JP7003676B2 - アルミニウム合金熱間鍛造品の製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金熱間鍛造品の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7003676B2
JP7003676B2 JP2018004909A JP2018004909A JP7003676B2 JP 7003676 B2 JP7003676 B2 JP 7003676B2 JP 2018004909 A JP2018004909 A JP 2018004909A JP 2018004909 A JP2018004909 A JP 2018004909A JP 7003676 B2 JP7003676 B2 JP 7003676B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
aluminum alloy
hot forging
quenching
mass
temperature
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018004909A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019123902A (ja
Inventor
千尋 浅井
岳人 小林
克哉 吉田
信之 安井
正洋 山田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP2018004909A priority Critical patent/JP7003676B2/ja
Publication of JP2019123902A publication Critical patent/JP2019123902A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7003676B2 publication Critical patent/JP7003676B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Forging (AREA)

Description

本発明は、アルミニウム合金材からアルミニウム合金熱間鍛造品を製造する方法に関する。
近年、自動車分野においては、軽量化と操縦安定性・乗り心地向上などのために、アッパーアーム、ロアーアームなどの足廻り部品に対するアルミ鍛造材料の適用が拡大しつつある。この自動車用足廻り部品を構成するアルミ鍛造材料としては、耐食性と強度のバランスが取れたAl-Si-Mg系合などのアルミニウム合金材が主に採用されている。
このようなアルミニウム合金材からアルミニウム合金熱間鍛造品を製造する方法は、熱間鍛造工程、溶体化処理工程、焼入れ工程、および時効処理工程など、複数の工程を行うことが知られている。たとえば、特許文献1では、アルミニウム合金材を400~550℃の温度で鍛造した後、480~550℃の温度で鍛造焼入れを行い、続いて160~200℃の温度および2~12時間の処理時間で、時効処理を行っている。
特開平11-12675号公報
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法では、アルミニウム合金熱間鍛造品を製造できるものの、製造されたアルミニウム合金熱間鍛造品は、その引張強度および耐力が十分でないことがあった。本発明は上記点に鑑みてなされたものであり、本発明では、引張強度および耐力が向上したアルミニウム合金熱間鍛造品の製造方法を提供する。
