JPWO2019107456A1 - Ni基合金の製造方法及びNi基合金 - Google Patents

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Abstract

Mo偏析を低減できるNi基合金の製造方法を提供する。本実施形態によるNi基合金の製造方法は、Ni基合金の原料である液体合金を鋳造してNi基合金素材を製造する鋳造工程と、鋳造工程により製造されたNi基合金素材に対して、均熱処理、又は、均熱処理と、熱間加工と熱間加工後の均熱処理とを含む複合処理と、を実施し、式(1)を満たす偏析低減工程とを備える。ここで、式(1)中の各記号は次のとおりである。VR:鋳造工程における液体合金の凝固冷却速度(℃/min)Tn:n回目の均熱処理における均熱温度(℃)tn:n回目の均熱処理における均熱温度での保持時間(hr)Rdn-1:n回目の均熱処理前のNi基合金素材の累積断面減少率(%)N:均熱処理の総回数

Description

本発明は、Ni基合金の製造方法及びNi基合金に関する。
油井精製設備や化学プラント設備、及び、地熱発電設備等で使用される部材は、硫化水素、二酸化炭素、及び、各種の酸液等を含有する高温腐食環境に曝される。高温腐食環境は、最大で1100℃程度になる場合もある。そのため、高温腐食環境の設備に使用される部材では、高温での優れた強度が要求されるとともに、優れた耐食性が要求される。
上記設備用途に使用可能な材料として、Cr及びMoを多く含有したNi基合金が知られている。このNi基合金は、Cr、Moの含有により、優れた耐食性を有する。
ところで、Ni基合金には複数種類の合金元素が含有される。そのため、溶製された液体合金を鋳造する工程において、合金元素が、凝固時に生成するデンドライトの二次アーム間に濃化する場合がある。この場合、Ni基合金には、偏析が発生する。特に、耐食性を高める効果を有するMoは偏析しやすい。Moが偏析すれば、Ni基合金の耐食性が低下する。
Ni基合金の偏析を抑制する方法が、国際公開第2010/038680号(特許文献1)に提案されている。この文献では、真空溶解によりNi基合金の液体合金を溶製する。そして、液体合金を鋳造してNi基合金素材を製造する。さらに、必要に応じて、Ni基合金素材に対して真空アーク再溶解(Vacuum Arc Remelting:VAR)又はエレクトロスラグ再溶解(Electro−Slag Remelting:ESR)等の二次溶解を実施して、より一層の偏析抑制効果を得る。続いて、Ni基合金素材に対して、1160〜1220℃にて1〜100時間の均質化処理を実施する。これにより、Ni基合金の偏析が抑制される、と特許文献1には記載されている。
国際公開第2010/038680号 特開昭60−211029号公報
特許文献1では、真空溶解による一次溶解を実施し、さらに、必要に応じてVAR又はESR等の二次溶解を実施した後、長時間の均質化処理を実施する。そのため、特許文献1の製造方法を採用した場合、製造コストが高くなる場合がある。したがって、Ni基合金において、Mo偏析を低減できる他の方法があってもよい。
本発明の目的は、Mo偏析を低減できるNi基合金の製造方法及びNi基合金を提供することである。
本発明によるNi基合金の製造方法は、
液体合金を鋳造して、
化学組成が、質量%で、
C:0.100%以下、
Si:0.50%以下、
Mn:0.50%以下、
P:0.015%以下、
S:0.0150%以下、
Cr:20.0〜23.0%、
Mo:8.0〜10.0%、
Nb及びTaからなる群から選択される1元素以上:3.150〜4.150%、
Ti:0.05〜0.40%、
Al:0.05〜0.40%、
Fe:0.05〜5.00%、
N:0.100%以下、
O:0.1000%以下、
Co:0〜1.00%、
Cu:0〜0.50%、
Ca、Nd及びBからなる群から選択される1元素以上:0〜0.5000%、及び、
残部はNi及び不純物からなるNi基合金素材を製造する鋳造工程と、
鋳造工程により製造されたNi基合金素材に対して、
均熱処理、又は、
均熱処理と、均熱処理後に、熱間加工と熱間加工後の均熱処理とを含む複合処理と、
を実施し、式(1)を満たす偏析低減工程とを備える。
Figure 2019107456
ここで、式(1)中の各記号は次のとおりである。
R:鋳造工程における液体合金の凝固冷却速度(℃/min)
n:n回目の均熱処理における均熱温度(℃)
n:n回目の均熱処理における均熱温度での保持時間(hr)
Rdn-1:n回目の均熱処理前のNi基合金素材の累積断面減少率(%)
N:均熱処理の総回数
本発明によるNi基合金は、
化学組成が、質量%で、
C:0.100%以下、
Si:0.50%以下、
Mn:0.50%以下、
P:0.015%以下、
S:0.0150%以下、
Cr:20.0〜23.0%、
Mo:8.0〜10.0%、
Nb及びTaからなる群から選択される1元素以上:3.150〜4.150%、
Ti:0.05〜0.40%、
Al:0.05〜0.40%、
Fe:0.05〜5.00%、
N:0.100%以下、
O:0.1000%以下、
Co:1.0%以下、
Cu:0.50%以下、
Ca、Nd及びBからなる群から選択される1元素以上:0〜0.5000%、及び、
残部がNi及び不純物からなり、
Ni基合金の長手方向に垂直な断面において、Moの平均濃度が質量%で8.0%以上であり、Mo濃度の最大値が質量%で11.0%以下であり、さらに、Mo濃度が質量%で8.0%未満の領域の面積率が2.0%未満である。
本発明によるNi基合金の製造方法は、Ni基合金のMo偏析を低減できる。本発明によるNi基合金は、Mo偏析が抑制されており、優れた耐食性を有する。
図1は、鋳造工程における、凝固中のNi基合金の模式図である。 図2は、図1中のデンドライトと、Ni基合金のMo濃度との関係を示す図である。 図3は、本発明の化学組成を有するNi基合金素材(鋳造材)において、デンドライト二次アーム間隔DIIと凝固冷却速度VRとの関係を示す図である。 図4は、本発明の化学組成を有するNi基合金における、F1(=式(1)の右辺−式(1)の左辺)と腐食速度との関係を示す図である。 図5Aは、偏析低減工程において、44.6%の断面減少率で熱間加工を1回実施した場合のNi基合金のミクロ組織観察画像である。 図5Bは、偏析低減工程において、31.3%の断面減少率で熱間加工を1回実施した場合のNi基合金のミクロ組織観察画像である。 図6は、第2の実施形態によるNi基合金内のEPMA画像である。 図7は、Ni基合金におけるF2=(Ca+Nd+B)/Sと、大気中、900℃において歪速度10/秒で引張試験をした場合に得られる破断絞り(%)との関係を示す図である。
本発明者らは、高温腐食環境において優れた耐食性を得るためには、Mo含有量が高いNi基合金が適切であって、具体的には、質量%で、C:0.100%以下、Si:0.50%以下、Mn:0.50%以下、P:0.015%以下、S:0.0150%以下、Cr:20.0〜23.0%、Mo:8.0〜10.0%、Nb及びTaからなる群から選択される1元素以上:3.150〜4.150%、Ti:0.05〜0.40%、Al:0.05〜0.40%、Fe:0.05〜5.00%、N:0.100%以下、O:0.1000%以下、Co:0〜1.00%、Cu:0〜0.50%、Ca、Nd及びBからなる群から選択される1元素以上:0〜0.5000%、及び、残部はNi及び不純物からなる化学組成を有するNi基合金が適切であると考えた。そこで、本発明者らは、上述の化学組成を有する高MoのNi基合金におけるMo偏析の低減方法について、調査及び検討を行った。その結果、本発明者らは、次の知見を得た。
[デンドライト二次アーム間隔と、鋳造工程における凝固冷却速度との関係]
上述の化学組成を有するNi基合金におけるMoの濃度分布は、鋳造工程における最終凝固段階で形成されるデンドライト二次アーム間隔と相関関係を有する。
図1は、鋳造工程における、凝固中のNi基合金の模式図である。図1を参照して、鋳造工程では、鋳型13内の液体合金が冷却されて凝固が進行する。具体的には、鋳型13近傍部分が凝固して固相11の形成が進む。さらに、液相10内において、凝固が進行中の部分では、デンドライト12が形成されている。
図2は、図1中のデンドライト12と、Ni基合金中のMo濃度との関係を示す図である。図2を参照して、鋳造後のNi基合金素材(鋳造材)中のMo濃度分布のうち、Mo濃度が高い部分をMo偏析の正偏析部と定義し、Mo濃度が低い部分をMo偏析の負偏析部と定義する。そして、隣り合うMo偏析の間隔(正偏析部間の間隔、又は、負偏析部間の間隔)を、Mo偏析間距離Dsと定義する。図2に示すとおり、Mo偏析間距離Dsは、デンドライト二次アーム間隔DIIに対応する。図2では、一例として、Mo偏析間距離Dsは、デンドライト二次アーム間隔DIIと一致している。
図3は、上述の化学組成を有するNi基合金素材(鋳造材)において、デンドライト二次アーム間隔DIIと凝固冷却速度VRとの関係を示す図である。図3は、次の方法で求めた。Ni基合金の液体合金を溶製した。そして、種々の凝固冷却速度VRで常温(25℃)まで冷却して、上述の化学組成を有するNi基合金素材(インゴット)を複数製造した。この実験では、凝固冷却速度VRは、鋳造開始時の液体溶液温度から凝固が完了するまでの温度範囲(温度範囲は1290℃)の平均の冷却速度(℃/min)で定義した。冷却中のNi基合金の温度は、消耗型熱電対を用いて測定した。
ここで、本明細書において、Ni基合金素材の長手方向に垂直な断面を「横断面」と定義し、横断面におけるNi基合金素材の幅をWと定義する。横断面が長方形状である場合、横断面の長辺を幅Wと定義する。横断面が円形状である場合、直径を幅Wと定義する。また、横断面において、幅W方向と垂直な表面から幅W方向にW/4深さ位置の領域を、「W/4深さ位置」と定義する。
製造されたNi基合金素材を長手方向に垂直な方向に切断した。そして、横断面のW/4深さ位置において、デンドライト二次アーム間隔DII(μm)を測定した。具体的には、W/4深さ位置からサンプルを採取した。サンプルの表面のうち、上記横断面と平行な表面に対して鏡面研磨を実施した後、王水にてエッチングした。エッチングされた表面を400倍の光学顕微鏡で観察して、200μm×200μmの観察視野の写真画像を生成した。得られた写真画像を用いて、観察視野内の任意の20ヶ所のデンドライト二次アーム間隔(μm)を測定した。測定されたデンドライト二次アーム間隔の平均を、デンドライト二次アーム間隔DII(μm)と定義した。求めた凝固冷却速度VRと、デンドライト二次アーム間隔DIIとを用いて、図3を作成した。
図3を参照して、上述の化学組成のNi基合金素材では、凝固冷却速度VRが速くなるにしたがい、デンドライト二次アーム間隔DIIは狭くなる。図3の結果に基づいて、上述の化学組成のNi基合金素材において、デンドライト二次アーム間隔DII(μm)は、凝固冷却速度VR(℃/min)を用いて、次の式(A)で定義できる。
II=182VR -0.294 (A)
[均熱処理におけるMoの拡散距離]
鋳造工程により製造されたNi基合金素材に対して、均熱処理を実施する場合を想定する。このとき、Ni基合金素材中のMoの拡散距離は次のとおり定義できる。
拡散方程式は、次の式(B)で定義される。
σ2=2D×t (B)
ここで、式(B)中のσは上述の化学組成のNi基合金素材中において、時間t(hr)でMoが移動する平均距離(以下、拡散距離という:単位はμm)である。また、式(B)中のDは、Moの拡散係数であり、式(C)のアレニウスの式で定義される。
