以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
なお図示及び理解を容易にするため、図面に示される各要素のサイズや要素間のサイズ比率等は必ずしも図面間で一致していないが、当業者であれば各図面に示された要素のサイズやサイズ比率等を容易に理解することができる。また以下の説明において、単に「光」と表記する場合には、主として可視光域の光が意図されているが、可視光域外の波長の光に対しても以下の実施形態を適用することが可能である。また「透明」とは、光を透過させることができる性質を意味し、波長毎の具体的な光の透過率は問われないが、通常は透過率が高いほど透明度が高いと言える。したがって、いわゆる半透明も、広義には透明の概念に含まれうる。
また本発明の説明及び特定において、「シール柱」の名称は便宜的に用いられているに過ぎず、シール柱の機能、形状、及びその他の特性は、その名称のみによっては限定されず、例えば「柱状スペーサー」とも称されうる。すなわちシール柱の特性は、本明細書における説明及び添付の特許請求の範囲、図面及び要約書に基づいて適宜特定されるべきものであり、シール柱の特性としてシール機能(すなわち密封機能)や柱形状は必須ではないことに留意されるべきである。
[液晶溜まり部の発生メカニズム]
まず、液晶溜まり部の発生メカニズムについて説明する。ここで、本明細書中「液晶溜まり部」とは、液晶層の厚みが不均一になり、他の部分よりも厚みが極端に大きくなった液晶層の一部分をいう。液晶溜まり部の発生メカニズムは種々考えられるが、典型的な発生メカニズムについて以下説明する。
図1A及び図1Bは、調光装置10の概略を示す断面図であって、液晶溜まり部15の発生メカニズムの一例を説明するための図である。
調光装置10は、一対の透光部材12と、一対の透光部材12間に配置される調光セル11とを備える。一対の透光部材12間の領域には、調光セル11が配置されるとともに、中間支持材13が充填されている。調光セル11は、中間支持材13内に配置されており、中間支持材13を介して各透光部材12に接合及び固定されている。
調光セル11は、液晶層(後述の図3の符合「21」参照)を含み、印加される電圧に応じて光の透過率が変化する。調光セル11の具体的な構成例については、後述する。
透光部材12は、光を透過させつつ調光セル11を外力から保護する。したがって透光部材12は、内側に配置される調光セル11を外部から加えられる力から守ることができる程度の強度、剛性及び弾性を有する。典型的には、ガラスや熱可塑性プラスチック(例えば強化プラスチック等)によって透光部材12を構成することができるが、所望の機能を発揮しうる様々な材料(例えば透明ガラス繊維や紫外線吸収材等)を透光部材12は含んでいてもよい。また透光部材12は、典型的には透明だが、特定の波長域の光のみを透過可能な材料によって構成されてもよい。また透光部材12同士は、同一の組成を有してもよいし、互いに異なる組成を有してもよい。
中間支持材13は、光を透過させつつ、各透光部材12及び調光セル11に接着して透光部材12間において調光セル11を保持し、各透光部材12に対する調光セル11の相対位置を定めつつ調光セル11を外力から保護する。また中間支持材13は、調光セル11を密閉して、調光セル11を外部からの影響(例えば湿気等)から隔絶する。したがって中間支持材13は、これらの役割を果たすのに好適な材料(特に樹脂接着剤)によって構成されることが好ましい。例えば、ウレタン樹脂(PU:Polyurethane)、アイオノマー樹脂(IO:Ionomer)、ポリビニルブチラール樹脂(PVB:Polyvinyl butyral)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA:Ethylen−Vinyl Acetate polymer)及びシクロオレフィンポリマー(COP:Cyclo Olefin Polymer)のうちのいずれか1以上の材料によって、中間支持材13を構成することが可能である。
また図示は省略するが、調光セル11には電極基板としてのFPC(Flexible Printed Circuits)が取り付けられている。このFPCは、調光セル11の電極(後述の図3の符合「24」及び「25」参照)に接続されるとともに、中間支持材13を貫通し外部に延びて調光コントローラ(図示省略)に接続される。
上述の図1A及び図1Bに示す調光装置10では、調光セル11及び透光部材12が積層する方向(すなわち積層方向)D1に関して、加熱環境下で透光部材12が互いに近づくように各透光部材12に力が加えられることにより、中間支持材13が各透光部材12に熱圧着され、調光セル11が中間支持材13に熱圧着される。これにより、調光セル11は中間支持材13を介して各透光部材12に対して固定される。この熱圧着処理において、積層方向D1への押圧力Fが、積層方向D1と垂直を成す調光セル11の延在方向D2に関し、調光セル11に対して不均等に作用すると、調光セル11には液晶溜まり部15が発生しうる。すなわち、液晶は流動性を有するため、調光セル11のうち相対的に大きな押圧力Fを受ける箇所の液晶は他の箇所に向けて押し出され、相対的に小さな押圧力Fを受ける箇所に液晶が溜まる。その結果として、図1Bに示すように、積層方向D1への厚みが相対的に大きい液晶溜まり部15が発生する。
図2A及び図2Bは、液晶溜まり部の発生メカニズムの他の例を示す調光装置10の概略を示す断面図である。図2A及び図2Bに示す調光装置10は、上述の図1A及び図1Bに示す調光装置10と同様の構成を有する。ただし図2A及び図2Bに示す調光装置10では、加熱真空環境下において、外周部の中間支持材13b(例えば中間支持材13のうち積層方向D1に関して調光セル11と重ならない部分)が各透光部材12に対して優先的に熱圧着される。これにより、内側の中間支持材13a(例えば中間支持材13のうち積層方向D1に関して調光セル11と重なる部分)及び調光セル11は、外周部の中間支持材13b及び各透光部材12によって隙間無く囲まれて気密状態に置かれ、大気圧よりも低い圧力を有する。この場合、中間支持材13や調光セル11に含まれる水分が揮発したり、真空環境下における真空度が不足していたりすると、中間支持材13中に気泡16が発生することがある。
この調光装置10を、さらにオートクレーブ等を使って加熱加圧環境下に置くことにより、中間支持材13(特に内側の中間支持材13a)が各透光部材12及び調光セル11に熱圧着され、調光セル11は中間支持材13を介して各透光部材12に対して強固に固定される。この熱圧着処理において、気泡16は加熱されて中間支持材13中で膨張し、その気泡16の膨張によって調光セル11は局所的に大きな力を受け、図2Bに示すように液晶溜まり部15が発生することがある。
なお図2A及び図2Bに示す調光装置10を作製する具体的な手法は特に限定されず、例えば、複数のピースによって中間支持材13を構成し、調光セル11を取り囲むようにしてこれらの複数のピースを配置し、その後、これらの複数のピースを熱圧着してもよい。一例として、内側空間に調光セル11が配置される枠状の第1のピースと、第1のピースの内側空間を塞ぐように調光セル11の上下に配置される板状の第2のピース及び第3のピースと、を熱圧着することによって中間支持材13を構成してもよい。この場合、外周部の中間支持材13bは、第1のピースと、第2のピース及び第3のピースの各々の一部とによって構成され、内側の中間支持材13aは、第2のピース及び第3のピースによって構成される。なお、この場合、積層方向D1に関して枠状の第1のピースを調光セル11よりも若干大きく設計しておくことで、第1のピースが第2のピース及び第3のピースの各々に対して優先的に熱圧着され、調光セル11が配置される第1のピースの内側空間を比較的容易に気密状態にすることができる。
上述のように、調光セル11の全体にわたって不均等な力が加えられたり、調光セル11に対して局所的に大きな力が加えられたりすると、液晶溜まり部15が発生する(図1B及び図2B参照)。この液晶溜まり部15は、積層方向D1に関して本来の厚みの数倍の厚みを持つこともあり、印加電圧に応じて光透過率を適切に変化させることができず、本来の調光機能が損なわれている。
なお液晶溜まり部15の発生メカニズムは上述の例には限定されず、例えば上述のメカニズムが組み合わさって液晶溜まり部15が発生することもある。例えば、透光部材12が互いに近づくように各透光部材12に力を加えることで、主として外周部の中間支持材13bを各透光部材12に熱圧着することで、透光部材12及び外周部の中間支持材13bにより囲まれる領域を気密状態にする仮圧着処理を行った後に、オートクレーブ処理によって、中間支持材13を介して調光セル11を各透光部材12に対して強固に接合する本圧着処理を行ってもよい。このように接着処理を複数段階(この例では2段階)に分けて行うことにより、圧着処理を高精度且つ確実に行うことができ、液晶溜まり部15の発生を効果的に防ぐことができる。ただしこの場合にも、例えば、仮圧着処理において押圧力Fが調光セル11の全体にわたって不均等に作用すると、液晶溜まり部15は発生しうる(図1A及び図1B参照)。また、本圧着処理において気泡16が中間支持材13に含まれていても、液晶溜まり部15は発生しうる(図2A及び図2B参照)。
本件発明者は、上述の液晶溜まり部15の発生メカニズムを踏まえつつ鋭意研究を行った結果、下述のように液晶溜まり部15の発生を効果的に防ぎつつ優れた調光性能を示す調光セル11、そのような調光セル11を備える調光装置10、そのような調光装置10を備える車両、そのような調光セル11の製造方法、及びそのような調光装置10の製造方法を新たに見いだした。上述の液晶溜まり部15は、調光セル11に対して局所的に大きな力が作用することで、液晶層の一部が積層方向D1に関して膨張することで発生すると考えられる。本件発明者は、そのような液晶層の一部の膨張を防ぐ構造を調光セル11に与えることで、液晶溜まり部15の発生を有効に防ぐことができる構造及び手法を見いだした。以下、そのような新たな構造及び手法の具体例について説明する。
[調光セル]
図3は、調光セル11の一例の全体構成の概略を示す断面図であり、主として層構成を説明するための図である。
図3に示す調光セル11は、第1樹脂基材26及び第2樹脂基材27と、第1樹脂基材26と第2樹脂基材27との間に設けられる第1電極層24及び第2電極層25と、第1電極層24と第2電極層25との間に設けられる第1配向層22及び第2配向層23と、第1配向層22と第2配向層23との間に設けられる液晶層21と、を備える。これらの樹脂基材26、27、電極層24、25及び配向層22、23は透明材料によって構成され、所望の透光性を有する。一方、液晶層21は、液晶配向に応じて光透過度が可変である。
樹脂基材26、27は、樹脂材を含み、ガラス基板に比べて薄く且つ軽量に構成可能である。樹脂基材26、27は、単一種類の樹脂を含んでいてもよいし、複数種類の樹脂を含んでいてもよい。また複数種類の樹脂によって複数の機能を樹脂基材26、27に持たせてもよい。例えば、樹脂基材26、27は、一対のハードコート層と、一対のハードコート層間に配置される主樹脂層とを有していてもよい。一対のハードコート層は、例えばTAC(Triacetylcellulose)やアクリルによって構成可能であり、透明粘着層を介して主樹脂層に貼り付けられてもよい。或いは、主樹脂層の表面に硬化皮膜(例えば二酸化チタン等の微小粒子を含むシリコーン系紫外線硬化樹脂の膜)を形成し、当該硬化皮膜をハードコート層としてもよい。なお樹脂基材26、27は、互いに同じ材料によって構成されてもよいし、互いに異なる材料によって構成されてもよい。
