JP2004031588A - フレキシブルプリント配線用基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温長期間および高温高湿の耐久性が高く、熱や応力が加わっても密着強度の高い金属導体層を持つ、2層型フレキシブルプリント配線用基板を提供する。
【解決手段】プラスチックフィルム1の片面または両面に、金属蒸着層2,3,4を設け、該金属蒸着層上に導電性金属層5を積層してなるフレキシブルプリント配線用基板において、該金属蒸着層がプラスチックフィルム側から順に、NiとCrを主成分とする層2とNiとCuを主成分とする層3とCuを主成分とする層4の少なくとも3層が積層された構造からなることを特徴とするフレキシブルプリント配線用基板。
【選択図】 図1
【解決手段】プラスチックフィルム1の片面または両面に、金属蒸着層2,3,4を設け、該金属蒸着層上に導電性金属層5を積層してなるフレキシブルプリント配線用基板において、該金属蒸着層がプラスチックフィルム側から順に、NiとCrを主成分とする層2とNiとCuを主成分とする層3とCuを主成分とする層4の少なくとも3層が積層された構造からなることを特徴とするフレキシブルプリント配線用基板。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属蒸着層/導電性金属層積層フィルムによるフレキシブルプリント配線用基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、フレキシブルプリント配線用基板として、プラスチックフィルムに接着剤層を介して導体層としての銅箔を貼り合せた3層構造のフレキシブルプリント配線用基板が知られている。この3層構造タイプのフレキシブルプリント配線用基板は、用いられる接着剤の耐熱性がプラスチックフィルムより劣るため、加工後の寸法精度が低下するという問題があり、また用いられる銅箔の厚さが通常10μm以上であるため、ピッチの狭い高密度配線用のパターニングが難しいという欠点もあった。 一方、プラスチックフィルム上に接着剤を用いることなく、湿式めっき法や乾式めっき法(例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法など)により、導体層としての金属層を形成させた2層構造タイプのフレキシブルプリント配線用基板も知られている。この2層構造タイプのフレキシブルプリント配線用基板は、導体層を10μmよりも薄くすることができるため高密度配線が可能であるが、過酷な熱負荷試験(例えば、温度85℃、湿度85%、1000時間)を行ったり、スズ、ニッケル、はんだ、または金などの無電解めっき処理を行うと、プラスチックフィルムと導体層との間の密着力が低下してしまうという欠点があった。 また、配線を施した2層構造タイプのフレキシブルプリント配線用基板にICを実装する際に、スズ、はんだ、金またはこれらの共晶体などが導体層とプラスチックフィルムの間、特にNiとCrを主成分とする層と銅層との間に潜り込むことがあるという欠点があった。このように熱負荷後や無電解めっき処理後の2層構造タイプのプリント配線用基板の界面の密着性が低下する原因は明らかではないが、導体層としての銅箔の酸化や後に行う無電解めっき工程で用いられる還元性の処理液により界面で発生する化学反応、またはIC実装時に基板に加わる熱および応力が原因ではないかと考えられている。
【0003】
これらの課題を解決するために、特公平6−009308号公報にあるようにプラスチックフィルム上にNiやCrなどからなる金属蒸着層をスパッタ法などにより形成し、その上にCuなどをスパッタ法などにより形成し、さらにCuを電気めっき法により形成したフレキシブルプリント配線用基板が用いられているが、前記課題を完全に解決させているとは言い難い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、プラスチックフィルムと該プラスチックフィルム上の導体層、およびこれらの界面が、無電解めっき等の工程で使用される薬品の作用や熱負荷に十分に耐え得るように形成され、熱負荷後の密着耐久性はもとより、無電解めっき後における導体層(導電性金属層)と基板との間の界面の密着性が優れており、IC実装の際に熱や応力が加わっても界面にスズ、はんだ、金またはこれらの共晶体などが導体層(導電性金属層)とプラスチックフィルムの間に潜り込むことのない、密着性と耐久性に優れたフレキシブルプリント配線用基板を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を解決するため本発明に係るフレキシブル配線用基板は、すなわち、プラスチックフィルムの片面または両面に、金属蒸着層を設け、該金属蒸着層上に導電性金属層を積層してなるフレキシブルプリント配線用基板において、該金属蒸着層がプラスチックフィルム側から順に、NiとCrを主成分とする層とNiとCuを主成分とする層とCuを主成分とする層の少なくとも3層が積層された構造からなることを特徴とするフレキシブルプリント配線用基板である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のフレキシブルプリント配線用基板について詳述する。
【0007】
本発明のフレキシブルプリント配線用基板の好適例の構造を図1に示す。図1は、本発明のフレキシブルプリント配線用基板の好適例を示す断面図である。図1において、プラスチックフィルム1の片側の面にNiとCrを主成分とする金属蒸着層2が積層され、さらにその上にNiとCuを主成分とする金属蒸着層3が積層され、さらにその上にCuを主成分とする金属蒸着層4が積層されている。そして、その上にさらに導電性金属層5が積層されている。
【0008】
本発明で用いられる基材としてのプラスチックフィルムを例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリエチレン−α,β−ビス(2−クロルフェノキシエタン−4,4′−ジカルボキシレート)などのポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリアミド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリパラジン酸、ポリオキサジアゾールおよびこれらのハロゲン基置換体あるいはメチル基置換体からなるフィルム等が挙げられる。また、プラスチックフィルムは、これらの共重合体や、他の有機重合体を含有するものであっても良い。これらのプラスチックフィルムに公知の添加剤、たとえば、滑剤や可塑剤などが添加されていても良い。
【0009】
本発明では、上記のプラスチックフィルム中、下記式の繰返し単位を85モル%以上含むポリマーを溶融押出しして得られる未延伸フィルムを、二軸方向に延伸配向して機械特性を向上せしめたフィルムが特に好ましく使用される。
【0010】
【化1】
(但し、XはH、CH3、F、CI基を示す)。また、下記式の繰返し単位を50モル%以上含むポリマーからなり、湿式あるいは乾湿式製膜したフィルム、あるいは該フィルムを二軸延伸および/または熱処理せしめたフィルムも好ましく使用される。
【0011】
【化2】
(ここで、XはH,CH3、F、CI基、m,nは0〜3の整数を示す)。
【0012】
上記のような繰返し単位を含むポリマーからなるプラスチックフィルムは、特に耐熱安定性と耐湿安定性に優れウエットエッチング工程における寸法変化が小さい。 基材であるプラスチックフィルムの厚さは、好ましくは6〜125μm程度のものが多用され、特に12〜50μmの厚さが好適である。プラスチックフィルムが薄すぎると、強度が足りなくて金属蒸着や配線加工が困難になったり補強フィルムを必要とする問題が起こりやすく、また、厚すぎると折り曲げ性が損なわれることで好ましくない。
