JPWO2018180857A1 - ヘッドアップディスプレイ装置 - Google Patents

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和弘 菅原
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修 丹内
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淳司 橋村
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Abstract

実物のオブジェクトに対して奥行き方向も含めた配置関係で虚像として関連情報像を付加することができるヘッドアップディスプレイ装置を提供する。ヘッドアップディスプレイ装置200は、虚像を投影する投影光学系30と、検出領域VF内に存在するオブジェクトを検出するとともに、投影光学系30からオブジェクトまでの距離を目標距離として検出するオブジェクト検出部としての環境監視部72と、投影光学系30からの虚像の投影距離を非周期的に変化させる投影距離変更部62と、検出されたオブジェクトに対して、目標距離と投影距離とが略一致するように、投影光学系30によって虚像として関連情報像を付加する像付加部である主制御装置90及び表示制御部18と、を備える。

Description

本発明は、虚像の投影位置を可変としたヘッドアップディスプレイ装置に関するものである。
従来の自動車用のヘッドアップディスプレイ(以下HUD(Head-Up Display)とも称する)装置は、虚像を運転者からある一定の距離に生成するのが一般的であり、表示内容は、車速、カーナビ情報等に限られていた。そもそもHUDを車に搭載する目的は、運転者の視線移動を最小限に抑えることで、より安全な運転を支援するものであるが、安全運転支援という意味においては、上記のような表示内容だけでは不十分であり、例えば前方の車、歩行者、障害物等をカメラその他のセンサーで検知し、HUDを通して運転者に事前に危険を察知させて事故を未然に防ぐようなシステムの方がより好ましい。こういったシステムを実現するには、車、人、障害物等に対して枠状の危険信号を重畳させて表示させることが考えられる(例えば特許文献1参照)。しかしながら、運転者から虚像までの距離が一定だと運転者の眼の位置がずれた場合、実物と危険信号との位置関係がずれてしまい、ズレが過度となった場合、運転者が誤認してしまうという課題がある。
なお、虚像の表示距離を変化させるHUD装置として、走査型の像形成手段と、拡散スクリーンと、投影手段と、拡散スクリーン位置を変える可動手段とを備え、拡散スクリーン位置を変化させることで虚像の奥行き方向の投影位置を変化させるものが公知となっている(例えば特許文献2、3参照)。これらのHUD装置は、車の速度に伴って人間が注視する距離が変わることを鑑み、虚像の表示距離を近づけたり遠ざけたりして、運転者の視線移動を少なくするもの(特許文献2)であったり、3D表示を行う目的のもの(特許文献3)であったりして、車、人、障害物等のオブジェクトに対して虚像の表示位置を調整しようとするものではない。
また、例えば車、人、障害物等のオブジェクトに対して虚像の表示位置を重ねる、またはその近傍に表示させて運転者に危険を伝えるといった目的でHUD装置を使用する場合、運転時の危険という事象は視線の遠近に関係なく存在するものであるため、遠距離にも近距離にも同時に危険信号を表示できることが好ましい。そのためには、拡散スクリーンを高速駆動し、それと同期させた映像を像形成手段によって生成することで、人間の目には同時に表示されているかのように見せることが考えられる。しかしながら、走査型の像形成手段では、高フレームレートでの表示切り替えに対応することが難しいため、複数距離に虚像を同時に表示させる構成には向いていない。
特開2015−127160号公報 特開2009−150947号公報 特開2008−180759号公報
本発明は、実物のオブジェクトに対して奥行き方向も含めた配置関係で虚像として関連情報像を付加することができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映したヘッドアップディスプレイ装置は、虚像を投影する投影光学系と、検出領域内に存在するオブジェクトを検出するとともに、投影光学系からオブジェクトまでの距離を目標距離として検出するオブジェクト検出部と、投影光学系からの虚像の投影距離を非周期的に変化させる投影距離変更部と、検出されたオブジェクトに対して、目標距離と投影距離とが略一致するように、投影光学系によって虚像として関連情報像を付加する像付加部と、を備える。
