JPWO2018181545A1 - 全固体リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Abstract

この全固体リチウムイオン二次電池は、正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層とに挟まれた固体電解質とを有する積層体と、前記積層体に接して設けられた防湿層とを備え、前記防湿層が、前記積層体に接して設けられた第一ガラス層と、前記第一ガラス層上に設けられた第二ガラス層とからなり、前記第一ガラス層の融点が前記第二ガラス層の融点よりも低い。

Description

本発明は、全固体リチウムイオン二次電池に関する。
本願は、2017年3月29日に、日本に出願された特願2017−64399号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
従来、電池の電解質として、難燃性のポリマー電解質やイオン液体を用いることが検討されている。しかし、どちらの電解質も有機物の液体を含むことから、これを用いた電池における液漏れおよび液の枯渇の不安は拭い切れない。
一方、電解質としてセラミックスを用いる全固体リチウムイオン二次電池は、本質的に不燃であり、安全性が高い。このため、全固体リチウムイオン二次電池は、近年注目されている。
全固体リチウムイオン二次電池では、活物質として、例えば、LiCoO、LiMn、LiFePO、LiNiO等が用いられている。これらの活物質は、水分と反応しやすい。このため、従来の全固体リチウムイオン二次電池では、活物質と空気中の水分とが反応して活物質が劣化し、電池容量の低下をまねくことがあった。
従来、活物質の劣化を防止する方法として、全固体リチウムイオン二次電池への水分の侵入を防止する技術がある。
例えば、特許文献1には、薄膜固体二次電池の表面を水分防止膜で被覆することが記載されている。また、特許文献1には、水分防止膜として、酸化珪素(SiO)や窒化珪素(SiN)を使用することが開示されている。
また、特許文献2には、全固体リチウムイオン二次電池を樹脂で被覆することが記載されている。また、特許文献2には、全固体リチウムイオン二次電池を、ガラス層で密閉化することが開示されている。
日本国特開2008−226728号公報 日本国特許第5165843号公報
しかしながら、従来の技術では、全固体リチウムイオン二次電池への水分の侵入を十分に防止できなかった。このため、全固体リチウムイオン二次電池への水分の侵入に起因する電池容量の低下を、より効果的に防止することが要求されていた。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、水分の侵入に起因する電池容量の低下が生じにくく、優れた信頼性を有する全固体リチウムイオン二次電池を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた。
その結果、正極層と負極層と固体電解質とを有する積層体に接して、低融点のガラス材料で第一ガラス層を設け、その後、第一ガラス層上に第一ガラス層よりも高融点のガラス材料で第二ガラス層を設ければよいことを見出した。そして、第一ガラス層と第二ガラス層の2層からなる防湿層を設けることにより、水分の侵入に起因する電池容量の低下を防止できることを確認し、本発明を想到した。
すなわち、本発明は、以下の発明に関わる。
本発明の一態様にかかる全固体リチウムイオン二次電池は、正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層とに挟まれた固体電解質とを有する積層体と、前記積層体に接して設けられた防湿層とを備え、前記防湿層が、前記積層体に接して設けられた第一ガラス層と、前記第一ガラス層上に設けられた第二ガラス層とからなり、前記第一ガラス層の融点が前記第二ガラス層の融点よりも低い。
上記態様にかかる全固体リチウムイオン二次電池において、前記第一ガラス層の融点が465〜565℃であってもよい。
上記態様にかかる全固体リチウムイオン二次電池において、前記第二ガラス層の融点が550〜730℃であってもよい。
