JP6519139B2 - 透明電極、電子デバイス及び有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

透明電極、電子デバイス及び有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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Description

本発明は、透明電極、電子デバイス及び有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。より詳しくは、光透過性と導電性とを兼ね備え、更に耐久性に優れた透明電極、この透明電極を備えた電子デバイス及び有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
有機材料のエレクトロルミネッセンス(electroluminescence:以下ELと記す。)を利用した有機EL素子(有機電界発光素子ともいう。)は、数V〜数十V程度の低電圧で発光が可能な薄膜型の完全固体素子であり、高輝度、高発光効率、薄型、軽量といった多くの優れた特徴を有する。このため、各種ディスプレイのバックライト、看板や非常灯等の表示板、照明光源等の面発光体として近年注目されている。
このような有機EL素子は、2枚の電極間に有機材料からなる発光層を配置した構成であり、発光層で生じた発光光は電極を透過して外部に取り出される。このため、2枚の電極のうちの少なくとも一方は、透明電極として構成される。
透明電極としては、酸化インジウムスズ(SnO−In:Indium Tin Oxide:ITO)等の酸化物半導体系の材料が一般的に用いられているが、ITOと銀とを積層して低抵抗化を狙った検討もなされている(例えば、特許文献1及び2参照。)。しかしながら、ITOは、レアメタルのインジウムを使用しているため材料コストが高く、また、抵抗を下げるために成膜後に300℃程度でアニール処理する必要がある。
そこで、電気伝導率の高い銀(Ag)を導電性層として、該導電性層の下層に芳香族性に関与しない非共有電子対を有する含窒素有機化合物からなる中間層を設けることで、前記含窒素有機化合物と銀との間に強い相互作用が働いて、優れた光透過率と導電性とを両立した透明電極を作製できる技術等が提案されている(例えば、特許文献3〜6参照。)。
しかしながら、特許文献3〜6に開示されている導電性層の主な形成方法は乾式法である。乾式法は、溶媒を用いない点が利点であるが、成膜速度が遅いという問題があった。
一方、導電性層を湿式法により形成する場合、導電性層の下層である中間層の有機溶媒に対するリンス耐久性が鍵であり、使用できる有機溶媒が極めて限定的になってしまうといった問題があった。
また、長期耐久性を確認するための高温保存下における強制劣化試験での光透過率変化がやや大きく長期耐久性に懸念があった。
特開2002−015623号公報 特開2006−164961号公報 国際公開第2013/105569号 国際公開第2013/141097号 国際公開第2013/161750号 国際公開第2013/180020号
本発明は上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、優れた耐久性に加え、多様な有機溶媒に対する耐性を有する中間層を持つ透明電極、当該透明電極を備えた電子デバイス及び有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、導電性層と、前記導電性層に隣接して設けられる中間層と、を備える透明電極であって、前記導電性層が、金、銀又は銅を主成分として含有し、前記中間層が、硬化性組成物により形成されており、前記硬化性組成物が、芳香族性に関与しない非共有電子対を有する窒素原子を含む芳香族複素環化合物を含有することで、優れた耐久性に加え、多様な有機溶媒に対する耐性を有することを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明にかかる上記課題は、以下の手段により解決される。
1.導電性層と、前記導電性層に隣接して設けられる中間層と、を備える透明電極であって、
前記導電性層が、金、銀又は銅を主成分として含有し(ただし、平均アスペクト比(アスペクト=長さ/直径)が10〜10000である導電性繊維を除く)、
前記中間層が、硬化性組成物により形成されており、
前記硬化性組成物が、芳香族性に関与しない非共有電子対を有する窒素原子を含む芳香族複素環化合物を含有し、
前記導電性層の厚さが、5〜20nmの範囲内であることを特徴とする透明電極。
2.前記導電性層が、銀を主成分として含有することを特徴とする第1項に記載の透明電極。
3.前記中間層及び前記導電性層がともに、湿式法で形成されることを特徴とする第1項又は第2項に記載の透明電極。
4.前記硬化性組成物が、熱硬化性組成物又は光硬化性組成物であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の透明電極。
5.前記硬化性組成物が、重合性組成物であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の透明電極。
6.前記重合性組成物が、ビニル基を有する1種類のモノマーからなる組成物であることを特徴とする第5項に記載の透明電極。
7.前記重合性組成物が、ビニル基を有する2種類以上のモノマーからなる共重合性組成物であることを特徴とする第5項に記載の透明電極。
8.前記重合性組成物が、ビニル基を有するモノマーとチオール基を有するモノマーとの共重合性組成物であることを特徴とする第5項に記載の透明電極。
9.前記重合性組成物が、分子内に二つ以上のビニル基を有するモノマーを含有する組成物であることを特徴とする第5項から第8項までのいずれか一項に記載の透明電極。
10.前記重合性組成物が、ラジカル重合開始剤を用いて重合される組成物であることを特徴とする第5項から第9項までのいずれか一項に記載の透明電極。
11.前記硬化性組成物が、ピリジン、トリアジン、アザジベンゾフラン、アザカルバゾール、チアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、アザジベンゾチオフェン、キノリン、ベンズチアジアゾール、フェナントロリン、イミダゾール、トリアゾール又はピラジン骨格を有する重合性化合物を含有する組成物であることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の透明電極。
12.第1項から第11項までのいずれか一項に記載の透明電極を備えていることを特徴とする電子デバイス。
.陽極と陰極の間に、少なくとも発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記陽極又は陰極が、第1項から第1項までのいずれか一項に記載の透明電極を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
本発明によれば、優れた耐久性に加え、多様な有機溶媒に対する耐性を有する中間層を持つ透明電極、当該透明電極を備えた電子デバイス及び有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
本発明の効果の発現機構、作用機構については明確にはなっていないが、以下のように推察される。
本発明の透明電極は、導電性層が、中間層に隣接して、金、銀又は銅を主成分として含有し、中間層が、硬化性組成物により形成されており、当該硬化性組成物が、芳香族性に関与しない非共有電子対を有する窒素原子を含む芳香族複素環化合物(以下、含窒素芳香族複素環化合物ともいう。)を含有している。
これにより、中間層の上部に導電性層を成膜する際、導電性層を構成する金属原子が銀原子の場合、中間層に含有されている該芳香族性に関与しない非共有電子対を有する窒素原子と相互作用し、中間層表面上での銀原子の拡散距離が減少し、特異箇所での銀の凝集を抑制することができたものと推察される。また、金及び銅を主成分として導電性層に含有する場合も同様に働くものと考えられる。
具体的な機構としては、本発明に係る硬化性組成物により形成された中間層は、導電性層が主成分として含有する、金原子、銀原子又は銅原子が、まずこれらの金属原子と親和性のある原子を有する硬化性組成物により形成された中間層表面上で2次元的な核を形成し、それを中心に2次元の単結晶層を形成するという層状成長型(Frank−van der Merwe:FM型)の膜成長によって成膜されるようになる。
なお、一般的には、中間層表面において付着した金属原子が表面を拡散しながら結合して3次元的な核を形成し、3次元的な島状に成長するという島状成長型(Volumer−Weber:VW型)での膜成長により、島状に成膜しやすいと考えられる。
しかし、本発明においては、中間層に含有されている銀親和性化合物である芳香族性に関与しない非共有電子対を有する窒素原子を含む芳香族複素環化合物により、島状成長が抑制され、層状成長が促進されると推察される。
また、芳香族性に関与しない非共有電子対を有する窒素原子を含む芳香族複素環化合物を硬化性組成物に含有させることで強制劣化条件下においても、脱離することなく初期の添加量を維持することができるため、透明電極の性能向上に寄与し、本発明の効果が得られるものと推定している。
このため、中間層に含有させる方法としては、硬化性樹脂の一部の置換基として芳香族性に関与しない非共有電子対を有する窒素原子を含む芳香族複素環化合物を含有させることがより有効であると推定している。
したがって、薄い層厚でありながらも均一な層厚の導電性層が得られるようになる。その結果、より薄い層厚として光透過率を保ちつつも、導電性が確保された透明電極とすることができたものと推察される。
さらに、硬化性組成物を中間層に用いることにより、従来の低分子からなる有機化合物では使用できなかった溶媒を用いることができ、溶媒のリンスに対する耐性の向上を図ることができるため、湿式法による成膜が可能となり、作製条件の幅が広がる点で有効である。
本発明の透明電極の構成の一例を示す概略断面図 本発明の透明電極の構成の一例を示す概略断面図 本発明の透明電極を用いた有機EL素子の第1例を示す概略断面図 本発明の透明電極を用いた有機EL素子の第2例を示す概略断面図 本発明の透明電極を用いた有機EL素子の第3例を示す概略断面図 本発明の透明電極を備えた有機EL素子を用いて発光面を大面積化した照明装置の概略断面図 実施例にて作製した有機EL素子を具備した発光パネルの概略断面図
本発明の透明電極は、導電性層と、前記導電性層に隣接して設けられる中間層と、を備える透明電極であって、前記導電性層が、金、銀又は銅を主成分として含有し(ただし、平均アスペクト比(アスペクト=長さ/直径)が10〜10000である導電性繊維を除く)、前記中間層が、硬化性組成物により形成されており、前記硬化性組成物が、芳香族性に関与しない非共有電子対を有する窒素原子を含む芳香族複素環化合物を含有し、前記導電性層の厚さが、5〜20nmの範囲内であることを特徴とする。この特徴は、本実施形態に係る発明に共通する技術的特徴である。

本発明の実施態様としては、銀を主成分として含有することが好ましい。これにより、中間層に含有される芳香族複素環化合物の窒素原子と強い相互作用を形成することができる。
本発明の実施態様としては、前記中間層及び前記導電性層がともに、湿式法で形成されることが好ましい。これにより、透明電極の大面積化及び作製コストの低減が可能となる。
本発明の実施態様としては、前記硬化性組成物が、熱硬化性組成物又は光硬化性組成物であることが好ましい。これにより、加熱又は光照射という簡便な方法で、中間層を形成することができ、さらに中間層の各種有機溶媒に対するリンス耐久性が向上させることができる。
本発明の実施態様としては、重合反応により容易に中間層を形成することができる観点から、前記硬化性組成物が重合性組成物であることが好ましい。
本発明の実施態様としては、前記重合性組成物が、ビニル基を有する1種類のモノマーからなる組成物であることが、重合反応を容易に起こさせることができる点で好ましい。
本発明の実施態様としては、前記重合性組成物が、ビニル基を有する2種類以上のモノマーからなる共重合性組成物であることが、有機合成により得やすく、共重合反応しやすい点で好ましい。
本発明の実施態様としては、前記重合性組成物が、ビニル基を有するモノマーとチオール基を有するモノマーとの共重合性組成物であることが、共重合反応しやすい点で好ましい。また、分子構造、分子形状や特性を考慮した共重合性組成物とすることで、中間層の膜状態としての自由度を向上させたり、すき間を埋めてより密度の高い膜にさせたりすることが可能となり、高温・高湿下での長期間の保存性に優れた透明電極を作製することもできる点で好ましい。
本発明の実施態様としては、前記重合性組成物が、分子内に二つ以上のビニル基を有するモノマーを含有する組成物であることが、より確実に重合反応を起こさせることができる点で好ましい。
本発明の実施態様としては、前記重合性組成物が、ラジカル重合開始剤を用いて重合される組成物であること好ましい。これにより、より確実に重合反応を起こし、特定箇所による重合性度のムラが少なく、全体的にリンス耐久性に優れた中間層を形成することができる。
本発明の透明電極は、本発明の効果発現の観点から電子デバイスに好適に具備され得る。
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極の間に、少なくとも発光層を有する有機EL素子であって、本発明の有機EL素子は、本発明の効果発現の観点から前記陽極又は陰極として、本発明の透明電極を好適に具備する。
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。
なお、本発明において示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
≪1.透明電極≫
<透明電極の構成>
図1に示すように、透明電極1は、導電性層1bと、導電性層1bに隣接して設けられる中間層1aとを備えている。具体的には、透明電極1は、中間層1aと、この中間層1aの上部に導電性層1bとが積層された2層構造であり、例えば、基板11の上部に、中間層1a、導電性層1bの順に設けられている。中間層1aは、硬化性組成物により形成される層である。導電性層1bは、金、銀又は銅を主成分として構成されている層であり、銀を主成分とすることがより好ましい。
なお、導電性層1bの主成分とは、導電性層1bを構成する成分のうち、構成比率が最も高い成分をいう。例えば、銀を主成分とする場合、導電性層1bにおける銀の構成比率としては、60質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることが特に好ましい。
また、透明電極1の透明とは、測定光波長550nmでの光透過率が50%以上であることをいう。
また、透明電極1としてのシート抵抗値は、20Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常5〜20nm、好ましくは5〜12nmの範囲で選ばれる。
次に、このような積層構造の透明電極1が設けられる基板11、透明電極1を構成する中間層1a及び導電性層1bの順に、詳細な構成を説明する。
(基板)
