JP2005262707A - 銅張り積層フィルムおよびフレキシブル回路基板用材料 - Google Patents

銅張り積層フィルムおよびフレキシブル回路基板用材料 Download PDF

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Abstract

【課題】
従来の技術を考察して、熱処理前後で実用に耐える十分な密着力を確保できるフレキシブル回路基板用材料に好適な銅張り積層フィルムを提供する。
【解決手段】
有機フィルム層上に、第1金属層、第2金属層および銅層がこの順に積層された金属積層フィルムであって、大気中150℃の温度で168時間の熱処理後、該第1金属層と該有機フィルム層の界面から剥離したとき、該第1金属層の剥離界面から該第2金属層側に向かって深さ4nmまでの領域に含まれる第2金属層構成元素濃度の最大値が10atomic%以下であることを特徴とする銅張り積層フィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリイミドフィルム等の有機フィルムと金属薄膜で構成されるフレキシブル回路基板用材料に好適な銅張り積層フィルムに関するものである。
近年、携帯電話、ディスプレイおよびデジタルカメラ等の電子機器の小型化、軽量化および薄型化に伴いフレキシブル回路基板の需要が急激に伸びている。その理由は、フレキシブル基板は折り曲げ性が良く軽量であることや、半導体の表面実装に十分な耐熱性を有していることが、これらの電子機器を構成する上で大変重要な要素となっているからである。
これらの増加しつつあるフレキシブル回路基板の用途の中でも、ディスプレイ用の液晶ドライバーの実装用フレキシブル回路基板に特に求められていることは、耐折れ性・軽量・高耐熱性のみならず微細な回路パターンを作製できることである。これは、ディスプレイの高精細化と共に配線密度が上昇したためである。この配線密度の上昇のため、従来用いられていたTAB(テープ オートメーテッド ボンディング/Tape Automated Bonding)からCOF(チップ オン フィルム/Chip On Film)へと移行してきているが、COFの場合は、配線が細くなる上に、テープの耐熱性が要求されることにより、材料の耐熱性が更に要求されている。
従来、フレキシブル回路基板用材料に用いられてきたものとして、ポリイミドフィルムに、接着剤を介して銅箔を張り積層させた3層材が知られている。しかしながら、この3層材の場合は、接着剤を介することによる耐熱性の問題や、銅箔の厚さが一般的に35μm、18μmおよび12μmといずれも10μm以上の厚さで提供されているため、微細な配線パターンの作製が困難である。また、接着剤の耐熱性が低いため、高温の熱負荷がかかるCOF用途に対しては適さない。これに対して、耐熱性の低い接着剤を介さないものとして、2層材があげられる。この2層材と呼ばれるもののなかには、大きく分けてキャスティング法とラミネート法とメッキ法の3つの方法が挙げられる。
キャスティング法は、銅箔にポリイミドを塗布硬化させて積層体を作製する方法であり、これは、高密着と高耐熱性を備えているが、銅箔としては3層材と同様、厚さが10μm以上のものしか提供されておらず、微細な配線パターン作製時のエッチング性に問題がある。また、銅箔に粗面処理が施されており、エッチング時のポリイミド層の表面の凹凸が大きく、金属箔のエッチングが不十分になる等の問題も存在する。
次にラミネート法は、ポリイミドフィルム上にポリイミド系接着剤を塗工し、その上に銅箔を高温でラミネートし、熱硬化させて2層銅張り積層板を作成する方法である。この方法では、銅箔と基材を両方選択可能であるが、これも銅箔による厚さの制限があり、キャスティング法と同様の利点と欠点が存在する。
これらの方法に対して、銅箔の厚さ等の制限を受けずに基材に積層ができる方法としてメッキ法が知られている。メッキ法は、ポリイミドフィルム表面にスパッタ法で代表される乾式メッキ法を用いて導電層を形成し、次に主として電解メッキを用いた湿式メッキ法で導体層の厚みを調節する。この方法は、銅箔層の厚みを自由に調節することができ、微細配線パターン形成に有利であるが、基材のポリイミドフィルムと導体層の界面が平滑であるために、キャスティング法やラミネート法と異なり基材に導体層が食い込むことによるアンカー効果が期待できず、密着力とくに熱処理後の密着力が劣るという問題がある。このため、メッキ法の耐熱密着力を向上させる方法として、以下のような方法が知られている。