上記態様にかかる全固体リチウムイオン二次電池において、前記第一ガラス層に含まれる成分のうち最も多く含まれる成分が、Bi、V、Bよりなる群から選択される1種であってもよい。
上記態様にかかる全固体リチウムイオン二次電池において、前記第一ガラス層に含まれる成分のうち最も多く含まれる成分が、Biであってもよい。
上記態様にかかる全固体リチウムイオン二次電池において、前記第一ガラス層がBiを30〜70重量%含有してもよい。
上記態様にかかる全固体リチウムイオン二次電池において、前記第二ガラス層に含まれる成分のうち最も多く含まれる成分が、SiOであってもよい。
上記態様にかかる全固体リチウムイオン二次電池において、前記第二ガラス層がSiOを20〜70重量%含有してもよい。
上記態様にかかる全固体リチウムイオン二次電池において、前記正極層と、前記負極層と、前記正極層と前記負極層とに挟まれた前記固体電解質とが、相対密度80%以上であってもよい。
本発明の一態様に係る全固体リチウムイオン二次電池は、水分の侵入に起因する電池容量の低下が生じにくく、優れた信頼性を有する。
第1実施形態にかかる全固体リチウムイオン二次電池の拡大断面模式図である。 図1の一部を拡大して示した拡大断面模式図である。 実施例1の全固体電池の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
本発明者は、鋭意検討した結果、以下に示す知見を得た。
すなわち、正極層と負極層と固体電解質とを有する積層体の表面に、高い防湿性を有するガラス層を形成するために、高融点のガラス材料を用いてガラス層を形成した。この場合、ガラス層と積層体との密着性が十分に得られず、積層体への水分の侵入を十分に防止できなかった。
そこで、積層体の表面に、低融点のガラス材料を含むスラリーを塗布し、熱処理することによりガラス材料を溶融させて固着させる方法を用いてガラス層を形成した。この場合、ガラス層を形成する際に積層体表面の凹凸に入り込んだ溶融したガラス材料が、硬化後に積層体に対してくさびのように働き(アンカー効果)、ガラス層と積層体との良好な密着性が得られた。しかし、ガラス層自体の防湿性が不十分であるため、積層体への水分の侵入を十分に防止できなかった。
そこで、本発明者は、ガラス材料の融点に着目してガラス層を2層構造とし、積層体に接する第一ガラス層を、積層体との密着性を重視して低融点のガラス材料で形成した。そして、第一ガラス層の外側に、製造時のインターミキシングによって第一ガラス層と良好な密着性が得られ、かつ高い防湿性の得られる高融点のガラス材料からなる第二ガラス層を形成した。その結果、積層体への水分の侵入を防止する高い効果が得られることを見出し、本発明を想到した。
以下、本発明について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合がある。したがって、図面に記載の各構成要素の寸法比率などは、実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
図1は、第1実施形態にかかる全固体リチウムイオン二次電池の拡大断面模式図である。図1に示す全固体リチウムイオン二次電池(以下、「全固体電池」と略記する場合がある。)10は、積層体4と、第1外部端子5と、第2外部端子6と、防湿層20とを備えている。
(積層体)
図2は、図1の一部を拡大して示した拡大断面模式図である。図2に示すように、積層体4は、1層以上の第1電極層1と、1層以上の第2電極層2と、第1電極層1と第2電極層2とに挟まれた固体電解質3とを有する。
各第1電極層1は、それぞれ第1外部端子5に接続されている。また、各第2電極層2は、それぞれ第2外部端子6に接続されている。
第1電極層1と、第2電極層2は、いずれか一方が正極層として機能し、他方が負極層として機能する。電極層の正負は、外部端子にいずれの極性を繋ぐかによって変化する。以下、理解を容易にするために、第1電極層1を正極層1とし、第2電極層2を負極層2とする。
図2に示すように、正極層1と負極層2は、固体電解質3を介して交互に積層されている。正極層1と負極層2の間で固体電解質3を介したリチウムイオンの授受により、全固体電池10の充放電が行われる。
「正極層および負極層」
