JPWO2018207827A1 - ポリペプチド溶液、及びポリペプチド繊維の製造方法、並びに人造ポリペプチド - Google Patents

ポリペプチド溶液、及びポリペプチド繊維の製造方法、並びに人造ポリペプチド Download PDF

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Abstract

本発明は、クラスターIaに属するタイプIケラチン由来のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、ギ酸を含む溶媒、又は双極子モーメントが3.0D以上の非プロトン性極性溶剤及び無機塩を含む溶媒に溶解させた、ポリペプチド溶液に関する。

Description

本発明は、ポリペプチド溶液、及びポリペプチド繊維の製造方法、並びに人造ポリペプチドに関する。
近年、獣毛供給量は減少傾向にあるが、途上国の発展による人口増加により獣毛の需要は年々高まっており、需要と共有のバランス維持が困難になりつつある。一方、動物保護の観点から、天然の動物の毛髪の供給量の増加への対応には限界がある。
毛髪の主要な構成成分であるケラチンを溶解し、繊維として再生し、再利用することが試みられている(特許文献1及び特許文献2)。より具体的には、微粉末化されたケラチンが、飼料又は肥料、化粧品基材、生態系に適した界面活性剤、医用高分子素材などに利用されている(特許文献3)。一方、天然の動物の毛髪は複雑な構造を有しているため(非特許文献1)、人工的な毛髪に類似した繊維の製造は試みられていない。
ケラチンは、等電点により、タイプI(酸性)及びタイプII(中性又は塩基性)ケラチンに分類することができる(非特許文献1)。タイプIケラチンは、更に、ヒトI型上皮ケラチン(K9−K28)、ヒトI型毛髪ケラチン(K31−K40)、非ヒトI型上皮及び毛髪ケラチン(K41−K70)に分類することができる(非特許文献2)。また、タイプIケラチンのクラスタIにおいて、クラスタIaに分類されるK26(ケラチン26)、K25及びK27は、高いブートストラップ値を持っておりアミノ酸配列的に近縁であることがわかっており、特にK26は種を超えて高い配列類似性があることが知られている(非特許文献2)。
特開2010−236149号公報 特開2016−160211号公報 特開平05−170926号公報
羊毛の構造と物性,第1版,日本羊毛産業協会発行,2015年,pp.125−133 Small Ruminat Research,93巻,2010年,pp.24−30
上述のとおり、獣毛に代替する繊維が求められている。非特許文献2に記載のように、ケラチンの遺伝子解析によりアミノ酸配列も明確になり始めているが、このケラチンでさえ、人工的に製造するには至っていない。
本発明は、ケラチン由来のポリペプチドを含むポリペプチド繊維の製造に適したポリペプチド溶液を提供することを目的とする。本発明はまた、当該ポリペプチド溶液を用いたポリペプチド繊維の製造方法を提供することも目的とする。
本発明者らは、天然の毛髪を構成する主要なタンパク質であるケラチンの人工的な製造方法及びケラチンを含む繊維の製造方法について鋭意検討した結果、天然の毛髪と同程度の応力、タフネス及び伸度を有する、タイプIケラチンを含む人造ポリペプチド繊維を人工的に製造可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、例えば、以下の各発明に関する。
[1]
クラスターIaに属するタイプIケラチン由来のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、ギ酸を含む溶媒、又は双極子モーメントが3.0D以上の非プロトン性極性溶剤及び無機塩を含む溶媒に溶解させた、ポリペプチド溶液。
[2]
上記双極子モーメントが3.0D以上の非プロトン性極性溶剤及び無機塩を含む溶媒が、更に還元剤を含む、[1]に記載のポリペプチド溶液。
[3]
上記還元剤が、チオール類、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン及びピロ亜硫酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[2]に記載のポリペプチド溶液。
[4]
上記チオール類が、ジチオトレイトール、β−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、1,2−エタンチオール、チオグリコール酸及びチオグリコール酸アンモニウム(ATG)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[3]に記載のポリペプチド溶液。
[5]
上記双極子モーメントが3.0D以上の非プロトン性極性溶剤が、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン、N−メチル−2−ピロリドン及びアセトニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]〜[4]のいずれかに記載のポリペプチド溶液。
[6]
上記無機塩が、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属硝酸塩及びチオシアン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である[1]〜[5]のいずれかに記載のポリペプチド溶液。
[7]
上記クラスターIaに属するタイプIケラチンが、ケラチン25、ケラチン26及びケラチン27からなる群より選ばれる、[1]〜[6]のいずれかに記載のポリペプチド溶液。
[8]
[1]〜[7]のいずれかに記載のポリペプチド溶液を使用したポリペプチド繊維の製造方法であって、
上記ポリペプチド溶液をドープ液とし、
上記ドープ液を口金から凝固液に押し出し、未延伸糸を得る工程を含む、ポリペプチド繊維の製造方法。
[9]
上記未延伸糸を延伸する工程を更に含む、[8]に記載のポリペプチド繊維の製造方法。
[10]
上記凝固液が、メタノール、エタノール及び2−プロパノールからなる群より選ばれる少なくとも1種である[8]又は[9]に記載のポリペプチド繊維の製造方法。
[11]
クラスターIaに属するタイプIケラチン由来のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列と、当該核酸配列に作動可能に連結された1又は複数の調節配列とを有する発現ベクター。
[12]
[11]に記載の発現ベクターで形質転換された宿主。
[13]
[12]に記載の宿主を培養して、増殖させ、上記ポリペプチドを発現誘導することを含む、ポリペプチドの製造方法。
[14]
クラスターIaに属するタイプIケラチン由来のアミノ酸配列を含む、人造ポリペプチド。
[15]
上記クラスターIaに属するタイプIケラチンが、ケラチン25、ケラチン26及びケラチン27からなる群より選ばれる、[14]に記載の人造ポリペプチド。
[16]
配列番号1〜16で示されるアミノ酸配列からなる群より選ばれるアミノ酸配列を含む、[14]又は[15]に記載の人造ポリペプチド。
[17]
[14]〜[16]のいずれかに記載の人造ポリペプチドを含み、
繊維、糸、フィルム、発泡体、粒体、ナノフィブリル、ゲル及び樹脂からなる群から選択される、製品。
