JPH05170926A - ケラチン微粉末の製造方法 - Google Patents

ケラチン微粉末の製造方法

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JPH05170926A
JPH05170926A JP3338485A JP33848591A JPH05170926A JP H05170926 A JPH05170926 A JP H05170926A JP 3338485 A JP3338485 A JP 3338485A JP 33848591 A JP33848591 A JP 33848591A JP H05170926 A JPH05170926 A JP H05170926A
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powder
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JP3338485A
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Ryoichi Furukawa
良一 古川
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TOOMEN KK
Toyota Tsusho Corp
Original Assignee
TOOMEN KK
Tomen Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 羊毛や羽毛等のケラチン含有物質を容易に効
率よく微粉化すること。 【構成】 濃度95%のギ酸水溶液に浸漬させたウール
を、ホモジナイザーにより粗粉砕し、粗粉砕物を凍結さ
せ、のち粉砕して微粉末にする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、羊毛、羽毛などのケラ
チン含有物質の微粉化を容易になし得た、ケラチン微粉
末の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】従来よ
り、羊毛、羽毛などの動物の体毛や爪などにケラチンと
呼ばれるタンパク質が多く含まれていることが広く知ら
れていた。
【0003】そして、最近になり、このケラチンが飼料
や肥料、化粧品基材、生態系に適した界面活性剤、医用
高分子素材などとして利用できることが報告されだし
た。
【0004】そのため、羊などの獣類や鳥類の体毛を集
め、これよりケラチンを抽出しようとする研究が行なわ
れてきている。また、例えば毛織物製造業者によって今
まで大量に焼却処分されてきた廃棄羊毛を、ケラチンの
原料として有効的に再利用しようとする試みもなされて
きている。
【0005】しかしながら、ケラチンは、天然の架橋構
造(静電気、水素、疎水結合およびジスルフィド結合)
を備えている難溶性の高分子物質であるため、ケラチン
の抽出は非常に困難なものであった。
【0006】また、例えば衝撃式粉砕機や剪断式粉砕機
などの機械的操作によりケラチン含有物質を粉砕し、こ
れにより微粉末状のケラチンを得ようとする方法も試み
られたが、羊毛や羽毛などのような、比重が低く互いに
絡み合う性質を持つ弾性体は、上記したような装置には
馴染み難く、上記機械的操作により粉砕可能な範囲は粗
粉砕(十数mm〜数cm)までであり、ケラチン微粉末
を得るまでには至らなかった。なお、上記機械的操作に
かける時間を長くしてさらなる微粉化を行なおうとして
も、それほど微粉化は進まない、ということもさること
ながら、粉砕中に発生する熱にケラチンが長時間さらさ
れ、これによりケラチンが変性してしまうという問題が
あった。
【0007】
【課題を解決するための手段と作用】ケラチンの微粉末