本発明の透明電極1が形成される基板11としては、例えば、ガラス、プラスチック等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、基板11は、透明であっても不透明であってもよい。本発明の透明電極1が、基板11側から光を取り出す電子デバイスに用いられる場合には、基板11は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な基板11としては、ガラス、石英又は透明樹脂フィルムを挙げることができる。
ガラスとしては、例えば、シリカガラス、ソーダ石灰シリカガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。これらのガラス材料の表面には、中間層1aとの密着性、耐久性、平滑性の観点から、必要に応じて、研磨等の物理的処理が施されていてもよいし、無機物又は有機物からなる被膜や、これらの被膜を組み合わせたハイブリッド被膜が形成されていてもよい。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル又はポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)又はアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等のフィルムが挙げられる。
上記したように、樹脂フィルムの表面には、無機物又は有機物からなる被膜や、これらの被膜を組み合わせたハイブリッド被膜が形成されていてもよい。このような被膜及びハイブリッド被膜は、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度90±2%)が0.01g/m・24h以下のバリアー性フィルム(バリアー膜等ともいう。)であることが好ましい。さらには、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/m・24h・atm以下、及び水蒸気透過度が1×10−5g/m・24h以下の高バリアー性フィルムであることが好ましい。
以上のようなバリアー性フィルムを形成する材料としては、水分や酸素等の電子デバイスや有機EL素子の劣化をもたらす要因の浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。さらに、当該バリアー性フィルムの脆弱性を改良するために、これら無機材料からなる層(無機層)と有機材料からなる層(有機層)の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層との積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
バリアー性フィルムの作製方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載の大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。
一方、基板11を不透明な材料で構成する場合には、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属基板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等を用いることができる。
(中間層)
本発明に係る中間層は、硬化性組成物により形成されており、当該硬化性組成物が、芳香族性に関与しない非共有電子対を有する窒素原子を含む芳香族複素環化合物を含有する。
これにより、中間層に隣接して導電性層を成膜する際、導電性層を構成する主成分である金原子、銀原子又は銅原子が中間層に含有されている該芳香族性に関与しない非共有電子対を有する窒素原子と相互作用し、中間層表面上での金原子、銀原子又は銅原子の拡散距離が減少し、特異箇所でのこれらの金属原子の凝集を抑制することができる。
[硬化性組成物]
本発明に係る中間層は、硬化性組成物により形成されることを特徴とする。
硬化性組成物とは、硬化させる処理を行うことにより硬化する化合物を含有する組成物である。したがって、基板上に所定の方法により硬化性組成物を配設した段階では、流動性がある状態である。
硬化性組成物は、加熱又は光照射により硬化性組成物を硬化させる方法が簡便であるため、熱硬化性組成物又は光硬化性組成物であることが好ましい。
さらに、硬化性組成物は、重合性組成物であることが好ましい。
重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合及びアニオン重合等が挙げられる。
重合反応を起こす方法としては、加熱工程、光照射工程及びその両方の工程を経るという方法等が挙げられ、用いた硬化性組成物の種類、目的とする中間層の性能に応じて適宜選択することができる。
本発明に係る重合性組成物は、重合反応を引き起こしやすく、有機合成もしやすいという観点から、ビニル基を有する1種類のモノマーであることが好ましい。
−CH=CHで表されるビニル基は、ラジカルが1位の炭素原子上の一つのπ電子を奪うことで、他の炭素原子との間に新たな結合をつくり出すラジカル反応を引き起こす。
つまりラジカルが反応の開始剤となっていることから、基板上に原料溶液を配設した後に加熱や光照射を行ったり、中間層を硬化させる前にあらかじめラジカル重合開始剤を含有させたりすることで、ラジカルを発生させることができれば、容易に重合させることができ、中間層が形成されることが期待できる。
Figure 0006519139
本発明に係る重合性組成物は、ビニル基を有する2種類以上のモノマーからなる共重合性組成物であることも好ましい。重合性組成物が、1種類のモノマーでない場合であっても、同様に重合反応が進むことから、共重合性組成物であることも好ましい。
また、本発明に係る重合性組成物は、ビニル基を有するモノマーとチオール基を有するモノマーとの共重合性組成物であってもよい。チオール基とビニル基との間の反応は、チオール−エン反応と呼ばれ、ビニル基同士の重合と同様に容易に重合できる。
Figure 0006519139
ビニル基を有するモノマーとチオール基を有するモノマーとの共重合性組成物は、ビニル基を有するモノマー又はチオール基を有するモノマーの含有比率を変化させることで、もたらされる効果の大きさも変化するが、リンス耐久性の向上や、共重合性組成物とすることによりもたらされる高温・高湿下での長時間保存性の向上といった所望の目的に応じて適宜調整することができる。
また、本発明に係る重合性組成物は、より確実に重合反応を起こさせることができる点で、分子内に二つ以上のビニル基を有するモノマーを含有する組成物であることも好ましい。
本発明に係る中間層の硬化前の原料溶液に、ラジカル重合開始剤が含有されていることも好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アセトフェノン、ベンゾフェノン、p−アニシル、ジフェニルエタンジオン、2−ベンゾイル安息香酸、4,4′−ジクロロベンゾフェノン、2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、2−エチルアントラキノン、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソニトロソプロピオフェノン等が挙げられる。
これらを硬化前の中間層の原料溶液に含有させることで、重合反応がより起こりやすくなり、特定箇所による重合のムラが少なく、全体的にリンス耐久性に優れた中間層を形成することができる等、所望の目的に応じて、上記のラジカル重合開始剤及び公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。
本発明において、「芳香族性に関与しない非共有電子対を有する窒素原子」とは、非共有電子対を有する窒素原子であって、当該非共有電子対が不飽和環状化合物の芳香族性に必須要素として直接的に関与していない窒素原子のことをいう。すなわち、共役不飽和環構造(芳香環)上の非局在化したπ電子系に、非共有電子対が、化学構造式上、芳香性発現のために必須のものとして関与していない窒素原子をいう。
以下、本発明に係る「芳香族性に関与しない非共有電子対を有する窒素原子」について説明する。
窒素原子は第15族元素であり、最外殻に5個の電子を有する。このうち3個の不対電子は他の原子との共有結合に用いられ、残りの2個は一対の非共有電子対となるため、通常窒素原子の結合本数は3本である。
例えば、アミノ基(−NR)、アミド基(−C(=O)NR)、ニトロ基(−NO)、シアノ基(−CN)、ジアゾ基(−N)、アジド基(−N)、ウレア結合(−NRC=ONR−)、イソチオシアネート基(−N=C=S)、チオアミド基(−C(=S)NR)などが挙げられ、これらは本発明における「芳香族性に関与しない非共有電子対を有する窒素原子」に該当する。なお、R及びRはそれぞれ置換基を表す。
このうち、例えば、ニトロ基(−NO)の共鳴式は、下記のように表すことができる。ニトロ基における窒素原子の非共有電子対は、厳密には、酸素原子との共鳴構造に利用されているが、本発明においては、ニトロ基の窒素原子も非共有電子対を有することと定義する。
Figure 0006519139
一方、窒素原子は、非共有電子対を利用することで4本目の結合を作り出すこともできる。例えば、下記に示すように、テトラブチルアンモニウムクロライド(略称:TBAC)は、四つ目のブチル基が窒素原子とイオン結合しており、対イオンとして塩化物イオンを有する第四級アンモニウム塩である。また、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))は、イリジウム原子と窒素原子が配位結合している中性の金属錯体である。これらの化合物は窒素原子を有するものの、その非共有電子対がそれぞれイオン結合、配位結合に利用されてしまっているため、本発明における「芳香族性に関与しない非共有電子対を有する窒素原子」には該当しない。
すなわち、本発明は、結合に利用されていない窒素原子の非共有電子対を有効利用するというものである。
なお、下記に示す構造式において、左側はテトラブチルアンモニウムクロライド(略称:TBAC)、右側はトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))の構造を示す。
Figure 0006519139
また、窒素原子は、芳香環を構成することのできるヘテロ原子として一般的であり、芳香族性の発現に寄与することができる。この「含窒素芳香環」としては、例えばピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環等が挙げられる。
ピリジン環の場合、下記に示すように、6員環状に並んだ共役(共鳴)不飽和環構造において、非局在化したπ電子の数が6個であるため、4n+2(n=0又は自然数)のヒュッケル則を満たす。6員環内の窒素原子は、−CH=を置換したものであるため、1個の不対電子を6π電子系に動員するのみで、非共有電子対は、芳香族性発現のために必須のものとして関与していない。
したがって、ピリジン環の窒素原子は、本発明に係る「芳香族性に関与しない非共有電子対を有する窒素原子」に該当する。以下に、ピリジン環の分子軌道を示す。
Figure 0006519139
ピロール環の場合は、下記に示すように、5員環内を構成する炭素原子の一つが窒素原子に置換された構造であるが、やはりπ電子の数は6個であり、ヒュッケル則を満たした含窒素芳香環である。ピロール環の窒素原子は、水素原子とも結合しているため、非共有電子対が6π電子系に動員されている。
したがって、ピロール環の窒素原子は、非共有電子対を有するものの、芳香族性発現のために必須のものとして利用されてしまっているため、本発明における「芳香族性に関与しない非共有電子対を有する窒素原子」には該当しない。
以下に、ピロール環の分子軌道を示す。
Figure 0006519139
一方、イミダゾール環は、下記に示すように、5員環内に二つの窒素原子が1、3位に置換した構造を有しており、やはりπ電子数が6個の含窒素芳香環である。窒素原子Nは、1個の不対電子のみを6π電子系に動員し、非共有電子対を芳香族性発現のために利用していないピリジン環型の窒素原子である。一方、窒素原子Nは、非共有電子対を6π電子系に動員しているピロール環型の窒素原子である。
したがって、イミダゾール環の窒素原子Nは、本発明における「芳香族性に関与しない非共有電子対を有する窒素原子」に該当する。以下に、イミダゾール環の分子軌道を示す。
Figure 0006519139
また、含窒素芳香環骨格を有する縮環化合物の場合も同様である。例えば、δ−カルボリンは、下記に示すように、ベンゼン環骨格、ピロール環骨格及びピリジン環骨格がこの順に縮合したアザカルバゾール化合物である。ピリジン環の窒素原子Nは、1個の不対電子のみを、ピロール環の窒素原子Nは、非共有電子対を、それぞれπ電子系に動員しており、環を形成している炭素原子からの11個のπ電子とともに、全体のπ電子数が14個の芳香環となっている。
したがって、δ−カルボリンの二つの窒素原子のうち、ピリジン環の窒素原子Nは本発明に係る「芳香族性に関与しない非共有電子対を有する窒素原子」に該当するが、ピロール環の窒素原子Nはこれに該当しない。
このように、ピリジン環やピロール環は、その骨格が縮環化合物中に組み込まれている場合でも、その効果が阻害されたり抑制されたりすることはなく、単環として利用したときとなんら相違はない。以下に、δ−カルボリンの分子軌道を示す。
Figure 0006519139
以上のように、本発明で規定する「芳香族性に関与しない非共有電子対を有する窒素原子」は、その非共有電子対を導電性層の主成分である金、銀又は銅と強い相互作用を発現するために重要である。そのような窒素原子としては、安定性、耐久性の観点から、含窒素芳香環中の窒素原子であることが好ましい。
窒素原子と金、銀又は銅との間に働く相互作用の強さは、窒素原子の求核性の強さから推察できる。すなわち、求核性が強いほど、これらの金属原子への配位力も強く、相互作用も強い、というものである。
さらに求核性の強さは、塩基性の強さに相関があることが知られている。ブレンステッド・ローリーの定義による塩基性とは、プロトンを受け取る性質のことであるから、これを能動的に言い換えると、攻撃対象がプロトンである、といえる。
塩基性の強さを定量的に理解するためには、共役酸のpKa値(酸解離定数)を参照するのがよい。共役酸とは、塩基にプロトンが付加した姿であり、pKa値とは、数値が小さいほど酸性(プロトン放出能)が強いことを表す。
したがって、共役酸のpKa値が大きければ大きいほど、塩基性が強いことを意味する。
Figure 0006519139
HAは酸、Bは塩基、Aは共役塩基、HBは共役酸を表す。
本発明は、中間層の含窒素芳香族複素環化合物と金属原子との相互作用を利用している。そこで上記の観点から、主な含窒素芳香族複素環化合物の共役酸のpKa値を参照した。なお、pKa値は山中宏、日野亨、中川昌子、坂本尚夫著「新編ヘテロ環化合物 基礎編」講談社サイエンティフィク、2004年3月1日、巻末の一覧表を用いた(表1参照。)。
Figure 0006519139
上記の観点から、イミダゾール環やピリジン環で表される構造に由来する構造を多く有する化合物が中間層に含有されていると、より強い相互作用が発現すると考えられる。
中間層の成膜方法としては、湿式法を用いる方法として塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法等や、乾式法を用いる方法として蒸着法(抵抗加熱、EB法等)、スパッタ法、CVD法等が挙げられる。湿式法で用いる有機溶媒としては、特に制限はないが、高い汎用性及び環境負荷の抑制という観点から、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、PGME(1−メトキシ−2−プロパノール)、酢酸メチル、MEK(メチルエチルケトン)及び水のうちいずれかであることが好ましい。
