JP2012001756A - 高靭性Al合金鍛造材及びその製造方法 - Google Patents

高靭性Al合金鍛造材及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】機械的性質及び衝撃特性に優れた高靭性Al合金鍛造材を提供すること。
【解決手段】質量基準で、Si:0.4〜1.3%、Fe:0.01〜0.9%、Cu:0.03〜0.7%、Mn:0.9%以下、Mg:0.4〜1.2%、Cr:0.01〜0.35%及びTi:0.005〜0.3%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるAl合金の熱間圧延板を用いた鍛造材において、結晶粒のアスペクト比が9以上であり、且つ、65J/cm2 以上のシャルピー衝撃値を有するように構成した。
【選択図】なし

Description

本発明は、アルミニウム(Al)合金の熱間圧延板を用いた高靭性Al合金鍛造材及びその製造方法に係り、特に、自動車の足回り部品、例えばアッパーアーム、ロアアーム等のアーム類、或いはリンク類等に好適に用いられ得る、強度及び靭性に優れたAl合金鍛造材と、それを有利に製造し得る方法に関するものである。
近年、地球環境問題に対して、排ガス規制や二酸化炭素の排出抑制等の要求から、自動車の軽量化又は燃費向上が求められており、そのために、軽量化効果の高いバネ下重量の軽量化が要求されている。そして、従来より、自動車の足回り部品、例えばアッパーアーム、ロアアーム等としては、鋼材を使用し、サスペンション形式を工夫することにより、サスペンションのコンパクト化及び高機能化が図られてきたが、鋼材の利用には、軽量化の限界があるため、近年では、軽量化を図るために、鋼材に代えて、Al合金材を用いることが多くなってきている。その中で、Al合金の鍛造材を用いる場合には、それが複雑な製品形状を有するものであるところから、熱間鍛造にて成形された後、熱処理、切削加工等が実施されることとなる。更に、熱間鍛造にて製造されたAl合金の鍛造材においては、自動車用の足回り部品として利用される場合、自動車走行中の路面からの入力に対して、破断することのない強度、及び良好な靭性を備えていることが、必要とされているのである。
ところで、これまでに、耐衝撃破壊性に優れたAl−Mg−Si系Al合金のサスペンション部品材としては、特開2003−221636号公報(特許文献1)では、押出部材が提案されている。しかしながら、押出部材を、そのまま、サスペンション部品として適用しても、形状自由度が低いために、複雑形状を有するサスペンション部品として容易に利用することは、困難であったのである。
また、特開平6−330264号公報(特許文献2)においては、Al合金素材を300〜400℃の温度範囲で熱間鍛造することにより、強度と靭性に優れたAl合金鍛造材を得ることの出来る製造方法が、提案されている。しかしながら、このような方法では、鍛造温度が低いために、変形能が不足し、ひび割れや欠肉を生じる傾向があり、複雑形状を有する足回り部品として適する形状を得ることが難しい問題があった。
さらに、特開2002−60881号公報(特許文献3)においては、鋳造鍛造法の一つとして、所定の合金成分のAl合金鋳物を、加熱された金型を用いて、高温鍛造する技術が提案されているが、そこで採用される、ダイカストや溶湯鍛造等の手法を用いて得られる鍛造材は、形状を自由に設計することが出来るものの、それらの製造方法では、鍛造材中に鋳造欠陥を有している可能性があり、充分な靭性を得ることが出来ないものであった。
加えて、自動車足回り部品である、Al−Mg系Al合金の熱間圧延板を用いたサスペンション部品材として、特開2004−124211号公報(特許文献4)では、3〜6mm厚のAl合金熱間圧延板の曲げ加工により、サスペンション部品が提供されている。しかしながら、鍛造無しでは、形状自由度が低いため、複雑形状を有するサスペンション部品として容易に利用することは、困難である。
更にまた、特開2003−277868号公報(特許文献5)においては、Al合金熱間圧延板を用いて鍛造材としても良いとされているが、実施例を含め、具体的には開示されていないために、それをどのように実施することが出来るのか、明らかではなかった。なお、実施例から見て、自動車足回り部品として採用する場合には、耐靭性が低いために、自動車走行中の路面からの入力に対して、破断してしまう危険性をも内在している。