【0013】
本発明では、電気めっき法等で厚膜の導電性金属層を形成するに先立って、プラスチックフィルムの片面または両面に、真空蒸着またはスパッタ法等により金属蒸着層を形成する。この金属蒸着層は、NiとCrを主成分とする層と、NiとCuを主成分とする層と、Cuを主成分とする層の少なくとも3層からなる。これら3層の金属蒸着層は、プラスチックフィルム/NiとCrを主成分とする層/NiとCuを主成分とする層/Cuを主成分とする層、の順に積層されている。これによって低抵抗でしかも屈曲性に富む層を形成することができる。
【0014】
NiとCrを主成分とする層は、前記したように、真空蒸着法やスパッタ法などで形成することができる。層の厚さは成膜速度とフィルムの搬送速度を調節することで制御することができる。NiとCrの比率については、真空蒸着の場合はそれぞれの蒸着源の蒸発速度を制御することで自由に決定することができる。また、スパッタ法の場合は、NiとCrのターゲットを別々に用意してそれぞれのスパッタ速度を制御しても良いし、任意の組成比を持つ混合ターゲットを用意しても制御することができる。安定した層厚・層内の組成比が得られることから、組成比を決めた混合ターゲットでスパッタ法を用いることが好ましい。
【0015】
NiとCrを主成分とする層のNiとCrの組成比は、特に限定するものではないが、Crが3〜20重量%程度入っていることが好ましい。Crがこれより少ないと導電性金属層とプラスチックフィルムの密着力が低下したり、配線パターン後の薬液処理に対する耐久性が低下しやすくなるので好ましくない。また、これより多いと配線パターンを形成した後にNiCrが残存しやすく、配線間の絶縁が不足し、好ましくない。
【0016】
前記NiとCrを主成分とする金属蒸着層の次に、NiとCuを主成分とする金属蒸着層を設ける。形成方法、層厚、組成の制御方法は前記NiとCrを主成分とする層と同様に行うことができる。
【0017】
NiとCuを主成分とする層のNiとCuの組成比は、特に限定するものではないが、後述するように、3層の金属蒸着層間で徐々に構成金属元素が入れ替わるために、Cuが20〜80重量%入っていることが好ましい。より好ましくは25〜50%である。これよりCuが多くても少なくても本発明の課題を達成することが難しくなる。
【0018】
NiとCrを主成分とする層の厚さとNiとCuを主成分とする層の厚さの合計は100オングストローム以上であることが好ましい。これより薄いと、本発明の課題を達成することが難しくなる。上記2層の金属蒸着層の厚さの合計はより好ましくは100〜400オングストロームである。厚さはイオンビームでエッチングしながらSIMS(二次イオン質量分析法)やオージェ電子分光法で元素分析することで測定することができる。また、製造においては、より厚く成膜した上で電子顕微鏡で断面の厚さを測定し、時間を短縮するなどして所望の厚さに調整することができる。
【0019】
前記NiとCuを主成分とする金属蒸着層の次に、Cuを主成分とした金属蒸着層を設ける。該金属蒸着層の厚みは、好ましくは100〜3000オングストローム、より好ましくは300〜1200オングストローム、さらに好ましくは400〜1000オングストロームである。銅を主成分とした金属蒸着層の膜厚が100オングストロームよりも薄い場合は、金属の電気めっき工程で銅膜が溶出しやすく、また3000オングストロームよりも厚い場合は、金属の電気めっき工程後に膜がはがれやすく、生産効率も良くないので好ましくない。このCuを主成分とする金属蒸着層の形成方法、層厚の制御方法も前記NiとCrを主成分とする層と同様に行うことができる。
【0020】
以上により、本発明において金属蒸着層は、NiとCrを主成分とする層、NiとCuを主成分とする層、およびCuを主成分とする層の3つの層から構成されている。NiとCrを主成分とする層とCuを主成分とする層の間に、NiとCuを主成分とする層を挿入することで、Ni元素の比率は徐々に減少し、Cu元素の比率は徐々に増大することになる。これにより、金属蒸着層相互の密着力が増し、かつスズ、はんだ、金およびこれらの共晶体がNiとCrを主成分とする層とCuを主成分とする層の間に潜り込む空間を作りにくくすることができる。これにより、前記課題を解決することができる。
【0021】
一方、核付け層としてNiとCuを用いた技術は既に開示されている。すなわち、特開平5−251844号公報には、ポリイミドフィルム上に銅ニッケル合金薄膜を形成した後に、銅薄膜を形成する技術が記載されている。しかしながら、ポリイミドフィルム上に銅ニッケル合金を直接形成する方法では、ポリイミドと銅が直接接している部分が多数存在するため、その部分からスズ、はんだ、金が潜り込みやすく前記課題を解決することができない。本発明では、NiとCrを主成分とする層をNiとCuを主成分とする層の間に挿入することで前記課題を解決することができる。
【0022】
前記金属蒸着層上に、より厚膜の導電性金属層(金属めっき層)を積層する。導電性金属層の積層方法には、湿式めっき、乾式めっき等があり、湿式めっきには電気めっき、無電解めっき等がある。また、乾式めっきには、真空蒸着法やスパッタ法およびそれらの改良方法等がある。中でも、数μmの厚さを持つ導電性金属層を効率よく積層できることから電気めっき法が好ましい。電気めっき工程は、密着性を向上させるための脱脂および酸活性処理、金属ストライク、金属めっきの各工程からなる。金属蒸着層を蒸着した直後に電気めっき工程に入る場合には、脱脂および酸活性処理、金属ストライクを省略してもよい。金属蒸着層に給電する電流密度は0.2〜10A/dm2が好適で、0.5〜5A/dm2がより好適である。
【0023】
形成される導電性金属層(金属めっき層)の厚さは、0.5〜35μmとすることが好ましく、1.0〜20μmがより好適である。金属めっき層の層厚さが0.5μm未満では金属めっき層の信頼性が十分とはいえない。また、厚さが35μmを超えると膜形成に時間がかかり経済性が劣るほか、エッチング加工時に回路パターンの端部エッチングが進行しやすく、また、折り曲げによる断線の恐れがあるなど品質面でも好ましくない。目的とする回路の電流密度によっても異なるが、加工作業性、品質の面から厚さは1.0〜20μm程度がより好適である。
【0024】
めっきの条件は、めっき浴の組成、電流密度、浴温、撹拌条件などにより異なるが、特に制限はない。めっき浴は、硫酸銅浴、ピロりん酸銅浴、シアン化銅浴、スルファミン酸ニッケル浴、スズ−ニッケル合金めっき浴、銅−スズ−亜鉛合金めっき浴、スズ−ニッケル−銅合金めっき浴などが好ましいが、これらに限られるものではない。エッチング後、端子部にシアン化金めっき、シアン化銀めっき、ロジウムめっき、パラジュウムめっきなどの貴金属めっきを補足形成させても良い。
【0025】
次いで、本発明のフレキシブルプリント配線用基板には、エッチングによってパターンがを形成されるが、具体的には金属の不要部分を化学反応で溶解除去し、所定の電気回路図形を形成する。エッチング液としては、塩化第二銅、塩化第二鉄、過硫酸塩類、過酸化水素/硫酸、アルカリエンチャントなどの水溶液などが使用できる。また、パターンとして残すべき金属の必要部分は、写真法やスクリーン印刷法で有機化合物系レジストを被覆させるか、または異種金属系レジストをめっきし保護して、金属の溶解を防止する。本発明の特徴は、よりファインなパターンを形成でき、しかも製品の繰返し屈曲、各種環境試験に十耐えるものを形成できる。
【0026】
