以下、複数の実施形態を用いて、本発明のマウスピースを説明する。
なお、以下の説明において、「前方」および「後方」は、それぞれ、マウスピースを装着した使用者の前方に向かう方向(口腔内で舌体から見て口唇側に向かう方向)および後方に向かう方向(口腔内で舌体から見て喉側に向かう方向)を意味し、「左右方向」は、マウスピースを装着した使用者の上顎の正中を基準とした左右方向(具体的には上顎の正中からみて頬側に向かう方向)を意味し、「内側」および「外側」は、それぞれ、マウスピースを装着した使用者の体表から遠い側および体表に近い側を意味し、「開口方向」は、マウスピースを装着した使用者が開口するときに下顎が動く方向を意味する。
また、以下の説明において、マウスピースの「内側面」および「外側面」は、それぞれ、マウスピースを装着した使用者の閉口時に口腔に対する面および体表に対向する面を意味する。また、上顎マウスピースと下顎マウスピースとは物理的に容易に分離可能である必要はなく、相互に固定されていてもよい。
1.第1の側面に関するマウスピース
本発明の第1の側面に関するマウスピースは、装着時に歯ぎしりなどで下顎マウスピースが左右方向に変位したときに、位置調整部に応力が印加されないか、または位置調整部により小さな応力のみが印加される構成として、上記左右方向の変位による位置調整部の破損を抑制する。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るマウスピース1100は、その模式的な斜視図である図1および側面図である図2に示すように、対向する一対の上顎および下顎マウスピースを有し、上顎マウスピース1110は使用者の上顎に、下顎マウスピース1120は使用者の下顎に、それぞれ装着可能に構成されている。
上顎マウスピース1110は、図1Aに示すように、使用者の上顎の歯列に装着可能な歯列型取部1112が形成された上顎マウスピース本体部1114を有し、その外側面には左右一対のストッパ1130が設けられている。
下顎マウスピース1120は、図1Bに示すように、使用者の下顎の歯列に装着可能な歯列型取部1122が形成された下顎マウスピース本体部1124を有し、その外側面には前後方向に位置調整可能な左右一対の位置決め部材1140が設けられている。
位置決め部材1140は、図2に示すように、使用者が上顎マウスピース1110および下顎マウスピース1120を装着して咬合したとき(以下、単に「咬合時」ともいう。)に、位置決め部材1140の後方の面1142とストッパ1130の前方の面1132とが当接する位置に位置調整可能である。上記位置決め部材1140とストッパ1130との当接により、咬合時の下顎マウスピース1120の後方への変位が制限され、マウスピース1100を装着した使用者の下顎の後方への変位が制限される。これにより、マウスピース1100は、これを装着した使用者の下顎が後方に変位することによる気道の狭窄を防ぎ、睡眠時の呼吸停止または低呼吸を抑制可能である。
また、位置決め部材1140は、下顎マウスピース本体部1124の外側面に設けられた位置調整部1150によって前後方向に位置調整可能に構成される。位置決め部材1140は、位置調整部1150によってより後方に位置調整されることにより、咬合時に、下顎マウスピース1120を前方に移動させつつ、下顎マウスピース1120の後方への変位を制限できる。これにより、マウスピース1100は、これを装着した使用者の下顎を前方に移動させて上記使用者の気道をより大きく開放させ、睡眠時の呼吸停止または低呼吸をより効果的に抑制可能である。
位置調整部1150は、下顎マウスピース本体部1124の外側面に設けられた固定部1160にその一端が固定された、雄ねじを切ったねじ棒1152と、位置決め部材1140にその一端が固定された、雄ねじを切ったねじ棒1154と、ねじ棒1152および1154の他方の端部がそれぞれ螺合するねじ孔に挿入されたターンバックル部1156と、を有する。位置調整部1150は、ターンバックル部1156に設けられたピン孔に回転用ピンを差し込んでターンバックル部1156を回転させ、ターンバックル部1156とねじ棒1152および1154との螺合量を調整して、ねじ棒1152に固着された位置決め部材1140の位置を調整可能である。
位置決め部材1140は、下顎マウスピース本体部1124から上方に突出するウイング1144を有する。ウイング1144は、その後方の面(位置決め部材1140の、ストッパ1130と当接する後方の面1142でもある)が上記ストッパ1130の前方の面1132と略平行に形成されており、咬合時に、上顎マウスピース本体部1114の外側で上記ストッパ1130の前方の面1132と当接して、使用者の下顎の後方への変位を制限する。
ストッパ1130は、上顎マウスピースの外側面かつ咬合時に位置決め部材よりも後方となる位置に設けられて、咬合時に、その前方の面1132が位置決め部材1140の後方の面1142と当接して、下顎マウスピース1120の後方への変位を制限する。
ストッパ1130は、上顎マウスピース本体部1114から下方に延伸する延伸部1134を有する。延伸部1134は、咬合時に下顎マウスピース1120が左右方向へ変位するとき、下顎マウスピース1120と当接して上記左右方向への変位を規制する。
このとき、ウイング1144は、咬合時に下顎マウスピースが左右方向に変位して延伸部1134が下顎マウスピース1120に当接するときに、上顎マウスピース1110に当接しない位置に配置される。これにより、左右方向への変位による応力は、ストッパ1130の延伸部1134のみに印加されて、位置決め部材1140には印加されない。そのため、下顎マウスピースが左右方向に変位することによる位置調整部1150の破損が抑制可能である。
たとえば、ウイング1144は、その内外方向の厚みをストッパ1130および延伸部1134より薄く形成され、かつ、その外側面がストッパ1130およびその延伸部1134の外側面と略同一面になる位置に設けられる。これにより、ウイング1144と上顎マウスピース本体部1114との間の咬合時の間隔は、延伸部1134と下顎マウスピース本体部1124との間の咬合時の間隔よりも広くなる。
ストッパ1130およびウイング1144は、装着時に下顎マウスピース1120が開口方向に移動するときに、ウイング1144の移動をストッパ1130が制限しない形状を有する。具体的には、図3に示すように、ストッパ1130は、下顎マウスピース1120の開口方向への移動を容易にする傾斜部1136を有してもよい。また、ウイング1144は、下顎マウスピース1120の開口方向への移動を容易にする傾斜部1146を有してもよい。言い換えると、ストッパ1130は、その前方端部に、その上端がより前方に位置し、その下端がより後方に位置する後方への傾斜面を含んでもよく、ウイング1144は、その後方端部に、その上端がより前方に位置し、その下端がより後方に位置する後方への傾斜面を含んでもよい。なお、ウイング1144が有する傾斜部1146は、咬合時にはストッパ1130と当接する。
装着時の下顎マウスピース1120は、図3に示すように、開口方向に移動するときに、円弧状の軌道上を移動する。このような移動に対し、ストッパ1130の前方端部におよびウイング1144の後方端部が上記傾斜面を有することで、ウイング1144の移動をストッパ1130が制限せず、マウスピース1100を装着した使用者の開口が容易となる。
上記前方端部に傾斜面を有するストッパ1130は、その前方端部において、その上端がより前方に位置し、その後端がより後方に位置すればよい。このとき、ストッパ1130の前方端部の形状は、図4Aに示す切欠部、図4Bに示す平面傾斜部、図4Cに示す曲面部などとすることができる。
同様に、上記傾斜面であるウイング1144は、その後方端部において、その上端がより前方に位置し、その後端がより後方に位置すればよい。このとき、ウイング1144の後方端部の形状は、ストッパ1130の前方端部と同様に、切欠部、平面傾斜部、曲面部などとすることができる。
なお、ストッパ1130の前方端部は、延伸部1134においてより後方に傾斜している。また、延伸部1134の高さは、ストッパ1130の高さの半分以下であって、咬合時に延伸部1134の下端は下顎マウスピース本体部1124の下端面よりも上方に位置する。また、ストッパ1130の前方端部の下端1137と位置決め部材1140の後方端部の下端1147とは、咬合時に互いから離間していることが好ましい。また、咬合時に、咬合面より下方において、ストッパ1130の前方の面1132(傾斜部1136の前方の面)と位置決め部材1140の後方の面1142とは、互いから離間していることが好ましく、下顎マウスピース及び/又は上顎マウスピースの開口方向への移動時においても常に互いに離間していることがより好ましい。これにより、装着時の下顎マウスピース1120の開口方向への移動を延伸部1134が制限しにくくなり、下顎マウスピース1120の開口方向への移動がより容易になる。なお、上記延伸部1134の高さは、ストッパ1130の後端部における、上顎マウスピース本体部1114の下端から延伸する部分の高さを意味し、上記ストッパ1130の高さは、ストッパ1130の後端部の高さを意味する。
このとき、下顎マウスピース1120が左右方向に変位することによるストッパ1130の破損を抑制する観点からは、ストッパ1130の前方端部は、図4Aに示すような切欠部であるとき、その下端1137が鈍角を形成することが好ましい。また、同様にストッパ1130の破損を抑制する観点からは、ストッパ1130は、咬合時における下顎マウスピース本体部1124への側面方向からの投影面積が、3mm2以上であることが好ましい。上記投影面積の上限は特に限定されない。上記投影面積は、たとえば3mm2以上1000mm2以下であることが好ましく、3mm2以上500mm2以下であることがより好ましく、3mm2以上450mm2以下であることがさらに好ましく、50mm2以上450mm2以下であることが極めて好ましい。
また、このとき、ストッパ1130の下顎マウスピース本体部1124との当接部、および下顎マウスピース1120のストッパ1130との当接部、はいずれも、下顎マウスピース1120が前方へ移動する動きを制限しない形状および配置である。具体的には、マウスピース1100の模式的な平面図である図5(上顎マウスピースおよびストッパを破線で示し、下顎マウスピース、位置決め部材および固定部を実線で示す。)に示すように、下顎マウスピース本体部1124のうちストッパ1130との当接部1128は、略平面形状をしている。また、一対のストッパ1130の延伸部1134の、下顎マウスピース1120との一対の当接面1138は互いに略平行であり、下顎マウスピース本体部1124の左右の外側面に位置する、一対のストッパ1130の延伸部1134との当接部1128は互いに略平行である。
これにより、下顎マウスピース1120は、延伸部1134により移動を規制されることなく前方へ移動可能である。このとき、たとえば下顎マウスピース本体部1124は、その奥歯近辺の部分において、左右方向の厚みが前方(たとえば第一大臼歯(歯列6番)近傍の外側面)はより厚く、後方(たとえば第二大臼歯(歯列7番)または第三大臼歯(歯列8番)近傍の外側面)はより薄くなるように構成される。
ストッパ1130は、上顎マウスピース本体部1114に脱着可能に構成されてもよいが、上顎マウスピース本体部1114に接着されてもよい。ストッパ1130が上顎マウスピース本体部1114に接着されると、ストッパ1130が上顎マウスピース本体部に強力に固着されるため、左右方向への変位によってストッパ1130が下顎マウスピース本体部1124に当接したときの応力によるストッパ1130の破損を抑制可能である。
あるいは、ストッパ1130は、上顎マウスピース本体部1114の外側面に一体的に形成されてもよい。ストッパ1130が上顎マウスピース本体部1114と一体的に形成されると、ストッパ1130が上顎マウスピース本体部1114にさらに強力に固着されるため、左右方向への変位によってストッパ1130が下顎マウスピース本体部1124に当接したときの応力によるストッパ1130の破損をより効果的に抑制可能である。
固定部1160は、下顎マウスピース本体部1124に脱着可能に構成されてもよいが、下顎マウスピース本体部1124に接着されてもよい。固定部1160が下顎マウスピース本体部1124に接着されると、装着時に固定部1160および位置決め部材1140のずれが生じにくい。
本実施形態によれば、左右方向への変位時に従来は位置決め部材1140のウイング1144のみに印加されていた応力の大部分が、ストッパ1130に印加される。そのため、本実施形態のマウスピース1100は、左右方向への変位によって位置決め部材1140のウイング1144が上顎マウスピース本体部1114に当接したときの応力による位置調整部1150の破損を抑制可能である。
また、本実施形態によれば、ストッパ1130は下方に延伸する延伸部1134を有し、位置決め部材1140は上方に突出するウイング1144を有するため、装着時に使用者が開口などしたときでも、ストッパ1130の前方の面1132とウイング1144の後方の面とは互いに当接可能である。そのため、本実施形態のマウスピース1100は、装着時の開口などによるストッパ1130と位置決め部材1140との間のずれが生じにくく、これを装着した使用者の下顎の後方への変位をより効果的に抑制可能である。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係るマウスピース1200は、その模式的な側面図である図6に示すように、対向する一対の上顎および下顎マウスピースを有し、上顎マウスピース1210は使用者の上顎に、下顎マウスピース1220は使用者の下顎に、それぞれ装着可能に構成されている。また、下顎マウスピース本体部1224の外側面には前後方向に位置調整可能な左右一対の位置決め部材1240が、上顎マウスピース本体部1214の外側面には左右一対のストッパ1230が、それぞれ設けられている。なお、以下、第1の実施形態と共通する構成については説明を省略することがある。
なお、本実施形態においても、位置決め部材1240は、下顎マウスピース本体部1224の外側面に設けられた位置調整部1250によって前後方向に位置調整可能に構成される。位置決め部材1240は、位置調整部1250によってより後方に位置調整されることにより、咬合時に、下顎マウスピース1220を前方に移動させつつ、下顎マウスピース1220の後方への変位を制限できる。
一方で、本実施形態において、位置決め部材1240は、その高さが下顎マウスピース本体部1224の高さ以下である。
上記構成とすることで、位置決め部材1240は、左右方向への変位時に上顎マウスピース1210にほぼ当接しない。そのため、左右方向への変位による応力は位置決め部材1240には印加されにくく、上記応力による位置調整部1250の破損が抑制される。
一方で、ストッパ1230は、上顎マウスピース本体部1214から下方に延伸する延伸部1234を有する。延伸部1234は、位置決め部材1240の後方の面1242と当接して、咬合時に下顎マウスピース1220の後方への変位を制限する。
そのため、ストッパ1230は、延伸部1234が位置決め部材1240と当接することで咬合時の下顎マウスピース1220の後方への変位を制限し、マウスピース1200を装着した使用者の下顎の後方への変位を制限可能である。これにより、マウスピース1200は、これを装着した使用者の下顎が後方に変位することによる気道の狭窄を防ぎ、睡眠時の呼吸停止または低呼吸を抑制可能である。
このとき、ストッパ1230は、装着時に下顎マウスピース1220が開口方向に移動するときに、位置決め部材1240の移動をストッパ1230が制限しない形状を有する。具体的には、ストッパ1230は、下顎マウスピース1220の開口方向への移動を容易にする傾斜部1236を有してもよい。言い換えると、ストッパ1230の前方端部は、その上端がより前方に位置し、その下端がより後方に位置する後方への傾斜面を有してもよい。
上記前方端部に傾斜面を有するストッパ1230は、その前方端部において、その上端がより前方に位置し、その後端がより後方に位置すればよい。このとき、ストッパ1230の前方端部の形状は、第1の実施形態と同様に、切欠部、平面傾斜部、曲面部などとすることができる。
また、このときも、ストッパ1230の前方端部は、延伸部1234においてより後方に傾斜している。また、延伸部1234の高さは、ストッパ1230の高さの半分以下であって、咬合時に延伸部1234の下端は下顎マウスピース本体部1224の下端面よりも上方に位置する。
また、ストッパ1230の前方端部の上端と位置決め部材1240の後方端部の上端とは、咬合時に互いから離間していることが好ましい。また、咬合時に、咬合面より下方において、ストッパ1230の前方の面(傾斜部1236の前方の面)と位置決め部材1240の後方の面1242とは、互いから離間していることが好ましく、下顎マウスピース及び/又は上顎マウスピースの開口方向への移動時においても常に互いに離間していることがより好ましい。これにより、装着時の下顎マウスピース1220の開口方向への移動を延伸部1234が制限しにくくなり、下顎マウスピース1220の開口方向への移動がより容易になる。
このとき、下顎マウスピース1220が左右方向に変位することによるストッパ1230の破損を抑制する観点からは、ストッパ1230の前方端部は、切欠部であるとき、その下端が鈍角を形成することが好ましい。また、ストッパ1230は、咬合時における下顎マウスピース本体部1224への側面方向からの投影面積が、3mm2以上であることが好ましい。上記投影面積の上限は特に限定されない。上記投影面積は、たとえば3mm2以上1000mm2以下であることが好ましく、3mm2以上500mm2以下であることがより好ましく、3mm2以上450mm2以下であることがさらに好ましく、50mm2以上450mm2以下であることが極めて好ましい。
また、このときも、ストッパ1230の下顎マウスピース本体部1224との当接部、および下顎マウスピース1220のストッパ1230との当接部、はいずれも、下顎マウスピース1220が前方へ移動する動きを制限しない形状および配置である。具体的には、下顎マウスピース本体部1224のうちストッパ1230との当接部は、略平面形状をしている。また、一対のストッパ1230の延伸部1234の、下顎マウスピース1220との一対の当接面は互いに略平行であり、下顎マウスピース本体部1224の左右の外側面に位置する、一対のストッパ1230の延伸部1234との当接部は互いに略平行である。
また、このときも、ストッパ1230は、上顎マウスピース本体部1214に脱着可能に構成されてもよいが、上顎マウスピース本体部1214に接着されてもよい。あるいは、ストッパ1230は、上顎マウスピース本体部1214の外側面に一体的に形成されてもよい。
また、このときも、固定部1260は、下顎マウスピース本体部1224に脱着可能に構成されてもよいが、下顎マウスピース本体部1224に接着されてもよい。
なお、下顎マウスピースの高さは場所によって異なっていてもよい、このとき、本実施形態では、位置決め部材1240は、その高さが、位置決め部材1240が設けられた部位における下顎マウスピース本体部1224の高さ以下であればよい。
位置決め部材1240は、その高さが下顎マウスピース本体部1224よりも高い部位を部分的に有していてもよいが、その高さが常に下顎マウスピース本体部1224の高さ以下であることが好ましい。
また、位置決め部材1240は、その後方の面に傾斜面を設けて、位置決め部材1240と延伸部1234との当接面を互いに略平行としてもよい。
本実施形態によれば、左右方向への変位時に位置決め部材1240には応力が印加されにくい。そのため、本実施形態のマウスピース1200は、左右方向への変位による位置調整部1250の破損を抑制可能である。
また、本実施形態によれば、位置決め部材1240は、下顎マウスピース1220から上方に突出するウイングを有さないため、装着時にウイングが内頬に当接することによる使用者の違和感が生じにくい。
また、本実施形態によれば、位置決め部材1240は、下顎マウスピース1220から上方に突出するウイングを有さないため、下顎マウスピース1220の開口方向への移動時に位置決め部材1240とストッパ1230とが当接しにくい。そのため、本実施形態のマウスピース1200は、下顎マウスピース1220の開口方向への移動がより容易である。
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係るマウスピース1300は、その模式的な側面図である図7に示すように、対向する一対の上顎および下顎マウスピースを有し、上顎マウスピース1310は使用者の上顎に、下顎マウスピース1320は使用者の下顎に、それぞれ装着可能に構成されている。また、下顎マウスピース本体部1324の外側面には前後方向に位置調整可能な左右一対の位置決め部材1340が、上顎マウスピース本体部1314の外側面には左右一対のストッパ1330が、それぞれ設けられている。なお、以下、第1の実施形態と共通する構成については説明を省略することがある。
なお、本実施形態においても、位置決め部材1340は、下顎マウスピース本体部1324の外側面に設けられた位置調整部1350によって前後方向に位置調整可能に構成される。位置決め部材1340は、位置調整部1350によってより後方に位置調整されることにより、咬合時に、下顎マウスピース1320を前方に移動させつつ、下顎マウスピース1320の後方への変位を制限できる。
また、本実施形態においても、位置決め部材1340は、下顎マウスピース本体部1324から上方に突出するウイング1344を有する。ウイング1344は、ストッパ1330と当接するその後方の面がストッパ1330の前方の面と略平行に形成されており、咬合時に、上顎マウスピース本体部1314の外側で上記ストッパ1330の前方の面と当接して、使用者の下顎の後方への変位を制限する。
一方で、本実施形態において、固定部1360は、下顎マウスピース1320の上方に延伸する突出部1362を有する。突出部1362は、咬合時に下顎マウスピース1320が左右方向へ変位するとき、上顎マウスピース1310と当接して上記左右方向への変位を規制する。
このとき、ウイング1344は、咬合時に下顎マウスピースが左右方向に変位して突出部1362が上顎マウスピース1310に当接するときに、上顎マウスピース1310に当接しにくい位置に配置される。これにより、左右方向への変位による応力の大部分は、固定部1360の突出部1362に印加されるが、位置決め部材1340には印加されにくい。そのため、下顎マウスピースが左右方向に変位することによる位置調整部1350の破損が抑制可能である。
たとえば、ウイング1344は、その内外方向の厚みを固定部1360の突出部1362より薄く形成され、かつ、その外側面が固定部1360およびその突出部1362の外側面と略同一面になる位置に設けられる。これにより、ウイング1344と上顎マウスピース本体部1314との間の咬合時の間隔は、突出部1362と上顎マウスピース本体部1314との間の咬合時の間隔よりも広くなる。
突出部1362は、固定部1360の外側面のうちより後方に設けられることが好ましく、その後端(たとえば、第一小臼歯(歯列4番)の外側面)に設けられることが好ましい。ヒトの内頬の皮膚は、より後方ほど伸縮しやすい。そのため、突出部1362がより後方に設けられるほど、マウスピース1300を装着した使用者の内頬のうち、皮膚がより伸縮しやすい部位に突出部1362が設けられることになるため、マウスピース1300を装着した使用者の装着感が向上する。
また、突出部1362は、その内外方向の厚みが固定部1360より薄く形成され、かつ、その外側面が固定部1360の外側面より内側となる位置に設けられることが好ましい。このようにすることで、装着時および開口時に突出部1362が内頬に当接することによる使用者の違和感がより生じにくい。
なお、第3の実施形態においても、ストッパ1330は、上顎マウスピース本体部1314に脱着可能に構成されてもよいが、上顎マウスピース本体部1314に接着されてもよい。あるいは、ストッパ1330は、上顎マウスピース本体部1314の外側面に一体的に形成されてもよい。
また、第3の実施形態においても、固定部1360は、下顎マウスピース本体部1324に脱着可能に構成されてもよいが、下顎マウスピース本体部1324に接着されてもよい。
本実施形態によれば、左右方向への変位時に位置決め部材1340のウイング1344のみに印加されていた応力の大部分が、固定部1360に印加される。そのため、本実施形態のマウスピース1300は、左右方向への変位によって位置決め部材1340のウイング1344が上顎マウスピース本体部1314に当接したときの応力による位置調整部1350の破損を抑制可能である。
[第3の実施形態の変形例]
第3の実施形態において、第1の実施形態と同様に、ストッパ1330は延伸部(図7では不図示)を有していてもよい。これにより、左右方向への変位による応力は、固定部1360の突出部1362のみならずストッパ1330の延伸部にも分散されるため、位置調整部1350へはより小さい応力のみが印加され、左右方向への変位による位置調整部1350の破損がより効果的に抑制可能である。