特開2003−221636号公報 特開平6−330264号公報 特開2002−60881号公報 特開2004−124211号公報 特開2003−277868号公報
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、機械的性質及び衝撃特性に優れた高靭性Al合金鍛造材を提供することにあり、また、その有利な製造方法を提供することにある。
そして、本発明にあっては、そのような課題の解決のために、質量基準で、Si:0.4〜1.3%、Fe:0.01〜0.9%、Cu:0.03〜0.7%、Mn:0.9%以下、Mg:0.4〜1.2%、Cr:0.01〜0.35%及びTi:0.005〜0.3%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるAl合金の熱間圧延板を用いた鍛造材にして、結晶粒のアスペクト比が9以上であり、且つ、65J/cm2 以上のシャルピー衝撃値を有していることを特徴とする高靭性Al合金鍛造材を、その要旨とするものである。
なお、このような本発明に従う高靭性Al合金鍛造材の望ましい態様の一つによれば、前記Al合金は、質量基準で、Zr:0.01〜0.25%を更に含有している。
また、本発明にあっては、上述の如き高靭性Al合金鍛造材を製造する方法の一つとして、前記Al合金からなる熱間圧延板を用い、それを、490〜550℃に加熱し、直ちに150℃〜500℃に加熱された金型を用いて鍛造した後、室温まで冷却し、次いで、その得られた鍛造材に対して、500〜570℃で溶体化処理を施した後、50℃/秒以上の冷却速度で水冷せしめ、更にその後、150℃〜220℃で1〜30時間の時効処理を施すことを特徴とする高靭性Al合金鍛造材の製造方法を、その要旨とする。
さらに、本発明にあっては、上述の高靭性Al合金鍛造材を製造する方法の他の一つとして、前記Al合金からなる熱間圧延板を用い、それを、500〜550℃に加熱し、直ちに150℃〜500℃に加熱された金型を用いて鍛造した後、その得られた鍛造材の温度が480℃未満となる前に、50℃/秒以上の冷却速度で水冷せしめ、更にその後、150℃〜220℃で1〜30時間の時効処理を施すことを特徴とする高靭性Al合金鍛造材の製造方法をも、その要旨とするものである。
このような本発明によれば、従来の6000系のAl合金鍛造材よりも、更に改良された高靭性Al合金鍛造材、即ち、シャルピー衝撃値が65J/cm2 以上である、機械的性質に優れた、自動車足回り部品等として好適に使用され得る高靭性Al合金鍛造材が提供され得たのであり、また、そのような優れた特性を有するAl合金鍛造材が、工業的に有利に製造され得ることとなったのである。
実施例において製造される鍛造材の形状を示す斜視説明図である。 図1において示される鍛造材における試験片の採取位置を示す斜視説明図である。 図1において示される鍛造材を、その長手方向で、鍛造方向に平行な方向の断面で切断した斜視説明図である。
ここにおいて、本発明に従う鍛造材を与えるAl合金における合金成分の意義及び限定理由について説明するならば、先ず、Si(ケイ素)は、Mg(マグネシウム)と共存して、母相中に Mg2Si粒子を析出させて、強度を向上させる特徴を発揮する。そのために、かかるSiの含有量は、0.4〜1.3質量%の範囲内とする必要があり、これに反して、Si含有量が0.4質量%未満となると、充分な強度が得られず、また、1.3質量%を超えるようになると、母相中に単体のSiが析出し、加工性及び焼入れ性を害することとなる。
また、Fe(鉄)は、結晶粒を微細にする効果を有しており、そのために、その含有量を0.01〜0.9質量%の範囲内とする必要がある。このFeの含有量が、0.01質量%未満では、その効果が充分でなく、また、0.9質量%を超えるようになると、巨大な金属間化合物が形成されて、靭性が低下する等の問題を惹起する。
さらに、Cu(銅)は、Mgと複合して含有せしめることにより、Al−Cu−Mg系の粒子を析出し、Al合金の強度を向上させる機能を発揮し得るものであって、そのためには、0.03〜0.7質量%の範囲内において含有せしめる必要がある。このCuの含有量が0.03質量%未満では、その効果が充分でなく、また、0.7質量%を超えるようになると、加工性が悪化する等の問題を惹起する。
