JP7363576B2 - ジイミンホウ素錯体誘導体、発光性組成物、発光性薄膜、発光性粒子及び有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

ジイミンホウ素錯体誘導体、発光性組成物、発光性薄膜、発光性粒子及び有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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特許法第30条第2項適用 1.▲1▼ ウェブサイトの掲載日 令和1年3月1日(1件公開) ▲2▼ ウェブサイトのアドレス http://www.csj.jp/nenkai/99haru/index.html 2.▲1▼ ウェブサイトの掲載日 令和1年5月14日(1件公開) ▲2▼ ウェブサイトのアドレス https://main.spsj.or.jp/nenkai/68nenkai/nenkai.html
本発明は、ジイミンホウ素錯体誘導体、発光性組成物、発光性薄膜、発光性粒子及び有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
特に、新たに凝集誘起発光(AIE)機能を発揮する分子構造を有し、デバイスにした際にAIE機能を最大限に発揮し、濃度消光を抑制して発光量子効率が向上するジイミンホウ素錯体誘導体等に関する。
近年、機能性薄膜又は機能性粒子に関する関心は高く、特に発光性を有す薄膜や粒子では光電変換等のエネルギー変換型の有機エレクトロニクスデバイスへの応用やフォトルミネッセンスや波長変換などの光光変換を利用したセンシング等への応用が期待されている。例えば、発光性薄膜の例としては、非特許文献1に開示されている発光性薄膜が挙げられる。また、発光性粒子の例としては、非特許文献2に開示されている発光性粒子が挙げられる。
これまで、エネルギーの有効利用の観点から、発光効率の向上について数多くの検討がなされてきた。
その一つとして、固体(凝集)状態にある機能性薄膜や粒子について、凝集状態で発光強度が低下する現象である凝集起因消光(Aggregation-Caused Quenching;ACQ)という現象に対し、溶液状態よりも凝集状態の方が強い発光を示す現象である凝集誘起発光(Aggregation induced emission;AIE)の機能を有する分子の適用が検討されつつある(例えば非特許文献3参照。)。
現在、AIE現象を示す分子構造として、シロール構造やテトラフェニルエチレン構造を分子内に有することが機能発現に重要であることがわかっており(例えば、下記シロール誘導体((MesB)HPS)、テトラフェニルエチレン誘導体(2TPATPE)参照。)、新たな機能発現に関わる分子構造の創生が待たれている。
Figure 0007363576000001
また、これまでのAIE機能を有するシロール構造やテトラフェニルエチレン構造等の非極性又は電荷の偏りの小さな分子では、例えばマトリックスとなるポリスチレン等のポリマー材料や、発光ホスト材料等との相互作用が強く働くため、固体薄膜状態においてその構造を維持することができない。その結果、デバイスにした際にAIE機能を発揮できず、濃度消光により発光量子効率が低下するという問題があった。
Appl.Phys.Lettt.,1999,75,4. Nature vol.515,96(2014) J.Mater.Chem.,2012,22,11018
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、新たにAIE機能を発揮する分子構造を有し、デバイスにした際にAIE機能を最大限に発揮し、濃度消光を抑制して発光量子効率が向上するジイミンホウ素錯体誘導体を提供することである。また、当該ジイミンホウ素錯体誘導体を含有する発光性組成物、発光性薄膜、発光性粒子及び有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、特定の構造を有するジイミンホウ素錯体誘導体が、AIE現象を示すことを明らかにした。さらに、下記経緯を経て本発明に至った。
すなわち、ジイミンホウ素錯体誘導体を含む機能性薄膜や粒子、さらにはそのデバイス検討を進める中で、分子間の相互作用や周辺環境へのエネルギー移動等に対し鋭意検討を行った結果、固体薄膜及び粒子中でAIE機能を持続したまま、デバイス機能発現が可能であることを見いだした。
ここで、AIE現象は、固体薄膜や粒子での高密度パッキング又は分子間距離が極度に近づくことに伴う濃度消光抑制に対し非常に有効な機能ではあるが、実際のデバイス性能は発光性材料の発光特性のみによって決定されるのではなく、光電(光光)変換の効率や光取出し等、デバイス内で発光特性を維持する試みによって達成されてきた。
このことは、発光特性を表す数値、PLQY(量子収率)はデバイスの発光特性を示すEQE(外部取り出し量子効率)に比例し、かつPLQYを目標としてEQEの向上のための様々な発明がなされてきたことからも明らかである。
本発明では、新たなAIE現象を示すジイミンホウ素錯体誘導体の特定構造に着目することにより、これまでのAIE機能を有するシロール構造やテトラフェニルエチレン構造等の非極性又は電荷の偏りの小さな分子では、生じ難かった周辺環境、特にマトリックスとなるポリスチレン等のポリマー材料又はホスト材料との相互作用を利用することが可能であることを見いだし、デバイス中においてもAIE機能を最大限に発揮可能なデバイス創生に成功し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される
記一般式(2)で表されることを特徴とするジイミンホウ素錯体誘導体。
Figure 0007363576000002
[一般式(2)中、R 及びは、それぞれ独立に、メチル基で置換されていてもよいフェニル基、ジベンゾフリル基、ベンジル基又はフェノキシ基を表す 及びR は、それぞれ独立に、メチル基で置換されたフェニル基、又はフッ素原子を表す。Arは、メチル基で置換されたフェニル基を表す。]
BN-11、BN-19、BN-20、BN-21、BN-24又はBN-25で表されることを特徴とする第1項に記載のジイミンホウ素錯体誘導体。
Figure 0007363576000003
3.BN-3で表されることを特徴とするジイミンホウ素錯体誘導体。
Figure 0007363576000004
4.第1項から第3項までのいずれか一項に記載のジイミンホウ素錯体誘導体を含有することを特徴とする発光性組成物。
5.第1項から第3項までのいずれか一項に記載のジイミンホウ素錯体誘導体を含有することを特徴とする発光性薄膜。
6.第1項から第3項までのいずれか一項に記載のジイミンホウ素錯体誘導体を含有することを特徴とする発光性粒子。
7.第1項から第3項までのいずれか一項に記載のジイミンホウ素錯体誘導体を用いたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
本発明の上記手段により、新たにAIE機能を発揮する分子構造を有し、デバイスにした際にAIE機能を最大限に発揮し、濃度消光を抑制して発光量子効率が向上するジイミンホウ素錯体誘導体を提供することができる。また、当該ジイミンホウ素錯体誘導体を含有する発光性組成物、発光性薄膜、発光性粒子及び有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明のジイミンホウ素錯体誘導体は、一般式(1)で表される構造を有していることから、固体状態(凝集状態)では、錯体の構造が固定されるため、分子運動(並進・振動・回転)による無放射失活が抑制されると考えられる。さらに、窒素原子上の置換基によりホウ素錯体部位におけるスタッキングが阻害されると考えられる。したがって、当該ジイミンホウ素錯体誘導体の周囲に存在する媒体(化合物)の影響が減少し、発光特性が維持されると考えられる。
すなわち、当該ジイミンホウ素錯体誘導体は、励起子や濃度消光の抑制効果が大きく、非常に高い発光機能を発現できるものと推察される。
本発明の有機EL素子の構成を示す模式図
本発明のジイミンホウ素錯体誘導体は、前記一般式()で表されることを特徴とする。
この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、前記一般式(2)で表されることが、分子運動や周囲の化合物の影響を抑制できる点で好ましい
[本発明のジイミンホウ素錯体誘導体の概要]
以下、本発明のジイミンホウ素錯体誘導体及びその参考例について説明する。
本発明のジイミンホウ素錯体誘導体は、下記一般式(2)中、R 及びR は、それぞれ独立に、メチル基で置換されていてもよいフェニル基、ジベンゾフリル基、ベンジル基又はフェノキシ基を表す。R 及びR は、それぞれ独立に、メチル基で置換されたフェニル基、又はフッ素原子を表す。Ar は、メチル基で置換されたフェニル基を表す。
本発明のジイミンホウ素錯体誘導体は、下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする。
Figure 0007363576000005
[一般式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、R~Rは、それぞれ異なっていてもよいし、同一であってもよい。Ar及びArは、それぞれ独立に水素原子、置換若しくは無置換の、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。Arは、置換若しくは無置換の、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。]
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
[本発明のジイミンホウ素錯体誘導体の概要]
本発明のジイミンホウ素錯体誘導体は、下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする。
Figure 0007363576000006