を得るため、本発明は次のような手段を講じた。すなわ
ち、第1の製造方法は、カルボン酸の溶液に浸漬させた
ケラチン含有物質を、ホモジナイザーにより粗粉砕し、
粗粉砕物を凍結させ、のち粉砕して微粉末にすることを
特徴とする方法である。
【0008】第2の製造方法は、ケラチン含有物質にお
けるジスルフィド結合を開裂せしめた後、該ケラチン含
有物質を凍結させ、のち凍結状態で粉砕することを特徴
とする方法である。
【0009】第3の製造方法は、ケラチン含有物質にお
けるジスルフィド結合を開裂せしめた後、該ケラチン含
有物質をアルカリ溶液中で溶解し、溶解液をスプレード
ライヤーにより微粉末にすることを特徴とする方法であ
る。
【0010】第4の製造方法は、ケラチン含有物質にお
けるジスルフィド結合を開裂せしめた後、該ケラチン含
有物質をアルカリ溶液中で溶解し、溶解液のpHを、酸
を加えるなどの適当な方法を用いて酸性側に傾けてケラ
チン含有物質を沈殿させ、のち沈殿物を粉砕することを
特徴とする方法である。
【0011】ここでいう「ケラチン含有物質」とは、ケ
ラチンを主成分として構成されている天然物質を意味
し、その具体例としては、羊毛、羽毛、毛髪、ミンク
毛、カシミア毛、馬毛、角、爪などが挙げられる。
【0012】これらケラチン含有物質は、精練後のもの
を使用してもよいし、織物加工後のクズを使用してもよ
いし、両者の混合物を使用してもよい。
【0013】また、ケラチン含有物質は、乾燥したもの
でも、湿潤しているものでもどちらでも使用し得るが、
湿潤しているものを使用すれば、後工程で使用するカル
ボン酸あるいは有機過酸の溶液の濃度が低下するので、
どちらかといえば乾燥したものを使用する方が好まし
い。
【0014】本発明で使用し得るカルボン酸の溶液とし
ては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸など
を、水あるいは適当な有機溶媒に溶かしたものが挙げら
れ、その濃度は、特に限定はないが、90%以上が好ま
しく、95%以上であることがさらに好ましい。
【0015】ケラチン含有物質とカルボン酸の溶液との
配合比は、特に限定はないが、ケラチン含有物質1重量
部に対し、カルボン酸の溶液が10〜15重量部である
ことが好ましい。
【0016】本発明で使用する「ホモジナイザー」と
は、強烈な撹拌または剪断のもとに、対象物を粉砕して
液中に均一に分散させるために用いる装置であり、従来
公知のホモジナイザーを使用することができる。その具
体例としては、ヒスコトロンNS−20型、ヒスコトロ
ンNS−20G型、ヒスコトロンNS−20MG型、ヒ
スコトロンNS−30U型(いずれも(株)日音医理科
器械製作所製)などが挙げられる。また、その他、特開
昭48−36764号、特開昭53−62266号、特
開昭59−69160号公報に開示されているようなホ
モジナイザーを用いることもできる。
【0017】ホモジナイザー、及びホモジナイザーによ
る粉砕のメカニズムを、図1に基づいて簡単に説明す
る。内装されたモータ(図示せず)から延びる出力軸1
0の先端部分12(ジェネレータ12)は、モータの駆
動に伴って高速回転する回転内刃14と、該回転内刃1
4の外周を覆うように配置されてなる固定外刃16との
2重構造となっている。
【0018】溶液中にて内刃14が高速回転すると、ジ
ェネレータ12内の溶液は遠心力により外刃16に設け
られた小窓18から放射状に激しく噴出する。同時に、
ジェネレータ12の中に下から溶液が入り込み、これに
よって、容器全体に溶液の強力な対流20が起こる。被
粉砕物であるケラチン含有物質は、この対流20に追従
して流れ、流動中において内刃14あるいは外刃16に
より細かく切断され、粗粉砕されることになる。