更にまた、Mn(マンガン)は、結晶粒を微細化すると共に、Al−Mg−(Si)系の微細化合物粒子を析出させる作用を奏するものであって、そのためには、0.9質量%以下の範囲内において含有せしめる必要がある。なお、このMnの含有量が0.9質量%を超えるようになると、巨大な金属間化合物が形成され、靭性の低下を惹起するようになる。また、かかるMnは、有利には、0.05質量%以上の濃度において含有せしめられることとなる。
加えて、Mgは、Si及びCuと共存して、Al合金の強度を向上させるように機能するものであり、有効な含有範囲は、0.4〜1.2質量%である。この含有量が0.4質量%未満では、充分な強度が得られず、また、1.2質量%を超えて含有すると、加工性及び焼入れ性の低下を惹起することとなる。
合金成分であるCr(クロム)も、また、結晶粒を微細化すると共に、Al−Cr系の微細化合物粒子を析出させる作用がある。そして、その有効な含有範囲は、0.01〜0.35質量%である。このCr含有量が0.01%未満では、その効果が充分でなく、また、0.35質量%を超えて含有するようになると、巨大な金属間化合物が形成されて、靭性の低下等の問題を惹起する。
更に加えて、Ti(チタン)にも、結晶粒を微細にする効果があり、そのために、本発明においては、0.005〜0.3質量%の範囲内において、含有せしめられることとなる。なお、Tiの含有量が0.005質量%未満となると、その効果が充分でなく、また0.3質量%を超えるようになると、巨大な金属間化合物が形成されて、靭性を低下させる等の問題を惹起することとなる。
なお、Zr(ジルコニウム)には、結晶粒を微細化し、加工性を向上させる効果があるところから、本発明では、有利には、0.01〜0.25質量%の範囲内において、含有せしめられることとなる。このZr含有量が0.01質量%未満では、その効果が充分でなく、また、0.25質量%を超えるようになると、巨大な金属間化合物が形成されて、靭性を低下させる等の問題が惹起されるようになる。
そして、本発明に従うAl合金は、上記した各合金成分の他、残部はAlと不可避的不純物からなるものである。この不可避的不純物は、目的とするAl合金の調製に際して、必然的に混入するものであって、公知の不純物割合において存在するように、その含有量が制御されることとなる。なお、そのような不可避的不純物の合計の含有量としては、一般に、0.15質量%程度以下とされることとなる。
ここで、かくの如き合金成分を有するAl合金を用いて得られた熱間圧延板からなる、本発明に従うAl合金鍛造材においては、その結晶粒のアスペクト比が9以上である特徴を有している。けだし、このアスペクト比が9よりも小さくなると、粒界破壊が起こり易くなるために、靭性が低下するようになるからである。なお、高アスペクト比を得るべく、鍛造加工度を大きくしたりした場合等には、鍛造後のT6処理によって結晶粒が粗大化し、靭性が低下する等の問題を惹起する恐れがある。このため、アスペクト比の上限としては、一般に、15以下となるように調整されることとなる。
しかも、そのような本発明に従うAl合金鍛造材においては、そのシャルピー衝撃値が65J/cm2 以上である特徴を有している。これによって、自動車足回り部品として使用される場合において、当該部品の薄肉化による軽量化が可能となるのである。
ところで、本発明においては、かかる目的とするAl合金鍛造材を得るべく、上述の如き合金組成を有するAl合金熱間圧延板を用い、それを、型打鍛造や自由鍛造により所望の鍛造材に加工し、次いで、常温まで冷却した後に溶体化処理温度まで加熱せしめ、その後、焼入れ処理を施すか、或いは鍛造温度が高くて、得られる鍛造材に実質的に溶体化処理が施されておれば、鍛造終了後、直ちに、焼入れ処理を施し、その後、人工時効処理を施す手法が、有利に採用され、これによって、所定の自動車足回り部品向け鍛造材を、有利に得ることが出来るのである。
ここにおいて、前述の如き合金組成を有するAl合金からなる、本発明において用いられるAl合金熱間圧延板を製造するに際しては、先ず、常法に従ってDC鋳造して、上述せる如き合金組成のAl合金からなる鋳塊を得、そして、その得られたAl合金鋳塊を、常法に従って熱間圧延することにより、好ましくは、30℃/時間以上の昇温速度にて加熱した後、490〜570℃の温度範囲にて1〜20時間の均質化処理を施し、その後、460〜520℃にて、圧下率を80〜95%程度として、熱間圧延を施すことによって、目的とするAl合金熱間圧延板が得られるのである。
