図面を参照して、調光装置及び調光装置の製造方法について例示する。理解を容易にするため、各図面には各要素が概略的に示されている。したがって各図面に示されている要素には、大きさ、形状及び縮尺等の特性が誇張又は簡略化されている要素が含まれうる。また本明細書に記載されている数値、形状及び材料等は一例に過ぎず、本開示を限定するものではない。また本明細書で用いられている用語は必ずしも厳密な意味には縛られない。したがって幾何学的な特性を示す表現の意味内容は、同様の機能を期待しうる程度の範囲を含むものと解釈しうる。
図1は、調光装置10の一例の概略を示す断面図である。
図1に示す調光装置10は、液晶層(後述の図7の符号「37」参照)を有する調光フィルム11と、調光フィルム11が重ねられているガラス体(第1剛体)12と、ガラス体12とは反対側から調光フィルム11を覆うカバー体13と、を備える。調光装置10の各構成要素は光を透過可能な1又は複数の材料により構成されており、調光装置10は全体として光を透過可能である。
図1に示す調光装置10では、ガラス体12、第2接着層15、調光フィルム11、第1接着層14及びカバー体13が、この順番で積層方向Zに重ねられている。積層方向Zと直角を成す方向(すなわち延在方向X)に関し、ガラス体12、第1接着層14及びカバー体13の各々は、調光フィルム11よりも大きく、調光フィルム11を覆い且つ調光フィルム11の外側にまで延在する。第2接着層15は、調光フィルム11のうちガラス体12に対向する面の全体を覆うように設けられており、延在方向Xに関し、調光フィルム11とほぼ同じサイズを有する。
カバー体13及び第1接着層14のうち積層方向Zに関して調光フィルム11と対向する部分(すなわち調光フィルム11を覆う部分)とガラス体12との間には、調光フィルム11及び第2接着層15が介在する。一方、カバー体13及び第1接着層14のうち積層方向Zに関して調光フィルム11と対向しない部分(すなわち延在方向Xに関して調光フィルム11の外側に位置する部分)とガラス体12との間には、調光フィルム11及び第2接着層15が介在しない。そして調光フィルム11は、第1接着層14によりカバー体13に対して接着されている。カバー体13の一部(特に積層方向Zに関して調光フィルム11と対向しない部分の一部)は、調光フィルム11の外側で、第1接着層14を介してガラス体12に対し直接的に接着されている。このように、カバー体13のうち、調光フィルム11の延在方向Xにおいて調光フィルム11の外側に位置する部分が、ガラス体12に接着されている。
カバー体13は、後述のように、調光フィルム11における液晶層のセルギャップの外因による変動を抑制するように働く。そのためカバー体13は、外因によって変形しにくいことが好ましく、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリカーボネート(PC)を使って構成しうる。カバー体13は、例えば、調光装置10が使用される想定環境下(例えば25℃~90℃程度の環境温度且つ標準大気圧下)で、0.1GPa以上のヤング率を有していてもよい。常温常圧環境下において、ポリエチレンテレフタレートのヤング率は2.8GPa程度であり、ポリカーボネートのヤング率は2.4GPa程度である。このようにカバー体13のヤング率は、常温常圧環境下で2.4GPa以上であってもよい。また調光フィルム11をガラス体12及びカバー体13によって高い保持力で支持する観点(特にカバー体13の張力を維持する観点)からは、カバー体13は、調光装置10が使用される想定環境の温度(例えば90℃程度)よりも高いガラス転移点を有することが好ましい。
ガラス体12は、剛性が大きく且つ光を透過する部材によって構成されている。典型的には、ソーダライムガラス(青板ガラス)、硼珪酸ガラス(白板ガラス)、石英ガラス、ソーダガラス、及びカリガラス等の透光性の高い板ガラスを、ガラス体12の材料として用いることが可能である。またポリカーボネート及びアクリル等の樹脂ガラス(有機ガラス)をガラス体12の材料として用いることも可能であり、特にポリカーボネートは耐熱性及び強度の面で好ましい。ガラス体12には、耐擦傷性等の要求特性に応じた処理(例えばハードコート処理等の表面処理)が施されていてもよい。軽量化の観点からは樹脂ガラスが好ましく、耐熱性及び耐傷性の観点からは無機ガラスが好ましい。なお、ガラス体12に代えて、透明基板を用いることが可能である。そのような透明基板の具体的な組成は限定されず、例えば透明な樹脂基材がガラス体12の代わりに用いられてもよい。
第1接着層14及び第2接着層15は、任意の接着成分を含有し、お互いに同じ構成成分を有していてもよいし、お互いに異なる構成成分を有していてもよい。第1接着層14及び第2接着層15は、圧着性の接着成分を含有する接合体であってもよいし、非圧着性の接着成分を含有する接合体であってもよい。