D=D0exp(−Q/R(T+273)) (C)
式(C)中のQはMo拡散の活性化エネルギーである。また、Rは気体定数であり、Tは温度(℃)である。D0は、Ni基合金中でのMoの定数(振動数因子)である。
Doは次の実験により求めた。上述の化学組成を有するNi基合金素材に対して、1248℃で48時間の均熱処理を実施した。そして、均熱処理後でのNi基合金中のMoの拡散距離σを求めた。より詳細には、次の実験を実施した。上述の方法により、均熱処理前のNi基合金素材のデンドライト二次アーム間隔DIIを測定した。測定後、Ni基合金素材を均熱温度1248℃で保持した。このとき、種々の保持時間での均熱処理を実施した。均熱処理後、Ni基合金素材のW/4深さ位置において、Moの正偏析部と負偏析部のMo濃度差を測定した。均熱処理での保持時間ごとのMoの正偏析部と負偏析部との濃度差を求めた。そして、濃度差が1.0質量%以下になる保持時間tを求めた。なお、試験で用いたNi基合金素材のNi基合金のデンドライト二次アーム間隔DIIはいずれも120.6μmであった。Moの拡散距離σ=DII/2であるため、Mo拡散距離σは60.3μmとした。上述の試験の結果、均熱温度が1248℃で保持時間tを48時間とする均熱処理をした場合、Moの正偏析部と負偏析部との濃度差が1.0質量%以下になった。
上記実験により得られた事項(拡散距離σが60.3μmの場合、温度T=1248℃、保持時間t=48時間とすれば、Moの正偏析部と負偏析部との濃度差が1.0質量%以下となるという実験結果)と、1050〜1360℃の範囲でのMoの活性化エネルギーQ=240kJ/molと、式(B)及び式(C)に基づいて、均熱温度T(℃)、保持時間t(hr)でのMoの拡散距離σは、次の式(D)のとおりとなる。なお、活性化エネルギーについては、オーステナイト鋼での上記温度範囲でのMoの活性化エネルギー値を、Ni基合金におけるMoの活性化エネルギー値として代替する。
Figure 2019107456
[デンドライト二次アーム間隔DIIとMoの拡散距離σとの関係]
式(A)及び式(D)を参照して、上記式(D)で定義される、均熱処理でのMoの拡散距離σが、式(A)で定義されるデンドライト二次アーム間隔DII(つまり、Mo偏析間距離Ds)の1/2以上となれば、均熱処理により、Mo偏析を十分に改善できると考えられる。つまり、均熱温度T(℃)、保持時間t(hr)、凝固冷却速度VR(℃/min)が式(0)を満たせば、均熱処理において、Mo偏析が十分に低減される。
Figure 2019107456
[熱間加工によるMo偏析のさらなる改善]
均熱処理前のNi基合金素材に熱間加工を実施すれば、均熱処理前において、Mo偏析間距離Dsをさらに狭くすることができる。なぜなら、デンドライトアームは、図1に示すとおり、Ni基合金素材の表面の法線方向に伸びて成長する。熱間加工では、Ni基合金素材の表面の法線方向に圧下が負荷される。そのため、熱間加工を実施すれば、熱間加工を実施しない場合と比較して、デンドライト二次アーム間隔DII(つまり、Mo偏析間距離Ds)が狭くなる。そのため、同じ均熱温度T(℃)及び同じ保持時間t(hr)で均熱処理を実施する場合、均熱処理前に熱間加工を実施した方が、均熱処理前に熱間加工を実施しない場合と比較して、Moの偏析をより低減しやすくなる。
ここで、鋳造工程後のNi基合金素材に対して減面率Rdで熱間加工を実施し、熱間加工後のNi基合金素材に対して均熱処理を実施することを想定する。この場合、減面率Rd分だけMo偏析間距離Dsは縮まると考えられる。逆に言えば、減面率Rd分だけ均熱処理におけるMo拡散距離σは延びるとみなすことができる。
以上の事項を考慮すれば、均熱処理前に減面率Rdで熱間加工を実施した場合、式(D)に基いて、次の式(E)が成立する。
Figure 2019107456
以上の検討に基づけば、均熱処理前に熱間加工を実施すれば、Mo偏析をさらに低減しやすくなる。ここで、熱間加工を実施し、さらに、熱間加工後に均熱処理を実施する一連の処理を(つまり、1回の熱間加工と、その熱間加工後に実施する1回の均熱処理との組合せの処理を)、「複合処理」と定義する。Ni基合金素材に対して、複合処理を1回又は複数回繰り返して実施する場合、式(E)に基づいて、次の式(1)が成立する。
Figure 2019107456
ここで、式(1)中の各記号は次のとおりである。
R:鋳造工程における凝固冷却速度(℃/min)
n:n回目の均熱処理における均熱温度(℃)
n:n回目の均熱処理における均熱温度での保持時間(hr)
Rdn-1:n回目の均熱処理前のNi基合金素材の累積断面減少率(%)
N:均熱処理の総回数
ここで、nは1〜Nの自然数であり、Nは自然数である。
累積断面減少率Rdn-1は次の式(F)で定義される。
Rdn-1=(1−(Sn-1/S0))×100 (F)
ここで、Sn-1はn回目の均熱処理前のNi基合金素材の長手方向に垂直な断面(横断面)の面積(mm2)である。S0は、鋳造工程後であって1回目の熱間加工前の(つまり、鋳造工程後あって、偏析低減工程前の)Ni基合金素材の長手方向に垂直な断面(横断面)の面積(mm2)である。S0の対象となるNi基合金素材がインゴットであり、四角錐台状の形状に代表されるように、長手方向に垂直な断面が長手方向で一定でない場合、面積S0は次のとおり定義される。
0=V0/L
ここで、V0はNi基合金素材の体積(mm3)であり、LはNi基合金素材の長手方向の長さ(mm)である。
なお、熱間加工を実施しない場合、累積断面減少率Rdn-1=0(鋳造材まま)となる。
以上の知見に基づいて完成した本実施形態のNi基合金の製造方法、及び、本実施形態の製造方法により製造されるNi基合金は次の構成を有する。
[1]の構成による本実施形態のNi基合金の製造方法は、
液体合金を鋳造して、
化学組成が、質量%で、
C:0.100%以下、
Si:0.50%以下、
Mn:0.50%以下、
P:0.015%以下、
S:0.0150%以下、
Cr:20.0〜23.0%、
Mo:8.0〜10.0%、
Nb及びTaからなる群から選択される1元素以上:3.150〜4.150%、
Ti:0.05〜0.40%、
Al:0.05〜0.40%、
Fe:0.05〜5.00%、
N:0.100%以下、
O:0.1000%以下、
Co:0〜1.00%、
Cu:0〜0.50%、
Ca、Nd及びBからなる群から選択される1元素以上:0〜0.5000%、及び、
残部はNi及び不純物からなるNi基合金素材を製造する鋳造工程と、
前記鋳造工程により製造されたNi基合金素材に対して、
均熱処理、又は、
均熱処理と、均熱処理後、熱間加工と熱間加工後の均熱処理とを含む複合処理と、
を実施し、式(1)を満たす偏析低減工程とを備える。
Figure 2019107456
ここで、式(1)中の各記号は次のとおりである。
R:鋳造工程における液体合金の凝固冷却速度(℃/min)
n:n回目の均熱処理における均熱温度(℃)
n:n回目の均熱処理における均熱温度での保持時間(hr)
Rdn-1:n回目の均熱処理前のNi基合金素材の累積断面減少率(%)
N:均熱処理の総回数
[2]の構成による本実施形態のNi基合金の製造方法は、[1]に記載のNi基合金の製造方法であって、
均熱温度は1000〜1300℃である。
[3]の構成による本実施形態のNi基合金の製造方法は、[2]に記載のNi基合金の製造方法であって、
偏析低減工程では、
複合処理を1回以上実施し、かつ、1000〜1300℃に加熱されたNi基合金素材に対して、35.0%以上の断面減少率で熱間加工を少なくとも1回実施する。
この場合、製造されたNi基合金のASTM E112に準拠した結晶粒度番号が0.0以上になる。
[4]の構成による本実施形態のNi基合金の製造方法は、[2]又は[3]に記載のNi基合金の製造方法であって、
偏析低減工程では、
1000〜1300℃の均熱温度で1.0時間以上保持する均熱処理を少なくとも1回実施する。
この場合、最大長が1〜100μmのNb炭窒化物の総個数が4.0×10-2個/μm2以下となる。その結果、熱間加工性がさらに高まる。
[5]の構成によるNi基合金の製造方法は、[1]〜[4]のいずれか1項に記載のNi基合金の製造方法であって、
Ni基合金素材の化学組成は、
Ca、Nd、及び、Bからなる群から選択される1元素以上を、式(2)を満たす含有量で含有する。
(Ca+Nd+B)/S≧2.0 (2)
ここで、式(2)中の元素記号には、対応する元素の原子%(at)での含有量が代入される。
この場合、製造されたNi基合金の熱間加工性がさらに高まる。
[6]の構成によるNi基合金は、
化学組成が、質量%で、
C:0.100%以下、
Si:0.50%以下、
Mn:0.50%以下、
P:0.015%以下、
S:0.0150%以下、
Cr:20.0〜23.0%、
Mo:8.0〜10.0%、
Nb及びTaからなる群から選択される1元素以上:3.150〜4.150%、
Ti:0.05〜0.40%、
Al:0.05〜0.40%、
Fe:0.05〜5.00%、
N:0.100%以下、
O:0.1000%以下、
Co:0〜1.0%、
Cu:0〜0.50%、
Ca、Nd及びBからなる群から選択される1元素以上:0〜0.5000%、及び、
残部がNi及び不純物からなり、
Ni基合金の長手方向に垂直な断面において、Moの平均濃度が質量%で8.0%以上であり、Mo濃度の最大値が質量%で11.0%以下であり、さらに、Mo濃度が質量%で8.0%未満の領域の面積率が2.0%未満である。
本実施形態によるNi基合金は、Mo偏析が抑制されている。そのため、本実施形態のNi基合金は耐食性に優れる。
[7]の構成によるNi基合金は、[6]に記載のNi基合金であって、
化学組成は、
Ca、Nd、及び、Bからなる群から選択される1元素以上を、式(2)を満たす含有量で含有する。
(Ca+Nd+B)/S≧2.0 (2)
ここで、式(2)中の元素記号には、対応する元素の原子%(at)での含有量が代入される。
この場合、Ni基合金の熱間加工性がさらに高まる。
[8]の構成によるNi基合金は、[6]及び[7]に記載のNi基合金であって、
ASTM E112に準拠した結晶粒度番号が0.0以上である。
この場合、Ni基合金の熱間加工性がさらに高まる。
[9]の構成によるNi基合金は、[6]〜[8]のいずれか1項に記載のNi基合金であって、
Ni基合金中において、最大長が1〜100μmのNb炭窒化物の総個数が4.0×10-2個/μm2以下である。
この場合、Ni基合金の熱間加工性がさらに高まる。
ここで、本明細書において「Nb炭窒化物」とは、Nb炭化物、Nb窒化物、及びNb炭窒化物を含む概念であって、Nb、C及びNの総含有量が質量%で90%以上の析出物を意味する。また、Nb炭窒化物の最大長とは、Nb炭窒化物と母相との界面(境界)上の任意の2点で結ばれる直線のうち、最大の長さのものを意味する。
以下、本実施形態によるNi基合金の製造方法及びNi基合金について説明する。
[第1の実施の形態]
[Ni基合金の製造方法]
本実施形態によるNi基合金の製造方法は、鋳造工程と、偏析低減工程とを備える。以下、各工程について説明する。
[鋳造工程]
鋳造工程では、Ni基合金素材の液体合金を溶製し、液体合金を鋳造することにより、次の化学組成を有するNi基合金素材を製造する。
[化学組成]
Ni基合金素材の化学組成は、次の元素を含有する。以下、元素に関する%は、特に断りがない限り、質量%を意味する。なお、本実施形態のNi基合金の製造方法により製造されるNi基合金の化学組成は、Ni基合金素材の化学組成と同じである。
C:0.100%以下