このとき、第1の実施形態と同様に、ストッパ1330は、装着時に下顎マウスピース1320が開口方向に移動するときに、位置決め部材1340の移動をストッパ1330が制限しない形状を有する。具体的には、ストッパ1330は、下顎マウスピース1320の開口方向への移動を容易にする傾斜部を有してもよい。言い換えると、ストッパ1330の前方端部は、その上端がより前方に位置し、その下端がより後方に位置する後方への傾斜面を有してもよい。
上記前方端部に傾斜面を有するストッパ1330は、その前方端部において、その上端がより前方に位置し、その後端がより後方に位置すればよい。このとき、ストッパ1330の前方端部の形状は、第1の実施形態と同様に、切欠部、平面傾斜部、曲面部などとすることができる。
このときも、ストッパ1330の前方端部は、上記延伸部においてより後方に傾斜してもよい。また、上記延伸部の高さは、ストッパ1330の高さの半分以下であって、咬合時に上記延伸部の下端は下顎マウスピース本体部1324の下端面よりも上方に位置してもよい。また、ストッパ1330の下端と位置決め部材1340の下端とは、咬合時に互いから離間していることが好ましい。また、ストッパ1330の前方の面と位置決め部材1340の後方の面とは、咬合時に、咬合面より下方において互いから離間していることが好ましく、下顎マウスピース及び/又は上顎マウスピースの開口方向への移動時においても常に互いに離間していることがより好ましい。
このときも、下顎マウスピース1320が左右方向に変位することによるストッパ1330の破損を抑制する観点からは、ストッパ1330の前方端部は、切欠部であるとき、その下端が鈍角を形成することが好ましい。また、ストッパ1330は、咬合時における下顎マウスピース本体部1324への側面方向からの投影面積が、3mm2以上であることが好ましい。上記投影面積の上限は特に限定されない。上記投影面積は、たとえば3mm2以上1000mm2以下であることが好ましく、3mm2以上500mm2以下であることがより好ましく、3mm2以上450mm2以下であることがさらに好ましく、50mm2以上450mm2以下であることが極めて好ましい。
このときも、ストッパ1330の下顎マウスピース本体部1324との当接部、および下顎マウスピース1320のストッパ1330との当接部、はいずれも、下顎マウスピース1320が前方へ移動する動きを制限しない形状および配置であってもよい。具体的には、下顎マウスピース本体部1324のうちストッパ1330との当接部は、略平面形状をしてもよい。また、一対のストッパ1330の上記延伸部の、下顎マウスピース1320との一対の当接面は互いに略平行であり、下顎マウスピース本体部1324の左右の外側面に位置する、一対のストッパ1330の上記延伸部との当接部は互いに略平行であってもよい。
また、このときも、第2の実施形態と同様に、位置決め部材1340は、その高さが下顎マウスピース本体部1324の高さ以下であってもよい。
[第1の実施形態〜第3の実施形態の変形例]
なお、第1の実施形態〜第3の実施形態はそれぞれ本発明の第1の側面の一例を示すものであり、本発明の第1の側面は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の第1の側面の思想の範囲内において、他の種々多様な実施形態も可能であることは言うまでもない。
たとえば、第1〜第3の実施形態では、位置決め部材が下顎マウスピースに設けられ、ストッパが上顎マウスピースに設けられているが、位置決め部材が上顎マウスピースに設けられ、ストッパが下顎マウスピースに設けられていてもよい。このとき、当然ながら、固定部および位置調整部も上顎マウスピースに設けられる。また、このとき、位置決め部材、固定部および位置調整部はより後方に配置され、ストッパはより前方に配置され、位置決め部材の後方の面および後方端部はその前方の面および前方端部に、ストッパの前方の面および前方端部はその後方の面および後方端部に、それぞれ読み替えられる。
また、第1〜第3の実施形態では、位置決め部材およびストッパは下顎または上顎マウスピースの外側面に設けられているが、位置決め部材およびストッパは下顎または上顎マウスピースの内側面に設けられていてもよい。このとき、当然ながら、固定部および位置調整部も下顎または上顎マウスピースの内側面に設けられる。
また、第1〜第3の実施形態では、上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部には、歯列に装着可能な歯列型取部が形成されている。しかし上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部は、歯列が収まる形状であれば歯列型でなくてもよいし、上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部の一部だけ歯列型取部にしてもよい。
また、上顎および下顎マウスピースは複数の材料から構成されていてもよく、有機物で構成される部分と無機物で構成される部分との組み合わせで作られていても良い。
また、第1〜第3の実施形態では、位置調整部は、ターンバックル機構を用いて、ターンバックル部と2本のねじ棒との間の螺合量によって位置決め部材の位置を調整しているが、位置調整部は、雄ねじと雌ねじとの螺合量を調整して位置決め部材の位置を調整可能なねじジャック機構を用いてもよい。また、位置調整部は、ラックの回転量を調整してラックに固着された位置決め部材の位置を調整可能なラックジャッキ機構を用いて、歯車によって位置決め部材を移動させつつ、ねじで位置決め部材を固定してもよい。位置調整部は、位置決め部材の位置を移動させ、かつ調整された位置で固定できる限りにおいて、他の機構により位置決め部材の位置を調整してもよい。
また、第1〜第3の実施形態では、ストッパは、その前方端部が延伸部においてより後方に傾斜している。しかし、ストッパは、延伸部より上方からより後方に傾斜しはじめていてもよいし、延伸部の途中からより後方に傾斜してもよい。
また、第1〜第3の実施形態では、延伸部と下顎マウスピースとの間および突出部と上顎マウスピースとの間には、それぞれ隙間を形成して、マウスピースを装着した使用者の上顎および下顎が左右方向へ移動することを許容している。しかし、上記部材間に隙間を設けずに、マウスピースを装着した使用者の上顎および下顎が左右方向へ移動できない構成としてもよい。
また、第1の実施形態では、ウイングは、咬合時に下顎マウスピースが左右方向に変位して延伸部が下顎マウスピースに当接するときに、上顎マウスピースに当接しない位置に配置されている。また、また、第3の実施形態では、ウイングは、咬合時に下顎マウスピースが左右方向に変位して突出部が上顎マウスピースに当接するときに、上顎マウスピースに当接しない位置に配置されている。しかし、ウイングは、上記延伸部が下顎マウスピースに当接するとき、または突出部が上顎マウスピースに当接するときに、同時に上顎マウスピースに当接してもよい。
これにより、左右方向への変位による応力は、位置決め部材のウイングのみならず、ストッパの延伸部または固定部の突出部にも印加されて、ウイングと延伸部または突出部との双方に分散される。そのため、ウイングにはより小さな応力のみが印加され、第2種てこの力点であるウイングに印加された応力が作用点である位置調整部でより大きな応力になることによる、位置調整部の破損が抑制される。
また、これにより、下顎マウスピースの左右方向への変位を、ウイングと延伸部または突出部で同時に規制する。そのため、マウスピースを装着した使用者の歯ぎしりなどによる上顎マウスピースと下顎マウスピースとのずれがより効果的に抑制され、より装着感が高くなる。
また、第1の実施形態では、左右方向への変位による応力をストッパの延伸部のみに印加する場合に、位置決め部材のウイングの内外方向の厚みをストッパの延伸部より薄くしている。また、第3の実施形態では、左右方向への変位による応力を固定部の突出部のみに印加する場合に、位置決め部材のウイングの内外方向の厚みを固定部の突出部より薄くしている。しかし、位置決め部材をストッパまたは固定部より外側に配置して、下顎マウスピースが左右方向に変位するときにウイングが上顎マウスピースに当接しないようにしてもよい。このとき、位置決め部材およびそのウイングの外側面は、ストッパおよびその延伸部の外側面または固定部およびその突出部の外側面と略同一面にならなくてもよい。
[第1の側面に関するマウスピースの構成例]
本発明の第1の側面によれば、
対向する一対の上顎および下顎マウスピースと、
前記上顎又は下顎マウスピースの一方のマウスピースに設けられ、前後方向に位置調整可能な一対の位置決め部材と、
前記上顎又は下顎マウスピースの他方のマウスピースに設けられ、前記位置決め部材に当接して前記下顎マウスピースの後方への変位を規制すると共に、前記一方のマウスピースに当接して前記上顎マウスピースと下顎マウスピースとの左右方向の変位を規制する一対のストッパと、
を有するマウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースと上顎マウスピースとの咬合時の位置を調整するための位置調整部が、咬合時の左右方向の変位によっても壊れにくい。
また、本発明の第1の側面によれば、
前記位置決め部材は、前記他方のマウスピースの外側で前記ストッパに当接するウイングを有する、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、上顎マウスピース本体部の外側で上記ストッパとウイングとが当接して、使用者の下顎の後方への変位を制限可能である。
また、本発明の第1の側面によれば、
前記ウイングは、前記ストッパが左右方向の移動により前記一方のマウスピースに当接するとき、前記他方のマウスピースに当接しない位置に配置される、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、左右方向への変位による応力が、ストッパの延伸部のみに印加されて、位置決め部材には印加されない。そのため、当該マウスピースは、下顎マウスピースが左右方向に変位することによる位置調整部の破損が抑制可能である。
また、本発明の第1の側面によれば、
前記ウイングは、咬合時は前記ストッパに当接し、かつ、前記下顎マウスピースの開口方向への移動を容易にする傾斜部を有する、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、これを装着した使用者の開口を容易にする。
また、本発明の第1の側面によれば、
前記位置決め部材は、その高さが前記一方のマウスピースの高さ以下である、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、位置決め部材が、左右方向への変位時に上顎マウスピースにほぼ当接しない。そのため、左右方向への変位による応力は位置決め部材には印加されにくく、上記応力による位置調整部の破損が抑制される。
また、本発明の第1の側面によれば、
前記ストッパは、前記下顎マウスピースの開口方向への移動を容易にする傾斜部を有する、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、これを装着した使用者の開口を容易にする。
また、本発明の第1の側面によれば、
前記ストッパは、前記一方のマウスピースと当接し、その高さが前記ストッパの高さの半分以下である延伸部を有する、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、延伸部が一方のマウスピースと当接して、左右方向への変位による応力が延伸部に印加される。これにより、左右方向への変位による応力は位置決め部材にはさほど印加されず、下顎マウスピースが左右方向に変位することによる位置調整部の破損が抑制可能である。
また、本発明の第1の側面によれば、前記ストッパおよび前記位置決め部材は、咬合時に、それぞれの前記一方のマウスピース側の端部が互いから離間する形状を有する、上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースの開口方向への移動がより容易になる。
また、本発明の第1の側面によれば、前記ストッパおよび前記位置決め部材は、咬合時および前記下顎マウスピースの開口方向への移動時に、前記上顎および下顎マウスピースの咬合面より前記一方のマウスピース側において、対向する面が互いから離間する形状を有する、上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースの開口方向への移動がより容易になる。
また、本発明の第1の側面によれば、前記ストッパは、前方端部の前記一方のマウスピース側の端部の下端が鈍角を形成する形状を有する、上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースが左右方向に変位することによるストッパの破損が抑制される。
また、本発明の第1の側面によれば、前記ストッパは、咬合時の前記一方のマウスピースへの側面方向からの投影面積が、3mm2以上である形状を有する、上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースが左右方向に変位することによるストッパの破損が抑制される。
また、本発明の第1の側面によれば、
前記一方のマウスピースの前記ストッパとの当接部は略平面形状である、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースが、延伸部により移動を規制されることなく前方へ移動可能である。
また、本発明の第1の側面によれば、
前記一対のストッパの前記一方のマウスピースとの当接面は、互いに略平行であり、
前記一方のマウスピースの前記一対のストッパとの当接面は、互いに略平行である、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースが、延伸部により移動を規制されることなく前方へ移動可能である。
また、本発明の第1の側面によれば、
前記位置決め部材は、下顎マウスピースに設けられる、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、これを装着した使用者の内頬のうち、皮膚がより伸縮しやすいより後方の部位に突出部が設けられることになるため、マウスピースを装着した使用者の装着感が向上する。
また、本発明の第1の側面によれば、
前記ストッパは、前記上顎または下顎マウスピースに接着される、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、様々な形状を有するストッパの製造が容易である。
また、本発明の第1の側面によれば、
前記ストッパは、前記上顎または下顎マウスピースと一体的に形成される、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、製造が容易である。
2.第2の側面に関するマウスピース
本発明の第2の側面に関するマウスピースは、第2種てこの作用点となる上記位置調整部に印加される応力を、マウスピースの前後方向に分散させて、上記左右方向の変位による位置調整部の破損を抑制する。
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係るマウスピース2100は、その模式的な斜視図である図8および側面図である図9に示すように、対向する一対の上顎および下顎マウスピースを有し、上顎マウスピース2110は使用者の上顎に、下顎マウスピース2120は使用者の下顎に、それぞれ装着可能に構成されている。
上顎マウスピース2110は、図8Aに示すように、使用者の上顎の歯列に装着可能な歯列型取部2112が形成された上顎マウスピース本体部2114を有し、その外側面には左右一対のストッパ2130が設けられている。
下顎マウスピース2120は、図8Bに示すように、使用者の下顎の歯列に装着可能な歯列型取部2122が形成された下顎マウスピース本体部2124を有し、その外側面には前後方向に位置調整可能な左右一対の位置決め部材2140が設けられている。
ストッパ2130は、上顎マウスピースの外側面、かつ使用者が上顎マウスピース2110および下顎マウスピース2120を装着して咬合したときに位置決め部材よりも後方となる位置に設けられる。
ストッパ2130は、その高さが上顎マウスピース2110の高さ以下である。なお、上顎マウスピース2110の高さは場所によって異なっていてもよい。このとき、ストッパ2130は、その高さが、ストッパ2130が設けられた部位における上顎マウスピース本体部2114の高さ以下であればよい。
位置決め部材2140は、下顎マウスピース本体部2124の外側面に設けられた位置調整部2150によって、下顎マウスピース本体部2124の外側面に設けられた前後一対のガイド部2160に沿って前後方向に位置調整可能に構成される。位置決め部材2140は、咬合時に、その後方の面2140aがストッパ2130の前方の面2130aと当接して、下顎マウスピース2120の後方への変位を制限する。
このとき、位置決め部材2140は、図9に示すように、咬合時に位置決め部材2140の後方の面2140aとストッパ2130の前方の面2130aとが当接する位置に、位置調整可能である。上記位置決め部材2140とストッパ2130との当接により、咬合時の下顎マウスピース2120の後方への変位が制限され、マウスピース2100を装着した使用者の下顎の後方への変位が制限される。これにより、位置決め部材2140は、マウスピース2100を装着した使用者の下顎が後方に変位することによる気道の狭窄を防ぎ、睡眠時の呼吸停止または低呼吸を抑制可能である。
また、位置決め部材2140は、より後方に位置調整されることにより、咬合時に、下顎マウスピース2120を前方に移動させつつ、下顎マウスピース2120の後方への変位を制限できる。これにより、位置決め部材2140は、マウスピース2100を装着した使用者の下顎を前方に移動させて上記使用者の気道をより大きく開放させ、睡眠時の呼吸停止または低呼吸をより効果的に抑制可能である。
位置決め部材2140は、下顎マウスピース本体部2124から上方に突出するウイング2144を有する。ウイング2144は、その後方の面(位置決め部材2140の、ストッパ2130と当接する後方の面2140aでもある)が上記ストッパ2130の前方の面2130aと略平行に形成されており、咬合時に、上顎マウスピース本体部2114の外側で上記ストッパ2130の前方の面2130aと当接して、使用者の下顎の後方への変位を制限する。
位置調整部2150は、下顎マウスピース本体部2124の外側面に設けられた一対のガイド部2160のうち一方(前方固定部2162)にその一端が固定された、雄ねじを切ったねじ棒2152と、位置決め部材2140にその一端が固定された、雄ねじを切ったねじ棒2154と、ねじ棒2152および2154の他方の端部がそれぞれ螺合するねじ孔に挿入されたターンバックル部2156と、を有する。位置調整部2150は、ターンバックル部2156に設けられたピン孔に回転用ピンを差し込んでターンバックル部2156を回転させ、ターンバックル部2156とねじ棒2152および2154との螺合量を調整して、ねじ棒2152に固着された位置決め部材2140の位置を調整可能である。
ガイド部2160は、下顎マウスピース本体部2124の外側面に設けられた前後一対の前方固定部2162および後方固定部2164と、前方固定部2162および後方固定部2164にその両端が支持された2本の支持バー2166および2168と、を有する。
前方固定部2162および後方固定部2164は、下顎マウスピース本体部2124の外側面に接着され、支持バー2166および2168の両端を支持する。前方固定部2162および後方固定部2164は、側面方向からマウスピース2100を見たときに前後一対に設けられていればよく、たとえば、図8Bに示すように、左右の前方固定部2162は歯列前方で連結されて一体となっていてもよい。
支持バー2166および2168は、位置決め部材2140の内部に前後方向に設けられた貫通孔の中を貫通して、位置決め部材2140を移動可能に支持する。これにより、下顎マウスピースが左右方向に変位したときに第2種てこの力点であるウイング2144に印加された応力は、作用点であるガイド部2160において、支持バー2166および2168によって位置決め部材2140と後方固定部2164との間にも分散され、位置決め部材2140と前方固定部2162との間のみに印加されることはない。
なお、上記応力をより幅広く分散させて、位置調整部2150の破損をより抑制する観点からは、前方固定部2162と後方固定部2164との間隔はより広いことが好ましく、たとえば、後方固定部2164は下顎マウスピース本体部2124の後端に配置されることが好ましい。
ストッパ2130およびウイング2144は、装着時に下顎マウスピース2120が開口方向に移動するときに、ウイング2144の移動をストッパ2130が制限しない形状を有する。具体的には、ストッパ2130は、下顎マウスピース2120の開口方向への移動を容易にする傾斜部を有してもよい。また、ウイング2144は、その後端面に、下顎マウスピース2120の開口方向への移動を容易にする傾斜部を有してもよい。言い換えると、ストッパ2130は、その前方端部に、その上端がより前方に位置し、その下端がより後方に位置する後方への傾斜面を含んでもよく、ウイング2144は、その後方端部に、その上端がより前方に位置し、その下端がより後方に位置する後方への傾斜面を含んでもよい。なお、ストッパ2130が有する傾斜部とウイング2144が有する傾斜部とは、咬合時には互いに当接する。
装着時の下顎マウスピース2120は、開口方向に移動するときに、円弧状の軌道上を移動する。このような移動に対し、ストッパ2130の前方端部およびウイング2144の後方端部が上記傾斜面を有することで、ウイング2144の移動をストッパ2130が制限せず、マウスピース2100を装着した使用者の開口が容易となる。
本実施形態によれば、下顎マウスピースが左右方向に変位したときに第2種てこの力点であるウイング2144に印加された応力は、作用点であるガイド部2160において、支持バー2166および2168によって前方固定部2162と後方固定部2164との間に分散する。これにより、従来は位置決め部材2140と前方固定部2162との間のみに印加されていた応力が、位置決め部材2140と後方固定部2164との間にも分散されるため、下顎マウスピースが左右方向に変位しても位置調整部2150は破損しにくい。
また、本実施形態によれば、皮膚がより伸縮しやすい下顎側の頬にガイド部が当接するため、マウスピース2100を装着した使用者の装着感がより良好である。
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態に係るマウスピース2200は、その模式的な側面図である図10に示すように、対向する一対の上顎および下顎マウスピースを有し、上顎マウスピース2210は使用者の上顎に、下顎マウスピース2220は使用者の下顎に、それぞれ装着可能に構成されている。なお、以下、第4の実施形態と共通する構成については説明を省略することがある。
本実施形態においては、上顎マウスピース本体部2214の外側面には前後方向に位置調整可能な左右一対の位置決め部材2240が、下顎マウスピース本体部2224の外側面には左右一対のストッパ2230が、それぞれ設けられている。
ストッパ2230は、下顎マウスピースの外側面かつ咬合時に位置決め部材よりも前方となる位置に設けられて、咬合時に、その後方の面が位置決め部材2240の前方の面と当接して、下顎マウスピース2220の後方への変位を制限する。
ストッパ2230は、その高さが下顎マウスピース2220の高さ以下である。なお、下顎マウスピース2220の高さは場所によって異なっていてもよい。このとき、ストッパ2230は、その高さが、ストッパ2230が設けられた部位における上顎マウスピース本体部2214の高さ以下であればよい。
位置決め部材2240は、下顎マウスピース本体部2224の外側面に設けられた位置調整部2250によって、下顎マウスピース本体部2224の外側面に設けられた前後一対のガイド部2260に沿って前後方向に位置調整可能に構成される。
このとき、位置決め部材2240は、図10に示すように、咬合時に位置決め部材2240の前方の面とストッパ2230の後方の面とが当接する位置に位置調整可能である。上記位置決め部材2240とストッパ2230との当接により、咬合時の下顎マウスピース2220の後方への変位が制限され、マウスピース2200を装着した使用者の下顎の後方への変位が制限される。
また、位置決め部材2240は、より前方に位置調整されることにより、咬合時に、下顎マウスピース2220を前方に移動させつつ、下顎マウスピース2220の後方への変位を制限できる。
