JPWO2019131677A1 - 含フッ素ジエン化合物、含フッ素重合体及びそれらの製造方法 - Google Patents

含フッ素ジエン化合物、含フッ素重合体及びそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、下記一般式Iで表される含フッ素ジエン化合物とその重合体に関する。式中、R1〜R7はそれぞれ独立して、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基であり、kは0または1であり、前記R1〜R7のうち少なくとも1は水素原子である。【化1】

Description

本発明は新規な含フッ素ジエン化合物、より詳しくは、フッ素原子を含むジエン化合物、含フッ素重合体及びそれらの製造方法に関する。
主鎖にフッ素原子を含む、含フッ素不飽和化合物を原料モノマーとする重合体(ポリマー)は、低屈折率、低誘電率、撥水・撥油性、耐熱性、耐薬品性、化学的安定性、透明性等の諸特性のバランスに優れており、電気・電子材料、半導体材料、光学材料、表面処理剤等の多種多様な分野に利用されている。
中でも、原料モノマーとなる含フッ素化合物が炭素−炭素二重結合を2個有する含フッ素ジエン化合物であって、該炭素−炭素二重結合の間に介在する炭素原子及び酸素原子の合計数が2個または3個(炭素−炭素二重結合を構成する炭素原子は数に含まれない。枝分かれ(分枝)した構造がある際には、分枝に含まれる炭素原子及び酸素原子は数に含まれない)の場合、環化重合が可能であり、主として主鎖に5員環または6員環構造を有するポリマーが生成する。このような含フッ素ジエン化合物は、従来多段階で合成されることが常であった。
非特許文献1には、ペルフルオロアリルフルオロスルフェート(CF=CFCFOSOF)がヘキサフルオロプロペン(CF=CFCF)から1工程で得られることが記載されており、当該ペルフルオロアリルフルオロスルフェートから、様々な化合物が合成可能であることが報告されている。
Molecules 2011,16,6512−6540
しかしながら、ペルフルオロアリルフルオロスルフェートから部分フッ素化されたジエン化合物が合成された報告は、非特許文献1を含め従来技術にはなかった。
そこで本発明では、少ない工程数で容易に製造することが可能である、新規なフッ素原子を含むジエン化合物(含フッ素ジエン化合物)及び当該含フッ素ジエン化合物を原料モノマーに用いた新規な含フッ素重合体を提供することを目的とする。また、それらの製造方法を提供することも目的とする。
前記課題を達成する構成として、本発明は下記<1>〜<12>に関する。
<1>下記一般式Iで表される含フッ素ジエン化合物。
Figure 2019131677
式中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基であり、kは0または1であり、前記R〜Rのうち少なくとも1は水素原子である。
<2>前記一般式IにおけるR及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子であり、Rは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であり、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である、前記<1>に記載の含フッ素ジエン化合物。
<3>塩基の存在下、下記一般式aで表される化合物と下記一般式bで表される化合物とを反応させる、下記一般式Iで表される含フッ素ジエン化合物を製造する方法。
Figure 2019131677
式中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基であり、kは0または1であり、前記R〜Rのうち少なくとも1は水素原子である。
<4>前記反応を溶媒存在下で行う、前記<3>に記載の含フッ素ジエン化合物を製造する方法。
<5>前記塩基が脂肪族3級アミンである、前記<3>又は<4>に記載の含フッ素ジエン化合物を製造する方法。
<6>前記溶媒がグライム及びニトリルの少なくともいずれか一方を含む、前記<4>又は<5>に記載の含フッ素ジエン化合物を製造する方法。
<7>下記一般式I’で表される含フッ素化合物を原料モノマーとする含フッ素重合体。
Figure 2019131677
式中、R11〜R17はそれぞれ独立して、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又はヘテロ原子を有していてもよい一価の有機基であり、kは0または1であり、前記R11〜R17のうち少なくとも1は水素原子であり、R11又はR12はR13〜R17のうちいずれかひとつと連結して環を形成してもよく、R13はR11、R12、R14〜R17のうちいずれかひとつと連結して環を形成してもよい。
<8>前記一般式I’で表される含フッ素化合物が下記一般式Iで表される含フッ素ジエン化合物である前記<7>に記載の含フッ素重合体。
Figure 2019131677
式中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基であり、kは0または1であり、前記R〜Rのうち少なくとも1は水素原子である。
<9>前記一般式IにおけるR及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子であり、Rは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であり、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である前記<8>に記載の含フッ素重合体。
<10>下記一般式I’で表される含フッ素化合物を含む原料モノマーを重合させる工程を含む、含フッ素重合体の製造方法。
Figure 2019131677
式中、R11〜R17はそれぞれ独立して、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又はヘテロ原子を有していてもよい一価の有機基であり、kは0または1であり、前記R11〜R17のうち少なくとも1は水素原子であり、R11又はR12はR13〜R17のうちいずれかひとつと連結して環を形成してもよく、R13はR11、R12、R14〜R17のうちいずれかひとつと連結して環を形成してもよい。
<11>前記一般式I’で表される含フッ素化合物が下記一般式Iで表される含フッ素ジエン化合物である前記<10>に記載の含フッ素重合体の製造方法。
Figure 2019131677
式中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基であり、kは0または1であり、前記R〜Rのうち少なくとも1は水素原子である。
<12>前記一般式IにおけるR及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子であり、Rは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であり、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である前記<11>に記載の含フッ素重合体の製造方法。
本発明によれば、新規の含フッ素ジエン化合物が提供される。また前記含フッ素ジエン化合物等の含フッ素化合物を原料モノマーとした新規な含フッ素重合体は、化学耐久性、耐候性、光透過性、透明性及び撥液性に優れ、低誘電率が期待されることから、光学材料、電子材料、表面処理剤等としての利用が期待される。
さらに、上記有用な含フッ素ジエン化合物を少ない工程数で合成可能な、低コストで効率的な製造方法が提供される。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
本明細書において、ペルフルオロアルキル基とは、アルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換された基を意味する。また(ペル)フルオロアルキル基とは、フルオロアルキル基とペルフルオロアルキル基とを合わせた総称で用いる。すなわち該基は1個以上のフッ素原子を有するアルキル基である。
<含フッ素ジエン化合物>
本発明の含フッ素ジエン化合物は、前記一般式Iで表される含フッ素ジエン化合物である。
一般式Iにおいて、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基であり、kは0または1であり、前記R〜Rのうち少なくとも1は水素原子である。
一般式Iにおいて、R〜Rのうち少なくとも1は水素原子であることから、本発明の含フッ素ジエン化合物は部分フッ素化された化合物であり、ペルフルオロ化合物ではない。
〜Rのうち、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であることが含フッ素ジエン化合物の重合反応性が高くなるので好ましく、水素原子又はフッ素原子がより好ましい。
は水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であることが含フッ素ジエン化合物の重合反応性が高くなるので好ましい。
及びRはそれぞれ独立して、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であることが後述する式(a)で表される化合物(化合物a)が安定となるので好ましい。R又はRがフッ素原子である場合、フッ化水素(HF)として脱離しやすくなることから、構造が不安定になりやすい。
及びRはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子であることが原料の入手がしやすく、重合反応性も高いので好ましい。
本発明の含フッ素ジエン化合物のより具体的な例を以下に示す。
Figure 2019131677
<含フッ素ジエン化合物の製造方法>