炭素(C)は、不可避に含有される。つまり、C含有量は0%超である。C含有量が高すぎれば、高温での長時間の使用により、粒界にCr炭化物に代表される炭化物が析出する。この場合、Ni基合金の耐食性が低下する。粒界での炭化物の析出はさらに、Ni基合金の靱性等の機械的性質を低下する。したがって、C含有量は0.100%以下である。C含有量の好ましい上限は0.070%であり、さらに好ましくは0.050%であり、さらに好ましくは0.030%であり、さらに好ましくは0.025%であり、さらに好ましくは0.023%である。C含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、C含有量の極度の低減は製造コストを高める。したがって、C含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは、0.010%である。
Si:0.50%以下
シリコン(Si)は不可避に含有される。つまり、Si含有量は0%超である。SiはNi基合金を脱酸する。しかしながら、Si含有量が高すぎれば、SiはNi又はCr等と結合して金属間化合物を形成したり、シグマ相(σ相)等の金属間化合物の生成を助長したりする。その結果、Ni基合金の熱間加工性が低下する。したがって、Si含有量は0.50%以下である。Si含有量の好ましい上限は、0.40%であり、さらに好ましくは0.30%であり、さらに好ましくは0.25%であり、さらに好ましくは0.20%であり、さらに好ましくは0.19%である。上述の脱酸作用をより有効に得るためのSi含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%であり、さらに好ましくは0.04%である。
Mn:0.50%以下
マンガン(Mn)は不可避に含有される。つまり、Mn含有量は0%超である。MnはNi基合金を脱酸する。Mnはさらに、不純物であるSをMn硫化物として固定し、Ni基合金の熱間加工性を高める。しかしながら、Mn含有量が高すぎれば、高温腐食環境での使用中において、スピネル型の酸化被膜の形成が促進され、その結果、高温での耐酸化性が低下する。Mn含有量が高すぎればさらに、Ni基合金の熱間加工性が低下する。したがって、Mn含有量は0.50%以下である。Mn含有量の好ましい上限は0.40%であり、さらに好ましくは0.30%であり、さらに好ましくは0.23%である。熱間加工性を有効に高めるためのMn含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%であり、さらに好ましくは、0.04%であり、さらに好ましくは0.08%であり、さらに好ましくは0.12%である。
P:0.015%以下
燐(P)は不純物である。P含有量は0%であってもよい。Pは、Ni基合金の靱性を低下する。したがって、P含有量は(0%以上であって)0.015%以下である。P含有量の好ましい上限は0.013%であり、さらに好ましくは0.012%であり、さらに好ましくは0.010%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、P含有量の極度の低減は製造コストを高める。したがって、P含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.004%である。
S:0.0150%以下
硫黄(S)は不可避に含有される不純物である。つまり、S含有量は0%超である。Sは、Ni基合金の熱間加工性を低下する。したがって、S含有量は0.0150%以下である。S含有量の好ましい上限は0.0100%であり、さらに好ましくは0.0080%であり、さらに好ましくは0.0050%であり、さらに好ましくは0.0020%であり、さらに好ましくは0.0015%であり、さらに好ましくは0.0010%であり、さらに好ましくは0.0007%である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、S含有量の極度の低減は製造コストを高める。したがって、製造コストの観点でのS含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0002%である。
Cr:20.0〜23.0%
クロム(Cr)は、Ni基合金の耐酸化性、耐水蒸気酸化性、耐高温腐食性等の耐食性を高める。Crはさらに、Nbと結合して金属間化合物を形成して粒界に析出し、Ni基合金のクリープ強度を高める。Cr含有量が低すぎれば、上記効果が十分に得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば、M236型の炭化物が多量に析出し、耐食性がかえって低下する。したがって、Cr含有量は20.0〜23.0%である。Cr含有量の好ましい下限は20.5%であり、さらに好ましくは21.0%であり、さらに好ましくは21.2%である。Cr含有量の好ましい上限は22.9%であり、さらに好ましくは22.5%であり、さらに好ましくは22.3%であり、更に好ましくは22.0%である。
Mo:8.0〜10.0%
モリブデン(Mo)は、高温腐食環境での使用において、Ni基合金の耐食性を高める。Moはさらに、母相に固溶して、固溶強化によりNi基合金のクリープ強度を高める。これにより、高温腐食環境でのNi基合金の強度が高まる。一方、Mo含有量が高すぎれば、熱間加工性が低下する。したがって、Mo含有量は8.0〜10.0%である。Mo含有量の好ましい下限は8.1%であり、さらに好ましくは8.2%であり、さらに好ましくは8.3%であり、さらに好ましくは8.4%であり、さらに好ましくは8.5%である。Mo含有量の好ましい上限は9.9%であり、さらに好ましくは9.5%であり、さらに好ましくは9.2%であり、さらに好ましくは9.0%であり、さらに好ましくは8.8%である。
Nb及びTaからなる群から選択される1元素以上:3.150〜4.150%
ニオブ(Nb)及びタンタル(Ta)はいずれも、金属間化合物の生成を促進し、粒界及び粒内の析出強化に寄与する。その結果、クリープ強度が高まる。Nb及びTaからなる群から選択される1元素以上の合計含有量が低すぎれば、上記効果が十分に得られない。一方、Nb及びTaからなる群から選択される1元素以上の合計含有量が高すぎれば、析出物が粗大となり、クリープ強度が低下する。したがって、Nb及びTaからなる群から選択される1元素以上の合計含有量は3.150〜4.150%である。Nb及びTaからなる群から選択される1元素以上の合計含有量の好ましい下限は3.200%であり、さらに好ましくは3.210%であり、さらに好ましくは3.220%である。Nb及びTaからなる群から選択される1元素以上の合計含有量の好ましい上限は4.120%であり、さらに好ましくは4.000%であり、さらに好ましくは3.800%であり、さらに好ましくは3.500%であり、さらに好ましくは3.450%である。なお、Nbのみが含有され、Taが含有されていなくてもよい。また、Taのみが含有され、Nbが含有されていなくてもよい。NbとTaとがともに含有されていてもよい。Nb及びTaのうちNbのみが含有される場合、上述の合計含有量(3.150〜4.150%)は、Nbの含有量を意味する。Nb及びTaのうちTaのみが含有される場合、上述の合計含有量(3.150〜4.150%)は、Taの含有量を意味する。
Ti:0.05〜0.40%
チタン(Ti)はSi、Mn、及び、Alとともに、Ni基合金を脱酸する。Tiはさらに、Alとともにガンマプライム相(γ’相)を形成して、高温腐食環境下でのNi基合金のクリープ強度を高める。Ti含有量が低すぎれば、上記効果が十分に得られない。一方、Ti含有量が高すぎれば、炭化物及び/又は酸化物が多量に生成して、Ni基合金の熱間加工性及びクリープ強度が低下する。したがって、Ti含有量は0.05〜0.40%である。Ti含有量の好ましい下限は0.08%であり、さらに好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.13%であり、さらに好ましくは0.15%である。Ti含有量の好ましい上限は0.35%であり、さらに好ましくは0.30%であり、さらに好ましくは0.25%であり、さらに好ましくは0.22%である。
Al:0.05〜0.40%
アルミニウム(Al)はSi、Mn及びTiとともにNi基合金を脱酸する。Alはさらに、Tiとともにガンマプライム相(γ’相)を形成して、高温腐食環境下でのNi基合金のクリープ強度を高める。Al含有量が低すぎれば、上記効果が十分に得られない。一方、Al含有量が高すぎれば、酸化物系介在物が多量に生成して、Ni基合金の熱間加工性及びクリープ強度が低下する。したがって、Al含有量は0.05〜0.40%である。Al含有量の好ましい下限は0.06%であり、さらに好ましくは0.07%であり、さらに好ましくは0.08%である。Al含有量の好ましい上限は0.35%であり、さらに好ましくは0.32%であり、さらに好ましくは0.30%であり、さらに好ましくは0.27%である。なお、本明細書において、Al含有量は、sol.Al(酸可溶Al)の含有量を意味する。
Fe:0.05〜5.00%
鉄(Fe)はNiを代替する。具体的には、FeはNi基合金の熱間加工性を高める。Feはさらに、粒界でラーベス相を析出し、粒界を強化する。Fe含有量が低すぎれば、上記効果が十分に得られない。一方、Fe含有量が高すぎれば、Ni基合金の耐食性が低下する。したがって、Fe含有量は0.05〜5.00%である。Fe含有量の好ましい下限は0.10%であり、さらに好ましくは0.50%であり、さらに好ましくは1.00%であり、さらに好ましくは2.00%であり、さらに好ましくは2.50%である。Fe含有量の好ましい上限は4.70%であり、さらに好ましくは4.50%であり、さらに好ましくは4.00%であり、さらに好ましくは3.90%である。
N:0.100%以下
窒素(N)は、不可避に含有される。つまり、N含有量は0%超である。Nは、Ni基合金中のオーステナイトを安定化する。Nはさらに、Ni基合金のクリープ強度を高める。しかしながら、N含有量が高すぎれば、Ni基合金の熱間加工性が低下する。したがって、N含有量は0.100%以下である。N含有量の好ましい上限は0.080%であり、さらに好ましくは0.050%であり、さらに好ましくは0.030%であり、さらに好ましくは0.025%である。N含有量の極度の低減は製造コストを高める。したがって、製造コストの観点でのN含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.005%である。
O:0.1000%以下
酸素(O)は不純物である。O含有量は0%であってもよい。Oは酸化物を生成して鋼の熱間加工性を低下する。したがって、O含有量は(0%以上であって)0.1000%以下である。O含有量の好ましい上限は0.0800%であり、さらに好ましくは0.0500%であり、さらに好ましくは0.0300%であり、さらに好ましくは0.0150%である。O含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、O含有量の極度の低減は製造コストを高める。したがって、製造コストの観点でのO含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0002%であり、さらに好ましくは0.0005%である。
本発明によるNi基合金素材の残部は、ニッケル(Ni)及び不純物である。なお、ここでいう不純物とは、Ni基合金を工業的に製造する際に、原料として利用される鉱石やスクラップから混入する元素、又は製造過程の環境等から混入する元素を意味する。