本発明に係る中間層は、硬化性組成物に含有される芳香族複素環化合物による原料溶液を基板上に配設し、続いて基板上の原料溶液を加熱又は光照射等をすることで、中間層を形成する。したがって、硬化前の段階で意図しない反応が起こることは好ましくなく、原料溶液を高温加熱し、気化させて成膜する蒸着法等の乾式法よりも温和な条件で成膜できる湿式法を用いる方が好ましい。
以下に、本発明に係る中間層に含有される硬化性組成物を構成する、芳香族性に関与しない非共有電子対を有する窒素原子を含む芳香族複素環化合物の具体例(モノマーの状態)を示すが、これに限定されるものではない。
Figure 0006519139
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[合成例:P−70の合成]
本発明にかかる有機化合物は、従来公知の合成方法に準じて、容易に合成することができる。一例として、P−70の合成方法を示す。
Figure 0006519139
(1)中間体1の合成
200mlナスフラスコに、δ−カルボリン(10g、0.059mol)、ヨードベンゼン(1.5eq.)、KPO(2eq.)、CuO(0.2eq.)及びdipivaloyl methane(0.5eq.)を含むDMSO(100ml)溶液を加えて、窒素雰囲気下、150℃で10時間還流した。
その後、室温まで戻し、溶液を分液ロートに移して抽出を行った。酢酸エチルと飽和食塩水を加えて有機相と水相に分離した後、有機相を取り出し、減圧留去した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、中間体1の白色固体(11g、収率82%)を得た。
(2)中間体2の合成
100mlナスフラスコに、中間体1(10g、0.041mol)及びNBS(N−ブロモスクシイミド)(1.2eq.)、及びDMF(50ml)を加え溶解し、窒素雰囲気下、80℃で8時間加熱撹拌した。
その後室温まで戻した後、溶液を分液ロートに移して抽出を行った。酢酸エチルと飽和食塩水を加えて有機相と水相に分離した後、有機相を取り出し、減圧留去した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、中間体2の白色固体(10g、収率78%)を得た。
(3)中間体3の合成
100mlナスフラスコに、中間体2(10g、0.032mol)、δ−カルボリン(1.2eq.)、KPO(2eq.)、CuO(0.2eq.)及びdipivaloyl methane(0.5eq.)を含むDMSO(50ml)溶液を加えて、窒素雰囲気下、150℃で15時間還流した。
その後、室温まで戻し、溶液を分液ロートに移して抽出を行った。酢酸エチルと飽和食塩水を加えて有機相と水相に分離した後、有機相を取り出し、減圧留去した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、中間体3の白色固体(10g、収率80%)を得た。
(4)中間体4の合成
100mlナスフラスコに、中間体3(10g、0.024mol)及びNBS(N−ブロモスクシイミド)(1.2eq.)、及びDMF(50ml)を加え溶解し、窒素雰囲気下、80℃で10時間加熱撹拌した。
その後室温まで戻した後、溶液を分液ロートに移して抽出を行った。酢酸エチルと飽和食塩水を加えて有機相と水相に分離した後、有機相を取り出し、減圧留去した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、中間体4の白色固体(10g、収率78%)を得た。
(5)P−70の合成
100mlナスフラスコに、中間体4(10g、0.020mol)、Vinyl boronic acid pinacol ester(1.5eq.)、Pd(PPh(0.025eq.)、KCO(3eq.)、を含むDioxane(50ml)溶液を加えて、窒素雰囲気下、100℃で13時間還流した。
その後、室温まで戻し、溶液を分液ロートに移して抽出を行った。酢酸エチルと飽和食塩水を加えて有機相と水相に分離した後、有機相を取り出し、減圧留去した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、P−70の白色固体(5.8g、収率65%)を得た。
(導電性層)
本発明に係る導電性層1bは、金、銀又は銅を主成分として含有している。また、導電性層1bは、中間層1a上に成膜された層である。
導電性層1bは、金、銀又は銅を主成分として構成されている層が、必要に応じて、複数の層に分けて積層された構成であってもよい。
導電性層1bは、層厚が5〜20nmの範囲内であることが好ましく、5〜12nmの範囲内であることがより好ましい。
層厚が20nm以下である場合には、層の吸収成分又は反射成分が少なくなり、透明電極1の光透過率が向上するため好ましい。また、層厚が5nm以上である場合には、層の導電性が十分になるため好ましい。
なお、以上のような中間層1aと、この上部に成膜された導電性層1bとからなる積層構造の透明電極1は、導電性層1bの上部が保護膜で覆われていてもよいし、別の導電性層が積層されていてもよい。この場合、透明電極1の光透過性を損なうことのないように、保護膜及び別の導電性層が光透過性を有することが好ましい。また、中間層1aの下部、すなわち中間層1aと基板11との間にも、必要に応じた層を設けた構成としてもよい。
導電性層1bは、銀(Ag)を主成分として含有する合金から構成されていてもよく、そのような合金としては、例えば、銀マグネシウム(AgMg)、銀銅(AgCu)、銀パラジウム(AgPd)、銀パラジウム銅(AgPdCu)、銀インジウム(AgIn)等が挙げられる。
導電性層1bの成膜方法としては、湿式法を用いる方法として塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法等や、乾式法を用いる方法として蒸着法(抵抗加熱、EB法等)、スパッタ法、CVD法等が挙げられる。本発明に係る導電性層は、その下層に有機溶媒に対するリンス耐久性が高い中間層を設けているため、湿式法を用いる方が、作製コストの低減の観点から好ましい。湿式法で形成した導電性層をリンスする有機溶媒として好ましいものは、中間層のリンスに用いることが好ましい有機溶媒と同様である。
湿式法を用いて導電性層を形成する場合、金、銀又は銅を主成分とする導電性インクを用いることが好ましい。これらは、導電性層の層厚を薄くすることで、高い光透過性を実現している本構成においては、粒径の小さい10ナノメートル前後のナノ粒子からなる導電性インクや、錯体からなる導電性インクを用いることが特に好ましい。
しかしながら、市販されている導電性インクの多くは、電気回路や光反射膜の作製等が主な用途であるため、これらを通常の使用方法により用いて、光透過性に優れた薄膜の作製をすることは困難である。そこで、該導電性インクを溶媒で希釈する方法や、薄膜形成プロセス条件を最適化させるなどの工夫が必要となる。
希釈する溶媒としては、本発明の透明電極1の効果を阻害しない限りにおいて、有機溶媒や水系溶媒等、従来公知のものを特に制限なく使用することができる。
また、導電性層1bは、中間層1a上に成膜されることにより、必要に応じて、導電性層成膜後の高温アニール処理(例えば、100℃以上の加熱プロセス)等を行ってもよい。
<透明電極の効果>
以上のような構成の透明電極1は、芳香族性に関与しない非共有電子対を有する窒素原子を含む芳香族複素環化合物を含有する硬化性組成物から形成される中間層1a上に、金、銀又は銅を主成分として構成されている導電性層1bを有している。
これにより、中間層の上部に導電性層を成膜する際には、導電性層に主成分として含有される金原子、銀原子又は銅原子が中間層1aに含有される前記芳香族複素環化合物と相互作用し、導電性層に主成分として含有される金原子、銀原子又は銅原子の中間層表面での拡散距離が減少し、凝集も抑えられる。
ここで、銀を導電性層の主成分として用いる場合を一例として説明すると、一般的に銀を主成分として構成されている導電性層の成膜においては、島状成長型(VW型)で薄膜成長するため、銀粒子が島状に孤立しやすく、膜厚が薄いときは導電性を得ることが困難であり、シート抵抗値が高くなる。
したがって、導電性を確保するには膜厚を厚くする必要があるが、膜厚を厚くすると光透過率が下がるため、透明電極としては不適であった。
しかしながら、本発明構成の透明電極1によれば、上述したように中間層1a上において銀の凝集が抑えられるため、銀を主成分として構成されている導電性層1bの成膜においては、層状成長型(FM型)で薄膜成長するようになる。
また、本発明の透明電極1の透明とは、測定光波長550nmでの光透過率が50%以上であることをいうが、中間層1aとして用いられる上述した各材料は、銀を主成分とした導電性層1bと比較して、十分に光透過性の良好な膜を形成する。一方、透明電極1の導電性は、主に、導電性層1bによって確保される。したがって、上述のように、銀を主成分として構成されている導電性層1bが、より薄い層厚で導電性が確保されたものとなることにより、透明電極1の導電性の向上と光透過性の向上との両立を図ることが可能になるのである。
(光学調整層)
図1Bに示すように、本発明の透明電極2においては、基板12上に中間層2a及び導電性層2bに加えて、光学調整層2cをさらに備えることも好ましい。光学調整層2cは、導電性層2b上に成膜された層である。
光学調整層は、有機化合物、無機化合物どちらを主成分としていてもよく、必要に応じて、光学調整層を構成する層が、複数の層を積層した構成であってもよい。
光学調整層は、中間層とともに導電性層を挟持する構成となっている。金属を主成分としてなる導電性層の反射成分を低減させて、光透過性を向上させるためには、このような構成であることが好ましい。
光透過性を最大限に向上させた、優れた透明電極を作製するためには、中間層及び光学調整層に含有される化合物の屈折率や膜厚を考慮して、最適化する必要があり、これらは光学シミュレーションにより見積もることができる。
なお、光学調整層は、光透過性の向上のために適宜設けられるものであるが、導電性層の隣接層であることを鑑み、該導電性層の主成分である金、銀又は銅と強く相互作用する化合物を含有することが、密着性や耐スクラッチ性及び長時間保存性等の観点から好ましい。
したがって、芳香族性に関与しない非共有電子対を有する窒素原子を含む芳香族複素環化合物等を用いることが特に好ましい。
なお、以下においては、光学調整層を含まない透明電極1を用いて説明している場合であっても、同様に光学調整層2cを含む透明電極2を用いることができる。
≪2.透明電極の用途≫
上述した構成の透明電極1は、各種電子デバイスに用いることができる。電子デバイスの例としては、有機EL素子、LED(Light Emitting Diode)、液晶素子、太陽電池、タッチパネル等が挙げられ、これらの電子デバイスにおいて光透過性を必要とされる電極部材として、上述の透明電極1を用いることができる。
以下では、用途の一例として、本発明の透明電極1を用いた有機EL素子の実施の形態を説明する。
≪3.有機EL素子の第1例≫
<有機EL素子の構成>
図2は、本発明の電子デバイスの一例として、上述した透明電極1を用いた有機EL素子の第1例を示す概略断面図である。
以下に、この図に基づいて有機EL素子の構成を説明する。
図2に示すとおり、有機EL素子100は、透明基板(基板)13上に設けられており、透明基板13側から順に、透明電極1、有機材料等を用いて構成された有機機能層3、及び対向電極5aをこの順に積層して構成されている。この有機EL素子100においては、透明電極1として、先に説明した本発明の透明電極1を用いている。このため、有機EL素子100は、発生させた光(以下、発光光hと記す。)を、少なくとも透明基板13側から取り出すように構成されている。
また、有機EL素子100の層構造は以下に説明する例に限定されることはなく、一般的な層構造であってもよい。ここでは、透明電極1がアノード(すなわち陽極)として機能し、対向電極5aがカソード(すなわち陰極)として機能することとする。この場合、例えば、有機機能層3は、アノードである透明電極1側から順に正孔注入層3a/正孔輸送層3b/発光層3c/電子輸送層3d/電子注入層3eを積層した構成が例示されるが、このうち少なくとも有機材料を用いて構成された発光層3cを有することが必須である。正孔注入層3a及び正孔輸送層3bは、正孔輸送注入層として設けられていてもよい。電子輸送層3d及び電子注入層3eは、電子輸送注入層として設けられていてもよい。また、これらの有機機能層3のうち、例えば、電子注入層3eは無機材料で構成されているものとしてもよい。
また、有機機能層3は、これらの層の他に正孔阻止層や電子阻止層等が必要に応じて必要箇所に積層されていてもよい。さらに、発光層3cは、各波長領域の発光光を発生させる各色発光層を有し、これらの各色発光層を非発光性の補助層を介して積層させた構造としてもよい。補助層は、正孔阻止層、電子阻止層として機能してもよい。さらに、カソードである対向電極5aも、必要に応じた積層構造であってもよい。このような構成においては、透明電極1と対向電極5aとで有機機能層3が挟持された部分のみが、有機EL素子100における発光領域となる。
また、以上のような層構成においては、透明電極1の低抵抗化を図ることを目的とし、透明電極1の導電性層1bに接して補助電極15が設けられていてもよい。
以上のような構成の有機EL素子100は、有機材料等を用いて構成された有機機能層3の劣化を防止することを目的として、透明基板13上において後述する封止材17で封止されている。この封止材17は、接着剤19を介して透明基板13側に固定されている。ただし、透明電極1及び対向電極5aの端子部分は、透明基板13上において有機機能層3によって互いに絶縁性を保った状態で封止材17から露出させた状態で設けられていることとする。
以下、上述した有機EL素子100を構成するための主要各層の詳細を、透明基板13、透明電極1、対向電極5a、有機機能層3の発光層3c、有機機能層3の他の層、補助電極15及び封止材17の順に説明する。
(透明基板)
透明基板13は、先に説明した本発明の透明電極1が設けられる基板11であり、先に説明した基板11のうち、光透過性を有する透明な基板11が用いられる。
(透明電極(アノード))
透明電極1は、先に説明した本発明の透明電極1であり、透明基板13側から順に中間層1a及び導電性層1bを順に成膜した構成である。ここでは特に、透明電極1はアノードとして機能するものであり、導電性層1bが実質的なアノードとなる。
(対向電極(カソード))
対向電極5aは、有機機能層3に電子を供給するカソードとして機能する電極膜であり、金属、合金、有機若しくは無機の導電性化合物、又はこれらの混合物等から構成されている。具体的には、アルミニウム、銀、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属、ITO、ZnO、TiO、SnO等の酸化物半導体等が挙げられる。
対向電極5aは、これらの導電性材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより作製することができる。
また、対向電極5aとしてのシート抵抗値は、数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常5nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲内で選ばれる。