本発明の一般式Iで表される含フッ素ジエン化合物は、塩基の存在下、好ましくは溶媒存在下で、下記一般式aで表される化合物(化合物a)と下記一般式bで表される化合物(化合物b、ペルフルオロアリルフルオロスルフェート)とを反応させることにより合成することができる。
Figure 2019131677
一般式a中の符号R〜R及びkは一般式IにおけるR〜R及びkとそれぞれ同様であり、好ましい態様も同様である。
化合物bはヘキサフルオロプロペン(CF=CFCF)と発煙硫酸(SO)とを、例えばホウ酸トリメチル(B(OCH)又は三フッ化ホウ素(BF)の存在下で反応させることにより、1ステップで合成することができる。
得られた化合物bに対して塩基の存在下で化合物aがアルコキシドと同様に振る舞い、下記スキームに示すように求核試薬(Nu)として反応し、フルオロ硫酸イオンが脱離して、化合物aと化合物bの反応が進行する。
Figure 2019131677
化合物aと化合物bの仕込み比は特に限定されず、用いる塩基や溶媒、反応条件によって異なる。例えば1モルの化合物bに対して、化合物aは0.7モル以上が好ましく、1モル以上が化合物bの反応率が高くなることからより好ましい。また、化合物aの有効利用および反応の容積効率の点から10モル以下が好ましく、8モル以下がより好ましい。なお、化合物aが高価である等の場合には、化合物bの比率を上げることにより化合物aの収率を高めることも可能である。
塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基や、アミン系、ピリジン系、アニリン系等の有機塩基のいずれをも用いることができる。中でも、溶媒に可溶であり、反応が均一に進行し、反応の選択率が高くなることから有機塩基が好ましく、3級アミンがより好ましく、脂肪族3級アミンがさらに好ましい。
脂肪族3級アミンとしては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン等が挙げられる。3級アミンは環構造を含有していてもよく、分子内に複数の3級アミン構造を有していてもよい。
なお、非特許文献1にはペルフルオロアリルスルフェートが種々のアルコールや金属アルコキシドと反応することが記載されている。しかしながら、アルコールとペルフルオロアリルスルフェートとの反応が、有機塩基、特には脂肪族3級アミンの存在下で進行することについては記載されていない。それに対し、本発明の製造方法では、無機塩基よりも有機塩基、特には脂肪族3級アミンを用いると選択性が高まるという知見を新たに見出したものである。
塩基を添加すると反応速度が高くなり、目的化合物の選択率も高くなることから好ましい。塩基の量は、用いる塩基の種類やその他の条件によって異なるが、例えば化合物b1モルに対して0.5モル以上が好ましく、1モル以上が更に好ましい。有機塩基を使用する場合、有機塩基の量が多すぎると反応の容積効率が低下し、コスト上も好ましくないので、2モル以下が好ましい。無機塩基の場合は有機塩基の場合に比べて、さらに多く添加することができるが、一方で、上述したように、選択率の観点から、有機塩基、特には脂肪族3級アミンの使用が好ましい。
溶媒は非プロトン性で極性の溶媒であれば特に限定されないが、常温で液体であり、取扱いが容易な点からグライム及びニトリルの少なくともいずれか一方を含む溶媒を好ましく用いることができる。グライムとしてはモノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライムがより好ましく、ニトリルとしてはアセトニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリルがより好ましい。これら溶媒は一種を用いても複数種を混合して用いてもよい。
化合物a、化合物b及び塩基の、溶媒存在下での反応は溶液を攪拌しながら行われ、室温付近の温度で十分に進行する。中でも反応温度は0℃以上が反応速度の点から好ましく、また、40℃以下が急激な反応防止の点から好ましい。より好ましくは20℃以下で、更に好ましくは10℃以下である。反応が概ね進行した後は、それよりも多少温度が上がっても許容される。
反応時間は特に限定されないが、例えば1時間〜1日程度であり、ガスクロマトグラフィー等を用いて得られた化合物の同定を行い、その結果を見ながら反応を停止させてもよい。
反応圧力は特に限定されないが、大気圧下や加圧下で反応を行ってもよく、減圧下で反応を行ってもよい。反応熱による急激な発熱防止と副反応防止の点から、化合物aと塩基を添加した反応容器に化合物bを連続添加または間欠的に添加することが好ましいので、大気圧下のほうが反応操作が容易である。減圧下で反応を行う場合には、反応液の蒸気圧以上が好ましく、また、加圧する場合には、1MPa以下が好ましい。
反応雰囲気は、不活性ガス雰囲気が好ましい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴンが挙げられる。
目的物収率向上の点で、化合物a及び化合物bは脱水されたものを用いることが好ましい。脱水操作について、特に制限はないが、通常モレキュラーシーブ等と接触させる。
有機塩基を用いた反応で得られた含フッ素ジエン化合物は、例えば、極性溶媒を水洗で除去したのち、モレキュラーシーブ等で乾燥し、蒸留することにより高純度化することができる。また、減圧下で必要に応じて加熱して目的生成物を冷却した受器に抜き出し、塩酸等の酸と接触させることで抜き出し液中に含まれる有機塩基を除去すると、効率的に高純度化ができて、単離収率が向上する。更に純度を高めたい場合には、精密蒸留すればよい。
得られた含フッ素ジエン化合物は、その構造によっては不安定であり、室温でも分解、劣化する場合がある。また、蒸留する際に分解、劣化する場合もある。そのため、含フッ素ジエン化合物には所望により安定剤を添加する。
安定剤は塩基性物質が好ましく、無機塩基、有機塩基のいずれも使用可能である。無機塩基としては、例えばNaHCO、KHCO、NaCO、KCO、Mg0.7Al0.31.15等が挙げられる。また、有機塩基としては、例えば脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミンが挙げられる。
含フッ素ジエン化合物の精製前の保管時に安定剤を添加し、保管後に蒸留や塩酸処理で安定剤を分離する場合は、保存安定性の良好な有機アミンが好ましい。蒸留精製の場合には、含フッ素ジエン化合物の沸点と沸点が離れている有機アミンを選択することが好ましい。有機アミンとして、N、N、N’、N’−テトラエチルエチレンジアミン、4、4’−ビピリジル等のジアミンを選択することもできる。脂肪族アミンの添加で含フッ素ジエン化合物が変質する場合には、芳香族系アミンを用いることが好ましい。
蒸留後は、無機塩基を安定剤として用いることが好ましい。無機塩基は含フッ素ジエン化合物に溶解しないので、実際に含フッ素ジエン化合物を使うときの分離が容易である。蒸留前および蒸留後の含フッ素ジエン化合物は冷蔵庫または冷凍庫で冷却して保管することが好ましい。より低い温度のほうが含フッ素ジエン化合物は安定であり、10℃以下での保管が好ましく、−20℃以下での保管が更に好ましい。
また、含フッ素ジエン化合物は窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で保管されるのが好ましい。安定剤として添加された無機塩基は、重合前にろ過または真空蒸留により分離除去することができる。
得られた含フッ素ジエン化合物は、従来公知の方法で同定可能であり、例えば、H−,13C−,19F−NMRの測定によって同定することができる。
<含フッ素重合体>
一般式I’で表される含フッ素化合物を原料モノマーとして重合することにより、含フッ素重合体が得られる。一般式I’で表される含フッ素化合物は環化重合反応性を有しており、主鎖に環構造を有する含フッ素重合体が得られる。
Figure 2019131677
式中、R11〜R17はそれぞれ独立して、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又はヘテロ原子を有していてもよい一価の有機基であり、kは0または1であり、前記R11〜R17のうち少なくとも1は水素原子であり、R11又はR12はR13〜R17のうちいずれかひとつと連結して環を形成してもよく、R13は、R11、R12、R14〜R17のうちのひとつと連結して環を形成してもよい。ヘテロ原子としては酸素原子、窒素原子、硫黄原子が挙げられ、酸素原子の導入が最も容易である。また、一価の有機基としては、炭素数1〜5の一価有機基が好ましく、炭素数1〜3の一価炭化水素基、一価フルオロアルキル基がさらに好ましく、メチル基、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
一般式I’において、R11〜R17のうち少なくとも1は水素原子であることから、上記含フッ素化合物は部分フッ素化された化合物であり、ペルフルオロ化合物ではない。
一般式I’で表される含フッ素化合物としては、一般式Iで表される含フッ素ジエン化合物が好ましい。
また、一般式I’で表される含フッ素化合物は、一般式Iで表される含フッ素ジエン化合物と同様、塩基の存在下、好ましくはさらに溶媒の存在下で、下記一般式a’で表される化合物(化合物a’)と下記一般式bで表される化合物(化合物b、ペルフルオロアリルフルオロスルフェート)とを反応させることにより合成することができる。
Figure 2019131677
11〜R15のうち、R11及びR12はそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であることが含フッ素化合物の重合反応性が高くなるので好ましく、水素原子又はフッ素原子がより好ましい。
13は水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であることが含フッ素化合物の重合反応性が高くなるので好ましい。
14及びR15はそれぞれ独立して、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であることが、一般式I’で表される含フッ素化合物を製造する際の原料となる化合物が安定となるので好ましい。R14又はR15がフッ素原子である場合、フッ化水素(HF)として脱離しやすくなることから、構造が不安定になりやすい。
