JPWO2019155553A1 - チタン合金材 - Google Patents

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Abstract

質量%でCu:0.7%〜1.4%、Sn:0.5%〜1.5%、Si:0.10%〜0.45%、Nb:0.05%〜0.50%、Fe:0.00%〜0.08%、O:0.00%〜0.08%を含有し、残部がTi及び不純物からなり、組織中のα相の面積分率が96.0%以上であり、金属間化合物の面積分率が1.0%以上であり、前記α相の平均結晶粒径が10μm以上100μm以下であり、前記金属間化合物の平均粒径が0.1〜3.0μmである、チタン合金材。

Description

本発明は、例えば排気系部品などに好適に用いられる高温強度及び成形加工性に優れるチタン合金材に関する。
従来、四輪自動車や二輪車(以下、自動車等という)の排気装置の構成部材には、耐食性、強度や加工性等に優れたステンレス鋼が使用されていたが、近年では、ステンレス鋼よりも軽量であり、高強度で耐食性にも優れるチタン材が使用されつつある。例えば、二輪車の排気装置には、JIS2種で規定されるチタン材(所謂工業用純チタン)が使われている。さらに、最近では、JIS2種で規定されるチタン材に代わって、より耐熱性が高いチタン合金材が使用されている。また、近年、排気ガスの有害成分除去のため、高温で使用する触媒を搭載したマフラーも使用されている。
自動車等の排気装置には、エキゾーストマニホールド及びエキゾーストパイプが備えられている。エキゾーストパイプは、途中に触媒を搭載又は塗布した触媒装置や、マフラー(消音器)を入れるため、いくつかに分割されて構成される。本明細書では、エキゾーストマニホールドからエキゾーストパイプ、排気口までの全体を通して、「排気装置」と称する。また、排気装置を構成する部品を「排気系部品」と称する。自動車等のエンジンから排出される燃焼ガスは、エキゾーストマニホールドによりまとめられ、エキゾーストパイプを介して車両後方の排気口から排出される。排気装置は高温の排気ガスに曝されるため、排気装置を構成するチタン材は高温域においての強度及び耐食性が求められる。また、これら排気装置の部品は形状が複雑であるため、室温における成形加工性も求められる。
特許文献1には、Cu、Sn、Si及びOを含有し、CuとSnの合計量が1.4〜2.7%であり、残部がTi及び不可避的不純物からなる耐酸化性に優れた排気系部品用耐熱チタン合金材が記載されている。また、特許文献1では、上記成分のチタン合金を熱間圧延し、更に冷間圧延し、750〜830℃で焼鈍することにより排気系部品用耐熱チタン合金材を製造している。
また、特許文献2には、Cu、O及びFeを含有し、残部がTi及び0.3%以下の不純物からなる冷間加工性に優れた耐熱チタン合金板が記載されている。特許文献2では、上記成分のチタン合金に対して熱間圧延、熱延板焼鈍、冷間圧延、中間焼鈍、最終焼鈍等の工程を施し、最終焼鈍を600〜650℃の温度で行うことにより冷間加工性に優れた耐熱チタン合金板を製造している。
更に、特許文献3には、Cu、Si及びOを含有し、残部がTi及び不可避的不純物からなる耐酸化性及び成形性に優れた排気系部品用耐熱チタン合金材が記載されている。特許文献3では、上記成分のチタン合金に対して熱間圧延、熱延板焼鈍、冷間圧延、最終焼鈍等の工程を施し、最終焼鈍を630〜700℃の温度で行うことにより耐酸化性及び成形性に優れた排気系部品用耐熱チタン合金材を製造している。
しかし、特許文献1〜特許文献3に記載のチタン合金材であっても、高温域においての強度と、室温における成形加工性の両立が十分ではなかった。
特許第4819200号公報 特開2005−298970号公報 特開2009−68026号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高温強度に優れ、かつ、室温における成形加工性に優れるチタン合金材及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
[1]
質量%で
Cu:0.7%〜1.4%、
Sn:0.5%〜1.5%、
Si:0.10%〜0.45%、
Nb:0.05%〜0.50%、
Fe:0.001%〜0.08%、
O:0.001%〜0.08%
を含有し、残部がTi及び不純物からなり、
組織中のα相の面積分率が96.0%以上であり、金属間化合物の面積分率が1.0%以上であり、
前記α相の平均結晶粒径が10μm以上100μm以下であり、前記金属間化合物の平均粒径が0.1〜3.0μmである、チタン合金材。
[2]
更に、質量%で、
Bi:0.1〜2.0%、
Ge:0.1〜1.5%
のいずれか一方または両方を含有し、
これらの合計量が3.0%未満である、[1]に記載のチタン合金材。
[3]
