JP2016170879A - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、高温高湿条件下においても水蒸気に対する高いガスバリアー性を維持する湿熱耐性を有し、85℃・85%RHの環境で長時間保管した際にも微小なダークスポットが発生しない有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することである。【解決手段】本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子、基板上に、少なくとも第1ガスバリアー層、第1電極、発光ユニット層及び第2電極がこの順に積層された層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記発光ユニット層と前記第1ガスバリアー層との間に第2ガスバリアー層を有し、前記第2ガスバリアー層が、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Mg、Y及びAlから選ばれる金属元素を含む金属酸化物を含有し、かつ前記基板の前記第2ガスバリアー層を設ける面の反対の面に第3ガスバリアー層を有することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。より詳細には、金属酸化物を含有するガスバリアー層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
有機材料のエレクトロルミネッセンス(electroluminescence:以下ELと記す。)を利用した有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)は、数V〜数十V程度の低電圧で発光が可能な薄膜型の完全固体素子であり、高輝度、高発光効率、薄型及び軽量といった多くの優れた特徴を有する。
このため、各種ディスプレイのバックライト、看板や非常灯等の表示板、照明光源等の面発光体として、特に近年では薄型・軽量なガスバリアー層を有する樹脂基板を用いた有機EL素子が注目されている。
しかし、樹脂基板を有機EL素子に用いる場合、ガラス基板と同等の非常に高いガスバリアー性が要求され、特に、85℃・85%RHというような高温高湿環境で長期間保存しても、ダークスポットの発生が抑制された有機EL素子が求められている。
例えば、特許文献1には、ポリシラザン改質膜をガスバリアー層に用いて、可撓性を有する樹脂基板を備える有機EL素子が開示されている。
そこで、本発明者らがポリシラザン改質膜を用いたガスバリアー層を有する有機EL素子を作製し、高温高湿環境下(85℃・85%RH)で耐久試験を実施したところ、ポリシラザンの酸化反応によって経時でガスバリアー性能が大幅に劣化して全面的に非発光化してしまうことが判明した。
また、特許文献2及び特許文献3には、基板の裏面に補助ガスバリアー層を設けた有機EL素子が開示されている。
そこで、本発明者らが、基板の裏面に補助ガスバリアー層を設けた有機EL素子を作製し、高温高湿環境下(85℃・85%RH)で耐久試験を実施したところ、微小なダークスポットが発生してしまうことが判明した。
さらに、特許文献4に記載のガスバリアー層上に有機層を設けたガスバリアー基板を用いて、本発明者らがガスバリアー層上に有機層を設けた有機EL素子を作製し、高温高湿環境下(85℃・85%RH)で耐久試験を実施したところ、経時でガスバリアー性能が大幅に劣化して全面的に非発光化することが判明した。つまり、ポリシラザンの酸化反応を抑制することができなかった。
特開2014−109001号公報 特表2007−523769号公報 特許第4654911号公報 特開2008−238541号公報
本発明は、前記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、高温高湿条件下においても水蒸気に対する高いガスバリアー性を維持する湿熱耐性を有し、85℃・85%RHの環境で長時間保管した際にも微小なダークスポットが発生しない有機EL素子を提供することである。
本発明者は、前記課題を解決すべく、前記問題の原因等について検討する過程において、第1ガスバリアー層に加えて金属酸化物を含有するガスバリアー層を一対の電極の間に設け、基板の当該ガスバリアー層を設けた面の反対側の面にさらにガスバリアー層を設けることで、高温高湿条件下においても水蒸気に対する高いガスバリアー性を維持する湿熱耐性を有し、85℃・85%RHの環境で長時間保管した際にも微小なダークスポットが発生しない有機EL素子を提供できることを見いだし、本発明に至った。
本発明に係る前記課題は、以下の手段により解決される。
1.基板上に、少なくとも第1ガスバリアー層、第1電極、発光ユニット層及び第2電極がこの順に積層された層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光ユニット層と前記第1ガスバリアー層との間に第2ガスバリアー層を有し、
前記第2ガスバリアー層が、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、マグネシウム(Mg)、イットリウム(Y)及びアルミニウム(Al)から選ばれる金属元素を含む金属酸化物を含有し、かつ
前記基板の前記第2ガスバリアー層を設ける面の反対の面に第3ガスバリアー層を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
2.前記金属酸化物に含まれる酸素元素の組成係数が、化学量論値よりも低いことを特徴とする第1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
3.前記金属酸化物が、ニオブ(Nb)を含むことを特徴とする第1項又は第2項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
4.前記基板と前記第1ガスバリアー層との間に、炭素(C)、窒素(N)及び酸素(O)から選ばれる元素を含むケイ素化合物を含有する第4ガスバリアー層を有することを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
本発明の前記手段により、高温高湿条件下においても水蒸気に対する高いガスバリアー性を維持する湿熱耐性を有し、85℃・85%RHの環境で長時間保管した際にも微小なダークスポットが発生しない有機EL素子を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確になっていないが、以下のように推察している。
本発明により、高温高湿条件下においても水蒸気に対する高いガスバリアー性を維持する湿熱耐性を有する有機EL素子を提供することができる。
これは、ケイ素(Si)、窒素(N)及び酸素(O)を含有する第1ガスバリアー層に隣接して、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Mg、Y、Alから選ばれる金属元素を含む金属酸化物を含有する第2ガスバリアー層が配置されることにより、第1ガスバリアー層の酸化反応によるガスバリアー性能の劣化を抑制することができ、高い湿熱耐性を有する有機EL素子を得ることができる。
通常、Si、N、Oを含有する層によって形成された第1ガスバリアー層は、高温高湿条件においては、水蒸気及び酸素と反応し、酸化反応が進行する。この酸化反応に伴い、ガスバリアー性が劣化すると推定されるが、Siよりも低い酸化還元電位を有する金属酸化物を第1ガスバリアー層に隣接させることによって、金属酸化物が第1ガスバリアー層に対する還元剤として機能し、第1ガスバリアー層の酸化反応を抑制することができると推定される。
また、金属酸化物は、化学量論的に得られる酸化物よりも酸素量が少ないとき、第1ガスバリアー層の酸化反応を効率よく抑制できる。これは、金属酸化物の酸素量が少ないときに還元剤として効率よく作用することができると推定される。
また、本発明の有機EL素子によれば、85℃・85%RHの環境で長時間保管した際にも微小なダークスポットが発生しない有機EL素子を提供することができる。
これは、基板の第1ガスバリアー層を設けた面の反対の面に第3ガスバリアー層を有することにより、基板へ侵入する水分を抑制することができ、かつ侵入した水分も基板内で拡散させることができるためであると考えられる。
すなわち、基板内部の環境は外部環境よりも低湿な環境となり、第1ガスバリアー層に加わる水分分圧を大幅に低下させることができるため、85℃・85%RHの環境で長時間保管した際にも微小なダークスポットが発生しない有機EL素子を提供することができると推定される。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す概略構成図 本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す概略構成図 本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す概略構成図
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう。)は、基板上に、少なくとも第1ガスバリアー層、第1電極、発光ユニット層及び第2電極がこの順に積層された層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記発光ユニット層と前記第1ガスバリアー層との間に第2ガスバリアー層を有し、前記第2ガスバリアー層が、所定の金属元素を含む金属酸化物を含有し、かつ前記基板の前記第2ガスバリアー層を設ける面の反対の面に第3ガスバリアー層を有することを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項4までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記金属酸化物に含まれる酸素元素の組成係数が、化学量論値よりも低いことが好ましい。これにより、第1ガスバリアー層に含有されている元素の酸化反応を抑制することができるためである。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記金属酸化物が、ニオブ(Nb)を含むことが好ましい。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記基板と前記第1ガスバリアー層との間に、炭素(C)、窒素(N)及び酸素(O)から選ばれる元素を含むケイ素化合物を含有する第4ガスバリアー層を有することが好ましい。これにより、基板へのガスの浸入を抑制することができ、過酷な条件であっても劣化を抑制することができるためである。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。また、本発明において、特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない限りにおいて、好ましい様態は任意に変更して実施しうる。
《有機エレクトロルミネッセンス素子》
本発明の有機EL素子は、基板上に、少なくとも第1ガスバリアー層、第1電極、発光ユニット層及び第2電極がこの順に積層された層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記発光ユニット層と前記第1ガスバリアー層との間に第2ガスバリアー層を有し、前記第2ガスバリアー層が、所定の金属元素を含む金属酸化物を含有し、かつ前記基板の前記第2ガスバリアー層を設ける面の反対の面に第3ガスバリアー層を有することを特徴とする。
本発明の有機EL素子の構成の一例を図1に示す。図1に示すように、有機EL素子10は、第3ガスバリアー層14、基板11、第1ガスバリアー層12、第2ガスバリアー層13、第1電極15、発光ユニット層16及び第2電極17を有している。
発光ユニット層や、第2電極(陰極)等については有機EL素子に一般的に使われている従来公知の材料及び構成等を適用することができる。
有機EL素子の素子構成として、陽極/発光層/陰極、陽極/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、陽極/ホール注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極、陽極/ホール注入層/発光層/電子注入層/陰極等の各種の構成を挙げることができる。
発光層に使用される発光材料又はドーピング材料としては、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチルベンゼン誘導体、ジスチルアリーレン誘導体、及び各種蛍光色素及び希土類金属錯体、リン光発光材料等があるが、これらに限定されない。またこれらの化合物において、発光材料を90〜99.5質量部、ドーピング材料を0.5〜10質量部の範囲で含むことが好ましい。
発光層は上記の材料等を用いて公知の方法によって作製されるものであり、蒸着、塗布、転写等の方法が挙げられる。この発光層の厚さは0.5〜500nmが好ましく、特に、0.5〜200nmが好ましい。
[基板]
本発明に係る基板11としては、有機EL素子に可撓性を与えることが可能な可撓性の基板であることが好ましい。可撓性の基板としては、透明樹脂フィルムを挙げることができる。
樹脂フィルムの樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル又はポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)、又はアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。
これら樹脂フィルムのうち、コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂フィルムが好ましく用いられる。
また、光学的透明性、耐熱性、及び第1ガスバリアー層の密着性の点においては、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルムが好ましく用いられる。
この基板の厚さは、5〜500μm程度が好ましく、さらに好ましくは25〜250μmの範囲内である。また、基板は、光透過性を有することが好ましい。基板が光透過性を有することにより、光透過性を有する有機EL素子とすることが可能となる。
[第1ガスバリアー層]
第1ガスバリアー層12は、ポリシラザンを含有する塗布液を塗布・乾燥して塗膜を形成した後、この塗膜を活性エネルギー線照射により改質処理して形成される。
第1ガスバリアー層は、その表面において、ポリシラザンの改質がより進行した領域が形成され、この領域の下部に改質量の小さい領域又は未改質の領域が形成される。本願では、この改質量の小さい領域や未改質の領域も含めて、第1ガスバリアー層とする。
ポリシラザンとは、ケイ素−窒素結合を有するポリマーであり、Si−N、Si−H、N−H等の結合を有するSiO、Si、及びこれらの中間固溶体SiOxNy等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
具体的には、ポリシラザンは、好ましくは下記の構造を有する。
Figure 2016170879
上記一般式(I)において、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、置換又は非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基又は(トリアルコキシシリル)アルキル基である。