16及びR17はそれぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であることが、重合反応性に富み、原料の入手や合成が容易となるので好ましい。
また、得られる含フッ素重合体を光硬化や熱硬化材料として用いる場合には、一般式I’で表される含フッ素化合物の揮発性を抑制する必要がある。揮発性を抑制する方法として、例えば分子量を高める方法が挙げられる。
そのため、一般式I’で表される含フッ素化合物の分子量は188以上が好ましく、光硬化材料や熱硬化材料として用いる場合には400以上がより好ましい。また、硬化反応性の点から、上限は5000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1000以下がさらに好ましい。モノマー精製は蒸留で行うことが容易であり好ましい。蒸留精製のためには蒸気圧を確保するという観点から、一般式I’で表される含フッ素化合物の分子量は1000以下が好ましく、更に好ましくは700以下であり、500以下が特に好ましい。
一般式I’において、k=0の場合の環化重合においては、下記スキームに示すような5員環を形成する場合と6員環を形成する場合が考えられ、これらのうち少なくとも1の化合物に由来する構造を繰返し単位として含有する含フッ素重合体が得られる。下記スキームにおいてP・はポリマー生長ラジカル、連鎖移動剤由来のラジカル、または開始剤から発生した開始ラジカル等のラジカルを示す。
重合体は1種のモノマーを重合して得たホモポリマーでもよく、複数種のモノマーを重合して得たコポリマー(共重合体)でもよい。1種のモノマーから複数種の繰り返し単位(例えば、5員環構造と6員環構造)が生成する場合もある。
共重合体の場合は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれでもよい。
一般式I’のk=0で表されるモノマーと共重合するモノマーは一般式I’で表される構造を有する他のモノマーであってもよいし、一般式I’で表される構造を有しない他のモノマーであってもよい。
Figure 2019131677
Figure 2019131677
一般式I’において、k=1の場合の環化重合においては、下記スキームに示すような6員環を形成する場合と7員環を形成する場合が考えられ、これらのうち少なくとも1の化合物に由来する構造を繰返し単位として含有する含フッ素重合体が得られる。また、7員環よりも6員環のほうが環構造が安定なので6員環が優先的に生成すると考えられる。重合体は1種のモノマーを重合して得たホモポリマーでもよく、複数種のモノマーを重合して得たコポリマー(共重合体)でもよい。1種のモノマーから複数種の繰り返し単位(例えば、6員環構造と7員環構造)が生成する場合もある。
共重合体の場合は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれでもよい。
一般式I’のk=1で表されるモノマーと共重合するモノマーは一般式I’で表される構造を有する他のモノマーであってもよいし、一般式I’で表される構造を有しない他のモノマーであってもよい。
Figure 2019131677
Figure 2019131677
重合で用いられる一般式I’で表される含フッ素化合物としては、一般式Iで表される含フッ素ジエン化合物が好ましい。かかる化合物はモノマーの重合反応性が高く、また、モノマー合成原料の入手が容易であるため、好ましい。
本発明の含フッ素重合体が含有する繰返し単位の、より具体的な例を以下に示す。
Figure 2019131677
含フッ素重合体のガラス転移温度(Tg)は、成形体が高温環境に曝される場合は材料の形状安定性の点から高い方が好ましく、例えば80℃以上が好ましく、125℃以上がより好ましく、150℃以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、加熱溶融成形したり、含フッ素重合体の溶液から得た塗膜をTgよりも高温に加熱(アニール)して構造を緻密化、均質化、安定化、高強度化させる場合には、Tgは250℃以下が好ましく、200℃以下が特に好ましい。
Tgが高すぎると加熱溶融成形やアニール時の温度がかなり高くなるため、成形加工装置や対象物品の周辺材料への影響が懸念され、投入するエネルギーの観点からも好ましくない。Tgは示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。高いTgを与えるモノマーとしては、下記構造を有するモノマーが好ましい。
Figure 2019131677
但し、R13’はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基である。特にR13’がメチル基のモノマーは、原料のβ−メタリルアルコールが容易に入手できるので好ましい。
高いTgを与えるモノマーとしては、下記構造を有するモノマーも好ましい。
Figure 2019131677
但し、R13’’は水素原子またはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基である。R14’およびR15’はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基であって、特にR14’とR15’がいずれもトリフルオロメチル基のモノマーは原料の入手性が良いので好ましい。なかでも、さらにR13’’が水素原子のモノマーは原料の入手が容易であるので好ましい。
含フッ素重合体の熱分解温度(Td)は加熱溶融成形およびアニール温度の点から高い方が好ましい。また、含フッ素重合体を含む電子デバイスの製造工程におけるはんだリフローのように、含フッ素重合体を含む物品が製造工程において高い温度に曝される場合があるので熱分解温度は高いほうが好ましい。本明細書においてTdとは、熱重量分析(TGA)測定において3%の重量減少が認められる温度である。
Tdは270℃以上が好ましく、300℃以上がより好ましく、350℃以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、一般に含フッ素重合体のTdは500℃以下である。
空気中でのTdよりも窒素など不活性ガス中でのTdのほうが高い場合には、真空中または不活性ガス雰囲気にすれば、空気中よりも高温に曝すことができる。
含フッ素重合体は、薄膜成形の点から溶媒に可溶であることが好ましい。ポリマーを溶媒に溶かした液状組成物をキャストすることにより、薄くて厚みの均一な薄膜を得ることができる。本明細書において溶媒に可溶とは、当該溶媒に対して0.1質量%以上可溶であることを意味する。
溶媒として、例えば、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチル、ジクロロメタン、ペルフルオロベンゼン等に可溶であることが好ましい。
含フッ素重合体は機械的物性、物理的物性の点から、ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の重量平均分子量が1万以上であることが好ましく、4万以上がより好ましく、10万以上が更に好ましい。一方、成形性の点から200万以下が好ましく、100万以下がより好ましく、50万以下が更に好ましい。
含フッ素重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて重合体溶液の条件下で測定することができるが、開始剤の量や連鎖移動剤の種類と量、重合温度等により制御することができる。
<含フッ素重合体の製造方法>
本発明の含フッ素重合体の製造方法は、一般式I’で表される含フッ素化合物を含む原料モノマーを重合させる工程を含む。具体的には、例えば、原料モノマーを溶媒に溶解させ、開始剤の添加により反応を進行させることで合成することができる。
一般式I’で表される含フッ素化合物以外の化合物をさらに含む原料モノマー組成物を用いて、共重合体を合成してもよい。この場合の原料モノマーとなる他の化合物としては、オレフィン構造を有する化合物であればよく、例えばテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、エチレン、プロピレン、ペルフルオロα−オレフィン類(ヘキサフルオロプロピレン等)、(ペルフルオロアルキル)エチレン類((ペルフルオロブチル)エチレン、(ペルフルオロヘキシル)エチレン等)、(ペルフルオロアルキル)プロペン類(3−ペルフルオロヘキシル−1−プロペン、3−ペルフルオロオクチル−1−プロペン等)、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)、ペルフルオロ(4−メトキシ−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)やペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキルビニルエーテル)等のペルフルオロビニルエーテル等が挙げられる。
ペルフルオロビニルエーテル類としては、CF=CF−(OCFCFZ)−O−Rで表される化合物が好ましい。ただし、tは0〜3の整数であり、Zはフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、Rは直鎖構造であっても分岐構造であってもよい炭素数1〜12のペルフルオロアルキル基である。なかでも、下記式(i)〜(iii)で表される化合物(i)〜(iii)が好ましい。ただし、式中、vは1〜9の整数であり、wは1〜9の整数であり、xは2または3である。
Figure 2019131677