本発明のフレキシブルプリント配線用基板は、電子計算機、端末機器、電話機、通信機器、計測制御機器、カメラ、時計、自動車、事務機器、家電製品、航空機計器、医療機器などのあらゆるエレクトロニクスの分野に活用できる。またコネクター、フラット電極などへの適用も可能である。
【0027】
【実施例】
以下、実施例によって本発明のフレキシブルプリント配線用基板について詳述する。実施例中の各特性値の測定は、次の測定法に従って行なった。
(a) 引きはがし強度:JIS・C6481(180度ピール)に準じて評価を行なった。
(b) 常態引き剥がし密着力:上記評価を、パターン形成後100℃で15分乾燥させ、常温常湿下で測定した。
(c) 耐熱引き剥がし密着力:上記評価を、パターン形成後150℃で10日間放置し、取り出した後、常温常湿下で測定した。
(d) 高温高湿引き剥がし密着力:上記評価を、パターン形成後121℃100%RHで4日間放置し、取り出した後、常温常湿下で測定した。
【0028】
また、その他の評価項目として、配線パターンに対して、折り曲げ+420℃加熱+ハンダ付け耐久試験を行った。これは、配線基板に応力と加熱を加えたハンダ付けに対する耐久性を評価したものである。ポリイミドと金属配線の間にハンダが確認できなければOK、ハンダが確認されればNGと判定した。
【0029】
さらに、配線パターンに対して実際にICの実装を行った評価も行った。IC実装後、配線パターンを1本ずつ確認し、金属配線とポリイミドの間にSnやAuが潜り込んでいるかどうかを判断した。配線幅に対して半分以上の潜り込みが見られた配線をNG、半分未満の潜り込みをOKとし、OK配線の全配線数における割合をパーセンテージで示して評価した。これがOK配線の率である。実際の使用においては、OK配線の率が100%であることが必要であるが、実装条件をより厳しくした場合はOK配線の率が100%未満でも相対的に高いOK配線率を持つものを良好と判定した。
【0030】
(実施例1)
厚さ38μmのポリイミドフィルム“カプトン”EN(米国デュポン社の登録商標)の片面に、プラズマ処理を実施した。プラズマ処理は、2mPaの真空度にした真空チャンバー中で、窒素ガスを1.6Paまで導入し、1.1kWのRF電力で行った。次いで、クロム20%ニッケル80%のターゲットを用いて、ポリイミドフィルムのプラズマ処理面上にスパッタ蒸着し厚さ30オングストロームのニッケルクロム蒸着層を形成し、NiとCrを主成分とする金属蒸着層とした。さらにニッケル65%銅35%のターゲットを用いて、前記ニッケルクロム蒸着層上にスパッタ蒸着し、厚さ100オングストロームのニッケル銅蒸着層を形成し、NiとCuを主成分とする金属蒸着層とした。さらに純度99.99%の銅を、NiとCuを主成分とする金属蒸着層の上にスパッタ蒸着し厚さ800オングストロームの銅蒸着層を形成した。その後、厚さ8μmの電気銅めっきを行い、金属蒸着層上に導電性金属層を形成した。得られたフレキシブルプリント配線用基板の引き剥がし密着力の測定結果を表1に示した。常態密着力、耐熱引き剥がし密着力、高温高湿引き剥がし密着力において、良好な結果を示した。また、このフレキシブルプリント配線用基板の金属層をエッチングし、幅1mmの配線パターンを作製した。この配線パターンに対して、折り曲げ+420℃加熱+ハンダ付けを行ったところ、ポリイミドフィルムと金属層の間へのハンダの潜り込みは観察されなかった。
【0031】
また、このフレキシブルプリント配線用基板の金属層をエッチングし、幅30μm、スペース40μmの配線パターンを作製した。この配線パターンに対して、無電解Snめっきを施し、厚さ0.2μmのSnめっき層を形成した。この配線パターンと金バンプを持ったICを(株)新川製のボンディング装置ILT−110を用いてIC実装したところ、300本の配線パターン全てにおいて銅層とポリイミドフィルムの間にSnやAuは見られず、正常に実装できた。このときの実装条件は、ツール温度370℃、ステージ温度445℃、実装時間1秒、フォーミング量50μmであった。さらにステージ温度に対するマージンを見るため、ステージ温度を485℃に上げて同様にIC実装したところ、300本の配線パターンのうち70%の配線で正常に実装できたが、残り30%の配線にはSnとAuの潜り込みが観察された。以上の結果を表2に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
(実施例2)
実施例1と同様にプラズマ処理したポリイミドフィルム上に、クロム5%ニッケル95%のターゲットを用いてスパッタ蒸着し、厚さ100オングストロームのニッケルクロム蒸着層を形成しNiとCrを主成分とする金属蒸着層とした。さらにニッケル65%銅35%のターゲットを用いて、前記ニッケルクロム蒸着層上にスパッタ蒸着し、厚さ100オングストロームのニッケル銅蒸着層を形成し、NiとCuを主成分とする金属蒸着層とした。さらに純度99.99%の銅をNiとCuを主成分とする金属蒸着層の上にスパッタ蒸着し厚さ800オングストロームの銅蒸着層を形成し、金属蒸着層とした。その後、厚さ8μmの電気銅めっきを行い、金属蒸着層上に導電性金属層を形成し、フレキシブルプリント配線用基板を作製した。実施例1と同様に、引き剥がし密着力の測定を行ったところ、表1の結果を得た。実施例1と比較してほぼ同じ結果となった。
【0034】
また、このフレキシブルプリント配線用基板の金属層をエッチングし、幅1mmの配線パターンを作製した。この配線パターンに対して、折り曲げ+420℃加熱+ハンダ付けを行ったところ、ポリイミドフィルムと金属層の間へのハンダの潜り込みが観察されず、実施例1と同様の結果であることが確認された。
【0035】
また、実施例1と同様にしてIC実装を行ったところ、配線パターンの銅層とポリイミドフィルムの間のAuとSnの潜り込みは、ステージ温度445℃では全ての配線で確認されず、全て正常に実装できた。また、ステージ温度485℃では73%の配線で正常に実装できた。結果を表2に示す。
【0036】
(実施例3)
実施例1と同様にプラズマ処理したポリイミドフィルム上に、クロム5%ニッケル95%のターゲットを用いてスパッタ蒸着し、厚さ100オングストロームのニッケルクロム蒸着層を形成しNiとCrを主成分とする金属蒸着層とした。さらにニッケル65%銅35%のターゲットを用いて、前記ニッケルクロム蒸着層上にスパッタ蒸着し、厚さ200オングストロームのニッケル銅蒸着層を形成し、NiとCuを主成分とする金属蒸着層とした。さらに純度99.99%の銅をNiとCuを主成分とする金属蒸着層の上にスパッタ蒸着し厚さ800オングストロームの銅蒸着層を形成し、金属蒸着層とした。その後、厚さ8μmの電気銅めっきを行い、金属蒸着層上に導電性金属層を形成し、フレキシブルプリント配線用基板を作製した。実施例1と同様に、引き剥がし密着力の測定を行ったところ、表1の結果を得た。実施例1と比較してほぼ同じ結果となった。
【0037】
また、このフレキシブルプリント配線用基板の金属層をエッチングし、幅1mmの配線パターンを作製した。この配線パターンに対して、折り曲げ+420℃加熱+ハンダ付けを行ったところ、ポリイミドフィルムと金属層の間へのハンダの潜り込みが観察されず、実施例1と同様の結果であることが確認された。
【0038】
また、実施例1と同様にしてIC実装を行ったところ、配線パターンの銅層とポリイミドフィルムの間のAuとSnの潜り込みは、ステージ温度445℃では全ての配線で確認されず、全て正常に実装できた。また、ステージ温度485℃では80%の配線で正常に実装できた。結果を表2に示す。
【0039】
(実施例4)