正極層1は、正極集電体層1Aと、正極活物質を含む正極活物質層1Bとを有する。負極層2は、負極集電体層2Aと、負極活物質を含む負極活物質層2Bとを有する。
正極集電体層1A及び負極集電体層2Aは、導電率が高いことが好ましい。そのため、正極集電体層1A及び負極集電体層2Aには、例えば、銀、パラジウム、金、プラチナ、アルミニウム、銅、ニッケル等を用いることが好ましい。これらの物質の中でも、銅は正極活物質、負極活物質及び固体電解質と反応しにくい。そのため、正極集電体層1A及び負極集電体層2Aに銅を用いると、全固体電池10の内部抵抗を低減できる。なお、正極集電体層1Aと負極集電体層2Aを構成する物質は、同一でもよいし、異なってもよい。
正極集電体層1A及び負極集電体層2Aは、それぞれ正極活物質及び負極活物質を含んでもよい。各集電体層1A、2Aに含まれる活物質の含有比は、集電体として機能する限り特に限定はされない。各集電体層1A、2A中の活物質の含有比は、例えば、体積比率で10〜30%であることが好ましい。
正極集電体層1Aが正極活物質を含むことにより、正極集電体層1Aと正極活物質層1Bとの密着性が向上する。また、負極集電体層2Aが負極活物質を含むことにより、負極集電体層2Aと負極活物質層2Bとの密着性が向上する。
正極活物質層1Bは、正極集電体層1Aの片面又は両面に形成される。例えば、正極層1と負極層2のうち、積層体4の積層方向の最上層に正極層1が形成されている場合、最上層に位置する正極層1の上には対向する負極層2が無い。そのため、最上層に位置する正極層1において正極活物質層1Bは、積層方向下側の片面のみにあればよい。
負極活物質層2Bも正極活物質層1Bと同様に、負極集電体層2Aの片面又は両面に形成される。正極層1と負極層2のうち、積層体4の積層方向の最下層に負極層2が形成されている場合、最下層に位置する負極層2において負極活物質層2Bは、積層方向上側の片面のみにあればよい。
正極活物質層1Bは、電子を授受する正極活物質を含み、導電助剤および/または結着剤等を含んでもよい。負極活物質層2Bは、電子を授受する負極活物質を含み、導電助剤および/または結着剤等を含んでもよい。正極活物質及び負極活物質は、リチウムイオンを効率的に挿入、脱離できることが好ましい。
正極活物質及び負極活物質には、例えば、遷移金属酸化物、遷移金属複合酸化物を用いることが好ましい。具体的には、リチウムマンガン複合酸化物LiMnMa1−a(0.8≦a≦1、Ma=Co、Ni)、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、リチウムマンガンスピネル(LiMn)、LiNiCoMn(x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV)、オリビン型LiMbPO(ただし、Mbは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素)、リン酸バナジウムリチウム(Li(PO又はLiVOPO)、LiMnO−LiMcO(Mc=Mn、Co、Ni)で表されるLi過剰系固溶体、チタン酸リチウム(LiTi12)、LiNiCoAl(0.9<s<1.3、0.9<t+u+v<1.1)で表される複合金属酸化物等を用いることができる。
負極活物質及び正極活物質は、後述する固体電解質3に合わせて、選択してもよい。例えば、固体電解質3にLi1+nAlTi2−n(PO(0≦n≦0.6)を用いる場合は、正極活物質及び負極活物質にLiVOPO及びLi(POのうち一方又は両方を用いることが好ましい。正極活物質層1B及び負極活物質層2Bと固体電解質3との界面における接合が、強固なものになる。
正極活物質層1B又は負極活物質層2Bを構成する活物質には明確な区別がない。2種類の化合物の電位を比較して、より貴な電位を示す化合物を正極活物質として用い、より卑な電位を示す化合物を負極活物質として用いることができる。
「固体電解質」
固体電解質3は、リン酸塩系固体電解質であることが好ましい。固体電解質3としては、電子の伝導性が小さく、リチウムイオンの伝導性が高い材料を用いることが好ましい。