上記の他には更に、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテルなどのフッ素を含有しないアルキルビニルエーテル類、メチルアクリレート、エチルアクリレート、1H−1H−2H−2H−ペルフルオロヘキシルアクリレート、1H−1H−2H−2H−ペルフルオロオクチルアクリレート、メチル2−フルオロアクリレート、メチル2−クロロアクリレートなどのアクリレート類、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、1H−1H−2H−2H−ペルフルオロヘキシルメタクリレート、1H−1H−2H−2H−ペルフルオロオクチルメタクリレート、メチル2−(トリフルオロメチル)アクリレートなどのメタクリレート類、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、環状オレフィンなどを挙げることができる。
水酸基や架橋部位となるエポキシ基などの官能基を有するモノマーを共重合することもできる。水酸基を有するモノマーとしては、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル等が挙げられる。エポキシ基を有するモノマーとしてはグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルアリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、(3−エチルオキセタンー3−イル)メチルメタクリレート等を挙げることができる。無水マレイン酸、イタコン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物などのラジカル重合反応性の二重結合を有する酸無水物を共重合することもできる。
得られる共重合体としては、例えばランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が合成可能であり、原料モノマーの仕込み比や、重合条件によって所望の共重合体を得ることができる。
原料のモノマーとしては、一般式I’で表される含フッ素化合物を主モノマーとして用いてもよいし、コモノマーとして用いてもよいが、主モノマーとして用いることが低屈折率、低誘電率、化学耐久性、撥液性向上の点から好ましい。また、他のオレフィン化合物を2種以上用いることで、3元系以上の多元共重合体とすることもできる。
重合反応は、ラジカルが生起する条件のもとで行われるものであれば特に限定されない。例えば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知のラジカル重合法が挙げられる。また、液体または超臨界の二酸化炭素中にて重合を行ってもよい。
重合は、ラジカルが生起する条件で行われる。ラジカルを生起させる方法としては、紫外線、γ線、電子線等の放射線を照射する方法、ラジカル開始剤を添加する方法等が挙げられる。重合反応器中でラジカル開始剤を添加する場合の重合温度は、通常、10〜150℃、好ましくは15〜100℃であり、重合時間は、通常1〜24時間、好ましくは2〜10時間である。また、光ラジカル開始剤を用いて、可視光や紫外線を照射して重合することもできる。塗膜の硬化で放射線照射の場合の照射時間は、0.1秒〜10分程度で、通常は1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどの光ラジカル開始剤が添加される。
ラジカル開始剤としては、ビス(フルオロアシル)ペルオキシド類、ビス(クロロフルオロアシル)ペルオキシド類、ジアルキルペルオキシジカーボネート類、ジアシルペルオキシド類、ペルオキシエステル類、アゾ化合物類、過硫酸塩類等が挙げられる。バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法においては、溶媒やモノマーに可溶な非イオン性のラジカル開始剤を、乳化重合法においては、過硫酸塩類等の水溶性のラジカル開始剤を用いることが好ましい。
開始剤の量は、開始剤の種類、モノマーの種類、連鎖移動剤(分子量調整剤)の種類と量、重合速度、目的とするポリマーの分子量、重合温度等を勘案して適宜決定する。例えば目的とする分子量のポリマーの合成において、重合時間が、好ましくは1〜24時間、更に好ましくは、2〜10時間の間に収まるように、開始剤の量が決められる。
溶液重合法にて用いる溶媒としては、20〜350℃の沸点を有する溶媒が好ましく、40〜150℃の沸点を有する溶媒がより好ましい。特に50〜80℃の沸点を有する溶媒が、ポリマーから溶媒を分離し、溶媒を回収するうえで好ましい。
溶液重合法においては、溶媒中にモノマー、非イオン性のラジカル開始剤等を添加し、溶媒中にてラジカルを生起させてモノマーの重合を行う。モノマーおよび開始剤の添加は、一括添加であってもよく、逐次添加であってもよく、連続添加であってもよい。
懸濁重合法においては、水を分散媒として用い、該分散媒中にモノマー、および非イオン性のラジカル開始剤等を添加し、モノマーの重合を行う。
非イオン性のラジカル開始剤としては、ビス(フルオロアシル)ペルオキシド類、ビス(クロロフルオロアシル)ペルオキシド類、ジアルキルペルオキシジカーボネート類、ジアシルペルオキシド類、ペルオキシエステル類、ジアルキルペルオキシド類、ビス(フルオロアルキル)ペルオキシド類、アゾ化合物類等が挙げられる。懸濁重合法においては、助剤として前記溶媒を、懸濁粒子の凝集を防ぐ分散安定剤として界面活性剤等をそれぞれ添加してもよい。
溶媒は、溶媒への連鎖移動が小さいものが好ましく、反応に悪影響を及ぼさない範囲であれば特に制限はなく、フッ素非含有の有機溶媒、含フッ素有機溶媒、イオン液体、水等を単独又は混合して用いることができる。なお、これらの溶媒分子中の一部又はすべての水素原子が重水素原子で置換されていてもよい。
また原料モノマーが液体である場合(加熱して液化する場合も含む)は、溶媒を用いないでバルク重合とすることもできる。
溶媒としては、含フッ素有機溶媒が好ましく、ペルフルオロトリアルキルアミン類(ペルフルオロトリブチルアミン等)、ペルフルオロカーボン類(ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロオクタン等)、ハイドロフルオロカーボン類(1H,4H−ペルフルオロブタン、1H−ペルフルオロヘキサン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、2H,3H−ペルフルオロペンタン等)、ハイドロクロロフルオロカーボン類(3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225cb)等)、ハイドロフルオロエーテル類(CFCHOCFCFH、(ペルフルオロブトキシ)メタン、(ペルフルオロブトキシ)エタン等)、含フッ素芳香族化合物類(ペルフルオロベンゼン、m−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、p−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等)等が挙げられる。フッ素非含有の有機溶媒も使用可能であるが、連鎖移動効果により、ポリマーの分子量が低下する傾向がある。
イオン液体としては、例えば、各種ピリジニウム塩、各種イミダゾリウム塩等を用いることができる。
なお、重合反応の再現性、目的物収率向上の点で、前記溶媒は脱酸素(空気)されたものを用いることが好ましい。脱気操作について、特に制限はないが、凍結脱気等を行うことがある。窒素ガスなどの不活性ガスをバブリングして酸素を追い出す操作が行われる場合もあるが、その際には、溶媒の沸点が低い場合に対して、溶媒を予め冷却するなど不活性ガスに同伴して溶媒が揮散しない工夫、または、同伴して揮散した溶媒を回収する工夫が必要である。
重合反応には分子量や分子量分布を制御するために連鎖移動剤や停止剤を用いることもできる。
連鎖移動剤としては分子量調整剤として炭化水素系化合物が好ましく、ヘキサン、メタノール、イソプロピルアルコール、モノグライム等を挙げることができる。
ラジカル開始剤を用いた重合で加熱して重合する場合には、冷却により重合を停止させることができるが、重合終了時に停止剤を添加してもよい。
停止剤としてはパラベンゾキノン、2,5−ジ−tert−ブチルベンゾキノン等のキノン類、ハイドロキノン、4−メトキシフェノール、2−(1,1−ジメチルエチル)−4,6−ジメチルフェノール等のフェノール類、フェノチアジン、チオ尿素、N,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム等の含イオウ化合物類、N−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等のニトロソ化合物類、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等のピペリジン−1−オキシル類、酢酸銅、ジアルキルジチオカルバミン酸銅、酢酸マンガン等の遷移金属化合物類等を使用することができる。
目的ポリマーの収率や重合反応の再現性向上、或いはモノマーの安定性向上の点で、原料となるモノマーは脱酸素(空気)されたものを用いることが好ましい。モノマーは通常蒸留精製前の乾燥剤(モレキュラーシーブ、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウムなど)添加または蒸留精製により脱水されているが、これに加えてさらに脱酸素(空気)操作を行ってもよい。さらなる脱酸素(空気)操作は、先述した溶媒の脱酸素(空気)操作と同様の方法を用いることができる。
また、原料モノマーを開始剤や溶媒と共に反応容器に投入した後に凍結脱気等を行うことで、開始剤や溶媒等と共に脱気(脱酸素)を行うこともできる。窒素ガスなどの不活性ガスによる加圧とパージを繰り返すことで脱酸素することもできる。必要に応じて、パージ後に減圧にしても良い。減圧操作と常圧の不活性ガス(例えば窒素ガス)導入を繰り返すことで脱酸素することもできる。
原料モノマー、開始剤及び溶媒を反応容器に投入し、必要に応じて脱気を行い、重合反応を進行させる。重合反応は、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
共重合体を合成する場合には、原料となる2種以上のモノマーを反応容器にあらかじめ混合してから投入しても、別々に投入しても構わない。