また、位置決め部材2240は、上顎マウスピース本体部2214から下方に突出するウイング2244を有する。ウイング2244は、その前方の面(位置決め部材2240の、ストッパ2230と当接する前方の面でもある)が上記ストッパ2230の後方の面と略平行に形成されており、咬合時に、下顎マウスピース本体部2224の外側で上記ストッパ2230の後方の面と当接して、使用者の下顎の後方への変位を制限する。
位置調整部2250は、上顎マウスピース本体部2214の外側面に設けられた一対のガイド部2260の一方(前方固定部2262)にその一端が固定された、雄ねじを切ったねじ棒2252と、位置決め部材2240にその一端が固定された、雄ねじを切ったねじ棒2254と、ねじ棒2252および2254の他方の端部がそれぞれ螺合するねじ孔に挿入されたターンバックル部2256と、を有する。
ガイド部2260は、上顎マウスピース本体部2214の外側面に設けられた前後一対の前方固定部2262および後方固定部2264と、前方固定部2262および後方固定部2264にその両端が支持された2本の支持バー2266および2268と、を有する。
前方固定部2262および後方固定部2264は、上顎マウスピース本体部2214の外側面に接着され、支持バー2266および2268の両端を支持する。
支持バー2266および2268は、位置決め部材2240の内部に前後方向に設けられた貫通孔の中を貫通して、位置決め部材2240を移動可能に支持する。これにより、下顎マウスピースが左右方向に変位したときに第2種てこの力点であるウイング2244に印加された応力は、作用点であるガイド部2260において、支持バー2266および2268によって、位置決め部材2240と前方固定部2262との間のみに印加されることなく、位置決め部材2240と後方固定部2264との間にも分散する。
なお、上記応力をより幅広く分散させて、位置調整部2250の破損をより抑制する観点からは、前方固定部2262と後方固定部2264との間隔はより広いことが好ましく、たとえば、後方固定部2264は上顎マウスピース本体部2214の後端に配置されることが好ましい。
ストッパ2230およびウイング2244は、装着時に下顎マウスピース2220が開口方向に移動するときに、ウイング2244の移動をストッパ2230が制限しない形状を有する。具体的には、ストッパ2230は、下顎マウスピース2220の開口方向への移動を容易にする傾斜部を有してもよい。また、ウイング2244は、その前端面に、下顎マウスピース2220の開口方向への移動を容易にする傾斜部を有してもよい。言い換えると、ストッパ2230は、その後方端部に、その上端がより前方に位置し、その下端がより後方に位置する後方への傾斜面を含んでもよく、ウイング2244は、その前方端部に、その上端がより前方に位置し、その下端がより後方に位置する後方への傾斜面を含んでもよい。なお、ストッパ2230が有する傾斜部とウイング2244が有する傾斜部とは、咬合時には互いに当接する。
装着時の下顎マウスピース2220は、開口方向に移動するときに、円弧状の軌道上を移動する。このような移動に対し、ストッパ2230の後方端部およびウイング2244の前方端部が上記傾斜面を有することで、ウイング2244の移動をストッパ2230が制限せず、マウスピース2200を装着した使用者の開口が容易となる。
また、ウイング2244の前方端部の下端2247とストッパ2230の後方端部の下端2237とは、咬合時に互いから離間していることが好ましい。これにより、装着時の下顎マウスピース2220の開口方向への移動をウイング2244が制限しにくくなり、下顎マウスピース2220の開口方向への移動がより容易になる。
このとき、下顎マウスピース2220が左右方向に変位することによるウイング2244の破損を抑制する観点からは、ウイング2244の前方端部は、その下端2247が鈍角を形成することが好ましい。また、同様にウイング2244の破損を抑制する観点からは、ウイング2244は、咬合時における下顎マウスピース本体部124への側面方向からの投影面積が、3mm2以上であることが好ましい。上記投影面積の上限は特に限定されない。上記投影面積は、たとえば3mm2以上1000mm2以下であることが好ましく、3mm2以上500mm2以下であることがより好ましく、3mm2以上450mm2以下であることがさらに好ましく、50mm2以上450mm2以下であることが極めて好ましい。
また、ウイング2244の下顎マウスピース本体部2224との当接部、および下顎マウスピース2220のウイング2244との当接部、はいずれも、下顎マウスピース2220が前方へ移動する動きを制限しない形状および配置である。具体的には、マウスピース2200の模式的な平面図である図11(上顎マウスピース、位置決め部材、位置調整部およびガイド部を破線で示し、下顎マウスピースおよびストッパを実線で示す。)に示すように、下顎マウスピース本体部2224のうちウイング2244との当接部2228は、略平面形状をしている。また、一対のウイング2244の、下顎マウスピース2220との一対の当接面2248は互いに略平行であり、下顎マウスピース本体部2224の左右の外側面に位置する、一対のウイング2244との当接部2228は互いに略平行である。
これにより、下顎マウスピース2220は、ウイング2244により移動を制限されることなく前方へ移動可能である。このとき、たとえば下顎マウスピース本体部2224は、その奥歯近辺の部分において、左右方向の厚みが前方(たとえば第一大臼歯(歯列6番)近傍の外側面)はより厚く、後方(たとえば第二大臼歯(歯列7番)または第三大臼歯(歯列8番)近傍の外側面)はより薄くなるように構成される。
本実施形態によれば、開口時に大きく移動しない上顎側に位置決め部材、位置調整部およびガイド部が設けられるため、開口時にこれらの部材と頬とのこすれが生じにくく、マウスピース2100を装着した使用者の開口時の違和感がより少ない。
[第4の実施形態および第5の実施形態の変形例]
なお、第4の実施形態および第5の実施形態はそれぞれ本発明の第2の側面の一例を示すものであり、本発明の第2の側面は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の第2の側面の思想の範囲内において、他の種々多様な実施形態も可能であることは言うまでもない。
たとえば、第4の実施形態および第5の実施形態では、位置決め部材、ストッパ、位置調整部およびガイド部は下顎または上顎マウスピースの外側面に設けられているが、位置決め部材、ストッパ、位置調整部およびガイド部は下顎または上顎マウスピースの内側面に設けられていてもよい。
また、第4の実施形態および第5の実施形態では、前方固定部および後方固定部は、下顎または上顎マウスピース本体部に接着されているが、下顎または上顎マウスピース本体部に脱着可能に構成されてもよい。
また、第4の実施形態および第5の実施形態では、上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部には、歯列に装着可能な歯列型取部が形成されている。しかし上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部は、歯列が収まる形状であれば歯列型でなくてもよいし、上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部の一部だけ歯列型取部にしてもよい。
また、上顎および下顎マウスピースは複数の材料から構成されていてもよく、有機物で構成される部分と無機物で構成される部分との組み合わせで作られていても良い。
また、第4の実施形態および第5の実施形態では、位置調整部は、ターンバックル機構を用いて、ターンバックル部と2本のねじ棒との間の螺合量によって位置決め部材の位置を調整しているが、位置調整部は、雄ねじと雌ねじとの螺合量を調整して位置決め部材の位置を調整可能なねじジャック機構を用いてもよい。また、位置調整部は、ラックの回転量を調整してラックに固着された位置決め部材の位置を調整可能なラックジャッキ機構を用いて、歯車によって位置決め部材を移動させつつ、ねじで位置決め部材を固定してもよい。位置調整部は、位置決め部材の位置を移動させ、かつ調整された位置で固定できる限りにおいて、他の機構により位置決め部材の位置を調整してもよい。
また、第5の実施形態では、位置決め部材は、その前方端部がウイングにおいて後方に傾斜している。しかし、位置決め部材は、ウイングより上方から後方に傾斜しはじめていてもよいし、ウイングの途中から後方に傾斜してもよい。
また、第4の実施形態および第5の実施形態では、ウイングと下顎または上顎マウスピースとの間には隙間を形成して、マウスピースを装着した使用者の上顎および下顎が左右方向へ移動することを許容している。しかし、上記部材間に隙間を設けずに、マウスピースを装着した使用者の上顎および下顎が左右方向へ移動できない構成としてもよい。
[第2の側面に関するマウスピースの構成例]
本発明の第2の側面によれば、
対向する一対の上顎および下顎マウスピースと、
前記上顎又は下顎マウスピースの一方のマウスピースに設けられた一対の固定部に両端が支持されたガイド部に沿って、前後方向に位置調整可能な一対の位置決め部材と、
前記上顎および下顎マウスピースの他方のマウスピースに設けられ、前記位置決め部材に当接して前記下顎マウスピースの後方への変位を規制する一対のストッパと、
を有するマウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースと上顎マウスピースとの咬合時の位置を調整するための位置調整部が、咬合時の左右方向の変位によっても壊れにくい。
また、本発明の第2の側面によれば、
前記位置決め部材は、前記他方のマウスピースの外側で前記ストッパに当接するウイングを有する、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、上顎マウスピース本体部の外側で上記ストッパとウイングとが当接して、使用者の下顎の後方への変位を制限可能である。
また、本発明の第2の側面によれば、
前記ストッパは、その高さが前記他方のマウスピースの高さ以下である、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、位置決め部材の位置調整をストッパが制限しにくい。
また、本発明の第2の側面によれば、
前記一対の固定部は、その一方が前記一方のマウスピースの後端に配置される、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースが左右方向に変位したときにウイングに印加された応力をより幅広く分散させて、位置調整部の破損をより効果的に抑制可能である。
また、本発明の第2の側面によれば、
前記位置決め部材は、下顎マウスピースに設けられる、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースが左右方向に変位したときにウイングに印加された応力をより幅広く分散させて、位置調整部の破損をより効果的に抑制可能である。
当該マウスピースは、これを装着した使用者の内頬のうち、皮膚がより伸縮しやすいより後方の部位に突出部が設けられることになるため、マウスピースを装着した使用者の装着感が向上する。
3.第3の側面に関するマウスピース
本発明の第3の側面に関するマウスピースは、第2種てこの作用点である上記位置調整部と支点である上記固定部との間の距離をより小さくして、力点である上記上方フランジ部に印加された応力が作用点である上記位置調整部で過剰に増大されることによる上記位置調整部の破損を、抑制する。
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態に係るマウスピース3100は、その模式的な斜視図である図12および側面図である図13に示すように、対向する一対の上顎および下顎マウスピースを有し、上顎マウスピース3110は使用者の上顎に、下顎マウスピース3120は使用者の下顎に、それぞれ装着可能に構成されている。
上顎マウスピース3110は、図12Aに示すように、使用者の上顎の歯列に装着可能な歯列型取部3112が形成された上顎マウスピース本体部3114を有し、その外側面には左右一対のストッパ3130が設けられている。
下顎マウスピース3120は、図12Bに示すように、使用者の下顎の歯列に装着可能な歯列型取部3122が形成された下顎マウスピース本体部3124を有し、その外側面には、固定部3160によって下顎マウスピース本体部3124に固定された左右一対の突出部3170が設けられている。突出部3170は、ガイド部3150の一端を支持し、ガイド部3150は、位置決め部材3140を前後方向に移動可能に支持する。
ストッパ3130は、上顎マウスピース3110の外側面、かつ使用者が上顎マウスピース3110および下顎マウスピース3120を装着して咬合したときに突出部3170および位置決め部材3140よりも後方となる位置に設けられる。
ストッパ3130は、その高さが上顎マウスピース3110の高さ以下である。なお、上顎マウスピース3110の高さは場所によって異なっていてもよい。このとき、ストッパ3130は、その高さが、ストッパ3130が設けられた部位における上顎マウスピース本体部3114の高さ以下であることが好ましい。これにより、開口時に、下顎マウスピース3120が左右方向に変位しても、ストッパ3130と位置決め部材3140とはより当接しにくくなり、上記当接によって生じる応力が位置決め部材3140に印加されることによる、ガイド部3150の破損が生じにくくなる。
突出部3170は、下顎マウスピース3120の外側面に設けられた固定部3160から上顎マウスピース3110の方向に突出する。
ガイド部3150は、咬合時に上顎マウスピース3110の側方となる位置で、突出部3170に支持される。言い換えると、ガイド部3150は、咬合時にその全体が下顎マウスピース3120の上端よりも上方となる位置に配置される。さらに言い換えると、ガイド部3150は、咬合時にその全体が上顎マウスピース3110の下端よりも上方となる位置に配置される。このときも、ガイド部3150は、その高さが、ガイド部3150が設けられた部位における下顎マウスピース本体部3124の上端よりも上方であればよく、また、ガイド部3150が設けられた部位における上顎マウスピース本体部3114の下端よりも上方であればよい。
ガイド部3150は、突出部3170にその一端が固定された、雄ねじを切ったねじ棒3152と、位置決め部材3140にその一端が固定された、雄ねじを切ったねじ棒3154と、ねじ棒3152および3154の他方の端部がそれぞれ螺合するねじ孔に挿入されたターンバックル部3156と、を有する。ガイド部3150は、ターンバックル部3156に設けられたピン孔に回転用ピンを差し込んでターンバックル部3156を回転させ、ターンバックル部3156とねじ棒3152および3154との螺合量を調整して、ねじ棒3154に固着されて支持された位置決め部材3140の位置を調整可能である。
位置決め部材3140は、図13に示すように、咬合時に位置決め部材3140の後方の面3142とストッパ3130の前方の面3132とが当接する位置に、ガイド部3150に沿って位置調整可能である。上記位置決め部材3140とストッパ3130との当接により、咬合時の下顎マウスピース3120の後方への変位が制限され、マウスピース3100を装着した使用者の下顎の後方への変位が制限される。これにより、マウスピース3100は、これを装着した使用者の下顎が後方に変位することによる気道の狭窄を防ぎ、睡眠時の呼吸停止または低呼吸を抑制可能である。
また、位置決め部材3140は、ガイド部3150に沿ってより後方に位置調整されることにより、咬合時に、下顎マウスピース3120を前方に移動させつつ、下顎マウスピース3120の後方への変位を制限できる。これにより、マウスピース3100は、これを装着した使用者の下顎を前方に移動させて上記使用者の気道をより大きく開放させ、睡眠時の呼吸停止または低呼吸をより効果的に抑制可能である。
位置決め部材3140は、咬合時に上顎マウスピース3110の側方となる位置で前後方向に位置調整される。言い換えると、位置決め部材3140は、咬合時にその全体が上顎マウスピース3110の下端よりも上方となる位置に配置される。さらに言い換えると、位置決め部材3140は、咬合時にその全体が下顎マウスピース3120の上端よりも上方となる位置に配置される。これにより、位置決め部材3140は、その角部または左右方向の側面部などが、開口時に、下顎マウスピース3120を左右方向に変位させたときなどにストッパ3130と当接しにくくなり、上記当接によって印加され得る外向きの応力によるガイド部3150の破損をより抑制することが可能である。
また、位置決め部材3140は、その高さが上顎マウスピース3110の高さ以下であることが好ましい。これにより、位置決め部材3140は、上記咬合時に上顎マウスピース3110の側方となる位置に容易に配置され得る。
なお、突出部3170は、下顎マウスピース3120が左右方向に変位したときに上顎マウスピース本体部3114に当接して、下顎マウスピース3120の左右方向への変位を規制する位置に設けられてもよい。これにより、左右方向への変位による応力が突出部3170にも印加されて分散され、位置決め部材3140に印加される応力はより小さくなる。そのため、当該構成は、下顎マウスピース3120が左右方向に変位することによるガイド部3150の破損が抑制可能である。
このとき、位置決め部材3140は、下顎マウスピース3120が左右方向に変位したときに上顎マウスピース本体部3114に当接しない位置に設けられてもよい。これにより、左右方向への変位による応力の大部分は突出部3170に主に印加され、位置決め部材3140に印加される応力はより小さくなる。そのため、当該構成は、下顎マウスピース3120が左右方向に変位することによるガイド部3150の破損がより効果的に抑制可能である。
たとえば、位置決め部材3140は、その内外方向の厚みを突出部3170より薄く形成され、かつ、その外側面が突出部3170の外側面と略同一面になる位置に設けられる。これにより、位置決め部材3140と上顎マウスピース本体部3114との間の咬合時の間隔は、突出部3170と上顎マウスピース本体部3114との間の咬合時の間隔よりも広くなる。
なお、ストッパ3130および位置決め部材3140は、装着時に下顎マウスピース3120が開口方向に移動するときに、ストッパ3130の移動を位置決め部材3140が制限しない形状を有してもよい。具体的には、ストッパ3130は、咬合時は位置決め部材3140に当接し、かつ、下顎マウスピース3120の開口方向への移動を容易にする傾斜部3136を有してもよい。また、位置決め部材3140は、咬合時はストッパ3130に当接し、かつ、下顎マウスピース3120の開口方向への移動を容易にする傾斜部3146を有してもよい。言い換えると、ストッパ3130は、その前方端部に、その上端がより前方に位置し、その下端がより後方に位置する後方への傾斜面を含んでもよく、位置決め部材3140は、その後方端部に、その上端がより前方に位置し、その下端がより後方に位置する後方への傾斜面を含んでもよい。
装着時の下顎マウスピース3120は、開口方向に移動するときに、円弧状の軌道上を移動する。このような移動に対し、ストッパ3130の前方端部および位置決め部材3140の後方端部が上記傾斜面を有することで、位置決め部材3140の移動をストッパ3130が制限せず、マウスピース3100を装着した使用者の開口が容易となる。
ストッパ3130は、上顎マウスピース本体部3114に脱着可能に構成されてもよいが、上顎マウスピース本体部3114に接着されてもよい。あるいは、ストッパ3130は、上顎マウスピース本体部3114の外側面に一体的に形成されてもよい。
固定部3160は、下顎マウスピース本体部3124に脱着可能に構成されてもよいが、下顎マウスピース本体部3124に接着されてもよい。固定部3160が下顎マウスピース本体部3124に接着されると、装着時に突出部3170および位置決め部材3140のずれが生じにくい。
突出部3170は、固定部3160に脱着可能に構成されてもよいが、固定部3160に接着されてもよいし、固定部3160と一体的に形成されてもよい。突出部3170が固定部3160に接着されるか、または一体的に形成されると、装着時に突出部3170と固定部3160との間のずれが生じにくい。
本実施形態によれば、開口時に下顎マウスピース3120が左右方向に変位しても、位置決め部材3140とストッパ3130とは当接しにいため、上記当接によって印加され得る外向きの応力によるガイド部3150の破損をより抑制することが可能である。
また、本実施形態によれば、下顎マウスピース3120が左右方向に変位したときに位置決め部材3140が下顎マウスピース3120に当接しても、位置決め部材3140を左右方向に移動させる応力は印加されにくい。そのため、左右方向への変位によって位置決め部材3140に印加される応力はより小さくなるか、または印加されず、上記応力によるガイド部3150の破損が抑制される。
また、上記突出部3170、ガイド部3150および位置決め部材3140は、突出部を支点とし、位置決め部材3140と上顎マウスピース本体部3114との当接部を力点とし、ガイド部3150を作用点とする第2種てこを形成し得る。このとき、本実施形態によれば、第2種てこの支点である突出部3170と作用点であるガイド部3150との間の距離をより小さくできるため、第2種てこの力点である位置決め部材3140に印加された応力が作用点であるガイド部3150で過剰に増大されることによるガイド部3150の破損が抑制され得る。
[第7の実施形態]
本発明の第7の実施形態に係るマウスピース3200は、その模式的な側面図である図14に示すように、対向する一対の上顎および下顎マウスピースを有し、上顎マウスピース3210は使用者の上顎に、下顎マウスピース3220は使用者の下顎に、それぞれ装着可能に構成されている。また、下顎マウスピース本体部3224の外側面には左右一対のストッパ3230が、上顎マウスピース本体部3214の外側面には固定部3260によって上顎マウスピース本体部3214に固定された左右一対の突出部3270が、それぞれ設けられている。突出部3270は、ガイド部3250の一端を支持し、ガイド部3250は、位置決め部材3240を前後方向に移動可能に支持する。なお、以下、第6の実施形態と共通する構成については説明を省略することがある。
ストッパ3230は、下顎マウスピース3220の外側面、かつ咬合時に突出部3270および位置決め部材3240よりも前方となる位置に設けられる。
ストッパ3230は、その高さが下顎マウスピース3220の高さ以下である。なお、下顎マウスピース3220の高さは場所によって異なっていてもよい。このとき、ストッパ3230は、その高さが、ストッパ3230が設けられた部位における下顎マウスピース本体部3224の高さ以下であることが好ましい。これにより、開口時に、下顎マウスピース3220が左右方向に変位しても、ストッパ3230と位置決め部材3240とはより当接しにくくなり、上記当接によって生じる応力が位置決め部材3240に印加されることによる、ガイド部3250の破損が生じにくくなる。
突出部3270は、上顎マウスピース3210の外側面に設けられた固定部3260から下顎マウスピース3220の方向に突出する。
ガイド部3250は、咬合時に下顎マウスピース210の側方となる位置で、突出部3270に支持される。言い換えると、ガイド部3250は、咬合時にその全体が上顎マウスピース220の下端よりも下方となる位置に配置される。さらに言い換えると、ガイド部3250は、咬合時にその全体が下顎マウスピース210の上端よりも下方となる位置に配置される。このときも、ガイド部3250は、その高さが、ガイド部3250が設けられた部位における上顎マウスピース本体部3214の下端よりも下方であればよく、また、ガイド部3250が設けられた部位における下顎マウスピース本体部3214の上端よりも下方であればよい。
位置決め部材3240は、図14に示すように、咬合時に位置決め部材3240の前方の面とストッパ3230の後方の面とが当接する位置に、ガイド部3250に沿って位置調整可能である。これにより、マウスピース3200は、これを装着した使用者の下顎が後方に変位することによる気道の狭窄を防ぎ、睡眠時の呼吸停止または低呼吸を抑制可能である。
また、位置決め部材3240は、ガイド部3250によってより前方に位置調整されることにより、咬合時に、下顎マウスピース3220を前方に移動させつつ、下顎マウスピース3220の後方への変位を制限できる。これにより、マウスピース3200は、これを装着した使用者の下顎を前方に移動させて上記使用者の気道をより大きく開放させ、睡眠時の呼吸停止または低呼吸をより効果的に抑制可能である。