具体的には例えば、La0.5Li0.5TiOなどのペロブスカイト型化合物や、Li14Zn(GeOなどのリシコン型化合物、LiLaZr12などのガーネット型化合物、Li1.3Al0.3Ti1.7(POやLi1.5Al0.5Ge1.5(POなどのナシコン型化合物、Li3.25Ge0.250.75やLiPSなどのチオリシコン型化合物、LiS−PやLiO−V−SiOなどのガラス化合物、LiPOやLi3.5Si0.50.5やLi2.9PO3.30.46などのリン酸化合物、よりなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
(防湿層)
全固体電池10は、積層体4に接して設けられ、積層体4への水分の侵入を防止する防湿層20を有する。防湿層20は、図1に示すように、積層体4の表面のうち、第1外部端子5及び第2外部端子6に覆われていない領域全てを覆うように設けられている。なお、第1外部端子5及び第2外部端子6に覆われていない積層体4の表面のうちの一部に、防湿層20が設けられていない領域があってもよい。また、防湿層20は、第1外部端子5及び第2外部端子6と外部との電気的な接続を妨げない範囲で、第1外部端子5及び第2外部端子6の外面を覆うように設けられていてもよい。
防湿層20は、図1に示すように、第一ガラス層21と第二ガラス層22とからなる。第一ガラス層21は、積層体4に接して設けられている。第二ガラス層22は、第一ガラス層21上に設けられている。第一ガラス層21と第二ガラス層22との界面には、第二ガラス層22の製造時におけるインターミキシングによって、第一ガラス層21の組成と第二ガラス層22の組成との中間組成を有するインターミキシング層が形成されていることが好ましい。
第一ガラス層21の積層体4側の面は、積層体4表面の凹凸に沿う形状を有している。言い換えると、第一ガラス層21の一部が、積層体4表面の凹凸に入り込んでいる。
第一ガラス層21の融点は、第二ガラス層22の融点の融点よりも低い。第一ガラス層21を形成している低融点のガラス材料は、第二ガラス層22を形成している高融点のガラス材料と比較して、積層体4表面に塗布した後、溶融させることにより、積層体4表面の凹凸に入り込みやすい。第一ガラス層21の形成時に積層体4表面の凹凸に入り込んだ溶融したガラス材料は、硬化後に積層体4に対してくさびのように働く。このため、第一ガラス層21は、積層体4との密着性に優れる(第一ガラス層21のアンカー効果)。
第一ガラス層21の融点は465〜565℃であることが好ましく、540〜565℃であることがより好ましい。第一ガラス層21の融点が465℃以上であると、より防湿機能の良好な第一ガラス層21となる。また、第一ガラス層21の融点が565℃以下であると、溶融させることにより高い流動性が得られる。その結果、積層体4表面に第一ガラス層21となるガラス材料を含むスラリーを塗布した後、熱処理することによりガラス材料を溶融させて固着させる方法を用いて、容易に積層体4の凹凸に沿う形状を有する密着性の良好な第一ガラス層21が得られる。
第一ガラス層21の材料としては、Bi系ガラスが挙げられる。Bi系ガラスは、積層体4との密着性に優れる材料であるため、第一ガラス層21の材料として好ましい。
Bi系ガラスとしては、第一ガラス層21に含まれる成分のうち最も多く含まれる成分(以下、「主成分」という場合がある。)がBiであって、Biの他に、ZnO、B、SiO、Al、BaO、CaO、MgO、SrO、SO、P、KO、ZrO、LiO、TiO、CuO、SnO、Vよりなる群から選択される1種以上を含むものが挙げられる。
第一ガラス層21は、主成分が、Bi、V、Bよりなる群から選択される1種であることが好ましく、特に、主成分が、Biであることが好ましい。第一ガラス層21がBiを含む場合、Biを30〜70重量%含有することが好ましい。このような第一ガラス層21は、より密着性の良好な第一ガラス層21が得られやすい。
第二ガラス層22の融点は550〜730℃であることが好ましく、550〜610℃であることがより好ましい。第二ガラス層22の融点が550℃以上であると、より防湿機能の良好な第二ガラス層22となる。第二ガラス層22の融点が730℃以下であると、第一ガラス層21の表面に第二ガラス層22となるガラス材料を含むスラリーを塗布した後、熱処理することによりガラス材料を溶融させて固着させる方法により、第二ガラス層22を容易に形成できる。