図1Aは、第1実施形態のヘッドアップディスプレイ装置を車体に搭載した状態を示す側方断面図であり、図1Bは、ヘッドアップディスプレイ装置を説明する車内側からの正面図である。 ヘッドアップディスプレイ装置を構成する投影光学系等の具体的な構成例を説明する拡大側方断面図である。 ヘッドアップディスプレイ装置の全体構造を説明するブロック図である。 具体的な表示状態を説明する斜視図である。 図5A及び5Bは、図4に示す虚像のうち遠距離の投影像又はフレーム枠とこれに対応する拡散スクリーンの配置状態とを示し、図5C及び5Dは、中距離の投影像又はフレーム枠とこれに対応する拡散スクリーンの配置状態とを示し、図5E及び5Fは、近距離の投影像又はフレーム枠とこれに対応する拡散スクリーンの配置状態とを示す。 ヘッドアップディスプレイ装置の表示動作を説明する図である。 第2実施形態のヘッドアップディスプレイ装置を説明する図である。 図8A及び8Bは、変形例のフレーム枠及び指標を説明する図である。 図2に示す投影光学系の変形例を説明する図である。
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る第1実施形態のヘッドアップディスプレイ装置について説明する。
図1A及び1Bは、本実施形態のヘッドアップディスプレイ装置のうち画像表示装置100を説明する概念的な側方断面図及び正面図である。この画像表示装置100は、例えば自動車の車体2内に搭載されるものであり、描画ユニット10と表示スクリーン20とを備える。画像表示装置100は、描画ユニット10中の後述する表示素子11に表示されている画像情報を、表示スクリーン20を介してドライバーUN向けに虚像表示するものである。
画像表示装置100のうち描画ユニット10は、車体2のダッシュボード4内であってディスプレイ50の背後に埋め込むように設置されており、運転関連情報等を含む画像に対応する表示光HKを表示スクリーン20に向けて射出する。表示スクリーン20は、コンバイナーとも呼ばれ、半透過性を有する凹面鏡又は平面鏡である。表示スクリーン20は、下端の支持によってダッシュボード4上に立設され、描画ユニット10からの表示光HKを車体2の後方に向けて反射する。つまり、図示の場合、表示スクリーン20は、フロントウインドウ8とは別体で設置される独立型のものとなっている。表示スクリーン20で反射された表示光HKは、運転席6に座ったドライバーUNの瞳HT及びその周辺位置に対応するアイボックス(不図示)に導かれる。ドライバーUNは、表示スクリーン20で反射された表示光HK、つまり車体2の前方にある虚像としての投影像IMを観察することができる。一方、ドライバーUNは、表示スクリーン20を透過した外界光、つまり前方景色、自動車等の実像を観察することができる。結果的に、ドライバーUNは、表示スクリーン20の背後の外界像又はシースルー像に重ねて、表示スクリーン20での表示光HKの反射によって形成される運転関連情報等の関連情報を含む投影像(虚像)IMを観察することができる。
ここで、表示スクリーン20をフロントウインドウ8と別体で構成しているが、フロントウインドウ8を表示スクリーンとして用い、フロントウインドウ8内に設定した表示範囲に投影を行って、ドライバーUNが投影像IMを観察できる構成としても構わない。この際、フロントウインドウ8のガラスの一部領域の反射率をコート等によって変更することで、反射領域を確保することができる。また、フロントウインドウ8での反射角度が例えば60度程度であれば、反射率が15%程度確保され、特にコートを設けなくても透過性を有する反射面として用いることができる。これら以外に、フロントウインドウ8のガラス中にサンドイッチする構成で表示スクリーンを設けることもできる。
図2に示すように、描画ユニット10は、表示素子11を含む虚像型の拡大結像系である本体光学系13と、本体光学系13を動作させる表示制御部18と、本体光学系13等を収納するハウジング14とを備える。これらのうち本体光学系13と表示スクリーン20と組み合わせたものは、投影光学系30を構成する。
本体光学系13は、表示素子11のほかに、表示素子11に形成された画像を拡大した中間像TIを形成することができる結像光学系15と、中間像TI又はその近傍に形成される強制中間像TI’を虚像に変換する虚像形成光学系17とを備える。なお、強制中間像TI’が形成される場合、詳細は後述するが中間像TIは形成されず、中間像TIが形成されるはずであった位置を以下では結像予定位置とも呼ぶ。