位置決め部材3240は、咬合時に下顎マウスピース3220の側方となる位置で前後方向に位置調整される。言い換えると、位置決め部材3240は、位置決め部材3240は、その全体が下顎マウスピース3220の上端よりも下方となる位置に配置される。これにより、位置決め部材3240は、その角部または左右方向の側面部などが、開口時に、下顎マウスピース3220を左右方向に変位させたときなどにストッパ3230と当接しにくくなり、上記当接によって印加され得る外向きの応力によるガイド部3250の破損をより抑制することが可能である。
また、位置決め部材3240は、その高さが下顎マウスピース3220の高さ以下であることが好ましい。これにより、位置決め部材3240は、咬合時に下顎マウスピース3220の側方となる位置に容易に配置され得る。
なお、突出部3270は、下顎マウスピース3220が左右方向に変位したときに下顎マウスピース本体部3224に当接して、下顎マウスピース3220の左右方向への変位を規制する位置に設けられてもよい。これにより、左右方向への変位による応力が突出部3270にも印加されて分散され、位置決め部材3240に印加される応力はより小さくなる。そのため、当該構成は、下顎マウスピース3220が左右方向に変位することによるガイド部3250の破損が抑制可能である。
このとき、位置決め部材3240は、下顎マウスピース3220が左右方向に変位したときに下顎マウスピース本体部3224に当接しない位置に設けられてもよい。これにより、左右方向への変位による応力の大部分は突出部3270に主に印加され、位置決め部材3240に印加される応力はより小さくなる。そのため、当該構成は、下顎マウスピース3220が左右方向に変位することによるガイド部3250の破損がより効果的に抑制可能である。
たとえば、位置決め部材3240は、その内外方向の厚みを突出部3270より薄く形成され、かつ、その外側面が突出部3270の外側面と略同一面になる位置に設けられる。これにより、位置決め部材3240と下顎マウスピース本体部3224との間の咬合時の間隔は、突出部3270と下顎マウスピース本体部3224との間の咬合時の間隔よりも広くなる。
なお、ストッパ3230および位置決め部材3240は、装着時に下顎マウスピース3220が開口方向に移動するときに、位置決め部材3240の移動をストッパ3230が制限しない形状を有してもよい。具体的には、ストッパ3230は、咬合時は位置決め部材3240に当接し、かつ、下顎マウスピース3220の開口方向への移動を容易にする傾斜部3236を有してもよい。また、位置決め部材3240は、咬合時はストッパ3230に当接し、かつ、下顎マウスピース3220の開口方向への移動を容易にする傾斜部3246を有してもよい。言い換えると、ストッパ3230は、その後方端部に、その上端がより前方に位置し、その下端がより後方に位置する後方への傾斜面を含んでもよく、位置決め部材3240は、その前方端部に、その上端がより前方に位置し、その下端がより後方に位置する後方への傾斜面を含んでもよい。
また、このとき、突出部3270の下顎マウスピース本体部3224との当接部、および下顎マウスピース3220の突出部3270との当接部、はいずれも、下顎マウスピース3220が前方へ移動する動きを制限しない形状および配置であってもよい。同様に、位置決め部材3240の下顎マウスピース本体部3224との当接部、および下顎マウスピース3220の位置決め部材3240との当接部、はいずれも、下顎マウスピース3220が前方へ移動する動きを制限しない形状および配置であってもよい。
具体的には、マウスピース3200の模式的な平面図である図15(上顎マウスピース、突出部、ガイド部および位置決め部材を破線で示し、下顎マウスピースおよびストッパを実線で示す。なお、理解を容易にするため、固定部は省略する。)に示すように、下顎マウスピース本体部3224のうち突出部3270との当接部3228および位置決め部材3240との当接部3229は、いずれも略平面形状をしていてもよい。また、一対の突出部3270の、下顎マウスピース3220との一対の当接面3278は互いに略平行であってもよく、一対の位置決め部材3240の、下顎マウスピース3220との一対の当接面3248は互いに略平行であってもよい。また、下顎マウスピース本体部3224の左右の外側面に位置する、一対の突出部3270との当接部3228および位置決め部材3240との当接部3229は互いに略平行であってもよい。
これにより、下顎マウスピース3220は、突出部3270および位置決め部材3240により移動を規制されることなく前方へ移動可能である。このとき、たとえば下顎マウスピース本体部3224は、その奥歯近辺の部分において、左右方向の厚みが前方(たとえば第一大臼歯(歯列6番)近傍の外側面)はより厚く、後方(たとえば第二大臼歯(歯列7番)または第三大臼歯(歯列8番)近傍の外側面)はより薄くなるように構成されることが好ましい。
なお、第7の実施形態においても、ストッパ3230は、下顎マウスピース本体部3224に脱着可能に構成されてもよいが、下顎マウスピース本体部3224に接着されてもよい。
また、第7の実施形態においても、固定部3260は、上顎マウスピース本体部3214に脱着可能に構成されてもよいが、上顎マウスピース本体部3214に接着されてもよい。
また、第7の実施形態においても、突出部3270は、固定部3260に脱着可能に構成されてもよいが、固定部3260に接着されてもよいし、固定部3260と一体的に形成されてもよい。
本実施形態によれば、マウスピース3200を装着した使用者の内頬のうち、皮膚がより伸縮しやすいより後方の部位に突出部3270が設けられることになるため、マウスピース3200を装着した使用者の装着感が向上する。
[第6の実施形態および第7の実施形態の変形例]
なお、上述の第6の実施形態および第7の実施形態はそれぞれ本発明の第3の側面の一例を示すものであり、本発明の第3の側面は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の第3の側面の思想の範囲内において、他の種々多様な実施形態も可能であることは言うまでもない。
たとえば、第6の実施形態および第7の実施形態では、ストッパ、突出部、ガイド部および位置決め部材は下顎または上顎マウスピースの外側面に設けられているが、ストッパ、突出部、ガイド部および位置決め部材は下顎または上顎マウスピースの内側面に設けられていてもよい。このとき、当然ながら、固定部も下顎または上顎マウスピースの内側面に設けられる。
このように、ストッパ、突出部、ガイド部、位置決め部材および固定部は、下顎または上顎マウスピースの外側面または内側面のいずれに設けられてもよいが、当然ながら、ストッパ、突出部、ガイド部、位置決め部材および固定部は、いずれも、下顎または上顎マウスピースの外側面または内側面のうち同一の側面に設けられるのが好ましい。
また、第6の実施形態および第7の実施形態では、上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部には、歯列に装着可能な歯列型取部が形成されている。しかし上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部は、歯列が収まる形状であればよく、歯列に被せる形状でもよいし、上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部の一部だけ歯列型取部にしてもよい。
また、上顎および下顎マウスピースは複数の材料から構成されていてもよく、有機物で構成される部分と無機物で構成される部分との組み合わせで作られていてもよい。
また、第6の実施形態および第7の実施形態では、ガイド部は、ターンバックル機構を用いて、ターンバックル部と2本のねじ棒との間の螺合量によって位置決め部材の位置を調整しているが、ガイド部は、雄ねじと雌ねじとの螺合量を調整して位置決め部材の位置を調整可能なねじジャック機構を用いてもよい。また、ガイド部は、ラックの回転量を調整してラックに固着された位置決め部材の位置を調整可能なラックジャッキ機構を用いて、歯車によって位置決め部材を移動させつつ、ねじで位置決め部材を固定してもよい。ガイド部は、位置決め部材の位置を移動させ、かつ調整された位置で固定できる限りにおいて、他の機構により位置決め部材の位置を調整してもよい。
また、第6の実施形態および第7の実施形態では、突出部と上顎または下顎マウスピースとの間および位置決め部材と上顎または下顎マウスピースとの間には、それぞれ隙間を形成して、マウスピースを装着した使用者の上顎および下顎が左右方向へ移動することを許容している。しかし、上記部材間に隙間を設けずに、マウスピースを装着した使用者の上顎および下顎が左右方向へ移動できない構成としてもよい。
また、第6の実施形態および第7の実施形態では、左右方向への変位による応力の大部分を突出部に印加する場合に、位置決め部材の内外方向の厚みを突出部の厚みより薄くしている。しかし、位置決め部材を突出部より外側に配置して、下顎マウスピースが左右方向に変位するときに位置決め部材が上顎または下顎マウスピースに当接しないようにしてもよい。このとき、位置決め部材の外側面は、突出部の外側面の外側面と略同一面にならなくてもよい。
[第3の側面に関するマウスピースの構成例]
本発明の第3の側面によれば、
対向する一対の上顎および下顎マウスピースと、
前記上顎又は下顎マウスピースの一方のマウスピースに設けられ、その高さが前記一方のマウスピースの高さ以下である一対のストッパと、
前記上顎又は下顎マウスピースの他方のマウスピースに固定され、かつ前記他方のマウスピースから前記一方のマウスピースの方向に突出する突出部と、
前記突出部にその一端を支持されたガイド部に沿って、咬合時に前記一方のマウスピースの側方となる位置で前後方向に位置調整され、かつ前記ストッパと当接して前記下顎マウスピースの後方への変位を規制する一対の位置決め部材と、
を有するマウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースと上顎マウスピースとの咬合時の位置を調整するための位置調整部が、特には開口時の、咬合時の左右方向の変位によっても壊れにくい。
また、本発明の第3の側面によれば、
さらに、前記ガイド部は、咬合時に前記一方のマウスピースの側方となる位置に設けられるマウスピースが提供される。
当該マウスピースは、咬合時などに下顎マウスピースが左右方向に変位するときに、ストッパと位置決め部材とが当接しにくい位置に、位置決め部材を容易に配置し得る。
また、本発明の第3の側面によれば、
さらに、前記突出部は、前記一方のマウスピースに当接して前記上顎マウスピースと下顎マウスピースとの左右方向の変位を規制する位置に設けられるマウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースが左右方向へ変位して生じる応力が突出部にも印加され、位置決め部材に印加される応力はより小さくなるか、上記応力は位置決め部材に印加されなくなる。そのため、当該マウスピースは、上記左右方向への変位によるガイド部の破損がより生じにくい。
また、本発明の第3の側面によれば、
さらに、前記位置決め部材は、前記突出部が前記一方のマウスピースに当接するときに、前記一方のマウスピースに当接しない位置に配置されるマウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースが左右方向へ変位して生じる応力の大部分は突出部に印加され、位置決め部材に印加される応力はより小さくなるか、上記応力は位置決め部材に印加されなくなる。そのため、当該マウスピースは、上記左右方向への変位によるガイド部の破損がさらに生じにくい。
また、本発明の第3の側面によれば、
さらに、前記位置決め部材は、咬合時は前記ストッパに当接し、かつ、前記下顎マウスピースの開口方向への移動を容易にする傾斜部を有するマウスピースが提供される。
当該マウスピースは、これを装着した使用者の開口が容易であり、使用者の違和感がより低減される。
また、本発明の第3の側面によれば、
さらに、前記ストッパは、咬合時は前記位置決め部材に当接し、かつ、前記下顎マウスピースの開口方向への移動を容易にする傾斜部を有するマウスピースが提供される。
当該マウスピースは、これを装着した使用者の開口が容易であり、使用者の違和感がより低減される。
また、本発明の第3の側面によれば、
さらに、前記ストッパは、下顎マウスピースに設けられるマウスピースが提供される。
当該マウスピースは、これを装着した使用者の内頬のうち、皮膚がより伸縮しやすいより後方の部位に突出部が設けられることになるため、マウスピースを装着した使用者の装着感が向上する。
4.第4の側面に関するマウスピース
本発明の第4の側面に関するマウスピースは、下顎マウスピースの前方への移動量を一対の上顎および下顎マウスピースの双方で調整可能とし、第2種てこの作用点となる上記位置調整部の移動量を小さくすることを可能にするものである。本発明の第4の側面に関するマウスピースは、このような構成により、上記第2種てこの原理によって上記位置調整部に印加される応力を小さくして、上記左右方向の変位による位置調整部の破損を抑制する。
[第8の実施形態]
本発明の第8の実施形態に係るマウスピース4100は、その模式的な斜視図である図16および側面図である図17に示すように、対向する一対の上顎および下顎マウスピースを有し、上顎マウスピース4110は使用者の上顎に、下顎マウスピース4120は使用者の下顎に、それぞれ装着可能に構成されている。
上顎マウスピース4110は、図16Aに示すように、使用者の上顎の歯列に装着可能な歯列型取部4112が形成された上顎マウスピース本体部4114を有し、その外側面には左右一対のストッパ4130が設けられている。
下顎マウスピース4120は、図16Bに示すように、使用者の下顎の歯列に装着可能な歯列型取部4122が形成された下顎マウスピース本体部4124を有し、その外側面には前後方向に位置調整可能な左右一対の位置決め部材4140が設けられている。
位置決め部材4140は、図17に示すように、使用者が上顎マウスピース4110および下顎マウスピース4120を装着して咬合したときに、位置決め部材4140の後方の面4140aとストッパ4130の前方の面4130aとが当接する位置に位置調整可能である。上記位置決め部材4140とストッパ4130との当接により、咬合時の下顎マウスピース4120の後方への変位が制限され、マウスピース4100を装着した使用者の下顎の後方への変位が制限される。これにより、マウスピース4100は、これを装着した使用者の下顎が後方に変位することによる気道の狭窄を防ぎ、睡眠時の呼吸停止または低呼吸を抑制可能である。
また、位置決め部材4140は、下顎マウスピース本体部4124の外側面に設けられた位置調整部4150によって前後方向に位置調整可能に構成される。位置決め部材4140は、位置調整部4150によってより後方に位置調整されることにより、咬合時に、下顎マウスピース4120を前方に移動させつつ、下顎マウスピース4120の後方への変位を制限できる。これにより、マウスピース4100は、これを装着した使用者の下顎を前方に移動させて上記使用者の気道をより大きく開放させ、睡眠時の呼吸停止または低呼吸をより効果的に抑制可能である。
位置調整部4150は、下顎マウスピース本体部4124の外側面に設けられた固定部4160にその一端が固定された、雄ねじを切ったねじ棒4152と、位置決め部材4140にその一端が固定された、雄ねじを切ったねじ棒4152と、ねじ棒4152および4154の他方の端部がそれぞれ螺合するねじ孔に挿入されたターンバックル部4156と、を有する。位置調整部4150は、ターンバックル部4156に設けられたピン孔に回転用ピンを差し込んでターンバックル部4156を回転させ、ターンバックル部4156とねじ棒4152および4154との螺合量を調整して、ねじ棒4152に固着された位置決め部材4140の位置を調整可能である。
位置決め部材4140は、下顎マウスピース本体部4124から上方に突出するウイング4144を有する。ウイング4144は、その後方の面(位置決め部材4140の、ストッパ4130と当接する後方の面4140aでもある)が上記ストッパ4130の前方の面4130aと略平行に形成されており、咬合時に、上顎マウスピース本体部4114の外側で上記ストッパ4130の前方の面4130aと当接して、使用者の下顎の後方への変位を制限する。
ストッパ4130は、上顎マウスピースの外側面かつ咬合時に位置決め部材よりも後方となる位置に設けられて、咬合時に、その前方の面4130aが位置決め部材4140の後方の面4140aと当接して、下顎マウスピース4120の後方への変位を制限する。
ストッパ4130は、位置決め部材4140に当接する移動部4131と、移動部4131を前後方向に位置調整するストッパ調整部4132と、上顎マウスピース本体部4114の外側面に固定されたストッパ固定部4133と、を有する。移動部4131とストッパ固定部4133とは、その対向面が略平行である。
移動部4131は、ストッパ調整部4132によってより前方に位置調整されて位置決め部材4140と当接することにより、咬合時に、下顎マウスピース4120を前方に突出させつつ、下顎マウスピース4120の後方への変位を制限できる。
ストッパ調整部4132は、ストッパ固定部4133にその一端が固定された、雄ねじを切ったねじ棒4132aと、移動部4131にその一端が固定された、雄ねじを切ったねじ棒4132bと、ねじ棒4132aおよび4132bの他方の端部がそれぞれ螺合するねじ孔に挿入されたターンバックル部4132cと、を有する。ストッパ調整部4132は、ターンバックル部4132cに設けられたピン孔に回転用ピンを差し込んでターンバックル部4132cを回転させ、ターンバックル部4132cとねじ棒4132aおよび4132bとの螺合量を調整して、ねじ棒4132bに固着された移動部4131の位置を調整可能である。
ストッパ固定部4133は、上顎マウスピース本体部4114の外側面のうちより後方に設けられることが好ましく、その後端(たとえば、第二大臼歯(歯列7番)または第三大臼歯(歯列8番)の外側面)に設けられることが好ましい。ストッパ固定部4133をより後方に設けることで、位置決め部材4140およびストッパ4130の移動部4131が位置調整可能な幅を広くして、下顎の前方への移動量をより大きくすることができる。
ストッパ4130は、移動部4131が前方に位置調整されることにより、位置決め部材4140がより前方に位置調整された状態で移動部4131と位置決め部材4140とを当接させることができる。これにより、第2種てこの力点であるウイング4144と支点である固定部4160との間の距離が短くなり、ウイング4144に印加された応力の、作用点である位置調整部4150での過剰な増大が抑制される。そのため、ストッパ4130は、下顎マウスピースが左右方向に変位することによる位置調整部4150の破損を抑制可能である。
また、ストッパ4130は、移動部4131が前方に位置調整されることにより、咬合時に、下顎マウスピース4120を前方に移動させつつ、下顎マウスピース4120の後方への変位を制限できる。これにより、マウスピース4100は、これを装着した使用者の下顎を前方に移動させて上記使用者の気道をより大きく開放させ、睡眠時の呼吸停止または低呼吸をより効果的に抑制可能である。
なお、本実施形態において、ストッパ4130は、その高さが上顎マウスピース4110の高さ以下である。これにより、下顎マウスピース4120が左右方向に変位したときに、ストッパ4130は下顎マウスピース4120にほぼ当接せず、下顎マウスピースが左右方向に変位することによるストッパ調整部4132の破損も抑制される。
なお、上顎マウスピース4110の高さは場所によって異なっていてもよい、このとき、ストッパ4130は、その高さが、ストッパ4130が設けられた部位における上顎マウスピース本体部4114の高さ以下であればよい。
ストッパ4130およびウイング4144は、装着時に下顎マウスピース4120が開口方向に移動するときに、ウイング4144の移動をストッパ4130が制限しない形状を有する。具体的には、ストッパ4130は、下顎マウスピース4120の開口方向への移動を容易にする傾斜部を有してもよい。また、ウイング4144は、その後端面に、下顎マウスピース4120の開口方向への移動を容易にする傾斜部を有してもよい。言い換えると、ストッパ4130は、その前方端部(移動部4131の前方端部)に、その上端がより前方に位置し、その下端がより後方に位置する後方への傾斜面を含んでもよく、ウイング4144は、その後方端部に、その上端がより前方に位置し、その下端がより後方に位置する後方への傾斜面を含んでもよい。なお、ストッパ4130が有する傾斜部とウイング4144が有する傾斜部とは、咬合時には互いに当接する。
装着時の下顎マウスピース4120は、開口方向に移動するときに、円弧状の軌道上を移動する。このような移動に対し、ストッパ4130の前方端部およびウイング4144の後方端部が上記傾斜面を有することで、ウイング4144の移動をストッパ4130が制限せず、マウスピース4100を装着した使用者の開口が容易となる。
位置調整部4150およびストッパ調整部4132は、位置決め部材4140が移動可能な幅がストッパ4130の移動部4131が移動可能な幅より狭くなるように、構成されてもよい。たとえば、位置調整部4150のターンバックル部4156とねじ棒4152および4154とが螺合可能な量は、ストッパ調整部4132のターンバックル部4132cとねじ棒4132aおよび4132bとが螺合可能な量よりも小さくてもよい。これにより、位置決め部材4140はより後方には位置調整されにくくなり、第2種てこの力点であるウイング4144に印加された応力が作用点である位置調整部4150で過剰に増大することによる、位置調整部4150の破損を抑制可能である。
固定部4160は、下顎マウスピース本体部4124に脱着可能に構成されてもよいが、下顎マウスピース本体部4124に接着されてもよい。固定部4160が下顎マウスピース本体部4124に接着されると、装着時に固定部4160および位置決め部材4140のずれが生じにくい。
ストッパ固定部4133は、上顎マウスピース本体部4114に脱着可能に構成されてもよいが、上顎マウスピース本体部4114に接着されてもよい。ストッパ固定部4133が上顎マウスピース本体部4114に接着されると、装着時にストッパ固定部4133およびストッパ4130のずれが生じにくい。
本実施形態によれば、第2種てこの力点であるウイング4144と支点である固定部4160との間の距離を従来より短くすることができる。そのため、下顎マウスピースが左右方向に変位したときにウイング4144に印加された応力が、作用点である位置調整部4150で過剰に増大することによる、位置調整部4150の破損を抑制可能である。
一方で、本実施形態によれば、位置調整部4150による位置決め部材4140の位置の調整に加えて、ストッパ調整部4132によるストッパ4130の移動部4131の位置の調整によっても、下顎マウスピース4120の前方への移動量を調整可能である。そのため、下顎マウスピースの前方への移動量を位置調整部のみで調整していた従来のマウスピースに比べて、下顎マウスピース4120の前方への移動量を増加させることも可能である。
また、本実施形態によれば、ストッパ4130は、上顎マウスピース4110から下方に突出するフランジ部を有さないため、下顎マウスピース4120の開口方向への移動時にウイング4144とストッパ4130とが当接しにくい。そのため、本実施形態のマウスピース4100は、下顎マウスピース4120の開口方向への移動がより容易である。
また、本実施形態によれば、ストッパ4130は、上顎マウスピース4110から下方に突出するフランジ部を有さないため、下顎マウスピース4120が左右方向に変位したときにも下顎マウスピース4120とストッパ4130とが当接しない。そのため、本実施形態のマウスピース4100は、下顎マウスピースが左右方向に変位することによるストッパ調整部4132の破損を抑制可能である。
[第9の実施形態]
本発明の第9の実施形態に係るマウスピース4200は、その模式的な側面図である図18に示すように、対向する一対の上顎および下顎マウスピースを有し、上顎マウスピース4210は使用者の上顎に、下顎マウスピース4220は使用者の下顎に、それぞれ装着可能に構成されている。また、下顎マウスピース本体部4224の外側面には前後方向に位置調整可能な左右一対の位置決め部材4240が、上顎マウスピース本体部4214の外側面には前後方向に位置調整可能な左右一対のストッパ4230が、それぞれ設けられている。なお、以下、第8の実施形態と共通する構成については説明を省略することがある。
なお、本実施形態においても、位置決め部材4240は、下顎マウスピース本体部4224の外側面に設けられた位置調整部4250によって前後方向に位置調整可能に構成される。また、本実施形態においても、ストッパ4230は、位置決め部材4240に当接する移動部4231と、ストッパ調整部4232と、ストッパ固定部4233とを有し、移動部4231とストッパ固定部4233とは、その対向面が略平行であり、移動部4231は、ストッパ調整部4232によってより前方に位置調整されて位置決め部材4240と当接する。位置決め部材4240が位置調整部4250によってより後方に位置調整され、または、ストッパ4230の移動部4231がストッパ調整部4232によってより前方に位置調整されることにより、咬合時に、下顎マウスピース4220を前方に移動させつつ、下顎マウスピース4220の後方への変位を制限できる。