ここで「圧着性の接着成分を含有する接合体」は、隣接物体に対して適切に接着するために加圧(すなわち常圧よりも大きな圧力)が必要な接合体である。常圧は、環境圧であり、通常は大気圧に等しく、標準大気圧としうる。一方、「非圧着性の接着成分を含有する接合体」は、隣接物体に対して適切に接着するために加圧が不要な接合体であり、常圧下で隣接物体と適度に接着することが可能である。「圧着性の接着成分を含有する接合体」としては、例えば、PVB(ポリビニルブチラール樹脂)、EVA(エチレン酢酸ビニル)或いはCOP(シクロオレフィンポリマー)を主成分とする膜体(接合膜)が挙げられる。一方、「非圧着性の接着成分を含有する接合体」としては、例えば、OCR(光学透明樹脂)や硬化樹脂(例えば熱硬化樹脂、常温硬化樹脂、2液混合樹脂、紫外線硬化樹脂、及び電子線硬化樹脂等)が挙げられる。
第1接着層14及び第2接着層15の各々は、調光フィルム11及びガラス体12に接触することによって接着作用を発揮してもよい。例えば、第1接着層14及び第2接着層15の各々は、常温(例えば5℃~35℃)及び常圧(例えば大気圧(特に標準大気圧))下で接着作用を発揮する接着成分を含んでいてもよい。また第1接着層14及び第2接着層15の各々が接着作用を発揮する環境下(例えば常温よりも高い高温及び/又は常圧よりも高い高圧の環境下)で、カバー体13は第1接着層14を介して調光フィルム11及びガラス体12に載せられてもよいし、第2接着層15はガラス体12に載せられてもよいし、調光フィルム11は第2接着層15を介してガラス体12に載せられてもよい。
図2は、調光装置10の他の例の概略を示す断面図である。図2に示す調光装置10は、上述の図1に示す調光装置10とほぼ同じ構成を有するが、調光フィルム11の側方において(すなわち延在方向Xに関する調光フィルム11の外側において)、調光フィルム11、ガラス体12及びカバー体13によって囲まれる空間Sを有する。なお図1に示す調光装置10は、「調光フィルム11、ガラス体12及びカバー体13によって囲まれる空間S」を有しておらず、調光フィルム11の側方部分にはカバー体13及び第1接着層14が密着している。
上述の構成を有する調光装置10は、例えば以下の工程を含む製造方法によって、製造可能である。
まず、調光フィルム11が重ねられているガラス体12を準備する。そして、調光フィルム11を介してガラス体12とは反対側で調光フィルム11を覆うようにカバー体13を配置し、調光フィルム11の外側でカバー体13をガラス体12に接着させる。
特に図3及び図4に示す製造方法では、以下のようにしてカバー体13が調光フィルム11及びガラス体12に対して接着される。以下の説明では、一例として、「調光フィルム11、ガラス体12及びカバー体13によって囲まれる空間S」を有していない調光装置10(図1参照)が製造される。ただし同様の製造方法によって、「調光フィルム11、ガラス体12及びカバー体13によって囲まれる空間S」を有する調光装置10(図2参照)を製造することも可能である。
すなわち、ガラス体12、第2接着層15、調光フィルム11、第1接着層14及びカバー体13は、お互いに重ねられている状態で、真空装置50の内側(真空)の真空環境下に置かれる(図3参照)。具体的には、「調光フィルム11、ガラス体12及びカバー体13によって囲まれる空間S」が真空環境下で真空空間となるように、ガラス体12、第2接着層15、調光フィルム11、第1接着層14及びカバー体13は重ねられる。例えば、真空装置50の内側において、ガラス体12、第2接着層15、調光フィルム11、第1接着層14及びカバー体13の全部が積み重ねられてもよい。またガラス体12、第2接着層15及び調光フィルム11が大気圧下で積み重ねられる一方で、第1接着層14及びカバー体13は、真空環境下で、ガラス体12、第2接着層15及び調光フィルム11に積み重ねられてもよい。
カバー体13及び第1接着層14は、お互いに別々に、調光フィルム11及びガラス体12に重ねられてもよい。またカバー体13及び第1接着層14は、調光フィルム11及びガラス体12に重ねられる前の状態で粘着剤付きフィルムのような一体構成を有していてもよく、調光フィルム11及びガラス体12の各々に対して同時的に重ねられてもよい。本例では、シート状のカバー体13(すなわち流動性を持たない固体状のカバー体13)が、第1接着層14を介して調光フィルム11及びガラス体12に載せられる。
