JPWO2019059056A1 - 積層膜の製造方法及び電子デバイスの製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明の課題は、発光効率が高く、発光寿命が長く、かつ製造コストを抑えることができる、発光性材料を含有する層を含む積層膜の製造方法等を提供することである。本発明は発光性材料を含有する層を含む積層膜10の製造方法であって、基材20上に、大気環境下で、発光性材料を含有する塗布液Aを用いて第1塗膜30を形成する工程Aと、当該工程Aの後に、第1塗膜30上に、大気環境下で、塗布液Aとは異なる塗布液Bを用いて第2塗膜40を形成する工程Bと、当該工程Bの後に、大気環境下で乾燥を行う工程Cと、を有し、塗布液Bは、最高被占分子軌道(HOMO)の準位が−5.0eV以下の有機化合物、又は、元素周期表における1〜3周期かつ1族又は2族の元素、元素周期表における3〜18族の元素、ランタノイド、及びアクチノイドのいずれかの元素で形成される無機物若しくは金属錯体、を含有するものである。

Description

本発明は、積層膜の製造方法及び電子デバイスの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、発光効率が高く、発光寿命が長く、かつ製造コストを抑えることができる、発光性材料を含有する層を含む積層膜の製造方法及び当該積層膜を備えた電子デバイスの製造方法に関する。
近年、薄型の電子デバイスが求められているため、所定の機能を有する薄膜を積層させる技術の需要が高まってきている。特に近年では、発光層、キャリア輸送層、キャリア注入層等の複数の薄膜を積層した有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」ともいう。)デバイスの開発が盛んに行われている。
薄膜を積層させる手段としては、真空蒸着法及び塗布法などが挙げられる。これらのうち塗布法は、真空プロセスが不要であり、かつ大面積化が容易であるため、製造プロセス上大きな利点を有している。そのため、塗布法で高機能の積層膜を形成し、有機ELデバイスに応用する発明が数多くなされている。例えば、特許文献1においては、複数の種類の塗布液を1種類ごとに連続塗布し、塗布完了後に一括で乾燥させることにより、膜厚の均一性を向上させ、かつ輝度ムラを抑制する技術が開示されている。
しかしながら、塗布法を用いても有機ELデバイスの製造はいまだに高コストであるのが実状である。高コストとなる主な原因としては、有機ELデバイスを構成する積層膜が大気に弱いため、積層膜を製造する過程で、不活性ガス環境や減圧・真空環境などの大型設備が必要である点が挙げられる。そのため、これらの大型設備を使用することなく、安価な大気環境下での塗布プロセスで高機能な積層膜を形成する方法が望まれているが、いまだ実現できていない。
大気環境下で塗布法を用いて発光性薄膜を形成する場合、最も発光性薄膜の機能低下の要因となる工程が、発光性薄膜を大気環境下で乾燥させる工程である。発光性薄膜を大気環境下で乾燥させると、空気が発光性薄膜中に混入したり、発光性材料由来の劣化物や酸化物が生成することで、発光機能の低下を引き起こしていると考えられる。その結果、大気環境下で塗布法によって形成した発光性薄膜を用いた有機ELデバイスでは、発光効率及び発光寿命の低下等が問題となっていた。そのため、発光層の機能低下を防ぐための積層プロセスに関する検討がなされてきた。例えば、特許文献2においては、上層(発光層)及び下層を備えた積層膜を形成する際に、下層を大気環境下で乾燥し、発光性材料を含む上層を不活性ガス環境下で乾燥させることで、上層(発光層)の劣化を抑制し、高機能な積層膜を形成することができることが開示されている。
しかしながら、特許文献2に記載の発明では、下層は大気環境下で乾燥しているものの、上層(発光層)については不活性ガス環境下で乾燥しているため、製造コストの大幅な削減は望めない。
特開2007−87619号公報 特開2017−4782号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、発光効率が高く、発光寿命が長く、かつ製造コストを抑えることができる、発光性材料を含有する層を含む積層膜の製造方法及び当該積層膜を備えた電子デバイスの製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、基材上に、大気環境下で、発光性材料を含有する塗布液Aを用いて第1塗膜を形成する工程Aと、当該工程Aの後に、第1塗膜上に、大気環境下で、所定の有機化合物又は所定の元素で形成される無機物若しくは金属錯体を含有する塗布液Bを用いて第2塗膜を形成する工程Bと、当該工程Bの後に、大気環境下で乾燥を行う工程Cと、を有する製造方法によって、発光効率が高く、かつ発光寿命の長い発光性薄膜を形成できることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る課題は、以下の手段により解決される。
1.発光性材料を含有する層を含む積層膜の製造方法であって、
基材上に、大気環境下で、発光性材料を含有する塗布液Aを用いて第1塗膜を形成する工程Aと、
前記工程Aの後に、前記第1塗膜上に、大気環境下で、前記塗布液Aとは異なる塗布液Bを用いて第2塗膜を形成する工程Bと、
前記工程Bの後に、大気環境下で乾燥を行う工程Cと、
を有し、
前記塗布液Bは、最高被占分子軌道(HOMO)の準位が−5.0eV以下の有機化合物、又は、元素周期表における1〜3周期かつ1族又は2族の元素、元素周期表における3〜18族の元素、ランタノイド、及びアクチノイドのいずれかの元素で形成される無機物若しくは金属錯体、を含有することを特徴とする積層膜の製造方法。
2.前記発光性材料が、リン光発光性化合物又は熱活性型遅延蛍光発光性化合物であることを特徴とする第1項に記載の積層膜の製造方法。
3.前記発光性材料が、最高被占分子軌道(HOMO)の準位が−5.6eV以上の蛍光発光性化合物であることを特徴とする第1項に記載の積層膜の製造方法。
4.前記塗布液Aに、さらに、最高被占分子軌道(HOMO)の準位が−5.6eV以上の有機化合物を含有することを特徴とする第1項又は第2項に記載の積層膜の製造方法。
5.前記第1塗膜及び前記第2塗膜の形成が、インクジェット法を用いた塗布方法によって行われることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の積層膜の製造方法。
6.第1項から第5項までのいずれか一項に記載の積層膜の製造方法による積層膜製造工程を有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
7.前記第2塗膜を前記工程Cで乾燥した後の層が、電子輸送層であることを特徴とする第6項に記載の電子デバイスの製造方法。
本発明によれば、発光効率が高く、発光寿命が長く、かつ製造コストを抑えることができる、発光性材料を含有する層を含む積層膜の製造方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構は明確になっていないが、以下のように推察している。
本発明者らが、大気環境下で、発光層を含む塗布膜を形成する際に発光機能低下を引き起こす原因の検証を行ったところ、塗布液を塗布した後の乾燥工程において、発光機能が顕著に低下することが分かった。この原因の詳細は明らかになっていないが、乾燥工程において、溶媒が蒸発する過程で大気が発光層に侵入して発光阻害を引き起こすことや、発光層に含有する発光性材料が酸化劣化することで発光阻害を引き起こすことなどが推定される。
本発明者らは、検討の結果、(1)基材上に、大気環境下で、発光性材料を含有する塗布液Aを用いて第1塗膜を形成する工程Aと、(2)当該工程Aの後に、第1塗膜上に、大気環境下で、所定の有機化合物又は所定の元素で形成される無機物若しくは金属錯体を含有する塗布液Bを用いて第2塗膜を形成する工程Bと、(3)当該工程Bの後に、大気環境下で乾燥を行う工程Cと、を有する製造方法によって、発光効率が高く、かつ発光寿命の長い積層膜(発光性薄膜)を形成できることが分かった。
また、本発明で製造した発光性薄膜は、驚くべきことに、塗布液により形成した塗膜を不活性ガス環境下で乾燥するという従来の方法で形成した発光性薄膜と遜色ない良好な発光効率及び発光寿命を発現するものであった。
本発明の積層膜の製造方法によって製造した発光性薄膜が、良好な発光効率及び発光寿命を発現する発現機構又は作用機構は明らかになっていないが、第1塗膜及び第2塗膜の形成後に、一括して大気環境下で乾燥することで、第1塗膜への大気の侵入が抑制されたためであると推察している。より具体的には、乾燥工程時に、第1塗膜上に形成された第2塗膜が、第1塗膜への大気の侵入を防ぐガスバリアー層としての機能を果たし、これにより、発光阻害を引き起こすことがなく、第1塗膜に含有されている発光性材料の酸化劣化も抑えることができたと考えられる。
また、本発明に係る第2塗膜を形成する塗布液Bには、「最高被占分子軌道(HOMO)の準位が−5.0eV以下の有機化合物」、又は、「元素周期表における1〜3周期かつ1族又は2族の元素、元素周期表における3〜18族の元素、ランタノイド、及びアクチノイドのいずれかの元素で形成される無機物若しくは金属錯体」を含有している。
塗布液Bに、このような所定の有機化合物や、所定の元素で形成される無機物若しくは金属錯体を含有する場合に、乾燥後の積層膜(発光性薄膜)が、良好な発光効率及び発光寿命を得ることができた。この要因としては、最高被占分子軌道(HOMO)の準位が所定値以下の有機化合物や又はイオン化エネルギーが大きい無機物若しくは金属錯体を用いることにより、塗布液Bで形成する第2塗膜の大気安定性が向上したためであると考えられる。つまり、第2塗膜の大気安定性が向上することで、第2塗膜に含有される成分が酸化や潮解等の劣化を引き起こしにくくなり、第2塗膜が上述したような第1塗膜のガスバリアー層としての機能を有効に果たすことができたためであると推定している。