重合反応は、冷却や停止剤の投入により停止することができる。
重合反応を終えた後、残モノマーは公知の方法により取り除くことができ、目的物である含フッ素重合体は公知の方法で単離することができる。
単離方法としては、例えば、溶液重合の場合、撹拌下の貧溶媒中に反応溶液を排出し重合体を凝集させてスラリーとし、濾過法、遠心分離法、デカンテーション法等により回収する方法、反応溶液にスチームを吹き込んで重合体を析出させるスチームストリッピング法、反応溶液から溶媒を加熱等により直接除去する方法等が挙げられ、反応溶液へ貧溶媒を添加する方法が採用される場合もある。重合体を凝集したスラリーの場合、そのまま濾過法、遠心分離法、デカンテーション法等により回収する方法等が挙げられる。その他、カラムクロマトグラフィー、リサイクル分取HPLC等が挙げられ、必要に応じてこれらを単独又は複数組み合わせて用いることができる。
本反応で得られた目的物は通常の高分子化合物と同様の公知の方法で同定することができる。例えば、H−,19F−,13C−NMR、二次元NMR、GPC、静的光散乱、SIMSやGC−MS等が挙げられ、必要に応じてこれらを単独又は複数組み合わせて用いることができる。
得られた含フッ素重合体は高耐熱性、低吸水性、高光線透過率(透明性)、低誘電率、低屈折率、高化学耐久性、高耐候性、高撥液性、低接着性等といった特性を有し、これら諸特性のバランスにも優れる。このため、層間絶縁膜などの絶縁材料として電子回路基板や半導体に用いられる電気・電子材料、光導波路、光ファイバーのコア材、クラッド材、導光板、レンズ、などの光学材料、有機発光ダイオードの光取り出し効率を高めるための電荷輸送層用低屈折率化材、各種電子・光デバイスの封止材料、医療器具・細胞培養材料、撥液材料、エラストマー材料等の多種多様な分野に利用することができる。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
<評価方法>
本実施例において、合成した含フッ素ジエン化合物及び含フッ素重合体の諸特性は下記により評価した。
(構造解析)
得られた化合物及び重合体の構造は日本電子株式会社製の核磁気共鳴装置(JNM−AL300またはECA600)によりH−NMR、13C−NMR、19F−NMR測定や、それらの二次元NMRを用いた解析を行うことで同定した。実施例記載のH−NMRおよび19F−NMRのケミカルシフトの基準物質は、それぞれテトラメチルシラン、CFClである。
(重量平均分子量)
ポリマーの重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定装置(東ソー製、HLC−8320GPC)を用い、PMMA換算の重量平均分子量を求めた。溶媒は、アサヒクリンAK−225 SECグレード−1、AGC社製を用いた。カラムは、PLgel 5μm MIXED−C(ポリマーラボラトリー社製)を2本直列につなぎ合わせて用いた。測定温度は40℃とした。検出器は、蒸発光散乱検出器を用いた。
(熱分解温度Td)
示差熱重量同時測定装置 STA7200(日立ハイテクサイエンス)を用いて、乾燥空気中または窒素中、10℃/分で昇温して、3%重量減少温度Td(3%)を求めた。
(ガラス転移温度Tg)
Tgの測定には、DSC装置(ティー・エイ・インスツルメント社製、装置名:Q100、または、NETZSCH社製、装置名:DSC 204 F1 Phoenix)を用いた。ポリマーを示差走査熱量計(DSC)用のアルミニウム製容器に入れて、実測されたTgよりも少なくとも30℃以上高い温度まで昇温した後、10℃/分で−50℃まで冷却した。次いで、10℃/分で昇温して転移終了時よりも少なくとも30℃以上高い温度まで加熱し、DSC曲線を描いてTg(中間点ガラス転移温度)を求めた。
なお、実施例2−1〜2−14、2−16で製造したポリマーのガラス転移温度はティー・エイ・インスツルメント社製装置を用い、実施例2−15、2−17〜2−21で製造したポリマーのガラス転移温度はNETZSCH社製装置を用いて測定した。
なお、実施例に用いた化合物の略号は以下のとおりである。
(試薬)
PFAS:ペルフルオロアリルフルオロスルフェート(CF=CFCFOSOF)
(モノマー)
FHDAE:CH=CHCHOCFCF=CF
1M−FHDAE:CH−CH=CHCHOCFCF=CF
2M−FHDAE:CH=C(CH)CHOCFCF=CF
3M−FHDAE:CH=CHCH(CH)OCFCF=CF
33DFM−FHDAE:CH=CHC(CFOCFCF=CF
FHBAE:CH=CHCHCHOCFCF=CF
44DFM−FHBAE:CH=CHCHC(CFOCFCF=CF
C6FMA:CH=C(CH)COO(CH(CF
(ラジカル開始剤)
IPP:ジイソプロピルペルオキシジカーボネート
PFBPO:ペルフルオロベンゾイルペルオキシド(下記式で表される化合物)
Figure 2019131677
(溶媒)
HCFC−225cb:CClFCFCHClF
<実施例1−1>FHDAEの合成1
還流冷却器、滴下ロート、温度計を備えた50mLの四つ口丸底フラスコに、窒素雰囲気下でモレキュラーシーブ4Aで脱水したジグライム(13.5g)、炭酸ナトリウム(1.09g、10.3mmol)及びアリルアルコール(9.00g、155mmol)を仕込み、撹拌子で撹拌しながら、氷水で内温を5℃以下まで冷却した。内温を15℃以下に保ちながら、PFAS(4.50g、19.6mmol)を15分かけて滴下した。滴下終了時の内温は2℃であった。氷水バスから氷を取り除いて5時間撹拌すると内温は12℃であった。反応液のガスクロマトグラフ(GC)分析からFHDAEの反応収率を求めたところ65%であった。
FHDAEと副生したジアリルエーテル(CH=CHCHOCHCH=CH)の面積比率は26:1であった。なお、反応収率は、あとで蒸留精製して得たFHDAEとジグライムを使用して求めたガスクロマトグラフピークの感度比を用いて算出した。PFASの反応率は100%であった。同様の反応を行い、反応液を3回水洗し、モレキュラーシーブ4Aで乾燥して4,4’−ビピリジルを添加して蒸留したところ、沸点45.8℃/26.6kPaで、GC純度99%以上のFHDAEを得た。
H−NMR(CDCl):δ(ppm)4.48(2H),5.28(1H),5.38(1H),5.92(1H)。
19F−NMR(CDCl):δ(ppm)−73.7(2F),−95.3(1F)、−107.4(1F)、−189.4(1F)。
<実施例1−2>FHDAEの合成2
還流冷却器、滴下ロート、温度計を備えた4つ口200mLの丸底フラスコに、窒素雰囲気下でモレキュラーシーブ4Aで脱水したテトラグライム(60.8g)、トリエチルアミン(10.7g、106mmol)及びアリルアルコール(6.13g、106mmol)を仕込み、撹拌子で撹拌しながら、氷水で内温を5℃以下まで冷却した。内温を10℃以下に保ちながら、PFAS(20.3g、88.0mmol)を30分かけて滴下した。滴下終了時の内温は7℃であった。氷水バスから氷を取り除いて5時間撹拌すると内温は18℃であった。反応液のGC分析より、PFASの反応率は100%で、FHDAEの反応収率は71%であった。ジアリルエーテルは生成していなかった。なお、反応収率は、蒸留精製して得たFHDAEとテトラグライムを用いて求めたガスクロマトグラフピークの感度比を用いて算出した。
<実施例1−3>FHDAEの合成3
還流冷却器、滴下ロート、温度計を備えた4つ口200mLの丸底フラスコに、窒素雰囲気下でモレキュラーシーブ4Aで脱水したテトラグライム(60.8g)、トリプロピルアミン(15.1g、106mmol)、及びアリルアルコール(6.13g、106mmol)を仕込み、撹拌子で撹拌しながら、氷水で内温を5℃以下まで冷却した。内温を10℃以下に保ちながら、PFAS(20.3g、88.0mmol)を25分かけて滴下した。滴下終了時の内温は8℃であった。氷水バスから氷を取り除いて1時間撹拌すると内温は15℃であった。引き続き室温で一晩反応させた。
滴下ロートと還流冷却器を取り外し、4つ口フラスコに室温の水浴をセットし、ドライアイス−エタノールで冷却した冷却トラップと液体窒素で冷却した冷却トラップを介して真空ポンプに接続し、撹拌しながら低沸点成分を冷却トラップに抜き出した。ドライアイス−エタノールに少量のトリプロピルアミンを含有するFHDAE13.7gが得られた。ジアリルエーテルは含まれていなかった。この粗生成物を1N HClで処理した後、水洗することで、トリプロピルアミンを含有しないFHDAEがGC純度99.5%で得られた。目的物の収量は12.2g、単離収率は74%であった。
<実施例1−4>2M−FHDAEの合成
還流冷却器、滴下ロート、温度計を備えた4つ口1Lの丸底フラスコに、窒素雰囲気下でモレキュラーシーブ4Aで脱水したテトラグライム(182g)、トリプロピルアミン(45.4g、317mmol)及びβ−メタリルアルコール(22.8g、317mmol)を仕込み、撹拌子で撹拌しながら、氷水で内温を5℃以下まで冷却した。内温を10℃以下に保ちながら、PFAS(60.8g、264mmol)を40分かけて滴下した。滴下終了時の内温は9℃であった。氷水バスから氷を取り除いて1時間撹拌すると内温は16℃であった。引き続き室温で一晩反応させた。反応液のGC分析より、PFASの反応率は100%で、2M−FHDAEの反応収率は81%であった。なお、反応収率は、あとで蒸留精製して得た2M−FHDAEとテトラグライムを使用して求めたガスクロマトグラフピークの感度比を用いて算出した。反応後水洗し、1N HClで処理した後に再度水洗、蒸留を行った。沸点52.4℃/16kPaで、GC純度99.5%以上の2M−FHDAEを得た。
H−NMR(CDCl):δ(ppm)1.79(3H),4.39(2H),4.98(1H),5.05(1H)。
19F−NMR(CDCl):δ(ppm)−73.7(2F),−95.2(1F),−107.4(1F),−189.4(1F)。
<実施例1−5>1M−FHDAEの合成