この際、R、R及びRは、それぞれ、同じであってもよく、また、異なっていてもよい。
ここで、アルキル基としては、炭素原子数1〜8の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等がある。
また、アリール基としては、炭素原子数6〜30のアリール基が挙げられる。より具体的には、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などの非縮合炭化水素基;ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基等の縮合多環炭化水素基が挙げられる。
(トリアルコキシシリル)アルキル基としては、炭素原子数1〜8のアルコキシ基で置換されたシリル基を有する炭素原子数1〜8のアルキル基が挙げられる。より具体的には、3−(トリエトキシシリル)プロピル基、3−(トリメトキシシリル)プロピル基などが挙げられる。
上記R〜Rに場合によって存在する置換基は、特に制限はないが、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基(−OH)、メルカプト基(−SH)、シアノ基(−CN)、スルホ基(−SOH)、カルボキシ基(−COOH)、ニトロ基(−NO)などがある。
なお、場合によって存在する置換基は、置換するR〜Rと同じとなることはない。例えば、R〜Rがアルキル基の場合には、さらにアルキル基で置換されることはない。
これらのうち、好ましくは、R、R及びRは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、ビニル基、3−(トリエトキシシリル)プロピル基又は3−(トリメトキシシリルプロピル)基である。
また、上記一般式(I)において、nは、整数であり、一般式(I)で表される構造を有するポリシラザンが、150〜150000g/モルの数平均分子量を有するように定めることが好ましい。
上記一般式(I)で表される構造を有する化合物において、好ましい態様の一つは、R、R及びRの全てが水素原子であるパーヒドロポリシラザンである。
また、ポリシラザンとしては、下記一般式(II)で表される構造を有してもよい。
Figure 2016170879
上記一般式(II)において、R1′、R2′、R3′、R4′、R5′及びR6′は、それぞれ独立して、水素原子、置換又は非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基又は(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R1′、R2′、R3′、R4′、R5′及びR6′は、それぞれ、同じであってもよく、また、異なっていてもよい。
上記置換又は非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基又は(トリアルコキシシリル)アルキル基は、上記一般式(I)の定義と同様であるため、説明を省略する。
また、上記一般式(II)において、n′及びpは、整数であり、一般式(II)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。
なお、n′及びpは、同じであってもよく、また、異なっていてもよい。
上記一般式(II)のポリシラザンのうち、R1′、R3′及びR6′が各々水素原子を表し、R2′、R4′及びR5′が各々メチル基を表す化合物;R1′、R3′及びR6′が各々水素原子を表し、R2′、R4′が各々メチル基を表し、R5′がビニル基を表す化合物;R1′、R3′、R4′及びR6′が各々水素原子を表し、R2′及びR5′が各々メチル基を表す化合物が好ましい。
また、ポリシラザンとしては、下記一般式(III)で表される構造を有してもよい。
Figure 2016170879
上記一般式(III)において、R1″、R2″、R3″、R4″、R5″、R6″、R7″、R8″及びR9″は、それぞれ独立して、水素原子、置換又は非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基又は(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R1″、R2″、R3″、R4″、R5″、R6″、R7″、R8″及びR9″は、それぞれ、同じであってもよく、また、異なっていてもよい。
上記置換又は非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基又は(トリアルコキシシリル)アルキル基は、上記一般式(I)の定義と同様であるため、説明を省略する。
また、上記一般式(III)において、n″、p″及びqは、整数であり、一般式(III)で表される構造を有するポリシラザンが、150〜150000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。
なお、n″、p″及びqは、同じであってもよく、また、異なっていてもよい。
上記一般式(III)のポリシラザンのうち、R1″、R3″及びR6″が各々水素原子を表し、R2″、R4″、R5″及びR8″が各々メチル基を表し、R9″が(トリエトキシシリル)プロピル基を表し、R7″がアルキル基又は水素原子を表す化合物が好ましい。
一方、Siと結合する水素原子部分の一部がアルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより、下地である基板との接着性が改善される。さらに、硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができる。このため、より(平均)厚さを厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。このため、用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6及び8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は、数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)で、液体又は固体の物質があり、その状態は分子量により異なる。
ポリシラザンは、有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのまま第1ガスバリアー層形成用塗布液として使用することができる。
ポリシラザン溶液の市販品としては、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のアクアミカ(登録商標)NN120−10、NN120−20、NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL120−20、NL150A、NP110、NP140、SP140等が挙げられる。
使用できるポリシラザンの別の例としては、特に制限されないが、例えば、上記ポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等の、低温でセラミック化するポリシラザンが挙げられる。
ポリシラザンを用いる場合、改質処理前の第1ガスバリアー層中におけるポリシラザンの含有率は、第1ガスバリアー層の全質量を100質量%としたとき、100質量%とすることができる。
また、第1ガスバリアー層がポリシラザン以外のものを含む場合には、層中におけるポリシラザンの含有率が、10〜99質量%の範囲内であることが好ましく、40〜95質量%の範囲内であることがより好ましく、特に好ましくは70〜95質量%の範囲内である。
第1ガスバリアー層の塗布法による形成方法は、特に制限されず、公知の方法が適用できるが、有機溶媒中にポリシラザン及び必要に応じて触媒を含む第1ガスバリアー層形成用塗布液を公知の湿式塗布方法により塗布し、この溶媒を蒸発させて除去した後、改質処理を行う方法が好ましい。
(第1ガスバリアー層形成用塗布液)
第1ガスバリアー層形成用塗布液を調製するための溶媒としては、ポリシラザンを溶解できるものであれば特に制限されない。
ポリシラザンと容易に反応してしまう水及び反応性基(例えば、ヒドロキシ基、又はアミン基等)を含まず、ポリシラザンに対して不活性の有機溶媒が好ましい。特に、非プロトン性の有機溶媒がより好ましい。
具体的には、溶媒としては、非プロトン性溶媒;例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒;塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類:例えば、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、アルキレングリコールジアルキルエーテル及びポリアルキレングリコールジアルキルエーテル(ジグライム類)等を挙げることができる。
上記溶媒は、ケイ素化合物の溶解度や溶媒の蒸発速度等の目的に合わせて選択され、単独で使用されてもよく、また、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
第1ガスバリアー層形成用塗布液におけるポリシラザンの濃度は、特に制限されず、層の厚さや塗布液のポットライフによっても異なるが、好ましくは1〜80質量%の範囲内、より好ましくは5〜50質量%の範囲内、特に好ましくは10〜40質量%の範囲内である。
第1ガスバリアー層形成用塗布液は、改質を促進するために、触媒を含有することが好ましい。
適用可能な触媒としては、例えば、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、3−モルホリノプロピルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン等のアミン化合物、Ptアセチルアセトナート等のPt化合物、プロピオン酸Pd等のPd化合物、Rhアセチルアセトナート等のRh化合物等の金属触媒、N−複素環式化合物、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、ピペリジン、ルチジン、ピリミジン、ピリダジン等のピリジン化合物、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、マレイン酸、ステアリン酸、等の有機酸、塩酸、硝酸、硫酸、過酸化水素等の無機酸等が挙げられる。これらのうち、アミン化合物を用いることが好ましい。
この際、添加する触媒の濃度としては、ポリシラザンを基準としたとき、好ましくは0.1〜10質量%の範囲内、より好ましくは0.5〜7質量%の範囲内である。
触媒添加量をこの範囲とすることで、反応の急激な進行よる過剰なシラノール形成、及び膜密度の低下、膜欠陥の増大などを避けることができる。
第1ガスバリアー層形成用塗布液には、必要に応じて下記に挙げる添加剤を用いることができる。
例えば、セルロースエーテル類、セルロースエステル類;例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセトブチレート等、天然樹脂;例えば、ゴム、ロジン樹脂等、合成樹脂;例えば、重合樹脂等、縮合樹脂;例えば、アミノプラスト、特に尿素樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル又は変性ポリエステル、エポキシド、ポリイソシアネート又はブロック化ポリイソシアネート、ポリシロキサン等である。
(第1ガスバリアー層形成用塗布液を塗布する方法)
第1ガスバリアー層形成用塗布液を塗布する方法としては、従来公知の適切な湿式塗布方法を採用することができる。
具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
塗布厚さは、目的に応じて適切に設定する。例えば、第1ガスバリアー層1層当たりの塗布厚さは、乾燥後の厚さが10nm〜10μm程度であることが好ましく、15nm〜1μmの範囲内であることがより好ましく、20〜500nmの範囲内であることがさらに好ましい。
厚さが10nm以上であれば十分なガスバリアー性を得ることができ、10μm以下であれば、層形成時に安定した塗布性を得ることができ、かつ高い光線透過性を実現できる。
塗布液を塗布した後は、塗膜を乾燥させることが好ましい。塗膜を乾燥することによって、塗膜中に含有される有機溶媒を除去することができる。この際、塗膜に含有される有機溶媒は、全てを乾燥させてもよいが、一部残存させていてもよい。
一部の有機溶媒を残存させる場合であっても、好適な第1ガスバリアー層を形成することができる。なお、残存する溶媒は、後に除去することが可能である。
塗膜の乾燥温度は、適用する基板によっても異なるが、50〜200℃の範囲内であることが好ましい。
例えば、ガラス転移温度(Tg)が70℃のポリエチレンテレフタレート基板を用いる場合には、乾燥温度は、熱による基板の変形等を考慮して150℃以下に設定することが好ましい。
上記温度は、ホットプレート、オーブン、ファーネスなどを使用することによって設定される。乾燥時間は、短時間に設定することが好ましく、例えば、乾燥温度が150℃である場合には30分以下に設定することが好ましい。
また、乾燥雰囲気は、大気雰囲気下、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下、真空雰囲気下、酸素濃度をコントロールした減圧雰囲気下等のいずれの条件であってもよい。
第1ガスバリアー層形成用塗布液を塗布して得られた塗膜は、改質処理前又は改質処理中に水分を除去する工程を含んでいてもよい。
水分を除去する方法としては、低湿度環境を維持して除湿する形態が好ましい。低湿度環境における湿度は、温度により変化するため、温度と湿度の関係は露点温度の規定により好ましい形態が示される。
好ましい露点温度は、4℃以下(温度25℃/湿度25%)で、より好ましい露点温度は、−5℃(温度25℃/湿度10%)以下であり、維持される時間は、第1ガスバリアー層の厚さによって適宜設定することが好ましい。
第1ガスバリアー層の厚さが、1.0μm以下の条件においては、露点温度は、−5℃以下で、維持される時間は、1分以上であることが好ましい。
なお、露点温度の下限は、特に制限されないが、通常、−50℃以上であり、−40℃以上であることが好ましい。
改質処理前、又は改質処理中に水分を除去することによって、シラノールに転化した第1ガスバリアー層の脱水反応を促進する観点から好ましい形態である。
(塗布法により形成されたポリシラザン塗布膜の改質処理)
塗布法により形成されたポリシラザン塗布膜の改質処理とは、ポリシラザンの酸化ケイ素、又は酸窒化ケイ素等への転化反応を指す。具体的には、ポリシラザン塗布膜を、ガスバリアー性を発現できる無機層に改質する処理である。
ポリシラザンの酸化ケイ素、又は酸窒化ケイ素等への転化反応は、公知の方法を適宜選択して適用することができる。
改質処理としては、樹脂フィルム基板への適応という観点から、より低温で、転化反応が可能なプラズマ処理、又は紫外線照射処理による転化反応が好ましい。
(プラズマ処理)
改質処理として用いることのできるプラズマ処理は、公知の方法を用いることができるが、好ましくは大気圧プラズマ処理等を挙げることができる。