なお、特許文献1に記載の発明では、複数の種類の塗布液を1種類ごとに連続塗布し、塗布完了後に一括で乾燥させるプロセスが開示されている。しかし、塗布液Bについての大気安定性に関する直接的記載や示唆はなく、また塗布液Bが本発明の要件を満たしていないことから、本発明は特許文献1に係る発明とは異なる発明であるといえる。
また、本発明の積層膜の製造方法では、簡易な方法で本発明の効果を発現でき、かつ従来の高コスト化の主要な要因となっていた不活性ガス環境や減圧・真空環境で乾燥を行うための大型設備も不要であるため、製造コストを大幅に削減することができる。
本発明の積層膜の一例を示す断面図 有機エレクトロルミネッセンス素子の概略断面図
本発明の積層膜の製造方法は、発光性材料を含有する層を含む積層膜の製造方法であって、基材上に、大気環境下で、発光性材料を含有する塗布液Aを用いて第1塗膜を形成する工程Aと、前記工程Aの後に、前記第1塗膜上に、大気環境下で、前記塗布液Aとは異なる塗布液Bを用いて第2塗膜を形成する工程Bと、前記工程Bの後に、大気環境下で乾燥を行う工程Cと、を有し、前記塗布液Bは、最高被占分子軌道(HOMO)の準位が−5.0eV以下の有機化合物、又は、元素周期表における1〜3周期かつ1族又は2族の元素、元素周期表における3〜18族の元素、ランタノイド、及びアクチノイドのいずれかの元素で形成される無機物若しくは金属錯体、を含有することを特徴とする。この特徴は、下記実施態様に共通する又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果を有効に得る観点から、前記発光性材料が、リン光発光性化合物又は熱活性型遅延蛍光発光性化合物であることが好ましい。
本発明の実施態様としては、本発明の効果を有効に得る観点から、前記発光性材料が、最高被占分子軌道(HOMO)の準位が−5.6eV以上の蛍光発光性化合物であることが好ましい。
本発明の実施態様としては、本発明の効果を有効に得る観点から、前記塗布液Aに、さらに、最高被占分子軌道(HOMO)の準位が−5.6eV以上の有機化合物を含有することが好ましい。
本発明の実施態様としては、本発明の効果を有効に得る観点から、前記第1塗膜及び前記第2塗膜の形成が、インクジェット法を用いた塗布方法によって行われることが好ましい。
また、本発明の積層膜の製造方法による積層膜製造工程を有することが、電子デバイスの製造方法として好ましい。また、当該電子デバイスは、前記第2塗膜を前記工程Cで乾燥した後の層が、電子輸送層であることが好ましい。
以下、本発明の構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
[積層膜の製造方法]
本発明の積層膜の製造方法は、発光性材料を含有する層を含む積層膜の製造方法であって、基材上に、大気環境下で、発光性材料を含有する塗布液Aを用いて第1塗膜を形成する工程Aと、前記工程Aの後に、前記第1塗膜上に、大気環境下で、前記塗布液Aとは異なる塗布液Bを用いて第2塗膜を形成する工程Bと、前記工程Bの後に、大気環境下で乾燥を行う工程Cと、を有し、前記塗布液Bは、最高被占分子軌道(HOMO)の準位が−5.0eV以下の有機化合物、又は、元素周期表における1〜3周期かつ1族又は2族の元素、元素周期表における3〜18族の元素、ランタノイド、及びアクチノイドのいずれかの元素で形成される無機物若しくは金属錯体、を含有するものである。
また、本発明でいう「塗膜」とは、塗布液を塗布した後で、乾燥工程を行う前の膜の状態のことをいう。
また、本発明の積層膜の製造方法で形成した積層膜10の一例を図1に示す。
乾燥工程前の積層膜10は、例えば、基材20、第1塗膜30、及び第2塗膜40が順に積層されている。ここで、第1塗膜30及び第2塗膜40は、乾燥工程を経て、第1層31及び第2層41となる。また、第1層31は発光性材料を含有するので、発光機能を有する発光層である。
また、図1に示した例に限られず、本発明の効果が得られる範囲で積層膜の層構成は変更可能である。例えば、第2塗膜の形成後に、当該第2塗膜上に、さらに、新たな第3塗膜を形成してもよい。当該第3塗膜については、含有する材料や、積層方法に特に制限はない。当該第3塗膜の積層方法は、蒸着法でも塗布法でもよいが、第2塗膜と同様に、大気環境下で、塗布法によって形成することが、プロセス容易性の観点から好ましい。
また、本発明に係る第2塗膜の形成後の乾燥工程は、第2塗膜の形成後に1回以上実施されればよい。例えば、第2塗膜の形成後に、塗布法により第3塗膜を形成する場合、第3塗膜の形成後に1回のみ乾燥工程をおこなってもよいし、第2塗膜の形成後に乾燥工程を行い、かつ第3塗膜の形成後に再度乾燥工程を行うようにしてもよい。これは、第2塗膜上に第3塗膜が形成される場合であっても、第2塗膜の形成後に1回以上の乾燥工程があれば、本発明の効果が得られるためである。
なお、第2塗膜上に第3塗膜を形成する例について説明したが、これに限られず、さらに複数の塗膜を形成することとしてもよい。
また、第1塗膜を形成する工程Aの直後に第2塗膜を形成する工程Bを行うことが好ましいが、工程A及び工程Bの間には、本発明の効果を阻害しない範囲で別の工程を有してもよく、例えば、これらの工程の間に大気環境下で送風乾燥を行っても良い。
以下、本発明の積層膜の製造方法についての構成要件を詳細に説明する。
<基材>
基材(以下、基板又は支持基板ともいう。)としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また透明であっても不透明であってもよい。支持基板側から光を取り出す場合には、支持基板は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な支持基板としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル、又はポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)若しくはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂により形成されたフィルム等が挙げられる。
樹脂フィルムの表面には、ガスバリアー層として、無機物、有機物の被膜又はその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよい。このようなガスバリアー層は、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する目的で設けられる。
ガスバリアー層を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。更に、該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
ガスバリアー層の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。
不透明な支持基板としては、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
<塗布液の調液>
塗布液A及び塗布液Bを調液する環境は、特に制限はないが、塗膜を形成する工程と同様に、大気環境下であることが生産プロセス効率の観点から好ましい。
<塗膜の形成>
(塗布方法)
本発明に係る第1塗膜を形成するための塗布液A及び第2塗膜を形成するための塗布液Bの塗布方法としては、特に制限はなく、例えばスピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、ノズルプリンティング法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法等が挙げられる。
これらの中でも、インクジェット法を用いた場合、本発明の効果を有効に得ることができるため好ましい。インクジェット法を実施する際は、通常高粘度の溶剤が好まれて使用されるため、塗布液が高沸点化しやすい。そのため、塗膜の乾燥工程の時間が長くなる、又は乾燥温度の上昇などが必要となり、公知の大気環境下で乾燥工程を行った場合、膜の機能が低下しやすくなる。本発明の積層膜の製造方法を用いれば、公知の大気環境下で乾燥工程を行った場合でも膜の機能の低下を抑制できるため、インクジェット法を好適に用いることができる。
(大気環境)
本発明において、塗布液A及び塗布液Bの塗布を実施する「大気環境」とは、酸素含有ガス雰囲気のことをいい、例えば、気体の割合が、窒素(N)78%、酸素(O)21%、水分(HO)0〜4%であるガス雰囲気である。
(温度)
塗布液A及び塗布液Bの塗布する際の温度は、塗布液中に結晶が生じにくい温度であり、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、10〜50℃の範囲内が好ましく、13〜40℃の範囲内がより好ましく、16〜30℃の範囲内がさらに好ましい。
(湿度)
塗布液A及び塗布液Bの塗布する際の相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、下限としては、通常0.01ppm以上、好ましくは0.05ppm以上、より好ましくは0.1ppm以上である。また、相対湿度の上限としては、通常80%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは15%以下、更に好ましくは1%以下、特に好ましくは100ppm以下である。上記範囲内であると、湿式成膜法における成膜条件の制御が容易であり、また有機層への水分吸着がし難い点で好ましい。
(圧力)
塗布液A及び塗布液Bの塗布する塗布工程における圧力は、通常90000〜110000Paの範囲内、好ましくは95000〜105000Paの範囲内である。上記範囲内であると、一般的な大気圧の範囲内のため、大面積を容易に塗布できる点で好ましい。
(照明)
