JPWO2019077657A1 - 鉛蓄電池、アイドリングストップ車及びマイクロハイブリッド車 - Google Patents

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Abstract

上面が開口している電槽と、電槽に収容された正極及び負極と、電槽の開口を閉じる蓋と、を備える、鉛蓄電池であって、負極は、Pb成分と、リグニンスルホン酸及び/又はその塩と、比表面積が10.0m2/g以下である炭素材料と、を含む負極活物質を有する、鉛蓄電池。

Description

本発明は、鉛蓄電池、アイドリングストップ車及びマイクロハイブリッド車に関するものである。
近年、自動車においては、大気汚染防止又は地球温暖化防止のため、様々な燃費向上対策が検討されている。燃費向上対策を施した自動車としては、例えば、エンジンの動作時間を短くするアイドリングストップシステム車(以下、「ISS車」という)、エンジンの動力によるオルタネータの発電を低減する発電制御車等のマイクロハイブリッド車などが検討されている。
ISS車では、エンジンの始動回数が多くなるため、鉛蓄電池の大電流放電が繰り返される。また、ISS車及びマイクロハイブリッド車では、オルタネータによる発電量が少なくなり、鉛蓄電池の充電が間欠的に行われるため充電が不充分となる。そのため、ISS車及びマイクロハイブリッド車で使用される鉛蓄電池は、PSOC(Partial State Of Charge)と呼ばれる部分充電状態で使用されることになる。鉛蓄電池がPSOC下で使用されると、満充電状態で使用される場合よりも寿命が短くなる。
また、近年、欧州では、マイクロハイブリッド車の制御に則した充放電サイクル中における鉛蓄電池の充電性が重要視されており、充放電サイクル中における鉛蓄電池の充電性能の評価規格として、DCA(Dynamic Charge Acceptance)評価が規格化されつつある。つまり、欧州では、PSOCと呼ばれる部分充電状態で使用される鉛蓄電池のDCA性能が重要視されている。
これに対し、サイクル寿命特性(以下、「サイクル特性」という)及び充電性能を向上させるための手段として、下記特許文献1には、中空シェル構造を有するカーボン、及び、ビスフェノール類と亜硫酸塩もしくはアミノ酸のホルムアルデヒド縮合物を含む負極活物質を備えた鉛蓄電池に関する技術が開示されている。
特開2003−338285号公報
ところで、ISS車及びマイクロハイブリット車では、短時間ではあるが、回生充電等により鉛蓄電池の大電流充電が繰り返される。大電流充電が繰り返されると、電解液中の水の電気分解が起こることが知られている。電気分解が起こると、水が分解して生じる酸素ガス及び水素ガスが電池外に排出されるため、電解液中の水が減少する。また、電池内温度の上昇等により電解液中の水が揮発し電解液のミストが発生した場合、電解液のミストが上記ガスを排出するための排気栓を通って排出されることで更に電解液中の水が減少する。その結果、電解液中の硫酸濃度が上昇し、正極の腐食劣化等により容量低下が進行する。また、電解液の液面が低下して電極(負極等)が電解液より露出すると、放電容量が急激に低下する、電極(負極等)とストラップとの接続部又はストラップ自体が腐食するなどの問題が発生する。このような理由から、鉛蓄電池の電解液中の水が減少した場合、減少した分の水を補水してメンテナンスを行う必要がある。そこで、鉛蓄電池に対しては、メンテナンスフリーの観点から電解液中の水の減少を抑制することが求められている。特に欧州では、メンテナンスを行わないことが標準となっているため、上記電解液の減液を抑制することはDCA性能の向上と並ぶ重要な課題となっている。
一方、特許文献1の手法では、電解液の減液の抑制が充分でなく、減液の抑制とDCA性能とを両立することが難しい。
そこで、本発明は、減液の抑制性能とDCA性能とを両立することができる鉛蓄電池、並びに、該鉛蓄電池を備えるアイドリングストップ車及びマイクロハイブリッド車を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の比表面積を有する炭素材料と、特定の添加剤と、を負極活物質に含有させることにより、減液の抑制とDCA性能とを両立することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の一側面は、セル室を有し、且つ、上面が開口している電槽と、セル室に収容された電極群及び電解液と、開口を閉じる蓋と、を備え、電極群は負極及び正極を有し、負極は、Pb成分と、リグニンスルホン酸及び/又はその塩と、比表面積が10.0m/g以下である炭素材料と、を含む負極活物質を有する、鉛蓄電池に関する。
この鉛蓄電池によれば、減液の抑制とDCA性能とを両立することができる。また、この鉛蓄電池によれば、EN規格(欧州統一規格)に従って評価されるサイクル特性(DOD17.5%寿命性能)が充分となり得る。つまり、本発明の一側面によれば、マイクロハイブリッド車に用いられる鉛蓄電池の性能として欧州で求められる性能を満足し得る鉛蓄電池を提供することができる。
一態様において、リグニンスルホン酸及びその塩の含有量は、負極活物質の全質量を基準として、0.05〜0.5質量%である。
一態様において、炭素材料の含有量は、負極活物質の全質量を基準として、0.2〜3.5質量%である。
一態様において、蓋は、第1の蓋部と、第1の蓋部上に設けられた第2の蓋部と、第1の蓋部と第2の蓋部との間に形成された排気室と、を有し、排気室とセル室との間を隔てる第1の蓋部の底壁には、電解液をセル室内に還流させる還流孔が設けられている。
一態様において、セル室の幅をXmmとし、電極群の厚さをYmmとすると、XとYは以下の条件式を満たす。
−1.1≦X−Y≦1.2
一態様において、隣り合う負極と正極との距離は0.4〜0.8mmである。
一態様において、炭素材料の比表面積は7.0m/g以下又は1.0m/g以下である。
本発明の他の側面は、上記鉛蓄電池を備える、アイドリングストップシステム車に関する。
本発明の他の側面は、上記鉛蓄電池を備える、マイクロハイブリッド車に関する。
本発明の鉛蓄電池によれば、減液の抑制性能とDCA性能とを両立することができる。また、本発明によれば、鉛蓄電池のマイクロハイブリッド車への応用を提供できる。また、本発明によれば、鉛蓄電池のアイドリングストップ車への応用を提供できる。すなわち、本発明によれば、減液の抑制性能とDCA性能とを両立することができる該鉛蓄電池を備えるアイドリングストップ車及びマイクロハイブリッド車を提供することができる。
図1は、一実施形態に係る鉛蓄電池の全体構成及び内部構造を示す斜視図である。 図2は、図1の鉛蓄電池に用いられる電槽を示す斜視図である。 図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。 図4は、図1の鉛蓄電池に用いられる第1の蓋部の平面図である。 図5は、図1の鉛蓄電池に用いられる第2の蓋部の底面図である。 図6は、図4のVI−VI線に沿った蓋の断面図である。 図7は、図1の鉛蓄電池に用いられる極板群の斜視図である。 図8は、図7の極板群を電極板の積層方向から視た側面図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<鉛蓄電池>
図1は、一実施形態の鉛蓄電池の全体構成を示す斜視図である。図1に示す鉛蓄電池1は液式鉛蓄電池である。図1に示すように、本実施形態に係る鉛蓄電池1は、上面が開口している電槽2と、電槽2の開口を閉じる蓋3と、電槽2に収容された極板群(電極群)及び電解液(図示せず。)と、を備えている。
(電槽)
図2は、図1の鉛蓄電池に用いられる電槽を示す斜視図であり、図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。図2及び図3に示すように、電槽2は直方体状を呈しており、長方形状の底面部と、底面部の長辺部に隣接する一対の長手側面部と、底面部の短辺部に隣接する一対の短手側面部とからなる。以下では、底面部の長辺部に沿う方向及び底面部の短辺部に沿う方向をそれぞれ電槽2の長手方向及び短手方向とする。電槽2は、例えばポリプロピレンで形成されている。
