JP6528644B2 - 鋼管用鋳片の連続鋳造方法 - Google Patents
鋼管用鋳片の連続鋳造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP6528644B2 JP6528644B2 JP2015210819A JP2015210819A JP6528644B2 JP 6528644 B2 JP6528644 B2 JP 6528644B2 JP 2015210819 A JP2015210819 A JP 2015210819A JP 2015210819 A JP2015210819 A JP 2015210819A JP 6528644 B2 JP6528644 B2 JP 6528644B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- value
- alloy
- less
- average
- content
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Landscapes
- Continuous Casting (AREA)
- Treatment Of Steel In Its Molten State (AREA)
Description
質量%で、C :0.03%以下、Si:0.4 %以下、Mn:3.0 %以下、P :0.04%以下、S :0.008%以下、Cu:0.2〜2.0%、Ni:5.0〜7.0%、Cr:23〜30%、Mo:2.5 〜5.0%、W :1.5〜4.0%、N :0.24〜0.40%、Al:0.030%以下に加えて、さらにBiを10〜300質量ppm含有し、残部がFeおよび不純物からなる合金を連続鋳造して鋼管製造用の素材となる鋳片を製造する方法において、
前記合金中にBiを含有させない場合の連続鋳造鋳片の横断面中心における金属間化合物の析出量I0と、Biを含有させた前記合金の連続鋳造鋳片の横断面中心における金属間化合物の析出量I との比I /I0と下記式で定義される前記合金の平均Md値との関係、並びに、前記合金の平均Md値と含有Bi量の関係を求め、この関係に基づき、前記合金の平均Md値が0.97以下で、前記の比I /I0が0.70以下となるBi含有量とすることを最も主要な特徴としている。
平均Md値=ΣΧi・(Md)i [eV]
ここで、Χi:合金成分i の原子分率 [-]
(Md)i:合金成分iのMd値 [eV]
Md値:合金の各成分のd軌道にある電子軌道エネルギーを意味するもので、クラスター模型を用いて行う分子軌道計算法であるクラスター計算により求めることができる。
A)金属間化合物への影響について
通常、連続鋳造鋳片の凝固組織はデンドライト形態を呈している。複雑な組織として知られる二相ステンレス鋼も、初晶であるフェライトが晶出してデンドライトに成長し、その後、包共晶反応によりオーステナイトが晶出し、フェライト及びオーステナイト二相で凝固を完了する。この際、凝固過程でデンドライト形態である柱状晶から分岐柱状晶、等軸晶となった場合でも、溶質が排出される組織の樹間部からオーステナイトが晶出する。また、室温までの冷却過程でも、フェライトがオーステナイトに変態し、形態が大きく変わることが知られている。
溶質元素の濃化は凝固組織の粗さに依存することが知られており、これが低減したことにより溶質元素の濃化自体が抑制され、金属間化合物の析出が抑制される。
金属間化合物の析出は局所的な相安定性に大きく影響を受けることが報告されており、多元系の相安定性の指標の一つとして合金の各成分のd軌道にある電子軌道エネルギーを意味するMd値[eV]を用いて析出傾向を予測するPHACOMP(Phase Computation)法が確立されている。
平均Md値=ΣΧi・(Md)i [eV] …(1)
ここで、Χi:合金成分iの原子分率 [-]
(Md)i:合金成分iのMd値[eV]
二相ステンレス鋼は、フェライトとオーステナイトの二相組織であり、通常、凝固組織が微細であることが知られている。しかしながら、Biの微量添加により、両組織がさらに微細となり、さらなる高強度化の効果がある。
C :0.03%以下、Si:0.4 %以下、Mn:3.0 %以下、P :0.04%以下、S :0.008%以下、Cu:0.2〜2.0%、Ni:5.0〜7.0%、Cr:23〜30%、Mo:2.5 〜5.0%、W :1.5〜4.0%、N :0.24〜0.40%、Al:0.030%以下に加えて、さらにBiを10〜300ppm含有し、残部がFeおよび不純物からなる合金を連続鋳造して鋼管製造用の素材となる鋳片を製造する方法において、
