JPWO2018084313A1 - 植物用液状散布剤 - Google Patents

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Abstract

ケン化度30〜60モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)とアニオン性界面活性剤(B)を含有してなる植物用液状散布剤とする。これにより、農業や園芸の分野で使用される植物用液状散布剤であり、展着性が高く、かつ散布剤の安定性に優れる植物用液状散布剤を提供することができる。

Description

本発明は、農薬又は肥料などの活性成分の展着性、およびかかる活性成分を含有する植物用液状散布剤の安定性に優れる、植物用液状散布剤に関するものである。
農業や園芸の分野では、一般に、果実や野菜等の成長促進のための肥料、および有害生物を駆除するための農薬を、水で希釈してそのまま散布するといった処置が行われる。しかしながら、このように肥料や農薬を水で希釈してそのまま植物体上に散布すると、その肥料や農薬の活性成分が、降雨等により流亡したり、あるいは風により剥離脱落したりして、効果の持続性がしばしば損なわれる。
そこで、肥料や農薬の活性成分の植物体への付着性あるいは展着性を向上させる目的で、通常、肥料や農薬の水希釈液に展着剤が加えられる。展着剤としては、散布液の表面張力を下げ、濡れにくい虫や作物に対する付着あるいは拡展性を向上させ、肥料や農薬の効果を高める性質を有する、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、リグニンスルホン酸塩、ナフチルメタンスルホン酸塩等が汎用されているが、これらは水に非常になじみやすい性質を有するため、降雨等による流亡を抑えることはできない。
また、展着効果を示す展着剤として、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、パラフィン等を主成分とするものがあるが、使用濃度を高くしないと効果が発揮されなかったり、乾いた皮膜が水に溶けないため植物体上にいつまでも残留したりする、等の問題がある。さらに、これらの展着剤は、いずれも上記水希釈液中での溶解性が悪く、さらには配合量を多くしないと機能しないという問題もある。
これらの問題を解決するものとして、近年、ポリビニルアルコールを含有する農薬活性成分の展着性組成物が開発されている(特許文献1参照。)。
かかる特許文献1に記載のポリビニルアルコールは、ケン化度が88モル%程度で、雨水などで流亡することから、改良が求められるものであった。そこで、ケン化度が30〜60モル%のポリビニルアルコール系樹脂を含有する農業用液状散布剤が提案されている(特許文献2参照。)。
上記特許文献2の農業用液状散布剤は、展着性においては満足のいくものであった。ところが、上記特許文献2の農業用液状散布剤に使用されているポリビニルアルコール系樹脂は、水への分散安定性が低く、上記農業用液状散布剤を長時間放置するとポリビニルアルコール系樹脂が沈殿する不都合があったことから、本発明者らは、更なる改善を検討した。
特開平8−217604号公報 特開2015−134704号公報
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、農業や園芸において、植物に使用される液状散布剤であり、葉面などに対する展着性が高く、かかる液状散布剤を長時間放置しても、沈殿が生じない、即ち液状散布剤の安定性に優れる植物用液状散布剤を提供する。
しかるに、本発明者らは、植物用液状散布剤において、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と略す。)の他に界面活性剤の中でも特にアニオン性界面活性剤を含有させることにより、展着性に優れ、更に液状散布剤の安定性も高いことを見出した。
すなわち、本発明の要旨は、ケン化度30〜60モル%のPVA系樹脂(A)とアニオン性界面活性剤(B)を含有してなる植物用液状散布剤に関するものである。
本発明の植物用液状散布剤は、上記特定のPVA系樹脂(A)の作用により、展着性に優れるとともに、散布性にも優れるようになる。更に、本発明の植物用散布剤は、上記特定のPVA系樹脂(A)とともにアニオン性界面活性剤(B)を併用することにより、析出・沈殿することなく水に分散し、尚且つ上記特定のPVA系樹脂(A)が有する疎水性のアセチル基の作用により、降雨での流亡が抑制されるため、展着性及び液状散布剤の安定性に優れるものである。
そのため、特に、本発明の植物用液状散布剤は、葉面散布剤として好適に用いられる。
そして、上記PVA系樹脂(A)の平均重合度が、100〜2000であると、植物用液状散布剤の展着性および上記植物用液状散布剤へのPVA系樹脂の溶解性により優れるようになる。
また、上記PVA系樹脂(A)が、親水性変性基を有するPVA系樹脂であると、植物用液状散布剤の展着性および上記植物用液状散布剤へのPVA系樹脂の溶解性により優れるようになる。