なお、Niは、Ni基合金の組織中のオーステナイトを安定化し、Ni基合金の耐食性を高める。上述のとおり、化学組成のうち、上述の元素以外の残部はNi及び不純物である。Ni含有量の好ましい下限は、58.0%であり、さらに好ましくは59.0%であり、さらに好ましくは60.0%である。
本実施形態のNi基合金素材はさらに、Niの一部に代えて、Co及びCuからなる群から選択される1元素以上を含有してもよい。Co及びCuはいずれも、Ni基合金の高温強度を高める。
Co:0〜1.00%
コバルト(Co)は任意元素である。つまり、Co含有量は0%であってもよい。含有される場合、CoはNi基合金の高温強度を高める。Coが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Co含有量が高すぎれば、Ni基合金の熱間加工性が低下する。したがって、Co含有量は0〜1.00%である。Co含有量の好ましい上限は0.90%であり、さらに好ましくは0.80%であり、さらに好ましくは0.70%であり、さらに好ましくは0.60%である。Co含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.20%であり、さらに好ましくは0.30%である。
Cu:0〜0.50%
銅(Cu)は任意元素である。つまり、Cu含有量は0%であってもよい。含有される場合、Cuは、析出してNi基合金の高温強度を高める。Cuが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Cu含有量が高すぎれば、Ni基合金の熱間加工性が低下する。したがって、Cu含有量は0〜0.50%である。Cu含有量の好ましい上限は0.45%であり、さらに好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.30%であり、さらに好ましくは0.20%であり、さらに好ましくは0.15%である。Cu含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%であり、さらに好ましくは0.05%である。
本実施形態のNi基合金素材はさらに、Niの一部に代えて、Ca、Nd及びBからなる群から選択される1元素以上を含有してもよい。
Ca、Nd及びBからなる群から選択される少なくとも1元素以上:合計含有量で0〜0.5000%
カルシウム(Ca)、ネオジム(Nd)、及び、ボロン(B)はいずれも、任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ca含有量は0%であってもよく、Nd含有量は0%であってもよく、B含有量は0%であってもよい。Ca、Nd及びBの少なくとも1元素以上が含有される場合、これらの元素はいずれも、Ni基合金の熱間加工性を高める。Ca、Nd及びBからなる群から選択される少なくとも1元素以上が含有されればよいため、たとえば、Caのみが含有されてもよいし、Ndのみが含有されてもよいし、Bのみが含有されてもよい。Ca及びNdが含有されてもよいし、Ca及びBが含有されてもよいし、Nd及びBが含有されてもよい。Ca、Nd及びBが含有されてもよい。Ca、Nd及びBからなる群から選択される少なくとも1元素以上が少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Ca、Nd及びBは液体合金の溶製中において、スラグ等に吸収されやすく、Ni基合金素材に残存しにくい。そのため、Ca、Nd及びBの合計含有量は0.5000%を超えにくい。したがって、Ca、Nd及びBからなる群から選択される少なくとも1元素以上の合計含有量は0〜0.5000%である。Ca、Nd及びBからなる群から選択する1元素以上の合計含有量の好ましい上限は0.4500%であり、さらに好ましくは、0.4200%である。Ca、Nd及びBからなる群から選択する1元素以上の合計含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%であり、さらに好ましくは0.0005%である。
Ni基合金素材の化学組成が上述の化学組成となるように、液体合金を溶製する。液体合金は周知の方法で溶製すればよい。液体合金はたとえば、電気炉溶解により製造する。真空溶解により液体合金を溶製してもよい。製造コストの観点から、液体合金を電気炉溶解により製造するのが好ましい。
溶製された液体合金を用いて、鋳造法により、上述の化学組成を有するNi基合金素材を製造する。Ni基合金素材は造塊法により製造されるインゴットでもよいし、連続鋳造法により製造される鋳片(スラブ又はブルーム)であってもよい。
鋳造工程における液体合金からNi基合金素材に凝固するまでの凝固冷却速度VRは、鋳造工程後であって偏析低減工程前のNi基合金素材のデンドライト二次アーム間隔DIIを測定することにより算出可能である。デンドライト二次アーム間隔DIIは次の方法により測定できる。Ni基合金素材の長手方向中央位置での長手方向に垂直な断面(横断面)のW/4深さ位置において、サンプルを採取する。サンプルの表面のうち、上記横断面と平行な表面に対して鏡面研磨を実施した後、王水にてエッチングする。エッチングされた表面を400倍の光学顕微鏡で観察して、200μm×200μmの観察視野の写真画像を生成する。得られた写真画像を用いて、観察視野内の任意の20ヶ所のデンドライト二次アーム間隔(μm)を測定する。測定されたデンドライト二次アーム間隔の平均を、デンドライト二次アーム間隔DII(μm)と定義する。
式(A)に、求めたデンドライト二次アーム間隔DIIを代入することにより、凝固冷却速度VR(℃/min)を求める。
II=182VR -0.294 (A)
[偏析低減工程]
偏析低減工程では、鋳造工程にて製造されたNi基合金素材に対して、Mo偏析を低減する。具体的には、鋳造工程で製造されたNi基合金素材に対して、
(I)均熱処理、又は、
(II)均熱処理と、均熱処理後に複合処理と
を実施する。
本明細書において、「複合処理」とは、熱間加工を実施し、さらに、熱間加工後に均熱処理を実施する一連の処理を意味する。換言すれば、「複合処理」とは、1回の熱間加工と、その熱間加工後の1回の均熱処理とを組合せた処理を意味する。1回の均熱処理とは、加熱炉又は均熱炉に挿入して所定の均熱温度、所定の保持時間で保持した後、抽出するまでの処理を意味する。1回の熱間加工とは、1000〜1300℃に加熱されたNi基合金素材に対して熱間加工を開始し、途中で再度加熱することなく、熱間加工を終了するまでの処理を意味する。熱間加工はたとえば、熱間押出、熱間鍛造、熱間圧延を意味する。
偏析低減工程では、均熱処理を1回のみ実施して複合処理を実施しなくてもよいし、複合処理を1回のみ実施して均熱処理を実施しなくてもよい。また、複合処理を複数回繰り返し実施してもよい。1回以上の均熱処理後に1回以上の複合処理を実施してもよい。1回以上の複合処理後に1回以上の均熱処理を実施してもよい。要するに、偏析低減工程では少なくとも1回の均熱処理、又は、少なくとも1回の均熱処理及び少なくとも1回の複合処理を実施すればよい。
均熱処理後、そのまま複合処理を実施してもよいし、均熱処理後、Ni基合金素材をいったん冷却後、再び均熱処理を実施し、その後、複合処理を実施してもよい(つまり、この場合、均熱処理、均熱処理、複合処理の順に実施する)。また、均熱処理後、複合処理を実施し、その後さらに複合処理を実施してもよい(この場合、均熱処理、複合処理、複合処理の順に実施する)。均熱処理と複合処理とを適宜組み合わせてもよい。たとえば、均熱処理、複合処理、均熱処理、順に実施してもよいし、均熱処理、複合処理、均熱処理、複合処理の順に実施してもよい。以下、均熱処理及び複合処理中の熱間加工について説明する。
[均熱処理]
n回目の均熱処理では、鋳造工程により製造されたNi基合金素材を均熱温度Tn(℃)で保持時間tn(hr)保持する。ここで、nは1〜N(Nは自然数)であり、均熱温度Tnはn回目の均熱処理(上記(I)の均熱処理、及び、上記(I)の均熱処理を含む)の均熱温度(℃)を意味し、保持時間tnはn回目の均熱処理の保持時間(hr)を意味する。Nは、上記(I)の均熱処理及び上記(II)の均熱処理の総回数である。
均熱温度Tnが低すぎれば、Moの拡散距離σを大きくすることができず、均熱処理中にMoが拡散しにくい。一方、均熱温度Tnが高すぎれば、Ni基合金素材の一部が再溶解してしまう場合がある。したがって、均熱温度Tnは特に限定されないが、好ましい均熱温度Tnは1000〜1300℃である。均熱処理は、周知の加熱炉、又は均熱炉で実施すれば足りる。
[熱間加工]
熱間加工は、上述のとおり、熱間押出であってもよいし、熱間鍛造であってもよいし、熱間圧延であってもよい。熱間加工の種類は特に限定されない。本実施形態の製造方法では、熱間加工を実施した場合、熱間加工後に上述の均熱処理を実施する(複合処理)。熱間加工によりNi基合金素材中のMo偏析間距離Dsが縮まっている。そのため、熱間加工後の均熱処理において、Moがさらに拡散しやすく、Mo偏析の低減に必要な保持時間tnを低減できる。なお、偏析低減工程において、前段で均熱処理を実施することなく、複合処理を実施する場合、Ni基合金素材を加熱炉又は均熱炉で1000〜1300℃に加熱された後、熱間加工を実施する。
[式(1)について]
上述のとおり、偏析低減工程では、1回以上の均熱処理、又は、1回以上の均熱処理と1回以上の複合処理とを実施する。このとき、式(1)を満たすように、均熱温度Tn(℃)、保持時間tn(hr)、断面減少率Rdn-1(%)を調整する。
Figure 2019107456
なお、偏析低減工程において均熱処理を1回のみ実施して、複合処理を実施しない場合(つまり、n=1、N=1の場合)、偏析低減工程では熱間加工を実施しない。そのため、累積断面減少率Rdn-1=Rd0は0(%)となる。したがって、式(1)にRd0=0を代入して得られる次式に基づいて、凝固冷却速度VR(℃/min)、均熱温度Tn(℃)、保持時間tn(hr)を調整する。
Figure 2019107456
式(1)を満たすように偏析低減工程(均熱処理、又は、均熱処理及び複合処理)を実施すれば、Mo偏析が抑制されたNi基合金を製造することができる。なお、偏析低減工程を実施した後、さらに熱間加工工程、冷間加工工程、切削加工工程等の他の工程を実施してもよい。
[本実施形態によるNi基合金]
本実施形態によるNi基合金の形状は特に限定されない。上述の製造方法で製造されたNi基合金はたとえば、ビレットである。Ni基合金の長手方向に垂直な断面(横断面)は円形状でも矩形状でもよく、多角形状であってもよい。Ni基合金は管材であってもよいし、中実材であってもよい。
本実施形態によるNi基合金は、化学組成が、質量%で、C:0.100%以下、Si:0.50%以下、Mn:0.50%以下、P:0.015%以下、S:0.0150%以下、Cr:20.0〜23.0%、Mo:8.0〜10.0%、Nb及びTaからなる群から選択される1元素以上:3.150〜4.150%、Ti:0.05〜0.40%、Al:0.05〜0.40%、Fe:0.05〜5.00%、N:0.100%以下、O:0.1000%以下、Co:0〜1.00%、Cu:0〜0.50%、Ca、Nd及びBからなる群から選択される1元素以上:0〜0.5000%、及び、残部はNi及び不純物からなる。つまり、本実施形態のNi基合金の化学組成は、上述のNi基合金素材の化学組成と同じである。本実施形態のNi基合金はさらに、Ni基合金の長手方向に垂直な断面において、Moの平均濃度が質量%で8.0%以上であり、Mo濃度の最大値が質量%で11.0%以下であり、さらに、Mo濃度が質量%で8.0%未満の領域の面積率が2.0%未満である。本実施形態によるNi基合金では、Moの偏析が抑制されている。以下、本実施形態のNi基合金について説明する。なお、本実施形態のNi基合金の化学組成の各元素の含有量(好ましい上限、好ましい下限含む)及び作用効果については、上述のNi基合金の製造方法におけるNi基合金素材の化学組成での各元素の含有量(好ましい上限、好ましい下限含む)及び作用効果と同じである。