大気環境下での塗布時の照明は、特に制限はないが、塗布液中に含有する材料が吸収を持たない波長を有する照明であることが好ましい。例えば、イエローライトなどを用いることができる。
<乾燥工程(工程C)>
(乾燥方法)
本発明でいう乾燥とは、工程A及び工程Bの後の第1塗膜及び第2塗膜の溶媒含有量を100質量%とした場合に、当該溶媒含有量が5質量%以下、好ましくは1質量%以下まで低減されることをいう。
本発明における大気環境下での乾燥工程では、乾燥の手段として一般的に汎用されているものを使用でき、加熱乾燥、送風乾燥、IR乾燥及び電磁波による乾燥などが挙げられる。また、これらの中でも、プロセス容易性の観点から加熱乾燥が好ましい。
(加熱乾燥)
加熱乾燥における温度は、特に制限はないが、塗布液に用いる溶媒の沸点以上の温度であることが乾燥時間の短縮の面から好ましい。加熱工程において、加熱時間は限定されないが、好ましくは10秒以上、通常180分以下である。加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。これらの中でも、膜全体に均等に熱を与えるためには、クリーンオーブン及びホットプレートが好ましい。
さらには積層膜中に含有する材料のTgの中で最も低Tgである材料の(Tg+20℃)より低い温度で保持することが好ましい。
<塗布液Aに含有する発光性材料>
塗布液A中には、発光性材料を含有する。発光性材料としては、蛍光発光、リン光発光及び熱活性型遅延蛍光発光など発光形式を問わず、公知の発光性化合物を自由に選択して用いることができる。また、塗布液Aには、1種類の発光性化合物のみを含有してもよく、2種類以上の発光性化合物を含有してもよい。
塗布液A中に含有する発光性材料は、本発明の効果を有効に得る観点から、リン光発光性材料又は熱活性型遅延蛍光発光性材料であることが好ましい。リン光発光性化合物及び熱活性型遅延蛍光発光性化合物は、その発光寿命(τ)が数μs以上と長いため、発光層への大気の侵入や、発光性材料の酸化劣化などで発光阻害を受けやすい。本発明の製造方法では、第1塗膜と第2塗膜を一括して乾燥することで、第1塗膜に対する大気の侵入を抑制でき、このような発光阻害の発生を効果的に抑えることができると考えられる。そのため、発光性材料にリン光発光性化合物及び熱活性型遅延蛍光発光性化合物を用いた場合には、本発明の効果をより有効に得ることができると推定される。
また、塗布液A中に含有する発光性材料は、本発明の効果を有効に得る観点から、最高被占分子軌道(HOMO)の準位が−5.6eV以上の蛍光発光性化合物であることが好ましい。
また、通常、有機エレクトロルミネッセンス素子等の青色発光性化合物として用いる蛍光発光性化合物では、最高被占分子軌道(HOMO)の準位が高い(浅い)ため、酸素混入時に酸素消光しやすい、又は酸化劣化しやすいという問題がある。そのため、公知の大気環境下で乾燥工程を行う方法の場合には、蛍光発光性化合物の発光性低下が顕著になる。特に、最高被占分子軌道(HOMO)の準位が−5.6eV以上の蛍光発光性化合物は大気環境下での発光性低下が顕著であるため、本発明の製造方法を適用することで、本発明の効果をより有効に得ることができる。
また、塗布液Aを用いて形成した第1塗膜は、乾燥工程を経て、発光機能を有する発光層となる。本発明における当該発光層を含む積層膜の形成方法は、有機エレクトロルミネッセンス素子等の発光素子における発光層の形成方法に好適に用いることができる。
以下、この積層膜に含有する発光性材料(以下、発光ドーパントともいう。)の濃度や、発光性材料の具体例について説明する。
発光層中の発光ドーパントの濃度については、使用される特定のドーパント及び適用する電子デバイスの必要条件に基づいて、任意に決定することができ、発光層の層厚方向に対し、均一な濃度で含有されていてもよく、また任意の濃度分布を有していてもよい。
また、本発明に係る発光ドーパントは、複数種を併用して用いてもよく、構造の異なるドーパント同士の組み合わせや、蛍光発光性ドーパントとリン光発光性ドーパントとを組み合わせて用いてもよい。これにより、任意の発光色を得ることができる。
本発明に係る発光ドーパントの発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ(株)製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
本発明においては、1層又は複数層の発光層が、発光色の異なる複数の発光ドーパントを含有し、白色発光を示すことも好ましい。
白色を示す発光ドーパントの組み合わせについては特に限定はないが、例えば青と橙や、青と緑と赤の組み合わせ等が挙げられる。
(リン光発光性材料)
本発明に係るリン光発光性材料(以下、「リン光ドーパント」ともいう)について説明する。本発明に係るリン光ドーパントは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に係るリン光ドーパントは、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
本発明に使用できる公知のリン光ドーパントの具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられる。例えば、Nature 395,151 (1998)、Appl. Phys. Lett. 78, 1622 (2001)、Adv. Mater. 19, 739 (2007)、Chem. Mater. 17, 3532 (2005)、Adv. Mater. 17, 1059 (2005)、国際公開第2009/100991号、国際公開第2008/101842号、国際公開第2003/040257号、米国特許出願公開第2006/835469号、米国特許出願公開第2006/0202194号、米国特許出願公開第2007/0087321号、米国特許出願公開第2005/0244673号、Inorg. Chem. 40, 1704 (2001)、Chem. Mater. 16, 2480 (2004)、Adv. Mater. 16, 2003 (2004)、Angew. Chem. lnt. Ed. 2006, 45, 7800、Appl. Phys. Lett. 86, 153505 (2005)、Chem. Lett. 34, 592 (2005)、Chem. Commun. 2906 (2005)、Inorg. Chem. 42, 1248 (2003)、国際公開第2009/050290号、国際公開第2002/015645号、国際公開第2009/000673号、米国特許出願公開第2002/0034656号、米国特許第7332232号、米国特許出願公開第2009/0108737号、米国特許出願公開第2009/0039776号、米国特許第6921915号、米国特許第6687266号、米国特許出願公開第2007/0190359号、米国特許出願公開第2006/0008670号、米国特許出願公開第2009/0165846号、米国特許出願公開第2008/0015355号、米国特許第7250226号、米国特許第7396598号、米国特許出願公開第2006/0263635号、米国特許出願公開第2003/0138657号、米国特許出願公開第2003/0152802号、米国特許第7090928号、Angew. Chem. lnt. Ed. 47, 1 (2008)、Chem. Mater. 18, 5119 (2006)、Inorg. Chem. 46, 4308 (2007)、Organometallics 23, 3745 (2004)、Appl. Phys. Lett. 74, 1361 (1999)、国際公開第2002/002714号、国際公開第2006/009024号、国際公開第2006/056418号、国際公開第2005/019373号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2007/004380号、国際公開第2006/082742号、米国特許出願公開第2006/0251923号、米国特許出願公開第2005/0260441号、米国特許第7393599号、米国特許第7534505号、米国特許第7445855号、米国特許出願公開第2007/0190359号、米国特許出願公開第2008/0297033号、米国特許第7338722号、米国特許出願公開第2002/0134984号、米国特許第7279704号、米国特許出願公開第2006/098120号、米国特許出願公開第2006/103874号、国際公開第2005/076380号、国際公開第2010/032663号、国際公開第2008/140115号、国際公開第2007/052431号、国際公開第2011/134013号、国際公開第2011/157339号、国際公開第2010/086089号、国際公開第2009/113646号、国際公開第2012/020327号、国際公開第2011/051404号、国際公開第2011/004639号、国際公開第2011/073149号、米国特許出願公開第2012/228583号、米国特許出願公開第2012/212126号、特開2012−069737号公報、特開2012−195554号公報、特開2009−114086号公報、特開2003−81988号公報、特開2002−302671号公報、特開2002−363552号公報等である。
中でも、好ましいリン光ドーパントとしてはIrを中心金属に有する有機金属錯体が挙げられる。さらに好ましくは、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含む錯体が好ましい。
(蛍光発光性材料)
本発明に係る蛍光発光性材料(以下、「蛍光ドーパント」ともいう)について説明する。
本発明に係る蛍光ドーパントは、励起一重項からの発光が可能な化合物であり、励起一重項からの発光が観測される限り特に限定されない。