まず、ポリイミドフィルムと金属薄膜で構成されるフレキシブル回路基板用材料に関し、金属薄膜として金属酸化膜を形成したものが提案されている(特許文献1と特許文献2参照)。しかしながらこの方法では、作成が困難であり通常の大気中でも銅箔が容易に剥離してしまう問題があることや、熱処理後の密着力がでないという課題が挙げられる。
また別に、基材の密着力を向上させる方法として、基材であるポリイミドフィルム表面に、微細な凹凸を形成する方法が提案されている(特許文献3参照)。しかしながらこの方法では、一般的に耐熱性の密着力の加速試験として用いられている大気中150℃/168時間の熱処理後の密着力が、実際には大きく低下している等の問題がある。さらには、モリブデン、タングステン、チタンおよびマンガンなどの金属を挿入する方法などが提案されている(特許文献4参照)。しかしながらこの方法では、実際のパターン作製過程で核付け層をエッチングできない場合があることや、加湿下での耐熱試験や絶縁信頼性を達成できない等の問題がある。また別に、基材の表面に改質層を形成して耐熱密着力を向上させる方法も提案されているが(特許文献5参照)、この方法では、改質層の化学的状態が安定でなく第1金属層または第2金属層の金属により改質層自体が分解され、逆に耐熱試験後の密着力が低下してしまい、実適用は困難である。
特開平8−139422号公報 特開平9−201900号公報 特開平2002−57414号公報 特開平7−197239号公報 特開2003−334890号公報
そこで本発明の目的は、従来の技術を考察して、熱処理前後で実用に耐える十分な密着力を確保できるフレキシブル回路基板用材料に好適な銅張り積層フィルムを提供することある。
すなわち本発明の銅張り積層フィルムは、有機フィルム層上に、第1金属層、第2金属層および銅層がこの順に積層された金属積層フィルムであって、大気中150℃の温度で168時間の熱処理後、該第1金属層と該有機フィルム層の界面から剥離したとき、該第1金属層の剥離界面から該第2金属層側に向かって深さ4nmまでの領域に含まれる第2金属層構成元素濃度の最大値が10atomic%以下であることを特徴とする銅張り積層フィルムである。
また、本発明の好ましい態様によれば、上記有機フィルムがポリイミドからなり、上記第2金属層構成元素が銅であり、上記第1金属層がニクロム合金からなり、さらに、上記第1金属層が窒素を含むことが挙げられる。また、本発明の好ましい態様によれば、上記の第1金属層が該第1金属層形成後に、窒素ガスを用いたプラズマにより処理されてなる層であることが挙げられる。また、本発明の好ましい態様によれば、銅層がメッキ法で形成された銅層であることが挙げられる。
そして本発明の銅張り積層フィルムは、フレキシブル回路基板用材料に好適に用いられる。
本発明によれば、銅張り積層フィルムにおいて、熱処理後の密着力の低下を低減し、かつ高耐熱を付与することができる。本発明では銅層形成の銅張りにはメッキ法を利用することができ、この銅張り積層フィルムは、特にフレキシブル回路基板用材料に好適である。
本発明の銅張り積層フィルムは、有機フィルム層上に、第1金属層、第2金属層および銅層がこの順に積層され形成された金属積層フィルムを基本構成とするものである。本発明の銅張り積層フィルムの基本構成を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の銅張り積層フィルムを例示説明するための概略断面図である。図1において、基材である有機フィルム層1の上に、好ましくは金属核付層として機能する第1金属層2としての金属層が積層される。その上には、電解メッキのときに電流の導通用に好ましくは銅を主体とした導通層である第2金属層3が積層される。その上には、回路配線を実際に形成するための電気導通層である銅層4が好ましくはメッキ法で形成されている。