さらに、上記アニオン性界面活性剤(B)の含有量が、上記PVA系樹脂(A)100重量部に対して1〜20重量部であると、植物用液状散布剤の展着性および上記植物用液状散布剤へのPVA系樹脂の溶解性により優れるようになる。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の植物用液状散布剤は、ケン化度30〜60モル%のPVA系樹脂(A)とアニオン性界面活性剤(B)を含有してなることを特徴とする。
〔PVA系樹脂(A)〕
まず、PVA系樹脂(A)について説明する。
本発明において、「PVA系樹脂」とは、ビニルアルコール単位とビニルエステル系単位のみから構成されるポリビニルアルコール(未変性PVA系樹脂)のみならず、ビニルアルコール単位とビニルエステル単位と、その他の共重合成分から構成されるポリビニルアルコール(変性PVA系樹脂)をも包含する趣旨である。そして、本発明で用いられるPVA系樹脂(A)は、そのケン化度が30〜60モル%であり、好ましくは32〜55モル%、特に好ましくは35〜50モル%である。なお、上記ケン化度とは、上記PVA系樹脂の分子中におけるビニルアルコール単位数nとビニルエステル系単位数mから算出される値[n/(n+m)×100]のことを言う。
かかるケン化度が低すぎると、水に溶けなくなり、液状散布剤としての機能を果たさなくなる傾向があり、一方高すぎると展着性が低下する傾向がある。
なお、上記ケン化度は、JIS K 6726に準じて、残存酢酸ビニルの加水分解に要するアルカリ消費量で分析することにより得られる値である。
また、上記PVA系樹脂(A)の平均重合度は、100〜2000であることが好ましく、特に好ましくは150〜1000、さらに好ましくは200〜800である。かかる平均重合度が低すぎると展着性が低下する傾向があり、逆に高すぎると溶解性が低下する傾向がある。
なお、平均重合度は、JIS K 6726に準拠して測定される。
上記PVA系樹脂(A)は、通常は、ビニルエステル系単量体を重合して得られたビニルエステル系重合体をケン化して得ることができる。
上記ビニルエステル系単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、バーサティック酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等が、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なお、実用上は、経済性の観点から、酢酸ビニルが好適に用いられる。
また、上記PVA系樹脂(A)は、未変性のものであっても、変性されたものであってもよいが、特に変性されたものは水での分散安定性を向上させることから、変性PVA系樹脂が好ましく、親水性変性基を有するPVA系樹脂がより好ましい。かかる変性PVA系樹脂は、ビニルエステル系単量体と他の不飽和単量体との重合体をケン化したり、PVA系樹脂を後変性したりして、製造することができる。
上記他の不飽和単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のビニル基とエポキシ基を有する単量体;トリアリルオキシエチレン、ジアリルマレアート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリルオキシエタン、ジアリルフタレート等のアリル基を2個以上有する単量体;酢酸アリル、アセト酢酸ビニルエステル、アセト酢酸アリルエステル、ジアセト酢酸アリルエステル等のアリルエステル系単量体;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート;アセトアセトキシエチルクロトナート、アセトアセトキシプロピルクロトナート等のアセトアセトキシアルキルクロトナート;2−シアノアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコール(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(アルキル部分がC1〜C10アルキル基であり、好ましくはC1〜C6アルキル基);(メタ)アクリロニトリル等のニトリル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン;エチレンスルホン酸等のオレフィン系単量体;ブタジエン−1,3、2−メチルブタジエン、1,3又は2,3−ジメチルブタジエン−1,3、2−クロロブタジエン−1,3等のジエン系単量体;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、グリセリンモノアリルエーテル等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類、およびそのアシル化物等の誘導体;1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジプロピオニルオキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジブチロニルオキシ−2−メチレンプロパン等のヒドロキシメチルビニリデンジアセテート類;イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸等の不飽和酸類、その塩又はモノ若しくはジアルキルエステル;アクリロニトリル等のニトリル類、