前記合金中にBiを含有させない場合の連続鋳造鋳片の横断面中心における金属間化合物の析出量I0と、Biを含有させた前記合金の連続鋳造鋳片の横断面中心における金属間化合物の析出量I との比I /I0と下記式で定義される前記合金の平均Md値との関係、並びに、前記合金の平均Md値と含有Bi量の関係を求め、この関係に基づき、前記合金の平均Md値が0.97以下で、前記の比I /I0が0.70以下となるBi含有量とするものである。
C はオーステナイト相を安定化する上で必要な元素である。しかしながら、含有量が過剰な場合は炭化物が析出しやすくなって耐食性が劣化するので、本発明では、C 含有量の上限を0.03%とした。より好ましい上限は0.02%である。上記の効果を得たい場合には、C を0.01%以上含有することが望ましい。
Siは製錬時の溶鋼の脱酸に必要な元素である。しかしながら、含有量が過剰になるとσ相の生成が促進されるので、本発明では、Si含有量の上限を0.4 %とした。
Mnは、Siと同様に、溶鋼の脱酸に必要な元素であるとともに、オーステナイト相の安定化に有効な元素である。また、Mnは熱間加工性の向上に寄与する元素でもある。さらに、MnにはN の溶解度を大きくする作用がある。しかしながら、Mn含有量が過剰であると耐食性を劣化させる。従って、本発明では、Mn含有量の上限を3.0 %とした。
P は不純物として不可避的に混入する。しかしながら、P の含有量が過剰であると耐食性や靱性の劣化が著しくなる。従って、本発明では、P の含有量の上限を0.04%とした。
S もP と同様に不純物として不可避的に混入する。過剰なS は加工性を害するとともに、硫化物は孔食の発生起点となり耐孔食性を劣化させる。従って、本発明では、S の含有量の上限を0.008 %とした。
Cuは還元性の低いとされる低pH環境、例えばH2SO4またはH2S環境での耐食性向上に特に有効な元素である。これらの効果を得るためには、Cuを0.2%以上含有させる必要がある。しかしながら、過剰に含有させた場合、熱間加工性を劣化させるだけでなく、金属間化合物の析出を促進する。そのため、本発明では、Cuの含有量の上限を2.0%とした。
Niは、オーステナイト相を安定化させるために必須の元素である。しかしながら、その含有量が低いと、フェライト量が多くなりすぎて、二相ステンレス鋼としての特徴が失われる。また、フェライト中へのN の固溶度が小さいため、フェライト量が多くなると窒化物が析出しやすくなり耐食性が劣化する。そのため、本発明では、Niの含有量の下限を5.0%とした。一方で、Ni含有量が過剰な場合、金属間化合物の析出が容易になり靱性が劣化する。従って、本発明では、Niの含有量の上限を7.0%とした。
Crは、耐食性および強度を確保するために必須の元素である。しかしながら、その含有量が低いと、いわゆるスーパー二相ステンレス鋼といえるだけの耐食性が得られない。従って、本発明では、Crの含有量の下限を23%とした。一方、その含有量が過剰な場合、金属間化合物の析出が顕著になり、耐食性の低下とともに熱間加工性の低下を招く。従って、本発明では、Cr含有量の上限を30%とした。
Moは耐孔食性を改善する作用を有する元素である。また、鋼の高強度化にも有用な元素である。しかしながら、その含有量が2.5 %未満では、その効果が得られない。一方、その含有量が過剰な場合、Crと同様、金属間化合物の析出の起因となる。従って、本発明では、Moの含有量の上限を5.0 %とした。
W はMoと比較して金属間化合物の析出の起因となることが少なく、耐食性、特に耐孔食性および耐隙間腐食性を向上させる元素である。また、鋼の高強度化にも非常に有効な元素であり、W を適宜含有させれば、CrおよびMoさらにはN の含有量を増やさずに高い耐食性を確保することができる。そのため、本発明では、W の含有量の下限を1.5 %とした。一方、W を過剰に含有させても耐食性の向上効果は飽和する。従って、本発明では、W の含有量の上限を4.0 %とした。
N は強力なオーステナイト生成元素であり、二相ステンレス鋼の熱的安定性および耐食性の向上、ならびに高強度化に有効な元素である。フェライト相とオーステナイト相とのバランスを適正なものにするため、フェライト生成元素であるCrおよびMoの含有量との関係でN を適宜含有させる必要がある。N は、Cr、MoおよびW と同様に合金の耐食性を向上させる効果も有する。そのため、本発明では、N の含有量の下限を0.24%とした。一方、その含有量が過剰な場合、ブローホールの発生による欠陥、溶接時の熱影響による窒化物生成等により鋼の靱性および耐食性を劣化させる。従って、本発明では、N の含有量の上限を0.40%とした。
Alは精錬時の溶鋼の脱酸に用いられる元素であるが、窒化物(AlN )を形成すると靱性の低下が懸念される。従って、本発明では、Alの含有量の下限を0.030%とした。