電極層24、25は、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電材料によって透明電極として構成され、図示しないFPCを介して調光コントローラに接続される。電極層24、25の配置態様は特に限定されず、パターニングによって所定箇所にのみ電極層24、25が形成されてもよいし、ベタ状に電極層24、25が形成されてもよい。またFPCに対する電極層24、25の接続態様も特に限定されない。電極層24、25に印加される電圧に応じて、第1電極層24と第2電極層25との間に形成される電界が変化し、当該電界に応じて液晶層21の液晶の配向が変わる。なお電極層24、25に印加される電圧は調光コントローラによって制御される。
配向層22、23は、それぞれ液晶層21に隣接して設けられ、液晶配向能を有し、電界が作用しない場合の液晶層21の液晶の配向を決める。配向層22、23は、典型的には、ポリイミド等の樹脂層にラビング処理を施したり、高分子膜に直線偏光紫外線を照射して偏光方向の高分子鎖を選択的に反応させたりすることによって作られるが、他の任意の手法によって配向層22、23が作られてもよい。
液晶層21は、液晶(液晶材料)によって構成され、液晶の配向に応じて光の透過又は遮断を行う。第1電極層24及び第2電極層25に印加される電圧に応じて液晶層21の液晶の配向が変化し、この液晶の配向に応じて液晶層21における光の透過度が変化する。したがって第1電極層24及び第2電極層25に印加する電圧を調光コントローラ(図示省略)によって制御して液晶の配向を調整することで、液晶層21全体の光透過率を所望の値に変えられる。
図3には、一例として、偏光素子を持たないゲストホスト型の調光セル11が示されており、液晶層21は二色性色素及び液晶を含む。例えば一対の電極層24、25間の電圧がOFFの場合、液晶層21の二色性色素及び液晶は延在方向D2に並ぶ。特に、偏光素子を持たないゲストホスト型の調光セル11では、二色性色素及び液晶の配向は、電界が印加されていない状態で水平方向に関して180度以上捩られ、あらゆる水平方向に二色性色素が向けられる。一方、一対の電極層24、25間の電圧がONの場合、二色性色素及び液晶が積層方向D1に配向される。このような挙動を示す調光セル11によれば、一対の電極層24、25間の電圧がOFFの間は光が調光セル11(特に二色性色素)によって遮断され、一対の電極層24、25間の電圧がONの間は光が調光セル11を透過することができる。
なお、ゲストホスト型の液晶層21は図3に示す構造には限定されず、例えば調光セル11のうち光の入光側(例えば第1樹脂基材26上)又は光の出光側(例えば第2樹脂基材27上)に偏光素子(図示省略)が設けられてもよい。この場合、一対の電極層24、25間の電圧がOFFにされると、液晶層21の二色性色素及び液晶は水平方向(特に偏光素子の吸収軸方向とは垂直な方向(すなわち偏光素子の偏光軸と同じ方向))に配向される。一方、一対の電極層24、25間の電圧がONの場合には二色性色素及び液晶が垂直方向に配向される。このような挙動を示す調光セル11においても、一対の電極層24、25間の電圧がOFFの間は光が調光セル11(特に二色性色素及び偏光素子)によって遮断され、一対の電極層24間の電圧がONの間は光が調光セル11を透過することができる。このような液晶層21の二色性色素及び液晶の挙動は、配向層22、23が液晶層21の液晶に付与する配向性を調整することによって変えられる。
また、液晶層21の駆動方式は、ゲストホスト型には限定されず、任意の方式を採用することが可能である。典型的には、VA(Vertical Alignment)型、TN(Twisted Nematic)型、IPS(In−Place−Switching)型、或いはFFS(Fringe Field Switching)型の液晶層21を調光セル11で用いることができる。したがって、調光セル11の構成は図3に示す構成には限定されず、調光セル11は液晶層21の駆動方式に応じた適切な構成を有する。例えば、調光セル11が一般的なVA型或いはTN型等の液晶層21を採用する場合、調光セル11は、一対の偏光素子と、偏光素子間に配置される一対の電極層と、電極層間に配置される一対の配向層と、配向層間に配置される液晶層とを含みうる。また調光セル11がIPS型の液晶層21を採用する場合、液晶層を挟む位置に電極層を配置せずに、液晶層の片側にのみ電極層が配置されてもよい。
以下、様々な実施形態について説明する。
[第1モード]
以下の説明では、調光セル11のうち液晶層21の一方側(図3では液晶層21の上側)に設けられる部分(図3では第1配向層22、第1電極層24及び第1樹脂基材26)を集合的に「第1基板28」と称し、他方側(図3では液晶層21の下側)に設けられる部分(図3では第2配向層23、第2電極層25及び第2樹脂基材27)を集合的に「第2基板29」と称する。したがって液晶層21は、第1配向層22、第1電極層24及び第1樹脂基材26を含む第1基板28と、第2配向層23、第2電極層25及び第2樹脂基材27を含む第2基板29と、の間に配置される。なお、図3に示すゲストホスト型以外の駆動方式を液晶層21が採用する場合、その駆動方式に応じて第1基板28及び/又は第2基板29の構成要素が変わりうる。また、配向層、電極層及び樹脂基材以外の要素が第1基板28及び/又は第2基板29に含まれていてもよい。
図4は、調光セル11の全体構成の概略を示す断面図であり、主として液晶層21とともに配置されるスペーサー31、枠状シール材32及びシール柱33を説明するための図である。
第1基板28と第2基板29との間には、複数のスペーサー31と、枠状シール材32と、複数のシール柱33とが配置されている。複数のスペーサー31及び複数のシール柱33は、液晶層21中において固定的に配置されており、延在方向D2に関して満遍なく散在している。枠状シール材32は、液晶層21、複数のスペーサー31及び複数のシール柱33を取り囲むように固定的に配置され、液晶の漏出を防ぐとともに、第1基板28及び第2基板29に接合して両基板28、29を相互に固定する。各スペーサー31は、第1基板28及び第2基板29(図4では第1基板28)のうちの一方のみに対して接合されている。なお、各スペーサー31は、第1基板28及び第2基板29のうちの少なくとも一方に対して接合されていてもよい。また全てのスペーサー31が第1基板28及び第2基板29のうちの一方のみに接合されてもよいし、全スペーサー31のうちの一部が第1基板28に接合される一方で他のスペーサー31が第2基板29に接合されてもよい。また各スペーサー31は、第1基板28及び第2基板29の両方に対して接合されていなくてもよい。一方、各シール柱33は、第1基板28及び第2基板29の両者に対して接合されていることが望ましい。
なお本明細書及び添付の特許請求の範囲において、ある部材(例えば各シール柱33)が他の部材(例えば第1基板28及び第2基板29)に対して接合するとは、例えば後述の測定方法によって確認可能な程度の接合力を有するように、部材同士が接合することを指す。
図4に示す調光セル11は、例えば以下の方法によって製造することができる。まず、第1基板28及び第2基板29が準備される。この際、各スペーサー31は、第1基板28又は第2基板29に既に設けられている。そして、第1基板28及び第2基板29の一方の上に、ディスペンサーやスクリーン印刷装置などによって複数のシール柱33及び枠状シール材32が形成される。この際、シール柱33と枠状シール材32とは別工程によって形成されてもよいが、生産性の観点からは、シール柱33及び枠状シール材32を同一工程において同時的に形成することが好ましい。また、第1基板28及び第2基板29の一方の上に形成されたシール柱33及び枠状シール材32は、積層方向D1に関してスペーサー31よりも大きく、例えばシール柱33は半球状の形状を有しうる。
そして、第1基板28及び第2基板29のうち枠状シール材32が設けられている方の上に、液晶(すなわち液晶層21)が付与される。そして、真空環境下において第1基板28及び第1基板28が重ね合わせられ、複数のシール柱33及び枠状シール材32が第1基板28及び第2基板29に対して圧着される。これにより、図4に示す調光セル11を製造することができ、シール柱33及び枠状シール材32は積層方向D1に関してスペーサー31とほぼ同じ大きさになり、液晶層21の厚みが均一になる。なお、各シール柱33及び枠状シール材32の第1基板28及び第2基板29に対する接着方式は特に限定されず、例えばシール柱33及び枠状シール材32の構成材料に応じて加熱、光照射(例えば紫外線照射)及び/又は電子線照射等によって接着が行われてもよい。
なお、各シール柱33の径及び各スペーサー31の径は特に限定されないが、各シール柱33の径は、液晶層21中において延在方向D2(すなわち液晶層21が延在する方向)に関して各スペーサー31の径よりも大きい。一例として、各シール柱33の延在方向D2に関する径は各スペーサー31の径の2倍以上の大きさを有することができ、例えば各スペーサー31の延在方向D2に関する径を数μm〜50μm程度とする一方で、各シール柱33の延在方向D2に関する径を数十μm〜500μm程度(より好ましくは数十μm〜100μm程度)とすることも可能である。
また図4等に示す各スペーサー31は、ビーズ状の球形を有し、第1基板28又は第2基板29に対して外側から付着するように設けられているが、各スペーサー31の形状や配置態様は特に限定されない。例えば、各スペーサー31は平面部を持つ柱形状(例えば円錐台や角錐台等の錐台形状)を有してもよい。また、フォトリソグラフィ等の技術を使って第1基板28及び第2基板29の内側に一部が配置されるように形成される柱状部材の一部(特に先端部)を、スペーサー31として用いてもよい。
このように複数のスペーサー31とは別個に複数のシール柱33を設けることによって、第1基板28と第2基板29の間隔を精度良く規制することができ、液晶層21の積層方向D1に関する厚み(すなわちセルギャップ)の均一性を向上させることができる。特に、各シール柱33は第1基板28及び第2基板29の両者に対して接合されるため、スペーサー31では規制が難しかった「積層方向D1のうち第1基板28と第2基板29の間隔が大きくなる方向」に関する第1基板28及び第2基板29の相対的な移動を、各シール柱33によって規制することができる。
これにより、調光セル11(特に液晶層21)に対して局所的に大きな力が作用しても(図1A〜図2B参照)、「第1基板28と第2基板29の間隔が小さくなる方向」への第1基板28及び第2基板29の相対的な移動は各スペーサー31及び各シール柱33によって抑制され、「第1基板28と第2基板29の間隔が大きくなる方向」への第1基板28及び第2基板29の相対的な移動は各シール柱33によって抑制される。したがって複数のスペーサー31のみが設けられる場合に比べ、スペーサー31とともにシール柱33が設けられる場合には、第1基板28と第2基板29の間隔を精度良く規制することができ、液晶溜まり部の発生(図1B及び図2B参照)を効果的に防いで、液晶層21の積層方向D1に関する厚みの均一性を向上させることができる。
また本実施形態の各シール柱33は、液晶層21中において、積層方向D1(すなわち第1基板28、液晶層21及び第2基板29が積層する方向)に関し、各スペーサー31とほぼ同じサイズを有する。これにより、例えば大きな力が第1基板28及び/又は第2基板29を介して液晶層21に作用した場合であっても、そのような大きな力をスペーサー31だけではなくシール柱33も負担することになる。したがって、第1基板28及び/又は第2基板29に対するスペーサー31の意図しない食い込みを防いで、第1基板28及び/又は第2基板29の損傷を有効に回避し、良好な信頼性を持って調光セル11の所望の調光性能を維持することができる。特に第1基板28及び第2基板29に対する接触面積が小さいスペーサー31(例えばビーズ状のスペーサー31や径の小さいスペーサー31)は、第1基板28及び第2基板29に対して局所的に大きな力を作用させて食い込みやすいが、上述のように複数のシール柱33を複数のスペーサー31とともに設けて、延在方向D2に関して各シール柱33の径を各スペーサー31の径よりも大きくすることによって、そのようなスペーサー31の食い込みを有効に防ぐことができる。またシール柱33は、優れた弾性を有する材料(例えばスペーサー31よりも弾性率が小さい材料)によって構成されてもよい。この場合、第1基板28及び第2基板29に対するスペーサー31の食い込みをより一層効果的に防ぐことが可能である。
