JP6348466B2 - アルミニウム合金押出材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
アルミニウム合金押出材は、質量%で、Cu:2.5〜3.3%、Mg:1.3〜2.5%、Ni:0.50〜1.3%、Fe:0.50〜1.5%、Mn:0.50%未満、Si:0.15〜0.40%、Zr:0.06〜0.20%、Ti:0.05%未満を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる。以下、アルミニウム合金押出材の各成分組成について詳細に説明する。
Cuは、常温及び高温におけるアルミニウム合金押出材の強度向上に寄与する。Cu含有量は2.5〜3.3%の範囲とする。Cu含有量が2.5%未満の場合には、強度向上の効果が十分に得られない。Cu含有量が3.3%を超える場合には、共晶融解開始温度が低下し、溶体化処理温度を低くしなければならないため、母相中への固溶量が減り、強度向上の効果が望めない。
Mgは、Cuと共存して、常温及び高温におけるアルミニウム合金押出材の強度向上に寄与する。Mg含有量は1.3〜2.5%の範囲とする。Mg含有量が1.3%未満の場合には、強度向上の効果が小さい。Mg含有量が2.5%を超える場合には、押出等の熱間加工において材料の変形抵抗が高くなり、生産性が低下する。
Niは、Feと共にFe−Ni化合物を形成し、アルミニウム合金押出材の耐熱性を向上させる。Ni含有量は0.50〜1.3%の範囲とする。Ni含有量が0.50%未満の場合には、耐熱性向上の効果が十分に得られない。Ni含有量が1.3%を超える場合には、母相中に分散するAl−Ni系、Al−Ni−Cu系等のNi系化合物が形成されるため、耐熱性向上の効果が小さくなる。また、粗大なFe−Ni系化合物が形成されることにより、押出等の熱間加工において割れが発生しやすくなり、生産性が低下する。
Feは、Niと共にFe−Ni化合物を形成し、アルミニウム合金押出材の耐熱性を向上させる。Fe含有量は0.50〜1.5%の範囲とする。Fe含有量が0.50%未満の場合には、耐熱性向上の効果が十分に得られない。Fe含有量が1.5%を超える場合には、母相中に分散するAl−Fe系、Al−Fe−Cu系等のFe系化合物が形成されるため、耐熱性向上の効果が小さくなる。
Mnは、Al−Mn−Si系化合物を析出、分散させ、溶体化処理中に生じる再結晶を抑制し、微細な亜結晶粒を形成させることにより、常温及び高温におけるアルミニウム合金押出材の強度向上に寄与する。Mn含有量は0.50%未満とする。Mg含有量が0.50%以上の場合には、鋳造時に巨大な晶出物が形成されやすくなり、強度が低下する。
Siは、Mnと共にAl−Mn−Si系化合物の微細分散相を析出させ、転位のピンニング効果を高め、溶体化処理中の再結晶粒の粗大化を抑制することにより、アルミニウム合金押出材の強度を向上させる。Si含有量は0.15〜0.40%の範囲とする。Si含有量が0.15%未満の場合には、強度向上の効果が十分に得られない。Si含有量が0.40%を超える場合には、MgとSiの化合物が形成され、耐熱性が低下する。
Zrは、鋳造組織の微細化に寄与する。また、Al3Zr化合物の微細分散により、溶体化処理中に生じる再結晶を抑制し、微細な亜結晶粒を形成させることで、アルミニウム合金押出材の強度向上に寄与する。Zr含有量は0.06〜0.20%の範囲とする。Zr含有量が0.05%未満の場合には、鋳造組織の微細化及び強度向上の効果が十分に得られない。Zr含有量が0.20%を超える場合には、鋳造時に巨大な晶出物が形成されやすくなるため、鋳造組織の微細化及び強度向上の効果が小さくなる。
Tiは、Zrと同様、微細結晶粒組織を安定して得るために添加される。Ti含有量は0.05%未満とする。Ti含有量が0.05%以上の場合には、鋳造時に巨大なZr−Ti系化合物が形成され、強度が低下する。
上記元素の他は、基本的にはAl及び不可避的不純物とすればよいが、通常、アルミニウム合金に添加される上記元素以外の元素も、特性に大きな影響を与えない範囲内で許容される。
アルミニウム合金押出材の製造方法は、上記組成のアルミニウム合金の鋳塊を400〜500℃で均質化処理し、0.01℃/s以上の平均冷却速度で均質化処理の温度から200℃以下の温度まで冷却した後、310〜450℃で押出加工し、得られた押出材に対して溶体化処理及び焼入れを行い、その後48時間以内に2〜4%歪の引張矯正を行い、160〜220℃で時効処理を行う。以下、アルミニウム合金押出材の製造方法について詳細に説明する。