上記課題を解決するために、本発明に係るアルミニウム合金熱間鍛造品の製造方法は、Si:0.7~1.5質量%、Fe:0.8質量%以下、Cu:0.20~0.7質量%、Mn:0.20~0.7質量%、Mg:0.05~1.1質量%、Cr:0.04~0.25質量%、Zn:0.30質量%以下、Ti:0.15質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金材からアルミニウム合金熱間鍛造品を製造する方法であって、前記アルミニウム合金材を、加熱温度が540℃以上555℃以下となり、加熱時間が2時間以上となる条件で、加熱する材料加熱工程と、加熱された状態の前記アルミニウム合金材を、第1の方向から鍛造する第1熱間鍛造工程と、前記第1熱間鍛造工程後の前記アルミニウム合金材を、前記第1の方向とは異なる第2の方向から鍛造する第2熱間鍛造工程と、前記第2熱間鍛造工程後の前記アルミニウム合金材を、前記第2熱間鍛造工程後100秒以内に、焼入れ開始温度450℃以上となる条件で焼入れをする焼入れ工程と、前記焼入れ工程後の前記アルミニウム合金材を、時効処理温度が180℃以上200℃以下となり、時効処理時間が1時間以上となる条件で、時効処理を行う時効処理工程と、を少なくとも含む。
本発明によれば、それぞれ異なる方向である第1および第2の方向からアルミニウム合金材を順次鍛造する。これにより、第1方向のみで鍛造した場合と比較して、鍛造後のアルミニウム合金材の亜結晶組織を多く発生させることができる。
第2熱間鍛造工程後から焼入れ開始までの時間と、焼入れ開始温度と、時効処理の温度および時間と、を上述した範囲に設定することにより、後述する実施例で実証するように、鍛造品の引張強度および耐力を向上させることができる。
本実施形態の製造方法に係る各工程の熱履歴を説明する図である。 試験体に係る断面のマクロ組織観察の結果であって、(a)は実施例1-1の試験体の写真であり、(b)は比較例1-1の試験体の写真である。 試験体に係る断面のミクロ組織観察の結果であって、(a)は実施例1-1の試験体の写真であり、(b)は比較例1-1の試験体の写真である。 試験体の亜結晶粒界マップであって、(a)は実施例1-1の試験体の亜結晶粒界マップであり、(b)は、比較例1-2に係る試験体の亜結晶粒界マップである。 引張試験に用いた試験体の自動車用のステアリングナックルの採取部を説明する図である。 実施例2-1、2-2および比較例2-1、2-2に係る第1熱間鍛造工程前の加熱温度と強度との関係を示すグラフである。 実施例3-1、3-2、および比較例3-1に係る試験体の断面のミクロ組織の写真である。 実施例4-1、4-2および比較例4-1、4-2に係る試験体における焼入れ開始温度と強度との関係を示すグラフである。 実施例5-1~5-5および比較例5-1、5-2に係る試験体における190℃での時効時間と強度との関係を示すグラフである。
以下に、図1を参照しながら本発明に係る実施形態について説明する。図1は、本実施形態の製造方法に係る各工程の熱履歴を示すグラフである。
本実施形態にかかる製造方法は、Si:0.7~1.5質量%、Fe:0.8質量%以下、Cu:0.20~0.7質量%、Mn:0.20~0.7質量%、Mg:0.05~1.1質量%、Cr:0.04~0.25質量%、Zn:0.30質量%以下、Ti:0.15質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金材からアルミニウム合金熱間鍛造品を製造する。本実施形態の鍛造品としては、例えば、自動車用のステアリングナックルを挙げることができる。
この鍛造品の原料となるアルミニウム合金材としては、例えば、6000系(Al-Si-Mg系合金)アルミニウム合金を挙げることができる。6000系合金の一例としては、A6110合金、またはA6061合金等を挙げることができる。
<材料加熱工程S1>
本実施形態の製造方法では、まず、図1に示す材料加熱工程S1を行う。この工程では、アルミニウム合金材を、加熱温度が540℃以上555℃以下となり、加熱時間が2時間以上となる条件で加熱する。具体的には、図1に示すように、加熱炉内に投入したアルミニウム合金材の温度を上昇させ、540℃以上555℃以下の加熱温度に到達したら、この加熱温度を維持しながら2時間以上の加熱時間で、アルミニウム合金材を加熱する。
ここで、加熱温度が540℃未満であると、溶質元素の固溶が不十分となり、一方、加熱温度が555℃を超えると、鍛造の際に局所的に割れが発生してしまう。また、加熱時間が2時間未満の場合は、溶質元素の固溶が不十分である。