このように複数種類の規制部材(本実施形態では2種類の規制部材(すなわちスペーサー31及びシール柱33))を設けてそれぞれの規制部材に特有の機能を持たせることにより、セルギャップを保持して液晶溜まり部の発生を防ぎつつ、第1基板28及び第2基板29の損傷を防ぐことができる。
なお、枠状シール材32と複数のシール柱33とは同じ材料によって構成されることが好ましい。この場合、枠状シール材32及び各シール柱33の形成が容易になる。例えば、同一の形成装置を使って、枠状シール材32及び各シール柱33を同時的に第1基板28上(例えば第1配向層22上)又は第2基板29上(例えば第2配向層23上)に形成することも可能である。そのような形成装置として、典型的にはディスペンサーやスクリーン印刷装置を使うことができるが、短時間且つ一括的に枠状シール材32及び各シール柱33を形成する観点からは、スクリーン印刷装置の方が好ましい。
また、第1基板28及び第2基板29の各々に対する複数のシール柱33の接合力は、25mN/mm2以上であることが好ましく、75mN/mm2以上であることがより好ましい。本実施形態においては、第1基板28及び第2基板29の各々に対する複数のシール柱33の接合力は、配向層22、23の各々とシール柱33との間の接合力である。なお配向層22、23と液晶層21との間に他の層が存在する場合、第1基板28及び第2基板29の各々に対する複数のシール柱33の接合力は、液晶層21に最も近接する層とシール柱33との間の接合力であり、シール柱33が接触する層とシール柱33との間の接合力である。「第1基板28と第2基板29の間隔が大きくなる方向」への第1基板28及び第2基板29の相対的な移動を防ぐ観点からは、複数のシール柱33の第1基板28及び第2基板29に対する接合力を大きくして、各シール柱33が第1基板28及び第2基板29から分離しないようにすることが好ましい。本件発明者は、試行錯誤を繰り返して様々な条件下で調光セル11及び調光装置10を考察した結果、液晶溜まり部15の発生を防ぐには、25mN/mm2以上の接合力により複数のシール柱33が第1基板28及び第2基板29の各々に対して接合されていることが好ましいという知見を得るに至った。
ここで言う接合力は、任意の手法によって測定可能であるが、例えば調光セル11のうちシール柱33が設けられている部分を切り出し、その切り出した部分の第1基板28及び第2基板29を相互に引き剥がすのに要する力を計測することによって、接合力を測定することが可能である。具体的には、例えば、調光セル11のうちシール柱33を含む1cm四方の平面形状を有する部分を切り出し、この切り出した部分の両面(すなわち第1基板28及び第2基板29の各々の外側面)をそれぞれ両面テープ等を介してガラス等の支持部材に貼り付けて、それらの支持部材をその両面に垂直な方向へ互いに引き離して、第1基板28及び第2基板29が互いに分離するのに要する力を計測することによって接合力(N/mm2)を測定することができる。また上述の接合力は、調光セル11と、調光セル11に固定的に取り付けられる透光部材12(図1A〜図2B参照)とを備える調光装置10の形態でも測定可能である。この場合、例えば、調光装置10のうち所定の大きさに切り出した部分において調光セル11を介して相互に反対側に配置される透光部材12を積層方向D1に引き離して、第1基板28及び第2基板29が互いに分離するのに要する力を計測することによって接合力を測定してもよい。なお、これらの接合力の測定において、第1基板28及び第2基板29を分離する際の剥離速度(すなわち積層方向D1への引き離し速度)は、例えば5mm/minに設定される。
また、液晶層21が延在する方向(すなわち延在方向D2)に関する複数のシール柱33の各々の径は、500μm以下であることが好ましい。また、液晶層21が延在する方向(すなわち延在方向D2)に関し、液晶層21が存在する1ミリ四方のエリア(すなわち1mm(縦)×1mm(横)=1mm2の平面サイズを有するエリア)において複数のシール柱33が第1基板28及び第2基板29の各々と接合しているエリアは10%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましい。
なお、各シール柱33は、径の大きさが延在方向D2に関して必ずしも実質的に一定である必要はなく、1つのシール柱33が積層方向D1にわたって複数の大きさの径を持っていてもよい。例えば各シール柱33は、積層方向D1に関する一方の端部から他方の端部に向かって連続的又は不連続的に径が大きくなってもよく、円錐台形状を有していてもよい。なお、各シール柱33の積層方向D1に関する一方の端部が他方の端部よりも径が大きい場合、各シール柱33の第1基板28側の端部の径が第2基板29側の端部の径より大きくてもよいし、各シール柱33の第2基板29側の端部の径が第1基板28側の端部の径より大きくてもよい。また各シール柱33は、積層方向D1に関する両端部の間の中間部分(例えば中央部分)において、当該両端部よりも大きな径を持つ部分が含まれていてもよく、積層方向D1の中央部分が両端部よりも延在方向D2に関して膨らんだ形状を有していてもよい。また、各シール柱33及び各スペーサー31の延在方向D2に関する断面形状は、必ずしも真円状である必要はなく、例えば長方形等の多角形状、楕円形状、或いは他の形状であってもよい。なお、各シール柱33及び各スペーサー31の延在方向D2に関する断面形状が真円状でない場合には、各シール柱33及び各スペーサー31の最小径の大きさが、各シール柱33及び各スペーサー31の径の大きさとされる。
調光性能を確保する観点からは、液晶層21が配置されるエリア(すなわち枠状シール材32によって囲まれるアクティブエリア)において、シール柱33の占有率を可能な限り小さくして、液晶が調光性能を発揮可能な領域を可能な限り大きくすることが好ましい。また一般に、各シール柱33の径が大きくなるほど、各シール柱33と第1基板28及び第2基板29の各々との間の接合面積が増え、接合力を増大させることができる。その一方で、人間が覗き込むことが予定されている窓(例えばサンルーフ等)等において調光装置10が用いられる場合、各シール柱33が観察者に視認されないことが好ましい。
本件発明者は、鋭意研究の結果、とりわけ各シール柱33の径の大きさが視認性に対して非常に大きな影響を及ぼすという知見を得た。その一方で、本件発明者は、上述の調光性能、接合力、及び各シール柱33の視認性を総合的に勘案し、各シール柱33を視覚上目立たせず且つ調光セル11の良好な調光性能を実現しつつ、液晶溜まり部15の発生を防ぐのに有効な接合力を確保するためには、各シール柱33の径が500μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましいという知見を得るに至った。また同様の理由に基づいて、液晶層21が存在する1ミリ四方のエリアにおいてシール柱33が第1基板28及び第2基板29の各々と接触する面積の割合(すなわち占有率)が10%以下であることが好ましいという知見を得るに至った。ここで言う占有率は、各シール柱33の径の大きさと、液晶層21が存在する1ミリ四方のエリアにおけるシール柱33の個数(数密度)と、に基づいて定まる。
シール柱33の個数(数密度)は、特に限定されず、調光性能を確保する観点やシール柱33が視認されないようにする観点からはできるだけ小さい方が好ましいが、接合力を確保する観点からは大きい方が好ましい。ただし、シール柱33の数密度はスペーサー31の数密度よりも小さく、一例として、スペーサー31は1ミリ四方当たり100〜200個程度設けられ、シール柱33は1ミリ四方当たり10個程度設けられる。なおシール柱33の個数(数密度)も、調光性能を確保する観点からは小さい方が好ましく、均一なセルギャップを確保する観点からは、液晶層21中において延在方向D2に均等に配置されることが好ましい。
なお、各シール柱33を視覚上目立たなくさせる観点からは、複数のシール柱33の各々は有色(例えば黒色)を有していたり、透明であったりすることが好ましい。例えば、調光セル11が光を遮断する際に各シール柱33を目立たなくさせるには、各シール柱33は黒色を有することが好ましい。一方、調光セル11が光を透過させる際に各シール柱33を目立たなくさせるには、各シール柱33は透明であることが好ましい。各シール柱33が黒色を有する調光セル11は黒色再現性に優れており、液晶層21の液晶によって入射光が遮断される場合に、当該入射光は黒色の各シール柱33によっても遮断される。一方、各シール柱33が透明(無色)である調光セル11は透明性に優れており、液晶層21の液晶が入射光を透過させる場合に、当該入射光は透明な各シール柱33も透過する。
また複数のシール柱33を視覚上目立たなくさせる観点からは、複数のシール柱33は、液晶層21が延在する方向(すなわち延在方向D2)に関して不規則的に定められる位置に配置されることが好ましい。一方、液晶層21の全体にわたって厚みを均等に保つ観点からは、複数のシール柱33は、液晶層21が延在する方向(すなわち延在方向D2)に関して規則的に定められる位置に配置されることが好ましい。この場合、第1基板28及び第2基板29に対する複数のシール柱33の接合力を、液晶層21の全体にわたって均一的に発揮させることができる。
なお、ここで言う「規則的に定められる位置」とは、例えば隣り合う位置同士の間隔が規則的に定められている場合が該当し、典型的には、隣り合う位置同士の間隔が所定距離である場合が該当する。一方、「不規則的に定められる位置」とは、例えば隣り合う位置同士の間隔が不規則的に定められている場合が該当し、典型的には、隣り合う位置同士の間隔がランダムである場合が該当する。なお、不規則的に定められる位置に配置される複数のシール柱33は、必ずしも全てのシール柱33の位置が不規則的に定められている必要はなく、複数のシール柱33の一部のみが不規則的に定められる位置に配置されている場合も、複数のシール柱33は全体として不規則的に定められる位置に配置されていると言える。したがって、例えば、複数のシール柱33を所定の平面エリア毎に複数のグループに分類し、各グループに含まれる2以上のシール柱33のうちの1以上のシール柱33を不規則的に定められる位置に配置しつつ他のシール柱33を規則的に定められる位置に配置する場合も、複数のシール柱33は全体として不規則的に定められる位置に配置されていると言える。なお、例えば、規則的に定められる所定位置から所定距離の範囲内においてランダムに定められる位置は、「不規則的に定められる位置」に該当する。
上述の各種条件を良好に満たすために、複数のシール柱33を構成する材料は、例えばエポキシ樹脂或いはアクリル樹脂を含むことができる。特に、上述のように第1基板28及び第2基板29の損傷を防ぐ観点から、各シール柱33の硬度を各スペーサー31の硬度よりも小さくしてもよい。また各シール柱33の弾性率(例えば体積弾性率)は、各スペーサー31の弾性率よりも小さくてもよい。