【0019】ところで、ケラチン含有物質、例えば羊毛
繊維は、図5に示すように、一般的に燐片状のクチクル
細胞(Cu)が紡錘状のコルテックス細胞(Cx)を取り巻
いてできた多細胞体である。また、前記コルテックス細
胞(Cx)は、繊維状をなす多数のマクロフィブリル( M
acro−F )の集合体であり、1つのマクロフィブリル
( Macro−F )と他の隣り合うマクロフィブリル( Mac
ro−F )とは、接着剤の役割をなす細胞膜錯合体(CMC
)により接合状態を保っている。また、前記クチクル
細胞(Cu)とコルテックス細胞(Cx)との間において
も、前記細胞膜錯合体(CMC )が存在する。また、前記
マクロフィブリル( Macro−F )はミクロフィブリル
( Micro−F )とマトリックス(Mx) の集合体で、ミク
ロフィブリル( Micro−F )を構成している最小集合単
位はプロトフィブリル( Proto−F )である。このプロ
トフィブリル( Proto−F )は、α−ヘリックス(α-
H)が多数配列してなるα−ヘリックス構造を約50%
含有する3本または2本のポリペプチド鎖がコイルドコ
イル状に集合して出来上がった結晶領域の基本構造体で
ある。ミクロフィブリル( Micro−F )間に充填されて
いる非晶質のマトリックスは、規則構造をもたないが、
ジスルフィド結合(S−S結合)により高度に架橋され
た非晶領域を形成している。
【0020】そこで、ケラチン含有物質をカルボン酸溶
液中に浸漬させることにより、前記細胞膜錯合体(CMC
)が溶け、コルテックス細胞(Cx)間が広がる。この
ような状態にあるケラチン含有物質をホモジナイザーに
より個々のマクロフィブリル(Macro−F )、あるいは
これら数個が集まったコルテックス細胞(Cx)にまで分
離させることができ、ケラチン含有物質の粗粉砕物とな
る。なお、クチクル細胞(Cu)におけるエンドクチクル
(図示せず)、コルテックス細胞(Cx)における細胞核
残渣(Sr)、細胞膜錯合体(CMC )における一種の可溶
性タンパク(図示せず)等は非ケラチンであり、本発明
においては対象外の物質である。しかし、これら非ケラ
チンのみを別に分離することは極めて困難であり、最終
的に得られるケラチン微粉末の中に不純物として混入す
ることになるが、これはいたしかたない。
【0021】ホモジナイザーによって粗粉砕されたケラ
チン含有物質の粗粉砕物は、ペースト状をなしている。
この状態で次の工程、つまり凍結粉砕の工程に移っても
構わないが、工程前に、粗粉砕物に含まれるカルボン酸
を水で洗い流すか、あるいは希アルカリにより中和して
おくことが望ましい。また、凍結粉砕を行なう直前の粗
粉砕物の含水率は、30〜150%であることが好まし
く、これに満たない場合や、これを超えるような場合に
は、注水あるいは加湿、または脱水あるいは乾燥などの
手段を適宜講じればよい。
【0022】上記粗粉砕物を凍結させ、のち粉砕する方
法としては、特に限定はなく、前記粗粉砕物を液体窒
素、液体水素、液体ヘリウムなどの冷媒に所定時間浸漬
しておき、のち凍結した粗粉砕物を取出して従来公知の
衝撃式粉砕機、圧縮式粉砕機、摩擦式粉砕機あるいは遊
星型粉砕機などの粉砕機を使用して粉砕する方法が挙げ
られる。また、肉類、野菜、スープ、コーヒ、果汁等の
食品を粉末乾燥品に加工する目的で使用されているよう
な、上記凍結・粉砕を流れ作業的に行なう従来公知の装
置を使用する方法がまず一つ挙げられる。その装置の具
体例としては、液体窒素を冷媒とするリンレックスミル
LX−O型、リンレックスミルLX−1型、リンレック
スミルLX−2型、リンレックスミルLX−3型(いず
れも大阪瓦斯(株)製)などである。また、特開平2−
253860号公報に開示されてる凍結粉砕連続装置を
使用することもできる。