本発明の銅張り積層フィルムに用いられる有機フィルム層(基材)としては、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミドまた最近開発されている種種のLCP等からなるフィルムが挙げられるが、中でも、ポリイミドからなるフィルムをが好適である。これは、ポリイミドが耐熱性において他の有機フィルムに比して格段に高い能力を持っていおり、高温がかかる半導体ボンディング時にも基材としてその高温に耐えうるからである。ポリイミドについて、具体的な製品名としては、カプトンV、カプトンE、カプトンEN、カプトンH(「カプトン」は東レ・デュポン(株)社の登録商標)、ユーピレックスS(「ユーピレックス」は宇部興産(株)社の登録商標)、アピカルAH、およびアピカルNPI(「アピカル」は鐘淵化学(株)社の登録商標)が挙げられる。
また、有機フィルム層の厚みは、望ましくは1μm〜300μmの範囲である。COF用途としては厚さは薄いことが望ましく、4μm〜50μmの範囲が好ましい。これはフィルムの弾性を適度にすることや、コスト削減、TABのボンダの使用時にはフィルムの透明性が必要になるからである。この場合、透明性はヘーズ値で30%以下となることが望ましい。
また、本発明では有機フィルム層の表面処理としてプラズマ処理を採用することができる。これは、常態での第1金属層と有機フィルム層の密着力を向上させるためである。密着力を向上させるために考えられるその他の処理としては、有機フィルム層の表面を酸化剤、アルカリあるいは酸等の薬液により処理する方法、カップリング剤等を用いて表面を処理する方法、イオンエッチングを行う方法、イオン打ち込みを行う方法、およびバフやサンドブラストなど物理的に表面を荒らす方法などが挙げられる。また、密着力を向上させるために異なった処理を組み合わせて用いることも可能である。
本発明では有機フィルム層の上に第1金属層を積層させるが、これは第2金属層と有機フィルム層の密着が悪い場合に必要となる。本発明では、この第1金属層と第2金属層を合わせて金属核付層と呼ぶことがある。この金属核付層の構成としては、第1金属層にニクロム合金を用い、第2金属層に銅を用いることができる。金属核付層の形成方法は、金属を有機フィルム層上に積層できればどのような方法を用いてもかまわないが、有機フィルム層と金属の密着力を確保するためには、スパッタ法を採用することが好ましい。これは、スパッタ法を用いることにより、元来金属との密着力確保しにくいポリイミドフィルム等の有機フィルム層と金属層の密着力が向上できるのみならず、表面の被覆膜の均一性や被覆効果も良好であり、蒸着法等に比べフィルム表面の熱履歴を減少させ、熱収縮による有機フィルム層のしわを低減できるため搬送性にも良い効果がある。スパッタ法以外の方法として、蒸着やイオンプレーティング、CVD法、および湿式の無電界化学メッキなどが挙げられる。
本発明において用いられる第1金属層の組成としては、例えば、ニッケル、クロム、モリブデン、タンタル、タングステン、マンガン、チタン、バナジウム、およびこれらの合金を用いることができる。本発明で好ましく用いられる組成は、ニッケル中に、クロム、モリブデン、タンタル、タングステン、マンガン、チタンおよびバナジウムのいずれかを望ましくは2%以上、より好ましくは10%以上含む合金である。さらに望ましい組成は、ニクロム合金である。合金の主体となる金属としては、有機フィルム層との密着性やエッチング性を考慮して、ニッケルを用いることが好ましい。有機フィルム層へ第1金属層を通して第2金属層の金属の拡散が起きないようにするために、第1金属層がバリア層として有効に働くようにすることが好ましい。具体的な方法としては、例えば、第1金属層に上記の合金を設けること、また、第1金属層の積層速度を低速にして大きな結晶を積層させることや、第1金属層を銅が拡散を起こさないように粒界ができないような組成にする方法等が考えられる。これは、クロム、バナジウム、モリブデン、タンタル、タングステン、マンガンおよびチタンの元素が、第2金属層の金属拡散を抑制することに加え、第1金属層の結晶を大きくし粒界をできるだけ減らすことで結晶粒界を通じて、第2金属層の元素が有機フィルム層と第1金属層の界面に析出することを減らすためである。第1金属層の有機フィルム層側界面に第2金属層の金属が析出すると、プラズマ処理されたポリイミドの表面を劣化させ、第1金属層との密着を悪化させるため、密着力が大きく低下する。