実施例1と同様にプラズマ処理したポリイミドフィルム上に、クロム20%ニッケル80%のターゲットを用いてスパッタ蒸着し、厚さ30オングストロームのニッケルクロム蒸着層を形成しNiとCrを主成分とする金属蒸着層とした。さらにニッケル65%銅35%のターゲットを用いて、前記ニッケルクロム蒸着層上にスパッタ蒸着し、厚さ50オングストロームのニッケル銅蒸着層を形成し、NiとCuを主成分とする金属蒸着層とした。さらに純度99.99%の銅をNiとCuを主成分とする金属蒸着層の上にスパッタ蒸着し厚さ800オングストロームの銅蒸着層を形成し、金属蒸着層とした。その後、厚さ8μmの電気銅めっきを行い、金属蒸着層上に導電性金属層を形成し、フレキシブルプリント配線用基板を作製した。実施例1と同様に、引き剥がし密着力の測定を行ったところ、表1の結果を得た。実施例1と比較してほぼ同じ結果となった。
【0040】
また、このフレキシブルプリント配線用基板の金属層をエッチングし、幅1mmの配線パターンを作製した。この配線パターンに対して、折り曲げ+420℃加熱+ハンダ付けを行ったところ、ポリイミドフィルムと金属層の間へのハンダの潜り込みが観察されず、実施例1と同様の結果であることが確認された。
【0041】
また、実施例1と同様にしてIC実装を行ったところ、配線パターンの銅層とポリイミドフィルムの間のAuとSnの潜り込みは、ステージ温度445℃では全ての配線で確認されず、全て正常に実装できた。しかし、ステージ温度485℃では55%の配線で正常に実装できたが、実施例1や実施例2よりは若干劣る結果となった。結果を表2に示す。
【0042】
(比較例1)
実施例1と同様にプラズマ処理したポリイミドフィルム上に、クロム20%ニッケル80%のターゲットを用いてスパッタ蒸着し、厚さ45オングストロームのニッケルクロム蒸着層を形成し、さらに純度99.99%の銅をニッケルクロム蒸着層の上にスパッタ蒸着し厚さ800オングストロームの銅蒸着層を形成し、金属蒸着層とした。その後、厚さ9μmの電気銅めっきを行い、金属蒸着層上に導電性金属層を形成し、フレキシブルプリント配線用基板を作製した。実施例1と同様に引き剥がし密着力の測定を行ったところ、表1の結果を得た。実施例1と比較して、ほぼ同等の結果となった。また、このフレキシブルプリント配線用基板の金属層をエッチングし、幅1mmの配線パターンを作製した。この配線パターンに対して、折り曲げ+420℃加熱+ハンダ付けを行ったところ、ポリイミドフィルムと金属層の間へのハンダの潜り込みが観察され、実施例1よりも劣っていることが確認された。
【0043】
また、実施例1と同様にしてIC実装を行ったところ、配線パターンの銅層とポリイミドフィルムの間のAuとSnの潜り込みが、ステージ温度445℃で88%の配線で確認され、正常に実装できていなかった。結果を表2に示す。
【0044】
(比較例2)
実施例1と同様にプラズマ処理したポリイミドフィルム上に、クロム20%ニッケル80%のターゲットを用いてスパッタ蒸着し、厚さ145オングストロームのニッケルクロム蒸着層を形成し、さらに純度99.99%の銅をニッケルクロム蒸着層の上にスパッタ蒸着し厚さ800オングストロームの銅蒸着層を形成し、金属蒸着層とした。その後、厚さ8μmの電気銅めっきを行い、金属蒸着層上に導電性金属層を形成し、フレキシブルプリント配線用基板を作製した。このフレキシブルプリント配線用基板の金属層をエッチングし、幅1mmの配線パターンを作製したところ、配線間にニッケルクロム蒸着層が残留し、配線パターン間の絶縁が取れず、フレキシブルプリント配線板として不適であった。
【0045】
(比較例3)
実施例1と同様にプラズマ処理したポリイミドフィルム上に、クロム5%ニッケル95%のターゲットを用いてスパッタ蒸着し、厚さ75オングストロームのニッケルクロム蒸着層を形成し、さらに純度99.99%の銅をニッケルクロム蒸着層の上にスパッタ蒸着し厚さ800オングストロームの銅蒸着層を形成し、金属蒸着層とした。その後、厚さ9μmの電気銅めっきを行い、金属蒸着層上に導電性金属層を形成し、フレキシブルプリント配線用基板を作製した。
【0046】
実施例1と同様に引き剥がし密着力の測定を行ったところ、表1の結果を得た。各実施例と比較して、常態密着力、耐熱引き剥がし密着力および高温高湿引き剥がし密着力全てにおいて少しずつ劣っている結果となった。
【0047】
このフレキシブルプリント配線用基板の金属層をエッチングし、幅1mmの配線パターンを作製した。この配線パターンに対して、折り曲げ+420℃加熱+ハンダ付けを行ったところ、比較例1よりは少なかったものの、ポリイミドフィルムと金属層の間へのハンダの潜り込みが観察され、実施例1よりも劣っていることが確認された。
【0048】
また、実施例1と同様にしてIC実装を行ったところ、配線パターンの銅層とポリイミドフィルムの間のAuとSnの潜り込みは、ステージ温度445℃で90%の配線で確認され、正常に実装できていなかった。結果を表2に示す。
【0049】
(比較例4)
実施例1と同様にプラズマ処理したポリイミドフィルム上に、ニッケル65%銅35%のターゲットを用いてスパッタ蒸着し、厚さ80オングストロームのニッケル銅蒸着層を形成し、NiとCuを主成分とする金属蒸着層とした。さらに純度99.99%の銅をNiとCuを主成分とする金属蒸着層の上にスパッタ蒸着し厚さ800オングストロームの銅蒸着層を形成し、金属蒸着層とした。その後、厚さ8μmの電気銅めっきを行い、金属蒸着層上に導電性金属層を形成し、フレキシブルプリント配線用基板を作製した。
【0050】
実施例1と同様に引き剥がし密着力の測定を行ったところ、表1の結果を得た。実施例1と比較して、常態引き剥がし密着力はほぼ同じ結果となったが、耐熱引き剥がし密着力および高温高湿引き剥がし密着力は少し劣る結果となった。
【0051】
また、このフレキシブルプリント配線用基板の金属層をエッチングし、幅1mmの配線パターンを作製した。この配線パターンに対して、折り曲げ+420℃加熱+ハンダ付けを行ったところ、ポリイミドフィルムと金属層の間へのハンダの潜り込みが観察されず、実施例1と同様の結果であることが確認された。
【0052】
また、実施例1と同様にしてIC実装を行ったところ、配線パターンの銅層とポリイミドフィルムの間のAuとSnの潜り込みは、ステージ温度445℃で21%の配線で確認され、正常に実装できていなかった。結果を表2に示す。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、プラスチックフィルムの上に金属層を約0.5〜35μmの厚みに形成することができ、パターン形成、エッチング、配線、IC実装などの工程を経ても、さらに厳しい環境試験を経ても、はくり、はがれのない密着性に優れたFPC基板、COF基板等のフレキシブルプリント配線用基板が得られる。しかも、従来は、たとえば、銅箔の厚さの限界により12μm未満のものは生産されていなかったが、0.5〜11μmのより薄い銅層を形成できることにより、パターン精度が向上し、より高密度、高精度の配線が可能となる。しかも、銅箔ラミネート時に発生していた折れきずやピンホールが少なく、経済性と高い品質を兼ね備えたフレキシブルプリント配線用基板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明のフレキシブルプリント配線用基板の好適例を示す断面図である。
【符号の説明】
1:プラスチックフィルム
2:金属蒸着層(NiとCrを主成分とする層)
3:金属蒸着層(NiとCuを主成分とする層)
4:金属蒸着層(Cuを主成分とする層)
5:導電性金属層