【0023】以上説明したように、ホモジナイザーによ
るケラチン含有物質を粗粉砕する工程、及び粗粉砕物を
凍結粉砕する工程により、ケラチン含有物質をケラチン
微粉末とすることができる。得られた微粉末は、ジスル
フィド結合(S−S結合)が保持されてなる針状を呈し
ている。羊毛や羽毛などのケラチン含有物質は、カルボ
ン酸溶液中にてある程度の粗粉砕化がなされ、この状態
で次の粉砕工程、つまり凍結粉砕の工程に入るので、嵩
高のままで衝撃式粉砕機などにより粉砕するよりも遥か
に効率よく確実に、しかも簡便にケラチン微粉末を製造
することができる。
【0024】さらに、凍結粉砕工程では、ある程度微粉
化されたものを粉砕することになるので、粉砕時におい
て発生する熱を極力抑えることもでき、また粉砕時にお
ける粗粉砕物は、冷凍状態にあるので、熱による変性を
完全に免れることになる。
【0025】第2〜4の製造方法において、ジスルフィ
ド結合を開裂せしめる手段としては特に限定はないが、
有機過酸の溶液、メルカプトエタノールまたはチオグリ
コール酸などのチオール化合物あるいはトリブチルホス
フィンまたはトリフェニルホスフィンなどの3級ホスフ
ィン等の溶液に浸漬させる方法が挙げられる。なかで
も、有機過酸を用いる方が入手が容易である、取扱いが
容易である、安価であるなどの点により好ましい。
【0026】ケラチン含有物質を有機過酸の溶液に所定
時間浸漬させると、前記ケラチン含有物質におけるジス
ルフィド結合(S−S結合)が開裂してチオール基(−
SH基)が生成し、該ケラチン含有物質は可溶化する。
三次元網目構造を形成しているジスルフィド結合を開裂
させることは、ケラチン含有物質をより細かく微粉化す
るための一助となるわけである。
【0027】有機過酸としては、過ギ酸、過酢酸が挙げ
られるが、これによって限定されるものではない。有機
過酸溶液の調整方法に関しても特に限定はないが、過ギ
酸および過酢酸を例にとると、濃度90〜100%のギ
酸溶液あるいは酢酸溶液と、濃度30%〜50%の過酸
化水素溶液とを、9:1〜5:5の容量比で、好ましく
は8:2〜5:5の容量比で、さらに好ましくは7:3
〜5:5の容量比で混合し、のち1時間〜2時間放置し
て調整することが好ましい。
【0028】ケラチン含有物質と有機過酸の溶液との混
合比は、特に限定はないが、ケラチン含有物質1重量部
に対して、有機過酸の溶液が20〜40重量部であるこ
とが好ましい。
【0029】ケラチン含有物質を前記有機過酸の溶液に
浸漬させる時間としては、有機過酸におけるギ酸(ある
いは酢酸)と過酸化水素との配合比率や処理温度によっ
ても異なるので一概にはいえないが、通常4〜24時間
である。
【0030】なお、ケラチン含有物質を有機過酸の溶液
に浸漬させる前に、該ケラチン含有物質を長さ2〜10
mm程度に粗粉砕しておくことが、後工程でのケラチン
含有物質の取扱いが容易となるので望ましい。粗粉砕す
る手段としては、従来公知の衝撃式粉砕機、圧縮式粉砕
機、摩擦式粉砕機あるいは遊星型粉砕機などの粉砕機を
使用し得るが、とりわけ、粉砕をナイフ、カッターまた
は他の切断手段、裂断手段により行なうタイプの剪断式
粉砕機を用いることが、粉砕し易さの点で好ましい。こ
のような装置としては、書類や文書を細断するために用
いられているような従来公知のシュレッダー(例えば特
開昭59−199055号、特開昭60−5238号、
特開平1−63057号、特公平1−59016号公報
に開示されているような装置)を使用することもでき
る。
【0031】有機過酸の溶液に所定時間浸漬させたケラ
チン含有物質を、その後冷凍し、粉砕するわけであるが
(第2の製造方法)、この凍結・粉砕に関しては、第1
の製造方法のところで説明したのでここでは省略する。
【0032】前記凍結・粉砕の工程に入る前に、結晶領