表示素子11は、2次元的な表示面11aを有する。表示素子11の表示面11aに形成された像は、結像光学系15で拡大されてスクリーン群16を構成するいずれかの1つの拡散スクリーン16a〜16cに投影される。この際、2次元表示が可能な表示素子11を用いることで、各拡散スクリーン16a〜16cに対する投影像又は中間像の表示内容の切り替え、つまり表示スクリーン20越しに虚像として表示される投影像IMの切り替えを比較的高速とできる。表示素子11は、DMD(Digital Mirror Device)やLCOS(Liquid Crystal On Silicon)等の反射型の素子であっても、液晶等の透過型の素子であってもよい。特に、表示素子11としてDMDやLCOSを用いると、明るさを維持しつつ画像を高速で切り替えること(高速の間欠表示を含む)が容易になり、虚像距離又は投影距離を変化させる表示に有利である。なお、表示素子11は、30fps以上、更に望ましくは60fps以上のフレームレートで動作する。これにより、異なる投影距離に複数の投影像(虚像)IMをドライバーUNに対して同時に表示されているように見せることが可能になる。特に、90fps以上で表示の切り替えを行う場合、DMDやLCOSが表示素子11の候補となる。
結像光学系15は、固定焦点のレンズ系であり、図示を省略するが、複数のレンズを有する。結像光学系15は、表示素子11の表示面11aに形成された画像を拡大投影して上記した結像予定位置に中間像TIを形成することができる(中間像TI自体は、表示素子11の表示動作が前提となる)。結像光学系15は、像側において焦点深度が比較的大きくなっている。
結像光学系15によって拡大投影される中間像TIの結像予定位置及び当該結像予定位置の光軸AXに沿った近傍を含む近傍領域RVの光路上には、スクリーン群16を構成する複数の拡散スクリーン16a〜16cのうちいずれか1つを選択的に挿入することができる。各拡散スクリーン16a〜16cは、配光角を所望の角度に制御するための拡散板であり、結像位置(つまり中間像TIの結像予定位置又はその近傍)において強制中間像TI’を形成する。つまり、複数の拡散スクリーン16a〜16cのうちいずれか1つを光軸AXと交差するように光路上に挿入することで、その拡散スクリーンの位置に強制中間像TI’を形成することができる。結果的に、強制中間像TI’の位置P1〜P3を光軸AXに沿った離散的な複数の規定箇所(具体的には3箇所)に設定することができ、強制中間像TI’の位置を位置P1〜P3のいずれかに任意に変更することができる。拡散スクリーン16a〜16cとしては、例えば摺りガラス、レンズ拡散板、マイクロレンズアレイ等を用いることができる。
光軸AXに沿った光路上の複数の規定箇所に強制中間像TI’を形成するスクリーン群16と、これらを光路上に進退させる駆動機構65とは、投影距離変更部62を構成する。投影距離変更部62は、投影光学系30からの虚像の投影距離を非周期的に変化させるものであり、投影像(虚像)IMまでの投影距離を任意の順序で変化させることができる。これにより、後述する像付加部(主制御装置90及び表示制御部18)によって関連情報像を付加するタイミングの自由度を高めることができる。具体的に説明すると、投影距離変更部62の駆動機構65は、3つの拡散スクリーン16a〜16cに対応する3つのアクチュエーターを有しており、拡散スクリーン16a〜16cを個別に光路上に進退させることができる。駆動機構65は、表示制御部18の制御下で動作し、スクリーン群16を構成するいずれか1つの拡散スクリーン16a〜16cを投影光学系30の光路上の異なる規定箇所又は動作位置に所望のタイミングで択一的に挿入する。これにより、拡散スクリーン16a〜16cの挿入位置に応じて投影距離を自在に設定することができる。具体的には、選択された拡散スクリーン16a〜16cに対応する位置P1〜P3のいずれかに強制中間像TI’を択一的に形成でき、投影像(虚像)IMまでの投影距離を遠距離、中距離、及び近距離の3段階に設定することができる。なお、拡散スクリーン16a〜16cの挿入位置は、投影光学系30中で中間像TIが形成される位置、またはその近傍であって比較的中間像TIが鮮明な範囲とする。
虚像形成光学系17は、拡散スクリーン16a〜16cに形成された強制中間像TI’を表示スクリーン20と協働して拡大し、ドライバーUNの前方に虚像としての投影像IMを形成する。虚像形成光学系17は、少なくとも1枚のミラーで構成されるが、図示の例では2枚のミラー17a,17bを含む。
以上の本体光学系13において、拡散スクリーン16a〜16cを光路上に配置することにより、光軸AX方向に関する位置が異なる複数の強制中間像TI’を形成できるだけでなく、視野角とアイボックスサイズとを確保しつつ、光学系の光利用効率を高くすることができる。
強制中間像TI’については、像のボケ量又はフォーカスずれが少ない方が望ましい。一方で、結像予定位置と強制中間像TI’の位置P1〜P3との差を一定以上確保することで、これらによって形成される投影像(虚像)IMの奥行き方向の投影位置差を確保し3次元的な表示範囲を広くする必要がある。この観点で、結像光学系15は、下記の条件式(1)を満たすことが望ましい。