第二ガラス層22の材料としては、シリカ系ガラスが挙げられる。シリカ系ガラスは、第一ガラス層21の材料として好ましいBi系ガラスとの密着性が良好であり、かつ、防湿機能および物理的強度の良好な材料であるため、第二ガラス層22の材料として好ましい。
シリカ系ガラスとしては、第二ガラス層22に含まれる成分のうち最も多く含まれる成分がSiOであって、SiOの他に、Bi、ZnO、B、Al、BaO、CaO、MgO、SrO、SO、Cl、P、KO、ZrO、NaO、Y、PbO、LiOよりなる群から選択される1種以上を含むものが挙げられる。
第二ガラス層22は、主成分が、SiOであることが好ましい。第二ガラス層22がSiOを含む場合、SiOを20〜70重量%含有することが好ましい。このような第二ガラス層22は、より防湿機能および物理的強度の良好な第二ガラス層22が得られやすい。
(端子)
第1外部端子5及び第2外部端子6は、外部と電気的に接続されている。第1外部端子5は、図1に示すように、積層体4の側面(正極層1および負極層2の端面の露出面)に接して形成されている。第2外部端子6は、積層体4における第1外部端子5の形成されている側面とは別の側面に接して形成されている。
第1外部端子5及び第2外部端子6には、導電率が大きい材料を用いることが好ましい。例えば、銀、金、プラチナ、アルミニウム、銅、スズ、ニッケル、ガリウム、インジウム、およびこれらの合金などを用いることができる。第1外部端子5及び第2外部端子6は、単層でもよいし、複数層でもよい。
(全固体電池の製造方法)
(積層体の形成)
積層体4を形成する方法としては、同時焼成法を用いてもよいし、逐次焼成法を用いてもよい。
同時焼成法は、各層を形成する材料を積層した後、一括焼成により積層体を作製する方法である。逐次焼成法は、各層を順に作製する方法であり、各層を作製する毎に焼成工程を行う方法である。同時焼成法を用いた方が、逐次焼成法を用いる場合と比較して、少ない作業工程で積層体4を形成できる。また、同時焼成法を用いた方が、逐次焼成法を用いる場合と比較して、得られる積層体4が緻密になる。以下、同時焼成法を用いて積層体4を製造する場合を例に挙げて説明する。
同時焼成法は、積層体4を構成する各材料のペーストを作成する工程と、ペーストを塗布乾燥してグリーンシートを作製する工程と、グリーンシートを積層して積層シートとし、これを同時焼成する工程とを有する。
まず、積層体4を構成する正極集電体層1A、正極活物質層1B、固体電解質3、負極活物質層2B、及び負極集電体層2Aの各材料をペースト化する。
各材料をペースト化する方法は、特に限定されない。例えば、ビヒクルに各材料の粉末を混合してペーストが得られる。ここで、ビヒクルとは、液相における媒質の総称である。ビヒクルには、溶媒、バインダーが含まれる。
かかる方法により、正極集電体層1A用のペースト、正極活物質層1B用のペースト、固体電解質3用のペースト、負極活物質層2B用のペースト、及び負極集電体層2A用のペーストを作製する。
次いで、グリーンシートを作成する。グリーンシートは、作製したペーストをそれぞれPET(ポリエチレンテレフタラート)フィルムなどの基材上に塗布し、必要に応じて乾燥させた後、基材を剥離して得られる。ペーストの塗布方法は、特に限定されない。例えば、スクリーン印刷、塗布、転写、ドクターブレード等の公知の方法を採用できる。
次に、作製したそれぞれのグリーンシートを、所望の順序、積層数で積み重ね、積層シートとする。グリーンシートを積層する際には、必要に応じアライメント、切断等を行う。
積層シートは、以下に説明する正極活物質層ユニット及び負極活物質層ユニットを作製し、これを積層する方法を用いて作製してもよい。
まず、PETフィルムなどの基材上に、固体電解質3用ペーストをドクターブレード法により塗布し、乾燥してシート状の固体電解質層3を形成する。次に、固体電解質3上に、スクリーン印刷により正極活物質層1B用ペーストを印刷して乾燥し、正極活物質層1Bを形成する。次いで、正極活物質層1B上に、スクリーン印刷により正極集電体層1A用ペーストを印刷して乾燥し、正極集電体層1Aを形成する。さらに、正極集電体層1A上に、スクリーン印刷により正極活物質層1B用ペーストを印刷して乾燥し、正極活物質層1Bを形成する。