真空装置50は任意の装置により構成可能であり、例えば真空加熱炉を具備する装置を真空装置50として用いてもよい。この場合、真空加熱炉内に配置したガラス体12、第2接着層15、調光フィルム11、第1接着層14及びカバー体13を、真空環境下で、高温に加熱することができる。これにより、第1接着層14を介した調光フィルム11及びカバー体13の接着、第1接着層14を介したカバー体13及びガラス体12の接着、及び第2接着層15を介した調光フィルム11及びガラス体12の接着が、真空装置50の真空高温環境下で促されてもよい。
その後、ガラス体12、第2接着層15、調光フィルム11、第1接着層14及びカバー体13は、真空装置50の真空環境よりも高い圧力下(図4に示す例では大気25中(大気圧下))に置かれる(図4参照)。このようにガラス体12、第2接着層15、調光フィルム11、第1接着層14及びカバー体13は、お互いに積み重ねられている状態で真空環境下に置かれた後、真空環境よりも高い圧力下に置かれる。これにより、調光フィルム11及びガラス体12に対するカバー体13の密着度が高まり、調光フィルム11は、ガラス体12及びカバー体13によって高い保持力で支持される。
図3に示す調光装置10は、真空装置50における真空環境下で、調光フィルム11の側方において(すなわち延在方向Xに関する調光フィルム11の外側において)、調光フィルム11、ガラス体12及びカバー体13によって囲まれる空間Sを有する。このように真空環境下で空間Sを有する調光装置10であっても、真空環境よりも高い圧力下に置かれることにより、調光フィルム11に対するカバー体13及び第1接着層14の密着度を増大させることができる。その結果、図4に示すように、カバー体13は、調光フィルム11との間に空間Sが形成されないように延在しうる。なお調光装置10が真空環境下から真空環境よりも高い圧力下に置かれた後に、調光装置10の空間Sは必ずしも消失しなくてもよい。そのような場合であっても、カバー体13の調光フィルム11及びガラス体12に対する密着度が増し、調光フィルム11はガラス体12及びカバー体13によって高い保持力で支持される。
ガラス体12及びカバー体13による調光フィルム11の保持力を向上させる観点からは、カバー体13は、張力がかかっている状態で、調光フィルム11を覆い且つガラス体12に接着されていることが好ましく、調光フィルム11はカバー体13によりガラス体12に向けて押し付けられていることが好ましい。図4に示す例では、調光装置10が真空環境よりも高い圧力下に置かれている状態で、カバー体13には張力が作用しており、調光フィルム11はカバー体13からガラス体12に向かう方向(図4の下方向)に働く力を受けている。
例えば、図3に示す真空環境下において、調光フィルム11、ガラス体12及びカバー体13によって囲まれる空間Sが形成されている状態で、カバー体13は、弛みなく、第1接着層14を介して調光フィルム11及びガラス体12に対して接着されていてもよい。この場合、調光装置10が真空環境よりも高い圧力下に置かれることによって、カバー体13及び第1接着層14は調光フィルム11の側部(図4の左右端部参照)に近づいて空間Sが低減又は消失する。これにより、カバー体13には張力がかかり、調光フィルム11にはガラス体12に向かう方向への力が作用しうる。
このように真空環境下で、カバー体13に張力をかけつつ、カバー体13が調光フィルム11を覆い且つガラス体12に接着されてもよい。この場合、調光装置10が真空環境よりも高い圧力下に置かれた状態で、カバー体13にはより確実に張力がかかり、調光フィルム11はガラス体12に向かう方向への力をカバー体13からより確実に受けることができる。
図5及び図6は、調光装置10の製造方法の他の例を説明するための図である。図5及び図6には、調光装置10の一例の断面が概略的に示されている。図5及び図6に示されている要素には、図3及び図4に示す対応の要素と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。以下の説明では、一例として、「調光フィルム11、ガラス体12及びカバー体13によって囲まれる空間S」を有する調光装置10(図2参照)が製造される。
本例では、調光フィルム11が重ねられているガラス体12が準備された後、カバー体13に張力をかけつつ、カバー体13が調光フィルム11を覆い且つガラス体12に接着される。
特に本例では、カバー体13に対し、カバー体13が延びる方向の成分を含む方向(図5に示す矢印によって示される方向参照)に力Fをかけつつ、カバー体13及び第1接着層14が調光フィルム11及びガラス体12に載せられる。これにより、カバー体13が第1接着層14を介して調光フィルム11及びガラス体12に重ねられる過程(図5参照)及びカバー体13が第1接着層14により調光フィルム11及びガラス体12に対して接着されている状態(図6参照)において、調光装置10は、調光フィルム11、ガラス体12及びカバー体13によって囲まれる空間Sを有する。