25℃での破断伸びが25.0%以上、かつ、25℃での0.2%耐力が340MPa以下であり、700℃での引張強度が60MPa以上である、[1]に記載のチタン合金材。
本発明によれば、高温強度に優れ、かつ、室温における成形加工性に優れるチタン合金材を提供できる。このチタン合金材は、さらに耐酸化性と成形後の外観にも優れる。
本実施形態によるチタン合金材の製造方法の一例を示すフロー図である。 焼鈍1、2の説明図である。
以下本発明を詳細に説明する。
チタン合金材の高温強度を向上させるためには、合金元素を添加して固溶強化させることが通常行われる。しかし、高温強度が向上したチタン合金材は、室温でも高強度になるため、成形加工時のスプリングバックが大きくなり、成形性が低下する。例えば、溶接などを自動化して排気装置等の製品を効率的に生産するためには、スプリングバックによる位置ずれを小さくする必要がある。なお、本明細書において室温とは、20℃〜30℃である。室温は、好ましくは25℃である。
スプリングバックを抑制するには、ヤング率を高めるか、強度、特に0.2%耐力を低くすることが有効である。ヤング率を高めるためには、AlまたはOを添加するか、集合組織を発達させる必要があるが、これではスプリングバック以前に材料の延性やプレス成形性自体を阻害してしまう。そこで、室温での強度を低くしつつ、高温での強度を増加させる方法を検討し、温度によって固溶限が大きく異なる元素を活用することを知見するに至った。これによって、成形される室温においては添加元素が析出していることで強度が低く、高温域で使用される際には析出物が固溶することで高温強度が確保することが可能なチタン合金材を発明するに至った。
ここで、上述した0.2%耐力について説明する。チタン合金材では、引張試験において、降伏現象を示す場合と示さない場合がある。降伏現象を示さない場合には、弾性変形と塑性変形の境界を便宜上明らかにするため、降伏応力に相当する応力を耐力と定義する必要がある。一般には、鋼の降伏時の永久ひずみが約0.002(0.2%)であることから、除荷時の永久ひずみが0.2%になる応力を0.2%耐力と呼び、本願明細書においてもこれを降伏応力に代用する。
成形性を確保するためには、α相の平均結晶粒径を大きくして延性を高めるとよい。このとき、組織中に金属間化合物が残存していると、金属間化合物によってα相の粒成長が阻害されるので、金属間化合物が析出しないような比較的高い温度域において焼鈍を行ってα相の粒成長を促すとよい。
その一方で、合金添加元素が金属組織中に固溶すると、金属組織が固溶強化され、0.2%耐力が向上してスプリングバックが発生しやすくなり、室温での成形性が阻害されるので、金属間化合物がある程度あったほうがよい。金属間化合物を析出させるためには、α相が成長する温度域よりも低い温度域において長時間にわたって焼鈍を行えばよい。金属間化合物の析出は、後述する2回目の焼鈍(金属間化合物の析出処理)によって実現させることができる。
ここで、金属間化合物を形成した後に、α相の結晶粒径を大きくするための焼鈍を行うと、先に析出させた金属間化合物が焼鈍によって金属組織中に再固溶してしまい、室温での成形性を確保できなくなる。そこで、α相の結晶粒径を大きくさせるための焼鈍を先に行い、その後、金属間化合物を析出させる焼鈍を行う必要がある。
また、チタン合金の金属組織は、冷間圧延が施されることによってロール圧下力を受けるため、冷間圧延後の組織は圧延方向に引き延ばされた形態を有する組織になる。従って、α相の平均結晶粒径を制御するための焼鈍は、冷間圧延後に実施する必要がある。
以上説明したように、本発明においては、冷間圧延後にα相の平均結晶粒径を制御する焼鈍を行い、次いで、金属間化合物を析出させる焼鈍を行うことが望ましい。
このような工程を経て得られたチタン合金材は、α相の結晶粒径が比較的大きく、かつ、金属間化合物が析出した組織を有するものとなり、室温での成形性を確保することができる。また、Cu、Snといった固溶限が広い合金添加元素を含んでいるため、高温時に金属間化合物が金属組織中に固溶して0.2%耐力が向上し、高温強度を高めることができる。
本発明に係るチタン合金材は、特に自動車や二輪車等の排気装置の排気系部品の構成材として好適に用いられる。排気装置は、チタン合金材を成形加工することにより各種の排気系部品とし、これらの排気系部品を組み合わせることで製造される。その後、排気系装置は自動車等に搭載され、使用される。排気装置が使用されることにより、構成部材であるチタン合金材は、高温の排気ガスに曝されて高い温度に加熱される。本発明に係るチタン合金材は、高い温度に加熱される前、すなわち室温では、金属組織中に金属間化合物が存在し、かつ、α相の平均結晶粒径が比較的大きいため、強度が低くなっており、成形加工性が向上し、成形加工時のスプリングバックも低減される。その後、排気装置の使用時にチタン合金材が高温の排気ガスに曝されて高温に加熱されることで、成形加工時に存在していた金属組織中の金属間化合物が固溶して固溶強化が図られ、優れた高温強度が確保されるようになる。本発明に係るチタン合金材は、室温での成形加工性の指標として、25℃での破断伸びが25.0%以上、かつ、25℃での0.2%耐力が340MPa以下とする。また、高温強度の指標として、700℃での引張強度が60MPa以上とする。