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属蒸着層/導電性金属層積層フィルムによるフレキシブルプリント配線用基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、フレキシブルプリント配線用基板として、プラスチックフィルムに接着剤層を介して導体層としての銅箔を貼り合せた3層構造のフレキシブルプリント配線用基板が知られている。この3層構造タイプのフレキシブルプリント配線用基板は、用いられる接着剤の耐熱性がプラスチックフィルムより劣るため、加工後の寸法精度が低下するという問題があり、また用いられる銅箔の厚さが通常10μm以上であるため、ピッチの狭い高密度配線用のパターニングが難しいという欠点もあった。 一方、プラスチックフィルム上に接着剤を用いることなく、湿式めっき法や乾式めっき法(例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法など)により、導体層としての金属層を形成させた2層構造タイプのフレキシブルプリント配線用基板も知られている。この2層構造タイプのフレキシブルプリント配線用基板は、導体層を10μmよりも薄くすることができるため高密度配線が可能であるが、過酷な熱負荷試験(例えば、温度85℃、湿度85%、1000時間)を行ったり、スズ、ニッケル、はんだ、または金などの無電解めっき処理を行うと、プラスチックフィルムと導体層との間の密着力が低下してしまうという欠点があった。 また、配線を施した2層構造タイプのフレキシブルプリント配線用基板にICを実装する際に、スズ、はんだ、金またはこれらの共晶体などが導体層とプラスチックフィルムの間、特にNiとCrを主成分とする層と銅層との間に潜り込むことがあるという欠点があった。このように熱負荷後や無電解めっき処理後の2層構造タイプのプリント配線用基板の界面の密着性が低下する原因は明らかではないが、導体層としての銅箔の酸化や後に行う無電解めっき工程で用いられる還元性の処理液により界面で発生する化学反応、またはIC実装時に基板に加わる熱および応力が原因ではないかと考えられている。
【0003】
これらの課題を解決するために、特公平6−009308号公報にあるようにプラスチックフィルム上にNiやCrなどからなる金属蒸着層をスパッタ法などにより形成し、その上にCuなどをスパッタ法などにより形成し、さらにCuを電気めっき法により形成したフレキシブルプリント配線用基板が用いられているが、前記課題を完全に解決させているとは言い難い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、プラスチックフィルムと該プラスチックフィルム上の導体層、およびこれらの界面が、無電解めっき等の工程で使用される薬品の作用や熱負荷に十分に耐え得るように形成され、熱負荷後の密着耐久性はもとより、無電解めっき後における導体層(導電性金属層)と基板との間の界面の密着性が優れており、IC実装の際に熱や応力が加わっても界面にスズ、はんだ、金またはこれらの共晶体などが導体層(導電性金属層)とプラスチックフィルムの間に潜り込むことのない、密着性と耐久性に優れたフレキシブルプリント配線用基板を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を解決するため本発明に係るフレキシブル配線用基板は、すなわち、プラスチックフィルムの片面または両面に、金属蒸着層を設け、該金属蒸着層上に導電性金属層を積層してなるフレキシブルプリント配線用基板において、該金属蒸着層がプラスチックフィルム側から順に、NiとCrを主成分とする層とNiとCuを主成分とする層とCuを主成分とする層の少なくとも3層が積層された構造からなることを特徴とするフレキシブルプリント配線用基板である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のフレキシブルプリント配線用基板について詳述する。
【0007】
本発明のフレキシブルプリント配線用基板の好適例の構造を図1に示す。図1は、本発明のフレキシブルプリント配線用基板の好適例を示す断面図である。図1において、プラスチックフィルム1の片側の面にNiとCrを主成分とする金属蒸着層2が積層され、さらにその上にNiとCuを主成分とする金属蒸着層3が積層され、さらにその上にCuを主成分とする金属蒸着層4が積層されている。そして、その上にさらに導電性金属層5が積層されている。
【0008】
本発明で用いられる基材としてのプラスチックフィルムを例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリエチレン−α,β−ビス(2−クロルフェノキシエタン−4,4′−ジカルボキシレート)などのポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリアミド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリパラジン酸、ポリオキサジアゾールおよびこれらのハロゲン基置換体あるいはメチル基置換体からなるフィルム等が挙げられる。また、プラスチックフィルムは、これらの共重合体や、他の有機重合体を含有するものであっても良い。これらのプラスチックフィルムに公知の添加剤、たとえば、滑剤や可塑剤などが添加されていても良い。
【0009】
本発明では、上記のプラスチックフィルム中、下記式の繰返し単位を85モル%以上含むポリマーを溶融押出しして得られる未延伸フィルムを、二軸方向に延伸配向して機械特性を向上せしめたフィルムが特に好ましく使用される。
【0010】
【化1】
(但し、XはH、CH3、F、CI基を示す)。また、下記式の繰返し単位を50モル%以上含むポリマーからなり、湿式あるいは乾湿式製膜したフィルム、あるいは該フィルムを二軸延伸および/または熱処理せしめたフィルムも好ましく使用される。
【0011】
【化2】
(ここで、XはH,CH3、F、CI基、m,nは0〜3の整数を示す)。
【0012】
上記のような繰返し単位を含むポリマーからなるプラスチックフィルムは、特に耐熱安定性と耐湿安定性に優れウエットエッチング工程における寸法変化が小さい。 基材であるプラスチックフィルムの厚さは、好ましくは6〜125μm程度のものが多用され、特に12〜50μmの厚さが好適である。プラスチックフィルムが薄すぎると、強度が足りなくて金属蒸着や配線加工が困難になったり補強フィルムを必要とする問題が起こりやすく、また、厚すぎると折り曲げ性が損なわれることで好ましくない。
【0013】
本発明では、電気めっき法等で厚膜の導電性金属層を形成するに先立って、プラスチックフィルムの片面または両面に、真空蒸着またはスパッタ法等により金属蒸着層を形成する。この金属蒸着層は、NiとCrを主成分とする層と、NiとCuを主成分とする層と、Cuを主成分とする層の少なくとも3層からなる。これら3層の金属蒸着層は、プラスチックフィルム/NiとCrを主成分とする層/NiとCuを主成分とする層/Cuを主成分とする層、の順に積層されている。これによって低抵抗でしかも屈曲性に富む層を形成することができる。
【0014】
NiとCrを主成分とする層は、前記したように、真空蒸着法やスパッタ法などで形成することができる。層の厚さは成膜速度とフィルムの搬送速度を調節することで制御することができる。NiとCrの比率については、真空蒸着の場合はそれぞれの蒸着源の蒸発速度を制御することで自由に決定することができる。また、スパッタ法の場合は、NiとCrのターゲットを別々に用意してそれぞれのスパッタ速度を制御しても良いし、任意の組成比を持つ混合ターゲットを用意しても制御することができる。安定した層厚・層内の組成比が得られることから、組成比を決めた混合ターゲットでスパッタ法を用いることが好ましい。