本発明によれば、ケラチン由来のポリペプチドを含むポリペプチド繊維の製造に適したポリペプチド溶液の提供が可能となる。また、本発明によれば、当該ポリペプチド溶液を用いたポリペプチド繊維の製造方法の提供が可能となる。
各種生物由来のK26のアミノ酸配列を比較したアラインメント図である。 実施例において、PRT798(配列番号6)、PRT800(配列番号7)、PRT801(配列番号8)の人造ポリペプチドの発現をSDS−PAGE電気泳動により解析した結果を示す写真である。 実施例において、PRT835(配列番号9)、PRT838(配列番号16)、PRT840(配列番号13)、PRT836(配列番号10)、PRT837(配列番号15)の人造ポリペプチドの発現をSDS−PAGE電気泳動により解析した結果を示す写真である。 実施例において、PRT854(配列番号12)、PRT855(配列番号14)、PRT856(配列番号11)の人造ポリペプチドの発現をSDS−PAGE電気泳動により解析した結果を示す写真である。 実施例において、PRT798(配列番号6)の人造ポリペプチドから得られた人造ポリペプチド繊維(ケラチンタイプ繊維)の機械的強度を測定した結果を示す図である。 実施例において、PRT798(配列番号6)の人造ポリペプチドから得られた人造ポリペプチド繊維(ケラチンタイプ繊維)の表面及び断面を示す走査電子顕微鏡写真である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
〔ポリペプチド溶液〕
本実施形態に係るポリペプチド溶液は、クラスターIaに属するタイプIケラチン由来のアミノ酸配列を含むポリペプチドを溶媒に溶解させたものである。当該溶媒は、ギ酸を含む溶媒、又は双極子モーメントが3.0D以上の非プロトン性極性溶剤及び無機塩を含む溶媒であってよい。また、本明細書において、「人造ポリペプチド」は、天然由来のポリペプチドと区別するための用語であり、人工的に(例えば、遺伝子組換法により)製造したポリペプチドを含む。この意味において、当該人造ポリペプチドは、天然のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を有するポリペプチドであってもよく、天然のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドであってもよい。
<クラスターIaに属するタイプIケラチン由来のアミノ酸配列を含むポリペプチド>
本発明に係るポリペプチドは、クラスターIaに属するタイプIケラチン由来のアミノ酸配列を含む(以下、単に「本発明のポリペプチド」ともいう。)。クラスターIaは、非特許文献2に記載されているとおり、ケラチンのアミノ酸配列を近隣結合法(Neighbor−joining method)でクラスター解析したときに、ヤギ(Capra hircus)ケラチン25(K25)及びケラチン26(K26)、並びにヒツジ(Ovis aries)ケラチン25(K25)及びケラチン27(K27)が属するタイプIケラチンのクラスターである。
本明細書において、「クラスターIaに属するタイプIケラチン由来のアミノ酸配列」とは、近隣結合法によりクラスター解析したときにクラスターIaに分類される天然のタイプIケラチンのアミノ酸配列、及び当該天然のタイプIケラチンのアミノ酸配列を改変したアミノ酸配列を含む。ここで、「アミノ酸配列を含む」とは、当該アミノ酸配列からなる場合と、当該アミノ酸配列に更に他のアミノ酸配列が付加された場合とを含む。
クラスターIaに属する(天然の)タイプIケラチンの具体例としては、ケラチン25(K25)、ケラチン26(K26)及びケラチン27(K27)が挙げられ、K26が好ましい。
図1は、各種生物由来のK26のアミノ酸配列を比較したアラインメント図である。図1に示されているように、ヤギ(Capra hircus,NP_001272643.1)、ウシ(Bos taurus,NM_001099096.1)、ヒト(Homo sapiens,BC132951.1)、マウス(Mus musculus,BC116672.1)、ラット(Rattus norvegicus,NM_001008823.1)由来のK26は、配列同一性が極めて高く(カッコ内はGenBankデータベースのナンバー)、タンパク質としての性質も極めて類似していると考えられる。なお、図1中、陰影のついた残基はヤギK26配列と一致する残基を示す。アライメントの下にあるアスタリスクは、配列同一性を示す。コロンは保存的置換を示し、ドットは非保存的置換を示す。
本発明のポリペプチドは、ケラチンとしての性質を保有する限りにおいて、クラスターIaに属する(天然の)タイプIケラチンのアミノ酸配列に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当する改変を行ったアミノ酸配列を含むもの(以下、「改変ポリペプチド」ともいう。)であってもよい。当該改変ポリペプチドの具体例として、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4及び配列番号5で示されるアミノ酸配列、並びにこれらのアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、更により好ましくは99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む改変ポリペプチドを挙げることができる。
本実施形態に係る改変ポリペプチドは、N末端及びC末端のいずれか一方又は両方にタグ配列を含んでいてもよい。タグ配列を含むことにより、当該ポリペプチドの単離、固定化、検出及び可視化等が可能となる。
タグ配列としては、例えば、他の分子との特異的親和性(結合性、アフィニティ)を利用したアフィニティタグを挙げることができる。アフィニティタグの具体例としては、ヒスチジンタグ(Hisタグ)を挙げることができる。Hisタグは、ヒスチジン残基が4から10個程度並んだ短いペプチドで、ニッケル等の金属イオンと特異的に結合する性質があるため、金属キレートクロマトグラフィー(chelating metal chromatography)によるポリペプチドの単離に利用することができる。タグ配列の具体例としては、例えば、配列番号17で示されるアミノ酸配列(Hisタグを含むアミノ酸配列)が挙げられる。
また、タグ配列として、グルタチオンに特異的に結合するグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースに特異的に結合するマルトース結合タンパク質(MBP)等を利用することもできる。
さらに、タグ配列として、抗原抗体反応を利用した「エピトープタグ」を利用することもできる。抗原性を示すペプチド(エピトープ)をタグ配列として付加することにより、当該エピトープに対する抗体を結合させることができる。エピトープタグとしては、HA(インフルエンザウイルスのヘマグルチニンのペプチド配列)タグ、mycタグ、FLAGタグ等を挙げることができる。エピトープタグを利用することにより、高い特異性で容易にポリペプチドを精製することができる。