以上説明したように本実施形態によれば、シール柱33を設けることによって、液晶層21が必要以上に厚くなることを防ぐことができるとともに、液晶層21が必要以上に薄くなることをスペーサー31とともに防ぐことができる。これにより液晶溜まり部15の発生を効果的に防いで優れた調光性能を示すことができる調光セル11、及びそのような調光セル11が一対の透光部材12間に配置される調光装置10を提供することができる。また上述の調光セル11を用いることにより、「一対の透光部材12間において調光セル11の少なくとも一部が押圧されながら、当該調光セル11を一対の透光部材12に対して固定する製造方法」に基づいて、液晶溜まり部15の発生を防ぎつつ、調光装置10を精度良く製造することができる。
特に、液晶層21中において液晶層21の延在方向D2に関して各シール柱33の径を各スペーサー31の径よりも大きくすることで、各スペーサー31が第1基板28及び第2基板29に食い込むのを防いで、調光セル11の調光性能を良好に維持することができる。また延在方向D2に関して各シール柱33の径を各スペーサー31の径よりも大きくすることによって、第1基板28及び第2基板29に対するシール柱33の接合力を増大させることができ、特に後述のように、スペーサー31に接触又はスペーサー31を包含するようにシール柱33を設けることで、そのような接合力を一層効果的に増大させることができる。
[変形例]
図5及び図6は、調光セル11の一変形例を示す概略断面図である。上述の図3及び図4に示す調光セル11では第1基板28及び第2基板29が平板形状を有するが、第1基板28及び/又は第2基板29は、少なくとも一部において曲がっていてもよく、例えば二次元曲面や三次元曲面などの各種の曲面を形成してもよい。ここで言う二次元曲面とは、単一の軸線を中心として二次元的に曲がった曲面、或いは、互いに平行な複数の軸線を中心として同一又は異なる曲率で二次元的に曲がった曲面のことである。一方、三次元曲面とは、互いに非平行な複数の軸線の各々を中心として、部分的に又は全体的に曲がっている面を意味する。
図5に示すように液晶層21が第1基板28の曲面と第2基板29の曲面との間に配置される場合、シール柱33が設けられていないと、液晶層21の中央付近或いはその他の箇所において空間(気泡)Sが形成されることがある。一方、図6に示すように第1基板28及び第2基板29の各々に接合される複数のシール柱33を設けることによって、第1基板28と第2基板29の間隔は所望の大きさに保たれ、液晶層21における空間(気泡)Sの形成を防ぎつつ、液晶層21を所望の厚みに保持することができる。
また上述の図1A〜図2Bに示す各透光部材12は、表面及び裏面の双方が平面形状を成しているが、一対の透光部材12のうちの少なくともいずれか一方は、中間支持材13を介して調光セル11が固定される面の少なくとも一部が曲面を形成していてもよい。このような透光部材12の曲面に対して調光セル11を固定する場合であっても、当該曲面と調光セル11との間に中間支持材13を介在させることによって、調光セル11を透光部材12の曲面に対して適切に固定することができる。このように透光部材12の曲面、平面、或いは曲面及び平面の組み合わせのいずれに対しても調光セル11を高い信頼性をもって固定することができる。
また複数のシール柱33の各々は、複数のスペーサー31のうちの少なくとも1以上に接触、又は複数のスペーサー31のうちの少なくとも1以上を包含するようにして設けられてもよい。すなわち複数のシール柱33の全部又は一部を、1以上のスペーサー31に対して接触又は包含するようにして設けることが可能である。
図7は、調光セル11の他の変形例を示す概略断面図である。図7に示す各シール柱33は、スペーサー31上に配置されており、シール柱33と接触するスペーサー31は、シール柱33に食い込むようにして設けられている。これにより、各シール柱33のうちの第1基板28及び第2基板29の各々に対する接合に寄与する箇所の面積を増大させることができる。また、第1基板28又は第2基板29に固定されたスペーサー31に引っ掛けるようにして、各シール柱33を固定することができる。またスペーサー31を、第1基板28及び第2基板29の各々に対する各シール柱33の接合のきっかけとして有効に活用することができる。したがって本変形例によれば、第1基板28及び第2基板29の各々に対するシール柱33の接合力を効果的に増大させることができる。さらに調光セル11を製造する際に、積層方向D1に関し、各シール柱33の高さが各スペーサー31の高さよりも低くなることを防ぐことができる。なお本変形例において、全部のスペーサー31が第1基板28及び第2基板29のうちの一方のみに固定されていてもよいが、一部のスペーサー31を第1基板28に対して固定しつつ他のスペーサー31を第2基板29に対して固定してもよい。この場合、複数のシール柱33を第1基板28及び第2基板29の双方に対して強固に固定することができ、第1基板28及び第2基板29の各々に対するシール柱33の接合力をより一層効果的に増大させることができる。
また、スペーサー31の付与手法及び付与態様は上述の内容には限定されない。例えば、第1配向層22及び第2配向層23を構成する配向材に複数のスペーサー31を予め混ぜておき、配向層22、23を形成する際に当該配向材を複数のスペーサー31とともに第1電極層24及び第2電極層25上に付与することによって、複数のスペーサー31が第1基板28及び第2基板29に設けられてもよい。この場合、第1基板28上及び第2基板29上において満遍なく複数のスペーサー31を分布させることができるだけではなく、各スペーサー31を第1配向層22及び第2配向層23のうちのいずれか一方によって固着することができる。このように各スペーサー31を、第1配向層22又は第2配向層23によって、第1基板28(特に第1電極層24)又は第2基板29(特に第2電極層25)に対して比較的強固に接合することができる。また複数のスペーサー31は、シール柱33を構成する材料に混ぜられていてもよく、シール柱33とともに第1基板28及び第2基板29に対して付与されてもよい。
[第2モード]
以下の説明では、調光セル11のうち液晶層21の一方側(図3では液晶層21の上側)に設けられる部分(図3では第1配向層22、第1電極層24及び第1樹脂基材26)を集合的に「第1基板28」と称し、他方側(図3では液晶層21の下側)に設けられる部分(図3では第2配向層23、第2電極層25及び第2樹脂基材27)を集合的に「第2基板29」と称する。したがって液晶層21は、第1樹脂基材26を含む第1基板28と第2樹脂基材27を含む第2基板29との間に配置される。なお、図3に示すゲストホスト型以外の駆動方式を液晶層21が採用する場合、その駆動方式に応じて第1基板28及び/又は第2基板29の構成要素が変わりうる。また、配向層、電極層及び樹脂基材以外の要素が第1基板28及び/又は第2基板29に含まれていてもよい。
図8は、調光セル11の全体構成の概略を示す断面図であり、主として液晶層21とともに配置されるスペーサー31及び枠状シール材32を説明するための図である。また、図9は、調光セル11の全体構成の概略を示す平面図である。
第1基板28と第2基板29との間には、複数のスペーサー31と、枠状シール材32と、複数のシール柱33とが配置されている。複数のスペーサー31及び複数のシール柱33は、液晶層21中において固定的に配置されており、延在方向D2に関して満遍なく散在している。このうちスペーサー31は、枠状シール材32またはシール柱33に接触して配置される。図8および図9に示す例においては、複数のスペーサー31の各々は、枠状シール材32の内部またはシール柱33の内部に配置されている。この場合、スペーサー31は、枠状シール材32またはシール柱33に埋没するように、枠状シール材32またはシール柱33に保持されている。また、枠状シール材32は、液晶層21、複数のスペーサー31及び複数のシール柱33を周状に取り囲むように固定的に配置され、図9に示すように、第1基板28および第2基板29の外周に沿って枠状に設けられている。このような枠状シール材32は、液晶の漏出を防ぐとともに、第1基板28及び第2基板29に接合して両基板28、29を相互に固定する。また、図8に示すように、各スペーサー31は、第1基板28又は第2基板29に対して接触していることが望ましい。一方、各シール柱33は、第1基板28及び第2基板29の両者に対して接合されていることが望ましい。このようなスペーサー31は、第1基板28と第2基板29との間の間隔を規制し、液晶層21の積層方向D1に関する厚み(すなわちセルギャップ)の均一性を向上させる。このため、液晶層21の一部の膨張を抑制することができ、液晶溜まり部の発生を抑制することができる。なお、複数のスペーサー31のうち、いくつかのスペーサー31が液晶層21の内部に配置されていてもよく、各々のスペーサー31の一部分が液晶層21中に位置していてもよい。
なお、本明細書及び添付の特許請求の範囲において、ある部材(例えば各シール柱33)が他の部材(例えば第1基板28及び第2基板29)に対して接合するとは、例えば後述の測定方法によって確認可能な程度の接合力を有するように、部材同士が接合することを指す。
上述したスペーサー31は、各種の樹脂材料から構成可能であり、球状のビーズ形状や錐台形状(例えば円錐台や角錐台)等の形状を有していてもよい。また、上述した枠状シール材32は、第1シール材料41(図10Bおよび図10C参照)から構成されており、シール柱33は、第2シール材料44(図10Bおよび図10C参照)から構成されている。これらの第1シール材料41および第2シール材料44は、接着性または粘着性を有した材料であることが好ましく、例えばエポキシ樹脂或いはアクリル樹脂を含むことが好ましい。
図8および図9に示す調光セル11は、例えば以下の方法によって製造することができる。
まず、図10Aに示すように、第1基板28及び第2基板29のうち一方、例えば第2基板29を用意する。
また、第2基板29を用意することと並行して、未硬化状態の第1シール材料41と、第1シール材料41中に分散した第1スペーサー42とを含む第1組成物43を用意し、未硬化状態の第2シール材料44と、第2シール材料44中に分散した第2スペーサー45とを含む第2組成物46を用意する。このうち、第1シール材料41および第2シール材料44は、接着性または粘着性を有した材料であり、例えばエポキシ樹脂或いはアクリル樹脂を含むことができる。このような第1シール材料41と第2シール材料44とは同じ材料によって構成されてもよく、第1スペーサー42と第2スペーサー45とは同じ材料によって構成されてもよい。この場合、第1組成物43および第2組成物46の作製が容易になる。
次に、図10Bに示すように、第1組成物43を、第2基板29上における周状の領域に、塗工する。この際、第2組成物46を、周状の領域内に分散して塗工する。この場合、第2基板29の上に、ディスペンサーやスクリーン印刷装置などによって第1組成物43および第2組成物46が塗工される。なお、第1組成物43および第2組成物46は別工程によって塗工されてもよいが、生産性の観点からは、第1組成物43および第2組成物46を同一工程において同時的に塗工することが好ましい。
次いで、第2基板29上における、周状の領域に塗工された第1組成物43によって取り囲まれる領域に、液晶材料47を供給する。
次に、真空環境下において第1基板28及び第2基板29が重ね合わせられる。なお、この場合、図示しないローラー等を用いてしごくようにしてもよい。
その後、第2基板29上に第1基板28を配置した状態で、第1組成物43を硬化させることで、第1スペーサー42からなるスペーサー31(第1スペーサー)を保持した枠状シール材32を形成し、この枠状シール材32を介して第1基板28および第2基板29を接合する。この際、第2組成物46を硬化させることで、枠状シール材32に取り囲まれる領域内に、第2スペーサー45からなるスペーサー31(第2スペーサー)を保持したシール柱33を形成する。このようにして、枠状シール材32及びシール柱33が、第1基板28及び第2基板29に対して圧着される。これにより、図8および図9に示す調光セル11を製造することができる。なお、枠状シール材32及び各シール柱33の第1基板28及び第2基板29に対する接着方式は特に限定されず、例えば枠状シール材32及びシール柱33の構成材料に応じて加熱、光照射(例えば紫外線照射)及び/又は電子線照射等によって接着が行われてもよい。