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、AMPS等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩等の化合物、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン等のビニルアルキルジアルコキシシラン;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のγ−(メタ)アクリロキシプロピルトリアルコキシシラン;γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のγ−(メタ)アクリロキシプロピルアルキルジアルコキシシラン;ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ヒドロキシメチルビニリデンジアセテートが挙げられる。
また、上記他の不飽和単量体としては、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、3−アシロキシ−4−ヒドロキシ−1−ブテン、4−アシロキシ−3−ヒドロキシ−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−2−メチル−1−ブテン、4,5−ジヒドロキシ−1−ペンテン、4,5−ジアシロキシ−1−ペンテン、4,5−ジヒドロキシ−3−メチル−1−ペンテン、4,5−ジアシロキシ−3−メチル−1−ペンテン、5,6−ジヒドロキシ−1−ヘキセン、5,6−ジアシロキシ−1−ヘキセン、グリセリンモノアリルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、2−アセトキシ−1−アリルオキシ−3−ヒドロキシプロパン、3−アセトキシ−1−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、グリセリンモノビニルエーテル、グリセリンモノイソプロペニルエーテル、ビニルエチレンカーボネート、2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン等の、ジオールを有する化合物を用いることもできる。
そして、上記変性PVA系樹脂の製造において、これらの不飽和単量体は、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
また、後変性の方法としては、PVA系樹脂をアセト酢酸エステル化、アセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化、オキシアルキレン化する方法等が挙げられる。
そして、上記変性PVA系樹脂のなかでも、水に対する親和性が高いことから、親水性変性基を有するPVA系樹脂が好ましい。上記親水性変性基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、リン酸基、リン酸塩基、アミノ基、アミノ基含有アルキル基、チオール基、チオール基含有アルキル基等のアニオン性の親水性変性基;オキシアルキレン基、ジアセトンアクリルアミド基、メルカプト基、シラノール基、水酸基含有アルキル基等のノニオン性の親水性変性基等が挙げられる。
なかでも水への溶解性の点で、オキシアルキレン基含有PVA系樹脂、カルボキシル基含有PVA系樹脂、水酸基含有アルキル基変性PVA系樹脂等の親水性変性基を有するPVA系樹脂が好ましく、特にオキシアルキレン基含有PVA系樹脂が好ましい。また、これら変性基が二種以上含有するPVA系樹脂、特にオキシアルキレン基とカルボキシル基の二種を含有するPVA系樹脂等も用いることができる。
上記カルボキシル基含有PVA系樹脂は、ビニルエステル系単量体とカルボキシル基含有不飽和単量体を共重合し、ケン化することにより製造される。上記カルボキシル基含有不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有不飽和化合物、およびこれらのカルボキシル基が、アルカリ化合物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)等の塩基によって、全体的あるいは部分的に中和されたもの、あるいはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、フマル酸モノメチル、マレイン酸モノメチル等の上記カルボキシル基含有不飽和化合物のモノアルキルエステル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル等、上記カルボキシル基含有不飽和化合物のジアルキルエステルが挙げられる。これらのエステルの炭素数は、経済性と実用性の点から通常炭素数1〜20、さらには炭素数1〜10が好ましく、特には炭素数1〜4が好ましい。これらの中でもマレイン酸系の化合物が好ましく、更にマレイン酸モノメチルが好ましい。
また、上記オキシアルキレン基含有PVA系樹脂の構造や製造方法については、特開2015−117286号公報の段落〔0013〕〜〔0025〕に記載の通りである。