次いで、この得られたAl合金熱間圧延板を、熱間鍛造により、所望の鍛造材とするために、熱間鍛造開始時のAl合金熱間圧延板の温度としては、490〜550℃の範囲が採用されることとなる。このときの熱間圧延板の温度が490℃未満となると、Al合金熱間圧延板の変形能が不足して、ひび割れや欠肉等の問題を生じる恐れがある。また、550℃を超える場合には、添加元素により生成した共晶合金の融解による割れの誘発が懸念されるからである。また、この熱間鍛造に用いられる鍛造金型の温度としては、150〜500℃の範囲内の温度が、有利に採用されることとなる。この温度が150℃未満となると、鍛造材の変形抵抗が高くなり、鍛造割れが発生する恐れがあるからであり、また500℃を超える場合には、金型による抜熱の不足及び潤滑不足により、型離れ性の低下を惹起するようになるからである。特に、後述する溶体化処理を鍛造材に施す場合には、鍛造金型の温度としては、150〜300℃の温度範囲、中でも250℃までの温度範囲が、有利に採用されることとなる。なお、この熱間鍛造における鍛造加工度は、70%以下であることが、望ましい。
そして、かかる熱間鍛造の終了後、得られた鍛造材を、常温まで冷却した後に、溶体化処理温度まで加熱し、次いで、焼入れ処理を施す場合において、その溶体化処理温度は、500〜570℃の範囲内とされる。また、その温度での保持時間としては、30分〜8時間程度が優位的に採用されることとなる。なお、この温度が500℃未満では、強度に寄与する合金元素が溶入しないために、鍛造材の強度低下を惹起するからであり、また、570℃を超えるようになると、添加元素により生成した共晶合金の融解による割れの誘発が懸念されるからである。
また、上記した溶体化処理が施された鍛造材は、50℃/秒以上の冷却温度で、水を用いた公知の冷却手法によって冷却せしめられて、焼入れが施されるのである。この溶体化処理後の冷却速度には、500℃から80℃までの温度範囲において、50℃/秒以上が採用される。そして、そのような冷却速度を実現するために、冷却水の温度が適宜に選定されることとなるが、特に、本発明にあっては、水温は低い方が望ましく、例えば80℃以下、更に好ましくは60℃以下である冷却水を用いて、焼入れが実施されることとなる。なお、この焼入れに際して、冷却終了温度が80℃よりも高い温度となったり、冷却速度が50℃/秒未満であったりした場合には、固溶した合金元素を微細に析出させることが出来ず、充分な強度を得ることが出来ないからである。
そして、そのような水冷による焼入れの後、鍛造材には、150〜220℃の温度範囲において、1〜30時間の時効処理が施される。この時効処理において、温度が150℃未満であったり、処理時間が1時間未満となる場合には、固溶させた元素の微細析出量が不充分となり、充分な強度を得ることが出来ず、また、220℃を超えるような場合や、30時間を超えるような場合においては、析出物が粗大化し、充分な強度を得ることが出来なくなるのである。
なお、前記した熱間鍛造を行なった後、得られた鍛造材が高温であって、実質的に溶体化処理が施されてなる状態となっておれば、かかる鍛造材の温度が480℃未満となる前に、直ちに、上記の水冷による焼入れ処理が実施され、その後、上記の時効処理が施されるようにすることが出来る。この場合において、熱間鍛造されるAl合金圧延板の加熱温度としては、一般に、500℃以上、550℃以下が有利に採用され、また金型温度としては、一般に、250℃以上、特に300℃を超える温度が有利に採用されることとなる。そして、これによって、室温への冷却及び溶体化処理の工程を省略することが出来ることとなって、工程の簡略化を実現することが可能となるのである。
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
なお、以下の実施例において、各試験材を熱間鍛造して得られる鍛造材は、図1に示される如き形状と寸法を有するものであり、そして、その特性の評価は、図2及び図3に示されるA、B若しくはCの部位において、下記の試験法に従って測定して得られたものである。