押出方向(L方向)の組織が観察できるように、押出材を押出方向(L方向)と平行な方向に、均等に2分割されるように(押出材の中心軸を含むように)切断し、その切断面を耐水研磨紙で研磨し、さらに研磨剤を塗布したバフで鏡面に仕上げた。次いで、押出材の切断面の中心部(切断面における長さ方向(押出方向)に直交する方向(幅方向)の中間位置に当たる部分)を光学顕微鏡にて200倍で観察した。これにより、金属間化合物の最大粒径(円相当径)、粒径(円相当径)が0.3〜20μmの金属間化合物の密度を測定した。
押出方向(L方向)の組織が観察できるように、押出材を押出方向(L方向)と平行な方向に、均等に2分割されるように(押出材の中心軸を含むように)切断し、その切断面を耐水研磨紙で研磨し、さらに研磨剤を塗布したバフで鏡面に仕上げた。その後、押出材の切断面に対して、ケラー液によりエッチングを施した。次いで、押出材の切断面の中心部(切断面における長さ方向(押出方向)に直交する方向(幅方向)の中間位置に当たる部分)を光学顕微鏡にて200倍で観察した。これにより、亜結晶粒の平均粒径(円相当径)を測定した。
室温での0.2%耐力については、各押出材を用いて試験片を作製した。具体的には、各押出材について、押出方向(L方向)が軸方向(長さ方向)となる試験片と押出方向に直交する方向(LT方向)が軸方向(長さ方向)となる試験片とを作製した。試験片は、平行部径5mm、標点距離15mm、肩部半径10mmとした。次いで、試験片を引張試験機にセットし、室温下で引張試験(JIS Z2241(2011年))を行った。なお、LT方向の引張試験においては、試験片の評価部の両端に共材を摩擦圧接し、試験片に必要な長さを確保した。この引張試験の結果より、室温での0.2%耐力(L方向、LT方向)を求めた。室温での0.2%耐力の評価については、従来(例えば上記特許文献2に開示された値)と比較し、室温での0.2%耐力の値が410MPa以上のものを合格とした。
各押出材を用いて上述した0.2%耐力と同様の試験片を作製した。次いで、試験片をクリープラプチャー試験機にセットした状態で200℃まで加熱した。200℃に達してから60分間保持した後、200℃下でクリープラプチャー試験を行った。クリープラプチャー試験では、試験片に対して200MPaの荷重を100時間負荷した。なお、負荷する荷重は、近年の高温特性が要求される値を基準として200MPaとした。耐クリープ性(LT方向)の評価については、200MPaの荷重を負荷して100時間で破断しなかったものを合格とし、破断したものを不合格とした。
表2からわかるように、比較例15〜18は、本発明の範囲外であるため、0.2%耐力、耐クリープ性ともに良好なものは得られなかった。
比較例18は、合金成分のZr含有量が少ないため、再結晶となり、室温での0.2%耐力(LT方向)、200℃での0.2%耐力(L方向、LT方向)が基準値を満たさず、耐クリープ性(LT方向)が不合格であった。なお、表2における比較例18の亜結晶粒の平均粒径の欄に表記されている数値は、再結晶粒の平均粒径の数値である。
表4からわかるように、比較例24〜31は、製造方法が本発明の範囲外であるため、0.2%耐力、耐クリープ性ともに良好なものは得られなかった。
比較例26は、均質化処理の温度が低かったため、粒径0.3〜20μmの金属間化合物の密度が低く、200℃での0.2%耐力(LT方向)が基準値を満たさず、耐クリープ性(LT方向)が不合格であった。
比較例30は、押出加工温度が高かったため、亜結晶粒の平均粒径が大きくなり、200℃での0.2%耐力(LT方向)が基準値を満たさず、耐クリープ性(LT方向)が不合格であった。
Claims (2)
- アルミニウム合金押出材であって、
質量%で、Cu:2.5〜3.3%、Mg:1.3〜2.5%、Ni:0.50〜1.3%、Fe:0.50〜1.5%、Mn:0.50%未満、Si:0.15〜0.40%、Zr:0.06〜0.20%、Ti:0.05%未満を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、
押出方向と平行な断面において、金属間化合物の粒径が円相当径で20μm以下であり、粒径が円相当径で0.3〜20μmの金属間化合物の密度が5×103個/mm2以上であり、かつ、亜結晶粒の平均粒径が円相当径で20μm以下であることを特徴とするアルミニウム合金押出材。 - 請求項1に記載のアルミニウム合金押出材の製造方法であって、
前記組成のアルミニウム合金の鋳塊を400〜500℃で均質化処理し、0.01℃/s以上の平均冷却速度で前記均質化処理の温度から200℃以下の温度まで冷却した後、310〜450℃で押出加工し、得られた押出材に対して溶体化処理及び焼入れを行い、その後48時間以内に2〜4%歪の引張矯正を行い、160〜220℃で時効処理を行うことを特徴とするアルミニウム合金押出材の製造方法。
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