JPWO2019103002A1 - 偏光子および偏光板 - Google Patents

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Abstract

薄型で、かつ、非常に優れた耐熱性を有する偏光子が提供される。本発明の偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムで構成され、ヨウ素含有量が3.5重量%以上であり、105℃の環境下に30時間置いた後の単体透過率変化量ΔTsaの絶対値が5.0%以下である。ここで、単体透過率変化量ΔTsaは、下記式で表される:ΔTsa(%)=Ts30−Ts0Ts0は加熱前の単体透過率であり、Ts30は105℃の環境下に30時間置いた後の単体透過率である。

Description

本発明は、偏光子および偏光板に関する。
代表的な画像表示装置である液晶表示装置には、その画像形成方式に起因して、液晶セルの両側に偏光子(実質的には、偏光子を含む偏光板)が配置されている。偏光子は、代表的には、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルムをヨウ素等の二色性物質で染色することにより製造される(例えば、特許文献1および2)。近年、画像表示装置の薄型化の要望が高まっている。そのため、偏光子についても、さらなる薄型化が求められている。しかし、偏光子が薄くなればなるほど、高温環境下で変色しやすい、ならびに、高温環境下でクラックおよび反りが発生しやすいという耐熱性の問題がある。
特許第5048120号公報 特開2013−156391号公報
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、薄型で、かつ、非常に優れた耐熱性を有する偏光子を提供することにある。
本発明の偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムで構成され、ヨウ素含有量が3.5重量%以上であり、105℃の環境下に30時間置いた後の単体透過率変化量ΔTsaの絶対値が5.0%以下である。ここで、単体透過率変化量ΔTsaは、下記式で表される:
ΔTsa(%)=Ts30−Ts
Tsは加熱前の単体透過率であり、Ts30は105℃の環境下に30時間置いた後の単体透過率である。
1つの実施形態においては、上記偏光子は、ナトリウムイオン、炭酸イオンおよびクエン酸イオンから選択される少なくとも1つを含む。
本発明の別の局面によれば、偏光板が提供される。この偏光板は、上記の偏光子と、該偏光子の片側または両側に積層された保護フィルムと、を含む。
本発明によれば、長く望まれながら実現することができなかった、薄型で、かつ、非常に優れた耐熱性を有する偏光子を実現することができた。より詳細には、本発明によれば、高温環境下における色相変化、クラックおよび反りが顕著に抑制された薄型の偏光子を実現することができた。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
A.偏光子
A−1.偏光子の概略
本発明の実施形態による偏光子は、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルムで構成され、ヨウ素含有量が3.5重量%以上であり、105℃の環境下に30時間置いた後の単体透過率変化量ΔTsaの絶対値が5.0%以下である。
ヨウ素含有量は、十分な偏光性能と最適な透過率とを付与する観点から、偏光子の厚みに応じて適切に設定され得る。例えば、偏光子の厚みが5μmを超えて10μm以下である場合には、ヨウ素含有量は好ましくは3.5重量%〜8.0重量%であり;偏光子の厚みが3μmを超えて5μm以下である場合には、ヨウ素含有量は好ましくは5.0重量%〜13.0重量%であり;偏光子の厚みが3μm以下である場合には、ヨウ素含有量は好ましくは10.0重量%〜25.0重量%である。本発明の実施形態によれば、このようにきわめて高いヨウ素含有量を有する偏光子において、従来は困難であった非常に優れた耐熱性を実現することができる。より詳細には、きわめて高いヨウ素含有量を有する偏光子において、高温環境下における色相変化、クラックおよび反りを顕著に抑制することができる。色相変化の詳細については後述する。本明細書において「ヨウ素含有量」とは、偏光子(PVA系樹脂フィルム)中に含まれるすべてのヨウ素の量を意味する。より具体的には、偏光子中においてヨウ素はヨウ素イオン(I)、ヨウ素分子(I)、ポリヨウ素イオン(I 、I )等の形態で存在するところ、本明細書におけるヨウ素含有量は、これらの形態をすべて包含したヨウ素の量を意味する。ヨウ素含有量は、例えば、蛍光X線分析の検量線法により算出することができる。なお、ポリヨウ素イオンは、偏光子中でPVA−ヨウ素錯体を形成した状態で存在している。このような錯体が形成されることにより、可視光の波長範囲において吸収二色性が発現し得る。具体的には、PVAと三ヨウ化物イオンとの錯体(PVA・I )は470nm付近に吸光ピークを有し、PVAと五ヨウ化物イオンとの錯体(PVA・I )は600nm付近に吸光ピークを有する。結果として、ポリヨウ素イオンは、その形態に応じて可視光の幅広い範囲で光を吸収し得る。一方、ヨウ素イオン(I)は230nm付近に吸光ピークを有し、可視光の吸収には実質的には関与しない。したがって、PVAとの錯体の状態で存在するポリヨウ素イオンが、主として偏光子の吸収性能に関与し得る。