−機械的性質の測定−
JIS Z 2201の4号試験片の縮小試験片を、図2のA部より採取し、JIS Z 2241に準拠して、機械的性質(引張強さ:σB、耐力:σ0.2、伸び率:δ)の測定を行ない、引張強さが300MPa以上の場合を、合格とした。
−靭性の評価−
試験片を、図2のB部より採取し、JIS Z 2242のUノッチ試験片に加工した後、室温にて、シャルピー衝撃試験を、JIS Z 2242に準拠して実施し、シャルピー衝撃値(衝撃特性)が65J/cm2 以上の場合を、合格とした。
−アスペクト比−
図3に示される、鍛造方向に延び且つ試験材の長手方向に延びる、A矢視方向より観察される断面C部に対して、ペーパー研磨、バフ研磨及び電解研磨を施した後、偏光ミクロ組織観察を行ない、その観察された結晶粒の縦横比を示したものである。ここで、鍛造方向に直角な方向の結晶粒の長さをbとし、鍛造方向の結晶粒の長さをaとして、かかる長さbを長さaで割った値:b/aを、アスペクト比と定義した。そして、鍛造材は、かかるアスペクト比が9を超える場合に合格とした。また、測定は、倍率25倍にて、20視野の範囲において実施した。
−実施例1−
先ず、下記表1に示される各種合金組成のAl合金:No.1〜9を用いて、通常のDC鋳造法に従って、それぞれ鋳塊を作製した。次いで、この得られた各種鋳塊を用いて、それぞれ、昇温速度:30℃/時間以上で加熱し、そして560℃にて6時間の均質化処理を施した後、480℃にて熱間圧延を施すことにより、板厚25mmの各種Al合金熱間圧延板を得た。そして、上記で得られた各Al合金熱間圧延板から、それぞれ、板厚25mm、幅60mm、長さ105mmの試験材を採取して、下記表2に示される各種処理条件下において、熱間鍛造、溶体化処理及び時効処理を実施した。具体的には、各試験材について、それぞれ、各種金型温度下で熱間鍛造を行ない、図1に示される如き形状の鍛造材を得た後、室温まで冷却し、次いでその得られた鍛造材に対して溶体化処理を施し、その後、水冷による焼入れを行ない、更に時効処理を施して、各種鍛造材No.1〜18を得た。なお、No.19に係る鍛造材は、金型温度を500℃として鍛造を行ない、その得られた鍛造材の温度が480℃未満となる前に、80℃まで100℃/秒での焼入れが可能であったため、溶体化処理に必要な加熱を省略して、得られたものである。
Figure 2012001756
Figure 2012001756
次いで、かかる得られた各種の鍛造材No.1〜19から試験片を採取して、それぞれ、その機械的性質(引張強さ:σB、耐力:σ0.2、伸び率:δ)を測定し、また、靭性やアスペクト比の評価を行ない、その結果を、下記表3に示した。
Figure 2012001756
この表3の結果から明らかなように、本発明に従うNo.1〜19に係る各鍛造材は、何れも、引張強さが300MPa以上のものであり、また、その衝撃試験値にあっても、65J/cm2 以上のものとなり、更に、アスペクト比においても、9以上のものとなって、機械的性質、靭性(衝撃特性)の何れにおいても、優れたAl合金鍛造材となっていることが認められる。
−比較例1−
下記表4に示される各種合金組成のAl合金No.10〜23を用い、上記した実施例1の場合と同様にして、各種Al合金熱間圧延板を製造し、そしてそれを熱間鍛造し、更に溶体化処理及び時効処理を施して、各種鍛造材No.20〜33を得た。また、表1のAl合金No.1を用いて、製造条件を種々変化させて、各種鍛造材No.34〜43を得た。このときの熱間鍛造条件〜時効処理条件を、下記表5に示した。
そして、かかる得られた鍛造材No.20〜43について、それぞれ、先の実施例1と同様にして、機械的性質や靭性の評価を行ない、その結果を、下記表6に示した。なお、鍛造材No.43は、先の鍛造材No.19と同様の製造方法にて作製したが、熱間鍛造後の鍛造材の温度は、450℃であった。
Figure 2012001756
Figure 2012001756
Figure 2012001756