以下本発明の実施形態であるチタン合金材について詳細に説明する。
まず、各成分元素の含有量について説明する。ここで、成分についての「%」は質量%である。また、化学組成はインゴットではなく、仕上げ焼鈍まで施されたチタン合金材での分析値である。
(Cu:0.7%〜1.4%)
Cuは、固溶限が広く、高温強度及び室温での強度を向上させる元素である。高温強度を向上させるためには、0.7%以上含有する必要がある。Cuを過剰に含有すると、TiCuなどの金属間化合物が多量に析出し、延性が損なわれる。さらに、使用される際には780℃を超えるとβ相が形成されるようになるため、高温強度が低下する懸念がある。さらに、TiCuの析出量が多いと、α相の粒成長が阻害され細粒となり、室温での延性を低下させてしまう。そのため、Cu含有量の上限を1.4%以下とする。したがって、Cuの含有量を0.7%〜1.4%とする。Cuの下限は、0.8%、0.9%又は1.0%でもよい。又、Cuの上限は、1.3%、1.2%又は1.1%でもよい。
(Sn:0.5%〜1.5%)
Snは、固溶限が広く、高温強度を向上させる元素である。高温強度を向上させるためには、Snを0.5%以上含有する必要がある。また、後述するSiは高温強度と耐酸化性を向上させるが、大型鋳塊を用いて製品を製造する場合に偏析を生じやすく、製造コストを抑制するために大型鋳塊を用いるには不向きである。そのため、偏析が小さいSnを添加することで高温強度のばらつきを低減する必要がある。なお、Snを過剰に含有すると、TiCuなどの金属間化合物の析出を促進するため、1.5%以下に制限する必要がある。したがって、Sn含有量を0.5%〜1.5%とする。Snの下限は、0.6%、0.7%又は0.8%でもよい。又、Snの上限は、1.4%、1.3%又は1.2%でもよい。
(Si:0.10%〜0.45%)
Siは、高温強度及び耐酸化性を向上させる元素である。ただし、偏析も考慮すると、これらの効果を得るには、Siを0.10%以上含有する必要がある。Siを過剰に含有すると、高温強度及び耐酸化性の向上効果が含有量に対して小さくなり、さらに、金属間化合物(シリサイド)を多量に析出し、室温での延性を低下させてしまうため、上限を0.45%以下とする。したがって、Si含有量を0.10%〜0.45%とする。Siの下限は、0.15%、0.20%又は0.25%でもよい。又、Siの上限は、0.40%、0.35%又は0.30%でもよい。
(Nb:0.05%〜0.50%)
Nbは、耐酸化性を向上させる元素である。また、発明の添加範囲においてNbはSiに比べて偏析が小さい元素である。そのため、Siの偏析による耐酸化性のばらつきを低減するためにNbも添加する必要がある。耐酸化性の向上効果を得るには、Nbを0.05%以上含有する必要がある。Nbを過剰に含有すると、含有量に対して耐酸化性の向上効果が小さくなり、また、β相を形成しやすくなる。さらにNbは高価であることから、上限を0.50%以下とする。したがって、Nb含有量を0.05%〜0.50%とする。Nbの下限は、0.10%、0.15%又は0.20%でもよい。又、Nbの上限は、0.40%、0.35%又は0.30%でもよい。
(Fe:0.00%〜0.08%)
Feは、不可避的に含まれる元素である。また、Feはβ安定化元素であり、過剰に含まれるとβ相を形成しやすく、α相の結晶粒の成長を妨げる。室温において十分な延性を得るためには、α相の結晶粒を成長させる必要があるため、Fe含有量は少ないほうが好ましい。したがって、Fe含有量は0.00%〜0.08%とする。Feの上限は、0.06%、0.04%又は0.02%でもよい。
(O:0.00%〜0.08%)
Oは、不可避的に含まれる元素であり、室温での強度を向上させ、延性を低下させる。高温での強度に対する寄与はほとんどないため、含有量は少ないほうが好ましい。したがって、O含有量を0.00%〜0.08%とする。Oの上限は、0.06、0.04%又は0.02%でもよい。
本実施形態のチタン合金材の残部は、Ti及び上記以外の他の不純物である。Fe、Oの他の不純物元素として、C、N、H、Cr、Al、Mo、Zr、Mn、V及びNiがあるが、これら不純物の含有量が多いと、室温での延性が低下する。したがって、それぞれの不純物元素の上限を、0.05%以下とすることが望ましい。また、これら不純物元素の含有量の合計を0.3%未満とすることが望ましい。
[選択元素について]