[一般式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、R~Rは、それぞれ異なっていてもよいし、同一であってもよい。Ar及びArは、それぞれ独立に水素原子、置換若しくは無置換の、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。Arは、置換若しくは無置換の、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。]
前記一般式(1)中、Ar~Arで表される芳香族炭化水素環基(芳香族炭化水素基又はアリール基ともいう。)としては、例えば、フェニル基、p-クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基など)などを挙げることができる。
また、Ar~Arで表される芳香族複素環基としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する任意の炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、フタラジニル基など、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基など)、ジベンゾフラニル基、アクリジニル基等を挙げることができる。
前記Ar~Arで表される芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基のうち、好ましくは、トリル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、アクリジニル基である。
前記一般式(1)中、R~Rで表される置換基、また、Ar~Arで表される芳香族炭化水素環基又は芳香族炭化水素環基が有する置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基など)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基など)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基など)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基など)などを挙げることができる。
また、前記した芳香族炭化水素基(芳香族炭素環基、アリール基などともいい、例えば、フェニル基、p-クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基など)や、前記した芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する任意の炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、フタラジニル基など)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基など)を挙げることができる。
また、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2-ピリジルアミノスルホニル基など)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2-エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基など)を挙げることができる。
また、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2-エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基など)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2-エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2-ピリジルアミノカルボニル基など)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2-ピリジルアミノウレイド基など)を挙げることができ
る。
さらに、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2-エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2-ピリジルスルフィニル基など)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2-エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基など)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2-ピリジルスルホニル基など)を挙げることができる。
また、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基など)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基など)、リン酸エステル基(例えば、ジヘキシルホスホリル基など)、亜リン酸エステル基(例えば、ジフェニルホスフィニル基など)、ホスホノ基などが挙げられる。
また、これらの置換基は、上記の置換基によってさらに置換されていてもよい。さらに、これらの置換基同士が結合して環を形成してもよい。隣接する置換基同士が形成する環状構造は、芳香環であっても脂肪環であってもよく、またヘテロ原子を含むものであってもよく、さらに環状構造は2環以上の縮合環であってもよい。
前記R~Rで表される前記置換基のうち好ましくは、フェニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、アクリジニル基ベンジル基、フッ素原子、シアノ基である。
前記一般式(1)で表される構造が、下記一般式(2)で表されることが、分子運動や周囲の化合物の影響を抑制できる点で好ましい。
Figure 0007363576000007
[一般式(2)中、R~Rは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、R~Rは、それぞれ異なっていてもよいし、同一であってもよい。Arは、置換若しくは無置換の、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。]
前記一般式(2)中、R~R及びArは、前記一般式(1)におけるR~R及びArと同義である。
前記一般式(2)で表される構造として、下記一般式(2)-1又は(2)-2で表されることが好ましい。
Figure 0007363576000008
前記一般式(2)-1及び(2)-2中、R~Rは、前記一般式(2)におけるR~Rと同義である。また、Rは、R~Rと同じ置換基である。さらに、一般式(2)-1及び(2)-2中、点線は結合を作って5員又は6員の芳香環もしくは複素芳香環を形成する。
前記一般式(2)-1で表される構造は、さらに下記一般式(2)-11で表されることが好ましい。また、前記一般式(2)-2で表される構造は、さらに下記一般式(2)-21で表されることが好ましい。
Figure 0007363576000009
前記一般式(2)-11及び(2)-21中、R~Rは、前記一般式(2)におけるR~Rと同義である。また、Rは、R~Rと同じ置換基である。
前記一般式(1)で表される構造が、下記一般式(3)で表されることが、分子運動や周囲の化合物の影響を抑制できる点で好ましい。
Figure 0007363576000010
[一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、R及びRは、それぞれ異なっていてもよいし、同一であってもよい。Arは、置換若しくは無置換の、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。]
前記一般式(3)中、R、R及びArは、前記一般式(1)におけるR、R及びArと同義である。
前記一般式(3)で表される構造として、下記一般式(3)-1又は(3)-2で表されることが好ましい。
Figure 0007363576000011
前記一般式(3)-1及び(3)-2中、R及びRは、前記一般式(3)におけるR及びRとそれぞれ同義である。また、Rは、R又はRと同じ置換基である。さらに、一般式(3)-1及び(3)-2中、点線は結合を作って5員又は6員の芳香環もしくは複素芳香環を形成する。
前記一般式(3)-1で表される構造は、さらに下記一般式(3)-11で表されることが好ましい。また、前記一般式(3)-2で表される構造は、さらに下記一般式(3)-21で表されることが好ましい。
Figure 0007363576000012
前記一般式(3)-11及び(3)-21中、R及びRは、前記一般式(3)におけるR及びRとそれぞれ同義である。また、Rは、R又はRと同じ置換基である。
以下、本発明又は参考例である一般式(1)~(3)で表される構造を有するジイミンホウ素錯体誘導体の例示化合物を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 0007363576000013
Figure 0007363576000014
Figure 0007363576000015
<ジイミンホウ素錯体誘導体の合成)
本発明のジイミンホウ素錯体誘導体は公知の方法、例えば、Eur. J. Inorg. Chem.誌 2008年, 3200頁、J. Am. Chem. Soc.誌 2014年, 136巻, 18131頁やChem. Eur. J.誌 2014年, 20巻, 8320等を参照して合成することができる。例として上記文献の既知化合物から、例示化合物BN-19の合成スキームを以下に示す。他の例示化合物も同様にして合成することができる。
(例示化合物BN-19の合成)
Figure 0007363576000016
[発光量子収率]