また、本実施形態においても、位置調整部4250およびストッパ調整部4232は、位置決め部材4240が移動可能な幅がストッパ4230の移動部4231が移動可能な幅より狭くなるように、構成される。
一方で、本実施形態において、ストッパ4230は、上顎マウスピース本体部4214から下方に延伸する延伸部4234を有する。延伸部4234は、咬合時に下顎マウスピース4220が左右方向へ変位するとき、下顎マウスピース4220と当接して上記左右方向への変位を規制する。
上記構成とすることで、咬合時に下顎マウスピース4220が左右方向へ変位したときに、位置決め部材4240のウイング4244が上顎マウスピース4210に当接し、かつ、ストッパ4230の延伸部4234が下顎マウスピース4220に当接する。そのため、左右方向への変位による応力は、位置決め部材4240およびストッパ4230に分散され、上記応力による位置調整部4250の破損はより効果的に抑制可能である。一方で、上記応力の分散により、ストッパ調整部4232の破損も生じにくい。
ストッパ4230およびウイング4244は、装着時に下顎マウスピース4220が開口方向に移動するときに、ウイング4244の移動をストッパ4230が制限しない形状を有する。具体的には、ストッパ4230は、移動部4231に、下顎マウスピース4220の開口方向への移動を容易にする傾斜部4236を有してもよい。また、ウイング4244は、下顎マウスピース4220の開口方向への移動を容易にする傾斜部4246を有してもよい。言い換えると、ストッパ4230は、その前方端部に、その上端がより前方に位置し、その下端がより後方に位置する後方への傾斜面を含んでもよく、ウイング4244は、その後方端部に、その上端がより前方に位置し、その下端がより後方に位置する後方への傾斜面を含んでもよい。なお、ウイング4244が有する傾斜部4246は、咬合時にはストッパ4230と当接する。
装着時の下顎マウスピース4220は、図19に示すように、開口方向に移動するときに、円弧状の軌道上を移動する。このような移動に対し、ストッパ4230の前方端部およびウイング4244の後方端部が上記傾斜面を有することで、ウイング4244の移動をストッパ4230が制限せず、マウスピース4200を装着した使用者の開口が容易となる。上記ストッパ4230およびウイング4244が傾斜面を有することによる、開口を容易にする効果は、開口時のウイング4244の軌道上に延伸部4234が配置され得る本実施形態において、第8の実施形態よりも顕著である。
上記前方端部に傾斜面を有するストッパ4230は、その前方端部(移動部4231の前方端部)において、その上端がより前方に位置し、その後端がより後方に位置すればよい。このとき、移動部4231の前方端部の形状は、図20Aに示す切欠部、図20Bに示す平面傾斜部、図20Cに示す曲面部などとすることができる。
同様に、上記傾斜面であるウイング4244は、その後方端部において、その上端がより前方に位置し、その後端がより後方に位置すればよい。このとき、ウイング4244の後方端部の形状は、ストッパ4230の前方端部と同様に、切欠部、平面傾斜部、曲面部などとすることができる。
なお、ストッパ4230(移動部4231)の前方端部は、延伸部4234においてより後方に傾斜している。また、延伸部4234の高さは、ストッパ4230の高さの半分以下であって、咬合時に延伸部4234の下端は下顎マウスピース本体部4224の下端面よりも上方に位置する。また、ストッパ4230の前方端部の下端4237と位置決め部材4240の後方端部の下端4247とは、咬合時に互いから離間していることが好ましい。また、咬合時に、咬合面より下方において、ストッパ4230の前方の面(延伸部4234の前方の面)と位置決め部材4240の後方の面とは、互いから離間していることが好ましく、下顎マウスピース及び/又は上顎マウスピースの開口方向への移動時においても常に互いに離間していることがより好ましい。これにより、装着時の下顎マウスピース4220の開口方向への移動を延伸部4234が制限せず、下顎マウスピース4220の開口方向への移動がより容易になる。なお、上記延伸部4234の高さは、移動部4231の後端部における、上顎マウスピース本体部4214の下端から延伸する部分の高さを意味し、上記ストッパ4230の高さは、移動部4231の後端部の高さを意味する。
このとき、下顎マウスピースが左右方向に変位することによるストッパ4230の破損を抑制する観点からは、ストッパ4230の前方端部は、図20Aに示すような切欠部であるとき、その下端4237が鈍角を形成することが好ましい。また、同様にストッパ4230の破損を抑制する観点からは、ストッパ4230は、咬合時における下顎マウスピース本体部4224への側面方向からの投影面積が、3mm2以上であることが好ましい。上記投影面積の上限は特に限定されない。上記投影面積は、たとえば3mm2以上1000mm2以下であることが好ましく、3mm2以上500mm2以下であることがより好ましく、3mm2以上450mm2以下であることがさらに好ましく、50mm2以上450mm2以下であることが極めて好ましい。
また、このとき、ストッパ4230の下顎マウスピース本体部4224との当接部、および下顎マウスピース4220のストッパ4230との当接部、はいずれも、下顎マウスピース4220が前方へ移動する動きを制限しない形状および配置である。具体的には、マウスピース4200の模式的な平面図である図21(上顎マウスピースおよびストッパを破線で示し、下顎マウスピース、位置決め部材および固定部を実線で示す。)に示すように、下顎マウスピース本体部4224のうちストッパ4230との当接部4228は、略平面形状をしている。また、一対のストッパ4230の延伸部4234の、下顎マウスピース4220との一対の当接面4238は互いに略平行であり、下顎マウスピース本体部4224の左右の外側面に位置する、一対のストッパ4230の延伸部4234との当接部4228は互いに略平行である。
これにより、下顎マウスピース4220は、延伸部4234により移動を規制されることなく前方へ移動可能である。このとき、たとえば下顎マウスピース本体部4224は、その奥歯近辺の部分において、左右方向の厚みが前方(たとえば第一大臼歯(歯列6番)近傍の外側面)はより厚く、後方(たとえば第二大臼歯(歯列7番)または第三大臼歯(歯列8番)近傍の外側面)はより薄くなるように構成される。
また、本実施形態においても、固定部4260は、下顎マウスピース本体部4224に脱着可能に構成されてもよいが、下顎マウスピース本体部4224に接着されてもよい。
また、本実施形態においても、ストッパ固定部4233は、上顎マウスピース本体部4214に脱着可能に構成されてもよいが、上顎マウスピース本体部4214に接着されてもよい。
本実施形態によれば、左右方向への変位時に従来は位置決め部材4240のウイング4244のみに印加されていた応力が、ストッパ4230の延伸部4234にも印加され、両者に分散される。そのため、本実施形態のマウスピース4200は、左右方向への変位によって位置決め部材4240のウイング4244が上顎マウスピース本体部4214に当接したときの応力による位置調整部4250の破損を抑制可能である。
また、本実施形態によれば、ストッパ4230は下方に延伸する延伸部4234を有し、位置決め部材4240は上方に突出するウイング4244を有するため、装着時に使用者が開口などしたときでも、ストッパ4230の前方の面とウイング4244の後方の面とは互いに当接可能である。そのため、本実施形態のマウスピース4200は、装着時の開口などによるストッパ4230と位置決め部材4240との間のずれが生じにくく、これを装着した使用者の下顎の後方への変位をより効果的に抑制可能である。
[第10の実施形態]
本発明の第10の実施形態に係るマウスピース4300は、その模式的な側面図である図22に示すように、対向する一対の上顎および下顎マウスピースを有し、上顎マウスピース4310は使用者の上顎に、下顎マウスピース4320は使用者の下顎に、それぞれ装着可能に構成されている。また、下顎マウスピース本体部4324の外側面には前後方向に位置調整可能な左右一対の位置決め部材4340が、上顎マウスピース本体部4314の外側面には前後方向に位置調整可能な左右一対のストッパ4330が、それぞれ設けられている。なお、以下、第8の実施形態または第9の実施形態と共通する構成については説明を省略することがある。
なお、本実施形態においても、位置決め部材4340は、下顎マウスピース本体部4324の外側面に設けられた位置調整部4350によって前後方向に位置調整可能に構成される。また、本実施形態においても、ストッパ4330は、位置決め部材4340に当接する移動部4331と、ストッパ調整部4332と、ストッパ固定部4333とを有し、移動部4331とストッパ固定部4333とは、その対向面が略平行であり、移動部4331は、ストッパ調整部4332によってより前方に位置調整されて位置決め部材4340と当接する。位置決め部材4340が位置調整部4350によってより後方に位置調整され、または、ストッパ4330の移動部4331がストッパ調整部4332によってより前方に位置調整されることにより、咬合時に、下顎マウスピース4320を前方に移動させつつ、下顎マウスピース4320の後方への変位を制限できる。
また、本実施形態においても、位置調整部4350およびストッパ調整部4332は、位置決め部材4340が移動可能な幅がストッパ4330の移動部4331が移動可能な幅より狭くなるように、構成される。
また、本実施形態においても、ストッパ4330は、上顎マウスピース本体部4314から下方に延伸する延伸部4334を有する。
一方で、本実施形態において、位置決め部材4340は、その高さが下顎マウスピース本体部4324の高さ以下である。
なお、下顎マウスピースの高さは場所によって異なっていてもよい、このとき、本実施形態では、位置決め部材4340は、その高さが、位置決め部材4340が設けられた部位における下顎マウスピース本体部4324の高さ以下であればよい。
上記構成とすることで、咬合時に下顎マウスピース4320が左右方向へ変位したときに、位置決め部材4340は上顎マウスピース4310に当接しにくく、位置決め部材4340には応力が印加されにくい。そのため、本実施形態のマウスピース4300は、左右方向への変位による位置調整部4350の破損を抑制可能である。
このときも、ストッパ4330は、装着時に下顎マウスピース4320が開口方向に移動するときに、位置決め部材4340の移動をストッパ4330が制限しない形状を有する。具体的には、ストッパ4330は、下顎マウスピース4320の開口方向への移動を容易にする傾斜部4336を有してもよい。言い換えると、ストッパ4330の前方端部は、その上端がより前方に位置し、その下端がより後方に位置する後方への傾斜面を有してもよい。
上記前方端部に傾斜面を有するストッパ4330は、その前方端部において、その上端がより前方に位置し、その後端がより後方に位置すればよい。このとき、ストッパ4330の前方端部の形状は、第9の実施形態と同様に、切欠部、平面傾斜部、曲面部などとすることができる。
また、このときも、ストッパ4330の前方端部は、延伸部4334においてより後方に傾斜している。また、延伸部4334の高さは、ストッパ4330の高さの半分以下であって、咬合時に延伸部4334の下端は下顎マウスピース本体部4324の下端面よりも上方に位置する。また、ストッパ4330の前方端部の下端4337と位置決め部材4340の後方端部の下端4347とは、咬合時に互いから離間していることが好ましい。また、咬合時に、咬合面より下方において、ストッパ4330の前方の面(延伸部4334の前方の面)と位置決め部材4340の後方の面とは、互いから離間していることが好ましく、下顎マウスピース及び/又は上顎マウスピースの開口方向への移動時においても常に互いに離間していることがより好ましい。
このとき、下顎マウスピースが左右方向に変位することによるストッパ4330の破損を抑制する観点からは、ストッパ4330の前方端部は、図20Aに示すような切欠部であるとき、その下端4337が鈍角を形成することが好ましい。また、同様にストッパ4330の破損を抑制する観点からは、ストッパ4330は、咬合時における下顎マウスピース本体部4324への側面方向からの投影面積が、3mm2以上であることが好ましい。上記投影面積の上限は特に限定されない。上記投影面積は、たとえば3mm2以上1000mm2以下であることが好ましく、3mm2以上500mm2以下であることがより好ましく、3mm2以上450mm2以下であることがさらに好ましく、50mm2以上450mm2以下であることが極めて好ましい。
また、このときも、ストッパ4330の下顎マウスピース本体部4324との当接部、および下顎マウスピース4320のストッパ4330との当接部、はいずれも、下顎マウスピース4320が前方へ移動する動きを制限しない形状および配置である。具体的には、下顎マウスピース本体部4324のうちストッパ4330との当接部は、略平面形状をしている。また、一対のストッパ4330の延伸部4334の、下顎マウスピース4320との一対の当接面は互いに略平行であり、下顎マウスピース本体部4324の左右の外側面に位置する、一対のストッパ4330の延伸部4334との当接部は互いに略平行である。
なお、本実施形態においても、固定部4360は、下顎マウスピース本体部4324に脱着可能に構成されてもよいが、下顎マウスピース本体部4324に接着されてもよい。
また、本実施形態においても、ストッパ固定部4333は、上顎マウスピース本体部4314に脱着可能に構成されてもよいが、上顎マウスピース本体部4314に接着されてもよい。
なお、位置決め部材4340は、その高さが下顎マウスピース本体部4324よりも高い部位を部分的に有していてもよいが、その高さが常に下顎マウスピース本体部4324の高さ以下であることが好ましい。
また、位置決め部材4340は、その後方の面に傾斜面を設けて、位置決め部材4340と延伸部4334との当接面を互いに略平行としてもよい。
本実施形態によれば、咬合時に下顎マウスピース4320が左右方向へ変位したときに、位置決め部材4340には応力が印加されにくい。そのため、本実施形態のマウスピース4300は、左右方向への変位による位置調整部4350の破損を抑制可能である。
一方で、本実施形態によれば、位置決め部材4340は、より後方に位置調整されることにより、ストッパ4330の移動部4331がより後方に位置した状態でストッパ4330と位置決め部材4340とを当接させることができる。これにより、第2種てこの力点である延伸部4334と支点であるストッパ固定部4333との間の距離が短くなり、延伸部4334に印加された応力の、作用点であるストッパ調整部4332での過剰な増大が抑制される。そのため、位置決め部材4340は、下顎マウスピースが左右方向に変位することによるストッパ調整部4332の破損を抑制可能である。
また、本実施形態によれば、位置決め部材4340は、下顎マウスピース4320から上方に突出するウイングを有さないため、装着時にウイングが内頬に当接することによる使用者の違和感が生じにくい。
また、本実施形態によれば、位置決め部材4340は、下顎マウスピース4320から上方に突出するウイングを有さないため、下顎マウスピース4320の開口方向への移動時に位置決め部材4340とストッパ4330とが当接しにくい。そのため、本実施形態のマウスピース4300は、下顎マウスピース4320の開口方向への移動がより容易である。
[第11の実施形態]
本発明の第11の実施形態に係るマウスピース4400は、その模式的な側面図である図23に示すように、対向する一対の上顎および下顎マウスピースを有し、上顎マウスピース4410は使用者の上顎に、下顎マウスピース4420は使用者の下顎に、それぞれ装着可能に構成されている。また、下顎マウスピース本体部4424の外側面には前後方向に位置調整可能な左右一対の位置決め部材4440が、上顎マウスピース本体部4414の外側面には前後方向に位置調整可能な左右一対のストッパ4430が、それぞれ設けられている。なお、以下、第8の実施形態〜第10の実施形態のいずれかと共通する構成については説明を省略することがある。
なお、本実施形態においても、位置決め部材4440は、下顎マウスピース本体部4424の外側面に設けられた位置調整部4450によって前後方向に位置調整可能に構成される。また、本実施形態においても、ストッパ4430は、位置決め部材4440に当接する移動部4431と、ストッパ調整部4432と、ストッパ固定部4433とを有し、移動部4431とストッパ固定部4433とは、その対向面が略平行であり、移動部4431は、ストッパ調整部4432によってより前方に位置調整されて位置決め部材4440と当接する。位置決め部材4440が位置調整部4450によってより後方に位置調整され、または、ストッパ4430の移動部4431がストッパ調整部4432によってより前方に位置調整されることにより、咬合時に、下顎マウスピース4420を前方に移動させつつ、下顎マウスピース4420の後方への変位を制限できる。
また、本実施形態においても、位置調整部4450およびストッパ調整部4432は、位置決め部材4440が移動可能な幅がストッパ4430の移動部4431が移動可能な幅より狭くなるように、構成される。
また、本実施形態においても、位置決め部材4440は、下顎マウスピース本体部4424から上方に突出するウイング4444を有する。ウイング4444は、ストッパ4430と当接するその後方の面がストッパ4430の前方の面と略平行に形成されており、咬合時に、上顎マウスピース本体部4414の外側で上記ストッパ4430の前方の面と当接して、使用者の下顎の後方への変位を制限する。
一方で、本実施形態において、固定部4460は、下顎マウスピース4420の上方に延伸する突出部4462を有する。突出部4462は、咬合時に下顎マウスピース4420が左右方向へ変位するとき、上顎マウスピース4410と当接して上記左右方向への変位を規制する。
このとき、ウイング4444は、咬合時に下顎マウスピースが左右方向に変位して突出部4462が上顎マウスピース4410に当接するときに、上顎マウスピース4410に当接しにくい位置に配置される。これにより、左右方向への変位による応力の大部分は、固定部4460の突出部4462に印加されて、位置決め部材4440には応力が印加されにくい。そのため、下顎マウスピースが左右方向に変位することによる位置調整部4450の破損を抑制可能である。
たとえば、ウイング4444は、その内外方向の厚みを固定部4460の突出部4462より薄く形成され、かつ、その外側面が固定部4460およびその突出部4462の外側面と略同一面になる位置に設けられる。これにより、ウイング4444と上顎マウスピース本体部4414との間の咬合時の間隔は、突出部4462と上顎マウスピース本体部4414との間の咬合時の間隔よりも広くなる。
突出部4462は、固定部4460の外側面のうちより後方に設けられることが好ましく、その後端(たとえば、第一小臼歯(歯列4番)の外側面)に設けられることが好ましい。ヒトの内頬の皮膚は、より後方ほど伸縮しやすい。そのため、突出部4462がより後方に設けられるほど、マウスピース4400を装着した使用者の内頬のうち、皮膚がより伸縮しやすい部位に突出部4462が設けられることになるため、マウスピース4400を装着した使用者の装着感が向上する。
また、突出部4462は、その内外方向の厚みが固定部4460より薄く形成され、かつ、その外側面が固定部4460の外側面より内側となる位置に設けられることが好ましい。このようにすることで、装着時および開口時に突出部4462が内頬に当接することによる使用者の違和感がより生じにくい。
なお、本実施形態においても、固定部4460は、下顎マウスピース本体部4424に脱着可能に構成されてもよいが、下顎マウスピース本体部4424に接着されてもよい。
また、本実施形態においても、ストッパ固定部4433は、上顎マウスピース本体部4414に脱着可能に構成されてもよいが、上顎マウスピース本体部4414に接着されてもよい。
本実施形態によれば、左右方向への変位時に位置決め部材4440のウイング4444に印加されていた応力の大部分が、固定部4460に印加される。そのため、本実施形態のマウスピース4400は、左右方向への変位によって位置決め部材4440のウイング4444が上顎マウスピース本体部4414に当接したときの応力による位置調整部4450の破損を抑制可能である。
[第11の実施形態の変形例]
第11の実施形態において、第9の実施形態および第10の実施形態と同様に、ストッパ4430は延伸部(図23では不図示)を有していてもよい。これにより、装着時に使用者が開口などしたときでも、ストッパ4430の前方の面とウイング4444の後方の面とは互いに当接可能である。そのため、本実施形態のマウスピース4400は、装着時の開口などによるストッパ4430と位置決め部材4440との間のずれが生じにくく、これを装着した使用者の下顎の後方への変位をより効果的に抑制可能である。
このとき、ストッパ4430の延伸部は、咬合時に下顎マウスピースが左右方向に変位して突出部4462が上顎マウスピース4410に当接するときに、下顎マウスピース4420に当接しない位置に配置される。これにより、左右方向への変位による応力は、固定部4460の突出部4462に印加されるが、ストッパ4430には印加されにくい。そのため、下顎マウスピースが左右方向に変位することによるストッパ4430の破損も抑制可能である。
たとえば、ストッパ4430の延伸部は、その内外方向の厚みを固定部4460の突出部4462より薄く形成され、かつ、その外側面が固定部4460およびその突出部4462の外側面と略同一面になる位置に設けられる。これにより、ストッパ4430の延伸部と下顎マウスピース本体部4424との間の咬合時の間隔は、突出部4462と上顎マウスピース本体部4414との間の咬合時の間隔よりも広くなる。
このとき、第9の実施形態および第10の実施形態と同様に、ストッパ4430は、装着時に下顎マウスピース4420が開口方向に移動するときに、位置決め部材4440の移動をストッパ4430が制限しない形状を有する。具体的には、ストッパ4430は、下顎マウスピース4420の開口方向への移動を容易にする傾斜部を有してもよい。言い換えると、ストッパ4430の前方端部は、その上端がより前方に位置し、その下端がより後方に位置する後方への傾斜面を有してもよい。なお、ストッパ4430が有する傾斜部は、咬合時には位置決め部材4440のウイング4444と当接する。
上記前方端部に傾斜面を有するストッパ4430は、その前方端部において、その上端がより前方に位置し、その後端がより後方に位置すればよい。このとき、ストッパ4430の前方端部の形状は、第9の実施形態と同様に、切欠部、平面傾斜部、曲面部などとすることができる。
このときも、ストッパ4430の前方端部は、上記延伸部においてより後方に傾斜してもよい。また、上記延伸部の高さは、ストッパ4430の高さの半分以下であって、咬合時に上記延伸部の下端は下顎マウスピース本体部4424の下端面よりも上方に位置してもよい。また、このときも、ストッパ4430の前方端部の下端と位置決め部材4440の後方端部の下端とは、咬合時に互いから離間していることが好ましい。また、咬合時に、咬合面より下方において、ストッパ4430の前方の面(延伸部の前方の面)と位置決め部材4440の後方の面とは、互いから離間していることが好ましく、下顎マウスピース及び/又は上顎マウスピースの開口方向への移動時においても常に互いに離間していることがより好ましい。
また、このときも、下顎マウスピースが左右方向に変位することによるストッパ4430の破損を抑制する観点からは、ストッパ4430の前方端部は、図20Aに示すような切欠部であるとき、その下端が鈍角を形成することが好ましい。また、同様にストッパ4430の破損を抑制する観点からは、ストッパ4430は、咬合時における下顎マウスピース本体部4424への側面方向からの投影面積が、3mm2以上であることが好ましい。上記投影面積の上限は特に限定されない。上記投影面積は、たとえば3mm2以上1000mm2以下であることが好ましく、3mm2以上500mm2以下であることがより好ましく、3mm2以上450mm2以下であることがさらに好ましく、50mm2以上450mm2以下であることが極めて好ましい。