さらに、タグ配列を特定のプロテアーゼで切り離せるようにしたものも使用することができる。当該タグ配列を介して吸着したタンパク質をプロテアーゼ処理することにより、タグ配列を切り離したポリペプチドを回収することもできる。このようなタグ配列を含む改変ポリペプチドとして、具体的には、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号12で示されるアミノ酸配列、並びにこれらのアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、更により好ましくは99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列等を含む改変ポリペプチドを挙げることができる。
また、本発明のポリペプチドとして、ポリペプチド繊維の強度を増強するために、高い靭性を有するスパイダータンパク質と融合させた改変ポリペプチド、及び当該スパイダータンパク質の特徴の一つであるポリA配列を挿入したアミノ酸配列を有する改変ポリペプチドも用いることができる。当該改変ポリペプチドとして、具体的には、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16で示されるアミノ酸配列、並びにこれらのアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、更により好ましくは99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列等を含む改変ポリペプチドを挙げることができる。
<人造ポリペプチドの製造方法>
本実施形態に係る人造ポリペプチドは、例えば、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列と、当該核酸配列に作動可能に連結された1又は複数の調節配列とを有する発現ベクターで形質転換された宿主を培養して、増殖させ、当該ポリペプチドを発現誘導することにより生産することができる。
(核酸)
本発明のポリペプチドをコードする核酸の製造方法は、特に制限されない。例えば、天然のケラチンをコードする遺伝子を利用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などで増幅しクローニングし、必要に応じて遺伝子工学的手法により改変する方法、又は化学的に合成する方法によって、当該核酸を製造することができる。また、核酸の化学的な合成方法も特に制限されず、例えば、NCBIのウェブデータベースなどより入手したケラチンのアミノ酸配列情報をもとに、AKTA oligopilot plus 10/100(GEヘルスケア・ジャパン株式会社製)などの装置で自動合成したオリゴヌクレオチドをPCRなどの公知の遺伝子工学的手法で連結する方法によって本発明のポリペプチドをコードする遺伝子を化学的に合成することができる。
(調節配列)
調節配列は、宿主におけるポリペプチドの発現を制御する配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合配列、転写終結配列等)であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。プロモーターとしては、宿主細胞中で機能し、ポリペプチドを発現誘導可能な誘導性プロモーターを用いてもよい。また、誘導性プロモーターは、誘導物質(発現誘導剤)の存在、リプレッサー分子の非存在、又は温度、浸透圧若しくはpH値の上昇若しくは低下等の物理的要因により、転写を制御できるプロモーターである。
(発現ベクター及び宿主)
発現ベクターの種類は、例えば、プラスミドベクター、ウイルスベクター、コスミドベクター、フォスミドベクター、人工染色体ベクター等、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。発現ベクターとしては、宿主細胞において自立複製が可能、又は宿主の染色体中への組込みが可能で、ポリペプチドをコードする核酸を転写できる位置にプロモーターを含有しているものが好適に用いられる。
宿主としては、原核生物、並びに酵母、糸状真菌、昆虫細胞、動物細胞及び植物細胞等の真核生物のいずれも好適に用いることができる。
原核生物の宿主の好ましい例としては、エシェリヒア属、ブレビバチルス属、セラチア属、バチルス属、ミクロバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属及びシュードモナス属等に属する細菌を挙げることができる。エシェリヒア属に属する微生物としては、例えば、エシェリヒア・コリ等を挙げることができる。ブレビバチルス属に属する微生物としては、例えば、ブレビバチルス・アグリ等を挙げることができる。セラチア属に属する微生物としては、例えば、セラチア・リクエファシエンス等を挙げることができる。バチルス属に属する微生物としては、例えば、バチルス・サチラス等を挙げることができる。ミクロバクテリウム属に属する微生物としては、例えば、ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム等を挙げることができる。ブレビバクテリウム属に属する微生物としては、例えば、ブレビバクテリウム・ディバリカタム等を挙げることができる。コリネバクテリウム属に属する微生物としては、例えば、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス等を挙げることができる。シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物としては、例えば、シュードモナス・プチダ等を挙げることができる。
原核生物を宿主とする場合、本発明のポリペプチドをコードする核酸を導入する発現ベクターとしては、例えば、pBTrp2(ベーリンガーマンハイム株式会社製)、pGEX(ファルマシア株式会社製)、pUC18、pBluescriptII、pSupex、pET22b、pCold、pUB110、pNCO2(特開2002−238569号公報)等を挙げることができる。
真核生物の宿主としては、例えば、酵母及び糸状真菌(カビ等)を挙げることができる。酵母としては、例えば、サッカロマイセス属、ピキア属、シゾサッカロマイセス属等に属する酵母を挙げることができる。糸状真菌としては、例えば、アスペルギルス属、ペニシリウム属、トリコデルマ(Trichoderma)属等に属する糸状真菌を挙げることができる。
真核生物を宿主とする場合、本発明のポリペプチドをコードする核酸を導入する発現ベクターとしては、例えば、YEP13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)等を挙げることができる。上記宿主細胞への発現ベクターの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができる。例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,69,2110(1972)〕、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、プロトプラスト法、酢酸リチウム法、コンピテント法等を挙げることができる。
(人造ポリペプチドの製造)
発現ベクターで形質転換された宿主による本発明のポリペプチドの発現方法としては、直接発現のほか、モレキュラー・クローニング第2版(コールド・スプリング・ハーバー研究所、1989年)に記載されている方法等に準じて、分泌生産、融合タンパク質発現等を行うことができる。