【0015】
NiとCrを主成分とする層のNiとCrの組成比は、特に限定するものではないが、Crが3〜20重量%程度入っていることが好ましい。Crがこれより少ないと導電性金属層とプラスチックフィルムの密着力が低下したり、配線パターン後の薬液処理に対する耐久性が低下しやすくなるので好ましくない。また、これより多いと配線パターンを形成した後にNiCrが残存しやすく、配線間の絶縁が不足し、好ましくない。
【0016】
前記NiとCrを主成分とする金属蒸着層の次に、NiとCuを主成分とする金属蒸着層を設ける。形成方法、層厚、組成の制御方法は前記NiとCrを主成分とする層と同様に行うことができる。
【0017】
NiとCuを主成分とする層のNiとCuの組成比は、特に限定するものではないが、後述するように、3層の金属蒸着層間で徐々に構成金属元素が入れ替わるために、Cuが20〜80重量%入っていることが好ましい。より好ましくは25〜50%である。これよりCuが多くても少なくても本発明の課題を達成することが難しくなる。
【0018】
NiとCrを主成分とする層の厚さとNiとCuを主成分とする層の厚さの合計は100オングストローム以上であることが好ましい。これより薄いと、本発明の課題を達成することが難しくなる。上記2層の金属蒸着層の厚さの合計はより好ましくは100〜400オングストロームである。厚さはイオンビームでエッチングしながらSIMS(二次イオン質量分析法)やオージェ電子分光法で元素分析することで測定することができる。また、製造においては、より厚く成膜した上で電子顕微鏡で断面の厚さを測定し、時間を短縮するなどして所望の厚さに調整することができる。
【0019】
前記NiとCuを主成分とする金属蒸着層の次に、Cuを主成分とした金属蒸着層を設ける。該金属蒸着層の厚みは、好ましくは100〜3000オングストローム、より好ましくは300〜1200オングストローム、さらに好ましくは400〜1000オングストロームである。銅を主成分とした金属蒸着層の膜厚が100オングストロームよりも薄い場合は、金属の電気めっき工程で銅膜が溶出しやすく、また3000オングストロームよりも厚い場合は、金属の電気めっき工程後に膜がはがれやすく、生産効率も良くないので好ましくない。このCuを主成分とする金属蒸着層の形成方法、層厚の制御方法も前記NiとCrを主成分とする層と同様に行うことができる。
【0020】
以上により、本発明において金属蒸着層は、NiとCrを主成分とする層、NiとCuを主成分とする層、およびCuを主成分とする層の3つの層から構成されている。NiとCrを主成分とする層とCuを主成分とする層の間に、NiとCuを主成分とする層を挿入することで、Ni元素の比率は徐々に減少し、Cu元素の比率は徐々に増大することになる。これにより、金属蒸着層相互の密着力が増し、かつスズ、はんだ、金およびこれらの共晶体がNiとCrを主成分とする層とCuを主成分とする層の間に潜り込む空間を作りにくくすることができる。これにより、前記課題を解決することができる。
【0021】
一方、核付け層としてNiとCuを用いた技術は既に開示されている。すなわち、特開平5−251844号公報には、ポリイミドフィルム上に銅ニッケル合金薄膜を形成した後に、銅薄膜を形成する技術が記載されている。しかしながら、ポリイミドフィルム上に銅ニッケル合金を直接形成する方法では、ポリイミドと銅が直接接している部分が多数存在するため、その部分からスズ、はんだ、金が潜り込みやすく前記課題を解決することができない。本発明では、NiとCrを主成分とする層をNiとCuを主成分とする層の間に挿入することで前記課題を解決することができる。
【0022】
前記金属蒸着層上に、より厚膜の導電性金属層(金属めっき層)を積層する。導電性金属層の積層方法には、湿式めっき、乾式めっき等があり、湿式めっきには電気めっき、無電解めっき等がある。また、乾式めっきには、真空蒸着法やスパッタ法およびそれらの改良方法等がある。中でも、数μmの厚さを持つ導電性金属層を効率よく積層できることから電気めっき法が好ましい。電気めっき工程は、密着性を向上させるための脱脂および酸活性処理、金属ストライク、金属めっきの各工程からなる。金属蒸着層を蒸着した直後に電気めっき工程に入る場合には、脱脂および酸活性処理、金属ストライクを省略してもよい。金属蒸着層に給電する電流密度は0.2〜10A/dm2が好適で、0.5〜5A/dm2がより好適である。
【0023】
形成される導電性金属層(金属めっき層)の厚さは、0.5〜35μmとすることが好ましく、1.0〜20μmがより好適である。金属めっき層の層厚さが0.5μm未満では金属めっき層の信頼性が十分とはいえない。また、厚さが35μmを超えると膜形成に時間がかかり経済性が劣るほか、エッチング加工時に回路パターンの端部エッチングが進行しやすく、また、折り曲げによる断線の恐れがあるなど品質面でも好ましくない。目的とする回路の電流密度によっても異なるが、加工作業性、品質の面から厚さは1.0〜20μm程度がより好適である。
【0024】
めっきの条件は、めっき浴の組成、電流密度、浴温、撹拌条件などにより異なるが、特に制限はない。めっき浴は、硫酸銅浴、ピロりん酸銅浴、シアン化銅浴、スルファミン酸ニッケル浴、スズ−ニッケル合金めっき浴、銅−スズ−亜鉛合金めっき浴、スズ−ニッケル−銅合金めっき浴などが好ましいが、これらに限られるものではない。エッチング後、端子部にシアン化金めっき、シアン化銀めっき、ロジウムめっき、パラジュウムめっきなどの貴金属めっきを補足形成させても良い。
【0025】
次いで、本発明のフレキシブルプリント配線用基板には、エッチングによってパターンがを形成されるが、具体的には金属の不要部分を化学反応で溶解除去し、所定の電気回路図形を形成する。エッチング液としては、塩化第二銅、塩化第二鉄、過硫酸塩類、過酸化水素/硫酸、アルカリエンチャントなどの水溶液などが使用できる。また、パターンとして残すべき金属の必要部分は、写真法やスクリーン印刷法で有機化合物系レジストを被覆させるか、または異種金属系レジストをめっきし保護して、金属の溶解を防止する。本発明の特徴は、よりファインなパターンを形成でき、しかも製品の繰返し屈曲、各種環境試験に十耐えるものを形成できる。
【0026】
本発明のフレキシブルプリント配線用基板は、電子計算機、端末機器、電話機、通信機器、計測制御機器、カメラ、時計、自動車、事務機器、家電製品、航空機計器、医療機器などのあらゆるエレクトロニクスの分野に活用できる。またコネクター、フラット電極などへの適用も可能である。
【0027】
【実施例】
以下、実施例によって本発明のフレキシブルプリント配線用基板について詳述する。実施例中の各特性値の測定は、次の測定法に従って行なった。
(a) 引きはがし強度:JIS・C6481(180度ピール)に準じて評価を行なった。
(b) 常態引き剥がし密着力:上記評価を、パターン形成後100℃で15分乾燥させ、常温常湿下で測定した。
(c) 耐熱引き剥がし密着力:上記評価を、パターン形成後150℃で10日間放置し、取り出した後、常温常湿下で測定した。
(d) 高温高湿引き剥がし密着力:上記評価を、パターン形成後121℃100%RHで4日間放置し、取り出した後、常温常湿下で測定した。
【0028】
また、その他の評価項目として、配線パターンに対して、折り曲げ+420℃加熱+ハンダ付け耐久試験を行った。これは、配線基板に応力と加熱を加えたハンダ付けに対する耐久性を評価したものである。ポリイミドと金属配線の間にハンダが確認できなければOK、ハンダが確認されればNGと判定した。
【0029】