なお、この有機EL素子100が、対向電極5a側からも発光光hを取り出すものである場合には、上述した導電性材料のうちから選択される光透過性の良好な導電性材料により対向電極5aが構成されていればよい。
(発光層)
発光層3cは、発光材料が含有されているが、中でも発光材料としてリン光発光ドーパント(リン光発光材料、リン光発光化合物、リン光性化合物)が含有されていることが好ましい。
この発光層3cは、電極又は電子輸送層3dから注入された電子と、正孔輸送層3bから注入された正孔とが再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層3cの層内であっても発光層3cと隣接する層との界面であってもよい。
このような発光層3cとしては、含まれる発光材料が発光要件を満たしていれば、その構成には特に制限はない。また、同一の発光スペクトルや発光極大波長を有する層が複数層あってもよい。この場合、各発光層3c間には非発光性の補助層(図示せず)を有していることが好ましい。
発光層3cの層厚の総和は、好ましくは、1〜100nmの範囲内であり、更に好ましくは、より低い駆動電圧を得ることができることから1〜30nmの範囲内である。なお、発光層3cの層厚の総和とは、発光層3c間に非発光性の補助層が存在する場合には、当該補助層も含む層厚である。
複数層を積層した構成の発光層3cの場合、個々の発光層の層厚としては、1〜50nmの範囲内に調整することが好ましく、1〜20nmの範囲内に調整することがより好ましい。積層された複数の発光層が、青、緑、赤のそれぞれの発光色に対応する場合、青、緑、赤の各発光層の層厚の関係については、特に制限はない。
以上のように構成されている発光層3cは、後述する発光材料やホスト化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜形成方法により成膜して形成することができる。
また発光層3cは、複数の発光材料が混合されて構成されていてもよく、またリン光発光ドーパント(リン光発光性化合物)と蛍光ドーパント(蛍光発光材料、蛍光性化合物)とが混合されて構成されていてもよい。
発光層3cは、ホスト化合物(発光ホスト)と発光材料(発光ドーパント)を含有し、発光材料をより発光させることが好ましい。
(ホスト化合物)
発光層3cに含有されるホスト化合物としては、室温(25℃)におけるリン光発光のリン光量子収率が0.1未満の化合物が好ましい。さらに好ましくはリン光量子収率が0.01未満である。また、発光層3cに含有される化合物の中で、その層中での体積比が50%以上であることが好ましい。
ホスト化合物としては、公知のホスト化合物を単独で用いてもよく、又は複数種用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。また、後述する発光材料を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
用いられるホスト化合物としては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもよい。
公知のホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、発光の長波長化を防ぎ、かつ高Tg(ガラス転移温度)の化合物が好ましい。
ここでいうガラス転移温度とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS K 7121−2012に準拠した方法により求められる値である。
公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物を用いることもできる。例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報、米国特許出願公開第2003/0175553号明細書、米国特許出願公開第2006/0280965号明細書、米国特許出願公開第2005/0112407号明細書、米国特許出願公開第2009/0017330号明細書、米国特許出願公開第2009/0030202号明細書、米国特許出願公開第2005/0238919号明細書、国際公開第2001/039234号明細書、国際公開第2009/021126号、国際公開第2008/056746号、国際公開第2004/093207号、国際公開第2005/089025号、国際公開第2007/063796号、国際公開第2007/063754号、国際公開第2004/107822号、国際公開第2005/030900号、国際公開第2006/114966号、国際公開第2009/086028号、国際公開第2009/003898号、国際公開第2012/023947号、特開2008−074939号公報、特開2007−254297号公報、欧州特許第2034538号明細書等が挙げられる。
(発光材料)
(1)リン光発光ドーパント
本発明で用いることのできる発光材料としては、リン光発光ドーパントが挙げられる。
リン光発光ドーパントとは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明においてリン光発光ドーパントを用いる場合、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
リン光発光ドーパントの発光の原理としては2種挙げられる。
一つは、キャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをリン光発光ドーパントに移動させることでリン光発光ドーパントからの発光を得るというエネルギー移動型である。
もう一つは、リン光発光ドーパントがキャリアトラップとなり、リン光発光ドーパント上でキャリアの再結合が起こりリン光発光ドーパントからの発光が得られるというキャリアトラップ型である。いずれの場合においても、リン光発光ドーパントの励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件となる。
リン光発光ドーパントは、一般的な有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、好ましくは元素の周期表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、又は白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
本発明においては、少なくとも一つの発光層3cに2種以上のリン光発光ドーパントが含有されていてもよく、発光層3cにおけるリン光発光ドーパントの濃度比が発光層3cの厚さ方向で変化していてもよい。
リン光発光ドーパントは、好ましくは発光層3cの総量に対し0.1体積%以上30体積%未満である。
本発明に使用できる公知のリン光ドーパントの具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられる。
Nature,395,151(1998)、Appl.Phys.Lett.,78,1622(2001)、Adv.Mater.,19,739(2007)、Chem.Mater.,17,3532(2005)、Adv.Mater.,17,1059(2005)、国際公開第2009/100991号、国際公開第2008/101842号、国際公開第2003/040257号、米国特許出願公開第2006/835469号明細書、米国特許出願公開第2006/0202194号明細書、米国特許出願公開第2007/0087321号明細書、米国特許出願公開第2005/0244673号明細書、Inorg.Chem.,40,1704(2001)、Chem.Mater.,16,2480(2004)、Adv.Mater.,16,2003(2004)、Angew.Chem.lnt.Ed.,2006,45,7800、Appl.Phys.Lett.,86,153505(2005)、Chem.Lett.,34,592(2005)、Chem.Commun.,2906(2005)、Inorg.Chem.,42,1248(2003)、国際公開第2009/050290号、国際公開第2002/015645号、国際公開第2009/000673号、米国特許出願公開第2002/0034656号明細書、米国特許第7332232号明細書、米国特許出願公開第2009/0108737号明細書、米国特許出願公開第2009/0039776号明細書、米国特許第6921915号明細書、米国特許第6687266号明細書、米国特許出願公開第2007/0190359号明細書、米国特許出願公開第2006/0008670号明細書、米国特許出願公開第2009/0165846号明細書、米国特許出願公開第2008/0015355号明細書、米国特許第7250226号明細書、米国特許第7396598号明細書、米国特許出願公開第2006/0263635号明細書、米国特許出願公開第2003/0138657号明細書、米国特許出願公開第2003/0152802号明細書、米国特許第7090928号明細書、Angew.Chem.lnt.Ed.,47,1(2008)、Chem.Mater.,18,5119(2006)、Inorg.Chem.,46,4308(2007)、Organometallics,23,3745(2004)、Appl.Phys.Lett.,74,1361(1999)、国際公開第2002/002714号、国際公開第2006/009024号、国際公開第2006/056418号、国際公開第2005/019373号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2007/004380号、国際公開第2006/082742号、米国特許出願公開第2006/0251923号明細書、米国特許出願公開第2005/0260441号明細書、米国特許第7393599号明細書、米国特許第7534505号明細書、米国特許第7445855号明細書、米国特許出願公開第2007/0190359号明細書、米国特許出願公開第2008/0297033号明細書、米国特許第7338722号明細書、米国特許出願公開第2002/0134984号明細書、米国特許第7279704号明細書、米国特許出願公開第2006/098120号明細書、米国特許出願公開第2006/103874号明細書、国際公開第2005/076380号、国際公開第2010/032663号、国際公開第2008/140115号、国際公開第2007/052431号、国際公開第2011/134013号、国際公開第2011/157339号、国際公開第2010/086089号、国際公開第2009/113646号、国際公開第2012/020327号、国際公開第2011/051404号、国際公開第2011/004639号、国際公開第2011/073149号、米国特許出願公開第2012/228583号明細書、米国特許出願公開第2012/212126号明細書、特開2012−069737号公報、特開2011−181303号公報、特開2009−114086号公報、特開2003−81988号公報、特開2002−302671号公報、特開2002−363552号公報等である。
中でも、好ましいリン光ドーパントとしてはIrを中心金属に有する有機金属錯体が挙げられる。さらに好ましくは、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合のうち少なくとも一つの配位様式を含む錯体が好ましい。
(2)蛍光ドーパント
本発明に係る蛍光発光性ドーパント(以下、「蛍光ドーパント」ともいう。)について説明する。
本発明に係る蛍光ドーパントは、励起一重項からの発光が可能な化合物であり、励起一重項からの発光が観測される限り特に限定されない。
本発明に係る蛍光ドーパントとしては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、又は希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
また、近年では遅延蛍光を利用した発光ドーパントも開発されており、これらを用いてもよい。
遅延蛍光を利用した発光ドーパントの具体例としては、例えば、国際公開第2011/156793号、特開2011−213643号公報、特開2010−93181号公報等に記載の化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
(注入層:正孔注入層、電子注入層)
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と発光層3cの間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層3aと電子注入層3eとがある。
注入層は、必要に応じて設けることができる。正孔注入層3aであれば、アノードと発光層3c又は正孔輸送層3bとの間、電子注入層3eであれば、カソードと発光層3c又は電子輸送層3dとの間に存在させてもよい。
正孔注入層3aは、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン層、酸化バナジウムに代表される酸化物層、アモルファスカーボン層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子層等が挙げられる。
電子注入層3eは、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属層、フッ化カリウムに代表されるアルカリ金属ハライド層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物層、酸化モリブデンに代表される酸化物層等が挙げられる。電子注入層3eはごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその層厚は1nm〜10μmの範囲内が好ましい。
(正孔輸送層)
正孔輸送層3bは、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層3a、電子阻止層も正孔輸送層3bに含まれる。正孔輸送層3bは、単層又は複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD)、2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン、N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル、N,N,N−トリ(p−トリル)アミン、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン、4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン、3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン、N−フェニルカルバゾール、更には米国特許第5061569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3個スターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
さらに、これらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.,Applied Physics Letters,80(2002),p.139に記載されているような、いわゆるp型正孔輸送材料を用いることもできる。本発明においては、より高効率の発光素子が得られることから、これらの材料を用いることが好ましい。