偏光子は、その厚みの上限が、1つの実施形態においては10μmであり、別の実施形態においては7μmであり、さらに別の実施形態においては3μmであり、さらに別の実施形態においては1μmである。厚みの下限は、1つの実施形態においては0.5μmであり、別の実施形態においては0.6μmであり、さらに別の実施形態においては0.8μmである。本発明の実施形態によれば、厚みが薄い偏光子であっても後述のような所望の単体透過率を実現することができ、さらに、非常に優れた耐熱性を実現することができる。代表的には、高温環境下における色相変化、クラックおよび反りを顕著に抑制することができる。
単体透過率変化量ΔTsaの絶対値は、好ましくは3.0%以下であり、より好ましくは1.0%以下である。ΔTsaの絶対値の下限は、必然的に0.0%(すなわち、加熱前後で単体透過率の変化なし)である。本発明の実施形態による偏光子は、上記のようにヨウ素含有量がきわめて高く、かつ、高温環境下における単体透過率変化量が顕著に抑制されている。したがって、高温環境下における変色が抑制された偏光子を実現することができる。このような優れた効果は、後述するように偏光子の製造方法における染色後の工程において所定のpHおよび緩衝作用を有する処理液(代表的には、炭酸水素ナトリウムおよび/またはクエン酸)でポリビニルアルコール系樹脂フィルムを処理することにより、得られる偏光子の高温環境下でのポリエン化が防止されることで実現されると推定される。これは、従来は作製すら困難であった非常に薄い(例えば、厚み7μm以下の)偏光子を実際に作製したことによって新たに見出された課題を解決するものであり、予期せぬ優れた効果である。なお、単体透過率変化量ΔTsaは、下記式で表される:
ΔTsa(%)=Ts30−Ts
ここで、Tsは加熱試験前の単体透過率であり、Ts30は105℃の環境下に30時間置いた後の単体透過率である。また、本明細書において単体透過率に関して単にTsと記載する場合は、加熱前の単体透過率Tsを意味する。
偏光子の単体透過率(Ts)は、好ましくは30.0%〜43.0%であり、より好ましくは35.0%〜41.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは99.9%以上であり、より好ましくは99.95%以上であり、さらに好ましくは99.98%以上である。単体透過率を低く設定し偏光度を高くすることにより、コントラストを高くすることができ、黒表示をより黒く表示できるので、優れた画質の画像表示装置を実現することができる。なお、単体透過率は、積分球付き分光光度計で測定した値である。単体透過率は、JIS Z8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値であり、例えば、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製、製品名:V7100)を用いて測定することができる。
偏光子は、直交a値が、好ましくは0.0〜0.6であり;直交b値が、好ましくは−0.6〜0.0である。本発明の実施形態による偏光子は、上記所望の単体透過率および偏光度ならびに非常に優れた耐熱性を実現しつつ、このように非常にニュートラルな色相を有している。このような色相であれば、青抜け等の問題が発生しない。なお、a値およびb値はそれぞれ、Lab表色系のa値およびb値である。なお、a値およびb値はそれぞれ、目的に応じて上記範囲から外れるように調整してもよい。さらに、偏光子は、105℃で30時間の加熱試験後の色相変化Δab30が好ましくは5.0以下であり、より好ましくは4.0以下である。