さらに、本実施形態に係る人造ポリペプチドは、例えば、発現ベクターで形質転換された宿主を培養培地中で培養し、培養培地中に当該人造ポリペプチドを生成蓄積させ、当該培養培地から単離及び精製することにより採取することができる。宿主を培養培地中で培養する方法は、宿主の培養に通常用いられる方法に従って行うことができる。
形質転換された宿主が、大腸菌等の原核生物又は酵母等の真核生物である場合、培養培地としては、当該宿主が資化し得る炭素源、窒素源及び無機塩類等を含有し、その培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、上記形質転換された宿主が資化し得るものであればよく、例えば、グルコース、フラクトース、スクロース、及びこれらを含有する糖蜜、デンプン及びデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸及びプロピオン酸等の有機酸、並びにエタノール及びプロパノール等のアルコール類を用いることができる。窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム及びリン酸アンモニウム等の無機酸又は有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、並びにペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕及び大豆粕加水分解物、各種発酵菌体及びその消化物を用いることができる。無機塩類としては、例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅及び炭酸カルシウムを用いることができる。
大腸菌等の原核生物又は酵母等の真核生物の培養は、例えば、振盪培養又は深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行うことができる。培養温度は、例えば、15〜40℃である。培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中の培養培地のpHは3.0〜9.0に保持することが好ましい。培養培地のpHの調整は、無機酸、有機酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム及びアンモニア等を用いて行うことができる。
また、培養中、必要に応じて、アンピシリン及びテトラサイクリン等の抗生物質を培養培地に添加してもよい。さらに、プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換された宿主を培養するときには、必要に応じてインデューサーを当該培養培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換された宿主を培養するときには、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換された宿主を培養するときには、インドールアクリル酸等を当該培養培地に添加してもよい。
(人造ポリペプチドの単離及び精製)
本実施形態に係る人造ポリペプチドの単離及び精製は、通常用いられている方法で行うことができる。例えば、当該人造ポリペプチドが宿主細胞外に分泌された場合には、培養上清から当該人造ポリペプチドを回収することができる。すなわち、上記宿主細胞を含む培養物を遠心分離等の手法で処理することにより培養上清を取得し、その培養上清から、公知のポリペプチドの単離精製に通常用いられている方法、例えば、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA−75(三菱化成株式会社製)等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(ファルマシア株式会社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の方法を単独又は組み合わせて使用し、精製された人造ポリペプチド(以下、「精製標品」ともいう。)を得ることができる。
また、当該人造ポリペプチドが宿主細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、当該宿主細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁した後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー及びダイノミル等により当該宿主細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。当該無細胞抽出液をさらに遠心分離することにより得られる上清から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
さらに、当該人造ポリペプチドが宿主細胞内に顆粒として不溶体を形成して発現した場合には、上記と同様に宿主細胞を回収後、破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分として当該人造ポリペプチドの顆粒を回収する。回収した人造ポリペプチドの顆粒はタンパク質変性剤(以下、単に「変性剤」ともいう。)で可溶化することができる。
可溶化する前に20mM トリス塩酸緩衝液(pH8.0)等の緩衝液、水酸化ナトリウム等の塩基、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の水溶液、オキソ酸等で不溶体を洗浄してもよい。
変性剤としては、尿素、チオ尿素、塩化グアニジニウム(グアニジン塩酸塩)、界面活性剤等を挙げることができる。尿素又はチオ尿素を使用する場合には、その濃度は6〜9Mが好ましい。塩化グアニジニウムを使用する場合には、その濃度は4〜8Mが好ましい。また、界面活性剤としては、例えばSDSを挙げることができ、タンパク質1gに対して1〜2g添加すればよい。
変性剤での溶解処理を行った後、上記と同様の単離精製法により精製標品を得ることができる。例えば、上記顆粒を尿素に溶解させた後に、有機溶媒により人造ポリペプチドを沈殿させて回収し、精製する方法の場合には、例えば、トリクロロ酢酸(TCA)溶液、グアニジン塩酸溶液、過塩素酸溶液等のタンパク質変性剤の水溶液、塩酸、硫酸、酢酸、リン酸等の酸性物質から選ばれる1種以上からの水溶液を用いることができ、アセトン、エタノール等の有機溶媒を挙げることができる。また、上記エタノールにノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール等が含まれている有機溶媒を利用してもよい。
人造ポリペプチドを沈殿させるために、上記尿素を使用した溶解溶液に、上記有機溶媒を1〜6倍量、好ましくは2〜5倍量添加することができる。
さらに、本実施形態に係る人造ポリペプチドを発現させる大腸菌の湿菌体又は乾燥菌体より、双極子モーメントが3.0D以上の非プロトン性極性溶剤を用いて、当該人造ポリペプチドを精製及び抽出することもできる。また、本実施形態に係る人造ポリペプチドを発現させる大腸菌の湿菌体又は乾燥菌体より、ギ酸を含む溶媒を用いて、当該人造ポリペプチドを抽出することもできる。