なお、ここでは、第2基板29の上に第1組成物43および第2組成物46を塗工する例について説明したが、第1組成物43および第2組成物46は、第1基板28の上に塗工されてもよい。
また、図8および図9に示す各スペーサー31は、球形状を有する。なお、各スペーサー31の形状や配置態様は特に限定されない。例えば、各スペーサー31は平面部を持つ柱形状(例えば円錐台や角錐台等の錐台形状)を有してもよい。また、フォトリソグラフィ等の技術を使って第1基板28及び第2基板29に柱状部材を形成し、スペーサー31として用いてもよい。この場合、各スペーサー31に対応する位置に上述した第1組成物43および第2組成物46を設けることにより、複数のスペーサー31が枠状シール材32またはシール柱33に接触するように配置させることができる。
なお、各シール柱33の径及び各スペーサー31の径は特に限定されないが、通常、各シール柱33は、延在方向D2に関して各スペーサー31よりも大きな径を有する。一例として、各シール柱33の径は、各スペーサー31の径の10倍程度若しくはそれ以上の大きさを有することができ、各スペーサー31の径を数μm〜50μm程度とする一方で、各シール柱33の径を数十μm〜150μm程度とすることも可能である。また、枠状シール材32の幅は、特に規定は無いが、通常1mm〜5mm程度である。
このように複数のスペーサー31とは別個に複数のシール柱33を設けることによって、第1基板28と第2基板29との間隔を精度良く規制することができ、液晶層21の積層方向D1に関する厚み(すなわちセルギャップ)の均一性を向上させることができる。特に、各シール柱33は第1基板28及び第2基板29の両者に対して接合されるため、スペーサー31では規制が難しかった「積層方向D1のうち第1基板28と第2基板29との間隔が大きくなる方向」に関する第1基板及び第2基板29の相対的な移動を、各シール柱33によって規制することができる。
これにより、調光セル11(特に液晶層21)に対して局所的に大きな力が作用しても(図1A乃至図2B参照)、「第1基板28と第2基板29の間隔が小さくなる方向」への第1基板28及び第2基板29の相対的な移動は各スペーサー31及び各シール柱33によって抑制され、「第1基板28と第2基板29との間隔が大きくなる方向」への第1基板28及び第2基板29の相対的な移動は各シール柱33によって抑制される。したがって複数のスペーサー31のみが設けられた場合に比べ、スペーサー31とともにシール柱33が設けられる場合には、第1基板28と第2基板29との間隔を精度良く規制することができ、液晶溜まり部15の発生(図1B及び図2B参照)を効果的に防いで、液晶層21の積層方向D1に関する厚みの均一性を向上させることができる。
なお、複数のスペーサー31、枠状シール材32及び複数のシール柱33は同じ材料によって構成されることが好ましい。すなわち、上述した第1シール材料41、第1スペーサー42、第2シール材料44および第2スペーサー45は同じ材料によって構成されることが好ましい。この場合、第1組成物43および第2組成物46の作製が容易になり、複数のスペーサー31、枠状シール材32及び各シール柱33の形成が容易になる。例えば、同一の形成装置を使って、複数のスペーサー31、枠状シール材32及び各シール柱33を同時的に第1基板28上(例えば第1配向層22上)又は第2基板29上(例えば第2配向層23上)に形成することも可能である。そのような形成装置として、典型的にはディスペンサーやスクリーン印刷装置を使うことができるが、短時間且つ一括的に複数のスペーサー31、枠状シール材32及び各シール柱33を形成する観点からは、スクリーン印刷装置の方が好ましい。
また、第1基板28及び第2基板29の各々に対する複数のシール柱33の接合力は、25mN/mm2以上であることが好ましく、75mN/mm2以上であることがより好ましい。本実施形態においては、第1基板28及び第2基板29の各々に対する複数のシール柱33の接合力は、配向層22、23の各々とシール柱33との間の接合力である。なお配向層22、23と液晶層21との間に他の層が存在する場合、第1基板28及び第2基板29の各々に対する複数のシール柱33の接合力は、液晶層21に最も近接する層とシール柱33との間の接合力であり、シール柱33が接触する層とシール柱33との間の接合力である。「第1基板28と第2基板29の間隔が大きくなる方向」への第1基板28及び第2基板29の相対的な移動を防ぐ観点からは、複数のシール柱33の第1基板28及び第2基板29に対する接合力を大きくして、各シール柱33が第1基板28及び第2基板29から分離しないようにすることが好ましい。本件発明者は、試行錯誤を繰り返して様々な条件下で調光セル11及び調光装置10を考察した結果、液晶溜まり部15の発生を防ぐには、25mN/mm2以上の接合力により複数のシール柱33が第1基板28及び第2基板29の各々に対して接合されていることが好ましいという知見を得るに至った。
ここで言う接合力は、任意の手法によって測定可能であるが、例えば調光セル11のうちシール柱33が設けられている部分を切り出し、その切り出した部分の第1基板28及び第2基板29を相互に引き剥がすのに要する力を計測することによって、接合力を測定することが可能である。具体的には、例えば、調光セル11のうちシール柱33を含む1cm四方の平面形状を有する部分を切り出し、この切り出した部分の両面(すなわち第1基板28及び第2基板29の各々の外側面)をそれぞれ両面テープ等を介してガラス等の支持部材に貼り付けて、それらの支持部材をその両面に垂直な方向へ互いに引き離して、第1基板28及び第2基板29が互いに分離するのに要する力を計測することによって接合力(N/mm2)を測定することができる。また上述の接合力は、調光セル11と、調光セル11に固定的に取り付けられる透光部材12(図1A乃至図2B参照)とを備える調光装置10の形態でも測定可能である。この場合、例えば、調光装置10のうち所定の大きさに切り出した部分において調光セル11を介して相互に反対側に配置される透光部材12を積層方向D1に引き離して、第1基板28及び第2基板29が互いに分離するのに要する力を計測することによって接合力を測定してもよい。なお、これらの接合力の測定において、第1基板28及び第2基板29を分離する際の剥離速度(すなわち積層方向D1への引き離し速度)は、例えば5mm/minに設定される。
また、液晶層21が延在する方向(すなわち延在方向D2)に関する複数のシール柱33の各々の径は、500μm以下であることが好ましい。また、液晶層21が延在する方向(すなわち延在方向D2)に関し、液晶層21が存在する1ミリ四方のエリア(すなわち1mm(縦)×1mm(横)=1mm2の平面サイズを有するエリア)において複数のシール柱33が第1基板28及び第2基板29の各々と接合しているエリアは10%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましい。
なお、各シール柱33は、径の大きさが延在方向D2に関して必ずしも実質的に一定である必要はなく、1つのシール柱33が積層方向D1にわたって複数の大きさの径を持っていてもよい。例えば各シール柱33は、積層方向D1に関する一方の端部から他方の端部に向かって連続的又は不連続的に径が大きくなってもよく、円錐台形状を有していてもよい。なお、各シール柱33の積層方向D1に関する一方の端部が他方の端部よりも径が大きい場合、各シール柱33の第1基板28側の端部の径が第2基板29側の端部の径より大きくてもよいし、各シール柱33の第2基板29側の端部の径が第1基板28側の端部の径より大きくてもよい。また各シール柱33は、積層方向D1に関する両端部の間の中間部分(例えば中央部分)において、当該両端部よりも大きな径を持つ部分が含まれていてもよく、積層方向D1の中央部分が両端部よりも延在方向D2に関して膨らんだ形状を有していてもよい。また、各シール柱33及び各スペーサー31の延在方向D2に関する断面形状は、必ずしも真円状である必要はなく、例えば長方形等の多角形状、楕円形状、或いは他の形状であってもよい。なお、各シール柱33及び各スペーサー31の延在方向D2に関する断面形状が真円状でない場合には、各シール柱33及び各スペーサー31の最小径の大きさが、各シール柱33及び各スペーサー31の径の大きさとされる。
また、調光性能を確保する観点からは、液晶層21が配置されるエリア(すなわち枠状シール材32によって囲まれるアクティブエリア)において、シール柱33の占有率を可能な限り小さくして、液晶が調光性能を発揮可能な領域を可能な限り大きくすることが好ましい。また一般に、各シール柱33の径が大きくなるほど、各シール柱33と第1基板28及び第2基板29の各々との間の接合面積が増え、シール柱33と第1基板28及び第2基板29との接合力を増大させることができる。その一方で、人間が覗き込むことが予定されている窓(例えばサンルーフ等)等において調光装置10が用いられる場合、各シール柱33が観察者に視認されないことが好ましい。
シール柱33の個数(数密度)は、特に限定されず、調光性能を確保する観点やシール柱33が視認されないようにする観点からはできるだけ小さい方が好ましいが、接合力を確保する観点からは大きい方が好ましい。ただし、シール柱33の数密度はスペーサー31の数密度よりも小さく、一例として、スペーサー31は1ミリ四方当たり100〜200個程度設けられ、シール柱33は1ミリ四方当たり10個程度設けられる。
なお、各シール柱33を視覚上目立たなくさせる観点からは、複数のシール柱33の各々は有色(例えば黒色)を有していたり、透明であったりすることが好ましい。例えば、調光セル11が光を遮断する際に各シール柱33を目立たなくさせるには、各シール柱33は黒色を有することが好ましい。一方、調光セル11が光を透過させる際に各シール柱33を目立たなくさせるには、各シール柱33は透明であることが好ましい。各シール柱33が黒色を有する調光セル11は黒色再現性に優れており、液晶層21の液晶によって入射光が遮断される場合に、当該入射光は黒色の各シール柱33によっても遮断される。一方、各シール柱33が透明(無色)である調光セル11は透明性に優れており、液晶層21の液晶が入射光を透過させる場合に、当該入射光は透明な各シール柱33も透過する。
また複数のシール柱33を視覚上目立たなくさせる観点からは、複数のシール柱33は、液晶層21が延在する方向(すなわち延在方向D2)に関して不規則的に定められる位置に配置されることが好ましい。一方、液晶層21の全体にわたって厚みを均等に保つ観点からは、複数のシール柱33を、液晶層21が延在する方向(すなわち延在方向D2)に関して規則的に定められる位置に配置されることが好ましい。この場合、第1基板28及び第2基板29に対する複数のシール柱33の接合力を、液晶層21の全体にわたって均一的に発揮させることができる。