かかる表4〜表6の結果から明らかな如く、鍛造材No.20,24,27,36は、それぞれ、Si量、Cu量、或いはMg量が少ないことにより、又は、溶体化処理温度が低いために、強度が低下していることが認められる。また、鍛造材No.21,25,28,34,37は、それぞれ、Si量、Cu量、或いはMg量が多いために、又は、鍛造前加熱温度や金型温度が低いために、所定の形状を得ることが出来なかった。更に、No.22及び29に係る鍛造材は、それぞれ、Fe量或いはCr量が少ないために、強度及び靭性が低下した。加えて、鍛造材No.23,26,30〜33は、それぞれ、Fe量、Mn量、Cr量、Ti量、或いはZr量が多いため、又はTi量が少ないために、靭性が低下する結果となった。
また、No.38に係る鍛造材では、金型温度が高いために、潤滑不足により、材料が金型へ凝着して、目的とする鍛造材を得ることが出来ないことが明らかとなった。また、No.41に係る鍛造材は、人工時効温度が低く、時間が短いために、充分な強度が得られず、更に、No.42に係る鍛造材は、人工時効温度が高く、時間が長いために、析出物が粗大化して、強度が低くなる問題が惹起されている。そして、No.40に係る鍛造材は、溶体化処理後の冷却速度が遅いために、析出物が粗大化して、強度が低下してしまうことが認められる。
さらに、No.35及び39に係る鍛造材は、鍛造前加熱温度や溶体化処理温度が高いために、共晶融解を惹起し、それによって内部にクラックが発生し、試験片を採取することが出来なかった。なお、No.43に係る鍛造材は、焼入れられる鍛造材の温度が低かったために、溶体化不足により強度が低下し、不合格となった。
−比較例2−
下記表7に示される各種合金組成のAl合金を用い、通常のDC鋳造に従って鋳塊を作製した。次いで、この得られた鋳塊について、昇温速度:30℃/時間以上で加熱し、490〜570℃にて1〜20時間の均質化処理を施して、鋳造棒を得た。また、かかる得られた鋳造棒を、400〜520℃に加熱し、押出比を3〜30として、熱間押出を実施して、押出棒を得た。そして、この得られた鋳造棒及び押出棒に、下記表8に示される処理条件の下において、熱間鍛造、溶体化処理及び時効処理を施した。かかる得られた試験材の2つについて、実施例1と同様の方法で、それぞれ機械的性質、靭性の評価を実施した。その結果を、下記表9に示した。
Figure 2012001756
Figure 2012001756
Figure 2012001756
かかる表9の結果から明らかな如く、鍛造材No.44及び45は、何れも、アスペクト比が低く、靭性が低い値を示すものであって、自動車の足回り部品としては不充分なものであった。

Claims (4)

  1. 質量基準で、Si:0.4〜1.3%、Fe:0.01〜0.9%、Cu:0.03〜0.7%、Mn:0.9%以下、Mg:0.4〜1.2%、Cr:0.01〜0.35%及びTi:0.005〜0.3%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるAl合金の熱間圧延板を用いた鍛造材にして、結晶粒のアスペクト比が9以上であり、且つ、65J/cm2 以上のシャルピー衝撃値を有していることを特徴とする高靭性Al合金鍛造材。
  2. 前記Al合金が、質量基準で、Zr:0.01〜0.25%を更に含有している請求項1に記載の高靭性Al合金鍛造材。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の高靭性Al合金鍛造材を製造する方法にして、
    前記Al合金からなる熱間圧延板を用い、それを、490〜550℃に加熱し、直ちに150℃〜500℃に加熱された金型を用いて鍛造した後、室温まで冷却し、次いで、その得られた鍛造材に対して、500〜570℃で溶体化処理を施した後、50℃/秒以上の冷却速度で水冷せしめ、更にその後、150℃〜220℃で1〜30時間の時効処理を施すことを特徴とする高靭性Al合金鍛造材の製造方法。
  4. 請求項1又は請求項2に記載の高靭性Al合金鍛造材を製造する方法にして、
    前記Al合金からなる熱間圧延板を用い、それを、500〜550℃に加熱し、直ちに150℃〜500℃に加熱された金型を用いて鍛造した後、その得られた鍛造材の温度が480℃未満となる前に、50℃/秒以上の冷却速度で水冷せしめ、更にその後、150℃〜220℃で1〜30時間の時効処理を施すことを特徴とする高靭性Al合金鍛造材の製造方法。
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