表1に、溶剤ハンドブック(講談社サイエンティフィック社、2007年)に基づく、双極子モーメントが3.0D以上の非プロトン性極性溶剤を記載する。
表1に示すように、双極子モーメントが3.0D以上の非プロトン性極性溶剤としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン(DMI)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、アセトニトリル等を挙げることができる。
本実施形態に係る人造ポリペプチドが宿主細胞内で顆粒として不溶体を形成して発現した場合には、当該不溶体は、通常上記非プロトン性極性溶剤に難溶である。従って、上記非プロトン性極性溶剤で処理することにより宿主細胞由来の不要な成分を除去することが可能で、当該顆粒の純度を向上させることができる。
また、上記方法で既に宿主細胞より顆粒として取得している場合には、上記非プロトン性極性溶剤で処理することにより更に当該顆粒の純度を向上させることができる。
本実施形態に係る人造ポリペプチドの顆粒の精製(純度の向上)を目的とする場合、具体的には、1〜10%(宿主細胞乾燥重量(wt)/非プロトン性極性溶剤(vol))となるように、宿主細胞から取得した顆粒に上記非プロトン性極性溶剤を添加すればよい。
また、上記非プロトン性極性溶剤に、上記顆粒が溶解しない程度に、無機塩を添加することにより、宿主細胞由来の不要な成分を更に効率的に溶解させることができる。
無機塩としては、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属硝酸塩、チオシアン酸塩、過塩素酸塩等を挙げることができる。
アルカリ金属ハロゲン化物としては、例えば、臭化カリウム、臭化ナトリウム、臭化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化リチウム等を挙げることができる。
アルカリ土類金属ハロゲン化物としては、例えば塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム等を挙げることができる。
アルカリ土類金属硝酸塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸バリウム等を挙げることができる。
チオシアン酸塩としては、例えばチオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、(グアニジニウムチオシアナート)等を挙げることができる。
過塩素酸塩としては、例えば過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸カルシウム、過塩素酸銀、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸マグネシウム等を挙げることができる。
無機塩の添加量(wt)は、使用する非プロトン性極性溶剤に応じて最適量を決めればよく、特に制限されるものではないが、例えば、非プロトン性極性溶剤(vol)の全量に対して、0〜3%(wt/vol)であることが好ましい。
上記顆粒精製のための処理温度は、添加する無機塩の濃度、目的とする人造ポリペプチドの種類等に応じて決めればよく、特に制限されるものではないが、例えば、10〜60℃であってよく、10〜50℃の温度であることが好ましい。
本実施形態に係る人造ポリペプチドの顆粒精製において、その処理時間は目的とする人造ポリペプチドが溶解しなければ、特に限定する必要はないが、工業的生産を考慮すると、10〜100分であってよく、10〜60分であることが好ましく、10〜30分であることがより好ましい。
一方、顆粒とした不溶性の人造ポリペプチドは、上記ギ酸を含む溶媒又は無機塩をより高濃度で添加した双極子モーメントが3.0D以上の非プロトン性極性溶剤を用いることで溶解させることが可能で、宿主細胞より抽出することができる。また、当該人造ポリペプチドにシステイン残基が含まれる場合には当該溶剤に還元剤を添加することが好ましい。
この場合、双極子モーメントが3.0D以上の非プロトン性極性溶剤としては、上記顆粒の精製で使用する溶剤を好適な溶剤として挙げることができる。
無機塩に関しても、上記顆粒の精製で使用する無機塩を好適な無機塩として挙げることができる。上記で挙げた無機塩を、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
無機塩の添加量(wt)は、使用する非プロトン性極性溶剤に応じて最適量を決めればよく、特に制限されるものではないが、例えば、非プロトン性極性溶剤の全量(vol)に対して、0.1〜20%(wt/vol)であることが好ましい。
また、還元剤としては、ジチオトレイトール(DTT)、β−メルカプトエタノール(BME)、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、1,2−エタンチオール、チオグリコール酸(TGA)、チオグリコール酸アンモニウム(ATG)等のチオール類、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン(THPP)等のホスフィン誘導体、ピロ亜硫酸ナトリウム(SM)、等を挙げることができる。
還元剤の添加量(wt)は、特に制限されるものではないが、例えば、使用する非プロトン性極性溶剤(vol)の全量に対して、0.1〜10%(wt/vol)であることが好ましく、1〜5%であることがより好ましい。
当該ギ酸等又は非プロトン性極性溶剤の添加量(vol)に対する、人造ポリペプチド(宿主細胞乾燥重量wt)の割合は、1〜20%(wt/vol)であってよく、4〜16%であることが好ましく、6〜12%であることがより好ましい。
また、加温することにより人造ポリペプチドを効率よく溶解し、抽出することができる。加温し、溶解させるときの温度は、添加する溶媒に応じて決めればよいが、通常10〜90℃であり、30〜85℃であることが好ましく、40〜80℃であることがより好ましい。
処理時間は、人造ポリペプチドが充分溶解できる時間であれば特に限定する必要はないが、工業的生産性、収率を考慮すると、通常20〜80分であり、20〜70分であることが好ましく、20〜60分であることがより好ましい。
人造ポリペプチドを溶解させた非プロトン性極性溶剤から不溶性の画分を除去し、当該人造ポリペプチドを回収する方法としては、遠心分離、ドラムフィルター及びプレスフィルター等のフィルターろ過等、一般的な方法を用いればよい。遠心分離の条件としては、特に限定されないが、例えば、室温(20±5℃)、8000×g〜15000×gで5〜20分間の条件を挙げることができる。フィルターろ過による場合、セライト、珪藻土等のろ過助剤、プリコート剤を併用することにより、より効率的に本実施形態に係るポリペプチドの溶解した溶媒を回収することができる。不溶物の分離は2回以上行ってもよい。
<ポリペプチド溶液の調製方法>
本実施形態に係るポリペプチド溶液は、以下のようにして調製することができる。例えば、双極子モーメントが3.0D以上の非プロトン性極性溶剤に無機塩を添加した溶媒に、本発明のポリペプチド(例えば、本実施形態に係る人造ポリペプチド)を添加して、調製することができる。また、例えば、ギ酸を含む溶媒に、本発明のポリペプチドを添加して、調製することができる。本発明のポリペプチドにシステイン残基が含まれる場合には、当該溶媒(特に、非プロトン性極性溶剤に無機塩を添加した溶媒)に更に還元剤を添加することが好ましい。