なお、ここで言う「規則的に定められる位置」とは、例えば隣り合う位置同士の間隔が規則的に定められている場合が該当し、典型的には、隣り合う位置同士の間隔が所定距離である場合が該当する。一方、「不規則的に定められる位置」とは、例えば隣り合う位置同士の間隔が不規則的に定められている場合が該当し、典型的には、隣り合う位置同士の間隔がランダムである場合が該当する。なお、不規則的に定められる位置に配置される複数のシール柱33は、必ずしも全てのシール柱33の位置が不規則的に定められている必要はなく、複数のシール柱33の一部のみが不規則的に定められる位置に配置されている場合も、複数のシール柱33は全体として不規則的に定められる位置に配置されていると言える。したがって、例えば、複数のシール柱33を所定の平面エリア毎に複数のグループに分類し、各グループに含まれる2以上のシール柱33のうちの1以上のシール柱33を不規則的に定められる位置に配置しつつ他のシール柱33を規則的に定められる位置に配置する場合も、複数のシール柱33は全体として不規則的に定められる位置に配置されていると言える。なお、例えば、規則的に定められる所定位置から所定距離の範囲内においてランダムに定められる位置は、「不規則的に定められる位置」に該当する。
また、スペーサー31が、第1基板28、第2基板29及び枠状シール材32によって囲まれる領域において、液晶層21内に配置された場合、液晶は流動性を有するため、当該流動性に起因して、スペーサー31が液晶層21中の所定の場所に密集する場合がある。この場合、各スペーサー31が観察者に視認されてしまう可能性がある。本実施の形態においては、複数のスペーサー31は、枠状シール材32またはシール柱33に接触して配置されている。これにより、スペーサー31が第1基板28、第2基板29及び枠状シール材32によって囲まれる領域において、所定の場所に密集することを抑制できる。このため、各スペーサー31を視覚上目立たせず且つ調光セル11の良好な調光性能を実現することができる。
なお、各スペーサー31の色は任意であり、複数のスペーサー31の各々は着色されていてもよい。また、複数のスペーサー31の各々は、透明であってもよく、不透明であってもよいが、複数のスペーサー31の各々を視覚上目立たなくする観点から、シール柱33と同色にすることが望ましい。
上述の各種条件を良好に満たすために、複数のスペーサー31、枠状シール材32及び複数のシール柱33を構成する材料は、例えばエポキシ樹脂或いはアクリル樹脂を含むことができる。
以上説明したように本実施形態によれば、シール柱33を設けることによって、液晶層21が必要以上に厚くなることを防ぐことができるとともに、液晶層21が必要以上に薄くなることをスペーサー31とともに防ぐことができる。これにより液晶溜まり部15の発生を効果的に防いで優れた調光性能を示すことができる調光セル11、及びそのような調光セル11が一対の透光部材12間に配置される調光装置10を提供することができる。また上述の調光セル11を用いることにより、「一対の透光部材12間において調光セル11の少なくとも一部が押圧されながら、当該調光セル11を一対の透光部材12に対して固定する製造方法」に基づいて、液晶溜まり部15の発生を防ぎつつ、調光装置10を精度良く製造することができる。
また枠状シール材32と複数のシール柱33とを同じ材料によって構成することによって、枠状シール材32及び複数のシール柱33を簡単且つ高速に形成することが可能となる。
また、本実施の形態によれば、枠状シール材32またはシール柱33に少なくとも一部が接触するように各々のスペーサー31を設けることによって、第1基板28、第2基板29及び枠状シール材32によって囲まれる領域において、各スペーサー31が所定の場所に密集することを抑制できる。これにより優れた調光性能を示すことができる。
[変形例]
図11及び図12は、調光セル11の一変形例を示す概略断面図である。上述の図3乃至図10Dに示す調光セル11では第1基板28及び第2基板29が平板形状を有するが、第1基板28及び/又は第2基板29は、少なくとも一部において曲がっていてもよく、例えば二次元曲面や三次元曲面などの各種の曲面を形成してもよい。ここで言う二次元曲面とは、単一の軸線を中心として二次元的に曲がった曲面、或いは、互いに平行な複数の軸線を中心として同一又は異なる曲率で二次元的に曲がった曲面のことである。一方、三次元曲面とは、互いに非平行な複数の軸線の各々を中心として、部分的に又は全体的に曲がっている面を意味する。
図11に示すように液晶層21が第1基板28の曲面と第2基板29の曲面との間に配置される場合、シール柱33が設けられていないと、液晶層21の中央付近或いはその他の箇所において空間(気泡)Sが形成されることがある。一方、図12に示すように第1基板28及び第2基板29の各々に接合される複数のシール柱33を設けることによって、第1基板28と第2基板29の間隔は所望の大きさに保たれ、液晶層21における空間(気泡)Sの形成を防ぎつつ、液晶層21を所望の厚みに保持することができる。
また上述の図1A乃至図2Bに示す各透光部材12は、表面及び裏面の双方が平面形状を成しているが、一対の透光部材12のうちの少なくともいずれか一方は、中間支持材13を介して調光セル11が固定される面の少なくとも一部が曲面を形成していてもよい。このような透光部材12の曲面に対して調光セル11を固定する場合であっても、当該曲面と調光セル11との間に中間支持材13を介在させることによって、調光セル11を透光部材12の曲面に対して適切に固定することができる。このように透光部材12の曲面、平面、或いは曲面及び平面の組み合わせのいずれに対しても調光セル11を高い信頼性をもって固定することができる。
[第3モード]
以下の説明では、調光セル11のうち液晶層21の一方側(図3では液晶層21の上側)に設けられる部分(図3では第1配向層22、第1電極層24及び第1樹脂基材26)を集合的に「第1基板28」と称し、他方側(図3では液晶層21の下側)に設けられる部分(図3では第2配向層23、第2電極層25及び第2樹脂基材27)を集合的に「第2基板29」と称する。したがって液晶層21は、第1樹脂基材26を含む第1基板28と第2樹脂基材27を含む第2基板29との間に配置される。なお、図3に示すゲストホスト型以外の駆動方式を液晶層21が採用する場合、その駆動方式に応じて第1基板28及び/又は第2基板29の構成要素が変わりうる。また、配向層、電極層及び樹脂基材以外の要素が第1基板28及び/又は第2基板29に含まれていてもよい。
図4は、調光セル11の全体構成の概略を示す断面図であり、主として液晶層21とともに配置されるスペーサー31、枠状シール材32及びシール柱33を説明するための図である。
第1基板28と第2基板29との間には、複数のスペーサー31と、枠状シール材32と、複数のシール柱33とが配置されている。複数のスペーサー31及び複数のシール柱33は、液晶層21中において固定的に配置されており、延在方向D2に関して満遍なく散在している。枠状シール材32は、液晶層21、複数のスペーサー31及び複数のシール柱33を取り囲むように固定的に配置され、液晶の漏出を防ぐとともに、第1基板28及び第2基板29に接合して両基板28、29を相互に固定する。各スペーサー31は、第1基板28又は第2基板29(図4では第1基板28)に対して接合されている。なお、全てのスペーサー31が第1基板28及び第2基板29のうちの一方のみに固定されてもよいし、全スペーサー31のうちの一部が第1基板28に固定される一方で他のスペーサー31が第2基板29に固定されてもよい。一方、各シール柱33は、第1基板28及び第2基板29の両者に対して接合されていることが望ましい。
図4に示す調光セル11は、例えば以下の方法によって製造することができる。まず、第1基板28及び第2基板29が準備される。この際、各スペーサー31は、第1基板28又は第2基板29に既に設けられている。そして、第1基板28及び第2基板29の一方の上に、ディスペンサーやスクリーン印刷装置などによって複数のシール柱33及び枠状シール材32が形成される。この際、シール柱33と枠状シール材32とは別工程によって形成されてもよいが、生産性の観点からは、シール柱33及び枠状シール材32を同一工程において同時的に形成することが好ましい。
そして、第1基板28及び第2基板29のうち枠状シール材32が設けられている方の上に、液晶(すなわち液晶層21)が付与される。そして、真空環境下において第1基板28及び第1基板28が重ね合わせられ、複数のシール柱33及び枠状シール材32が第1基板28及び第2基板29に対して圧着される。これにより、図4に示す調光セル11を製造することができる。なお、各シール柱33及び枠状シール材32の第1基板28及び第2基板29に対する接着方式は特に限定されず、例えばシール柱33及び枠状シール材32の構成材料に応じて加熱、光照射(例えば紫外線照射)及び/又は電子線照射等によって接着が行われてもよい。
なお、各シール柱33の径及び各スペーサー31の径は特に限定されないが、通常、各シール柱33は液晶層21中において延在方向D2(すなわち液晶層21が延在する方向)に関して各スペーサー31よりも大きな径を有する。一例として、各シール柱33の径は各スペーサー31の径の10倍程度若しくはそれ以上の大きさを有することができ、各スペーサー31の径を数μm〜50μm程度とする一方で、各シール柱33の径を数十μm〜150μm程度とすることも可能である。
また図4等に示す各スペーサー31は、ビーズ状の球形を有し、第1基板28又は第2基板29に対して外側から付着するように設けられているが、各スペーサー31の形状や配置態様は特に限定されない。例えば、各スペーサー31は平面部を持つ柱形状(例えば円錐台や角錐台等の錐台形状)を有してもよい。また、フォトリソグラフィ等の技術を使って第1基板28及び第2基板29の内側に一部が配置されるように形成される柱状部材を、スペーサー31として用いてもよい。
このように複数のスペーサー31とは別個に複数のシール柱33を設けることによって、第1基板28と第2基板29の間隔を精度良く規制することができ、液晶層21の積層方向D1に関する厚み(すなわちセルギャップ)の均一性を向上させることができる。特に、各シール柱33は第1基板28及び第2基板29の両者に対して接合されるため、スペーサー31では規制が難しかった「積層方向D1のうち第1基板28と第2基板29の間隔が大きくなる方向」に関する第1基板28及び第2基板29の相対的な移動を、各シール柱33によって規制することができる。
これにより、調光セル11(特に液晶層21)に対して局所的に大きな力が作用しても(図1A〜図2B参照)、「第1基板28と第2基板29の間隔が小さくなる方向」への第1基板28及び第2基板29の相対的な移動は各スペーサー31及び各シール柱33によって抑制され、「第1基板28と第2基板29の間隔が大きくなる方向」への第1基板28及び第2基板29の相対的な移動は各シール柱33によって抑制される。したがって複数のスペーサー31のみが設けられる場合に比べ、スペーサー31とともにシール柱33が設けられる場合には、第1基板28と第2基板29の間隔を精度良く規制することができ、液晶溜まり部の発生(図1B及び図2B参照)を効果的に防いで、液晶層21の積層方向D1に関する厚みの均一性を向上させることができる。
なお、枠状シール材32と複数のシール柱33とは同じ材料によって構成されることが好ましい。この場合、枠状シール材32及び各シール柱33の形成が容易になる。例えば、同一の形成装置を使って、枠状シール材32及び各シール柱33を同時的に第1基板28上(例えば第1配向層22上)又は第2基板29上(例えば第2配向層23上)に形成することも可能である。そのような形成装置として、典型的にはディスペンサーやスクリーン印刷装置を使うことができるが、短時間且つ一括的に枠状シール材32及び各シール柱33を形成する観点からは、スクリーン印刷装置の方が好ましい。