本発明に係る蛍光ドーパントとしては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、ペリレン誘導体、フルオレン誘導体、アリールアセチレン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、アリールアミン誘導体、ホウ素錯体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、シアニン誘導体、クロコニウム誘導体、スクアリウム誘導体、オキソベンツアントラセン誘導体、フルオレセイン誘導体、ローダミン誘導体、ピリリウム誘導体、ペリレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、又は希土類錯体系化合物等が挙げられる。
(熱活性型遅延蛍光発光性材料)
熱活性型遅延蛍光発光性材料としては、特に限定されないが、例えば、Adv.Mater.2014,DOI:10.1002/adma.201402532に記載の化合物等が挙げられる。
<塗布液Aに含有する上記発光性材料以外の成分>
塗布液A中には、発光性材料の発光阻害しない範囲で他の成分を含有していても良い。
また、塗布液Aには、本発明の効果を有効に得る観点から、上記発光性材料の他に、さらに、最高被占分子軌道(HOMO)の準位が−5.6eV以上の有機化合物を含有することが好ましく、当該有機化合物がホスト化合物であることが好ましい。
また、その他にも、塗布液Aには、電子受容性化合物及び電子供与性化合物等の電荷輸送補助剤を含有していても良く、その他レベリング剤、消泡剤、増粘剤等の塗布性改良剤、バインダー樹脂などを含有していてもよい。
(ホスト化合物)
本発明に係るホスト化合物としては、室温(25℃)におけるリン光発光のリン光量子収率が0.1未満の化合物が好ましい。さらに好ましくはリン光量子収率が0.01未満である。また、発光層に含有される化合物の中で、その層中での体積比が50%以上であることが好ましい。
ホスト化合物としては、公知のホスト化合物を単独で用いてもよく、又は複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機エレクトロルミネッセンス素子を高効率化することができる。また、後述する発光性材料を複数種用いることで異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
また、本発明に用いられるホスト化合物としては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位を持つ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物でもよいが、高分子化合物を用いた場合、化合物が溶媒を取り込んで膨潤やゲル化等、溶媒が抜けにくいと考えられる現象が起こりやすいので、これを防ぐために分子量は高くない方が好ましく、具体的には塗布時での分子量が2000以下の化合物を用いることが好ましく、塗布時の分子量1000以下の化合物を用いることが更に好ましい。
公知のホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Calorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物が挙げられる。例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報、米国特許出願公開第2003/0175553号、米国特許出願公開第2006/0280965号、米国特許出願公開第2005/0112407号、米国特許出願公開第2009/0017330号、米国特許出願公開第2009/0030202号、米国特許出願公開第2005/0238919号、国際公開第2001/039234号、国際公開第2009/021126号、国際公開第2008/056746号、国際公開第2004/093207号、国際公開第2005/089025号、国際公開第2007/063796号、国際公開第2007/063754号、国際公開第2004/107822号、国際公開第2005/030900号、国際公開第2006/114966号、国際公開第2009/086028号、国際公開第2009/003898号、国際公開第2012/023947号、特開2008−074939号公報、特開2007−254297号公報、EP2034538、等が挙げられる。
本発明に用いられるホスト化合物は、カルバゾール誘導体であることが好ましい。
<塗布液Aに用いる溶剤>
塗布液Aに用いる溶剤としては特に制限はなく、上述した発光性材料を溶解できる溶剤であることが好ましい。本発明に用いる溶剤としては、発光性材料の機能を低下させなければ無機溶媒でも有機溶媒でもよい。これらの無機溶媒及び有機溶媒は、それぞれ単独でも用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明に係る有機溶媒としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノールやジオール、トリオール、テトラフルオロプロパノール等)、グリコール類、セロソルブ類、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、カルボン酸類(ギ酸、酢酸等)、カーボネート類(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル等)、エーテル類(イソプロピルエーテル、THF等)、アミド類(ジメチルスルホキシド等)、炭化水素類(ヘプタン等)、ニトリル類(アセトニトリル等)、芳香族類(シクロヘキシルベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等)、ハロゲン化アルキル類(塩化メチレン等)、アミン類(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジアザビシクロウンデセン等)、ラクトン系などが挙げられる。
本発明に係る無機溶媒としては、例えば、水(HO)や溶融塩等が挙げられる。無機溶媒として用いることができる溶融塩は、例えば、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化カルシウムなどの金属ヨウ化物−ヨウ素の組み合わせ;テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイドなどの4級アンモニウム化合物のヨウ素塩−ヨウ素の組み合わせ;臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム、臭化カルシウムなどの金属臭化物−臭素の組み合わせ;テトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイドなどの4級アンモニウム化合物の臭素塩−臭素の組み合わせ;フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩、フェロセン−フェリシニウムイオンなどの金属錯体;ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィドなどのイオウ化合物;ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノンなどが挙げられる。
<塗布液Bに含有する化合物>
塗布液Bは、最高被占分子軌道(HOMO)の準位が−5.0eV以下の有機化合物、又は、元素周期表における1〜3周期かつ1族又は2族の元素、元素周期表における3〜18族の元素、ランタノイド、及びアクチノイドのいずれかの元素で形成される無機物若しくは金属錯体、を含有する。
塗布液Bに、このような所定の有機化合物や、所定の元素で形成される無機物若しくは金属錯体を含有する場合に、乾燥後の積層膜(発光性薄膜)が、良好な発光効率及び発光寿命を得ることができた。この要因としては、最高被占分子軌道(HOMO)の準位が所定値以下の有機化合物や又はイオン化エネルギーが大きい無機物若しくは金属錯体を用いることにより、塗布液Bで形成する第2塗膜の大気安定性が向上したためであると考えられる。つまり、第2塗膜の大気安定性が向上することで、第2塗膜に含有される成分が酸化や潮解等の劣化を引き起こしにくくなり、第2塗膜が上述したような第1塗膜のガスバリアー層としての機能を有効に果たすことができたためであると推定している。
なお、本発明において、最高被占分子軌道(HOMO:Highest Occupied Molecular Orbital)のエネルギー準位の値は、米国Gaussian社製の分子軌道計算用ソフトウェアであるGaussian03(Gaussian03、Revision D02,M.J.Frisch,et al,Gaussian,Inc.,Wallingford CT,2004. )を用いて計算した際の値であり、キーワードとして、B3LYP/6−31G*を用い、対象とする分子構造の構造最適化を行うことにより算出した値と定義する(eV単位換算値)。この計算値が有効な背景には、この手法で求めた計算値と実験値の相関が高いことが知られている。
また、前記計算手法において最高被占分子軌道(HOMO)の準位の値を算出できない材料、例えば分子量が大きいポリマー材料など、においては、実測した最高被占分子軌道(HOMO)の準位の値から補正して算出することができる。具体的には、例えば、理研計器社製の光電子分光装置AC−3を用い測定し、実測した最高被占分子軌道(HOMO)の準位の値に、0.7eVを加算した値を補正後の計算値として取り扱うことができる。この補正が有効な背景には、[「計算した最高被占分子軌道(HOMO)の準位の値」=「実測した最高被占分子軌道(HOMO)の準位の値」+0.7eV]の相関が高いことが判明しているためである。以上により、本発明において、前記計算手法において最高被占分子軌道(HOMO)の準位の値を算出できない材料については、実測した最高被占分子軌道(HOMO)の準位の値に、0.7eVを加算した値を「最高被占分子軌道(HOMO)の準位の値」であると定義する。
