JPWO2019117274A1 - ペプチドの製造方法、及び塩基の処理方法 - Google Patents

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Abstract

以下の特徴を有する塩基と酸で形成される塩により、脱保護剤を不活化できること、および、それによりペプチドの過剰伸長を抑制できることを見出した。(i)前記塩基は、脱保護剤として使用される塩基とは異なる種類の塩基である、および(ii)前記塩基の共役酸のpKaは、脱保護剤として使用される塩基の共役酸のpKaよりも小さい。

Description

本開示は、ペプチドの製造方法、並びに、ペプチドの製造方法における塩基の処理方法、及び塩基の不活化剤等に関する。
ペプチドの化学合成方法として、固相合成法、液相合成法などの方法が報告されている。いずれの方法においても、典型的には、伸長中のペプチド鎖のアミノ基に、新たに添加されたアミノ酸のカルボキシ基を連結させてアミド結合を形成し、ペプチド鎖を伸長していく方法がとられている。この際に、前記アミド結合に使用される官能基以外の反応性の官能基を保護基により保護しておくことで、副反応を抑えつつ、ペプチド鎖を伸長できることが知られている。より詳細には、新たに添加されるアミノ酸のアミノ基を保護基で保護しておき、同アミノ酸がペプチド鎖と連結した後に、該保護基が除去される(脱保護)。このようにして露出されたアミノ基が、次に添加される新たなアミノ酸のカルボキシ基と連結される。これを繰り返すことによりペプチド鎖を伸長していく方法が利用されている。
代表的なペプチドの合成法の具体例としては、伸長中のペプチド鎖のアミノ基に、N末端がFmoc基で保護されたアミノ酸(Fmocアミノ酸)のカルボキシ基をアミド結合で連結し、その後にピペリジンやDBUといった塩基性の脱保護剤を用いて該Fmoc基を除去するという工程を繰り返すことで、ペプチド鎖を伸長していく方法が知られている。
しかし、この方法では、ペプチド鎖伸長工程において、脱保護剤であるピペリジンが残留していると、次の伸長に使われるFmocアミノ酸のFmoc基がピペリジンにより除去されてしまい、同じアミノ酸が二重に連結するなどの、ペプチドの過剰伸長が起こり得ることが報告されている(非特許文献1)。この過剰伸長を抑制するための方法としては、残留したピペリジンが検出できなくなるまで洗浄を繰り返す方法が報告されている(非特許文献1)。
Yi Yang, Side Reactions in Peptide Synthesis, 2016年, p.246
上述のとおり、ペプチドの化学合成方法では、典型的には、脱保護剤などの残留試薬を除去するために、ペプチド鎖にアミノ酸を連結させる度に洗浄が繰り返される。しかし、洗浄回数が多いと製造、及び設備占有時間の長時間化、これによるコスト増、また洗浄に使用する溶媒が大量に必要になるといった問題がある。また、洗浄が不十分な場合、副生成物が生じることで、目的とするペプチドの純度が低下し得るという問題があった。特に、アミノ酸を伸長させる工程が繰り返されるようなペプチドの合成法においては、1つのアミノ酸を伸長させる工程で生成される副生成物がわずかであっても、この工程が繰り返されることによって副生成物が蓄積し、目的とするペプチドの純度が大幅に低下し得る。
本発明はこのような状況を鑑みてなされたものであり、非限定的な一側面において、脱保護剤の新たな処理方法を提供することを課題とする。非限定的な一側面において、脱保護剤の残留に起因するペプチドの過剰伸長を抑制することができるペプチドの製造方法を提供することを課題とする。非限定的な一側面において、ペプチドの製造方法における塩基の処理方法を提供することを課題とする。非限定的な一側面において、ペプチドの製造方法において使用される塩基の不活化剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、残留脱保護剤を洗浄により取り除くのではなく、脱保護剤を不活化することにより、ペプチドの過剰伸長を抑制する方法を見出した。脱保護剤が塩基の場合、この塩基を不活化する方法として、酸による中和が選択され得る。しかし、単純に酸を加えた場合には、脱保護剤の中和のみならず、伸長中のペプチド鎖のN末端がプロトン化されることにより、伸長反応性の低下が起こり得る。さらに、固相支持体とペプチドの連結部位に、酸に対する感受性の高いリンカー(例えば2-CTC)を用いる場合には、酸により、伸長途中のペプチド鎖が固相支持体から切り出され得る。このペプチド伸長途中での固相支持体からの切り出しは、通常のペプチド伸長にて汎用されるオキシマ(oxyma:シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル)(pKa=4.60) 程度の酸性度でもみられることが報告されている(P. Cherkupally, et al., K-Oxyma: a Strong Acylation-Promoting, 2-CTC Resin-Friendly Coupling Additive, Eur. J. Org. Chem., 2013, 6372-6378)。また、近年N−メチルアミノ酸を含むペプチドが注目されているが(WO2013/100132)、N−メチルアミノ酸を含むペプチド合成の過程で酸処理をすると、ペプチド鎖が切断される副反応が起こり得ることが報告されている(M. Teixido, et al. Solid-phase synthesis and characterization of N-methyl-rich peptides. J. Peptide Res., 2005, 65, 153.; J. Urban, et al. Lability of N-alkylated peptides towards TFA cleavage. Int. J. Pept. Prot. Res., 1996, 47, 182.)。酸が上記のように作用することによる望ましくない副反応の回避が望まれる。
そこで本発明者らは、脱保護剤とは異なる種類の塩基と酸で形成される塩により、脱保護剤を不活化する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、非限定の具体的な一態様において以下を包含する。
〔1〕ペプチドの製造方法であって、該方法は以下の工程:
(a)塩基X、アミノ基含有化合物、及び、塩基Yと酸Zで形成される塩を共存させる工程;及び
(b)前記工程(a)の後に、前記アミノ基含有化合物、及び、保護基Pによりアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドを共存させ、ペプチド鎖を伸長させる工程;
を含み、ここで前記塩基Yの共役酸のpKaが、前記塩基Xの共役酸のpKaよりも小さい、前記方法。
〔2〕ペプチドの製造における塩基Xの処理方法であって、該方法は〔1〕に記載の工程(a)を含み、ここで前記塩基Yの共役酸のpKaが、前記塩基Xの共役酸のpKaよりも小さい、前記方法。
〔3〕さらに〔1〕に記載の工程(b)を含む、〔2〕に記載の方法。
〔4〕〔2〕又は〔3〕に記載の処理方法を含む、ペプチドの製造方法。
〔5〕前記工程(a)が、塩基X、アミノ基含有化合物、及び、塩基Yと酸Zで形成される塩を混合することにより行われる、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕前記工程(a)が、塩基X及びアミノ基含有化合物を含む混合物と、塩基Yと酸Zで形成される塩を混合することにより行われる、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕前記工程(a)が、塩基Xを不活化するための工程である、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の方法。
〔8〕前記工程(b)が、前記アミノ基含有化合物を含む混合物と、保護基Pによりアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドを混合することにより行われる、〔1〕、又は〔3〕〜〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕前記工程(a)の前に、さらに以下の工程:
(a’)保護基Qにより保護されたアミノ基含有化合物の該保護基Qを前記塩基Xで除去する工程;
を含む、〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の方法。
〔10〕前記塩基Xが、保護基Qにより保護されたアミノ基の脱保護剤である、〔1〕〜〔9〕に記載の方法。
〔11〕〔1〕における前記保護基P、又は、〔9〕若しくは〔10〕における前記保護基P及びQが塩基により除去可能な保護基である、〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の方法。
〔12〕前記塩基により除去可能な保護基が、塩基Xにより除去可能な保護基である、〔11〕に記載の方法。
〔13〕前記塩基Xにより除去可能な保護基がFmoc骨格を有する保護基である、〔12〕に記載の方法。
〔14〕前記Fmoc骨格を有する保護基がFmoc基である、〔13〕に記載の方法。
〔15〕前記保護基Qが、前記保護基Pと同じ種類の保護基である、〔9〕〜〔14〕のいずれかに記載の方法。
〔16〕前記塩基Xが有機塩基である、〔1〕〜〔15〕のいずれかに記載の方法。
〔17〕前記塩基Xが、アミン、アミジン骨格を有する塩基、及びグアニジン骨格を有する塩基からなる群より選択される少なくとも一種の塩基である、〔1〕〜〔16〕のいずれかに記載の方法。
〔18〕前記塩基Xが、アミジン骨格を有する塩基である、〔1〕〜〔17〕のいずれかに記載の方法。
〔19〕前記塩基Xが、DBU及びピペリジンからなる群より選択される少なくとも一種の塩基である、〔1〕〜〔18〕のいずれかに記載の方法。
〔20〕前記塩基XがDBUである、〔1〕〜〔19〕のいずれかに記載の方法。
〔21〕前記アミノ基含有化合物が、(i)固相支持体と結合しているアミノ基含有化合物、又は、(ii)保護基により保護されたカルボキシ基を有するアミノ基含有化合物である、〔1〕〜〔20〕のいずれかに記載の方法。
〔22〕前記(i)に記載の固相支持体が塩基により除去されない固相支持体であるか、又は、前記(ii)に記載の保護基が塩基により除去されない保護基である、〔21〕に記載の方法。
〔23〕前記アミノ基含有化合物が、固相支持体と結合しているアミノ基含有化合物である、〔1〕〜〔22〕のいずれかに記載の方法。
〔24〕前記アミノ基含有化合物が、遊離の第一級アミノ基又は遊離の第二級アミノ基を少なくとも一つ有するアミノ基含有化合物である、〔1〕〜〔23〕のいずれかに記載の方法。
〔25〕前記固相支持体が、塩基により切断されないリンカーを含む固相支持体である、〔21〕〜〔24〕のいずれかに記載の方法。
〔26〕前記固相支持体が、酸感受性の固相支持体である、〔21〕〜〔25〕のいずれかに記載の方法。
〔27〕前記酸感受性の固相支持体が、トリチル基を含む酸感受性固相支持体である、〔26〕に記載の方法。
〔28〕前記アミノ基含有化合物が、遊離の第一級アミノ基又は遊離の第二級アミノ基を少なくとも一つ有するアミノ酸又はペプチドである、〔1〕〜〔27〕のいずれかに記載の方法。
〔29〕前記アミノ基含有化合物が、遊離の第二級アミノ基を一つ有する、〔1〕〜〔28〕のいずれかに記載の方法。
〔30〕前記遊離の第二級アミノ基が、遊離のN−アルキル(C1−6)アミノ基である、〔29〕に記載の方法。
〔31〕前記遊離の第二級アミノ基が、遊離のN−メチルアミノ基である、〔29〕又は〔30〕に記載の方法。
〔32〕前記ペプチドの製造が固相合成法により行われる、〔1〕又は〔4〕〜〔31〕のいずれかに記載の方法。
〔33〕前記塩基Yの共役酸のpKaが5.0以上である、〔1〕〜〔32〕のいずれかに記載の方法。
〔34〕前記塩基Yの共役酸のpKaが9.0以上である、〔1〕〜〔33〕のいずれかに記載の方法。
〔35〕前記塩基Yの共役酸のpKaが、前記アミノ基含有化合物のN末端のアミノ基の共役酸のpKaよりも大きい、〔1〕〜〔34〕のいずれかに記載の方法。
〔36〕前記塩基Yの共役酸のpKaが15.0以下である、〔1〕〜〔35〕のいずれかに記載の方法。
〔37〕前記塩基Yの共役酸のpKaが11.5以下である、〔1〕〜〔36〕のいずれかに記載の方法。
〔38〕前記塩基Yが有機塩基である、〔1〕〜〔37〕のいずれかに記載の方法。
〔39〕前記塩基Yがアミン類、又はピリジン類である、〔1〕〜〔38〕のいずれかに記載の方法。
〔40〕前記塩基Yが、トリエチルアミン、及びN,N−ジイソプロピルエチルアミンからなる群より選択される少なくとも一種の塩基である、〔1〕〜〔39〕のいずれかに記載の方法。
〔41〕前記酸Zが、pKaが5.0以下の酸である、〔1〕〜〔40〕のいずれかに記載の方法。
〔42〕前記酸Zが、pKaが−10.0以上の酸である、〔1〕〜〔41〕のいずれかに記載の方法。
〔43〕前記塩基Yの共役酸のpKaが、前記酸ZのpKaよりも大きい、〔1〕〜〔42〕のいずれかに記載の方法。
〔44〕前記保護基Pによりアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドが、遊離のカルボキシ基、又は活性エステル化されたカルボキシ基を少なくとも一つ有するアミノ酸又はペプチドである、〔1〕又は〔3〕〜〔43〕のいずれかに記載の方法。
〔45〕前記保護基Pによりアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドが、遊離のカルボキシ基、又は活性エステル化されたカルボキシ基を一つ有し、その他の反応性官能基が保護基で保護されているアミノ酸又はペプチドである、〔1〕又は〔3〕〜〔44〕のいずれかに記載の方法。
〔46〕前記工程(a’)〜(b)を2回以上繰り返す、〔1〕又は〔4〕〜〔45〕のいずれかに記載の方法。
〔47〕前記工程(a)と(b)の間に洗浄工程を含まないか、又は1〜5回の洗浄工程を含む、〔1〕又は〔3〕〜〔46〕のいずれかに記載の方法。
〔48〕前記工程(a)と(b)の間、及び、前記工程(a’)と(a)の間のいずれにも洗浄工程を含まないか、又は、合計1〜5回の洗浄工程を含む、〔1〕又は〔3〕〜〔47〕のいずれかに記載の方法。
〔49〕前記工程(b)が縮合剤の存在下で行われる、〔1〕又は〔3〕〜〔48〕のいずれかに記載の方法。
〔50〕前記工程(b)のペプチド鎖の伸長がアミド結合によりなされる、〔1〕又は〔3〕〜〔49〕のいずれかに記載の方法。
〔51〕前記工程(b)の後に、さらに以下の工程:
(c)ペプチドを固相支持体から切り出す工程;
を含む、〔1〕又は〔3〕〜〔50〕のいずれかに記載の方法。
〔52〕前記工程(b)の後に、さらに以下の工程:
(c’)ペプチドの保護基を除去する工程;
を含む、〔1〕又は〔3〕〜〔51〕のいずれかに記載の方法。
〔53〕前記ペプチドの製造方法が、N置換アミノ酸を少なくとも一つ含むペプチドの製造方法である、〔1〕又は〔4〕〜〔52〕に記載の方法。
〔54〕前記N置換アミノ酸がN−アルキルアミノ酸である、〔53〕に記載の方法。
〔55〕前記N−アルキルアミノ酸がN−アルキル(C1−3)アミノ酸である、〔54〕に記載の方法。
〔56〕前記N−アルキル(C1−3)アミノ酸が、N−メチルアミノ酸である、〔55〕に記載の方法。
〔57〕〔1〕又は〔4〕〜〔56〕のいずれかに記載の方法によって製造されるペプチド。
〔58〕〔1〕〜〔56〕のいずれかに記載の方法において使用するための塩基Xの不活化剤であって、該不活化剤は塩基Yと酸Zで形成される塩を含む、前記不活化剤。
本発明のいくつかの態様によれば、ペプチドの過剰伸長を抑制することができる。また、いくつかの態様において、洗浄回数や洗浄溶媒量を減らすことが可能となる。また、いくつかの態様において、副生成物の量が少ない、高純度のペプチドを製造することができる。
本明細書において使用される略語を以下に概説する。
Figure 2019117274
本明細書において「アミノ基含有化合物」とは、遊離の(保護基により保護されていない)第一級アミノ基、又は遊離の第二級アミノ基を少なくとも一つ有する化合物を意味する。本明細書において、アミノ基含有化合物に含まれる遊離の第一級アミノ基又は第二級アミノ基が保護基Qによって保護されている化合物のことを、「保護基Qによって保護されたアミノ基含有化合物」ということがある。
本明細書における「アミノ酸」には、天然アミノ酸、及び非天然アミノ酸が含まれる。本明細書における「天然アミノ酸」とは、Gly(グリシン)、Ala(アラニン)、Ser(セリン)、Thr(トレオニン)、Val(バリン)、Leu(ロイシン)、Ile(イソロイシン)、Phe(フェニルアラニン)、Tyr(チロシン)、Trp(トリプトファン)、His(ヒスチジン)、Glu(グルタミン酸)、Asp(アスパラギン酸)、Gln(グルタミン)、Asn(アスパラギン)、Cys(システイン)、Met(メチオニン)、Lys(リシン)、Arg(アルギニン)、Pro(プロリン)を指す。非天然アミノ酸は特に限定されないが、β−アミノ酸、γ−アミノ酸、D型アミノ酸、N置換アミノ酸、α,α−二置換アミノ酸、側鎖が天然アミノ酸と異なるアミノ酸などが例示される。本明細書におけるアミノ酸としては、任意の立体配置が許容される。アミノ酸の側鎖の選択は特に制限を設けないが、水素原子の他にも例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、シクロアルキル基から自由に選択されてよい。それぞれには置換基が付与されていてもよく、それら置換基も制限されず、例えば、ハロゲン原子、O原子、S原子、N原子、B原子、Si原子、又はP原子を含む任意の置換基の中から独立して1つ又は2つ以上が自由に選択されてよい。すなわち、置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、シクロアルキル基などが例示される。いくつかの態様において、本明細書におけるアミノ酸は、同一分子内にカルボキシ基とアミノ基を有する化合物であってよい(この場合であっても、プロリン、ヒドロキシプロリンなどもアミノ酸に含まれる)。本明細書におけるアミノ酸は、保護基により保護された官能基を有してよい。保護基により保護される官能基としては、主鎖に位置する官能基(アミノ基、カルボキシ基)、及び側鎖に位置する官能基が例示される。すなわち、例えば、アミノ基及び/又はカルボキシ基が保護基により保護されたアミノ酸も本明細書におけるアミノ酸に含まれる。本明細書におけるアミノ酸には、固相支持体と結合しているアミノ酸が含まれる。
アミノ酸の主鎖アミノ基は、非置換(NH基)でもよく、置換されていてもよい(即ち、−NHR基:Rは置換基を有していてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、シクロアルキルを示し、またプロリンのようにN原子に結合した炭素鎖とα位の炭素原子とが環を形成していてもよい。)。前記Rの置換基は、上述のアミノ酸側鎖における置換基と同様に選択される。このような主鎖アミノ基が置換されているアミノ酸を、本明細書において「N置換アミノ酸」と称する。本明細書における「N置換アミノ酸」としては、好ましくはN−アルキルアミノ酸、N−アルキル(C1−6)アミノ酸、N−アルキル(C1−3)アミノ酸、N−メチルアミノ酸が例示されるが、これらに限定されるものではない。