正孔輸送層3bは、上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層3bの層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmの範囲内である。この正孔輸送層3bは、上記材料の1種又は2種以上からなる1層構造であってもよい。
また、正孔輸送層3bの材料に不純物をドープしてp性を高くすることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
このように、正孔輸送層3bのp性を高くすると、より低消費電力の素子を作製することができるため好ましい。
(電子輸送層)
電子輸送層3dは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層3e、正孔阻止層も電子輸送層3dに含まれる。電子輸送層3dは、単層構造又は複数層の積層構造として設けることができる。
単層構造の電子輸送層3dの電子輸送材料、及び積層構造の電子輸送層3dにおいて発光層3cに隣接する層部分を構成する電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる。)としては、カソードより注入された電子を発光層3cに伝達する機能を有していればよい。このような材料としては、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン、アントロン誘導体及びオキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送層3dの材料として用いることができる。さらに、これらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送層3dの材料として用いることができる。
その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送層3dの材料として好ましく用いることができる。また、発光層3cの材料としても用いられるジスチリルピラジン誘導体も電子輸送層3dの材料として用いることができるし、正孔注入層3a、正孔輸送層3bと同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送層3dの材料として用いることができる。
電子輸送層3dは、上記材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層3dの層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmの範囲内である。電子輸送層3dは、上記材料の1種又は2種以上からなる1層構造であってもよい。
また、電子輸送層3dに不純物をドープし、n性を高くすることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。さらに、電子輸送層3dには、カリウムやカリウム化合物等を含有させることが好ましい。カリウム化合物としては、例えば、フッ化カリウム等を用いることができる。このように電子輸送層3dのn性を高くすると、より低消費電力の素子を作製することができる。
また、電子輸送層3dの材料(電子輸送性化合物)として、上述した中間層1aを構成する材料と同様のものを用いてもよい。これは、電子注入層3eを兼ねた電子輸送層3dであっても同様である。
(阻止層:正孔阻止層、電子阻止層)
阻止層は、上記した有機機能層3の基本構成層の他に、必要に応じて設けられるものである。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
正孔阻止層とは、広い意味では、電子輸送層3dの機能を有する。正孔阻止層は、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、上記の電子輸送層3dの構成を、必要に応じて、正孔阻止層として用いることができる。正孔阻止層は、発光層3cに隣接して設けられていることが好ましい。
一方、電子阻止層とは、広い意味では、正孔輸送層3bの機能を有する。電子阻止層は、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、上記の正孔輸送層3bの構成を、必要に応じて、電子阻止層として用いることができる。
正孔阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲内であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲内である。
(補助電極)
補助電極15は、透明電極1の抵抗を下げる目的で設けられるものであって、透明電極1の導電性層1bに接して設けられる。補助電極15を形成する材料としては、金、白金、銀、銅、アルミニウム等の抵抗が低い金属が好ましい。これらの金属は光透過性が低いため、光取り出し面13aからの発光光hの取り出しの影響のない範囲でパターン形成される。このような補助電極15の作製方法としては、蒸着法、スパッタリング法、印刷法、インクジェット法、エアロゾルジェット法等が挙げられる。補助電極15の線幅は、光を取り出す開口率の観点から50μm以下であることが好ましく、補助電極15の厚さは、導電性の観点から1μm以上であることが好ましい。
(封止材)
封止材17は、有機EL素子100を覆うものであって、板状(フィルム状)の封止部材であって接着剤19によって透明基板13側に固定されるものであってもよく、封止膜であってもよい。このような封止材17は、有機EL素子100における透明電極1及び対向電極5aの端子部分を露出させる状態で、少なくとも有機機能層3を覆う状態で設けられている。また、封止材17に電極を設け、有機EL素子100の透明電極1及び対向電極5aの端子部分と、この電極とを導通させるように構成されていてもよい。
板状(フィルム状)の封止材17としては、具体的には、ガラス基板、ポリマー基板、金属基板等が挙げられ、これらの基板材料を更に薄型のフィルム状にして用いてもよい。ガラス基板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー基板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属基板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブデン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる1種以上の金属又は合金からなるものが挙げられる。
中でも、素子を薄膜化できるということから、封止材としてポリマー基板や金属基板を薄型のフィルム状にしたものを好ましく使用することができる。
さらには、フィルム状としたポリマー基板は、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/m・24h・atm以下、及びJIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%)が、1×10−3g/m・24h以下のものであることが好ましい。
また以上のような基板材料は、凹板状に加工して封止材17として用いてもよい。この場合、上述した基板材料に対してサンドブラスト加工、化学エッチング加工等の加工が施され、凹状が形成される。
また、このような板状の封止材17を透明基板13側に固定するための接着剤19は、封止材17と透明基板13との間に挟持された有機EL素子100を封止するためのシール剤として用いられる。このような接着剤19は、具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。
また、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることもできる。
なお、有機EL素子100を構成する有機材料は、熱処理により劣化する場合がある。このため、接着剤19は、室温(25℃)から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、接着剤19中に乾燥剤を分散させておいてもよい。
封止材17と透明基板13との接着部分への接着剤19の塗布は、市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
また、板状の封止材17と透明基板13と接着剤19との間に隙間が形成される場合、この間隙には、気相及び液相では、窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また、真空とすることも可能である。また、内部に吸湿性化合物を封入することもできる。
吸湿性化合物としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化マグネシウム等)、過塩素酸類(例えば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
一方、封止材17として封止膜を用いる場合、有機EL素子100における有機機能層3を完全に覆い、かつ有機EL素子100における透明電極1及び対向電極5aの端子部分を露出させる状態で、透明基板13上に封止膜が設けられる。
このような封止膜は、無機材料や有機材料を用いて構成される。特に、水分や酸素等、有機EL素子100における有機機能層3の劣化をもたらす物質の浸入を抑制する機能を有する材料で構成されることとする。このような材料として、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等の無機材料が用いられる。さらに、封止膜の脆弱性を改良するために、これら無機材料からなる膜とともに、有機材料からなる膜を用いて積層構造としてもよい。
これらの膜の作製方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
(保護膜、保護板)
透明基板13とともに、有機EL素子100及び封止材17を挟むようにして保護膜若しくは保護板を設けてもよい。この保護膜若しくは保護板は、有機EL素子100を機械的に保護するためのものであり、特に封止材17が封止膜である場合には、有機EL素子100に対する機械的な保護が十分ではないため、このような保護膜若しくは保護板を設けることが好ましい。
以上のような保護膜若しくは保護板としては、ガラス板、ポリマー板、これよりも薄型のポリマーフィルム、金属板、これよりも薄型の金属フィルム、又はポリマー材料膜や金属材料膜が適用される。特に、軽量かつ薄膜化ということから、ポリマーフィルムを用いることが好ましい。
<有機EL素子の製造方法>
ここでは一例として、図2に示す有機EL素子100の製造方法について説明する。
まず、透明基板13上に、硬化性組成物により中間層1aを、1μm以下、好ましくは10〜100nmの層厚になるように湿式法等の適宜の方法で形成する。次に、銀(又は銀を含有する合金)を主成分とする導電性層1bを5〜20nmの範囲内、好ましくは8〜12nmの範囲内の層厚になるように湿式法等の適宜の方法により中間層1a上に形成し、アノードとなる透明電極1を作製する。
次に、この上に正孔注入層3a、正孔輸送層3b、発光層3c、電子輸送層3d、電子注入層3eの順に成膜し、有機機能層3を形成する。これらの各層の成膜は、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、蒸着法、印刷法等があるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法又はスピンコート法が特に好ましい。さらに、層ごとに異なる成膜法を適用してもよい。これらの各層の成膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度1×10−6〜1×10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、層厚0.1〜5μmの範囲内で、各条件を適宜選択することが望ましい。
以上のようにして有機機能層3を形成した後、この上部にカソードとなる対向電極5aを、蒸着法やスパッタ法等の適宜の成膜法によって形成する。この際、対向電極5aは、有機機能層3によって透明電極1に対して絶縁状態を保ちつつ、有機機能層3の上方から透明基板13の周縁に端子部分を引き出した形状にパターン形成する。これにより、有機EL素子100が得られる。その後には、有機EL素子100における透明電極1及び対向電極5aの端子部分を露出させた状態で、少なくとも有機機能層3を覆う封止材17を設ける。
以上により、透明基板13上に所望の有機EL素子が得られる。このような有機EL素子100の作製においては、一回の真空引きで一貫して有機機能層3から対向電極5aまで作製するのが好ましいが、途中で真空雰囲気から透明基板13を取り出して異なる成膜法を施しても構わない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
このようにして得られた有機EL素子100に直流電圧を印加する場合には、アノードである透明電極1を+の極性とし、カソードである対向電極5aを−の極性として、電圧2〜40V程度を印加すると発光が観測できる。また、交流電圧を印加してもよい。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
<有機EL素子の効果>
以上説明した有機EL素子100は、本発明の光透過性と導電性とを兼ね備えた透明電極1をアノードとして用い、この上部に有機機能層3とカソードとなる対向電極5aとを設けた構成である。このため、透明電極1と対向電極5aとの間に十分な電圧を印加して有機EL素子100での高輝度発光を実現しつつ、透明電極1側からの発光光hの取り出し効率が向上することによる高輝度化を図ることが可能である。さらに、所定輝度を得るための駆動電圧の低減による発光寿命の向上を図ることも可能になる。
≪4.有機EL素子の第2例≫
<有機EL素子の構成>
図3は、本発明の電子デバイスの一例として、上述した透明電極1を用いた有機EL素子の第2例を示す概略断面図である。図3に示す第2例の有機EL素子200が、図2に示した第1例の有機EL素子100と異なるところは、透明電極1をカソードとして用いるところにある。
以下、第1例と同様の構成要素についての重複する詳細な説明は省略し、第2例の有機EL素子200の特徴的な構成を説明する。
図3に示すとおり、有機EL素子200は、透明基板13上に設けられており、第1例と同様に、透明基板13上の透明電極1として先に説明した本発明の透明電極1を用いている。このため有機EL素子200は、少なくとも透明基板13側から発光光hを取り出せるように構成されている。ただし、この透明電極1は、カソード(陰極)として用いられる。このため、対向電極5bは、アノードとして用いられることになる。
このように構成される有機EL素子200の層構造は以下に説明する例に限定されることはなく、一般的な層構造であってもよいことは、第1例と同様である。
第2例の場合の一例としては、カソードとして機能する透明電極1の上部に、電子注入層3e/電子輸送層3d/発光層3c/正孔輸送層3b/正孔注入層3aをこの順に積層した構成が例示される。ただし、このうち少なくとも有機材料で構成された発光層3cを有することが必須である。