[Mo偏析の抑制]
本実施形態のNi基合金では、Mo偏析が抑制される。具体的には、Ni基合金の長手方向に垂直な断面(以下、横断面という)において、Moの平均濃度が質量%で8.0%以上であり、Mo濃度の最大値が質量%で11.0%以下であり、さらに、Mo濃度が質量%で8.0%未満の領域の面積率が2.0%未満である。
Ni基合金の横断面におけるMoの平均濃度、Mo濃度の最大値、及び、Mo濃度が質量%で8.0%未満の領域は次の方法で求める。なお、本明細書において、Mo濃度が質量%で8.0%未満の領域を「Mo低濃度領域」ともいう。
Ni基合金の横断面からサンプルを採取する。具体的には、Ni基合金が、横断面形状が矩形状の中実材である場合、横断面の長辺を幅Wと定義する。横断面が円形状の中実材(つまり棒材)である場合、直径を幅Wと定義する。Ni基合金が中実材である場合、幅W方向と垂直な表面から幅W方向にW/4深さ位置(W/4深さ位置)からサンプルを採取する。一方、Ni基合金が管材である場合、肉厚中央位置からサンプルを採取する。サンプルの表面のうち、横断面に相当する表面(観察面)を鏡面研磨した後、観察面内の任意の1視野において、ビーム径10μm、走査長さ2000μm、1点当りの照射時間:3000ms、照射ピッチ:5μmとした電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe Micro Analyzer)による線分析を実施する。線分析を実施した2000μmの走査範囲において、5μmピッチで測定した複数のMo濃度の平均値と、測定した複数のMo濃度のうちのMo濃度の最大値、及び、Mo濃度の最小値を求める。さらに、測定範囲である走査長さ2000μmにおいて、Mo濃度が8.0%未満となった測定点が、連続している範囲(2点以上連続している範囲)の総長さを求める。求めた総長さをMo低濃度領域総長さ(μm)と定義する。求めたMo低濃度領域総長さを用いて、次の式により、Mo低濃度領域割合(%)を求める。
Mo低濃度領域割合=Mo低濃度領域総長さ(μm)/走査長さ(=2000μm)×100
上記式により求めたMo低濃度領域割合を、「Mo濃度が質量%で8.0%未満の領域の面積率」と定義する。より具体的には、Ni基合金の横断面において、ビーム径10μm、走査長さ2000μm、1点当りの照射時間:3000ms、照射ピッチ:5μmとしたEPMAによる線分析を実施して、走査長さ2000μmで5μmピッチで得られたMoの平均濃度が質量%で8.0%以上であり、Mo濃度の最大値が質量%で11.0%以下であり、走査長さ2000μmにおいて、Mo濃度が8.0%未満となった測定点が連続している範囲(2点以上連続している範囲)の総長さをMo低濃度領域と定義したとき、Mo低濃度領域総長さの走査長さに対する割合が2.0%未満である。
本実施形態のNi基合金では、上記測定により得られたMo濃度の平均値は質量%で8.0%以上であり、Mo濃度の最大値は質量%で11.0%以下である。さらに、Mo濃度が質量%で8.0%未満となる領域の割合、つまり、Mo低濃度領域割合は2.0%未満となる。
以上のとおり、本実施形態のNi基合金では、Mo偏析が抑制される。その結果、Ni基合金の耐食性が高まる。具体的には、次のとおり、粒界腐食及び応力腐食割れが抑制できる。
[粒界腐食の低減]
本実施形態によるNi基合金では、ASTM G28 Method Aで規定された腐食試験を行った場合、腐食速度が0.075mm/month以下である。ASTM G28 Method Aに準拠した腐食試験は次の方法で実施する。Ni基合金の任意の位置から試験片を採取する。試験片のサイズはたとえば、40mm×10mm×3mmである。腐食試験開始前の試験片の重量を測定する。測定後、質量%で50%の硫酸溶液600mLに対して硫酸第二鉄を25gの割合で加えた溶液(50%硫酸・硫酸第二鉄溶液)に試験片を120時間浸漬する。120時間経過後、試験後の試験片の重量を測定する。測定された試験片の重量の変化に基いて、試験減量を求める。試験片の密度を用いて、試験減量を体積減少量に換算する。体積減少量を試験片の表面積で除算して、腐食深さを求める。腐食深さを試験時間で除算して、腐食速度(mm/month)を求める。
本実施形態のNi基合金では、腐食速度が0.075mm/month以下であり、粒界腐食が抑制され、耐食性に優れる。
[応力腐食割れの抑制]
本実施形態のNi基合金ではさらに、耐粒界腐食性に優れるだけでなく、応力腐食割れも抑制できる。具体的には、Ni基合金の任意の位置から低歪速度引張試験片を採取する。低歪速度引張試験片の長さを80mmとし、平行部長さを25.4mmとし、平行部の直径を3.81mmとする。低歪速度引張試験片の長手方向は、Ni基合金の長手方向と平行とする。0.7MPaの硫化水素を飽和させた、pH2.8〜3.1かつ232℃の25%NaCl+0.5%CH3COOH水溶液に低歪速度引張試験片を浸漬しながら、歪速度4.0×10-6-1で低歪速度引張試験(SSRT)を実施して試験片を破断させる。試験後の試験片において、破断部以外の部分に亀裂(サブクラック)が発生しているか否かを目視により確認する。亀裂が発生している場合、応力腐食割れが発生したと判断し、亀裂が確認されなければ、応力腐食割れが発生しなかったと判断する。本製造方法で製造されたNi基合金では、上記低歪速度引張試験において、亀裂が確認されず、応力腐食割れが抑制される。したがって、本実施形態の製造方法で製造されたNi基合金は優れた耐食性を有する。
以上のとおり、本実施形態の製造方法により製造されたNi基合金では、上述の化学組成を有し、さらに、Moの平均濃度が質量%で8.0%以上であり、Mo濃度の最大値が質量%で11.0%以下である。さらに、Mo濃度が質量%で8.0%未満の領域(Mo低濃度領域)の面積率が2.0%未満である。そのため、本実施形態のNi基合金は耐食性に優れる。具体的には、ASTM G28のMethod A試験により得られた腐食速度が0.075mm/month以下であり、耐食性(耐粒界腐食性)に優れる。さらに、SSRT試験において、試験片の破断部以外の領域において亀裂が発生せず、耐食性(具体的には耐SCC性)に優れる。
[本実施形態のNi基合金の製造方法]
本実施形態のNi基合金の製造方法は、上述の構成を有するNi基合金を製造できれば、特に限定されない。しかしながら、上述のNi基合金の製造方法は、本実施形態のNi基合金を製造するための好適な例である。具体的には、本実施形態のNi基合金の製造方法は、上述の鋳造工程と、上述の偏析低減工程とを備える。上述の鋳造工程では、液体合金を鋳造して、化学組成が、質量%で、C:0.100%以下、Si:0.50%以下、Mn:0.50%以下、P:0.015%以下、S:0.0150%以下、Cr:20.0〜23.0%、Mo:8.0〜10.0%、Nb及びTaからなる群から選択される1元素以上:3.150〜4.150%、Ti:0.05〜0.40%、Al:0.05〜0.40%、Fe:0.05〜5.00%、N:0.100%以下、O:0.1000%以下、Co:0〜1.00%、Cu:0〜0.50%、Ca、Nd及びBからなる群から選択される1元素以上:0〜0.5000%、及び、残部はNi及び不純物からなるNi基合金素材を製造する。そして、偏析低減工程では、鋳造工程により製造されたNi基合金素材に対して、(I)1回以上の均熱処理、又は、(II)1回以上の均熱処理及び1回以上の複合処理、を実施し、式(1)を満たす。
Figure 2019107456
上記製造方法により、化学組成が、質量%で、C:0.100%以下、Si:0.50%以下、Mn:0.50%以下、P:0.015%以下、S:0.0150%以下、Cr:20.0〜23.0%、Mo:8.0〜10.0%、Nb及びTaからなる群から選択される1元素以上:3.150〜4.150%、Ti:0.05〜0.40%、Al:0.05〜0.40%、Fe:0.05〜5.00%、N:0.100%以下、O:0.1000%以下、Co:0〜1.00%、Cu:0〜0.50%、Ca、Nd及びBからなる群から選択される1元素以上:0〜0.5000%、及び、残部はNi及び不純物からなり、Ni基合金の長手方向に垂直な断面において、Moの平均濃度が質量%で8.0%以上であり、Mo濃度の最大値が質量%で11.0%以下であり、さらに、Mo濃度が質量%で8.0%未満の領域の面積率が2.0%未満であるNi基合金を製造できる。
図4は、本発明の化学組成を有するNi基合金における、F1と腐食速度との関係を示す図である。ここで、F1は、式(1)の右辺から式(1)の左辺を差し引いた式であって、次のとおり定義される。
Figure 2019107456
図4を参照して、F1が0未満、すなわち、偏析低減工程での製造条件が式(1)を満たさない場合、腐食速度は0.075mm/monthよりも顕著に高く、F1値が変動しても、腐食速度はあまり変動しない。これに対して、F1が0以上となる場合、すなわち、偏析低減工程での製造条件が式(1)を満たす場合、腐食速度は顕著に低下して、0.075mm/month以下となる。したがって、式(1)を満たす製造条件により製造されたNi基合金は、優れた耐食性を有する。なお、本実施形態のNi基合金の製造方法は、上述の構成を有するNi基合金を製造できれば、特に限定されない。式(1)を用いた上述のNi基合金の製造方法は、本実施形態のNi基合金を製造するための好適な例である。
[第1の実施形態のNi基合金の好ましい形態(1)]
Ni基合金において、結晶粒が微細である方が、強度及び延性に優れることが知られている。好ましくは、本実施形態のNi基合金ではさらに、ASTM E112に準拠した結晶粒度番号が0.0以上である。結晶粒度番号が0.0以上であれば、Ni基合金内において、凝固組織が解消され、ミクロ組織が実質的に結晶化したことを示している。好ましい結晶粒度番号は0.5以上であり、さらに好ましくは1.0以上である。結晶粒度番号の上限は特に限定されない。
本実施形態のNi基合金での結晶粒度番号の測定方法は次のとおりである。Ni基合金を軸方向(長手方向)に5等分して、各区分の軸方向中央位置を特定する。各区分の特定された位置において、Ni基合金の中心軸周りに90°ピッチで4ヶ所のサンプル採取位置を特定する。たとえば、Ni基合金が管材の場合、管周方向に90度ピッチでサンプル採取位置を特定する。特定されたサンプル採取位置から、サンプルを採取する。Ni基合金が管材である場合、特定されたサンプル採取位置の肉厚中央位置からサンプルを採取する。Ni基合金が棒材、又は、横断面が矩形状の合金材である場合、選定されたサンプル採取位置において、W/4深さ位置からサンプルを採取する。サンプルの観察面は、Ni基合金の軸方向に垂直な断面とし、観察面の面積は、40mm2とする。
上記方法により、各区分で4つのサンプル、全区分で20個のサンプルを採取する。採取されたサンプルの観察面を、グリセレジア、カーリング試薬又はマーブル試薬等を用いて腐食して、表面の結晶粒界を現出させる。腐食された観察面を観察して、ASTM E112に準拠して、結晶粒度番号を求める。