本明細書における「アミノ酸類縁体」とは、好ましくはヒドロキシカルボン酸、より好ましくはα−ヒドロキシカルボン酸を意味する。α―ヒドロキシカルボン酸の側鎖は、アミノ酸と同様に特に限定されないが、例えば、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、シクロアルキル基が挙げられる。α−ヒドロキシカルボン酸の立体構造はアミノ酸のL型に対応するものでもD型に対応するものでもよい。側鎖は特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、N原子、O原子、S原子、B原子、Si原子、P原子を含む任意の官能基の中から自由に選択される。置換基の数は特に限定されず、1つ又は2つ以上有していてもよい。例えば、S原子を有し、さらにアミノ基やハロゲン基などの官能基を有していてもよい。βやγ−アミノ酸類縁体の場合にも任意の立体配置が、α―アミノ酸類縁体の場合と同様に許容され、その側鎖の選択も特に制限なくα―アミノ酸類縁体の場合と同様である。
本明細書におけるアミノ基含有化合物又はペプチドに含まれる「アミノ酸」及び「アミノ酸類縁体」にはそれぞれに対応する全ての同位体を含む。「アミノ酸」及び「アミノ酸類縁体」の同位体は、少なくとも1つの原子が、原子番号(陽子数)が同じで,質量数(陽子と中性子の数の和)が異なる原子で置換されたものである。本発明のアミノ基含有化合物又はペプチドを構成する「アミノ酸」及び「アミノ酸類縁体」に含まれる同位体の例としては、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、フッ素原子、塩素原子などがあり、それぞれ、H、H、13C、14C、15N、17O、18O、32P、35S、18F、36Cl等が含まれる。
本明細書において「ペプチド」とは、2以上のアミノ酸及び/又はアミノ酸類縁体がアミド結合及び/又はエステル結合により連結されている物質をいう。ペプチドが環状構造を有する場合には、環化部の結合様式は特に限定されず、アミド結合又はエステル結合以外の結合であってもよい。環化部の結合様式としては、例えば、アミド結合、炭素−炭素結合、ジスルフィド結合、エステル結合、チオエステル結合、チオエーテル結合、ラクタム結合、トリアゾール構造を介した結合、フルオロフォア構造を介した結合などの共有結合が好ましく、中でも代謝安定性が高いことからアミド結合が好ましい。環化に用いられるカルボン酸基やアミノ基等の官能基の位置は、主鎖上のものでも、側鎖上のものでもよく、環化可能な位置にあれば、特に制限されない。本明細書において「環化部の結合様式」とは、環化反応により環化が形成された部位の結合様式のことである。
本明細書におけるアミノ基含有化合物およびペプチドは、保護基により保護された官能基を有してもよいし、保護されていない官能基を有してもよいし、これらの両方を有してもよい。保護基により保護される官能基としては、主鎖に位置する官能基(例えば、アミノ基、カルボキシ基)、及び側鎖に位置する官能基が例示される。すなわち、アミノ基、カルボキシ基などの官能基の一部又は全部が保護基により保護されたアミノ基含有化合物およびペプチドも本明細書におけるアミノ基含有化合物およびペプチドに含まれる。本明細書におけるペプチドには、固相支持体と結合しているアミノ基含有化合物およびペプチドが含まれる。本明細書におけるアミノ基含有化合物およびペプチドには、反応性を低下させるために官能基の一部が誘導体化されたアミノ基含有化合物およびペプチドが含まれる。例えば、ペプチドのC末端カルボキシ基がピペリジンやピロリジンなどと反応することによりピペリジンアミドやピロリジンアミドなどを形成している化合物も、本明細書におけるアミノ基含有化合物およびペプチドに含まれる。
本明細書において、アミノ酸、アミノ酸類縁体、ペプチド、アミノ基含有化合物などがアミノ末端及び/又はカルボキシ末端を有する場合、該アミノ末端をN末端、該カルボキシ末端をC末端と定義する。アミノ酸、ペプチド、アミノ基含有化合物などのアミノ末端及び/又はカルボキシ末端が保護基で保護されていたり、固相支持体と結合していたり、反応性を低下するために誘導体化されている場合であっても、それらの末端は、それぞれN末端、及びC末端の定義に含まれる。
本明細書において「主鎖」とは、アミノ酸又はペプチドであれば、それらのC末端とN末端を結ぶ鎖を意味し、アミノ基含有化合物の主鎖についてもこれに準じて定義される。本明細書において「側鎖」とは、主鎖から枝分かれした少なくとも一つの炭素原子を含む原子団を意味する。例えば、H2N-CH(R)-COOHの側鎖は、Rである(ただしRが炭素原子を含まない場合はこの限りではない)。例えば、H2N-CH(R21)-CON(R22)-CH(R23)-CONH-CR24(R25)-COOHのペプチドの側鎖は、R21、R22、R23、R24、及びR25である(ただし炭素原子を含まない場合のR21、R22、R23、R24、又はR25については、この限りではない)。
本明細書において、「保護」とは、反応性の高い官能基や反応させたくない官能基などを一時的に誘導体に変えて(何らかの原子団を結合させて)、反応性を低下させることをいう。
本明細書において、「保護基」とは、例えばアミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基などの反応性の高い官能基を一時的に保護する目的で使用される原子団をいう。保護基としては、例えば、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基、アセチル基、ベンジル基、ベンゾイル基、t−ブトキシカルボニル(Boc)基、t−ブチル基、t−ブチルジメチル基、シリル基、トリメチルシリルエチル基、N−フタルイミジル基、トリメチルシリルエチルオキシカルボニル基、カルバメート基などが代表的な保護基として挙げられる。保護基は、例えば、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基などの反応性の官能基を保護するために用いることができる。反応の条件や目的に応じ、種々の保護基を使い分けることができる。ヒドロキシ基の保護基にはアセチル基、ベンジル基、シリル基又はそれらの誘導体などが、アミノ基の保護基にはFmoc基、アセチル基、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)基、t−ブトキシカルボニル(Boc)基又はそれらの誘導体などが、カルボキシ基の保護基には、ベンジル基、t−ブチル基又はそれらの誘導体などが使用できる。アミノオキシ基及びN−アルキルアミノオキシ基の保護基として、トリメチルシリルエチルオキシカルボニル基、又はその誘導体が使用できる。
いくつかの態様において、本開示における保護基としては、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、チオール基、グアニジノ基、アミド基、イミダゾール基、インドール基などを保護する保護基が例示される。また、いくつかの態様において、本開示における保護基として、「主鎖保護基」及び「側鎖保護基」が例示される。本明細書において、「主鎖保護基」とは、アミノ酸、アミノ酸類縁体、ペプチド、又はアミノ基含有化合物の主鎖の末端の官能基(典型的には、N末端(アミノ末端)のアミノ基、及び/又はC末端(カルボキシ末端)のカルボキシ基)を保護する保護基をいう。本明細書において、「側鎖保護基」とは、アミノ酸、ペプチド、又はアミノ基含有化合物の側鎖官能基を保護する保護基をいう。
本明細書において、「脱保護」とは、保護基を除去することにより、保護する前のもとの官能基に戻すことをいう。本明細書において、「脱保護剤」とは、脱保護のために使用される試薬を意味する。
本明細書において、「共存させる」とは、対象となる各物質を同一の反応系に存在させることを意味し、各物質は接触していても、離れて存在していてもよい。例えば、A及びBを共存させることは、AとBを混合することにより行ってもよいし、何らかの反応の結果生成されたAを含む混合物とBを混合することにより行ってもよい。
本明細書において、「保護基Pによりアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチド」とは、保護基Pによりアミノ基が保護されたアミノ酸、又は、保護基Pによりアミノ基が保護されたペプチドを意味する。
本明細書において、「アルキル」とは、脂肪族炭化水素から任意の水素原子を1個除いて誘導される1価の基であり、骨格中にヘテロ原子(炭素及び水素原子以外の原子をいう。)または不飽和の炭素−炭素結合を含有せず、水素及び炭素原子を含有するヒドロカルビルまたは炭化水素基構造の部分集合を有する。該アルキル基は直鎖状、又は分枝鎖状のものを含む。アルキル基としては、炭素原子数1〜20(C1−20、以下「Cp−q」とは炭素原子数がp〜q個であることを意味する。本明細書において、「Cp−qアルキル」と「アルキル(Cp−q)」は同義で用いられる。)のアルキル基であり、C1−10アルキル基、C1−6アルキル基、C1−5アルキル基、C1−4アルキル基、C1−3アルキル基などが好ましく例示される。アルキルとしては、具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、tert−ブチル基、sec−ブチル基、1−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1,1,2,2−テトラメチルプロピル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、イソペンチル、ネオペンチル、イソオクチル等が挙げられる。
本明細書において「アルケニル」とは、少なくとも1個の二重結合(2個の隣接SP2炭素原子)を有する1価の基である。二重結合及び置換分(存在する場合)の配置によって、二重結合の幾何学的形態は、エントゲーゲン(E)またはツザンメン(Z)、シスまたはトランス配置をとることができる。アルケニルとしては、直鎖状または分枝鎖状のものが挙げられ、内部オレフィンを含む直鎖などを含む。好ましくはC2−10アルケニル、さらに好ましくはC2−6アルケニル、C2−4アルケニルが挙げられる。このようなアルケニルとして、具体的には、たとえば、ビニル、アリル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル(シス、トランスを含む)、3−ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルなどが挙げられる。
本明細書において「アルキニル」は、少なくとも1個の三重結合(2個の隣接SP炭素原子)を有する、1価の基である。直鎖状または分枝鎖状のアルキニルが挙げられ、内部アルキレンを含む。好ましくはC2−10アルキニル、さらに好ましくはC2−6アルキニル、C2−4アルキニルが挙げられる。アルキニルとしては具体的には、たとえば、エチニル、1−プロピニル、プロパルギル、3−ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、3−フェニル−2−プロピニル、3−(2'−フルオロフェニル)−2−プロピニル、2−ヒドロキシ−2−プロピニル、3−(3−フルオロフェニル)−2−プロピニル、3−メチル−(5−フェニル)−4−ペンチニルなどが挙げられる。
本明細書において「シクロアルキル」とは、飽和または部分的に飽和した環状の1価の脂肪族炭化水素基を意味し、単環、ビシクロ環、スピロ環を含む。好ましくはC3−10シクロアルキルが挙げられる。シクロアルキル基は、部分的に不飽和であってもよい。シクロアルキルとしては具体的には、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルなどが挙げられる。
本明細書において「アリール」とは、1価の芳香族炭化水素環を意味し、好ましくはC6−10アリールが挙げられる。アリールとしては具体的には、たとえば、フェニル、ナフチル(たとえば、1−ナフチル、2−ナフチル)などが挙げられる。
本明細書において「ヘテロアリール」とは、環を構成する原子中(本明細書において「環内」ともいう。)に好ましくは1〜5個のヘテロ原子を含有する芳香族性の環の1価の基を意味し、部分的に飽和されていてもよい。環は単環、または2個の縮合環(たとえば、ベンゼンまたは単環へテロアリールと縮合した2環式ヘテロアリール)であってもよい。環を構成する原子の数は好ましくは5〜10である(5員−10員ヘテロアリール)。ヘテロアリールとしては具体的には、たとえば、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ベンゾジオキソリル、インドリジニル、イミダゾピリジルなどが挙げられる。
本明細書において「アリールアルキル(アラルキル)」とは、アリールとアルキルを共に含む基であり、例えば、前記アルキルの少なくとも一つの水素原子がアリールで置換された基を意味し、好ましくは、「C5−10アリールC1−6アルキル」が挙げられる。たとえば、ベンジルなどが挙げられる。
本明細書におけるハロゲン原子としては、F、Cl、Br、及びIが挙げられ、F又はClが好ましく例示される。ハロゲン原子を含む置換基としては、限定はされないがフルオロ(−F)、クロロ(−Cl)、ブロモ(−Br)、ヨウド(−I)などが挙げられる。また、これらで1つ以上置換された、ハロゲンを置換基に有するアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基などが例示され、より具体的には、フルオロアルキル、ジフルオロアルキル、トリフルオロアルキルなどが例示される。
O原子を含む置換基としては、ヒドロキシ(−OH)、オキシ(−OR)、カルボニル(−C=O−R)、カルボキシ(−COH)、オキシカルボニル(−C=O−OR)、カルボニルオキシ(−O−C=O−R)、チオカルボニル(−C=O−SR)、カルボニルチオ(−S−C=O−R)、アミノカルボニル(−C=O−NHR)、カルボニルアミノ(−NH−C=O−R)、オキシカルボニルアミノ(−NH−C=O−OR)、スルホニルアミノ(−NH−SO−R)、アミノスルホニル(−SO−NHR)、スルファモイルアミノ(−NH−SO−NHR)、チオカルボキシル(−C(=O)−SH)、カルボキシルカルボニル(−C(=O)−CO2H)などの基が挙げられる。
オキシ(−OR)の例としては、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシなどが挙げられる。アルコキシとしては、C1−4アルコキシ、C1−2アルコキシが好ましく、なかでもメトキシ、又はエトキシが好ましい。
カルボニル(−C=O−R)の例としては、ホルミル(−C=O−H)、アルキルカルボニル、シクロアルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アラルキルカルボニルなどが挙げられる。
オキシカルボニル(−C=O−OR)の例としては、アルキルオキシカルボニル、シクロアルキルオキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニル、アルキニルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、アラルキルオキシカルボニルなどが挙げられる。
カルボニルオキシ(−O−C=O−R)の例としては、アルキルカルボニルオキシ、シクロアルキルカルボニルオキシ、アルケニルカルボニルオキシ、アルキニルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、ヘテロアリールカルボニルオキシ、アラルキルカルボニルオキシなどが挙げられる。
チオカルボニル(−C=O−SR)の例としては、アルキルチオカルボニル、シクロアルキルチオカルボニル、アルケニルチオカルボニル、アルキニルチオカルボニル、アリールチオカルボニル、ヘテロアリールチオカルボニル、アラルキルチオカルボニルなどが挙げられる。
カルボニルチオ(−S−C=O−R)の例としては、アルキルカルボニルチオ、シクロアルキルカルボニルチオ、アルケニルカルボニルチオ、アルキニルカルボニルチオ、アリールカルボニルチオ、ヘテロアリールカルボニルチオ、アラルキルカルボニルチオなどが挙げられる。
アミノカルボニル(−C=O−NHR)の例としては、アルキルアミノカルボニル(例えば、C1−6又はC1−4アルキルアミノカルボニル、なかでもエチルアミノカルボニル、メチルアミノカルボニルなどが例示される。)、シクロアルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキニルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、ヘテロアリールアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニルなどが挙げられる。これらに加えて、−C=O−NHR中のN原子と結合したH原子が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された化合物が挙げられる。
カルボニルアミノ(−NH−C=O−R)の例としては、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、アルケニルカルボニルアミノ、アルキニルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノなどが挙げられる。これらに加えて−NH−C=O−R中のN原子と結合したH原子が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された化合物が挙げられる。
オキシカルボニルアミノ(−NH−C=O−OR)の例としては、アルコキシカルボニルアミノ、シクロアルコキシカルボニルアミノ、アルケニルオキシカルボニルアミノ、アルキニルオキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシカルボニルアミノ、アラルキルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。これらに加えて、−NH−C=O−OR中のN原子と結合したH原子がアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された化合物が挙げられる。
スルホニルアミノ(−NH−SO−R)の例としては、アルキルスルホニルアミノ、シクロアルキルスルホニルアミノ、アルケニルスルホニルアミノ、アルキニルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、アラルキルスルホニルアミノなどが挙げられる。これらに加えて、−NH−SO−R中のN原子と結合したH原子がアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された化合物が挙げられる。
アミノスルホニル(−SO−NHR)の例としては、アルキルアミノスルホニル、シクロアルキルアミノスルホニル、アルケニルアミノスルホニル、アルキニルアミノスルホニル、アリールアミノスルホニル、ヘテロアリールアミノスルホニル、アラルキルアミノスルホニルなどが挙げられる。これらに加えて、−SO−NHR中のN原子と結合したH原子がアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された化合物が挙げられる。
スルファモイルアミノ(−NH−SO−NHR)の例としては、アルキルスルファモイルアミノ、シクロアルキルスルファモイルアミノ、アルケニルスルファモイルアミノ、アルキニルスルファモイルアミノ、アリールスルファモイルアミノ、ヘテロアリールスルファモイルアミノ、アラルキルスルファモイルアミノなどが挙げられる。さらに、−NH−SO−NHR中のN原子と結合した2つのH原子はアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、およびアラルキルからなる群より独立して選択される置換基で置換されていてもよく、またこれらの2つの置換基は環を形成しても良い。