さらに、配線パターンに対して実際にICの実装を行った評価も行った。IC実装後、配線パターンを1本ずつ確認し、金属配線とポリイミドの間にSnやAuが潜り込んでいるかどうかを判断した。配線幅に対して半分以上の潜り込みが見られた配線をNG、半分未満の潜り込みをOKとし、OK配線の全配線数における割合をパーセンテージで示して評価した。これがOK配線の率である。実際の使用においては、OK配線の率が100%であることが必要であるが、実装条件をより厳しくした場合はOK配線の率が100%未満でも相対的に高いOK配線率を持つものを良好と判定した。
【0030】
(実施例1)
厚さ38μmのポリイミドフィルム“カプトン”EN(米国デュポン社の登録商標)の片面に、プラズマ処理を実施した。プラズマ処理は、2mPaの真空度にした真空チャンバー中で、窒素ガスを1.6Paまで導入し、1.1kWのRF電力で行った。次いで、クロム20%ニッケル80%のターゲットを用いて、ポリイミドフィルムのプラズマ処理面上にスパッタ蒸着し厚さ30オングストロームのニッケルクロム蒸着層を形成し、NiとCrを主成分とする金属蒸着層とした。さらにニッケル65%銅35%のターゲットを用いて、前記ニッケルクロム蒸着層上にスパッタ蒸着し、厚さ100オングストロームのニッケル銅蒸着層を形成し、NiとCuを主成分とする金属蒸着層とした。さらに純度99.99%の銅を、NiとCuを主成分とする金属蒸着層の上にスパッタ蒸着し厚さ800オングストロームの銅蒸着層を形成した。その後、厚さ8μmの電気銅めっきを行い、金属蒸着層上に導電性金属層を形成した。得られたフレキシブルプリント配線用基板の引き剥がし密着力の測定結果を表1に示した。常態密着力、耐熱引き剥がし密着力、高温高湿引き剥がし密着力において、良好な結果を示した。また、このフレキシブルプリント配線用基板の金属層をエッチングし、幅1mmの配線パターンを作製した。この配線パターンに対して、折り曲げ+420℃加熱+ハンダ付けを行ったところ、ポリイミドフィルムと金属層の間へのハンダの潜り込みは観察されなかった。
【0031】
また、このフレキシブルプリント配線用基板の金属層をエッチングし、幅30μm、スペース40μmの配線パターンを作製した。この配線パターンに対して、無電解Snめっきを施し、厚さ0.2μmのSnめっき層を形成した。この配線パターンと金バンプを持ったICを(株)新川製のボンディング装置ILT−110を用いてIC実装したところ、300本の配線パターン全てにおいて銅層とポリイミドフィルムの間にSnやAuは見られず、正常に実装できた。このときの実装条件は、ツール温度370℃、ステージ温度445℃、実装時間1秒、フォーミング量50μmであった。さらにステージ温度に対するマージンを見るため、ステージ温度を485℃に上げて同様にIC実装したところ、300本の配線パターンのうち70%の配線で正常に実装できたが、残り30%の配線にはSnとAuの潜り込みが観察された。以上の結果を表2に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
(実施例2)
実施例1と同様にプラズマ処理したポリイミドフィルム上に、クロム5%ニッケル95%のターゲットを用いてスパッタ蒸着し、厚さ100オングストロームのニッケルクロム蒸着層を形成しNiとCrを主成分とする金属蒸着層とした。さらにニッケル65%銅35%のターゲットを用いて、前記ニッケルクロム蒸着層上にスパッタ蒸着し、厚さ100オングストロームのニッケル銅蒸着層を形成し、NiとCuを主成分とする金属蒸着層とした。さらに純度99.99%の銅をNiとCuを主成分とする金属蒸着層の上にスパッタ蒸着し厚さ800オングストロームの銅蒸着層を形成し、金属蒸着層とした。その後、厚さ8μmの電気銅めっきを行い、金属蒸着層上に導電性金属層を形成し、フレキシブルプリント配線用基板を作製した。実施例1と同様に、引き剥がし密着力の測定を行ったところ、表1の結果を得た。実施例1と比較してほぼ同じ結果となった。
【0034】
また、このフレキシブルプリント配線用基板の金属層をエッチングし、幅1mmの配線パターンを作製した。この配線パターンに対して、折り曲げ+420℃加熱+ハンダ付けを行ったところ、ポリイミドフィルムと金属層の間へのハンダの潜り込みが観察されず、実施例1と同様の結果であることが確認された。
【0035】
また、実施例1と同様にしてIC実装を行ったところ、配線パターンの銅層とポリイミドフィルムの間のAuとSnの潜り込みは、ステージ温度445℃では全ての配線で確認されず、全て正常に実装できた。また、ステージ温度485℃では73%の配線で正常に実装できた。結果を表2に示す。
【0036】
(実施例3)
実施例1と同様にプラズマ処理したポリイミドフィルム上に、クロム5%ニッケル95%のターゲットを用いてスパッタ蒸着し、厚さ100オングストロームのニッケルクロム蒸着層を形成しNiとCrを主成分とする金属蒸着層とした。さらにニッケル65%銅35%のターゲットを用いて、前記ニッケルクロム蒸着層上にスパッタ蒸着し、厚さ200オングストロームのニッケル銅蒸着層を形成し、NiとCuを主成分とする金属蒸着層とした。さらに純度99.99%の銅をNiとCuを主成分とする金属蒸着層の上にスパッタ蒸着し厚さ800オングストロームの銅蒸着層を形成し、金属蒸着層とした。その後、厚さ8μmの電気銅めっきを行い、金属蒸着層上に導電性金属層を形成し、フレキシブルプリント配線用基板を作製した。実施例1と同様に、引き剥がし密着力の測定を行ったところ、表1の結果を得た。実施例1と比較してほぼ同じ結果となった。
【0037】
また、このフレキシブルプリント配線用基板の金属層をエッチングし、幅1mmの配線パターンを作製した。この配線パターンに対して、折り曲げ+420℃加熱+ハンダ付けを行ったところ、ポリイミドフィルムと金属層の間へのハンダの潜り込みが観察されず、実施例1と同様の結果であることが確認された。
【0038】
また、実施例1と同様にしてIC実装を行ったところ、配線パターンの銅層とポリイミドフィルムの間のAuとSnの潜り込みは、ステージ温度445℃では全ての配線で確認されず、全て正常に実装できた。また、ステージ温度485℃では80%の配線で正常に実装できた。結果を表2に示す。
【0039】
(実施例4)
実施例1と同様にプラズマ処理したポリイミドフィルム上に、クロム20%ニッケル80%のターゲットを用いてスパッタ蒸着し、厚さ30オングストロームのニッケルクロム蒸着層を形成しNiとCrを主成分とする金属蒸着層とした。さらにニッケル65%銅35%のターゲットを用いて、前記ニッケルクロム蒸着層上にスパッタ蒸着し、厚さ50オングストロームのニッケル銅蒸着層を形成し、NiとCuを主成分とする金属蒸着層とした。さらに純度99.99%の銅をNiとCuを主成分とする金属蒸着層の上にスパッタ蒸着し厚さ800オングストロームの銅蒸着層を形成し、金属蒸着層とした。その後、厚さ8μmの電気銅めっきを行い、金属蒸着層上に導電性金属層を形成し、フレキシブルプリント配線用基板を作製した。実施例1と同様に、引き剥がし密着力の測定を行ったところ、表1の結果を得た。実施例1と比較してほぼ同じ結果となった。
【0040】
また、このフレキシブルプリント配線用基板の金属層をエッチングし、幅1mmの配線パターンを作製した。この配線パターンに対して、折り曲げ+420℃加熱+ハンダ付けを行ったところ、ポリイミドフィルムと金属層の間へのハンダの潜り込みが観察されず、実施例1と同様の結果であることが確認された。
【0041】
また、実施例1と同様にしてIC実装を行ったところ、配線パターンの銅層とポリイミドフィルムの間のAuとSnの潜り込みは、ステージ温度445℃では全ての配線で確認されず、全て正常に実装できた。しかし、ステージ温度485℃では55%の配線で正常に実装できたが、実施例1や実施例2よりは若干劣る結果となった。結果を表2に示す。