また、第1基板28及び第2基板29の各々に対する複数のシール柱33の接合力は、25mN/mm2以上であることが好ましい。「第1基板28と第2基板29の間隔が大きくなる方向」への第1基板28及び第2基板29の相対的な移動を防ぐ観点からは、複数のシール柱33の第1基板28及び第2基板29に対する接合力を大きくして、各シール柱33が第1基板28及び第2基板29から分離しないようにすることが好ましい。本件発明者は、試行錯誤を繰り返して様々な条件下で調光セル11及び調光装置10を考察した結果、液晶溜まり部15の発生を防ぐには、25mN/mm2以上の接合力により複数のシール柱33が第1基板28及び第2基板29の各々に対して接合されていることが好ましいという知見を得るに至った。
ここで言う接合力は、任意の手法によって測定可能であるが、例えば調光セル11のうちシール柱33が設けられている部分を切り出し、その切り出した部分の第1基板28及び第2基板29を相互に引き剥がすのに要する力を計測することによって、接合力を測定することが可能である。具体的には、例えば、調光セル11のうちシール柱33を含む1cm四方の平面形状を有する部分を切り出し、この切り出した部分の両面(すなわち第1基板28及び第2基板29の各々の外側面)をそれぞれ両面テープ等を介してガラス等の支持部材に貼りつけて、それらの支持部材をその両面に垂直な方向へ互いに引き離して、第1基板28及び第2基板29が互いに分離するのに要する力を計測することによって接合力(N/mm2)を測定することができる。
また、液晶層21が延在する方向(すなわち延在方向D2)に関する複数のシール柱33の各々の径は、500μm以下であることが好ましい。また、液晶層21が延在する方向(すなわち延在方向D2)に関し、液晶層21が存在する1ミリ四方のエリア(すなわち1mm(縦)×1mm(横)=1mm2の平面サイズを有するエリア)において複数のシール柱33が第1基板28及び第2基板29の各々と接合しているエリアは10%以下であることが好ましい。
調光性能を確保する観点からは、液晶層21が配置されるエリア(すなわち枠状シール材32によって囲まれるアクティブエリア)において、シール柱33の占有率を可能な限り小さくして、液晶が調光性能を発揮可能な領域を可能な限り大きくすることが好ましい。また一般に、各シール柱33の径が大きくなるほど、各シール柱33と第1基板28及び第2基板29の各々との間の接合面積が増え、接合力を増大させることができる。その一方で、人間が覗き込むことが予定されている窓(例えばサンルーフ等)等において調光装置10が用いられる場合、各シール柱33が観察者に視認されないことが好ましい。
本件発明者は、鋭意研究の結果、とりわけ各シール柱33の径の大きさが視認性に対して非常に大きな影響を及ぼすという知見を得た。その一方で、本件発明者は、上述の調光性能、接合力、及び各シール柱33の視認性を総合的に勘案し、各シール柱33を視覚上目立たせず且つ調光セル11の良好な調光性能を実現しつつ、液晶溜まり部15の発生を防ぐのに有効な接合力を確保するためには、各シール柱33の径が500μm以下であることが好ましいという知見を得るに至った。また同様の理由に基づいて、液晶層21が存在する1ミリ四方のエリアにおいてシール柱33が第1基板28及び第2基板29の各々と接触する面積の割合(すなわち占有率)が10%以下であることが好ましいという知見を得るに至った。ここで言う占有率は、各シール柱33の径の大きさと、液晶層21が存在する1ミリ四方のエリアにおけるシール柱33の個数(数密度)と、に基づいて定まる。
シール柱33の個数(数密度)は、特に限定されず、調光性能を確保する観点やシール柱33が視認されないようにする観点からはできるだけ小さい方が好ましいが、接合力を確保する観点からは大きい方が好ましい。ただし、シール柱33の数密度はスペーサー31の数密度よりも小さく、一例として、スペーサー31は1ミリ四方当たり100〜200個程度設けられ、シール柱33は1ミリ四方当たり10個程度設けられる。
なお、各シール柱33を視覚上目立たなくさせる観点からは、複数のシール柱33の各々は有色(例えば黒色)を有していたり、透明であったりすることが好ましい。例えば、調光セル11が光を遮断する際に各シール柱33を目立たなくさせるには、各シール柱33は黒色を有することが好ましい。一方、調光セル11が光を透過させる際に各シール柱33を目立たなくさせるには、各シール柱33は透明であることが好ましい。各シール柱33が黒色を有する調光セル11は黒色再現性に優れており、液晶層21の液晶によって入射光が遮断される場合に、当該入射光は黒色の各シール柱33によっても遮断される。一方、各シール柱33が透明(無色)である調光セル11は透明性に優れており、液晶層21の液晶が入射光を透過させる場合に、当該入射光は透明な各シール柱33も透過する。
また複数のシール柱33を視覚上目立たなくさせる観点からは、複数のシール柱33は、液晶層21が延在する方向(すなわち延在方向D2)に関して不規則的に定められる位置に配置されることが好ましい。一方、液晶層21の全体にわたって厚みを均等に保つ観点からは、複数のシール柱33を、液晶層21が延在する方向(すなわち延在方向D2)に関して規則的に定められる位置に配置されることが好ましい。この場合、第1基板28及び第2基板29に対する複数のシール柱33の接合力を、液晶層21の全体にわたって均一的に発揮させることができる。
なお、ここで言う「規則的に定められる位置」とは、例えば隣り合う位置同士の間隔が規則的に定められている場合が該当し、典型的には、隣り合う位置同士の間隔が所定距離である場合が該当する。一方、「不規則的に定められる位置」とは、例えば隣り合う位置同士の間隔が不規則的に定められている場合が該当し、典型的には、隣り合う位置同士の間隔がランダムである場合が該当する。なお、不規則的に定められる位置に配置される複数のシール柱33は、必ずしも全てのシール柱33の位置が不規則的に定められている必要はなく、複数のシール柱33の一部のみが不規則的に定められる位置に配置されている場合も、複数のシール柱33は全体として不規則的に定められる位置に配置されていると言える。したがって、例えば、複数のシール柱33を所定の平面エリア毎に複数のグループに分類し、各グループに含まれる2以上のシール柱33のうちの1以上のシール柱33を不規則的に定められる位置に配置しつつ他のシール柱33を規則的に定められる位置に配置する場合も、複数のシール柱33は全体として不規則的に定められる位置に配置されていると言える。なお、例えば、規則的に定められる所定位置から所定距離の範囲内においてランダムに定められる位置は、「不規則的に定められる位置」に該当する。
上述の各種条件を良好に満たすために、複数のシール柱33を構成する材料は、例えばエポキシ樹脂或いはアクリル樹脂を含むことができる。
以上説明したように本実施形態によれば、シール柱33を設けることによって、液晶層21が必要以上に厚くなることを防ぐことができるとともに、液晶層21が必要以上に薄くなることをスペーサー31とともに防ぐことができる。これにより液晶溜まり部15の発生を効果的に防いで優れた調光性能を示すことができる調光セル11、及びそのような調光セル11が一対の透光部材12間に配置される調光装置10を提供することができる。また上述の調光セル11を用いることにより、「一対の透光部材12間において調光セル11の少なくとも一部が押圧されながら、当該調光セル11を一対の透光部材12に対して固定する製造方法」に基づいて、液晶溜まり部15の発生を防ぎつつ、調光装置10を精度良く製造することができる。
特に、第1基板28及び第2基板29の各々に対する複数のシール柱33の接合力を25mN/mm2以上とすることで、液晶溜まり部15の発生を非常に効果的に防ぐことができる。また枠状シール材32と複数のシール柱33とを同じ材料によって構成することによって、枠状シール材32及び複数のシール柱33を簡単且つ高速に形成することが可能となる。
[変形例]
図5及び図6は、調光セル11の一変形例を示す概略断面図である。上述の図3及び図4に示す調光セル11では第1基板28及び第2基板29が平板形状を有するが、第1基板28及び/又は第2基板29は、少なくとも一部において曲がっていてもよく、例えば二次元曲面や三次元曲面などの各種の曲面を形成してもよい。ここで言う二次元曲面とは、単一の軸線を中心として二次元的に曲がった曲面、或いは、互いに平行な複数の軸線を中心として同一又は異なる曲率で二次元的に曲がった曲面のことである。一方、三次元曲面とは、互いに非平行な複数の軸線の各々を中心として、部分的に又は全体的に曲がっている面を意味する。
図5に示すように液晶層21が第1基板28の曲面と第2基板29の曲面との間に配置される場合、シール柱33が設けられていないと、液晶層21の中央付近或いはその他の箇所において空間(気泡)Sが形成されることがある。一方、図6に示すように第1基板28及び第2基板29の各々に接合される複数のシール柱33を設けることによって、第1基板28と第2基板29の間隔は所望の大きさに保たれ、液晶層21における空間(気泡)Sの形成を防ぎつつ、液晶層21を所望の厚みに保持することができる。
また上述の図1A〜図2Bに示す各透光部材12は、表面及び裏面の双方が平面形状を成しているが、一対の透光部材12のうちの少なくともいずれか一方は、中間支持材13を介して調光セル11が固定される面の少なくとも一部が曲面を形成していてもよい。このような透光部材12の曲面に対して調光セル11を固定する場合であっても、当該曲面と調光セル11との間に中間支持材13を介在させることによって、調光セル11を透光部材12の曲面に対して適切に固定することができる。このように透光部材12の曲面、平面、或いは曲面及び平面の組み合わせのいずれに対しても調光セル11を高い信頼性をもって固定することができる。
また複数のシール柱33の各々は、複数のスペーサー31のうちの少なくとも1以上に接触、又は複数のスペーサー31のうちの少なくとも1以上を包含するようにして設けられてもよい。
図13は、調光セル11の他の変形例を示す概略断面図である。図13に示す各シール柱33は、スペーサー31上に配置されており、シール柱33と接触するスペーサー31は、シール柱33に食い込むようにして設けられている。これにより、各シール柱33のうちの第1基板28及び第2基板29の各々に対する接合に寄与する箇所の面積を増大させることができる。また、第1基板28又は第2基板29に固定されたスペーサー31に引っ掛けるようにして、各シール柱33を固定することができる。したがって本変形例によれば、第1基板28及び第2基板29の各々に対するシール柱33の接合力を効果的に増大させることができる。なお本変形例において、全部のスペーサー31が第1基板28及び第2基板29のうちの一方のみに固定されていてもよいが、一部のスペーサー31を第1基板28に対して固定しつつ他のスペーサー31を第2基板29に対して固定してもよい。この場合、複数のシール柱33を第1基板28及び第2基板29の双方に対して強固に固定することができ、第1基板28及び第2基板29の各々に対するシール柱33の接合力をより一層効果的に増大させることができる。
また、スペーサー31の付与手法及び付与態様は上述の内容には限定されない。例えば、第1配向層22及び第2配向層23を構成する配向材に複数のスペーサー31を予め混ぜておき、配向層22、23を形成する際に当該配向材を複数のスペーサー31とともに第1電極層24及び第2電極層25上に付与することによって、複数のスペーサー31が第1基板28及び第2基板29に設けられてもよい。この場合、第1基板28上及び第2基板29上において満遍なく複数のスペーサー31を分布させることができるだけではなく、配向材によって複数のスペーサー31を第1基板28(特に第1電極層24)又は第2基板29(特に第2電極層25)に対して比較的強固に付着させることができる。また複数のスペーサー31は、シール柱33を構成する材料に混ぜられていてもよく、シール柱33とともに第1基板28及び第2基板29に対して付与されてもよい。
[シール柱の平面配置例]