大気圧近傍でのプラズマCVD処理を行う大気圧プラズマCVD法は、真空下のプラズマCVD法に比べ、減圧にする必要がなく生産性が高い。また、プラズマ密度が高密度であるために成膜速度が速い。さらに、通常のCVD法の条件に比較して、大気圧下という高圧力条件では、ガスの平均自由工程が非常に短いため、極めて均質の膜が得られる。
大気圧プラズマ処理の場合は、放電ガスとしては窒素ガス又は長周期型周期表の第18族原子を含むガス、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素はコストが安いため好ましい。
(紫外線照射処理)
改質処理の方法として、紫外線照射による処理が好ましい。紫外線(紫外光と同義)によって生成されるオゾンや活性酸素原子は高い酸化能力を有しているため、低温で高い緻密性と絶縁性を有する酸化ケイ素膜及び酸窒化ケイ素膜を形成することが可能である。
この紫外線照射により、基板が加熱され、セラミック化(シリカ転化)に寄与するOとHOや、紫外線吸収剤、ポリシラザン自身が励起、活性化される。このため、ポリシラザンが励起し、ポリシラザンのセラミック化が促進される。また。得られる第1ガスバリアー層がさらに緻密になる。
紫外線照射は、塗膜形成後であればいずれの時点で実施してもよい。
紫外線照射処理においては、常用されているいずれの紫外線発生装置を使用することも可能である。
なお、紫外線とは、一般には、10〜400nmの波長を有する電磁波であるが、本例では後述する真空紫外線(10〜200nm)処理以外の紫外線照射処理の場合は、210〜375nmの紫外線を用いることが好ましい。
紫外線の照射は、照射される第1ガスバリアー層を担持している基板がダメージを受けない範囲で、照射強度や照射時間を設定することが好ましい。
基板としてプラスチックフィルムを用いた場合では、例えば、2kW(80W/cm×25cm)のランプを用い、基板表面の強度が20〜300mW/cmの範囲内、好ましくは50〜200mW/cmの範囲内になるように基板−紫外線照射ランプ間の距離を設定し、0.1秒〜10分間の照射を行う。
一般に、紫外線照射処理時の基板温度が150℃未満であると、プラスチックフィルム等の場合には、基板が変形したり、その強度が劣化したりする等の、基板の特性が損なわれることもない。
ただし、ポリイミド等の耐熱性の高いフィルムの場合には、より高温での改質処理が可能である。したがって、この紫外線照射時の基板温度としては、一般的な上限はなく、基板の種類によって当業者が適宜設定することができる。
また、紫外線照射雰囲気に特に制限はなく、大気中で実施すればよい。
このような紫外線の発生手段としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、エキシマランプ(172nm、222nm、308nmの単一波長、例えば、ウシオ電機株式会社製、株式会社エム・ディ・コム製など)、UV光レーザー等が挙げられるが、特に限定されない。
また、発生させた紫外線を第1ガスバリアー層に照射する際には、効率向上と均一な照射を達成する観点から、発生源からの紫外線を反射板で反射させてから第1ガスバリアー層に当てることが好ましい。
紫外線照射は、バッチ処理にも連続処理にも適合可能であり、使用する基板の形状によって適宜選定することができる。例えば、バッチ処理の場合には、第1ガスバリアー層を表面に有する積層体を前述の紫外線発生源を具備した紫外線焼成炉で処理することができる。紫外線焼成炉自体は一般に知られており、例えば、アイグラフィクス株式会社製の紫外線焼成炉を使用することができる。
また、第1ガスバリアー層を表面に有する積層体が、長尺フィルム状である場合には、これを搬送させながら上記紫外線発生源を具備した乾燥ゾーンで連続的に紫外線を照射することによりセラミック化することができる。
紫外線照射に要する時間は、使用する基板や第1ガスバリアー層の組成、濃度にもよるが、一般に0.1秒〜10分であり、好ましくは0.5秒〜3分である。
(真空紫外線照射処理:エキシマ照射処理)
第1ガスバリアー層において、最も好ましい改質処理方法は、真空紫外線照射による処理(エキシマ照射処理)である。
真空紫外線照射による処理は、ポリシラザン化合物内の原子間結合力より大きい波長100〜200nmの光エネルギー、好ましくは波長100〜180nmの光エネルギーを用いる。この波長の光エネルギーを用いることにより、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみの作用で直接切断しながら、活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることができる。このため、比較的低温(約200℃以下)で、酸化ケイ素膜の形成を行うことができる。
なお、エキシマ照射処理を行う際は、前述したように熱処理を併用することが好ましく、その際の熱処理条件の詳細は前述のとおりである。
放射線源は、100〜180nmの波長の光を発生させるものであれば良いが、好適には約172nmに最大放射を有するエキシマラジエータ(例えば、Xeエキシマランプ)、約185nmに輝線を有する低圧水銀蒸気ランプ、又は230nm以下の波長成分を有する中圧及び高圧水銀蒸気ランプ、及び約222nmに最大放射を有するエキシマランプである。
このうち、Xeエキシマランプは、波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから、発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。
また、波長の短い172nmの光のエネルギーは、有機物の結合を解離させる能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間でポリシラザン塗膜の改質を実現できる。
エキシマランプは、光の発生効率が高いため、低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域で、すなわち短い波長でエネルギーを照射するため、解射対象物の表面温度の上昇が抑えられる特徴を持っている。このため、熱の影響を受けやすいとされるPETなどの可撓性フィルム材料に適している。
紫外線照射時の反応には、酸素が必要であるが、真空紫外線は、酸素による吸収があるため紫外線照射工程での効率が低下しやすいことから、真空紫外線の照射は、可能な限り酸素濃度及び水蒸気濃度の低い状態で行うことが好ましい。すなわち、真空紫外線照射時の酸素濃度は、10〜20000体積ppmの範囲内とすることが好ましく、より好ましくは50〜10000体積ppmの範囲内である。
また、転化プロセスの間の水蒸気濃度は、好ましくは1000〜4000体積ppmの範囲内である。
真空紫外線照射時に用いられる、照射雰囲気を満たすガスとしては、乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。
酸素濃度の調整は、照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
真空紫外線照射工程において、ポリシラザン塗膜が受ける塗膜面での該真空紫外線の照度は、1mW/cm〜10W/cmの範囲内であることが好ましく、30〜200mW/cmの範囲内であることがより好ましく、50〜160mW/cmの範囲内であるとさらに好ましい。1mW/cm〜10W/cmの範囲内であると、改質効率が低下することなく、塗膜にアブレーションを生じたり、基板にダメージを与えたりする懸念が生じない。
塗膜面における真空紫外線の照射エネルギー量(照射量)は、10〜10000mJ/cmの範囲内であることが好ましく、100〜8000mJ/cmの範囲内であることがより好ましく、200〜6000mJ/cmの範囲内であることがさらに好ましい。10〜10000mJ/cmの範囲内であると、改質が十分で、過剰改質によるクラック発生や基板の熱変形の懸念が生じない。
また、改質に用いられる真空紫外線は、CO、CO及びCHの少なくとも1種を含むガスで形成されたプラズマにより発生させてもよい。
さらに、CO、CO及びCHの少なくとも1種を含むガス(以下、炭素含有ガスとも称する。)は、炭素含有ガスを単独で使用してもよいが、希ガス又はHを主ガスとして、炭素含有ガスを少量添加することが好ましい。
プラズマの生成方式としては、容量結合プラズマなどが挙げられる。
第1ガスバリアー層の膜組成は、XPS表面分析装置を用いて、原子組成比を測定することで測定できる。また、第1ガスバリアー層を切断して切断面をXPS表面分析装置で原子組成比を測定することもできる。
また、第1ガスバリアー層の膜密度は、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、1.5〜2.6g/cmの範囲内にあることが好ましい。この範囲内であると、膜の緻密さが低下することなく、ガスバリアー性の向上や、湿度による膜の酸化劣化を防ぐことができる。
第1ガスバリアー層は、単層でもよいし2層以上の積層構造であってもよい。
[第2ガスバリアー層]
本発明に係る第2ガスバリアー層は、前記発光ユニット層と前記第1ガスバリアー層との間に設けられている。
また、前記第2ガスバリアー層が、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、マグネシウム(Mg)、イットリウム(Y)及びアルミニウム(Al)から選ばれる金属元素を含む金属酸化物を含有することを特徴とする。特に、ニオブを含む金属酸化物が好ましい。
第2ガスバリアー層を構成する材料としては、具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウム及び酸化アルミニウムから選ばれる金属酸化物を含有する。このような金属酸化物を含有することで、Siよりも低い酸化還元電位を有する金属酸化物を第1ガスバリアー層に隣接して設けることで、金属酸化物が還元剤として機能するものと考えられる。
金属酸化物に含まれる酸素元素の組成係数は、化学量論値よりも低いことが好ましい。これにより、第1ガスバリアー層に含まれるSi、N及びOの酸化反応を効率よく抑制することができる。これは、金属酸化物が還元剤として効率よく作用しているためであると考えられる。
ここで、金属酸化物に含まれる酸素元素の組成係数が、化学量論値よりも低いとは、金属酸化物が化学量論的に完全に酸化された場合をMx1y1とすると、本発明に係る金属酸化物はMx2y2で表され、下記式(1)を満たすことをいう。
式(1):y1/x1>y2/x2
具体的には、五酸化バナジウムの場合、組成係数を化学量論的に示すとVとなるが、本発明でいう金属酸化物に含まれる酸素元素の組成係数が化学量論値よりも低い場合は、例えば酸化バナジウムがV4.6となるような場合をいう。
ガスバリアー機能としては、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度90±2%)が1×10−2g/(m・24h)以下を有していればよく、好ましくは1×10−3g/m・24h以下である。
第2ガスバリアー層の形成は、一般的に用いられる成膜方法を用いることができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などのPVD法(物理蒸着法)又はCVD法(化学蒸着法)等が挙げられるが、ガスバリアー性の観点からスパッタリング法及びCVD法を用いることが好ましい。また生産効率の観点からスパッタリング法がより好ましい。
第2ガスバリアー層の厚さは、耐屈曲性及びガスバリアー性の観点から1000nm以下であることが好ましく、50〜500nmの範囲内であることがより好ましく、100〜300nmの範囲内であることがさらに好ましい。
[第3ガスバリアー層]
第3ガスバリアー層14は、基板の第2ガスバリアー層を設ける面の反対の面に設けられる(図1参照)。
本発明に係る第3ガスバリアー層は、ガスバリアー機能を有していれば特に限定されない。ガスバリアー機能としては、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度90±2%)が1×10−2g/(m・24h)以下を有していればよく、好ましくは1×10−3g/m・24h以下である。
また、第3ガスバリアー層を構成する材料としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム及び酸化セリウムの群より選ばれた1種又は2種以上の金属酸化物等が挙げられるが、ガスバリアー機能を具備していればよく、これらに限定されない。
第3ガスバリアー層の形成は、一般的に用いられる成膜方法を用いることができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などのPVD法(物理蒸着法)又はCVD法(化学蒸着法)等が挙げられるが、ガスバリアー性の観点からスパッタリング法及びCVD法を用いることが好ましい。また、生産効率の観点からスパッタリング法がより好ましい。
第3ガスバリアー層の厚さは、耐屈曲性及びガスバリアー性の観点から1000nm以下であることが好ましく、50〜500nmの範囲内であることがより好ましく、100〜300nmの範囲内であることがさらに好ましい。
[発光ユニット層]
本願において、「発光ユニット層」とは、少なくとも発光層を含む有機機能層を主体として構成されるユニット(単位)からなる積層体をいい、発光ユニット層は、陽極と陰極の間に挟持される。
電極は、第1電極と第2電極とからなり、それぞれ有機EL素子の陰極又は陽極を構成する。発光ユニット層16は、有機材料を含む発光層を有し、さらに、発光層と電極との間に他の層を備えていてもよい。
本発明の有機EL素子において、陽極と陰極との間に挟持される各種有機機能層の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(3)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(7)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/(電子阻止層/)発光層/(正孔阻止層/)電子輸送層/電子注入層/陰極
上記の中で(7)の構成が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
上記の代表的な素子構成において、陽極と陰極を除く層が、有機機能層である。
(有機機能層)
上記構成において、発光層は、単層又は複数層で構成される。発光層が複数の場合は、各発光層の間に非発光性の中間層を設けてもよい。
また、必要に応じて、発光層と陰極との間に正孔阻止層(正孔障壁層)や電子注入層(陰極バッファー層)等を設けてもよく、また、発光層と陽極との間に電子阻止層(電子障壁層)や正孔注入層(陽極バッファー層)等を設けてもよい。
電子輸送層は、電子を輸送する機能を有する層である。電子輸送層には、広い意味で電子注入層、及び正孔阻止層も含まれる。また、電子輸送層は、複数層で構成されていてもよい。
正孔輸送層は、正孔を輸送する機能を有する層である。正孔輸送層には、広い意味で正孔注入層、及び電子阻止層も含まれる。また、正孔輸送層は、複数層で構成されていてもよい。
(タンデム構造)
発光ユニット層16は、少なくとも1層の発光層を含む有機機能層を複数積層した、いわゆるタンデム構造の素子であってもよい。
有機機能層としては、例えば、上記の代表的な素子構成で挙げた(1)〜(7)の構成から、陽極と陰極を除いたもの等が挙げられる。
タンデム構造の代表的な素子構成としては、例えば以下の構成を挙げることができる。(1)陽極/第1有機機能層/中間層/第2有機機能層/陰極