なお、測定機種や測定手段(例えば、サイクリックボルタンメトリー)などを変更する場合、前記計算手法で最高被占分子軌道(HOMO)の準位の値を算出可能な材料を用いて最高被占分子軌道(HOMO)の準位の値を実測し、計算値と実測値との間の差を算出することができる。この差を補正値として用いることにより、測定機種や測定手段などの実測環境が異なっても、同様に最高被占分子軌道(HOMO)の準位の値を算出することができる。
また、塗布液Bには、上述した所定の有機化合物、又は所定の元素で形成される無機物若しくは金属錯体を含有してさえすれば、本発明の効果を阻害しない範囲で、さらに他の化合物を含んでいても良い。
<塗布液Bに用いる溶剤>
塗布液Bに用いる溶剤としては塗布液A同様特に制限はなく、前記必要材料を溶解できる溶剤であることが好ましい。さらには、塗布液Aとの混合抑制のために、塗布液Aの溶剤と塗布液Bの溶剤は非相溶性であることが好ましい。
<積層膜の用途>
本発明の積層膜の製造方法によって製造された積層膜は、様々な製品で用いられる積層膜に対して適用可能であり、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子や、有機薄膜太陽電池等の種々の電子デバイスに適用することができる。
以下、本発明の積層膜の製造方法によって形成された積層膜を好適に適用可能である有機エレクトロルミネッセンス素子について説明する。
<有機エレクトロルミネッセンス素子の構成層>
図2に示すとおり、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子100(以下、有機EL素子ともいう)は、可撓性支持基板110を有している。可撓性支持基板110上には陽極120が形成され、陽極120上には有機機能層200が形成され、有機機能層200上には陰極180が形成されている。
有機機能層200とは、陽極120と陰極180との間に設けられている有機EL素子100を構成する各層をいう。
有機機能層200には、例えば、正孔注入層130、正孔輸送層140、発光層150、電子輸送層160、電子注入層170が含まれ、そのほかに正孔ブロック層や電子ブロック層等が含まれてもよい。
可撓性支持基板110上の陽極120、有機機能層200、陰極180は封止接着剤190を介して可撓性封止部材210によって封止されている。
本発明の積層膜の製造方法を有機EL素子の製造方法に適用する場合は、例えば、可撓性支持基板110上の発光層150及び電子輸送層160の積層膜形成する際に用いることができる。
具体的には、例えば、塗布液Aにより形成する第1塗膜を乾燥した層が発光層150となり、塗布液Bにより形成する第2塗膜を乾燥した層が電子輸送層160となるように、本発明の積層膜の製造方法によって発光層150及び電子輸送層160を形成することができる。
また、これに限られず、本発明の効果を得られる範囲で、発光層150を含む複数の層を形成する際に、本発明の積層膜の製造方法を用いて、有機EL素子に用いられる積層膜を形成することができる。
なお、図2に示した有機EL素子100の層構造は、単に好ましい具体例を示したものであり、その他、例えば、以下の(i)〜(viii)の層構造を有していてもよい。
(i)可撓性支持基板/陽極/発光層/電子輸送層/陰極/熱伝導層/封止用接着剤/封止部材
(ii)可撓性支持基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極/熱伝導層/封止用接着剤/封止部材
(iii)可撓性支持基板/陽極/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/陰
極/熱伝導層/封止用接着剤/封止部材
(iv)可撓性支持基板/陽極/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極/熱伝導層/封止用接着剤/封止部材
(v)可撓性支持基板/陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極/熱伝導層/封止用接着剤/封止部材
(vi)ガラス支持体/陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極/封止部材
(vii)ガラス支持体/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極/封止部材
(viii)ガラス支持体/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極/封止部材
上述した各層は、例えば、国際公開第2012/077431号に記載の公知の化合物を用いて、公知の製造方法により作製することができる。
<有機EL素子の用途>
有機EL素子は、表示装置、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。
また、発光光源として、例えば、家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源、さらには表示装置を必要とする一般の家庭用電気器具等広い範囲の用途が挙げられるが、特にカラーフィルターと組み合わせた液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
なお、本実施例においては、以下の化合物を使用した。
Figure 2019059056
Figure 2019059056
Figure 2019059056
Figure 2019059056
[参考例1]
実施例と比較例とを用いて本発明を説明する前に、まず参考例1では、発光性材料を含有する塗布液を用いて塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥して得た評価用単膜によって、塗布プロセス違いでの発光機能の評価を実施した。
<評価用単膜1−1〜1−4の形成>
縦50mm、横50mm、厚さ0.7mmの石英基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
下記塗布液Aを窒素環境下で調製した。次いで、窒素環境下で、下記塗布液Aを用いて、500rpm、30秒でスピンコート法により塗膜を形成した。次に、窒素環境下で、ホットプレートを用いて120℃、30分で乾燥し、膜厚50nmの評価用単膜1−1を形成した。
また、評価用単膜1−1の形成において、調液・塗布工程、乾燥工程を表Iに記載のように変更した以外は同様にして評価用単膜1−2〜1−4を形成した。
なお、評価用単膜1−2及び1−4では、評価用単膜1−1及び1−3で行った乾燥を行わずに、評価をした。
(塗布液Aの組成物)
ホスト化合物:例示化合物H−1 9質量部
リン光発光性化合物:例示化合物D−1 1質量部
酢酸ノルマルブチル 2000質量部
<評価>
下記測定方法に従って、蛍光発光スペクトルの評価を行い、各評価用単膜の発光強度を評価した。
各評価用単膜に、励起波長300nmの光を照射して、室温状態(23℃・55%RH)の発光スペクトルを測定した。ここで、発光スペクトルの測定はF−7000((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて行い、評価用単膜1−1を1.00としたときの各評価用単膜の発光強度の相対比を算出した。
Figure 2019059056
上記表Iに示すように、発光性材料としてリン光発光性化合物(例示化合物D−1)を含有する評価用単膜の発光機能を確認した結果、大気環境下で乾燥工程を実施した評価用単膜1−3で発光強度の顕著な低下が観測された。この結果から、リン光発光性化合物を含有する評価用単膜の発光機能低下は、大気環境下での乾燥工程に起因するものであることが分かった。
[参考例2]
<評価用単膜2−1〜2−4の形成>
評価用単膜2−1〜2−4は、上記評価用単膜1−1〜1−4の形成方法において、リン光発光性化合物(例示化合物D−1)の代わりに蛍光発光性化合物(例示化合物D−2)用いた以外は同様の方法でそれぞれ形成した。
<評価>
各評価用単膜の発光強度を参考例1と同様の方法で測定し、評価用単膜2−1を1.00としたときの各評価用単膜の発光強度の相対比を算出した。
Figure 2019059056
表IIに示すように、発光性材料として蛍光発光性化合物(例示化合物D−2)を含有する評価用単膜の発光機能を確認した結果、大気環境下で乾燥工程を実施した評価用単膜2−3で発光強度の顕著な低下が観測された。この結果から、蛍光発光性化合物を含有する評価用単膜の発光機能低下も、大気環境下での乾燥工程に起因するものであることが分かった。
[参考例3]
<評価用単膜3−1〜3−4の形成>
評価用単膜3−1〜3−4は、上記評価用単膜1−1〜1−4の形成方法において、リン光発光性化合物(例示化合物D−1)の代わりに、熱活性型遅延蛍光発光性化合物(例示化合物D−3)を用いた以外は同様の方法でそれぞれ形成した。
<評価>
各評価用単膜の発光強度を参考例1と同様の方法で測定を実施し、評価用単膜3−1を1.00としたときの各評価用単膜の発光強度の相対比を算出した。
Figure 2019059056
表IIIに示すように、発光性材料として熱活性型遅延蛍光発光性化合物(例示化合物D
−3)を含有する評価用単膜の発光機能を確認した結果、大気環境下で乾燥工程を実施した評価用単膜3−3で発光強度の顕著な低下が観測された。この結果から、熱活性型遅延蛍光発光性化合物を含有する評価用単膜の発光機能低下も、大気環境下での乾燥工程に起因するものであることが分かった。
以上の参考例の結果より、いかなる発光機構で発光する発光性化合物においても、上述した塗膜を乾燥して得た膜において、発光機能の低下は、大気環境下での乾燥工程に起因するものであることが推察される。
[実施例1]