還流冷却器、滴下ロート、温度計を備えた4つ口200mLの丸底フラスコに、窒素雰囲気下でモレキュラーシーブ4Aで脱水したテトラグライム(60.8g)、トリプロピルアミン(15.1g、106mmol)及びクロチルアルコール(7.62g、106mmol)を仕込み、撹拌子で撹拌しながら、氷水で内温を5℃以下まで冷却した。内温を10℃以下に保ちながら、PFAS(20.3g、88.0mmol)を40分かけて滴下した。滴下終了時の内温は9.8℃であった。氷水バスから氷を取り除いて1時間撹拌すると内温は16℃であった。引き続き室温で一晩反応させた。反応後水洗し、1N HClで処理した後に再度水洗を行った。その結果、GC純度89%の1M−FHDAEを収率67%で得た。
H−NMR(CDCl):δ(ppm)1.75(3H),4.41(2H),5.58(1H),5.87(1H)。
19F−NMR(CDCl):δ(ppm)−73.5(2F)、−95.5(1F),−107.5(1F)、−189.2(1F)。
<実施例1−6>3M−FHDAEの合成
還流冷却器、滴下ロート、温度計を備えた4つ口300mLの丸底フラスコに、窒素雰囲気下でモレキュラーシーブ4Aで脱水したテトラグライム(91.1g)、トリエチルアミン(16.0g、158mmol)及び1−ブテン−3−オール(8.57g、119mmol)を仕込み、撹拌子で撹拌しながら、氷水で内温を10℃以下まで冷却した。内温を10℃以下に保ちながら、PFAS(30.4g、6132mmol)を45分かけて滴下した。滴下終了時の内温は7℃であった。滴下終了して30分後に氷水バスから氷を取り除いて30分撹拌すると内温は7℃であった。引き続き室温で一晩反応させた。PFASを0.9g(4mmol)添加して室温で1日撹拌したところ、PFASの反応率は100%であった。
滴下ロートと還流冷却器を取り外し、4つ口フラスコに室温の水浴をセットし、ドライアイス−エタノールで冷却した冷却トラップと液体窒素で冷却した冷却トラップを介して真空ポンプに接続し、撹拌しながら低沸点成分を冷却トラップに抜き出した。水浴温度を室温(約20℃)で1時間保持した後、水浴温度を30℃、40℃、50℃に順に上げてそれぞれの温度で30分、60℃で2時間保持した。ドライアイス−エタノール冷却トラップに少量のトリエチルアミンを含有する3M−FHDAE21.4gを得た。この粗生成物を1N HClで処理した後、水洗することで、トリエチルアミンを含有しない3M−FHDAEをGC純度96.9%で得た。目的物の収量は15.6g、単離収率は65%であった。
H−NMR(CDCl):δ(ppm)1.39(3H),4.92(1H),5.17(1H),5.27(1H),5.88(1H)。
19F−NMR(CDCl):δ(ppm)−73.0(2F)、−95.8(1F),−107.5(1F),−188.9(1F)。
<実施例1−7>33DFM−FHDAEの合成
還流冷却器、滴下ロート、温度計を備えた4つ口200mLの丸底フラスコに、窒素雰囲気下でモレキュラーシーブ4Aで脱水したテトラグライム(45.6g)、トリプロピルアミン(11.4g、79.2mmol)及びCH=CHC(CFOH(SYNQUEST LABORATORIES製)(15.4g、79.2mmol)を仕込み、撹拌子で撹拌しながら、氷水で内温を5℃以下まで冷却した。内温を10℃以下に保ちながら、PFAS(15.2g、66.0mmol)を20分かけて滴下した。滴下終了時の内温は8℃であった。15分後に内温は4℃に低下した。氷水バスから氷を取り除いて1時間撹拌すると内温は6℃であった。引き続き室温で一晩反応させた。
滴下ロートと還流冷却器を取り外し、4つ口フラスコに室温の水浴をセットし、ドライアイス−エタノールで冷却した冷却トラップと液体窒素で冷却した冷却トラップを介して真空ポンプに接続し、撹拌しながら低沸点成分を冷却トラップに抜き出した。この粗生成物を1N HClで処理した後、水洗することで、トリプロピルアミンを含有しない33DFM−FHDAE(沸点52℃/13.3kPa)がGC純度98.6%で得られた。目的物の収量は13.9g、単離収率は65%であった。
H−NMR(CDCl):δ(ppm)5.88、5.92、5.95、6.01(合わせて2H),6.09〜6.23(1H)。
19F−NMR(CDCl):δ(ppm)−65.3(2F)、−74.3(6F),−93.2(1F),−105.8(1F)、−189.5(1F)。
<実施例1−8>FHBAEの合成
還流冷却器、滴下ロート、温度計を備えた4つ口200mLの丸底フラスコに、窒素雰囲気下でモレキュラーシーブ4Aで脱水したテトラグライム(45.6g)、トリエチルアミン(8.02g、79.2mmol)及び3−ブテン−1−オール(4.28g、59.4mmol)を仕込み、撹拌子で撹拌しながら、氷水で内温を5℃以下まで冷却した。内温を10℃以下に保ちながら、PFAS(15.2g、66.0mmol)を30分かけて滴下した。滴下終了時の内温は6℃であった。滴下終了して15分後に氷水バスから氷を取り除いて45分撹拌すると内温は9℃であった。引き続き室温で一晩反応させた。反応液のGC分析より、PFASの反応率は100%であった。
滴下ロートと還流冷却器を取り外し、4つ口フラスコに室温の水浴をセットし、ドライアイス−エタノールで冷却した冷却トラップと液体窒素で冷却した冷却トラップを介して真空ポンプに接続し、撹拌しながら低沸点成分を冷却トラップに抜き出した。水浴温度を室温(約20℃)で1時間保持した後、水浴温度を30℃、40℃、50℃に順に上げてそれぞれの温度で30分、60℃で2時間保持した。ドライアイス−エタノール冷却トラップに少量のトリエチルアミンを含有するFHBAE10.9gを得た。この粗生成物を1N HClで処理した後、水洗することで、トリエチルアミンを含有しないFHBAEをGC純度99.0%で得た。目的物の収量は7.6g、単離収率は64%であった。
H−NMR(CDCl):δ(ppm)2.44(2H)、4.02(2H)、5.13(2H)、5.79(1H)
19F−NMR(CDCl):δ(ppm)−73.9(2F)、−95.4(2F)、−107.4(1F),−189.4(1F)。
<実施例1−9>44DFM−FHBAEの合成
還流冷却器、滴下ロート、温度計を備えた4つ口500mLの丸底フラスコに、窒素雰囲気下でモレキュラーシーブ4Aで脱水したテトラグライム(136.7g)、トリエチルアミン(24.1g、238mmol)及び1,1−ビス(トリフルオロメチル)−3−ブテン−1−オール(37.1g、178mmol)を仕込み、撹拌子で撹拌しながら、氷水で内温を5℃以下まで冷却した。内温を10℃以下に保ちながら、PFAS(45.6g、198mmol)を1時間かけて滴下した。滴下終了して30分後に氷水バスから氷を取り除いて引き続き室温で一晩撹拌した。反応液のGC分析より、PFASの反応率は100%であった。
滴下ロートと還流冷却器を取り外し、4つ口フラスコに室温の水浴をセットし、ドライアイス−エタノールで冷却した冷却トラップと液体窒素で冷却した冷却トラップを介して真空ポンプに接続し、撹拌しながら低沸点成分を冷却トラップに抜き出した。水浴温度を室温で2時間保持した後、40℃に昇温して2時間保持した。ドライアイス−エタノール冷却トラップに少量のトリエチルアミンを含有する44DFM−FHBAE60.1gを得た。この粗生成物を1N HClで処理した後、3.0N食塩水で洗浄した。下層を分液採取してトリエチルアミンを含有しない44DFM−FHBAEをGC純度97.9%で得た。目的物の収量は53.7g、単離収率は90%であった。
減圧蒸留により、純度99.5%以上の目的生成物を蒸留収率68%で得た。沸点は59℃/6.7kPaであった。
H−NMR(CDCl):δ(ppm)3.11(2H)、5.30(2H)、5.83(1H)
19F−NMR(CDCl):δ(ppm)−66.3(2F)、−73.8(6F、)、−93.2(1F)、−105.5(1F),−189.6(1F)。
<実施例2−1>2M−FHDAEポリマーの合成
内容積120mLのハステロイ製オートクレーブに、2M−FHDAE(6.00g)を仕込んだ。イソプロピルアルコール(0.93g)をHCFC−225cbで10倍に希釈して加え、次に、IPP(48mg)をHCFC−225cbで200倍に希釈した液を加え、最後にHCFC−225cbを加えて、仕込んだHCFC−225cbの全量を53.02gとした。
液体窒素を用いて凍結脱気を2回繰り返した後、約0℃まで戻し、窒素ガスを0.3MPaG(Gはゲージ圧を示す)まで導入した。オートクレーブをウォーターバスにセットし、内温を40℃に保持しつつ、6時間撹拌した後、オートクレーブを氷水に浸けて、20℃以下まで冷却した。
反応液をオートクレーブからビーカーに移し替え、HCFC−225cbの洗液と合わせて内容物の全量を104gとした。30分間撹拌後、n−ヘキサン126gを添加してさらに30分間撹拌した。減圧ろ過したのち、得られた固形分に酢酸エチルを加えて全量を58gとした。30分撹拌した後、n−ヘキサン126gを添加してポリマーを凝集し、減圧ろ過した。酢酸エチルとn−ヘキサンを用いた同様の操作をもう1回繰り返した。
60℃で一晩真空乾燥して白色のポリマー4.72gを得た。重量平均分子量は40,100、空気中のTd(3%)は316℃、窒素中のTd(3%)は415℃、Tgは176℃であった。
H−,13C−,19F−NMRとそれらの二次元NMRを用いた解析により、得られたポリマーは、下記に示す繰返し単位からなるホモポリマーであることが確認された。
Figure 2019131677
<実施例2−2〜2−10>2M−FHDAEポリマーの合成2〜10
実施例2−1における仕込みの各条件を表1に記載の条件に変更した以外は実施例2−1と同様にして、2M−FHDAEポリマーを重合した。得られたポリマー収量、重量平均分子量、熱分解開始温度及びガラス転移温度も表1に示した。
なお、実施例2−6のポリマーは、ポリマー濃度3質量%において、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタン、ペルフルオロベンゼンのすべてに溶解した。
Figure 2019131677
(吸収スペクトルの測定)