0.8≦2×F×P×m/δ≦1.2 … (1)
ただし、値Fは、結像光学系15の表示素子11側のFナンバーを表し、値Pは、表示素子11の画素ピッチ[mm]を表し、値δは、所望の虚像距離範囲を得るために必要な拡散スクリーン移動量[mm]を表す。上記条件式(1)の値2×F×P×m/δは、焦点深度の利用率といったものであり、上記条件式(1)を満たす範囲とすることで、各拡散スクリーン16a〜16cの位置でフォーカスずれを少なくすることができるため、所望の虚像距離範囲において鮮明な虚像表示とすることができる。
図2に示す投影光学系30の場合、観察者であるドライバーUNの目が移動した際の観察可能である範囲(つまりアイボックス)を大きくするためにリレー光学系の倍率を高くして拡散スクリーンのサイズが大きくなっても、拡散スクリーンを移動させなくてすみ、移動機構が大掛かりにならないという利点がある。
図3は、ヘッドアップディスプレイ装置200の全体構造を説明するブロック図であり、ヘッドアップディスプレイ装置200は、その一部として画像表示装置100を含む。画像表示装置100は、図2に示す構造を有するものであり、ここでは説明を省略する。
ヘッドアップディスプレイ装置200は、画像表示装置100のほかに、環境監視部72と、主制御装置90とを備える。
環境監視部72は、検出領域内に存在するオブジェクトを検出するオブジェクト検出部であり、前方に近接して存在する移動体や人、具体的には自動車、自転車、歩行者等をオブジェクトとして識別し、オブジェクトの3次元的な位置情報を抽出する3次元計測器を有する。これにより、オブジェクトの3次元的認識によって関連情報像の3次元的表示が可能になる。また、環境監視部72により、移動体や人に対して虚像の関連情報像を付加することになり、移動体や人の存在をヘッドアップディスプレイ装置200のドライバーUN等に知らせることができる。環境監視部(オブジェクト検出部)72は、3次元計測器として、外部用カメラ72aと、外部用画像処理部72bと、判断部72cとを備える。外部用カメラ72aは、可視又は赤外域において外界像の撮影を可能にする。外部用カメラ72aは、車体2内外の適所に設置されており、ドライバーUN又はフロントウインドウ8の前方の検出領域VF(後述する図4参照)を外部画像として撮影する。外部用画像処理部72bは、外部用カメラ72aで撮影した外部画像に対して明るさ補正等の各種画像処理を行って判断部72cでの処理を容易にする。判断部72cは、外部用画像処理部72bを経た外部画像からオブジェクト画像の抽出又は切り出しを行うことによって自動車、自転車、歩行者等のオブジェクト(具体的には、後述する図4中のオブジェクトOB1,OB2,OB3参照)の存否を検出するとともに、外部画像に付随する奥行情報から車体2前方におけるオブジェクトの空間的な位置を算出し3次元的な位置情報として記憶部72mに保管する。判断部72cの記憶部72mには、外部画像からオブジェクト画像の抽出を可能にするソフトウエアが保管されており、外部画像からオブジェクト画像を抽出する動作時には、記憶部72mから必要となるソフトウエアやデータが読み出される。判断部72cにより、例えば得られた画像内の各オブジェクト要素の形状、大きさ、色等から、オブジェクト要素に対応するオブジェクトが何かを検出することができる。その際の判断基準は、予め登録されている情報とのパターンマッチングを行ってマッチングの度合からオブジェクトが何かを検出する方法等がある。また、処理速度を高める観点で、画像から車線を検知し、その車線内にあるターゲット又はオブジェクト要素について、上記の形状、大きさ、色等からオブジェクトの検出を行うこともできる。
外部用カメラ72aは、図示を省略しているが、例えば複眼型の3次元カメラである。つまり、外部用カメラ72aは、結像用のレンズと、CMOS(Complementary metal oxide semiconductor)その他の撮像素子とを一組とするカメラ素子をマトリックス状に配列したものであり、撮像素子用の駆動回路をそれぞれ有する。外部用カメラ72aを構成する複数のカメラ素子は、例えば奥行方向の異なる位置にピントを合わせるようになっており、或いは相対的な視差を検出できるようになっており、カメラ素子から得た画像の状態(フォーカス状態、オブジェクトの位置等)を解析することで、検出領域に対応する画像内の各領域又はオブジェクトまでの目標距離を判定できる。