偏光子は、好ましくは、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、炭酸水素カリウム(KHCO)、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、およびクエン酸、ならびにこれら由来のイオンの少なくともいずれかを含み得る。このようなイオンの具体例としては、ナトリウムイオン、炭酸イオン、カリウムイオン、リン酸イオン、クエン酸イオン、炭酸一ナトリウムイオンが挙げられる。偏光子は、これらの物質および/またはイオンの2種以上を含んでいてもよい。偏光子は、より好ましくは、ナトリウムイオン、炭酸イオンおよび/またはクエン酸イオンを含み得る。これは、後述する製造方法(B項)における処理液による処理(B−1項)に起因する。偏光子がこのような化合物を含有することにより(言い換えれば、B−1項に記載する処理を含む製造方法により偏光子を製造することにより)、偏光子の高温環境下における変色を顕著に抑制することができる。これは、処理液の所定のpH領域における緩衝作用によりPVA系樹脂中のプロトンの発生を抑制することができ、結果として、高温環境下におけるPVA系樹脂中の多数の二重結合の発生(ポリエン化)を抑制し、変色を抑えることができると推定される。さらに、ポリエン化を抑制することにより、クラックおよび反りが抑制され得る。これは以下のように推定される:ポリエン化によりPVA系樹脂分子中に二重結合が形成されると、二重結合近傍のモノマー単位間の距離が小さくなる。その結果、PVA系樹脂分子(鎖)が部分的に収縮し、このような部分的収縮が反りやクラックを引き起こす場合がある。ポリエン化を抑制することにより、このような二重結合の形成が抑制されるので、結果として、反りやクラックが抑制され得る。
A−2.PVA系樹脂フィルム
PVA系樹脂フィルムを形成するPVA系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。PVA系樹脂のケン化度は、通常85モル%以上100モル%未満であり、好ましくは95.0モル%〜99.95モル%、さらに好ましくは99.0モル%〜99.93モル%である。ケン化度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。このようなケン化度のPVA系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた偏光子を得ることができる。ケン化度が高すぎる場合には、ゲル化してしまうおそれがある。
PVA系樹脂の平均重合度は、目的に応じて適切に選択され得る。平均重合度は、通常1000〜10000であり、好ましくは1200〜4500、さらに好ましくは1500〜4300である。なお、平均重合度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。
PVA系樹脂フィルムの厚みは、特に制限はなく、所望の偏光子の厚みに応じて設定され得る。PVA系樹脂フィルムの厚みは、例えば、10μm〜200μmである。
1つの実施形態においては、PVA系樹脂フィルムは、基材上に形成されたPVA系樹脂層であってもよい。基材とPVA系樹脂層との積層体は、例えば、上記PVA系樹脂を含む塗布液を基材に塗布する方法、基材にPVA系樹脂フィルムを積層する方法等により得ることができる。
B.偏光子の製造方法
B−1.偏光子の製造方法の概略
本発明の実施形態による偏光子の製造方法は、PVA系樹脂フィルムを、少なくとも延伸および染色することを含む。代表的には、当該製造方法は、PVA系樹脂フィルムを準備する工程、延伸工程、膨潤工程、染色工程、架橋工程、洗浄工程、および乾燥工程を含む。PVA系樹脂フィルムが供される各工程は、任意の適切な順序およびタイミングで行われ得る。したがって、各工程を上記の順序で行ってもよく、上記とは異なる順序で行ってもよい。必要に応じて、1つの工程を複数回行ってもよい。さらに、上記以外の工程(例えば、不溶化工程)を任意の適切なタイミングで行ってもよい。なお、PVA系樹脂フィルムが基材上に形成されたPVA系樹脂層である場合、基材とPVA系樹脂層との積層体が上記の工程に供される。
本発明の実施形態による偏光子の製造方法においては、染色の後に、好ましくは、PVA系樹脂フィルムを処理液で処理することを含む。処理液による処理は、染色の後であれば任意の適切なタイミングで行えばよい。処理液による処理は、具体的には、架橋工程の前に行ってもよく後に行ってもよく、洗浄工程の前に行ってもよく後に行ってもよい。延伸工程が染色工程の後に行われる場合には、処理液による処理は、延伸工程の前に行ってもよく後に行ってもよい。膨潤工程が染色工程の後に行われる場合には、処理液による処理は、膨潤工程の前に行ってもよく後に行ってもよい。不溶化工程が染色工程の後に行われる場合には、処理液による処理は、不溶化工程の前に行ってもよく後に行ってもよい。代表的には、処理液による処理は、洗浄工程の後かつ乾燥工程の前、あるいは、2段階で乾燥工程を行う際の第1乾燥工程と第2乾燥工程との間に行われ得る。