電槽2の内部は、5枚の隔壁21によって6区画に分割されており、電槽2の長手方向に沿って並ぶように第1〜第6のセル室22a〜22f(以下、場合により、「セル室22」と総称する。)が形成されている。セル室22は極板群が挿入される空間である。極板群は、電極板の積層方向が電槽2の長手方向となるように、電槽2の各セル室22に収容されている。極板群は、単電池とも呼ばれており、起電力は2Vである。自動車用の電装品は、直流電圧12Vを昇圧又は降圧して駆動するため、6個の極板群を直列に接続して、2V×6=12Vとしている。そのため、鉛蓄電池1を自動車用の電装品として用いる場合、セル室は6個必要となる。なお、鉛蓄電池1を他の用途で用いる場合は、セル室の数は6個に限定されるものではない。
図2及び図3に示すように、隔壁21の両側面と、電槽2の隔壁21と対向する一対の内壁面23とには、電槽2の高さ方向(開口面に垂直な方向)に延びる複数のリブ(リブ部)24が設けられていてよい。すなわち、隔壁21は、平坦部25と、平坦部25から隆起した電槽2の高さ方向に延びる複数のリブ24と、を有していてよい。リブ24は、セル室22に挿入された極板群を、電極板の積層方向において適切に加圧(圧縮)する機能を有する。
各セル室22の幅Xは、リブ24の高さ等によって調整することができる。複数のセル室22の幅は同一でも異なっていてもよい。なお、本明細書において、セル室の幅Xは、隔壁21がリブ24を有しない場合、対向する隔壁21間の最短距離、又は、隔壁21と当該隔壁21に対向する電槽2の内壁面23との間の最短距離(以下、「壁間距離Xa」という。)と定義される。隔壁21及び/又は電槽2の内壁面23がリブを有する場合、セル室の幅Xは、壁間距離Xaから、最も高いリブの高さHaを引いた値と定義される(図3参照。)。例えば、対向する2つの隔壁21のリブの高さHaが同一である場合、セル室の幅Xは、[壁間距離Xa]−(2×[リブの高さHa])となる。
(蓋)
図1に示すように、蓋3は、第1の蓋部4及び第2の蓋部5から構成される二重蓋構造を有しており、第1の蓋部4と第2の蓋部5との間には複数の排気室D1〜D6が形成されている。すなわち、蓋3は、第1の蓋部4と、第2の蓋部5と、第1の蓋部4と第2の蓋部5との間に形成された排気室と、を有する。蓋3は、平面視略矩形状を呈しており、該矩形の4辺に沿う各方向のうち、蓋3の長手方向の一端及び他端を、電槽2の長手方向の一端及び他端にそれぞれ一致させ、蓋3の短手方向の一端及び他端を、電槽2の短手方向の一端及び他端にそれぞれ一致させた状態で、電槽2上に設けられている。蓋3(第1の蓋部4及び第2の蓋部5)は、例えばポリプロピレンで形成されている。
蓋3には、第1の蓋部4の上面のうち第2の蓋部5が設けられていない領域に、第1の蓋部4の上面から上方に突出した中空の突出部6が形成されている。この突出部6の一部には、インジケータ取り付け孔7が形成されている。このインジケータ取り付け孔7は、電槽内の電解液の液面レベルを表示するインジケータ(図示せず。)を取り付けるために用いられる。本実施形態では、電槽2に設けられているセル室のうちの一のセル室の上方にインジケータ取り付け孔7が設けられており、該セル室内の電解液の液面レベルを表示するインジケータがインジケータ取り付け孔7に取り付けられるようになっている。本実施形態では、一のセル室内の電解液の液面レベルを代表してインジケータに表示させることにより、他のセル室内の電解液の液面レベルを推測する。
蓋3には、第1の蓋部4の上面のうち第2の蓋部5が設けられていない領域に、負極端子8及び正極端子9が形成されている。負極端子8及び正極端子9は、負極柱及び正極柱を介して電槽2に収容された極板群と接続されている。
以下、図4〜図6を参照して、蓋3の詳細を説明する。図4は第1の蓋部の平面図であり、図5は第2の蓋部の底面図である。図6は、図4のVI−VI線に沿った断面図であり、第1の蓋部4と第2の蓋部5とを溶着した状態での蓋3の断面図である。
図4に示すように、第1の蓋部4は、平面視略矩形状を呈しており、第1の蓋部4の一部には、その上に第2の蓋部5が配置される排気室構成部400が形成されている。排気室構成部400は、その長手方向の一端400a及び他端400bをそれぞれ第1の蓋部4の長手方向の一端4a及び他端4b寄りに位置させ、短手方向の一端400cを第1の蓋部4の短手方向の中央部付近に位置させ、かつ短手方向の他端400dを第1の蓋部4の短手方向(電槽の短手方向)の他端端4d付近に位置させた状態で形成されている。排気室構成部400の上面には、その外周縁に沿って伸びる周壁部40が形成され、この周壁部40の内側に第1の蓋部側凹部が形成されている。図4に示す例では、排気室構成部400の長手方向の一端4a寄りの部分及び他端4b寄りの部分の幅寸法(短手方向の長さ)を拡大するために、排気室構成部400の長手方向の中央寄りの部分よりも短手方向の一端側に突出した突出部401及び402が形成されている。
図5に示すように、第2の蓋部5は、排気室構成部400と同様の輪郭形状を有しており、その長手方向の一端5a側及び他端5b側には、それぞれ排気室構成部400の両端の突出部401及び402と同様に短手方向に突出した突出部501及び502が形成されている。また、図5に示すように、第2の蓋部5の下面にも、その外周縁に沿って伸びる周壁部50が形成され、周壁部50の内側に第2の蓋部側凹部が形成されている。図5に示す例では、第2の蓋部5の下面に、周壁部50の外側を取り囲む外壁部51が形成されている。
第2の蓋部5は、排気室構成部400上に設けられており、第1の蓋部4と第2の蓋部5とは熱溶着により接合されている。具体的には、第2の蓋部5は、第2の蓋部5の長手方向の一端5a及び他端5bをそれぞれ第1の蓋部4の長手方向の一端4a及び他端4bに一致させ、第2の蓋部5の短手方向の一端5c及び他端5dをそれぞれ第1の蓋部4の排気室構成部の短手方向の一端400c及び他端400dに一致させた状態で排気室構成部400上に配置されている。また、排気室構成部400と第2の蓋部5とは、周壁部40と周壁部50とを合わせた状態で接合されており、上記第1の蓋部側凹部及び第2の蓋部側凹部により、第1の蓋部4の排気室構成部400と第2の蓋部5との間に排気室を形成するための空間が形成されている。
第1の蓋部4の排気室構成部400と第2の蓋部5との間の空間には、第1〜第6のセル室22a〜22fの上にそれぞれ位置させて、第1〜第6の排気室D1〜D6が形成されている(図4及び図5参照。)。これらの排気室は、第1の蓋部4の排気室構成部400及び第2の蓋部5の周壁部50の内側に所定の板厚を持って形成された所定パターンの第1の隔壁部42及び52が相互に接合されることにより形成されている。排気室D1〜D6は、電槽2内の各セル室22から発生した電解液のミストを内部に留め、排気室内で液化した電解液を各セル室22内に還流させる機能を有している。
本実施形態では、両端に配置された第1の排気室D1及び第6の排気室D6の一部を、第1の蓋部4及び第2の蓋部5に設けられた第1の隔壁部42及び52の一部に形成された第2の隔壁部42a及び52aで仕切ることにより、第1の蓋部4の排気室構成部400の長手方向の一端400a側及び他端400b側、並びに、第2の蓋部5の長手方向の一端5a側及び他端5b側に、それぞれ集中排気室E1及びE2が形成されている。
各排気室は、第1の蓋部4の長手方向に向いた状態で相対する一対の長手方向内側面Sa及びSbと、第1の蓋部4の短手方向に向いた状態で相対する一対の短手方向内側面Sc及びSdとを有しており、各排気室内に4つのコーナ部C1〜C4が形成されている。本明細書においては、説明の便宜上、各排気室の4つの内側面Sa〜Sdのうち、第1の蓋部4の長手方向に相対する内側面Sa及びSbを長手方向内側面といい、第1の蓋部4の短手方向に相対する内側面Sc及びSdを短手方向内側面という。