<第1熱間鍛造工程S2>
次いで、第1熱間鍛造工程S2を行う。この工程では、加熱された状態のアルミニウム合金材を、第1の方向から鍛造する。これにより、次の第2熱間鍛造工程S3において、鍛造圧下率が小さい部位に予めひずみを導入することができる。鍛造の回数は、特に限定されないが、少なくとも1回以上行う。本実施形態では、一例として、1回の据込鍛造を行う。
第1熱間鍛造工程の鍛造を開始する際の温度は、540℃以上555℃以下が好ましい。540℃未満の場合は、鍛造品の所望の強度を得ることができず、555℃を超えると、鍛造中に、アルミニウム合金材に割れが発生する。また、第1熱間鍛造工程中の温度は500℃以上540℃以下が好ましい。
<第2熱間鍛造工程S3>
次いで、第2熱間鍛造工程S3を行なう。この工程では、第1熱間鍛造工程S2後のアルミニウム合金材を、第2の方向から鍛造する。第2の方向とは、第1方向とは異なる方向(第1方向と交差する方向)であり、一例として、第2の方向として、第1方向に対して直交する方向を挙げることができる。
鍛造の回数は、特に限定されないが、必要に応じて1回以上行ってよい。本実施形態では、一例として、バスター(つぶし)→ブロッカ(荒地)→フィニッシャー(仕上げ)の順に3回行う。
第2熱間鍛造工程中の温度は480℃以上520℃以下が好ましい。また、第2熱間鍛造工程を終了する際の温度は、450℃以上であればよく、470℃以上500℃以下であることが好ましい。これにより、焼入れ開始温度を450℃以上にすることができるため、鍛造品の強度を向上させることができる。
このようにして、本実施形態では、第1および第2熱間鍛造工程により、異なる2つの方向からアルミニウム合金材料を鍛造することができる。これにより、1つの方向で鍛造する場合よりも多くひずみがアルミニウム合金材に導入されるため、アルミニウム合金材料に析出促進サイトとなる亜結晶組織を十分に生成することができる。
<焼入れ工程S4>
次に、焼入れ工程S4を行う。この工程では、第2熱間鍛造工程S3後のアルミニウム合金材を、第2熱間鍛造工程S3後100秒以内に、焼入れ開始温度450℃以上となる条件で焼入れをする。本実施形態では、水冷により第2熱間鍛造工程S3後のアルミニウム合金材の焼入れを行う。
このように本実施形態では、第2熱間鍛造工程S3後、後述する比較例でのT6のような溶体化処理を省略して、焼入れを行うことにより、鍛造により生成した微細組織の再結晶粗大化を防止することができる。
ここで、第2熱間鍛造工程S3後から焼入れ開始までの時間T4(図1参照)が100秒未満であると、亜結晶組織を十分に生成することができない。また、焼入れ開始温度が450℃未満であると、鍛造品の強度を向上させることができない。
<時効処理工程S5>
次いで、時効処理工程S5を行う。この工程では、焼入れ工程S4後のアルミニウム合金材を、時効処理温度が180℃以上200℃以下となり、時効処理時間が1時間以上となる条件で、時効処理を行う。具体的には、図1に示すように、焼入れ後のアルミニウム合金材を加熱して、180℃以上200℃以下の時効処理温度に到達したら、この温度を1時間以上維持することにより時効処理を行う。これにより、本実施形態のアルミニウム合金熱間鍛造品を得ることができる。
ここで、時効処理温度が180℃未満の場合は、金属間化合物MgSiを十分に析出することができない。一方、200℃を超える場合は、MgSiの析出状態が粗大となり、強度が低下する。また、時効時間が1時間未満の場合は、鍛造品の強度を向上させることができない。
本実施形態の製造方法によれば、第1および第2の方向で、アルミニウム合金材を鍛造する。これにより、第1方向のみで鍛造した場合と比較して、亜結晶粒界を多く発生することができる。その結果、鍛造品の強度を向上させることができる。
また、溶体化処理を省略して、第2熱間鍛造工程の後に焼入れ工程を実施するため、鍛造により発生した微細組織が再結晶粗大化することを抑制することができる。結果として、機械的特性の低下を防止することができる。