処理液は、pHが例えば3.0〜8.0であり、好ましくは5.0〜8.0であり、より好ましくは5.5〜7.5であり、さらに好ましくは5.5〜6.5である。別の実施形態においては、より好ましくは3.5〜5.5であり、さらに好ましくは3.7〜4.7である。さらに、処理液は、好ましくは、当該pHの範囲(すなわち、pHが3.0〜8.0の範囲)において緩衝作用を有する。このような処理液としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸を含む水溶液であり得る。これらの化合物を含む処理液は、例えば酢酸系化合物を含む処理液に比べて高いpH領域で緩衝作用を有し、結果として、高温環境下においてより優れた変色防止効果を有し得る。水溶液は、これらの化合物を単独で含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。処理液は、好ましくは、炭酸水素ナトリウムまたはクエン酸の水溶液である。したがって、本発明の実施形態による偏光子は、上記のとおり炭酸水素ナトリウムおよび/またはクエン酸を含み得る。水溶液の濃度は、所望のpHおよび緩衝作用に応じて適切に設定され得る。例えば、炭酸水素ナトリウム水溶液の濃度は、好ましくは0.20重量%〜2.0重量%であり得、クエン酸水溶液の濃度は、好ましくは0.10重量%〜3.0重量%であり得る。また、水溶液は、必要に応じてpH調整剤を含んでいてもよい。pH調整剤としては、例えば、硫酸(pHを小さくする)、水酸化ナトリウム(pHを大きくする)が挙げられる。このような処理液でPVA系樹脂フィルムを処理することにより、偏光子の高温環境下における変色を顕著に抑制することができる。これは、上記のとおり、処理液の所定のpH領域における緩衝作用によりPVA系樹脂中のプロトンの発生を抑制することができ、結果として、高温環境下におけるPVA系樹脂中の多数の二重結合の発生(ポリエン化)を抑制し、変色を抑えることができると推定される。
処理液による処理は、代表的には、処理液とPVA系樹脂フィルムとを接触させることを含む。接触方法としては、任意の適切な方法が挙げられる。具体例としては、PVA系樹脂フィルムの処理液への浸漬、PVA系樹脂フィルムへの処理液の塗布または噴霧が挙げられる。処理液の塗布または噴霧が好ましい。浸漬における浸漬前後の偏光子の吸収スペクトル変化という不具合を防止し、結果としてPVAのポリエン化をさらに良好に防止することができるからである。処理液のPVA系樹脂フィルムへの塗布または噴霧方法(手段)としては、任意の適切な方法(手段)が採用され得る。塗布手段としては、例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーターが挙げられる。噴霧手段としては、任意の適切な噴霧装置(例えば、加圧ノズル式、回転ディスク式)が挙げられる。
以下、各工程について説明するが、上記のとおり各工程は任意の適切な順序で行われ得、記載順序に限定されるものではない。
B−2.延伸工程
延伸工程において、PVA系樹脂フィルムは、代表的には3倍〜7倍に一軸延伸される。延伸方向は、フィルムの長手方向(MD方向)であってもよく、フィルムの幅方向(TD方向)であってもよい。延伸方法は、乾式延伸であってもよく、湿式延伸であってもよく、これらを組み合せてもよい。また、架橋工程、膨潤工程、染色工程等を行う際にPVA系樹脂フィルムを延伸してもよい。なお、延伸方向は、得られる偏光子の吸収軸方向に対応し得る。
B−3.膨潤工程
膨潤工程は、通常、染色工程の前に行われる。膨潤工程は、例えば、PVA系樹脂フィルムを膨潤浴に浸漬することにより行われる。膨潤浴としては、通常、蒸留水、純水等の水が用いられる。膨潤浴は、水以外の任意の適切な他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、アルコール等の溶媒、界面活性剤等の添加剤、ヨウ化物等が挙げられる。ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が挙げられる。好ましくは、ヨウ化カリウムが用いられる。膨潤浴の温度は、例えば、20℃〜45℃である。また、浸漬時間は、例えば、10秒〜300秒である。
B−4.染色工程
染色工程は、PVA系樹脂フィルムを二色性物質で染色する工程である。好ましくは二色性物質を吸着させることにより行う。当該吸着方法としては、例えば、二色性物質を含む染色液にPVA系樹脂フィルムを浸漬させる方法、PVA系樹脂フィルムに当該染色液を塗工する方法、当該染色液をPVA系樹脂フィルムに噴霧する方法等が挙げられる。好ましくは、染色液にPVA系樹脂フィルムを浸漬させる方法である。二色性物質が良好に吸着し得るからである。
上記二色性物質としては、例えば、ヨウ素、二色性染料が挙げられる。好ましくは、ヨウ素である。二色性物質としてヨウ素を用いる場合、染色液としては、ヨウ素水溶液が好ましく用いられる。ヨウ素水溶液のヨウ素の含有量は、水100重量部に対して、好ましくは0.04重量部〜5.0重量部である。ヨウ素の水に対する溶解度を高めるため、ヨウ素水溶液にヨウ化物を配合することが好ましい。ヨウ化物としては、ヨウ化カリウムが好ましく用いられる。ヨウ化物の含有量は、水100重量部に対して、好ましくは0.3重量部〜15重量部である。