第1の蓋部4の長手方向の一端4a寄りに配置された3個の排気室D1〜D3においては、第1の蓋部4の一対の長手方向内側面のうち、第1の蓋部4の長手方向の一端4a側に位置する長手方向内側面を一方の長手方向内側面Saとし、第1の蓋部4の長手方向の他端4b側に位置する長手方向内側面を他方の長手方向内側面Sbとしている。また、第1の蓋部4の長手方向の他端4b寄りに配置された他の3個の排気室D4〜D6においては、一対の長手方向内側面のうち、第1の蓋部4の長手方向の他端4b側に位置する長手方向内側面を一方の長手方向内側面Saとし、第1の蓋部4の長手方向の一端4a側に位置する長手方向内側面を他方の長手方向内側面Sbとしている。
排気室D1〜D6は、平面視略正方形状に形成されているが、第1の蓋部4の長手方向の両端に配置された第1の排気室D1及び第6の排気室D6は、それぞれの一部に集中排気室E1及びE2が形成されていることにより、一方の長手方向内側面Saが変形された形状を呈している。
上記のように、第1の蓋部4の排気室構成部400と第2の蓋部5との間には、排気室D1〜D6と集中排気室E1及びE2とが形成される他、更に後述するように、排気室D1〜D6を集中排気室E1及びE2に接続するための各種の流体通路が形成される。これらの流体通路は、第1の蓋部4及び第2の蓋部5にそれぞれ設けられて互いに接合される第1の隔壁部42,52により構成されるが、以下の説明では、主として第1の蓋部4を示す図4を用いて、第1の蓋部4と第2の蓋部5との間に設けられる流体通路の構成を説明する。排気室、流体通路等を形成するために第1の蓋部及び第2の蓋部にそれぞれ設けられる壁部のパターンは、互いに鏡像の関係にある。
図4に示すように、第1の蓋部4の排気室構成部400と第2の蓋部5との間には、第1の長手方向流体通路L1と、第2の長手方向流体通路L2と、第1の短手方向流体通路W1aと、第2の短手方向流体通路W1bとが形成されている。
第1の長手方向流体通路L1は、排気室構成部400の短手方向の他端400d側で、排気室D1〜D6の外側(排気室D1〜D6と周壁部40との間)を排気室構成部400の長手方向に沿って直線的に延びるように設けられている。第1の長手方向流体通路L1の長手方向の一端側及び他端側には、それぞれ排気室構成部400の突出部401及び402に対応する位置で、幅寸法(短手方向の長さ)が拡大された拡大部L11及びL12が形成されている。これらの第1の長手方向流体通路L1の拡大部L11及びL12の端部が、それぞれ第1の排気室D1及び第6の排気室D6と周壁部40との間に形成された流路43及び44を通して、集中排気室E1及びE2に接続されている。
第2の長手方向流体通路L2は、排気室構成部400の短手方向の一端400c側で、排気室D1〜D6の外側(排気室D1〜D6と周壁部40との間)を直線的に延びるように設けられている。第1の短手方向流体通路W1a及び第2の短手方向流体通路W1bは、それぞれ、互いに隣り合う第2,第3の排気室D2,D3間及び第4,第5の排気室D4,D5間を、排気室構成部400の短手方向に延びるように設けられており、第1の長手方向流体通路L1と第2の長手方向流体通路L2との間を接続している。
第2の長手方向流体通路L2は、排気室構成部400の長手方向の中央部に設けられた仕切壁部45により、第1の部分L2aと、第2の部分L2bとに仕切られており、第1の長手方向流体通路L1が、第1の短手方向流体通路W1a及び第2の短手方向流体通路W1bを通して、第2の長手方向流体通路L2の第1の部分L2a及び第2の部分L2bにそれぞれ接続されている。
図4に示されているように、排気室D1〜D6には、各排気室と対応する各セル室22a〜22fとの間を区画する各排気室の底壁部を貫通する、電解液注入孔を兼ねる大きさの還流孔hが設けられている。還流孔hは、各排気室の一方の長手方向内側面Saと第2の長手方向流体通路L2側に位置する各排気室の一方の短手方向内側面Scとの間に形成されている第1のコーナ部C1付近に位置し、各排気室内に1つだけ設けられている。排気室D1〜D6は、それぞれの底壁部に設けられた還流孔hを通して、第1〜第6のセル室22a〜22fに接続されている。
第1の蓋部4及び第2の蓋部5の各排気室内には、各排気室の他方の長手方向内側面Sbに沿って延びる流体通路形成用壁部46,56が設けられている。この流体通路形成用壁部46,56と長手方向内側面Sbとの間には、排気室構成部400の短手方向に延びる第3の短手方向流体通路W2が形成されている。第3の短手方向流体通路W2の一端は、第1のコーナ部C1の対角位置にある第4のコーナ部C4に開口し、他端は、第2の長手方向流体通路L2内に開口している。
第1の蓋部4及び第2の蓋部5の各排気室内には、第3の短手方向流体通路W2の一端の開口部付近(第4のコーナ部C4付近)で流体通路形成用壁部46,56に一体化された第1の障壁部47,57が設けられている。第1の障壁部47,57は、流体通路形成用壁部46,56から各排気室の一方の長手方向内側面Sa側に突出して、該一方の長手方向内側面Saの手前の位置で終端している。第1の障壁部47,57は、第1の蓋部4及び第2の蓋部5に一体化された状態で設けられている。第1の障壁部47,57と一方の短手方向内側面Scとの間には、電解液収容空間Aが形成されている。第1の障壁部47,57の先端の終端位置は、還流孔hの少なくとも一部を電解液収容空間A内に位置させるように設定されている。
第1の蓋部4及び第2の蓋部5の各排気室内には、還流孔hよりも第1の障壁部47,57側に寄った位置で各排気室の一方の長手方向対向面Scから突出して、電解液収容空間A内を流体通路形成用壁部46,56側に延びる第2の障壁部48,58が設けられている。この障壁部48,58は、第1の蓋部4及び第2の蓋部5に一体化されて設けられている。第2の障壁部48,58は、各排気室の他方の長手方向内側面Sbと一方の短手方向内側面Scとの間に形成されている第2のコーナ部C2側に傾斜した状態で設けられている。第2の障壁部48,58の先端は、流体通路形成用壁部46,56の手前の位置で終端されている。
第1の蓋部4及び第2の蓋部5の各排気室内には、第1の障壁部47,57の先端の手前の位置から排気室の短手方向に沿って第2の障壁部48,58側に突出して、第2の障壁部48,58の手前の位置で終端した第1の突出壁部47a,57aが更に設けられている。各排気室内には、第2の障壁部48,58の先端の手前の位置から各排気室の一方の短手方向内側面Sc側に突出して、一方の短手方向内側面Scの手前の位置で終端した第2の突出壁部48a,58aが更に設けられている。第1の突出壁部47a,57a及び第2の突出壁部48a,58aは、第1の蓋部4及び第2の蓋部5に一体化されて設けられている。
第1の蓋部4において、各排気室の底壁部の上面には、第3の短手方向流体通路W2の一端の開口部付近から還流孔hに向かって、徐々に低くなっていくように傾斜がつけられている。第1の長手方向流体通路L1の底面には、第1,第2の短手方向流体通路W1a,W1bと第1の長手方向流体通路L1とが相会する部分に向かって、次第に低くなって行くように傾斜がつけられている。第1,第2の短手方向流体通路W1a,W1bの底面には、第1の長手方向流体通路L1側から第2の長手方向流体通路L2側に向かうに従って次第に低くなっていくように傾斜がつけられている。第2の長手方向流体通路L2の底面には、各排気室に設けられた第3の短手方向流体通路W2の他端の開口部に向かって次第に低くなっていくように傾斜がつけられている。図4においては、上記の各部の傾斜を矢印で示している。各矢印は、その先端側が後端側よりも低いことを示している。このような構成により、各排気室内の還流孔hから各排気室内に排出された電解液のミストが、第1の障壁部47,57、第2の障壁部48,58、第1の突出壁47a,57a及び第2の突出壁48a,58aに触れて液化した後、各排気室内の底面を伝って各排気室の還流孔hに戻ることができる。