S原子を含む置換基としては、チオール(−SH)、チオ(−S−R)、スルフィニル(−S=O−R)、スルホニル(−SO−R)、スルホ(−SOH)などの基が挙げられる。
チオ(−S−R)の例としては、アルキルチオ、シクロアルキルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオなどの中から選択される。
スルホニル(−SO−R)の例としては、アルキルスルホニル、シクロアルキルスルホニル、アルケニルスルホニル、アルキニルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アラルキルスルホニルなどが挙げられる。
N原子を含む置換基の例としては、アジド(−N、「アジド基」ともいう)、シアノ(−CN)、第一級アミノ(−NH)、第二級アミノ(−NHR;モノ置換アミノともいう。)、第三級アミノ(−NR(R');ジ置換アミノともいう。)、アミジノ(−C(=NH)−NH)、置換アミジノ(−C(=NR)−NR'R")、グアニジノ(−NH−C(=NH)−NH)、置換グアニジノ(−NR−C(=NR''')−NR'R")、アミノカルボニルアミノ(−NR−CO−NR'R")、ピリジル、ピペリジノ、モルホリノ、アゼチジニルなどの基が挙げられる。
第二級アミノ(−NHR;モノ置換アミノ)の例としては、アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アラルキルアミノなどが挙げられる。
第三級アミノ(−NR(R');ジ置換アミノ)の例としては、例えばアルキル(アラルキル)アミノなど、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルなどの中からそれぞれ独立して選択される、任意の2つの置換基を有するアミノ基が挙げられ、これらの任意の2つの置換基は環を形成しても良い。具体的には、ジアルキルアミノ、なかでもC1−6ジアルキルアミノ、C1−4ジアルキルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノなどが例示される。本明細書において「Cp−qジアルキルアミノ基」とは、アミノ基にCp−qアルキル基が2個置換された基をいい、両Cp−qアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。
置換アミジノ(−C(=NR)−NR'R")の例としては、N原子上の3つの置換基R、R'、およびR"が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルの中からそれぞれ独立して選択された基、例えばアルキル(アラルキル)(アリール)アミジノなどが挙げられる。
置換グアニジノ(−NR−C(=NR''')−NR'R")の例としては、R,R'、R"、およびR'''が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルの中からそれぞれ独立して選択された基、あるいはこれらが環を形成した基などが挙げられる。
アミノカルボニルアミノ(−NR−CO−NR'R")の例としては、R、R'、およびR"が、水素原子、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルの中からそれぞれ独立して選択された基、あるいはこれらは環を形成した基などが挙げられる。
本明細書において、アミノ基含有化合物及びペプチドを構成するアミノ酸、アミノ酸類縁体を、それぞれアミノ酸残基、アミノ酸類縁体残基ということがある。
いくつかの態様において、本開示におけるアミノ酸、ペプチド、及びアミノ基含有化合物に含まれる1以上の官能基は、保護基で保護されていてよい。該官能基には、主鎖及び側鎖官能基が含まれ得る。本明細書において「主鎖官能基」とは、主鎖の末端に位置する官能基を意味する。本明細書において「側鎖官能基」とは、側鎖に含まれる官能基を意味する。
本開示における主鎖官能基としては、アミノ基、又はカルボキシ基が例示され、側鎖官能基としては、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、チオール基、グアニジノ基、ヒドロキシフェニル基、インドール基、イミダゾール基、アミド基などが例示されるがこれらに限定されない。
本開示における方法は、好ましくは、適切な保護基の存在下で行われる。一般的に、適切な保護基は、それが結合している原子又は部分、例えば、酸素又は窒素が、ペプチドの合成及びプロセシング過程において望まない反応に関与することを防ぐように作用する任意の種類の基である。保護基としては、例えばアミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、チオール基、グアニジノ基、ヒドロキシフェニル基、インドール基、イミダゾール基、アミド基などを保護する保護基が挙げられる。また、本開示における保護基としては、アミノ酸、ペプチド、又はアミノ基含有化合物の主鎖官能基の保護基(C末端保護基、N末端保護基)、又は側鎖官能基の保護基が例示される。
いくつかの態様において、本開示におけるアミノ酸、ペプチド、又はアミノ基含有化合物の側鎖官能基の一部又は全部は、ペプチド鎖の伸長反応の間にわたり、保護基で保護されていてよい。いくつかの態様において、アミノ酸、ペプチド、又はアミノ基含有化合物が、側鎖官能基を介して固相支持体と結合している場合には、ペプチド鎖の伸長反応の間にわたり、該支持体との結合に利用されている官能基以外の側鎖官能基が保護基で保護されていてよい。いくつかの態様において、アミノ酸、ペプチド、アミノ基含有化合物のC末端側のカルボキシ基(例えば、C末端カルボキシ基)は保護基により保護されていてもよく、又は、反応性を低下させるように誘導体化させてもよい(例えば、C末端カルボキシ基がピペリジンやピロリジンなどと反応することによりピペリジンアミドやピロリジンアミドなどを形成していてもよい)。
いくつかの態様において、本開示におけるアミノ酸、ペプチド、及び/又はアミノ基含有化合物における側鎖官能基、又は場合によりC末端カルボキシ基の保護基は、保護基で保護されたN末端アミノ基の脱保護条件下で除去されないものを選択することが好ましい。N末端アミノ基の保護基の除去を塩基により行う場合には、前記側鎖官能基及び/又はC末端カルボキシ基の保護基として、塩基により除去されないものを選択することが好ましい。いくつかの態様において、N末端アミノ基をFmoc基により保護する場合の側鎖保護基及び/又はC末端カルボキシ基は、酸加水分解により除去可能な保護基を利用してよい。前記塩基により除去されない保護基、及び/又は、前記酸加水分解により除去可能な保護基としては、tBu、トリチル(Trt)、2−フェニルイソプロピル(2-PhiPr)、2−クロロトリチル(2-Cl-Trt)、アリル、及びベンジルが例示される。これらの保護基の中から、側鎖の化学構造に合わせて適宜選択できる。
いくつかの態様において、塩基により除去されない保護基は、特に限定されないが、以下の各群より選択される少なくとも一つの保護基であってよい:カルボキシ基の保護基として、tBu、Trt、2−PhiPr、2−Cl−Trt、アリル及びベンジル;アミノ基の保護基として、Boc、ベンジルオキシカルボニル(CbZ)、アリルオキシカルボニル(Alloc)、o−NBS、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキサ−1−イリデン)−3−エチニル(Dde)、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキサ−1−イリデン)−3−メチルブチル(ivDde)、及びtfa;ヒドロキシ基(Ser、Thr、Hypに代表されるアルキルアルコール)の保護基として、Bn、tBu、Trt、テトラヒドロピラニル(THP)、メトキシメチル(MOM)、及びtert−ブチルジメチルシリル基(TBDMS)に代表されるシリル;ヒドロキシ基(Tyrに代表されるフェノール)の保護基として、Bn、tBu、Trt、THP、及びTBDMSに代表されるシリル、並びにBoc、CbZ、2−Cl−Trt、及びアリル。
いくつかの態様において、本開示におけるアミノ酸、ペプチド、及び/又はアミノ基含有化合物の任意の一つまたは複数の側鎖は、t−ブチル(tBu)、トリチル(Trt)及びt−ブチルオキシカルボニル(Boc)などの標準的な保護基で保護されていてよい。本開示における側鎖保護基には、Tyr、Thr、Ser及びAspのためのtBu基;His、Gln及びAsnのためのTrt基;ならびにLys及びTrpのためのBoc基が含まれる。
いくつかの態様において、本開示におけるアミノ基含有化合物は、遊離の第一級アミノ基又は遊離の第二級アミノ基のいずれかを一つ有していてよい。いくつかの態様において、該アミノ基含有化合物のその他の官能基は、保護基で保護されているか、固相支持体との結合に利用されているか、反応性を低下させるように誘導体化されていてよい。いくつかの態様において、本開示におけるアミノ基含有化合物は、遊離の第二級アミノ基を少なくとも一つ、又は一つ有する化合物であってよい。本開示における第二級アミノ基としては、N−アルキルアミノ基が例示され、N−アルキル(C1−6)アミノ基、N−アルキル(C1−3)アミノ基が好ましく、中でも、N−メチルアミノ基が好ましく例示される。
いくつかの態様において、本開示におけるアミノ基含有化合物は、固相支持体に結合していてもよい。固相支持体との結合様式は特に限定されないが、例えばアミノ基含有化合物が有する官能基を介して結合していてよい。このような官能基としては、アミノ基含有化合物が有する官能基に応じて、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、又はチオール基などの中から適宜選択されるが、カルボキシ基が好ましく例示される。いくつかの態様において、固相支持体とアミノ基含有化合物の結合様式としては、エステル結合、エーテル結合、及びアミド結合が例示される。
いくつかの態様において、本開示におけるアミノ基含有化合物は、遊離の第一級アミノ基又は遊離の第二級アミノ基を少なくとも一つ有する、アミノ酸又はペプチドであってよい。限定を意図しないが、いくつかの態様において、前記ペプチドは、アミノ酸及び/又はアミノ酸類縁体が2〜49個、2〜29個、又は2〜19個連結されたペプチドであってよく、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個連結されたペプチドであってよい。この場合であっても、いくつかの態様における固相支持体との結合様式は特に限定されないが、例えば、アミノ基含有化合物は、その主鎖又は側鎖官能基を介して固相支持体と結合していてよい。いくつかの態様において、アミノ基含有化合物は、そのC末端側に位置する主鎖又は側鎖官能基を介して、固相支持体と結合していてよい。本明細書において「C末端側」とは、C末端に位置するアミノ酸に限定されず、C末端から1番目、2番目、又は3番目に位置するアミノ酸又はアミノ酸類縁体が例示される。いくつかの態様において、ペプチドのC末端のアミノ酸又はアミノ酸類縁体、C末端から2番目又は3番目に位置するアミノ酸又はアミノ酸類縁体が有する官能基を、固相支持体との結合に利用してよい。例えば、いくつかの態様では、アミノ酸又はペプチドのC末端に位置するアミノ酸の主鎖又は側鎖カルボキシ基を利用することができる。他の態様として、例えばC末端から2番目にAspを有するペプチドであれば、同Aspの側鎖カルボキシ基を固相支持体との結合に利用できる。このように、固相支持体との結合方法は特に限定されず、様々な手法を用いることができる。
いくつかの態様において、本開示におけるアミノ基含有化合物、及び/又はペプチドは、N置換アミノ酸を1以上、2以上、又は3以上含んでいてよい。前記N置換アミノ酸としては、N−アルキルアミノ酸が例示され、N−アルキル(C1−6)アミノ酸、N−アルキル(C1−3)アミノ酸が好ましく、N−メチルアミノ酸がより好ましい。
いくつかの態様において、本開示におけるアミノ基含有化合物は、以下の一般式(I):
HR11N−X−D (I)
[式中、
HR11N−X−は、アミノ酸又はペプチドの残基を表し、
HR11N−は、アミノ酸又はペプチドのN末端アミノ基を表し、
11は、H、又はアルキル基を表し、
Dは、XのC末端側と結合した固相支持体又は保護基を表す。]
で表される。
いくつかの態様において、前記R11は、C1−6アルキル基であってよく、C1−3アルキル基であってもよく、メチル基であってもよい。いくつかの態様において、前記HR11N−X−は、アミノ酸、又は、アミド結合及び/又はエステル結合で連結されたペプチドであってよく、アミド結合のみで連結されたペプチドの残基であってもよい。いくつかの態様において、前記Dは、XのC末端側のカルボキシ基と結合している固相支持体又は保護基であってよく、中でも固相支持体であることが好ましい。
本開示における固相支持体としては、固相合成法によるペプチド合成に利用できる任意の種類の支持体を使用することができる。いくつかの態様において、固相支持体は1種類以上のポリマーを含んでいてよく、該ポリマーとしてはホモポリマー、又はコポリマーであってよい。本開示における固相支持体としては、ポリアミド、ポリスルファミド、置換ポリエチレン、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂、ポリサッカライド、ポリスチレンなどのポリマー、又は、これらから選択される一種類、又は二種類以上のポリマーの組み合わせを含む樹脂を含んでいてよい。固相支持体は、ジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレン樹脂、又は架橋されたポリエチレングリコール樹脂などを含んでいてよい。固相支持体は、アミノ基含有化合物を結合することができ、そして、合成されたペプチドを所望の条件下で切断して、該ペプチドを固相支持体から遊離させることができる連結部分を含んでよい。いくつかの態様において、本開示における固相支持体は、塩基により除去されない固相支持体であってよい。いくつかの態様において、本開示における固相支持体は、塩基により切断されないリンカーを含んでよく、塩基Xにより切断されないリンカーが好ましい。いくつかの態様において、本開示における固相支持体は、光切断可能な、酸(中でも、弱酸(例えばTFA、酢酸など))で切断可能な、フッ化水素酸(HF)で切断可能な、フッ化物イオンで切断可能な、還元的に切断可能な、Pd(O)で切断可能な、求核的に切断可能な、又はラジカルで切断可能なリンカーを含んでよい。本開示におけるリンカーは、固相支持体から切り出された後のペプチドのC末端側の構造などに応じて選択してもよい。例えばC末端側にカルボキシ基を有するペプチドを得たい場合には、ヒドロキシメチルフェノキシ基を含むリンカー、又はトリチル基を含むリンカー、中でも2−クロロトリチルクロリド基を含むリンカーなどが使用できる。本開示におけるリンカーとしては、酸により切断可能なリンカーが好ましい。固相支持体は、これらのいずれかのリンカー及びポリマーを含んでいてよい。いくつかの態様における連結部分は、切り出されるペプチドの主鎖N末端のアミノ基、及び/又は側鎖官能基が、依然実質的に全体的に保護されるような条件下で切断可能であってもよい。いくつかの態様における連結部分は、切り出されるペプチドの側鎖官能基の保護基の除去と同時に切断されてもよい。
いくつかの態様において、本開示における固相支持体は、酸感受性の固相支持体であってよい。本明細書において、「酸感受性の固相支持体」とは、酸により切断可能なリンカーを含む固相支持体をいう。酸感受性の固相支持体としては、トリチル基を含む酸感受性固相支持体、より好ましくは、張り出した塩素基を有するトリチル基を含む固相支持体、例えば、2−クロロトリチルクロリド(2−CTC)樹脂が挙げられる。その他の利用可能な固相支持体としては、トリチルクロリド樹脂、4−メチルトリチルクロリド樹脂、4−メトキシトリチルクロリド樹脂が例示される。固相支持体は、特に、固相合成ハンドブック(メルク株式会社発行、平成14年5月1日発行)に記載されている酸感受性として「H(<5%TFA in DCM)」と判定されているリンカーを有することが好ましく、用いられるアミノ酸側の官能基に合わせて適宜選択することができる。例えば、アミノ酸側の官能基としてカルボキシ基(主鎖カルボキシ基、もしくは、AspやGluに代表される側鎖カルボキシ基)、又は、芳香環上のヒドロキシ基(Tyrに代表されるフェノール基)を用いる場合には、樹脂として、トリチルクロリド樹脂(Trt樹脂)もしくは2−クロロトリチルクロリド樹脂(Clt樹脂)を用いることが好ましい。アミノ酸側の官能基として脂肪族ヒドロキシ基(SerやThrに代表される脂肪族アルコール基)を用いる場合には、樹脂として、トリチルクロリド樹脂(Trt樹脂)、2−クロロトリチルクロリド樹脂(Clt樹脂)もしくは4−メチルトリチルクロリド樹脂(Mtt樹脂)を用いることが好ましい。樹脂を構成するポリマーの種類についても特に限定されない。ポリスチレンで構成される樹脂の場合には、100−200meshもしくは200−400meshのいずれを用いても良い。また、架橋率についても特に限定されないが、1%DVB(ジビニルベンゼン)架橋のものが好ましい。アミノ酸、ペプチド、又はアミノ基含有化合物の固相支持体への担持量、及び担持率は特に限定されない。
いくつかの態様において、アミノ基が保護基で保護されたアミノ酸、ペプチド、又はアミノ基含有化合物のC末端に位置する遊離のカルボキシ基、又は活性エステル化されたカルボキシ基と、固相支持体のリンカーとの化学反応により、該アミノ酸、ペプチド、又はアミノ基含有化合物を固相支持体に担持させてよい。このとき、遊離のカルボキシ基は、前記アミノ酸、ペプチド等の主鎖カルボキシ基であってもよいし、側鎖カルボキシ基(Asp等の側鎖)でもよい。カルボキシ基の代わりに、アミノ基が保護基で保護されたアミノ酸、ペプチド、又はアミノ基含有化合物のC末端側に位置する主鎖又は側鎖の官能基(遊離のOH基、又は、遊離のSH基)を固相支持体との結合に用いることもできる。
いくつかの態様において、固相支持体に担持した前記アミノ酸、ペプチド、又はアミノ基含有化合物のアミノ基の保護基を脱保護剤(例えば塩基)により除去し、アミノ基を露出することができる。ここで用いられる塩基は、特に限定されないが、ペプチド合成で一般に使用される脱保護剤を用いることができる(例示的な脱保護剤が、次の文献に記載されている:Amino Acid-Protecting Groups (Chem. Rev. 2009, 109, 2455-2504))。そのような脱保護剤としては、アミン、アミジン骨格を有する塩基、又はグアニジン骨格を有する塩基が例示される。前記アミンとしては、第二級アミンが好ましく、具体的には、例えば、ピペリジン、モルホリン、ピロリジン及びピぺラジンが挙げられる。アミジン骨格を有する塩基として具体的には、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)及び1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)が挙げられる。グアニジン骨格を有する塩基として具体的には、例えば、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(MTBD)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)が挙げられる。