(2)陽極/第1有機機能層/中間層/第2有機機能層/中間層/第3有機機能層/陰極
ここで、上記第1有機機能層、第2有機機能層及び第3有機機能層は全て同じであっても、異なっていてもよい。また、二つの有機機能層が同じであり、残る一つが異なっていてもよい。
また、各有機機能層は直接積層されていても、中間層を介して積層されていてもよい。中間層は、例えば、中間電極、中間導電層、電荷発生層、電子引抜層、接続層、又は中間絶縁層等から構成され、陽極側の隣接層に電子を、陰極側の隣接層に正孔を供給する機能を持った層であれば、公知の材料構成を用いることができる。
中間層に用いられる材料としては、例えば、ITO(インジウム・スズ酸化物)、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)、ZnO、TiN、ZrN、HfN、TiOX、VOX、CuI、InN、GaN、CuAlO、CuGaO、SrCu、LaB、RuO、Al等の導電性無機化合物層や、Au/Bi等の2層膜や、SnO/Ag/SnO、ZnO/Ag/ZnO、Bi/Au/Bi、TiO/TiN/TiO、TiO/ZrN/TiO等の多層膜、また、C60等のフラーレン類、オリゴチオフェン等の導電性有機物層、金属フタロシアニン類、無金属フタロシアニン類、金属ポルフィリン類、無金属ポルフィリン類等の導電性有機化合物層等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
タンデム型の発光ユニット層の具体例としては、例えば、米国特許第6337492号明細書、米国特許第7420203号明細書、米国特許第7473923号明細書、米国特許第6872472号明細書、米国特許第6107734号明細書、米国特許第6337492号明細書、国際公開第2005/009087号、特開2006−228712号公報、特開2006−24791号公報、特開2006−49393号公報、特開2006−49394号公報、特開2006−49396号公報、特開2011−96679号公報、特開2005−340187号公報、特許第4711424号、特許第3496681号、特許第3884564号、特許第4213169号、特開2010−192719号公報、特開2009−076929号公報、特開2008−078414号公報、特開2007−059848号公報、特開2003−272860号公報、特開2003−045676号公報、国際公開第2005/094130号等に記載の素子構成や構成材料等が挙げられるが、これらに限定されない。
以下、発光ユニット層16を構成する各層について説明する。
(発光層)
有機EL素子に用いる発光層は、電極又は隣接層から注入される電子と正孔とが再結合し、励起子を経由して発光する場を提供する層である。発光層において、発光する部分は発光層の層内であっても、発光層と隣接層との界面であってもよい。
発光層の厚さの総和は、特に制限されず、形成する膜の均質性、発光時に必要とされる電圧、及び駆動電流に対する発光色の安定性等の観点から決められる。
発光層の厚さの総和は、例えば、2nm〜5μmの範囲内に調整することが好ましく、より好ましくは2〜500nmの範囲内に調整され、さらに好ましくは5〜200nmの範囲内に調整される。
また、発光層の個々の膜厚としては、2nm〜1μmの範囲内に調整することが好ましく、より好ましくは2〜200nmの範囲内に調整され、さらに好ましくは3〜150nmの範囲内に調整される。
発光層は、発光ドーパント(発光性ドーパント化合物、ドーパント化合物、単にドーパントともいう。)と、ホスト化合物(マトリックス材料、発光ホスト化合物、単にホストともいう。)とを含有することが好ましい。
(発光ドーパント)
発光層に用いられる発光ドーパントとしては、蛍光発光性ドーパント(蛍光ドーパント、蛍光性化合物ともいう。)、及びリン光発光性ドーパント(リン光ドーパント、リン光性化合物ともいう。)が好ましく用いられる。これらのうち、少なくとも1層の発光層がリン光発光ドーパントを含有することが好ましい。
発光層中の発光ドーパントの濃度については、使用される特定のドーパント及びデバイスの必要条件に基づいて、任意に決定することができる。発光ドーパントの濃度は、発光層の膜厚方向に対し、均一な濃度で含有されていてもよく、また任意の濃度分布を有していてもよい。
また、発光層は、複数種の発光ドーパントが含まれていてもよい。例えば、構造の異なるドーパント同士の組み合わせや、蛍光発光性ドーパントとリン光発光性ドーパントとを組み合わせて用いてもよい。これにより、任意の発光色を得ることができる。
有機EL素子が発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタ(株)製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
有機EL素子は、1層又は複数層の発光層が、発光色の異なる複数の発光ドーパントを含有し、白色発光を示すことも好ましい。白色を示す発光ドーパントの組み合わせについては特に限定はないが、例えば青と橙や、青と緑と赤の組み合わせ等が挙げられる。
有機EL素子における白色としては、2度視野角正面輝度を前述の方法により測定した際に、1000cd/mでのCIE1931表色系における色度がx=0.39±0.09、y=0.38±0.08の領域内にあることが好ましい。
(リン光発光性ドーパント)
リン光発光性ドーパントは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、25℃においてリン光量子収率が0.01以上の化合物である。発光層に用いるリン光発光性ドーパントにおいて、好ましいリン光量子収率は、0.1以上である。
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は、種々の溶媒を用いて測定できる。発光層に用いるリン光発光性ドーパントは、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
リン光発光性ドーパントの発光は、原理として2種挙げられる。
一つは、キャリアが輸送されるホスト化合物上で、キャリアの再結合によるホスト化合物の励起状態が生成される。このエネルギーをリン光発光性ドーパントに移動させることで、リン光発光性ドーパントからの発光を得るというエネルギー移動型である。もう一つは、リン光発光性ドーパントがキャリアトラップとなり、リン光発光性ドーパント上でキャリアの再結合が起こり、リン光発光性ドーパントからの発光が得られるというキャリアトラップ型である。いずれの場合においても、リン光発光性ドーパントの励起状態のエネルギーは、ホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件となる。
リン光発光性ドーパントは、有機EL素子の発光層に使用される公知の材料から適宜選択して用いることができる。
公知のリン光発光性ドーパントの具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられる。
Nature,395,151(1998)、Appl.Phys.Lett.,78,1622(2001)、Adv.Mater.,19,739(2007)、Chem.Mater.,17,3532(2005)、Adv.Mater.,17,1059(2005)、国際公開第2009/100991号、国際公開第2008/101842号、国際公開第2003/040257号、米国特許出願公開第2006/0202194号明細書、米国特許出願公開第2007/0087321号明細書、米国特許出願公開第2005/0244673号明細書、Inorg.Chem.,40,1704(2001)、Chem.Mater.,16,2480(2004)、Adv.Mater.,16,2003(2004)、Angew.Chem.,lnt.Ed.,2006,45,7800、Appl.Phys.Lett.,86,153505(2005)、Chem.Lett.,34,592(2005)、Chem.Commun.,2906(2005)、Inorg.Chem.,42,1248(2003)、国際公開第2009/050290号、国際公開第2002/015645号、国際公開第2009/000673号、米国特許出願公開第2002/0034656号明細書、米国特許第7332232号明細書、米国特許出願公開第2009/0108737号明細書、米国特許出願公開第2009/0039776号明細書、米国特許第6921915号明細書、米国特許第6687266号明細書、米国特許出願公開第2007/0190359号明細書、米国特許出願公開第2006/0008670号明細書、米国特許出願公開第2009/0165846号明細書、米国特許出願公開第2008/0015355号明細書、米国特許第7250226号明細書、米国特許第7396598号明細書、米国特許出願公開第2006/0263635号明細書、米国特許出願公開第2003/0138657号明細書、米国特許出願公開第2003/0152802号明細書、米国特許第7090928号明細書、Angew.Chem.lnt.Ed.,47,1(2008)、Chem.Mater.,18,5119(2006)、Inorg.Chem.,46,4308(2007)、Organometallics,23,3745(2004)、Appl.Phys.Lett.,74,1361(1999)、国際公開第2002/002714号、国際公開第2006/009024号、国際公開第2006/056418号、国際公開第2005/019373号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2007/004380号、国際公開第2006/082742号、米国特許出願公開第2006/0251923号明細書、米国特許出願公開第2005/0260441号明細書、米国特許第7393599号明細書、米国特許第7534505号明細書、米国特許第7445855号明細書、米国特許出願公開第2007/0190359号明細書、米国特許出願公開第2008/0297033号明細書、米国特許第7338722号明細書、米国特許出願公開第2002/0134984号明細書、米国特許第7279704号明細書、国際公開第2005/076380号、国際公開第2010/032663号、国際公開第2008/140115号、国際公開第2007/052431号、国際公開第2011/134013号、国際公開第2011/157339号、国際公開第2010/086089号、国際公開第2009/113646号、国際公開第2012/020327号、国際公開第2011/051404号、国際公開第2011/004639号、国際公開第2011/073149号、特開2012−069737号公報、特開2012−195554号公報、特開2009−114086号公報、特開2003−81988号公報、特開2002−302671号公報、特開2002−363552号公報が挙げられる。
中でも、好ましいリン光発光性ドーパントとしては、Irを中心金属に有する有機金属錯体が挙げられる。さらに好ましくは、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含む錯体が好ましい。
(蛍光発光性ドーパント)
蛍光発光性ドーパントは、励起一重項からの発光が可能な化合物であり、励起一重項からの発光が観測される限り特に限定されない。
蛍光発光性ドーパントしては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、ペリレン誘導体、フルオレン誘導体、アリールアセチレン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、アリールアミン誘導体、ホウ素錯体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、シアニン誘導体、クロコニウム誘導体、スクアリウム誘導体、オキソベンツアントラセン誘導体、フルオレセイン誘導体、ローダミン誘導体、ピリリウム誘導体、ペリレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、又は希土類錯体系化合物等が挙げられる。
また、蛍光発光性ドーパントとして、遅延蛍光を利用した発光ドーパント等を用いてもよい。
遅延蛍光を利用した発光ドーパントの具体例としては、例えば、国際公開第2011/156793号、特開2011−213643号公報、特開2010−93181号公報等に記載の化合物が挙げられる。
(ホスト化合物)
ホスト化合物は、発光層において主に電荷の注入、及び輸送を担う化合物であり、有機EL素子において、それ自体の発光は実質的に観測されない。
好ましくは室温(25℃)において、リン光発光のリン光量子収率が、0.1未満の化合物であり、さらに好ましくは、リン光量子収率が0.01未満の化合物である。また、発光層に含有される化合物の内で、その層中での質量比が20%以上であることが好ましい。
また、ホスト化合物の励起状態エネルギーは、同一層内に含有される発光ドーパントの励起状態エネルギーよりも高いことが好ましい。
ホスト化合物は、単独で用いてもよく、又は複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子の高効率化が可能となる。
発光層に用いるホスト化合物としては、特に制限はなく、従来の有機EL素子で用いられる化合物を用いることができる。例えば、低分子化合物や、繰り返し単位を有する高分子化合物でもよく、又はビニル基やエポキシ基のような反応性基を有する化合物でもよい。
公知のホスト化合物としては、正孔輸送能又は電子輸送能を有しつつ、発光の長波長化を防ぎ、さらに、有機EL素子を高温駆動時や素子駆動中の発熱に対する安定性の観点から、高いガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。ホスト化合物としては、Tgが90℃以上であることが好ましく、より好ましくは120℃以上である。
ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS K 7121−2012に準拠した方法により求められる値である。
有機EL素子に用いられる、公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報、米国特許出願公開第2003/0175553号明細書、米国特許出願公開第2006/0280965号明細書、米国特許出願公開第2005/0112407号明細書、米国特許出願公開第2009/0017330号明細書、米国特許出願公開第2009/0030202号明細書、米国特許出願公開第2005/0238919号明細書、国際公開第2001/039234号、国際公開第2009/021126号、国際公開第2008/056746号、国際公開第2004/093207号、国際公開第2005/089025号、国際公開第2007/063796号、国際公開第2007/063754号、国際公開第2004/107822号、国際公開第2005/030900号、国際公開第2006/114966号、国際公開第2009/086028号、国際公開第2009/003898号、国際公開第2012/023947号、特開2008−074939号公報、特開2007−254297号公報、EP2034538等である。
(電子輸送層)
有機EL素子に用いる電子輸送とは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有する。