なお、有機機能層3は、これらの層の他にも、第1例で説明したのと同様に、必要に応じたさまざまな構成が採用される。このような構成において、透明電極1と対向電極5bとで有機機能層3が挟持された部分のみが、有機EL素子200における発光領域となることも第1例と同様である。
また、以上のような層構成においては、透明電極1の低抵抗化を図ることを目的として、透明電極1の導電性層1bに接して補助電極15が設けられていてもよいことも、第1例と同様である。
ここで、アノードとして用いられる対向電極5bは、金属、合金、有機若しくは無機の導電性化合物、又はこれらの混合物等から構成されている。具体的には、金(Au)等の金属、ヨウ化銅(CuI)、ITO、ZnO、TiO、SnO等の酸化物半導体等が挙げられる。
以上のように構成されている対向電極5bは、これらの導電性材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより作製することができる。
また、対向電極5bとしてのシート抵抗値は、数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常5nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲内で選ばれる。
なお、この有機EL素子200が、対向電極5b側からも発光光hを取り出せるように構成されている場合、対向電極5bを構成する材料としては、上述した導電性材料のうち光透過性の良好な導電性材料が選択されて用いられる。
以上のような構成の有機EL素子200は、有機機能層3の劣化を防止することを目的として、第1例と同様に封止材17で封止されている。
以上説明した有機EL素子200を構成する主要各層のうち、アノードとして用いられる対向電極5b以外の構成要素の詳細な構成、及び有機EL素子200の製造方法は、第1例と同様である。このため、詳細な説明は省略する。
<有機EL素子の効果>
以上説明した有機EL素子200は、本発明の光透過性と導電性とを兼ね備えた透明電極1をカソードとして用い、この上部に有機機能層3とアノードとなる対向電極5bとを設けた構成である。このため、第1例と同様に、透明電極1と対向電極5bとの間に十分な電圧を印加して有機EL素子200での高輝度発光を実現しつつ、透明電極1側からの発光光hの取り出し効率が向上することによる高輝度化を図ることが可能である。さらに、所定輝度を得るための駆動電圧の低減による発光寿命の向上を図ることも可能になる。
≪5.有機EL素子の第3例≫
<有機EL素子の構成>
図4は、本発明の電子デバイスの一例として、上述した透明電極1を用いた有機EL素子の第3例を示す概略断面図である。図4に示す第3例の有機EL素子300が、図2に示した第1例の有機EL素子100と異なるところは、基板131側に対向電極5cを設け、この上部に有機機能層3と透明電極1とをこの順に積層したところにある。
以下、第1例と同様の構成要素についての重複する詳細な説明は省略し、第3例の有機EL素子300の特徴的な構成を説明する。
図4に示す有機EL素子300は、基板131上に設けられており、基板131側から、アノードとなる対向電極5c、有機機能層3、及びカソードとなる透明電極1がこの順に積層されている。このうち、透明電極1として、先に説明した本発明の透明電極1を用いている。このため、有機EL素子300は、少なくとも基板131とは逆の透明電極1側から発光光hを取り出せるように構成されている。
このように構成される有機EL素子300の層構造は、以下に説明する例に限定されることはなく、一般的な層構造であってもよいことは第1例と同様である。
第3例の場合の一例としては、アノードとして機能する対向電極5cの上部に、正孔注入層3a/正孔輸送層3b/発光層3c/電子輸送層3dをこの順に積層した構成が例示される。ただし、このうち少なくとも有機材料を用いて構成された発光層3cを有することが必須である。また、電子輸送層3dは、電子注入層3eを兼ねたもので、電子注入性を有する電子輸送層3dとして設けられていることとする。
特に、第3例の有機EL素子300に特徴的な構成としては、電子注入性を有する電子輸送層3dが、透明電極1における中間層1aとして設けられているところにある。すなわち、第3例においては、カソードとして用いられる透明電極1が、電子注入性を有する電子輸送層3dを兼ねる中間層1aと、その上部に設けられた導電性層1bとで構成されているものである。
このような電子輸送層3dは、上述した透明電極1の中間層1aを構成する材料を用いて構成されている。
なお、有機機能層3は、これらの層の他にも、第1例で説明したと同様に、必要に応じたさまざまな構成が採用されるが、透明電極1の中間層1aを兼ねる電子輸送層3dと、透明電極1の導電性層1bとの間には、電子注入層や正孔阻止層が設けられることはない。以上のような構成において、透明電極1と対向電極5cとで有機機能層3が挟持された部分のみが、有機EL素子300における発光領域となることは、第1例と同様である。
また、以上のような層構成においては、透明電極1の低抵抗化を図ることを目的とし、透明電極1の導電性層1bに接して補助電極15が設けられていてもよいことも、第1例と同様である。
さらに、アノードとして用いられる対向電極5cは、金属、合金、有機若しくは無機の導電性化合物、又はこれらの混合物等から構成されている。具体的には、銀(Ag)、金(Au)等の金属、ヨウ化銅(CuI)、ITO、ZnO、TiO、SnO等の酸化物半導体等が挙げられる。
以上のように構成されている対向電極5cは、これらの導電性材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより作製することができる。
また、対向電極5cとしてのシート抵抗値は、数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常5nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で選ばれる。
なお、この有機EL素子300が、対向電極5c側からも発光光hを取り出せるように構成されている場合、対向電極5cを構成する材料としては、上述した導電性材料のうち光透過性の良好な導電性材料が選択されて用いられる。またこの場合、基板131としては、第1例で説明した透明基板13と同様のものが用いられ、基板131の外側に向かう面が光取り出し面131aとなる。
<有機EL素子の効果>
以上説明した有機EL素子300は、有機機能層3の最上部を構成する電子注入性を有する電子輸送層3dを中間層1aとし、この上部に導電性層1bを設けることにより、中間層1aと導電性層1bとからなる透明電極1をカソードとして設けた構成である。
このため、第1例及び第2例と同様に、透明電極1と対向電極5cとの間に十分な電圧を印加して有機EL素子300での高輝度発光を実現しつつ、透明電極1側からの発光光hの取り出し効率が向上することによる高輝度化を図ることが可能である。
さらに、所定輝度を得るための駆動電圧の低減による発光寿命の向上を図ることも可能になる。また、対向電極5cが光透過性を有する場合には、対向電極5cからも発光光hを取り出すことができる。
なお、上述の第3例においては、透明電極1の中間層1aが電子注入性を有する電子輸送層3dを兼ねているものとして説明したが、本例はこれに限られるものではなく、中間層1aが電子注入性を有していない電子輸送層3dを兼ねているものであってもよいし、中間層1aが電子輸送層ではなく電子注入層を兼ねているものであってもよい。また、中間層1aが有機EL素子の発光機能に影響を及ぼさない程度の極薄膜として形成されているものとしてもよく、この場合には、中間層1aは電子輸送性及び電子注入性を有していない。
さらに、透明電極1の中間層1aが有機EL素子の発光機能に影響を及ぼさない程度の極薄膜として形成されている場合には、基板131側の対向電極5cをカソードとし、有機機能層3上の透明電極1をアノードとしてもよい。この場合、有機機能層3は、基板131上の対向電極(カソード)5c側から順に、例えば、電子注入層3e/電子輸送層3d/発光層3c/正孔輸送層3b/正孔注入層3aが積層される。そして、この上部に極薄い中間層1aと導電性層1bとの積層構造からなる透明電極1が、アノードとして設けられる。
≪6.有機EL素子の用途≫
上述した各構成の有機EL素子は、上述したように面発光体であるため各種の発光光源として用いることができる。例えば、家庭用照明や車内照明等の照明装置、時計や液晶用のバックライト、看板広告用照明、信号機の光源、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられる。特に、カラーフィルターと組み合わせた液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
また、本発明の有機EL素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。この場合、近年の照明装置及びディスプレイの大型化にともない、有機EL素子を設けた発光パネル同士を平面的に接合する、いわゆるタイリングによって発光面を大面積化してもよい。
動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は、単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。また、異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を2種以上使用することにより、カラー又はフルカラー表示装置を作製することが可能である。
以下では、用途の一例として照明装置について説明し、次にタイリングによって発光面を大面積化した照明装置について説明する。
≪7.照明装置−1≫
本発明の有機EL素子は、照明装置に用いることができる。
本発明の有機EL素子は、上述した構成の各有機EL素子に共振器構造を持たせた設計としてもよい。共振器構造を有するように構成された有機EL素子の使用目的としては、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定されない。また、レーザー発振をさせることにより上記用途に使用してもよい。
なお、本発明の有機EL素子に用いられる材料は、実質的に白色の発光を生じる有機EL素子(白色有機EL素子)に適用できる。例えば、複数の発光材料により複数の発光色を同時に発光させて、混色により白色発光を得ることもできる。複数の発光色の組み合わせとしては、赤色、緑色、青色の三原色の三つの発光極大波長を含有させたものでもよいし、青色と黄色、青緑と橙色等の補色の関係を利用した二つの発光極大波長を含有したものでもよい。
また、複数の発光色を得るための発光材料の組み合わせは、複数のリン光又は蛍光で発光する材料を複数組み合わせたもの、蛍光又はリン光で発光する発光材料と、発光材料からの光を励起光として発光する色素材料との組み合わせたもののいずれでもよいが、白色有機EL素子においては、発光ドーパントを複数組み合わせて混合したものでもよい。
このような白色有機EL素子は、各色発光の有機EL素子をアレー状に個別に並列配置して白色発光を得る構成と異なり、有機EL素子自体が白色を発光する。このため、素子を構成するほとんどの層の成膜にマスクを必要とせず、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等で成膜することができ、生産性も向上する。
また、このような白色有機EL素子の発光層に用いる発光材料としては、特に制限はなく、例えば、液晶表示素子におけるバックライトであれば、CF(カラーフィルター)特性に対応した波長範囲に適合するように、上記した金属錯体や公知の発光材料の中から任意のものを選択して組み合わせて白色化すればよい。
以上に説明した白色有機EL素子を用いれば、実質的に白色の発光を生じる照明装置を作製することが可能である。
≪8.照明装置−2≫
図5は、上記各構成の有機EL素子を複数用いて発光面を大面積化した照明装置の概略断面図である。
図5に示すとおり、照明装置21は、透明基板13上に有機EL素子100を備えた複数の発光パネル22を、支持基板23上に複数配列(タイリング)することによって発光面を大面積化した構成である。支持基板23は、封止材17を兼ねるものであってもよく、この支持基板23と、発光パネル22の透明基板13との間に有機EL素子100を挟持する状態で各発光パネル22をタイリングする。支持基板23と透明基板13との間には接着剤19を充填し、これによって有機EL素子100を封止してもよい。なお、発光パネル22の周囲には、アノードである透明電極1及びカソードである対向電極5aの端部を露出させておく。ただし、図5においては対向電極5aの露出部分のみを図示した。
なお、図5では、有機EL素子100を構成する有機機能層3として、透明電極1上に、正孔注入層3a/正孔輸送層3b/発光層3c/電子輸送層3d/電子注入層3eを順次積層した構成を一例として示している。
このような構成の照明装置21では、各発光パネル22の中央が発光領域Aとなり、発光パネル22間には非発光領域Bが発生する。このため、非発光領域Bからの光取り出し量を増加させるための光取り出し部材を、光取り出し面13aの非発光領域Bに設けてもよい。光取り出し部材としては、集光シートや光拡散シートを用いることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
[実施例1]
《透明電極の作製》
以下に説明するように、透明電極101〜117を、導電性領域の面積が5cm×5cmとなるように作製した。透明電極101〜117は、中間層と導電性層との積層構造の透明電極として作製した。
(1)透明電極101の作製
無アルカリガラス製の基材上に、比較化合物1のPGME(1−メトキシ−2−プロパノール)溶液を用い、スピンコート法により薄膜を形成した。130℃で1時間加熱乾燥して重合反応を行い、層厚30nmの比較化合物1から形成される重合体を含有する中間層を設けた。
Figure 0006519139
この中間層上に、導電性層材料として錯体銀からなるインクジェットインク(Ink Tec(株)製、TEC−IJ−010)1.0mlを、エタノールにより10倍希釈した。この希釈溶液0.1mlを、スピンコート法により塗布・パターニングした後、120℃で30分間焼成し、層厚10nmの銀からなる導電性層を形成し、中間層と導電性層との積層構造からなる透明電極101を作製した。
(2)透明電極102の作製
透明電極101の作製において、導電性層の層厚を15nmに変更した以外は同様にして、透明電極102を作製した。
(3)透明電極103の作製
透明電極101と同様の作製手順によって中間層を設けた。
中間層まで成膜した基板を真空槽に移し、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、銀の入った加熱ボートを通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒の範囲内で、中間層上に、層厚10nmの銀からなる導電性層を形成し、中間層と導電性層との積層構造からなる透明電極103を作製した。
(4)透明電極104の作製
無アルカリガラス製の基材上に、P−1のPGME溶液を用い、スピンコート法により薄膜を形成した。130℃で30分間加熱乾燥し、層厚30nmのP−1から形成される重合体を含有する中間層を設けた。