本実施形態のチタン合金材は、Tiの一部に代えて、BiまたはGeのうち一方または両方を、含有量の合計が3.0%未満の範囲で含有してもよい。BiまたはGeのうち一方または両方Cuの上限は、2.5%、2.0%又は1.5%でもよい。
(Bi:0.1%〜2.0%)
Biは、高温ではある程度の固溶限を有しており、高温強度を向上させるために0.1%以上含有してもよい。しかし、Biは、CuやSiと同様に金属間化合物を生じ、室温での延性を低下させるため、上限を2.0%以下とする。Biの下限は、0.2%、0.3%又は0.4%でもよい。又、Biの上限は、1.5%、1.0%又は0.8%でもよい。
(Ge:0.1%〜1.5%)
Geは、高温ではある程度の固溶限を有しており、高温強度を向上させるために0.1%以上含有してもよい。しかし、Geは、CuやSiと同様に金属間化合物を生じ、室温での延性を低下させるため、上限を1.5%以下とする。Biの下限は、0.2%、0.3%又は0.4%でもよい。又、Biの上限は、1.2%、1.0%又は0.8%でもよい。BiとGeを複合添加する場合、固溶限はどちらも小さくなるため、各元素の上限である2.0%ずつ添加(合計4.0%)すると金属間化合物が形成される。そのため、BiとGeの合計添加量は3.0%以下でなければ、多量の金属間化合物によって延性が劣化する。
以上のように、本実施形態のチタン合金材は、上述の基本元素を含み、残部がTi及び不純物からなる化学組成、または、上述の基本元素と、上述の選択元素から選択される少なくとも1種とを含み、残部がTi及び不純物からなる化学組成を有する。
[α相の面積分率及び金属間化合物の面積分率]
本実施形態のチタン合金材は、室温において、金属組織中に金属間化合物を析出させることによって、固溶強化を抑制し、0.2%耐力を低下させ、成形加工性を向上させる。この効果を得るためには、チタン合金材中に金属間化合物が、面積分率で1.0%以上析出している必要がある。ただし、金属間化合物が多量に析出しすぎると、析出強化により室温での延性を低下させる場合があるので、金属間化合物の面積分率を4.0%以下とする。金属間化合物の面積分率は、3.0%以下、又は、2.0%以下でもよい。また、α相の面積分率を96.0%以上とする。α相の面積分率の下限は、97.0%、98.0%でもよい。
ここでの面積分率の測定は走査型電子顕微鏡を用いて、L断面の板厚中央部500μm×500μm(250000μm)以上の領域において反射電子像について画像解析することにより行う。測定領域は1視野でなくとも、複数視野の合計で250000μm以上が確保されても良い。反射電子像では母相よりも白い領域もしくは黒い領域が存在するため、これの面積分率を金属間化合物として求める。これら白い領域もしくは黒い領域は、α相の粒界もしくは粒内に表れる。黒い部分は原子番号が小さな元素が濃化しており、例えばTi−Si系金属間化合物である。反射電子像で白い領域は原子番号が大きな元素が濃化しており、例えばTi−Cu系金属間化合物である。一方、チタン合金材には、α相と金属間化合物以外にβ相が存在する場合がある。β相も同様に、反射電子像で白い領域として表示される。この白い領域において、金属間化合物とβ相を反射電子像だけで分離することは難しい。分離するためにはEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)やEDX(Energy Dispersive X−ray spectrometry)によってβ相に濃化するFeの濃化の有無を確認する必要がある。しかし、本実施形態のチタン合金にはβ相は存在しないか、存在したとしても面積分率で0.2%以下である。α相を第一相とする本実施形態のチタン合金においては、β相は金属間化合物と合わせて第二相と認識すればよい。すなわちβ相が含まれる場合、β相の面積分率は、金属間化合物の面積分率に含めてもよい。
[α相の平均結晶粒径]
本実施形態のチタン合金材は、α相の結晶粒径を大きくすることにより、室温での延性を向上させ、0.2%耐力を低下させる。そのため、主相であるα相の平均結晶粒径が、10μm以上である必要がある。10μmよりも小さいと0.2%耐力が高くなりすぎる場合や伸びが不十分となる場合がある。より好ましくは12μm以上であり、更に好ましくは15μm以上である。平均結晶粒径が大きいほど室温での延性に優れるが、100μmを超えると、成形によってしわが発生し、外観を損ねる可能性がある。したがって、α相の平均結晶粒径の上限を100μmとする必要がある。望ましくは70μm以下であり、より望ましくは50μm以下である。
なお、α相の平均結晶粒径はL断面において板厚中央付近を光学顕微鏡もしくは走査型電子顕微鏡で観察した組織写真を用いて、切断法により求めた。具体的には、200μm×200μm以上の領域において、長手方向が圧延方向である長さLn(200μm以上)の線分を厚さ方向に30μm以上の間隔をあけて5本引き、当該線分のそれぞれが分断する結晶粒の数Xnを測定し、(1)式で求めた各線分の結晶粒径Dnの平均値Dによって(2)式で求めた。線分で完全に横切った結晶粒は1個、結晶粒内で線分が途切れた場合は0.5個とした。