さらに、第2熱間鍛造工程後から焼入れ開始までの時間と、焼入れ開始温度と、時効処理の温度および時間と、を上述した範囲に設定することにより、後述する実施例で実証するように、鍛造品の引張強度と耐力を向上させることができる。
以下、実施例により、本発明をより具体的に説明する。なお、以下の図および表に示す実施例および比較例に係る引張強度および0.2%耐力の比率とは、汎用材A6061の強度に対する比率を表し、亜結晶粒界長は単位mmあたりに存在する亜結晶粒界の長さである。
<実施例1-1>
A6110に相当するアルミニウム合金材を準備し、円柱状試験体を用意した。この試験体を555℃の温度かつ2時間の条件で加熱した(材料加熱工程)後、加熱した状態の試験体に第1の方向(円柱状試験体の軸方向)から鍛造した(第1熱間鍛造工程)。鍛造は、据込鍛造を1回行った。
次いで、第1熱間鍛造工程後の試験体を第2の方向から鍛造した(第2熱間鍛造工程)。第2の方向は、円柱状試験体の軸方向と直交する方向(径方向)である。鍛造は、バスター(つぶし)→ブロッカ(荒地)→フィニッシャー(仕上げ)の順に3回行った。
次いで、第2熱間鍛造工程終了後から60秒後に焼入れ開始温度450℃で、第2熱間鍛造工程終了後の試験体を水焼入れした(焼入れ工程)後、190℃かつ5時間で時効処理(時効処理工程)を行った。得られた試験体を、ステアリングナックルに対応する試験体として、実施例1-1の試験体とした。
<比較例1-1>
実施例1-1と同様にして、比較例1-1の試験体を作製した。実施例1-1と相違する点は、比較例1-1の製造工程には、第2熱間鍛造工程と焼入れ工程との間に、溶体化処理(T6)が追加されている点である。
<比較例1-2>
実施例1-1と同様にして、比較例1-2の試験体を作製した。実施例1-1と相違する点は、鍛造方向が一方向のみであり、具体的には、材料加熱工程後、第1熱間鍛造工程を省略して(据込鍛造を行わず)、第2熱間鍛造工程を行った点である。
実施例1-1および比較例1-1の試験体に係る断面のマクロおよびミクロ組織を顕微鏡で観察した。結果を図2および図3に示す。図2は、試験体に係る断面のマクロ組織観察の結果であって、(a)は実施例1-1の試験体の写真であり、(b)は比較例1-1の試験体の写真である。図3は、試験体に係る断面のミクロ組織観察の結果であって、(a)は実施例1-1の試験体の写真であり、(b)は比較例1-1の試験体の写真である。
図2(b)および図3(b)からわかるように、比較例1-1の如く、溶体化処理(T6処理)を行った場合は、鍛造により形成されたバリ部で再結晶粗大化が認められた。これは溶体化処理の際に、微細組織が再結晶粗大化したことが考えられる。この再結晶粗大化により鍛造品の機械的特性が低下すると考えられる。
それに対して、図2(a)および図3(a)からわかるように、実施例1-1では、鍛造により形成されたバリ部で、再結晶粗大化が発生していなかった。また、次の結果で述べるように2方向の鍛造により、アルミニウム合金材に十分なひずみが導入されるため、微細な亜結晶組織が認められた。よって、試験体の強度を向上させるためには、第2熱間鍛造工程後は、溶体化処理をせずに、焼入れを行う方が良いことがわかる。
また、実施例1-1および比較例1-2に係る試験体の断面を顕微鏡で観察した。結果を図4に示す。図4は、試験体の亜結晶粒界マップであって、(a)は実施例1-1の試験体の亜結晶粒界マップであり、(b)は、比較例1-2に係る試験体の亜結晶粒界マップである。
図4(b)からわかるように、比較例1-2の如く、一方向のみの鍛造の場合には、圧下率の小さい部位では、十分なひずみが入らないため、析出促進サイトとなる亜結晶組織を十分に生成することができなかった。
それに対して、図4(a)からわかるように、実施例1-1の如く、2方向から鍛造した場合は、1方向の鍛造だけでは圧下率の小さい部位でも、別の方向から十分なひずみが入るため、多くの亜結晶組織を生成することができた。この結果より、試験体の強度を向上させるためには、2方向の鍛造を行う方が良いことがわかる。
1.材料加熱工程の適正温度に関する評価
材料加熱工程の適正な温度を調べるために、第1熱間鍛造工程前の加熱温度と強度との関係を確認する試験を行った。
<実施例2-1>