この中間層上に、導電性層材料として金ナノ粒子からなる導電性インク(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製、製品番号:741949、直径5nm)1.0mlを、エタノールにより10倍希釈した。この希釈溶液0.1mlを、スピンコート法により塗布・パターニングした後、120℃で30分間焼成し、層厚10nmの金からなる導電性層を形成し、中間層と導電性層との積層構造からなる透明電極104を作製した。
(5)透明電極105の作製
透明電極104の作製において、導電性層の層厚を15nmに変更した以外は同様にして、透明電極105を作製した。
(6)透明電極106の作製
透明電極104の作製において、導電性層の構成材料を表2に記載のインクジェットインクに変更した以外は同様にして、透明電極106を作製した。
(7)透明電極107の作製
透明電極103の作製において、中間層の構成材料を表2に記載の化合物に変更した以外は同様にして、透明電極107を作製した。
(8)透明電極108〜111の作製
透明電極101の作製において、中間層の構成材料を表2に記載の化合物に変更した以外は同様にして、透明電極108〜111を作製した。
(9)透明電極112の作製
無アルカリガラス製の基材上に、P−15及びアセトフェノンをモル比100:1で含有するPGME溶液を用い、スピンコート法により塗布・パターニングして、硬化する性質を有する組成物からなる層を形成した。その後、ホットプレート上に移動させて130℃で30分間加熱することで乾燥及び重合反応を行い、層厚30nmのP−15から形成される重合体を含有する中間層を設けた。
この中間層上に、透明電極101の導電性層の作製手順と同様にして導電性層を形成し、中間層と導電性層との積層構造からなる透明電極112を作製した。
(10)透明電極113の作製
無アルカリガラス製の基材上に、P−17及びP−36をモル比1:100で含有するPGME溶液を用い、スピンコート法により薄膜を形成した。130℃で30分間加熱乾燥し、層厚30nmのP−17及びP−36から形成される共重合体を含有する中間層を設けた。
この中間層上に、透明電極101の導電性層の作製手順と同様にして導電性層を形成し、中間層と導電性層との積層構造からなる透明電極113を作製した。
(11)透明電極114の作製
透明電極113の作製において、中間層の構成材料を表2に記載の化合物に変更した以外は同様にして、透明電極114を作製した。
(12)透明電極115の作製
無アルカリガラス製の基材上に、P−16、P−47及びAIBNをモル比100:10000:1で含有するトルエン溶液を用い、スピンコート法により塗布・パターニングして、硬化する性質を有する組成物からなる層を形成した。その後、ホットプレート上に移動させて130℃で30分間加熱することで乾燥及び重合反応を行い、130℃で30分間加熱乾燥し、層厚30nmのP−16及びP−47から形成される共重合体を含有する中間層を設けた。
この中間層上に、透明電極101の導電性層の作製手順と同様にして導電性層を形成し、中間層と導電性層との積層構造からなる透明電極115を作製した。
(13)透明電極116及び117の作製
透明電極111及び115の作製において、基材をPET(帝人デュポンフィルム(株)製、テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルム K)に変更した以外は同様にして、透明電極116及び117を作製した。
《透明電極の評価》
作製した透明電極101〜117について、下記の方法に従い、光透過率、シート抵抗値及び高温保存下でのシート抵抗値変化(耐久性)の測定を行った。
(1)光透過率の測定
作製した各透明電極について、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ製U−3300)を用い、各透明電極の基板をリファレンスとして、測定光波長550nmにおける光透過率(%)を測定した。
測定結果を表2に示す。
(2)シート抵抗値の測定
作製した各透明電極について、抵抗率計(三菱化学アナリテック社製MCP−T610)を用い、4探針法定電流印加方式でシート抵抗値(Ω/□)を測定した。
測定結果を表2に示す。
(3)高温保存下でのシート抵抗値変化の測定
作製した各透明電極について、温度80℃/相対湿度90%雰囲気下において保存し、シート抵抗値変化を測定した。具体的には、試験開始前と120時間経過後のシート抵抗値を比較して、変化を評価し、結果を表2に示した。シート抵抗値は、抵抗率計(三菱化学アナリテック社製MCP−T610)を用い、四探針法定電流印加方式でシート抵抗値(Ω/□)を測定し、初期シートからの抵抗値の変化を算出した。各透明電極の高温保存下でのシート抵抗値変化は、透明電極108のシート抵抗値変化を100とする相対値で示しており、値が小さいほど変化が少ないことを表し、耐久性が優れている。
Figure 0006519139
(4)まとめ
比較例の透明電極番号101〜104は、シート抵抗値及び高温保存下でのシート抵抗値がいずれも測定不可となった。これは、湿式法により導電性層を形成した際、中間層がPGME溶媒に溶出して層が乱れてしまい、透明電極としての機能が失われてしまったためである。
また、表2から明らかなように、本発明に係る硬化性組成物から形成された中間層上に導電性層を設けた本発明の透明電極104〜117は、いずれも光透過率が53%以上であり、シート抵抗値が16.9Ω/□以下に抑えられている。これに対して、比較例の透明電極101〜103は、光透過率が53%未満であり、シート抵抗値は測定することができなかった。
また、耐久性(高温保存下でのシート抵抗値変化)においても、比較例の透明電極101〜103が測定できないのに対し、本発明の透明電極104〜117は、変化が小さく、優れていることが分かった。
また、PETのような樹脂フィルムを基材に用いた場合についても、無アルカリガラスと同等の評価結果が得られたことから、基板によらず効果を発現することが確認できた。
以上から、本発明の透明電極は、高い光透過率と導電性とを兼ね備え、更に耐久性に優れていることが確認された。
[実施例2]
《透明電極の作製》
以下に説明するように、透明電極201〜218を、導電性領域の面積が5cm×5cmとなるように作製した。透明電極201〜218は、中間層と導電性層と光学調整層の積層構造の透明電極として作製した。
(1)透明電極201の作製
無アルカリガラス製の基材上に、比較化合物2のMEK溶液を用い、スピンコート法により薄膜を形成した。110℃で1時間加熱乾燥し、層厚60nmの比較化合物2から形成される重合体を含有する中間層を設けた。
この中間層上に、導電性層材料として錯体銀からなるインクジェットインク(Ink Tec(株)製、TEC−IJ−010)1.0mlを、エタノールにより10倍希釈した。この希釈溶液0.1mlを、スピンコート法により塗布・パターニングした後、120℃で30分間焼成し、層厚10nmの銀からなる導電性層を形成した。
この導電性層上に、K−1のMEK溶液を用い、スピンコート法により薄膜を形成した。150℃で1時間加熱乾燥し、層厚50nmのK−1を含有する光学調整層を設け、中間層と導電性層と光学調整層との積層構造からなる透明電極201を作製した。
Figure 0006519139
(2)透明電極202の作製
透明電極201の作製において、導電性層の層厚を15nmに変更した以外は同様にして、透明電極202を作製した。
(3)透明電極203の作製
透明電極201と同様の作製手順によって中間層を設けた。
中間層まで成膜した基板を真空槽に移し、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、銀の入った加熱ボートを通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒の範囲内で、中間層上に、層厚10nmの銀からなる導電性層を形成した。
この導電性層上に、大気下で透明電極201の光学調整層の作製手順と同様にして光学調整層を形成し、中間層と導電性層と光学調整層の積層構造からなる透明電極203を作製した。
(4)透明電極204の作製
無アルカリガラス製の基材上に、P−4のMEK溶液を用い、スピンコート法により薄膜を形成した。110℃で1時間加熱乾燥し、層厚60nmのP−4から形成される重合体を含有する中間層を設けた。
この中間層上に、導電性層材料として金ナノ粒子からなる導電性インク(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製、製品番号:741949、直径5nm)1.0mlを、2−プロパノールにより10倍希釈した。この希釈溶液0.1mlを、スピンコート法により塗布・パターニングした後、120℃で30分間焼成し、層厚10nmの金からなる導電性層を形成した。
この導電性層上に、透明電極201の光学調整層の作製手順と同様にして光学調整層を形成し、中間層と導電性層と光学調整層の積層構造からなる透明電極204を作製した。
(5)透明電極205の作製
透明電極204の作製において、導電性層の層厚を15nmに変更した以外は同様にして、透明電極205を作製した。
(6)透明電極206の作製
透明電極204の作製において、導電性層の構成材料を表3に記載のインクジェットインクに変更した以外は同様にして、透明電極206を作製した。
(7)透明電極207の作製
透明電極203の作製において、中間層の構成材料を表3に記載の化合物に変更した以外は同様にして、透明電極207を作製した。
(8)透明電極208の作製
透明電極201の作製において、中間層の構成材料を表3に記載の化合物に変更し、光学調整層を設けなかった以外は同様にして、透明電極208を作製した。
(9)透明電極209の作製
透明電極201の作製において、中間層の構成材料を表3に記載の化合物に変更した以外は同様にして、透明電極209を作製した。
(10)透明電極210及び211の作製
透明電極201の作製において、中間層及び光学調整層の構成材料を表3に記載の化合物に変更した以外は同様にして、透明電極210及び211を作製した。
(11)透明電極212の作製
透明電極209の作製において、光学調整層の層厚を25nmに変更した以外は同様にして、透明電極212を作製した。
(12)透明電極213の作製
無アルカリガラス製の基材上に、P−14及びベンゾフェノンをモル比200:1で含有するトルエン溶液を用い、スピンコート法により塗布・パターニングして、硬化する性質を有する組成物からなる層を形成した。その後、ホットプレート上に移動させて110℃で1時間加熱することで乾燥及び重合反応を行い、層厚60nmのP−14から形成される重合体を含有する中間層を設けた。
この中間層上に、透明電極211の導電性層及び光学調整層の作製手順と同様にして導電性層及び光学調整層を形成し、中間層と導電性層と光学調整層の積層構造からなる透明電極213を作製した。
(13)透明電極214の作製
無アルカリガラス製の基材上に、P−77及びP−20をモル比2:1で含有するトルエン溶液を用い、スピンコート法により薄膜を形成した。110℃で1時間加熱乾燥し、層厚60nmのP−77及びP−20から形成される共重合体を含有する中間層を設けた。
この中間層上に、透明電極201の導電性層の作製手順と同様にして導電性層を形成した。また、光学調整層の構成材料を表3に記載の化合物に変更した以外は透明電極201の光学調整層の作製手順と同様にして、透明電極214を作製した。
(14)透明電極215の作製
透明電極214の作製において、中間層の構成材料を表3に記載の化合物に変更した以外は同様にして、透明電極215を作製した。
(15)透明電極216の作製
無アルカリガラス製の基材上に、P−71、P−60及びAIBNをモル比100:100:1で含有するトルエン溶液を用いスピンコート法により塗布・パターニングして、硬化する性質を有する組成物からなる層を形成した。その後、ホットプレート上に移動させて110℃で1時間加熱することで乾燥及び重合反応を行い、層厚60nmのP−71及びP−60から形成される共重合体を含有する中間層を設けた。
この中間層上に、透明電極214の導電性層及び光学調整層の作製手順と同様にして導電性層及び光学調整層を形成し、中間層と導電性層と光学調整層の積層構造からなる透明電極216を作製した。
(16)透明電極217及び218の作製
透明電極211及び216の作製において、基材をPET(帝人デュポンフィルム(株)製、テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルム K)に変更した以外は同様にして、透明電極217及び218を作製した。
《透明電極の評価》
作製した透明電極201〜218について、下記の方法に従い、光透過率、シート抵抗値及び高温保存下での光透過率変化(耐久性)の測定を行った。(1)光透過率の測定及び(2)シート抵抗値の測定は実施例1と同様に行った。
(3)高温保存下での光透過率変化の測定
作製した各透明電極について、温度60℃/相対湿度90%雰囲気下において保存し、光透過率変化を測定した。具体的には、試験開始前に比較して、120時間経過後の光透過率変化を評価し、結果を表3に示した。光透過率は、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ製U−3300)を用い、各透明電極の基板をリファレンスとして、測定光波長550nmにおける光透過率(%)を測定した。各透明電極の高温保存下での光透過率変化は、透明電極209の光透過率変化を100とする相対値で示している。
Figure 0006519139
(4)まとめ
比較例の透明電極番号201〜203は、シート抵抗値及び高温保存下でのシート抵抗値がいずれも測定不可となった。これは、湿式法により導電性層を形成した際、中間層がMEK溶媒に溶出して層が乱れてしまい、透明電極としての機能が失われてしまったためである。
表3から明らかなように、本発明に係る硬化性組成物から形成された中間層上に導電性層を設けた本発明の透明電極204〜218は、いずれも光透過率が62%以上であり、シート抵抗値が16.5Ω/□以下に抑えられている。これに対して、比較例の透明電極201〜203は、光透過率が62%未満のものがあり、シート抵抗値は測定することができなかった。
また、耐久性(高温保存下での光透過率変化)においても、比較例の透明電極201〜203が測定できないのに対して、本発明の透明電極204〜218が、変化が小さく、優れていることが分かる。
また、PETのような樹脂フィルムを基材に用いた場合についても、無アルカリガラスと同等の評価結果が得られたことから、基板によらず効果を発現することが確認できた。
以上から、本発明の透明電極は、高い光透過率と導電性とを兼ね備え、更に耐久性に優れていることが確認された。
[実施例3]
《発光パネルの作製》
透明電極をアノードとして用いた両面発光型の発光パネル401〜417を作製した。以下、図6を参照して、作製手順を説明する。
(1)発光パネル401の作製
無アルカリガラス製の基材上に、比較化合物3の酢酸メチル溶液を用い、スピンコート法により薄膜を形成した。110℃で1時間加熱乾燥し、層厚20nmの比較化合物3から形成される重合体を含有する中間層を設けた。
この中間層上に、導電性層材料として錯体銀からなるインクジェットインク(Ink Tec(株)製、TEC−IJ−010)1.0mlを、エタノールにより10倍希釈した。この希釈溶液0.1mlを、スピンコート法により塗布・パターニングした後、120℃で30分間焼成し、層厚10nmの銀からなる導電性層を形成し、中間層と導電性層との積層構造からなる透明電極1を作製した。