その後、PETフィルムを剥離することで正極活物質層ユニットが得られる。正極活物質層ユニットは、固体電解質層3/正極活物質層1B/正極集電体層1A/正極活物質層1Bがこの順で積層された積層シートである。
同様の手順にて負極活物質層ユニットを作製する。負極活物質層ユニットは、固体電解質層3/負極活物質層2B/負極集電体層2A/負極活物質層2Bがこの順に積層された積層シートである。
次に、一枚の正極活物質層ユニットと一枚の負極活物質層ユニット一枚とを積層する。この際、正極活物質層ユニットの固体電解質層3と負極活物質層ユニットの負極活物質層2B、もしくは正極活物質層ユニットの正極活物質層1Bと負極活物質層ユニットの固体電解質層3とが接するように積層する。これによって、正極活物質層1B/正極集電体層1A/正極活物質層1B/固体電解質層3/負極活物質層2B/負極集電体層2A/負極活物質層2B/固体電解質層3がこの順で積層された積層シートが得られる。
なお、正極活物質層ユニットと負極活物質層ユニットとを積層する際には、正極活物質層ユニットの正極集電体層1Aが一の端面にのみ延出し、負極活物質層ユニットの負極集電体層2Aが他の面にのみ延出するように、各ユニットをずらして積み重ねる。その後、ユニットを積み重ねた積層体の固体電解質層3が表面に存在しない側の面に、所定厚みの固体電解質層3用シートをさらに積み重ね、積層シートとする。
次に、作製した積層シートを一括して圧着する。圧着は、加熱しながら行うことが好ましい。圧着時の加熱温度は、例えば、40〜95℃とする。
次に、圧着した積層シートを、一括して同時焼成し、焼結体からなる積層体4とする。積層シートの焼成は、例えば、窒素雰囲気下で600℃〜1000℃に加熱することにより行う。焼成時間は、例えば、0.1〜3時間とする。
得られた焼結体(積層体4)は、アルミナなどの研磨材とともに円筒型の容器に入れて、バレル研磨してもよい。これにより積層体4の角の面取りをすることができる。そのほかの方法として、積層体4をサンドブラストにて研磨しても良い。この方法では特定の部分のみを削ることができるため好ましい。
前記焼結体(積層体4)において、正極層と、負極層と、正極層と負極層とに挟まれた固体電解質の相対密度が80%以上であってもよい。相対密度が高い方が結晶内の可動イオンの拡散パスがつながりやすくなり、イオン伝導性が向上する。
以上の工程により、積層体4が得られる。
(防湿層の形成)
次に、第1外部端子5及び第2外部端子6の形成される領域を除く積層体4の表面を覆うように、防湿層20を形成する。まず、焼結体4の表面のうち、防湿層20を形成しない被形成面(図1に示す例では、第1外部端子5及び第2外部端子6の形成される領域)に、例えばテープなどを用いてマスキングを施す。
次に、第一ガラス層21となるガラス材料を含むスラリーを、焼結体4の表面に塗布する。第一ガラス層21となるガラス材料を含むスラリーとしては、例えば、水中に、第一ガラス層21となるガラス材料を分散させたものを用いることができる。第一ガラス層21となるガラス材料を含むスラリーには、必要に応じてバインダーなどが含まれていてもよい。第一ガラス層21となるガラス材料を含むスラリーは、例えば、スプレーコート法、ディッピング法など公知の方法で塗布することができ、スプレーコート法を用いることが好ましい。
次に、第二ガラス層22となるガラス材料を含むスラリーを、第一ガラス層21となるガラス材料を含むスラリーを塗布してなる塗膜上に塗布する。第二ガラス層22となるガラス材料を含むスラリーとしては、例えば、水中に、第二ガラス層22となるガラス材料を分散させたものを用いることができる。第二ガラス層22となるガラス材料を含むスラリーには、必要に応じてバインダーなどが含まれていてもよい。第二ガラス層22となるガラス材料を含むスラリーの塗布方法としては、第一ガラス層21となるガラス材料を含むスラリーと同様の方法などを用いることができる。