上記水酸基含有アルキル基変性PVA系樹脂としては、アルキル基の炭素数、水酸基の数、水酸基の価数及び結合様式等によって数多くのものが挙げられるが、アルキル基の炭素数は通常1〜5、特に2〜3が好ましい。また、水酸基の数は、通常1〜4であり、特に1〜3が好ましい。これらの水酸基含有アルキル基のなかでも、1級水酸基を有するアルキル基が好ましく、特に1級水酸基と2級水酸基が隣り合う炭素に結合した1,2ジオール基が好ましい。
なお、オキシエチレン基の末端は通常水酸基であることから、オキシエチレン基は水酸基含有官能基に包含されるものである。
本発明の植物用液状散布剤では、上記変性PVA系樹脂の変性率が、通常0.1〜10モル%、好ましくは0.5〜5モル%、特に好ましくは1〜2モル%のものが用いられる。かかる変性量が少なすぎると液状散布剤の安定性が低下する傾向があり、大きくなると展着性が低下する傾向がある。
〔アニオン性界面活性剤(B)〕
次に、アニオン性界面活性剤(B)について説明する。
本発明においては、植物用液状散布剤に界面活性剤が含有されるわけであるが、界面活性剤としてアニオン性界面活性剤(B)を含むことが重要である。
アニオン性界面活性剤(B)としては、例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩などが挙げられる。上記カルボン酸塩としては、例えば、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等、上記スルホン酸塩としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジ−2−エチルへキシルスルホコハク酸ナトリウム等、上記硫酸エステル塩としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等、上記リン酸エステル塩としては、例えば、ラウリルリン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
上記のアニオン性界面活性剤の(B)のなかでも、水への溶解性の点でスルホン酸塩、硫酸エステル塩等が好適に用いられる。なかでもスルホン酸塩が特に好ましい。
かかるアニオン性界面活性剤(B)の含有量は、PVA系樹脂(A)100重量部に対して1〜20重量部であることが好ましく、特には2〜15重量部、さらに好ましくは3〜10重量部である。かかる含有量が多すぎると展着性が低下する傾向があり、少なすぎると液状散布剤の安定性が低下する傾向がある。
また、本発明の植物用液状散布剤に用いられる薬剤としては、上記散布剤の活性成分のもととなる薬剤、すなわち、殺虫剤、殺菌剤、殺虫殺菌剤、除草剤、殺鼠剤、植物成長調整剤、誘引剤、展着剤、微生物剤、忌避剤、農薬肥料などの農薬;肥料;防虫剤等の、植物に対して展着性が必要な薬剤が使用される。かかる薬剤は、水やアルコールに溶解または分散するものであれば使用することができるが、本発明の植物用液状散布剤に使用されるPVA系樹脂(A)に対して非反応性のものを使用する必要がある。
本発明の植物用液状散布剤には、PVA系樹脂(A)、溶媒、薬剤の他、必要に応じ、乳化剤、水和剤、フロアブル剤、界面活性剤(上記アニオン性界面活性剤(B)を除く。)、増粘剤、防腐剤等の他の成分が配合される。ただし、かかる他の成分の配合量は、植物用液状散布剤全体の10重量%以下が好ましい。
ここで、本発明の植物用液状散布剤は、例えば、(1)PVA系樹脂(A)溶液と薬剤溶液とを混合する、(2)PVA系樹脂(A)溶液に粉末の薬剤を入れて混合する、(3)薬剤溶液にPVA系樹脂(A)粉末を入れて混合する、といった方法により調製することができる。なかでも、薬剤の分散性や調製の簡便さの点で(1)に示す方法により調製することが好ましい。
このようにして得られた本発明の植物用液状散布剤における上記特定のPVA系樹脂(A)の濃度は、通常0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%、更に好ましくは1〜10重量%である。すなわち、このような濃度になるよう調製することにより、展着性、散布性等に優れるようになるからである。
また、本発明の植物用液状散布剤における、その活性成分のもととなる薬剤の濃度は、通常0.1〜5000重量ppm、好ましくは1〜1000重量ppm、更に好ましくは10〜500重量ppmである。かかる薬剤の濃度が低すぎると薬剤の効果は得られにくくとなり、高すぎると植物に悪影響を及ぼすことがある。このような濃度になるよう調製することにより、薬剤の活性成分が有効に機能するようになるからである。
そして、本発明の植物用液状散布剤は、葉面、茎、果実への散布剤、水耕用の散布剤等として用いることができる。特に、葉面散布剤として好適に用いられる。本発明の植物用液状散布剤を散布する方法としては、公知の方法で適宜行うことができる。好ましくはスプレー法すなわち噴霧することにより植物用液状散布剤を霧状に散布する方法が挙げられる。かかる方法によれば、そのスプレー圧により本発明の植物用液状散布剤の流動性が高められスプレー散布しやすく、スプレーして植物に付着した後は、本発明の植物用液状散布剤のチキソトロピーにより植物上で展着性が発現される傾向がある。