実施例2−6のポリマーを濃度10質量%で酢酸エチルとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの混合溶媒(この順に質量比4:1)に溶解した。PFAシャーレを用いて室温でキャストして一晩放置し、60℃で2時間乾燥した後、220℃で30分アニールし、更に220℃で熱プレスすることにより表面が平滑な厚さ約100μmの無色透明な膜を得た。島津製作所社製UV−3100を用いて200nm〜1700nmの吸収スペクトルを測定したところ、400〜1700nmにおいて吸収は認められなかった。
(屈折率の測定)
上述の実施例2−6の膜について、屈折率測定装置(米国メトリコン社製プリズムカプラ:2010/M)を用いて、膜の波長473nm、594nmおよび658nmの光に対する屈折率を測定し、装置付属のMetricon Fitを用いて波長589nmの光に対する屈折率を算出したところ、屈折率は1.41(589nm)であった。
(アッベ数の測定)
上述の実施例2−6の膜について、装置付属のMetricon Fitを用いて波長486nm、589nm、および656nmにおける屈折率を算出し、下式(I)からアッベ数を算出したところ、アッベ数は57.26であった。
ν=(n−1)/(n−n) (I)
ただし、νは、アッベ数であり、nは、波長589nmの光に対する屈折率であり、nは、波長486nmの光に対する屈折率であり、nは、波長656nmの光に対する屈折率である。
<実施例2−11>2M−FHDAEポリマー低分子量体の合成(1)
内容積120mLのハステロイ製オートクレーブに、2M−FHDAE(3.00g)を仕込んだ。イソプロピルアルコール(3.73g)を加え、次に、IPP(38mg)をHCFC−225cbで20倍に希釈した液を加え、最後にHCFC−225cbを加えて、仕込んだHCFC−225cbの全量を52.89gとした。以下、実施例2−1と同様にして重合、後処理を行い、白色のポリマー1.44gを得た。重量平均分子量は7,400、空気中のTd(3%)は307℃、Tgは154℃であった。
<実施例2−12>2M−FHDAEポリマー低分子量体の合成と末端安定化(2)
内容積120mLのハステロイ製オートクレーブに、2M−FHDAE(3.00g)を仕込んだ。CF(CF−I(6.44g)を加え、次に、IPP(38mg)をHCFC−225cbで200倍に希釈した液を加え、最後にHCFC−225cbを加えて、仕込んだHCFC−225cbの全量を50.52gとした。以下、実施例2−1と同様にして重合、後処理を行い、白色のポリマー2.15gを得た。重量平均分子量は12,200、空気中のTd(3%)は296℃、Tgは157℃であった。
次に、国際公開第2017/086465号記載の方法に従って、以下のようにして、末端基を安定化した。
内容積120mLのハステロイ製オートクレーブに、得られたポリマー1.35gをHCFC−225cb(40.00g)に溶解して仕込んだ。次に、IPP(38mg)とHCFC−225cb(5.50g)とn−ヘキサン(0.675g)の混合液を添加し、さらにHCFC−225cbを添加して、仕込み液の全量を67.50gにした。
液体窒素を用いて凍結脱気を2回繰り返した後、約0℃まで戻し、窒素ガスを0.3MPaGまで導入した。オートクレーブをウォーターバスにセットし、内温を70℃に保持しつつ、7時間撹拌した後、放冷した。
内容物をHCFC225cbの洗液と共にナスフラスコに移し、内容物が27.0gになるまでエバポレーターで濃縮した。n−ヘキサンで凝集、ろ過した後、得られた固形分にHCFC225cbを加えて全量を27gにして撹拌して溶解させた。この凝集、ろ過、溶解の操作を繰り返した後、n−ヘキサンで凝集して60℃で18時間真空乾燥した。得られた白色ポリマーは1.22gであった。ペルフルオロベンゼンに溶解して19F−NMRを測定したところ、IPP/n−ヘキサンで処理する前にあったポリマー末端の−40〜−50ppmの−CF−Iに基づくピークが消失していた。
<実施例2−13>2M−FHDAEポリマーの合成
内容積120mLのハステロイ製オートクレーブに、2M−FHDAE(6.00g)を仕込んだ。次に、IPP(24mg)を酢酸エチルで400倍に希釈した液を加え、最後に酢酸エチルを加えて、仕込んだ酢酸エチルの全量を53.98gとした。
液体窒素を用いて凍結脱気を2回繰り返した後、約0℃まで戻し、窒素ガスを0.3MPaGまで導入した。オートクレーブをウォーターバスにセットし、内温を40℃に保持しつつ、6時間撹拌した後、オートクレーブを氷水に浸けて、20℃以下まで冷却した。
反応液をオートクレーブからビーカーに移し替え、酢酸エチルの洗液と合わせて内容物の全量を70gとした。30分間撹拌後、n−ヘキサン153gを添加してさらに30分間撹拌した。減圧ろ過したのち、得られた固形分に酢酸エチルを加えて全量を70gとした。30分撹拌した後、n−ヘキサン153gを添加してポリマーを凝集し、減圧ろ過した。酢酸エチルとn−ヘキサンを用いた同様の操作をもう1回繰り返した。
60℃で一晩真空乾燥して白色のポリマー5.05gを得た。重量平均分子量は62,200、空気中のTd(3%)は304℃、窒素中のTd(3%)は386℃、Tgは188℃であった。
<実施例2−14>FHDAEポリマーの合成
撹拌子を入れた50mlの3つ口フラスコにFHDAE(3.00g)を添加し、イソプロピルアルコール(0.47g)をHCFC−225cbで10倍に希釈して加え、次に、IPP(96mg)をHCFC−225cbで100倍に希釈した液を加え、最後にHCFC−225cbを加えて、仕込んだHCFC−225cbの全量を26.44gとした。
ジムロート冷却器を装着し、液体窒素を用いて凍結脱気を2回繰り返した後、約0℃まで戻し、系内に窒素ガスを導入した。窒素シールした状態で40℃に加温して6時間撹拌した。氷水で冷却後、内容物をビーカーに移した。HCFC−225cbの洗液と合わせて内容物の全量は52gであった。
30分撹拌後n−ヘキサン63gを添加してさらに30分撹拌した。減圧ろ過後、酢酸エチルを加えて全量を41gにして30分撹拌した。n−ヘキサン88gを添加して30分撹拌して減圧ろ過をした。酢酸エチルとn−ヘキサンを用いた同様の操作をもう1回繰り返した。
60℃で一晩真空乾燥して白色のポリマー2.21gを得た。得られたポリマーの空気中の熱分解温度Td(3%)は301℃であった。このポリマーはアセトンに0.5質量%の濃度で溶解した。
得られるポリマーは下記に示す繰り返し単位を含むものとなる。
Figure 2019131677
<実施例2−15>3M−FHDAEポリマーの合成
内容積120mLのハステロイ製オートクレーブに、3M−FHDAE(6.00g)を仕込んだ。IPP(120mg)をHCFC−225cbで100倍に希釈した液を加え、最後にHCFC−225cbを加えて、仕込んだHCFC−225cbの全量を53.88gとした。以下、重合温度を45℃にした以外は、実施例2−1と同様にして重合した。内容物をビーカーに移し、HCFC−225cbによる洗浄液をそれに加えた。全量は115gであった。30分撹拌した後、メタノール172gを添加してポリマーを凝集させ、30分撹拌してろ過した。得られたポリマーをHCFC−225cbの93gに溶解し、142gのメタノールでポリマーを凝集してろ過した。同様の操作をもう一回繰り返した後、60℃で16時間真空乾燥した。白色のポリマー5.17gを得た。重量平均分子量は54,800、空気中のTd(3%)は352℃、窒素中のTd(3%)は405℃、Tgは103℃であった。
得られるポリマーは下記に示す繰り返し単位を含むものとなる。
Figure 2019131677
<実施例2−16>33DFM−FHDAEポリマーの合成
内容積30mLのハステロイ製オートクレーブに、33DFM−FHDAE(3.00g)を仕込んだ。次に、PFBPO(75mg)をHCFC−225cbで40倍に希釈した液を加え、最後にHCFC−225cbを加えて、仕込んだHCFC−225cbの全量を11.93gとした。
液体窒素を用いて凍結脱気を2回繰り返した後、約0℃まで戻し、窒素ガスを0.3MPaGまで導入した。オートクレーブをオイルバスにセットし、内温を80℃に保持しつつ、6時間撹拌した後、オートクレーブを氷水に浸けて、20℃以下まで冷却した。得られた反応液は、無色透明の液体であった、
上記反応液をオートクレーブからビーカーに移し替え、撹拌しながら、n−ヘキサン17.5gを添加してさらに30分間撹拌した。減圧ろ過したのち、得られた固形分にHCFC−225cbを加えて全量を29gとした。30分撹拌した後、n−ヘキサン38gを添加してポリマーを凝集し、減圧ろ過した。HCFC−225cbとn−ヘキサンを用いた同様の操作をもう1回繰り返した。
60℃で32時間真空乾燥して白色のポリマー2.78gを得た。重量平均分子量は20,300、空気中のTd(3%)は389℃、Tgは119℃であった。
得られるポリマーは下記に示す繰り返し単位を含むものとなる。
Figure 2019131677
<実施例2−17>FHBAEポリマーの合成
内容積120mLのハステロイ製オートクレーブに、FHBAE(6.00g)を仕込んだ。IPP(120mg)をHCFC−225cbで100倍に希釈した液を加え、最後にHCFC−225cbを加えて、仕込んだHCFC−225cbの全量を53.88gとした。以下、重合温度を45℃にした以外は、実施例2−1と同様にして重合、後処理を行い、白色のポリマー2.4gを得た。重量平均分子量は10,300、空気中のTd(3%)は323℃、窒素中のTd(3%)は372℃、Tgは124℃であった。得られたポリマーはHCFC−225cb、アセトンに溶解した。
得られるポリマーは下記に示す繰り返し単位を含むものとなる。
Figure 2019131677
<実施例2−18>44DFM−FHBAEポリマーの合成
内容積120mLのハステロイ製オートクレーブに、44DFM−FHBAE(6.00g)を仕込んだ。IPP(24mg)をHCFC−225cbで400倍に希釈した液を加え、最後にHCFC−225cbを加えて、仕込んだHCFC−225cbの全量を53.98gとした。以下、実施例2−1と同様にして重合、後処理を行い、白色のポリマー5.01gを得た。重量平均分子量は318,200、空気中のTd(3%)は369℃、窒素中のTd(3%)は433℃、Tgは145.5℃であった。得られたポリマーはアセトン、テトラヒドロフラン、HCFC−225cbに溶解した。