発光量子収率は、吸収された光子数と放出された光子数の割合で表される。励起された分子の全てが蛍光によって基底状態に戻れば、発光量子収率は1となるが、実際は無輻射失活によって1とはならない。
無輻射失活とは、蛍光を発しないで基底状態に戻る遷移で、項間交差による三重項状態への緩和の他、電子状態のエネルギーが振動エネルギーなどに転化して最終的に熱エネルギーになる内部転換や、他の分子にエネルギーを移すエネルギー移動などがある。
励起状態にある分子の蛍光遷移と無輻射遷移の速度定数をそれぞれKfとKnrとおくと、発光量子収率Φ(%)は、
Φ(%)=(Kf/(Kf+Knr))×100
で表される。
したがって、発光量子収率を向上させるためには、励起状態にある分子の無輻射失活を抑えることが必要である。
本発明においては、無輻射失活を抑えるために、本発明のジイミンホウ素錯体誘導体が立体障害を有する置換基を有する。この置換基により分子のπ平面のスタッキングが抑制されて、分子間の凝集が抑えることができる。その結果、凝集に起因する消光が小さくなり、発光性が向上すると推察される。
<発光量子収率の測定>
本発明のジイミンホウ素錯体誘導体は、希薄溶液のみならず、高濃度溶液又は膜状態でも、濃度消光が抑制され、高い発光量子収率を示すことができる。
(溶液状態の発光量子収率の測定)
溶液状態の発光量子収率の測定は、ジイミンホウ素錯体誘導体を2-メチルテトラヒドロフランに溶解し、例えば蛍光量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製C11347-01)を用い絶対蛍光量子収率を測定し、これを発光量子収率として測定することができる。
(膜状態の発光量子収率の測定)
本発明のジイミンホウ素錯体誘導体をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥したのち、UVオゾン洗浄処理した石英基板(1cm角)をホットプレート上で150℃に加熱しながら各化合物のクロロベンゼン溶液を滴下し、その後150℃で30分焼成して単膜を作製する。蛍光量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製C11347-01)を用い窒素雰囲気下でこの単膜の絶対蛍光量子収率を測定し、これを発光量子収率として測定することができる。
[用途]
本発明のジイミンホウ素錯体誘導体は、希薄溶液のみならず、高濃度溶液又は膜状態でも、濃度消光が抑制され、高い発光量子収率を示すことができる。このような性質を有することから、本発明のジイミンホウ素錯体誘導体は、発光性組成物、発光性薄膜、発光性粒子として用いることができる。例えば、高効率の発光性材料として有機エレクトロルミネッセンス素子等の有機電子デバイスへ応用することができる。また、新たなタイプの蛍光プローブ用色素として生物学及び医学におけるマーカーとして、バイオイメージに利用することができる。また、励起した電子が、基底状態へ戻る際に余分なエネルギーとして蛍光を放射する本発明のジイミンホウ素錯体誘導体は、吸収と放出のエネルギーの違いから波長変換能を有しており、色変換フィルターとして、染料、顔料、光学フィルター、農業用フィルム等に用いることもできる。
[発光性組成物及び発光性薄膜]
本発明の発光性組成物は、本発明のジイミンホウ素錯体誘導体を含有することを特徴とする。本発明の発光性組成物は、ジイミンホウ素錯体誘導体に、製膜安定性等のために分散剤を加えた組成物、又はこれにさらに溶媒を加えた組成物として用いられることが好ましい。さらに、本発明の発光性薄膜は、本発明のジイミンホウ素錯体誘導体を含有することを特徴とする。具体的には本発明の発光性組成物を薄膜状に形成することにより作製することができる。
分散剤としては、(メタ)アクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリジイミンホウ素錯体系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ系樹脂、フッ素系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アラミド樹脂等が挙げられるが、好ましくはポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等である。また、これらの共重合体も同様に好ましい。
(メタ)アクリレート系樹脂とは、種々のメタクリレート系モノマー、又はアクリレート系モノマーを単独重合、又は共重合することにより合成され、モノマー種及びモノマー組成比を種々変えることによって、望みの(メタ)アクリレート系樹脂を得ることができる。また本発明においては、(メタ)アクリレート系モノマーと一緒に(メタ)アクリレート系モノマー以外の不飽和二重結合を有する共重合可能なモノマーとともに共重合しても使用可能であり、さらに本発明においては、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂と一緒に他の複数の樹脂を混合しても使用可能である。
本発明において用いられる(メタ)アクリレート系樹脂を形成するモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)エチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、塩化エチルトリメチルアンモニウム(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2-アセトアミドメチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-トリメトキシシランプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、2-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、好ましくは(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートである。
ポリスチレン系樹脂とは、スチレンモノマーの単独重合物、又はスチレンモノマーと共重合可能な他の不飽和二重結合を有するモノマーを共重合したランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が挙げられる。さらに、かかるポリマーに他のポリマーを配合したブレンド物やポリマーアロイも含まれる。前記スチレンモノマーの例としては、スチレン、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン、α-メチルスチレン-p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、等の核アルキル置換スチレン、o-クロルスチレン、m-クロルスチレン、p-クロルスチレン、p-ブロモスチレン、ジクロルスチレン、ジブロモスチレン、トリクロルスチレン、トリブロモスチレン等の核ハロゲン化スチレン等が挙げられるが、この中でスチレン、α-メチルスチレンが好ましい。
これらを単独重合又は共重合することによって本発明で用いられる樹脂は、例えば、ベンジルメタクリレート/エチルアクリレート、又はブチルアクリレート等の共重合体樹脂、またメチルメタクリレート/2-エチルヘキシルメタクリレート等の共重合体樹脂、またメチルメタクリレート/メタクリル酸/ステアリルメタクリレート/アセトアセトキシエチルメタクリレートの共重合体樹脂、またスチレン/アセトアセトキシエチルメタクリレート/ステアリルメタクリレートの共重合体樹脂、また、スチレン/2-ヒドロキシエチルメタクリレート/ステアリルメタクリレートの共重合体、さらには、2-エチルヘキシルメタクリレート/2-ヒドロキシエチルメタクリレート等の共重合体樹脂等が例として挙げられる。
本発明の発光性組成物及び発光性薄膜におけるジイミンホウ素錯体誘導体の含有量は、上記分散剤100質量部に対する好ましい下限が0.001質量部、好ましい上限が50質量部である。上記発光性材料の含有量がこの範囲内であると、高い透明性を有し、かつ、光線が照射されることにより高い輝度の画像を表示することができる。上記発光性材料の含有量のより好ましい下限は0.01質量部、より好ましい上限は10質量部、さらに好ましい下限は0.05質量部、さらに好ましい上限は8質量部、特に好ましい下限は0.1質量部、特に好ましい上限は5質量部である。
また、本発明の発光性薄膜は、厚さ、0.1nm~1mmの範囲内で適宜用いることができる。
[発光性粒子]
本発明の発光性粒子は、本発明のジイミンホウ素錯体誘導体を含有することを特徴とする。ジイミンホウ素錯体誘導体を粒子表面に吸着させた発光性粒子であっても、ジイミンホウ素錯体誘導体を内包した発光性粒子であってもよい。
例えば、液体中ポリマー粒子分散液中にジイミンホウ素錯体誘導体を凝集させて発光性粒子を作製することができる。また、ポリマー粒子を溶媒に浸漬させた際に、該粒子が溶媒を吸収して体積が膨張する膨潤性ポリマーを用いて、ジイミンホウ素錯体誘導体を内包した発光性粒子であってもよい。
ポリマー粒子は、市販品を用いてもよく、従来公知の方法で合成したものを用いてもよい。前記従来公知の方法としては、特に制限されないが、分散重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が挙げられ、乳化重合法が好ましい。ポリマーの原料となるモノマーは、前記分散剤として挙げた各種モノマーを使用することができる。
また、液体中ポリマー分散液中にジイミンホウ素錯体誘導体を凝集させる場合の溶媒は特に制限されない。公知の溶媒が使用できる。
前記ポリマー粒子の体積平均粒子径は、0.01~50μmの範囲内であることが好ましく、0.02~40μmであることがより好ましく、0.04~20μmであることがさらに好ましい。
体積平均粒子径が前記範囲にあることで、得られる発光性粒子を様々な用途に適用できる。前記体積平均粒子径は、具体的には、レーザー回折散乱光粒度分布測定装置、LS13320型にて測定することができる。