本実施形態に係る人造ポリペプチドを、上述したように溶媒に溶解させた状態で単離及び精製した場合には、この溶解溶液を下記の溶液となるように調製することにより、本実施形態に係るポリペプチド溶液として使用することができる。
双極子モーメントが3.0D以上の非プロトン性極性溶剤としては、人造ポリペプチドの単離及び精製において記載した溶剤を好適な溶剤として挙げることができる。
無機塩としては、人造ポリペプチドの単離及び精製において記載した無機塩を好適な無機塩として挙げることができる。これら無機塩を、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
溶媒全量に対する無機塩の添加量(wt)としては、使用する非プロトン性極性溶剤により最適量を決めればよく、例えば、非プロトン性極性溶剤(vol)に対して、0.1〜20%(wt/vol)が好ましく、1〜10%(wt/vol)がより好ましく、1〜5%(wt/vol)が更に好ましい。
還元剤としては、人造ポリペプチドの単離及び精製において記載した還元剤を好適な還元剤として挙げることができる。
溶媒全量に対する還元剤の添加量(wt)としては、例えば、非プロトン性極性溶剤(vol)に対して、0.1〜10%(wt/vol)が好ましく、1〜5%がより好ましい。
ギ酸を含む溶媒は、ギ酸のみからなるものであってもよく、ギ酸に加えて、他の溶剤、上述した無機塩及び/又は還元剤を含むものであってもよい。
ギ酸等又は非プロトン性極性溶剤の添加量(vol)に対する、本発明のポリペプチドの乾燥重量(wt)の割合は、5〜35%(wt/vol)であってよく、10〜30%であることが好ましく、12〜28%であることがより好ましい。
また、加温することにより本発明のポリペプチドを効率よく溶解することができる。加温し、溶解させるときの温度は、添加する溶媒に応じて決めればよいが、10〜120℃であってよく、30〜120℃であることが好ましく、40〜120℃であることがより好ましい。
加温する際の処理時間(加温時間)は、本発明のポリペプチドが充分溶解できる時間であれば特に限定する必要はないが、工業的生産性、収率を考慮すると、通常3〜80分であり、5〜70分であることが好ましく、5〜60分であることがより好ましい。
<ポリペプチド溶液の用途>
本実施形態に係るポリペプチド溶液は、ドープ液として用いることができる。ドープ液は紡糸、キャストフィルム液などに有用である。ドープ液は、不可避的な含有成分、例えば人造ポリペプチドの精製で除去されなかった夾雑物等を含んでいてもよい。
紡糸におけるドープ液の粘度は、紡糸方法に応じて適宜設定すればよく、例えば、35℃において100〜15,000cP(センチポイズ)、より好ましくは1,000〜15,000cP、さらに好ましくは1,000〜10,000cPとすることができる。本実施形態に係るポリペプチド溶液の粘度の調整は、例えば溶液中の本発明のポリペプチドの濃度及び/又は温度を調整することで行うことができる。ポリペプチド溶液の粘度は、例えば京都電子工業社製の商品名“電気磁気紡糸粘度計”を使用して測定することができる。
紡糸方法としては、本発明のポリペプチドを紡糸できる方法であれば特に制限されず、例えば、乾式紡糸、溶融紡糸、湿式紡糸、乾湿式紡糸等を挙げることができる。好ましい紡糸方法としては、湿式紡糸又は乾湿式紡糸をあげることができる。
<乾湿式紡糸−延伸>
(1)乾湿式紡糸
乾湿式紡糸では、本実施形態に係るポリペプチド溶液(ドープ液)を紡糸口金(ノズル)から凝固液(凝固液槽)の中に押出して、凝固液中で本発明のポリペプチドを固めることにより糸の形状の未延伸糸を得ることができる。凝固液としては、脱溶媒できる溶液であればよく、例えば、メタノール、エタノール及び2−プロパノール等の炭素数1〜5の低級アルコール、並びにアセトン等を挙げることができる。凝固液には、適宜水を加えてもよい。
凝固液の温度は5〜30℃が好ましい。
ドープ液を紡糸口金(口金)から脱溶媒槽の凝固液に押し出すことにより、本発明のポリペプチドによる繊維が形成され、未延伸糸が得られる。直径0.1〜0.6mmのノズルを有するシリンジポンプの場合、押し出し速度は1ホール当たり、0.2〜6.0ml/時間が好ましい。さらに好ましい押し出し速度は1ホール当たり、1.4〜4.0ml/時間である。
凝固液槽の長さは、脱溶媒が効率的に行える長さがあればよく、例えば、200〜500mmである。未延伸糸の引き取り速度は、例えば、1〜20m/分であってよく、1〜3m/分であることが好ましい。滞留時間は、例えば、0.01〜3分であってよく、0.05〜0.15分であることが好ましい。また、凝固液中で延伸(前延伸)をしてもよい。低級アルコールの蒸発を抑えるため凝固液を低温に維持し、未延伸糸の状態で引き取ってもよい。凝固液槽は多段設けてもよく、また延伸は必要に応じて、各段、又は特定の段で行ってもよい。未延伸糸の引き取り速度は、1〜3m/分が好ましい。
上記の方法で得られた未延伸糸(又は前延伸糸)は、延伸工程を経て延伸糸(ポリペプチド繊維)とすることができる。
(2)延伸
延伸方法としては、湿熱延伸、乾熱延伸、固化浴延伸等を挙げることができる。
乾熱延伸は、電気管状炉、乾熱板等を使用して行うことができる。温度としては、例えば、140℃〜270℃であってよく、160℃〜230℃が好ましい。乾熱延伸では、未延伸糸(又は前延伸糸)を、例えば、0.5〜8倍延伸することができ、1〜4倍延伸することが好ましい。
湿熱延伸及び乾熱延伸はそれぞれ単独で行ってもよく、またこれらを多段で、又は組み合わせて行ってもよい。すなわち、一段目延伸を湿熱延伸で行い、二段目延伸を乾熱延伸で行う、又は一段目延伸を湿熱延伸行い、二段目延伸を湿熱延伸行い、更に三段目延伸を乾熱延伸で行う等、湿熱延伸及び乾熱延伸を適宜組み合わせて行うことができる。
延伸工程における最終的な延伸倍率は、未延伸糸(又は前延伸糸)に対して、例えば、5〜20倍であり、6〜11倍であることが好ましい。
<製品>
本発明に係る人造ポリペプチドから形成された人造ポリペプチド繊維(人造ケラチン繊維)は、繊維(長繊維、短繊維、マルチフィラメント、又はモノフィラメント等)又は糸(紡績糸、撚糸、仮撚糸、加工糸、混繊糸、混紡糸等)として、織物、編物、組み物、不織布等に応用できる。また、ロープ、手術用縫合糸、電気部品用の可撓性止め具、さらには移植用生理活性材料(例えば、人工靭帯及び大動脈バンド)等の高強度用途にも応用できる。これらは、特許第5427322号公報等に記載の方法に準じて製造することができる。
また、本発明に係る人造ポリペプチドは、フィルム、発泡体、粒体(球体又は非球体等)、ナノフィブリル、ゲル(ヒドロゲル等)、樹脂及びその等価物にも応用でき、これらは、特開2009−505668号公報、特許第5678283号公報、特許第4638735号公報等に記載の方法に準じて製造することができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔(1)人造ポリペプチドをコードする核酸の合成、及び発現ベクターの構築〕
配列番号6〜16で示されるアミノ酸配列を有する人造ポリペプチドをコードする核酸をそれぞれ合成した。合成した核酸をそれぞれクローニングベクター(pUC118)にクローニングした。その後、タンパク質発現ベクターpET−22b(+)にそれぞれ組換えて発現ベクターを得た。