そのため、大気中150℃の温度で168時間の熱処理後に、金属核付層(第1金属層と第2金属層)および銅層を有機フィルム層から剥離したときに、金属核付層の有機フィルム側の表面に第2金属層構成元素が移動していないことが望ましい。
これは後述するオージェ電子分析(AES)で深さ方向の元素分布を調べた際に、第1金属層の剥離界面から第2金属層側に深さ4nmまでの領域に含まれる第2金属層構成元素濃度の最大値が10atomic%以下であることが重要であり、この第2金属層構成元素濃度の最大値は好ましくは7atomic%以下である。
この第2金属層構成元素が第1金属層中を拡散しないような機能を持たせるため、更に具体的な方法として、第1金属層中に窒素を含む層を形成することが望ましい。これは、第1金属層中に非晶質で安定な窒化金属層を形成することにより、結晶粒界を通じた銅の拡散が抑制されるためである。第1金属層中に窒素を含ませる方法としては、第1金属層を形成後にその第1金属層の表面を窒素中でプラズマ処理を行い窒素を含ませる方法と、金属核付層を形成する際に用いるスパッタガスに窒素を用いる方法等の方法が挙げられる。また、第1金属層を初めはスパッタガスに希ガスを用いてスパッタ製膜を行い、次に窒素ガスでスパッタ製膜を行い、また最後に希ガスを用いてスパッタ製膜を行う方法が挙げられる。第1金属層中の窒素濃度は、安定な非晶質窒化金属層を作製するために、AESで測定した場合、第1金属層中に原子濃度の最大値で5%以上の部分があることが望ましく、更に望ましくは10%以上あることが望ましい。また、40%を超えると膜が脆弱となるため、40%以下の濃度が望ましい。
本発明で用いられる第2金属層は、次の工程で、電解メッキで銅層を形成する際に初期電流を導通させるに十分な電流を供給できる金属層であれば特に規定しない。しかしながら、次工程の銅層との相性や電気導通を向上させるために第2金属層として銅が好ましく用いられる。第2金属層の積層方法は、第1金属層と同じスパッタ法が好ましく用いられるが、蒸着法やCVD法等を用いることも可能である。この際金属の純度は導電率を向上させるためにも98%以上が望ましい。
また、第2金属層の厚さは30nm以上であることが望ましい。次工程の電解メッキを行う際に初期投入電流を多くするために、第2金属層形成時の金属箔表面抵抗は小さい方が望ましく、0.6Ω/cm以下であることが好ましい。
次工程の銅層形成では銅が用いられる。これは、銅の持つ電気伝導性に加え、銅の延性が高いことによる加工性の向上が見込まれるからである。また、銅層は好適にはメッキ法を用いて形成される。メッキ法には、大きく分けて電解メッキ法と無電界メッキ法があるが、銅層が必要な厚さまで形成できる方法であれば特に規定しない。電界メッキとしては、硫酸銅水溶液の高速メッキ浴が用いられる。硫酸銅浴の具体的な組成は特に規定されないが一般的には次の組成が用いられる。
硫酸銅五水和物:60〜100g/リットル、
硫酸:150〜250g/リットル、
塩酸:100mg/リットル以下、
添加剤:適宜
電解メッキを行う際の単位面積当たりの電流量は、0.01〜5A/dm2の範囲で行うことが望ましい。これは、電流量が少ないとメッキ浴への銅の溶解が発生し初期の電流導通層が失われてしまうからである。また、電流量が逆に多いと、メッキ表面に銅粉が析出し、いわゆる「やけ」と呼ばれる表面の荒れた部分ができてしまうことや、メッキ膜の膜厚均一性が悪化する等の問題が発生することがある。
有機フィルム層と第一金属層の界面への銅の拡散を調べる方法として、電子線を試料に照射した際放出されるオージェ電子を用いたAESを用いることが望ましい。フレキシブル回路基板の基材の有機フィルム層から第1金属層と第2金属層と銅層を剥離し、第1金属層側の剥離面をAESで深さ評価する。
以下、本発明の最良の実施形態の例を、図面を参照しながら説明する。
図1に示した有機フィルム層1としては、現在メッキ法で作製されるフレキシブル回路基板の基材として用いられているポリイミドフィルムが好適である。市販されている材料としては、既述した東レ・デュポン(株)社製の「カプトン」(登録商標)と宇部興産(株)社製の「ユーピレックス」(登録商標)が挙げられる。「カプトン」(登録商標)は、ピロメリット酸二無水物とオキシジアニリンから合成されるポリイミド(PMDA−ODA)を原料とし、また、「ユーピレックス」(登録商標)は、ビフェニルテトラカルボン酸とパラフェニレンジアミンから合成されるポリイミド(BPDA−PDA)を原料としている。これら市販のポリイミドフィルムの膜厚としては、25μmまたは38μmが主に用いられている。