20個のサンプルで求めた結晶粒度番号の平均値を、Ni基合金におけるASTM E112に準拠した結晶粒度番号と定義する。
本実施形態のNi基合金であって、ASTM E112に準拠した結晶粒度番号が0.0以上であるNi基合金はたとえば、次の方法で製造される。
上述の鋳造工程と偏析低減工程とを含むNi基合金の製造方法であって、偏析低減工程において、複合処理を少なくとも1回実施する。そして、複合処理において、1000〜1300℃に加熱されたNi基合金素材に対して、35.0%以上の断面減少率で熱間加工を少なくとも1回実施する。この条件での熱間加工を、「特定熱間加工」という。偏析低減工程において、特定熱間加工を少なくとも1回実施すれば、製造されたNi基合金において、ASTM E112に準拠した結晶粒度番号が0.0以上になる。なお、本項目でいう断面減少率は、累積断面減少率ではなく、1回の熱間加工での断面減少率を意味する。
図5Aは、偏析低減工程において、上述の化学組成を有するNi基合金素材に対して44.6%の断面減少率で熱間加工を1回実施して製造されたNi基合金のミクロ組織観察画像である。図5Bは、偏析低減工程において、上述の化学組成を有するNi基合金素材に対して31.3%の断面減少率で熱間加工を1回実施して製造されたNi基合金のミクロ組織観察画像である。図5Aでは、ASTM E112に準拠した結晶粒度番号が2.0であり、0.0以上であった。これに対して、図5Bでは、ASTM E112に準拠した結晶粒度番号が−2.0であり、0.0未満であった。以上のとおり、偏析低減工程において、上述の化学組成を有するNi基合金素材に対して35.0%以上の断面減少率で熱間加工を少なくとも1回実施することにより、ASTM E112に準拠した結晶粒度番号が0.0以上であるNi基合金を製造できる。なお、特定熱間加工は、複数回実施してもよい。
[第1の実施形態のNi基合金の好ましい形態(2)]
好ましくは、本実施形態のNi基合金ではさらに、Ni基合金中において、最大長が1〜100μmのNb炭窒化物の総個数が4.0×10-2個/μm2以下である。
ここで、本明細書において「Nb炭窒化物」とは、Nb炭化物、Nb窒化物、及びNb炭窒化物を含む概念であって、Nb、C及びNの総含有量が質量%で90%以上の析出物を意味する。また、Nb炭窒化物の最大長とは、Nb炭窒化物と母相との界面(境界)上の任意の2点で結ばれる直線のうち、最大の長さのものを意味する。
粗大Nb炭窒化物の総個数が4.0×10-2個/μm2以下であれば、Nb炭窒化物が母相に十分に固溶している。そのため、熱間加工における割れの起点が少なくなり、熱間加工性がさらに高まる。
粗大Nb炭窒化物の総個数は次の方法で求めることができる。Ni基合金を軸方向に5等分して、各区分の軸方向中央位置を特定する。各区分において、軸方向中央位置にて管周方向に90度ピッチでサンプル採取位置を特定する。特定されたサンプル採取位置から、サンプルを採取する。Ni基合金が管材である場合、特定されたサンプル採取位置の肉厚中央位置からサンプルを採取する。Ni基合金が棒材、又は、横断面が矩形状の合金材である場合、特定されたサンプル採取位置のW/4深さ位置からサンプルを採取する。サンプルの観察面は、Ni基合金の軸方向に垂直な断面とする。各観察面(全部で20個)中の任意の1視野(400μm×400μm)において、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)により、Nb炭窒化物を特定する。具体的には、EPMAの面分析により、Nb、C及びNの総含有量が90%以上の析出物を特定し、特定された析出物をNb炭窒化物と定義する。図6は、上記1視野の一例でのEPMA画像である。図6において白く表示されている析出物100がNb炭窒化物である。特定されたNb炭窒化物の最大長を測定する。上述のとおり、Nb炭窒化物と母相との界面の任意の2点を結ぶ直線のうち、最大の直線の値を、そのNb炭窒化物の最大長と定義する。各Nb炭化物の最大長を測定した後、最大長が1〜100μmのNb炭窒化物(粗大Nb炭窒化物)を特定し、20視野全ての粗大Nb炭窒化物の総個数を求める。得られた総個数に基づいて、粗大Nb炭窒化物の総個数(個/μm2)を求める。
上述のNi基合金であって、最大長が1〜100μmのNb炭窒化物の総個数を4.0×10-2個/μm2以下であるNi基合金は、たとえば、次の製造方法で製造できる。
上述の鋳造工程と偏析低減工程とを含むNi基合金の製造方法であって、偏析低減工程において、1000〜1300℃の均熱温度で1.0時間以上保持する均熱処理を少なくとも1回実施する。この条件での均熱処理を、「特定均熱処理」という。偏析低減工程において、特定均熱処理を少なくとも1回実施すれば、製造されたNi基合金中において、最大長が1〜100μmのNb炭窒化物の総個数が4.0×10-2個/μm2以下となる。なお、特定均熱処理は複数回実施してもよい。
[第1の実施形態のNi基合金の好ましい形態(3)]
上述のNi基合金はさらに、ASTM E112に準拠した結晶粒度番号が0.0以上であり、かつ、Ni基合金中において、最大長が1〜100μmのNb炭窒化物の総個数が4.0×10-2個/μm2以下であってもよい。
この場合、好ましくは、上記偏析低減工程において、1000〜1300℃に加熱されたNi基合金素材に対して、35.0%以上の断面減少率で熱間加工を少なくとも1回実施し、かつ、上記偏析低減工程において、1000〜1300℃の均熱温度で1.0時間以上保持する均熱処理を少なくとも1回実施する。つまり、偏析低減工程において、特定熱間加工を少なくとも1回実施し、かつ、特定均熱処理を少なくとも1回実施する。
[第2の実施の形態]
好ましくは、上述のNi基合金はさらに、Ca、Nd、及び、Bからなる群から選択される1元素以上を式(2)を満たす含有量で含有する。
(Ca+Nd+B)/S≧2.0 (2)
ここで、式(2)中の元素記号には、対応する元素の原子%(at%)での含有量が代入される。
カルシウム(Ca)、ネオジム(Nd)、及び、ボロン(B)はいずれも、上述のとおり、Ni基合金の熱間加工性を高める。F2=(Ca+Nd+B)/Sと定義する。F2は熱間加工性の指標である。Ca、Nd、及び、Bからなる群から選択される1種以上の合計含有量F2が2.0以上の場合、つまり、F2が式(2)を満たす場合、上述の化学組成のNi基合金において、さらに優れた熱間加工性が得られる。具体的には、歪速度10/秒、大気中、900℃で引張試験を実施した場合の絞り(破断絞り)が35.0%以上となる。
図7は、本実施形態のNi基合金に対して、大気中、900℃において歪速度10/秒で引張試験をした場合に得られる破断絞り(%)と、F2との関係を示す図である。図7は後述の実施例2に示す試験により得られた。図7を参照して、F2が1.0になるまでは、F2が増加しても900℃での破断絞りはそれほど変化しなかった。一方、F2が1.0を超えると、F2の増加に伴い900℃での破断絞りが急激に上昇し、F2が2.0では35.0%を超え、50.0%程度になる。その後、F2の増加に伴い破断絞りがさらに上昇したものの、F2が8.0以上では、破断絞りは80.0%程度でほぼ一定となった。つまり、図7の曲線は、F2=1.0〜2.0近傍に変曲点を有した。以上の結果より、F2が2.0以上であれば、900℃において十分な破断絞り(35.%以上)を得ることができる。F2の好ましい下限は2.5であり、さらに好ましくは3.0であり、さらに好ましくは、3.5である。
なお、Ni基合金中のCa、Nd及びBの総含有量(質量%)の上限は、第1の実施形態と同様に、0.5000%である。
[第2の実施形態のNi基合金の製造方法]
上述の第2の実施形態のNi基合金の製造方法は、上述の構成を有する第2の実施形態のNi基合金が製造できれば、特に限定されない。好ましくは、第2の実施形態のNi基合金の製造方法は、第1の実施の形態のNi基合金の製造方法と同じである。
具体的には、第2の実施形態のNi基合金の製造方法は、鋳造工程と、偏析低減工程とを備える。鋳造工程では、液体合金を鋳造して、上述の化学組成を有し、かつ、F2が式(2)を満たすNi基合金素材を製造する。
偏析低減工程では、鋳造工程で製造されたNi基合金素材に対して、
(I)均熱処理、又は、
(II)均熱処理及び複合処理、
を実施する。偏析低減工程では、均熱処理を1回のみ実施してもよいし、複合処理を1回のみ実施してもよい。また、複合処理を複数回繰り返し実施してもよい。均熱処理後に複合処理を実施してもよい。
上述のとおり、偏析低減工程では、均熱処理、又は、均熱処理及び複合処理を実施する。このとき、鋳造工程での凝固冷却速度VRが式(1)を満たすように、均熱温度Tn(℃)、保持時間tn(hr)、断面減少率Rdn-1(%)を調整する。
Figure 2019107456
なお、偏析低減工程において均熱処理を1回のみ実施する場合、熱間加工を実施しないため、断面減少率Rd0は0(%)である。したがって、式(1)にRd0=0%を代入して得られる次式に基づいて、凝固冷却速度VR(℃/min)、均熱温度Tn(℃)、保持時間tn(hr)を調整する。
Figure 2019107456
式(2)を満たす化学組成を有するNi基合金素材に対して、式(1)を満たすように偏析低減工程(均熱処理、又は、均熱処理及び複合処理)を実施すれば、第2の実施形態のNi基合金を製造することができる。なお、偏析低減工程を実施した後、さらに熱間加工工程、冷間加工工程、切削加工工程等の他の工程を実施してもよい。
なお、第2実施形態のNi基合金の製造方法は、鋳造工程にてNi基合金素材を製造後、そのNi基合金素材を再度溶解する、いわゆる二次溶解を実施しない。つまり、本製造方法は、鋳造工程後、鋳造工程により製造されたNi基合金を再度溶解する二次溶解を実施することなく、偏析低減工程を実施するのが好ましい。
第2実施形態のNi基合金において、Ca、Nd、及び、B等は、一般的に鋼材中のSと結合して硫化物を形成し、鋼材中(特に粒界)の固溶S濃度を低減させることで熱間加工性を高める。しかしながら、これらの元素を含有するNi基合金素材に対して二次溶解を実施すれば、二次溶解時にCa、Nd、及び、BがNi基合金素材から外部に排出されてしまう。たとえば、二次溶解としてエレクトロスラグ再溶解法(ESR)を適用すれば、Ni基合金素材の溶融時に、Ca、Nd、及び、Bが溶融スラグに取り込まれる。その結果、Ni基合金素材からCa、Nd、及び、Bが排出され、二次溶解後のNi基合金素材の化学組成が式(2)を満たさない。同様に、二次溶解として真空アーク再溶解法(VAR)を適用すれば、Ni基合金素材の溶融時に、熱間加工性向上に有効な元素であるCa、Nd、及び、Bが、溶解時に発生するCOバブルにより浮上分離されてしまう。その結果、Ni基合金素材からCa、Nd、及び、Bが排出され、二次溶解後の製造されたNi基合金素材の化学組成が式(2)を満たさなくなる。これに対して、本製造方法では、上述のとおり、二次溶解を実施せず(二次溶解を省略して)、一次溶解のみでNi基合金素材を製造する。そのため、Ni基合金中において、Ca、Nd、及び、Bの少なくとも1元素以上を式(2)を満たす含有量で維持することができ、熱間加工性を高めることができる。さらに、そのNi基合金素材に対して上述の偏析低減工程を実施するため、Mo偏析も抑制できる。
[第2の実施の形態のNi基合金の好ましい形態(1)]
第1の実施の形態と同様に、好ましくは、第2の実施形態のNi基合金では、ASTM E112に準拠した結晶粒度番号が0.0以上である。