域の基本構造体における多数のα−ヘリックス(α−
H、図5参照)の配列をランダムにするために、熱処理
を行なっても構わない。α−ヘリックス(α−H)の配
列をランダムにすれば、結晶領域における基本構造を崩
壊させることができ、より一層効果的にケラチンを微細
化することができる。熱処理を行なう場合にあっては、
130℃以下で行なうことが好ましい。130℃を超え
るような温度にケラチン含有物質をさらすと、ケラチン
が変性してしまうおそれがあるからである。
【0033】上記熱処理法としては、芒硝(硫酸ナト
リウム)等の中性塩の飽和水溶液(100℃)に0.5
〜1時間浸漬させておく方法、130℃で10分間乾
燥させる方法、などがあるが、これによって限定される
ものではない。
【0034】第2の製造方法によって得られたケラチン
の微粉末は、第1の方法によって得られた粉末と形状が
異なり、無定形をなしている。つまり、針状のような規
則性は見られない形状を呈している。
【0035】第3、及び第4の製造方法において用いる
アルカリ溶液、つまりジスルフィド結合が開裂されてな
るケラチン含有物質を溶解させるアルカリ溶液として
は、アンモニア水、炭酸ナトリウム溶液など、特に限定
はないが、pH10以上の溶液であることが溶かし易さ
という点で好ましい。また、この時の浴比に関しても特
に限定はないが、ケラチン含有物質1重量部に対して、
アルカリ溶液30〜60重量部用いることが好ましい。
30重量部未満であれば溶解に時間がかかり、60重量
部を超えると最終的に得られる微粉末に多量の不純物が
含まれることになる。
【0036】前記ケラチン含有物質の溶解液をスプレー
ドライヤーにより噴霧して微粉末にする方法(第3の製
造方法)において、用いるスプレードライヤーとして
は、従来公知の装置を使用することができる。すなわ
ち、ケラチンを含む液状原料を熱風中に噴霧分散させ、
噴霧液滴が熱風中を重力沈降する間にこれを乾燥させて
一挙にケラチン微粒状乾燥品を製造することのできるよ
うな装置であればどのようなものであっても構わない。
また、特開平3−106401号、特開平3−1236
01号公報に開示されているスプレードライヤーを使用
しても構わない。スプレードライヤーによれば、ケラチ
ン含有物質が熱風にさらされることになるが、5〜30
秒という短時間であるため、熱変性を受けにくい。
【0037】前記ケラチン含有物質の溶解液のpHを酸
性側に傾け、これによりケラチン含有物質を沈殿させる
方法(第4の製造方法)において、溶解液のpHを酸性
側に傾ける方法としては、例えば前記溶解液に酸を添加
する方法が挙げられるが、その他の方法を採っても構わ
ない。この際に使用する酸としては、塩酸、酢酸など、
特に限定はない。
【0038】溶解液のpHを酸性側に傾けると、具体的
に言えばpH11のアルカリ溶液中にて、ジスルフィド
結合開裂ケラチン含有物質を溶解したのち、塩酸を適量
加えて溶解液のpHを9程度にすると、今まで溶解して
いたケラチン含有物質が沈殿し始める。この沈殿物を乾
燥し、乾燥物を従来公知の粉砕機により粉砕すれば、ケ
ラチン微粉末が得られる。なお、前記乾燥物は、ケラチ
ン含有物質ではあるが、羊毛のような弾性に富んだ性質
は薄れて固化した状態となっているため、粉砕機による
粉砕が容易である。
【0039】なお、第1〜4の製造方法において得られ
たケラチン微粉末をさらに細かくしたい場合には、従来
から用いられている粉砕機を、ケラチンが熱変性しない
程度に使用してさらなる粉砕を行なえばよい。前記粉砕
機としては、遊星型粉砕機を用いて粉砕することが、熱
の発生が少ない、取扱い易い、低コストである、回収率
がよい、などの点で好ましい。
【0040】遊星型粉砕機による粉砕メカニズムを簡単
に説明する。この粉砕機には、自転する台板部と、この