第1金属層2としては、ニクロム合金が主に用いられ、スパッタ法を用いて積層される。第1金属層2の膜厚は、1〜50nmの間で行われることが望ましい。ニクロム合金の膜厚が少なすぎると、第1金属層がバリア層として機能しにくく耐熱密着力が劣る傾向を示す。逆に、第1金属層2が厚すぎると生産が困難になるばかりでなく、サブストラクト法で電気導通層のエッチングを行う際にエッチングのこりを生じる可能性がある。このため、第1金属層2の膜厚は更に好ましくは5nm〜30nmである。
ニクロム合金のクロムの比率は高いほど第1金属層内の銅の拡散は小さくなるが、逆にエッチング残りの問題を生じやすくなる。このため2〜40%であることが好ましい。
第2金属層としては銅が用いられ、スパッタ法を用いて積層される。第2金属層の膜厚は50nm以上であることが好ましい。これは、第2金属層の膜厚が薄いと、次工程のメッキの初期電流が小さくなり、膜厚の均一性等に問題が出ることがあるためである。このため第2金属層の膜厚は、更に望ましくは100nm以上である。第2金属層の膜厚を大きくすると生産工程への負荷が増大するため1,000nm以下が望ましい。
銅層は、電解メッキ法を用いて積層することができる。銅層の膜厚は、高精細なパターンを作製するために10μm以下であることが望ましい。25μmピッチ以下のファインパターンを作製する場合には、更に膜厚を薄くする必要があり、6μm以下の膜厚が望ましい。逆に、高精細なパターン設計の必要がなければ膜厚に上限はないが、メッキ法では膜厚が大きくなると生産工程に負荷がかかることから35μm以下が望ましい。
[密着力の評価方法]
密着力の評価として、JIS−C−6471に記載の銅箔の引き剥がし強さ試験方法を用いた。なお、引き剥がし方向は90°方向とした。また、引き剥がされる銅箔(第1金属層・第2金属層・銅層)は、2mm幅のパターンを塩化第2鉄溶液にてエッチングして形成した。
熱処理を行う場合は、オーブンにて大気中の熱処理を行った。本発明では熱処理条件として、150℃の温度で168時間の大気雰囲気にサンプルを設置した。また、加湿処理する場合にはプレッシャークッカーを用いた加湿処理を行う場合は121℃の温度で湿度100%・2気圧の雰囲気に100時間放置した。
密着力としては、熱処理や加湿処理を施していない未処理の銅張り積層フィルムでは、銅箔(第1金属層・第2金属層・銅層)の厚さが8μmの場合、6N/cm以上、上記熱処理後では4N/cm以上であることが実用上望ましい。また、上記加湿処理後では4N/cm、更に望ましくは5N/cmであることが望ましい。
また、元素分析の評価は、オージェ電子分光(AES)を用い、電気導通層の銅箔をJIS−C−6471の90°方向の引き剥がしを行った電気導通層の剥離界面側から深さ方向の分析を行った。真空度は5×10−7Pa以下で測定を行った。この際用いた装置はPHI製SAM−670型オージェ電子分光装置を用いた。深さ方向分析時のイオンエッチングにアルゴンイオンを用いた。
<実施例1〜6、比較例1〜5>
(実施例1)
厚さ38μmのカプトン150EN(東レ・デュポン社登録商標)フィルムの表面に、処理速度3m/分にてプラズマ処理を施した。次に、真空槽を到達圧力1×10−3Paにした後、アルゴンガス圧1×10−1PaにてDCマグネトロンスパッタによりクロムを5%含むニクロム合金を、厚さ5nmを搬送速度1m/分にて、スパッタパワー10kWで製膜した。ニクロム合金の表面を、窒素プラズマにてパワー2kWで搬送速度1m/分にてニクロム合金の表面の窒化処理を行った。その上に4nmのニクロム合金を搬送速度1m/分にて、スパッタパワー8kWで製膜し、第1金属層とした。このニクロム膜層の上に、さらにDCマグネトロンスパッタにより、第2金属層として銅層を積層速度5nm/秒にて膜厚100nmをスパッタ製膜した。次に、硫酸銅浴による電解メッキで8μmの厚さの銅層を、2A/dm2の電流密度の条件により積層し、最後に防錆剤処理を行い本発明の銅張り積層フィルムを作製した。