このときも、ストッパ4430の下顎マウスピース本体部4424との当接部、および下顎マウスピース4420のストッパ4430との当接部、はいずれも、下顎マウスピース4420が前方へ移動する動きを制限しない形状および配置であってもよい。具体的には、下顎マウスピース本体部4424のうちストッパ4430との当接部は、略平面形状をしてもよい。また、一対のストッパ4430の上記延伸部の、下顎マウスピース4420との一対の当接面は互いに略平行であり、下顎マウスピース本体部4424の左右の外側面に位置する、一対のストッパ4430の上記延伸部との当接部は互いに略平行であってもよい。
また、このとき、第10の実施形態と同様に、位置決め部材4440は、その高さが下顎マウスピース本体部4424の高さ以下であってもよい。さらには、位置決め部材4440は、その後方の面に傾斜面を設けて、位置決め部材4440と延伸部434との当接面を互いに略平行としてもよい。
[第8の実施形態〜第11の実施形態の変形例]
なお、第8の実施形態〜第11の実施形態はそれぞれ本発明の第4の側面の一例を示すものであり、本発明の第4の側面は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の第4の側面の思想の範囲内において、他の種々多様な実施形態も可能であることは言うまでもない。
たとえば、第8の実施形態〜第11の実施形態では、位置決め部材およびストッパは下顎または上顎マウスピースの外側面に設けられているが、位置決め部材およびストッパは下顎または上顎マウスピースの内側面に設けられていてもよい。このとき、当然ながら、固定部および位置調整部も下顎または上顎マウスピースの内側面に設けられる。
また、第8の実施形態〜第11の実施形態では、上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部には、歯列に装着可能な歯列型取部が形成されている。しかし上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部は、歯列が収まる形状であれば歯列型でなくてもよいし、上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部の一部だけ歯列型取部にしてもよい。
また、上顎および下顎マウスピースは複数の材料から構成されていてもよく、有機物で構成される部分と無機物で構成される部分との組み合わせで作られていても良い。
また、第8の実施形態〜第11の実施形態では、位置調整部は、ターンバックル機構を用いて、ターンバックル部と2本のねじ棒との間の螺合量によって位置決め部材の位置を調整しているが、位置調整部は、雄ねじと雌ねじとの螺合量を調整して位置決め部材の位置を調整可能なねじジャック機構を用いてもよい。また、位置調整部は、ラックの回転量を調整してラックに固着された位置決め部材の位置を調整可能なラックジャッキ機構を用いて、歯車によって位置決め部材を移動させつつ、ねじで位置決め部材を固定してもよい。位置調整部は、位置決め部材の位置を移動させ、かつ調整された位置で固定できる限りにおいて、他の機構により位置決め部材の位置を調整してもよい。
また、第8の実施形態〜第11の実施形態では、位置調整部およびストッパ調整部は、いずれもターンバックル機構を用いているが、位置調整部およびストッパ調整部はそれぞれ異なる機構によって位置決め部材および移動部の位置を調整してもよい。
また、第8の実施形態〜第11の実施形態では、位置調整部およびストッパ調整部は、位置決め部材が移動可能な幅がストッパの移動部が移動可能な幅より狭くなるように構成されている。しかし、位置調整部およびストッパ調整部の破損が顕著に生じ得ない限りにおいて、位置決め部材およびストッパの移動部が移動可能な幅が同じになるように構成されてもよいし、位置決め部材が移動可能な幅がストッパの移動部が移動可能な幅より広くなるように構成されてもよい。
また、第9の実施形態、第10の実施形態および第11の実施形態の変形例では、ストッパは、その前方端部が延伸部においてより後方に傾斜している。しかし、ストッパは、延伸部より上方からより後方に傾斜しはじめていてもよいし、延伸部の途中からより後方に傾斜してもよい。
また、第8の実施形態〜第11の実施形態では、ウイングと上顎マウスピースとの間、延伸部と下顎マウスピースとの間および突出部と上顎マウスピースとの間には、それぞれ隙間を形成して、マウスピースを装着した使用者の上顎および下顎が左右方向へ移動することを許容している。しかし、上記部材間に隙間を設けずに、マウスピースを装着した使用者の上顎および下顎が左右方向へ移動できない構成としてもよい。
また、第9の実施形態および第10の実施形態では、咬合時に下顎マウスピースが左右方向に変位してウイングはが上顎マウスピースに当接するときに、延伸部も下顎マウスピースに当接する。しかし、ウイング(位置決め部材)または延伸部(ストッパ)は、これらのうちより壊れにくい部材のみが当接する位置に配置されてもよい。
また、第11の実施形態では、ウイングは、咬合時に下顎マウスピースが左右方向に変位して固定部の突出部が上顎マウスピースに当接するときに、上顎マウスピースに当接しない位置に配置されている。また、第11の実施形態の変形例では、ウイングおよび延伸部は、咬合時に下顎マウスピースが左右方向に変位して突出部が上顎マウスピースに当接するときに、上顎マウスピースに当接しない位置に配置されている。しかし、ウイングまたは延伸部は、上記突出部が上顎マウスピースに当接するときに、同時に上顎マウスピースに当接してもよい。
このときも、左右変位による応力は固定部の突出部に分散される。そのため、ウイングまたは延伸部にはより小さな応力のみが印加され、第2種てこの力点であるウイングまたは延伸部に印加された応力が作用点である位置調整部またはストッパ調整部でより大きな応力になることによる、位置調整部またはストッパ調整部の破損が抑制される。
また、これにより、下顎マウスピースの左右方向への変位を、突出部とウイングまたは延伸部とで同時に規制する。そのため、マウスピースを装着した使用者の歯ぎしりなどによる上顎マウスピースと下顎マウスピースとのずれがより効果的に抑制され、より装着感が高くなる。
また、第11の実施形態では、左右方向への変位による応力を固定部の突出部のみに印加する場合に、位置決め部材のウイングの内外方向の厚みを固定部の突出部より薄くしている。また、第11の実施形態の変形例では、左右方向への変位による応力を固定部の突出部のみに印加する場合に、位置決め部材のウイングおよびストッパの延伸部の内外方向の厚みを固定部の突出部より薄くしている。しかし、位置決め部材またはストッパを固定部より外側に配置して、下顎マウスピースが左右方向に変位するときにウイングまたは延伸部が上顎マウスピースに当接しないようにしてもよい。このとき、位置決め部材およびそのウイングの外側面、またはストッパおよびその延伸部の外側面は、固定部およびその突出部の外側面と略同一面にならなくてもよい。
また、第9の実施形態、第10の実施形態および第11の実施形態の変形例では、ストッパの延伸部は、ストッパ固定部および移動部の双方から延伸している。しかし、ストッパの延伸部は、ストッパ固定部または移動部のいずれかのみから延伸してもよい。
[第4の側面に関するマウスピースの構成例]
本発明の第4の側面によれば、
対向する一対の上顎および下顎マウスピースと、
前記上顎又は下顎マウスピースの一方のマウスピースに設けられ、前後方向に位置調整可能な一対の位置決め部材と、
前記上顎および下顎マウスピースの他方のマウスピースに設けられ、前記位置決め部材に当接して前記下顎マウスピースの後方への変位を規制する、前後方向に位置調整可能な一対のストッパと、
を有するマウスピースが提供される。
当該マウスピースは、位置決め部材と位置決め部材を固定する固定部との間の距離が短くなり、位置決め部材に印加された応力の、位置調整部での過剰な増大が抑制される。そのため、ストッパは、下顎マウスピースが左右方向に変位することによる位置調整部の破損を抑制可能である。
また、本発明の第4の側面によれば、
前記位置決め部材は、前記他方のマウスピースの外側で前記ストッパに当接するウイングを有する、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、上顎マウスピース本体部の外側で上記ストッパとウイングとが当接して、使用者の下顎の後方への変位を制限可能である。
また、本発明の第4の側面によれば、
前記位置決め部材は、その位置調整可能な幅が前記ストッパの位置調整可能な幅よりも狭い、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、位置決め部材がより後方には位置調整されにくくなり、位置決め部材に印加された応力が作用点である位置調整部で過剰に増大することによる、位置調整部の破損を抑制可能である。
また、本発明の第4の側面によれば、
前記ストッパは、前記他方のマウスピースの側面に固定される固定部と、前後方向に移動可能な移動部と、を備え、前記固定部と前記移動部とはその対向面が略平行である、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、固定部と移動部との当接による応力をより広い範囲に分散可能であり、固定部および移動部がより破損しにくい。
また、本発明の第4の側面によれば、
前記ストッパは、その高さが前記他方のマウスピースの高さ以下である、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースが左右方向に変位したときに、ストッパは下顎マウスピースにほぼ当接せず、下顎マウスピースが左右方向に変位することによるストッパ調整部の破損も抑制される。
また、本発明の第4の側面によれば、
前記ストッパは、前記一方のマウスピースの方向に延伸する延伸部を有する、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、左右方向への変位による応力が、位置決め部材およびストッパに分散され、上記応力による位置調整部の破損をより効果的に抑制可能である。一方で、当該マウスピースは、上記応力の分散により、ストッパ調整部の破損も生じにくい。
また、本発明の第4の側面によれば、
前記延伸部は、その高さが前記ストッパの高さの半分以下である、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、装着時の下顎マウスピースの開口方向への移動を延伸部が制限せず、下顎マウスピースの開口方向への移動がより容易になる。
また、本発明の第4の側面によれば、前記ストッパおよび前記位置決め部材は、咬合時に、それぞれの前記一方のマウスピース側の端部が互いから離間する形状を有する、上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースの開口方向への移動がより容易になる。
また、本発明の第4の側面によれば、前記ストッパおよび前記位置決め部材は、咬合時および前記下顎マウスピースの開口方向への移動時に、前記上顎および下顎マウスピースの咬合面より前記一方のマウスピース側において、対向する面が互いから離間する形状を有する、上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースの開口方向への移動がより容易になる。
また、本発明の第4の側面によれば、前記ストッパは、前方端部の前記一方のマウスピース側の端部の下端が鈍角を形成する形状を有する、上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースが左右方向に変位することによるストッパの破損が抑制される。
また、本発明の第4の側面によれば、前記ストッパは、咬合時の前記一方のマウスピースへの側面方向からの投影面積が、3mm2以上である形状を有する、上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースが左右方向に変位することによるストッパの破損が抑制される。
また、本発明の第4の側面によれば、
前記位置決め部材は、その高さが前記一方のマウスピースの高さ以下である、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、位置決め部材の位置調整をストッパが制限しにくい。
また、本発明の第4の側面によれば、
前記ストッパは、前記下顎マウスピースの開口方向への移動を容易にする傾斜部を有する、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、これを装着した使用者の開口を容易にする。
また、本発明の第4の側面によれば、
前記一方のマウスピースの前記ストッパとの当接部は略平面形状である、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースが、延伸部により移動を規制されることなく前方へ移動可能である。
また、本発明の第4の側面によれば、
前記一対のストッパの前記一方のマウスピースとの当接面は、互いに略平行であり、
前記一方のマウスピースの前記一対のストッパとの当接面は、互いに略平行である、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースが、延伸部により移動を規制されることなく前方へ移動可能である。
また、本発明の第4の側面によれば、
前記位置決め部材は、下顎マウスピースに設けられる、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、これを装着した使用者の内頬のうち、皮膚がより伸縮しやすいより後方の部位に突出部が設けられることになるため、マウスピースを装着した使用者の装着感が向上する。
5.第5の側面に関するマウスピース
本発明の第5の側面に関するマウスピースは、下顎マウスピースを前方に移動させるときに位置調整部の移動量をより小さくした構成とすることで、上記第2種てこの原理によって上記位置調整部に印加される応力を小さくして、上記左右方向の変位による位置調整部の破損を抑制する。
[第12の実施形態]
本発明の第12の実施形態に係るマウスピース5100は、その模式的な斜視図である図24および側面図である図25に示すように、対向する一対の上顎および下顎マウスピースを有し、上顎マウスピース5110は使用者の上顎に、下顎マウスピース5120は使用者の下顎に、それぞれ装着可能に構成されている。
上顎マウスピース5110は、図24Aに示すように、使用者の上顎の歯列に装着可能な歯列型取部5112が形成された上顎マウスピース本体部5114を有し、その外側面には前後方向に位置調整可能な左右一対の位置決め部材5140が設けられている。
下顎マウスピース5120は、図24Bに示すように、使用者の下顎の歯列に装着可能な歯列型取部5122が形成された下顎マウスピース本体部5124を有し、その外側面には左右一対のストッパ5130が設けられている。
位置決め部材5140は、図25に示すように、使用者が上顎マウスピース5110および下顎マウスピース5120を装着して咬合したときに、位置決め部材5140の前方の面5142とストッパ5130の後方の面5132とが当接する位置に位置調整可能である。上記位置決め部材5140とストッパ5130との当接により、咬合時の下顎マウスピース5120の後方への変位が制限され、マウスピース5100を装着した使用者の下顎の後方への変位が制限される。これにより、マウスピース5100は、これを装着した使用者の下顎が後方に変位することによる気道の狭窄を防ぎ、睡眠時の呼吸停止または低呼吸を抑制可能である。
また、位置決め部材5140は、上顎マウスピース本体部5114の外側面に設けられた位置調整部5150によって前後方向に位置調整可能に構成される。位置決め部材5140は、位置調整部5150によってより前方に位置調整されることにより、咬合時に、下顎マウスピース5120を前方に移動させつつ、下顎マウスピース5120の後方への変位を制限可能である。これにより、マウスピース5100は、これを装着した使用者の下顎を前方に移動させて上記使用者の気道をより大きく開放させ、睡眠時の呼吸停止または低呼吸をより効果的に抑制可能である。
位置調整部5150は、位置決め部材5140より前方に設けられ、位置決め部材5140の前後方向の位置を調整する。具体的には、位置調整部5150は、位置決め部材5140を支持した状態で上顎マウスピース5110の位置決め部材5140より前方に設けられた固定部5160に支持され、固定部5160と位置決め部材5140との間の間隔を調整して、位置決め部材5140の位置を調整する。
より具体的には、位置調整部5150は、上顎マウスピース本体部5114の外側面に設けられた固定部5160にその一端が固定された、雄ねじを切ったねじ棒5152と、位置決め部材5140にその一端が固定された、雄ねじを切ったねじ棒5154と、ねじ棒5152および5154の他方の端部がそれぞれ螺合するねじ孔に挿入されたターンバックル部5156と、を有する。位置調整部5150は、ターンバックル部5156に設けられたピン孔に回転用ピンを差し込んでターンバックル部5156を回転させ、ターンバックル部5156とねじ棒5152および5154との螺合量を調整して、ねじ棒5154に固着されて支持された位置決め部材5140の位置を調整可能である。
位置調整部5150の前端(固定部5160の後端)は、位置調整部5150の破損を抑制しつつ、使用者の下顎を前方に十分に移動させることができる位置に設ければよい。位置調整部5150の前端(固定部5160の後端)をより前方の位置(たとえば、第一小臼歯(歯列4番))の位置に設けることで、使用者の下顎を前方に移動させる範囲をより広くすることができ、位置調整部5150の前端(固定部5160の後端)をより後方の位置(たとえば、第二小臼歯(歯列5番)または第一大臼歯(歯列6番))の位置に設けることで、位置調整部5150の破損をより効果的に抑制可能である。
位置決め部材5140は、上顎マウスピース本体部5114から下方に突出するウイング5144を有する。ウイング5144は、その前方の面(位置決め部材5140の、ストッパ5130と当接する前方の面5142でもある)が上記ストッパ5130の後方の面5132と略平行に形成されており、咬合時に、下顎マウスピース本体部5124の外側で上記ストッパ5130の後方の面5132と当接して、使用者の下顎の後方への変位を制限する。
ストッパ5130は、咬合時に、位置調整部5150と同一方向から位置決め部材5140に当接して、下顎マウスピース5120の後方への変位を制限する。
言い換えると、ストッパ5130は、下顎マウスピース5120の外側面かつ咬合時に位置決め部材5140よりも前方となる位置に設けられて、咬合時に、その後方の面5132が位置決め部材5140の前方の面5142と当接する。さらに言い換えると、ストッパ5130は、その前後方向の位置が、咬合時に固定部5160と位置決め部材5140との間になる位置に配置される。これにより、位置決め部材5140が前後方向に位置調整され得る範囲をより広くして、下顎の前方への移動量をより大きくすることができる。
ストッパ5130は、その高さが下顎マウスピース5120の高さ以下である。なお、下顎マウスピース5120の高さは場所によって異なっていてもよい。このとき、ストッパ5130は、その高さが、ストッパ5130が設けられた部位における下顎マウスピース本体部5124の高さ以下であることが好ましい。これにより、位置調整部5150による位置決め部材5140の位置の調整をストッパ5130が制限することなく、位置決め部材5140の位置の調整がより容易になる。
ストッパ5130およびウイング5144は、装着時に下顎マウスピース5120が開口方向に移動するときに、ストッパ5130の移動をウイング5144が制限しない形状を有する。具体的には、ウイング5144は、下顎マウスピース5120の開口方向への移動を容易にする傾斜部5146を有してもよい。また、ストッパ5130は、下顎マウスピース5120の開口方向への移動を容易にする傾斜部5136を有してもよい。言い換えると、ウイング5144は、その前方端部に、その上端がより前方に位置し、その下端がより後方に位置する後方への傾斜面を含んでもよく、ストッパ5130は、その後方端部に、その上端がより前方に位置し、その下端がより後方に位置する後方への傾斜面を含んでもよい。なお、ウイング5144が有する傾斜部5146とストッパ5130が有する傾斜部5136とは、咬合時には互いに当接する。
装着時の下顎マウスピース5120は、開口方向に移動するときに、円弧状の軌道上を移動する。このような移動に対し、ウイング5144の前方端部およびストッパ5130の後方端部が上記傾斜面を有することで、ストッパ5130の移動をウイング5144が制限せず、マウスピース5100を装着した使用者の開口が容易となる。
また、位置決め部材5140の下顎マウスピース本体部5124との当接部、つまりはウイング5144の下顎マウスピース5120との当接部、は、下顎マウスピース5120が前方へ移動する動きを制限しない形状および配置である。具体的には、マウスピース5100の模式的な平面図である図26(上顎マウスピース、固定部、位置調整部および位置決め部材を破線で示し、下顎マウスピースおよびストッパを実線で示す。)に示すように、下顎マウスピース本体部5124のうちウイング5144との当接部5128は、略平面形状をしている。また、一対のウイング5144の、下顎マウスピース5120との一対の当接面5148は互いに略平行であり、下顎マウスピース本体部5124の左右の外側面に位置する、一対のウイング5144との当接部5128は互いに略平行である。
これにより、下顎マウスピース5120は、ウイング5144により移動を規制されることなく前方へ移動可能である。このとき、たとえば下顎マウスピース本体部5124は、その奥歯近辺の部分において、左右方向の厚みが前方(たとえば第一大臼歯(歯列6番)近傍の外側面)はより厚く、後方(たとえば第二大臼歯(歯列7番)または第三大臼歯(歯列8番)近傍の外側面)はより薄くなるように構成されることが好ましい。
ストッパ5130は、下顎マウスピース本体部5124に脱着可能に構成されてもよいが、下顎マウスピース本体部5124に接着されてもよい。あるいは、ストッパ5130は、下顎マウスピース本体部5124の外側面に一体的に形成されてもよい。
固定部5160は、上顎マウスピース本体部5114に脱着可能に構成されてもよいが、上顎マウスピース本体部5114に接着されてもよい。固定部5160が上顎マウスピース本体部5114に接着されると、装着時に固定部5160および位置決め部材5140のずれが生じにくい。
本実施形態によれば、下顎を前進させるときの位置調整部5150の延伸量をより少なくできる。そのため、本実施形態のマウスピース5100は、第2種てこの支点を構成する固定部5160と力点を構成するウイング5144との間の距離を小さくして、下顎マウスピースが左右方向に変位したときにウイング5144に印加された応力が、作用点である位置調整部5150で過剰に増大することによる、位置調整部5150の破損を抑制可能である。
特に、上記位置調整部5150の破損を抑制する効果は、位置調整部5150の前端の位置をより後方の位置(たとえば、第1小臼歯(歯列5番)の位置)にしたときに顕著である。
また、本実施形態によれば、マウスピース5100を装着した使用者の内頬のうち、皮膚がより伸縮しやすいより後方の部位にウイング5144が設けられることになるため、マウスピース5100を装着した使用者の装着感が向上する。
[第13の実施形態]
本発明の第13の実施形態に係るマウスピース5200は、その模式的な側面図である図27に示すように、対向する一対の上顎および下顎マウスピースを有し、上顎マウスピース5210は使用者の上顎に、下顎マウスピース5220は使用者の下顎に、それぞれ装着可能に構成されている。また、下顎マウスピース本体部5224の外側面には前後方向に位置調整可能な左右一対の位置決め部材5240が、上顎マウスピース本体部5214の外側面には左右一対のストッパ5230が、それぞれ設けられている。なお、以下、第12の実施形態と共通する構成については説明を省略することがある。
本実施形態において、位置決め部材5240は、図27に示すように、咬合時に、位置決め部材5240の後方の面とストッパ5230の前方の面とが当接する位置に位置調整可能である。上記位置決め部材5240とストッパ5230との当接により、咬合時の下顎マウスピース5220の後方への変位が制限され、マウスピース5200を装着した使用者の下顎の後方への変位が制限される。
また、位置決め部材5240は、下顎マウスピース本体部5224の外側面に設けられた位置調整部5250によって前後方向に位置調整可能に構成される。位置決め部材5240は、位置調整部5250によってより後方に位置調整されることにより、咬合時に、下顎マウスピース5220を前方に移動させつつ、下顎マウスピース5220の後方への変位を制限可能である。
位置調整部5250は、位置決め部材5240より後方に設けられ、位置決め部材5240の前後方向の位置を調整する。具体的には、位置調整部5250は、位置決め部材5240を支持した状態で下顎マウスピース5220の位置決め部材5240より後方に設けられた固定部5260に支持され、固定部5260と位置決め部材5240との間の間隔を調整して、位置決め部材5240の位置を調整する。