第二ガラス層22となるガラス材料を含むスラリーを塗布してなる塗膜を形成した後、例えば、窒素雰囲気下で500℃〜800℃に加熱する熱処理を行って、第一ガラス層21となるガラス材料および第二ガラス層22となるガラス材料を溶融させる。このことにより、第一ガラス層21のガラス材料が積層体4表面の凹凸に入り込む。その結果、積層体4と第一ガラス層21との良好な密着性が得られる。また、上記の熱処理を行うことによって、第一ガラス層21のガラス材料と第二ガラス層22のガラス材料とのインターミキシングが生じる。その結果、第一ガラス層21と第二ガラス層22との良好な密着力が得られる。
その後、冷却して第一ガラス層21および第二ガラス層22となるガラス材料を硬化させて固着させる。以上の工程により、第一ガラス層21と第二ガラス層22とからなる防湿層20が得られる。
(端子の形成)
次に、積層体4の表面のうち、防湿層20の形成されていない、正極集電体層1Aおよび負極集電体層2Aが露出された側面に、第1外部端子5と第2外部端子6を形成する。第1外部端子5及び第2外部端子6は、正極集電体層1Aおよび負極集電体層2Aに、それぞれ電気的に接触するように形成する。
第1外部端子5及び第2外部端子6は、公知の方法により形成できる。具体的には例えば、スパッタ法、スプレーコート法、ディッピング法などを用いることができる。第1外部端子5及び第2外部端子6は、積層体4の表面のうち正極集電体層1Aおよび負極集電体層2Aが露出されている所定の部分にのみ形成する。このため、第1外部端子5及び第2外部端子6を形成する際には、積層体4の表面のうち第1外部端子5及び第2外部端子6を形成しない領域を、例えばテープなどを用いてマスキングを施してから形成する。
このようにして得られた本実施形態の全固体電池10は、積層体4に接して設けられた防湿層20を備えているので、水分の侵入に起因する電池容量の低下が生じにくく、優れた信頼性を有する。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
(実施例1〜13、比較例3)
固体電解質層3/正極活物質層1B/正極集電体層1A/正極活物質層1B/固体電解質層3/負極活物質層2B/負極集電体層2A/負極活物質層2B/固体電解質層3がこの順で積層されている積層体4を同時焼成法により作製した。各層の構成は以下とした。
正極集電体層1A及び負極集電体層2A:Cu+Li(PO
正極活物質層1B及び負極活物質層2B:Li(PO
固体電解質3:Li1.3Al0.3Ti1.7(PO
同時焼成時の温度は800℃とし、焼成時間は、1時間とした。
次に、第一ガラス層21となる表1に示す成分のガラス材料を水中に分散させたスラリーを作製し、スプレーコート法を用いて第1外部端子5及び第2外部端子6の形成される領域を除く積層体4の表面を覆うように塗布した。次に、第二ガラス層22となる表2に示す成分のガラス材料を水中に分散させたスラリーを作製し、スプレーコート法を用いて第一ガラス層21上に塗布した。
その後、窒素雰囲気下で650℃(実施例9は680℃、実施例13は750℃)で30分間熱処理を行い、第一ガラス層21となるガラス材料および第二ガラス層22となるガラス材料を溶融させた。その後、冷却して硬化させて第一ガラス層21及び第二ガラス層22を形成した。
以上の工程により、第一ガラス層21と第二ガラス層22とからなる防湿層20を形成した。
次に、積層体4の表面のうち、防湿層20の形成されていない、正極集電体層1Aおよび負極集電体層2Aが露出された対向する側面に、それぞれInGaのペーストを塗布し、第1外部端子5及び第2外部端子6を形成し、全固体電池10を得た。
(比較例1)
第二ガラス層となるガラス材料を含むスラリーを塗布しなかったこと以外は、実施例1と同様にして全固体電池を作製した。
(比較例2)
第一ガラス層となるガラス材料を含むスラリーを塗布しなかったこと以外は、実施例1と同様にして全固体電池を作製した。
実施例1〜13および比較例1〜3の全固体電池について、以下に示す方法により、信頼性試験を行った。その結果を表3に示す。
また、表3に第一ガラス層および第二ガラス層の融点を合わせて示す。
なお、表3に示す「主成分」とは、ガラス層に含まれる成分のうち最も多く含まれる成分を意味する。
「信頼性試験」
実施例1〜13および比較例1〜3の全固体電池を充放電試験機にセットし、100μAの電流で電圧1.8Vまで充電した後、100μAの電流で0Vまで放電して初期の放電容量を測定した。再度、1.8Vまで充電した全固体電池を初期放電容量の50%を放電させた。