前記露出したアミノ基と、保護基Pによりアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドのカルボキシ基を縮合し、アミド結合を形成することでペプチド鎖を伸長できる。本開示におけるアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドは、遊離の、又は活性エステル化されたカルボキシ基を有するのが好ましい。
いくつかの態様において、本開示におけるアミノ基含有化合物は、保護基により保護されたカルボキシ基を有してよく、すべてのカルボキシ基が保護基で保護されていてもよく、C末端側の官能基が保護基で保護されていてもよい。いくつかの態様において、該カルボキシ基を保護する保護基は、塩基により除去されない保護基であってよい。いくつかの態様において、本開示におけるアミノ基含有化合物は、C末端の主鎖官能基が保護基で保護されていてもよい。いくつかの態様では、C末端側の主鎖及び側鎖官能基が保護基で保護されていてよい。いくつかの態様では、本開示におけるアミノ基含有化合物は、一つの第一級アミノ基又は第二級アミノ基のみが遊離の状態で存在し、それ以外のすべての官能基が保護基で保護されていてよい。
いくつかの態様において、本開示における工程(b)で使用される、保護基Pによりアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドは、遊離の(保護基により保護されていない)カルボキシ基、又は活性エステル化されたカルボキシ基を少なくとも一つ、好ましくは一つ有するアミノ酸又はペプチドであってよい。該カルボキシ基は、主鎖のカルボキシ基であっても、側鎖のカルボキシ基であってもよいが、主鎖のカルボキシ基が好ましい。該アミノ酸又はペプチドにおける、その他の反応性官能基は、保護基により保護されていてよい。このようなアミノ酸又はペプチドを用いることで、前記カルボキシ基が、アミノ基含有化合物のアミノ基とアミド結合を形成し、ペプチド鎖を伸長することが可能となる。側鎖官能基の保護基は、側鎖の化学構造に合わせて適宜選択できる。
いくつかの態様において、本開示における「保護基P」と「保護基Q」は、同じ種類の保護基、又は異なる種類の保護基であってよい。いくつかの態様において、本開示における保護基P及びQからなる群より選択される少なくとも一つ、又は両方の保護基は、アミノ基の保護基であってよい。該アミノ基としては、側鎖アミノ基又はN末端アミノ基が挙げられ、N末端アミノ基が好ましく例示される。いくつかの態様において、本開示における保護基P及びQからなる群より選択される少なくとも一つ、又は両方の保護基は、塩基によって除去可能な保護基であることが好ましく、中でも塩基Xによって除去可能な保護基であることが好ましい。いくつかの態様において、本開示における保護基P及びQは、塩基Yにより除去されない保護基であってもよい。本開示における保護基P及びQは、ペプチドを固相支持体から切り出す際、及び/又はペプチドの側鎖保護基を除去する際に除去されない保護基であってよく、中でも、酸により除去されない保護基であってよい。
いくつかの態様において、本開示における保護基P及び/又はQは、Fmoc骨格を有する保護基であってよい。該Fmoc骨格を有する保護基には、以下の一般式IIに示す構造を有する保護基が含まれる。
Figure 2019117274
[式中、
〜R10は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、又はハロゲン基を表し、
*は、アミノ酸又はペプチドのアミノ基との結合点を表す。]
いくつかの態様において、本開示におけるFmoc骨格を有する保護基としては、Fmoc基(一般式IIにおいて、R〜R10のすべてがH)、2,7−ジ−tert−ブチル−Fmoc基(一般式IIにおいて、R=tBu、R=tBu、R〜R、R〜R及びR10=H)、Fmoc(2F)基(一般式IIにおいて、R=F、R〜R及びR〜R10=H)、mio−Fmoc基(一般式IIにおいて、R=イソオクチル、R〜R及びR〜R10=H)、dio−Fmoc基(一般式IIにおいて、R=イソオクチル、R=イソオクチル、R〜R、R〜R及びR10=H)などが例示され、中でもFmoc基が好ましく例示される。
アミノ基の保護にFmoc骨格を有する保護基を利用することで、ペプチドの側鎖保護基や固相支持体との結合等を残したまま、該アミノ基の保護基(Fmoc基等)をペプチドから選択的に除去することができる。また、Fmoc骨格を有する保護基を残したまま、ペプチドの側鎖保護基等を除去することや、固相支持体との連結部位を切断することもできる。
Fmoc法を用いる場合には、例えば、主鎖のアミノ基がFmoc骨格を有する保護基により保護され、必要に応じて側鎖の官能基が塩基(例えば、ピペリジン、DBUなど)で除去されない保護基で保護され、かつ主鎖のカルボキシ基が遊離(保護されていない)であるか、または活性エステル化されているアミノ酸又はペプチドを用いることができる。該アミノ酸又はペプチドが側鎖の官能基を有する場合、該官能基は保護基で保護されていることが好ましい。側鎖の官能基が保護基で保護されている場合、任意の条件で除去可能な周知の保護基を用いることができる。例えば以下の文献i)やii)に記載の保護基の中から上記条件を満たすものを側鎖の保護基として採用することもできる。
非特許文献i)Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis, 5th Edition、
非特許文献ii)Chemical Reviews, 2009, 109(6), 2455-2504。
「除去可能な保護基」とは、当分野において一般に組み合わせて使用されている保護基とその脱保護剤の組み合わせであれば、該脱保護剤により除去可能な保護基と理解される。また、固相支持体に関する文脈で「除去可能」という用語が使用される場合にも同様に、ある固相支持体からのペプチドの切り出しに一般に使用される試薬との関係において、該固相支持体はそれに結合したペプチドから除去可能な固相支持体であると理解される。例えば、Fmoc骨格を有する保護基(例えば、Fmoc基など)は塩基により除去可能な保護基であり、2−クロロトリチルクロリド(2−CTC)樹脂は酸により除去可能な固相支持体と理解される。保護基が「除去されない」とは、当技術分野において使用される通常の脱保護条件において、除去された保護基が検出されないことを意味してよい。また、固相支持体が「除去されない」とは、当技術分野において使用される通常の反応条件において、固相支持体から除去されたペプチドが検出されないことを意味してよい。例えば、塩基により除去されない保護基又は固相支持体とは、通常のペプチド合成において、Fmoc基のような保護基を塩基により除去する際に、除去されることを意図せず使用される保護基(例えばBoc、tBuなど)や固相支持体(例えば2−CTC樹脂など)を意味する。
いくつかの態様において、保護基P及び/又はQにより保護されるアミノ基は、アミノ酸又はペプチドの主鎖アミノ基(N末端アミノ基)、又は側鎖アミノ基のいずれであってもよく、所望のペプチドの構造に併せて選択できるが、主鎖アミノ基であることが好ましい。いくつかの態様において、保護基P及び/又はQにより保護されるアミノ基は、第一級アミノ基、又は第二級アミノ基であってよい。
いくつかの態様において、本開示における保護基P及び/又はQは、アミノ酸又はペプチド等のN末端保護基(N末端アミノ基を保護する保護基)であってよい。該N末端保護基には、アミノ酸のα−アミノ基、ペプチドのN末端アミノ基などにカップリングされた化学部分が含まれる。典型的には、伸長中のペプチド鎖のN末端保護基は、該ペプチド鎖に付加される次のアミノ酸を添加する前に、脱保護反応で除去される。この際、前記次のアミノ酸のN末端はN末端保護基で保護されていてよい。いくつかの態様において、合成されたペプチド鎖を固相支持体から切り出すときには、該N末端保護基を維持してもよい。N末端保護基の選択は、様々な要因、例えば、行われるペプチド合成法の種類、ペプチドが受けるプロセシング、及び、所望の中間体生成物又は最終生成物等を考慮して選択してよい。
本開示における側鎖保護基としては、ペプチド合成過程のN末端アミノ基の脱保護中に除去されない保護基であってよい。この場合、N末端アミノ基及び側鎖官能基には、異なる種類の保護基が使用される。
側鎖保護基は、アミノ酸、ペプチド、又はアミノ基含有化合物の側鎖の一部を、ペプチド合成、プロセシングなどの工程で使用される化学物質との反応から保護するように作用する。側鎖保護基は、様々な要素、例えば、行われるペプチド合成法の種類、ペプチドが受けるプロセシング、及び、所望の中間体生成物又は最終生成物等を考慮して選択してよい。
いくつかの態様において、本開示における塩基Xは、保護基により保護されたアミノ基の脱保護剤であってよい。いくつかの態様において、該保護基は、保護基Q又は保護基Pであってよい。いくつかの態様において、塩基Xは、ペプチド合成で一般に使用される脱保護剤であってよい。いくつかの態様における塩基Xとしては、その共役酸のpKaが10.0以上であってよく、11.0以上であるものが好ましく、11.5以上であるものがより好ましい。いくつかの態様において、塩基Xは、有機塩基であってよい。塩基Xは、アミン、アミジン骨格を有する塩基、及びグアニジン骨格を有する塩基からなる群より選択される少なくとも一つの塩基であってよく、中でもアミジン骨格を有する塩基であることが好ましい。アミジン骨格を有する塩基としては、DBU、DBNが例示される。前記アミンとしては第二級アミンが好ましく、具体的には、ピペリジン、モルホリン、ピロリジン及びピぺラジンが例示される。前記グアニジン骨格を有する塩基としては、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(MTBD)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)が例示される。塩基Xとしては、DBU、ピペリジン、DBN、MTBD、ピロリジン、モルホリン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、TBD等が例示され、中でもDBU、又はピペリジンが好ましく例示され、DBUが最も好ましく例示される。いくつかの態様において、塩基Xは求核性のない塩基であってもよい。
本明細書における「pKa」は、溶媒として水を使用して測定することができる。本明細書におけるpKaとしては、溶媒として水を使用した際のpKaとして既に報告されている実測値を採用してよい。pKaの実測値が入手できない場合には、ADMETPredictor(Simulations Plus Inc.、ver8.0)を用いて計算し、その値を本明細書におけるpKaとして採用してよい。代表的な試薬のpKaを以下に列記する:
DBUの共役酸(pKa=11.9;R. Srivastava, J. Mol. Catal. A: Chem. 264 (2007) 146-152);
ピペリジンの共役酸(pKa=11.22;Hall, H.K., Jr. J. A.m. Chem. Soc. 1957, 79, 5441);
EtNの共役酸(pKa=10.65;Hall, H.K., Jr. J. A.m. Chem. Soc. 1957, 79, 5441);
DIPEAの共役酸(pKa=11.44;Chemical and Pharmaceutical Bulletin,1995,43,1872-1877);
2,4,6−トリメチルピリジンの共役酸(pKa=7.48;Clarke, K., Rothwell, K. J. Chem. Soc. 1960, 1885);
2,6−ジメチルピリジンの共役酸(pKa=6.77;Clarke, K., Rothwell, K. J. Chem. Soc. 1960, 1885);
ピリジンの共役酸(pKa=5.21;D.H. Ripin, D.A. Evans, pKa’s of Nitrogen Acids,[online], [2017年12月5日検索]、インターネット<URL:http://evans.rc.fas.harvard.edu/pdf/evans_pKa_table.pdf>);
TsOH(pKa=−6.62;J. Org. Chem., 1986, 51, 5013-5015);
HOAt(pka=3.28;Chem. Eur. J. 2009, 15, 9394-9403);
HOBt(pKa=4.60;Chem. Eur. J. 2009, 15, 9394-9403);
oxyma(pKa=4.60;Chem. Eur. J. 2009, 15, 9394-9403);
HCl(pKa=−8.0;D.H. Ripin, D.A. Evans, pKa’s of Inorganic and Oxo-Acids, [online], [2017年12月5日検索]、インターネット<URL:http://evans.rc.fas.harvard.edu/pdf/evans_pKa_table.pdf>);
HFIP(pKa=9.3;Tetrahedron Asymmetry,2012,23,1023-1027)。
また、アミノ基含有化合物のN末端のアミノ基の共役酸のpKaは、該N末端に位置するアミノ酸残基のN末端のアミノ基の共役酸のpKaとみなしてよい。前記pKaは、N末端に位置するアミノ酸残基を模した化合物の実測値を採用してよく、同化合物を用いて測定又は計算してもよい。N末端に位置するアミノ酸残基を模した化合物としては、例えば以下の化合物が例示され、それらのアミノ基の共役酸のpKaの一例を以下に列記する(ADMETPredictor(Simulations Plus Inc.、ver8.0)による計算値):H−MeGly−NHMeの共役酸(pKa=8.62);H−MeGly−NMeの共役酸(pKa=8.63);H−MeAla−NHMeの共役酸(pKa=8.69);H−MeAla−NMeの共役酸(pKa=8.68);H−Ala−NHMeの共役酸(pKa=8.47);H−MePhe−NHMeの共役酸(pKa=8.16);H−Phe−NHMeの共役酸(pKa=7.78);H−MeVal−NHMeの共役酸(pKa=8.75);H−Val−NHMeの共役酸(pKa=8.27);H−MeAla−D−3−MeAbu−(O−2−Cl−Trt)の共役酸(pKa=8.33)。
いくつかの態様において、本開示における塩は、塩基Yと酸Zで形成される塩であってよい。本開示における塩を含む組成物を調製する方法としては、塩を溶媒に溶解してもよく、また、溶媒に対して塩基と酸をそれぞれ加えて、溶液中で塩を形成させてもよい。前記の塩、又は、塩基と酸を溶解する溶媒としては、特に限定されないが、例えばジクロロメタン、DMF、NMP、THF、アセトニトリルなどが挙げられる。
いくつかの態様において、本開示における塩基Yの共役酸のpKaは、塩基Xの共役酸のpKaよりも小さくてよく、例えば、pKaの値として0.3以上、0.5以上、又は1.0以上小さくてよい。いくつかの態様において、これらのような塩基Yを選択することにより、本開示における塩は、塩基Xを不活化することができる。特定の理論に拘束されることを意図しないが、前記のような塩基Yを選択することにより、本開示における塩から塩基Xにプロトンが移動し、塩を形成していた酸Zと塩基Xが新たに塩を形成することにより塩基Xを不活化できると考えられる。このように、塩基Yの共役酸のpKaを、塩基Xの共役酸のpKaよりも小さくすることで、塩基Xを不活化することができるため、このpKaの条件を満たせば、本開示における塩基Yの種類によらず塩基Xの不活化という効果を発揮できることを当業者は当然に理解できるであろう。
いくつかの態様において、本開示における塩基Yの共役酸のpKaは、15.0以下、13.5以下、12.5以下、11.5以下、又は11.0以下であってよい。
いくつかの態様において、本開示における塩基Yは、その共役酸のpKaが5.0以上、5.5以上、6.0以上、6.5以上、7.0以上、8.0以上、9.0以上、10.0以上、又は10.5以上である塩基であってよい。いくつかの態様において、塩基Yは、酸Zと塩を形成するように選択されてよく、塩基Yの共役酸のpKaが酸ZのpKaより大きくてよい。いくつかの態様において、本開示における塩基Yは、共役酸のpKaが、アミノ基含有化合物のN末端のアミノ基の共役酸のpKaよりも大きい塩基であってよい。該アミノ基含有化合物は、本開示における工程(a)におけるアミノ基含有化合物であってよい。特定の理論に拘束されることを意図しないが、塩基Yの共役酸のpKaが、アミノ基含有化合物のN末端のアミノ基の共役酸のpKaよりも大きければ、該N末端のプロトン化による伸長反応性の低下を回避でき、より効率よくペプチドの伸長反応が進むと考えられる。しかしながら、塩基Yの共役酸のpKaが、アミノ基含有化合物のN末端のアミノ基の共役酸のpKaよりも小さい場合であっても、ペプチドの過剰伸長の抑制や、洗浄回数や洗浄溶媒量を減らすことができるため、このような態様も、本開示における一態様に含まれる。
いくつかの態様において、本開示における塩基Yは、塩基Xとは異なる種類の塩基である。いくつかの態様において、塩基Yは有機塩基であってよく、中でも、アミン類、又はピリジン類が例示される。より具体的な塩基Yの例としては、トリエチルアミン(EtN)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、トリメチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、2,6−ジメチルピリジン(2,6−ルチジン)、2,4,6−トリメチルピリジン(2,4,6−コリジン)、及びこれらの誘導体が例示され、中でもEtN、DIPEA、2,4,6−トリメチルピリジン、及びこれらの誘導体が好ましく例示され、EtN、及びDIPEAがより好ましく例示される。
いくつかの態様において、本開示における酸Zは、塩基Xを不活化できる酸であってよい。該酸Zは、塩基Xに合わせて適宜選択され得るが、pKaが5.0以下、4.8以下、4.5以下、4.0以下、又は3.0以下の酸が例示される。いくつかの態様において、本開示における酸Zは、塩基Xを不活化できればよいため、該pKaの下限は特に限定されないが、pKaが−10.0以上、−9.0以上、又は−8.0以上の酸が例示される。いくつかの態様において、酸Zは、塩基Yと塩を形成するように選択されてよく、酸ZのpKaが塩基Yの共役酸のpKaより小さくてよい。本開示における酸Zとしては、塩酸、HOAt、HOBt、oxyma、HOOBt、スルホン酸(例えばTsOH)などが例示される。
いくつかの態様において、本発明における塩基X、塩基Y、酸Zの好ましい組み合わせとして、表2の(a)〜(t)からなる群より選択される組み合わせが挙げられる。
Figure 2019117274
本明細書において「不活化」とは、本来有する活性を低下、又は消失させることを意味する。本明細書における不活化には、脱保護活性の不活化が含まれる。例えば、塩基を脱保護剤として使用する場合、該塩基の不活化とは、該塩基が本来有する脱保護活性を低下、又は消失させることを意味する。ここでの低下の程度としては、例えば80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上低下することが挙げられるがこれらに限定されない。また、本明細書において、塩基の不活化には、塩基の中和が含まれる。本明細書において、脱保護活性とは、何らかの官能基の保護基を除去する活性を意味する。活性の低下とは、所望の反応に影響を与えない程度に活性が低下されていれば特に限定されない。いくつかの態様において、塩基が不活化されていることは、実施例に記載の方法に準じてペプチド伸長反応を行った場合の過剰伸長体の生成率が2%以下、1%以下、0.5%以下、0.1%以下、又は0.05%以下に低減されていることにより確認してよい。