Dn (μm)=Ln / Xn (1)
D (μm) = (D+D+D+D+D)/5 (2)
[金属間化合物の平均粒径]
本実施形態のチタン合金材は、金属間化合物が所定の面積分率で析出することにより、α相中の金属間化合物の固溶量が減少し、室温での0.2%耐力が低下する。析出した金属間化合物は、高温に曝されることで、再度α相中に固溶するため、高温強度が向上する。粗大な金属間化合物が析出していると、高温に曝された時に固溶しにくく、十分な高温強度が得られないため、金属間化合物の平均粒径を3.0μm以下とする必要がある。しかし、微細分散しすぎると、析出強化の効果が大きくなり、延性が低下してしまう。そのため、金属間化合物の平均粒径の下限を0.1μmとする。なお、本実施形態における金属間化合物には、TiCu、チタンシリサイドなど、チタンとその他の金属元素からなる金属間化合物は勿論、チタン以外の金属元素同士の金属間化合物も含まれる。金属間化合物の粒径を観察するためには走査型電子顕微鏡を用いる。測定範囲は金属間化合物の面積分率の場合と同じであるが、各々の金属間化合物を測定する場合は1000倍を目安に行うのが良く、より高倍率での測定でも良い。
[製造方法]
次に、本実施形態によるチタン合金材の製造方法の一例について、図1を参照にして説明する。製造工程の流れを図1に示す。図1中、インゴット製造、熱間圧延、脱スケール、冷間圧延、仕上げ焼鈍(焼鈍1+焼鈍2)は必須の工程であり、鍛造・分塊圧延、熱延板焼鈍、中間焼鈍・冷間圧延、形状矯正は必要に応じて行う工程である。
[熱間圧延]
熱間圧延する素材は、真空アーク溶解や電子ビーム溶解などの方法で鋳造された、上述の化学組成を有するインゴットを用いる。なお、鍛造・分塊圧延を熱間圧延の前に加えてもよい。鍛造・分塊圧延は1000℃以上(望ましくは1050℃以上)に加熱して行う。熱間圧延は800〜1100℃で加熱し圧延を行う。この時の熱間圧延温度は800℃を下回ると変形抵抗が大きくなり、熱間圧延が困難になる。1100℃を超えると、酸化が激しく、熱間圧延によるスケール押し込みやスケール部分が多くなることにより、歩留まりが低下する。
[熱延板焼鈍]
熱延板焼鈍は、熱間圧延後のチタン合金材のひずみを低減することにより、冷間圧延をしやすくする目的で行う。ただし、この工程は必ずしも行う必要は無く、冷間圧延性が不足する場合に実施すればよい。熱延板焼鈍は、過剰な酸化を抑制し、歩留まりの低下を抑制するために、750〜850℃で行う。焼鈍時間に特に制限は無いが、1分〜60分程度の保持で十分である。
[冷間圧延]
冷間圧延は熱間圧延もしくは熱延板焼鈍後の脱スケールを行った後に行う。脱スケールは一般的な方法でよく、たとえばショットブラストを行った後に硝酸とふっ酸の混酸による酸洗によって表層を除去する方法である。冷間圧延では均一な組織を得るために、冷間での総圧延率(冷間圧延率)を高くする必要があり、冷間圧延率は50%以上が望ましい。一方で、冷間圧延率が95%を超えて冷間圧延をすると、歩留まりを大きく低下させるような耳割れを生じるため、冷間圧延率の上限は95%以下とする。より好ましくは90%以下であり、さらに好ましくは85%以下である。中間焼鈍を施す場合は、中間焼鈍後の冷間圧延で50%以上の冷間圧延率とすればよい。なお、中間焼鈍は熱延板焼鈍と同様に750〜850℃で行うことが望ましい。
次に冷間圧延後のチタン合金材に対して、仕上げ焼鈍を行う。750〜830℃で1回目の焼鈍を施し、更に、550〜720℃で2回目の焼鈍を施す。2回にわたる焼鈍を行うことにより、目的とする金属組織が得られる。なお、これら1回目の焼鈍と2回目の焼鈍との間には、冷間圧延を行わない。
[1回目の焼鈍(溶体化処理)]
1回目の焼鈍(以下、焼鈍1という)は、金属間化合物を固溶させつつ、α相の結晶粒を粗粒化させる目的で行う。そのためには、750℃以上で焼鈍を行う必要がある。本実施形態のチタン合金材は、高温強度を高めるために合金元素を多量に含有しており、750℃を下回る温度では金属間化合物が析出し、α相の粒成長が阻害され、粗粒化が困難になる。そのため、粗粒化のために長時間が必要となり、析出した金属間化合物が粗大化する。さらに2回目の焼鈍においても、すでに存在する金属間化合物が成長するため、粗大な金属間化合物を形成することになる。一方、焼鈍温度が830℃を超えると、β相が形成されるため、α相の結晶粒成長が阻害される。また、750℃以上では、バッチ式焼鈍を行うとコイル同士の接触部で接合し、焼付きを生じるため不適切である。そのため、連続式焼鈍によって焼鈍1が施される。したがって、α相の平均結晶粒径を所定の範囲に制御するために、焼鈍1は連続式焼鈍によって750℃〜830℃で実施する。好ましい範囲は770〜820℃であり、より好ましい範囲は780〜810℃である。焼鈍1後の冷却は、金属間化合物の一つであるTiCuの析出速度が極めて遅いことから、空冷や炉冷程度でもよい。好ましくは550℃以下までの平均冷却速度が0.5℃/sであり、より好ましくは1℃/sである。550℃を下回ると析出反応は非常に遅くなるため、550℃よりも低い領域の冷却速度は特に注意する必要はない。上記焼鈍温度において、1分未満の保持でも金属間化合物は固溶しはじめ、α相中の結晶粒が成長可能な状態となる。そのため、焼鈍1は1分程度を目安に行い、α相の平均結晶粒径が所望の範囲(10μm〜100μm)になるように設備に応じて調整するとよい。焼鈍1の焼鈍時間は、具体的には1〜5分であればよい。