図5に示すように、第2の蓋部5の長手方向の一端及び他端には、集中排気室E1及びE2を外部に開放するための排気口65が形成されている。集中排気室E1及びE2内には、防爆フィルタ66が収容されている。第1の長手方向流体通路L1を通して各集中排気室内に流入した排気ガスは、防爆フィルタ66と排気口65とを通して外部に排出されるようになっている。
第2の蓋部5には、注液口60が形成されている。注液口60は、各排気室内の還流孔hと整合する位置に設けられている。注液口60の内周には、栓を取り付けるためのネジが形成されている。
図6に示すように、蓋3には、溶着部405と、位置決め用リブ406と、が設けられている。溶着部405は、蓋3を電槽2に取り付ける際に電槽でセル室間を区画している隔壁の上端に溶着されて、電槽側の隔壁と共に、セル室間を隔てる壁部を形成する。また、位置決め用リブ406は、溶着部405を電槽2のセル室間の隔壁の上端に溶着する際に、電槽側のセル室間の隔壁の上端の側面に係合して、溶着部405を電槽側の隔壁に対して位置決めする位置決め用リブである。
(極板群)
図7は、極板群(電極群)10の斜視図である。図7に示すように、極板群10は、板状の負極(負極板)11と、板状の正極(正極板)12と、負極板11と正極板12との間に配置されたセパレータ13と、を備えている。極板群10は、複数の負極板11と正極板12とが、セパレータ13を介して、電槽2の長手方向に交互に積層された構造を有している。すなわち、負極板11及び正極板12は、それらの主面が電槽2の開口面と垂直方向に広がるように配置されている。極板群10は、電極板の積層方向から視て、電槽2の高さ方向が短手方向となり、電槽2の短手方向が長手方向となる、矩形状を呈している。
極板群10において、複数の負極板11の耳部11a同士は、負極側ストラップ101で集合溶接されている。同様に、複数の正極板12の耳部12a同士は、正極側ストラップ102で集合溶接されている。鉛蓄電池1では、負極側ストラップ101及び正極側ストラップ102のそれぞれが、負極柱及び正極柱を介して負極端子8及び正極端子9に接続されている。
図7に示すように、負極板11は、集電体(負極集電体)14と、当該集電体14に保持された負極活物質と、を有しており、負極活物質が負極活物質充填部15を構成している。また、正極12は、集電体(正極集電体)16と、当該集電体16に保持された正極活物質と、を有しており、正極活物質が正極活物質充填部17を構成している。本実施形態において、負極活物質は、化成後(例えば満充電状態)の負極活物質であり、正極活物質は、化成後(例えば満充電状態)の正極活物質である。電極活物質(負極活物質及び正極活物質)が未化成である場合、未化成の電極活物質(未化成の負極活物質及び未化成の正極活物質)は、電極活物質(負極活物質及び正極活物質)の原料等を含有している。本明細書では、化成後の正極板から正極集電体を除いたものを「正極活物質」と称し、化成後の負極板から負極集電体を除いたものを「負極活物質」と称する。
セパレータ13は、袋状に形成されており、負極板11をその内部に収容している。セパレータ13の負極板11とは反対側の面(正極板12側の面)には、セパレータ13の短手方向(極板群10の短手方向)に延びるように凸状のリブ18が複数形成されている。
上述した極板群10の厚さYは、特に限定されず、電極板(負極板11及び正極板12)の厚さ、セパレータ13の厚さ及び極板間距離等によって調整することができる。なお、本明細書において、極板群の厚さYとは、極板群10に対して電槽2からの圧縮力が加わっていない状態での極板群の厚さを意味する。
極板群10の厚さYの測定方法について図8を参照して具体的に説明する。図8は、極板群10を電極板(負極板11及び正極板12)の積層方向から視た側面図である。極板群10の厚さは、極板群10の最も外側にある電極板(図8においては負極板11)の電極活物質充填部(図8においては負極活物質充填部15)と、当該電極板が有する集電体の耳部側に位置するフレーム部分との境界より短手方向に±3mmの範囲rにおいて、極板群10の長手方向の中央T1で1点、中央より右側の任意の位置T2で1点、中央より左側の任意の位置T3で1点の計3点で測定した極板群10の厚さの平均値と定義される。ただし、図7のように、極板群10の最も外側にセパレータが配置された構成の場合、当該セパレータのリブ18の高さは極板群10の厚さには含めない。すなわち、極板群10の最も外側にセパレータ13が配置された構成の場合、当該セパレータ13におけるリブ18を支持する部分(ベース部)19の位置で極板群10の厚さを測定する。化成後の鉛蓄電池における極板群10の厚さYは、例えば、化成後の極板群10を取り出し1時間水洗をし、硫酸の取り除かれた極板群10を酸素の存在しない系において充分に乾燥させた後に測定することができる。
極板群10におけるセパレータ13を介して隣り合う負極板11と正極板12との距離(極板間距離、電極間距離)は、電解液の減少をより充分に抑制できる観点及び短絡を抑制できる観点から、好ましくは0.4mm以上であり、より好ましくは0.5mm以上であり、更に好ましくは0.55mm以上である。極板間距離は、電解液の減少をより充分に抑制できる観点から、好ましくは0.8mm以下であり、より好ましくは0.75mm以下であり、更に好ましくは0.7mm以下であり、更により好ましくは0.65mm以下であり、特に好ましくは0.6mm以下である。これらの観点から、極板間距離は、好ましくは0.4〜0.8mmであり、より好ましくは0.4〜0.75mmであり、更に好ましくは0.5〜0.7mmであり、更により好ましくは0.55〜0.65mmであり、特に好ましくは0.55〜0.6mmである。なお、極板間距離は、極板群10に対して電槽2からの圧縮力が加わっていない状態での極板間距離を意味する。
電極板とセパレータ13とが接している場合、例えば、極板群10から、すべてのセパレータ13を抜き取り、抜き取った全てのセパレータ13について、当該セパレータ13の上端(短手方向における耳部側の端部)(図7中の13a)から下端(短手方向における耳部側とは反対側の端部)(図7中の13b)に向かって約8mmの箇所でセパレータ13の厚さを測定し、測定値の平均値を極板間距離とすることができる。セパレータ13がリブ18を有する場合、セパレータ13の厚さは、ベース部19の厚さとリブ18の高さの和である。例えば、セパレータ13の長手方向に複数本形成されたリブ18のうち、最も外側に配置された2本のリブ上及びそれらの中点に配置されたリブ上の計3点で測定した厚さの平均値をセパレータ13の厚さとする。セパレータ13がリブ18を有しない場合、セパレータ13の長手方向の中央で1点、中央より右側の任意の位置で1点、中央より左側の任意の位置で1点の計3点で測定した厚さの平均値をセパレータ13の厚さとする。なお、セパレータ13が袋状である場合、セパレータ13を展開して厚さを測定する。また、化成後の鉛蓄電池1における、極板群10に圧縮力が加わっていない状態での極板間距離は、化成後の鉛蓄電池1より極板群10を取り出し1時間水洗をし、電解液(例えば硫酸)の取り除かれた極板群10を酸素の存在しない系において充分に乾燥させた後に、上記方法によって測定することができる。
本実施形態に係る鉛蓄電池1において、電槽2におけるセル室22の幅X(mm)と極板群10の厚さY(mm)の差(クリアランス:X−Y)は、例えば、−1.1〜1.2mmであってよい。クリアランス(X−Y)の値が−1.1mm以上であることで、電解液の減少を充分に抑制できるとともに、短絡が抑制される傾向がある。また、クリアランス(X−Y)が1.2mm以下であることで、電解液の減少を充分に抑制できる傾向がある。クリアランス(X−Y)は、電解液の減少をより充分に抑制できるとともに、短絡をより抑制できる観点から、好ましくは−1.0mm以上であり、より好ましくは−0.6mm以上である。クリアランス(X−Y)は、電解液の減少をより充分に抑制できる観点から、好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.0mm以下であり、更に好ましくは0.0mm未満である。これらの観点から、クリアランス(X−Y)は、−1.0〜1.0mmであってもよく、−0.6〜0.0mmであってもよく、−0.6mm以上−0.0mm未満であってもよい。
