JP6299349B2 - 靭性および孔食性に優れた油井管用鋳片の連続鋳造方法 - Google Patents
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質量%で、C :0.01〜0.05%、Si:0.05〜0.5%以下、Mn:0.1〜1.5%、P :0.05%以下、S :0.005%以下、Cr:15〜30%、Mo:1〜10%、Ni:30〜50%に加えて、さらにSnを0.05〜2%含有し、残部がFeおよび不純物からなる合金を連続鋳造して靭性および孔食性に優れた油井管製造用の素材となる鋳片を製造する方法において、
前記合金中にSnを含有させない場合の連続鋳造鋳片の横断面中心より採取した試験片を、画像解析装置で1視野あたり0.64×0.46mmの被顕面積の画像を30視野観察して得られる、当該30視野における金属間化合物の面積率の平均値I0と、Snを含有させた前記合金の連続鋳造鋳片の横断面中心より採取した試験片を、画像解析装置で1視野あたり0.64×0.46mmの被顕面積の画像を30視野観察して得られる、当該30視野における金属間化合物の面積率の平均値I との比I /I0 を求め、当該各30視野において下記式で定義される前記合金の平均Md値との関係を求めることによって、前記合金の平均Md値が0.92以下で、前記の比I /I0が0.8以下となるSn含有量とすることを最も主要な特徴としている。
平均Md値=ΣΧi・(Md)i [eV]
ここで、Χi:合金成分iの原子分率 [-]
(Md)i:合金成分iのMd値 [eV]
A)金属間化合物への影響について
通常、連続鋳造鋳片の凝固組織はデンドライト形態を呈している。このデンドライトは、凝固過程における溶質元素の拡散に起因して形成され、溶質元素はその平衡分配係数に依存して、デンドライトの樹間部において濃化する。高合金鋼に含有されるCrやMoの平衡分配係数は1.0 より小さいことから樹間部において濃化し、樹間部にこれらの元素によって構成される金属間化合物(σ相、Χ相)が発生しやすいという特徴を有している。
溶質元素の濃化はデンドライト樹間に依存することが知られており、これが低減したことにより溶質元素の濃化自体が抑制され、金属間化合物の析出が抑制される。
金属間化合物の析出は局所的な相安定性に大きく影響を受けることが報告されており、多元系の相安定性の指標の一つとして合金の各成分のd軌道にある電子軌道エネルギーを意味するMd値[eV]を用いて析出傾向を予測するPHACOMP(Phase Computation)法が確立されている。
平均Md値=ΣΧi・(Md)i [eV] …(1)
ここで、Χi:合金成分iの原子分率 [-]
(Md)i:合金成分iのMd値[eV]
金属間化合物であるσ相やΧ相は、その部分の不動態皮膜が不安定化するため高濃度塩化物環境において孔食性が低下する。そのため、上記のように所定量のSnを含有させることでσ相やΧ相の生成を抑制されて孔食性が著しく向上する。さらに、Snは耐候性を向上させる元素であることから、鋼材に含有させることで、例えば採掘設備の建設時に偶発的に不動態皮膜の剥離が生じたとしても、Snイオンがインヒビター効果を発揮してアノード溶解反応速度を著しく低減することから、鋼材自体も極めて高い孔食性を有することになる。
結晶粒の成長は初期γ粒径に大きく依存することから、初期γ粒の微細化は再加熱による結晶粒粗大化を抑制する効果がある。
C :0.01〜0.05%、Si:0.05〜0.5%以下、Mn:0.1〜1.5%、P :0.05%以下、S :0.005%以下、Cr:15〜30%、Mo:1〜10%、Ni:30〜50%に加えて、さらにSnを0.05〜2%含有し、残部がFeおよび不純物からなる合金を連続鋳造して靭性および孔食性に優れた油井管製造用の素材となる鋳片を製造する方法において、
前記合金中にSnを含有させない場合の連続鋳造鋳片の横断面中心より採取した試験片を、画像解析装置で1視野あたり0.64×0.46mmの被顕面積の画像を30視野観察して得られる、当該30視野における金属間化合物の面積率の平均値I0と、Snを含有させた前記合金の連続鋳造鋳片の横断面中心より採取した試験片を、画像解析装置で1視野あたり0.64×0.46mmの被顕面積の画像を30視野観察して得られる、当該30視野における金属間化合物の面積率の平均値I との比I /I0 を求め、当該各30視野において下記式で定義される前記合金の平均Md値との関係を求めることによって、前記合金の平均Md値が0.92以下で、前記の比I /I0が0.8以下となるSn含有量とするものである。
C は炭化物を形成して高Cr、高Ni合金として必要な高温引張強さ、高温クリープ強度を確保する上で必要な成分であり、0.01%以上含有させることが必要である。しかしながら、その含有量が0.05%を超えると、Crの炭化物が増えて高Cr、高Ni合金の靭性に悪い影響を及ぼすおそれがあるので、上限を0.05%とした。
Siは製錬時の溶鋼の脱酸に必要な元素であり、最低でも0.05%含有させることが必要である。しかしながら、含有量が過剰になると当該合金の加工性が低下するので、上限を0.5 %とした。
Mnは、Siと同様に、溶鋼の脱酸に必要な元素である。脱酸効果を得るためには0.1 %以上の含有量が必要である。しかしながら、Mn含有量が1.5 %を超えると、熱間加工性が悪くなる。従って、本発明では、Mn含有量を0.1 〜1.5 %とした。より好ましい範囲は0.5 〜1.0 %である。