なお、上記のような複眼型の外部用カメラ72aに代えて、2次元カメラと赤外距離センサーとを組み合わせたものを用いても、撮影した画面内の各部(領域又はオブジェクト)に関して奥行方向の距離情報である目標距離を得ることができる。また、複眼型の外部用カメラ72aに代えて、2つの2次元カメラを分離配置したステレオカメラによって、撮影した画面内の各部(領域又はオブジェクト)に関して奥行方向の距離情報である目標距離を得ることができる。その他、単一の2次元カメラにおいて、焦点距離を高速で変化させながら撮像を行うことによっても、撮影した画面内の各部(領域又はオブジェクト)に関して奥行方向の距離情報である目標距離を得ることができる。
また、複眼型の外部用カメラ72aに代えて、LIDAR(Light Detection and Ranging)技術を用いても、検出領域内の各部(領域又はオブジェクト)に関して奥行方向の距離情報を得ることができる。LIDAR技術により、パルス状のレーザー照射に対する散乱光を測定し、遠距離にある対象までの距離や拡がりを計測して視野内のオブジェクトまでの距離情報やオブジェクトの拡がりに関する情報を取得することができる。さらに、例えばLIDAR技術のようなレーダーセンシング技術と画像情報からオブジェクトの距離等を検出する技術とを組み合わせるような複合的な手法、つまり複数のセンサーをフュージョンさせる手法によって、オブジェクトの検出精度を高めることができる。
オブジェクトを検出する外部用カメラ72aの動作速度は、入力の高速化の観点で、表示素子11の動作速度以上である必要があり、表示素子11の動作速度30fps以上の場合、これと同等かこれより早くする必要がある。外部用カメラ72aは、例えば120fpsより高速、例えば480fpsや1000fpsといった高速動作によってオブジェクトの高速検出を可能にするものが望ましい。また、複数センサーをフュージョンさせる場合、その全てのセンサーが高速である必要は必ずしもなく、少なくとも複数センサーの内1つのセンサーは高速である必要があるが、それ以外は高速でなくても構わない。この場合、高速のセンサーで検出するデータを基本としながら、高速でないセンサーのデータで補完するという使い方で、センシング精度を上げるといった方法を用いてもよい。
表示制御部18は、主制御装置90の制御下で投影光学系30を動作させて、表示スクリーン20の背後に虚像距離又は投影距離が変化する3次元的な投影像IMを表示させる。
主制御装置90は、画像表示装置100、環境監視部72等の動作を調和させる役割を有する。主制御装置90は、例えば表示制御部18を介して投影距離変更部62を適宜動作させることによって、投影光学系30による投影像IMである虚像の投影距離を非周期的に変化させる。つまり、主制御装置90等は、投影像IMである虚像の奥行き方向に関する投影位置を非周期的に変化させる。この場合、投影位置を非周期的に往復移動させる過程の適宜の位置でオブジェクトに対して関連情報像を付与することができる。また、主制御装置90は、環境監視部72によって検出したオブジェクトの空間的な位置に対応するように、投影光学系30によって投影されるフレーム枠HW(図4参照)の空間的な配置を調整する。すなわち、主制御装置90は、環境監視部72から受信した表示形状や表示距離を含む表示情報から、投影光学系30に表示させる投影像IMを生成する。投影像IMは、例えば表示スクリーン20の背後に存在する自動車、自転車、歩行者その他のオブジェクトに対してその奥行き位置方向に関して周辺に位置するフレーム枠HW(図4参照)のような標識とすることができる。以上のように、主制御装置90は、表示制御部18と協働して像付加部として機能し、検出されたオブジェクトまでの目標距離が投影距離と略一致するようなタイミングで、検出されたオブジェクトに対して投影光学系30によって虚像として関連情報像を付加する。関連情報は、例えばオブジェクトを囲むフレーム枠HW又はオブジェクトに隣接する指標である。この場合、フレーム枠HWや指標によって移動体や人の存在を知らせることができる。
本実施形態のような構成で、関連情報像の表示を高速に実施して、オブジェクトと同時、又は、略同時性を持って観察者が関連情報像を3次元的表示として見られるようにするためには、検知、認識・判断等の処理、表示のそれぞれを高速とする必要がある。それによって、実際のシーンに存在するオブジェクト又はターゲットに関連情報像を重ねるような表示を行う際に、表示の遅れ(レイテンシー)がなくなって、観察者又はドライバーUNが表示又は虚像を見る際の違和感が低減され、事故回避等の運転動作を迅速に行うことが可能となる。