いくつかの態様において、脱保護剤は、使用される保護基の種類に合わせて選択できる。例えば、Fmoc骨格を有する保護基に対する脱保護剤としては、塩基(例えば、DBU、ピペリジンなど)が挙げられ、Boc、tBu、Trt、THPなどに対する脱保護剤としては、酸(例えば、TFA)が挙げられ、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)などに対する脱保護剤としては、水素共存下での遷移金属触媒(例えば、Pd/C)が挙げられ、アリル、Allocに対する脱保護剤としては、還元剤もしくは求核剤共存下でのパラジウム触媒(例えば、PhSiHとPd(PPhの組み合わせ)が挙げられ、Dde、ivDdeに対する脱保護剤としては例えばヒドラジンが挙げられ、o−NBSに対する脱保護剤としては塩基存在下でのチオール(例えば、DBUと1−ドデカンチオールの組み合わせ)が挙げられるが、これらに限定されない。
本開示におけるペプチドの製造方法、及び/又はペプチドの製造における塩基Xの処理方法(「本開示における方法」ともいう)は、そのいくつかの態様において、以下の工程(a’)、(a)及び(b)からなる群より選択される少なくとも一つの工程を含んでよい:
(a’)保護基Qにより保護されたアミノ基含有化合物の該保護基Qを塩基Xで除去する工程;
(a)前記塩基X、前記アミノ基含有化合物、及び、塩基Yと酸Zで形成される塩を共存させる工程;及び
(b)前記工程(a)の後に、前記アミノ基含有化合物、及び、保護基Pによりアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドを共存させ、ペプチド鎖を伸長させる工程。
本開示における工程(b)は、前記アミノ基含有化合物と保護基Pによりアミノ基が保護されたアミノ酸又は保護基Pによりアミノ基が保護されたペプチド(このペプチドを「ペプチド1」と呼ぶ場合がある)との間にアミド結合を形成させ、「ペプチド2」を取得する工程と言い換えることもできる。本開示における「ペプチド2」は、前記アミノ基含有化合物と前記保護基Pによりアミノ基が保護されたアミノ酸とがアミド結合により結合したもの、または前記アミノ基含有化合物と前記「ペプチド1」とがアミド結合により結合したものであってよく、本開示における製造対象となるペプチドである。
また本開示における方法は、次のように表現することもできる。
伸長されたアミノ基含有化合物の製造方法であって、以下の工程(a’)、(a)及び(b)からなる群より選択される少なくとも一つの工程を含む方法;
(a’)保護基Qにより保護されたアミノ基含有化合物の該保護基Qを塩基Xで除去する工程;
(a)前記塩基X、前記アミノ基含有化合物、及び、塩基Yと酸Zで形成される塩を共存させる工程;及び
(b)前記工程(a)の後に、前記アミノ基含有化合物、及び、保護基Pによりアミノ基が保護されたアミノ酸又は保護基Pによりアミノ基が保護されたペプチドを共存させ、前記保護基Pによりアミノ基が保護されたアミノ酸又は前記保護基Pによりアミノ基が保護されたペプチドとの結合によって伸長されたアミノ基含有化合物を取得する工程。
あるいは本開示の方法は、上記工程の少なくとも1つを含む、アミノ基含有化合物の伸長方法に関する。
あるいは本開示における方法は、次のように表現することもできる。
伸長されたアミノ基含有化合物の製造における塩基Xの処理方法であって、以下の工程(a’)、(a)及び(b)からなる群より選択される少なくとも一つの工程を含む方法;
(a’)保護基Qにより保護されたアミノ基含有化合物の該保護基Qを塩基Xで除去する工程;
(a)前記塩基X、前記アミノ基含有化合物、及び、塩基Yと酸Zで形成される塩を共存させる工程;及び
(b)前記工程(a)の後に、前記アミノ基含有化合物、及び、保護基Pによりアミノ基が保護されたアミノ酸又は保護基Pによりアミノ基が保護されたペプチドを共存させ、前記保護基Pによりアミノ基が保護されたアミノ酸又は前記保護基Pによりアミノ基が保護されたペプチドとの結合によって伸長されたアミノ基含有化合物を取得する工程。
あるいは本開示の方法は、上記工程の少なくとも1つを含む、アミノ基含有化合物の伸長における塩基Xの処理方法に関する。
本開示におけるペプチドの製造方法、又はペプチドの製造における塩基Xの処理方法は、そのいくつかの態様において、(1)前記工程(a)及び(b);(2)前記工程(a’)、(a)及び(b);又は、(3)前記工程(a’)及び(a)を含んでよい。いくつかの態様において、工程(a’)は、工程(a)の前に行われる。
保護基Qにより保護されたアミノ基含有化合物を用意する工程
工程(a’)で使用される、保護基Qにより保護されたアミノ基含有化合物は、例えば以下の方法により用意することができる。例えば、固相支持体にアミノ基が保護基Qにより保護された化合物(例えば、アミノ酸又はペプチド)を結合させる方法が挙げられる。いくつかの態様において、トリチル基を有する固相支持体に対して、アミノ基がFmoc骨格を有する保護基により保護された化合物のカルボキシ基を結合させる方法が挙げられるが、これに限定されない。このように、当技術分野において周知の方法を利用して、保護基Qにより保護されたアミノ基含有化合物を用意することができる。他の方法としては、保護基Qにより保護されたアミノ基以外の官能基を別の保護基により保護することにより、目的の化合物を用意してもよい。この場合、保護基Q以外の保護基は塩基により除去されない保護基であることが好ましい。例えば、WO2013/100132に記載の方法に準じることができる。
工程(a’):保護基の除去工程
工程(a’)は、保護基Qが除去される条件下で行ってよく、溶媒としては有機溶媒を使用してよい。このような有機溶媒としては、特に限定されないが、DMF、NMPなどが例示され、適宜これらを組み合わせて使用してよい。本工程は、例えば塩基XとしてDBUを使用する場合には、DMFなどの溶媒中に2%(容量ベース)のDBUを含む溶液で処理することにより行ってよい。この場合、例えば、室温にて10分間、振とうさせることにより行ってよい。本工程は、例えば塩基Xとしてピペリジンを使用する場合には、NMP又はDMFなどの溶媒中に10〜50%容量ベース)ピペリジンを含む溶液で処理することにより行ってよい。いくつかの態様において、本工程により、工程(a)におけるアミノ基含有化合物が製造され得る。
本工程において使用される、保護基Qにより保護されたアミノ基含有化合物は、アミノ基が保護基Qで保護されたアミノ酸、又はペプチドであってよい。この場合、該アミノ酸又はペプチドは、固相支持体と結合しているか、保護基で保護されたカルボキシ基を有してよい。該固相支持体、又はカルボキシ基の保護基としては、保護基Qで保護されたアミノ基の脱保護条件下で切断又は除去されにくいものが好ましく、酸により切断又は除去可能なものが好ましい。
工程(a):塩を共存させる工程
工程(a)は、塩基X、アミノ基含有化合物、及び、塩基Yと酸Zで形成される塩を共存させることができる方法で行ってよく、特に限定されない。いくつかの態様において、塩基Yと酸Zを予め混合し塩を形成させてもよく、また他の態様において、塩基Yと酸Zを別々に溶媒中に混合することで、溶媒中で塩を形成させてもよい。いくつかの態様において、工程(a)は、塩基X、アミノ基含有化合物、及び、塩基Yと酸Zで形成される塩を混合することにより行われてよい。いくつかの態様において、工程(a)は、塩基X、アミノ基含有化合物、塩基Y、及び酸Zを混合することにより行われてよい。いくつかの態様において、工程(a)は、塩基X、及びアミノ基含有化合物を含む混合物と、塩基Yと酸Zで形成される塩、又は該塩を含む組成物を混合することにより行われてよい。他の態様において、工程(a)は、塩基X、及びアミノ基含有化合物を含む混合物と、塩基Y及び酸Z(又は塩基Yを含む組成物、及び酸Zを含む組成物)を混合することにより行われてよい。前記組成物は溶液であってもよい。各成分の混合の順番は特に限定されない。工程(a)における塩基Xは、工程(a’)で使用された塩基Xが残留したものであってよい。工程(a)に使用される溶媒としては、特に限定されないが、DCM、DMF、NMPなどが例示され、適宜これらを組み合わせて使用してよい。いくつかの態様においては、工程(a)の後に、同工程で使用した溶媒を除去してから次の工程に進んでもよく、また、再度工程(a)を繰り返してもよい。いくつかの態様において、工程(a)は、塩基Xを不活化する工程であってよい。この工程(a)における、塩の添加量は、特に限定されないが、塩基Xの残留量(モル数)よりも多いことが好ましい。この場合、脱保護に使用した塩基Xの量から脱保護後に排出された塩基Xの量を差し引いた量を残留量としてよい。排出された塩基Xの定量には、NMR、LC、GCなどの分析機器を用いてもよい。また、塩による処理時間は特に限定されないが、例えば5分〜15分であってよい。工程(a)は、塩基Xを不活化するために行われてもよい。
工程(b):ペプチド鎖の伸長工程
いくつかの態様において、本工程は、アミノ基含有化合物を含む混合物と、保護基Pによりアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドを混合することにより行われてよい。いくつかの態様において、本工程は、ペプチド鎖が伸長される条件で行われてよい。いくつかの態様において、本工程で使用されるアミノ基が保護基Pで保護されたアミノ酸又はペプチドは、遊離のカルボキシ基、又は活性エステル化されたカルボキシ基を有するアミノ酸又はペプチドであってよく、遊離のカルボキシ基、又は活性エステル化されたカルボキシ基を一つ有するアミノ酸又はペプチドが好ましく例示される。アミノ基が保護基Pで保護されたアミノ酸又はペプチドが、遊離のカルボキシ基を有する場合のいくつかの態様では、工程(b)においてペプチド伸長と同じ反応系において、該カルボキシ基を活性エステル化させてもよい。
本工程に使用されるアミノ酸又はペプチドが有するカルボキシ基を活性エステル化する方法としては、当分野において周知の方法を用いてよく、DICに代表されるカルボジイミド系の縮合剤と求核性の高い試薬(例えばHOBt、HOAt、HOSu、Oxyma、HOOBtなど)を共存させて活性エステルを形成させる方法が例示される。該活性エステル化は、工程(b)の前に予め行ってもよく、工程(b)において行ってもよい。
本工程におけるペプチド鎖の伸長は、縮合剤の存在下で行われてよい。いくつかの態様において、本工程におけるペプチド鎖の伸長がアミド結合によりなされてよい。この場合、アミノ基とカルボキシ基を縮合するときの縮合剤及びその使用量としては、アミド結合を形成できるものであれば特に限定されず、ペプチド合成で一般に使用される縮合剤及び使用量が好ましい(例えば、Peptide Coupling Reagents, More than a Letter Soup (Chem. Rev. 2011, 111, 6557-6602))。このような縮合剤として具体的には例えば、カルボジイミド骨格を有する縮合剤が挙げられる。例えば、カルボジイミド骨格を有する縮合剤は、活性エステルを形成できるヒドロキシ化合物と組合せて、縮合反応に用いることができる。カルボジイミド骨格を有する縮合剤としては、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSCI・HCl)などが挙げられる(例えば、WATANABE Chemicalのカタログ、Amino acids and chiral building blocks to new medicine参照)。活性エステルを形成できるヒドロキシ化合物としては、例えば、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール(HOBt)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)、2−シアノ−2−(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル(oxyma)、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン(HOOBtまたはHODhbt)、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシミド(HONB)、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェノール(HOPfp)、N−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、6−クロロ−1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール(Cl−HOBt)が挙げられる(例えば、WATANABE Chemicalのカタログ、Amino acids and chiral building blocks to new medicine参照)。また、これらの骨格を有する塩、例えばoxymaのカリウム塩であるK−oxymaなども用いることができる。これらの中では特にHOBt、HOAt、oxyma、HOOBtが好ましい。中でも、DICとHOAtとを組み合わせて用いること、あるいはDICとoxymaとを組み合わせて用いることが好ましい。その他に、ホスホニウム系縮合剤・ウロニウム系縮合剤としてO−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HBTU)、O−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)、N−[1−(シアノ−2−エトキシ−2−オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ(モルホリノ)]ウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU)、O−[(エトキシカルボニル)シアノメチレンアミノ]−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HOTU)、O−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩(TBTU)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩(TATU)、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリ(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(PyBOP)、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(BOP)、ブロモトリ(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(PyBroP)、クロロトリ(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(PyCloP)、(7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸(PyAOP)、ブロモトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸(Brop)、3−(ジエトキシホスホリルオキシ)−1,2,3−ベンゾトリアジン−4(3H)−オン(DEPBT)、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロホウ酸(TSTU)、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムヘキサフルオロリン酸(HSTU)、O−(3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン−3−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩(TDBTU)、テトラメチルチウロニウムS−(1−オキシド−2−ピリジル)−N,N,N’,N’−テトラフルオロホウ酸塩(TOTT)、O−(2−オキソ−1(2H)ピリジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸(TPTU)のうちのいずれかと、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、トリエチルアミン(TEA)、2,4,6−トリメチルピリジン(2,4,6−コリジン)、2,6−ジメチルピリジン(2,6−ルチジン)のうちのいずれかの塩基とを組み合わせて縮合反応に利用することができる。特にHATUとDIPEAと組み合わせて用いること、あるいはCOMUとDIPEAとを組み合わせて用いることが好ましい。その他に、N,N’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、1,1’−カルボニル−ジ−(1,2,4−トリアゾール)(CDT)、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウム塩化物(DMT−MM)、プロピルホスホン酸無水物(T3P)などの縮合剤を利用することもできる。本工程で使用される溶媒としては、特に限定されないが、NMP、DMF、THF、アセトニトリルなどが例示され、適宜これらを組み合わせて使用してよい。
本工程で使用するアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドの量としては、ペプチド製造の出発物質として用意したアミノ基含有化合物と比較して当量以上(1当量以上)であることが好ましく、1.5当量以上であることがより好ましい。本明細書における、ペプチド製造の出発物質としては、例えば固相支持体と結合しているアミノ基含有化合物、又は保護基により保護されたカルボキシ基を有するアミノ基含有化合物が挙げられる。
本工程の完了は、定量ニンヒドリン試験でモニターすることができる。縮合反応が完了したと判定された後に、溶媒で縮合反応混合物を洗浄し、ペプチドのその後の各アミノ酸残基について繰り返してよい。
本開示における方法は、前記工程(a’)〜(b)(工程(a’)、(a)、及び(b)をこの順番で行うことを意味する)を2回以上、3回以上、又は4回以上繰り返す方法であってよい。このような繰り返しを行うことで、ペプチド鎖を伸長することが可能である。具体的には、例えば、工程(a’)〜(b)を2回繰り返す場合、1回目の工程(b)によってペプチド鎖が伸長された化合物が、2回目の工程(a’)における「保護基Qにより保護されたアミノ基含有化合物」となる。工程(a’)〜(b)を複数回繰り返す場合、各サイクルで用いられる保護基Q、保護基P、塩基X、塩基Y、又は酸Zは、それぞれ独立して、同じ種類のものでもよく、異なる種類のものでもよい。
本開示における方法は、前記工程(b)の後に、さらに以下のいずれか又は両方の工程を含んでよい。
(c1)ペプチドを固相支持体から切り出す工程;
(c2)ペプチドの保護基を除去する工程。
工程(c1):固相支持体からの切り出し工程