次に、負極活物質、正極活物質、集電体及びセパレータの詳細について説明する。
(負極活物質)
負極活物質は、Pb成分(鉛成分)として少なくともPb単体を含み、必要に応じてPb単体以外のPb成分(例えばPbSO)及び後述する添加剤を更に含む。具体的には、負極活物質は、(A)Pb成分(以下、「(A)成分」ともいう。)と、(B)リグニンスルホン酸及び/又はその塩(以下、「(B)成分」ともいう。)と、(C)比表面積が10.0m/g以下である炭素材料(以下、「(C)成分」ともいう。)と、を含む。
[(A)成分:Pb成分]
(A)成分としては、海綿状鉛(spongy lead)等が挙げられる。海綿状鉛は、電解液中の硫酸と反応して、次第に硫酸鉛(PbSO)に変わる傾向がある。(A)成分を含む負極活物質は、負極活物質の原料を含む負極活物質ペーストを熟成及び乾燥することにより未化成の負極活物質を得た後に、該負極活物質を化成することで得ることができる。負極活物質の原料としては、鉛粉等が挙げられる。鉛粉としては、例えば、ボールミル式鉛粉製造機又はバートンポット式鉛粉製造機によって製造される鉛粉(ボールミル式鉛粉製造機においては、主成分PbOの粉体と鱗片状金属鉛の混合物)が挙げられる。未化成の負極活物質は、例えば、塩基性硫酸鉛及び金属鉛、並びに、低級酸化物から構成される。
(A)成分の含有量は、電池特性(電池容量、放電特性(低温高率放電特性等)、サイクル特性等)に更に優れる観点から、負極活物質の全質量を基準として、93質量%以上であってよく、95質量%以上であってよく、98質量%以上であってよく、99質量%以上であってよく、99.5質量%以上であってよい。(A)成分の含有量は、負極活物質の全質量を基準として、99.99質量%以下であってよく、99.95質量%以下であってよく、99.90質量%以下であってよい。これらの観点から、(A)成分の含有量は、93〜99.99質量%、93〜99.95質量%、93〜99.90質量%、95〜99.99質量%、95〜99.95質量%、95〜99.90質量%、98〜99.99質量%、98〜99.95質量%又は98〜99.90質量%であってよい。
[(B)成分:リグニンスルホン酸及び/又はその塩]
リグニンスルホン酸は、リグニンの分解物の一部がスルホン化された化合物であり、フェノール系化合物に由来する構造単位として、リグニンに由来する構造単位を有し、且つ、スルホン酸基を有している。ここで、リグニンとは、モノリグノールが酵素により酸化重合した高分子化合物であり、モノリグノールとしては、例えば、コニフェリルアルコール、シナピルアルコール、p−クマリルアルコール等のp−ヒドロキシケイ皮アルコール類縁体が挙げられる。リグニンスルホン酸塩は、上記リグニンスルホン酸のアルカリ金属塩であり、スルホン酸塩基を有している。リグニンスルホン酸塩としては、例えば、リグニンスルホン酸ナトリウム塩及びリグニンスルホン酸カリウム塩が挙げられる。
(B)成分は、例えば、フェニレン基に隣接したα位の炭素原子にスルホン酸基又はスルホン酸塩基が結合した構造を有している。
(B)成分の重量平均分子量は、負極活物質からの(B)成分の溶出が抑制されて優れたDCA性能及びサイクル特性が得られる観点から、好ましくは3000以上であり、より好ましくは7000以上であり、更に好ましくは8000以上である。(B)成分の重量平均分子量は、電極活物質の分散性に優れる観点から、好ましくは50000以下であり、より好ましくは30000以下であり、更に好ましくは20000以下である。これらの観点から、(B)成分の重量平均分子量は、3000〜50000であってよく、7000〜30000であってよく、8000〜20000であってよい。
(B)成分の重量平均分子量は、例えば、下記条件のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)により測定することができる。
(GPC条件)
装置:高速液体クロマトグラフ LC−2200 Plus(日本分光株式会社製)
ポンプ:PU−2080
示差屈折率計:RI−2031
検出器:紫外可視吸光光度計UV−2075(λ:254nm)
カラムオーブン:CO−2065
カラム:TSKgel SuperAW(4000)、TSKgel SuperAW(3000)、TSKgel SuperAW(2500)(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
溶離液:LiBr(10mM)及びトリエチルアミン(200mM)を含有するメタノール溶液
流速:0.6mL/分
分子量標準試料:ポリエチレングリコール(分子量:1.10×10、5.80×10、2.55×10、1.46×10、1.01×10、4.49×10、2.70×10、2.10×10;東ソー株式会社製)、ジエチレングリコール(分子量:1.06×10;キシダ化学株式会社製)、ジブチルヒドロキシトルエン(分子量:2.20×10;キシダ化学株式会社製)
(B)成分の含有量は、優れたサイクル特性が得られる観点から、負極活物質の全質量を基準として、0.05質量%以上であってよく、0.1質量%以上であってよく、0.15質量%以上であってよく、0.2質量%以上であってよい。(B)成分の含有量は、減液性能を良好に保つ観点から、負極活物質の全質量を基準として、0.5質量%以下であってよく、0.4質量%以下であってよく、0.35質量%以下であってよく、0.3質量%以下であってよい。これらの観点から、(B)成分の含有量は、0.05〜0.5質量%、0.1〜0.4質量%、0.15〜0.35質量%又は0.2〜0.3質量%であってよい。
[(C)成分:炭素材料]
(C)成分は、カーボンブラック、黒鉛等の炭素材料である。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック及びケッチェンブラックが挙げられる。
(C)成分の比表面積は、10.0m/g以下である。本実施形態では、(C)成分の比表面積が10.0m/g以下であるため、充分な減液の抑制効果及びDCA性能が得られる。(C)成分の比表面積は、充分な減液の抑制効果及びDCA性能が得られる観点から、好ましくは7.0m/g以下であり、より好ましくは5.0m/g以下であり、更に好ましくは3.0m/g以下であり、更により好ましくは2.0m/g以下であり、特に好ましくは1.0m/g以下である。(C)成分の比表面積は、充分な減液の抑制効果及びDCA性能が得られる観点から、好ましくは0.5m/g以上であり、より好ましくは0.7m/g以上であり、更に好ましくは0.8m/g以上である。これらの観点から、(C)成分の比表面積は、0.5〜10.0m/g、0.5〜7.0m/g、0.5〜5.0m/g、0.5〜3.0m/g、0.5〜2.0m/g、0.5〜1.0m/g、0.7〜3.0m/g、0.7〜2.0m/g、0.7〜1.0m/g、0.8〜2.0m/g又は0.8〜1.0m/gであってよい。
(C)成分の比表面積は、例えば、BET法で測定することができる。BET法は、一つの分子の大きさが既知の不活性ガス(例えば窒素ガス)を測定試料の表面に吸着させ、その吸着量と不活性ガスの占有面積とから表面積を求める方法であり、比表面積の一般的な測定手法である。具体的には、例えば、下記の条件で測定できる。
[比表面積測定条件]
装置:Macsorb Automatic Surface Area Analyzer(Mountech社製)
測定方法:BET法
吸着ガス:窒素
流速:25mL/分