また、本発明の植物用液状散布剤をスプレー法により散布する方法として、具体的には、霧吹き、噴霧器、散布機などを用いて人手により散布する方法や、飛行機、ヘリコプター、ドローンなどを用いて空中散布する方法などが挙げられる。これらの方法は、本発明の植物用液状散布剤の種類や散布の目的に応じて適宜選択することができる。生産性の点で好ましくは空中散布法である。
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、「部」、[%]などは重量基準である。
〔実施例1〕
<PVA系樹脂(1)の作製>
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1000部、メタノール9580部、平均鎖長n=10のポリオキシエチレンアリルエーテル237部(2モル%対仕込み酢酸ビニル)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.079モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。さらに、13時間かけて、酢酸ビニル1410部、メタノール3195部、ポリオキシエチレンアリルエーテル2130部を滴下、また重合開始4時間後にアゾビスイソブチロニトリルを0.079モル%(対仕込み酢酸ビニル)追加し、酢酸ビニルの重合率が94%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込みつつ蒸留することで未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し、共重合体のメタノール溶液を得た。次いで、上記メタノール溶液を、濃度40%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位1モルに対して10ミリモルとなる割合で加えてケン化を1.5時間行った。中和用の酢酸を水酸化ナトリウムの0.8当量添加した後、撹拌しながら過熱してメタノールを完全に追い出した後、水を追加して溶解し、40%水溶液のオキシアルキレン基含有PVA系樹脂[PVA系樹脂(1)]を得た。得られたPVA系樹脂(1)のケン化度は、残存酢酸ビニルの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ41モル%であり、平均重合度は、JIS K 6726に準拠して分析を行ったところ、280であった。また、上記PVA系樹脂(1)の変性率[オキシアルキレン基含有量]は、その仕込み量から1.7モル%とした。
上記のようにして得られたPVA系樹脂(1)を、濃度5%のPVA系樹脂水溶液となるように水に溶解し、さらにアニオン性界面活性剤(B)(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、花王社製、「ネオペレックスG−15」)をPVA系樹脂(1)に対して濃度5%となるよう添加し調製した。そして、かかるPVA系樹脂溶液100部に、液体肥料(住友化学園芸社製、オルトラン水和剤)を指定濃度に希釈して5部添加し、植物用液状散布剤を調製した。
〔実施例2〕
<PVA系樹脂(2)の作製>
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル400部、メタノール45部、平均鎖長n=15のポリオキシエチレンアリルエーテル55部(2モル%対仕込み酢酸ビニル)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.1モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。さらに、12時間かけて、酢酸ビニル600部、メタノール25部を滴下、11時間かけて、ポリオキシエチレンアリルエーテル83部を滴下、また重合開始11時間後にアゾビスイソブチロニトリルを0.14モル%(対仕込み酢酸ビニル)追加し、酢酸ビニルの重合率が92%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込みつつ蒸留することで未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し、共重合体のメタノール溶液を得た。次いで、上記メタノール溶液を、濃度40%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位1モルに対して10ミリモルとなる割合で加えてケン化を1.5時間行った。中和用の酢酸を水酸化ナトリウムの0.8当量添加した後、撹拌しながら過熱してメタノールを完全に追い出した後、水を追加して溶解し、35%水溶液のオキシアルキレン基含有PVA系樹脂[PVA系樹脂(2)]を得た。得られたPVA系樹脂(2)のケン化度は、残存酢酸ビニルの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ43モル%であり、平均重合度は、JIS K 6726に準拠して分析を行ったところ、400であった。また、上記PVA系樹脂(2)の変性率[オキシアルキレン基含有量]は、単量体の仕込み量から1.7モル%とした。
上記のようにして得られたPVA系樹脂(2)を、PVA系樹脂(1)に代えて用いた。それ以外は、実施例1と同様にして農業用液状散布剤を調製した。
〔実施例3〕
<PVA系樹脂(3)の作製>