電子輸送材料は、単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
電子輸送層の層厚については、特に制限はないが、通常は2nm〜5μmの範囲内であり、より好ましくは2〜500nmの範囲内であり、さらに好ましくは5〜200nmの範囲内である。
また、有機EL素子においては、発光層で生じた光を電極から取り出す際、発光層から直接取り出される光と、光を取り出す電極と対極に位置する電極で反射されてから取り出される光とが、干渉を起こすことが知られている。光が陰極で反射される場合は、電子輸送層の層厚を数nm〜数μmの間で適宜調整することにより、この干渉効果を効率的に利用することが可能である。
一方で、電子輸送層の層厚を厚くすると電圧が上昇しやすくなるため、特に層厚が厚い場合においては、電子輸送層の電子移動度は10−5cm/Vs以上であることが好ましい。
電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という。)としては、電子の注入性又は輸送性、又は正孔の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
例えば、含窒素芳香族複素環誘導体、芳香族炭化水素環誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、シロール誘導体等が挙げられる。
上記含窒素芳香族複素環誘導体としては、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体(カルバゾール環を構成する炭素原子の一つ以上が窒素原子に置換)、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリダジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、アザトリフェニレン誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体等が挙げられる。
芳香族炭化水素環誘導体としては、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン等が挙げられる。
また、配位子にキノリノール骨格やジベンゾキノリノール骨格を有する金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属が、In、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。
また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
また、これらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
有機EL素子では、ゲスト材料として電子輸送層にドープ材をドープして、n性の高い(電子リッチ)電子輸送層を形成してもよい。
ドープ材としては、金属錯体及びハロゲン化金属等の金属化合物や、その他のn型ドーパントが挙げられる。
このような構成の電子輸送層の具体例としては、例えば、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等の文献に記載されたものが挙げられる。
有機EL素子に用いられる、公知の好ましい電子輸送材料の具体例としては、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
米国特許第6528187号明細書、米国特許第7230107号明細書、米国特許出願公開第2005/0025993号明細書、米国特許出願公開第2004/0036077号明細書、米国特許出願公開第2009/0115316号明細書、米国特許出願公開第2009/0101870号明細書、米国特許出願公開第2009/0179554号明細書、国際公開第2003/060956号、国際公開第2008/132085号、Appl.Phys.Lett.,75,4(1999)、Appl.Phys.Lett.,79,449(2001)、Appl.Phys.Lett.,81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.,81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.,79,156(2001)、米国特許第7964293号明細書、国際公開第2004/080975号、国際公開第2004/063159号、国際公開第2005/085387号、国際公開第2006/067931号、国際公開第2007/086552号、国際公開第2008/114690号、国際公開第2009/069442号、国際公開第2009/066779号、国際公開第2009/054253号、国際公開第2011/086935号、国際公開第2010/150593号、国際公開第2010/047707号、EP2311826号、特開2010−251675号公報、特開2009−209133号公報、特開2009−124114号公報、特開2008−277810号公報、特開2006−156445号公報、特開2005−340122号公報、特開2003−45662号公報、特開2003−31367号公報、特開2003−282270号公報、国際公開第2012/115034号等が挙げられる。
より好ましい電子輸送材料としては、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体が挙げられる。
(正孔阻止層)
正孔阻止層は、広い意味では電子輸送層の機能を有する層である。好ましくは、電子を輸送する機能を有しつつ、正孔を輸送する能力が小さい材料からなる。電子を輸送しつつ正孔を阻止することで、電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
また、前述の電子輸送層の構成を、必要に応じて正孔阻止層として用いることができる。
有機EL素子に設ける正孔阻止層は、発光層の陰極側に隣接して設けられることが好ましい。
有機EL素子において、正孔阻止層の厚さは、好ましくは3〜100nmの範囲内であり、さらに好ましくは5〜30nmの範囲内である。
正孔阻止層に用いられる材料としては、前述の電子輸送層に用いられる材料が好ましく用いられ、また、前述のホスト化合物として用いられる材料も正孔阻止層に好ましく用いられる。
(電子注入層)
電子注入層(「陰極バッファー層」ともいう。)は、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陰極と発光層との間に設けられる層である。電子注入層の一例は、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に記載されている。
有機EL素子において、電子注入層は必要に応じて設けられ、前述のように陰極と発光層との間、又は陰極と電子輸送層との間に設けられる。
電子注入層は、ごく薄い膜であることが好ましく、素材にもよるがその膜厚は0.1〜5nmの範囲内が好ましい。また、構成材料が、断続的に存在する不均一な膜であってもよい。
電子注入層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されている。電子注入層に好ましく用いられる材料の具体例としては、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等に代表されるアルカリ金属化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等に代表されるアルカリ土類金属化合物、酸化アルミニウムに代表される金属酸化物、リチウム8−ヒドロキシキノレート(Liq)等に代表される金属錯体等が挙げられる。また、前述の電子輸送材料を用いることも可能である。
また、上記の電子注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、複数種を併用して用いてもよい。
(正孔輸送層)
正孔輸送層は、正孔を輸送する機能を有する材料からなる。正孔輸送層は、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有する層である。
有機EL素子において、正孔輸送層の総膜厚に特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲内であり、より好ましくは2〜500nmの範囲内であり、さらに好ましくは5〜200nmの範囲内である。
正孔輸送層に用いられる材料(以下、正孔輸送材料という。)は、正孔の注入性又は輸送性、電子の障壁性のいずれかを有していればよい。
正孔輸送材料は、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。正孔輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
正孔輸送材料は、例えば、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、イソインドール誘導体、アントラセンやナフタレン等のアセン系誘導体、フルオレン誘導体、フルオレノン誘導体、ポリビニルカルバゾール、芳香族アミンを主鎖若しくは側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー、ポリシラン、導電性ポリマー又はオリゴマー(例えば、PEDOT/PSS、アニリン系共重合体、ポリアニリン、ポリチオフェン等)等が挙げられる。
トリアリールアミン誘導体としては、α−NPDに代表されるベンジジン型や、MTDATAに代表されるスターバースト型、トリアリールアミン連結コア部にフルオレンやアントラセンを有する化合物等が挙げられる。
また、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているヘキサアザトリフェニレン誘導体も正孔輸送材料として用いることができる。
さらに、不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることもできる。例えば、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報の各公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載された構成を正孔輸送層に適用することもできる。
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Appl.Phys.Lett.,80(2002),p.139)に記載されているような、いわゆるp型正孔輸送材料やp型−Si、p型−SiC等の無機化合物を用いることもできる。さらに、Ir(ppy)に代表されるような中心金属にIrやPtを有するオルトメタル化有機金属錯体も好ましく用いられる。
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、アザトリフェニレン誘導体、有機金属錯体、芳香族アミンを主鎖、又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー等が好ましく用いられる。
有機EL素子に用いられる正孔輸送材料の具体例としては、上記で挙げた文献の他、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
Appl.Phys.Lett.,69,2160(1996)、J.Lumin.,72−74,985(1997)、Appl.Phys.Lett.,78,673(2001)、Appl.Phys.Lett.,90,183503(2007)、Appl.Phys.Lett.,90,183503(2007)、Appl.Phys.Lett.,51,913(1987)、Synth.Met.,87,171(1997)、Synth.Met.,91,209(1997)、Synth.Met.,111,421(2000)、SID Symposium Digest,37,923(2006)、J.Mater.Chem.,3,319(1993)、Adv.Mater.,6,677(1994)、Chem.Mater.,15,3148(2003)、米国特許出願公開第2003/0162053号明細書、米国特許出願公開第2002/0158242号明細書、米国特許出願公開第2006/0240279号明細書、米国特許出願公開第2008/0220265号明細書、米国特許第5061569号明細書、国際公開第2007/002683号、国際公開第2009/018009号、EP650955、米国特許出願公開第2008/0124572号明細書、米国特許出願公開第2007/0278938号明細書、米国特許出願公開第2008/0106190号明細書、米国特許出願公開第2008/0018221号明細書、国際公開第2012/115034号、特表2003−519432号公報、特開2006−135145号公報、米国特許出願番号13/585981号等が挙げられる。
(電子阻止層)
電子阻止層は、広い意味では正孔輸送層の機能を有する層である。好ましくは、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が小さい材料からなる。電子阻止層は、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで、電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
また、前述の正孔輸送層の構成を必要に応じて、有機EL素子の電子阻止層として用いることができる。有機EL素子に設ける電子阻止層は、発光層の陽極側に隣接して設けられることが好ましい。
電子阻止層の厚さとしては、好ましくは3〜100nmの範囲内であり、さらに好ましくは5〜30nmの範囲内である。
電子阻止層に用いられる材料としては、前述の正孔輸送層に用いられる材料が好ましく用いることができる。また、前述のホスト化合物として用いられる材料も、電子阻止層として好ましく用いることができる。
(正孔注入層)
正孔注入層(「陽極バッファー層」ともいう。)は、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陽極と発光層との間に設けられる層である。正孔注入層の一例は、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に記載されている。
正孔注入層は、必要に応じて設けられ、前述のように陽極と発光層との間、又は陽極と正孔輸送層との間に設けられる。
正孔注入層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されている。
正孔注入層に用いられる材料は、例えば前述の正孔輸送層に用いられる材料等が挙げられる。中でも、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン誘導体、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体、酸化バナジウムに代表される金属酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体等に代表されるオルトメタル化錯体、トリアリールアミン誘導体等が好ましい。
前述の正孔注入層に用いられる材料は、単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