なお、図5及び図6に示す例では、大気25中で、カバー体13及び第1接着層14が調光フィルム11及びガラス体12に載せられて、カバー体13が第1接着層14を介して調光フィルム11及びガラス体12に接着されているが、これには限定されない.例えば、真空中でカバー体13及び第1接着層14が調光フィルム11及びガラス体12に載せられて、カバー体13が第1接着層14を介して調光フィルム11及びガラス体12に接着されてもよい。
第1接着層14は、調光フィルム11及びガラス体12上に置かれることによって接着作用を発揮することが好ましく、カバー体13に力Fがかけられた状態でカバー体13を調光フィルム11及びガラス体12に対して接着することが好ましい。例えば、常温常圧下で、カバー体13及び第1接着層14を調光フィルム11及びガラス体12に載せることで、カバー体13を第1接着層14により比較的弱い力で調光フィルム11及びガラス体12に接着させてもよい(仮接着工程)。その後、調光装置10(ガラス体12、第2接着層15、調光フィルム11、第1接着層14及びカバー体13)を、常温よりも高い高温及び/又は常圧よりも高い高圧の環境下に置くことで、カバー体13を第1接着層14によって更に強い力で調光フィルム11及びガラス体12に接着させてもよい(本接着工程)。
次に、調光フィルム11の典型例について説明する。図7は、調光フィルム11の一例を示す断面図である。
図7に示す調光フィルム11は、第1調光基板31及び第2調光基板32と、第1調光基板31と第2調光基板32との間に配置される第1透明電極33及び第2透明電極34と、第1透明電極33と第2透明電極34との間に配置される第1配向層35及び第2配向層36と、第1配向層35と第2配向層36との間に配置される液晶層37と、を備える。液晶層37は、液晶シール材39により区画されている領域に、複数のスペーサー38とともに液晶が充填されることで形成される。第1透明電極33及び第2透明電極34に与えられる電圧が制御部(図示省略)の制御下で変化させられて液晶層37の液晶分子の配向が調整されることにより、調光フィルム11は透過光量を調節する。
第1調光基板31及び第2調光基板32は、透明な樹脂製の部材であり、可撓性フィルムを用いることができる。例えば、光学異方性が小さく、可視域の波長(例えば380nm~800nm)の透過率が80%以上である透明樹脂フィルムを、第1調光基板31及び第2調光基板32として用いることができる。そのような透明樹脂フィルムの材料として、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、EVA等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリサルホン(PEF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、(メタ)アクロニトリル、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂を挙げることができる。透明樹脂フィルムの材料としては、特に、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂が好ましい。また第1調光基板31及び第2調光基板32として用いられる透明樹脂フィルムの厚みは、透明樹脂フィルムが可撓性を有する範囲内で適宜に選択されることが好ましい。
第1透明電極33及び第2透明電極34は、それぞれ第1調光基板31及び第2調光基板32に積層される透明導電膜である。透明導電膜としては、各種の透明電極材料を用いることができ、例えば酸化物系(例えば酸化錫系、酸化インジウム系及び酸化亜鉛系)の全光透過率が50%以上の透明な金属薄膜を挙げることができる。酸化錫(SnO2)系としてはネサ(酸化錫SnO2)、ATO(Antimony Tin Oxide:アンチモンドープ酸化錫)、及びフッ素ドープ酸化錫が挙げられる。酸化インジウム(In2O3)系としては、酸化インジウム、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)、及びIZO(Indium Zinc Oxide)が挙げられる。酸化亜鉛(ZnO)系としては、酸化亜鉛、AZO(アルミドープ酸化亜鉛)、及びガリウムドープ酸化亜鉛が挙げられる。