実施例1では、リン光発光性化合物を含有する塗布液Aと、当該塗布液Aとは異なる塗布液Bとを用いて塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥して得た評価用積層膜によって、積層膜を塗布プロセス違いでの発光強度について評価した。
<評価用積層膜4−1〜4−6の形成>
縦50mm、横50mm、厚さ0.7mmの石英基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
下記塗布液A及び下記塗布液Bを窒素環境下で調製した。次いで、窒素環境下で、下記塗布液Aを500rpm、30秒でスピンコート法により乾燥後の膜厚が50nmとなる膜厚で、第1塗膜を形成した。次に、窒素環境下で、ホットプレートを用いて120℃、30分で乾燥した。次いで、第1塗膜を乾燥した後の層の上に、窒素環境下で、下記塗布液Bを1000rpm、30秒でスピンコート法により乾燥後の膜厚が30nmとなる膜厚で、第2塗膜を形成した。次いで、ホットプレートを用いて120℃、30分で乾燥して評価用積層膜4−1を形成した。
また、評価用積層膜4−1の形成において、調液・塗布工程、乾燥工程を下記表IVに記載のように変更した以外は同様にして評価用積層膜4−2〜4−6を形成した。
なお、評価用積層膜4−2、4−3、4−5、4−6では、第2塗膜形成後における乾燥工程後に、第1塗膜及び第2塗膜が乾燥された後の層の膜厚が、それぞれ50nm及び30nmとなるように各層を形成した。
(塗布液Aの組成物)
ホスト化合物:例示化合物H−1 9質量部
リン光発光性化合物:例示化合物D−1 1質量部
酢酸ノルマルブチル 2000質量部
(塗布液Bの組成物)
例示化合物B−1 6質量部
1H,1H,3H−テトラフルオロプロパノール(TFPO)
2000質量部
ここで、TFPOと酢酸ノルマルブチルは非相溶性の溶媒であり、例示化合物B−1の最高被占分子軌道(HOMO)の準位は−5.5eVであり、本発明の構成要件を満たす材料である。
<評価>
下記測定方法に従って、蛍光発光スペクトルの測定を行い、各評価用積層膜の発光強度を評価した。
各評価用積層膜に、励起波長300nmの光を照射して、室温状態(23℃・55%RH)の発光スペクトルを測定した。ここで、発光スペクトルの測定はF−7000((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて行い、評価用積層膜4−1を1.00としたときの各評価用積層膜の発光強度の相対比を算出した。
Figure 2019059056
表IVに示すように、本発明に係る塗布プロセスで形成した評価用積層膜4−5及び4−6は、参考例1で示した発光強度の低下が起こっていないことがわかった。この結果から、本発明の積層膜の製造方法によって大気環境下で形成した積層膜は、窒素雰囲気下で形成した積層膜(評価用積層膜4−1〜4−3)と遜色ない高機能な発光性積層膜であることが分かった。
[実施例2]
実施例2では、実施例1において、塗布液A及び塗布液Bに含有する各種材料を変更し、本発明に係る大気環境下での塗布プロセスで形成した積層膜の発光強度について評価した。
<評価用積層膜5−1〜5−11の形成>
評価用積層膜5−1は、実施例1の評価用積層膜4−1の形成方法において、塗布液A中の例示化合物D−1の代わりに例示化合物D−2を用い、例示化合物H−1の代わりに例示化合物H−2を用い、塗布液B中の例示化合物B−1の代わりに例示化合物B−2を用いた以外は同様にして形成した。
また、評価用積層膜5−1の形成において、調液・塗布工程、乾燥工程、塗布液Bで形成する第2塗膜中に含有する化合物を表Vに記載のように変更した以外は同様にして、評価用積層膜5−2〜5−11を形成した。
なお、評価用積層膜5−6の第2塗膜の形成に用いた化合物としては、ビスアセチルアセトナトカルシウム錯体(表V中では「Ca(acac)」と略記)を用いた。
また、評価用積層膜5−7の第2塗膜の形成に用いた化合物としては、酸化亜鉛(ZnO)と例示化合物B−5とを重量比4:1で混合したものを用いた。ここで、例示化合物B−5は、8−キノリノラトリチウム(Liq)であり、本発明の構成要件を満たす金属錯体である。
また、評価用積層膜5−11の第2塗膜の形成に用いた化合物としては、フッ化カリウム(KF)と例示化合物B−1とを重量比1:4で混合したものを用いた。
<評価>
発光強度の測定は、実施例1と同様に実施し、評価用積層膜5−1を1.00としたときの各評価用積層膜の発光強度の相対比を算出した。
Figure 2019059056
評価用積層膜5−1及び5−2は、従来の窒素雰囲気下で形成した評価用積層膜についての結果である。
表Vに示すように、塗布液B中に本発明の構成要件を満たす材料を含有し、かつ本発明に係る大気環境下での塗布プロセスで製膜された評価用積層膜5−7〜5−11においては、評価用積層膜5−3〜5−6と比較して発光強度の低下を抑えることができることが分かった。また、この結果から、本発明の効果を発現するためには、塗布液Bには、大気安定性を有する所定の材料を含有することが必要であることが分かった。
[実施例3]
次に実施例3では、塗布液Aに含有する各種発光性材料を変更し、塗布液Bに本発明に係る有機化合物を含有し、本発明に係る大気環境下での塗布プロセスで形成した積層膜の発光強度について評価し、本発明の第1塗膜及び第2塗膜形成後の一括大気乾燥プロセスの効果について評価を行った。
<評価用積層膜6−1〜6−7の形成>
評価用積層膜6−1は、塗布液A及び塗布液Bについては、実施例1における評価用積層膜4−6の形成方法において、塗布液A中の例示化合物D−1の代わりに蛍光発光性化合物である例示化合物D−2を用い、塗布液Bの例示化合物B−1の代わりに例示化合物B−4を用い、実施例2における評価用積層膜5−4と同様に第1塗膜及び第2塗膜の調液・塗布工程と乾燥工程とを行い形成した。
また、評価用積層膜6−1の形成において、塗布液Aに含有する発光性材料を表VIに記載のように変更した以外は同様にして、評価用積層膜6−2〜6−7を形成した。
<比較用積層膜6−1〜6−7の形成>
評価用積層膜6−1〜6−7において、第1塗膜及び第2塗膜における調液・塗布工程と乾燥工程とを、実施例2の評価用積層膜5−3と同様の方法に変更した以外は同様にして、比較用積層膜6−1〜6−7を形成した。
<評価>
評価用積層膜6−1〜6−7と比較用積層膜6−1〜6−7とについての発光強度を、実施例1と同様に測定した。さらに、比較用積層膜6−1の発光強度に対する評価用積層膜6−1の発光強度の比率を算出した。また、他の評価用積層膜6−2〜6−7に対しても、同様に比較用積層膜に対する評価用積層膜の発光強度の比率を算出した。
各比較用積層膜は、第1塗膜の乾燥工程を大気環境下で行い、その後第2塗膜を形成したものであるので、比較用積層膜の発光強度に対する評価用積層膜の発光強度の比率が大きいほど、本発明の積層膜の製造方法の効果が大きいということを意味する。
Figure 2019059056
表VIに示すように、塗布液Aに含有する発光性材料がリン光発光性化合物又は熱活性型遅延蛍光発光性化合物の場合には、本発明の効果がより大きいことが分かった。リン光発光性化合物及び熱活性型遅延蛍光発光性化合物は、蛍光発光に比べ発光の励起子寿命(τ)が長く、発光層への大気の侵入や、発光性材料の酸化劣化などで発光阻害を受けやすい。本発明の製造方法では、第1塗膜と第2塗膜を一括して乾燥することで、第1塗膜に対する大気の侵入を抑制でき、このような発光阻害の発生を効果的に抑えることができたと考えられる。そのため、発光性材料にリン光発光性化合物及び熱活性型遅延蛍光発光性化合物を用いた場合には、本発明の効果をより有効に得ることができたと推定される。
[実施例4]
実施例4では、塗布液Aに各種蛍光材料を含有し、塗布液Bに本発明に係る有機化合物を含有し、本発明に係る大気環境下での塗布プロセスで形成した積層膜の発光強度について評価し、本発明の積層膜の製造方法の効果について評価を行った。
<評価用積層膜7−1〜7−6の形成>
評価用積層膜7−1の形成において、塗布液A及び塗布液Bについては、実施例1における評価用積層膜4−6の形成方法において、塗布液A中の例示化合物D−1の代わりに例示化合物D−8を用い、例示化合物H−1の代わりに例示化合物H−2を用い、塗布液Bに本発明に係るB−1を用いた。また、実施例2における評価用積層膜5−4と同様に第1塗膜及び第2塗膜の調液・塗布工程と乾燥工程とを行い、評価用積層膜7−1の形成を行った。
また、評価用積層膜7−1の形成において、塗布液Aに含有する発光性材料を表VIIに
記載のように変更した以外は同様にして、評価用積層膜7−2〜7−6を形成した。
<比較用積層膜7−1〜7−6の形成>
評価用積層膜7−1〜7−6において、第1塗膜及び第2塗膜における調液・塗布工程と乾燥工程とを、実施例2の評価用積層膜5−3と同様の方法に変更した以外は同様にして、比較用積層膜7−1〜7−6の形成を行った。
<評価>
評価用積層膜7−1〜7−6と比較用積層膜7−1〜7−6とについての発光強度を、実施例1と同様に測定した。さらに、比較用積層膜7−1の発光強度に対する評価用積層膜7−1の発光強度の比率を算出した。また、他の評価用積層膜7−2〜7−6に対しても、同様に比較用積層膜に対する評価用積層膜の発光強度の比率を算出した。
各比較用積層膜は、第1塗膜の乾燥工程を大気環境下で行い、その後第2塗膜を形成したものであるので、比較用積層膜の発光強度に対する評価用積層膜の発光強度の比率が大きいほど、本発明の積層膜の製造方法の効果が大きいということを意味する。
Figure 2019059056
表VIIに示すように、塗布液A中に含有する蛍光材料の最高被占分子軌道(HOMO)
の準位が−5.6eV以上の場合、発光強度の比率が大きく、本発明の積層膜の製造方法の効果がより大きいことが分かった。最高被占分子軌道(HOMO)の準位が−5.6eV以上の蛍光発光性化合物は大気環境下での発光性低下が顕著であるため、本発明の製造方法を適用することで、本発明の効果をより有効に得ることができたと考えられる。