(C)成分の含有量は、充分なDCA性能及びサイクル特性が得られる観点から、負極活物質の全質量を基準として、0.2質量%以上であってよく、0.5質量%以上であってよく、1.0質量%以上であってよく、1.5質量%以上であってよい。(C)成分の含有量は、充分な減液抑制効果を得る観点から、負極活物質の全質量を基準として、3.5質量%以下であってよく、3.0質量%以下であってよく、2.5質量%以下であってよく、2.0質量%以下であってよい。これらの観点から、(C)成分の含有量は、0.2〜3.5質量%、0.5〜3.0質量%、1.0〜2.5質量%又は1.5〜2.0質量%であってよい。
[その他の成分]
負極活物質は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分以外のその他の成分を更に含有していてもよい。その他の成分としては、硫酸バリウム、補強用短繊維等が挙げられる。補強用短繊維としては、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等が挙げられる。硫酸バリウムの含有量は、例えば、負極活物質の全質量を基準として、0.5質量%以上であってよく、3.0質量%以下であってよい。補強用短繊維の含有量は、例えば、負極活物質の全質量を基準として、0.05質量%以上であってよく、0.3質量%以下であってよい。
(正極活物質)
正極活物質は、Pb成分としてPbOを含み、必要に応じて、PbO以外のPb成分(例えばPbSO)及び後述する添加剤を更に含む。正極活物質は、Pb成分として、β−二酸化鉛(β−PbO)を含むことが好ましく、α−二酸化鉛(α−PbO)を更に含んでいてもよい。正極活物質は、正極活物質の原料を含む正極活物質ペーストを熟成及び乾燥することにより未化成の正極活物質を得た後に、該正極活物質を化成することで得ることができる。正極活物質の原料としては、特に制限はなく、例えば鉛粉が挙げられる。鉛粉としては、例えば、ボールミル式鉛粉製造機又はバートンポット式鉛粉製造機によって製造される鉛粉(ボールミル式鉛粉製造機においては、主成分PbOの粉体と鱗片状金属鉛の混合物)が挙げられる。正極活物質の原料として鉛丹(Pb)を用いてもよい。未化成の正極活物質は、好ましくは、主成分として、三塩基性硫酸鉛を含有する。
Pb成分の含有量は、電池特性(容量、放電特性(低温高率放電特性等)、サイクル特性等)に更に優れる観点から、正極活物質の全質量を基準として、好ましくは95質量%以上であり、より好ましくは97質量%以上であり、更に好ましくは99質量%以上である。
正極活物質は、添加剤を更に含有していてもよい。添加剤としては、炭素材料(炭素質導電材)、補強用短繊維等が挙げられる。炭素材料としては、カーボンブラック、黒鉛等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック(例えば、ケッチェンブラック(登録商標)等のオイルファーネスブラック)、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックなどが挙げられる。補強用短繊維としては、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等が挙げられる。
(集電体)
集電体は、電極活物質からの電流の導電路を構成する。集電体としては、鋳造方式、エキスパンド方式等の方法で製造される集電体が挙げられる。集電体の材料としては、例えば、鉛−カルシウム−錫系合金及び鉛−アンチモン系合金が挙げられる。これらにセレン、銀、ビスマス等を微量添加することができる。正極及び負極の集電体は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
(セパレータ)
セパレータは、正極と負極との電気的な接続を阻止し、電解液の硫酸イオンを透過させる機能を有する。セパレータを形成する材料の例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。セパレータは、これらの材料で形成された織布、不織布、多孔質膜等にSiO、Al等の無機系粒子を付着させたものであってよい。セパレータの形状は特に限定されず、例えば、袋状であってよく、正極又は負極板を袋状のセパレータ内に収容してよい。
上記実施形態の鉛蓄電池1によれば、減液の抑制性能とDCA性能とを両立することができる。このような効果が得られる理由は、明らかではないが、負極11が、リグニンスルホン酸及び/又はその塩と、比表面積が10.0m/g以下である炭素材料と、を含むことに起因すると推察される。すなわち、炭素材料が上記特定の比表面積を有するため、リグニンスルホン酸及び/又はその塩が炭素材料に吸着しやすく、また、上記炭素材料がPb成分中に取り込まれにくい状態となっていると推察される。その結果、炭素材料による水素化電圧の減少が抑えられると共に高い導電性を維持することができるため、減液の抑制性能とDCA性能とを両立することができると推察される。
また、上記実施形態の鉛蓄電池1は、負極11が、リグニンスルホン酸及び/又はその塩と、比表面積が10.0m/g以下である炭素材料と、を含むため、EN規格に従って評価されるサイクル特性にも優れる。
また、上記実施形態の鉛蓄電池1では、蓋3が、第1の蓋部4と、第2の蓋部5と、第1の蓋部4と第2の蓋部5との間に形成された排気室D1〜D6と、を有しており、該排気室が、電槽2内の各セル室22から出た電解液のミストを内部に留め、排気室内で液化した電解液を各セル室内に還流させることができるように構成されているため、上記実施形態の鉛蓄電池1によれば、優れた減液の抑制効果が得られる。
また、上記の鉛蓄電池1においては、第1〜第6のセル室内のガス圧が上昇したときに、これらのセル室から還流孔hを通して第1〜第6の排気室内に流出したガスが、各排気室内の空間と、各排気室内に設けられた第3の短手方向流体通路W2とを通して第2の長手方向流体通路L2内に流入した後、第1,第2の短手方向流体通路W1a,W1bを通して第1の長手方向流体通路L1に流入する。第1の長手方向流体通路L1に流入したガスは、集中排気室E1及びE2に達して、これらの集中排気室から排気口65を通して外部に排出される。
以上説明した鉛蓄電池1は、アイドリングストップシステム車用、又は、マイクロハイブリッド車用の鉛蓄電池として好適に用いられる。すなわち、本発明の一実施形態は、上述した鉛蓄電池1のアイドリングストップシステム車への応用、又は、マイクロハイブリッド車への応用である。
<鉛蓄電池の製造方法>
本実施形態に係る鉛蓄電池1の製造方法は、例えば、電極板(負極板11及び正極板12)を得る電極板製造工程と、電極板を含む構成部材を組み立てて鉛蓄電池1を得る組み立て工程とを備えている。
電極板製造工程では、例えば、電極活物質ペースト(正極活物質ペースト及び負極活物質ペースト)を集電体(例えば、鋳造格子体及びエキスパンド格子体)に充填した後に、熟成及び乾燥を行うことにより未化成の電極を得る。正極活物質ペーストは、例えば、正極活物質の原料(鉛粉等)を含有しており、他の添加剤を更に含有していてもよい。負極活物質ペーストは、負極活物質の原料(鉛粉等)、(B)成分及び(C)成分を含有しており、上述した他の成分を更に含有していてもよい。
正極活物質ペーストは、例えば、下記の方法により得ることができる。まず、正極活物質の原料に添加剤(補強用短繊維等)及び水を加える。次に、希硫酸を加えた後、混練して正極活物質ペーストが得られる。正極活物質ペーストを作製するに際しては、化成時間を短縮できる観点から、正極活物質の原料として鉛丹(Pb)を用いてもよい。この正極活物質ペーストを集電体に充填した後に熟成及び乾燥を行うことにより未化成の正極板を得ることができる。
未化成の正極板を得るための好ましい熟成条件としては、温度35〜85℃、湿度50〜98RH%の雰囲気で15〜60時間である。好ましい乾燥条件は、温度45〜80℃で15〜30時間である。