スペーサー38は、液晶層37における外周部を除く部分の厚み(セルギャップ)を規定する。スペーサー38としては、例えば、球形状の透明なビーズスペーサーを用いることができる。スペーサー38に用いられるビーズスペーサーとしては、シリカ等の無機材料による構成、有機材料による構成、或いはこれらを組み合わせたコアシェル構造の構成等を広く用いることができる。ビーズスペーサーは、球形状による構成の他、円柱形状、楕円柱形状、或いは角柱形状等のロッド形状により構成されていてもよい。スペーサー38は、透明部材により構成されるが、必要に応じて着色した材料を用いて色味が調整されてもよい。
スペーサー38は、上述のビーズスペーサーに限定されない。例えば、フォトレジストを第1調光基板31側に塗工して露光及び現像を行うことにより、円柱形状のスペーサー38を作製してもよい。またスペーサー38は、フォトレジスト以外の任意の方法で、任意の材料が使用されて設けられてもよい。例えば、液晶シール材39と同じ材料を使って、液晶シール材39と同様の製造法により、スペーサー38(例えば柱状のスペーサー38)が設けられてもよい。またスペーサー38の具体的な形状は限定されない。例えば、スペーサー38は、四角柱、円錐、円錐台、四角錐、四角錐台或いは他の柱状形状を有していてもよい。またスペーサー38は、第1配向層35側に固定されていてもよいし、第2配向層36側に固定されていてもよいし、第1配向層35側及び第2配向層36側の両方に固定されていてもよい。
第1配向層35及び第2配向層36は、光配向層(液晶配向層)により形成される。光配向層に使用可能な光配向材料としては、例えば、光分解型、光二量化型、及び光異性化型等を挙げることができる。光二量化型の材料としては、例えば、シンナメート、クマリン、ベンジリデンフタルイミジン、ベンジリデンアセトフェノン、ジフェニルアセチレン、スチルバゾール、ウラシル、キノリノン、マレインイミド、又は、シンナミリデン酢酸誘導体を有するポリマー等を挙げることができる。中でも、配向規制力が良好である点で、シンナメート及びクマリンの一方又は両方を有するポリマーが好ましく用いられる。光配向層に代えて、ラビング配向層が第1配向層35及び第2配向層36として用いられてもよい。ラビング配向層に関しては、ラビング処理を行わないものとしてもよいし、ラビング処理を行い、微細なライン状凹凸形状を賦型処理して配向層を作製してもよい。図7に示す調光フィルム11は第1配向層35及び第2配向層36を備えるが、これに限られず、調光フィルム11は第1配向層35及び第2配向層36を備えなくてもよい。
液晶層37には、ゲストホスト液晶組成物(二色性色素組成物)などの任意の組成物を広く用いることができる。ゲストホスト液晶組成物はカイラル剤を含有し、液晶材料を水平配向させた場合に、ゲストホスト液晶組成物が液晶層37の厚み方向に螺旋形状に配向させられるようにしてもよい。液晶シール材39は、液晶層37を囲むように設けられており、液晶材料の漏出を防ぐ。液晶シール材39としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、或いは紫外線硬化性樹脂等を用いることができる。
図示の調光フィルム11では、電界印加時にゲストホスト液晶組成物の配向が遮光状態となるように、第1配向層35及び第2配向層36が、プレチルトに基づく配向規制力が設定された垂直配向層により構成される。これにより、調光フィルム11はノーマリークリアとして構成される。なお調光フィルム11は、電界印加時にゲストホスト液晶組成物の配向が透光状態となるように、ノーマリーダークとして構成されてもよい。ノーマリーダークの調光フィルム11は、液晶に電界が作用していない状態で光透過率が最小となって遮光状態となる。ノーマリークリアの調光フィルム11は、液晶に電界が作用していない状態で光透過率が最大となって光透過状態となる。
調光フィルム11は上述のゲストホスト型には限定されず、例えば二色性色素組成物を用いないTN(Twisted Nematic)方式、VA(Vertical Alignment)方式、IPS(In-Plane-Switching)方式等を調光フィルム11は採用してもよい。調光フィルム11は、採用する液晶駆動方式に応じた任意の構成を有することができる。例えば調光フィルム11は、必要に応じ、第1調光基板31側及び/又は第2調光基板32側に設けられる直線偏光層を備えていてもよい。また調光フィルム11がIPS方式を採用する場合、電極は液晶層37の一方側にのみ設けられていてもよい。
上述の調光装置10によれば、調光フィルム11がカバー体13によって支持され、外因(例えば重力及び環境温度変化)によるセルギャップの変動を抑えることができる。そのため、下述のような重力ムラの発生や液晶層37における気泡の発生を有効に回避することができ、様々な使用環境に適応可能な調光装置10を提供することができる。