本工程は、最後に工程(b)を行った後に、伸長されたペプチドを固相支持体から切り出す工程である。切り出し工程を行う前にペプチドの構造変換や環化を行うことも可能である。いくつかの態様において、切り出し時点で、保護基で保護されている側鎖官能基は脱保護されていても、されていなくてもよく、いくつかの保護基のうち一部のみが脱保護されていてもよい。側鎖官能基が保護されたまま、切り出し工程が行われることが好ましい。このように保護基を残すことで、ペプチドフラグメントの望まないカップリング又は他の望まない反応を防ぐことができる。また、本工程の後にペプチドの修飾(誘導体化、環状化など)をする場合には、次の反応に必要な官能基の保護基のみを除去してもよい。
いくつかの態様において、固相支持体をDMF、DCMなどの溶媒で洗浄し、その後に、DCMなどの溶媒中に50v/v%のTFEを含む溶液で処理することにより、固相支持体からのペプチドの切り出しを行ってよい。該切り出し方法は特に限定されず、固相支持体の種類に合わせて選択できる。Fmoc法又は類似の化学合成法を用いてペプチドを合成する場合、保護基の除去は、任意の様式により行ってよいが、例えば、酢酸又は希釈TFAなどの比較的弱い酸を使用し、DCMなどの溶媒中で行ってよい。典型的には、DCM中、0.5〜10容量パーセント、好ましくは、1〜3容量パーセントのTFAを使用することができる。
固相支持体からペプチドが切り出された後で、切断されたペプチド組成物に、切断反応をクエンチするのに十分な量の化合物を加えてもよい。例えば、いくつかの態様において、前述の切り出し工程で加えられたTFA量の約2倍量のピリジン(クエンチング化合物)をその組成物に加えてよい。次に、ペプチド生成物を、溶媒中で濃縮し、水性液体で抽出してもよい。
工程(c2):ペプチドの保護基の除去工程
本工程は、最後に工程(b)を行った後に、伸長されたペプチドの保護基を除去する工程であり、いくつかの態様において、ペプチドをDMF、NMP、ジクロロメタンなどの溶媒で洗浄し、その後に、DMF、NMPなどの溶媒中に20%のピペリジン、または2%のDBUを含む溶液で処理することにより、保護基の除去を行ってよい。保護基の除去方法は特に限定されず、除去したい保護基の種類に合わせて選択できる。ペプチドの保護基の除去は、すべての官能基の保護基について同時に行ってもよく、別々に行ってもよい。本工程の後にペプチドの修飾(誘導体化、環状化など)をする場合には、次の反応に必要な官能基の保護基のみを除去してもよい。
前記の各工程は連続的に行われてもよく、各工程の間には任意の工程を含んでもよい。該任意の工程としては、例えば洗浄工程が挙げられる。また、工程(a)と同時に洗浄を行ってもよい。
洗浄工程
いくつかの態様において、本開示における方法は、前記工程(a’)と(b)の間に洗浄工程を含んでよい。前記工程(b)と(c1)、又は(b)と(c2)の間に洗浄工程を含んでもよい。前記洗浄としては、固相支持体の洗浄が挙げられる。工程(a’)と(a)の間、及び/又は、工程(a)と(b)の間に洗浄を行うことで、工程(b)のペプチド鎖の伸長反応に必要のない物質(例えば、副生成物、塩基、塩など)を除去することができる。工程(b)と(c1)、又は(b)と(c2)の間に洗浄を行うことで、ペプチド鎖の伸長に使用した試薬の残留物や副生成物を除去することができる。
いくつかの態様において、本開示における方法は、工程(a)と(b)の間に洗浄工程を含まないか、または任意の回数(特に限定されないが、例えば1〜5回、又は1〜3回)の洗浄工程を含んでよい。いくつかの態様において、工程(a)と(b)の間、及び、工程(a’)と(a)の間のいずれにも洗浄工程を含まないか、又は、任意の回数(特に限定されないが、例えば合計1〜5回、又は合計1〜3回)の洗浄工程を含んでよい。
本開示における洗浄工程で用いられる洗浄方法は特に限定されず、洗浄溶媒、洗浄回数、処理時間などは目的に合わせて適宜選択することができる。該洗浄溶媒としては、特に限定されないが、有機溶媒を使用してよく、例えば、DCM、DMF、NMP、THF、アセトニトリル、イソプロピルアルコール、又はこれらから選択される2以上の組み合わせが挙げられる。また、本開示における塩(塩基Yと酸Zで形成される塩)を含む洗浄溶媒を用いて洗浄をすることにより、本開示における工程(a)と同時に洗浄を行ってもよい。このような洗浄法を本明細書において「塩洗浄」又は「塩洗浄法」と呼ぶことがある。
本開示における方法によれば、そのいくつかの態様において、洗浄回数を減らすことができる。ペプチドの製造方法に関するBachem社のマニュアル(Solid Phase Peptide Synthesis, 2016; table 10)には、工程(a’)と(b)の間に9回の洗浄を行う方法が開示されている。本開示における方法のいくつかの態様によれば、工程(a’)と(b)の間に、工程(a)と同時に洗浄を行う場合(例えば、塩洗浄を行う場合)は当該洗浄のほかに、1回、2回、3回、4回、又は5回の洗浄でも、好ましくない副反応を抑制できる。具体的には、前記工程(a)と(b)の間に洗浄工程を含んでよく、該工程における洗浄回数としては1回、2回、3回、4回、又は5回が例示される。また、仮に従来のペプチド製造方法と同様の洗浄回数を採用したととしても、本開示における方法を用いることにより、過剰伸長の抑制効果が高く、目的とするペプチドを高純度で得ることができる。前記工程(a’)と(a)の間には洗浄工程を含んでもよいが、含まなくてもよい。
本開示における方法は、固相合成法、液相合成法、アンカー法など、ペプチドの合成法の種類に依らず使用できるが、本開示におけるペプチドの製造は、固相合成法により行われることが好ましい。
いくつかの態様において、本開示は、本開示における製造方法により製造されるペプチドを提供する。
いくつかの態様において、本開示における方法を用いることにより、高純度の目的ペプチドを得ることができる。例えば、実施例に記載の方法に準じてLC/MSにより分析した場合に、目的ペプチドを95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は99.5%以上の純度で得ることができる。
いくつかの態様において、本開示における方法により製造されるペプチドは、2以上のアミド結合を有するペプチドであってよい。いくつかの態様において、本開示におけるペプチドの製造方法は、2以上、3以上、又は4以上のアミド結合を有するペプチドの製造方法であってよい。いくつかの態様において、本開示におけるペプチドの製造方法は、連続する3以上、又は4以上のアミノ酸がアミド結合を介して連結したペプチドの製造方法であってよい。
いくつかの態様において、本開示における方法により製造されるペプチドは、N置換アミノ酸を少なくとも一つ、又は、2以上、若しくは3以上含むペプチドであってよい。前記N置換アミノ酸としては、N−アルキルアミノ酸が例示され、N−アルキル(C1−6)アミノ酸、N−アルキル(C1−3)アミノ酸が好ましく、N−メチルアミノ酸がより好ましい。本明細書において、あるアミノ酸を含むペプチドとは、当該アミノ酸残基を含むペプチドを意味してよい。
いくつかの態様において、本開示における方法により製造されるペプチドは、アミノ酸の数が2〜50個のペプチドであってよく、2〜30個、2〜20個、2〜15個のペプチドが例示される。
いくつかの態様において、本開示における方法により環状ペプチドを製造することができる。本開示における方法により、1つの反応点を側鎖に有するアミノ酸残基をC末端側に含み、かつもう1つの反応点を有するアミノ酸残基をN末端側に含むペプチドを製造することができる。このようなペプチドは、例えばC末端側の側鎖に1つの反応点を有するアミノ酸残基が含まれ、N末端側にもう1つの反応点を有するアミノ酸残基が含まれるように、原料を選択することにより製造できる。次に、このペプチドにおける1つの反応点ともう1つの反応点を結合させて環化することができる。このように本開示における方法は、前記環化工程を含み得る。例示的な環化方法は、WO2013/100132に記載されている。
いくつかの態様において、本開示は、本開示における方法において使用するための塩基Xの不活化剤を提供する。該不活化剤は、塩基Yと酸Zで形成される塩を含んでよい。
いくつかの態様において、本開示における不活化剤は、溶媒と混合していてよい。本開示における不活化剤を調製する方法としては、例えば、塩を前記溶媒に溶解してもよく、また、溶媒に対して塩基と酸をそれぞれ加えて、溶液中で塩を形成させてもよい。また、塩基を含む組成物と酸を含む組成物を混合することにより、溶液中で塩を形成させてもよい。前記の塩、又は、塩基と酸を溶解する溶媒としては、特に限定されないが、例えばDCM、DMF、NMPが挙げられる。
本発明は、以下の実施例によってさらに例示されるが、下記の実施例に限定されるものではない。
本実施例に合成法や調製法が特に記載されていない試薬類は和光純薬、東京化成、アルドリッチ等の市販品を購入した。また、ペプチド合成及び、固相合成に用いる反応溶媒はペプチド合成用(渡辺化学、和光純薬から購入)を用いた。例えば、DCM、DMF、NMP、2% DBU in DMF、20% piperidine in DMFなどである。また、水を溶媒として加えない反応では、脱水溶媒、超脱水溶媒、無水溶媒(関東化学、和光純薬などから購入)を用いた。なお、本実施例では、固相支持体を樹脂と呼ぶことがある。
LCMSの分析条件は、表3のとおりである。
Figure 2019117274
実施例1:塩基と酸で形成される塩の調製
実施例1−1:塩酸ジイソプロピルエチルアミン(化合物1、DIPEA・HCl)の調製
Figure 2019117274
ジイソプロピルエチルアミン(5.0 g, 6.8 mL)にジクロロメタン(20 mL)を加え、氷冷下で4 N 塩酸/1,4-ジオキサン溶液(19.3 mL)を滴下した。混合物を氷冷下で10分撹拌した後、減圧下、溶媒を留去した。得られた残渣をさらに室温にて減圧下、乾燥させることで、表題の化合物1(6.4 g)を得た。
1H NMR (BRUKER Ascend 400, 400 MHz, DMSO-d6) δ 10.020 (1H, bs), 3.626-3.551 (2H, m), 3.141-3.076 (2H, m), 1.339-1.276 (15H, m)
実施例1−2:p-トルエンスルホン酸ジイソプロピルエチルアミン(化合物2、DIPEA・TsOH)の調製
Figure 2019117274
TsOH・H2O(5.9 g)にジクロロメタン(20 mL)を加え、氷冷下でジイソプロピルエチルアミン(5.0 g, 6.8 mL)を滴下した。混合物を氷冷下で10分撹拌した後、減圧下、溶媒を留去した。得られた残渣をさらに室温にて減圧下、乾燥させることで、表題の化合物2(9.3 g)を得た。
1H NMR (BRUKER Ascend 400, 400 MHz, DMSO-d6) δ 8.227 (1H, bs), 7.485 (2H, d, J = 8.0), 7.121 (2H, d, J = 8.0), 3.618-3.589 (2H, m), 3.131-3.114 (2H, m), 2.289 (3H, s), 1.263-1.192 (15H, m)
実施例1−3:(化合物3、DIPEA・HOAt)の調製
Figure 2019117274
TsOH・H2O(5.9 g)に代えてHOAt(4.2 g)を使用した以外は実施例1−2に記載の方法に準じ、表題の化合物3(8.2 g)を得た。
1H NMR (BRUKER Ascend 400, 400 MHz, DMSO-d6) δ 10.601 (1H, bs), 8.368 (1H, dd, J = 4.4, 1.2), 8.192 (1H, dd, J = 8.0, 1.6), 7.209 (1H, dd, J = 8.0, 4.4), 3.479 (2H, bs), 2.970 (2H, bs), 1.210-1.149 (15H, m)
実施例1−4:(化合物4、DIPEA・oxyma)の調製
Figure 2019117274
TsOH・H2O(5.9 g)に代えてoxyma(4.4 g)を使用した以外は実施例1−2に記載の方法に準じ、表題の化合物4(8.2 g)を得た。
1H NMR (BRUKER Ascend 400, 400 MHz, DMSO-d6) δ 8.530 (1H, bs), 4.192 (2H, q, J = 6.8), 3.600-3.568 (2H, m), 3.110-3.093 (2H, m), 1.261-1.210 (18H, m)
実施例1−5:(化合物5、DIPEA・HOBt)の調製
Figure 2019117274
TsOH・H2O(5.9 g)に代えてHOBt(4.7 g)を使用した以外は実施例1−2に記載の方法に準じ、表題の化合物5(8.3 g)を得た。
1H NMR (BRUKER Ascend 400, 400 MHz, DMSO-d6) δ 7.760-7.737 (1H, m), 7.447-7.426 (1H, m), 7.241-7.171 (2H, m), 3.459-3.431 (1.6H, m), 2.951-2.934 (1.6H, m), 1.186-1.139 (12H, m)
1H NMRより、化合物5はHOBt (1等量)に対し、DIPEAが0.8等量含まれる混合物として得られ、以下の検討ではこの比率での塩として用いた。
実施例2:ペプチドが担持された固相支持体の調製
実施例2−1:Fmoc-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pip(化合物31)の調製
ペプチドが担持された固相支持体の調製として、N末端がFmocで保護されたアスパラギン酸の側鎖のカルボキシ基と結合した2-クロロトリチル樹脂(Fmoc-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pip, (化合物31))については、文献記載の方法にて合成した。(文献:WO 2013/100132 A1)
Figure 2019117274
本明細書では、固相支持体と化合物が結合した場合、ポリマーや樹脂部位を●で表記する場合がある。また、固相支持体部位との反応点を明確にさせる目的で、●に接続させて反応部位であるリンカーの化学構造を表記させる場合がある。例えば、上記の構造(Fmoc-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pip(化合物31))では、固相支持体の2-クロロトリチル基がAspの側鎖カルボキシ基とエステル結合を介して結合している。なお、pipとはピペリジンを意味し、上記の構造では、C末端のカルボキシ基がピペリジンとアミド結合を形成している。
実施例2−2:自動合成機でのペプチド固相合成による、Fmoc-MePhe-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pip(化合物32)の調製
Figure 2019117274
Fmoc-MePhe-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pip(化合物32)の調製は、ペプチド合成機(Multipep RS; Intavis社製)を用いて、Fmoc法により行った。操作の詳細な手順については合成機に付属のマニュアルに従った。
一例として、調製したFmoc-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pip(化合物31、0.3753 mmol/g)(1カラムあたり100 mg)、Fmoc-MeVal-OH(0.6 mol/L)と1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt, 0.375 mol/L)のNMP溶液、Fmoc-MePhe-OH(0.6 mol/L)と3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン(HOOBt, 0.375 mol/L)のNMP溶液、およびジイソプロピルカルボジイミド(DIC)のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液(10%v/v)を合成機にセットした。
合成を始めるにあたって、セットしたFmoc-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pip(化合物31)(1カラムあたり100 mg)に対し、ジクロロメタン(DCM)を1カラムあたり1 mL加えて1時間程度静置し、樹脂を膨潤させた。続いて樹脂をDMFにて洗浄した。
脱保護工程
1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)のDMF溶液(2%v/v)を1カラムあたり0.7 mLを加えて5〜10分間静置し、脱保護(脱Fmoc)を行った。続いて、樹脂をDMF(1カラムあたり0.7 mL、4回繰り返す)にて洗浄した。
伸長工程
脱保護工程を経た樹脂に対し、セットしたFmoc-アミノ酸溶液(1カラムあたり0.30 mL)とDIC/DMF溶液(1カラムあたり0.36 mL)とを混合した溶液を加え、40度にて静置した。反応完結後、樹脂をDMF(1カラムあたり0.7 mL、4回繰り返す)にて洗浄した。
上記工程にて、1サイクル目でMeValを、2サイクル目でMePheを伸長した。MePheを伸長した後は、脱保護工程を行わずに、さらにDCMにて洗浄し、乾燥させた後、以後の検討に用いた。なお、Fmoc-MePhe-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pip(化合物32)が問題なく調製できていることを確認する目的で、樹脂の一部を取り出し、DCMにて樹脂を再膨潤させた後、TFE/DCM(1/1, v/v)を加えて樹脂からペプチドの切り出しを行い、LCMSにてペプチド(Fmoc-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物50))の生成を確認した。
切り出したペプチド(Fmoc-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物50))
Figure 2019117274
LCMS (ESI) m/z = 697.4 (M+H)+
保持時間:0.96 分(分析条件SQDFA05)
実施例3:洗浄回数を増加することによる過剰伸長の抑制
本実施例は、2%DBU/DMF溶液にて脱Fmocを行った後の樹脂の洗浄回数を増やすことによる過剰伸長の抑制効果を確認するために行われた。
実施例3−1:過剰伸長体の生成確認
本実施例では、100 mg樹脂でのペプチド伸長にて、過剰伸長体が確認された(11 area%(UV)の過剰伸長体が生成)。
フィルター付きの反応容器に、調製したFmoc-MePhe-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pip(化合物32: 0.448 mmol/g)を100 mg入れ、DCM(1 mL)を加えて室温で30分間振とうし、樹脂の膨潤を行った。DCMをフィルターで除去した後、樹脂をDMF(1.0 mL)で2回洗浄した。続いて、樹脂に2% DBU/DMF溶液(脱Fmoc溶液:0.7 mL)を加えて室温にて30分間振とうし、脱Fmocを行った。脱Fmoc溶液を除去した後、DMF(1 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の1回目を実施した。洗浄液を除去した後、洗浄1回目と同様にしてDMFにて樹脂をさらに4回洗浄し、計5回洗浄した。