台板部の上に設置され公転する容器取付け部とが備えら
れており、両者は、ちょうど遊園地のコーヒーカップの
ような運動を繰り返すものである。
【0041】前記容器取付け部に粉砕容器を取付け、そ
してこの粉砕容器の中に、例えばメノー、ジルコニア、
タングステンカーバイド等からなる硬質のボールを複数
個充填するとともに、被粉砕物を投入する。
【0042】粉砕機を駆動させると、充填したボールは
粉砕容器の内壁で一種のサージング運動(波打ち運動)
を行ない、これにより被粉砕物は、粉砕容器の内壁に押
し付けられるとともに、前記ボールによる衝撃を受けて
微細化されることになる。粉砕時間は、被粉砕物の量、
ボールの種類、回転速度によって変わるので一概に言え
ないが、5〜40分程度が適当である。
【0043】前記遊星型粉砕機としては、現在市販され
ている公知のものを使用することができ、例えば、pu
luerisette 7(FRITSCH(株)製)
が挙げられるが、これに限るものではない。また、上記
粉砕機に類するような、特開昭63−278563号、
特公平1−44090号、特公平2−32021号公報
に開示された粉砕機を用いることもできる。
【0044】得られたケラチンの微粉末を、例えば透湿
防水素材の製造、吸放湿性あるいは吸放水性素材の製造
に用いるほか、タンパク源としての飼料や肥料、化粧品
基材、生態系に適した界面活性剤、医用高分子素材など
として利用することができる。
【0045】
【発明の効果】本発明により、羊毛や羽毛等のケラチン
含有物質からケラチンの微粉末を効率よく容易に製造す
ることができる。
【0046】
【実施例】次に、実施例を挙げて説明するが、本発明は
これによって限定されるものではない。
【0047】実施例1[針状ケラチン微粉末の製造]
(第1の製造方法) (ケラチン含有物質の粗粉砕)ケラチン含有物質として
羊毛織物起毛加工後のくずウール1重量部用意するとと
もに、12.5重量部のギ酸水溶液(濃度95%)をビ
ーカー内で作製した。ビーカーに前記くずウールを少量
投入し、ホモジナイザー(商品名:ヒスコトロンNS−
20型、(株)日音医理科器械製作所製)を用いてくず
ウールの粗粉砕を行なった。そのときの条件は、粉砕時
間5秒、回転数12,000〜17,000rpmであ
った。
【0048】さらに、用意した残りのくずウールの中か
らまた少量のくずウールを取出し、同じビーカーの中に
投入して前記ホモジナイザーにより粗粉砕を行なった。
そして、用意したくずウールが無くなるまでくずウール
の投入、ホモジナイザーによる粗粉砕を繰り返し行なっ
た。
【0049】なお、本実施例で使用したくずウールを初
めとするケラチン含有物質は、一般的に比重が低く嵩が
高いため、ビーカに少量ずつ投入しなければならなかっ
たが、容器の容量が充分に大きい場合や、投入するケラ
チン含有物質の量が少ない場合には、最初から全量を投
入しておいても構わない。
【0050】ビーカー中の溶液を、遠心濾過機(200
メッシュ(75μm)の濾布付き)により濾過し、残渣
物を水洗した。のち、前記残渣物を希水酸化ナトリウム
溶液を用いて残存するカルボン酸を中和した。その後、
前記残渣物を脱水乾燥させた。これにより、くずウール
の粗粉砕物が得られた。得られた粗粉砕物の電子顕微鏡
写真を図2に示す。この時の粗粉砕物における含水率は
50%であった。
【0051】(粗粉砕物の凍結粉砕)得られた粗粉砕物
を、凍結粉砕装置(商品名;リンレックスミルLX−0
型、大阪瓦斯(株)製)によりさらに細かく粉砕した。
そのときの条件は下記の通りであった。
【0052】冷凍温度;−196℃(冷媒;液体窒素) 粉砕温度;−100℃ ローター周速;96m/sec スリット開度;1/2〜1 これにより、ケラチン含有物質からおよそ90%の回収
率でケラチンの微粉末が得られた。得られたケラチン微