(その他添加剤)
有機EL素子を構成する有機機能層は、さらに他の添加剤を含んでもよい。
その他添加剤としては、例えば臭素、ヨウ素及び塩素等のハロゲン元素やハロゲン化化合物、Pd、Ca、Na等のアルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属の化合物や錯体、塩等が挙げられる。
添加剤の含有量は、任意に決定することができるが、含有される層の全質量%に対して1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは500ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。
ただし、電子や正孔の輸送性を向上させる目的や、励起子のエネルギー移動を有利にするための目的などによってはこの範囲内ではない。
(有機機能層の形成方法)
有機EL素子の有機機能層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等)の形成方法について説明する。
有機機能層の形成方法は、特に制限はなく、従来公知の例えば、真空蒸着法、湿式法(ウェットプロセス)等により形成することができる。
湿式法としては、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)等がある。均質な薄膜が得られやすく、かつ、高生産性の点から、ダイコート法、ロールコート法、インクジェット法、スプレーコート法等のロールtoロール方式に適性の高い方法が好ましい。
湿式法において、有機機能層の材料を溶解又は分散する液媒体としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、DMF、DMSO等の有機溶媒を用いることができる。
また、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法により分散することができる。
有機機能層を構成する各層の形成に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10−6〜10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、膜厚0.1nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲内で適宜選ぶことが望ましい。
有機EL素子の形成は、一回の真空引きで一貫して有機機能層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる成膜法を施しても構わない。その際は作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
また、層毎に異なる形成方法を適用してもよい。
[第1電極]
第1電極15は、仕事関数の大きい(4eV以上、好ましくは4.3eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物からなる電極物質が用いられる。
このような電極物質の具体例としては、AuやAg等の金属及びこれらの合金、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。
また、IDIXO(In−ZnO)等の非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
第1電極15は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成し、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成する。または、パターン精度を余り必要としない(100μm以上程度)場合は、上記電極物質を蒸着法又はスパッタリング法で形成する際に、所望の形状のマスクを介してパターン形成してもよい。
有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等の湿式成膜法を用いることもできる。
第1電極側から発光光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましい。
また、第1電極としてのシート抵抗は、数百Ω/sq.以下が好ましい。
また、第1電極の厚さは、材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
特に、第1電極は、銀を主成分として構成された層であって、銀又は銀を主成分とした合金を用いて構成されることが好ましい。
このような第1電極15の形成方法としては、塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法等のウェットプロセスを用いる方法や、蒸着法(抵抗加熱、EB法等)、スパッタ法、CVD法等のドライプロセスを用いる方法等が挙げられる。中でも、蒸着法が好ましく適用される。
第1電極を構成する銀(Ag)を主成分とする合金は、一例として銀マグネシウム(AgMg)、銀銅(AgCu)、銀パラジウム(AgPd)、銀パラジウム銅(AgPdCu)、銀インジウム(AgIn)等が挙げられる。
以上のような第1電極は、銀又は銀を主成分とした合金の層が、必要に応じて複数の層に分けて積層された構成であってもよい。
さらに、この第1電極は、厚さが4〜15nmの範囲内にあることが好ましい。厚さ15nm以下では、層の吸収成分及び反射成分が低く抑えられ、ガスバリアー層の光透過率が維持されるため好ましい。また、厚さが4nm以上であることにより、層の導電性も確保される。
なお、第1電極として銀を主成分として構成された層を形成する場合には、Pd等を含む他の導電層や、窒素化合物、硫黄化合物等の有機層を、第1電極15の下地層として形成してもよい。下地層を形成することにより、銀を主成分として構成された層の成膜製の向上や、第1電極15の抵抗率の低下、及び第1電極15の光透過性を向上させることができる。
[第2電極]
第2電極17としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する。)、合金、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物からなる電極物質が用いられる。
このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム、希土類金属等が挙げられる。
これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属と、この電子注入性金属よりも仕事関数の値が大きく安定な第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
第2電極は、上記電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法を用いて作製することができる。また、第2電極17のシート抵抗は、数百Ω/sq.以下が好ましい。また、第2電極の厚さは、通常10nm〜5μmの範囲内、好ましくは50〜200nmの範囲内で選ばれる。
また、第2電極に上記金属を1〜20nmの範囲内の膜厚で作製した後に、第1電極の説明で挙げる導電性透明材料をその上に作製することで、透明又は半透明の第2電極を作製することができる。これを応用することで、第1電極15と第2電極17の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
[封止層]
有機EL素子は、第1ガスバリアー層が形成された基板の一方の面上に、第2ガスバリアー層、第1電極、発光ユニット層及び第2電極を覆う封止層21を介して、封止部材22が貼り合わされることにより、固体封止されていることが好ましい(図3参照)。
有機EL素子の固体封止は、封止部材22又は基板11の貼合面上に、未硬化の樹脂材料を複数箇所に分散させて塗布し、これらの樹脂材料を介して封止部材と基板とを互いに押圧した後、樹脂材料を硬化することで一体化して形成される。
封止層21は、少なくとも発光ユニット層16を覆う状態で設けられ、第1電極15及び第2電極17の端子部分(図示省略)を露出させる状態で設けられている。また、封止部材に電極を設け、有機EL素子の第1電極及び第2電極の端子部分と、この電極とを導通させるように構成されていてもよい。
封止層は、基板と封止部材とを接合するための樹脂材料(樹脂封止層)から構成される。
また、樹脂材料(樹脂封止層)に加えて、無機材料(無機封止層)を用いてもよい。例えば、第1電極、発光ユニット層及び第2電極を無機封止層で覆った後、樹脂封止層により封止部材と基板とを接合する構成としてもよい。
(樹脂封止層)
樹脂封止層は、封止部材22を基板11側に固定するために用いられる。また、封止部材22と基板11との間に挟持された第1電極15、発光ユニット層16及び第2電極17を封止するためのシール剤として用いられる。
封止部材を基板に接合するためには、任意の硬化型の樹脂封止層を用いて接着することが好ましい。
樹脂封止層には、隣接する封止部材や基板等との密着性の向上の観点から、好適な接着材を適宜選択することができる。
このような樹脂封止層としては、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
熱硬化性接着剤としては、例えば、分子の末端又は側鎖にエチレン性二重結合を有する化合物と熱重合開始剤とを主成分とする樹脂等を用いることができる。
より具体的には、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等からなる熱硬化性接着剤を使用することができる。また、有機EL素子の製造工程で用いる貼合装置及び硬化処理装置に応じて、溶融タイプの熱硬化性接着剤を使用してもよい。
また、このような樹脂封止層としては、光硬化性樹脂を用いることが好ましい。
例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレートを主成分とした光ラジカル重合性樹脂や、エポキシやビニルエーテル等の樹脂を主成分とした光カチオン重合性樹脂や、チオール・エン付加型樹脂等が挙げられる。これら光硬化性樹脂の中でも、硬化物の収縮率が低く、アウトガスも少なく、また長期信頼性に優れるエポキシ樹脂系の光カチオン重合性樹脂が好ましい。
また、このような樹脂封止層としては、化学硬化型(二液混合)の樹脂を用いることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを用いることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂を用いることができる。
なお、有機EL素子を構成する有機材料は、熱処理により劣化する場合がある。このため、室温から80℃までに接着硬化できる樹脂材料を使用することが好ましい。
(無機封止層)
無機封止層としては、封止性が高い無機酸化物、無機窒化物、無機炭化物等の化合物により形成されることが好ましい。
具体的には、SiOx、Al、In、TiOx、ITO(スズ・インジウム酸化物)、AlN、Si、SiOxN、TiOxN、SiC等により形成することができる。
無機封止層は、ゾルゲル法、蒸着法、CVD、ALD(Atomic Layer Deposition)、PVD、スパッタリング法等の公知な手法により形成可能である。
また、無機封止層は、大気圧プラズマ法において、原料(原材料ともいう。)である有機金属化合物、分解ガス、分解温度、投入電力などの条件を選択することで、酸化ケイ素、酸化ケイ素を主体とした無機酸化物、又は無機酸窒化物や無機酸化ハロゲン化物等のような、無機炭化物、無機窒化物、無機硫化物、及び無機ハロゲン化物等の混合物等の組成を作り分けることができる。
例えば、ケイ素化合物を原料化合物として用い、分解ガスに酸素を用いれば、ケイ素酸化物が生成する。また、シラザン等を原料化合物として用いれば、酸化窒化ケイ素が生成する。これは、プラズマ空間内では非常に活性な荷電粒子・活性ラジカルが高密度で存在するため、プラズマ空間内で多段階の化学反応が非常に高速に促進され、プラズマ空間内の元素が熱力学的に安定な化合物へと非常に短時間で変換されるためである。
このような無機封止層を形成するための原料は、ケイ素化合物であれば、常温常圧下で気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合には、そのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、バブリング、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用する。
また、溶媒によって希釈して使用してもよく、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサン等の有機溶媒及びこれらの混合溶媒を使用できる。なお、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解されるため、影響をほとんど無視することができる。
このようなケイ素化合物としては、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラキスジメチルアミノシラン、テトライソシアナートシラン、テトラメチルジシラザン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、トリエトキシフルオロシラン、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ベンジルトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン、フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン、プロパルギルトリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、Mシリケート51等が挙げられる。
また、これらケイ素を含む原料ガスを分解して無機封止層を得るための分解ガスとしては、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、水蒸気、フッ素ガス、フッ化水素、トリフルオロアルコール、トリフルオロトルエン、硫化水素、二酸化硫黄、二硫化炭素、塩素ガス等が挙げられる。
前述のケイ素を含む原料ガスと分解ガスとを適宜選択することで、酸化ケイ素、また、窒化物、炭化物等を含有する無機封止層を得ることができる。
大気圧プラズマ法においては、これらの反応性ガスに対して、主にプラズマ状態になりやすい放電ガスを混合し、プラズマ放電発生装置にガスを送りこむ。
このような放電ガスとしては、窒素ガス及び/又は周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも特に、窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられる。
上記放電ガスと反応性ガスを混合し、薄膜形成(混合)ガスとして大気圧プラズマ放電発生装置(プラズマ発生装置)に供給することで膜形成を行う。放電ガスと反応性ガスの割合は、得ようとする膜の性質によって異なるが、混合ガス全体に対し、放電ガスの割合を50%以上として反応性ガスを供給する。
中でも、素子を薄型化できるということから、封止部材として薄型のフィルム状にしたポリマー基板を好ましく使用することができる。