負極活物質ペーストは、例えば、下記の方法により得ることができる。まず、負極活物質の原料に(B)成分、(C)成分及び場合により添加される他の成分(補強用短繊維、硫酸バリウム等)を添加して乾式混合することにより混合物を得る。次に、この混合物に溶媒(イオン交換水等の水、有機溶媒など)を加えて混練する。そして、硫酸(希硫酸等)を加えて混練することにより負極活物質ペーストが得られる。この負極活物質ペーストを集電体に充填した後に熟成及び乾燥を行うことにより未化成の負極板を得ることができる。
未化成の負極板を得るための好ましい熟成条件としては、温度45〜65℃、湿度70〜98RH%の雰囲気で15〜30時間である。好ましい乾燥条件は、温度45〜60℃で15〜30時間である。
組み立て工程では、例えば、未化成の負極板及び未化成の正極板を、セパレータ13を介して交互に積層し、同極性の電極板の集電部(耳部)をストラップで連結(溶接等)させて極板群10を得る。この極板群10を電槽2の各セル室22内に収容して、隣り合うセル室22内の極板群10の負極側ストラップ101と正極側ストラップ102とをセル室22間を隔てている隔壁21を貫通したセル間接続部により接続した後、蓋3を電槽2の上端に取り付ける。次いで、第2の蓋部5に設けられている注液口60から各セル室22内に電解液(希硫酸等)を注入する。各セル室内に電解液を注入した後、注液口60を栓で閉じる。これにより未化成の電池を得る。次いで、直流電流を通電して電槽化成する。化成後の電解液の比重を適切な比重に調整して鉛蓄電池1が得られる。
化成条件及び硫酸の比重は、電極活物質の性状に応じて調整することができる。また、化成処理は、組み立て工程後に実施されることに限られず、電極板製造工程における熟成及び乾燥後の多数の電極板をまとめて化成槽に浸漬して実施されてもよい(タンク化成)。
以上、本発明の一実施形態の鉛蓄電池について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
上記の実施形態では、第2の蓋部5に注液孔を設けているが、第2の蓋部5に注液孔を設けず、電解液を注液した後に、第1の蓋部4と第2の蓋部5とを溶着してもよい。
上記の実施形態では、各排気室の一対の短手方向内側面Sc及びSdのうち、Scを一方の短手方向内側面とし、Sdを他方の短手方向内側面としたが、Sd及びScをそれぞれ一方の短手方向内側面及び他方の短手方向内側面としてもよい。同様にSbを一方の長手方向内側面とし、Saを他方の長手方向内側面としてもよい。
上記の実施形態では、還流孔hを複数の孔の集合体により構成しているが、還流孔hは、単一の孔により構成してもよい。
また還流孔hを大きめに構成するか、又は還流孔hを構成する孔の数を増やす等して、還流孔hに通気孔としての機能をも持たせることもできる。
また、上記の実施形態では、第1の突出壁部47a,57a、及び、第2の突出壁部48a,58aを設けなくてもよい。
また、上記実施形態の鉛蓄電池は液式鉛蓄電池であるが、これに限定されず、本発明の鉛蓄電池は、例えば、制御弁式鉛蓄電池、密閉式鉛蓄電池等であってもよい。鉛蓄電池の基本構成としては、従来の鉛蓄電池と同様の構成を用いることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。
<実施例1>
(電槽の準備)
上面が開放された箱体からなり、内部が隔壁によって6つのセル室に区切られた電槽を準備した。
(正極板の作製)
鉛粉に対して、補強用短繊維としてアクリル繊維0.25質量%(鉛粉の全質量基準)を加えて乾式混合した。次に、得られた鉛粉を含む混合物に対して、水3質量%及び希硫酸(比重1.55)30質量%を加えて1時間混練して正極活物質ペーストを作製した。正極活物質ペーストの作製に際しては、急激な温度上昇を避けるため、希硫酸(比重1.55)の添加は段階的に行った。なお、水及び希硫酸の配合量は、鉛粉及び補強用短繊維の全質量を基準とした配合量である。
鉛合金からなる圧延シートにエキスパンド加工を施すことにより作製されたエキスパンド式集電体に、正極活物質ペーストを充填した後、温度50℃、湿度98%の雰囲気で24時間熟成した。その後、温度50℃で16時間乾燥して、未化成の正極活物質を有する正極板を作製した。
(負極板の作製)
負極活物質の原料として鉛粉を用いた。リグニンスルホン酸ナトリウム(日本製紙株式会社製、商品名:バニレックスN)、炭素材料(比表面積0.9m/gの黒鉛)、ポリエチレンテレフタレート繊維(カットファイバー、繊維長:3mm)及び硫酸バリウムの混合物を鉛粉に添加した後に乾式混合した。次に、水を加えた後に混練した。続いて、比重1.280の希硫酸を少量ずつ添加しながら混練して、負極活物質ペーストを作製した。鉛合金からなる圧延シートにエキスパンド加工を施すことにより作製されたエキスパンド式集電体にこの負極活物質ペーストを充填した後、温度50℃、湿度98%の雰囲気で24時間熟成した。その後乾燥して、未化成の負極活物質を有する負極板を作製した。なお、リグニンスルホン酸ナトリウム、炭素材料、ポリエチレンテレフタレート繊維及び硫酸バリウムは、化成後の負極活物質の全質量を基準とした含有量(質量%)が、それぞれ、0.2質量%、1.5質量%、0.1質量%及び1.5質量%となるように配合した。
(電池の組み立て)
袋状に加工したポリエチレン製のセパレータに未化成の負極板を挿入した。次に、未化成の正極板5枚と、袋状セパレータに挿入された未化成の負極板6枚とを交互に積層した。続いて、キャストオンストラップ(COS)方式で、同極性の電極板の耳部同士を溶接して極板群を作製した。この極板群を6つ用意し、電槽に挿入してEN規格の12Vセル電池(ランク性能:370、サイズ:LN2)を組み立てた。この際、蓋としては、図4〜図6に示す上述した実施形態の排気室を有する蓋を用いた。その後、比重1.230の硫酸溶液を注入し、10.4Aにて20時間の定電流で化成を行った。化成後の電解液(硫酸溶液)の比重を1.28(20℃)に調整した。クリアランス(セル室の幅X−極板群の厚さY)は−0.8mmであり、極板間距離は0.75mmであった。
本実施例では、セル室の幅Xの測定は、電槽に収容された極板群の最も外側に位置する極板の上部周縁部と電極活物質充填部との境界より±3mmの短手方向においてセル室の幅を測定することにより行った。また、極板群の厚さYの測定は、以下の方法により行った。まず、化成後の電池より極板群を取り出し1時間水洗をし、電解液の取り除かれた極板群を酸素の存在しない系において充分に乾燥させた。次いで、極板群の最も外側にある負極板の電極活物質充填部と、当該電極板が有する集電体の耳部側に位置するフレーム部分との境界より短手方向に±3mmの範囲rにおいて、極板群の長手方向の中央T1で1点、中央より右側の任意の位置T2で1点、中央より左側の任意の位置T3で1点の計3点で極板群の厚さを測定し、測定値の平均値を極板群の厚さYとした。
極板間距離の測定は以下の方法により行った。まず、化成後の電池より極板群を取り出し1時間水洗をし、電解液の取り除かれた極板群を酸素の存在しない系において充分に乾燥させた。次いで、乾燥した極板群から、すべてのセパレータを抜き取った。抜き取った全てのセパレータについて、当該セパレータの上端(短手方向における耳部側の端部)から下端(短手方向における耳部側とは反対側の端部)側に向かって約8mmの箇所でセパレータの厚さを測定し、測定値の平均値を極板間距離とした。上記セパレータの厚さの測定は、複数本形成されたリブのうち、長手方向の最も外側に配置された2本のリブ上及びそれらの中点に配置されたリブ上の計3点を測定することにより行い、測定した厚さの平均値をセパレータの厚さとした。
<実施例2>
蓋として排気室を有する蓋(二重蓋)に代えて、排気室を有しない蓋(非二重蓋)を用いたこと以外は実施例1と同様にして鉛蓄電池を作製した。なお、排気室を有しない蓋が有する全ての注液口(セル室に対応する全ての注液口)は液口栓で栓をした。また、液口栓中には、二重蓋と同じ防爆フィルタを使用した。
<実施例3〜6>