[実施例5]
実施例5では、塗布液Aに発光性材料の他に各種他成分材料(ホスト化合物)を含有し、塗布液Bに本発明に係る有機化合物を含有し、本発明に係る大気環境下での塗布プロセスで形成した積層膜の発光強度について評価し、本発明の積層膜の製造方法の効果について評価を行った。
<評価用積層膜8−1〜8−5の形成>
評価用積層膜8−1は、塗布液A及び塗布液Bについては、実施例1における評価用積層膜4−6の形成方法において、塗布液A中の例示化合物D−1の代わりに例示化合物D−10を用い、例示化合物H−1に代わりに例示化合物H−3を用い、塗布液Bに本発明に係るB−4を用いた。また、実施例2における評価用積層膜5−4と同様に第1塗膜及び第2塗膜の調液・塗布工程と乾燥工程とを行い、評価用積層膜8−1を形成した。また、例示化合物B−4の最高被占分子軌道(HOMO)の準位は−6.3eVであり、本発明の構成要件を満たす。
また、評価用積層膜8−1の形成において、塗布液Bに含有するホスト化合物を表VIIIに記載のように変更した以外は同様にして、評価用積層膜8−2〜8−5を形成した。
<比較用積層膜8−1〜8−5の形成>
評価用積層膜8−1〜8−5において、第1塗膜及び第2塗膜における調液・塗布工程と乾燥工程とを、実施例2の評価用積層膜5−3と同様の方法に変更した以外は同様にして、比較用積層膜8−1〜8−5の形成を行った。
<評価>
評価用積層膜8−1〜8−5と比較用積層膜8−1〜8−5とについての発光強度を、実施例1と同様に測定した。さらに、比較用積層膜8−1の発光強度に対する評価用積層膜8−1の発光強度の比率を算出した。また、他の評価用積層膜8−2〜8−5に対しても、同様に比較用積層膜に対する評価用積層膜の発光強度の比率を算出した。
各比較用積層膜は、第1塗膜の乾燥工程を大気環境下で行い、その後第2塗膜を形成したものであるので、比較用積層膜の発光強度に対する評価用積層膜の発光強度の比率が大きいほど、本発明の積層膜の製造方法の効果が大きいということを意味する。
Figure 2019059056
表VIIIに示すように、塗布液A中に含有する他成分材料(ホスト化合物)の最高被占分子軌道(HOMO)の準位が−5.6eV以上の場合、発光強度の比率が大きく、本発明の積層膜の製造方法の効果がより大きいことが分かった。最高被占分子軌道(HOMO)の準位が―5.6eV以上のホスト化合物は、大気環境下での安定性が十分でなく、他成分として含有すると発光膜の発光性低下に関与する為、本発明の製造方法を適用することで本発明の効果を有効に得ることができたと考えられる。
[実施例6]
実施例6では、本発明に係る積層膜の製造方法によって形成した積層膜を組み込んだ照明装置(及び素子)の発光効率・寿命について評価した。
<評価用照明装置9−1の形成>
(基材の準備)
まず、ポリエチレンナフタレートフィルム(以下、PENと略記する。)(帝人デュポンフィルム株式会社製)の陽極を形成する側の全面に、特開2004−68143号公報に記載の構成の大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、SiOからなる無機物のガスバリアー層を層厚500nmとなるように形成した。これにより、酸素透過度0.001mL/(m・24h)以下、水蒸気透過度0.001g/(m・24h)以下のガスバリアー性を有する可撓性の基材を作製した。
(陽極の形成)
上記基材上に厚さ120nmのITO(インジウム・スズ酸化物)をスパッタ法により製膜し、フォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、陽極を形成した。なお、パターンは発光領域の面積が5cm×5cmになるようなパターンとした。
(正孔注入層の形成)
陽極を形成した基材をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。そして、陽極を形成した基材上に、特許第4509787号公報の実施例16と同様に調製したポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)の分散液をイソプロピルアルコールで希釈した2質量%溶液をダイコート法にて塗布、自然乾燥し、層厚40nmの正孔注入層を形成した。
(正孔輸送層の形成)
次に、正孔注入層を形成した基材を、大気雰囲気下、下記組成の正孔輸送層形成用塗布液を用いて、ダイコート法にて5m/minで塗布、自然乾燥した後に、130℃で30分間保持し、層厚30nmの正孔輸送層を形成した。
〈正孔輸送層形成用塗布液〉
正孔輸送材料(上記例示化合物HT−1)(重量平均分子量Mw=80000)
10質量部
クロロベンゼン 3000質量部
(積層膜(発光層及び電子輸送層)の形成)
窒素環境下で下記塗布液A及び塗布液Bを調製した。次に、正孔輸送層を形成した基材に対し、窒素環境下で、下記塗布液Aを500rpm、30秒でスピンコート法により、乾燥後の膜厚が50nmとなる膜厚で、第1塗膜を形成した。次に、窒素環境下で、ホットプレートを用いて120℃、30分で乾燥した。次いで、乾燥後の第1塗膜上に、窒素環境下で、下記組成の塗布液Bを1000rpm、30秒でスピンコート法により乾燥後の膜厚が30nmとなる膜厚で、第2塗膜を形成した。次いで、窒素環境下で、ホットプレートを用いて120℃、30分で乾燥した。第1塗膜及び第2塗膜を乾燥して得た積層膜は、第1塗膜を乾燥した後の層が発光層であり、第2塗膜を乾燥した後の層が電子輸送層である。
(塗布液Aの組成物)
ホスト化合物:例示化合物H−1 9質量部
リン光発光性化合物:例示化合物D−1 1質量部
酢酸ノルマルブチル 2000質量部
(塗布液Bの組成物)
例示化合物B−1 6質量部
1H,1H,3H−テトラフルオロプロパノール(TFPO)
2000質量部
(電子注入層、陰極の形成)
次に、基材を真空蒸着装置へ取り付けた。また、モリブデン製抵抗加熱ボートにフッ化カリウムを入れたものを真空蒸着装置に取り付け、真空槽を4×10−5Paまで減圧した。その後、ボートに通電して加熱し、フッ化カリウムを0.02nm/秒で上記積層膜上に蒸着し、層厚1.5nmの電子注入層を形成した。
引き続き、アルミニウムを蒸着して厚さ100nmの陰極を形成した。
(封止)
以上の工程により形成した積層体に対し、市販のロールラミネート装置を用いて封止基材を接着した。
封止基材として、可撓性を有する厚さ30μmのアルミニウム箔(東洋アルミニウム(株)製)に、ドライラミネーション用の2液反応型のウレタン系接着剤を用いて層厚1.5μmの接着剤層を設け、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをラミネートしたものを作製した。
封止用接着剤として熱硬化性接着剤を、ディスペンサーを使用して封止基材のアルミニウム箔の接着面(つや面)に沿って厚さ20μmで均一に塗布した。これを100Pa以下の真空下で12時間乾燥させた。更に、その封止基材を露点温度−80℃以下、酸素濃度0.8ppmの窒素雰囲気下へ移動して、12時間以上乾燥させ、封止用接着剤の含水率が100ppm以下となるように調整した。
熱硬化性接着剤としては下記の(A)〜(C)を混合したエポキシ系接着剤を用いた。
(A)ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)
(B)ジシアンジアミド(DICY)
(C)エポキシアダクト系硬化促進剤
上記封止基材を上記積層体に対して密着・配置して、圧着ロールを用いて、圧着ロール温度100℃、圧力0.5MPa、装置速度0.3m/minの圧着条件で密着封止し、評価用照明装置9−1を作製した。
<評価用照明装置9−2〜9−6の作製>
上記のとおり、評価用照明装置9−1の発光層及び電子輸送層の形成は、実施例1の評価用積層膜4−1と同様の方法で行った。評価用照明装置9−2〜9−6の作製では、評価用照明装置9−1の作製方法において、発光層及び電子輸送層の形成方法を実施例1の評価用積層膜4−2〜4−6と同様の方法に変更し、それ以外は同様にして作製した。
<評価>
評価用照明装置9−1〜9−6について、下記のように半減寿命を測定し、連続駆動安定性を評価した。また、下記のように外部取り出し量子効率を測定し、発光性の評価を行った。
<半減寿命>
下記測定法に従って、半減寿命の評価を行った。
各照明装置を初期輝度4000cd/mを与える電流で定電流駆動して、初期輝度の1/2になる時間を求め、これを半減寿命の尺度とした。なお、半減寿命は照明装置9−1を1.00とする相対比(LT比)で表した。なお、値が大きいほうが照明装置9−1に対して耐久性に優れていることを示す。
<外部取り出し量子効率(EQE)>
各照明装置を室温(約23℃)、2.5mA/cmの定電流条件下による通電を行い、発光開始直後の発光輝度(L0)[cd/m]を測定することにより、外部取り出し量子効率(EQE)を算出した。
ここで、発光輝度の測定はCS−2000(コニカミノルタ(株)製)を用いて行い、外部取り出し量子効率は、照明装置9−1を1.00とする相対比(EQE比)で表した。なお、値が大きいほうが発光効率に優れていることを示す。評価結果を表IXに示す。
Figure 2019059056
表IXに示すとおり、評価用照明装置9−5〜9−6については、本発明に係る積層膜の形成方法を実施したことにより、高効率かつ高寿命の照明装置を作製できていることが分かった。
[実施例7]
実施例7では、塗布液Bに含有する各種材料を実施例2と同様に変更し、本発明に係る積層方法にて形成した積層膜を組み込んだ照明装置(及び素子)の発光効率・寿命について評価した。
<評価用照明装置10−1の作製>
基材の準備、陽極の形成は実施例6と同様に行った。正孔注入層及び正孔輸送層の形成では、塗布方法を、ダイコート法からインクジェット法に変更し、正孔輸送層の溶媒をクロロベンゼンからパラキシレンに変更した以外は同様にして形成した。
(積層膜(発光層及び電子輸送層)の形成)