図4は、具体的な表示状態を説明する斜視図である。観察者であるドライバーUNの前方は観察視野に相当する検出領域VFとなっている。検出領域VF内、つまり道路及びその周辺に、歩行者等である人のオブジェクトOB1や、自動車等である移動体のオブジェクトOB2が存在すると考える。この場合、主制御装置90は、画像表示装置100によって3次元的な投影像(虚像)IMを投影させ、近距離、中距離、及び遠距離に存在するオブジェクトOB1,OB2,OB3に対して関連情報像としてのフレーム枠HW1,HW2,HW3を付加する。この際、ドライバーUNから各オブジェクトOB1,OB2,OB3までの距離が異なるので、フレーム枠HW1,HW2,HW3を表示させる投影像IM1,IM2,IM3までの投影距離は、ドライバーUNから各オブジェクトOB1,OB2,OB3までの距離に相当するものとなっている。なお、投影像IM1,IM2,IM3の投影距離は、離散的であり、オブジェクトOB1,OB2,OB3までの現実の距離に対して正確に一致させることはできない。ただし、投影像IM1,IM2,IM3の投影距離と、オブジェクトOB1,OB2,OB3までの現実の距離との差が大きくなければ、ドライバーUNの視点が動いても視差が生じにくく、オブジェクトOB1,OB2,OB3とフレーム枠HW1,HW2,HW3との配置関係を略維持することができる。
図5Aは、図4に示す遠距離用の投影像IM3又はフレーム枠HW3を示し、図5Bに示す投影距離変更部62において位置P1に挿入される拡散スクリーン16a上に投影される強制中間像TI’に相当する。図5Cは、図4に示す中距離用の投影像IM2又はフレーム枠HW2を示し、図5Dに示す投影距離変更部62において位置P2に挿入される拡散スクリーン16b上に投影される強制中間像TI’に相当する。図5Eは、図4に示す近距離用の投影像IM1又はフレーム枠HW1を示し、図5Fに示す投影距離変更部62において位置P3に挿入される拡散スクリーン16c上に投影される強制中間像TI’に相当する。以上において、図5A、5C、及び5Eに示す投影像IM3,IM2,IM1の切り替えが非常に速ければ、観察者であるドライバーUNは、フレーム枠HW3,HW2,HW1を奥行きがある画像として同時に観察していると認識する。
図6を参照して、具体的な動作例について説明する。主制御装置90は、環境監視部72を利用してオブジェクトを検出し(ステップS11)、オブジェクトを検出した場合(ステップS11でY)、オブジェクトの3次元情報から奥行き方向の位置に対応する目標距離と、オブジェクトの広がり関する領域情報とを抽出する(ステップS12)。主制御装置90は、オブジェクトが複数検出され目標距離が複数の距離範囲に亘るか否かを判断する(ステップS13)。ここで、距離範囲とは、図4で説明した近距離、中距離、及び遠距離を意味し、複数の距離範囲に亘るとは、例えば近距離及び中距離にオブジェクトが存在することを意味する。複数の距離範囲に亘らない、つまり単一の距離範囲にオブジェクトが存在すると判断した場合(ステップS13でN)、主制御装置90は、検出された目標距離又は単一の距離範囲に基づいて表示制御部18及び投影距離変更部62を動作させ、スクリーン群16から目標距離に対応する拡散スクリーン16a〜16cを選択して光路上に配置する(ステップS14)。つまり、投影距離変更部62は、オブジェクト検出部としての環境監視部72によって目標距離が検出されたタイミングで拡散スクリーン16a〜16cのいずれかを選択することで、目標距離に近似する投影像(虚像)IMの投影距離を設定する。この場合、オブジェクトの存在にリアルタイムで対応して投影距離を設定することが容易になり、投影光学系30によって投影される表示像を生成する表示素子11を効率的に動作させることができる。主制御装置90は、ステップS12で抽出した目標距離と領域情報とに基づいて表示素子11の表示面11aに形成すべき表示像に相当する表示データを準備する(ステップS15)。この表示データは、検出したオブジェクトに対応する関連情報であり、例えばオブジェクトの存在を警告等するものである。表示データは、図4に例示するように、例えばオブジェクトOB1を囲むようなフレーム枠HW1とすることができる。その後、主制御装置90は、表示制御部18を介して表示素子11を動作させ、目標距離に対応する投影距離に虚像として関連情報像(フレーム枠HW1等)を投影させる(ステップS16)。以上で説明したステップS11でのオブジェクト検出から、ステップS16での表示素子11の表示動作までは高速で行われ、実質的にリアルタイムの動作ということができる。複数の距離範囲に亘る、つまり複数の距離範囲にオブジェクトが存在すると判断した場合(ステップS13でY)、主制御装置90は、検出された目標距離のうち例えば最も近い目標距離(n=1)を選択しこれに適合するように表示制御部18及び投影距離変更部62を動作させる。つまり、スクリーン群16から選択した目標距離に対応する拡散スクリーン16a〜16c、具体的には例えば近距離の拡散スクリーン16cを選択して光路上に配置する(ステップS21)。