前記ポリマー粒子の重量平均分子量は、1,000~1,000,000の範囲内にあることが好ましく、5,000~800,000であることがより好ましく、10,000~600,000であることがさらに好ましい。
本発明の発光性粒子に含まれるポリマー粒子は、1種でもよく、2種以上でもよいが、通常は、1種である。
[有機エレクトロルミネッセンス素子]
本発明のジイミンホウ素錯体誘導体は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、単に「有機EL素子」ともいう。)の蛍光発光材料として好適に用いられる。
本発明の有機EL素子の構成を図によって説明する。図1は、本発明の有機EL素子の好ましい構成例を示す模式図である。
図1において、本発明の有機EL素子10は、基板1上に下部電極である透明な第1電極(例えば、陽極2上に、発光層3、その上に上部電極である光反射性の第2電極である陰極4を配置し、封止用接着層5及び封止部材6が設けられている。その他の層としては、下地層、光散乱層、平坦化層、ガスバリアー層、保護層等を適宜設けることができる。例えば、基材1及び封止部材6がガスバリアー層(不図示)を有することが好ましい。
<基材>
本発明の有機EL素子に適用可能な基材としては、好ましくは光透過性を有する基材であり、用いられる材料として特に制限はなく、例えば、ガラス、プラスチック等の種類を挙げることができる。
本発明に適用可能な光透過性を有する基材としては、ガラス、石英、樹脂基材を挙げることができる。さらに好ましくは、有機EL素子にフレキシブル性を付与することができる観点からフレキシブル性樹脂基材である。
本発明に適用可能な樹脂基材を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)、ポリエチレンナフタレート(略称:PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(略称:TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(略称:CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類及びそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート(略称:PC)、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(略称:PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル及びポリアリレート類、アートン(商品名、JSR社製)及びアペル(商品名、三井化学社製)等のシクロオレフィン系樹脂等を挙げることができる。
これら樹脂基材のうち、コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(略称:PEN)、ポリカーボネート(略称:PC)等のフィルムがフレキシブル性を有する樹脂基材として好ましく用いられる。
また、上記の樹脂基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
本発明に適用可能な樹脂基材は、従来公知の一般的な製膜方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押出機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の樹脂基材を製造することができる。また、未延伸の樹脂基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等の公知の方法により、樹脂基材の搬送方向(縦軸方向、MD方向)、又は樹脂基材の搬送方向と直角の方向(横軸方向、TD方向)に延伸することにより、延伸樹脂基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、樹脂基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2~10倍の範囲内であることが好ましい。
樹脂基材の厚さとしては、3~200μmの範囲内にある薄膜の樹脂基材であることが好ましいが、より好ましくは10~100μmの範囲内であり、さらに好ましくは、20~80μmの範囲内であり、特に好ましくは20~50μmの範囲内であり、薄膜にすることで光遮蔽部を大きくすることなく、効果的に光遮蔽できる。後述する実施形態では、厚さ50μmのPETフィルムを基材として用いた。
また、本発明に用いられる光透過性を有する基材として適用可能なガラス基材としては、ソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。
<ガスバリアー層>
本発明の有機EL素子においては、上記説明した基材上に、必要に応じて、ガスバリアー層を設ける構成であってもよい。特に、前記基材が樹脂フィルムである場合は、ガスバリアー層を設けることが好ましい。
ガスバリアー層を形成した基材としては、JIS K 7129-1992に準拠した方法で測定された温度25±0.5℃、相対湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度が、1×10-3g/m・24h以下であることが好ましく、さらには、JIS K 7126-1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10-3mL/m・24h・atm(1atmは、1.01325×10Paである)以下であって、温度25±0.5℃、相対湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度が、1×10-3g/m・24h以下であることが好ましい。
ガスバリアー層を形成する材料としては、水分や酸素など、有機EL素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素などの無機物を用いることができる。さらに、ガスバリアー層の脆弱性を改良するため、これら無機層と有機材料からなる有機層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
ガスバリアー層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法及びコーティング法などの薄膜形成方法を用いることができるが、特開2004-68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものも好ましい。また、ポリシラザン含有液を湿式塗布方式により塗布して塗膜を形成した後に乾燥し、形成された塗膜に波長200nm以下の真空紫外光(VUV光)を照射することにより、形成した塗布膜に改質処理を施して、ガスバリアー層を形成する方法も好ましい。
ガスバリアー層の厚さは、1~500nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10~300nmの範囲内である。ガスバリアー層の厚さが1nm以上であれば、所望のガスバリアー性能を発揮することができ、500nm以下であれば、緻密な酸窒化ケイ素膜でのクラックの発生等の膜質劣化を防止することができる。
<第1電極:陽極>
有機EL素子を構成する陽極は、発光層に正孔を供給するために機能する電極であり、光反射性又は光透過性を有する電極であり、光透過性を有することが一般的である。用いられる材料としては、酸化物半導体又は薄膜の金属又は合金で構成されていることが好ましい形態であり、例えば、Ag、Au等の金属又は金属を主成分とする合金、CuI、又はインジウム・スズの複合酸化物(ITO)、SnO及びZnO等の酸化物半導体を挙げることができる。
光透過性を有する陽極の場合、銀を主成分として構成することが好ましく、銀の純度としては、99%以上であることが好ましい。また、銀の安定性を確保するためにパラジウム(Pd)、銅(Cu)及び金(Au)等が添加されていてもよい。
光透過性を有する陽極が銀を主成分として構成されている層の場合は、具体的には、銀単独で形成しても、又は銀(Ag)を含有する合金から構成されていてもよい。そのような合金としては、例えば、銀・マグネシウム(Ag・Mg)、銀・銅(Ag・Cu)、銀・パラジウム(Ag・Pd)、銀・パラジウム・銅(Ag・Pd・Cu)、銀・インジウム(Ag・In)などが挙げられる。
上記陽極を構成する各構成材料の中でも、本発明の有機EL素子を構成する陽極としては、銀を主成分として構成し、厚さが2~20nmの範囲内にある光透過性を有する陽極であることが好ましいが、さらに好ましくは厚さが4~12nmの範囲内である。厚さが20nm以下であれば、光透過性を有する陽極の吸収成分及び反射成分が低く抑えられ、高い光透過率が維持されるため好ましい。
本発明でいう銀を主成分として構成されている層とは、光透過性を有する陽極中の銀の含有量が60質量%以上であることをいい、好ましくは銀の含有量が80質量%以上であり、より好ましくは銀の含有量が90質量%以上であり、特に好ましくは銀の含有量が98質量%以上である。また、前記「光透過性」とは、波長550nmでの光透過率が50%以上であることをいう。
光透過性を有する陽極においては、銀を主成分として構成されている層が、必要に応じて複数の層に分けて積層された構成であっても良い。
また、本発明において、陽極が、銀を主成分として構成する光透過性を有する陽極である場合には、形成する光透過性を有する陽極の銀膜の均一性を高める観点から、その下部に、下地層を設けることが好ましい。下地層としては、特に制限はないが、窒素原子又は硫黄原子を有する有機化合物を含有する層であることが好ましく、当該下地層上に、光透過性を有する陽極を形成する方法が好ましい態様である。