フィルム状のポリマー基板は、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/(m・24h・atm)以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%)が、1×10−3g/(m・24h)以下であることが好ましい。
また、以上のような基板材料は、凹板状に加工して封止部材として用いてもよい。この場合、前述した基板部材に対してサンドブラスト加工、化学エッチング加工等の加工が施され、凹状が形成される。
また、これに限らず、金属材料を用いてもよい。金属材料としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブデン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる1種以上の金属又は合金が挙げられる。このような金属材料は、薄型のフィルム状にして封止部材として用いることにより、有機電界発光素子が設けられた発光パネル全体を薄型化できる。
[封止部材]
封止部材22は、有機EL素子を覆うものであって、板状(フィルム状)の封止部材が封止層21によって基板11側に固定されている。
板状(フィルム状)の封止部材としては、具体的には、ガラス基板、ポリマー基板が挙げられ、これらの基板材料をさらに薄型のフィルム状にして用いてもよい。
ガラス基板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。
また、ポリマー基板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。
また、封止部材としては、樹脂フィルムがラミネート(ポリマー膜)された金属箔を用いることが好ましい。樹脂フィルムがラミネートされた金属箔は、光取り出し側の基板として用いることはできないが、低コストであり、透湿性の低い封止材料である。このため、光取り出しを意図しない封止部材として好適である。
なお、金属箔とは、スパッタや蒸着等で形成された金属薄膜や、導電性ペースト等の流動性電極材料から形成された導電膜と異なり、圧延等で形成された金属の箔又はフィルムを指す。
金属箔としては、金属の種類に特に限定はなく、例えば銅(Cu)箔、アルミニウム(Al)箔、金(Au)箔、黄銅箔、ニッケル(Ni)箔、チタン(Ti)箔、銅合金箔、ステンレス箔、スズ(Sn)箔、高ニッケル合金箔等が挙げられる。これらの各種の金属箔の中で、特に好ましい金属箔としては、Al箔が挙げられる。
金属箔の厚さは、6〜50μmの範囲内が好ましい。6〜50μmの範囲内であると、金属箔に用いる材料によって使用時に生じるピンホール発生を防止し、必要とするガスバリアー性(透湿度、酸素透過率)を得ることができる。
例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体系樹脂、セロハン系樹脂、ビニロン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等を用いることができる。
ポリプロピレン系樹脂、及びナイロン系樹脂等の樹脂は、延伸されていてもよく、さらに塩化ビニリデン系樹脂がコートされていてもよい。また、ポリエチレン系樹脂は、低密度と高密度とのいずれを用いてもよい。
封止部材22は、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/(m・24h・atm)以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%)が1×10−3g/(m・24h)以下であることが好ましい。
また、以上のような基板材料は、凹板状に加工して封止部材として用いてもよい。この場合、前述した基板部材に対してサンドブラスト加工、化学エッチング加工等の加工が施され、凹状が形成される。
また、これに限らず、金属材料を用いてもよい。金属材料としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブデン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる1種以上の金属又は合金が挙げられる。このような金属材料は、薄型のフィルム状にして封止部材として用いることにより、有機EL素子が設けられた発光パネル全体を薄型化できる。
[第4ガスバリアー層]
本発明に係る第4ガスバリアー層19は、炭素(C)、窒素(N)及び酸素(O)から選ばれる元素を含むケイ素化合物を含有し、基板と第1ガスバリアー層との間に形成されることが好ましい(図2参照)。これにより、基板へのガスの浸入を抑制することができ、過酷な条件であっても劣化を抑制することができるためである。
ガスバリアー機能としては、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度90±2%)が1×10−2g/(m・24h)以下を有していればよく、好ましくは1×10−3g/m・24h以下である。
第4ガスバリアー層は、ガスバリアー性能の観点から、第4ガスバリアー層に含有されるケイ素化合物が、これらのC、N、及びOから選ばれる元素の元素比率が変化することにより表面から厚さ方向に向けて連続的な組成変化を有することが好ましい。
さらに、第4ガスバリアー層を構成するケイ素化合物は、この厚さ方向の連続的な組成変化において、一つ以上の極値を有することがガスバリアー性能及び屈曲耐性の観点から好ましい。つまり、第4ガスバリアー層は、ケイ素、酸素及び炭素を含む材料から構成され、ケイ素、酸素及び炭素の含有率が異なる複数の領域を有することが好ましい。
(各元素の分布曲線の条件)
第4ガスバリアー層は、ケイ素、酸素及び炭素の原子比率又は各元素の分布曲線が、以下(i)〜(iii)の条件を満たすことが好ましい。
(i)ケイ素の原子比率、酸素の原子比率及び炭素の原子比率が、第2ガスバリアー層の層厚の90%以上の領域において
式(1):(酸素の原子比率)>(ケイ素の原子比率)>(炭素の原子比率)
で表される条件を満たす。
または、ケイ素の原子比率、酸素の原子比率及び炭素の原子比率が、第2ガスバリアー層の層厚の90%以上の領域において
式(2):(炭素の原子比率)>(ケイ素の原子比率)>(酸素の原子比率)
で表される条件を満たす。
(ii)炭素分布曲線が少なくとも一つの極大値と極小値とを有する。
(iii)炭素分布曲線における炭素の原子比率の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%以上である。
本発明の有機EL素子は、上記条件(i)〜(iii)のうち少なくとも一つを満たす第4ガスバリアー層を備えることが好ましい。特に、上記条件(i)〜(iii)を全て満たす第4ガスバリアー層を備えることが好ましい。
また、上記条件(i)〜(iii)を全て満たす第4ガスバリアー層を、2層以上備えていてもよい。第4ガスバリアー層を2層以上備える場合には、複数の薄膜層の材質は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
第4ガスバリアー層の屈折率は、前述のとおり、第4ガスバリアー層に含有されるケイ素、炭素及び酸素の原子比率により制御することができる。このため、上記条件(i)〜(iii)により、第4ガスバリアー層の屈折率を好ましい範囲に調整することができる。
(炭素分布曲線)
第4ガスバリアー層は、炭素分布曲線が少なくとも一つの極値を有することが必要である。このような第4ガスバリアー層においては、炭素分布曲線が少なくとも二つの極値を有することがより好ましく、少なくとも三つの極値を有することが特に好ましい。さらに、炭素分布曲線が少なくとも一つの極大値と、一つの極小値とを有することが好ましい。
炭素分布曲線が極値を有することで、得られる第4ガスバリアー層の配光性を向上させることができる。このため、第1電極15を通して得られる有機EL素子の光の角度依存性を解消することができる。
また、第4ガスバリアー層が三つ以上の極値を有する場合には、炭素分布曲線の有する一つの極値と、この極値に隣接する他の極値とは、第4ガスバリアー層の表面からの層厚方向の距離の差が、200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることが、配光性の向上及び第4ガスバリアー層中の応力を緩和する点でより好ましい。
(極値)
第4ガスバリアー層において、分布曲線の極値とは、第4ガスバリアー層の層厚方向における、第4ガスバリアー層の表面からの距離に対する元素の原子比率の極大値若しくは極小値又はその値に対応した屈折率分布曲線の測定値である。
第4ガスバリアー層において、各元素の分布曲線の極大値とは、第4ガスバリアー層の表面からの距離を変化させた場合に、元素の原子比率の値が増加から減少に変わる点である。なおかつ、この点から、第4ガスバリアー層の表面からの距離を更に20nm変化させた位置の元素の原子比率の値が、3at%以上減少する点である。
一方、第4ガスバリアー層において、各元素の分布曲線の極小値とは、第4ガスバリアー層の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比率の値が減少から増加に変わる点である。なおかつ、この点から、第4ガスバリアー層の表面からの距離を更に20nm変化させた位置の元素の原子比率の値が、3at%以上増加する点である。
また、第4ガスバリアー層の炭素分布曲線において、炭素の原子比率の最大値と最小値との差の絶対値は、5at%以上であることが好ましい。また、このような第4ガスバリアー層においては、炭素の原子比率の最大値と最小値との差の絶対値が、6at%以上であることがより好ましく、さらに7at%以上であることが好ましい。炭素の原子比率の最大値と最小値との差が上記範囲とすることで、得られる第4ガスバリアー層の屈折率分布曲線における屈折率差が大きくなり、配光性をより向上させることができる。
炭素分布量と屈折率は相関があり、上記の好ましい炭素原子の最大値と最小値の絶対値が7at%以上のときに、得られる屈折率の最大値と最小値との差の絶対値は0.2以上になることがわかっている。
(酸素分布曲線)
第4ガスバリアー層は、酸素分布曲線が少なくとも一つの極値を有することが好ましい。特に、第4ガスバリアー層は、酸素分布曲線が少なくとも二つの極値を有することがより好ましく、少なくとも三つの極値を有することがさらに好ましい。さらに、酸素分布曲線が少なくとも一つの極大値と、一つの極小値とを有することが好ましい。
酸素分布曲線が極値を有することで、得られる第4ガスバリアー層の配光性が向上する。このため、第1電極を通して得られる有機EL素子の光の角度依存性を解消することができる。
また、第4ガスバリアー層が三つ以上の極値を有する場合には、酸素分布曲線の有する一つの極値と、この極値に隣接する他の極値とは、第4ガスバリアー層の表面からの層厚方向の距離の差が、200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることが、配光性の向上及び第4ガスバリアー層中の応力を緩和する点でより好ましい。
また、第4ガスバリアー層の酸素分布曲線において、酸素の原子比率の最大値と最小値との差の絶対値が、5at%以上であることが好ましい。また、このような第4ガスバリアー層においては、酸素の原子比率の最大値と最小値との差の絶対値が6at%以上であることがより好ましく、さらに7at%以上であることが好ましい。酸素の原子比率の最大値と最小値との差が上記範囲内とすることで、得られる第4ガスバリアー層の屈折率分布曲線から、配光性をより向上させることができる。
(ケイ素分布曲線)
第4ガスバリアー層は、ケイ素分布曲線において、ケイ素の原子比率の最大値と最小値との差の絶対値が、5at%未満であることが好ましい。また、このような第4ガスバリアー層においては、ケイ素の原子比率の最大値と最小値との差の絶対値が4at%未満であることがより好ましく、さらに3at%未満であることが好ましい。ケイ素の原子比率の最大値と最小値との差が上記範囲未満とすることで、得られる第4ガスバリアー層の屈折率分布曲線から、より高い配光性を得ることができる。
(酸素と炭素の合計量:酸素炭素分布曲線)
また、第4ガスバリアー層において、ケイ素原子と酸素原子と炭素原子との合計量に対する、酸素原子と炭素原子との合計量の比率を、酸素炭素分布曲線とする。
第4ガスバリアー層は、酸素炭素分布曲線において、酸素及び炭素の合計原子比率の最大値と最小値との差の絶対値が、5at%未満であることが好ましく、4at%未満であることがより好ましく、3at%未満であることが特に好ましい。
酸素及び炭素の合計原子比率の最大値と最小値との差が上記範囲未満とすることで、得られる第4ガスバリアー層の屈折率分布曲線から、より高い配光性を得ることができる。
(XPSデプスプロファイル)
前述のケイ素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線、酸素炭素分布曲線及び窒素分布曲線は、X線光電子分光法(XPS)の測定と、アルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。
XPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比率(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。
なお、横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線では、エッチング時間が第4ガスバリアー層の層厚方向における表面からの距離におおむね相関する。このため、XPSデプスプロファイル測定の際に、エッチング速度とエッチング時間との関係から算出される、第4ガスバリアー層の表面からの距離を「層厚方向における第4ガスバリアー層の表面からの距離」として採用することができる。
XPSデプスプロファイル測定には、エッチングイオン種としてアルゴン(Ar)を用いた希ガスイオンスパッタ法を採用し、エッチング速度(エッチングレート)を0.05nm/sec(SiO熱酸化膜換算値)とすることが好ましい。
また、第4ガスバリアー層は、膜面全体において均一で、かつ優れた配光性を有する層を形成するという観点から、第4ガスバリアー層が膜面方向(第4ガスバリアー層の表面に平行な方向)において実質的に一様であることが好ましい。第4ガスバリアー層が膜面方向において実質的に一様とは、第4ガスバリアー層の膜面の任意の2か所において、それぞれの測定箇所の元素の分布曲線の有する極値の数が同じであり、かつ分布曲線における炭素の原子比率の最大値及び最小値の差の絶対値が互いに同じ又は最大値及び最小値の差が5at%以内であることをいう。
(実質的連続)
第4ガスバリアー層において、炭素分布曲線は実質的に連続であることが好ましい。炭素分布曲線が実質的に連続であるとは、炭素分布曲線において炭素の原子比率が不連続に変化する部分を含まないことを意味する。具体的には、エッチング速度とエッチング時間とから算出される第4ガスバリアー層の表面からの距離(x、単位:nm)と、炭素の原子比率(C、単位:at%)とが、
数式(F1):(dC/dx)≦0.5
で表される条件を満たす。
(ケイ素原子比率、酸素原子比率、炭素原子比率)