5回目の洗浄液を除去した後、得られた樹脂に対しSer(tBu)の伸長反応を実施した。伸長反応は0.5 M Fmoc-Ser(tBu)-OH / 0.3125 M HOOBt / NMP溶液(0.18 mL)と10% DIC/DMF溶液(0.216 mL)とを混合した溶液を樹脂に加え、30度にて18時間振とうすることで実施した。伸長反応の液相をフィルターで除去し、樹脂をDMF(1.0 mL)で5回洗浄した後、DCM(1.0 mL)で5回洗浄した。得られた樹脂を反応容器から少量取り出し、TFE/DCM溶液(1/1 (v/v)、DIPEA添加)を加えて室温で振とうさせペプチドの切り出しを行った。切り出した溶液をLCMSにて分析したところ、目的のペプチド(Fmoc-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物51))の生成が89%(UV area)、副生成物である過剰伸長体(Fmoc-Ser(tBu)-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物52))が11%(UV area)確認された。
目的のペプチド(化合物51)
Figure 2019117274
LCMS (ESI) m/z = 840.4 (M+H)+
保持時間:1.02 分(分析条件SQDFA05)
過剰伸長体(化合物52)
Figure 2019117274
LCMS (ESI) m/z = 981.5 (M-H)-
保持時間:1.06分(分析条件SQDFA05)
実施例3−2:洗浄溶媒の多種類化、および洗浄回数の増加による過剰伸長体の生成抑制
本実施例では、100 mg 樹脂で伸長した際にみられた過剰伸長が、洗浄溶媒の多種類化、および洗浄回数の増加の組み合わせによって抑制できることが確認された。
フィルター付きの反応容器に、調製したFmoc-MePhe-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pip(化合物32: 0.448 mmol/g)を100 mg入れ、DCM(1 mL)を加えて室温で30分間振とうし、樹脂の膨潤を行った。DCMをフィルターで除去した後、樹脂をDMF(0.7 mL)で2回洗浄した。続いて、樹脂に2% DBU/DMF溶液(脱Fmoc溶液:0.7 mL)を加えて室温にて30分間振とうし、脱Fmocを行った。脱Fmoc溶液を除去した後、IPA(1 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の1回目を実施した。洗浄液を除去した後、洗浄1回目と同様にして樹脂を計7回洗浄した。なお各洗浄工程で用いた溶媒は以下の通りであった。
Figure 2019117274
7回目の洗浄液を除去した後、得られた樹脂に対しSer(tBu)の伸長反応を実施した。伸長反応は0.5 M Fmoc-Ser(tBu)-OH / 0.3125 M HOOBt / NMP溶液(0.18 mL)と10% DIC/DMF溶液(0.216 mL)とを混合した溶液を樹脂に加え、30度にて19時間振とうすることで実施した。伸長反応の液相をフィルターで除去した後、樹脂をDMF(1.0 mL)で5回洗浄した後、DCM(1.0 mL)で5回洗浄した。得られた樹脂を反応容器から少量取り出し、TFE/DCM溶液(1/1 (v/v))を加えて室温で振とうさせペプチドの切り出しを行った。切り出した溶液をLCMSにて分析したところ、目的のペプチド(Fmoc-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物51))の生成が観測され、副生成物である過剰伸長体(Fmoc-Ser(tBu)-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物52))は確認されなかった。
目的のペプチド(化合物51)
LCMS (ESI) m/z = 840.5 (M+H)+
保持時間:1.02 分(分析条件SQDFA05)
スケールアップ検討として、1 gの樹脂を用いたペプチド合成にて、7回以上の洗浄を適用することとし、実施例3−3の実験を実施した。
実施例3−3:スケールアップの検討
本実施例では、実施例3−2よりも洗浄回数を増加させた、より厳格な洗浄法を適用した場合においても、1 g 樹脂では過剰伸長が検出されることが確認された。
フィルター付きの反応容器に、調製したFmoc-MePhe-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pip(化合物32:0.448 mmol/g)を1.0 g入れ、DCM(7 mL)を加えて室温にて30分間振とうし、樹脂の膨潤を行った。DCMをフィルターで除去した後、樹脂をDMF(7 mL)で2回洗浄した。続いて、樹脂に2% DBU/DMF溶液(脱Fmoc溶液:7.0 mL)を加えて室温にて30分間振とうし、脱Fmocを行った。脱Fmoc溶液を除去した後、IPA(7 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の1回目を実施した。洗浄液を除去した後、洗浄1回目と同様にして樹脂を計10回洗浄した。なお各洗浄工程で用いた溶媒は以下の通りであった。
Figure 2019117274
10回目の洗浄液を除去した後、得られた樹脂に対しSer(tBu)の伸長反応を実施した。伸長反応は0.5 M Fmoc-Ser(tBu)-OH / 0.3125 M HOOBt / NMP溶液(1.8 mL)と10% DIC/DMF溶液(2.16 mL)とを混合した溶液を樹脂に加え、30度にて19時間振とうすることで実施した。伸長反応の液相をフィルターで除去した後、樹脂をDMF(7.0 mL)で5回洗浄した後、DCM(7.0 mL)で5回洗浄した。得られた樹脂を反応容器から少量取り出し、TFE/DCM溶液(1/1 (v/v))を加えて室温で振とうさせペプチドの切り出しを行った。切り出した溶液をLCMSにて分析したところ、目的のペプチド(Fmoc-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物51))が99.92%観測された一方で、副生成物である過剰伸長体(Fmoc-Ser(tBu)-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物52))が0.08%確認された。
目的のペプチド(化合物51)
LCMS (ESI) m/z = 840.3 (M+H)+
保持時間:1.01 分(分析条件SQDFA05)
過剰伸長体(化合物52)
LCMS (ESI) m/z = 981.3 (M-H)-
保持時間:1.07分(分析条件SQDFA05)
実施例3−2、3−3の結果より、小スケールでの検討時に問題とならなかった洗浄回数でも、スケールアップ時や反応容器が変更された際には、同洗浄回数では十分でないケースがあることが判明した。つまり、今回のスケールアップ実験においては、過剰伸長の問題なく伸長を行うためには、さらに洗浄回数を増加させる必要がある。
次の実施例では、洗浄回数の上限をもたせるために、脱Fmocに使用するDBUの塩基性を不活化するべく、脱Fmoc後の樹脂に対し、トリエチルアミン塩酸塩による洗浄工程をはさむこととした。
実施例4:塩洗浄による過剰伸長の抑制
本実施例では、塩洗浄法を適用することで1 g 樹脂でも過剰伸長を抑制できることが確認された。
フィルター付きの反応容器に、調製したFmoc-MePhe-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pip(化合物32: 0.448 mmol/g)を1.0 g入れ、DCM(7 mL)を加えて室温にて30分間振とうし、樹脂の膨潤を行った。DCMをフィルターで除去した後、樹脂をDMF(7 mL)で2回洗浄した。続いて、樹脂に2% DBU/DMF溶液(脱Fmoc溶液:7.0 mL)を加えて室温にて30分間振とうし、脱Fmocを行った。脱Fmoc溶液を除去した後、IPA(7 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の1回目を実施した。洗浄液を除去した後、Et3N・HCl(123.3 mg, 0.896 mmol)を溶解させたDCM(7 mL)を樹脂に加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の2回目を実施した。洗浄液を除去した後、再度Et3N・HCl(123.3 mg, 0.896 mmol)を溶解させたDCM(7 mL)を樹脂に加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の3回目を実施した。洗浄液を除去した後、樹脂にDMF(7 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の4回目を実施した。洗浄液を除去した後、樹脂にDMF(7 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の5回目を実施した。なお各洗浄工程で用いた洗浄溶媒および添加剤は以下の通りであった。
Figure 2019117274
5回目の洗浄液を除去した後、得られた樹脂に対しSer(tBu)の伸長反応を実施した。伸長反応は0.5 M Fmoc-Ser(tBu)-OH / 0.3125 M HOOBt / NMP溶液(1.8 mL)と10% DIC/DMF溶液(2.16 mL)とを混合した溶液を樹脂に加え、30度にて20時間振とうすることで実施した。伸長反応の液相をフィルターで除去した後、樹脂をIPA(7.0 mL)で1回、DMF(7.0 mL)で4回洗浄した後、DCM(7.0 mL)で5回洗浄した。得られた樹脂を反応容器から少量取り出し、TFE/DCM溶液(1/1 (v/v))を加えて室温で振とうさせペプチドの切り出しを行った。切り出した溶液をLCMSにて分析したところ、目的のペプチド(Fmoc-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物51))が99.93%観測され、副生成物である過剰伸長体(Fmoc-Ser(tBu)-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物52))は0.07%であった。
目的のペプチド(化合物51)
LCMS (ESI) m/z = 840.4 (M+H)+
保持時間:1.02 分(分析条件SQDFA05)
過剰伸長体(化合物52)
LCMS (ESI) m/z = 981.4 (M-H)-
保持時間:1.07分(分析条件SQDFA05)
本実験により、DBUによる脱Fmoc後、Et3N・HCl溶液による洗浄(塩洗浄法)にて残存するDBUを不活化することで、洗浄回数を増加させるのと同様に、残存DBUに起因する過剰伸長が抑制できることが示された。すなわち、塩洗浄法を採用することで、脱Fmoc後の洗浄回数や洗浄溶媒量、および洗浄工程にかかる作業時間の低減が可能であると示された。
実施例5:塩洗浄の有無による過剰伸長抑制効果の比較
本実施例では、2%DBU/DMF溶液にて脱Fmocを行った後の樹脂の洗浄に、トリエチルアミン塩酸塩/ジクロロメタン溶液(「塩溶液」と記述する場合がある)を用いた場合と用いない場合で、過剰伸長体の生成を比較した(脱Fmoc後の総洗浄回数として、2回および3回)。
実施例5−1: 塩溶液での洗浄を行わず、有機溶媒(DCM、DMF)のみで洗浄
フィルター付きの反応容器に、調製したFmoc-MePhe-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pip(化合物32: 0.3753 mmol/g)を100 mg入れ、ジクロロメタン(1 mL)を加えて室温にて1時間振とうし、樹脂の膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、樹脂をDMF(0.7 mL)で2回洗浄した。続いて、樹脂に2% DBU/DMF溶液(脱Fmoc溶液:0.7 mL)を加えて室温にて10分間振とうし、脱Fmocをおこなった。脱Fmoc溶液を除去した後、樹脂にジクロロメタン(1 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の1回目を実施した。洗浄液を除去した後、樹脂にDMF(0.7 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の2回目を実施した。洗浄液を除去した後、3回目の洗浄を実施する場合には、樹脂にDMF(0.7 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄液を除去した。
得られた樹脂に対し、Ser(tBu)の伸長反応を実施した。伸長反応は0.6 M Fmoc-Ser(tBu)-OH / 0.375 M HOAt / NMP溶液(0.3 mL)と10% DIC/DMF溶液(0.36 mL)とを混合した溶液を樹脂に加え、40度にて2.5時間振とうすることで実施した。伸長反応の液相をフィルターで除去した後、樹脂をDMF(0.7 mL)で4回、ジクロロメタン(0.7 mL)で4回洗浄した。得られた樹脂をTFE/DCM溶液(1/1 (v/v)で処理することによりペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析したところ、以下の結果となり、目的ペプチド(Fmoc-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物51))に加えて過剰伸長体(Fmoc-Ser(tBu)-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物52))の生成が検出された。
Figure 2019117274
目的ペプチド(化合物51)
LCMS (ESI) m/z = 840.5 (M+H)+
保持時間:1.02分(分析条件SQDFA05)
過剰伸長体(化合物52)
LCMS (ESI) m/z = 981.5 (M-H)-
保持時間:1.06分(分析条件SQDFA05)
実施例5−2: 0.08 M トリエチルアミン塩酸塩/ジクロロメタン溶液での洗浄
フィルター付きの反応容器に、調製したFmoc-MePhe-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pip(化合物32: 0.3753 mmol/g)を100 mg入れ、ジクロロメタン(1 mL)を加えて室温にて1時間振とうし、樹脂の膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、樹脂をDMF(0.7 mL)で2回洗浄した。続いて、樹脂に2% DBU/DMF溶液(脱Fmoc溶液:0.7 mL)を加えて室温にて10分間振とうし、脱Fmocを行った。脱Fmoc溶液を除去した後、樹脂に0.08 M トリエチルアミン塩酸塩/ジクロロメタン溶液(1 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の1回目を実施した。洗浄液を除去した後、樹脂にDMF(0.7 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の2回目を実施した。洗浄液を除去した後、3回目の洗浄を実施する場合には、樹脂にDMF(0.7 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄液を除去した。得られた樹脂に対し、Ser(tBu)の伸長反応を実施した。
伸長反応は0.6 M Fmoc-Ser(tBu)-OH / 0.375 M HOAt / NMP溶液(0.3 mL)と10% DIC/DMF溶液(0.36 mL)とを混合した溶液を樹脂に加え、40度にて2.5時間振とうすることで実施した。伸長反応の液相をフィルターで除去した後、樹脂をDMF(0.7 mL)で4回、ジクロロメタン(0.7 mL)で4回洗浄した。得られた樹脂をTFE/DCM溶液(1/1 (v/v))にてペプチドからの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析したところ、目的ペプチド(Fmoc-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物51))のみが検出され、過剰伸長体(Fmoc-Ser(tBu)-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物52))は検出されなかった。
Figure 2019117274
以上の通り、脱Fmoc後の樹脂の洗浄工程において、塩洗浄を実施せずに有機溶媒のみで洗浄した場合には、3回洗浄した後にも過剰伸長体の生成が2.8%確認されたのに対し、塩洗浄を実施した場合には、2回の洗浄においても過剰伸長体の生成はなく、目的ペプチドのみが高純度で得られた。脱Fmoc後の洗浄工程に塩洗浄法を適用することによって、洗浄回数の低減をしつつも高純度なペプチドを取得できることが確認された。
実施例6. 塩基と塩を形成する酸の種類、及び溶媒の種類の検討
本実施例では、2%DBU/DMF溶液にて脱Fmocを行った後の樹脂の洗浄に、様々な塩基と酸で形成される塩の溶液(「塩溶液」と記述する場合がある)を用いた場合の洗浄効果を確認した。
実施例6−1:DIPEAと酸で形成される塩を溶解させた溶液での洗浄
フィルター付きの反応容器に、調製したFmoc-MePhe-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pip(化合物32: 0.3753 mmol/g)を100 mg入れ、ジクロロメタン(1 mL)を加えて室温にて1時間振とうし、樹脂の膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、樹脂をDMF(0.7 mL)で2回洗浄した。続いて、樹脂に2% DBU/DMF溶液(脱Fmoc溶液:0.7 mL)を加えて室温にて10分間振とうし、脱Fmocを行った。脱Fmoc溶液を除去した後、樹脂に下記表中の塩と有機溶媒の溶液(いずれも0.08 M, 1 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の1回目を実施した。洗浄液を除去した後、樹脂にDMF(0.7 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の2回目を実施した。洗浄液を除去した後、得られた樹脂に対し、Ser(tBu)の伸長反応を実施した。
伸長反応は0.6 M Fmoc-Ser(tBu)-OH / 0.375 M HOAt / NMP溶液(0.3 mL)と10% DIC/DMF溶液(0.36 mL)とを混合した溶液を樹脂に加え、40度にて2.5時間振とうすることで実施した。伸長反応の液相をフィルターで除去した後、樹脂をDMF(0.7 mL)で4回、ジクロロメタン(0.7 mL)で4回洗浄した。得られた樹脂をTFE/DCM溶液(1/1 (v/v))で処理することによりペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析したところ、いずれにおいても過剰伸長体(Fmoc-Ser(tBu)-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物52))の生成はなく、目的ペプチド(Fmoc-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物51))のみが高純度で得られた。この結果より、塩を形成する酸として様々な種類の酸を用いることができ、また様々な溶媒を用いることが可能であることが確認された。
Figure 2019117274
実施例6−2:溶媒中で塩を形成させる方法の検討