染色液の染色時の液温は、任意の適切な値に設定することができ、例えば、20℃〜50℃である。染色液にPVA系樹脂フィルムを浸漬させる場合、浸漬時間は、例えば、5秒〜5分である。
B−5.架橋工程
架橋工程においては、通常、架橋剤としてホウ素化合物が用いられる。ホウ素化合物としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂等が挙げられる。好ましくは、ホウ酸である。架橋工程においては、ホウ素化合物は、通常、水溶液の形態で用いられる。
ホウ酸水溶液を用いる場合、ホウ酸水溶液のホウ酸濃度は、例えば、1重量%〜15重量%であり、好ましくは1重量%〜10重量%である。ホウ酸水溶液には、ヨウ化カリウム等のヨウ化物、硫酸亜鉛、塩化亜鉛等の亜鉛化合物をさらに含有させてもよい。
架橋工程は、任意の適切な方法により行うことができる。例えば、ホウ素化合物を含む水溶液にPVA系樹脂フィルムを浸漬する方法、ホウ素化合物を含む水溶液をPVA系樹脂フィルムに塗布する方法、または、ホウ素化合物を含む水溶液をPVA系樹脂フィルムに噴霧する方法が挙げられる。ホウ素化合物を含む水溶液に浸漬することが好ましい。
架橋に用いる溶液の温度は、例えば、25℃以上であり、好ましくは30℃〜85℃、さらに好ましくは40℃〜70℃である。浸漬時間は、例えば、5秒〜800秒であり、好ましくは8秒〜500秒である。
B−6.洗浄工程
洗浄工程は、代表的には、架橋工程以降に行われ得る。洗浄工程は、代表的には、PVA系樹脂フィルムを洗浄液に浸漬させることにより行われる。洗浄液の代表例としては、純水が挙げられる。純水にヨウ化カリウムを添加してもよい。
洗浄液の温度は、例えば5℃〜50℃である。浸漬時間は、例えば1秒〜300秒である。
B−7.乾燥工程
乾燥工程は、任意の適切な方法により行うことができる。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、送風乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥等が挙げられる。加熱乾燥が好ましく用いられる。加熱乾燥を行う場合、加熱温度は、例えば、30℃〜100℃である。また、乾燥時間は、例えば、20秒〜10分間である。
C.偏光板
本発明の実施形態による偏光子は、代表的には、その片側または両側に保護フィルムが積層された状態で(すなわち、偏光板として)使用される。実用的には、偏光板は、最外層として粘着剤層を有する。粘着剤層は、代表的には画像表示装置側の最外層となる。粘着剤層には、セパレーターが剥離可能に仮着され、実際の使用まで粘着剤層を保護するとともに、ロール形成を可能としている。
保護フィルムとしては、任意の適切な樹脂フィルムが用いられる。樹脂フィルムの形成材料としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重合体樹脂等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂をいう。
1つの実施形態においては、上記(メタ)アクリル系樹脂として、グルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が用いられる。グルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂(以下、グルタルイミド樹脂とも称する)は、例えば、特開2006−309033号公報、特開2006−317560号公報、特開2006−328329号公報、特開2006−328334号公報、特開2006−337491号公報、特開2006−337492号公報、特開2006−337493号公報、特開2006−337569号公報、特開2007−009182号公報、特開2009−161744号公報、特開2010−284840号公報に記載されている。これらの記載は、本明細書に参考として援用される。
基材とPVA系樹脂層との積層体を用いて偏光子を製造する場合には、基材を剥離せずにそのまま保護フィルムとして用いてもよい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
(1)ヨウ素含有量
実施例、比較例および参考例で得られた積層体の偏光子について、蛍光X線分析装置(リガク社製、商品名「ZSX−PRIMUS II」、測定径:ψ20mm)を用いて蛍光X線強度(kcps)を測定した。一方、当該偏光子の厚み(μm)を、分光膜厚計(大塚電子社製、商品名「MCPD−3000」)を用いて測定した。得られた蛍光X線強度と厚みから下記式を用いてヨウ素含有量(重量%)を求めた。
(ヨウ素濃度)=20.5×(蛍光X線強度)/(フィルム厚み)
なお、ヨウ素含有量を算出する際の係数は測定装置によって異なるが、当該係数は適切な検量線を用いて求めることができる。