またガラス体12及びカバー体13が調光フィルム11を保護するプロテクターとして働き、外力によって調光フィルム11に与えられるダメージを軽減することができる。
上述の調光装置10は任意の用途に使用可能である。例えば、調光装置10は、建築物の窓ガラス、ショーケース、屋内の透明パーテーション、及び車両のウィンドウ等の調光を図る部位(外光が入射する部位、例えば、フロント、サイド、リア、ルーフ等のウィンドウ)に配置されうる。調光フィルム11に印加する電圧を変化させることにより、建築物や車両等の内側への入射光(透過光)の光量を調節できる。
図8及び図9は、調光フィルム11(特に液晶層37)において発生しうる重力ムラを説明するための簡略図である。図8には、積層方向Zが鉛直方向(重力作用方向)と平行になるように(すなわち延在方向Xが水平方向と平行になるように)配置された調光フィルム11の一例の概略断面が示されている。図9には、積層方向Zが水平方向と平行になるように(すなわち延在方向Xが鉛直方向と平行になるように)配置された調光フィルム11の一例の概略断面が示されている。
図8及び図9において、第1積層体41は液晶層37の一方側に設けられる調光フィルム11の構成要素を指し、第2積層体42は液晶層37の他方側に設けられる調光フィルム11の構成要素を指す。例えば図7に示す調光フィルム11の場合、第1積層体41は第1調光基板31、第1透明電極33及び第1配向層35を含み、第2積層体42は、第2調光基板32、第2透明電極34及び第2配向層36を含む。
図8に示す調光フィルム11では、第2積層体42、スペーサー38及び第1積層体41の重なり方向が鉛直方向と一致し、重力の影響下で第2積層体42はスペーサー38に上から載った状態で下方からスペーサー38によって支持される。この場合、第1積層体41と第2積層体42との間の間隔(すなわち液晶層37の厚み(セルギャップ))は、スペーサー38によって効果的に保持され、延在方向Xに関してほぼ同じ大きさを維持することができる。
一方、図9に示す調光フィルム11では、第1積層体41、スペーサー38及び第2積層体42の重なり方向が鉛直方向と直角を成す。この場合、液晶層37の液晶は重力の影響下で下方に移動する傾向が強まる。その一方で、第1積層体41及び第2積層体42は、いずれもスペーサー38には上から載らず、スペーサー38によって下方から支持されることはない。そのため、第1積層体41及び第2積層体42の下方部分は、液晶から水平方向へ大きな力を受けて、スペーサー38による支持が解除され、局所的に水平方向へ大きく膨らむことがある。一方、第1積層体41及び第2積層体42の上方部分(特にスペーサー38によって支持されていない箇所)の水平方向サイズは、局所的に小さくなることがある。
このように、調光フィルム11が縦配置をとる場合(図9参照)には、セルギャップがばらつきやすく、調光装置10の光学特性(光透過性能)のムラが目立ちやすくなる。
図10は、調光フィルム11(特に液晶層37)において発生しうる気泡混入を説明するための簡略図である。図10には、積層方向Zが鉛直方向と平行になるように(すなわち延在方向Xが水平方向と平行になるように)配置された調光フィルム11の一例の概略断面が示されている。
第1積層体41及び第2積層体42が柔軟なフィルム基材によって構成されている場合、第1積層体41及び第2積層体42は環境温度の変化に起因して熱変形(膨張/収縮)しやすいことがある。第1積層体41及び/又は第2積層体42が熱変形して液晶層37の液晶が全体的に又は局所的に減圧されると、液晶層37に気泡60が生じる。液晶と第1積層体41及び/又は第2積層体42との間において気泡60が集まると気泡膨張部61が形成され、第1積層体41及び/又は第2積層体42が局所的に膨らむ。
このように、気泡膨張部61の発生によってもセルギャップが変動し、調光装置10の光学特性(光透過性能)が意図せずに変わることがある。
図11は、ガラス体12及びカバー体13を備える調光装置10(図4参照)において重力ムラや気泡混入の発生が有効に防がれることを説明するための簡略図である。図11には、積層方向Zが水平方向と平行になるように(すなわち延在方向Xが鉛直方向と平行になるように)配置された調光装置10一例の概略断面が示されている。
調光装置10が図11に示すような縦配置をとる場合、調光フィルム11の第1積層体41及び第2積層体42は、セルギャップを拡張する方向に働く力(拡張力)を液晶から受けるが、その拡張力に対向する力をガラス体12及びカバー体13から受ける。その結果、第1積層体41及び第2積層体42は撓むことなく、セルギャップを維持することができる。特に、カバー体13に張力Tが働いている場合やカバー体13によって調光フィルム11がガラス体12に押し付けられている場合には、ガラス体12及びカバー体13による調光フィルム11の保持力も大きくなり、外因によるセルギャップの変動をより一層効果的に防ぐことができる。