Ni基合金中の結晶粒度番号を0.0以上にする場合、好ましくは、上記偏析低減工程において、1000〜1300℃に加熱されたNi基合金素材に対して、35.0%以上の断面減少率で熱間加工(特定熱間加工)を少なくとも1回実施する。偏析低減工程において、特定熱間加工を少なくとも1回実施すれば、製造されたNi基合金において、ASTM E112に準拠した結晶粒度番号が0.0以上になる。なお、特定熱間加工は、複数回実施してもよい。
[第2の実施形態のNi基合金の好ましい形態(2)]
第1の実施の形態と同様に、好ましくは、第2の実施の形態のNi基合金では、Ni基合金中において、最大長が1〜100μmのNb炭窒化物の総個数が4.0×10-2個/μm2以下である。この場合、熱間加工性がさらに高まる。
Ni基合金中において、最大長が1〜100μmのNb炭窒化物の総個数を4.0×10-2個/μm2以下にする場合、好ましくは、上記偏析低減工程において、1000〜1300℃の均熱温度で1.0時間以上保持する均熱処理(特定均熱処理)を少なくとも1回実施する。特定均熱処理を少なくとも1回実施すれば、製造されたNi基合金中において、最大長が1〜100μmのNb炭窒化物の総個数が4.0×10-2個/μm2以下となる。なお、特定均熱処理は複数回実施してもよい。
[第2の実施形態のNi基合金の好ましい形態(3)]
上述のNi基合金はさらに、ASTM E112に準拠した結晶粒度番号が0.0以上であり、かつ、Ni基合金中において、最大長が1〜100μmのNb炭窒化物の総個数が4.0×10-2個/μm2以下であってもよい。
この場合、好ましくは、上記偏析低減工程において、1000〜1300℃に加熱されたNi基合金素材に対して、35.0%以上の断面減少率で熱間加工を少なくとも1回実施し、かつ、上記偏析低減工程において、1000〜1300℃の均熱温度で1.0時間以上保持する均熱処理を少なくとも1回実施する。
液体合金を電気炉溶解により溶製した。溶製した液体合金を連続鋳造法又は造塊法により凝固させて、表1の化学組成を有するNi基合金素材(鋳片又はインゴット)を製造した。試験番号1〜5及び8のNi基合金素材は鋳片であった。鋳片の長手方向に垂直な断面は600×285mmであった。試験番号6及び7のNi基合金素材はインゴットであった。インゴットの長手方向に垂直な断面は、500mm×500mmであった。
Figure 2019107456
製造されたNi基合金素材(鋳片)に対して、次の方法により、デンドライト二次アーム間隔DIIを測定して、各試験番号のNi基合金素材の凝固冷却速度VR(℃/min)を求めた。具体的には、Ni基合金素材の長手方向中央位置での長手方向に垂直な横断面のW/4深さ位置において、サンプルを採取した。サンプルの表面のうち、上記横断面と平行な表面に対して鏡面研磨を実施した後、王水にてエッチングした。エッチングされた表面を400倍の光学顕微鏡で観察して、200μm×200μmの観察視野の写真画像を生成した。得られた写真画像を用いて、観察視野内の任意の20ヶ所のデンドライト二次アーム間隔(μm)を測定した。測定されたデンドライト二次アーム間隔の平均を、デンドライト二次アーム間隔DII(μm)と定義した。得られたデンドライト二次アーム間隔DIIを、式(A)に代入することにより、凝固冷却速度VR(℃/min)を求めた。
II=182VR -0.294 (A)
さらに、試験番号2〜5、7及び8のNi基合金に対して、表2に示す偏析低減工程を実施した。試験番号2及び3では、偏析低減工程として、均熱処理を1回実施した。試験番号4では、均熱処理を実施し(均熱処理1)、その後、熱間圧延を実施し(熱間加工1)、熱間圧延後に再び均熱処理を実施した(均熱処理2)。試験番号5では、均熱処理1、熱間加工1、均熱処理2、熱間加工2(熱間圧延)、均熱処理3の順に実施した。試験番号7では、均熱処理1を実施した。試験番号8では、均熱処理1、熱間加工1、均熱処理2の順に実施した。つまり、試験番号2、3及び7は、1回の均熱処理のみを実施した。試験番号4は、1回の均熱処理と、1回の複合処理とを実施した。試験番号5は、1回の均熱処理と、2回の複合処理とを実施した。試験番号8は、1回の複合処理を実施した。なお、試験番号1及び6では、偏析低減工程を実施しなかった。
なお、試験番号4、5及び8はいずれも、横断面が円形状の中実材(つまり、丸棒材)を製造した。また、試験番号4、5、8ではいずれも、均熱処理1を実施した後、速やかに熱間加工1を実施した。試験番号5では、均熱処理2を実施した後、速やかに熱間加工2を実施した。
Figure 2019107456
各均熱処理1〜3での均熱温度(℃)及び均熱時間(hr)は表2に示すとおりであった。各熱間加工1及び2での断面減少率Rdn-1(%)は表2に示すとおりであった。また、各試験番号において、F1(=式(1)の右辺−式(1)の左辺)、を求めた。求めたF1を表2に示す。
[評価試験]
[Mo濃度測定試験]
偏析低減工程後の各試験番号のNi基合金の長手方向に垂直な断面(横断面)において、Mo濃度測定試験用のサンプルを採取した。具体的には、各試験番号において、横断面のW/4深さ位置からサンプルを採取した、サンプルの表面のうち、横断面に相当する表面(観察面)を鏡面研磨した後、観察面内の任意の1視野において、ビーム径10μm、走査長さ2000μm、1点当りの照射時間:3000ms、照射ピッチ:5μmで、EPMAによる線分析を実施した。線分析を実施した2000μmの走査範囲において5μmピッチで測定した複数のMo濃度の平均値と、測定した複数のMo濃度のうちのMo濃度の最大値を求めた。さらに、測定範囲である走査長さ2000μmにおいて、Mo濃度が8.0%未満となった測定点が連続している範囲(2点以上連続している範囲)の総長さ(つまり、Mo低濃度領域総長さ)を求めた。求めたMo低濃度領域総長さを用いて、次の式により、Mo低濃度領域割合(%)を求めた。
Mo低濃度領域割合=Mo低濃度総長さ(μm)/走査長さ(=2000μm)×100
[低歪速度引張試験(SSRT)]
偏析低減工程後の各試験番号のNi基合金の長手方向に垂直な断面において、Mo濃度測定試験でのサンプル採取位置と同じ位置から、低歪速度引張試験片を採取した。低歪速度引張試験片の長さを80mmとし、平行部長さを25.4mmとし、平行部の直径を3.81mmとした。低歪速度引張試験片の長手方向は、Ni基合金の長手方向と平行であった。0.7MPaの硫化水素を飽和させた、pH2.8〜3.1かつ232℃の25%NaCl+0.5%CH3COOH水溶液に低歪速度引張試験片を浸漬しながら、歪速度4.0×10-6-1で低歪速度引張試験(SSRT)を実施して試験片を破断させた。試験後の試験片において、破断部以外の部分に亀裂(サブクラック)が発生しているか否かを目視により確認した。亀裂が発生している場合、応力腐食割れが発生したと判断し、亀裂が確認されなければ、応力腐食割れが発生せず、優れた耐食性(耐SCC性)が得られたと判断した。
[粒界腐食試験]
偏析低減工程後の各試験番号のNi基合金の長手方向に垂直な断面において、Mo濃度測定試験でのサンプル採取位置と同じ位置から、試験片を採取した。試験片のサイズは、40mm×10mm×3mmとした。採取した試験片を用いて、ASTM G28 Method Aで規定された腐食試験を実施した。具体的には、腐食試験開始前の試験片の重量を測定した。測定後、50%硫酸・硫酸第二鉄溶液に試験片を120時間浸漬した。120時間経過後、試験後の試験片の重量を測定した。測定した試験片の重量の変化から、各試験片の腐食速度(mm/month)を求めた。
[試験結果]
試験結果を表2に示す。表2を参照して、試験番号3〜5、7及び8では、Ni基合金の化学組成が適切であり、かつ、F1が0以上であり、偏析低減工程において式(1)を満たした。そのため、Ni基合金の長手方向に垂直な断面において、Moの平均濃度が質量%で8.0%以上であり、Mo濃度の最大値が質量%で11.0%以下であり、さらに、Mo濃度が質量%で8.0%未満の領域の面積率(Mo低濃度領域割合)が2.0%未満であった。その結果、SSRT試験において、亀裂は確認されなかった。さらに、腐食速度は0.075mm/month以下であり、優れた耐食性を示した。なお、試験番号3〜5、7及び8のNi基合金中において、最大長が1〜100μmのNb炭窒化物の総個数は4.0×10-2個/μm2以下であった。
さらに、試験番号4、5及び8では、偏析低減工程において、最終の均熱処理の前に熱間加工を実施した。その結果、均熱処理前に熱間加工を実施しなかった試験番号3と比較して、腐食速度がさらに低く、腐食速度が0.055mm/month以下であった。
一方、試験番号1及び6では、鋳造工程によりNi基合金素材を製造した後、偏析低減工程を実施しなかった。そのため、Ni基合金の長手方向に垂直な断面において、Mo濃度の最大値が質量%で11.0%を超え、さらに、Mo濃度が質量%で8.0%未満の領域の面積率(Mo低濃度領域割合)が2.0%以上であった。その結果、SSRT試験において亀裂が確認された。さらに、腐食速度が0.075mm/monthを超えた。
試験番号2では、偏析低減工程において均熱処理を実施したものの、F1が0未満であり、式(1)を満たさなかった。そのため、Mo低濃度領域割合が2.0%以上であった。その結果、SSRT試験において亀裂が確認された。さらに、腐食速度が0.075mm/monthを超えた。
電気炉溶解により溶製した液体合金を連続鋳造法又は造塊法により凝固させて、表3の化学組成を有するNi基合金素材(鋳片又はインゴット)を製造した。試験番号9〜21のNi基合金素材は鋳片であり、鋳片の長手方向に垂直な断面(横断面)は600×285mmであった。なお、表3中のF2欄には、各試験番号のF2値(=(Ca+Nd+B)/S)を記載している。なお、表3中の空白部分は、対応する元素の含有量が、検出限界未満であったことを示す。
Figure 2019107456
製造されたNi基合金素材(鋳片)に対して、上述の方法により、デンドライト二次アーム間隔DIIを測定して、各試験番号のNi基合金素材の凝固冷却速度VR(℃/min)を求めた。その結果、表4に示すとおり、いずれの試験番号においても、凝固冷却速度VRは5(℃/min)であった。
Figure 2019107456
各試験番号のNi基合金に対して、偏析低減工程を実施した。具体的には、試験番号9及び11では、均熱処理を1回のみ実施し、熱間加工工程を実施しなかった。均熱処理の均熱温度は1200℃であり、保持時間は96時間であった。その結果、F1はいずれも0.06であり、式(1)を満たした。
試験番号10及び12〜18ではいずれも、均熱処理を実施し(均熱処理1)、その後、熱間圧延を実施し(熱間加工1)、熱間圧延後に再び均熱処理を実施した(均熱処理2)。均熱処理1での均熱温度は、1200℃であり、保持時間は48時間であった。熱間加工1での断面減少率は47.3%であった。均熱処理2での均熱温度は1200℃であり、保持時間は24時間であった。その結果、F1(=式(1)の右辺−式(1)の左辺)はいずれも0.33であり、式(1)を満たした。
試験番号19〜21では均熱処理1、熱間加工1、均熱処理2、熱間加工2、均熱処理3の順に実施した。均熱処理1での均熱温度は、1200℃であり、保持時間は48時間であった。熱間加工1での累積断面減少率は47.3%であった。均熱処理2での均熱温度は1200℃であり、保持時間は24時間であった。熱間加工2での累積断面減少率は85.0%であった。均熱処理3での均熱時間は1200℃であり、保持時間は0.08時間であった。その結果、F1はいずれも0.38であり、式(1)を満たした。