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1000部、メタノール300部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.079モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。さらに、重合開始2時間後、4時間後にそれぞれアゾビスイソブチロニトリルを0.079モル%(対仕込み酢酸ビニル)追加し、酢酸ビニルの重合率が94%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込みつつ蒸留することで未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し、共重合体のメタノール溶液を得た。次いで、上記メタノール溶液を、濃度50%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位1モルに対して10ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、粒子状となった時点で、中和用の酢酸を水酸化ナトリウムの0.8当量添加し、濾別、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、未変性PVA系樹脂[PVA系樹脂(3)]を得た。得られたPVA系樹脂(3)のケン化度は、残存酢酸ビニルの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ34モル%であり、平均重合度は、JIS K 6726に準拠して分析を行ったところ、300であった。
上記のようにして得られたPVA系樹脂(3)を、PVA系樹脂(1)に代えて用いた。それ以外は、実施例1と同様にして農業用液状散布剤を調製した。
〔実施例4〕
<PVA系樹脂(4)の作製>
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル3800部、メタノール4100g、アリルスルホン酸40gを仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.073モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。さらに、2時間後0.055モル%、4時間後0.055モル%アゾビスイソブチロニトリルを追加し、8時間かけて重合し、酢酸ビニルの重合率が94%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込みつつ蒸留することで未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し、共重合体のメタノール溶液を得た。次いで、上記メタノール溶液を濃度55%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位1モルに対して8ミリモルとなる割合で加えてケン化を1.5時間行った。中和後メタノールを完全に追い出しアリルスルホン酸基含有PVA系樹脂[PVA系樹脂(4)]を得た。得られたPVA系樹脂(4)のケン化度は、残存酢酸ビニルの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ47モル%であり、平均重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、500であった。また、上記PVA系樹脂(4)の変性率[アリルスルホン酸基含有量]は、その仕込み量から0.6モル%とした。
上記のようにして得られたPVA系樹脂(4)を、PVA系樹脂(1)に代えて用いた。それ以外は、実施例1と同様にして農業用液状散布剤を調製した。
〔実施例5〕
酢酸ビニルと3−メルカプトプロピオン酸をメタノール中で共重合させた。ついで、このようにして得られた共重合体を、水酸化ナトリウムでケン化した。これにより得られたPVA系樹脂[PVA系樹脂(5)]のケン化度は、残存酢酸ビニルの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ38モル%であり、平均重合度は、JIS K 6726に準拠して分析を行ったところ、530であった。また、上記PVA系樹脂(5)の変性率[末端カルボキシル基含有量]は、その仕込み量から0.25モル%とした。なお、上記PVA系樹脂(5)を、メタノールで48時間ソックスレー抽出により精製した後、重水に溶解し、核磁気共鳴分析(NMR)したところ、上記PVA系樹脂(5)の末端にCOONa基の存在が認められ、分子の片末端にNaOOC−CH2−CH2−S−のカルボキシル基を有することが確認された。
上記のようにして得られたPVA系樹脂(5)を、PVA系樹脂(1)に代えて用いた。それ以外は、実施例1と同様にして農業用液状散布剤を調製した。
〔比較例1〕
前記のようにして得られたPVA系樹脂(1)を、濃度5%のPVA系樹脂水溶液となるように水に溶解し、さらにノニオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王社製、「エマルゲン103」)を、PVA系樹脂(1)に対して濃度5%となるよう添加し調製した。そして、かかるPVA系樹脂水溶液100部に、液体肥料(住友化学園芸社製、オルトラン水和剤)を指定濃度に希釈して5部添加し、植物用液状散布剤を調製した。