次いで、透明電極1が形成された透明基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、透明電極1の形成面側に蒸着マスクを対向配置した。また、真空蒸着装置内の加熱ボートの各々に、有機機能層3を構成する各材料を、それぞれの層の成膜に最適な量で充填した。なお、加熱ボートは、タングステン製抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
次いで、真空蒸着装置の蒸着室内を真空度4×10−4Paまで減圧し、各材料が入った加熱ボートを順次通電して加熱することにより、以下のように各層を成膜した。
まず、正孔輸送注入材料としてα−NPD(4,4′−Bis[phenyl(1−naphthyl)amino]−1,1′−biphenyl)が入った加熱ボートに通電して加熱し、α−NPDよりなる正孔注入層と正孔輸送層とを兼ねた正孔輸送注入層31を、透明電極1を構成する導電性層1b上に成膜した。この際、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒、層厚20nmとした。
次いで、ホスト材料H4の入った加熱ボートと、リン光発光ドーパントIr−4の入った加熱ボートとを、それぞれ独立に通電し、ホスト材料H4とリン光発光ドーパントIr−4を含有する発光層3cを、正孔輸送注入層31上に成膜した。この際、蒸着速度がホスト材料H4:リン光発光ドーパントIr−4=100:6となるように、加熱ボートの通電を調節した。また、層厚は30nmとした。
Figure 0006519139
次いで、正孔阻止材料としてBAlq([Bis(2−methyl−8−quinolinolate)−4−(phenylphenolato)aluminium])が入った加熱ボートに通電して加熱し、BAlqよりなる正孔阻止層33を、発光層3c上に成膜した。この際、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒、層厚10nmとした。
その後、電子輸送材料として下記に示すET−6の入った加熱ボートと、フッ化カリウムの入った加熱ボートとを、それぞれ独立に通電し、ET−6とフッ化カリウムを含有する電子輸送層3dを、正孔阻止層33上に成膜した。この際、蒸着速度がET−6:フッ化カリウム=75:25になるように、加熱ボートの通電を調節した。また、層厚30nmとした。
次に、電子注入材料としてフッ化カリウムの入った加熱ボートに通電して加熱し、フッ化カリウムよりなる電子注入層3eを、電子輸送層3d上に成膜した。この際、蒸着速度0.01〜0.02nm/秒、層厚1nmとした。
その後、電子注入層3eまで成膜した透明基板13を、真空蒸着装置の蒸着室から、対向電極材料としてITOのターゲットが取り付けられたスパッタ装置の処理室内に、真空状態を保持したまま移送した。次いで、処理室内において、成膜速度0.3〜0.5nm/秒で、膜厚150nmのITOからなる光透過性の対向電極5aをカソードとして成膜した。以上により、透明基板13上に有機EL素子400を形成した。
その後、有機EL素子400を、厚さ300μmのガラス基板からなる封止材17で覆い、有機EL素子400を囲む状態で、封止材17と透明基板13との間に接着剤19(シール材)を充填した。接着剤19としては、エポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を用いた。封止材17と透明基板13との間に充填した接着剤19に対して、ガラス基板(封止材17)側からUV光を照射し、接着剤19を硬化させて有機EL素子400を封止した。
なお、有機EL素子400の形成においては、各層の形成に蒸着マスクを使用し、5cm×5cmの透明基板13における中央の4.5cm×4.5cmを発光領域Aとし、発光領域Aの全周に幅0.25cmの非発光領域Bを設けた。また、アノードである透明電極1とカソードである対向電極5aとは、正孔輸送注入層31から電子注入層3eまでの有機機能層3によって絶縁された状態で、透明基板13の周縁に端子部分を引き出された形状で形成した。
以上のようにして、透明基板13上に有機EL素子400を設け、これを封止材17と接着剤19とで封止した発光パネル401を作製した。
発光パネル401においては、発光層3cで発生した各色の発光光hが、透明電極1側すなわち透明基板13側と、対向電極5a側すなわち封止材17側との両方から取り出される。
(2)発光パネル402の作製
発光パネル401の作製において、導電性層1bの層厚を15nmに変更した以外は同様にして、発光パネル402を作製した。
(3)発光パネル403の作製
発光パネル401の作製において、導電性層1bを蒸着法により形成した以外は同様にして、発光パネル403を作製した。なお、蒸着法による作製は、実施例1の透明電極103と同様である。
(4)発光パネル404の作製
発光パネル401の作製において、中間層の構成材料をP−3に変更した以外は同様の形成方法により中間層を形成した。
この中間層上に、導電性層材料として金ナノ粒子からなる導電性インク(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製、製品番号:741949、直径5nm)1.0mlを、n−プロパノールにより10倍希釈した。この希釈溶液0.1mlを、スピンコート法により塗布・パターニングした後、120℃で30分間焼成し、層厚10nmの金からなる導電性層を形成し、中間層と導電性層との積層構造からなる透明電極を作製した。
発光パネル401の作製において、中間層の構成材料をP−3として上記作製した透明電極を用いた以外は同様にして、発光パネル404を作製した。
(5)発光パネル405の作製
発光パネル404の作製において、導電性層の層厚を15nmに変更した以外は同様にして、発光パネル405を作製した。
(6)発光パネル406の作製
発光パネル404の作製において、導電性層の構成材料を表4に記載のインクジェットインクに変更した以外は同様にして、発光パネル406を作製した。
(7)発光パネル407の作製
発光パネル403の作製において、中間層の構成材料を表4に記載の化合物に変更した以外は同様にして、発光パネル407を作製した。
(8)発光パネル408〜411の作製
発光パネル401の作製において、中間層の構成材料を表4に記載の化合物に変更した以外は同様にして、発光パネル408〜411を作製した。
(9)発光パネル412の作製
無アルカリガラス製の基材上に、P−67及びアセトフェノンをモル比150:1で含有する酢酸メチル溶液を用い、スピンコート法により塗布・パターニングして、硬化する性質を有する組成物からなる層を形成した。その後、ホットプレート上に移動させて100℃で1時間加熱することで乾燥及び重合反応を行い、層厚20nmのP−67から形成される重合体を含有する中間層を設けた。
発光パネル401の作製において、中間層の構成材料をP−67として、アセトフェノンをラジカル重合開始剤として上記作製した透明電極を用いた以外は同様にして、発光パネル412を作製した。
(10)発光パネル413の作製
無アルカリガラス製の基材上に、P−74及びP−35をモル比5:1で含有する酢酸メチル溶液を用い、スピンコート法により薄膜を形成した。100℃で1時間加熱乾燥し、層厚20nmのP−74及びP−35から形成される共重合体を含有する中間層を設けた。
発光パネル401の作製において、中間層の構成材料をP−74及びP−35として、上記作製した透明電極を用いた以外は同様にして、発光パネル413を作製した。
(11)発光パネル414の作製
発光パネル413の作製において、中間層の構成材料を表4に記載の化合物に変更した以外は同様にして、発光パネル414を作製した。
(12)発光パネル415の作製
無アルカリガラス製の基材上に、P−79、P−58及びAIBNをモル比200:200:1で含有する酢酸メチル溶液を用いスピンコート法により塗布・パターニングして、硬化する性質を有する組成物からなる層を形成した。その後、ホットプレート上に移動させて100℃で1時間加熱することで乾燥及び重合反応を行い、層厚20nmのP−79及びP−58から形成される共重合体を含有する中間層を設けた。
発光パネル401の作製において、中間層の構成材料をP−79及びP−58として、上記作製した透明電極を用いた以外は同様にして、発光パネル415を作製した。
(13)透明電極416及び417の作製
発光パネル411及び415の作製において、基材をPET(帝人デュポンフィルム(株)製、テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルム K)に変更した以外は同様にして、発光パネル416及び417を作製した。
《発光パネルの評価》
作製した発光パネル401〜417について、下記の方法に従い、光透過率、駆動電圧及び高温保存下での外部量子効率変化(耐久性)の測定を行った。
(1)光透過率の測定
作製した各発光パネルについて、分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ製U−3300)を用い、各発光パネルの透明電極の基板をリファレンスとして、測定光波長550nmにおける光透過率(%)を測定した。
(2)駆動電圧の測定
上記作製した各発光パネルの透明電極1側(すなわち透明基板13側)と、対向電極5a側(すなわち封止材17側)との両側での正面輝度を測定し、その和が1000cd/mとなるときの電圧を駆動電圧(V)として測定した。なお、輝度の測定には、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ社製)を用いた。得られた駆動電圧の数値が小さいほど、好ましい結果であることを表す。
(3)高温保存下での外部量子効率(EQE)変化の測定
上記作製した発光パネルに含まれる各有機EL素子を、75℃で、2.5mA/cmの定電流条件下で発光させ、発光開始直後の発光輝度と、開始200時間後の発光輝度を、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタ社製)を用いて測定した。
発光開始直後の発光輝度に対する開始200時間後の相対発光輝度を求め、これを外部量子効率(External Quantum Efficiency:EQE)の尺度とした。数値が小さいほど、発光輝度の変化が小さく、外部量子効率が優れていることを表す。
Figure 0006519139
(4)まとめ
比較例の発光パネル401〜403は、駆動電圧及び高温保存下でのEQE変化がいずれも測定することができなかった。これは、湿式法により導電性層を形成した際、中間層が酢酸メチル溶媒に溶出して層が乱れてしまい、透明電極としての機能が失われてしまったためである。
表4から明らかなように、本発明の透明電極を有機EL素子のアノードに発光パネル406〜417は、いずれも光透過率が65%以上であり、駆動電圧が5.6V以下に抑えられている。これに対して、比較例の透明電極を有機EL素子のアノードに用いた発光パネル401〜403は、光透過率が65%未満であり、駆動電圧を測定することができなかった。
また、耐久性(高温保存下での外部量子効率変化)においても、比較例の発光パネル401〜403が測定できない一方で、発光パネル404〜417が、優れていることが分かった。
以上から、本発明の有機EL素子を用いた発光パネルは、高い光透過率と導電性とを兼ね備え、更に耐久性に優れていることが確認された。
また、実施例1〜3で示したとおり、本発明に係る硬化性組成物を用いて中間層を形成させることで、中間層が多様な溶媒に対する耐性を有しているため、所望の効果を発現するために適した層構成の透明電極及び当該透明電極を具備する発光パネルを作製することができた。
1、2 透明電極
1a、2a 中間層
1b、2b 導電性層
2c 光学調整層
3 有機機能層
3a 正孔注入層
3b 正孔輸送層
3c 発光層
3d 電子輸送層
3e 電子注入層
31 正孔輸送注入層
33 正孔阻止層
5a、5b、5c 対向電極
11、12 基板
13、131 透明基板(基板)
13a、131a 光取り出し面
15 補助電極
17 封止材
19 接着剤
21 照明装置
22 発光パネル
23 支持基板
100、200、300、400 有機EL素子
A 発光領域
B 非発光領域
h 発光光

Claims (13)

  1. 導電性層と、前記導電性層に隣接して設けられる中間層と、を備える透明電極であって、
    前記導電性層が、金、銀又は銅を主成分として含有し(ただし、平均アスペクト比(アスペクト=長さ/直径)が10〜10000である導電性繊維を除く)、
    前記中間層が、硬化性組成物により形成されており、
    前記硬化性組成物が、芳香族性に関与しない非共有電子対を有する窒素原子を含む芳香族複素環化合物を含有し、
    前記導電性層の厚さが、5〜20nmの範囲内であることを特徴とする透明電極。
  2. 前記導電性層が、銀を主成分として含有することを特徴とする請求項1に記載の透明電極。
  3. 前記中間層及び前記導電性層がともに、湿式法で形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の透明電極。
  4. 前記硬化性組成物が、熱硬化性組成物又は光硬化性組成物であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の透明電極。
  5. 前記硬化性組成物が、重合性組成物であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の透明電極。
  6. 前記重合性組成物が、ビニル基を有する1種類のモノマーからなる組成物であることを特徴とする請求項5に記載の透明電極。
  7. 前記重合性組成物が、ビニル基を有する2種類以上のモノマーからなる共重合性組成物であることを特徴とする請求項5に記載の透明電極。
  8. 前記重合性組成物が、ビニル基を有するモノマーとチオール基を有するモノマーとの共重合性組成物であることを特徴とする請求項5に記載の透明電極。
  9. 前記重合性組成物が、分子内に二つ以上のビニル基を有するモノマーを含有する組成物であることを特徴とする請求項5から請求項8までのいずれか一項に記載の透明電極。
  10. 前記重合性組成物が、ラジカル重合開始剤を用いて重合される組成物であることを特徴とする請求項5から請求項9までのいずれか一項に記載の透明電極。
  11. 前記硬化性組成物が、ピリジン、トリアジン、アザジベンゾフラン、アザカルバゾール、チアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、アザジベンゾチオフェン、キノリン、ベンズチアジアゾール、フェナントロリン、イミダゾール、トリアゾール又はピラジン骨格を有する重合性化合物を含有する組成物であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の透明電極。
  12. 請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の透明電極を備えていることを特徴とする電子デバイス。
  13. 陽極と陰極の間に、少なくとも発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    前記陽極又は陰極が、請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の透明電極を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
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