術平均粗さの実現は生産性を考慮すると困難である。そのため、乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaは17nm以上100nm以下に制御する必要がある。
【0009】
なかでも、めっき材とめっき用基材の引きはがし分離ができるように制御するためには、乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaを17nm以上36nm未満とすると良い。一方、強固な密着を得るためには、36nm以上100nm以下とすれば良い。
このように乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaを、引きはがし分離目的や、強固な密着を目的とするものに応じて適宜調整することができるのも本発明の特徴の一つであり、電子部品用途のめっき用基材として好適とすることができる。
なお、密着強度は例えば、エッチングによるパターニングの後、絶縁体にめっき材を貼りつけて、引きはがし分離する用途に用いる場合、0.01N/mm以上0.8N/mm以下に制御することが好ましい。
【0010】
上述の本発明でいう微小領域とは、表面粗さを測定する際に、金属基材自体の大きな周期の凹凸の影響を小さくできる微小領域を指し、微小領域の一辺が凹凸の平均間隔Sm以下となるように設定すると良い。
具体的には、金属基材表面の十点平均粗さRz:3.5μm以下の平滑な基材では2μm×2μm程度の領域である。そのため、本発明では2μm×2μmの面積について測定した算術平均粗さを微小領域における算術平均粗さRaと定義する。
なお、微小領域での測定を規定する理由は、均質で細かな密着性の制御を可能とすることにあり、この算術平均粗さRaを測定する方法としては原子間力顕微鏡を用いて測定すると良い。
【0011】
また、本発明でいう乾式成膜層とは、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法などのPVD(Physical_Vapor_Deposition:物理蒸着)法やCVD(Chemical_Vapor_Deposition:化学蒸着)法により形成された膜を指している。
乾式成膜法のなかでも特に、スパッタ法により形成した膜は、膜の緻密さ、下地となる金属基材との密着性に優れており、好適である。
【0012】
乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaは、前述した通り、組織の成長を利用して形成するものであって、例えば、膜厚の増減により変化させることが可能であるが、生産性に影響を及ぼす。そのため、好ましくは、乾式成膜層を金属基材に対して斜め入射により成膜させることで、乾式成膜層の表面層の柱状組織が傾斜した形状とすることができるため、比較的薄い膜厚でも適度なRaを実現できるため好ましい。
特に、乾式成膜層の少なくとも表面層が金属基材の表面に垂直な方向に対して15度以上の方向に成長した柱状組織を有していると効果的である。
なお、15度以上の方向に成長した柱状組織の確認は、断面組織観察で確認することが可能であり、少なくとも表面層というのは、例えば図3の断面顕微鏡写真で説明すれば、乾式成膜層厚みの2/3の位置から最表面までの範囲を指す。
【0013】
また、乾式成膜層は融点が1500K以上の金属で構成すると、結晶が柱状に成長する傾向にあり、乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaを制御するのに好適である。
融点1500K以上の金属はチタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、オスミウム、イリジウム、白金などの金属または合金がある。
中でも、チタンまたはチタン合金は特に柱状に結晶が成長する傾向が強く、乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaを制御しやすい上、さらに、耐食性に優れているため、めっき液による浸食も受け難く、密着性に及ぼす投錨効果の影響を大きくできる。そのため、チタンまたはチタン合金は乾式成膜層を構成する材質として好適である。
【0014】
例えば、電子部品用途として、めっき材にエッチングにより回路を形成した後、それを絶縁体に貼りつけて引きはがしによりめっき用基材から分離させて使用する場合、めっき材は配線として使用されるため、一般的に銅が使用される。このとき、金属基材は剛性があり、リサイクル性に優れ、配線材の汚染物質となり難いものが良く、配線材と同質の銅または銅合金が好ましく、この場合の金属基材の厚さは25〜250μmであれば良い。
本発明のめっき用基材の具体的な材質は、例えば乾式成膜層はチタンまたはチタン合金、金属基材は銅または銅合金が好ましい。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
(実施例1)
本発明のめっき用基材をサブトラクティブ配線転写用として作製した。金属基材として厚さ70μmの電解銅箔を用いた。めっきを施す表面の十点平均粗さRzは1.97μmであった。
金属基材の上にスパッタ法および真空蒸着法にて0.1〜1.0μmの範囲で膜厚を変えて、チタン(乾式成膜層)を成膜して、めっき用基材とした。