なお、下地層を構成するのに用いることができる窒素原子含有化合物としては、分子内に窒素原子を含んでいる化合物であれば、特に限定はないが、窒素原子をヘテロ原子とした複素環を有する化合物が好ましい。窒素原子をヘテロ原子とした複素環としては、アジリジン、アジリン、アゼチジン、アゼト、アゾリジン、アゾール、アジナン、ピリジン、アゼパン、アゼピン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾリン、ピラジン、モルホリン、チアジン、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、カルバゾール、ベンゾ-C-シンノリン、ポルフィリン、クロリン及びコリン等が挙げられる。
さらには、下地層が含有する窒素原子含有化合物は、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する芳香族複素環化合物であることが好ましい。
これらの窒素原子含有化合物の具体例としては、特開2015-046364号公報の段落[0097]~同[0221]に記載の例示化合物No.1~No.134を挙げることができる。
<発光層>
本発明に係る発光層は、発光性材料として、本発明のジイミンホウ素錯体誘導体を用いることが好ましい。発光層に本発明のジイミンホウ素錯体誘導体を用いることにより、濃度消光が少ないため、膜状であっても高い発光量子収率を実現することができる。
(発光性材料)
本発明の有機EL素子を構成する発光層は、発光性材料としてリン光発光性化合物、又は蛍光発光性化合物を用いることができるが、本発明においては、特に、蛍光発光性化合物として、前記ジイミンホウ素錯体誘導体が含有されていることが好ましい。また、発光性材料としてリン光発光化合物が含有されている構成、若しくは蛍光発光性化合物の中でも遅延蛍光発光性化合物である熱活性型遅延蛍光発光性化合物(Thermally Activated Delayed Fluorescence:TADF)を用いることが好ましい。
この発光層は、陰極から注入された電子と、陽極から注入された正孔とが再結合して発光する層である。
このような発光層としては、含まれる発光性材料が発光要件を満たしていれば、その構成には特に制限はない。また、同一の発光スペクトルや発光極大波長を有する層が複数層あってもよい。この場合、各発光層間には非発光性の中間層を有していることが好ましい。
発光層の厚さの総和は、1~100nmの範囲内にあることが好ましく、より低い発光開始電圧を得ることができることから1~30nmの範囲内がさらに好ましい。なお、発光層の厚さの総和とは、発光層間に非発光性の中間層が存在する場合には、当該中間層も含む厚さである。
また発光層は、複数の発光性材料を混合してもよく、リン光発光性材料と蛍光発光性材料(蛍光ドーパント、蛍光性化合物ともいう)とを同一発光層中に混合して用いてもよい。発光層の構成としては、ホスト化合物(発光ホスト等ともいう)及び発光性材料(発光ドーパント化合物ともいう。)を含有し、発光性材料より発光させることが好ましい。
本発明で用いることのできる発光性材料としては、リン光発光性化合物(リン光性化合物、リン光発光性材料又はリン光発光ドーパントともいう。)及び蛍光発光性化合物(蛍光性化合物又は蛍光発光性材料ともいう。)が挙げられるが、特に、リン光発光性化合物を用いることが、高い発光効率を得ることができる観点から好ましい。
リン光発光性化合物とは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は、種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明においてリン光発光性化合物を用いる場合、任意の溶媒のいずれかにおいて、上記リン光量子収率として0.01以上が達成されればよい。
リン光発光性化合物は、一般的な有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、好ましくは元素の周期表で8~10族の金属を含有する錯体系化合物であり、さらに好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、白金化合物(白金錯体系化合物)又は希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
本発明においては、少なくとも一つの発光層が、2種以上のリン光発光性化合物が含有されていてもよく、発光層におけるリン光発光性化合物の濃度比が発光層の厚さ方向で変化している態様であってもよい。
本発明に使用できる公知のリン光発光性化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられる。
Nature 395,151(1998)、Appl.Phys.Lett.78,
1622(2001)、Adv.Mater.19,739(2007)、Chem.Mater.17,3532(2005)、Adv.Mater.17,1059(2005)、国際公開第2009/100991号、国際公開第2008/101842号、国際公開第2003/040257号、米国特許出願公開第2006/835469号明細書、米国特許出願公開第2006/0202194号明細書、米国特許出願公開第2007/0087321号明細書、米国特許出願公開第2005/0244673号明細書等に記載の化合物を挙げることができる。
また、Inorg.Chem.40,1704(2001)、Chem.Mater.16,2480(2004)、Adv.Mater.16,2003(2004)、Angew.Chem.lnt.Ed.2006,45,7800、Appl.Phys.Lett.86,153505(2005)、Chem.Lett.34,592(2005)、Chem.Commun.2906(2005)、Inorg.Chem.42,1248(2003)、国際公開第2009/050290号、国際公開第2009/000673号、米国特許第7332232号明細書、米国特許出願公開第2009/0039776号、米国特許第6687266号明細書、米国特許出願公開第2006/0008670号明細書、米国特許出願公開第2008/0015355号明細書、米国特許第7396598号明細書、米国特許出願公開第2003/0138657号明細書、米国特許第7090928号明細書等に記載の化合物を挙げることができる。
また、Angew.Chem.lnt.Ed.47,1(2008)、Chem.Mater.18,5119(2006)、Inorg.Chem.46,4308(2007)、Organometallics 23,3745(2004)、Appl.Phys.Lett.74,1361(1999)、国際公開第2006/056418号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2006/082742号、米国特許出願公開第2005/0260441号明細書、米国特許第7534505号明細書、米国特許出願公開第2007/0190359号明細書、米国特許第7338722号明細書、米国特許第7279704号明細書、米国特許出願公開第2006/103874号明細書等に記載の化合物も挙げることができる。
さらには、国際公開第2005/076380号、国際公開第2008/140115号、国際公開第2011/134013号、国際公開第2010/086089号、国際公開第2012/020327号、国際公開第2011/051404号、国際公開第2011/073149号、特開2009-114086号公報、特開2003-81988号公報、特開2002-363552号公報等に記載の化合物も挙げることができる。
本発明においては、好ましいリン光発光性化合物としてはIrを中心金属に有する有機金属錯体が挙げられる。さらに好ましくは、金属-炭素結合、金属-窒素結合、金属-酸素結合、金属-硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含む錯体が好ましい。
上記説明したリン光発光性化合物(リン光発光性金属錯体ともいう)は、例えば、Organic Letter誌、vol3、No.16、2579~2581頁(2001
)、Inorganic Chemistry,第30巻、第8号、1685~1687頁(1991年)、J.Am.Chem.Soc.,123巻、4304頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第40巻、第7号、1704~1711頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第41巻、第12号、3055~3066頁(2002年)、New Journal of Chemistry.,第26巻、1171頁(2002年)、European Journal of
Organic Chemistry,第4巻、695~709頁(2004年)、さらにこれらの文献中に記載されている参考文献等に開示されている方法を適用することにより合成することができる。
蛍光発光性化合物としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素又は希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
また、熱活性型遅延蛍光発光性化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、Adv.Mater.2014,DOI:10.1002/adma.201402532、国際公開第2011/156793号、特開2011-213643号公報、特開2010-93181号公報及び特許第5366106号公報等に記載の化合物等が例示される。
(ホスト化合物)
本発明のジイミンホウ素錯体誘導体を発光性材料として使用する場合、分散剤として公知のホスト化合物を用いることができる。
発光層に含有されるホスト化合物としては、室温(25℃)におけるリン光発光のリン光量子収率が0.1未満の化合物が好ましい。さらにリン光量子収率が0.01未満であることが好ましい。また、発光層に含有される化合物の中で、その層中での体積比が50%以上であることが好ましい。
ホスト化合物としては、公知のホスト化合物を単独で用いてもよく、又は、複数種のホスト化合物を用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機電界発光素子を高効率化することができる。