Biは、本発明において重要な役割を果たす。当該合金がBiを含有することによって、鋳片の凝固組織が微細化し、ミクロ偏析を生じやすい当該合金においても鋳片の組織が均一となり、所望のσ相およびΧ相といった金属間化合物の析出を抑制する効果が得られる。当該効果を得るためには10 ppm以上のBi含有量が必要である。しかしながら、Bi含有量が300ppmを超えると、微量とはいえ鋳片の熱間加工での脆化が問題となることに加え、コスト増を招来することから、本発明では、Bi含有量の上限を300ppmとした。
直径が15mm、高さが50mmの円柱形で、Bi含有量が11ppm、23ppm 、38ppm 、および52ppm である鋳塊と、Biを含有しない鋳塊について一方向凝固試験を行った。冷却は円柱の底面からのみ行い、冷却速度は連続鋳造の冷却速度に合わせて 5〜15℃/min とした。
エッチング液:10体積%シュウ酸水溶液
エッチング方法:電解エッチング
エッチング液の温度:室温
エッチング時間:60〜180秒
Md値=[Bi%]×(-0.0019)+0.9847 …(2)
これを後述の連続鋳造試験に利用した。
鋳造速度:0.4 m/分
鋳型サイズ:幅600 mm×厚み280 mm
添加したBi合金:NiBi(75%Bi−Niの外径がφ10mmのワイヤーを使用)
Bi合金の添加位置:タンディッシュ内
Claims (3)
- 質量%で、C :0.03%以下、Si:0.4 %以下、Mn:3.0 %以下、P :0.04%以下、S :0.008%以下、Cu:0.2〜2.0%、Ni:5.0〜7.0%、Cr:23〜30%、Mo:2.5 〜5.0%、W :1.5〜4.0%、N :0.24〜0.40%、Al:0.030%以下に加えて、さらにBiを10〜300質量ppm含有し、残部がFeおよび不純物からなる合金を連続鋳造して鋼管製造用の素材となる鋳片を製造する方法において、
前記合金中にBiを含有させない場合の連続鋳造鋳片の横断面中心における金属間化合物の析出量I0と、Biを含有させた前記合金の連続鋳造鋳片の横断面中心における金属間化合物の析出量I との比I /I0と下記式で定義される前記合金の平均Md値との関係、並びに、前記合金の平均Md値と含有Bi量の関係を求め、この関係に基づき、前記合金の平均Md値が0.97以下で、前記の比I /I0が0.70以下となるBi含有量とすることを特徴とした鋼管用鋳片の連続鋳造方法。
平均Md値=ΣΧi・(Md)i [eV]
ここで、Χi:合金成分iの原子分率 [-]
(Md)i:合金成分iのMd値 [eV]
Md値:合金の各成分のd軌道にある電子軌道エネルギーを意味するもので、クラスター模型を用いて行う分子軌道計算法であるクラスター計算により求めることができる。 - 前記Biは、鋳造時に、Biを合金化させたワイヤーをタンディッシュ内の溶鋼に挿入することで添加することを特徴とする請求項1に記載の鋼管用鋳片の連続鋳造方法。
- 鋳型内の溶鋼、二次冷却帯における未凝固溶鋼の少なくとも一方に電磁攪拌力を作用させることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼管用鋳片の連続鋳造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015210819A JP6528644B2 (ja) | 2015-10-27 | 2015-10-27 | 鋼管用鋳片の連続鋳造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015210819A JP6528644B2 (ja) | 2015-10-27 | 2015-10-27 | 鋼管用鋳片の連続鋳造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017080765A JP2017080765A (ja) | 2017-05-18 |
JP6528644B2 true JP6528644B2 (ja) | 2019-06-12 |
Family
ID=58710255
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2015210819A Active JP6528644B2 (ja) | 2015-10-27 | 2015-10-27 | 鋼管用鋳片の連続鋳造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6528644B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN116997670A (zh) * | 2021-03-15 | 2023-11-03 | 日铁不锈钢株式会社 | 双相不锈钢 |
Family Cites Families (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP6177177B2 (ja) * | 2014-04-02 | 2017-08-09 | 日鐵住金溶接工業株式会社 | 低水素系被覆アーク溶接棒 |