実施例1-1と同じ条件で、試験体を作製して、実施例2-1とした。したがって、実施例2-1の第1熱間鍛造工程前の加熱温度は555℃となる。
<実施例2-2および比較例2-1、2-2>
実施例2-1と同様にして、実施例2-2および比較例2-1、2-2の試験体を作製した。実施例2-2および比較例2-1、2-2が、実施例2-1とは異なる点は、第1熱間鍛造工程前の加熱温度であり、具体的には、実施例2-2、比較例2-1、および比較例2-2に係る材料加熱工程での加熱温度を、それぞれ、540℃、530℃、および520℃とした点である。
図5は、引張試験に用いた試験体の自動車用のステアリングナックルの採取部を説明する図である。実施例2-1、2-2および比較例2-1、2-2では、図5に示すAおよびB部から試験片を採取して、引張試験を行い、引張強度および0.2%耐力を測定した。図6は、実施例2-1、2-2および比較例2-1、2-2に係る第1熱間鍛造工程前の加熱温度と強度との関係を示すグラフである。
比較例2-1、2-2と比較して、実施例2-1、2-2の如く、第1熱間鍛造工程前の加熱温度が540℃以上である場合、引張強度および0.2%耐力の比率が、引張強度目標値および0.2%耐力目標値を超えた。よって、材料加熱工程での加熱温度を540℃以上に設定することにより、試験体の強度を向上させることができると考えられる。なお、発明者らは、材料加熱時間を2時間以上に設定することにより、試験体の溶質元素の固溶状態を確保できるため、試験体を効果的に鍛造できる結果、試験体の強度が向上するとの知見を得ている。
2.第2熱間鍛造工程後から焼入れ開始までの時間について
適正な第2熱間鍛造工程後焼入れ開始までの時間を検討するために、以下の実施例および比較例を用いて、第2熱間鍛造工程後から焼入れ開始までの時間とミクロ組織との関係を確認する試験を行った。
<実施例3-1>
実施例1-1と同じ条件で、実施例3-1の試験体を作製した。したがって、実施例3-1では、第2熱間鍛造工程後から焼入れ開始までの時間は60秒である。
<実施例3-2>
実施例3-1と同様にして、実施例3-2の試験体を作製した。実施例3-1と相違する点は、第2熱間鍛造工程後から焼入れ開始までの時間を100秒にした点である。
<比較例3-1>
実施例3-1と同様にして、比較例3-1の試験体を作製した。実施例3-1と相違する点は、焼入れを行わなかった点であり、具体的には、第2熱間鍛造工程後、試験体を放冷した点である。
実施例3-1、3-2、および比較例3-1の試験体の断面を顕微鏡で観察した。結果を図7に示す。図7は、実施例3-1、3-2、および比較例3-1に係る試験体の断面のミクロ組織の写真である。また、図7中、左側および右側の写真は、それぞれ、低倍および高倍のものである。
図7からわかるように、比較例3-1と比較して、実施例3-1、3-2の如く、第2熱間鍛造工程後100秒以内に焼入れを開始した場合、亜結晶組織が生成された。よって、第2熱間鍛造工程後から焼入れ開始までの時間を100秒以内に設定することにより、試験体の強度を向上させることができると考えられる。
3.焼入れ開始温度の適正温度に関する評価
焼入れ開始温度の適正な温度を評価するために、以下に示す実施例及び比較例を用いて、焼入れ開始温度と強度との関係を確認する試験を行った。
<実施例4-1>
実施例1-1と同じ条件で、実施例4-1の試験体を作製した。したがって、実施例4-1では、焼入れ開始温度450℃である。
<実施例4-2、および比較例4-1、4-2>
実施例4-1と同様にして、実施例4-2および比較例4-1、4-2の試験体を作製した。実施例4-2および比較例4-1、4-2が、実施例4-1と相違する点は、焼入れ開始温度であり、具体的には、実施例4-2、比較例4-1、および比較例4-2の焼入れ開始温度を、それぞれ、480℃、400℃、および350℃とした点である。
作製した実施例4-1、4-2および比較例4-1、4-2について、上述したように、図5に示すAおよびB部から採取した試験片で、引張試験を行い、引張強度および0.2%耐力を測定した。図8は、実施例4-1、4-2および比較例4-1、4-2に係る焼入れ開始温度と強度との関係を示すグラフである。なお、0.2%耐力比率および引張強度比率の結果は、AおよびB部の平均値を示す。