配列番号6で示されるアミノ酸配列を有する人造ポリペプチド(PRT798)は、配列番号1で示されるCapra hircus(GenBankアクセッション番号:NP_001272643.1)のアミノ酸配列のN末端に、配列番号17で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)を付加したアミノ酸配列を有する。
配列番号7で示されるアミノ酸配列を有する人造ポリペプチド(PRT800)は、PRT798(配列番号6)のシステインをセリンに置換したアミノ酸配列を有する。
配列番号8で示されるアミノ酸配列を有する人造ポリペプチド(PRT801)は、PRT798(配列番号6)のシステインをスレオニンに置換したアミノ酸配列を有する。
配列番号9で示されるアミノ酸配列を有する人造ポリペプチド(PRT835)は、PRT798(配列番号6)のN末端から1〜292番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列に対して、イソロイシンを欠失させ、ロイシンをアラニン又はグリシンに置換したアミノ酸配列を有する。
配列番号10で示されるアミノ酸配列を有する人造ポリペプチド(PRT836)は、PRT798(配列番号6)のN末端から1〜292番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列に対して、イソロイシンを欠失させ、ロイシン又はバリンをアラニン又はグリシンに置換したアミノ酸配列を有する。
配列番号11で示されるアミノ酸配列を有する人造ポリペプチド(PRT856)は、PRT835(配列番号9)のN末端のタグ配列及びヒンジ配列(配列番号17)を含まない領域を繰り返したアミノ酸配列を有する。
配列番号12で示されるアミノ酸配列を有する人造ポリペプチド(PRT854)は、PRT836(配列番号10)のN末端のタグ配列及びヒンジ配列(配列番号17)を含まない領域を繰り返したアミノ酸配列を有する。
配列番号13で示されるアミノ酸配列を有する人造ポリペプチド(PRT840)は、PRT836(配列番号10)のN末端から1〜246番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列に対して、3アミノ酸残基の置換及び、GAAAAAGからなるアミノ酸配列をアミノ酸置換して挿入したアミノ酸配列を有する。
配列番号14で示されるアミノ酸配列を有する人造ポリペプチド(PRT855)は、PRT840(配列番号13)のN末端のタグ配列及びヒンジ配列(配列番号17)を含まない領域を繰り返したアミノ酸配列を有する。
配列番号15で示されるアミノ酸配列を有する人造ポリペプチド(PRT837)は、N末端から順にタグ配列及びヒンジ配列(配列番号17)、Nephila clavipesのクモ糸タンパク質(GenBankアクセッション番号:P46804.1、GI:1174415)を改変した142アミノ酸残基からなるアミノ酸配列、及びPRT798(配列番号6)のN末端から293〜427番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列に対して、ロイシンをアラニン又はグリシンに置換したアミノ酸配列が融合してなるアミノ酸配列を有する。
配列番号16で示されるアミノ酸配列を有する人造ポリペプチド(PRT838)は、PRT837(配列番号15)のアラニンをバリンに置換したアミノ酸配列を有する。
〔(2)人造ポリペプチドの発現〕
(1)で得られたpET−22b(+)発現ベクターで、大腸菌BLR(DE3)株を形質転換した。当該形質転換された大腸菌株を、アンピシリンを含む2mLのLB培地で15時間培養した。その後、当該培養液を、アンピシリンを含む100mLのシード培養用培地(表2)にOD600が0.005となるように添加した。培養温度を30℃に保ち、OD600が5になるまでフラスコ培養を行い(約15時間)、シード培養液を得た。
次いで、当該シード培養液を500mLの生産培地(表3)を添加したジャーファーメンターにOD600が0.05となるように添加し、本培養を行った。本培養は、培養温度を37℃に保ち、培地のpHを6.9で一定に制御し、培地中の溶存酸素濃度を溶存酸素飽和濃度の20%に維持して行った。
上記生産培地中のグルコースが完全に消費された直後に、フィード液(グルコース455g/1L、酵母エキス120g/1L)を1mL/分の速度で添加した。次いで、フィード液添加前と同じ条件で、20時間、本培養を継続した。
その後、1Mのイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)を培養液に対して終濃度1mMになるよう添加し、目的のポリペプチド(配列番号6〜16で示されるアミノ酸配列を有する人造ポリペプチド)を発現誘導させた。IPTG添加後20時間経過した時点で、当該培養液を遠心分離し、菌体を回収した。IPTG添加前とIPTG添加後の培養液から調製した菌体を用いてSDS−PAGEを行い、IPTG添加に依存した目的のポリペプチドのサイズのバンドの出現により、人造ポリペプチドの発現を確認した。
図2は、PRT798(配列番号6)(分子量54kDa)、PRT800(配列番号7)(分子量54kDa)、PRT801(配列番号8)(分子量54kDa)の人造ポリペプチドの発現をSDS−PAGE電気泳動により解析した結果を示す写真である。図2に示すとおり、いずれも理論分子量より推定される位置に検出することができた。
同様に、図3は、PRT835(配列番号9)(分子量30kDa)、PRT838(配列番号16)(分子量29kDa)、PRT840(配列番号13)(分子量27kDa)、PRT836(配列番号10)(分子量29kDa)、PRT837(配列番号15)(分子量29kDa)の人造ポリペプチドの発現をSDS−PAGE電気泳動により解析した結果を示す写真である。図3に示すとおり、これらの人造ポリペプチドは疎水性度が高いためか理論分子量より高分子側にバンドが確認された。
また、図4は、PRT854(配列番号12)、PRT855(配列番号14)、PRT856(配列番号11)の人造ポリペプチドの発現をSDS−PAGE電気泳動により解析した結果を示す写真である。図4に示すとおり、これらの人造ポリペプチドも同様に理論分子量より高分子側にバンドが確認された。
結論として、上記のように設計したいずれの人造ポリペプチドも効率よく発現、生産することができた。
〔(3)人造ポリペプチド繊維の製造〕
<人造ポリペプチドの精製>
不溶体として上記11種類の人造ポリペプチドをそれぞれ発現している大腸菌BLR(DE3)を、20mM トリス塩酸緩衝液(pH8.0)に100mMのNaClを加えた溶液に懸濁した。この懸濁液にDNase(SIGMA−ALDRICH製)0.9μg/g(湿菌体1g当たり)、及びLysozyme(Thermo Fisher Scientific製)を82μg/g(湿菌体1g当たり)添加し、GEA.Niro Soavi社製の高圧ホモジナイザー(Panda plus)を用いて、室温、600barの圧力で2回処理し、菌体を破砕した。破砕後、菌体破砕物を遠心分離機(冷凍遠心分離機 Model 7000、久保田商事株式会社製)で、11,000×g、20分間処理し、不溶体を取得した。さらに、上記の手順を繰り返し行い、不溶体を取得した。