さらに、主制御装置90は、選択した目標距離やこれに対応する領域情報に基づいて表示素子11の表示面11aに形成すべき表示像に相当する表示データを準備する(ステップS22)。その後、主制御装置90は、表示制御部18を介して表示素子11を動作させ、選択した目標距離に対応する投影距離に虚像として関連情報像(フレーム枠HW1等)を投影させる(ステップS23)。次に、主制御装置90は、次の距離範囲又は目標距離があるか否か、つまりステップS12で抽出した複数の目標距離のうち表示が行われていないものが残っているか否かを判断する(ステップS24)。主制御装置90は、次の距離範囲又は目標距離があると判断した場合(ステップS24でY)、nを加算することで次に近い目標距離を選択し(ステップS25)、これに適合するように表示制御部18及び投影距離変更部62を動作させ、目標距離に対応する拡散スクリーン16a〜16cを選択して光路上に配置する(ステップS21)。以下、次の距離範囲に関して表示データを準備し(ステップS22)、表示素子11を動作させる(ステップS23)。以上の動作を繰り返すことで、目標距離の異なる複数のオブジェクトOB1,OB2,OB3に対して対応するフレーム枠HW1,HW2,HW3をそれぞれ付加することができる。
以上で説明した動作は単なる例示であり、様々な変形が可能である。以上では、例えば近距離、中距離、及び遠距離の3距離を投影距離とする場合を例示したが、4距離以上を投影距離とすることができる。
また、複数の目標距離がある場合、対応する複数の投影距離にフレーム枠HW1,HW2,HW3を同じ時間で表示する必要はなく、距離等の条件に応じて各目標距離又は投影距離に対する表示時間に軽重を持たせることができる。
また、環境監視部72によってオブジェクトを検出したか否かに関わらず、主制御装置90がランダムに拡散スクリーン16a〜16cを選択し、このように選択した拡散スクリーン16a〜16cの投影距離に対応するオブジェクトが存在すれば、存在するオブジェクトに対応する関連情報像の表示を表示素子11に行わせるといった動作も可能である。この場合も、関連情報像の表示を同じ時間とする必要はなく、距離等に応じて表示時間に軽重を持たせることができる。
以上で説明した第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置200によれば、像付加部(主制御装置90及び表示制御部18)が、検出されたオブジェクトOB1,OB2,OB3に対して、目標距離と投影距離とが略一致するように、投影光学系30によって虚像として関連情報像を付加するので、検出されたオブジェクトOB1,OB2,OB3に対応する関連情報像をオブジェクトOB1,OB2,OB3の奥行き方向の位置に対応した位置に付加することができる。なお、フレーム枠HW1,HW2,HW3は、奥行き方向に立体的に表示されており、観察者の視点がアイボックス内でずれてもフレーム枠HW1,HW2,HW3がオブジェクトOB1,OB2,OB3に対して位置ずれしにくくなっている。
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置について説明する。なお、第2実施形態のヘッドアップディスプレイ装置は第1実施形態のヘッドアップディスプレイ装置を変形したものであり、特に説明しない事項は第1実施形態等と同様である。
図7に示すように、第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の場合、フロントウインドウ8の運転席正面に設けた矩形の反射領域8dの内側にスクリーンとしての表示スクリーン520が貼り付けられている。
〔その他〕
以上では、具体的な実施形態としてのヘッドアップディスプレイ装置200について説明したが、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置は、上記のものには限られない。例えば、第1実施形態において、画像表示装置100の配置を上下反転させて、フロントウインドウ8の上部又はサンバイザー位置に表示スクリーン20を配置することもでき、この場合、描画ユニット10の斜め下方前方に表示スクリーン20が配置される。また、表示スクリーン20は、自動車の従来のミラーに対応する位置に配置してもよい。
上記実施形態において、表示スクリーン20の輪郭は、矩形に限らず、様々な形状とすることができる。
図2に示す結像光学系15や虚像形成光学系17は、単なる例示であり、これら結像光学系15及び虚像形成光学系17の光学的構成については適宜変更することができる。
図8Aに示すように、関連情報像RIとしてのフレーム枠HWは、オブジェクトOB全体を囲むものに限らず、複数の部分からなるものとすることができる。また、図8Bに示すように、関連情報像RIは、オブジェクトOBに隣接して表示される指標SHであってもよい。