図8からわかるように、比較例4-1、4-2と比較して、実施例4-1、4-2の如く、焼入れ開始温度が450℃以上の場合、引張強度および0.2%耐力比率が目標値を超えた。よって、焼入れ開始温度が450℃以上に設定することにより、試験体の強度を向上させることができると考えられる。
4.時効処理の適正時間に係る評価
適正な時効時間を評価するために、以下に示す実施例及び比較例を用いて、190℃での時効時間と強度との関係を確認する試験を行った。
<実施例5-1>
実施例1-1と同じ条件で、実施例5-1の試験体を作製した。したがって、実施例5-1では、時効時間が5時間である。
<実施例5-2~5-5および比較例5-1、5-2>
実施例5-1と同様にして、実施例5-2~5-5および比較例5-1、5-2の試験体を作製した。実施例5-2~5-5および比較例5-1、5-2が実施例5-1と相違する点は、時効時間であり、具体的には、実施例5-2~5-5、および、比較例5-1、5-2の時効時間を、それぞれ、4時間、3時間、2時間、1時間、0.5時間、0時間とした点である。
作製した実施例5-1~5-5および比較例5-1、5-2について、上述したように、図5に示すAおよびB部から採取した試験片で、引張試験を行い、引張強度および0.2%耐力を測定した。図9は、実施例5-1~5-5および比較例5-1、5-2に係る190℃での時効時間と強度との関係を示すグラフである。
図9からわかるように、比較例5-1、5-2と比較して、実施例5-1~5-5の如く、時効時間が1時間以上の場合、引張強度および0.2%耐力比率が目標値を超えた。よって、時効時間を1時間以上に設定することにより、試験体の強度を向上させることができると考えられる。
なお、上述の試験では、時効温度は190℃のみで実施しているが、発明者らは、時効温度を180℃以上200℃以下に設定することにより、190℃の場合と同様に、試験体の強度を向上させることができるとの知見を得ている。
5.確認試験および結果
以上の試験結果を踏まえて、表1の条件に従って、実施例1-1と同様にして、実施例6-1~6-4及び比較例6-1~6-5の試験体を作製した。なお、表中、鍛造前加熱温度は、材料加熱工程の加熱温度に相当し、据込有無とは、第1熱間鍛造工程の有無をいう。
作製した試験体について、図6に示すAおよびB部から採取した試験片で、引張試験を行い、引張強度を測定した。また、引張試験により0.2%耐力を求めた。さらに、実施例6-2、6-4および比較例6-2、6-3については、亜結晶粒界の長さを求めた。結果を表1に示す。なお、表中、0.2%耐力比率および引張強度比率の結果は、A部の値を示す。
Figure 0007003676000001
実施例6-1~6-4の試験体は、高強度(引張強度比率および0.2%耐力が共に125%以上)を有した。
それに対して、比較例6-1の試験体は、時効時間が短く、0.2%耐力比率が低下した。比較例6-2の試験体は、第1熱間鍛造工程(据込鍛造)が無いため、亜結晶組織が少なく引張強度比率が向上しなかったと考えられる。
比較例6-3の試験体は、第2熱間鍛造工程後に放冷したため、亜結晶組織が回復するとともに、冷却速度が遅いため、時効処理を行っても引張強度および2%耐力比率が向上しなかったと考えられる。
比較例6-4は、鍛造前加熱温度が高く、鍛造時に局所的に割れが発生し、製品形状に成形できなかった。ここで、実施例6-2の如く、鍛造前加熱温度が555℃の場合は、試験体の強度が満足するものであった。よって、鍛造前加熱温度の上限値を555℃に設定することにより、試験体の強度を向上させることができると考えられる。
比較例6-5は、鍛造前加熱温度が低く、溶質元素の固溶が促進せず、時効処理を行っても、十分な強度が確保できなかったと考えられる。
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
S1:材料加熱工程、S2:第1熱間鍛造工程、S3:第2熱間鍛造工程、S4:焼入れ工程、S5:時効処理工程