[2回目の焼鈍(金属間化合物の析出処理)]
上記焼鈍1を実施した後のチタン合金材は、金属間化合物がほとんど析出せず、析出したとしても金属間化合物の面積分率は1.0%未満である。金属間化合物が固溶したままでは、固溶強化により0.2%耐力が高くなるため、成形加工性に優れない。したがって、金属間化合物を所定の面積分率で析出させ、固溶強化を抑制し、0.2%耐力を低くする。本実施形態では、金属間化合物を所定の面積分率で析出させるために、焼鈍1の後に550〜720℃で2回目の焼鈍(以下、焼鈍2という)を施す。
焼鈍2の温度が720℃を超えると、CuやSiのα相中の固溶限が大きくなるため、金属間化合物の析出量が少なくなり、十分な0.2%耐力の低減効果が得られない。また、550℃未満であると、元素の拡散が抑制されるために金属間化合物の析出が不十分となることや析出する金属間化合物が微細となって0.2%耐力を高くする。そのため、焼鈍2は550〜720℃の範囲内で施す。また、金属間化合物を十分に析出させるため、焼鈍2の焼鈍時間は4時間以上にする必要がある。好ましくは8時間以上である。焼鈍時間の上限は特に限定する必要はないが、生産性の観点から50時間以下、より好ましくは40時間以下がよい。また、金属間化合物はすでに十分に析出している状態であり、冷却速度が遅くなっても金属間化合物の析出量が少し増加する程度であり、特に注意する必要はなく、炉令で十分である。
本実施形態に係るチタン合金材の製造方法では、750℃以上830℃以下の焼鈍1の後、550℃以上720℃以下の焼鈍2を行う。例えば、図2(a)に示すように、焼鈍1の後に室温付近まで冷却し、その後加熱し、焼鈍2を行ってもよい。また、図2(b)に示すように、焼鈍1の後に、焼鈍2の温度範囲まで冷却し、そのまま焼鈍2を行ってもよい。
なお、焼鈍1を行ってから加熱炉内で長時間放冷(いわゆる炉冷)を行った場合には、焼鈍2の焼鈍温度である550〜720℃の領域を通過することになるが、この場合は550〜720℃の領域を4時間以上にわたって維持することができず、4時間未満でこの温度域を通過してしまう。従って、焼鈍1の後に炉冷するだけでは、金属間化合物を十分に析出させることが困難になる。
以上の工程により、本実施形態に係るチタン合金材を製造する。
本実施形態のチタン合金材によれば、高温強度及び、室温における成形加工性に優れたチタン合金材を提供できる。また、本実施形態のチタン合金材は、所定の化学成分を有するインゴットに熱間圧延及び冷間圧延を施し、その後、2段階の焼鈍を施すことにより製造される。1回目の焼鈍により、チタン合金中のα相の結晶粒が10μm以上となり、2回目の焼鈍により、金属間化合物の面積分率が1.0%以上となり、α相の面積分率が96.0%以上となる。本実施形態のチタン合金材は、このような金属組織を有しており、また、固溶限が広い添加元素が含まれているため、高温強度を維持しつつ、かつ、室温における0.2%耐力を抑制し、成形加工性を向上させることができる。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
No.10を除くNo.1−1〜No.1−3、No.2−1〜No.2−3、No.3−1、No.3−2、No.4、No.5−1、No.5−2、No.6−1、No.6−2、No.7〜No.9、No.11〜No.14、No.15−1〜No.15−3、No.16−1〜No.16−3、No.17−1、No.17−2、No.18−1〜No.18−22、No.19−1〜No.19−5、No.20−1、No.20−2、No.21〜No.30は、真空アークボタン溶解による約0.6kgのインゴットを用いて作製した。また、No.10は真空アーク溶解による約20kgのインゴットを用いて作製した。作製した各インゴットを1000℃で熱間圧延し、10mm厚の熱延板とした。その後、860℃での熱間圧延を行うことで4mm厚の熱延板を得た。