以上では、環境監視部72によって車体2の前方に存在するオブジェクトOBを検出し、画像表示装置100にオブジェクトOBの配置に対応するフレーム枠HW1,HW2,HW3といった関連情報像を表示しているが、オブジェクトOBの有無に関わらず、通信ネットワークを利用して付随的な運転関連情報を取得し、このような運転関連情報を画像表示装置100に表示させることができる。例えば死角に存在する車、障害物等を警告するような表示も可能である。
図9は、図2に示す投影光学系30の変形例を説明する図である。結像光学系115は、表示素子11に形成された画像を拡大投影して中間像TIを形成する。結像光学系115は、光学素子として可動レンズ15fを含む。可動レンズ15fは、投影距離変更部62によって光軸AX方向に移動可能になっており、かかる可動レンズ(光学素子)15fの光軸AX方向への移動に伴って結像光学系115の焦点距離が増減し、結像又はフォーカス位置としての中間像TIの位置(表示素子11の表示が動作していなければ、必ずしも表示としての中間像は形成されないが、中間像が形成されるであろう位置も中間像の位置と呼ぶ)も光軸AX方向に移動させることができる。図9に示す光学系では、表示制御部18や主制御装置90の制御下で、光学素子である拡散スクリーン16a〜16cの配置に応じて結像光学系115の結像位置つまり中間像TIを調整している。つまり、拡散スクリーン16a〜16cは、可動レンズ15fと同期して動作し、移動する中間像TIの位置にこの中間像TIと同期して配置される。図9に示す投影光学系30は、中間像を一度結ぶだけの構成なので、移動レンズを少ない枚数で構成する等して移動機構の大型化を抑制すれば、光学系の小型化が図れる。
図9に示す投影光学系30は、結像位置又は中間像の位置を移動させて焦点位置を拡散スクリーンの位置と一致させることができるので、常に焦点が合った状態での表示が可能となり、より鮮明な像の表示が可能となる。また、明るさを確保するために結像光学系115のF値を小さくすることで焦点深度が浅くなった場合にも対応することができる。また、結像光学系115を可変焦点とする場合、可変焦点とする手段又は装置は、可動レンズ15fに限らず、液体等を封入した可変焦点レンズを用いることができる。

Claims (8)

  1. 虚像を投影する投影光学系と、
    検出領域内に存在するオブジェクトを検出するとともに、前記投影光学系から前記オブジェクトまでの距離を目標距離として検出するオブジェクト検出部と、
    前記投影光学系からの虚像の投影距離を非周期的に変化させる投影距離変更部と、
    前記検出されたオブジェクトに対して、前記目標距離と前記投影距離とが略一致するように、前記投影光学系によって虚像として関連情報像を付加する像付加部と、
    を備えるヘッドアップディスプレイ装置。
  2. 前記投影距離変更部は、前記投影距離を任意の順序で変化させる、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
  3. 前記投影距離変更部は、前記オブジェクト検出部によって前記目標距離が検出されたタイミングで、前記目標距離に近似する前記投影距離を設定する、請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
  4. 前記投影距離変更部は、前記投影光学系の光路上の異なる位置に択一的に挿入される複数の拡散スクリーンを有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
  5. 前記投影距離変更部は、前記複数の拡散スクリーンを前記投影光学系の光路上に個別に進退させる駆動機構を有する、請求項5に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
  6. 前記オブジェクト検出部は、前記オブジェクトとして、移動体及び人を検出する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
  7. 前記オブジェクト検出部は、3次元計測器を有する、請求項6に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
  8. 前記関連情報像は、前記オブジェクトを囲むフレーム枠又は前記オブジェクトに隣接する指標である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
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