Claims (1)

  1. Si:0.7~1.5質量%、Fe:0.8質量%以下、Cu:0.20~0.7質量%、Mn:0.20~0.7質量%、Mg:0.5~1.1質量%、Cr:0.04~0.25質量%、Zn:0.30質量%以下、Ti:0.15質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金材からアルミニウム合金熱間鍛造品を製造する方法であって、
    前記アルミニウム合金材を、加熱温度が540℃以上555℃以下となり、加熱時間が2時間以上となる条件で、加熱する材料加熱工程と、
    加熱された状態の前記アルミニウム合金材を、第1の方向から鍛造する第1熱間鍛造工程と、
    前記第1熱間鍛造工程後の前記アルミニウム合金材を、前記第1の方向とは異なる第2の方向から鍛造する第2熱間鍛造工程と、
    前記第2熱間鍛造工程後の前記アルミニウム合金材を、前記第2熱間鍛造工程後100秒以内に、焼入れ開始温度450℃以上となる条件で焼入れをする焼入れ工程と、
    前記焼入れ工程後の前記アルミニウム合金材を、時効処理温度が180℃以上200℃以下となり、時効処理時間が1時間以上となる条件で、時効処理を行う時効処理工程と、を少なくとも含み、
    前記時効処理工程後のアルミニウム合金熱間鍛造品において単位mm あたりに存在する亜結晶粒界の長さが149mm以上となるように、前記第1熱間鍛造工程から前記時効処理工程までを行う、ことを特徴とするアルミニウム合金熱間鍛造品の製造方法。
JP2018004909A 2018-01-16 2018-01-16 アルミニウム合金熱間鍛造品の製造方法 Active JP7003676B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018004909A JP7003676B2 (ja) 2018-01-16 2018-01-16 アルミニウム合金熱間鍛造品の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018004909A JP7003676B2 (ja) 2018-01-16 2018-01-16 アルミニウム合金熱間鍛造品の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019123902A JP2019123902A (ja) 2019-07-25
JP7003676B2 true JP7003676B2 (ja) 2022-02-04