〔比較例2〕
前記のようにして得られたPVA系樹脂(3)を、濃度5%のPVA系樹脂水溶液となるように水に溶解した。そして、かかるPVA系樹脂水溶液100部に、液体肥料(住友化学園芸社製、オルトラン水和剤)を指定濃度に希釈して5部添加し、植物用液状散布剤を調製した。
〔比較例3〕
前記のようにして得られたPVA系樹脂(1)を、濃度5%のPVA系樹脂水溶液となるように水に溶解した。そして、かかるPVA系樹脂水溶液100部に、液体肥料(住友化学園芸社製、オルトラン水和剤)を指定濃度に希釈して5部配合し、植物用液状散布剤を調製した。
〔比較例4〕
前記のようにして得られたPVA系樹脂(3)を、濃度5%のPVA系樹脂水溶液となるように水に溶解し、さらにノニオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王社製、「エマルゲン103」)を、PVA系樹脂(3)に対して濃度5%となるよう添加し調製した。そして、かかるPVA系樹脂水溶液100部に、液体肥料(住友化学園芸社製、オルトラン水和剤)を指定濃度に希釈して5部添加し、植物用液状散布剤を調製した。
このようにして得られた実施例および比較例の植物用液状散布剤に関し、下記の基準に従って展着性評価を行った。その結果を、後記の表1に併せて示す。
≪展着性評価≫
植物用液状散布剤を植物(ベンジャミンエスタ)の葉面に対し、霧吹きにて植物用液状散布剤を散布した。そして、24時間放置後、その葉面(植物用液状散布剤の散布面)に対し、霧吹きにて水を噴きかけた。そして、落ちずに残った展着面を目視観察し、その展着面が、葉面(植物用液状散布剤の散布面)の面積に対して80%以上残ったものを「○」と評価した。なお、葉面(植物用液状散布剤の散布面)の面積に対して30%以上80%未満残ったものを「△」、30%未満しか残らなかったものを「×」と評価した。
≪分散安定性評価≫
植物用液状散布剤を調製後、4日間室温で静置した。そして、上記静置を行った後の植物用液状散布剤の様子を目視で観察し、沈殿がみられないことからPVA系樹脂等が分散していると判断されるものを「○」、3日経過後に観察し沈殿が生じていたものを「△」、1日経過後に観察し沈殿が生じていたものを「×」と評価した。
Figure 2018084313
本発明の植物用散布剤を用いた実施例1〜5においては、分散安定性、展着性両方に優れるものであった。一方、ノニオン性の界面活性剤を用いた比較例1および4や、PVA系樹脂とアニオン性界面活性剤との併用を行わなかった比較例2および3では、展着性には優れるものの分散安定性に劣るものであった。
なお、上記実施例においては、本発明における具体的な形態について示したが、上記実施例は単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。当業者に明らかな様々な変形は、本発明の範囲内であることが企図されている。
本発明の植物用液状散布剤は、前記特定のPVA系樹脂(A)とアニオン性界面活性剤(B)を含有してなるため、展着性が高く、かつ散布性に優れることから、農業や園芸の分野で使用される液状散布剤、例えば、葉面、茎、果実等への散布剤への適用に有効である。

Claims (6)

  1. ケン化度30〜60モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)とアニオン性界面活性剤(B)を含有してなることを特徴とする植物用液状散布剤。
  2. 上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)の平均重合度が、100〜2000であることを特徴とする請求項1に記載の植物用液状散布剤。
  3. 上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)が、親水性変性基を有するポリビニルアルコール系樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の植物用液状散布剤。
  4. 上記アニオン性界面活性剤(B)の含有量が、上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)100重量部に対して1〜20重量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の植物用液状散布剤。
  5. 上記植物用液状散布剤が葉面散布剤である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の植物用液状散布剤。
  6. ケン化度30〜60モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)とアニオン性界面活性剤(B)を含有してなる植物用液状散布剤を空中散布法により散布することを特徴とする植物用液状散布剤の使用方法。
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