同様に、環境温度が変化して調光フィルム11の第1積層体41及び第2積層体42が熱変形しようとしても、第1積層体41及び第2積層体42は、その熱変形に抵抗する力をガラス体12及びカバー体13から受ける。その結果、第1積層体41及び第2積層体42は熱変形することなく、セルギャップを維持することができ、液晶層37における気泡混入の発生を回避しうる。
このように、ガラス体12及びカバー体13を具備する調光装置10によれば、外因によるセルギャップの変化を抑えて、重力ムラや気泡混入の発生を防ぐことができる。
[第1変形例]
調光装置10は、衝撃吸収層17を備えていてもよい。
図12は、第1変形例に係る調光装置10の断面を概略的に示す図である。図12に示されている要素には、図4に示す対応の要素と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図12に示す調光装置10では、カバー体13と調光フィルム11との間に、第1接着層14ではなく、衝撃吸収層17が位置している。図示の衝撃吸収層17は、延在方向Xに関し、調光フィルム11よりも大きく、調光フィルム11を覆い且つ調光フィルム11の外側にまで延在する。なお衝撃吸収層17は、延在方向Xに関して調光フィルム11と同じ大きさを有していてもよく、延在方向Xに関し、調光フィルム11の調光部(図7に示す液晶層37(液晶シール材39の内側)参照)と同等以上のサイズを有することが好ましい。
カバー体13のうち積層方向Zに関して調光フィルム11と対向する部分とガラス体12との間には、衝撃吸収層17、調光フィルム11及び第2接着層15が介在する。一方、カバー体13のうち積層方向Zに関して調光フィルム11と対向しない部分とガラス体12との間には、衝撃吸収層17が介在する。
衝撃吸収層17は、衝撃吸収性に優れている任意の材料により構成可能であり、例えば調光フィルム11及びカバー体13よりも優れた衝撃吸収性を有する。衝撃吸収層17の具体的な形態は限定されない。典型的には、低反発樹脂(例えば低反発ウレタンなど)、低弾性ゴム、或いは衝撃吸収ゲル(例えばアルファゲル(登録商標)など)を使って衝撃吸収層17を構成することが可能である。
図12に示す衝撃吸収層17は、調光フィルム11、ガラス体12及びカバー体13に対し、接着剤を介在させることなく、直接的に接着されている。なお、調光フィルム11、ガラス体12、及び/又はカバー体13と衝撃吸収層17との間には任意の接着層が設けられていてもよい。
図12に示す調光装置10の他の構成は、図4に示す調光装置10と同様である。
本変形例の調光装置10によれば、衝撃吸収層17によって調光フィルム11を衝撃から守ることができる。
なお衝撃吸収層17が柔らかい場合には、調光フィルム11(特に液晶層37)における重力ムラや気泡混入が多少発生しやすくなることがある。重力ムラや気泡混入の発生を防ぐ観点からは、衝撃吸収層17は適度な形状維持性能(例えば硬度等)を有することが好ましい。
[第2変形例]
図13は、第2変形例に係る調光装置10の断面を概略的に示す図である。本変形例において、上述の第1変形例と同一又は類似の要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図13に示す調光装置10では、衝撃吸収層17が、カバー体13を介して調光フィルム11とは反対側に位置する。図示の衝撃吸収層17は、延在方向Xに関し、調光フィルム11よりも大きく、調光フィルム11及びカバー体13を覆い且つ調光フィルム11の外側にまで延在する。なお衝撃吸収層17は、延在方向Xに関して調光フィルム11と同じ大きさを有していてもよく、延在方向Xに関し、調光フィルム11の調光部(図7に示す液晶層37(液晶シール材39の内側)参照)と同等以上のサイズを有することが好ましい。
カバー体13は調光フィルム11及びガラス体12に対して直接的に接着されているが、カバー体13と調光フィルム11及び/又はガラス体12との間に接着層(上述の第1接着層14等)が介在していてもよい。
図13に示す調光装置10の他の構成は、図12に示す調光装置10と同様である。
本変形例の調光装置10においても、衝撃吸収層17によって調光フィルム11を衝撃から守ることができる。
また本変形例によれば、カバー体13が衝撃吸収層17と調光フィルム11との間に位置し、調光フィルム11はカバー体13及びガラス体12によって高い保持力で支持さている。そのため、衝撃吸収層17の柔らかさにかかわらず、上述の実施形態に係る調光装置10(例えば図11参照)と同程度のレベルで、重力ムラや気泡混入の発生を防ぐことができる。このように本変形例の調光装置10によれば、「外因によるセルギャップの変化の防止」及び「衝撃からの調光フィルム11の保護」を高いレベルで両立させることができる。