得られた不溶体を、高純度になるまで20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の不溶体を100mg/mLの濃度になるように8M グアニジン緩衝液(8Mグアニジン塩酸塩、10mMリン酸二水素ナトリウム、20mMNaCl、1mM Tris−HCl、pH7.0)で懸濁し、60℃で30分間、スターラーで撹拌し、溶解させた。溶解後、透析チューブ(三光純薬株式会社製のセルロースチューブ36/32)を用いて、水で懸濁液の透析を行った。透析後に得られた白色の凝集ポリペプチドを遠心分離により回収し、凍結乾燥機で水分を除き、人造ポリペプチドの凍結乾燥粉末を回収した。
当該凍結乾燥粉末の含水率は、ハイブリッドカールフィッシャー水分析装置(MKH−700、京都電子工業株式会社製)を用いて測定した。
<ドープ液の調製>
DMSO溶液に、LiCl4%(wt/vol)、DTT4%(wt/vol)及び上記で調製した人造ポリペプチドの凍結乾燥粉末15%(wt/vol)を加え、105℃で30分間攪拌し、人造ポリペプチドを完全に溶解させ、ドープ液を調製した。
当該ドープ液の粘度は、電気磁気紡糸粘度計(京都電子工業株式会社製)を用いて測定した。測定は、密封下、回転速度1000rpmの条件で、40〜50℃の温度範囲で行ったドープ液の粘度は1000〜1500cPであった。
<紡糸>
上記で調製したドープ溶液を、3μmのメッシュサイズの金属フィルターで濾過した後、40℃に加熱したシリンジに充填し、窒素ガスを流通して、40℃に保持した状態で1時間脱気した。脱気後、直径0.25mmのノズル孔を有するシリンジより、当該ドープ溶液を100%メタノール凝固浴槽中に吐出させた。吐出に際して、当該シリンジのノズル先端は、凝固溶媒の表面との間に空隙を有するように設置した。凝固により得られた繊維を、2つの水浴槽を通して洗浄し、乾熱板を通して乾燥させた。得られた人造ポリペプチド繊維(ケラチンタイプ繊維)をワインダーにて巻き取った。総延伸倍率は1.7倍であった。
<人造ポリペプチド繊維の物性の測定>
上記で得られた人造ポリペプチド繊維について、PRT798(配列番号6)の人造ポリペプチド繊維を用いて当該繊維の物性を測定した。
人造ポリペプチド繊維の機械的強度は、当該人造ポリペプチド繊維を、20℃、相対湿度65%の恒温恒湿槽(エスペック株式会社製、LHL−113型)中に24時間静置後、INSTRON(登録商標)のFORCE TRANSDUCER 2519−101を用いて測定した。比較例として、天然のウールを同様の条件で測定した。
フィラメントの直径は、それぞれ顕微鏡(株式会社ニコン製、ECLIPSE LV 100ND)を用いて測定した。
結果を表4及び図5に示す。本発明に係る人造ポリペプチド繊維(ケラチンタイプ繊維)は、複雑な構造を有する天然のウールとほぼ同等の繊維直径であり、機械的特性もほぼ同等であることが確認された。
上記で得られた人造ポリペプチド繊維の表面及び断面を、走査電子顕微鏡(PHENOM(商標)800−07334、Phenom−World)を用い、加速電圧15kVの条件で観察した。結果を図6に示す。

Claims (17)

  1. クラスターIaに属するタイプIケラチン由来のアミノ酸配列を含むポリペプチドを、ギ酸を含む溶媒、又は双極子モーメントが3.0D以上の非プロトン性極性溶剤及び無機塩を含む溶媒に溶解させた、ポリペプチド溶液。
  2. 前記双極子モーメントが3.0D以上の非プロトン性極性溶剤及び無機塩を含む溶媒が、更に還元剤を含む、請求項1に記載のポリペプチド溶液。
  3. 前記還元剤が、チオール類、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン及びピロ亜硫酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載のポリペプチド溶液。
  4. 前記チオール類が、ジチオトレイトール、β−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、1,2−エタンチオール、チオグリコール酸及びチオグリコール酸アンモニウム(ATG)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項3に記載のポリペプチド溶液。
  5. 前記双極子モーメントが3.0D以上の非プロトン性極性溶剤が、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン、N−メチル−2−ピロリドン及びアセトニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリペプチド溶液。
  6. 前記無機塩が、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属硝酸塩及びチオシアン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリペプチド溶液。
  7. 前記クラスターIaに属するタイプIケラチンが、ケラチン25、ケラチン26及びケラチン27からなる群より選ばれる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリペプチド溶液。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリペプチド溶液を使用したポリペプチド繊維の製造方法であって、
    前記ポリペプチド溶液をドープ液とし、
    前記ドープ液を口金から凝固液に押し出し、未延伸糸を得る工程を含む、ポリペプチド繊維の製造方法。
  9. 前記未延伸糸を延伸する工程を更に含む、請求項8に記載のポリペプチド繊維の製造方法。
  10. 前記凝固液が、メタノール、エタノール及び2−プロパノールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項8又は9に記載のポリペプチド繊維の製造方法。
  11. クラスターIaに属するタイプIケラチン由来のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列と、当該核酸配列に作動可能に連結された1又は複数の調節配列とを有する発現ベクター。
  12. 請求項11に記載の発現ベクターで形質転換された宿主。
  13. 請求項12に記載の宿主を培養して、増殖させ、前記ポリペプチドを発現誘導することを含む、人造ポリペプチドの製造方法。
  14. クラスターIaに属するタイプIケラチン由来のアミノ酸配列を含む、人造ポリペプチド。
  15. 前記クラスターIaに属するタイプIケラチンが、ケラチン25、ケラチン26及びケラチン27からなる群より選ばれる、請求項14に記載の人造ポリペプチド。
  16. 配列番号1〜16で示されるアミノ酸配列からなる群より選ばれるアミノ酸配列を含む、請求項14又は15に記載の人造ポリペプチド。
  17. 請求項14〜16のいずれか一項に記載の人造ポリペプチドを含み、
    繊維、糸、フィルム、発泡体、粒体、ナノフィブリル、ゲル及び樹脂からなる群から選択される、製品。
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