なお、硫酸銅浴の組成は、硫酸銅五水和物:80g/リットル、硫酸:200g/リットル、塩酸:50mg/リットルに適宜量の添加剤を加えた溶液を用いた。最後に防錆処理を施した後に水洗し乾燥した。なお、乾燥は100℃の温風中を1分通過させた。作製したサンプルの熱処理前の密着力をJIS−C−6471の方法に従い測定し、次にサンプルを熱処理を施した後に、密着力測定を行った。なお、熱処理は150±5℃の温度で168時間の乾燥大気中に試料を設置した。また、加湿処理は121±5℃の温度で湿度100%の雰囲気に100時間設置した。結果を表1に示す。
(実施例2)
アルゴンガスを用いて厚さ3nmのニクロム合金膜をスパッタ製膜した後、窒素ガスを用いて厚さ3nmの窒化ニクロム合金膜をスパッタ製膜し、再びアルゴンガスを用いて厚さ3nmのニクロム合金膜をスパッタ製膜し、第1金属層とした。この第1金属層の製膜方法以外は、原反やプラズマ処理を含めて実施例1と同様の条件で試料作成、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
初めにアルゴンガスを用いて厚さ9nmのニクロム合金膜をスパッタ製膜した後、表面を窒素ガスを用いてプラズマ処理し、第1金属層を作製した。その後再びアルゴンガスを用いて第1金属層を製膜した。この第1金属層の製膜方法以外は、原反やプラズマ処理を含めて実施例1と同様の条件で試料作成、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
第1金属層のニッケル中のクロム比率を20%にし、それ以外は、実施例1と同様の条件で評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
第1金属層にニクロム合金の代わりにマンガンを用いること以外は、実施例1と同様の条件で評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例6)
第1金属層にニクロム合金の代わりにチタンを用いること以外は、実施例1と同様の条件で評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例7)
第1金属層にニクロム合金の代わりにバナジウムを用いること以外は、実施例1と同様の条件で評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
厚さ38μmのカプトン150EN(東レ・デュポン社登録商標)フィルムの表面に、処理速度3m/分にてプラズマ処理を行った。次に、真空槽を到達圧力1×10−3Paにした後、アルゴンガス圧1×10−1PaにてDCマグネトロンスパッタによりクロムを5%含むニクロム合金を厚さ9nmを搬送速度1m/分にて、スパッタパワー10kWで製膜し第1金属層を形成した。この膜厚が9nmのニクロム合金の上に、さらにDCマグネトロンスパッタにより第2金属層の銅層を積層速度5nm/秒にて膜厚100nmをスパッタ製膜した。次に、硫酸銅浴による電解メッキで8μmの厚さの銅層を2A/dm2の電流密度の条件により積層し、最後に防錆剤処理を行い銅張り積層フィルムを作製した。なお、硫酸銅浴の組成は、硫酸銅五水和物:80g/リットル、硫酸:200g/リットル、塩酸:50mg/リットルに適宜量の添加剤を加えた溶液を用いた。最後に防錆処理を施した後に水洗し乾燥させた。なお、乾燥は100℃の温風中を1分通過させた。
結果を表1に示す。
(比較例2)
第1金属層のニッケル中のクロム比率を20%にして、それ以外は、比較例1と同様の条件で評価を行った。結果を表1に示す。
比較例3
第1金属層にニクロム合金の代わりにマンガンを用いること以外は、比較例1と同様の条件で評価を行った。結果を表1に示す。
比較例4
第1金属層にニクロム合金の代わりにチタンを用いること以外は、比較例1と同様の条件で評価を行った。結果を表1に示す。
比較例5
第1金属層にニクロム合金の代わりにバナジウムを用いること以外は、比較例1と同様の条件で評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2005262707