次に、平面視における複数のシール柱33(柱状スペーサー)の配置について説明する。なお以下の配置例は、上述の第1モード、第2モード及び第3モードのいずれに対しても適宜適用可能である。
図14に示すように、複数のシール柱33は、平面視で三角形を複数充填した図形の各頂点に対応する位置にそれぞれ配置されている。具体的には、各シール柱33は、平面視で、最小単位となる同一の正三角形TR1を複数平面充填した図形の各頂点(正三角格子の格子点)上に配置されている。各正三角形TR1の一辺の長さ(L1)は互いに同一である。このため、各シール柱33と当該シール柱33に隣接するシール柱33との間の間隔(L1)は、互いに均一となっている。なお、各シール柱33の間隔L1は、230μm以上2000μm以下としても良い。この場合、複数のシール柱33同士の距離(間隔L1)が均等になるので、調光セルにおける液晶の厚み(セルギャップ)が面内で均一となり、斑ムラの発生を抑制することができる。なお、上記正三角形TR1に代えて、3つの辺の長さが互いに異なる三角形を用いても良い。
なお、斑ムラとは、調光セル11における液晶層21の厚みが面内で不均一に分布することにより、調光セル11の透光率が面内で不均一となる現象をいう。とりわけ、シール柱33を不規則に配置した場合には、各シール柱33間の距離が一定でないため、斑ムラとよばれる現象が発生しやすい。すなわち、調光セル11を挟み込んだ合わせガラスにおいては、各部材を一体に圧着する際にその表面に圧力が加わる。このとき、シール柱33間の距離が離れている箇所はセルギャップ(液晶層21の厚み)が小さくなり、シール柱33間の距離が近い箇所はセルギャップ(液晶層21の厚み)が大きくなりやすい。このため、シール柱33を不規則に配置した場合には、調光セル11における液晶層21の厚みが面内で不均一に分布し、これにより透光率が面内で不均一となる斑ムラが発生してしまう。
本明細書中、平面視とは、調光セル11が第1ガラス板及び第2ガラス板に挟まれる場合、例えば第1ガラス板又は第2ガラス板の面に対して垂直な方向から見た場合をいってもよい。なお、第1ガラス板及び第2ガラス板の表面形状が曲面形状となっている場合でも、第1ガラス板及び第2ガラス板の厚み方向の湾曲量に対して各シール柱33の間隔は十分に小さいため、近似的に第1ガラス板及び第2ガラス板が平面であると考えることができる。
次に、平面視における複数のシール柱33の配置の変形例について、図15乃至図18を参照して説明する。
図15に示すように、複数のシール柱33は、平面視で五角形を複数充填した図形の各頂点に対応する位置にそれぞれ配置されても良い。具体的には、各シール柱33は、平面視で、最小単位となる同一の等辺五角形PE1を複数平面充填した図形の各頂点に対応する位置に配置されている。各等辺五角形PE1の一辺の長さ(L2)は、各等辺五角形PE1同士の間で互いに同一である。このため、各シール柱33と当該シール柱33に隣接するシール柱33との間の間隔L2は、互いに均一となっている。各シール柱33の間隔L2は、115μm以上2000μm以下としても良い。この場合、シール柱33の規則性が低いため(低ピッチで連続的(一直線)に形成されていないため)、複数のシール柱33による回折光の干渉が周期的に生じにくくなっている。なお、上記等辺五角形PE1に代えて、5つの辺の長さが互いに異なる五角形を用いても良い。
図16に示すように、複数のシール柱33は、平面視で三角形、四角形及び六角形のうち3種類の多角形を複数平面充填した図形の各頂点に対応する位置にそれぞれ配置されていても良い。具体的には、各シール柱33は、平面視で、最小単位となる正三角形TR2、正方形SQ1及び正六角形HE1を複数充填した図形の各頂点に対応する位置にそれぞれ配置されている。この場合、複数の正三角形TR2同士の形状は互いに同一であり、複数の正方形SQ1同士の形状は互いに同一であり、複数の正六角形HE1同士の形状は互いに同一である。また、各正三角形TR2の一辺の長さL3と、各正方形SQ1の一辺の長さL3と、各正六角形HE1の一辺の長さL3とは、互いに同一である。このため、各シール柱33と当該シール柱33に隣接するシール柱33との間の間隔L3は、互いに均一となっている。各シール柱33の間隔L3は、115μm以上2000μm以下としても良い。なお、上記正三角形TR2に代えて、3つの辺の長さが互いに異なる三角形を用いても良く、上記正方形SQ1に代えて、4つの辺の長さが互いに異なる四角形を用いても良く、上記正六角形HE1に代えて、6つの辺の長さが互いに異なる六角形を用いても良い。
図17に示すように、複数のシール柱33は、平面視で三角形及び四角形のうち2種類の多角形を複数平面充填した図形の各頂点に対応する位置にそれぞれ配置されていても良い。具体的には、各シール柱33は、平面視で、最小単位となる正三角形TR3及び正方形SQ2を複数充填した図形の各頂点に対応する位置にそれぞれ配置されている。この場合、複数の正三角形TR3同士の形状は互いに同一であり、複数の正方形SQ2同士の形状は互いに同一である。また、各正三角形TR3の一辺の長さL4と、各正方形SQ2の一辺の長さL4とは、互いに同一である。このため、各シール柱33と当該シール柱33に隣接するシール柱33との間の間隔L4は、互いに均一となっている。各シール柱33の間隔L4は、115μm以上2000μm以下としても良い。なお、上記正三角形TR3に代えて、3つの辺の長さが互いに異なる三角形を用いても良く、上記正方形SQ2に代えて、4つの辺の長さが互いに異なる四角形を用いても良い。
図15乃至図17において、シール柱33の配置の規則性が低くなっているため、複数のシール柱33による回折光の干渉が周期的に生じにくくなっている。また、複数のシール柱33同士の距離(間隔L2、L3、L4)がそれぞれ均等になっているので、調光セル11における液晶層21の厚み(セルギャップ)が面内で均一となり、斑ムラの発生を抑制することができる。
図18に示すように、複数のシール柱33は、平面視で正方形を複数充填した図形の各頂点に対応する位置にそれぞれ配置されても良い。具体的には、各シール柱33は、平面視で、最小単位となる同一の正方形SQ3を複数平面充填した図形の各頂点(正方格子の格子点)上に配置されている。この場合、各正方形SQ3の一辺の長さ(L5)は互いに同一である。このため、各シール柱33と当該シール柱33に隣接するシール柱33との間の間隔(L5)は、互いに均一となっている。
各シール柱33の間隔L5は、408μm以上2000μm以下とすることが好ましく、560μm以上950μm以下とすることがより好ましい。この場合、シール柱33は規則的に並んでいるが、その間隔L5は408μm以上であり、光の波長に対して十分に大きい。このため、複数のシール柱33による回折光の干渉を生じにくくすることができる。また、複数のシール柱33同士の距離(間隔L5)が950μm以下となっているので、シール柱33同士の距離が大きく開くことはない。このため、調光セル11における液晶層21の厚み(セルギャップ)が面内で不均一になりにくく、斑ムラの発生を抑制することができる。
図19は、調光セル11のうち外部電極基板35の周辺を示す概略断面図である。図19に示すように、第1基板(第1積層体)28と第2基板(第2積層体)29との間には、外部電極基板35が挟み込まれている。この外部電極基板35は、外端が調光コントローラ(図示省略)に電気的に接続されるとともに、内端が金属層36及び導電フィルム37を介して第1電極層(第1透明電極)24及び第2電極層(第2透明電極)25に電気的に接続されている。外部電極基板35は、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)からなっていても良い。また金属層36は、銅等の導電性の高い金属からなる。導電フィルム37は、例えば異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)からなっていても良い。この場合、外部電極基板35の厚みは、液晶層21の厚みより厚くなっている。このため、第1基板28と第2基板29との間隔は、液晶層21が配置される部分よりも外部電極基板35が配置される部分の方が広くなっている。
図19に示すように、シール柱33及びビーズ状のスペーサー31は、枠状シール材32が設けられる領域にも形成されている。この場合、シール柱33及びスペーサー31は、枠状シール材32に内包または埋設されて一体化されている。これにより、シール柱33及びスペーサー31が接着された第2基板29と、枠状シール材32との密着性を向上させることができる。
また、シール柱33及びスペーサー31は、外部電極基板35が設けられる領域にも形成されている。この場合、シール柱33及びスペーサー31は、外部電極基板35を接続する導電フィルム37と一体化されている。これにより、シール柱33及びスペーサー31が接着された第2基板29と、外部電極基板35との密着性を向上させることができる。
[応用例]
上述の調光装置10の適用対象は特に限定されず、典型的には窓及びドア等に対して調光装置10を適用することができる。とりわけ、スペーサー31及びシール柱33によって第1基板28及び第2基板29の相対位置が比較的強固に固定されるので、振動等の外力が加えられる環境下にも上述の調光装置10を設置することが可能である。したがって、建築物の窓やドアだけでなく、飛行機、船、電車及び自動車等の乗り物や他の移動体の窓やドア等にも調光装置10を適用することができる。
このように上述の調光装置10は、移動体及び非移動体の両者に対して適用することが可能であり、例えば図20に示すように車両50のサンルーフ51として調光装置10を好適に用いることが可能である。例えば日光等の外光を車両50内に取り入れたい場合、FPC等を介して電極層24、25間に印加する電圧を調光コントローラ(図示省略)により調整し、液晶層21の光透過率を増大させる。これにより、液晶層21における光透過が許容され、調光装置10(すなわちサンルーフ51)に入射した外光が、車両50の内部に差し込む。一方、外光を車両50内に取り入れたくない場合、FPC等を介して電極層24、25間に印加する電圧を調光コントローラにより調整し、液晶層21の光透過率を減少させる。これにより、液晶層21における光透過が制限又は遮断され、調光装置10(すなわちサンルーフ51)に入射した外光が車両50内部に差し込む量が制限され又は車両50内部には導かれない。なお、このような調光装置10(すなわち液晶層21)における光透過率の調整は、車両搭乗者からの指示に基づいて手動的に行われてもよいし、図示しないセンサ等の機器によって直接的又は間接的に取得される車両50の外部環境(例えば明るさ)に関する情報に基づいて自動的に行われてもよい。
また調光装置10自体は、調光装置10を支持する支持部(図20に示す例ではルーフ52)に対して固定的に設けられてもよいし、スライド機構やチルト機構などの作動機構を介して支持部に対して移動可能に取り付けられてもよい。特に、調光装置10が支持部に対して相対的に移動可能に設けられ、外力が作用しやすい状態で調光装置10を使用する場合であっても、上述のように調光セル11は透光部材12及び中間支持材13により守られているので、調光装置10を高い信頼性をもって使用することが可能である。
本発明は、上述の実施形態及び変形例には限定されず、当業者が想到しうる種々の変形が加えられた各種態様も含みうるものであり、本発明によって奏される効果も上述の事項に限定されない。したがって、本発明の技術的思想及び趣旨を逸脱しない範囲で、特許請求の範囲及び明細書に記載される各要素に対して種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
例えば、上述の第1モード〜第3モードでは樹脂を含む第1樹脂基材26及び第2樹脂基材27が用いられているが、これらには限定されず、これらの基材の代わりに樹脂を含まない基材が用いられてもよい。