以上の工程により、試験番号9〜21のNi基合金を製造した。なお、試験番号9〜21ではいずれも、鋳造工程後のNi基合金素材に対して、二次溶解を実施しなかった。試験番号9及び11のNi基合金は鋳片であり、試験番号10、12〜21のNi基合金は横断面が円形状の中実材(つまり、丸棒材)であった。なお、試験番号10、12〜21では、均熱処理1を実施した後、速やかに熱間加工1を実施した。試験番号19〜21では、均熱処理2を実施した後、速やかに熱間加工2を実施した。
[熱間加工性評価試験]
各試験番号のNi基合金を用いて、次の引張試験を実施した。Ni基合金から、引張試験片を採取した。引張試験片はJIS規格の14A号試験片に相当した。各試験番号において、横断面のW/4深さ位置から引張試験片を採取した。引張試験片を900°に加熱した。900℃の引張試験片を用いて、歪速度10/秒、大気中にて引張試験を実施し、破断絞り(%)を測定した。破断絞りが35.0%以上であれば、熱間加工性に優れると判断した。測定結果を表3に示す。
[試験結果]
表3を参照して、試験番号9〜21ではいずれも、式(1)を満たした。そのため、Ni基合金の長手方向に垂直な断面において、Moの平均濃度が質量%で8.0%以上であり、Mo濃度の最大値が質量%で11.0%以下であり、さらに、Mo濃度が質量%で8.0%未満の領域の面積率が2.0%未満であった。その結果、SSRT試験において、亀裂は確認されなかった。さらに、腐食速度は0.075mm/month以下であり、優れた耐食性を示した。なお、試験番号9〜21のNi基合金中において、最大長が1〜100μmのNb炭窒化物の総個数は4.0×10-2個/μm2以下であった。
さらに、試験番号11、12、16〜20ではいずれも、化学組成が適切であり、F2が2.0以上となり、式(2)を満たした。そのため、破断絞りはいずれも35.0%以上(より具体的には45.0%以上)であり、優れた熱間加工性を示した。
実施例1の試験番号5及び実施例2の試験番号12のNi基合金の結晶粒度番号を次の方法で求めた。Ni基合金を軸方向に5等分して、各区分の軸方向中央位置を特定した。各区分において、軸方向中央位置にて軸周り(長手方向の周り)に90度ピッチでサンプル採取位置を特定した。特定されたサンプル採取位置のW/4深さ位置からサンプルを採取した。サンプルの観察面は、Ni基合金の軸方向に垂直な断面とし、観察面の面積は、40mm2とした。上記方法により、各区分で4つのサンプル、全区分で20個のサンプルを採取した。採取されたサンプルの観察面を、カーリング試薬を用いて腐食して、表面の結晶粒界を現出させた。腐食された観察面を観察して、ASTM E112に準拠して、結晶粒度番号を求めた。20個のサンプルで求めた結晶粒度番号の平均値を、Ni基合金におけるASTM E112に準拠した結晶粒度番号と定義した。
比較例として、表5に示す化学組成を有する試験番号22のNi基合金素材を準備した。Ni基合金素材は鋳片であり、鋳片の長手方向に垂直な断面は600×285mmであった。試験番号22の化学組成は、試験番号5の化学組成と同じであった。
Figure 2019107456
試験番号22のNi基合金素材(鋳片)に対して、実施例1と同じ方法により、デンドライト二次アーム間隔DIIを測定して、各試験番号のNi基合金素材の凝固冷却速度VR(℃/min)を求めた。その結果、凝固冷却速度VRは、表6に示すとおり、5℃/minであった。
Figure 2019107456
試験番号22のNi基合金素材に対して、表6に示す偏析低減工程を実施した。試験番号5の製造条件と比較して、1回目の熱間加工の断面減少率は31.3%であった。また、2回目の熱間加工の累積断面減少率は62.6%であり、2回目の熱間加工での断面減少率は31.3%であった。つまり、試験番号22において、各熱間加工での断面減少率はいずれも35.0%未満であった。試験番号22についても、試験番号5と同様の方法で、結晶粒度番号を求めた。
結晶粒度番号を求めた結果、試験番号5では、ASTM E112に準拠した結晶粒度番号が0.0以上(2.0)となり、試験番号12では、ASTM E112に準拠した結晶粒度番号が0.0となった。一方、試験番号22では、ASTM E112に準拠した結晶粒度番号が0.0未満(−2.0)となった。
実施例1の試験番号4のNi基合金の粗大Nb炭窒化物の総個数を次の方法で求めた。Ni基合金を軸方向に5等分して、各区分の軸方向中央位置を特定した。各区分において、軸方向中央位置にて軸周り(長手方向の周り)に90度ピッチでサンプル採取位置を特定した。特定されたサンプル採取位置の肉厚中央位置からサンプルを採取した。サンプルの観察面は、Ni基合金の軸方向に垂直な断面とした。各観察面(全部で20個)中の任意の1視野(400μm×400μm)において、EPMAにより、Nb炭窒化物を特定した。特定されたNb炭窒化物の最大長を測定した。上述のとおり、Nb炭窒化物と母相との界面の任意の2点を結ぶ直線のうち、最大の直線の値を、そのNb炭窒化物の最大長と定義した。各Nb炭化物の最大長を測定した後、最大長が1〜100μmのNb炭窒化物(粗大Nb炭窒化物)を特定し、20視野全ての粗大Nb炭窒化物の総個数を求めた。得られた総個数に基づいて、粗大Nb炭窒化物の総個数(個/μm2)を求めた。
比較例として、表7に示す試験番号23のNi基合金を準備した。Ni基合金素材は鋳片であり、鋳片の長手方向に垂直な断面は600×285mmであった。試験番号23の化学組成は、試験番号4の化学組成と同じであった。
Figure 2019107456
試験番号23のNi基合金素材に対して、表8に示す偏析低減工程を実施した。具体的には、試験番号23では、試験番号4と同じ温度で1回目の均熱処理を実施し(均熱処理1)、その後、試験番号4と同じ断面減少率で熱間圧延を実施し(熱間加工1)、熱間圧延後に再び、試験番号4と同じ温度で2回目の均熱処理を実施した(均熱処理2)。しかしながら、均熱処理1及び均熱処理2での均熱時間はいずれも50分(0.83時間)であり、1時間未満であった。試験番号23においても、試験番号4と同様に、粗大Nb炭窒化物の総個数を求めた。
Figure 2019107456
さらに、試験番号4及び試験番号23のNi基合金に対して、実施例2と同じ方法で熱間加工性評価試験を実施して、破断絞り(%)を求めた。
粗大Nb炭窒化物の総個数は、試験番号4では4.0×10-2個/μm2以下であったが、試験番号23では4.0×10-2個/μm2を超えた。その結果、試験番号4では破断絞りが35.0%を超えたのに対して、比較例では破断絞りが35.0%未満であった。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。

Claims (9)

  1. 液体合金を鋳造して、
    化学組成が、質量%で、
    C:0.100%以下、
    Si:0.50%以下、
    Mn:0.50%以下、
    P:0.015%以下、
    S:0.0150%以下、
    Cr:20.0〜23.0%、
    Mo:8.0〜10.0%、
    Nb及びTaからなる群から選択される1元素以上:3.150〜4.150%、
    Ti:0.05〜0.40%、
    Al:0.05〜0.40%、
    Fe:0.05〜5.00%、
    N:0.100%以下、
    O:0.1000%以下、
    Co:0〜1.00%、
    Cu:0〜0.50%、
    Ca、Nd及びBからなる群から選択される1元素以上:0〜0.5000%、及び、
    残部はNi及び不純物からなるNi基合金素材を製造する鋳造工程と、
    前記鋳造工程により製造された前記Ni基合金素材に対して、
    均熱処理、又は、
    前記均熱処理と、前記均熱処理後に、熱間加工と前記熱間加工後の均熱処理とを含む複合処理と、
    を実施し、式(1)を満たす偏析低減工程とを備える、
    Ni基合金の製造方法。
    Figure 2019107456
    ここで、式(1)中の各記号は次のとおりである。
    R:前記鋳造工程における前記液体合金の凝固冷却速度(℃/min)
    n:n回目の前記均熱処理における均熱温度(℃)
    n:n回目の前記均熱処理における前記均熱温度での保持時間(hr)
    Rdn-1:n回目の前記均熱処理前の前記Ni基合金素材の累積断面減少率(%)
    N:前記均熱処理の総回数
  2. 請求項1に記載のNi基合金の製造方法であって、
    前記均熱温度は1000〜1300℃である、
    Ni基合金の製造方法。
  3. 請求項2に記載のNi基合金の製造方法であって、
    前記偏析低減工程では、
    前記複合処理を1回以上実施し、かつ、1000〜1300℃に加熱された前記Ni基合金素材に対して、35.0%以上の断面減少率で熱間加工を少なくとも1回実施する、
    Ni基合金の製造方法。
  4. 請求項2又は請求項3に記載のNi基合金の製造方法であって、
    前記偏析低減工程では、
    1000〜1300℃の前記均熱温度で1.0時間以上保持する前記均熱処理を少なくとも1回実施する、Ni基合金の製造方法。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のNi基合金の製造方法であって、
    前記化学組成は、
    前記Ca、Nd、及び、Bからなる群から選択される1元素以上を、式(2)を満たす含有量で含有する、
    Ni基合金の製造方法。
    (Ca+Nd+B)/S≧2.0 (2)
    ここで、式(2)中の元素記号には、対応する元素の原子%(at%)での含有量が代入される。
  6. Ni基合金であって、
    化学組成が、質量%で、
    C:0.100%以下、
    Si:0.50%以下、
    Mn:0.50%以下、
    P:0.015%以下、
    S:0.0150%以下、
    Cr:20.0〜23.0%、
    Mo:8.0〜10.0%、
    Nb及びTaからなる群から選択される1種以上:3.150〜4.150%、
    Ti:0.05〜0.40%、
    Al:0.05〜0.40%、
    Fe:0.05〜5.00%、
    N:0.100%以下、
    O:0.1000%以下、
    Co:0〜1.00%、
    Cu:0〜0.50%、
    Ca、Nd及びBからなる群から選択される1元素以上:0〜0.5000%、及び、
    残部がNi及び不純物からなり、
    前記Ni基合金の長手方向に垂直な断面において、Moの平均濃度が質量%で8.0%以上であり、Mo濃度の最大値が質量%で11.0%以下であり、さらに、前記Mo濃度が質量%で8.0%未満の領域の面積率が2.0%未満である、
    Ni基合金。
  7. 請求項6に記載のNi基合金であって、
    前記化学組成は、
    前記Ca、Nd、及び、Bからなる群から選択される1元素以上を、式(2)を満たす含有量で含有する、
    Ni基合金。
    (Ca+Nd+B)/S≧2.0 (2)
    ここで、式(2)中の元素記号には、対応する元素の原子%(at%)での含有量が代入される。
  8. 請求項6又は請求項7に記載のNi基合金であって、
    ASTM E112に準拠した結晶粒度番号が0.0以上である、
    Ni基合金。
  9. 請求項6〜請求項8のいずれか1項に記載のNi基合金であって、
    前記Ni基合金中において、最大長が1〜100μmのNb炭窒化物の総個数が4.0×10-2個/μm2以下である、
    Ni基合金。
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