[第3変形例]
図14は、第3変形例に係る調光装置10の断面を概略的に示す図である。本変形例において、上述の実施形態及び変形例と同一又は類似の要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図14に示す調光装置10は、いわゆる合わせガラスの構造を有する。すなわち、調光装置10は、第1ガラス体(第1剛体)12aとは反対側から調光フィルム11及びカバー体13を覆う第2ガラス体(第2剛体)12bを備える。調光フィルム11は、積層方向Zにおいて、第1ガラス体12a及び第2ガラス体12bにより挟まれている。
第1ガラス体12a及び第2ガラス体12bは、上述のガラス体12と同様に構成可能である。
調光フィルム11の側方において(すなわち延在方向Xに関する調光フィルム11の外側において)、中間層19がカバー体13に重ねられている。中間層19は、カバー体13と第2ガラス体12bとの間のスペース(より厳密には、カバー体13と第3接着層16との間のスペース)に配置され、任意の材料によって構成可能である。カバー体13及び中間層19のうち第2ガラス体12bに対向する面は、面一に形成されており、同一平面に含まれる。
第2ガラス体12bは、カバー体13及び中間層19のうち第2ガラス体12bに対向する面に対し、第3接着層16を介して接着されている。第3接着層16は、任意の接着成分を含有し、例えば、上述の第1接着層14及び第2接着層15と同様に構成しうる。
本変形例の調光装置10(合わせガラス)によれば、第1ガラス体12a及び第2ガラス体12bによって調光フィルム11を強固に保護することができる。
なお図14に示す調光装置10は、合わせガラス構成を有する調光装置の一例に過ぎない。調光装置10は、上述の構成以外の合わせガラス構成を有していてもよい。例えば、中間層19及び第3接着層16は制限されない。図14に示す調光装置10のうち中間層19で埋められている部分が、代わりに第3接着層16で埋められてもよい。また図14に示す第3接着層16に代えて中間層19が使われてもよい。
[他の変形例]
本開示は、上述の実施形態及び変形例には限定されない。
上述の実施形態ではシート状のカバー体13が調光フィルム11及びガラス体12に載せられることによって調光装置10が作られているが、これには限定されない。例えば、流動性を有する液状のカバー体13を調光フィルム11及びガラス体12に付与し、その後にカバー体13を硬化させることによって「調光フィルム11を覆い且つ調光フィルム11の外側でガラス体12に接着されるカバー体13」が実現されてもよい。カバー体13を硬化させる手法は限定されず、常温硬化、高温硬化、紫外線硬化或いは電子線硬化を利用しうる。
カバー体13自体が調光フィルム11及び/又はガラス体12に対する適度な接着性を有する場合、カバー体13と調光フィルム11との間に及び/又はカバー体13とガラス体12との間に第1接着層14が介在していなくてもよい。また調光フィルム11自体がカバー体13に対する適度な接着性を有する場合には、カバー体13と調光フィルム11との間に第1接着層14が介在しなくてもよい。また調光フィルム11自体がガラス体12に対する適度な接着性を有する場合には、調光フィルム11とガラス体12との間に第2接着層15が介在しなくてもよい。
上述のガラス体(上述のガラス体12、第1ガラス体12a及び第2ガラス体12b)の代わりに、他の剛体が用いられてもよい。ここでいう剛体は、変形しにくく、剛性が大きい任意の材料によって構成可能であり、少なくとも調光フィルム11よりも大きな剛性(例えば軸剛性、曲げ剛性、せん断剛性及び/又はねじり剛性)を有する。
なお図11~図14に示す調光装置10は、図4に示す調光装置10と同一又は類似の構造を有するが、例示に過ぎない。上述の調光装置10は、図4に示す調光装置10とは異なる構造(例えば図6に示す調光装置10と同一又は類似の構造)の調光装置10に対しても応用可能である。
また調光装置10は、上述されていない構成要素や図示されていない構成要素(例えば任意の機能を発揮する機能層(空隙層を含む))を有していてもよい。
上記実施形態及び変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組み合わせることも可能である。また、上記実施形態及び変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。また、上述の実施形態及び変形例の各要素に各種の変形が加えられてもよい。