発光層及び電子輸送層の形成は、塗布方法をスピンコート法からインクジェット法に変更した以外は実施例2の評価用積層膜5−1と同様の方法で形成した。
(電子注入層、陰極の形成)
次に、基材を真空蒸着装置へ取り付けた。また、モリブデン製抵抗加熱ボートにフッ化リチウムを入れたものを真空蒸着装置に取り付け、真空槽を4×10−5Paまで減圧した。その後、ボートに通電して加熱し、フッ化リチウムを0.02nm/秒で蒸着し、層厚1.5nmの電子注入層を形成した。
引き続き、銀を蒸着して厚さ100nmの陰極を形成した。
(封止)
以上の工程により形成した積層体に対し、実施例6と同様の方法で密着封止し、評価用照明装置10−1を作製した。
<評価用照明装置10−2〜10−8の作製>
上記のとおり、評価用照明装置10−1の発光層及び電子輸送層の形成は、実施例2の評価用積層膜5−1と同様の方法で行った。評価用照明装置10−2〜10−8の作製では、評価用照明装置10−1の作製方法において、発光層及び電子輸送層の形成方法を、表Xに記載した実施例2の評価用積層膜番号の方法に変更し、それ以外は同様にして作製した。
<評価>
評価用照明装置10−1〜10−8について、実施例6と同様の方法で、外部量子効率・半減寿命を測定し、評価用照明装置10−1を1.00とする相対比で表した。
Figure 2019059056
表Xに示すとおり、評価用照明装置10−5〜10−8については、本発明に係る積層膜の形成方法を実施したことにより、高効率かつ高寿命の照明装置を作製できていることが分かった。
[実施例8]
実施例8では、本発明に係る積層方法にて形成した積層膜上に新たな層を追加積層した積層膜を組み込んだ照明装置(及び素子)の発光効率・寿命について評価した。
<評価用照明装置11−1の作製>
基材の準備、陽極の形成は実施例6と同様に行った。正孔注入層及び正孔輸送層の形成は塗布方法を、ダイコート法からインクジェットプロセスに変更し、正孔輸送層の溶媒をクロロベンゼンからパラキシレンに変更した以外は同様にして、作製を行った。
(積層膜(発光層、正孔阻止層及び電子輸送層)の形成)
下記組成の塗布液A、塗布液B及び塗布液Cを窒素環境下で調製した。次に、窒素環境下で、下記塗布液Aを用いてインクジェット法によって、乾燥後の膜厚が40nmとなる膜厚で、第1塗膜を形成した。次に、窒素環境下で、ホットプレートを用いて120℃、30分で乾燥した。次に、下記塗布液Bを用いてインクジェット法によって乾燥後の膜厚が10nmとなる膜厚で、第2塗膜を形成した。次に、窒素環境下で、ホットプレートを用いて120℃、30分で乾燥した。次に、窒素環境下で、下記塗布液Cを用いてインクジェット法によって乾燥後の膜厚が20nmとなる膜厚で、第3塗膜を形成した。次に、窒素環境下で、ホットプレートを用いて120℃、30分で乾燥した。第1塗膜、第2塗膜及び第3塗膜を乾燥して得た積層膜は、第1塗膜を乾燥した後の層が発光層であり、第2塗膜を乾燥した後の層が正孔阻止層であり、第3塗膜を乾燥した後の層が電子輸送層である。
(塗布液Aの組成物)
ホスト化合物:例示化合物H−1 9質量部
リン光発光性化合物:例示化合物D−1 1質量部
酢酸ノルマルブチル 2000質量部
(塗布液Bの組成物)
例示化合物B−6 2質量部
イソプロピルアルコール(IPA) 1500質量部
1H,1H,5H−オクタフルオロペンタノール(OFPO)
500質量部
(塗布液Cの組成物)
例示化合物B−1 6質量部
1H,1H,3H−テトラフルオロプロパノール(TFPO)
2000質量部
(電子注入層、陰極の形成)
基材を真空蒸着装置へ取り付けた。また、モリブデン製抵抗加熱ボートにフッ化カリウムを入れたものを真空蒸着装置に取り付け、真空槽を4×10−5Paまで減圧した。その後、ボートに通電して加熱し、フッ化カリウムを0.02nm/秒で上記積層膜上に蒸着し、層厚1.5nmの電子注入層を形成した。引き続き、アルミニウムを蒸着して厚さ100nmの陰極を形成した。
(封止)
以上の工程により形成した積層体に対し、実施例6と同様の方法で密着封止し、評価用照明装置11−1を作製した。
<評価用照明装置11−2〜11−8の作製>
また、評価用照明装置11−2〜11−8は、評価用照明装置11−1の作製方法において、発光層、正孔阻止層及び電子輸送層の形成を表XIに記載の方法に変更した以外は同様にして作製した。
<評価>
各評価用照明装置について、実施例6と同様の方法で、外部量子効率・半減寿命を測定し、各評価用照明装置11−1を1.00とする相対比で表した。
Figure 2019059056
表XIに示すとおり、第3塗膜を形成した系においても、本発明に係る評価用照明装置11−7〜11−8については、本発明に係る積層膜の形成方法を実施したことにより、高効率かつ高寿命の各評価用照明装置を作製できていることが分かった。
また、評価用照明装置11−8の結果から、第3塗膜形成後に、第1〜第3塗膜を一括して乾燥しても良いことが分かった。
[実施例9]
実施例9では、本発明に係る積層方法にて形成した積層膜上に電極を塗布で積層した積層膜を組み込んだ照明装置(及び素子)の発光効率・寿命について評価した。
<評価用照明装置12−1〜12−10の作製>
基材の準備、陽極の形成、正孔注入層の形成、及び正孔輸送層の形成は実施例8の評価用照明装置11−1と同様に行った。
(積層膜(発光層、正孔阻止層及び電子輸送層)の形成)
発光層、正孔阻止層及び電子輸送層の形成は、実施例8の評価用照明装置11−1の積層膜の形成方法において、第3塗膜を形成する塗布液C中の例示化合物B−1を例示化合物B−7に変更し、表XIIに記載の調液・塗布工程の条件と、乾燥工程の条件に変更した以外は同様にして、評価用照明装置12−1〜12−10の積層膜の形成を行った。
(陰極形成)
次に、大気環境下で水系銀インクをインクジェット法で塗布し、大気環境下で120℃・60分で乾燥し、厚さ100nmの陰極を形成した。
(封止)
以上の工程により形成した積層体に対し、実施例8と同様の方法で密着封止し、評価用照明装置12−1〜12−10とした。
<評価>
評価用照明装置12−1〜12−10について、実施例8と同様の方法で、外部量子効率・半減寿命を測定し、各評価用照明装置12−1を1.00とする相対比で表した。
Figure 2019059056
Figure 2019059056
表XIIIに示すとおり、上記のとおり、第3塗膜及び陰極を形成した系においても、評価用照明装置12−7〜12−10においては、本発明に係る積層膜の形成方法を実施したことにより、高効率かつ高寿命の各評価用照明装置を作製できていることが分かった。また、第2塗膜上に第3塗膜及び陰極を形成する際に、一括乾燥は第2塗膜の形成後であれば、乾燥タイミングを問わず1回以上実施すればよいことが分かった。
また、以上の実施例1〜9の結果より、本発明の積層膜の製造方法によって形成した発光層を含む積層膜は、大気環境下で簡易な方法で実施できるものの、従来の窒素環境下で乾燥工程を行うことで形成した積層膜と、性能が遜色ないものであった。本発明の積層膜の製造方法では、従来の高コスト化の主要な要因となっていた不活性ガス環境や減圧・真空環境で乾燥を行う必要がないため、乾燥工程を実施する際に大型設備が不要であり、製造コストを大幅に削減することができる。
本発明は、発光効率が高く、発光寿命が長く、かつ製造コストを抑えることができる、発光性材料を含有する層を含む積層膜を提供することから、当該積層膜は有機EL素子に好適であり、表示装置、ディスプレイ、各種発光光源として利用することができる。
10 積層膜
20 基材
30 第1塗膜
40 第2塗膜
100 有機EL素子
110 可撓性支持基板
120 陽極
130 正孔注入層
140 正孔輸送層
150 発光層
160 電子輸送層
170 電子注入層
180 陰極
190 封止接着剤
200 有機機能層
210 可撓性封止部材

Claims (7)

  1. 発光性材料を含有する層を含む積層膜の製造方法であって、
    基材上に、大気環境下で、発光性材料を含有する塗布液Aを用いて第1塗膜を形成する工程Aと、
    前記工程Aの後に、前記第1塗膜上に、大気環境下で、前記塗布液Aとは異なる塗布液Bを用いて第2塗膜を形成する工程Bと、
    前記工程Bの後に、大気環境下で乾燥を行う工程Cと、
    を有し、
    前記塗布液Bは、最高被占分子軌道(HOMO)の準位が−5.0eV以下の有機化合物、又は、元素周期表における1〜3周期かつ1族又は2族の元素、元素周期表における3〜18族の元素、ランタノイド、及びアクチノイドのいずれかの元素で形成される無機物若しくは金属錯体、を含有することを特徴とする積層膜の製造方法。
  2. 前記発光性材料が、リン光発光性化合物又は熱活性型遅延蛍光発光性化合物であることを特徴とする請求項1に記載の積層膜の製造方法。
  3. 前記発光性材料が、最高被占分子軌道(HOMO)の準位が−5.6eV以上の蛍光発光性化合物であることを特徴とする請求項1に記載の積層膜の製造方法。
  4. 前記塗布液Aに、さらに、最高被占分子軌道(HOMO)の準位が−5.6eV以上の有機化合物を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積層膜の製造方法。
  5. 前記第1塗膜及び前記第2塗膜の形成が、インクジェット法を用いた塗布方法によって行われることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の積層膜の製造方法。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の積層膜の製造方法による積層膜製造工程を有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
  7. 前記第2塗膜を前記工程Cで乾燥した後の層が、電子輸送層であることを特徴とする請求項6に記載の電子デバイスの製造方法。
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