炭素材料として、比表面積0.9m/gの黒鉛に代えて、表1に示す比表面積を有する黒鉛を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、鉛蓄電池を作製した。
<実施例7〜10>
化成後の負極活物質の全質量を基準としたリグニンスルホン酸ナトリウム及び炭素材料の含有量(質量%)が表1に示す値となるように、各成分の配合量を調整したこと以外は、実施例1と同様にして、鉛蓄電池を作製した。
<比較例1>
リグニンスルホン酸ナトリウムに代えてビスフェノール系樹脂(ビスフェノールとアミノベンゼンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物、商品名:ビスパーズP215、日本製紙株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、鉛蓄電池を作製した。
<比較例2>
蓋として排気室を有する蓋に代えて、排気室を有しない蓋(非二重蓋)を用いたこと以外は比較例1と同様にして鉛蓄電池を作製した。
<比較例3>
炭素材料として、比表面積0.9m/gの黒鉛に代えて、比表面積240m/gのカーボンブラック(ファーネスブラック、商品名:バルカンXC72)を用いたこと、並びに、化成後の負極活物質の全質量を基準としたリグニンスルホン酸ナトリウム及び炭素材料の含有量(質量%)が表1に示す値となるように、各成分の配合量を調整したこと以外は、実施例1と同様にして、鉛蓄電池を作製した。
<比較例4>
蓋として排気室を有する蓋に代えて、排気室を有しない蓋(非二重蓋)を用いたこと以外は比較例3と同様にして鉛蓄電池を作製した。
<比較例5>
炭素材料として、比表面積0.9m/gの黒鉛に代えて、比表面積61m/gのカーボンブラック(アセチレンブラック、商品名:デンカブラック)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、鉛蓄電池を作製した。
<比較例6>
リグニンスルホン酸ナトリウムに代えてビスフェノール系樹脂(ビスフェノールとアミノベンゼンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物、商品名:ビスパーズP215、日本製紙株式会社製)を用いたこと以外は、比較例3と同様にして、鉛蓄電池を作製した。
<比較例7>
蓋として排気室を有する蓋に代えて、排気室を有しない蓋(非二重蓋)を用いたこと以外は比較例6と同様にして鉛蓄電池を作製した。
<特性評価>
以下では、実施例及び比較例の鉛蓄電池について、DCA性能、寿命性能(サイクル特性)及び減液の抑制効果を評価した。結果を表1に示す。なお、各性能の評価は、比較例7の測定結果を100として相対評価することにより行った。
(DCA性能)
EN規格であるBS EN50342−6:2015記載のDynamic Charge Acceptance(DCA) testに準じた評価方法でDCA性能評価を行った。換算式により規格化された充電中の平均電流値を比較し、該平均電流値が大きいほど、DCA性能に優れると評価される。評価基準を以下に示す。
A=110以上
B=100以上〜110未満
C=100未満
(サイクル特性(DOD17.5%寿命試験))
DOD17.5%寿命性能は次のように測定した。まず始めに、充電が完了した鉛蓄電池(放電容量:60Ah、20時間率電流:3A)を、湯浴温度が25℃±2℃に設定された水槽中に配置した。次いで、以下のサイクルユニット(a)〜(g)を1サイクルとして、(a)〜(g)の順に繰り返し実施した。
(a)12A(20時間率電流の4倍に相当)で2.5時間放電した。放電下限電圧は10.0Vよりも大きいものとした。
(b)21A(20時間率電流の7倍に相当)で40分間充電した。充電上限電圧は14.4±0.05Vとした。
(c)21A(20時間率電流の7倍に相当)で30分間放電した。放電下限電圧は10.0Vよりも大きいものとした。
(d)上記(b)及び(c)を交互に85回繰り返した。
(e)6A(20時間率電流の2倍に相当)で18時間充電した。充電方式はCC(定電流)−CV(定電圧)充電とし、CV充電時の電圧は16.0V±0.05Vとした。
(f)3A(20時間率電流±1.0%)で放電終止電圧10.5±0.1Vに到達するまで放電させて鉛蓄電池の容量を確認した。
(g)15A(20時間率電流の5倍)で24時間充電した。充電方式はCC−CV充電とし、CV充電時の電圧は16.0V±0.05Vとした。
この試験は、ISS車での鉛蓄電池の使われ方を模擬した、EN規格に従ったサイクル試験である。この試験では、鉛蓄電池の電圧が10.0Vを下回った時点で寿命に達したと判断し、寿命に達するまでのサイクル数を比較することによりサイクル特性を評価した。評価基準を以下に示す。また、結果を表1に示す。
A=120以上
B=110以上〜120未満
C=110未満
(減液の抑制効果)
雰囲気温度(水槽の温度)60℃において、14.4Vで42日間定電圧の過充電を行った。この充電の前後の重量を測定し、重量差(過充電による減液の量(減液量))を比較することにより、減液の抑制効果を評価した減液量が小さいほど、減液の抑制効果に優れると評価される。評価基準を以下に示す。
A=75以下
B=75超〜85以下
C=85超
Figure 2019077657
1…鉛蓄電池、2…電槽、3…蓋、4…第1の蓋部、5…第2の蓋部、10…極板群(電極群)、11…負極板(負極)、12…正極板(正極)、22…セル室、400…排気室構成部、D1,D2,D3,D4,D5,D6…排気室、h…還流孔。

Claims (10)

  1. セル室を有し、且つ、上面が開口している電槽と、
    前記セル室に収容された電極群及び電解液と、
    前記開口を閉じる蓋と、を備え、
    前記電極群は負極及び正極を有し、
    前記負極は、Pb成分と、リグニンスルホン酸及び/又はその塩と、比表面積が10.0m/g以下である炭素材料と、を含む負極活物質を有する、鉛蓄電池。
  2. 前記リグニンスルホン酸及びその塩の含有量は、前記負極活物質の全質量を基準として、0.05〜0.5質量%である、請求項1に記載の鉛蓄電池。
  3. 前記炭素材料の含有量は、前記負極活物質の全質量を基準として、0.2〜3.5質量%である、請求項1又は2に記載の鉛蓄電池。
  4. 前記蓋は、第1の蓋部と、前記第1の蓋部上に設けられた第2の蓋部と、前記第1の蓋部と前記第2の蓋部との間に形成された排気室と、を有し、
    前記排気室と前記セル室との間を隔てる前記第1の蓋部の底壁には、前記電解液をセル室内に還流させる還流孔が設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の鉛蓄電池。
  5. 前記セル室の幅をXmmとし、前記電極群の厚さをYmmとすると、XとYは以下の条件式を満たす、請求項1〜4のいずれか一項に記載の鉛蓄電池。
    −1.1≦X−Y≦1.2
  6. 隣り合う前記負極と前記正極との距離は0.4〜0.8mmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の鉛蓄電池。
  7. 前記炭素材料の比表面積は7.0m/g以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の鉛蓄電池。
  8. 前記炭素材料の比表面積は1.0m/g以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の鉛蓄電池。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の鉛蓄電池を備える、アイドリングストップシステム車。
  10. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の鉛蓄電池を備える、マイクロハイブリッド車。
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