発光層に用いられるホスト化合物としては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもよい。
本発明に適用可能なホスト化合物としては、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。例えば、特開2001-257076号公報、同2002-308855号公報、同2001-313179号公報、同2002-319491号公報、同2001-357977号公報、同2002-334786号公報、同2002-8860号公報、同2002-334787号公報、同2002-15871号公報、同2002-334788号公報、同2002-43056号公報、同2002-334789号公報、同2002-75645号公報、同2002-338579号公報、同2002-105445号公報、同2002-343568号公報、同2002-141173号公報、同2002-352957号公報、同2002-203683号公報、同2002-363227号公報、同2002-231453号公報、同2003-3165号公報、同2002-234888号公報、同2003-27048号公報、同2002-255934号公報、同2002-260861号公報、同2002-280183号公報、同2002-299060号公報、同2002-302516号公
報、同2002-305083号公報、同2002-305084号公報、同2002-308837号公報、米国特許公開第2003/0175553号明細書、米国特許公開第2006/0280965号明細書、米国特許公開第2005/0112407号明細書、米国特許公開第2009/0017330号明細書、米国特許公開第2009/0030202号明細書、米国特許公開第2005/238919号明細書、国際公開第2001/039234号、国際公開第2009/021126号、国際公開第2008/056746号、国際公開第2004/093207号、国際公開第2005/089025号、国際公開第2007/063796号、国際公開第2007/063754号、国際公開第2004/107822号、国際公開第2005/030900号、国際公開第2006/114966号、国際公開第2009/086028号、国際公開第2009/003898号、国際公開第2012/023947号、特開2008-074939号公報、特開2007-254297号公報、欧州特許第2034538号明細書、国際公開第2011/055933号、国際公開第2012/035853号、特開2015-38941号公報等を挙げることができる。
上記に該当する例として、以下に示す部分構造を有することが好ましい。
(複素芳香環構造)
Figure 0007363576000017
式中、CR~CR及びCR~CR12若しくはCRの少なくとも一つが窒素原子、酸素原子、硫黄原子のいずれかで置換されており、各原子の原子価を満足するように水素原子若しくは置換基で置換されている。隣り合うCR基同士は環を形成してもよい。このような構造を満足する例として、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、ピリジン、キノリン、クマリン、ベンゾフラン、インドール、アクリジン、フェノキサジン、カルバゾール、カルボリン、ジベンゾフラン構造等が挙げられる。
(トリアリールアミン構造)
Figure 0007363576000018
Ar~Arは置換基を有してもよい芳香環、又は複素芳香環を示す。Ar~Arはそれぞれ異なっていてもよい。また同一分子内に、上記一般式(4)及び(5)の構造を有していてもよい
特に、本発明の効果発現の観点から、ホスト化合物として、mCP(1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン)を用いることが好ましい。
また、前記発光層中において、発光性材料として本発明のジイミンホウ素錯体誘導体のドープ濃度を0.1~99体積%の範囲内とすることが好ましく、特に5~50体積%の範囲内とすることが好ましい。
<第2電極:陰極>
本発明に係る陰極は、発光層に電子を供給するために機能する電極であり、光反射性又は光透過性を有する電極である。図1で示す構成の場合は、光反射性を有する電極である。
用いられる材料としては、金属、合金、有機又は無機の導電性化合物又はこれらの混合物として、例えば、金、アルミニウム、銀、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属、ITO、ZnO、TiO及びSnO等の酸化物半導体などが挙げられるが、その中でも、少なくとも薄膜の金属又は合金で構成されていることが好ましい構成である。
光透過性を有する陰極として好適な銀又は銀を主成分とした合金は、上記陽極の説明で記載したのと同様の材料を挙げることができ、具体的には、銀単独で形成しても、又は銀(Ag)を含有する合金から構成されていてもよい。そのような合金としては、例えば、銀・マグネシウム(Ag・Mg)、銀・銅(Ag・Cu)、銀・パラジウム(Ag・Pd)、銀・パラジウム・銅(Ag・Pd・Cu)、銀・インジウム(Ag・In)などが挙げられる。
陰極は、これらの導電性材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させて作製することができるが、インクジェットプリント法によって作製することが好ましい。また、第2電極としてのシート抵抗は、数百Ω/sq.以下が好ましく、膜厚は通常5nm~5μm、好ましくは5~200nmの範囲で選ばれる。
なお、有機EL素子が、陰極側から発光光Lを取り出す場合には、光透過性の良好な陰極を選択して構成すればよい。
<封止部材>
本発明に用いられる封止部材としては、有機EL素子の表示領域(発光領域)を覆うように配置されていればよく、凹板状でも、平板状でもよい。また透明性及び電気絶縁性は特に限定されない。
具体的には、フレキシブル性を備えたガラス基板、樹脂基板、フィルム、金属フィルム(金属箔)等が挙げられる。ガラス基板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、樹脂基板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。
封止用接着層(封止用接着剤)としては、ポリウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系、アクリル系等の接着剤を用いることができる。必要に応じて硬化剤を併用してもよい。ホットメルトラミネーション法やエクストルージョンラミネート法及び共押出しラミネーション法も使用できるがドライラミネート方式が好ましい。
本発明においては、封止部材としては、有機EL素子を薄膜化することできる観点から、樹脂基板及びガラス基板を好ましく使用することができる。さらに、樹脂基板は、JIS K 7129-1992に準拠した方法で測定された温度25±0.5℃、相対湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度が、1×10-3g/m・24h以下であること
が好ましく、さらには、JIS K 7126-1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10-3mL/m・24h・atm(1atmは、1.01325×10Paである)以下であって、温度25±0.5℃、相対湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度が、1×10-3g/m・24h以下であることが好ましい。この条件を満たすため、後述するガスバリアー層を設けることが好ましい形態である。
封止部材と有機EL素子の表示領域(発光領域)との間隙には、気相及び液相では窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコーンオイルのような不活性液体を注入することもできる。また、封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙を真空とすることや、間隙に吸湿性化合物を封入することもできる。
また、有機EL素子における有機機能層ユニットを完全に覆い、かつ有機EL素子における第1電極である陽極と、第2電極である陰極の端子部分を露出させる状態で、光透過性を有する基板上に封止膜を設けることもできる。
<その他の材料>
本発明の有機EL素子は、従来の正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、陽極バッファー層及び陰極バッファー層等を必要に応じて設けてもよい。また、発光層中にそれらの機能を有する領域を設けてもよい。
上記各層及び用いられる材料については特に限定は無く、公知の材料、また製法を適用することができる。例えば特開2013-089608号公報、特開2014-120334号公報、及び特開2015-201508号公報、特開2016-94383号公報、特開2017-34281号公報及び特開2018-60907号公報などを参照することができる。
特に、本発明では、正孔輸送層兼励起子バッファー層として、前記したホスト化合物として用いられるmCP(1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン)を用いることにより、励起子の拡散抑制や濃度消光の抑制に対して非常に高い機能を発現することができる。
また、本発明の有機EL素子は、光取り出し部材を設けることも好ましく、光の取り出し効率を向上させる手法としては、例えば、透明基板表面に凹凸を形成し、透明基板と空気界面との全反射を防ぐ方法(米国特許第4774435号明細書)、基板に集光性を持たせることにより光の取り出し効率を向上させる方法(特開昭63-314795号公報)、有機EL素子の側面等に反射面を形成する方法(特開平1-220394号公報)、発光層と透明基板との間に中間の屈折率を持つ平坦層を導入して反射防止膜を形成する方法(特開昭62-172691号公報)、発光層と透明基板との間に基板よりも屈折率の低い平坦層を導入する方法(特開2001-202827号公報)、基板、透明電極層、発光層のいずれかの層間(基板と外界との間を含む)に回折格子を形成する方法(特開平11-283751号公報)等を参照することができる。