(2)単体透過率変化量ΔTsaおよびΔTsa´
実施例、比較例および参考例で得られた積層体の偏光子側に反射型偏光子(3M社製、商品名「DBEF」)を貼り合わせた。次いで、熱可塑性樹脂基材を剥離し、当該剥離面に、厚み20μmのアクリル粘着剤層を介して厚み1.3mmの無アルカリガラスを貼り合せ、試験サンプルとした。この試験サンプルを105℃の条件で30時間加熱した(加熱試験)。試験前、加熱試験後の偏光子の単体透過率を、それぞれ、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製、製品名:V7100)を用いて測定した。加熱前の単体透過率Tsおよび加熱試験後の単体透過率Ts30から、下記式を用いて単体透過率変化量ΔTsaを求めた。
ΔTsa(%)=Ts30−Ts
また、加熱試験の加熱時間を20時間とした場合のΔTsa´(%)=Ts20−Tsも求めた。
(3)色相変化Δab
実施例、比較例および参考例で得られた積層体について、紫外可視分光光度計(日本分光製 V−7100)を用いてa値およびb値を測定した。これをa値およびb値とした。さらに、105℃の条件で20時間加熱した後のa20値およびb20値、105℃の条件で30時間加熱した後のa30値およびb30値をそれぞれ求めた。これらの値から下記式を用いて色相変化量Δab20およびΔab30をそれぞれ求めた。
Δab20={(a20−a+(b20−b1/2
Δab30={(a30−a+(b30−b1/2
(4)偏光子の初期外観
実施例、比較例および参考例で得られた積層体の偏光子(すなわち、上記(2)の加熱試験前の偏光子)の外観を目視により観察し、以下の基準で評価した。
○:白濁は認められなかった
△:白濁がわずかに認められた
×:白濁が顕著であった
(5)クラック
実施例、比較例および参考例で得られた積層体を115℃で72時間加熱した後、偏光子のクラックの状態を目視により観察し、以下の基準で評価した。
○:クラックは認められなかった
×:クラックが認められた
(6)反り
実施例1および比較例1で得られた積層体の偏光子側の表面を、厚み20μmのアクリル粘着剤層を介して厚み0.55mmの無アルカリガラスを貼り合せ、試験サンプルとした。この試験サンプルを115℃で72時間加熱した後、反り量を測定した。反り量は、試験片の4隅についてガラス板からの高さをそれぞれ測定し、一番大きい値を反り量とした。実施例1の反り量は0.0mmで「良好」であり、比較例1の反り量は0.75mmで「不良(反りが顕著)」であった。
[実施例1]
熱可塑性樹脂基材として、吸水率0.75%、Tg75℃の非晶質のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)フィルム(厚み:100μm)を用いた。基材の片面に、コロナ処理を施し、このコロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(重合度1200、アセトアセチル変性度4.6%、ケン化度99.0モル%以上、日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を9:1の比で含む水溶液を25℃で塗布および乾燥して、厚み11μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、テンター延伸機を用いて、140℃で積層体の長手方向と直交する方向に4.5倍空中延伸した(延伸処理)。
次いで、積層体を液温25℃の染色浴(ヨウ素濃度1.4重量%およびヨウ化カリウム濃度9.8重量%の水溶液)に12秒間浸漬させ、染色した(染色処理)。
次いで、積層体を液温25℃の洗浄浴(純水)に6秒間浸漬させた(第1洗浄処理)。
次いで、液温60℃の架橋浴(ホウ素濃度1重量%およびヨウ化カリウム濃度1重量%の水溶液)に16秒間浸漬させた(架橋処理)。
次いで、積層体を液温25℃の洗浄浴(ヨウ化カリウム濃度1重量%の水溶液)に3秒間浸漬させた(第2洗浄処理)。
次いで、積層体を60℃のオーブンで21秒間乾燥させた(第1乾燥処理)。
次いで、積層体のPVA系樹脂層にバーコーターを用いて処理液(炭酸水素ナトリウム0.5重量%およびイソプロピルアルコール50重量%の水溶液:pH=6.0)を塗布した。なお、処理液のpHは、希硫酸を混合することにより調整した。
最後に、積層体を50℃のオーブンで60秒間乾燥させ、厚み1.2μmのPVA系樹脂層(偏光子)を有する積層体を得た。得られた偏光子のヨウ素含有量は20.9重量%、単体透過率は40.3%であった。
得られた積層体を上記(2)〜(6)の評価に供した。結果を表1に示す。
[実施例2]