その後、脱スケール工程もしくは、表1、2に記載の温度と時間で熱延板焼鈍を行った後に脱スケール工程を施し、その後、冷間圧延率を71.4%に設定した冷間圧延を施し、厚さ1mmの薄板とした。その後、表1、2中の焼鈍温度及び焼鈍時間で、焼鈍1及び焼鈍2を施した後、組織観察と引張試験を行った。焼鈍1の工程後は空冷し、焼鈍2の工程後は炉冷した。また、No.23及びNo.24以外は、焼鈍1のあと室温(25℃)まで冷却し、その後加熱して焼鈍2を施した。以上の工程により作製したNo.1−1〜No.30に対し、引張試験と組織観察および加工後の外観評価を行った。なお、表1、2に示す化学組成はいずれも冷間圧延および仕上げ焼鈍を行った板材で分析した値である。また、その他の不純物は、C、N、H、Cr、Al、Mo、Zr、Mn及びNiの合計量である。各板材の特性を表3、4に示す。
[室温引張試験]
室温(25℃)での引張試験は、上記の薄板から、長手方向が圧延方向に対して平行のASTMハーフサイズ引張試験片(平行部幅6.25mm、平行部長さ32mm、標点間距離25mm)を採取し、ひずみ速度を、ひずみ1.5%までを0.5%/min、その後破断までを30%/minで行った。室温における延性及びスプリングバックの評価は、室温での破断伸び及び0.2%耐力で評価した。室温での破断伸びが25.0%以上であり、かつ、室温での0.2%耐力が340MPa以下である場合を、延性が十分でありスプリングバックが小さいとして合格と判定した。なお、引張試験は空調設備によって平均温度25℃(±2℃)に保たれた室内で実施した。
[高温引張試験]
高温での引張試験は、上記の薄板から、長手方向が圧延方向に対して平行の引張試験片(平行部幅10mm、平行部長さ及び標点間距離30mm)を採取し、ひずみ速度を、ひずみ1.5%までを0.3%/min、その後破断までを7.5%/minで行った。試験雰囲気は、700℃の大気中で行い、試験片が十分に試験温度に達するように、試験雰囲気中に30分間保持した後、試験を行った。高温での引張強度が60MPa以上の場合を、高温強度に優れるとし、合格と判定した。
[組織観察]
上記薄板のL断面(TD面)を光学顕微鏡により観察し、α相の平均結晶粒径を切断法によって求めた。走査型電子顕微鏡により観察した反射電子像での組織中のコントラストからα相と金属間化合物とを判別した。
α相の面積分率は、α相の面積分率を画像処理によって求めた。金属間化合物の面積分率は、金属間化合物の面積分率をα相以外の部分の面積から求めた。金属間化合物の平均粒径は、α相以外の粒子の数と、α相以外の部分の面積とから1個あたりの面積を算出し、正方形近似して求めた。α相の結晶粒径は、切断法で求めた平均結晶粒径である。以上の方法で求めたα相の平均結晶粒径が10μm〜100μmの場合、α相の面積分率が96%以上の場合及び、金属間化合物の面積分率が1.0%以上の場合を、本発明の条件を満たすので合格と判定した。上記引張試験と組織観察の結果を表1に示す。なお、表中の下線は、本実施形態で規定する条件、または、特性から外れることを示す。
[加工後の外観評価]
厚さ50μmのテフロンシートを潤滑剤として用いた球頭張出し試験を張出し高さが15mmとなるまで行い、外観のシワの発生程度を観察し、ABCDの4段階で評価した(「テフロン」は登録商標)。Aは従来材(JIS H4600 第2種チタン)と同等の外観を有するもの、Bは従来材よりも外観上は劣るが製品化した後の研磨によって除去可能なもの、Cは研磨前にブラストなどの工程が必要となるもの、Dはブラストなどを行っても研磨で除去できないものとした。Dは不合格である。なお、15mmで破断する場合は13mmもしくは10mmまで張り出し高さを低くし、従来材(JIS H4600 第2種チタン)との比較評価によって判断してもよい。なお、従来材はJIS H4600 第二種チタンの化学組成を有する鋳塊から製造された熱延板(厚さ4〜5mm)をショットブラストおよび酸洗によって脱スケールし、熱間圧延までで形成された疵がない部分を厚さ1mmまでの冷間圧延した後に、アセトンもしくはアルカリ溶液で圧延油を洗浄除去した後、650℃で8h真空焼鈍を施した板材とした。
[酸化試験]
酸化試験は板厚×20mm×40mm程度の表面をエメリー紙#600番で湿式研磨し、大気中で800℃、100h保持後の重量増加を試験片の表面積で除した値(酸化増量)で評価した。なお、試験時には試験片を容器などに立てかけることで試験片の表面が十分に大気にさらされるようにした。酸化増量が50g/m以下の場合を耐酸化性に優れると判断した。なお、酸化増量は耐酸化性を表す指標であり、小さいほど耐酸化性に優れる。酸化すると酸素がチタンと結合するため重量が増加する。酸化スケールが剥離する場合には減少するが、スケール剥離した場合は剥離スケールも回収して重量測定する。そのため、スケールが剥離しても回収できるような容器に入れるなどして試験を行う。
No.1−1〜No.1−3、No.2−1〜No.2−3、No.3−1、No.3−2、No.4は、2段階焼鈍の有無にかかわらず、Cu,Sn,Siが少ないために高温強度が不十分となった。No.5−1、No.5−2はNb含有量が少なく、酸化増量が大きい。また、No.5−2は引張試験後の試験片の平行部の肌あれが強く出ており、外観評価でも肌荒れに問題がある。No.6−2も結晶粒径が大きいため、肌荒れが強くなった。