[有機EL素子の製造方法]
本発明の有機EL素子は、透明基板上に、第1電極である陽極、発光層及び第2電極である陰極を積層して積層体を形成し、ガスバリアー性を有する封止部材で素子全体を封止することによって製造することができる。
具体的には、好ましくはガスバリアー性を有する透明基材を準備し、該透明基材上に、所望の電極物質、例えば、陽極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10~200nmの範囲内の膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陽極を形成する。同時に、陽極端部に、外部電源と接続する部分を形成する。
次に、この上に、本発明のジイミンホウ素錯体誘導体を含有する薄膜を形成する。
当該薄膜の形成法としては、蒸着法、塗布法(ウェットプロセス、湿式成膜法)が挙げられる。塗布法としては、スピンコート法、キャスト法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、インクジェット法、印刷法、スプレーコート法、カーテンコート法等を用いることができる。
精密な薄膜が形成可能で、かつ高生産性の点から、ダイコート法、ロールコート法、インクジェット法、スプレーコート法等のロール・to・ロール方式に適性の高い形成方法が好ましい。また、均質な膜が得られやすく、かつ、ピンホールが生成しにくい等の点からは、スピンコート法、インクジェットプリント法、印刷法等の塗布法による成膜が好ましい。中でも、蒸着法、スピンコート法及び後述するインクジェットプリント法が特に好ましい。
蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50~450℃、真空度1×10-6~1×10-2Pa、蒸着速度0.01~50nm/秒、基板温度-50~300℃、膜厚0.1~5μmの範囲内で、各条件を適宜選択することが望ましい。
以上のようにして発光層を形成した後、この上部に陰極極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10~200nmの範囲内の膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を形成する。同時に、陰極端部に、外部電源と接続する部分を形成する。この際、陰極は、発光層によって陽極に対して絶縁状態を保ちつつ、発光層の上方から透明基板の周縁に端子部分を引き出した形状にパターン形成することが好ましい。
陰極の形成後、これら透明基材、陽極、発光層及び陰極を封止部材で封止する。すなわち、陽極及び陰極の端子部分を露出させた状態で、透明基材上に、少なくとも発光層を覆う封止部材を設ける。
なお、必要に応じて、正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、正孔阻止層、電子輸送層、及び電子注入層等を形成する。
[有機EL素子の用途]
本発明の有機EL素子は、ドット発光してパターニングや文字を再現したり、多色発光してカラーの有機ELデバイスを提供したりすることができる。
発光光源として、例えば、家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられる。これに限定されないが、ピクセルの高精細化を実現することができることから、前述のディスプレイのサブピクセルを構成するR(赤)・G(緑)・B(青)の個々が独立したLEDであるマイクロLED等の電子デバイスに好適である。
[バイオイメージ]
本発明のジイミンホウ素錯体誘導体は、蛍光色素として利用可能である。バイオイメージへの適用としては、蛍光色素で生細胞を染色した後、染色した細胞の発光色を調べることで、その発光色から細胞の周囲の環境を知ることができ、細胞内環境のイメージングが可能になる。
例えば、目的とする生体物質の発現状態を知るため、当該目的生体物質を認識して結合可能な生体物質認識部位が結合された蛍光物質集積ナノ粒子を用いて蛍光標識する技術が知られている。具体的には、組織標本を蛍光物質集積ナノ粒子により染色し、蛍光発光輝点の輝度分布のピークを解析して一粒子当たりの平均輝度値を求め、各輝点内の粒子数を算出すし、算出された粒子数を比較することで、目的生体物質の発現レベルを評価することができる。
本発明のジイミンホウ素錯体誘導体は発光量子収率が高いため、蛍光物質集積ナノ粒子の一粒子当たりの輝度値を高くすることができる。したって、この様なバイオイメージに適用したとき、微量の生体物質を定量的に検出することができる利点を有する。
[色変換フィルター]
色変換フィルターは、例えば、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、蛍光表示管、電界放射型ディスプレイ等の画像表示装置及びLED照明、エレクトロルミネッセンス照明等の照明装置に用いることができる。画像表示装置に用いた場合、表示輝度を落とさずに好ましい色相へ補正することができ、照明装置(特にLED照明)に用いた場合はより自然に感じる白色光を得ることができる。
色変換フィルターは、蛍光を放射する本発明のジイミンホウ素錯体誘導体を少なくとも一つ含有している点以外は、従来の光学フィルターと同様でよく、その構成に制限はないが、例えば、従来のものと同様、少なくとも支持体を有し、必要に応じて、光学機能層、下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層等の各種機能層を有することができる。色変換フィルターにおいて、蛍光を放射する本発明のジイミンホウ素錯体誘導体は、支持体及び各種機能層のいずれかに含まれていればよく、通常、支持体又は光学機能層に含有されていることが好ましい。また、色変換フィルターの大きさ及び形状は、特に制限されず、用途に応じて適宜決定される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
[実施例1]
<発光量子収率比の評価>
表Iに示した、本発明のジイミンホウ素錯体誘導体である例示化合物7種及び比較用化合物2種の各々について、溶液状態及び膜状態での発光量子収率を、以下の方法でそれぞれ測定した。
(1)溶液状態での発光量子収率の評価
本発明のジイミンホウ素錯体誘導体又は比較用化合物を、それぞれ10-5Mになるように2-メチルテトラヒドロフラン中に溶解した。蛍光量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製 C11347-01)を用い絶対蛍光量子収率を測定し、これを溶液状態での発光量子収率とした。
(2)膜状態での発光量子収率の評価
イソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥したのち、UVオゾン洗浄処理した石英基板(1cm角)をホットプレート上で150℃に加熱しながら各化合物のクロロベンゼン溶液を滴下し、その後、150℃で30分焼成して単膜を作製した。蛍光量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製C11347-01)を用い窒素雰囲気下で絶対蛍光量子収率を測定しこれを膜状態での発光量子収率とした。
各々の化合物に対して、溶液状態での発光量子収率に対する膜状態での発光量子収率比(膜状態/溶液状態)を計算し、以下の評価基準でランク付けをした。
(評価基準)
◎:(膜状態での発光量子収率/溶液状態での発光量子収率)が、0.75以上
〇:(膜状態での発光量子収率/溶液状態での発光量子収率)が、0.5以上、0.75未満
×:(膜状態での発光量子収率/溶液状態での発光量子収率)が、0.5未満
以上の結果表Iに示す。
Figure 0007363576000019
Figure 0007363576000020
前記の結果に示されるように、本発明のジイミンホウ素錯体誘導体は、溶液状態での発光量子収率に対する膜状態での発光量子収率(膜状態/溶液状態)が高い値を示し、濃度消光による発光量子収率の低下が少ないことが分かる。
[実施例2]
<発光性粒子>
表Iに示した、本発明のジイミンホウ素錯体誘導体である例示化合物と比較化合物について、発光性粒子中での発光量子収率を測定した。
(1)発光性粒子の作製
ポリスチレン(PS)粒子分散液(固形分5.2質量%、ポリスチレン粒子の体積平均粒子径0.12μm、分散媒:水)96μLに、水100μL、非イオン性界面活性剤(Kolliphor P407:シグマアルドリッチ社製)の2%水溶液50μL、本発明の上記各化合物の0.01mmol/L THF溶液100μLを加え、前記ポリスチレン粒子分散液と各化合物との混合液を調製した。この混合液を25℃で2分撹拌することで、各ポリスチレン粒子の分散液を作製した。
得られたポリスチレン粒子の分散液を用い、遠心精製法により粒子を沈降させ、上澄み液を除去した後、純水を加えて該粒子を再分散させた。この操作(遠心精製と再分散)を4回繰り返し、各ジイミンホウ素錯体誘導体を含有した発光性粒子を含む分散液を得た。
(2)発光量子収率比の評価
前記で得られた発光性粒子を含む分散液の絶対蛍光量子収率を、蛍光量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製C11347-01)を用い測定し、同様に各々の化合物に対して、膜状態での発光量子収率に対する発光性粒子を含む分散液状態での発光量子収率比(分散液状態/膜状態)を計算し、以下の評価基準でランク付けをした。
(評価基準)
◎:(分散液状態での発光量子収率/膜液状態での発光量子収率)が、0.75以上
〇:(分散液状態での発光量子収率/膜液状態での発光量子収率)が、0.5以上、0.75未満
×:(分散液状態での発光量子収率/膜液状態での発光量子収率)が、0.5未満