より具体的には、位置調整部5250は、下顎マウスピース本体部5224の外側面に設けられた固定部5260にその一端が固定された、雄ねじを切ったねじ棒5252と、位置決め部材5240にその一端が固定された、雄ねじを切ったねじ棒5254と、ねじ棒5252および5254の他方の端部がそれぞれ螺合するねじ孔に挿入されたターンバックル部5256と、を有する。位置調整部5250は、ターンバックル部5256に設けられたピン孔に回転用ピンを差し込んでターンバックル部5256を回転させ、ターンバックル部5256とねじ棒5252および5254との螺合量を調整して、ねじ棒5254に固着されて支持された位置決め部材5240の位置を調整可能である。
位置決め部材5240は、下顎マウスピース本体部5224から上方に突出するウイング5244を有する。ウイング5244は、その後方の面(位置決め部材5240の、ストッパ5230と当接する後方の面でもある)が上記ストッパ5230の前方の面と略平行に形成されており、咬合時に、上顎マウスピース本体部5214の外側で上記ストッパ5230の前方の面と当接して、使用者の下顎の後方への変位を制限する。
ストッパ5230は、咬合時に、位置調整部5250と同一方向から位置決め部材5240に当接して、下顎マウスピース5220の後方への変位を制限する。
言い換えると、ストッパ5230は、下顎マウスピース5220の外側面かつ咬合時に位置決め部材5240よりも後方となる位置に設けられて、咬合時に、その前方の面が位置決め部材5240の後方の面と当接する。さらに言い換えると、ストッパ5230は、その前後方向の位置が、咬合時に固定部5260と位置決め部材5240との間になる位置に配置される。これにより、位置決め部材5240が前後方向に位置調整され得る範囲をより広くして、下顎の前方への移動量をより大きくすることができる。
また、ストッパ5230は、位置調整部5250の破損を抑制しつつ、使用者の下顎を前方に十分に移動させることができる位置に設ければよい。ストッパ5230をより前方の位置(たとえば、第一大臼歯(歯列6番))の位置に設けることで、使用者の下顎を前方に移動させる範囲をより広くすることができ、ストッパ5230をより後方の位置(たとえば、第二大臼歯(歯列7番))の位置に設けることで、位置調整部5150の破損をより効果的に抑制可能である。
ストッパ5230は、その高さが上顎マウスピース5210の高さ以下である。なお、上顎マウスピース5210の高さは場所によって異なっていてもよい。このとき、ストッパ5230は、その高さが、ストッパ5230が設けられた部位における上顎マウスピース本体部5214の高さ以下であることが好ましい。これにより、位置調整部5250による位置決め部材5240の位置の調整をストッパ5230が制限することなく、位置決め部材5240の位置の調整がより容易になる。
ストッパ5230およびウイング5244は、装着時に下顎マウスピース5220が開口方向に移動するときに、ウイング5244の移動をストッパ5230が制限しない形状を有する。具体的には、ストッパ5230は、下顎マウスピース5220の開口方向への移動を容易にする傾斜部5236を有してもよい。また、ウイング5244は、下顎マウスピース5220の開口方向への移動を容易にする傾斜部5246を有してもよい。言い換えると、ストッパ5230は、その前方端部に、その上端がより前方に位置し、その下端がより後方に位置する後方への傾斜面を含んでもよく、ウイング5244は、その後方端部に、その上端がより前方に位置し、その下端がより後方に位置する後方への傾斜面を含んでもよい。なお、ストッパ5230が有する傾斜部5236とウイング5244が有する傾斜部5246とは、咬合時には互いに当接する。
なお、第13の実施形態においても、ストッパ5230は、上顎マウスピース本体部5214に脱着可能に構成されてもよいが、上顎マウスピース本体部5214に接着されてもよい。
また、第13の実施形態においても、固定部5260は、下顎マウスピース本体部5224に脱着可能に構成されてもよいが、下顎マウスピース本体部5224に接着されてもよい。
本実施形態によれば、下顎マウスピース5220が前方へ移動する動きを容易にするために、下顎マウスピース5220の左右方向の厚みを調整する必要がないため、マウスピース5200を装着した使用者の装着感が向上する。
つまり、第12の実施形態に係るマウスピース5100と、第13の実施形態に係るマウスピース5200とは、使用者の歯列の形状にあわせて、より装着感が高いものを適宜選択可能である。
[第14の実施形態]
本発明の第14の実施形態に係るマウスピース5300は、その模式的な側面図である図28に示すように、対向する一対の上顎および下顎マウスピースを有し、上顎マウスピース5310は使用者の上顎に、下顎マウスピース5320は使用者の下顎に、それぞれ装着可能に構成されている。また、第12の実施形態と同様に、上顎マウスピース本体部5314の外側面には前後方向に位置調整可能な左右一対の位置決め部材5340が、下顎マウスピース本体部5324の外側面には左右一対のストッパ5330が、それぞれ設けられている。なお、以下、第12の実施形態と共通する構成については説明を省略することがある。
なお、本実施形態においても、位置決め部材5340は、上顎マウスピース本体部5314の外側面に設けられた位置調整部5350によって前後方向に位置調整可能に構成される。位置決め部材5340は、位置調整部5350によってより前方に位置調整されることにより、咬合時に、下顎マウスピース5320を前方に移動させつつ、下顎マウスピース5320の後方への変位を制限可能である。
また、本実施形態においても、位置決め部材5340は、上顎マウスピース本体部5314から下方に突出するウイング5344を有する。ウイング5344は、ストッパ5330と当接するその前方の面がストッパ5330の後方の面と略平行に形成されており、咬合時に、下顎マウスピース本体部5324の外側で上記ストッパ5330の後方の面と当接して、使用者の下顎の後方への変位を制限する。
また、本実施形態においても、ストッパ5330は、咬合時に、位置調整部5350と同一方向から位置決め部材5340に当接して、下顎マウスピース5320の後方への変位を制限する。言い換えると、ストッパ5330は、下顎マウスピース5320の外側面かつ咬合時に位置決め部材5340よりも前方となる位置に設けられて、咬合時に、その後方の面332が位置決め部材5340の前方の面342と当接する。さらに言い換えると、ストッパ5330は、その前後方向の位置が、咬合時に固定部5360と位置決め部材5340との間になる位置に配置される。
また、本実施形態においても、ストッパ5330は、その高さが下顎マウスピース5320の高さ以下であることが好ましい。
一方で、本実施形態において、固定部5360は、上顎マウスピース5310の下方に突出する突出部5362を有する。突出部5362は、咬合時に下顎マウスピース5320が左右方向へ変位するとき、下顎マウスピース5320と当接して上記左右方向への変位を規制する。
このとき、位置決め部材5340は、咬合時に下顎マウスピースが左右方向に変位して突出部5362が下顎マウスピース5320に当接するときに、下顎マウスピース5320に当接しにくい位置に配置される。これにより、左右方向への変位による応力は、その大部分が固定部5360の突出部5362に印加されて、位置決め部材5340には印加されにくくなる。そのため、下顎マウスピース5320が左右方向に変位することによる位置調整部5350の破損が抑制可能である。
たとえば、ウイング5344は、その内外方向の厚みを固定部5360の突出部5362より薄く形成され、かつ、その外側面が固定部5360またはその突出部5362の外側面と略同一面になる位置に設けられる。これにより、ウイング5344と下顎マウスピース本体部5324との間の咬合時の間隔は、突出部5362と下顎マウスピース本体部5324との間の咬合時の間隔よりも広くなる。
突出部5362は、固定部5360の外側面のうちより後方に設けられることが好ましく、その後端に設けられることが好ましい。これにより、マウスピース5300を装着した使用者の内頬のうち、皮膚がより伸縮しやすいより後方の部位に突出部5362が設けられることになるため、マウスピース5300を装着した使用者の装着感が向上する。
なお、突出部5362は、その内外方向の厚みが固定部5360より薄く形成され、かつ、その外側面が固定部5360の外側面より内側となる位置に設けられることが好ましい。これにより、装着時および開口時に突出部5362が内頬に当接することによる使用者の違和感がより生じにくい。
なお、第14の実施形態においても、ストッパ5330は、下顎マウスピース本体部5324に脱着可能に構成されてもよいが、下顎マウスピース本体部5324に接着されてもよい。
また、第14の実施形態においても、固定部5360は、上顎マウスピース本体部5314に脱着可能に構成されてもよいが、上顎マウスピース本体部5314に接着されてもよい。
本実施形態によれば、左右方向への変位時に位置決め部材5340のウイング5344のみに印加されていた応力の大部分が、固定部5360の突出部5362に主に印加される。そのため、本実施形態のマウスピース5300は、左右方向への変位によって位置決め部材5340のウイング5344が上顎マウスピース本体部5314に当接したときの応力による位置調整部5350の破損をより効果的に抑制可能である。
なお、本実施形態においても、第13の実施形態と同様に、位置決め部材が下顎マウスピースに設けられ、ストッパが上顎マウスピースに設けられてもよい。このとき、当然ながら、固定部および位置調整部も下顎マウスピースに設けられる。また、このとき、固定部および位置調整部は位置決め部材よりも後方に配置され、ストッパも位置決め部材よりも後方に配置される。また、このとき、位置決め部材の前方の面および前方端部はその後方の面および後方端部に、ストッパの後方の面および後方端部はその前方の面および前方端部に、それぞれ読み替えられる。
[第15の実施形態]
本発明の第15の実施形態に係るマウスピース5400は、その模式的な側面図である図29に示すように、対向する一対の上顎および下顎マウスピースを有し、上顎マウスピース5410は使用者の上顎に、下顎マウスピース5420は使用者の下顎に、それぞれ装着可能に構成されている。また、第12の実施形態と同様に、上顎マウスピース本体部5414の外側面には前後方向に位置調整可能な左右一対の位置決め部材5440が、下顎マウスピース本体部5424の外側面には左右一対のストッパ5430が、それぞれ設けられている。なお、以下、第12の実施形態と共通する構成については説明を省略することがある。
なお、本実施形態においても、位置決め部材5440は、上顎マウスピース本体部5414の外側面に設けられた位置調整部5450によって前後方向に位置調整可能に構成される。位置決め部材5440は、位置調整部5450によってより前方に位置調整されることにより、咬合時に、下顎マウスピース5420を前方に移動させつつ、下顎マウスピース5420の後方への変位を制限可能である。
また、本実施形態においても、位置決め部材5440は、上顎マウスピース本体部5414から下方に突出するウイング5444を有する。ウイング5444は、ストッパ5430と当接するその前方の面がストッパ5430の後方の面と略平行に形成されており、咬合時に、下顎マウスピース本体部5424の外側で上記ストッパ5430の後方の面と当接して、使用者の下顎の後方への変位を制限する。
一方で、本実施形態において、ストッパ5430は、位置決め部材5440に当接する移動部5433と、移動部5433を前後方向に位置調整するストッパ調整部5434と、下顎マウスピース本体部5424の外側面に固定されたストッパ固定部5435と、を有する。移動部5433とストッパ固定部5435とは、その対向面が略平行である。
移動部5433は、ストッパ調整部5434によってより後方に位置調整されて位置決め部材5440と当接することにより、咬合時に、下顎マウスピース5420を前方に突出させつつ、下顎マウスピース5420の後方への変位を制限可能である。
ストッパ調整部5434は、ストッパ固定部5435にその一端が固定された、雄ねじを切ったねじ棒5434aと、移動部5433にその一端が固定された、雄ねじを切ったねじ棒5434bと、ねじ棒5434aおよび5434bの他方の端部がそれぞれ螺合するねじ孔に挿入されたターンバックル部5434cと、を有する。ストッパ調整部5434は、ターンバックル部5434cに設けられたピン孔に回転用ピンを差し込んでターンバックル部5434cを回転させ、ターンバックル部5434cとねじ棒5434aおよび5434bとの螺合量を調整して、ねじ棒5434bに固着された移動部5433の位置を調整可能である。
本実施形態によれば、移動部5433をより後方に位置調整することで、下顎マウスピース5420を前方に移動させるときに、位置調整部5450の移動量を少なくすることができる。そのため、位置調整部5450の長さをより短くして、第2種てこの力点であるウイング5444と支点である固定部5460との間の距離をより短くすることができる。そのため、下顎マウスピースが左右方向に変位したときにウイング5444に印加された応力が、作用点である位置調整部5450で過剰に増大することによる、位置調整部5450の破損を抑制可能である。
一方で、本実施形態によれば、位置調整部5450による位置決め部材5440の位置の調整に加えて、ストッパ調整部5434によるストッパ5430の移動部5433の位置の調整によっても、下顎マウスピース5420の前方への移動量を調整可能である。そのため、下顎マウスピースの前方への移動量を位置調整部のみで調整していた従来のマウスピースに比べて、下顎マウスピース5420の前方への移動量を増加させることも可能である。
なお、本実施形態においても、第13の実施形態と同様に、位置決め部材が下顎マウスピースに設けられ、ストッパが上顎マウスピースに設けられてもよい。このとき、当然ながら、固定部および位置調整部も下顎マウスピースに設けられる。また、このとき、固定部および位置調整部は位置決め部材よりも後方に配置され、ストッパも位置決め部材よりも後方に配置される。また、このとき、位置決め部材の前方の面および前方端部はその後方の面および後方端部に、ストッパの後方の面および後方端部はその前方の面および前方端部に、それぞれ読み替えられる。
[第12の実施形態〜第15の実施形態の変形例]
なお、第12の実施形態〜第15の実施形態はそれぞれ本発明の第5の側面の一例を示すものであり、本発明の第5の側面は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の第5の側面の思想の範囲内において、他の種々多様な実施形態も可能であることは言うまでもない。
たとえば、第12の実施形態〜第15の実施形態では、位置決め部材およびストッパは下顎または上顎マウスピースの外側面に設けられているが、位置決め部材およびストッパは下顎または上顎マウスピースの内側面に設けられていてもよい。このとき、当然ながら、固定部および位置調整部も下顎または上顎マウスピースの内側面に設けられる。
また、第12の実施形態〜第15の実施形態では、上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部には、歯列に装着可能な歯列型取部が形成されている。しかし上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部は、歯列が収まる形状であれば歯列型でなくてもよいし、上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部の一部だけ歯列型取部にしてもよい。
また、上顎および下顎マウスピースは複数の材料から構成されていてもよく、有機物で構成される部分と無機物で構成される部分との組み合わせで作られていても良い。
また、第12の実施形態〜第15の実施形態では、位置調整部(および第14の実施形態におけるストッパ調整部)は、ターンバックル機構を用いて、ターンバックル部と2本のねじ棒との間の螺合量によって位置決め部材の位置を調整しているが、位置調整部(およびストッパ調整部)は、雄ねじと雌ねじとの螺合量を調整して位置決め部材の位置を調整可能なねじジャック機構を用いてもよい。また、位置調整部(およびストッパ調整部)は、ラックの回転量を調整してラックに固着された位置決め部材の位置を調整可能なラックジャッキ機構を用いて、歯車によって位置決め部材を移動させつつ、ねじで位置決め部材を固定してもよい。位置調整部(およびストッパ調整部)は、位置決め部材の位置を移動させ、かつ調整された位置で固定できる限りにおいて、他の機構により位置決め部材の位置を調整してもよい。
また、第12の実施形態〜第15の実施形態では、ウイングと上顎または下顎マウスピースとの間および突出部と上顎または下顎マウスピースとの間には、それぞれ隙間を形成して、マウスピースを装着した使用者の上顎および下顎が左右方向へ移動することを許容している。しかし、上記部材間に隙間を設けずに、マウスピースを装着した使用者の上顎および下顎が左右方向へ移動できない構成としてもよい。
また、第14の実施形態では、ウイングは、咬合時に下顎マウスピースが左右方向に変位して突出部が下顎マウスピースに当接するときに、下顎マウスピースに当接しない位置に配置されている。しかし、ウイングは、突出部が下顎マウスピースに当接するときに、同時に下顎マウスピースに当接してもよい。
これにより、左右方向への変位による応力は、位置決め部材のウイングのみならず、固定部の突出部にも印加されて、ウイングと突出部との双方に分散される。そのため、ウイングにはより小さな応力のみが印加され、第2種てこの力点であるウイングに印加された応力が作用点である位置調整部でより大きな応力になることによる、位置調整部の破損が抑制される。
また、これにより、下顎マウスピースの左右方向への変位を、ウイングと突出部で同時に規制する。そのため、マウスピースを装着した使用者の歯ぎしりなどによる上顎マウスピースと下顎マウスピースとのずれがより効果的に抑制され、より装着感が高くなる。
また、第14の実施形態では、左右方向への変位による応力を固定部の突出部のみに印加する場合に、位置決め部材のウイングの内外方向の厚みを固定部の突出部より薄くしている。しかし、位置決め部材をストッパまたは固定部より外側に配置して、下顎マウスピースが左右方向に変位するときにウイングが下顎マウスピースに当接しないようにしてもよい。このとき、位置決め部材およびそのウイングの外側面は、固定部およびその突出部の外側面と略同一面にならなくてもよい。
[第5の側面に関するマウスピースの構成例]
本発明の第5の側面によれば、
対向する一対の上顎および下顎マウスピースと、
前記上顎または下顎マウスピースの一方のマウスピースに設けられ、前後方向に位置調整可能な一対の位置決め部材と、
前記一方のマウスピースの前記位置決め部材より前方または後方に設けられ、前記位置決め部材の前後方向の位置を調整する位置調整部と、
前記上顎または下顎マウスピースの他方のマウスピースに設けられ、前記位置調整部と同一方向から前記位置決め部材に当接して前記下顎マウスピースの後方への変位を規制する一対のストッパと、
を有するマウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースと上顎マウスピースとの咬合時の位置を調整するための位置調整部が、咬合時の左右方向の変位によっても壊れにくい。
また、本発明の第5の側面によれば、
前記ストッパは、その高さが前記他方のマウスピースの高さ以下である、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、位置決め部材の位置調整をストッパが制限しにくい。
また、本発明の第5の側面によれば、
前記位置調整部は、前記位置決め部材を支持した状態で前記一方のマウスピースに設けられた固定部に支持され、
前記ストッパは、前記固定部と前記位置決め部材との間に配置される、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースと上顎マウスピースとの咬合時の位置を調整するための位置調整部が、咬合時の左右方向の変位によっても壊れにくい。
また、本発明の第5の側面によれば、
前記固定部は、前記他方のマウスピースに当接して前記上顎マウスピースと下顎マウスピースとの左右方向の変位を規制する突出部を有する、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、左右方向への変位による応力が固定部の突出部にも印加されて、位置決め部材には印加されにくくなる。そのため、当該マウスピースは、下顎マウスピースが左右方向に変位することによる位置調整部の破損が抑制可能である。
また、本発明の第5の側面によれば、
前記位置決め部材は、前記突出部が前記他方のマウスピースに当接するときに、前記他方のマウスピースに当接しない位置に配置される、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、左右方向への変位による応力の大部分が固定部の突出部に印加されて、位置決め部材には印加されにくくなる。そのため、当該マウスピースは、下顎マウスピースが左右方向に変位することによる位置調整部の破損が抑制可能である。
また、本発明の第5の側面によれば、
前記位置決め部材と前記ストッパとは、その当接面が略平行である、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、位置決め部材とストッパとの当接による応力をより広い範囲に分散可能であり、位置決め部材およびストッパがより破損しにくい。
また、本発明の第5の側面によれば、
前記一対の位置決め部材は、前記他方のマウスピースの外側で前記ストッパに当接する一対のウイングを有する、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピース本体部の外側で上記ストッパとウイングとが当接して、使用者の下顎の後方への変位を制限可能である。
また、本発明の第5の側面によれば、
前記ウイングは、咬合時は前記ストッパに当接し、かつ、前記下顎マウスピースの開口方向への移動を容易にする傾斜部を有する、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、これを装着した使用者の開口が容易であり、使用者の違和感がより低減される。
また、本発明の第5の側面によれば、
前記ウイングは、咬合時は前記ストッパに当接し、かつ、前記下顎マウスピースの開口方向への移動を容易にする傾斜部を有する、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、これを装着した使用者の開口が容易であり、使用者の違和感がより低減される。
また、本発明の第5の側面によれば、
前記他方のマウスピースの前記ウイングとの当接部は略平面形状である、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースが、ウイングにより移動を規制されることなく前方へ移動可能である。
また、本発明の第5の側面によれば、
前記一対のウイングの前記他方のマウスピースとの当接面は、互いに略平行であり、
前記他方のマウスピースの前記一対のウイングとの当接面は、互いに略平行である、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、下顎マウスピースが、延伸部により移動を規制されることなく前方へ移動可能である。
また、本発明の第5の側面によれば、
前記ストッパは、前記他方のマウスピースの側面に固定される固定部と、前後方向に移動可能な移動部と、を備え、前記固定部と前記移動部とはその対向面が略平行である、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、位置決め部材と位置決め部材を固定する固定部との間の距離が短くなり、位置決め部材に印加された応力の、位置調整部での過剰な増大が抑制される。そのため、ストッパは、下顎マウスピースが左右方向に変位することによる位置調整部の破損を抑制可能である。
また、本発明の第5の側面によれば、
前記ストッパは、下顎マウスピースに設けられる、
上記マウスピースが提供される。
当該マウスピースは、これを装着した使用者の内頬のうち、皮膚がより伸縮しやすいより後方の部位に突出部が設けられることになるため、マウスピースを装着した使用者の装着感が向上する。
6.第6の側面に関するマウスピース
本発明の第6の側面は、上顎および下顎マウスピースの一方が歯列の一部にのみ装着される形状として、マウスピースを装着することによる違和感を低減し、使用者の装着感を高めるものである。
[第16の実施形態]