また、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線において、ケイ素の原子比率、酸素の原子比率及び炭素の原子比率が、第4ガスバリアー層の層厚の90%以上の領域において上記式(1)で表される条件を満たすことが好ましい。この場合には、第4ガスバリアー層中におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する、ケイ素原子の含有量の原子比率は、25〜45at%の範囲であることが好ましく、30〜40at%の範囲であることが、ガスバリアー性向上の観点からより好ましい。
また、第4ガスバリアー層中におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する、酸素原子の含有量の原子比率は、33〜67at%の範囲であることが好ましく、45〜67at%の範囲であることが、ガスバリアー性及び透光性向上の観点からより好ましい。
さらに、第4ガスバリアー層中におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する、炭素原子の含有量の原子比率は、3〜33at%の範囲であることが好ましく、3〜25at%の範囲であることが、ガスバリアー性及び透光性向上の観点からより好ましい。
第4ガスバリアー層は、例えば、特許第4268195号公報に記載のCVD装置を用いて作製することができる。
[用途]
有機EL素子は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源等の電子機器に適用することができる。
発光光源としては、例えば、家庭用照明や車内照明等の照明装置、時計や液晶用バックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体等の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではない。特に、液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
有機EL素子においては、必要に応じ成膜時にメタルマスクやインクジェットプリンティング法等でパターニングを施してもよい。パターニングする場合は、電極のみをパターニングしてもよく、電極と発光層をパターニングしてもよく、又は素子全層をパターニングしてもよい。素子の作製においては、従来公知の方法を用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
《有機EL素子101の作製》
[第1ガスバリアー層の形成]
両面ハードコート付きPETフィルム(全厚さ:136μm)を基板として用いた。
まず、パーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NN120−20)と、アミン触媒(N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン(TMDAH))を含むパーヒドロポリシラザン20質量%のジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NAX120−20)とを、4:1(質量比)の割合で混合し、さらに、乾燥膜厚調整のため、ジブチルエーテルで適宜希釈し、各塗布液を調製した。
スピンコートにより塗布液を乾燥膜厚250nmになるよう塗布し、80℃で2分間乾燥した。次いで、乾燥した塗膜に対して、真空紫外線照射処理(波長172nmのXeエキシマランプ、3.0J/cm)で改質処理をし、第1ガスバリアー層を基板の片面に設けた。
[第2ガスバリアー層の形成]
第1ガスバリアー層を設けた基板をRFスパッタ装置のチャンバーへ移動し、表1に示した各種材料及び成膜条件を用いて第2ガスバリアー層を設けた。第2ガスバリアー層に含有される金属酸化物の酸素の組成係数をXPS分析による元素解析を用いて求めた。層厚は断層TEM解析により求めた。
Figure 2016170879
[第3ガスバリアー層の形成]
以下の方法にて、基板の第1ガスバリアー層を設けた反対側の面に第3ガスバリアー層を設けた。層厚は断層TEMで求めた。
スパッタ装置の真空槽内に基板をセットし、10−4Pa台まで真空脱気し、真空槽内温度を150℃にした後、放電ガスとしてアルゴンを分圧で0.1Pa導入し、反応ガスとして酸素を分圧で0.008Pa導入した。雰囲気圧力、温度が安定したところでスパッタ電力2W/cmにて放電を開始し、Siターゲット上にプラズマを発生させ、スパッタリングプロセスを開始した。プロセスが安定したところでシャッターを開き、第3ガスバリアー層の形成を開始した。110nmの膜が堆積したところでシャッターを閉じて成膜を終了した。
[第1電極の形成]
第3ガスバリアー層までを形成した基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、以下に示す窒素含有化合物をタングステン製の抵抗加熱ボートに入れ、これら基板ホルダーと加熱ボートとを真空蒸着装置の第1真空槽内に取り付けた。
Figure 2016170879
また、タングステン製の抵抗加熱ボートに銀(Ag)を入れ、真空蒸着装置の第2真空槽内に取り付けた。
次に、第1真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、窒素含有化合物の入った加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒で窒素含有層を厚さ10nmで設けた。
次に、窒素含有層を形成した基板を、真空蒸着装置の第2真空槽に搬送し、第2真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、銀(Ag)の入った加熱ボートを通電して加熱した。これにより、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒で厚さ8nmの銀(Ag)からなる第1電極を形成した。
[発光ユニット層の形成]
次に、第1電極まで形成した基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。そして、真空度1×10−4Paまで減圧した後、基板を移動させながら化合物HT−1を、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、20nmの正孔輸送層(HTL)を設けた。
次に、化合物A−3(青色発光ドーパント)、化合物A−1(緑色発光ドーパント)、化合物A−2(赤色発光ドーパント)及び化合物H−1(ホスト化合物)を、化合物A−3が層厚に対し、線形に35質量%から5質量%になるように場所により蒸着速度を変化させ、化合物A−1と化合物A−2は層厚に依存することなく、各々0.2質量%の濃度になるように、蒸着速度0.0002nm/秒で、化合物H−1は64.6〜94.6質量%の範囲になるように場所により蒸着速度を変化させて、厚さ70nmになるよう共蒸着し発光層を形成した。
その後、化合物ET−1を膜厚30nmに蒸着して電子輸送層を形成し、さらに、フッ化カリウム(KF)を厚さ2nmで形成した。
Figure 2016170879
[第2電極の形成]
さらに、アルミニウム100nmを第1電極と同様の手順で蒸着して第2電極を形成した。
[封止層の形成]
次に、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂によりラミネートされたアルミニウム箔(厚さ100μm)を封止部材として使用し、この封止部材のアルミニウム側に封止層として熱硬化型の液状接着剤(エポキシ系樹脂)を、厚さ20μmで塗布した。その後、貼合した封止部材を用いて、第2電極までを作製した基板上に重ね合わせた。
このとき、第1電極及び第2電極の引き出し電極の端部が外に出るように、封止部材の接着剤形成面と、素子の有機機能層面とを連続的に重ね合わせた。
次に、試料を減圧装置内に配置し、90℃で0.1MPaの減圧条件下で、重ね合わせた基板と封止部材とに押圧をかけて5分間保持した。
続いて、試料を大気圧環境に戻し、さらに110℃で30分間加熱して接着剤を硬化させた。
上記封止工程は、大気圧下、含水率1ppm以下の窒素雰囲気下で、JIS B 9920−2002に準拠し、測定した清浄度がクラス100で、露点温度が−80℃以下、酸素濃度0.8ppm以下の大気圧で行った。
なお、第1電極及び第2電極からの引き出し配線等の形成に関する記載は省略している。
《有機EL素子102〜112及び115の作製》
有機EL素子102〜112及び115の作製は、第2ガスバリアー層に含有される金属酸化物が表2に示されたものを使用し、組成が表1に示したものである点を除いて、有機EL素子101と同様にして作製した。
《有機EL素子113の作製》
有機EL素子113の作製は、第3ガスバリアー層の層厚を60nmとして点を除いて有機EL素子112と同様に作製した。
《有機EL素子114の作製》
有機EL素子114の作製は、第3ガスバリアー層の層厚を160nmとして点を除いて有機EL素子112と同様に作製した。
《有機EL素子116の作製》
有機EL素子116の作製は、第3ガスバリアー層を第1ガスバリアー層と同様にして作製した点を除いて有機EL素子112と同様に作製した。
《有機EL素子117の作製》
有機EL素子117の作製は、有機EL素子116で作製した第1ガスバリアー層を2層分設けた点を除いて有機EL素子116と同様に作製した。
《有機EL素子118の作製》
有機EL素子118の作製は、有機EL素子112で作製した第1ガスバリアー層と基板との間にさらに第4ガスバリアー層を設けた点を除いて有機EL素子112と同様に作製した。第4ガスバリアー層の作製手順を以下に示した。
[第4ガスバリアー層の形成]
第4ガスバリアー層は、特許第4268195号公報に記載の、対向する成膜ローラーからなる成膜部を有する装置を2台つなげたタイプ(第1成膜部、第2成膜部を有する。)のロールtoロールCVD成膜装置を用いて成膜した。
成膜は、搬送速度7m/min、原料ガス(HMDSO)の供給量150sccm、酸素ガスの供給量500sccm、真空度1.5Pa、印加電力4.5kW、電源の周波数90kHzの条件で、プロセスを3回繰り返すことで第4ガスバリアー層とした。層厚は断層TEMで求めた。
《有機EL素子119の作製》
有機EL素子119の作製は、有機EL素子101と同様にして、第2ガスバリアー層及び第3ガスバリアー層を設けていない点を除いて有機EL素子101と同様に作製した。
《有機EL素子120の作製》
有機EL素子120の作製は、第2ガスバリアー層を設けていない点を除いて有機EL素子101と同様に作製した。
《有機EL素子121の作製》
有機EL素子121の作製は、第3ガスバリアー層に代えて、以下の硬化性樹脂を設けている点を除いて有機EL素子119と同様に作製した。
硬化性樹脂層は、第1ガスバリアー層上に2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート/エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート=60/30/10の配合比率の混合物からなる塗布液を塗布し電子線を照射して硬化させることで設けた。硬化後の層厚は500nmになるよう調整した。
《有機EL素子122の作製》
有機EL素子122の作製は、第3ガスバリアー層を設けていない点を除いて有機EL素子112と同様に作製した。
《有機EL素子123の作製》
有機EL素子123の作製は、第3ガスバリアー層を設けていない点を除いて有機EL素子102と同様に作製した。
Figure 2016170879
なお、表2中、有機EL素子101で行った第1ガスバリアー層の形成手順をa1として、a1の手順を2回行った場合をa2とした。
また、有機EL素子101で行った第3ガスバリアー層の形成手順をc1として、層厚を60nmに変更した場合をc2、160nmに変更した場合をc3とした。さらに、第1ガスバリアー層の形成手順であるa1を用いて第3ガスバリアー層を形成した場合をc4とした。
≪評価方法≫
[湿熱耐性評価]
作製した有機EL素子を平坦な状態に保持しながら、85℃・85%RHの条件下で100時間保持した。その後、常温環境下で定電圧電源を用いて点灯し、初期の発光面積に対する残存発光面積の割合(%)を求め、以下のとおりに分類した。
1:99.99%以上
2:99.9以上、99.99%未満
3:99%以上、99.9%未満
4:99%未満
発光外観上問題のない1及び2の評価となる有機EL素子を合格とした。
[ダークスポット数の評価]
作製した有機EL素子を平坦な状態に保持しながら、85℃・85%RHの条件下で100時間保持した。その後、当該有機EL素子について、定電圧電源を用いて点灯して発光面積1cmあたりにおける半径が300μm以上のダークスポット(DS)数の密度(個/cm)を評価した。
[発光効率の評価]
作製した有機EL素子について、外部量子効率(EQE)を評価した。各素子を発光させた際の輝度及び発光スペクトルを、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ社製)を用いて測定し、これらの測定値に基づいて輝度換算法により算出した。
ここでは、有機EL素子119のEQE値を100%とした相対値として示した。
上記の方法を用いて作製した有機EL素子を評価し、行った評価の結果を表3に示した。
Figure 2016170879
≪評価結果≫
表3の結果に示されるように、本発明の有機EL素子は、比較例の有機EL素子に比べて、高温高湿条件下においても水蒸気に対する高いガスバリアー性を維持する湿熱耐性を有し、85℃・85%RHの環境で長時間保管した際にも微小なダークスポットが発生しない有機EL素子であることが認められる。加えて、発光効率の点で良好であることが認められる。
10 有機EL素子
11 基板
12 第1ガスバリアー層
13 第2ガスバリアー層
14 第3ガスバリアー層
15 第1電極
16 発光ユニット層
17 第2電極
19 第4ガスバリアー層
21 封止層
22 封止部材

Claims (4)

  1. 基板上に、少なくとも第1ガスバリアー層、第1電極、発光ユニット層及び第2電極がこの順に積層された層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    前記発光ユニット層と前記第1ガスバリアー層との間に第2ガスバリアー層を有し、
    前記第2ガスバリアー層が、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、マグネシウム(Mg)、イットリウム(Y)及びアルミニウム(Al)から選ばれる金属元素を含む金属酸化物を含有し、かつ
    前記基板の前記第2ガスバリアー層を設ける面の反対の面に第3ガスバリアー層を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 前記金属酸化物に含まれる酸素元素の組成係数が、化学量論値よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記金属酸化物が、ニオブ(Nb)を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記基板と前記第1ガスバリアー層との間に、炭素(C)、窒素(N)及び酸素(O)から選ばれる元素を含むケイ素化合物を含有する第4ガスバリアー層を有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
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