以上の結果表IIに示す。
Figure 0007363576000021
前記の結果に示されるように、本発明のジイミンホウ素錯体誘導体は、固体状態でのAIEの状態及び機能をポリマー粒子中でも保持することが可能であり、これによってバイオイメージング等のセンシングデバイスへ応用可能であることが初めて明らかとなった。
これまでのAIE機能を有すシロール構造やテトラフェニルエチレン構造等の非極性又は電荷の偏りの小さな分子では、マトリックスとなるポリスチレン等のポリマー材料との相互作用が強く働き、固体薄膜状態での構造を維持できないことによる。これに対して、本発明のジイミンホウ素錯体誘導体は、ポリマー材料との相互作用に比してAIE分子自身の自己凝集能が強く働き、固体薄膜状態での構造を維持できるため、ポリマー粒子中でも強い機能を発現するに至ったと考えられる。
[実施例3]
<有機EL素子3-1の作製>(ITO/PEDOT/TCTA/EML(mCP:dope)/TPBi/LiF/Al)
第1電極(陽極)としてITO(Indium Tin Oxide)を100nm製膜したガラス基板を、イソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥及びUVオゾン洗浄を5分間行った。
そして、陽極を形成した基材上に、特許第4509787号公報の実施例16と同様に調製したポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)の分散液をイソプロピルアルコールで希釈した2質量%溶液をインクジェットプリント法にて塗布、80℃で5分乾燥し、層厚40nmの正孔注入層を形成した。
次いで、TCTA(4,4′、4′′-トリ(9-カルバゾイル)トリフェニルアミン)を前記正孔注入層上に蒸着し、厚さ40nmの正孔輸送層を設けた。
ホスト材料(ホスト化合物)として、mCP(1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン)と、発光性材料としてBN-20とを、それぞれ94%、6%の体積%になるように共蒸着し、厚さ30nmの発光層を設けた。
その後、TPBi(1,3,5-トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼン)を蒸着し、厚さ30nmの電子輸送層を設けた。
さらに、フッ化リチウムを電子注入層として厚さ1nmを蒸着し、次いで第2電極(陰極)としてアルミニウムを厚さ100nmでさらに蒸着して電極を設けた。
次に、有機EL素子全体の封止部材として下記ガスバリアーフィルムを作製した。
ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人フィルムソリューション株式会社製)の全面に、特開2004-68143号公報に記載の構成の大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、SiOからなる無機物のガスバリアー層を層厚500nmとなるように形成した。これにより、酸素透過度0.001mL/(m・24h)以下、水蒸気透過度0.001g/(m・24h)以下のガスバリアー性を有する可撓性のガスバリアーフィルムを作製した。ガスバリアーフィルムの片面に、封止樹脂層として熱硬化型の液状接着剤(エポキシ系樹脂)を厚さ25μmで形成した。そして、この封止樹脂層を設けたガスバリアーフィルムを、前記素子に重ね合わせた。このとき、陽極及び陰極の取出し部の端部が外に出るように、ガスバリアーフィルムの封止樹脂層形成面を、有機EL素子の封止面側に連続的に重ね合わせた。
次に、ガスバリアーフィルムを貼り合せた試料を減圧装置内に配置し、90℃で0.1MPaの減圧条件下で押圧をかけて5分間保持した。続いて、試料を大気圧環境に戻し、さらに90℃で30分間加熱して接着剤を硬化させ、有機EL素子3-1を作製した。
<有機EL素子3-2~3-9の作製>
前記有機EL素子3-1の作製において、発光層の発光性材料として用いたBN-20を下記表IIIに示した化合物に変更し、かつ、ドープ濃度を変更した以外は同様にして、それぞれ有機EL素子3-2~3-9を作製した。
Figure 0007363576000022
<評価>
(光取出し性:外部取り出し量子効率(EQE))
各有機EL素子を室温(約23℃)、2.5mA/cmの定電流条件下による通電を行い、発光開始直後の発光輝度(L0)[cd/m]を測定することにより、外部取り出し量子効率(EQE)を算出した。
ここで、発光輝度の測定は、分光放射輝度計CS-2000(コニカミノルタ社製)を用いて行い、外部取り出し量子効率は、比較例の有機EL素子3-1を100とする相対EQEを求めた。値が大きいほど光取出し性に優れる。
Figure 0007363576000023
前記結果に示されるように、AIE機能を持たない従来から知られた蛍光発光材料である比較化合物3においては、発光層中のドープ濃度が高くなるにつれ、濃度消光によりEQEの著しい低下が予想通り観察された。これに対して、AIE機能を有すBN-20ではドープ濃度の増加にも関わらず濃度消光が抑制し、かつAIE機能によるEQEの向上が認められ、本発明の効果が明らかとなった。AIE機能を有する比較化合物2においても若干のAIE機能によるEQEの向上が認められるものの、高濃度では濃度消光とみられるEQEの低下も生じ、前述と同様にマトリックスとなる発光ホスト材料(ここではmCP)との相互作用が強く働き、固体薄膜状態での構造を維持できないことによるものと推察される。
[実施例4]
<有機EL素子4-4の作製>(OLED)(ITO/PEDOT/mCP/EML(mCP:dope)/LiF/Al)
第1電極(陽極)としてITO(Indium Tin Oxide)を100nm製膜したガラス基板を、イソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥及びUVオゾン洗浄を5分間行った。そして、陽極を形成した基材上に、特許第4509787号公報の実施例16と同様に調製したポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)の分散液をイソプロピルアルコールで希釈した2質量%溶液をインクジェットプリント法にて塗布、80℃で5分乾燥し、層厚40nmの正孔注入層を形成した。
正孔輸送層兼励起子バッファー層として、次層のホスト材料と全く同じmCPを厚さ10nm蒸着した。
次に、発光層としてホスト材料にmCP(1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン)と、発光性材料としてBN-20とを、それぞれ80%、20%の体積%になるように共蒸着し、厚さ60nmの発光層を設けた。
さらに、フッ化リチウムを電子注入層として厚さ1nmを蒸着し、次いで、第2電極(陰極)としてアルミニウムを厚さ100nmでさらに蒸着して電極を設けた。
前述の有機EL素子3-1の場合と同様に、ガスバリアーフィルムの貼り合わせ等を行い有機EL素子4-4を作製した。
<有機EL素子4-1~4-3及び4-5~4-8の作製>
前記有機EL素子4-4の作製において、発光層の発光性材料として用いたBN-20を下記表IVに示した化合物に変更し、かつ、ドープ濃度を変更した以外は同様にして、それぞれ有機EL素子4-1~4-3及び4-5~4-8作製した。
<評価>
作製した有機EL素子について、前記したように外部取り出し量子効率(EQE)を算出した。なお、外部取り出し量子効率は、比較例の有機EL素子4-4を100とする相対EQEを求めた。値が大きいほど光取出し性に優れる。
Figure 0007363576000024
前記結果に示されるように、正孔輸送層兼励起子バッファー層として、次層のホスト材料を用いた有機EL素子4-4のようなデバイス構成において、励起子の拡散抑制や濃度消光の抑制に対して非常に高い機能を発現することが分かった。これは、AIE機能を有する比較化合物1との比較においても明らかであり、比較化合物で1は、界面でのmCPとの相互作用が強く働き、固体薄膜状態での構造を維持できず、励起子の拡散等が生じたためと推察される。
1 基材
2 第1電極
3 発光層
4 第2電極
5 接着剤
6 封止部材
10 有機EL素子

Claims (7)

  1. 記一般式(2)で表されることを特徴とするジイミンホウ素錯体誘導体。
    Figure 0007363576000025
    [一般式(2)中、R 及びは、それぞれ独立に、メチル基で置換されていてもよいフェニル基、ジベンゾフリル基、ベンジル基又はフェノキシ基を表す 及びR は、それぞれ独立に、メチル基で置換されたフェニル基、又はフッ素原子を表す。Arは、メチル基で置換されたフェニル基を表す。]
  2. BN-11、BN-19、BN-20、BN-21、BN-24又はBN-25で表されることを特徴とする請求項1に記載のジイミンホウ素錯体誘導体。
    Figure 0007363576000026
  3. BN-3で表されることを特徴とするジイミンホウ素錯体誘導体。
    Figure 0007363576000027
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のジイミンホウ素錯体誘導体を含有することを特徴とする発光性組成物。
  5. 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のジイミンホウ素錯体誘導体を含有することを特徴とする発光性薄膜。
  6. 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のジイミンホウ素錯体誘導体を含有することを特徴とする発光性粒子。
  7. 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のジイミンホウ素錯体誘導体を用いたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
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