No.7、8、10、11は合金元素が多すぎたために、細粒となり、高強度化もしくは延性が低下した。No.9は結晶粒径は10μm以上であるが、Siが多すぎるために金属間化合物が多くなり、延性が低下した。No.12は酸素含有量が多すぎたために高強度化に加えて延性の低下が生じた。
No.16−2、No.18−2、No.18−3、No.18−22は、焼鈍1(溶体化処理)を行ったが、焼鈍2(金属間化合物の析出処理)を行わなかったため、金属間化合物があまり析出せず、0.2%耐力が高くなりすぎた例である。また、No.18−2は保持時間がNo.18−3よりも短いために細粒となっており、それに起因して0.2%耐力がより高くなった。
No.16−3、No.18−4〜No.18−20は、いずれも焼鈍1を行わずに、焼鈍2を行った例である。No.18−4、No.18−5、No.18−6、No.18−7、No.18−10、No.18−12、No.18−16、No.18−20は720℃よりも高温で行っており、α相の平均結晶粒径は10μm以上となった。しかし、No.18−4、No.18−5、No.18−6、No.18−7、No.18−10、No.18−12、No.18−16は、金属間化合物の析出が不十分となり、0.2%耐力が高い。また、No.18−4、No.18−5、No.18−12、No.18−20は焼鈍2を行う前に金属間化合物が少量存在しており、焼鈍2を金属間化合物が微細に析出し難い730℃で行ったため、焼鈍2の前に存在する金属間化合物が大きくなったため、高温強度が低くなった。
No.18−8は焼鈍2のみ行ったためにα相の平均結晶粒径が10μmに満たないため、0.2%耐力が高い。No.18−9、No.18−11、No.18−13、No.18−14、No.18−15、No.18−17、No.18−18、No.18−19は熱延板焼鈍を焼鈍1に準ずる温度で行ったが、焼鈍1を行っていないため、α相の平均結晶粒径が10μmに満たないために0.2%耐力が高くなった。
No.15−3、No.19−1は、焼鈍2の温度が750℃であり、金属間化合物の析出が不十分であり、0.2%耐力が高い。
No.19−2は、焼鈍2の温度が550℃未満であるため、微細に金属間化合物が析出しており、0.2%耐力が高い。No.15−2は焼鈍2の保持時間が短かったため、金属間化合物の析出が十分ではなく、0.2%耐力が高くなった。
No.19−3は、焼鈍1を850℃で行ったためにβ相が生じてピン止めによってα相の成長が妨げられたために、α相の平均結晶粒径が10μmに満たない。その結果、0.2%耐力は金属間化合物の析出によって340MPa以下となったが、伸びが25%に満たなかった。
No.19−4は、焼鈍1の温度が750℃を下回っており、十分に固溶化できず、金属間化合物にピン止めされ、α相の平均結晶粒径が10μmに満たなかった。その結果、0.2%耐力は金属間化合物の析出によって340MPa以下となったが、伸びが25%に満たなかった。
No.17−2は焼鈍1での焼鈍時間が短かったために細粒となり、高強度化し、さらに低延性となった。
No.29は、Ge含有量が多すぎたために金属間化合物が多く析出したために伸びが25%に満たない。No.30は、Bi含有量が多すぎるため、金属間化合物が過剰に析出し、伸びが25%に満たない。
Figure 2019155553
Figure 2019155553
Figure 2019155553
Figure 2019155553

Claims (3)

  1. 質量%で
    Cu:0.7%〜1.4%、
    Sn:0.5%〜1.5%、
    Si:0.10%〜0.45%、
    Nb:0.05%〜0.50%、
    Fe:0.00%〜0.08%、
    O:0.00%〜0.08%
    を含有し、残部がTi及び不純物からなり、
    組織中のα相の面積分率が96.0%以上であり、金属間化合物の面積分率が1.0%以上であり、
    前記α相の平均結晶粒径が10μm以上100μm以下であり、前記金属間化合物の平均粒径が0.1〜3.0μmである、チタン合金材。
  2. 更に、質量%で、
    Bi:0.1〜2.0%、
    Ge:0.1〜1.5%
    のいずれか一方または両方を含有し、
    これらの合計量が3.0%未満である、請求項1に記載のチタン合金材。
  3. 25℃での破断伸びが25.0%以上、かつ、25℃での0.2%耐力が340MPa以下であり、700℃での引張強度が60MPa以上である、請求項1に記載のチタン合金材。
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