次に、PCT試験(プレッシャークッカー試験:TABAI ESPEC コーポレーション製TPC−411)機を温度120℃、湿度100%RHの条件で稼動した。全固体電池をPCT試験機内に放置し、12時間、24時間、48時間、96時間、120時間、150時間、200時間、経過後、全固体電池を取り出し、室温で8時間以上放置したのち、初期の放電容量を測定したのと同様にして、耐湿試験後の放電容量を測定した。
信頼性試験投入前の全固体次電池の放電容量を100%とし、信頼性試験投入後の全固体電池の放電容量が80%超の容量を保持できる時間を測定した。
表3に示すように、実施例1〜13の全固体電池は、第二ガラス層を形成しなかった比較例1、第一ガラス層を形成しなかった比較例2、第一ガラス層の融点が第二ガラス層の融点よりも高い比較例3の全固体電池と比較して、信頼性試験の結果が良好であった。
「顕微鏡観察結果」
実施例1の全固体電池について走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて断面を撮影した。その結果を図3に示す。図3において、符号21は防湿層20の第一ガラス層、符号22は第二ガラス層、符号3は積層体4の表面に配置された固体電解質である。
図3に示すように、実施例1の全固体電池では、第一ガラス層21の一部が、積層体4表面の凹凸に沿って、積層体4表面の凹凸に入り込んでいた。
1…正極層、1A…正極集電体層、1B…正極活物質層、2…負極層、2A…負極集電体層、2B…負極活物質層、3…固体電解質、4…積層体、5…第1外部端子、6…第2外部端子、10…全固体リチウムイオン二次電池(全固体電池)、20…防湿層、21…第一ガラス層、22…第二ガラス層。

Claims (9)

  1. 正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層とに挟まれた固体電解質とを有する積層体と、
    前記積層体に接して設けられた防湿層とを備え、
    前記防湿層が、前記積層体に接して設けられた第一ガラス層と、前記第一ガラス層上に設けられた第二ガラス層とからなり、前記第一ガラス層の融点が前記第二ガラス層の融点よりも低いことを特徴とする全固体リチウムイオン二次電池。
  2. 前記第一ガラス層の融点が465〜565℃である請求項1に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
  3. 前記第二ガラス層の融点が550〜730℃である請求項1に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
  4. 前記第一ガラス層に含まれる成分のうち最も多く含まれる成分が、Bi、V、Bよりなる群から選択される1種である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
  5. 前記第一ガラス層に含まれる成分のうち最も多く含まれる成分が、Biである請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
  6. 前記第一ガラス層がBiを30〜70重量%含有する請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
  7. 前記第二ガラス層に含まれる成分のうち最も多く含まれる成分が、SiOである請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
  8. 前記第二ガラス層がSiOを20〜70重量%含有する請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
  9. 前記正極層と、前記負極層と、前記正極層と前記負極層とに挟まれた前記固体電解質とが、相対密度80%以上であることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
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