JP6299349B2 (ja) * | 2014-04-03 | 2018-03-28 | 新日鐵住金株式会社 | 靭性および孔食性に優れた油井管用鋳片の連続鋳造方法 |
JP6303737B2 (ja) * | 2014-04-03 | 2018-04-04 | 新日鐵住金株式会社 | 鋼管用鋳片の連続鋳造方法 |
-
2015
- 2015-10-27 JP JP2015210819A patent/JP6528644B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2017080765A (ja) | 2017-05-18 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6493566B2 (ja) | オーステナイト系耐熱合金及びその製造方法 | |
JP4834292B2 (ja) | 金属間化合物の形成が抑制された耐食性、耐脆化性、鋳造性及び熱間加工性に優れたスーパー二相ステンレス鋼 | |
JP4681689B2 (ja) | 無方向性電磁鋼板及びその製造方法 | |
JP5072285B2 (ja) | 二相ステンレス鋼 | |
JP6675846B2 (ja) | 高温強度に優れたFe−Cr−Ni系合金 | |
CA3148069C (en) | Duplex stainless steel material | |
JP4725216B2 (ja) | 耐硫化物応力割れ性に優れた低合金油井管用鋼 | |
JP7052807B2 (ja) | Ni基合金の製造方法及びNi基合金 | |
CN104195458A (zh) | 一种低相对磁导率的不锈钢热轧板及其制备方法 | |
JP2010180459A (ja) | 2相ステンレス鋼およびその製造方法 | |
KR101821170B1 (ko) | 비용-효과적인 페라이트계 스테인리스강 | |
JP6520617B2 (ja) | オーステナイト系ステンレス鋼 | |
WO2022196498A1 (ja) | 二相ステンレス鋼 | |
JP4562280B2 (ja) | 加工性に優れ面内異方性の小さいフェライト系ステンレス鋼及びその製造方法 | |
JP6528644B2 (ja) | 鋼管用鋳片の連続鋳造方法 | |
JP6303737B2 (ja) | 鋼管用鋳片の連続鋳造方法 | |
JP6299349B2 (ja) | 靭性および孔食性に優れた油井管用鋳片の連続鋳造方法 | |
JP6942085B2 (ja) | メッキ浴用フェライト系ステンレス鋼 | |
JP2020015925A (ja) | Cr基二相合金製造物およびその製造方法 | |
JP4672433B2 (ja) | 耐熱鋳造合金およびその製造方法 | |
JPH09195005A (ja) | 高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼 | |
JPH08239734A (ja) | オーステナイト系ステンレス鋳鋼 | |
RU2625514C1 (ru) | Литейная аустенитная высокопрочная коррозионно-стойкая в неорганических и органических средах криогенная сталь и способ ее получения | |
JP2020521047A (ja) | 新規な二相ステンレス鋼 | |
JPH06145900A (ja) | 耐酸化性に優れたガラス金型材 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20180606 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20190204 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20190212 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20190405 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20190416 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20190429 |
|
R151 | Written notification of patent or utility model registration |
Ref document number: 6528644 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151 |