本実施例では、あらかじめ調製した塩を溶媒に溶解させて塩溶液を調製するのではなく、溶媒に対して塩基(2,4,6-トリメチルピリジン)と酸(oxyma)をそれぞれ溶解させて塩溶液を調製し、洗浄を行った。
DMF (およそ10 mL)に対して、2,4,6-トリメチルピリジン(2,4,6-collidine)(121.2 mg)とoxyma(142.1 mg)を逐次的に溶解させた後、溶液全体が12 mLとなるようDMFを加え、0.08 M 2,4,6-トリメチルピリジン・oxyma塩/DMF溶液を調製した。
フィルター付きの反応容器に、調製したFmoc-MePhe-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pip(化合物32: 0.3753 mmol/g)を100 mg入れ、ジクロロメタン(1 mL)を加えて室温にて1時間振とうし、樹脂の膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、樹脂をDMF(0.7 mL)で2回洗浄した。続いて、樹脂に2% DBU/DMF溶液(脱Fmoc溶液:0.7 mL)を加えて室温にて10分間振とうし、脱Fmocを行った。脱Fmoc溶液を除去した後、樹脂に調製した0.08 M 2,4,6-トリメチルピリジン・oxyma塩/DMF溶液(1 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の1回目を実施した。洗浄液を除去した後、樹脂にDMF(0.7 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の2回目を実施した。洗浄液を除去した後、得られた樹脂に対し、Ser(tBu)の伸長反応を実施した。
伸長反応は0.6 M Fmoc-Ser(tBu)-OH / 0.375 M HOAt / NMP溶液(0.3 mL)と10% DIC/DMF溶液(0.36 mL)とを混合した溶液を樹脂に加え、40度にて2.5時間振とうすることで実施した。伸長反応の液相をフィルターで除去した後、樹脂をDMF(0.7 mL)で4回洗浄し、未反応点のキャッピングを実施した。キャッピングは0.6 M Fmoc-Gly-OH / 0.375 M HOAt / NMP溶液(0.3 mL)と10% DIC/DMF溶液(0.36 mL)とを混合した溶液を樹脂に加え、40度にて14時間振とうすることで実施した。キャッピング溶液の液相をフィルターで除去した後、樹脂をDMF(0.7 mL)で4回、ジクロロメタン(0.7 mL)で4回洗浄した。得られた樹脂をTFE/DCM溶液(1/1 (v/v))で処理することによりペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析したところ、過剰伸長体(Fmoc-Ser(tBu)-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物52))の生成は検出されず、またFmoc-Gly-OHにてキャッピングされた生成物(Fmoc-Gly-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物53))も検出されず、目的ペプチド(Fmoc-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物51))のみが高純度で得られた。この結果より、予め塩を調製しなくても、溶媒に対して塩基と酸をそれぞれ溶解させ、溶媒中で塩を形成させることで過剰伸長体の生成を抑制でき、高純度なペプチドを取得できることが確認された。
実施例6−3: 0.08 M ピリジン塩酸塩/ジクロロメタン溶液での洗浄
フィルター付きの反応容器に、調製したFmoc-MePhe-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pip(化合物32: 0.3753 mmol/g)を100 mg入れ、ジクロロメタン(1 mL)を加えて室温にて1時間振とうし、樹脂の膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、樹脂をDMF(0.7 mL)で2回洗浄した。続いて、樹脂に2% DBU/DMF溶液(脱Fmoc溶液:0.7 mL)を加えて室温にて10分間振とうし、脱Fmocをおこなった。脱Fmoc溶液を除去した後、樹脂に0.08 M ピリジン塩酸塩/ジクロロメタン溶液(1 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の1回目を実施した。洗浄液を除去した後、樹脂にDMF(0.7 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の2回目を実施した。洗浄液を除去した後、得られた樹脂に対し、Ser(tBu)の伸長反応を実施した。
伸長反応は0.6 M Fmoc-Ser(tBu)-OH / 0.375 M HOAt / NMP溶液(0.3 mL)と10% DIC/DMF溶液(0.36 mL)とを混合した溶液を樹脂に加え、40度にて2.5時間振とうすることで実施した。
伸長反応の液相をフィルターで除去した後、樹脂をDMF(0.7 mL)で4回洗浄し、未反応点のキャッピングを実施した。キャッピングは0.6 M Fmoc-Gly-OH / 0.375 M HOAt / NMP溶液(0.3 mL)と10% DIC/DMF溶液(0.36 mL)とを混合した溶液を樹脂に加え、40度にて14時間振とうすることで実施した。キャッピング溶液の液相をフィルターで除去した後、樹脂をDMF(0.7 mL)で4回、ジクロロメタン(0.7 mL)で4回洗浄した。得られた樹脂をTFE/DCM溶液(1/1 (v/v))で処理することによりペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析したところ、過剰伸長体(Fmoc-Ser(tBu)-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物52))は確認されなかったものの、目的のペプチド(Fmoc-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物51))は80.3%にとどまり、Fmoc-Glyによるキャッピング体(Fmoc-Gly-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物53))の生成が17.4%確認された。
Fmoc-Glyによるキャッピング体(化合物53)
Figure 2019117274
LCMS (ESI) m/z = 754.4 (M+H)+
保持時間:0.92分(分析条件SQDFA05)
ピリジンの共役酸のpKaは5.21と報告されている(D.H. Ripin, D.A. Evans, pKa’s of Nitrogen Acids,[online], [2017年12月5日検索]、インターネット<URL:http://evans.rc.fas.harvard.edu/pdf/evans_pKa_table.pdf>)。特定の理論に拘束されることを意図しないが、塩洗浄によって残留DBUだけでなく、N末端に露出したアミノ基にも塩化が進行し、反応速度が低下したことが示唆された。
実施例6−4: 0.08 M DIPEA・HFIP塩/DMF溶液での洗浄
DMF (およそ10 mL)に対して、DIPEA(DIEA)(129.3 mg)とHFIP(168.0 mg)を逐次的に溶解させた後、溶液全体が12 mLとなるようDMFを加え、0.08 M DIPEA・HFIP塩/DMF溶液を調製した。
フィルター付きの反応容器に、調製したFmoc-MePhe-MeVal-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pip(化合物32: 0.3753 mmol/g)を100 mg入れ、ジクロロメタン(1 mL)を加えて室温にて1時間振とうし、樹脂の膨潤をおこなった。ジクロロメタンをフィルターで除去した後、樹脂をDMF(0.7 mL)で2回洗浄した。続いて、樹脂に2% DBU/DMF溶液(脱Fmoc溶液:0.7 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、脱Fmocを行った。脱Fmoc溶液を除去した後、樹脂に調製した0.08 M DIPEA・HFIP塩/DMF溶液(1 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の1回目を実施した。洗浄液を除去した後、樹脂にDMF(0.7 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の2回目を実施した。洗浄液を除去した後、得られた樹脂に対し、Ser(tBu)の伸長反応を実施した。
伸長反応は0.6 M Fmoc-Ser(tBu)-OH / 0.375 M HOAt / NMP溶液(0.3 mL)と10% DIC/DMF溶液(0.36 mL)とを混合した溶液を樹脂に加え、40度にて2.5時間振とうすることで実施した。伸長反応の液相をフィルターで除去した後、樹脂をDMF(0.7 mL)で4回洗浄し、続いてジクロロメタン(0.7 mL)で4回洗浄した。得られた樹脂をTFE/DCM溶液(1/1 (v/v))で処理することによりペプチドの切り出しを行い、切り出した溶液をLCMSにて分析したところ、目的ペプチド(Fmoc-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物51))が97.91% (LC UVarea)確認されたと同時に、過剰伸長体(Fmoc-Ser(tBu)-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物52))の生成が2.09% (LC UVarea)確認された。目的ペプチド(Fmoc-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp-pip(化合物51))のみが高純度で得られた。
HFIPのpKa値は9.3であることが文献にて知られている(Tetrahedron Asymmetry, 2012, 23, 1023-1027)。塩洗浄において塩を形成する酸のpKa値が9程度では、残留DBUを不活化するには不十分であるということが示された。
実施例7: 塩洗浄法を適用したスケールアップ・ペプチド合成(すべての脱Fmoc工程の際に塩洗浄法を適用、60 gの樹脂を使用)
脱Fmoc工程
フィルター付きの反応容器に、調製したFmoc-Asp(O-Trt(2-Cl)-resin)-pip(化合物31: 0.461 mmol/g)を60 g入れ、DCM(600 mL)を加えて室温にて30分振とうし、樹脂の膨潤を行った。DCMをフィルターで除去した後、樹脂をDMF(600 mL)で2回洗浄した。続いて、樹脂に2% DBU/DMF溶液(脱Fmoc溶液:420 mL)を加えて室温にて30分間振とうし、脱Fmocを行った。脱Fmoc溶液を除去した後、IPA(420 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の1回目を実施した。洗浄液を除去した後、樹脂にEt3N・HCl(7.61 g, 55.3 mmol)を溶解させたDCM(420 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の2回目を実施した。洗浄液を除去した後、再度樹脂にEt3N・HCl(7.61 g, 55.3 mmol)を溶解させたDCM(420 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の3回目を実施した。洗浄液を除去した後、樹脂にDMF(420 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の4回目を実施した。洗浄液を除去した後、樹脂にDMF(420 mL)を加えて室温にて5分間振とうし、洗浄の5回目を実施した。洗浄液を除去した後、得られた樹脂に対し、MePheの伸長反応を実施した。
伸長工程
伸長反応は0.5 M Fmoc-MePhe-OH / 0.3125 M HOAt / NMP溶液(110.8 mL)と10% DIC/DMF溶液(134.2 mL)とを混合した溶液を樹脂に加え、30度にて13時間振とうすることで実施した。伸長反応の液相をフィルターで除去した後、樹脂をIPA(420 mL)、DMF(420 mL)、IPA(420 mL)、DMF(420 mL)と4回洗浄した後、DCM(420 mL)で3回洗浄した。
反応の転換率を確認するために、反応容器から少量の樹脂(約100 mg)を取り出し、DCMで膨潤、DMFで2回洗浄し、未反応点のキャッピングを実施した。キャッピングは0.6 M Fmoc-Gly-OH / 0.375 M HOAt / NMP溶液(0.3 mL)と10% DIC/DMF溶液(0.36 mL)とを混合した溶液を樹脂に加え、室温で1時間振とうすることで実施した。キャッピング溶液の液相をフィルターで除去した後、樹脂をIPA、DMF、IPA、DMFと4回洗浄した後、DCMで3回洗浄した。
得られた樹脂にTFE/DCM溶液(1/1 (v/v))を加えて室温で振とうさせペプチドの切り出しを行った。切り出した溶液をLCMSにて分析し、目的のペプチド(Fmoc-MePhe-Asp-pip (化合物54))の生成を確認した。その際、目的の伸長が進行せず、Fmoc-Gly-OHでペプチドのN末端がキャッピングされた未伸長体(Fmoc-Gly-Asp-pip (化合物55))は観測されなかった。
目的のペプチド(化合物54)
Figure 2019117274
LCMS (ESI) m/z = 584.2 (M+H)+
保持時間:0.89 分(分析条件SQDFA05)
Fmoc-Glyでキャッピングされた未伸長体(化合物55)
Figure 2019117274
以下、同様に脱Fmoc工程と伸長工程を繰り返してペプチド伸長を行い、N末端のFmoc基を除去したのちにTFE/DCM(1/1(v/v))を用いて樹脂から切り出すことで、目的のペプチドであるD-Ala-MeLeu-MeAla-MePhe-Ser(tBu)-MePhe-Leu-MeLeu-Thr(THP)-MePhe-Asp-pip(化合物56)の生成を確認した。なお各伸長工程で用いたアミノ酸と添加剤の種類、反応温度および反応時間は以下の通りであった。転換率は、以下の式により算出した。
(数1)
転換率(%)= (目的のFmocアミノ酸が導入されたペプチドのピークのLC UVarea%)×100 / {(目的のFmocアミノ酸が導入されたペプチドのピークのLC UVarea%)+(Fmoc-Glyで未反応点をキャッピングしたペプチドのピークのLC UVarea%)}
目的のペプチド(化合物56)
Figure 2019117274
LCMS (ESI) m/z = 1535.9 (M+H)+
保持時間:0.81 分(分析条件SQDFA05)
Figure 2019117274
本合成においては、それぞれの伸長工程において、過剰伸長体は検出されなかった。このため本開示における塩洗浄法は、伸長させるアミノ酸の種類に依らず適用可能であることが確認された。また、スケールアップ時にも高純度なペプチドを合成する上で有効な手法であることが示された。
なお、上記伸長で得られたペプチド(化合物56)を下記のスキームに従って樹脂からの切り出し、環化、脱保護を行い、逆相精製することで環化ペプチド(化合物57、7.08 g、98.05% purity (UV area))が得られた。
Figure 2019117274
環化ペプチド(化合物57)
Figure 2019117274
LCMS (ESI) m/z = 1433.9 (M+H)+
保持時間:0.76 分(分析条件SQDFA50)
本発明は、ペプチドの製造方法、並びに、ペプチドの製造方法における塩基の処理方法、及び塩基の不活化剤等に関する。本発明は、例えば、ペプチドの化学合成における製造時間及び設備占有時間の短時間化、コストの減少等において有用である。また本発明は、例えば副生成物の減少および目的ペプチドの純度の増加において有用である。

Claims (15)

  1. ペプチドの製造方法であって、該方法は以下の工程:
    (a)塩基X、アミノ基含有化合物、及び、塩基Yと酸Zで形成される塩を共存させる工程;及び
    (b)前記工程(a)の後に、前記アミノ基含有化合物、及び、保護基Pによりアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドを共存させ、ペプチド鎖を伸長させる工程;
    を含み、ここで前記塩基Yの共役酸のpKaが、前記塩基Xの共役酸のpKaよりも小さい、前記方法。
  2. ペプチドの製造における塩基Xの処理方法であって、該方法は請求項1に記載の工程(a)を含み、ここで前記塩基Yの共役酸のpKaが、前記塩基Xの共役酸のpKaよりも小さい、前記方法。
  3. さらに請求項1に記載の工程(b)を含む、請求項2に記載の方法。
  4. 前記工程(a)の前に、さらに以下の工程:
    (a’)保護基Qにより保護されたアミノ基含有化合物の該保護基Qを前記塩基Xで除去する工程;
    を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 請求項1における前記保護基P、又は、請求項4における前記保護基P及びQが塩基により除去可能な保護基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記塩基により除去可能な保護基が、Fmoc骨格を有する保護基である請求項5に記載の方法。
  7. 前記塩基Xが、アミン、アミジン骨格を有する塩基、及びグアニジン骨格を有する塩基からなる群より選択される少なくとも一種の塩基である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記アミノ基含有化合物が、(i)固相支持体と結合しているアミノ基含有化合物、又は、(ii)保護基により保護されたカルボキシ基を有するアミノ基含有化合物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記塩基Yの共役酸のpKaが5.0以上である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記酸Zが、pKaが5.0以下の酸である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記塩基Yの共役酸のpKaが、前記酸ZのpKaよりも大きい、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記アミノ基含有化合物が、遊離の第一級アミノ基又は遊離の第二級アミノ基を少なくとも一つ有するアミノ酸又はペプチドである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記工程(a’)〜(b)を2回以上繰り返す、請求項4〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 請求項1又は請求項4〜13のいずれか一項に記載の方法によって製造されるペプチド。
  15. 請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法において使用するための塩基Xの不活化剤であって、該不活化剤は塩基Yと酸Zで形成される塩を含む、前記不活化剤。
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