本発明の第16の実施形態に係るマウスピース6300は、その模式的な斜視図である図30および側面図である図31に示すように、左右に分割された一対の上顎マウスピースおよび下顎マウスピースを有し、上顎マウスピース6310は使用者の上顎に、下顎マウスピース6320は使用者の下顎に、それぞれ装着可能に構成されている。
上顎マウスピース6310は、図30に示すように、使用者の上顎の歯列の一部に装着可能な歯列型取部6312が形成され、それぞれが使用者の上顎の歯列の一部に装着可能な左右一対の上顎マウスピース本体部6314を有する。
下顎マウスピース6320は、図30に示すように、使用者の下顎の歯列に装着可能な歯列型取部6322が形成され、使用者の下顎の歯列の全部に装着可能な下顎マウスピース本体部6324をする。
下顎マウスピース本体部6324は、その側面に設けられた左右一対の連結部6340によりそれぞれの上顎マウスピース本体部6314と連結される。
連結部6340は、一方の上顎マウスピース本体部6314の側面に固定され、かつ、下顎マウスピース本体部6324の側面に位置決めされて、一方の上顎マウスピース6310と下顎マウスピース本体部6324との相対位置を固定する。これにより、下顎マウスピース6320と上顎マウスピース6310との開口方向の相対位置、前後方向の相対位置および左右方向の相対位置が固定される。
連結部6340は、下顎マウスピース6320と上顎マウスピース6310との上記開口方向の相対位置を固定する。そのため、マウスピース6300を装着した使用者が開口するときには、使用者の下顎の移動に伴って下顎マウスピース6320が開口方向に移動し、同時に下顎マウスピース6320に固定された上顎マウスピース6310も開口方向に移動する。このとき、マウスピース6300を装着した使用者が開口するときの状態を示す側面図である図32に示すように、使用者が下顎を開口方向に移動させると上顎の歯列から上顎マウスピース6310が取り外され、使用者が下顎を咬合方向に移動させると上顎の歯列に上顎マウスピース6310が装着される。これにより、特許文献1および特許文献2などに記載のマウスピースが有する上顎および下顎のマウスピースのフランジ部による開口の制限が生じにくく、使用者の開口が容易になる。
このとき、上顎マウスピース6310は左右に分割されているため、それぞれの上顎マウスピース6310と使用者の上顎の歯列との接触範囲をより小さくすることが可能である。これにより、それぞれの上顎マウスピース6310は歯列から取り外されやすくなり、使用者の開口がより容易になる。
また、連結部6340は、下顎マウスピース6320と上顎マウスピース6310との上記前後方向の相対位置を固定する。これにより、連結部6340は、マウスピース6300を装着した使用者の下顎が後方に変位することによる気道の狭窄を防ぎ、睡眠時の呼吸停止または低呼吸を抑制可能である。
また、連結部6340は、下顎マウスピース6320と上顎マウスピース6310との上記左右方向の相対位置を固定する。これにより、連結部6340は、マウスピース6300を装着した使用者の歯ぎしりなどによる下顎マウスピース6320の左右方向への変位を制限し、上記左右方向への変位によるガイド部の破損を抑制可能である。
連結部6340は、下顎マウスピース本体部6324の外側面に設けられたガイド部6350に沿って前後方向に位置調整可能に構成される。連結部6340は、ガイド部6350に沿って、下顎マウスピース6320の側面のうちより後方に位置調整される。これにより、連結部6340に固定されたそれぞれの上顎マウスピース6310は、ガイド部6350に沿って下顎マウスピース6320に対して後方に位置調整される。言い換えると、下顎マウスピース6320は、ガイド部6350に沿ってそれぞれの上顎マウスピース6310に対して前方に位置調整される。
これにより、連結部6340は、咬合時に、上顎マウスピース6310に対する下顎マウスピース6320の前後方向の相対位置をより前方に移動させつつ、上顎マウスピース6310と下顎マウスピース本体部6324との上記各方向の相対位置を固定する。そのため、マウスピース6300は、これを装着した使用者の下顎を前方に移動させて上記使用者の気道をより大きく開放させ、睡眠時の呼吸停止または低呼吸をより効果的に抑制可能である。
ガイド部6350は、下顎マウスピース本体部6324の側面に設けられた固定部6360にその一端が固定された、雄ねじを切ったねじ棒6352と、連結部6340にその一端が固定された、雄ねじを切ったねじ棒6354と、ねじ棒6352および3654の他方の端部がそれぞれ螺合するねじ孔に挿入されたターンバックル部6356と、を有する。ガイド部6350は、ターンバックル部6356に設けられたピン孔に回転用ピンを差し込んでターンバックル部6356を回転させ、ターンバックル部6356とねじ棒6352および6354との螺合量を調整して、ねじ棒6354に固着されて支持された連結部6340の位置を調整可能である。
連結部6340は、上顎マウスピース本体部6314および下顎マウスピース本体部6324に脱着可能に構成されてもよいが、上顎マウスピース本体部6314および下顎マウスピース本体部6324に接着されてもよい。連結部6340が上顎マウスピース本体部6314および下顎マウスピース本体部6324に接着されると、装着時に上顎マウスピース6310および下顎マウスピース6320のずれが生じにくい。
なお、図30および図31では、それぞれの上顎マウスピース6310は、使用者の上顎の歯列のうち、連結部6340より後方の歯列に装着可能とされているが、連結部6340より前方の歯列に装着可能としてもよい。ただし、ヒトの内頬の皮膚は、より後方ほど伸縮しやすい。そのため、それぞれの上顎マウスピース6310は、連結部6340より後方の歯列に装着可能であることが好ましく、使用者の臼歯(特には第一大臼歯(歯列6番)および第二大臼歯(歯列7番))を含む歯列に装着可能であることが好ましい。
本実施形態によれば、マウスピース6300を装着した使用者が開口するときに、上顎マウスピース6310は使用者の上顎の歯列から取り外されて、下顎マウスピース6320と一体的に移動する。また、上顎マウスピース6310は左右に分割されており、上顎マウスピース6310と使用者の上顎の歯列との接触範囲をより小さくすることが可能である。これにより、マウスピース6300を装着した使用者の開口がより容易になる。
また、本実施形態によれば、それぞれの上顎マウスピース6310は、上顎の歯列の一部に装着可能となっている。そのため、マウスピース6300を装着および開口した使用者が咬合するとき、それぞれの上顎マウスピース6310は上顎の歯列のうち定められた歯にのみ装着され、使用者の下顎が前方に移動した状態で咬合することが容易である。
また、本実施形態によれば、マウスピースの左右方向への厚みの増大を抑制できるため、使用者の装着感がより高い。
[第17の実施形態]
本発明の第17の実施形態に係るマウスピース6400は、その模式的な側面図である図33に示すように、左右に分割された一対の上顎マウスピースと、下顎マウスピースと、を有し、それぞれの上顎マウスピース6410は使用者の上顎に、下顎マウスピース6420は使用者の下顎に、それぞれ装着可能に構成されている。また、第16の実施形態と同様に、それぞれの上顎マウスピース6410と下顎マウスピース6420とは左右一対の連結部6440によって連結される。なお、以下、第16の実施形態と共通する構成については説明を省略することがある。
本実施形態において、連結部6440は、一方の上顎マウスピース本体部6414の側面にそれぞれ位置決めされ、かつ、下顎マウスピース本体部6424の側面に固定されて、一方の上顎マウスピース6410と下顎マウスピース本体部6424との相対位置を固定する。これにより、下顎マウスピース6420と上顎マウスピース6410との開口方向の相対位置、前後方向の相対位置および左右方向の相対位置が固定される。
連結部6440は、それぞれの上顎マウスピース本体部6414の外側面に設けられた一対のガイド部6450に沿って、ガイド部6450を固定する固定部6460に対して前後方向に位置調整可能に構成される。連結部6440は、ガイド部6450に沿って上顎マウスピース6410の側面のうちより前方に位置調整される。言い換えると、それぞれの上顎マウスピース6410は、ガイド部6450に沿って下顎マウスピース6420に対して後方に位置調整される。また、下顎マウスピース6420は、ガイド部6450に沿ってそれぞれの上顎マウスピース6410に対して前方に位置調整される。
これにより、連結部6440は、咬合時に、上顎マウスピース6410に対する下顎マウスピース6420の前後方向の相対位置をより前方に移動させつつ、上顎マウスピース6410と下顎マウスピース本体部6424との上記各方向の相対位置を固定する。そのため、マウスピース6400は、これを装着した使用者の下顎を前方に移動させて上記使用者の気道をより大きく開放させ、睡眠時の呼吸停止または低呼吸をより効果的に抑制可能である。
本実施形態によれば、ガイド部6450による位置調整時に、下顎マウスピース6420に対して連結部6440を移動させる必要がなく、より小さい部材である上顎マウスピース6410のみを移動させればよいため、位置調整がより容易である。
また、本実施形態によれば、マウスピースの左右方向への厚みの増大を抑制できるため、使用者の装着感がより高い。
[第18の実施形態]
本発明の第18の実施形態に係るマウスピース6500は、その模式的な側面図である図34に示すように、左右に分割された一対の上顎マウスピースと、下顎マウスピースと、を有し、それぞれの上顎マウスピース6510は使用者の上顎に、下顎マウスピース6520は使用者の下顎に、それぞれ装着可能に構成されている。また、第16の実施形態と同様に、それぞれの上顎マウスピース6510と下顎マウスピース6520とは連結部6540によって連結される。なお、以下、第16の実施形態と共通する構成については説明を省略することがある。
本実施形態において、マウスピース6500は、使用者の上顎の歯列に装着可能なスペーサ6580を有する。
マウスピース6500を装着した使用者が開口するときの状態を示す側面図である図35に示すように、使用者が下顎を開口方向に移動させると上顎の歯列から上顎マウスピース6510が取り外され、使用者が下顎を咬合方向に移動させると上顎の歯列に上顎マウスピース6510が装着される。このとき、スペーサ6580は上記開口および咬合時を通じて使用者の上顎の歯列に装着され、上顎マウスピース6510は開口時にスペーサ6580から取り外され、咬合時にスペーサ6580に嵌め込まれる。
スペーサ6580は、使用者の上顎の歯列に装着可能な歯列型取部6582がその内側面に形成され、上顎の歯列の全部に装着可能な形状を有する。また、スペーサ6580は、それぞれの上顎マウスピース6510の内側面に嵌込可能な嵌込部6584がその外側面のうち左右の後方領域に形成され、マウスピース6500の咬合時に左右それぞれの上顎マウスピース6510を嵌込可能な形状を有する。
嵌込部6584は、咬合時に上顎マウスピース6510がスペーサ6580に嵌め込まれたときに上顎マウスピース6510の前後方向への変位を制限し、一方で、上記嵌め込まれた上顎マウスピース6510の開口方向への移動を制限しない形状を有する。たとえば、嵌込部6584は、上顎の歯列の外側面と略同一の形状、および開口方向にそれぞれ複数の凸条部および溝部が形成されたプリーツ状、などの形状を有する。
このとき、嵌込部6584を嵌め込む上顎マウスピース6510の内側面は、嵌込部6584と対になる形状を有する。嵌込部6584の形状および上顎マウスピース6510の内側面の形状は、スペーサ6580の特定の位置のみが上顎マウスピース6510を嵌め込み可能となる形状であることが好ましい。たとえば、嵌込部6584は、上顎の歯列の外側面と略同一の形状であり、上顎マウスピース6510の内側面はその凹凸を反転させた形状であればよい。あるいは、嵌込部6584および上顎マウスピース6510の内側面はいずれも、互いに凹凸を反転させたプリーツ形状であり、上記プリーツ形状を構成する凸条部および溝部の前後方向の幅が、前方と後方とで異なる形状であってもよい。
本実施形態によれば、使用者の上顎の歯列に当接するスペーサ6580をより装着感の高い材料から形成することで、マウスピースの装着による使用者の違和感を低減可能である。また、本実施形態によれば、スペーサ6580が上顎マウスピース6510の前後方向への移動を制限するため、上顎マウスピース6510の密着感をより高めることが可能である。
また、本実施形態によれば、スペーサ6580が上顎マウスピースの前後方向へのずれを制限するため、上顎の歯列に対する上顎マウスピースの位置ずれを抑制して、使用者の装着感をより高めることが可能である。
一方で、本実施形態によれば、スペーサ6580は装着時に上顎マウスピース6510の開口方向への変位を可能とするため、マウスピース6500を装着した使用者の開口は容易である。
さらには、本実施形態によれば、マウスピース6500を装着および開口した使用者が咬合するとき、それぞれの上顎マウスピース6510はスペーサ6580の嵌込部6584の特定の位置にのみ装着されるため、使用者の下顎を前方に移動させた状態で咬合することが容易である。
このとき、スペーサ6580の外表面のうち、上顎マウスピース6510と当接しない部分には嵌込部6584に類似する形状を設けないことで、使用者に咬合時の下顎の位置をより把握させやすくしてもよい。
[第16の実施形態〜第18の実施形態の変形例]
なお、上述の第16の実施形態〜第18の実施形態はいずれも本発明の第6の側面の一例を示すものであり、本発明の第6の側面は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の第6の側面の思想の範囲内において、他の種々多様な実施形態も可能であることは言うまでもない。
たとえば、第16の実施形態〜第18の実施形態では、上顎マウスピースが左右に分割されてそれぞれ上顎の歯列の一部に装着され、一方で下顎マウスピースは下顎の歯列の全体に装着される。しかし、下顎マウスピースが左右に分割されてそれぞれ下顎の歯列の一部に装着され、一方で上顎マウスピースは上顎の歯列の全体に装着されてもよい。また、上顎マウスピースが左右に分割されてそれぞれ上顎の歯列の一部に装着され、同時に下顎マウスピースも左右に分割されてそれぞれ下顎の歯列の一部に装着されてもよい。
ただし、上顎マウスピースが左右に分割されてそれぞれ上顎の歯列の一部に装着されると、開口時に歯列から取り外される上顎マウスピースが歯列の一部にのみ装着されるため、開口時の上顎マウスピースの取り外しが容易であり、使用者の開口が容易である。
また、第16の実施形態〜第18の実施形態では、連結部、ガイド部および固定部は下顎または上顎マウスピースの外側面に設けられているが、連結部、ガイド部および固定部は下顎または上顎マウスピースの内側面に設けられていてもよい。
連結部、ガイド部および固定部は、下顎または上顎マウスピースの外側面または内側面のいずれに設けられてもよいが、連結部、ガイド部および固定部は、いずれも、下顎または上顎マウスピースの外側面または内側面のうち同一の側面に設けられるのが好ましい。
また、第16の実施形態〜第18の実施形態では、上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部には、歯列に装着可能な歯列型取部が形成されている。しかし上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部は、歯列が収まる形状であればよく、歯列に被せる形状でもよいし、上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部の一部だけ歯列型取部にしてもよい。
また、上顎および下顎マウスピースは複数の材料から構成されていてもよく、有機物で構成される部分と無機物で構成される部分との組み合わせで作られていてもよい。
また、第16の実施形態〜第18の実施形態では、ガイド部は、ターンバックル機構を用いて、ターンバックル部と2本のねじ棒との間の螺合量によって位置決め部材の位置を調整しているが、ガイド部は、雄ねじと雌ねじとの螺合量を調整して位置決め部材の位置を調整可能なねじジャック機構を用いてもよい。また、ガイド部は、ラックの回転量を調整してラックに固着された位置決め部材の位置を調整可能なラックジャッキ機構を用いて、歯車によって位置決め部材を移動させつつ、ねじで位置決め部材を固定してもよい。ガイド部は、位置決め部材の位置を移動させ、かつ調整された位置で固定できる限りにおいて、他の機構により位置決め部材の位置を調整してもよい。
また、第16の実施形態〜第18の実施形態では、ガイド部は、上顎および下顎マウスピースのいずれか一方に設けられている。しかし、上顎および下顎マウスピースの双方にガイド部を設けて、2か所で連結部を位置調整可能としてもよい。
なお、ガイド部が下顎マウスピースのみに設けられると、マウスピースの耐久性がより高くなる傾向がある。
[第6の側面に関する構成例]
本発明の第6の側面によれば、
上顎または下顎の一方の顎の歯列に装着可能な一方マウスピースと、
上顎または下顎の他方の顎の歯列の一部に装着可能な、左右に分割された一対の他方マウスピースと、
前記一方マウスピースと前記他方マウスピースとを連結して、前記一方マウスピースと前記他方マウスピースとの開口方向の相対位置を固定する連結部と、
前記他方マウスピースの、前記一方のマウスピースに対する前後方向の相対位置を調整するガイド部と、
を有するマウスピースが提供される。
当該マウスピースは、他方マウスピースが歯列の一部にのみ装着されるため、マウスピースを装着することによる違和感が低減され、使用者の装着感が高い。
また、本発明の第6の側面によれば、
前記他方の顎の歯列に装着可能なスペーサを有し、
前記スペーサは、咬合時に前記他方マウスピースと当接して前記他方マウスピースの前後方向への変位を制限し、かつ開口時に前記他方マウスピースに対する前記スペーサの相対位置の変位を可能にする形状であるマウスピースが提供される。
当該マウスピースは、使用者の上顎の歯列に当接するスペーサをより装着感の高い材料から形成することで、マウスピースの装着による使用者の違和感を低減可能である。また、当該マウスピースは、スペーサが他方マウスピースの前後方向への移動を制限するため、他方マウスピースの密着感をより高めることが可能である。また、当該マウスピースは、スペーサが他方マウスピースの前後方向へのずれを制限するため、装着時の他方マウスピースの位置ずれを抑制して、使用者の装着感をより高めることが可能である。
また、本発明の第6の側面によれば、
前記ガイド部は、前記連結部を前後方向に位置調整して、前記連結部に固定された前記他方マウスピースの前後方向の相対位置を調整する位置に設けられるマウスピースが提供される。
当該マウスピースは、これを装着した使用者の下顎を前方に移動させて上記使用者の気道をより大きく開放させ、睡眠時の呼吸停止または低呼吸をより効果的に抑制可能である。
また、本発明の第6の側面によれば、
前記他方マウスピースは、前記他方の顎の歯列の臼歯に装着可能な形状を有するマウスピースが提供される。
当該マウスピースは、これを装着した使用者の内頬のうち、皮膚がより伸縮しやすいより後方の部位に他方マウスピースが配置されるため、マウスピースを装着した使用者の装着感が向上する。
また、本発明の第6の側面によれば、
前記ガイド部は前記他方マウスピースの側面に設けられるマウスピースが提供される。
当該マウスピースは、マウスピースの耐久性がより高くなる傾向がある。
また、本発明の第6の側面によれば、
前記一方マウスピースは、下顎の歯列に装着可能な形状を有するマウスピースが提供される。
当該マウスピースは、上顎および下顎マウスピースが開口時に一体となって開口方向に移動するが、このとき歯列から取り外される上顎マウスピースが歯列の一部にのみ装着されるため、上顎マウスピースの取り外しが容易であり、使用者の開口が容易である。
7.材料
なお、上記各実施形態で説明する上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部は、ヒトの通常の咬合力によって破損しにくい材料から形成される。
たとえば、上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部は、JIS T 6501に準じて測定される曲げ弾性率が2000MPa以上3000MPa以下の単一の硬い材料(たとえばアクリル樹脂)や、10MPa以上300MPa以下の柔らかい材料と1000MPa以上3000MPa以下の硬い材料とを組み合わせた材料から形成されてもよい。
また、上顎マウスピース本体部および下顎マウスピース本体部は、使用者の歯への追従性を高めるため、引張強度150N以上2000N未満、好ましくは150N以上500N以下の比較的柔らかい材料から形成されてもよい。
なお、引張強度は、ニッシン標準模型を用いて作製したマウスピース(厚さ3mm)の上顎マウスピースにおける歯列6番にφ1.5mmの穴を開け、臼歯方向(後方)に引張試験をした際に、上記上顎マウスピースが裂けた強度を意味する。
上記引張強度150N以上2000N未満の材料の例には、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびアクリル系ゴム樹脂が含まれる。これらのうち、オレフィン系樹脂が好ましい。
オレフィン系樹脂は、オレフィンを単独重合してなる重合体、またはオレフィンと他の単量体とを重合してなる共重合体である。上記オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン、メチルペンテン、およびヘキセンなどを含む炭素数が2〜6のオレフィンが好ましい。上記他の単量体の例には、酢酸ビニルなどが含まれる。
上記オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレン系樹脂、およびエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)などが好ましく、ポリエチレン(PE)、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレン系樹脂などがより好ましい。
ポリエステル系樹脂は、多価カルボン酸(ジカルボン酸など)とポリアルコール(ジオールなど)との重縮合体である。上記ポリエステル系樹脂の例には、ポリエチレンテレフタレート(PET)などが含まれる。
ウレタン系樹脂は、イソシアネート基を有する化合物と水酸基を有する化合物との重縮合体である。上記ウレタン系樹脂の例には、熱可塑性ポリウレタン(TPU)などが含まれる。
ポリアミド系樹脂は、アミド結合によって多数のモノマーが結合してできた(共)重合体である。上記ポリアミド系樹脂の例には、ナイロン、パラ系アミド、およびメタ系アミドなどが含まれる。
アクリル系ゴム樹脂は、アクリル系ゴムを主成分とした(共)重合体である。上記アクリル系樹脂の例には、メタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルのブロック共重合体などが含まれる。
引張強度150N以上2000N未満の材料としては、プライムポリマー株式会社製のF327(ポリプロピレン系樹脂)などの市販されているものを用いてもよい。
位置決め部材、固定部、前方固定部、後方固定部、突出部、ストッパ、ストッパ固定部、移動部および連結部は、たとえば、JIS T 6501に準じて測定される曲げ弾性率が2000MPa以上3000MPa以下の硬い材料(たとえばアクリル樹脂)から形成される。これにより、左右方向への変位によって、位置決め部材、固定部およびストッパが上顎マウスピース本体部または下顎マウスピース本体部に当接したときの応力によるこれらの部材の破損を抑制できる。
第6のマウスピースが有するスペーサ6580は、ヒトの通常の咬合力によって破損しにくい材料から形成される。スペーサ6580は、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂などの樹脂材料から形成されてもよい。また、歯列の形状への追従性をより高める観点からは、スペーサ6580は、その内外方向の厚みが0.5mm以上5.0mm以下であることが好ましい。
なお、第6のマウスピースが有するスペーサ6580の嵌込および取り外しを容易にする観点からは、上顎マウスピース6510は、JIS K 7215に準じて測定されるショアA硬度が90以上の材料から形成されることが好ましい。
本出願は、2016年12月27日出願の日本国出願番号2016−253255号、2016年12月27日出願の日本国出願番号2016−253263号、2016年12月27日出願の日本国出願番号2016−253265号、2017年2月8日出願の日本国出願番号2017−021254号、2017年2月28日出願の日本国出願番号2017−037311号および2017年6月1日出願の日本国出願番号2017−108996号に基づく優先権を主張する出願であり、当該出願の明細書、特許請求の範囲および図面に記載された内容は本出願に援用される。