P は不純物として不可避的に混入する。過剰なP は加工性を害するので、本発明では、上限を0.05%とした。望ましい上限は0.025 %である。
S もP と同様に不純物として不可避的に混入する。過剰なS は加工性を害するので、本発明では、上限を0.005 %とした。望ましい上限は0.001 %である。
Crは、Niとの共存下において、耐応力腐食割れ性に代表される耐硫化水素腐食性を向上させるのに有効な元素である。しかしながら、その含有量が15%未満では、その効果が得られない。一方、その含有量が30%を超えると、上記の効果は飽和し、熱間加工性の観点からも好ましくない。そこで、本発明では、Cr含有量の適正範囲を15〜30%とした。
Moは耐孔食性を改善する作用を有する元素である。しかしながら、その含有量が1 %未満では、その効果が得られない。一方、10%を超えるMoを含有させてもその効果は飽和するため、本発明では、上限を10%とした。
Niは、耐硫化水素腐食性を向上させる作用を有する元素である。しかしながら、その含有量が30%未満では、合金の外表面にNi硫化物皮膜が十分に生成されないため、Niを含有する効果が得られない。一方、50%を超えるNiを含有させてもその効果は飽和するため、合金コストに見合った効果が得られずに経済性を損なう。そこで、本発明では、Ni含有量の適正範囲を30〜50%とした。
Snは、本発明において重要な役割を果たす。当該合金がSnを含有することによって、鋳片の凝固組織が微細化し、ミクロ偏析を生じやすい当該合金においても鋳片の組織が均一となり、所望のσ相発生の抑制、結晶粒微細化、および耐孔食性向上効果が得られる。当該効果を得るためには0.05%以上のSn含有量が必要である。しかしながら、Sn含有量が2 %を超えると、鋳片の熱間加工での脆化が問題となるため、Sn含有量は2 %以下とするのが望ましい。
直径が15mm、高さが50mmの円柱形で、Sn含有量が0 %、0.07%、0.15%、0.34%、および0.76%である鋳塊と、Snを含有しない鋳塊について一方向凝固試験を行った。冷却は円柱の底面からのみ行い、冷却速度は丸ビレット連続鋳造の冷却速度に合わせて 5〜15℃/min とした。
エッチング液:10体積%シュウ酸水溶液
エッチング方法:電解エッチング
エッチング液の温度:室温
エッチング時間:60〜180秒
平均Md値=[Sn%]×(-0.1768)+0.9335 …(2)
これを後述の連続鋳造試験に利用した。
鋳造速度:0.5 m/分
鋳型の内径:φ360mm
添加したSn合金:NiSn(75%Sn−Niの外径がφ10mmのワイヤーを使用)
Sn合金の添加位置:タンディッシュ内
まず、鋳片の横断面中心位置を鋳込み方向に垂直な面より採取した試験片を鏡面まで再研磨した後、金属間化合物を着色する目的で村上試薬(10%KOH+10%K3[Fe(CN)6]+残部H2O)によりエッチングを施した。その後、鋳片断面の金属組織観察を実施し、Snを添加しない鋼(比較例1)の金属間化合物(Χ相およびσ相)の面積率I0を基準とし、Snを添加した時の金属間化合物(Χ相およびσ相)の面積率I の比を取った金属間化合物の発生指数を面積率比I/I0(低減率)として評価した。この際、画像解析装置で1視野あたり0.64×0.46mmの被顕面積の画像を30視野観察し、金属間化合物(Χ相およびσ相)の平均面積率を各試験条件の代表面積率とした。
Claims (2)
- 質量%で、C :0.01〜0.05%、Si:0.05〜0.5%以下、Mn:0.1〜1.5%、P :0.05%以下、S :0.005%以下、Cr:15〜30%、Mo:1〜10%、Ni:30〜50%に加えて、さらにSnを0.05〜2%含有し、残部がFeおよび不純物からなる合金を連続鋳造して靭性および孔食性に優れた油井管製造用の素材となる鋳片を製造する方法において、
前記合金中にSnを含有させない場合の連続鋳造鋳片の横断面中心より採取した試験片を、画像解析装置で1視野あたり0.64×0.46mmの被顕面積の画像を30視野観察して得られる、当該30視野における金属間化合物の面積率の平均値I0と、Snを含有させた前記合金の連続鋳造鋳片の横断面中心より採取した試験片を、画像解析装置で1視野あたり0.64×0.46mmの被顕面積の画像を30視野観察して得られる、当該30視野における金属間化合物の面積率の平均値I との比I /I0 を求め、当該各30視野において下記式で定義される前記合金の平均Md値との関係を求めることによって、前記合金の平均Md値が0.92以下で、前記の比I /I0が0.8以下となるSn含有量とすることを特徴とする油井管用鋳片の連続鋳造方法。
平均Md値=ΣΧi・(Md)i [eV]
ここで、Χi:合金成分iの原子分率 [-]
(Md)i:合金成分iのMd値 [eV] - 前記Snを1.2質量%以上含有させる場合、
前記合金の平均Md値が0.72以下で、前記の比I /I0が0.30以下となるSn濃度とすることを特徴とする請求項1に記載の油井管用鋳片の連続鋳造方法。
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JP2014076938A JP6299349B2 (ja) | 2014-04-03 | 2014-04-03 | 靭性および孔食性に優れた油井管用鋳片の連続鋳造方法 |
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