これらのめっき用基材に硫酸銅めっき浴を用いて、電気銅めっきを厚さ9μmとなるように施した後、塩化第二鉄溶液スプレーエッチングにより、最小ライン/スペース:120μm/90μmの配線回路を形成し、加熱プレスによりガラス−エポキシ樹脂に貼りつけて配線回路をめっき用基材から分離させる実験を行った。めっきおよび引きはがし実験の結果を表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
表1に示す(S1,S2,S3)はスパッタ法、(V1,V2,V3)は真空蒸着法により成膜されている。
なお、スパッタ法は金属基材に対して垂直に入射させて成膜したのに対して、真空蒸着法は最初金属基材が蒸着源に垂直の位置関係から成膜を開始し、連続的に斜め入射成分が増すように金属基板を搬送しながら成膜した。
乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaは原子間力顕微鏡を用いて、2μm×2μmの範囲で観察し測定した。図2にV2の原子顕微鏡の観察例を示す。
【0018】
表1に示すめっき性は、めっき、洗浄、エッチング工程後に、めっき材が金属基材からはがれがないことを判定基準とした。
また、引きはがしはガラス−エポキシ樹脂に加熱プレスで貼り付け後、エッチングで形成した回路が樹脂に埋め込まれたまま、めっき用基材から分離できることを判定基準とした。
本発明のめっき用基材であるS2,S3,V2,V3の乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaは、それぞれ17.4nm、33.4nm、24.9nm、36.8nmとなっており、良好なめっき性が得られた。また、S2、S3、V2については引きはがしが可能であった。V3については、ひきはがし不可で強固な密着性が得られた。
一方、比較例として示したS1、V1は乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaがともに15.2nmと小さく、めっき後の洗浄工程でめっき材とめっき用基材の自然剥離が生じた。
【0019】
さらに表1の結果から、連続的に斜め入射成分が増すように金属基板を搬送しながら成膜した真空蒸着法と、垂直に入射させて成膜したスパッタ法とを比較した場合、乾式成膜層の厚みが同じであっても、微小領域における算術平均粗さは斜め入射による真空蒸着法を適用したものの方が粗くなっていることも分かる。真空蒸着法で形成した乾式成膜層の表面層は金属基材の表面に垂直な方向に対して30度の方向に成長した柱状組織を呈していた。図3にV3の断面透過電子顕微鏡の観察例を示す。
【0020】
(実施例2)
次に、本発明のめっき用基材をセミアディティブ配線転写用として作製した。
金属基材として厚さ125μmの圧延無酸素銅箔を用いた。めっきを施す表面の十点平均粗さRzは0.56μmであった。金属基材の上にスパッタ法にて膜厚0.8μmで、チタン(乾式成膜層)を成膜して、めっき用基材とした。
得られためっき用基材の乾式成膜層の微小領域における算術平均粗さRaは24.7nmで、めっき性は良好で、引きはがし可能であった。
このめっき用基材に硫酸銅めっき浴を用いて、電気銅めっきを厚さ3μmとなるように施した後、さらにめっき材の上に最小ライン/スペース:40μm/40μmの配線回路をめっきし、厚さ3μmのめっき材の露出部分を硫酸−過酸化水素系フラッシュエッチングにより除去し、加熱プレスによりガラス−エポキシ樹脂に貼り付けして配線回路をめっき用基材から分離させた。
図4にフラッシュエッチング後めっき基材上の配線の一例を示すように、電子部品用途に好適であることがわかる。
【0021】
以上のように、本発明の積層箔を用いれば、容易に良好な基板を得ることができ、特に半導体およびプリント配線板分野のような電子部品用途に好適である。なお、本発明の積層箔の使用方法は上述の実施例に示した用途に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、用途に合わせて、めっき材との密着性を適切に調整することができるめっき用基材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のめっき用基材の一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明のめっき用基材の乾式成膜層表面の一例を示す原子間力顕微鏡像である。
【図3】本発明のめっき用基材の乾式成膜層断面の一例を示す透過電子顕微鏡像である。
【図4】本発明のめっき用基材を用いて形成した配線回路の一例を示す走査電子顕微鏡像である。
【符号の説明】
1.金属基材、2.乾式成膜層、3.めっき材、4.めっき用基材
Claims (4)
- 十点平均粗さRzが3.5μm以下の金属基材の表面に乾式成膜層が形成されためっき用基材において、前記乾式成膜層の2μm×2μmの微小領域における算術平均粗さRaが17nm以上100nm以下に制御されたことを特徴とするめっき用基材。
- 乾式成膜層の少なくとも表面層が金属基材の表面に垂直な方向に対して15度以上の方向に成長した柱状組織を有することを特徴とする請求項1に記載のめっき用基材。
- 乾式成膜層が融点1500K以上の金属でなる請求項1または2に記載のめっき用基材。
- 乾式成膜層がチタンまたはチタン合金でなる請求項3に記載のめっき用基材。
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2003
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