処理液としてクエン酸0.2重量%およびイソプロピルアルコール50重量%の水溶液(pH=6.0)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、偏光子を有する積層体を得た。なお、処理液のpHは、水酸化ナトリウムを混合することにより調整した。得られた偏光子のヨウ素含有量は20.5重量%、単体透過率は39.5%であった。得られた積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[実施例3]
得られる偏光子の単体透過率が43%近傍となるように染色処理の条件を変化させたこと以外は実施例1と同様にして、偏光子を有する積層体を得た。得られた偏光子のヨウ素含有量は6.5重量%、単体透過率は43.2%であった。得られた積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[実施例4]
得られる偏光子の単体透過率が43%近傍となるように染色処理の条件を変化させたこと以外は実施例2と同様にして、偏光子を有する積層体を得た。得られた偏光子のヨウ素含有量は6.5重量%、単体透過率は42.8%であった。得られた積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[実施例5]
処理液の炭酸水素ナトリウムを1.0重量としたこと以外は実施例1と同様にして、偏光子を有する積層体を得た。得られた偏光子のヨウ素含有量は20.5重量%、単体透過率は39.5%であった。得られた積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[比較例1]
処理液による処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、偏光子を有する積層体を得た。得られた偏光子のヨウ素含有量は21.5重量%、単体透過率は39.3%であった。得られた積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[比較例2]
処理液による処理を行わなかったこと、および、得られる偏光子の単体透過率が43%近傍となるように染色処理の条件を変化させたこと以外は実施例1と同様にして、偏光子を有する積層体を得た。得られた偏光子のヨウ素含有量は6.7重量%、単体透過率は43.2%であった。得られた積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[参考例1]
得られる偏光子の厚みが12μmとなるようにPVA水溶液の塗布厚みを変化させたこと、および、得られる偏光子の単体透過率が43%近傍となるように染色処理の条件を変化させたこと以外は実施例1と同様にして、偏光子を有する積層体を得た。得られた偏光子のヨウ素含有量は3.3重量%、単体透過率は43.0%であった。得られた積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[参考例2]
処理液による処理を行わなかったこと、および、得られる偏光子の単体透過率が45%以上となるように染色処理の条件を変化させたこと以外は実施例1と同様にして、偏光子を有する積層体を得た。得られた偏光子のヨウ素含有量は2.1重量%、単体透過率は45.7%であった。得られた積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
Figure 2019103002
表1から明らかなように、本発明の実施例の偏光子は、加熱試験後の単体透過率変化、色相変化、クラックおよび反りのいずれにも優れており、非常に優れた耐熱性を有することがわかる。さらに、参考例1および2を参照すると明らかなように、耐熱性は、薄型でかつヨウ素含有量が非常に大きい偏光子に特有の課題であることがわかる。
本発明の偏光子は、液晶テレビ、液晶ディスプレイ、携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯ゲーム機、カーナビゲーション、コピー機、プリンター、ファックス、時計、電子レンジ等の液晶パネルに幅広く適用させることができる。

Claims (3)

  1. ポリビニルアルコール系樹脂フィルムで構成され、
    ヨウ素含有量が3.5重量%以上であり、
    105℃の環境下に30時間置いた後の単体透過率変化量ΔTsaの絶対値が5.0%以下である、偏光子:
    ここで、単体透過率変化量ΔTsaは、下記式で表される:
    ΔTsa(%)=Ts30−Ts
    Tsは加熱前の単体透過率であり、Ts30は105℃の環境下に30時間置いた後の単体透過率である。
  2. ナトリウムイオン、炭酸イオンおよびクエン酸イオンから選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の偏光子。
  3. 請求項1または2に記載の偏光子と、該偏光子の片側または両側に積層された保護フィルムと、を含む、偏光板。
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