粉末の電子顕微鏡写真を図3に示す。図に示されるよう
に、前記ケラチン微粉末は針状を呈していた。また得ら
れた微粉末のうち、88〜98%が、200メッシュの
網目を通過した。
【0053】(ケラチン微粉末のさらなる微細化)上記
ケラチン微粉末を、遊星型微粒粉砕機(商品名;pul
uerisette 7、FRITSCH(株))を用
いてさらに細かく粉砕した。その時の条件は下記の通り
であった。
【0054】粉砕容器、及びボール;メノー製 粉砕時間;30分 これにより、ケラチンの微細粉末が得られた。得られた
ケラチン微細粉末の電子顕微鏡写真を図4に示す。図に
示されるように、前記ケラチン微細粉末は、球形に近い
形状を呈していた。
【0055】なお、粗粉砕時に用いたギ酸溶液を酢酸溶
液(濃度95%)に代えても、同じような結果が得られ
た。
【0056】実施例2[無定形ケラチン微粉末の製造]
(第2の製造方法) 精練後のウールを、剪断式粉砕機(ターボ工業(株)製
のターボカッター C−300型)を用いて長さ2〜1
0mmに粗粉砕した。そのときの条件は、下記の通りで
あった。
【0057】刃先間隙;0.3mm 回転数;1,000rpm スクリーン孔の直径;5mm 粗粉砕物(ウール)におけるジスルフィド結合(S−S
結合)を切断する目的で、前記粗粉砕物を過酢酸溶液
(氷酢酸:30%過酸化水素=7:3(容量比))に浸
漬させ、撹拌した(ウール:過酢酸溶液=1重量部:2
0重量部、処理温度50℃)。
【0058】1時間後、前記溶液を濾過し、残渣物をア
ンモニア溶液、及び水酸化ナトリウム溶液で中和した。
【0059】その後、芒硝などの中性塩の飽和水溶液
(温度100℃)中にて0.5〜1時間熱処理を行な
い、のち遠心分離機によって粗粉砕物のみを取り出し
た。
【0060】取り出した粗粉砕物を、実施例1で使用し
た凍結粉砕装置により粉砕し、ケラチン微粉末を得た。
得られたケラチン微粉末は、実施例1で得られたものと
異なり、それぞれ無定形なものであった。
【0061】その後、同じく実施例1で使用した遊星型
微粒粉砕機によりさらに細かく粉砕し、ケラチンの微細
粉末を得た。
【0062】このようにして得られたケラチン微粉末、
あるいは微細粉末について、吸湿試験および吸水試験を
行なったところ、高吸湿性、高吸水性を有していること
が分かった。また、pH10〜11のアルカリ溶液によ
く溶け、高膨潤性を示すことが分かった。
【0063】実施例3[無定形ケラチン微粉末の製造]
(第2の製造方法の他の実施例) 精練後のウールを過酢酸溶液(氷酢酸:30%過酸化水
素=7:3(容量比))に浸漬させ、撹拌した(ウー
ル:過酢酸溶液=1重量部:20重量部、処理温度50
℃)。
【0064】1時間後、前記溶液を濾過し、残渣物(ウ
ール)をアンモニア溶液、及び水酸化ナトリウム溶液で
中和した。
【0065】この中からウール1重量部を取り出して、
水30重量部中に浸し、この状態で、実施例1と同じホ
モジナイザーを用いて粗粉砕を行なった。
【0066】前記粗粉砕物を含む液状物を遠心分離機に
かけ、粗粉砕物のみを取り出し、これを実施例1と同様
にして凍結・粉砕した。これにより、平均粒径20μm
のケラチンの無定形微粉末を得ることができた。
【0067】その後、同じく実施例1で使用した遊星型
微粒粉砕機によりさらに細かく粉砕し、ケラチンの微細
粉末を得た。
【0068】実施例4[無定形ケラチン微粉末の製造]
(第3の製造方法) 精練後のウールを過酢酸溶液(氷酢酸:30%過酸化水
素=7:3(容量比))に浸漬させ、撹拌した(ウー
ル:過酢酸溶液=1重量部:20重量部、処理温度50
℃)。
【0069】1時間後、前記溶液を濾過し、残渣物(ウ
ール)をアンモニア溶液、及び水酸化ナトリウム溶液で
中和した。