Family

ID=67397990

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018004909A Active JP7003676B2 (ja) 2018-01-16 2018-01-16 アルミニウム合金熱間鍛造品の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7003676B2 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021095588A (ja) * 2019-12-13 2021-06-24 トヨタ自動車株式会社 アルミニウム合金塑性加工品の製造方法
CN112646991B (zh) * 2020-12-31 2022-06-07 广东润华轻合金有限公司 一种高强度高表面手机壳体用铝合金及其制备方法
JP2022137762A (ja) 2021-03-09 2022-09-22 トヨタ自動車株式会社 アルミニウム合金鍛造材の製造方法
CN113621855B (zh) * 2021-08-10 2022-03-25 江苏亚太航空科技有限公司 一种高性能细晶粒零粗晶环铝合金及其制备工艺及应用
CN117086248A (zh) * 2023-08-22 2023-11-21 武汉理工大学 一种高性能铝合金构件粗晶消除锻造工艺
CN117165877B (zh) * 2023-11-01 2024-01-23 湖南卓创精材科技股份有限公司 一种提高铝合金性能的制备方法

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007177308A (ja) 2005-12-28 2007-07-12 Sumitomo Light Metal Ind Ltd 耐食性に優れた高強度、高靭性アルミニウム合金押出材および鍛造材、該押出材および鍛造材の製造方法
JP2010083473A (ja) 2008-09-05 2010-04-15 Washi Kosan Co Ltd ホイールの製造方法及びホイール
JP2012001756A (ja) 2010-06-16 2012-01-05 Sumitomo Light Metal Ind Ltd 高靭性Al合金鍛造材及びその製造方法
JP2015189993A (ja) 2014-03-27 2015-11-02 株式会社神戸製鋼所 アルミニウム合金鍛造材
CN106086733A (zh) 2016-07-27 2016-11-09 武汉理工大学 汽车铝合金底盘类零件锻造工艺

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH1112675A (ja) * 1997-06-28 1999-01-19 Kobe Steel Ltd 熱間鍛造用アルミニウム合金及び熱間鍛造品の製造方法

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007177308A (ja) 2005-12-28 2007-07-12 Sumitomo Light Metal Ind Ltd 耐食性に優れた高強度、高靭性アルミニウム合金押出材および鍛造材、該押出材および鍛造材の製造方法
JP2010083473A (ja) 2008-09-05 2010-04-15 Washi Kosan Co Ltd ホイールの製造方法及びホイール
JP2012001756A (ja) 2010-06-16 2012-01-05 Sumitomo Light Metal Ind Ltd 高靭性Al合金鍛造材及びその製造方法
JP2015189993A (ja) 2014-03-27 2015-11-02 株式会社神戸製鋼所 アルミニウム合金鍛造材
CN106086733A (zh) 2016-07-27 2016-11-09 武汉理工大学 汽车铝合金底盘类零件锻造工艺

Also Published As

Publication number Publication date
JP2019123902A (ja) 2019-07-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7003676B2 (ja) アルミニウム合金熱間鍛造品の製造方法
JP5082483B2 (ja) アルミニウム合金材の製造方法
US10196724B2 (en) Method for manufacturing Ni-based super-heat-resistant alloy
JP6492057B2 (ja) 高い強度を有する銅―ニッケル―錫合金
JP4285916B2 (ja) 高強度、高耐食性構造用アルミニウム合金板の製造方法
US10793939B2 (en) Nickel based superalloy with high volume fraction of precipitate phase
JP6348466B2 (ja) アルミニウム合金押出材及びその製造方法
JP6990527B2 (ja) アルミニウム合金材
KR102437942B1 (ko) 6xxx 알루미늄 합금
JP7401760B2 (ja) α+β型チタン合金棒材の製造方法
JP2017534762A (ja) アルミニウム合金製品及び調製方法
JP6079294B2 (ja) Ni基耐熱合金部材の自由鍛造加工方法
JP2012097321A (ja) 耐応力腐食割れ性に優れた高強度アルミニウム合金製鍛造品及びその鍛造方法
KR20120139801A (ko) 알루미늄 합금 단조 부재의 제조 방법
JP2013142168A (ja) 耐クリープ特性に優れたアルミニウム合金
JP2014161861A5 (ja)
JP6718219B2 (ja) 耐熱性アルミニウム合金材の製造方法
JP2005232581A (ja) 疲労強度に優れた熱間鍛造品およびその製造方法
JP6199073B2 (ja) マグネシウム合金の製造方法
JPH11286758A (ja) アルミ鋳造材を用いた鍛造製品の製造方法
JP2010018850A (ja) 部分改質アルミニウム合金部材及びその製造方法
JPH06212378A (ja) β型チタン合金熱間成形品の処理方法
JPH05247574A (ja) 鍛造用アルミニウム合金及びアルミニウム合金鍛造材の製造方法
WO2010029572A1 (en) Method for manufacture of aluminium alloy sheets
JP2020090727A (ja) 耐熱性アルミニウム合金材の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20201026

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210716

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210810

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210928

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20211130

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20211213