【0042】
(比較例1)
実施例1と同様にプラズマ処理したポリイミドフィルム上に、クロム20%ニッケル80%のターゲットを用いてスパッタ蒸着し、厚さ45オングストロームのニッケルクロム蒸着層を形成し、さらに純度99.99%の銅をニッケルクロム蒸着層の上にスパッタ蒸着し厚さ800オングストロームの銅蒸着層を形成し、金属蒸着層とした。その後、厚さ9μmの電気銅めっきを行い、金属蒸着層上に導電性金属層を形成し、フレキシブルプリント配線用基板を作製した。実施例1と同様に引き剥がし密着力の測定を行ったところ、表1の結果を得た。実施例1と比較して、ほぼ同等の結果となった。また、このフレキシブルプリント配線用基板の金属層をエッチングし、幅1mmの配線パターンを作製した。この配線パターンに対して、折り曲げ+420℃加熱+ハンダ付けを行ったところ、ポリイミドフィルムと金属層の間へのハンダの潜り込みが観察され、実施例1よりも劣っていることが確認された。
【0043】
また、実施例1と同様にしてIC実装を行ったところ、配線パターンの銅層とポリイミドフィルムの間のAuとSnの潜り込みが、ステージ温度445℃で88%の配線で確認され、正常に実装できていなかった。結果を表2に示す。
【0044】
(比較例2)
実施例1と同様にプラズマ処理したポリイミドフィルム上に、クロム20%ニッケル80%のターゲットを用いてスパッタ蒸着し、厚さ145オングストロームのニッケルクロム蒸着層を形成し、さらに純度99.99%の銅をニッケルクロム蒸着層の上にスパッタ蒸着し厚さ800オングストロームの銅蒸着層を形成し、金属蒸着層とした。その後、厚さ8μmの電気銅めっきを行い、金属蒸着層上に導電性金属層を形成し、フレキシブルプリント配線用基板を作製した。このフレキシブルプリント配線用基板の金属層をエッチングし、幅1mmの配線パターンを作製したところ、配線間にニッケルクロム蒸着層が残留し、配線パターン間の絶縁が取れず、フレキシブルプリント配線板として不適であった。
【0045】
(比較例3)
実施例1と同様にプラズマ処理したポリイミドフィルム上に、クロム5%ニッケル95%のターゲットを用いてスパッタ蒸着し、厚さ75オングストロームのニッケルクロム蒸着層を形成し、さらに純度99.99%の銅をニッケルクロム蒸着層の上にスパッタ蒸着し厚さ800オングストロームの銅蒸着層を形成し、金属蒸着層とした。その後、厚さ9μmの電気銅めっきを行い、金属蒸着層上に導電性金属層を形成し、フレキシブルプリント配線用基板を作製した。
【0046】
実施例1と同様に引き剥がし密着力の測定を行ったところ、表1の結果を得た。各実施例と比較して、常態密着力、耐熱引き剥がし密着力および高温高湿引き剥がし密着力全てにおいて少しずつ劣っている結果となった。
【0047】
このフレキシブルプリント配線用基板の金属層をエッチングし、幅1mmの配線パターンを作製した。この配線パターンに対して、折り曲げ+420℃加熱+ハンダ付けを行ったところ、比較例1よりは少なかったものの、ポリイミドフィルムと金属層の間へのハンダの潜り込みが観察され、実施例1よりも劣っていることが確認された。
【0048】
また、実施例1と同様にしてIC実装を行ったところ、配線パターンの銅層とポリイミドフィルムの間のAuとSnの潜り込みは、ステージ温度445℃で90%の配線で確認され、正常に実装できていなかった。結果を表2に示す。
【0049】
(比較例4)
実施例1と同様にプラズマ処理したポリイミドフィルム上に、ニッケル65%銅35%のターゲットを用いてスパッタ蒸着し、厚さ80オングストロームのニッケル銅蒸着層を形成し、NiとCuを主成分とする金属蒸着層とした。さらに純度99.99%の銅をNiとCuを主成分とする金属蒸着層の上にスパッタ蒸着し厚さ800オングストロームの銅蒸着層を形成し、金属蒸着層とした。その後、厚さ8μmの電気銅めっきを行い、金属蒸着層上に導電性金属層を形成し、フレキシブルプリント配線用基板を作製した。
【0050】
実施例1と同様に引き剥がし密着力の測定を行ったところ、表1の結果を得た。実施例1と比較して、常態引き剥がし密着力はほぼ同じ結果となったが、耐熱引き剥がし密着力および高温高湿引き剥がし密着力は少し劣る結果となった。
【0051】
また、このフレキシブルプリント配線用基板の金属層をエッチングし、幅1mmの配線パターンを作製した。この配線パターンに対して、折り曲げ+420℃加熱+ハンダ付けを行ったところ、ポリイミドフィルムと金属層の間へのハンダの潜り込みが観察されず、実施例1と同様の結果であることが確認された。
【0052】
また、実施例1と同様にしてIC実装を行ったところ、配線パターンの銅層とポリイミドフィルムの間のAuとSnの潜り込みは、ステージ温度445℃で21%の配線で確認され、正常に実装できていなかった。結果を表2に示す。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、プラスチックフィルムの上に金属層を約0.5〜35μmの厚みに形成することができ、パターン形成、エッチング、配線、IC実装などの工程を経ても、さらに厳しい環境試験を経ても、はくり、はがれのない密着性に優れたFPC基板、COF基板等のフレキシブルプリント配線用基板が得られる。しかも、従来は、たとえば、銅箔の厚さの限界により12μm未満のものは生産されていなかったが、0.5〜11μmのより薄い銅層を形成できることにより、パターン精度が向上し、より高密度、高精度の配線が可能となる。しかも、銅箔ラミネート時に発生していた折れきずやピンホールが少なく、経済性と高い品質を兼ね備えたフレキシブルプリント配線用基板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明のフレキシブルプリント配線用基板の好適例を示す断面図である。
【符号の説明】
1:プラスチックフィルム
2:金属蒸着層(NiとCrを主成分とする層)
3:金属蒸着層(NiとCuを主成分とする層)
4:金属蒸着層(Cuを主成分とする層)
5:導電性金属層
Claims (4)
- プラスチックフィルムの片面または両面に、金属蒸着層を設け、該金属蒸着層上に導電性金属層を積層してなるフレキシブルプリント配線用基板において、該金属蒸着層がプラスチックフィルム側から順に、NiとCrを主成分とする層とNiとCuを主成分とする層とCuを主成分とする層の少なくとも3層が積層された構造からなることを特徴とするフレキシブルプリント配線用基板。
- プラスチックフィルムが、ポリエステルフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリパラジン酸フィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテル・エーテルケトンフィルム、芳香族ポリアミドフィルム、ポリオキサゾールフィルム、液晶ポリマーからなるフィルムおよびこれらのハロゲン基置換体あるいはメチル基置換体からなるフィルムから選ばれたものである請求項1記載のフレキシブルプリント配線用基板。
- 金属蒸着層のうちNiとCrを主成分とする層とNiとCuを主成分とする層の合計厚さが100オングストローム以上であることを特徴とする請求項1または2記載のフレキシブルプリント配線用基板。
- 導電性金属層を積層する方法が電気めっき法であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフレキシブルプリント配線用基板。
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