【0070】この中からウール1重量部を取り出して、
これを、炭酸ナトリウムを用いて調整したpH11のア
ルカリ溶液50重量部(50℃)中に投入した。投入後
1時間かき混ぜて前記ウールをこの溶液に溶解させた。
前記ウールは約80%溶解した。この液に酢酸等の酸性
溶液を少しずつ加えて中和した。このようにしてウール
の溶解液を得た。
【0071】前記溶解液を、スプレードライ装置(東京
理化(株)製)を用いて、噴霧乾燥した。これにより、
粒径10〜30μmの無定形ケラチン微粉末が得られ
た。
【0072】なお、得られた微粉末はpH4以下で水溶
性を示すが、水不溶性ケラチン微粉末は、ベンゼン等の
無極性溶媒中で塩化シアヌル等の適当な架橋剤を用いて
架橋させれば得られる。
【0073】実施例5[無定形ケラチン微粉末の製造]
(第4の製造方法) 実施例4で得られたウールの溶解液に塩酸を加えて、前
記溶解液のpHを酸性側に傾けた。塩酸の添加に伴い、
ケラチン含有物質が沈殿し始めた。この沈殿物は、ある
程度の塊を呈していた。前記沈殿物を取り出して乾燥さ
せ、のちこれを実施例1で使用した遊星型微粒粉砕機に
かけて微粉末とした。これにより、粒径20μm以下の
無定形ケラチン微粉末が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】ホモジナイザーによる粉砕のメカニズムを説明
するための一部を断面した正面図である。
【図2】実施例1で得られた粗粉砕物の電子顕微鏡写真
の図である。
【図3】実施例1で得られたケラチン微粉末の電子顕微
鏡写真の図である。
【図4】実施例1で得られたケラチン微細粉末の電子顕
微鏡写真の図である。
【図5】羊毛繊維の形態組織図である。
【符号の説明】
10……出力軸 12……ジェネレータ 14……回転内刃 16……固定外刃 18……小窓 20……対流

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】カルボン酸の溶液に浸漬させたケラチン含
    有物質を、ホモジナイザーにより粗粉砕し、粗粉砕物を
    凍結させ、のち凍結状態で粉砕することを特徴とするケ
    ラチン微粉末の製造方法。
  2. 【請求項2】前記カルボン酸の溶液が、濃度90%以上
    のギ酸溶液あるいは酢酸溶液であることを特徴とする請
    求項1に記載のケラチン微粉末の製造方法。
  3. 【請求項3】ケラチン含有物質におけるジスルフィド結
    合を開裂せしめた後、該ケラチン含有物質を凍結させ、
    のち凍結状態で粉砕することを特徴とするケラチン微粉
    末の製造方法。
  4. 【請求項4】ケラチン含有物質におけるジスルフィド結
    合を開裂せしめた後、該ケラチン含有物質をアルカリ溶
    液中で溶解し、溶解液をスプレードライヤーにより微粉
    末にすることを特徴とするケラチン微粉末の製造方法。
  5. 【請求項5】ケラチン含有物質におけるジスルフィド結
    合を開裂せしめた後、該ケラチン含有物質をアルカリ溶
    液中で溶解し、溶解液のpHを、酸を加えるなどの適当
    な方法を用いて酸性側に傾けてケラチン含有物質を沈殿
    させ、のち沈殿物を粉砕することを特徴とするケラチン
    微粉末の製造方法。
  6. 【請求項6】ケラチン含有物質を有機過酸の溶液に所定
    時間浸漬することにより、該ケラチン含有物質における
    ジスルフィド結合を開裂せしめることを特徴とする請求
    項3〜5のいずれか1項に記載のケラチン微粉末の製造
    方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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