表1に示すように、実施例1〜7では、常態密着力は各比較例とほぼ同等であったが、熱処理後の密着力は4N/cm以上、加湿処理後の密着力も4N/cm以上となった。これは、第1金属層に窒素プラズマ処理を与えたことによる改質により、第2金属層の銅が有機フィルム界面に移動せず、有機フィルムの劣化を軽減していることによると考えられる。
一方、比較例では、窒素化処理を行わない場合は常態密着力は高いものの、熱処理後の密着力や加湿処理後の密着力は実用上必要な4N/cmに達していない。このことから、実施例で用いた技術が耐熱性の高い銅張り積層フィルムを作製することが大いに有効であることが示される。
また、第1金属層の剥離界面側への銅の拡散の容態や過程を実施例1の例を用いて説明する。図2は、初期状態でポリイミドフィルム上に第1金属層(ニクロム合金)、第2金属層(銅)および銅層(導通層)を積層したの構成の銅張り積層フィルムについて、銅箔(第1金属層・第2金属層・銅層)をポリイミドフィルムから剥離して、上述の方法で、深さ方向元素分析を行った結果である。この場合、第1金属層中に原子濃度で5atomic%以上の窒素を含む部分が存在する。これに対し、図3に、大気中150℃の温度で168時間の熱処理後の深さ方向元素分析の結果を示す。このとき、金属核付層(第1金属層と第2金属層)および銅層をポリイミドフィルムから剥離し、第1金属層の剥離界面から第2金属層側に深さ4nmまでの領域に含まれる銅元素濃度を深さ方向の分布を調べた場合、その最大値が7atomic%以下となっている。これにより、熱処理後に第1金属層のポリイミドフィルム側界面(剥離面)に銅が偏析せず、界面(剥離面)の有機物は銅の触媒効果により分解劣化されないため、密着力が良好なまま保たれるからである。
一方、比較例1の場合の深さ方向の元素分布を常態を図4に、また熱処理後を図5に示す。このように第1金属層中に窒素を含む部分がない場合は、第1金属層の有機フィルム界面側に元素濃度最大値で10%以上の銅が偏析し、密着力も悪化していることが分かる。
本発明の銅張り積層フィルムは、携帯電話、ディスプレイおよびデジタルカメラ等の電子機器のフレキシブル回路基板用材料に特に好適である。
図1は、本発明の銅張り積層フィルムを例示説明するための概略断面図である。 図2は、常態の本発明の実施例1で得られた銅張り積層フィルムの第1金属層の深さ方向元素分析結果を示すグラフである。 図3は、熱処理後の本発明の実施例1で得られた銅張り積層フィルムの第1金属層の深さ方向元素分析結果を示すグラフである。 図4は、常態の比較例1で得られた銅張り積層フィルムの第1金属層の深さ方向元素分析結果を示すグラフである。 図5は、熱処理後の比較例1で得られた銅張り積層フィルムの第1金属層の深さ方向元素分析結果を示すグラフである。
符号の説明
1 有機フィルム層
2 第1金属層
3 第2金属層
4 銅層

Claims (7)

  1. 有機フィルム層上に、第1金属層、第2金属層および銅層がこの順に積層された金属積層フィルムであって、大気中150℃の温度で168時間の熱処理後、該第1金属層と該有機フィルム層の界面から剥離したとき、該第1金属層の剥離界面から該第2金属層側に向かって深さ4nmまでの領域に含まれる第2金属層構成元素濃度の最大値が10atomic%以下であることを特徴とする銅張り積層フィルム。
  2. 有機フィルムがポリイミドからなり、また第2金属層構成元素が銅であることを特徴とする請求項1記載の銅張り積層フィルム。
  3. 第1金属層がニクロム合金からなることを特徴とする請求項1または2記載の銅張り積層フィルム。
  4. 第1金属層が窒素を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の銅張り積層フィルム。
  5. 第1金属層が窒素ガスを用いたプラズマにより処理されてなる層である請求項1〜4のいずれかに記載の銅張り積層フィルム。
  6. 銅層がメッキ法で形成された銅層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の銅張り積層フィルム。
  7. 請求項1〜6のいずれか記載の銅張り積層フィルムからなるフレキシブル回路基板用材料。
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