得られるポリマーは下記に示す繰り返し単位を含むものとなる。
Figure 2019131677
<実施例2−19>FHDAEと2M−FHDAEのコポリマーの合成
内容積120mLのハステロイ製オートクレーブに、FHDAE2.30g(12.2mmol)と2M−FHDAE3.70g(18.3mmol)を仕込んだ。イソプロピルアルコール(0.466g)をHCFC−225cbで20倍に希釈して加え、IPP(24mg)をHCFC−225cbで100倍に希釈した液を加え、最後にHCFC−225cbを加えて、仕込んだHCFC−225cbの全量を53.51gとした。以下、実施例2−1と同様にして重合を行った。内容物をビーカーに移し、HCFC−225cbによる洗浄液もそれに加えた。全量は95gであった。これに良溶媒である酢酸エチルを20g添加して30分撹拌した。139gのn−ヘキサンを加えてポリマーを凝集させて30分撹拌した。ろ過後、得られた固体を撹拌しながら39gの酢酸エチルに溶解して、86gのn−ヘキサンで凝集し、ろ過をした。酢酸エチルに溶解、n−ヘキサンで凝集させる操作をもう一度繰り返し、ろ過後60℃で16時間真空乾燥した。白色のポリマー3.38gを得た。重量平均分子量は95,300、空気中のTd(3%)は303℃、窒素中のTd(3%)は423℃、Tgは166℃であった。
得られるポリマーは下記に示す繰り返し単位を含むものとなる。
Figure 2019131677
<実施例2−20>2M−FHDAEとC6FMAのコポリマーの合成
内容積120mLのハステロイ製オートクレーブに、2M−FHDAE4.85g(24.0mmol)とC6FMA1.15g(2.67mmol)を仕込んだ。IPP(120mg)をHCFC−225cbで100倍に希釈した液を加え、最後にHCFC−225cbを加えて、仕込んだHCFC−225cbの全量を53.88gとした。以下、実施例2−1と同様にして重合を行った。内容物をビーカーに移し、HCFC−225cbによる洗浄液をそれに加えた。全量は108gであった。30分撹拌した後、メタノール166gを添加してポリマーを凝集させ、30分撹拌してろ過した。得られたポリマーをHCFC−225cbの43gに溶解し、66gのメタノールでポリマーを凝集してろ過した。同様の操作をもう一回繰り返した後、室温で16時間真空乾燥した。白色のポリマー0.78gを得た。重量平均分子量は21,200、空気中のTd(3%)は267℃、窒素中のTd(3%)は292℃、Tgは66℃であった。ペルフルオロベンゼンにポリマーを溶解して19F−NMRを測定したところ、2M−FHDAEとC6FMAの繰り返し単位の比率は、57:43であった。
得られるポリマーは下記に示す繰り返し単位を含むものとなる。
Figure 2019131677
<実施例2−21>2M−FHDAEと(ペルフルオロヘキシル)エチレンのコポリマーの合成
内容積120mLのハステロイ製オートクレーブに、2M−FHDAE2.21g(10.9mmol)と(ペルフルオロヘキシル)エチレン3.79g(10.9mmol)を仕込んだ。IPP(120mg)をHCFC−225cbで100倍に希釈した液を加え、最後にHCFC−225cbを加えて、仕込んだHCFC−225cbの全量を53.88gとした。以下、重合温度を45℃にした以外は、実施例2−1と同様にして重合を行った。内容物をビーカーに移し、HCFC−225cbによる洗浄液をそれに加えた。全量は108gであった。30分撹拌した後、n−ヘキサン134gを添加してポリマーを凝集させ、30分撹拌してろ過した。得られたポリマーをHCFC−225cbの68gに溶解し、88gのn−ヘキサンでポリマーを凝集してろ過した。同様の操作をもう一回繰り返した後、60℃で24時間真空乾燥した。白色のポリマー1.84gを得た。空気中のTd(3%)は289℃、窒素中のTd(3%)は387℃、Tgは142℃であった。ペルフルオロベンゼンにポリマーを溶解して19F−NMRを測定したところ、2M−FHDAEと(ペルフルオロヘキシル)エチレンの繰り返し単位の比率は、84:16であった。
得られるポリマーは下記に示す繰り返し単位を含むものとなる。
Figure 2019131677
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2017年12月26日出願の日本特許出願(特願2017−249732)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明によれば、新規含フッ素ジエン化合物が提供され、前記含フッ素ジエン化合物等の含フッ素化合物を原料モノマーとした新規な含フッ素重合体は、光学材料、電子材料等の多種多様な分野での利用が期待される。

Claims (12)

  1. 下記一般式Iで表される含フッ素ジエン化合物。
    Figure 2019131677
    式中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基であり、kは0または1であり、前記R〜Rのうち少なくとも1は水素原子である。
  2. 前記一般式IにおけるR及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子であり、Rは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であり、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である、請求項1に記載の含フッ素ジエン化合物。
  3. 塩基の存在下、下記一般式aで表される化合物と下記一般式bで表される化合物とを反応させる、下記一般式Iで表される含フッ素ジエン化合物を製造する方法。
    Figure 2019131677
    式中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基であり、kは0または1であり、前記R〜Rのうち少なくとも1は水素原子である。
  4. 前記反応を溶媒存在下で行う、請求項3に記載の含フッ素ジエン化合物を製造する方法。
  5. 前記塩基が脂肪族3級アミンである、請求項3又は4に記載の含フッ素ジエン化合物を製造する方法。
  6. 前記溶媒がグライム及びニトリルの少なくともいずれか一方を含む、請求項4又は5に記載の含フッ素ジエン化合物を製造する方法。
  7. 下記一般式I’で表される含フッ素化合物を原料モノマーとする含フッ素重合体。
    Figure 2019131677
    式中、R11〜R17はそれぞれ独立して、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又はヘテロ原子を有していてもよい一価の有機基であり、kは0または1であり、前記R11〜R17のうち少なくとも1は水素原子であり、R11又はR12はR13〜R17のうちいずれかひとつと連結して環を形成してもよく、R13はR11、R12、R14〜R17のうちいずれかひとつと連結して環を形成してもよい。
  8. 前記一般式I’で表される含フッ素化合物が下記一般式Iで表される含フッ素ジエン化合物である請求項7に記載の含フッ素重合体。
    Figure 2019131677
    式中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基であり、kは0または1であり、前記R〜Rのうち少なくとも1は水素原子である。
  9. 前記一般式IにおけるR及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子であり、Rは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であり、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である請求項8に記載の含フッ素重合体。
  10. 下記一般式I’で表される含フッ素化合物を含む原料モノマーを重合させる工程を含む、含フッ素重合体の製造方法。
    Figure 2019131677
    式中、R11〜R17はそれぞれ独立して、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又はヘテロ原子を有していてもよい一価の有機基であり、kは0または1であり、前記R11〜R17のうち少なくとも1は水素原子であり、R11又はR12はR13〜R17のうちいずれかひとつと連結して環を形成してもよく、R13はR11、R12、R14〜R17のうちいずれかひとつと連結して環を形成してもよい。
  11. 前記一般式I’で表される含フッ素化合物が下記一般式Iで表される含フッ素ジエン化合物である請求項10に記載の含フッ素重合体の製造方法。
    Figure 2019131677
    式中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、塩素原子、フッ素原子、又はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基であり、kは0または1であり、前記R〜Rのうち少なくとも1は水素原子である。
  12. 前記一般式IにおけるR及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子であり、Rは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であり、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である請求項11に記載の含フッ素重合体の製造方法。
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